(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241001BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241001BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L29/78 301D
H01L29/06 301F
H01L29/78 301G
(21)【出願番号】P 2023115530
(22)【出願日】2023-07-13
(62)【分割の表示】P 2022036355の分割
【原出願日】2018-03-29
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】宇田 和也
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-028116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0353749(US,A1)
【文献】米国特許第09893146(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0149007(US,A1)
【文献】米国特許第09484454(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の一主面に形成された第1導電型のソース領域と、
前記一主面に形成された第1導電型のドレイン領域と、
前記一主面の上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、
前記ゲート電極の下部に又は前記ゲート電極の下部から外れて位置する一端と前記一主面から前記半導体基板の方向に前記一端から離れた角部とを有するSTIと、
前記一端の近傍に設けられるとともに前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に発生する電界を緩和させる電界緩和部と、
を含み、
前記電界緩和部は、断面L字型の形状の部分を有し、前記電界緩和部は、前記STIに埋め込まれた角部を含み、前記電界緩和部は、前記STIの外に位置する部分を有
し、
前記ゲート電極はさらに前記ゲート電極の両側に形成されたサイドウォールを有し、
前記一端が前記ドレイン領域の側の前記サイドウォールの下部に配置された、
半導体装置。
【請求項2】
前記電界緩和部の前記角部と前記STIの前記角部とは、ずらした位置に形成されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記STIは前記ドレイン領域と接する位置に他端を有する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極の下部から前記ドレイン領域までの間に前記一主面の面内方向に形成された第1導電型のドリフト層を更に含む
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板内に形成された第2導電型の第1の領域と、
前記半導体基板内に形成されるとともに不純物濃度が前記ドリフト層より低くされた第1導電型の第2の領域と、
を含み、
前記第1の領域と前記第2の領域との界面が前記ゲート電極の下部に位置し、
前記第1の領域は、前記ソース領域を前記第2の領域から隔てており、
前記第2の領域は、前記第1の領域を前記ドレイン領域から隔てている、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ドリフト層は、前記一主面からの距離を異ならせて形成された第1導電型の複数の拡散層を含む
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記電界緩和部はポリシリコンで形成されている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記STIの前記一端は、前記ゲート電極の下部から外れて位置する、
請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、例えばLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor:横方向拡散型MOS)トランジスタ構造の高耐圧素子を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LDMOSトランジスタ構造とは、ドレイン近傍の不純物を横方向に拡散させた構造をいい、主としてドレインとゲートとの間の電界強度の緩和を目的とした構造である。LDMOSトランジスタについては、従来、トランジスタの耐圧、オン/オフ抵抗、ESD(ElectroStatic Dicharge)耐圧等の観点から種々検討がなされている。
【0003】
LDMOSトランジスタを有する半導体装置に関する従来技術として、例えば特許文献1には、半導体基板の上部に形成されたN型のドリフト拡散領域と、半導体基板の上部に形成されたP型のボディ拡散領域と、ボディ拡散領域の上部に形成されたN型のソース拡散領域と、ドリフト拡散領域の上部に形成されたトレンチ内に埋め込まれ、ボディ拡散領域とは離間した位置に形成された絶縁膜と、ドリフト拡散領域の上部に形成され、絶縁膜から見てソース拡散領域と逆の方向に隣接するN型のドレイン拡散領域と、ゲート絶縁膜を間に挟んだ状態で、ボディ拡散領域上からドリフト拡散領域上を越えて絶縁膜上にまで形成されたゲート電極とを備え、ドリフト拡散領域は、基板内部領域と、基板内部領域上でかつゲート電極の下に形成され、基板内部領域よりも高濃度のN型不純物を含む表面領域とを有する半導体装置が開示されている。特許文献1では、上記構成により、LDMOSトランジスタにおいて、耐圧性能の維持と低オン抵抗化との両立が可能となるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、半導体基板のうちのチャネルとなる領域とN型のドレインとの間に配置されたN型のドリフト領域と、ドリフト領域上に配置されたフィールド酸化膜と、半導体基板のうちのドリフト領域下に配置されたP型の第1不純物拡散層と、を備え、ドリフト領域は、N型の第1ドリフト層と、第1ドリフト層上に配置されて該第1ドリフト層よりもN型の不純物濃度が高い第2ドリフト層とを有することを特徴とする電界効果トランジスタが開示されている。特許文献2では、上記構成により、電界効果トランジスタにおいて、オフ状態のドレイン耐圧と、オン状態のドレイン耐圧をそれぞれ向上できるとしている。
【0005】
さらに、特許文献3には、半導体層を有した基板と、半導体層の表層部に形成されたN型のドレインドリフト領域と、ドレインドリフト領域内に形成されたトレンチと、トレンチの内壁面に形成されたトレンチ絶縁膜と、トレンチ絶縁膜を介してトレンチ内に配置されたドープトPoly-Siと、半導体層の表層部において、ドレインドリフト領域と接するように形成されたP型のチャネル領域と、チャネル領域の表層部に形成されたN型のソース領域と、ドレインドリフト領域を挟んでソース領域と反対側において、半導体層の表層部に形成されたN型のドレイン領域と、チャネル領域の表面に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の表面に形成されていると共に、ドープトPoly-Siに連結されたゲート電極と、ソース領域に接続されたソース電極と、ドレイン領域に接続されたドレイン電極とを備えてなることを特徴とする半導体装置が開示されている。特許文献3によれば、上記構成により、LDMOSトランジスタを備えた半導体装置においてESD耐量を確保できるとしている。
【0006】
図9を参照して、LDMOSトランジスタの構造についてより詳細に説明する。
図9に示す比較例に係る半導体装置70はLDMOSトランジスタの一例であり、基板72上に形成されたP層74、N-層76、ソース領域78、ドレイン領域80、ゲート酸化膜86、ゲート電極88、STI(Shallow Trench Isolation)部94、およびドリフト層98を含んで構成されている。
【0007】
半導体装置70では、
図9に示すように、STI部94によってドレイン電流Idの流れる経路が長くされている。また、半導体装置70ではドレイン耐圧とオン抵抗とのトレードオフ特性(一般に、ドレイン耐圧を上げようとするとオン抵抗は下げなければならない)を改善するための3層のドリフト層を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-187853号公報
【文献】国際公開第2014/061254号
【文献】特開2008-182106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記比較例に係る半導体装置70には、以下のような問題がある。すなわち、半導体装置70では、ドレイン端子84にバイアス電圧(例えば、18V程度)を印加し、ゲート端子90にバイアス(例えば1.8程度)を印加するとソース-ドレイン間にドレイン電流Idが流れる。そして、ドレイン電流Idの経路上に発生する電界によって微小リーク電流が発生し、この微小リーク電流によって欠陥や衝突イオン化率が大きくなる。
【0010】
すなわち、ゲート酸化膜86にかかる垂直電界により微小リーク電流がゲート酸化膜86中を流れ、その結果欠陥を生じる場合がある。時間の経過と伴に欠陥の数が増加し、さらにその欠陥が連続することによってリークパスを形成しゲート電極88と基板72との間で電流が流れ放題になり、破壊する可能性がある。これを改善するためにはゲート酸化膜86の膜厚を厚くすればよいが、ゲート電極88に流れる電流値とのトレードオフとなってしまう。
【0011】
また、半導体装置70では、STI部94の端部において電界集中が発生しやすいという問題がある。すなわち、半導体装置70では、STI部94の端部において電界集中点E1、E2が発生する可能性が大きい。電界集中点E1、あるいはE2が発生するとその部分で衝突イオン化率が大きくなり、その結果耐圧の低下が発生する可能性がある。
【0012】
この点、特許文献1から特許文献3に係る半導体装置は上記のようなゲート酸化膜にかかる垂直電界を問題としたものではない。
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、局所的な電界の集中が軽減されるとともに、微小リーク電流による欠陥の発生が抑制され、耐圧を向上させることが可能な高耐圧半導体素子構造を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の一主面内に形成された第1導電型のソース領域と、前記一主面内に形成されるとともに前記ソース領域と離間し、前記半導体基板に形成された溝部の一端と接する前記第1導電型のドレイン領域と、下部に前記溝部の他端が位置し、前記半導体基板の前記一主面上に絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、前記ゲート電極の下部から前記ドレイン領域までの間の前記一主面内に形成され、前記溝部によって縦断された前記第1導電型のドリフト層と、前記溝部の他端の近傍に設けられるとともに前記ソース領域とドレイン領域との間に発生する電界を緩和させる電界緩和部と、前記ソース領域を含み、前記一主面内に形成された前記第1導電型とは異なる第2導電型の第1の領域と、前記ドレイン領域を含み、前記一主面内に形成されるとともに不純物濃度が前記ドリフト層より低い前記第1導電型の第2の領域と、を含み、前記第1の領域と前記第2の領域との界面が前記ゲート電極の下部に位置するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、局所的な電界の集中が軽減されるとともに、微小リーク電流による欠陥の発生が抑制され、耐圧を向上させることが可能な高耐圧半導体素子構造を備えた半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の作用を説明する断面図である。
【
図3】第2の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図4】第3の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図5】第4の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】第4の実施の形態に係る半導体装置の構成の詳細を説明する断面図である。
【
図7】(a)は第4の実施の形態に係る半導体装置の電界分布の一例、(b)は比較例に係る半導体装置の電界分布を示す図、(c)は第4の実施の形態に係る半導体装置と比較例に係る半導体装置との電流値の比較例である。
【
図8】(a)は第5の実施の形態に係る半導体装置の断面図、(b)は第5の実施の形態に係る半導体装置の電界分布の一例を示す図、(c)は比較例に係る半導体装置の電界分布を示す図である。
【
図9】比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1および
図2を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10について説明する。
図1に示すように、半導体装置10は半導体の基板12、基板12の一方の主面50内に形成されたP拡散層14(P型の不純物が拡散された領域)、N-拡散層16(N型の不純物が比較的低濃度で拡散された領域)、N型の不純物が拡散されたソース領域18、N型の不純物が拡散されたドレイン領域20、ドリフト層38、およびSTI部34を含んで構成されている。P型拡散層14とN-拡散層16との界面によりPN接合PNが形成されている。
【0019】
また、半導体装置10は、主面50上に形成されたゲート酸化膜26、ゲート酸化膜26上に形成されたゲート電極28、ゲート酸化膜26およびゲート電極28の両側に形成されたサイドウォール32-1、32-2を備えている。すなわち、半導体装置10は、いわゆるLDMOSトランジスタとして構成されている。ソース領域18、ゲート電極28、およびドレイン領域20には各々ソース端子22、ゲート端子30、およびドレイン端子24が接続されている。
【0020】
MOSトランジスタでは、ドレイン耐圧の改善の一手段として、ゲート下の拡散領域の長さを長くする手段が用いられる場合がある。しかしながら、その結果オン抵抗が増加してしまう。この点の改善を図ったのがゲート下にSTI部を備えたLDMOSトランジスタである。LDMOSトランジスタでは、耐圧特性とオン抵抗特性とのトレードオフを改善するために、ゲートの下部の拡散領域にSTI部34を配置する。拡散領域の中のSTI部34はゲート端の下部のポテンシャルと電界のピークを減少させるので、短い拡散領域で耐圧が維持される。
【0021】
また、半導体装置10では、駆動力向上と電界緩和のトレードオフの最適化のために、さらに深さが異なる3段階の不純物注入(インプランテーション)を行ってドリフト層38を形成し、不純物濃度に勾配を設けている。つまり、半導体装置10は、ドレイン耐圧(故障電圧)を向上させるためにSTI部34により絶縁層を深く形成し、平面方向の距離を拡大することなくドレイン電流Idが流れる経路が長くなるように構成されている。
【0022】
STI部34は、溝部に対して主面50から基板12の方向に絶縁物(例えば、酸化膜)を充填して構成されており、上述したように、平面方向の距離を広げずに電流が流れる経路を長くする機能を有している。ドリフト層38は、N型不純物が3回注入されて形成された3層の拡散層であり、ドレイン耐圧とオン抵抗とのトレードオフ特性(一般に、ドレイン耐圧を上げようとするとオン抵抗は下げなければならない)を改善する機能を有している。本実施の形態においてドリフト層38の形成に際し3回の不純物注入を行うのは、ドリフト層38に濃度勾配を設けるためである。濃度勾配の形態は特に限定されず、ドレイン電流の経路長等を勘案して最適な濃度勾配を設定すればよいが、本実施の形態では少なくとも最も基板12に近い側の不純物注入層の濃度を薄くする。また、ドリフト層38を構成する拡散層の数も3に限定されず少なくとも1つあればよく、また緩和する電界の強度等を勘案してドリフト層38を設けなくともよい。
【0023】
図1に示すように、半導体装置10はさらに、ゲート電極28に接続されゲート酸化膜26を貫通してSTI部34の内部まで延伸して形成されたT字型の電極である拡張ゲート電極42を備えている。拡張ゲート電極42を形成する材料に特に限定はないが、本実施の形態ではポリシリコン(多結晶シリコン)を用いている。
【0024】
図2を参照して拡張ゲート電極42の作用について説明する。
【0025】
図9に示すように、比較例に係る半導体装置70では、STI部94の端部(エッジ)における電界集中点がE1、E2の2箇所であった。一般に、電界中に一定の角度をもった端部(以下、「角部」)が存在するとそこに電界が集中しやすく、また角部の角度が小さいほど(鋭い鋭角であるほど)電界が集中しやすい。つまり、半導体装置70では、電界集中点E2よりも電界集中点E1の方により電界が集中する。一方、ソース領域78からドレイン領域80に向かう方向の電界が一定である場合、該電界中の存在する角部の数によって各角部の電界のピークが異なってくる。換言すると、電界中に存在する角部の数が多いと電界の集中が緩和される。
【0026】
拡張ゲート電極42は、上記現象を勘案して電界中の角部を増やし、各角部の電界のピーク値を減少させるために拡張ゲート電極42を設けている。
図2に示すように、拡張ゲート電極42は角部S1、S2、S3を備えているので、角部S1、S2、S3に対応するSTI部34の側面に電界集中点が発生する。そのため、半導体装置10では、
図2に示すように、半導体装置70における2つの電界集中点E1、E2加えさらに3つの電界集中点が発生し、合計電界集中点が5つ形成される。その結果電界集中点が増えるので、各電界集中点におけるピーク電位が低くなり、耐圧が向上する。
【0027】
換言すれば、半導体装置10では、STI部34にT字型の拡張ゲート電極42を埋め込むことによって電界集中の発生箇所を分散させ、電界緩和を行っている。この電界緩和は、いわゆるフィールドプレート効果を用いた電界緩和と考えることができ、この電界緩和により微小リーク電流のトラップや衝突イオン化率の増加を防いでいると考えられる。なお、拡張ゲート電極42の角部S1、S2、S3の位置は、電界集中点E1、E2と重ならない位置に電界集中点が発生するように決めることが望ましい。
【0028】
[第2の実施の形態]
図3を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10Aについて説明する。半導体装置10Aは、上記実施の形態に係る半導体装置10において拡張ゲート電極42に相当する部分の構成を変えた形態である。従って、半導体装置10と同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、半導体装置10AはSTI部34に埋め込まれた第2ゲート電極44を備えている。本実施の形態に係る第2ゲート電極44は、一例としてポリシリコンで形成され、ゲート端子30-2に接続されている。すなわち、半導体装置10Aはゲート電極28に接続されたゲート端子30-1と、上記ゲート端子30-2の2つのゲート端子を備えている。
【0030】
以下に、第2ゲート電極44の作用について説明する。
【0031】
まず、第2ゲート電極44には角部S4、S5が存在する。そのため、半導体装置10と同様にフィールドプレート効果により電界集中を分散させ衝突イオン化率を小さくすることができる。すなわち、角部S4、S5に対応するSTI部34の周囲面に2つの電界集中点が発生するので、半導体装置70の電界集中点E1、E2と合計4個の電界集中点が発生し、その結果各電界集中点の電位のピーク値が抑制され、耐圧が向上する。なお、上述したように、第2ゲート電極44の角部S4、S5の位置は、STI部34の角部(電界集中点E1、E2が発生する角部)とずらした位置とすることが望ましい。なお、半導体装置10Aを実際の回路に用いる場合は、ゲート端子30-1と30-2とを半導体装置10Aの外部で接続して用いる。その際、ゲート電極の面積が増大するので、ゲート電流が増加し、その結果ドレイン電流Idが増加するという効果も奏する。
【0032】
なお、上記実施の形態ではポリシリコンで形成したT字型の拡張ゲート電極42の形態、本実施の形態ではポリシリコンで形成したL字型の第2ゲート電極44の形態を例示して説明したが、STI部34内に埋め込むポリシリコンの形状はこれに限られず、電界集中箇所の発生箇所、発生数等を勘案して適宜な形状を選択してよい。
【0033】
[第3の実施の形態]
図4を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10Bについて説明する。半導体装置10Bは、上記実施の形態に係る半導体装置10において拡張ゲート電極42に相当する部分の構成を変えた形態である。従って、半導体装置10と同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、本実施の形態に係る半導体装置10Bでは、STI部34の一方の端部Tがサイドウォール32-2の下部に位置している。すなわち、半導体装置70(
図9参照)に対し、STI部34およびドリフト層38の位置をドレイン領域20側(図面正面視右方側)にずらしている。上述したように、STI部34の端部Tには電界が集中しやすい。しかしながら、鋭角をなすSTI部34の端部Tをゲート酸化膜26の位置からはずし、端部Tの上部を絶縁物で覆うことによってこの電界集中が緩和される。本実施の形態は、この現象に着目した形態である。
【0035】
すなわち、半導体装置10Bでは、STI部34の端部Tがサイドウォール32-2で覆われており、端部Tの位置はゲート酸化膜26の下部から外れた位置とされている。本実施の形態に係るサイドウォール32-1、32-2は、一例として窒化膜で形成されている。その結果、半導体装置10Bでは、微小リーク電流による欠陥の発生が抑制される。ただし、ゲート酸化膜26をPN接合PNから大きく離すと電界集中が発生し、衝突イオン化率が高くなってしまう。そのため、PN接合PNの位置は、少なくともゲート酸化膜26の下部である必要がある。
【0036】
[第4の実施の形態]
図5から
図7を参照して、本実施の形態に係る半導体装置10Cについて説明する。半導体装置10Cは、半導体装置70(
図9参照)においてゲート酸化膜26の形状を変えた形態である。従って、半導体装置10と同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
図5に示すように、半導体装置10CではSTI部34がゲート電極28の下部に配置され、さらに、STI部34の一方の端部Tの位置およびその近傍の位置において、ゲート酸化膜26の膜厚が厚くされた厚膜部36を備えている。
【0038】
比較例に係る半導体装置70(
図9参照)でもSTI部94の上層部分では膜厚が厚くなっている。しかしながら、厚膜部分がSTI部94の上層部分のみであるため、インパクトイオン化が主要因で耐圧が低下する場合、縦方向電界を十分緩和できず、耐圧が向上しない可能性がある。本実施の形態は、この点の改善を図り、駆動力(電流値)を維持しながら耐圧を向上させることを目的としている。すなわち、本実施の形態は、LDMOSトランジスタ(高耐圧MOS構造を備えたトランジスタ)において、インパクトイオン化発生位置の直上のゲート酸化膜厚を部分的に厚膜化する事により縦方向電界を緩和し、さらに厚膜の幅と厚みを最適化する事で、耐圧と駆動力のトレードオフを改善することを目的としている。これは、インパクトイオン化の発生位置が、半導体装置の耐圧を決める直接の要因となっていることを勘案し、この発生位置に対策を施すことによって、効率的に耐圧の向上を図ったものである。
【0039】
図5に示すように、半導体装置10Cでは厚膜部36を設け、ゲート電極28側のSTI部34の端部Tの上部のゲート酸化膜26の膜厚を厚くしたため、この厚膜部36のゲート酸化膜26にかかる垂直電界が小さくなる。つまり、ソース-ドレイン間(ソース領域18とドレイン領域20との間)を流れるドレイン電流Idに対する垂直電界が小さくなっている。その結果、半導体装置10Cでは微小リーク電流の発生が抑えられ耐圧を向上させることができる。さらに、後述するように、ドレイン電流Idの電流値に関しても、厚膜部36の水平方向の長さが短いため、低下することが抑制されている。すなわち、ドレイン電流Idの電流値を下げずに耐圧を向上させることが可能となっている。
【0040】
図6を参照して、半導体装置10Cの構成についてより詳細に説明する。
図6は
図5に示す半導体装置10Cの要部を抜き出して示した図である。
図6に示すように、本実施の形態に係る厚膜部36は、横方向の幅がW、縦方向の高さがHの略矩形形状をなしている。そして、幅Wを大きくすれば、あるいは高さHを高くすれば耐圧は向上する。しかしながら、ゲート電流が減少するので駆動力が低下する。すなわち、厚膜部36の幅W、高さHは、駆動力と耐圧のトレードオフを考慮しながら決定することが望ましい。
【0041】
次に、
図7を参照して、半導体装置10Cが備える厚膜部36の効果についてのシミュレーション結果について説明する。
図7(a)は、本実施の形態に係る厚膜部36を備えた半導体装置10CのSTI部34、PN接合PNを含む領域の電界分布のシミュレーション結果であり、電界Eのグラフを併せて示している。
図7(b)は、厚膜部36を備えていない比較例に係る半導体装置70の同様のシミュレーション結果を示している。半導体装置70(
図7(b))のゲート酸化膜86の厚さは約440nmであり、半導体装置10C(
図5)では、厚さ440nmのゲート酸化膜26に、約3.2nmの厚さ(差分)の厚膜部36が形成されている。つまり、厚膜部36の高さHはH=約443.2nmである。なお、ここで示す厚膜部36のサイズは一例であって、これに限定されるものではない。
【0042】
図7(a)と(b)とを比較して明らかなように、厚膜部36の効果によって電界が緩和されている(色の濃い部分が減少している)ことがわかる。また、電界Eの曲線を比較しても、
図7(b)に示す半導体装置70では基板側から端部T近傍まで単調に増加しているのに対し、
図7(a)に示す半導体装置10Cでは、電界Eが端部Tよりかなり下において頭打ちになっており、電界Eのピークも減少していることがわかる。
【0043】
一方、
図7(c)は、半導体装置10Cのドレイン電流Id(曲線C1)と、半導体装置70のドレイン電流Idの(曲線C2)とを比較して示すシミュレーション結果である。半導体装置10Cは厚膜部36を備えているにもかかわらず、半導体装置70と比較して遜色のないドレイン電流Idが流せることがわかる。今回のシミュレーションでは、半導体装置10Cのドレイン電流Idの方が、半導体装置70のドレイン電流よりむしろ大きいという結果になっており、少なくとも半導体装置10Cの駆動能力は、半導体装置70の駆動能力と比較して下回ることはないといえる。
【0044】
以上のように、本実施の形態によれば、ゲート酸化膜26にかかる垂直電界を緩和させたので、ゲート酸化膜26における微小リーク電流の発生を減らすことができ、その結果経時的絶縁膜破壊の発生を抑えることが可能となった。なお、経時的絶縁膜破壊とは、微小リーク電流が流れることによってゲート酸化膜26の内部に欠陥が発生し、さらにその欠陥が連続してリークパスを形成し破壊に至るという、上述した現象をいう。また、耐圧を決める直接の要因となるインパクトイオン化の発生位置の直上のゲート酸化膜26の膜厚を厚くすることにより、効率的に垂直方向電界を緩和させることが可能となり、耐圧を向上させることがより容易となった。
【0045】
[第5の実施の形態]
図8を参照して、本実施の形態にかかる半導体装置10Dについて説明する。半導体装置10Dは、上記実施の形態に係る半導体装置10Cにおけるドリフト層38をドリフト層38Aに変えた形態である。従って、半導体装置10Cと同様の構成には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図8(a)は半導体装置10Dの構成の一例を示し、
図8(b)は本実施の形態に係る半導体装置10Dにおける電界分布をシミュレーションした結果、
図8(c)は比較のために半導体装置10Cにおける電界分布をシミュレーションした結果を示している。
【0046】
図8(a)に示すように、半導体装置10Dでは、STI部34の端部Tの近傍にP型注入領域40を形成している。P型注入領域40は、N型のドリフト層38の一部にP型不純物をイオン注入して形成した領域であり、P型不純物としては例えばボロンを用いることができる。半導体装置10Dでは、3層のドリフト層38の一番表面に近い注入層にP型注入領域40を形成する形態を例示しているが、P型注入領域40を形成する位置は電界集中点の位置を考慮して決めればよく、それより下側の注入層に形成してもよい。また、P型注入領域40に注入するP型の不純物の濃度は注入されるドリフト層38の注入層のN型不純物の濃度より薄くする。つまり、P型注入領域40はN型を維持するようにする。
【0047】
P型注入領域40は、ゲート酸化膜26にかかる垂直電界をより緩和する作用を奏する。つまり、P型注入領域40は、ドリフト層38においてSTI部34の端部T近傍のN型濃度を下げて抵抗を大きくし、電流を流れにくくする作用を奏する。換言すれば、ゲート酸化膜26の直下の電位を下げることによって半導体装置10Cよりもさらにゲート酸化膜26にかかる垂直電界を緩和することができる。そのため、半導体装置10Dによれば微小リーク電流の発生をより効果的に抑えることが可能となるので、経時的絶縁膜破壊の発生がより抑制され、耐圧がより向上する。
【0048】
図8(b)および(c)に示すシミュレーション結果を比較して明らかなように、半導体装置10C(
図8(c))の電界分布と比較して、半導体装置10D(
図8(b))の電界分布はより緩和されている。
【0049】
なお、上記各実施の形態に係る半導体装置(半導体装置10、10A~10D)を個別に説明したが、各半導体装置はゲート酸化膜26にかかる垂直電界の緩和という目的を共通にしており、半導体装置の各々の構成を組み合わせた形態としてもよい。例えば、半導体装置10Dでは、厚膜部36を備えた半導体装置10C(
図5)にP型注入領域40を形成する形態を例示して説明したが、これに限られず、半導体装置10、10A、10Bの各々にP型注入領域40を形成した形態としてもよい。
【0050】
また、上記各実施の形態では3層の注入層を有するドリフト層38を例示して説明したが、これは電界緩和をより効率的に行うことを意図したものであり、電界緩和の程度等によっては、2層または1層のドリフト層を有する形態、あるいはドリフト層を備えない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 半導体装置
12 基板
14 P拡散層
16 N-拡散層
18 ソース領域
20 ドレイン領域
22 ソース端子
24 ドレイン端子
26 ゲート酸化膜
28 ゲート電極
30、30-1、30-2 ゲート端子
32-1、32-2 サイドウォール
34 STI部
36 厚膜部
38、38A ドリフト層
40 P型注入領域
42 拡張ゲート電極
44 第2ゲート電極
50 主面
70 半導体装置
72 基板
74 P層
76 N-層
78 ソース領域
80 ドレイン領域
82 ソース端子
84 ドレイン端子
86 ゲート酸化膜
88 ゲート電極
90 ゲート端子
94 STI部
98 ドリフト層
E1、E2 電界集中点
PN PN接合
S1~S3 角部
T 端部