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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/08 20060101AFI20241001BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20241001BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 135/04 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 135/20 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 105/32 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 107/34 20060101ALN20241001BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20241001BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C10M141/08
C10M169/04
C10M133/12
C10M135/04
C10M135/20
C10M107/02
C10M105/32
C10M107/34
C10M137/10 A
C10N40:04
C10N40:25
C10N40:02
C10N30:12
C10N30:10
C10N10:12
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020550802
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 US2019023113
(87)【国際公開番号】W WO2019183187
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】62/645,272
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーイ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チェイサン,デビッド エリエゼル
(72)【発明者】
【氏名】スクーンメイカー,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フェントン,ライアン ジェームズ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-504142(JP,A)
【文献】特開2000-119675(JP,A)
【文献】特開2000-160182(JP,A)
【文献】特表2003-519720(JP,A)
【文献】特開昭52-026506(JP,A)
【文献】特表2011-528060(JP,A)
【文献】特開平08-176579(JP,A)
【文献】特開2011-132338(JP,A)
【文献】特開2008-045111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0274921(US,A1)
【文献】米国特許第05840672(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油、
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び
硫化イソブチレン及びジ-tert-アルキルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤
を含む、潤滑剤組成物(ただし、下記表に示される組成を有する組成物1、4、7及び9を除く:
上記表において、数値は質量%である)。
【請求項2】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、0.2wt%~0.8wt%存在する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
硫黄含有添加剤によって提供される硫黄濃度が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、50重量ppm~1000重量ppmの範囲である、請求項1又は2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化1】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化2】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]
のものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化3】
[式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H又はC1~C18アルキルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化4】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル又はC7~C21アラルキルである]
のものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化5】
[式中、R2は、Hであり、R1は、t-ブチル、t-オクチル又は分岐ノニルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化6】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、tert-ブチル、tert-オクチル又は分岐ノニルである]
のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
硫黄含有ヒンダードフェノール系化合物、硫黄含有防錆剤、硫黄含有摩擦調整剤、及び硫黄含有耐摩耗添加剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加的な硫黄含有添加剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-エチルフェノール又は2,6-ジ-ドデシルチオメチル-4-ノニルフェノール、2,2'-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)、4,4'-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、オクタデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジルメルカプトアセテート、ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルメルカプトアセテート、並びにβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸若しくはβ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-チア酪酸と、チオジエチレングリコール、3-チアウンデカノール若しくはチアペンタデカノールとのエステルからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有ヒンダードフェノール系化合物を含む、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
有機モリブデンジチオカルバメート、有機モリブデンジチオホスフェート、並びに分散剤及び二硫化モリブデンに基づく有機モリブデン化合物からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有摩擦調整剤を含む、請求項7又は8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
硫化オレフィン、硫化植物油、ジアルキルジチオホスフェートエステル、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル又はアリールジ-及びトリ-スルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールの誘導体、エチル(ビスイソプロピルオキシホスフィノチオイル)-チオプロピオネート、トリフェニルチオホスフェート、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3-ヒドロキシ-1,3-チアホスフェタン3-オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5-トリス-イソオクチル2-アセテート、2-メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、エトキシカルボニル5-オクチルジチオカルバメート及びジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有耐摩耗添加剤を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
ジ-tert-ブチルポリスルフィド、ジ-tert-ドデシルポリスルフィド及びジ-tert-ノニルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上のジ-tert-アルキルポリスルフィドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
群II、群III及び群IVの基油からなる群から選択される基油を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
ポリアルファオレフィンからなる群から選択される基油を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
合成エステルからなる群から選択される基油を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
基油が、1つ以上のポリアルファオレフィン及び1つ以上の合成エステルを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
基油が、1つ以上のポリアルキレングリコールを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項17】
1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及び1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤を含み、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤とジフェニルアミン酸化防止剤との重量/重量比は、1/9~9/1である、請求項1~16のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
基油が、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、80wt%~99.7wt%存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、1000重量ppm以下である、請求項1~18のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項20】
a)1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤、及び/又はb)1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤; 及び
c)硫化イソブチレン及びジ-tert-アルキルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤
を含む、添加剤パッケージ(ただし、下記表に示される組成を有する組成物1、4、7及び9を含む添加剤パッケージを除く:
上記表において、数値は質量%である)
【請求項21】
c)が、a)+b)+c)の総重量に基づいて、2wt%~30wt%存在する、請求項20に記載の添加剤パッケージ。
【請求項22】
a)及びb)を含み、a)対b)の重量/重量比が、1/1~1/9である、請求項20又は21に記載の添加剤パッケージ。
【請求項23】
請求項20~22に記載の添加剤パッケージと、有機溶媒、ベースストック及び液体潤滑剤添加剤からなる群から選択される希釈剤とを含む、添加剤濃縮物。
【請求項24】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び
硫化イソブチレン及びジ-tert-アルキルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤
を、基油に組み込むステップを含む、請求項1~19のいずれか一項に定義される潤滑剤組成物を調製する方法。
【請求項25】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、0.2wt%~0.8wt%存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
硫黄含有添加剤によって提供される硫黄濃度が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、50重量ppm~1000重量ppmの範囲である、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1~19のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物を、タービンギアボックス及び/若しくはタービンベアリングに、又はエンジンに添加するステップを含む、タービン又はエンジンを潤滑化させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化安定性及び非腐食特性を有する配合された潤滑剤組成物に関する。特に、本開示は、潤滑剤、タービンギアボックス及び/若しくはタービンベアリング又はエンジンに用いられる潤滑剤の酸化安定性及び非腐食特性を改善する方法、及び潤滑剤に使用するための添加剤パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用タービンは、運動エネルギーを電力に変換するために使用される。最も一般的な産業用タービンは、蒸気タービン、ガスタービン及び水力タービンである。複雑さはかなり異なるが、それらの基本的な設計は、タービンのタイプにわたって本質的に同じである。したがって、好適な潤滑剤は、単一のタイプのタービン用に特別に配合することも、又は複数のタイプ用に配合することもできる。したがって、タービン油は、例えば、長期間にわたって高い作動温度下で信頼性の高い潤滑及び性能を提供する基本的な能力などの、特定の特徴を共有する。
【0003】
蒸気タービンは、最も効率的な熱機関の1つである。それらは、典型的には、蒸気の熱を速度又は運動エネルギーに変換し、次いで機械エネルギーに変換することによって、発電機、コンプレッサー及びポンプなどの機械を駆動するために使用される。ノズル、バルブ、タービンブレード、排気装置、及びベアリングなどの主要構成部分の他に、蒸気タービンはまた、典型的には、それらの安全で効率的な操作を保証するいくつかの補助システムを含む。それらの補助システムの1つは、潤滑油システムであり、これは、正確な圧力、温度、及び流速で蒸気タービンベアリングにきれいで冷たい潤滑油を提供する。特定の蒸気タービンは、潤滑油システムが水圧式機械も潤滑する、機械的水圧制御システムを備える。蒸気タービンにおける非常に高い作動温度及び他の厳しい条件は、油に特定の負荷要求を課し、例えば、作動温度全体にわたって十分に変化しない粘度; 火、酸化、スラッジ/ワニスの形成、及び発泡に対する耐性; 及び抗腐食特性を要求する。
【0004】
ガスタービンは、燃料の化学エネルギーの一部を使用可能な機械エネルギーに変換することによって、発電機、コンプレッサー及びポンプを駆動するために電力産業において一般に使用される。ガスタービンは、蒸気タービンのように、主要構成部分及び補助システムを含み、後者は、他のものに加えて、潤滑油システムを含む。少数のガスタービンでは、潤滑油は、熱から遮断されているが、ガスタービンの大部分では、ベアリング及び他の主要構成部分は、高い作動温度にさらされており、局所的な領域では、これらの温度は、典型的な蒸気タービンに見出されるものよりも高くなる可能性がある。したがって、ガスタービン油が発火することなく表面を急速に冷却し、極度の熱の下で性能を維持する能力が試される。しかし、潤滑油が加熱されない少数のガスタービンでも、タービンは典型的には油サービスなしで長期間の操作を受けるため、酸化ストレスが残る。したがって、好適なガスタービン油は、好適な蒸気タービン油のように、構成部分にきれいで冷たい潤滑を提供するだけでなく、耐火性であり、酸化、錆の発生及び/又は腐食に影響されない又はほとんど影響されないべきである。
【0005】
水力タービンは、典型的には、水力発電所に見られ、落下する水のエネルギーを機械的作用に変換する。水力タービンでは、潤滑を必要とする主要部分は、シャフトベアリング、ウィケットゲート及び吸入弁である。潤滑油は、典型的には、高温を受けないが、作動環境に水が常に存在するため、油から水を分離する能力がさらに重要になる。したがって、好適な水力タービン油は、優れた水分離能力、及び低温で十分な流動性を維持する能力を有する。それはまた、錆及び腐食に耐える十分な能力、及び有害な水を迅速に澄ませる能力を有する。環境には大量の水があるため、好適な水力タービン油は、発泡、空気の保持、及び/又はスラッジの形成に対する最小限の傾向を有する。
【0006】
好適な汎用タービン油は、複数のタイプの近代産業用タービンにわたる様々な作動条件に順応するための一連の望ましい特性を有する。これらの特性は、例えば、十分に高い粘度指数(VI)、十分な酸化安定性(及び関連して長寿命)、低いワニス/スラッジ形成、高い耐火性、良好な水分離能力、改善された錆及び/又は腐食耐性、及び改善された空気放出及び発泡特性を含む。改善された酸化安定性及び抗腐食特性を有する改善された潤滑剤組成物、例えば、改善されたタービン油、錆及び酸化油、無灰作動液(ashless hydraulic fluid)、無灰動力伝達経路流体、又は無灰エンジン/クランクケース潤滑剤が望ましい。
【発明の概要】
【0007】
したがって、基油、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び1つ以上の硫黄含有添加剤を含む潤滑剤組成物が開示される。いくつかの実施形態では、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤は、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.2wt%~約0.8wt%存在する。他の実施形態では、硫黄含有添加剤によって提供される硫黄は、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm~約1000重量ppm存在する。
【0008】
また、a)1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤、及び/又はb)1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤; 及びc)1つ以上の硫黄含有添加剤を含む添加剤パッケージが開示される。いくつかの実施形態では、c)は、a)+b)+c)の総重量に基づいて、約2wt%~約30wt%存在する。
【0009】
また、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び1つ以上の硫黄含有添加剤を基油に組み込むステップを含む、潤滑剤組成物を調製する方法が開示される。いくつかの実施形態では、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤は、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.2wt%~約0.8wt%存在する。他の実施形態では、硫黄含有添加剤によって提供される硫黄は、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm~約1000重量ppm存在する。
【0010】
また、本明細書に記載の潤滑剤組成物を、タービンギアボックス及び/若しくはタービンベアリングに、又はエンジンに添加するステップを含む、タービン又はエンジンを潤滑化させる方法が開示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
基油、又は潤滑性基油若しくはベースストックは、完成した完全に配合された潤滑油の重量で最大の成分である。
【0012】
本開示において有用であり得る潤滑性基油は、天然油及び合成油の両方、並びに非在来型油(又はそれらの混合物)(未精製、精製、又は再精製(後者は再生油又は再処理油としても知られている)で使用することができる)である。未精製油は、天然又は合成の供給源から直接得られ、さらに精製せずに使用されるものである。これらは、レトルト操作から直接得られる頁岩油、一次蒸留から直接得られる石油、及びエステル化プロセスから直接得られるエステル油を含む。精製油が少なくとも1つの潤滑油特性を改善するために1つ以上の精製ステップに供されることを除いて、精製油は、未精製油について論じられた油と同様である。当業者は、多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスは、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過及び浸出を含む。再精製油は、精製油と同様のプロセスであるが、以前は供給原料として使用されていた油を使用して得られる。
【0013】
群I、II、III、IV及びVは、潤滑剤基油のガイドラインを作成するために、米国石油協会(API Publication 1509; www.API.org)によって開発及び定義された一般的な基油ストックカテゴリーである。群Iのベースストックは、80~120の粘度指数を有し、0.03%を超える硫黄及び/又は90%未満の飽和化合物を含有する。群IIのベースストックは、80~120の粘度指数を有し、0.03%以下の硫黄及び90%以上の飽和化合物を含有する。群IIIのストックは、120を超える粘度指数を有し、0.03%以下の硫黄及び90%を超える飽和化合物を含有する。群IVは、ポリアルファオレフィン(PAO)を含む。群Vのベースストックは、群I~IVに含まれていないベースストックを含む。以下の表は、これら5個の群のそれぞれの特性をまとめたものである。
【0014】
【表1】
【0015】
天然油は、動物油、植物油(例えば、ひまし油及びラード油)、及び鉱油を含む。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用することができる。特定の実施形態では、天然油は鉱油を含む。鉱油は、それらの原油源に関して、例えば、それらがパラフィン系、ナフテン系、又は混合パラフィン系-ナフテン系であるかどうかに関して大きく異なる。石炭又は頁岩に由来する油も有用である。天然油はまた、それらの製造及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、及びそれらが直留若しくは分解され、水素化精製され、又は溶媒抽出されるかどうかに関して異なる。
【0016】
ポリアルファオレフィン、アルキル芳香族化合物及び合成エステルなどの合成油を含む、群II及び/又は群IIIの水素化処理又は水素化分解されたベースストックも周知のベースストック油である。
【0017】
合成油は炭化水素油を含む。炭化水素油は、重合及び相互重合(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー、及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油を含む。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックは、一般に使用される合成炭化水素油である。例として、C6、C8、C10、C12、C14オレフィン又はそれらの混合物に由来するPAOを利用してもよい。米国特許第4,956,122号; 同第4,827,064号; 及び同第4,827,073号を参照のこと。
【0018】
公知の材料であり、ExxonMobil Chemical Company、Chevron Phillips Chemical Company、BP及びその他の供給業者から大きな商業規模で一般に入手可能なPAOの数平均分子量は、典型的には、250から3,000まで変動するが、PAOは最大100cSt(100℃)の粘度で製造されてもよい。PAOは、典型的には、C2~C32アルファオレフィン、例えばC8~C16アルファオレフィン、例えば、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどを含むがこれらに限定されない、アルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマー又はオリゴマーを含み得る。ポリアルファオレフィンは、ポリ-1-ヘキセン、ポリ-1-オクテン、ポリ-1-デセン及びポリ-1-ドデセン、並びにそれらの混合物、並びに混合オレフィン由来ポリオレフィンを含み得る。しかし、C14~C18の範囲の高級オレフィンの二量体を使用して、許容できるほど低い揮発性の低粘度ベースストックを提供してもよい。粘度グレード及び出発オリゴマーに応じて、PAOは、主に、1.5~12cStの粘度範囲を有する少量の高級オリゴマーを含む、出発オレフィンの三量体及び四量体であってもよい。特定の用途のPAO流体は、3.0cSt、3.4cSt、及び/若しくは3.6cSt並びにそれらの組み合わせを含んでもよい。所望の場合、1.5~約100cSt又は約300cStの粘度範囲を有するPAO流体のバイモーダル混合物を使用してもよい。
【0019】
PAO流体は、重合触媒、例えばフリーデル・クラフツ(Friedel-Crafts)触媒、例えば三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素と水、アルコール(例えば、エタノール、プロパノール又はブタノール)、カルボン酸又はエステル(例えば、酢酸エチル又はプロピオン酸エチル)との錯体の存在下で、アルファオレフィンの重合によって好都合に製造し得る。例えば、米国特許第4,149,178号又は同第3,382,291号によって開示される方法は、本明細書で好都合に使用し得る。PAO合成の他の記載は、以下の米国特許第3,742,082号; 同第3,769,363号; 同第3,876,720号; 同第4,239,930号; 同第4,367,352号; 同第4,413,156号; 同第4,434,408号; 同第4,910,355号; 同第4,956,122号; 及び同第5,068,487号に見出される。C14~C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号に記載される。
【0020】
他の有用な潤滑油ベースストックは、水素化異性化ワックス状ストック(例えば、ガス油、スラックワックス、燃料水素化分解装置残留物などのワックス状ストック)、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックス、ガス・ツー・リキッド(Gas-to-Liquids、GTL)ベースストック及び基油、及び他の異性化ワックス水素化異性化ベースストック及び基油、又はそれらの混合物を含む、異性化ワックスベースストック及び基油を含み、フィッシャー・トロプシュ合成の高沸点残留物であるフィッシャー・トロプシュワックスは、非常に低い硫黄含有量を有する高パラフィン系炭化水素である。そのようなベースストックの製造に使用される水素化処理は、非晶質水素化分解/水素化異性化触媒、例えば、特化した潤滑油水素化分解(LHDC)触媒の1つ、又は結晶性水素化分解/水素化異性化触媒、例えば、ゼオライト触媒を使用してもよい。例えば、1つの有用な触媒は、米国特許第5,075,269号に記載されるように、ZSM-48である。水素化分解/水素化異性化蒸留物、及び水素化分解/水素化異性化ワックスを製造するプロセスは、例えば、米国特許第2,817,693号; 同第4,975,177号; 同第4,921,594号及び同第4,897,178号、並びに英国特許第1,429,494号; 同第1,350,257号; 同第1,440,230号及び同第1,390,359号に記載される。特に好ましいプロセスは、欧州特許出願第464546号及び同第464547号に記載されており、これらも参照により本明細書に組み込まれる。フィッシャー・トロプシュワックス供給材料を使用するプロセスは、米国特許第4,594,172号及び同第4,943,672号に記載される。
【0021】
ガス・ツー・リキッド(GTL)基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、及び他のワックス由来の水素化異性化(異性化ワックス)基油は、本開示において有利に使用され、100℃で4.0cStの動粘性率及び141の粘度指数を有するGTL4によって例示されるように、100℃で3cSt又は3.5cStから25cSt、30cSt又は50cStの有用な動粘性率を有し得る。これらのガス・ツー・リキッド(GTL)基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、及び他のワックス由来の水素化異性化基油は、-20℃以下の有用な流動点を有してよく、いくつかの条件下では-25℃以下の有利な流動点を有してよく、-30℃~-40℃又はそれ未満の有用な流動点を有してよい。ガス・ツー・リキッド(GTL)基油、フィッシャー・トロプシュワックス由来の基油、及びワックス由来の水素化異性化基油の有用な組成物は、例えば米国特許第6,080,301号; 同第6,090,989号及び同第6,165,949号に記載される。
【0022】
ヒドロカルビル芳香族化合物は、基油又は基油成分として使用することができ、ベンゼノイド部分又はナフテノイド部分などの芳香族部分、又はそれらの誘導体に由来するその重量の少なくとも5%を含有する任意のヒドロカルビル分子であってもよい。これらのヒドロカルビル芳香族化合物としては、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルオキシド、アルキルナフトール、アルキルジフェニルスルフィド、アルキル化ビス-フェノールA、アルキル化チオジフェノールなどが挙げられる。芳香族化合物は、モノアルキル化、ジアルキル化、ポリアルキル化などであり得る。芳香族化合物は、単官能化又は多官能化することができる。ヒドロカルビル基はまた、アルキル基、アルケニル基、アルキニル、シクロアルキル基、シクロアルケニル基及び他の関連するヒドロカルビル基の混合物で構成することができる。ヒドロカルビル基は、C6から最大C60まで、例えばC8からC20までの範囲にわたることができる。ヒドロカルビル基の混合物が有利であってよく、最大3個のそのような置換基が存在してもよい。
【0023】
ヒドロカルビル基は、場合により、硫黄、酸素、及び/又は窒素含有置換基を含有することができる。芳香族基はまた、分子の少なくとも5%が上記のタイプの芳香族部分で構成されることを条件として、天然(石油)源から誘導することができる。ヒドロカルビル芳香族成分の100℃での粘度は、約3cSt又は約3.4cStから約20cSt又は約50cStであってもよい。一実施形態では、アルキル基が主に1-ヘキサデセンで構成されるアルキルナフタレンが使用される。芳香族化合物の他のアルキレートを有利に使用することができる。例えば、ナフタレン又はメチルナフタレンは、オレフィン、例えばオクテン、デセン、ドデセン、テトラデセン又はそれを超えるもの、同様のオレフィンの混合物などでアルキル化することができる。潤滑油組成物中のヒドロカルビル芳香族化合物の有用な濃度は、用途に応じて、約2%又は約4%から約15%、約20%又は約25%までであり得る。
【0024】
本開示のヒドロカルビル芳香族化合物などのアルキル化芳香族化合物は、芳香族化合物の周知のフリーデル・クラフツアルキル化によって製造してもよい。Friedel-Crafts and Related Reactions、Olah, G. A. (編)、Inter-science Publishers、New York、1963を参照のこと。例えば、ベンゼン又はナフタレンなどの芳香族化合物は、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で、オレフィン、ハロゲン化アルキル、又はアルコールによってアルキル化される。Friedel-Crafts and Related Reactions、第2巻、第1部、第14、17、及び18章を参照。Olah, G. A. (編)、Inter-science Publishers、New York、1964を参照。多くの均一又は不均一系固体触媒が当業者に公知である。触媒の選択は、出発材料の反応性及び生成物品質要求に依存する。例えば、AlCl3、BF3、又はHFなどの強酸を使用してもよい。いくつかの場合には、より穏やかな触媒は、FeCl3又はSnCl4を含む。より新しいアルキル化技術は、ゼオライト又は固体の超酸を使用する。
【0025】
エステルは、有用なベースストック、例えば、二塩基酸とモノアルカノールとのエステル、及びモノカルボン酸のポリオールエステルなどのエステルを含む。前者のタイプのエステルは、例えば、ジカルボン酸、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸などと、様々なアルコール、例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコールなどとのエステルを含む。これらのタイプのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ-(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシルなどが挙げられる。
【0026】
特に有用な合成エステルは、1つ以上の多価アルコール、例えば、ヒンダードポリオール(例えば、ネオペンチルポリオール、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール)を、少なくとも4個の炭素原子を含有するアルカン酸、例えば、C5~C30酸、例えば、飽和直鎖脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、及びベヘン酸、又は対応する分岐鎖脂肪酸又は不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸、又はこれらの材料のいずれかの混合物と反応させることによって得られるものであってよい。
【0027】
好適な合成エステル成分としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールと、5~10個の炭素原子を含有する1つ以上のモノカルボン酸とのエステルが挙げられる。これらのエステルは、広く市販されており、例えば、ExxonMobil Chemical CompanyのMobil P-41及びP-51エステルがある。特定の実施形態では、合成エステルは、トリメチロールプロパントリノノエート(trimethylolpropane trinonoate)を含む。
【0028】
ココナッツ、ヤシ、ナタネ、ダイズ、ヒマワリなどの再生可能材料から誘導されるエステルも有用である。これらのエステルは、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、複合エステル、又はそれらの混合物であってもよい。これらのエステルは広く市販されており、例えば、ExxonMobil Chemical CompanyのMobil P-51エステルがある。
【0029】
特定の実施形態では、ジエステルは、好適なベースストックであり、これは、直鎖又は分岐状のC6~C15脂肪族アルコールと、1つ以上の二塩基酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、又はアゼライン酸とのエステル化によって形成してもよい。ジエステルの例は、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル及びアジピン酸ジオクチルである。合成ポリオールエステル基油は、脂肪族ポリオールとカルボン酸とのエステル化によって形成してもよい。脂肪族ポリオールは、4~15個の炭素原子を含有し、2~8個のヒドロキシル基を有してもよい。ポリオールの例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリペンタエリスリトール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
特定の実施形態では、合成ポリオールエステル基油の生成に使用されるカルボン酸反応物は、脂肪族モノカルボン酸、又は脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸の混合物から選択される。カルボン酸は、4~12個の炭素原子を含有してもよく、直鎖又は分岐鎖脂肪族酸であってもよい。モノカルボン酸の混合物を使用してもよい。一実施形態では、ポリオールエステル基油は、工業用ペンタエリスリトール、及びC4~C12カルボン酸の混合物から調製される。工業用ペンタエリスリトールは、約85~約92wt%のモノペンタエリスリトール及び約8~約15wt%のジペンタエリスリトールを含む混合物である。典型的な市販の工業用ペンタエリスリトールは、約88wt%のモノペンタエリスリトール及び約12wt%のジペンタエリスリトールを含有する。
【0031】
潤滑粘度の他の有用な流体としては、高性能の潤滑特性を提供するように、例えば触媒的に処理された又は合成された不在来型又は非在来型のベースストックが挙げられる。
【0032】
不在来型又は非在来型ベースストック/基油としては、1つ以上のガス・ツー・リキッド(GTL)材料から誘導されたベースストック(複数可)の混合物、並びに天然ワックス若しくはワックス状供給材料、鉱油及び/又は非鉱油ワックス状供給原料、例えばスラックワックス、天然ワックス、及びワックス状ストック、例えばガス油、ワックス状燃料水素化分解装置残留物、ワックス状ラフィネート、水素化分解生成物、熱分解生成物、若しくは他の鉱物、鉱油、又は非石油由来のワックス状材料、例えば石炭液化若しくは頁岩油から得たワックス状材料から誘導された異性化/イソ脱ロウ化(isodewaxate)ベースストック(複数可)、及びそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0033】
GTL材料は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、及びブチンなどの供給原料としてのガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、及び/又は元素から、1つ以上の合成、組み合わせ、変換、転位、及び/又は分解/脱構築プロセスによって誘導される材料である。GTLベースストック及び/又は基油は、炭化水素; 例えば、供給原料としての単純なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、及び/又は元素からそれ自体が誘導されるワックス状合成炭化水素から概して誘導される潤滑粘度のGTL材料である。GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、潤滑油の沸点範囲で沸騰する油を含み、(1)合成されたGTL材料から、例えば蒸留により分離/分留し、その後、低減された/低い流動点の潤滑油を製造するために、触媒脱ロウプロセス又は溶媒脱ロウプロセスの一方又は両方を含む最終ワックス処理ステップに供したもの; (2)例えば水素化脱ロウ又は水素化異性化され、触媒及び/又は溶媒脱ロウされた合成ワックス又はワックス状炭化水素を含む合成異性化ワックス; (3)水素化脱ロウ又は水素化異性化され、触媒及び/又は溶媒脱ロウされたフィッシャー・トロプシュ(F-T)材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス及び可能な類似の酸素化物); 例えば水素化脱ロウ又は水素化異性化され、続いて触媒及び/又は溶媒脱ロウで脱ロウされたF-Tワックス状炭化水素、あるいは水素化脱ロウ又は水素化異性化され、続いて触媒(又は溶媒)脱ロウで脱ロウされたF-Tワックス、又はそれらの混合物を含む。
【0034】
GTL材料から誘導されるGTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)、特に、水素化脱ロウ又は水素化異性化され、続いて触媒及び/又は溶媒脱ロウされたワックス又はワックス状供給材料、例えばF-T材料由来のベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、典型的には、約2mm2/s~約50mm2/sの100℃における動粘性率を有することを特徴とする(ASTM D445)。それらは、典型的には約-5℃~約-40℃又はそれ未満の流動点を有することをさらに特徴とする(ASTM D97)。それらはまた、80~140又はそれを超える粘度指数を有することを特徴とし得る(ASTM D2270)。
【0035】
加えて、GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、典型的には、高パラフィン系(>90%飽和化合物)であり、非環式イソパラフィンと組み合わせた、単環式パラフィン及び多環式パラフィンの混合物を含有してもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比は、使用される触媒及び温度によって変動する。さらに、GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、典型的には、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、概してこれらの元素のそれぞれを、10ppm未満、より典型的には5ppm未満含有する。F-T材料、特にF-Tワックスから得られるGTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)の硫黄及び窒素含有量は、本質的にゼロである。加えて、リン及び芳香族化合物がないため、これは物質的に低SAP製品の配合に特に適している。
【0036】
GTLベースストック及び/若しくは基油並びに/又は異性化ワックスベースストック及び/若しくは基油という用語は、製造プロセスで回収された広粘度範囲の当該材料の個々の留分、当該留分の2つ以上の混合物、並びに目標の動粘性率を示すブレンドを製造するための1つ又は2つ又はそれを超える低粘度留分と、1つ、2つ、又はそれを超える高粘度留分との混合物を包含するものであると理解されるべきである。
【0037】
GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)を誘導するGTL材料は、有利にはF-T材料(すなわち、炭化水素、ワックス状炭化水素、ワックス)であってもよい。
【0038】
加えて、GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、典型的には、高パラフィン系(>90%飽和化合物)であり、非環式イソパラフィンと組み合わせた、単環式パラフィン及び多環式パラフィンの混合物を含有してもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有量の比は、使用される触媒及び温度によって変動する。さらに、GTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)並びに水素化脱ロウ又は水素化異性化/触媒(及び/又は溶媒)脱ロウベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)は、典型的には、非常に低い硫黄及び窒素含有量を有し、概してこれらの元素のそれぞれを、10ppm未満、より典型的には5ppm未満含有する。F-T材料、特にF-Tワックスから得られるGTLベースストック(複数可)及び/又は基油(複数可)の硫黄及び窒素含有量は、本質的にゼロである。加えて、リン及び芳香族化合物がないため、この材料は低硫黄、硫酸塩灰分、及びリン(低SAP)製品の配合に特に適している。
【0039】
本開示において有用な配合潤滑油に使用される基油は、API群I、群II、群III、群IV、及び群Vの油並びにそれらの混合物に相当する種々の油のいずれかであり、いくつかの実施形態では、API群II、群III、群IV、及び群Vの油並びにそれらの混合物、特定の実施形態では、それらの優れた揮発性、安定性、粘度測定、及び清浄性の特性のため、群III~群Vの基油である。配合潤滑油製品に混合するための添加剤の希釈に使用される量などの、少量の群Iストックは許容できるが、最小限に保つべきであり、すなわち、「受け入れ時のまま」の状態で使用される添加剤のための希釈剤/キャリア油としてのそれらの使用に付随する量のみに保つべきである。群IIストックに関して、いくつかの実施形態では、群IIストックは、そのストックに関連した高品質の範囲内であってよく、すなわち、群IIストックは、100cSt<VI<120cStの範囲の粘度指数を有する。
【0040】
潤滑性基油又はベースストックは、本開示の潤滑剤組成物の主要成分を構成する。一実施形態では、本発明の潤滑剤組成物用の潤滑油ベースストックは、完全配合潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約80wt%(重量パーセント)、約81wt%、約82wt%、約83wt%、約84wt%、約85wt%、約86wt%、約87wt%、又は約88wt%のいずれかから、約89wt%、約90wt%、約91wt%、約92wt%、約93wt%、約94wt%、約95wt%、約96wt%、約97wt%、約98wt%、約99wt%、約99.1wt%、約99.2wt%、約99.3wt%、約99.4wt%、約99.5wt%、約99.6wt%、又は約99.7wt%のいずれかまでである。
【0041】
群IIIのベースストックは、GTL及びYubase Plus(水素化処理ベースストック)であってもよい。群Vのベースストックは、アルキル化ナフタレン、合成エステル及びそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、上記の基油又はベースストックは、ASTM規格に従って、100℃で約2.5cSt又は約4cStから、約6cSt、約8cSt又は約9cSt、約12cSt(又はmm2/s)のいずれかまでの動粘性率を有する。他の実施形態では、ベースストックは、100℃で、最大約100cSt、約150cSt、約200cSt、約250cSt又は約300cStの動粘性率を有してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、ベースストックは、エチレンオキシド単位及びプロピレンオキシド単位を含む、ポリアルキレングリコールのランダムコポリマー又はブロックコポリマーを含んでもよい。コポリマーは、約30wt%、約50wt%又は約60wt%のいずれかから、約70wt%、約85wt%又は約95wt%のいずれかまでのエチレンオキシド単位と、プロピレンオキシド単位である残部を含んでもよい。
【0044】
特定の実施形態では、基油は、API群II、III及びIVからなる群から選択されるものを含む。GTL由来の基油が含まれる。群II、III及びIVから選択される1つ以上の基油を、上記の1つ以上のエステル、例えば1つ以上のジエステル及び/又はトリエステルと組み合わせてもよい。そのような混合物において、エステルは、完全配合潤滑油に基づいて、約0.5wt%、約1wt%、約2wt%、約3wt%、約4wt%、約5wt%、約6wt%、約7wt%又は約8wt%のいずれかから、約9wt%、約10wt%、約11wt%、約12wt%、約13wt%、約14wt%又は約15wt%のいずれかまで存在してもよい。
【0045】
特定の実施形態では、潤滑剤組成物は、タービン油、錆及び酸化油、無灰作動液、無灰動力伝達経路流体、又は無灰エンジン/クランクケース潤滑剤である。
【0046】
いくつかの実施形態では、ジエステル成分は、以下の構造を有する:
【0047】
【化1】
[式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、直鎖又は分岐鎖のC2~C17炭化水素基である]。
【0048】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3及びR4は、100℃の温度での組成物の動粘性率が約3mm2/秒以上であるように選択される。いくつかの又は他の実施形態では、R1、R2、R3及びR4は、得られる配合油の流動点が、約-10℃以下、約-25℃以下、又は約-40℃以下であるように選択される。いくつかの実施形態では、R1及びR2は、6~14個の合算した炭素数(すなわち、炭素原子の総数)を有するように選択される。これらの又は他の実施形態では、R3及びR4は、10~34個の合算した炭素数を有するように選択される。実施形態に応じて、得られる当該ジエステル種は、約340原子質量単位(amu)~約780amuの分子質量を有し得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、ジエステル成分は、実質的に同種である。いくつかの又は他の実施形態では、ジエステル成分は、種々のジエステル種(すなわち、混合物)を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、ジエステル成分は、C8~C16オレフィン及びC2~C18カルボン酸から誘導される少なくとも1つのジエステル種を含む。ジエステル種は、(中間体上の)各-OH基を異なる酸と反応させることによって調製し得るが、そのようなジエステル種は、各-OH基を同じ酸と反応させることによって製造することもできる。
【0051】
いくつかの実施形態では、ジエステル成分は、デカン酸2-デカノイルオキシ-1-ヘキシル-オクチルエステル及びその異性体、テトラデカン酸-1-ヘキシル-2-テトラデカノイルオキシ-オクチルエステル及びその異性体、ドデカン酸2-ドデカノイルオキシ-1-ヘキシル-オクチルエステル及びその異性体、ヘキサン酸2-ヘキサノイルオキシ-1-ヘキシ-オクチルエステル及びその異性体、オクタン酸2-オクタノイルオキシ-1-ヘキシル-オクチルエステル及びその異性体、ヘキサン酸2-ヘキサノイルオキシ-1-ペンチル-ヘプチルエステル及び異性体、オクタン酸2-オクタノイルオキシ-1-ペンチル-ヘプチルエステル及び異性体、デカン酸2-デカノイルオキシ-1-ペンチル-ヘプチルエステル及び異性体、デカン酸-2-デカノイルオキシ-1-ペンチル-ヘプチルエステル及びその異性体、ドデカン酸-2-ドデカノイルオキシ-1-ペンチル-ヘプチルエステル及び異性体、テトラデカン酸1-ペンチル-2-テトラデカノイルオキシ-ヘプチルエステル及び異性体、テトラデカン酸1-ブチル-2-テトラデカノイルオキシ-ヘキシエステル及び異性体、ドデカン酸-1-ブチル-2-ドデカノイルオキシ-ヘキシルエステル及び異性体、デカン酸1-ブチル-2-デカノイルオキシ-ヘキシルエステル及び異性体、オクタン酸1-ブチル-2-オクタノイルオキシ-ヘキシルエステル及び異性体、ヘキサン酸1-ブチル-2-ヘキサノイルオキシ-ヘキシルエステル及び異性体、テトラデカン酸1-プロピル-2-テトラデカノイルオキシ-ペンチルエステル及び異性体、ドデカン酸2-ドデカノイルオキシ-1-プロピル-ペンチルエステル及び異性体、デカン酸2-デカノイルオキシ-1-プロピル-ペンチルエステル及び異性体、オクタン酸1-2-オクタノイルオキシ-1-プロピル-ペンチルエステル及び異性体、ヘキサン酸2-ヘキサノイルオキシ-1-プロピル-ペンチルエステル及び異性体、並びにそれらの混合物からなる群から選択されるジエステル種を含む。
【0052】
ジエステルの製造に使用できる方法は、例えば、米国特許出願公開第2009/0159837号及び同第2009/0198075号にさらに記載される。より具体的には、いくつかの実施形態では、ジエステル種を製造するプロセスは、8~16個の炭素数を有するオレフィン(又はオレフィンの量)をエポキシ化してエポキシド環を含むエポキシドを形成するステップ; エポキシド環を開裂させジオールを形成するステップ; 及びジオールをエステル化種でエステル化して(すなわち、エステル化に供して)ジエステル種を形成するステップであって、当該エステル化種は、カルボン酸、アシル酸、ハロゲン化アシル、無水アシル及びそれらの組み合わせからなる群から選択され; 当該エステル化種は2~18個の炭素数を有し; ジエステル種は100℃の温度で約3mm2/秒以上の粘度を有する、ステップを含む。
【0053】
ジエステル種は、約8~約16個の炭素原子を有するオレフィンをエポキシ化して、エポキシド環を含むエポキシドを形成することによって調製してもよい。エポキシ化オレフィンをエステル化種と直接反応させてジエステル種を形成し、エステル化種は、カルボン酸、ハロゲン化アシル、無水アシル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、エステル化種は2~18個の炭素数を有し、ジエステル種は、完成油としての使用に適した粘度及び流動点を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、ある量のジエステル種が形成される場合、その量のジエステル種は実質的に同種であってもよく、又は2つ以上の異なる当該ジエステル種の混合物であってもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、使用されるオレフィンは、フィッシャー・トロプシュ法の反応生成物である。これらの又は他の実施形態では、カルボン酸は、フィッシャー・トロプシュ法によって生成された、アルコールから誘導されるものであってもよく、及び/又は生物由来の脂肪酸であってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、オレフィンはα-オレフィン(すなわち、鎖末端に二重結合を有するオレフィン)である。そのような実施形態では、二重結合を内部移行するために、通常、オレフィンを異性化する必要がある。そのような異性化は、典型的には、限定されないが結晶性アルミノシリケートなどの材料及びアルミノリン酸塩などの触媒を使用した触媒作用により実施される。例えば、米国特許第2,537,283号; 同第3,211,801号; 同第3,270,085号; 同第3,327,014号; 同第3,304,343号; 同第3,448,164号; 同第4,593,146号; 同第3,723,564号及び同第6,281,404号を参照のこと。
【0057】
フィッシャー・トロプシュアルファオレフィン(α-オレフィン)を、対応する内部オレフィンに異性化した後、エポキシ化することができる。次いで、エポキシドを、エポキシド開環とそれに続く適切なカルボン酸又はそれらのアシル化誘導体によるジアシル化(すなわち、ジエステル化)を介して、対応するジオールに変換することができる。アルファオレフィン、特に短鎖アルファオレフィンのジエステルは固体又はワックスになりやすいため、典型的には、アルファオレフィンを内部オレフィンに変換する必要がある。アルファオレフィンを「内部移行」し、その後、ジエステル官能基に変換すると、鎖に沿って分岐が導入され、目的の生成物の流動点が低減される。極性特性を有するエステル基は、最終生成物の粘度をさらに高めるであろう。エステル分岐を付加すると、炭素数が増加し、それにより粘度が増加する。また、それは、関連する流動点及び曇り点も低下させることができる。いくつかの実施形態では、分岐の増加は粘度指数(VI)を低下させる傾向があるため、多くの短い分岐ではなく、少数の長い分岐が存在し得る。
【0058】
エポキシ化のステップ(すなわち、エポキシ化ステップ)に関して、いくつかの実施形態では、上記のオレフィン(一実施形態では内部オレフィン)を過酸化物(例えば、H2O2)又はペルオキシ酸(例えば、ペルオキシ酢酸)と反応させて、エポキシドを生成することができる。例えば、D. Swern、in Organic Peroxides 第II巻、Wiley-Interscience、New York、1971、第355-533頁; 及びB. Plesnicar、in Oxidation in Organic Chemistry、第C部、W. Trahanovsky (編)、Academic Press、New York 1978、第221-253頁を参照のこと。四酸化オスミウム(M. Schroder、Chem. Rev. 第80巻、第187頁、1980)及び過マンガン酸カリウム(Sheldon and Kochi、in Metal-Catalyzed Oxidation of Organic Compounds、第162-171及び294-296頁、Academic Press、New York、1981)などの高度に選択的な試薬により、オレフィンを対応するジオールに効率的に変換することができる。
【0059】
対応するジオールへのエポキシド開環のステップに関して、このステップは、酸触媒加水分解又は塩基触媒加水分解であり得る。例示的な酸触媒としては、以下に限定されないが、鉱物系ブレンステッド酸(例えば、HCl、H2SO4、H3PO4、ペルハロゲネート(perhalogenate)など)、ルイス酸(例えば、TiCl4及びAlCl3)、固体酸、例えば、酸性アルミナ及びシリカ又はそれらの混合物などが挙げられる。例えば、Chem. Rev. 第59巻、第737頁、1959; 及びAngew. Chem. Int. Ed.、第31巻、第1179頁、1992を参照のこと。塩基触媒加水分解は、典型的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液などの塩基の使用を含む。
【0060】
エステル化ステップ(エステル化)に関して、典型的には、ジオールの-OH基とカルボン酸(複数可)との間の反応を触媒するために酸を使用する。好適な酸としては、以下に限定されないが、硫酸(Munch-Peterson、Org. Synth.、V、第762頁、1973)、スルホン酸(Allen and Sprangler、Org. Synth.、III、第203頁、1955)、塩酸(Eliel et al.、Org. Synth.、IV、第169頁、1963)、及び(特に)リン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、最初に、このステップに使用されるカルボン酸は、塩化アシルに変換される(例えば、塩化チオニル又はPCl3を経て)。あるいは、塩化アシルを直接使用することができる。塩化アシルが使用される場合、酸触媒は不要であり、典型的には、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はトリエチルアミン(TEA)などの塩基を添加して、生成されたHClと反応させる。ピリジン又はDMAPが使用される場合、より反応性の高いアシル化中間体を形成することによって、これらのアミンが触媒としても作用すると考えられる。例えば、Fersh et al.、J. Am. Chem. Soc.、第92巻、第5432-5442頁、1970; 及びHofle et al.、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、第17巻、第569頁、1978を参照のこと。
【0061】
オレフィンの供給源にかかわらず、いくつかの実施形態では、上記の方法に使用されるカルボン酸は、バイオマスから誘導される。いくつかのそのような実施形態では、これは、バイオマスからの一部の油(例えば、トリグリセリド)成分の抽出、及び遊離カルボン酸を形成するための、油成分を構成するトリグリセリドの加水分解を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、トリエステル成分は、以下の化学構造を有する:
【0063】
【化2】
[式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立して、C2~C20炭化水素基(2~20個の炭素原子を有する炭化水素基)から選択され、「n」は、2~20の整数である]。
【0064】
R1、R2、R3及びR4、及びnの選択は、いくつかの基準のいずれか又は全てに従うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、R1、R2、R3及びR4及びnは、100℃の温度での組成物の動粘性率が、典型的には約3mm2/秒以上であるように選択される。いくつかの又は他の実施形態では、R1、R2、R3、及びR4及びnは、得られる完成油の流動点が、約-10℃以下、例えば約-25℃又は約-40℃又はそれ未満であるように選択される。いくつかの実施形態では、R1は、6~12個の総炭素数を有するように選択される。これらの又は他の実施形態では、R2は、1~20個の炭素数を有するように選択される。これらの又は他の実施形態では、R3及びR4は、4~36個の合算した炭素数を有するように選択される。これらの又は他の実施形態では、nは、5~10の整数であるように選択される。実施形態に応じて、得られる当該トリエステル種は、典型的には、約400amu又は約450amuから、約1000amu又は約1100amuまでの分子質量を有し得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、エステル成分は、そのトリエステル成分に関して実質的に同種であってよい。いくつかの他の実施形態では、トリエステル成分は、種々のトリエステル種(すなわち、混合物)を含む。これらの又は他の実施形態では、そのような上記のトリエステル成分は、1つ以上のトリエステル種をさらに含む。
【0066】
上記の実施形態のいくつかでは、トリエステル成分は、9,10-ビス-アルカノイルオキシ-オクタデカン酸アルキルエステル型の1つ以上のトリエステル種並びにその異性体及び混合物を含み、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、及びオクタデシルからなる群から選択され; アルカノイルオキシは、エタノイルオキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ウンデカノイルオキシ、ドデカノイルオキシ、トリデカノイルオキシ、テトラデカノイルオキシ、ペンタデカノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、及びオクタデカノイルオキシからなる群から選択され、9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル及び9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステルが例示的な当該トリエステルである。
【0067】
トリエステル種を調製する1つの方法は、米国特許第7,544,645号に記載される。いくつかの実施形態では、トリエステル種を製造するプロセスは、10~22個の炭素数を有する一価不飽和脂肪酸(又は一価不飽和脂肪酸の量)をアルコールでエステル化して(すなわち、エステル化に供して)不飽和エステル(又はその量)を形成するステップ; 不飽和エステルをエポキシ化して、エポキシド環を含むエポキシ-エステル種を形成するステップ; エポキシ-エステル種のエポキシド環を開裂させジヒドロキシ-エステルを形成するステップ; 及びジヒドロキシ-エステルをエステル化種でエステル化してトリエステル種を形成するステップであって、当該エステル化種は、カルボン酸、ハロゲン化アシル、無水アシル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され; 当該エステル化種は、2~19個の炭素数を有する、ステップを含む。
【0068】
別の実施形態では、この方法は、一価飽和脂肪酸を対応する不飽和アルコールに還元するステップを含み得る。次いで、不飽和アルコールをエポキシ脂肪アルコールにエポキシ化する。エポキシ脂肪アルコールを開環して、対応するトリオールを製造し; 次いで、トリオールをエステル化種でエステル化して、トリエステル種を形成し、エステル化種は、カルボン酸、ハロゲン化アシル、無水アシル及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、エステル化種は、2~19個の炭素数を有する。前述の方法によって調製されるトリエステルの構造は以下の通りであろう:
【0069】
【化3】
[式中、R2、R3及びR4は、独立して、C2~C20炭化水素基から選択され、例えば、C4~C12炭化水素基から選択される]。
【0070】
別の実施形態では、この方法は、一価飽和脂肪酸を対応する不飽和アルコールに還元するステップ; 不飽和アルコールをエポキシ脂肪アルコールにエポキシ化するステップ; 及び脂肪アルコールエポキシドをエステル化種でエステル化して、トリエステル種を形成するステップであって、エステル化種は、カルボン酸、ハロゲン化アシル、無水アシル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、エステル化種は2~19個の炭素数を有する、ステップを含み得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、ある量のトリエステル種が形成される場合、その量のトリエステル種は、実質的に同種であってもよく、又は2つ以上の異なる当該トリエステル種の混合物であってもよい。加えて又は代わりに、いくつかの実施形態では、当該方法は、トリエステル組成物(複数可)を1つ以上のジエステル種と混合するステップをさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、当該方法は、9,10-ビス-アルカノイルオキシ-オクタデカン酸アルキルエステル型の少なくとも1つのトリエステル種、並びにその異性体及び混合物を含む組成物を製造し、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルからなる群から選択され; アルカノイルオキシは、エタノイルオキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ウンデカノイルオキシ、ドデカノイルオキシ、トリデカノイルオキシ、テトラデカノイルオキシ、ペンタデカノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、及びオクタデカノイルオキシからなる群から選択される。例示的な当該トリエステルとしては、以下に限定されないが、9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル; 9,10-ビス-オクタノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル; 9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル; 9,10-ビス-ドデカノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル; 9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステル; 9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステル; 9,10-ビス-オクタノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステル; 9,10-ビス-ドデカノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステル; 9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸オクチルエステル; 9,10-ビス-オクタノイルオキシ-オクタデカン酸オクチルエステル: 9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸オクチルエステル; 9,10-ビス-ドデカノイルオキシ-オクタデカン酸オクチルエステル; 9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸ドデシルエステル; 9,10-ビス-オクタノイルオキシ-オクタデカン酸ドデシルエステル; 9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸ドデシルエステル; 9,10-ビス-ドデカノイルオキシ-オクタデカン酸ドデシルエステル; 及びそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
いくつかのそのような上記の方法の実施形態では、一価不飽和脂肪酸は、生物由来の脂肪酸であってもよい。いくつかの又は他のそのような上記の方法の実施形態では、アルコール(複数可)は、FT生成アルコールであってもよい。
【0074】
いくつかの方法の実施形態では、一価不飽和脂肪酸をエステル化するステップ(すなわち、エステル化)は、例えばH2SO4を触媒として使用した、アルコールを用いた酸触媒反応により進行することができる。いくつかの又は他の実施形態では、エステル化は、ハロゲン化アシル(塩化物、臭化物、又はヨウ化物)又は無水アシルへの脂肪酸(複数可)の変換と、それに続くアルコールを用いた反応により進行することができる。
【0075】
エポキシ化のステップ(すなわち、エポキシ化ステップ)に関して、いくつかの実施形態では、上記の一価不飽和エステルを過酸化物(例えば、H2O2)又はペルオキシ酸(例えば、ペルオキシ酢酸)と反応させて、エポキシ-エステル種を生成することができる。例えば、D. Swern、in Organic Peroxides 第II巻、Wiley-Interscience、New York、1971、第355-533頁; 及びB. Plesnicar、in Oxidation in Organic Chemistry、第C部、W. Trahanovsky (編)、Academic Press、New York 1978、第221-253頁を参照のこと。加えて又は代わりに、四酸化オスミウム(M. Schroder、Chem. Rev. 第80巻、第187頁、1980)及び過マンガン酸カリウム(Sheldon and Kochi、in Metal-Catalyzed Oxidation of Organic Compounds、第162-171及び294-296頁、Academic Press、New York、1981)などの高度に選択的な試薬により、一価不飽和エステルのオレフィン部分を対応するジヒドロキシエステルに効率的に変換することができる。
【0076】
対応するジヒドロキシ-エステルへのエポキシド開環のステップに関して、このステップは、通常、酸触媒加水分解である。例示的な酸触媒としては、以下に限定されないが、鉱物系ブレンステッド酸(例えば、HCl、H2SO4、H3PO4、ペルハロゲネートなど)、ルイス酸(例えば、TiCl4及びAlCl3)、固体酸、例えば、酸性アルミナ及びシリカ又はそれらの混合物などが挙げられる。例えば、Chem. Rev. 第59巻、第737頁、1959; 及びAngew. Chem. Int. Ed.、第31巻、第1179頁、1992を参照のこと。ジオールへのエポキシド開環はまた、KOH又はNaOHの水溶液を使用した塩基触媒加水分解によって達成することができる。
【0077】
ジヒドロキシ-エステルをエステル化してトリエステルを形成するステップに関して、典型的には、ジオールの-OH基とカルボン酸(複数可)との間の反応を触媒するために酸を使用する。好適な酸としては、以下に限定されないが、硫酸(Munch-Peterson、Org. Synth.、V、第762頁、1973)、スルホン酸(Allen and Sprangler、Org Synth.、III、第203頁、1955)、塩酸(Eliel et al.、Org Synth.、IV、第169頁、1963)、及び(特に)リン酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、最初に、このステップに使用されるカルボン酸は、塩化アシル(又は別のハロゲン化アシル)に変換される(例えば、塩化チオニル又はPCl3を経て)。あるいは、塩化アシル(又は別のハロゲン化アシル)を直接使用することができる。塩化アシルが使用される場合、酸触媒は不要であり、典型的には、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)又はトリエチルアミン(TEA)などの塩基を添加して、生成されたHClと反応させる。ピリジン又はDMAPが使用される場合、より反応性の高いアシル化中間体を形成することによって、これらのアミンが触媒としても作用すると考えられる。例えば、Fersh et al.、J. Am. Chem. Soc.、第92巻、第5432-5442頁、1970; 及びHofle et al.、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、第17巻、第569頁、1978を参照のこと。加えて又は代わりに、カルボン酸を無水アシルに変換することができ、及び/又はそのような種を直接使用することができる。
【0078】
一価不飽和脂肪酸の供給源にかかわらず、いくつかの実施形態では、上記の方法に使用されるカルボン酸(又はそれらのアシル誘導体)は、バイオマスから誘導されてもよい。いくつかのそのような実施形態では、これは、バイオマスからの一部の油(例えば、トリグリセリド)成分の抽出、及び遊離カルボン酸を形成するための、油成分を構成するトリグリセリドの加水分解を含む。
【0079】
上記方法で一価不飽和脂肪酸にオレイン酸を使用するいくつかの特定の実施形態では、得られるトリエステルは、以下の型のものである:
【0080】
【化4】
[式中、R2、R3及びR4は、独立して、C2~C20炭化水素基から選択され、例えば、C4~C12炭化水素基から選択される]。
【0081】
上に概説されるものに従った合成戦略を用いて、オレイン酸をトリエステル誘導体(9,10-ビス-ヘキサノイルオキシ-オクタデカン酸ヘキシルエステル)及び(9,10-ビス-デカノイルオキシ-オクタデカン酸デシルエステル)に変換することができる。最初にオレイン酸をエステル化し、一価不飽和エステルを生成する。一価不飽和エステルをエポキシ化剤に供し、エポキシ-エステル種を得て、これを開環させてジヒドロキシエステルを生成し、次いで、これを塩化アシルと反応させてトリエステル生成物を生成することができる。
【0082】
上記の合成戦略は、二重結合エポキシ化とそれに続くエポキシド開環によりジオールに変換することによって、オレイン酸における二重結合官能性を利用する。したがって、この合成は、オレイン酸を適切なオレイン酸アルキルに変換することによって開始し、その後、エポキシ化、及び対応するジオール誘導体(ジヒドロキシエステル)へのエポキシド開環が続く。
【0083】
上記プロセスにおける変形(すなわち、代替実施形態)としては、以下に限定されないが、異性体オレフィンの混合物及び/又は異なる炭素数を有するオレフィンの混合物の利用が挙げられる。これは、エステル成分中のジエステル混合物及びトリエステル混合物をもたらし得る。
【0084】
上記プロセスにおける変形としては、以下に限定されないが、FTアルコールから酸化により誘導されたカルボン酸の使用が挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ベースストックは、1つ以上のPAOと1つ以上のエステルとの混合物を含む。
【0086】
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤(PANA)は、以下の式のものであってよい
【0087】
【化5】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]。
【0088】
いくつかの実施形態では、PANA酸化防止剤は、以下の式のものである
【0089】
【化6】
[式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H又はC1~C18アルキルである]。特定の実施形態では、R2は、Hであり、R1は、分岐鎖C4~C12アルキル、例えば、t-ブチル、t-オクチル又は分岐ノニルである。
【0090】
ジフェニルアミン(DPA)酸化防止剤は、以下の式のものであってもよい
【0091】
【化7】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]。
【0092】
特定の実施形態では、ジフェニルアミン酸化防止剤は、以下の式のものであってもよい
【0093】
【化8】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル又はC7~C21アラルキルである]。特定の実施形態では、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、tert-ブチル、tert-オクチル又は分岐ノニルである。
【0094】
アルキル基は直鎖又は分岐鎖であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルブチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、1,1,3-トリメチルヘキシル、1,1,3,3-テトラメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、1-メチルウンデシル、ドデシル、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルヘキシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシルを含む。本明細書で言及されるアルキル基は、直鎖又は分岐鎖である。
【0095】
アルコキシ基、アルキルアミン基、ジアルキルアミノ基及びアルキルチオ基のアルキル部分は、直鎖又は分岐鎖であり、上記のアルキル基を含む。
【0096】
アルケニルは、不飽和アルキル、例えばアリルである。アルキニルは、三重結合を含む。
【0097】
アラルキルとしては、ベンジル、α-メチルベンジル、α,α-ジメチルベンジル、2-フェニルエチル及び2-フェニル-2-プロピルが挙げられる。
【0098】
シクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。
【0099】
実施形態によれば、好適な硫黄含有添加剤は、最大7個の炭素原子を含む硫黄含有添加剤であってもよい。一実施形態では、硫黄含有添加剤は、硫化イソブチレン(例えば、CAS#68425-15-0、CAS#68937-96-2、CAS#68511-50-2)であってもよい。硫黄含有添加剤は、例えば様々な数の硫黄原子を有する、硫黄化合物の混合物を含んでもよい。
【0100】
例えば、硫黄化合物の混合物は、1個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン、2個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン、3個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン、4個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン、5個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン、及びそれらの混合物を含んでもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、硫黄化合物の混合物は、以下を含んでもよい: 1)約2.5%~約12.5%、約5%~約10%、又は約7%~約8%の、1個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン; 2)約32.5%~約42.5%、約35%~約40%、又は約37%~約38%の、2個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン; 3)約30%~約40%、約32.5%~約37.5%、又は約34%~約36%の、3個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン; 4)約5%~約15%、約7.5%~約12.5%、又は約9%~約11%の、4個の硫黄原子を有する硫化イソブチレン; 5)約1%~約11%、約4%~約9%、又は約6%~約7%の、5個の炭素原子を有する硫化イソブチレン; 又は1)~5)のいずれか1つの任意の混合物。
【0102】
いくつかの実施形態では、潤滑剤組成物は、硫黄含有ヒンダードフェノール化合物(例えば、CAS#41484-35-9)、硫黄含有防錆剤、硫黄含有摩擦調整剤、及び硫黄含有耐摩耗添加剤を含む、少なくとも1つの追加の硫黄含有潤滑剤添加剤をさらに含んでもよい。
【0103】
硫黄含有ヒンダードフェノール化合物としては、アルキルチオメチルフェノール、例えば、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-エチルフェノール又は2,6-ジ-ドデシルチオメチル-4-ノニルフェノール; ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば、2,2'-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)又は4,4'-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド; S-ベンジル化合物、例えば、オクタデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジルメルカプトアセテート、ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド又はイソオクチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルメルカプトアセテート; 及びβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸又はβ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-チア酪酸と、硫黄含有一価若しくは多価アルコール、例えば、チオジエチレングリコール、3-チアウンデカノール又はチアペンタデカノールとのエステルが挙げられる。
【0104】
硫黄含有防錆剤としては、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム、石油スルホン酸カルシウム、アルキルチオ置換脂肪族カルボン酸、脂肪族2-スルホカルボン酸のエステル及びそれらの塩が挙げられる。
【0105】
硫黄含有摩擦調整剤は、例えば、有機モリブデンジチオカルバメート、有機モリブデンジチオホスフェート、並びに分散剤及び二硫化モリブデンに基づく有機モリブデン化合物から選択してもよい。
【0106】
硫黄含有耐摩耗添加剤としては、硫化オレフィン及び植物油、ジアルキルジチオホスフェートエステル、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル及びアリールジ-及びトリスルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールの誘導体、エチル(ビスイソプロピルオキシホスフィノチオイル)-チオプロピオネート、トリフェニルチオホスフェート(トリフェニルホスホロチオエート)、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート及びそれらの混合物(例えば、トリス(イソノニルフェニル)ホスホロチオエート)、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3-ヒドロキシ-1,3-チアホスフェタン3-オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5-トリス-イソオクチル2-アセテート、2-メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、例えば、1-N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル-2-メルカプト-1H-1,3-ベンゾチアゾール、及びエトキシカルボニル5-オクチルジチオカルバメート; 及びジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩が挙げられ、金属は、アルミニウム、鉛、スズ、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛又は銅であってもよい。
【0107】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛塩は、以下のように表してもよい
【0108】
【化9】
[式中、R及びR'は、独立して、C1~C20アルキル、C3~C20アルケニル、C5~C12シクロアルキル、C7~C13アラルキル又はC6~C10アリールであり、例えば、R及びR'は、独立して、C1~C12アルキルである]。
【0109】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に含まないか、又は含まなくてもよい。用語「実質的に含まない」は、「意図的に添加されていない」を意味してもよく、例えば、全組成物の重量に基づいて、≦1000重量ppm、≦750重量ppm、≦500重量ppm、≦250重量ppm、≦1000重量ppm、≦75重量ppm、≦50重量ppm、≦25重量ppm、≦10重量ppm、≦5重量ppm、≦2重量ppm又は≦1重量ppmのジアルキルジチオリン酸亜鉛(又は他の参照成分)が存在してよいことを意味し得る。
【0110】
ジアルキルジチオリン酸エステルは、以下のように表してもよい
【0111】
【化10】
[式中、R5及びR6は、互いに独立して、C3~C18アルキル、C5~C12シクロアルキル、C5~C6シクロアルキルメチル、C9~C10ビシクロアルキルメチル、C9~C10トリシクロアルキルメチル、フェニル又はC7~C24アルキルフェニルであり、又は一緒になって(CH3)2C(CH2)2であり、R7及びR8は、独立して、水素又はC1~C18アルキルである]。例えば、ジアルキルジチオリン酸エステル、CAS#268567-32-4がある。
【0112】
いくつかの実施形態では、硫黄含有添加剤は、硫化オレフィンを含む。好適なオレフィンとしては、イソブチレン、他のブチレン、ペンテン、プロペン、それらの混合物、及びそれらのオリゴマーが挙げられる。特定の実施形態では、硫黄含有添加剤は、硫化イソブチレンを含む。硫化オレフィンは、例えば、米国特許第3,471,404号、同第3,697,499号、同第3,703,504号、同第4,194,980号、同第4,344,854号、同第5,135,670号、同第5338,468号及び同第5,849,677号に記載される。硫化オレフィンは、硫黄含有ポリオレフィン、例えば、米国特許第6,410,491号及びUS2005/0153850に記載されるような、硫黄含有ポリイソブチレン化合物を含む。一般に、硫化オレフィンは、オレフィン又はオレフィン系オリゴマー若しくはポリマー、例えば、イソブチレン又はポリイソブチレンを、硫黄源、例えば、元素硫黄、硫化水素又は硫酸で処理することによって調製してもよい。硫化オレフィンは、硫化ポリオレフィンを含み、例えば、硫化イソブチレンは、硫化ポリイソブチレンを含む。
【0113】
特定の実施形態では、硫黄含有添加剤は、1つ以上のジ-tert-アルキルポリスルフィド、例えば、ジ-tert-ブチルポリスルフィド(CAS#68937-96-2)、ジ-tert-ドデシルポリスルフィド(CAS#68425-15-0)又はジ-tert-ノニルポリスルフィドを含んでもよい。
【0114】
1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及び1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤は、合計で、配合された潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.20wt%(重量パーセント)、約0.25wt%、約0.30wt%、約0.35wt%、約0.40wt%、約0.45wt%又は約0.50wt%のいずれかから、約0.55wt%、約0.60wt%、約0.65wt%、約0.70wt%、約0.75wt%又は約0.80wt%のいずれかまで存在してもよい。
【0115】
1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及び1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤は、約1/9、約1/8、約1/7、約1/6、約1/5、約1/4、約1/3、約1/2又は約1/1のいずれかから、約2/1、約3/1、約4/1、約5/1、約6/1、約7/1、約8/1又は約9/1のいずれかまでの重量/重量比で存在してもよい。特定の実施形態では、1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤と、1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤との重量/重量比は、約1/1、約1/2、約1/3又は約1/4のいずれかから、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8又は約1/9のいずれかまでであってもよい。他の実施形態では、1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤と、1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤との重量/重量比は、約1/1又は約1/2から約1/3までであってもよい。
【0116】
1つ以上の硫黄含有添加剤によって提供される硫黄は、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm(百万分率)、約75重量ppm、約100重量ppm、約125重量ppm、約150重量ppm、約175重量ppm、約200重量ppm、約225重量ppm、約250重量ppm、約275重量ppm、約300重量ppm、約325重量ppm、約350重量ppm、約375重量ppm、約400重量ppm又は約425重量ppmのいずれかから、約450重量ppm、約475重量ppm、約500重量ppm、約525重量ppm、約550重量ppm、約575重量ppm、約600重量ppm、約625重量ppm、約650重量ppm、約675重量ppm、約700重量ppm、約725重量ppm、約750重量ppm、約775重量ppm、約800重量ppm、約825重量ppm、約850重量ppm、約875重量ppm、約900重量ppm、約925重量ppm、約950重量ppm、約975重量ppm、又は約1000重量ppmのいずれかまで存在してもよい。
【0117】
潤滑剤組成物は、さらなる酸化防止剤、耐摩耗剤、分散剤、洗浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、極圧添加剤、抗発作剤、ワックス調整剤、粘度指数改善剤、粘度調整剤、流体損失添加剤、シール適合剤、有機金属摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、解乳化剤、乳化剤、緻密化剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤及びその他からなる群から選択される1つ以上の非硫黄含有潤滑剤添加剤をさらに含んでもよい。
【0118】
特定の実施形態では、潤滑剤組成物は、添加剤パッケージを含んでもよく、添加剤パッケージは、a)1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤、及び/又はb)1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤; 及びc)1つ以上の硫黄含有添加剤を含み; c)は、a)+b)+c)の総重量に基づいて、約2wt%~約30wt%存在する。a)対b)の重量/重量比は、上のようにさらに記載してもよい。いくつかの実施形態では、成分c)は、a)+b)+c)の総重量に基づいて、約2wt%、約5wt%、約10wt%、約15wt%又は約20wt%のいずれかから、約25wt%、約30wt%のいずれかまで存在してもよい。いくつかの実施形態では、a)対b)の重量/重量比は、約1/1~約1/9である。
【0119】
添加剤パッケージは、1つ以上の非硫黄含有潤滑剤添加剤、例えば、1つ以上の消泡剤及び/又は1つ以上の腐食防止剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、添加剤パッケージは、配合された潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.30wt%(重量パーセント)、約0.35wt%、約0.40wt%、約0.45wt%、約0.50wt%、約0.55wt%又は約0.60wt%のいずれかから、約0.65wt%、約0.70wt%、約0.75wt%、約0.80wt%、約0.85wt%又は約0.90wt%のいずれかまで存在してもよい。
【0120】
基油、1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤、1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤、1つ以上の硫黄含有添加剤、及び任意選択のさらなる添加剤は、合計で、100重量%に等しい。
【0121】
さらなる添加剤としては、以下の防止剤、防錆添加剤及び金属不活性化剤が挙げられる。
【0122】
防錆添加剤(又は腐食防止剤)は、水又は他の汚染物質による化学的攻撃に対して潤滑金属表面を保護する添加剤である。これらの多種多様なものが市販されている。好適な腐食防止剤は、アルケニルコハク酸及びカルボン酸又はそれらのエステルを、アミンリン酸塩と共に含む。金属不活性化剤は、トリアゾール誘導体を含む。
【0123】
防錆添加剤の1つのタイプは、金属表面を優先的に湿らし、油膜でそれを保護する極性化合物である。防錆添加剤の別のタイプは、油のみが金属表面に接触するように、水を油中水型エマルジョンに組み込むことによって水を吸収する。さらに別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に付着して、非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、金属フェノラート、塩基性金属スルホン酸塩、脂肪酸及びアミンが挙げられる。このような添加剤は、0.01~5重量パーセント、好ましくは0.01~1.5重量パーセントの量で使用してもよい。
【0124】
本添加剤組成物は、それ自体公知の方法で潤滑剤に導入することができる。化合物は、油に容易に溶解する。それらは潤滑剤に直接添加されてもよく、又は、ナフサ、ベンゼン、トルエン及びキシレンなどの有機溶媒などの実質的に不活性な、通常は液体の有機希釈剤、又は通常は液体の油又は燃料で希釈されて、添加剤濃縮物又はマスターバッチを形成することができる。添加剤濃縮物は、希釈剤として、エステルベースストックなどのベースストックを含んでもよい。特定の実施形態では、添加剤濃縮物は、モノメチルテトラグリムなどのグリムなどの溶媒を含む。これらの濃縮物は、一般に、約10重量%~約90重量%の添加剤を含有し、1つ以上の他の追加の添加剤を含有してもよい。本添加剤組成物は、添加剤パッケージの一部として導入してもよい。
【0125】
本開示の添加剤組成物は、本明細書に開示される1つ以上の液体添加剤、例えば、本明細書に言及される1つ以上の液体分散剤、洗浄剤、耐摩耗添加剤、腐食防止剤又は酸化防止剤で有利に希釈して、酸化防止剤添加剤パッケージを調製してもよい。
【0126】
用語「基油」は、「ベースストック」、「潤滑性基油」又は「潤滑性ベースストック」と同義である。
【0127】
用語「完全配合潤滑油」は、ベースストック及び添加剤パッケージを含有する使用のための完成潤滑油を意味し、「配合油」又は「完成油」と同義である。
【0128】
「センチストーク」、略して「cSt」は、流体(例えば、潤滑剤)の動粘性率の単位であり、1センチストークは、1秒あたり1ミリメートルの2乗に等しい(1cSt=1mm2/s)。
【0129】
いくつかの実施形態における潤滑剤組成物は、100℃で、約2cSt、約3cSt、約4cSt、約5cSt、約6cSt又は約7cStのいずれか1つから、約8cSt、約9cSt、約10cSt、約11cSt、約12cSt、約13cSt、約14cSt、約15cSt、約16cSt、約17cSt、約18cSt、約19cSt又は約20cStのいずれか1つまでの動粘性率を有する。
【0130】
本明細書の冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ又は複数(例えば、少なくとも1つ)の文法的目的語を指す。本明細書で引用される任意の範囲は包括的である。全体を通して使用される用語「約」は、わずかな変動を記載及び説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%又は±0.05%変更されてよいことを意味し得る。全ての数値は、明示的に示されているか否かに関係なく、用語「約」で修飾される。用語「約」で修飾された数値は、具体的な識別値を含む。例えば、「約5.0」は5.0を含む。
【0131】
本明細書で論じられる米国特許、米国特許出願、及び公開された米国特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
別段示されない限り、全ての部及びパーセンテージは重量によるものである。別段示されない限り、重量パーセント(wt%)は、いずれの揮発性物質も含まない組成物全体に基づく。
【実施例
【0133】
実施例1
配合物A~Fを提供するために、タービン基油を、以下に概説するように添加剤と一緒に配合する。添加剤の量は、配合物の総重量に基づいて、重量ppm(百万分率)である。総重量の残部は、群III基油である。配合物B、D及びFは本発明である。配合物A、C及びEは比較である。PANAは、アルキル化N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤である。DPAは、アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤である。硫黄添加剤は、ジ-tert-アルキルポリスルフィドである。腐食防止剤A及びBは、それぞれ、アルケニルコハク酸ハーフエステル+アミンリン酸塩及びカルボン酸+アミンリン酸塩である。金属不活性化剤は、トリアゾール誘導体である。希釈剤は、グリコールタイプの希釈剤である。
【0134】
【表2】
【0135】
回転圧力容器酸化試験(RPVOT-ASTM D2272)による試験結果(分)、並びに作動油、航空機タービンエンジン潤滑剤、及び他の高度に精製された油の腐食性及び酸化安定性についての標準試験方法(ASTM D4636)による試験結果が以下に見出される。金属についての質量変化は、mg/cm2で報告される。酸価の増加は、mgKOH/gで報告される。
【0136】
【表3】
【0137】
本発明の配合物B、D及びFは、ASTM D2272試験及びASTM D4636試験によれば優れている。
【0138】
実施例2
配合物A~Eを提供するために、タービン基油を、以下に概説するように添加剤と一緒に配合する。添加剤の量は、配合物の総重量に基づいて、重量ppm(百万分率)である。総重量の残部は、群III基油である。配合物A~Dは本発明である。配合物Eは比較である。
【0139】
PANAは、アルキル化N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤である。DPAは、アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤である。腐食防止剤A及びBは、それぞれ、アルケニルコハク酸ハーフエステル+アミンリン酸塩及びカルボン酸+アミンリン酸塩である。金属不活性化剤は、トリアゾール誘導体である。希釈剤は、グリコールタイプの希釈剤である。
【0140】
【表4】
【0141】
回転圧力容器酸化試験(RPVOT-ASTM D2272)による試験結果(分)、並びに作動油、航空機タービンエンジン潤滑剤、及び他の高度に精製された油の腐食性及び酸化安定性についての標準試験方法(ASTM D4636)による試験結果が以下に見出される。金属についての質量変化は、mg/cm2で報告される。酸価の増加は、mgKOH/gで報告される。
【0142】
【表5】
【0143】
本発明の配合物A~Dは、ASTM D2272試験及びASTM D4636試験によれば優れている。
【0144】
本発明の配合物B~Dの優れた性能は、対照配合物Eと比較してRPVOT保持時間における顕著な改善を示すため、ASTM D2272試験から明らかである。
【0145】
本発明の配合物A~Dの優れた性能は、対照配合物Eと比較してより低い総酸価の増加及びより低いカドミウム質量変化を示すため、ASTM D4636試験から明らかである。
(付記)
(付記1)
基油、
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び
1つ以上の硫黄含有添加剤
を含む、潤滑剤組成物。
(付記2)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.2wt%~約0.8wt%存在する、付記1に記載の潤滑剤組成物。
(付記3)
硫黄含有添加剤によって提供される硫黄濃度が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm~約1000重量ppmの範囲である、付記1又は2に記載の潤滑剤組成物。
(付記4)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化11】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化12】
[式中、
Rは、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、-C(O)C1~C18アルキル又は-C(O)アリールであり、及び
R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ、C1~C18アルキルアミノ、C1~C18ジアルキルアミノ、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル又はC7~C21アラルキルである]
のものである、付記1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記5)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化13】
[式中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H又はC1~C18アルキルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化14】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、C1~C18アルキル、C2~C18アルケニル又はC7~C21アラルキルである]
のものである、付記1~4のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記6)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤が、式
【化15】
[式中、R2は、Hであり、R1は、t-ブチル、t-オクチル又は分岐ノニルである]
のものであり; 及び
ジフェニルアミン酸化防止剤が、式
【化16】
[式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、H、tert-ブチル、tert-オクチル又は分岐ノニルである]
のものである、付記1~5のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記7)
硫黄含有添加剤が、硫黄含有ヒンダードフェノール系化合物、硫黄含有防錆剤、硫黄含有摩擦調整剤、及び硫黄含有耐摩耗添加剤からなる群から選択される、付記1~6のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記8)
2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-メチルフェノール、2,4-ジ-オクチルチオメチル-6-エチルフェノール又は2,6-ジ-ドデシルチオメチル-4-ノニルフェノール、2,2'-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4'-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4'-チオビス-(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4'-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)、4,4'-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、オクタデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジルメルカプトアセテート、ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルメルカプトアセテート、並びにβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸若しくはβ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3-チア酪酸と、チオジエチレングリコール、3-チアウンデカノール若しくはチアペンタデカノールとのエステルからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~7のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記9)
有機モリブデンジチオカルバメート、有機モリブデンジチオホスフェート、並びに分散剤及び二硫化モリブデンに基づく有機モリブデン化合物からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~8のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記10)
硫化オレフィン、硫化植物油、ジアルキルジチオホスフェートエステル、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、アルキル又はアリールジ-及びトリ-スルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールの誘導体、エチル(ビスイソプロピルオキシホスフィノチオイル)-チオプロピオネート、トリフェニルチオホスフェート、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3-ヒドロキシ-1,3-チアホスフェタン3-オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5-トリス-イソオクチル2-アセテート、2-メルカプトベンゾチアゾールの誘導体、エトキシカルボニル5-オクチルジチオカルバメート及びジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~9のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記11)
硫化オレフィンからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~10のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記12)
硫化イソブチレンからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~11のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記13)
ジ-tert-アルキルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~12のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記14)
ジ-tert-ブチルポリスルフィド、ジ-tert-ドデシルポリスルフィド及びジ-tert-ノニルポリスルフィドからなる群から選択される1つ以上の硫黄含有添加剤を含む、付記1~13のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記15)
群II、群III及び群IVの基油からなる群から選択される基油を含む、付記1~14のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記16)
ポリアルファオレフィンからなる群から選択される基油を含む、付記1~15のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記17)
合成エステルからなる群から選択される基油を含む、付記1~16のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記18)
基油が、1つ以上のポリアルファオレフィン及び1つ以上の合成エステルを含む、付記1~17のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記19)
基油が、1つ以上のポリアルキレングリコールを含む、付記1~18のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記20)
1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及び1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤を含み、N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤とジフェニルアミン酸化防止剤との重量/重量比は、約1/9~約9/1である、付記1~19のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記21)
基油が、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約80wt%~約99.7wt%存在する、付記1~20のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記22)
ジアルキルジチオリン酸亜鉛を実質的に含まない、付記1~21のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
(付記23)
a)1つ以上のN-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤、及び/又はb)1つ以上のジフェニルアミン酸化防止剤; 及び
c)1つ以上の硫黄含有添加剤
を含む、添加剤パッケージ。
(付記24)
c)が、a)+b)+c)の総重量に基づいて、約2wt%~約30wt%存在する、付記23に記載の添加剤パッケージ。
(付記25)
a)及びb)を含み、a)対b)の重量/重量比が、約1/1~約1/9である、付記23又は24に記載の添加剤パッケージ。
(付記26)
付記23~25に記載の添加剤パッケージと、有機溶媒、ベースストック及び液体潤滑剤添加剤からなる群から選択される希釈剤とを含む、添加剤濃縮物。
(付記27)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤からなる群から選択される1つ以上の酸化防止剤; 及び
1つ以上の硫黄含有添加剤
を、基油に組み込むステップを含む、潤滑剤組成物を調製する方法。
(付記28)
N-α-ナフチル-N-フェニルアミン酸化防止剤及びジフェニルアミン酸化防止剤が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.2wt%~約0.8wt%存在する、付記27に記載の方法。
(付記29)
硫黄含有添加剤によって提供される硫黄濃度が、合計で、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm~約1000重量ppmの範囲である、付記27又は28に記載の方法。
(付記30)
付記1~22のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物を、タービンギアボックス及び/若しくはタービンベアリングに、又はエンジンに添加するステップを含む、タービン又はエンジンを潤滑化させる方法。