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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/62 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B65D75/62 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020111832
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010993
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【弁理士】
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】小平 健太
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180829(JP,A)
【文献】意匠登録第1306468(JP,S)
【文献】特開2013-180827(JP,A)
【文献】特開2007-290714(JP,A)
【文献】実開平01-116153(JP,U)
【文献】実開昭61-026069(JP,U)
【文献】実開昭49-105516(JP,U)
【文献】特開平11-100065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/00-33/38
B65D 75/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容する収容空間を有する包装体であって、
シート状の部材により形成され、第1方向に沿って延びる一対の辺を有する矩形状の第1面部と、
シート状の部材により形成され、前記第1面部との間に前記収容空間を形成するように前記第1面部に重なる矩形状の第2面部と
を備え、
前記第1面部及び前記第2面部の周縁部であって、前記第1方向に沿って延び前記一対の辺のうち一方の辺を含む周縁部が、定の第1幅でシールされていることにより、第1シール部が形成されており、前記第1面部及び前記第2面部の周縁部であって、前記第1方向に沿って延び、前記一対の辺のうち他方の辺を含む周縁部が、一定の第2幅でシールされていることにより、第2シール部形成されており、前記第1は、前記第2よりも大きく、
前記第1シール部は、スリットを有するとともに、前記スリットと、前記スリットの両端を結ぶ線分である基線とにより囲繞される摘み部を有し、
前記摘み部は、前記基線から立ち上がり、前記第1面部及び前記第2面部に対し傾斜するように起立可能であり、
前記スリットは、前記基線よりも前記収容空間に近い位置に配置され、
前記摘み部を起立させた後、前記摘み部を前記収容空間と反対側の前記第1シール部の外周縁に向かって引っ張ることにより、前記摘み部と、前記基線と当該外周縁とを結ぶ部位とが一体的に除去され、当該外周縁に達するノッチが形成されるように構成されている、
包装体。
【請求項2】
前記スリットは、前記基線側から前記収容空間側に向かって突出する凸形状を有する、
請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記第1シール部は、前記凸形状の頂点から前記収容空間に向かって延びるが、前記収容空間に達しない補助スリットをさらに有する、
請求項2に記載の包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、子供が袋の収納物に対して不用意にアクセスすることを困難にする、チャイルドレジスタンス機能を発揮する樹脂袋を開示する。樹脂袋は、前後の外シートを備えた袋本体と、袋本体の内部に配置される隠し袋とを備える。収納物は隠し袋の内部開口から出し入れすることができるが、袋本体から内部開口までの間隔が、子供の親指では届かないようになっている。これにより、子供にとっては隠し袋の内部開口を開封することが困難となり、また、子供が隠し袋の存在自体に気づきにくくなり、収納物を見つけにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-048650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の樹脂袋では、内袋を設ける分、袋全体の構造が複雑になり、材料コストも増大する。
【0005】
本発明は、簡易な構成でありながら、不用意に開封されにくい包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る包装体は、物品を収容する収容空間を有する包装体であって、第1面部と、第2面部とを備える。前記第1面部は、シート状の部材により形成される。第2面部は、シート状の部材により形成され、前記第1面部との間に前記収容空間を形成するように前記第1面部に重なる。前記第1面部及び前記第2面部における第1方向に沿って延びる周縁部がシールされていることにより、第1シール部が形成されている。前記第1シール部は、スリットを有するとともに、前記スリットと、前記スリットの両端を結ぶ線分である基線とにより囲繞される摘み部を有する。前記摘み部は、前記基線から立ち上がり、前記第1面部及び前記第2面部に対し傾斜するように起立可能である。前記スリットは、前記基線よりも前記収容空間に近い位置に配置される。包装体は、前記摘み部を起立させた後、前記摘み部を前記収容空間と反対側の前記第1シール部の外周縁に向かって引っ張ることにより、前記摘み部と、前記基線と当該外周縁とを結ぶ部位とが一体的に除去され、当該外周縁に達するノッチが形成されるように構成されている。
【0007】
上記包装体において、前記スリットは、前記基線側から前記収容空間側に向かって突出する凸形状を有してもよい。
【0008】
上記包装体において、前記第1シール部は、前記凸形状の頂点から前記収容空間に向かって延びるが、前記収容空間に達しない補助スリットをさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、包装体内に収容される内容物を誤飲または誤用するおそれのある人、例えば幼児が包装体を不用意に開封することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る包装体の正面図。
図2】一実施形態に係る包装体の背面図。
図3】一実施形態に係る包装体の展開図。
図4A】スリットの一例を示す図。
図4B】スリットの別の一例を示す図。
図4C】スリットのさらに別の一例を示す図。
図4D】スリットのさらに別の一例を示す図。
図5A】物品が収容された様子を示す図。
図5B】別の物品が収容された様子を示す図。
図5C】さらに別の物品が収容された様子を示す図。
図6】シート状部材の拡大断面を示す断面概略図。
図7A】包装体の開封方法を説明する図。
図7B】包装体の開封方法を説明する図。
図7C】包装体の開封方法を説明する図。
図8】包装体の製造機械(包装機械)の全体構成を示す概略図。
図9A】エンドシール部の構成を示す概略側面図。
図9B】シールバーの構成を示す斜視図。
図10A】変形例に係る包装体の図。
図10B】別の変形例に係る包装体の図。
図10C】さらに別の変形例に係る包装体の図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る包装体について説明する。
【0012】
<1.包装体の構成>
図1~3は、それぞれ本実施形態に係る包装体1の正面図、背面図及び展開図である。包装体1は、シート状の部材10から形成され、周縁が閉塞された収容空間Sを有する。収容空間Sには、物品5が収容されている。
【0013】
物品5は、特にその種類は限定されず、例えば栄養機能食品及び栄養補助食品等を含む食品であってもよく、例えば薬剤、洗剤、化粧品及び工業製品等を含む非食品であってもよい。図1~3には、包装体1に収容される物品5の一例として厚みを有する円盤型の薬剤が示されている。なお、図では、説明の便宜上、包装体1の形状は物品5の厚みを無視して示されることがある。収容空間Sに収容される物品5は複数であってもよく、粉体及び粒体等の集合体であってもよい。また物品5は固形物に限定されず、液状物、ゲル状物及びこれらの混合物であってもよい。包装体1は、特に幼児により物品5の誤用や誤飲が懸念される場合に好適に使用される。
【0014】
包装体1は、第1面部11と、第2面部12とを備える。第1面部11と第2面部12とは合同な矩形状を有し、第2面部12が第1面部11との間に収容空間Sを形成するように互いに重ね合わされている。本実施形態では、第1面部11が包装体1の商品としての正面を構成し、第2面部12が包装体1の商品としての背面を構成する。しかし、第1面部11が包装体1の商品としての背面を構成し、第2面部12が包装体1の商品としての正面を構成してもよい。以下では、第1面部11及び第2面部12の短辺方向を第1方向、長辺方向を第2方向とそれぞれ称する。第1方向と第2方向とは直交する。
【0015】
図1に第1方向を矢印A1で、第2方向を矢印A2でそれぞれ示す。第1面部11の第2方向に延びる周縁を長辺110,110、第1方向に延びる周縁を短辺111,111とそれぞれ称する。長辺110,110は、シート状の部材10の折り目によって形成されており、第2面部12に連続する。図1の上側に位置する短辺111を含む第1面部11の周縁部は、図2の上側に位置する短辺121を含む第2面部12の周縁部とともに一定の幅でシールされ、網掛け部分で表される第1シール部20を形成する。同様に、図1の下側に位置する短辺111を含む第1面部11の周縁部は、図2の下側に位置する短辺121を含む第2面部12の周縁部とともに一定の幅でシールされ、網掛け部分で表される第2シール部21を形成する。本実施形態では、第1シール部20は、第2シール部21と比較して第2方向に長く形成される。
【0016】
図2に示すように、第2面部12の第2方向に延びる周縁を長辺120,120、第1方向に延びる周縁を短辺121,121とそれぞれ称する。長辺120,120は、シート状の部材10の折り目によって形成されており、第1面部11に連続する。すなわち、長辺110,110と長辺120,120とは共通である。図2の上側に位置する短辺121を含む第2面部12の周縁部は、図1の上側に位置する短辺111を含む第1面部11の周縁部とともに、第1シール部20を形成する。同様に、図2の下側に位置する短辺121を含む第2面部12の周縁部は、図1の下側に位置する短辺111を含む第1面部11の周縁とともに第2シール部21を形成する。
【0017】
第2面部12は、短辺方向の中央付近に形成される第3シール部22(網掛け部分で表される)を含む。第3シール部22は、後述するように、シート状の部材10の両端100,100(図3参照)を含む同じ面の両端部を向かい合わせ、その状態で両端部を一定の幅でシールすることにより形成される。第3シール部22は、両端部において第1シール部20及び第2シール部21と重複していてもよい。
【0018】
第1シール部20、第2シール部21及び第3シール部22は、閉塞された収容空間Sを画定する。第1シール部20、第2シール部21及び第3シール部22は、手で容易に剥離できない程度の強度でシート状の部材10が接着されていれば、接着剤による接着で形成されてもよく、超音波シールを含むヒートシールで形成されてもよい。本実施形態では、第1シール部20、第2シール部21及び第3シール部22は、ヒートシールにより形成される。第1シール部20、第2シール部21及び第3シール部22の外周縁には、開封の端となるものが形成されていないため、これらのシール部を外周縁から手で引き裂き、収容空間Sにアクセスすることは困難である。しかしながら、後述する包装体1の開封方法によれば、物品5の対象となる人、例えば大人は、包装体1を容易に開封することができる。
【0019】
第1シール部20は、第1シール部20を厚み方向に貫通するスリット202を有する。スリット202は、第1シール部20の基線201よりも収容空間Sに近い位置に配置され、第1シール部20の周縁には達していない。スリット202は、基線201の両端から収容空間Sに向かって突出する凸形状を有することが好ましい。本実施形態に係るスリット202は、第1方向に沿って延びる基線201の第1端201a及び第2端201bから収容空間Sに向かって突出する「V」字状を有し、頂点202aにおいて収容空間Sに最も接近する。なお、基線201は、実際には現れていない仮想的な線分であってもよく、図1には破線で示されている。
【0020】
スリット202は、第1シール部20を厚み方向に貫通するように部分的に切り欠いた切り欠き穴であってもよく、第1シール部20を厚み方向に貫通する幅を持たない線状の切り込みであってもよい。本実施形態では、スリット202は幅を持たない「V」字状の切り込みであり、切り込みによりスリット202を形成することは、シート状の部材10の廃棄物が出ない点で優れている。
【0021】
第1シール部20は、基線201及びスリット202に囲繞される摘み部200をさらに有する。摘み部200は、基線201から立ち上がり、第1面部11及び第2面部12の他の部分に対して傾斜するように起立可能である。本実施形態に係る摘み部200は、基線201を底辺とする三角形状を有する。
【0022】
スリット202の形状は、基線201から起立可能な摘み部200が形成されるものであれば、特に限定されない。スリット202は、例えば図4Aに示すように、収容空間Sに向かって突出する「U」字形状を有してもよい。また、スリット202は、例えば図4Bに示すように、収容空間Sに向かって突出する略矩形状であってもよい。
【0023】
第1シール部20は、補助スリット203をさらに有してもよい。補助スリット203は、スリット202と同様に、第1シール部20を厚み方向に貫通するように部分的に切り欠いた切り欠き穴であってもよく、第1シール部20を厚み方向に貫通する幅を持たない線状の切り込みであってもよい。補助スリット203は、スリット202の凸形状の頂点202aから収容空間Sに向かって延びるのであれば、その形状は特に限定されず、例えば第2方向に沿って延びる直線状であってもよい。ただし、補助スリット203は、収容空間Sには達していない。
【0024】
図4Cには、「U」字状のスリット202の頂点202aから収容空間Sに向かって延びる補助スリット203の一例が示されている。なお、スリット202の頂点202aが一意に定まらない場合は、補助スリット203は、例えば図4Dに示すように、スリット202の収容空間Sに最も接近する部分から延びていてもよい。
【0025】
基線201の長さL1(図2参照)は4mm以上、10mm以下であることが好ましく、5mm以上、7mm以下であることがより好ましい。長さL1が小さ過ぎると、後述する長さL2にもよるが、摘み部200を起立させることが困難となり得る。一方、長さL1が大き過ぎると、摘み部200を包装体1からちぎり取る際に大きな力が必要となり、摘み部200をちぎり取ることが困難となり得る。後述するように、摘み部200を起立させる動作及び摘み部200を包装体1からちぎり取る動作は、包装体1を開封するために行われる。従って、これらの動作は、大人にとって容易であるが、幼児にとっては困難であることが好ましい。
【0026】
基線201から摘み部200の先端までの長さL2(図2参照)は、3mm以上、8mm以下であることが好ましく、4mm以上、6mm以下であることがより好ましい。なお、長さL2は、基線201から摘み部200の先端に下ろした垂線の長さで定義される。長さL2が小さ過ぎると、摘み部200を起立させることが大人にとっても困難となり得る。一方、長さL2が大き過ぎると、摘み部200を起立させることが幼児にとっても容易となり得る。
【0027】
スリット202が頂点202aを有する場合、図5に示すように、第2方向に沿って延び、頂点202aを通過する直線C1が、収容空間Sを第1サブ空間S1と第2サブ空間S2とに二分するようにスリット202が配置されることが好ましい。ただし、第2サブ空間S2は、第1サブ空間S1よりも大きいものとする。つまり、第2サブ空間S2の第1方向の幅W2は、第1サブ空間S1の第1方向の幅W1よりも大きい。そして、物品5は、第2サブ空間S2内のみに収容可能であることが好ましい。
【0028】
より具体的には、物品5は、図5A~Cに示すように包装体1の外側から第2サブ空間S2側に片寄せられた状態において、第2サブ空間S2内で占める第1方向の最大長さW3が、幅W2以下となるように収容されることが好ましい。これにより、摘み部200を端緒として収容空間Sが開放されたときに、第2サブ空間S2内に物品5がとどまり易く、収容空間Sが開放されたはずみで物品5が外部に飛び出しにくくなる。なお、これは物品5が粉体又は粒体の集合体である場合(図5B参照)、及び物品5が液体物又はゲル状物である場合(図5C参照)にも当てはまる。
【0029】
なお、本実施形態では、長辺110又は長辺120から直線C1までの距離のうち、短い方が幅W1に該当し、長辺110又は長辺120から直線C1までの距離のうち、長い方が幅W2に該当する。長辺110及び長辺120を含む第1面部11及び第2面部12の少なくとも1つの周縁部が第2方向に沿ってシールされ、収容空間Sを画定している場合は、第2方向に沿った収容空間Sの周縁から直線C1までの距離のうち、短い方が幅W1に該当し、長い方が幅W2に該当する。
【0030】
シート状の部材10を構成する材料は、物品5を保持できる程度の強度を備え、後述する開封方法により包装体1が開封可能なものであれば、特に限定されない。シート状の部材10は、例えば表面層30、バリア層31及びヒートシール層32がこの順に積層されたフィルムから構成されてもよい。これらの層は、接着剤等を用いた公知の方法により積層することができる。図6は、このようなシート状の部材10の断面構成を示す概略図である。表面層30は、包装体1の最外層を構成する層であり、例えば合成樹脂フィルムから構成されてもよい。また、表面層30の裏面は、印刷面であってもよい。バリア層31は、例えばアルミニウム(Al)等の金属の蒸着膜から構成されてもよい。バリア層31は、水蒸気、酸素、及び光線等の透過量を減少させる。ヒートシール層32は、包装体1の最内層を構成する層であり、例えばポリエチレン等の熱によって溶融し、互いに溶着する材料から構成されていてもよい。
【0031】
なお、シート状の部材10の構成は図6に示す例に限定されず、例えばバリア層31が省略されてもよいし、さらに他の層を備えていてもよい。また、図6に示す各層30~32の厚みは、実際の寸法及び寸法比を必ずしも反映していない。
【0032】
<2.包装体の開封方法>
以下、図7を参照しつつ、本実施形態に係る包装体1の開封方法を説明する。なお、包装体1の開封に先立って、包装体1を振る、傾ける、及び外側から手でしごく等の動作により、物品5が予め第2サブ空間S2内に位置するようにしておくことが好ましい。
【0033】
まず、図7Aに示すように、摘み部200を基線201から立ち上げ、第1面部11及び第2面部12の残りの部分に対して傾斜するように起立させる。
【0034】
次に、起立した摘み部200を指で摘み、収容空間Sとは反対側の第1シール部20の外周縁に向かって引っ張り、包装体1からちぎり取るように力を加える。これにより基線201と第1シール部20の外周縁の一部とを含む部位が摘み部200と一体的に除去され、ノッチ200aが形成された第1シール部20が残る。ノッチ200aは、第1シール部20の外周縁に達する。
【0035】
なお、図4C図4Dに示すような補助スリット203が形成される場合は、摘み部200が除去された部分と補助スリット203とが合体したノッチ200aが形成される。補助スリット203が形成される場合、次の動作により第1面部11と第2面部12とが補助スリット203を起点として裂けやすくなり、思わぬ位置で第1面部11と第2面部12とが裂けることが抑制される。また、より収容空間Sに近い補助スリット203があることにより、次の動作に必要な力がより小さくなり、さらに容易に包装体1を開封することが可能になる。
【0036】
続いて、図7Cに示すように、一点鎖線で示すノッチ200aの両側部分をそれぞれ指で把持し、ノッチ200aを広げるように第1シール部20に力を加える。これにより、第1面部11と第2面部12とがともに引き裂かれ、収容空間Sが開放し、包装体1の外部と連通した状態となる。
【0037】
<3.包装体の製造方法>
以下、図8及び9を参照しつつ、物品5が収容された本実施形態に係る包装体1の製造方法を説明する。
【0038】
本実施形態の包装体1は、包装機械6を用いて物品5が収容された状態で製造される。図8は、包装機械6の全体構成を示す概略図である。包装機械6は、ベルトコンベア60と、軸部61と、製袋機62と、センターシール形成部63と、エンドシール形成部65と、シュートコンベア68とを備える。
【0039】
ベルトコンベア60は、図示しない物品供給装置から物品5を順次供給され、矢印A3の送り方向に物品5を一定の間隔を空けて搬送する。軸部61には、包装体1の材料となるシート状の部材10が巻かれたロール10aがセットされている。ロール10aは、物品5の搬送と連動して軸部61を中心として回転し、製袋機62に連続的にシート状の部材10を供給する。
【0040】
製袋機62では、ベルトコンベア60により搬送されてくる物品5とロール10aから送り出されるシート状の部材10とが合流する。製袋機62は、順次搬送されてくる物品5の下方でシート状の部材10の同じ面の両端部を向かい合わせ、シート状の部材10で送り方向に延びる筒を形成する。筒の中には搬送されてくる物品5が順次充填される。つまり、物品5は、一定の間隔を空けた状態でシート状の部材10の筒に充填される。シート状の部材10の筒は、充填された物品5ごとセンターシール形成部63へと搬送される。
【0041】
センターシール形成部63は、物品5の下方で向かい合わせにされたシート状の部材10の端部を順次ヒートシールにより溶着する。センターシール形成部63によって溶着されたセンターシール部は、後に包装体1の第3シール部22を形成する。センターシール部を形成されたシート状の部材10の筒は、さらに送り方向に搬送される。
【0042】
包装機械6は、上下押さえベルト64をさらに備える。上下押さえベルト64は、搬送されるシート状の部材10の筒の上下に配置され、それぞれが同じ構成を有する、循環回転式のベルトである。上下押さえベルト64は、センターシール形成部63から供給されるシート状の部材10の筒の進行に連動して回転できるように構成されており、シート状の部材10の筒を上下から挟むことで、中の余分な空気を抜く。
【0043】
上下押さえベルト64を通過した後のシート状の部材10の筒は、エンドシール形成部65に送られる。エンドシール形成部65では、シート状の部材10の筒に対し、送り方向と直交する方向の溶着、物品5ごとの切り離し及びスリット202の形成が行われる。
【0044】
エンドシール形成部65は、上エンドシール部66及び下エンドシール部67を有する。図9Aは、上エンドシール部66及び下エンドシール部67の概略側面図である。上エンドシール部66及び下エンドシール部67は、ヒートシールのためのシールバー660及びシールバー670と、シールバー660,670を移動させ、シート状の部材10の筒に対して位置決めする図示しない移動機構とをそれぞれ備える。上エンドシール部66及び下エンドシール部67は、シート状の部材10の筒内にある物品5と別の物品5との間を上下から挟み込むようにそれぞれ移動し、シールバー660及びシールバー670の間にシート状の部材10の筒を挟んでヒートシールを行う。エンドシール形成部65により1つの物品5の前後でエンドシール部分が形成されると、物品5が閉塞された空間に個別に収容された状態となる。
【0045】
図9Bは、シールバー660及びシールバー670の構成を示す斜視図である。図9Bに示すように、シールバー660,670は、表面に凹凸が形成されたシール面660a,670aをそれぞれ有する。シール面660a,670aの凹凸が合わさるようにシート状の部材10の筒が挟まれることにより、挟まれた部分がヒートシールされる。シールバー660は、シールバー660の奥行方向にわたって形成される開口部661と、ヒートシール部分を切り離すための切断刃662とをさらに有する。なお、奥行方向とは、送り方向に直交する方向である。切断刃662は、図示しない移動機構によって、開口部661を介してシール面660aから突出したり、シール面660aよりも上側に引っ込んだりすることができる。シール面660a,670aにヒートシール部分が挟まれた状態において、切断刃662がシール面660aから突出し、後述するシールバー670の開口部671に受け取られるとき、ヒートシール部分が切断される。
【0046】
シールバー660は、上下方向に貫通する開口部663と、スリット形成刃664とをさらに有する。スリット形成刃664は、予め定められた形状のスリット202を形成するためのカッターであり、シート状の部材10の所定の部分を貫通し、切り込み又は切り欠きを形成するように構成される。スリット形成刃664は、図示しない移動機構によって、開口部663を介してシール面660aから突出したり、シール面660aよりも上側に引っ込んだりすることができる。シール面660a,670aにヒートシール部分が挟まれた状態において、スリット形成刃664がシール面660aから突出し、後述するシールバー670の開口部672に受け取られるとき、スリット形成刃664がシート状の部材10を貫通し、スリット202、ひいては摘み部200が形成される。
【0047】
シールバー670は、開口部671及び開口部672をさらに有する。開口部671は、開口部661と対向する位置に形成され、ヒートシール部分を切り離すためにシール面660aから突出した切断刃662を受け取る。開口部672は、開口部663と対向する位置に形成され、スリット202を形成するためにシール面660aから突出したスリット形成刃664を受け取る。開口部663及び開口部672の面積は、スリット形成刃664の横断面の面積と比較してやや大きく、開口部663及び開口部672が合わさる領域においては、シート状の部材10がヒートシールされない。つまり、スリット202の周辺にはヒートシールがされていない領域が生成される。これにより、摘み部200を起点として包装体1を開封することが容易となる。
【0048】
スリット形成刃664によるスリット202の形成の後、切断刃662によりシールバー660,670により形成されたエンドシール部の切断が行われる。切断刃662は、シールバー660,670により形成されたエンドシール部の所定の位置を、送り方向に直交する方向に切断する。これにより、物品5が収容された包装体1がシート状の部材10の筒から切り離されてシュートコンベア68に乗り、搬送される。
【0049】
切断されたエンドシール部分のうち、切断刃662を挟んで送り方向の上流側にある方は、後に包装体1の第1シール部20となる。一方、切断刃662を挟んで送り方向の下流側にある方は、シュートコンベア68上の包装体1の第2シール部21となる。
【0050】
<4.特徴>
上記実施形態の包装体1によれば、一見するとその開封方法が理解し難い。また、摘み部200を指で引っ張り、第1シール部20から除去するのに一定の力が必要となる。このため、物品5の用途を認識していない幼児等が包装体1を不用意に開封することが抑制される。一方、包装体1の開封方法を理解する大人にとっては、摘み部200を起立させること、摘み部200を包装体1からちぎり取ること、生じたノッチ200aを端緒として第1シール部20を引き裂くことは容易である。従って、大人はこれらの3ステップ動作により、道具を使用することなく包装体1を容易に開封することができる。
【0051】
上記実施形態の包装体1の製造方法によれば、エンドシール工程において摘み部200を形成することができる。従って、製造コストを大幅に増加させることなく、簡単に製造することができる。
【0052】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0053】
<5-1>
上記実施形態では、包装体1は、いわゆるピロー型とも称される包装体であったが、包装体1の種類はこれに限定されず、包装体1の製造方法も上述の方法に限定されない。包装体1は、例えば、図10A及び10Bに示すように、1枚のシート状の部材10が2つ折りされ、三方の周縁部が互いにシールされた、三方シール袋であってもよい。また、包装体1は、図10Cに示すように、シート状の部材10が2枚重ねられて四方の周縁部が互いにシールされた、四方シール袋であってもよい。なお、図において、シールされた箇所は網掛けの部分で表されている。さらに、包装体1は、第1面部11と第2面部12との間にマチを備えた袋であってもよい。
【0054】
<5-2>
上記実施形態では、第1方向が短辺方向であり、第2方向が長辺方向であったが、第1方向が長辺方向であり、第2方向が短辺方向であってもよい。また、第1面部11と第2面部12とは、正方形であってもよい。さらに、第1面部11と第2面部12とは、矩形状に限られず、円形、三角形、花形、星形等であってもよい。
【0055】
<5-3>
上記実施形態では、包装体1の製造工程において、シート状の部材10の筒のエンドシール部分を切り離す前にスリット202あるいは摘み部200が形成された。しかしながら、スリット202あるいは摘み部200はエンドシール部分の切り離しと同時に形成されてもよい。また、スリット202あるいは摘み部200はエンドシール部分が切り離された後の包装体に形成されてもよい。また、既存の包装体のシール部にスリット202を形成してもよい。
【0056】
<5-4>
上記実施形態では、第1シール部20の第2方向の長さが第2シール部21の第2方向の長さよりも長くなっていたが、第1シール部20の第2方向の長さが第2シール部21の第2方向の長さよりも短くなっていてもよい。また、両者の第2方向の長さは、同じであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 包装体
5 物品
6 包装機械
10 シート状の部材
11 第1面部
12 第2面部
20 第1シール部
110 長辺
111 短辺
120 長辺
121 短辺
200 摘み部
201 基線
202 スリット
202a 頂点
C1 直線
S 収容空間
S1 第1サブ空間(第1空間)
S2 第2サブ空間(第2空間)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C