(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】位置決め装置、放射線治療システム、および位置決め方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 T
(21)【出願番号】P 2020192783
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】梅川 徹
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-305048(JP,A)
【文献】特開2006-149438(JP,A)
【文献】特開2020-131019(JP,A)
【文献】特開2016-152992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0002615(US,A1)
【文献】PARK, Samuel B., et al.,Spatially weighted mutual information image registration for image guided radiation therapy,Medical Physics,2010年,Vol. 37, No. 9,pp. 4590-4601,ISSN 0094-2405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療にて放射線を患者に照射するための治療計画の作成に用いられる三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物である対象構造物の密度に基づいて前記対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、前記対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成する疑似透視X線画像作成部と、
前記疑似透視X線画像に対してエッジを強調する処理を施してエッジ強調疑似透視X線画像を作成するエッジ強調処理部と、
前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記対象構造物の領域を含む第1関心領域を取得する関心領域取得部と、
前記エッジ強調疑似透視X線画像と前記第1関心領域とに基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像において前記エッジとして現れる前記対象構造物の輪郭を含む第2関心領域を作成するエッジ強調関心領域作成部と、
寝台に搭載された前記患者をX線透視により撮影した透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域とに基づいて、前記透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像とを画像照合することにより、前記透視X線画像の前記対象構造物の位置と前記疑似透視X線画像の前記対象構造物の位置とが一致するように前記寝台を移動させるための移動量を算出する画像照合部と、
を有
し、
前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる重複部分の画像を画面に表示し、前記第1関心領域内でユーザによる第1操作で指定された第1指定部分を含むように第2関心領域を作成し、前記第2関心領域内でユーザによる第2操作で指定された第2指定部分を含むように無関心領域を作成し、
前記画像照合部は、前記透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域と、前記無関心領域とに基づいて、前記第2関心領域において前記無関心領域でない部分を前記無関心領域の部分より高く重み付けした演算により前記移動量を算出する、
位置決め装置。
【請求項2】
前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる部分を含むように前記第2関心領域を作成する、
請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる線状部分を所定幅だけ広げた帯状領域を前記第2関心領域とする、
請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記関心領域取得部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示し、前記画面上でクリック操作がされた位置を含み、該位置の画素値から所定範囲内の画素値を有する連続する領域を抽出し、該領域を前記第1関心領域とする、
請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記関心領域取得部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示して前記第1関心領域の描画をユーザに促し、描画された前記第1関心領域を前記エッジ強調疑似透視X線画像に重ねて前記画面に表示する、
請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記エッジ強調関心領域作成部は、前記第2関心領域を作成すると、該第2関心領域を前記エッジ強調疑似透視X線画像とを重ねて画面に表示する、
請求項
1に記載の位置決め装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の位置決め装置を備えた放射線治療システム。
【請求項8】
放射線治療にて放射線を患者に照射するための治療計画の作成に用いられる三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物である対象構造物の密度に基づいて前記対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、前記対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成し、
前記疑似透視X線画像に対してエッジを強調する処理を施してエッジ強調疑似透視X線画像を作成し、
前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記対象構造物の領域を含む第1関心領域を取得し、
前記エッジ強調疑似透視X線画像と前記第1関心領域とに基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像において前記エッジとして現れる前記対象構造物の輪郭を含む第2関心領域を作成し、
寝台に搭載された前記患者をX線透視により撮影した透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域とに基づいて、前記透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像とを画像照合することにより、前記透視X線画像の前記対象構造物の位置と前記疑似透視X線画像の前記対象構造物の位置とが一致するように前記寝台を移動させるための移動量を算出する、
位置決め方法
において、
前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる重複部分の画像を画面に表示し、前記第1関心領域内でユーザによる第1操作で指定された第1指定部分を含むように第2関心領域を作成し、前記第2関心領域内でユーザによる第2操作で指定された第2指定部分を含むように無関心領域を作成し、
前記透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域と、前記無関心領域とに基づいて、前記第2関心領域において前記無関心領域でない部分を前記無関心領域の部分より高く重み付けした演算により前記移動量を算出する、
位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像を照合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの治療法の1つとして放射線を患者に照射する放射線治療が挙げられる。放射線治療で用いられる放射線は、X線やガンマ線といった非荷電粒子線と、陽子線や炭素線といった荷電粒子線とに大別される。後者の荷電粒子線(以下、荷電粒子ビームともいう)を使用した治療は一般に粒子線治療と呼ばれている。
【0003】
非荷電粒子線は体内で浅い位置から深い位置にかけて一定の割合で付与される線量が減少する。一方、荷電粒子ビームは、特定の深さにエネルギーのピークを有する線量分布(ブラックカーブ)を形成できる。そのため、ピークを腫瘍の位置に合わせることにより腫瘍よりも深い位置にある正常な組織へ照射される線量を大幅に低下させることが可能である。
【0004】
放射線治療では、可能な限り正確に、所望の線量の荷電粒子ビームを標的とする腫瘍に照射することが治療効果の向上につながる。腫瘍への正確な荷電粒子ビームの照射を実現するためには、予め治療計画装置で治療計画を作成しておき、実際の照射時において治療計画における位置と同じ位置に患者を位置合わせする必要がある。この患者の位置合わせのことを患者位置決めと呼んでいる。
【0005】
放射線治療における患者位置決めは、一般に、互いに直交に配置された2組のX線管と平面検出器により2方向から患者を撮影した透視X線画像を用いて行われる。患者を撮影した透視X線画像と、治療計画時のCT画像を仮想空間上に配置して仮想X線管から仮想平面検出器に入るX線の減弱量を計算することで作成した投影処理画像(以下、疑似透視X線画像)とを比較し、両者の画像の患者の位置を一致させるために必要な変位量を求める。ここでは、透視X線画像上の位置決めの目印となる構造物(以下、位置決め対象構造物)である骨が疑似透視X線画像上の同部位の骨と一致するように変位量が決定される。このとき変位量は、医療従事者による目視による手動合わせ、もしくは自動計算による自動合わせにより決定される。
【0006】
また、透視X線画像上で位置決め対象構造物のみを対象とした自動位置合わせを行うために、事前に医療従事者が透視X線画像もしくは疑似透視X線画像上に関心領域(Region of Interest: ROI)を描画して設定しておき、自動位置合わせ時には、ROI内の領域のみを計算対象としROI内の構造物により位置合わせを行う手法もある。特許文献1には、骨のエッジを強調した画像を患者位置決めに用いる技術が開示されている。骨のエッジを強調した画像のROI領域を抽出し、患者を撮像した画像との照合に用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術は、頭部や腰部といった、周辺組織に対して骨の輪郭が画像上で比較的明確に区別できる部位においては効果的である。
【0009】
しかし、透視撮影を行う方向から見て位置決め対象構造物である骨(以下、対象骨ともいう)の前後には腸内空洞、軟組織、固定具など他の構造物が存在する場合がある。その場合、透視X線画像には対象骨と他の構造物とが重なって写り、対象骨の視認性が低下することがある。体厚が大きい患者の場合、厚い軟組織の層により対象骨の視認性が元々低いうえに、対象骨の視認性が更に低下することになる。撮像装置を追加すれば、位置決め対象構造物の視認性が良い画像を取得できる可能性が上がるが、コストが増大してしまう。
【0010】
これに対して、対象骨の輪郭(以下、骨輪郭ともいう)に沿ったROIを設定すれば、計算上、対象骨の重要度を他の構造物に対して高めることができる。しかし、骨輪郭に沿ったROIを医療従事者が事前に描画することにすれば、ROIの描画に長時間を要することになる。また、位置決め対象構造物の輪郭に沿ったROIを長時間の人手の作業によらず演算処理により描画する手法はこれまで提案されていない。
【0011】
本開示のひとつの目的は、精度の高い患者の位置決めを容易にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示にひとつの態様による位置決め装置は、放射線治療にて放射線を患者に照射するための治療計画の作成に用いられる三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物である対象構造物の密度に基づいて前記対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、前記対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成する疑似透視X線画像作成部と、前記疑似透視X線画像に対してエッジを強調する処理を施してエッジ強調疑似透視X線画像を作成するエッジ強調処理部と、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記対象構造物の領域を含む第1関心領域を取得する関心領域取得部と、前記エッジ強調疑似透視X線画像と前記第1関心領域とに基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像において前記エッジとして現れる前記対象構造物の輪郭を含む第2関心領域を作成するエッジ強調関心領域作成部と、寝台に搭載された前記患者をX線透視により撮影した透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域とに基づいて、前記透視X線画像の前記対象構造物の位置と前記疑似透視X線画像の前記対象構造物の位置とが一致するように前記寝台を移動させるための移動量を算出する画像照合部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示のひとつの態様によれば、容易に精度の良い患者の位置決めが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【
図2】エッジ強調ROI作成処理のフローチャートである。
【
図3】エッジ強調ROI作成処理の過程で順次利用する画像およびROIを示す図である。
【
図5】ROI設定処理にてROI300を探索する様子を示す図である。
【
図6】患者位置決めの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。また、実施形態を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。また、同一あるいは同様の構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0016】
本実施形態の粒子線治療システムは、標的である患者に対して粒子線を照射するための装置群である。粒子線治療システムは、患者の位置決めを行った後、患者に対して粒子線を照射する。患者の位置決めにおいて、粒子線治療システムは、骨の情報のみから作成した疑似透視X線画像(Digitally Reconstructed Radiography:DRR)にエッジ強調処理を適用した画像と事前に描画されたROIとを用いてエッジ強調ROIを作成する。更に、粒子線治療システムは、粒子線を患者に照射するとき、撮影される透視X線画像と疑似透視X線画像との位置合わせを、そのエッジ強調ROIを用いて行う。
【0017】
以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、粒子線治療システムの全体構成を示す図である。粒子線治療システムAは、加速器1と、ビーム輸送装置2と、ガントリー3と、照射ノズル4と、平面検出器5A、5Bと、X線管6A、6Bと、寝台7、ロボットアーム8、治療計画装置10と、通信装置11と、データサーバ12と、透視X線画像撮影装置14と、寝台制御装置15と、患者位置決め装置20と、を備える。患者位置決め装置20は、疑似透視X線画像作成部21、ROI描画部22、エッジ強調処理部23、エッジ強調ROI作成部24、および画像照合部25を備えている。
【0019】
粒子線治療に際して、患者9は、寝台7の上に載せられ、寝台7に接続されたロボットアーム8により事前に計画された計画位置に移動する。ここでの計画位置とは、治療計画装置10を用いて事前に作成された治療計画における患者の位置と同じ位置を再現する放射線治療室内で患者9の位置を指す。ロボットアーム8は並進3方向および回転3軸方向の駆動が可能であり、患者9を載せた寝台7を適切な位置および角度で配置できる。
【0020】
加速器1で生成され、治療に適したエネルギーまで加速された粒子線は、ビーム輸送装置2によりガントリー3へ輸送される。ガントリー3は、回転機構を有しており、粒子線を様々な角度から患者の患部に照射することができる。ガントリー3では、粒子線は適切な方向への偏向を経て照射ノズル4を通過して患者9の患部に照射される。
【0021】
照射ノズル4には、粒子線の形状を患者の患部の形状に合うように変化させる機構が組み込まれている。
【0022】
治療計画装置10は、粒子線を実際に患者に照射する以前に、患者9を撮影した3次元画像情報に基づいて治療計画を行う装置である。治療計画では、治療計画装置10は、患者9を撮影した3次元画像情報をデータサーバ12から通信装置11を介して取得し、その3次元画像について粒子線の適切な照射角度と照射形状と照射量を計算し、照射情報として決定する。決定した照射情報は通信装置11を介してデータサーバ12に保存される。
【0023】
透視X線画像撮影装置14は、互いに直交する方向に配置した平面検出器5AおよびX線管6Aと平面検出器5BおよびX線管6Bとをそれぞれ制御し、透視X線画像を取得する。取得した透視X線画像は患者位置決め装置20に送られる。
【0024】
患者位置決め装置20は、治療計画を作成したときの患者9の位置と、粒子線を照射するために寝台7に配置された患者9の位置とが一致するように寝台7を移動させるための移動量を決定する装置である。
【0025】
患者位置決め装置20は、データサーバ12から治療計画時に作成された照射情報と患者9の3次元画像情報とを通信装置11を介して取得する。
【0026】
患者位置決め装置20において、疑似透視X線画像作成部21は、実際の透視X線撮影体系と同じ仮想空間上で患者9の3次元画像を配置して投影処理することで疑似透視X線画像を作成する。
【0027】
ここで3次元画像情報には、ボクセル単位で患者の形状および電子密度を示す情報が含まれている。予めボクセル値に閾値を設けることで、例えば骨の層などの高密度物質と、例えば空気、肺野あるいは軟組織などの低密度物質とを区別することができる。
【0028】
疑似透視X線画像作成部21は、3三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物(以下、位置決め対象構造物あるいは対象構造物ともいう)の密度に基づいて、対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、その対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成する。
【0029】
ROI描画部22は、疑似透視X線画像上の位置合わせに使用したい領域をROIとしてユーザーに画面上で描画させることができる。ここでユーザーに描画させるROIは、位置決め対象構造物の領域を含むように描画する比較的容易に作成可能なものでよい。
【0030】
エッジ強調処理部23は、前記透視X線画像と前記疑似透視X線画像に対してエッジ強調処理を適用する。
【0031】
エッジ強調ROI作成部24は、エッジ強調された前記疑似透視X線画像と描画された前記ROIとを用いてエッジ強調ROIを作成する。このエッジ強調ROIは、位置合わせに使用したい構造物の輪郭に沿った比較的精密なものとなる。
【0032】
画像照合部25は、前記透視X線画像と前記疑似透視X線画像の両画像とを、エッジ強調ROI内に含まれる部分のみで画像照合を行い、両画像における患者の位置を一致させるために必要な6自由度の変位量を計算する。ここで算出された変位量は、患者位置決め装置20にて、寝台制御装置15を制御して寝台7を移動させるために使用される。
【0033】
患者位置決め装置20は、各種情報処理が可能な装置、一例としてコンピュータ等の情報処理装置から構成される。情報処理装置は、演算素子、記憶媒体及び通信インターフェースを有し、さらに、必要に応じてマウス、キーボード等の入力部、ディスプレイ等の表示部を有する。
【0034】
演算素子は、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等である。
【0035】
記憶媒体は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)などの半導体記憶媒体等である。また、記憶媒体として、DVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスク及び光ディスクドライブの組み合わせも用いられる。更に、記憶媒体として、磁気テープメディアなどその他の公知の記憶媒体も用いられる。
【0036】
記憶媒体には、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。演算素子が患者位置決め装置20の動作開始時(例えば電源投入時)にプログラムを記憶媒体から読み出し、実行することにより患者位置決め装置20の各部21~25が実現され、全体の一連の制御が実行される。また、記憶媒体には、プログラム以外にも、患者位置決め装置20の各処理に必要なデータ等が格納されている。
【0037】
なお、本実施例の患者位置決め装置20は、それぞれ、情報処理装置が通信ネットワークを介して通信可能に構成された、いわゆるクラウドコンピューティングにより構成されてもよい。
【0038】
本実施形態の粒子線治療システムAは、粒子線治療の患者位置決めの前に、事前にエッジ強調ROIを作成する。以下、本実施形態の患者位置決め方法について
図2から
図6を用いて説明する。
【0039】
図2は、エッジ強調ROI作成処理のフローチャートである。エッジ強調ROI作成処理は、エッジ強調ROIを作成する一連の処理である。
【0040】
図3は、エッジ強調ROI作成処理の過程で順次利用する画像およびROIを示す図である。なお、
図3には、説明を容易にするために、ひとつの方向からの疑似透視X線画像のみを示しているが、実際には、2つの方向からの疑似透視X線画像があり、エッジ強調ROI作成処理はそれぞれの方向からの画像への適用が想定される。
【0041】
図2に示すように、まず患者位置決め装置20の疑似透視X線画像作成部21が、疑似透視X線画像を作成する(Step100)。このとき、疑似透視X線画像作成部21は、患者の3次元画像から位置決め対象構造物50以外の情報を排除した画像で投影処理することで位置決め対象構造物50のみの疑似透視X線画像200を作成する。患者の3次元画像は、通常はCT画像である。位置決め対象構造物50は、通常は骨である。例えば、3次元画像がCT画像の場合、3次元画像情報には、電子密度情報と相関のあるCT値が格納されている。3次元画像がCT画像である場合における、患者の3次元画像情報から位置決め対象構造物50以外の情報を排除する方法として、CT値に対して所定の閾値を設定し、各ボクセルのCT値を閾値と比較し、CT値が閾値以下のボクセルを排除するという方法を用いてもよい。
【0042】
次に、エッジ強調処理部23が、前記位置決め対象構造物50のみの疑似透視X線画像200に対してエッジを強調する処理を適用することにより、エッジ強調疑似透視X線画像201を作成する(Step101)。エッジ強調処理は特に限定されないが、例えば、一般的なエッジ強調フィルタとして縦方向および横方向のそれぞれに対して微分フィルタを適用しても良い。微分フィルタとしてPrewitteフィルタ、やSobelフィルタが利用できる。あるいは、他のフィルタによりエッジ強調処理を行ってもよい。また、複数のフィルタを組合わせてエッジ強調処理を行ってもよい。
【0043】
次に、ROI描画部22が、ユーザーの操作に基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像201上に位置決めに使用したい構造物が存在する領域をROI300として設定する(Step102)。ROI300の設定方法として、ROI描画部22が前記エッジ強調疑似透視X線画像201を画面に表示し、ユーザーにマウス操作等でROI300とする領域を塗りつぶさせ、塗りつぶされた領域をROI300として設定するという方法がある。また、ROI描画部22が前記エッジ強調疑似透視X線画像201を画面に表示し、ユーザーにマウス操作等でROI300とする領域内の位置を選択させ、選択された位置から所定距離内の領域をROI300として設定するという方法がある。また、ROI描画部22が前記エッジ強調疑似透視X線画像201を画面に表示し、ユーザーにマウス操作等でROI300とする領域内の位置を選択させ、選択された位置の画素値から一定範囲内の画素値を持つ連続する領域をROI300として設定するという方法がある。
【0044】
ROI描画部22は、ユーザーの描画により作成したROI300を、エッジ強調疑似透視X線画像201に重ねて画面に表示する。
【0045】
ここでは、一例として、ユーザーが選択した位置と同程度の画素値を有する領域をROI300として自動抽出するROI設定処理について説明する。
【0046】
図4は、ROI設定処理のフローチャートである。
図5は、ROI設定処理にてROI300を探索する様子を示す図である。
【0047】
まず、ROI描画部22は、エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示し、画面上でユーザーにROI領域に含まれる位置をクリック操作により選択させ、選択された位置を示す情報を取得する(Step200)。次に、ROI描画部22は、
図5に示すように、ユーザーが選択した位置を基準位置60とし、その位置の画素値を基準画素値とする(Step201)。
図5において基準位置60の画素は太線で囲まれている。
【0048】
次に、ROI描画部22は、
図5に示すように、基準位置60の画素の周囲8方向の画素の画素値を探索画素61とする(Step202)。
図5において探索画素61は右下がりの斜線のハッチングで表されている。
【0049】
次に、ROI描画部22は、設定した複数の探索画素から1つの画素を選択し、その画素の画素値を取得する(Step203)。更に、ROI描画部22は、選択している探索画素の画素値が基準画素値から所定の画素値範囲内にあるか否かを判定する(Step204)。ここでの画素値範囲は、事前にユーザーにより設定された値であり、基準画素値の上下にどの範囲の画素値までの画素をROIに含めるかを設定した設定値である。
【0050】
Step204の判定でYesとなった場合、ROI描画部22は、現在選択している探索画素をROIの領域に含めることを決定し、その画素の位置を新たな基準位置として設定する(Step205)。
図5において、ROIと判定された画素は右上がりの斜線のハッチングで表されている。その後、Step202に戻り、新たな基準位置に対して再び周囲8方向の画素値を探索画素として設定しStep203、204の処理に移行する。
【0051】
一方、Step204の判定でNoとなった場合、ROI描画部22は、現在選択している探索画素をROIの領域外と判定し(Step206)。
図5において、ROIの領域外と判定された画素はドットのハッチングで表されている。更に、ROI描画部22は、全ての探索画素についてROIの領域に含めるか否かを判定したか否かを判定する(Step207)。
【0052】
Step207の判定でNoとなった場合、ROI描画部22は、まだ判定していない1つの探索画素を選択し、その画素値を取得し(Step208)、Step204に戻る。一方、Step207の判定でYesとなった場合、ROI描画部22は、ROI設定処理を終了する。
【0053】
図2に戻り、次にエッジ強調ROI作成部24がエッジ強調ROI301を作成する(Step103)。このとき、エッジ強調ROI作成部24は、ユーザーにより設定されたROI300に含まれ、かつ、エッジ強調疑似透視X線画像201においてエッジ強調された構造物の輪郭と重なる領域を抽出し、重なった輪郭を一定の幅だけ広げた領域をエッジ強調ROI301として設定する(Step103)。
【0054】
ここで輪郭を広げる幅は、位置合わせ開始時の位置と位置合わせ後の正解位置との変位量を考慮し、位置合わせ後の正解位置が幅の中に含まれるように十分な値に設定する方法が考えられる。前記疑似透視X線画像と前記透視X線画像とを用いて両者の画像での患者の位置が一致する位置を探索する最適化計算では、仮にエッジに沿った狭いエッジ強調ROIを設定してしまったとすると、両画像の狭いROI内に含まれる領域のみを用いた計算では、最適解を探索するための領域として非常に限られてしまい、そのため、正解位置の解にたどり着けない可能性がある。そこで、エッジ強調ROIの輪郭に沿って設定する幅を、位置合わせ開始時と正解位置との変位量に応じて広げるのがよい。
【0055】
エッジ強調ROI作成部24は、エッジ強調ROI301を作成すると、エッジ強調疑似透視X線画像201と重ねて画面に表示する。
【0056】
以上の処理を経て作成されたエッジ強調ROI301は、後に説明する患者位置決め計算に利用される。
【0057】
図6は、患者位置決めの処理を示すフローチャートである。
図6を参照して、エッジ強調ROI301を用いた患者位置決めについて説明する。
【0058】
まず、粒子線治療の患者位置決め時において、患者9はセットアップポジションにて寝台7に配置される。セットアップポジションとは、患者9を寝台7に配置し、患者9を寝台7上の適正な位置に調整するための寝台7の位置である。寝台7上の患者9は、治療室内に設置された赤外線レーザーを用いて体表の位置が測定され、治療計画装置10で作成された照射情報における患者の位置を再現するように位置が調整される。
【0059】
その後、寝台制御装置15を介したロボットアーム8の制御により、患者9を載せた寝台7が粒子線の照射基準位置であるアイソセンタに向けて移動する(Step300)。寝台7は、患者9の位置決め対象構造物50が、
図1中の平面検出器5A、5B及びX線管6A、6Bで形成される照射領域内に入るように移動する。
【0060】
その後、透視X線画像撮影装置14により、透視X線画像(Digital Radiography:DR)が取得される(Step301)。
【0061】
次に、治療計画を作成したときに用いたCTからDRRを作成する処理における並進3自由度と回転3自由度の計6自由度の初期値を設定する(Step302)。
【0062】
次に、DRの撮影体系と同じ撮影体系を想定してCTの3次元画像を平面に投影する処理によりDRRを作成する(ステップ303)。
【0063】
次に、患者位置決め装置20内の画像照合部25が、DRとDRRの両画像のエッジ強調ROI内のみの情報を用いて両画像の一致度を計算する(Step304)。一致度を測る指標としては、一般に使用されている正規化相互相関係数や相互情報量などを使用しても良いし、その他の指標を使用しても良い。
【0064】
次に、算出された一致度が事前に設定した収束条件を満たすか否か判定する(Step305)。一致度が収束条件を満たさない場合、最適化処理により収束条件を満たす条件(並進3自由度、回転3自由度の計6自由度の値)を探索する。最適化処理では、6自由度の各値を更新し(Step306)、Step303~306を繰り返す。本実施例の6自由度のような多変数の最適化処理の手法として滑降シンプレックス法やパウエル法などがあり、本実施例で利用可能である。ただし、これらに限定されることはなく他の手法で最適化処理を行ってもよい。
【0065】
Step305で一致度が収束条件を満たした場合、寝台制御装置15が、得られた6自由度の値に基づいて寝台7を移動させる(Step307)。これにより、患者を現在の配置から治療計画時の配置へと移動させ、精密に位置決めすることが可能となる。
【0066】
以上により患者位置決めは終了し、実際の粒子線の照射が行われる。
【0067】
以上、本実施例によれば、人手による長時間の作業によることなく、また撮影装置を追加することなく、精度のよい患者位置決めを行うことが可能になる。
【0068】
より具体的には、上述のように演算処理でエッジ強調ROIを作成し、そのエッジ強調ROIを用いて患者位置決めを行うことにより、長時間の人でによる作業や撮影装置の追加が不要であるにもかかわらず、位置決めに利用しない構造物が位置決め対象構造物に重なっていても、位置決め対象構造物の輪郭周辺に注目することにより、演算処理により精度の高い位置決めが可能になる。
【0069】
なお、本実施形態では、患者の3次元画像情報から位置決め対象構造物でない部分を排除する方法として、CT画像における各ボクセルのCT値を閾値判定することにより位置決め対象構造物でないボクセルを排除しているが、他の方法で位置決め対象構造物でない部分を排除してもよい。例えば、CT画像による3次元領域にユーザーが空間的に採用領域もしくは排除領域の一方または両方を指定することにしてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、エッジ強調ROI作成部24は、エッジ強調疑似透視X線画像におけるエッジとROIとが重なる重複部分の画像を画面に表示し、ROI内でユーザによる操作で指定された部分を含むようにエッジ強調ROIを作成し、そのエッジ強調ROI内でユーザによる操作で指定された部分を含むように無関心領域を作成してもよい。その場合、画像照合部25は、透視X線画像と、疑似透視X線画像またはエッジ強調疑似透視X線画像と、エッジ強調ROIと、無関心領域とに基づいて、エッジ強調において無関心領域でない部分を無関心領域の部分より高く重み付けした演算により移動量を算出することにしてもよい。エッジとROIとが重なる重複部分を画面に表示し、ユーザによる操作により重複部分からエッジ強調ROIと無関心領域を作成し、エッジ強調ROIにおいて無関心領域を他の領域より低く重み付けして移動量を計算するので、精度の高い位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0071】
また、本実施形態では、エッジ強調ROI内の情報のみを用いて一致度を計算しているが、必要に応じて、エッジ強調ROIの外の情報を用いてもよい。その場合、例えば、エッジ強調ROIの内と外とで異なる重みづけをして重みづけ係数を設定し、エッジ強調ROI内の情報がROI外の情報より重視されるようにする方法が考えられる。
【0072】
また、本実施形態では、取得したDRと作成したDRRの元画像に対してエッジ強調ROIを適用し、エッジ強調ROI内のみの情報を使用して患者位置決めの演算処理を実施したが、これに限定されることはない。DRとDRRの元画像に対してエッジ強調処理を掛けたエッジ強調画像に対してエッジ強調ROIを使用して演算処理を行ってもよい。
【0073】
以上説明した、本発明の実施形態は説明のために例示であり、本発明がこれらに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0074】
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、あるいは置換をすることが可能である。
【0075】
本実施形態では、粒子線治療システムを例示したが、広く放射線治療システムであってもよい。例えば、本実施形態に例示した患者の位置決めの構成および方法は、放射線治療システムに広く適用可能なものである。一例として、本実施形態に記載の加速器1は治療X線を想定した電子線加速器でもよいし、陽子や炭素といった粒子線加速器でもよい。
【0076】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0077】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0078】
以上の開示には以下に示す事項が含まれる。ただし、本開示に含まれる事項が以下に示すものに限定されることはない。
【0079】
(1)粒子線治療にて粒子線を患者に照射するための治療計画の作成に用いられる三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物である対象構造物の密度に基づいて前記対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、前記対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成する疑似透視X線画像作成部と、
前記疑似透視X線画像に対してエッジを強調する処理を施してエッジ強調疑似透視X線画像を作成するエッジ強調処理部と、
前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記対象構造物の領域を含む第1関心領域を取得する関心領域取得部と、
前記エッジ強調疑似透視X線画像と前記第1関心領域とに基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像において前記エッジとして現れる前記対象構造物の輪郭を含む第2関心領域を作成するエッジ強調関心領域作成部と、
寝台に搭載された前記患者をX線透視により撮影した透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域とに基づいて、前記透視X線画像の前記対象構造物の位置と前記疑似透視X線画像の前記対象構造物の位置とが一致するように前記寝台を移動させるための移動量を算出する画像照合部と、
を有する位置決め装置。
【0080】
これにより、対象構造物の領域を含む比較的容易に作成可能な第1関心領域から、対象構造物の輪郭を含む精密な第2関心領域を作成し、その第2関心領域を用いて移動量を算出するので、精度のよい患者位置決めを容易に行うことが可能になる。
【0081】
(2)前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる部分を含むように前記第2関心領域を作成する、上記(1)に記載の位置決め装置。これにより、エッジ強調疑似透視X線画像におけるエッジと第1関心領域とが重なる部分を含むように第2関心領域を作成するので、第2関心領域を容易に作成することができる。
【0082】
(3)前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる線状部分を所定幅だけ広げた帯状領域を前記第2関心領域とする、上記(2)に記載の位置決め装置。これにより、エッジ強調疑似透視X線画像におけるエッジと第1関心領域とが重なる部分を含むように第2関心領域を作成するので、第2関心領域を容易に作成することができる。
【0083】
(4)前記関心領域取得部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示し、前記画面上でクリック操作がされた位置を含み、該位置の画素値から所定範囲内の画素値を有する連続する領域を抽出し、該領域を前記第1関心領域とする、上記(1)に記載の位置決め装置。これにより、エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示し、画面上でクリック操作がされた位置の画素値から所定範囲内の画素値を有する連続する領域を第1関心領域とするので、クリック操作により第1関心領域を容易に作成することができる。
【0084】
(5)前記エッジ強調関心領域作成部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記エッジと前記第1関心領域とが重なる重複部分の画像を画面に表示し、前記第1関心領域内でユーザによる第1操作で指定された第1指定部分を含むように第2関心領域を作成し、前記第2関心領域内でユーザによる第2操作で指定された第2指定部分を含むように無関心領域を作成し、
【0085】
前記画像照合部は、前記透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域と、前記無関心領域とに基づいて、前記第2関心領域において前記無関心領域でない部分を前記無関心領域の部分より高く重み付けした演算により前記移動量を算出する、
上記(1)に記載の位置決め装置。
【0086】
これによりエッジと前記第1関心領域とが重なる重複部分を画面に表示し、ユーザによる操作により重複部分から第2関心領域と無関心領域を作成するので、第2関心領域と無関心領域を容易に作成することができる。
【0087】
(6)前記関心領域取得部は、前記エッジ強調疑似透視X線画像を画面に表示して前記第1関心領域の描画をユーザに促し、描画された前記第1関心領域を前記エッジ強調疑似透視X画像に重ねて前記画面に表示する、上記(1)に記載の位置決め装置。
【0088】
(7)前記エッジ強調関心領域作成部は、前記第2関心領域を作成すると、該第2関心領域を前記エッジ強調疑似透視X線画像とを重ねて画面に表示する、上記(6)に記載の位置決め装置。
【0089】
(8)上記(1)から(7)のいずれかひとつに記載の位置決め装置を用いた粒子線治療システム。
【0090】
(9)粒子線治療にて粒子線を患者に照射するための治療計画の作成に用いられる三次元画像から、人体に含まれ位置決めに利用される構造物である対象構造物の密度に基づいて前記対象構造物を抽出した対象構造物三次元画像を取得し、前記対象構造物三次元画像を所定の面に投影した疑似透視X線画像を作成し、
前記疑似透視X線画像に対してエッジを強調する処理を施してエッジ強調疑似透視X線画像を作成し、
前記エッジ強調疑似透視X線画像における前記対象構造物の領域を含む第1関心領域を取得し、
前記エッジ強調疑似透視X線画像と前記第1関心領域とに基づき、前記エッジ強調疑似透視X線画像において前記エッジとして現れる前記対象構造物の輪郭を含む第2関心領域を作成し、
寝台に搭載された前記患者をX線透視により撮影した透視X線画像と、前記疑似透視X線画像または前記エッジ強調疑似透視X線画像と、前記第2関心領域とに基づいて、前記透視X線画像の前記対象構造物の位置と前記疑似透視X線画像の前記対象構造物の位置とが一致するように前記寝台を移動させるための移動量を算出する、
位置決め方法。
【符号の説明】
【0091】
A…粒子線治療システム、1…加速器、2…ビーム輸送装置、3…ガントリー、4…照射ノズル、5A…平面検出器、5B…平面検出器、6A…X線管、6B…X線管、7…寝台、8…ロボットアーム、9…患者、10…治療計画装置、11…通信装置、12…データサーバ、14…透視X線画像撮影装置、15…寝台制御装置、20…患者位置決め装置、21…疑似透視X線画像作成部、22…ROI描画部、23…エッジ強調処理部、24…エッジ強調ROI作成部、25…画像照合部、50…対象構造物、60…基準位置、61…探索画素、200…疑似透視X線画像、201…エッジ強調疑似透視X線画像、301…エッジ強調ROI