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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】横軸ポンプ及び横軸ポンプの運転方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/046 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
F04D29/046 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021077693
(22)【出願日】2021-04-30
(65)【公開番号】P2022171192
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 憲一
(72)【発明者】
【氏名】金 成夏
(72)【発明者】
【氏名】金子 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小宮 真
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193912(JP,A)
【文献】特開平08-338389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180056(US,A1)
【文献】中国実用新案第209800345(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横軸ポンプであって、
水平方向に延びる回転軸と、
前記回転軸に固定された羽根車と、
前記羽根車が収容されるポンプケーシングと、
前記回転軸を支持する水中軸受部材と、
前記ポンプケーシング内に負圧を導入可能な、吸気弁が設けられた吸気管と、
前記吸気弁の上流側で前記吸気管に接続される入口端部と、前記水中軸受部材に接続される出口端部とを有する給液管と、
前記給液管に設けられ、前記吸気管を通る液体の一部を受け入れ可能な給液受け部と、
前記給液受け部の上流側で前記給液管に設けられる第1の弁と、
前記給液受け部の下流側で前記給液管に設けられる第2の弁と、
を備える、横軸ポンプ。
【請求項2】
前記給液受け部は、前記ポンプケーシングの外部で、前記水中軸受部材より高い位置に配置される、請求項1に記載の横軸ポンプ。
【請求項3】
前記給液管は、前記給液受け部の下流側に流量制限部材を備えており、前記流量制限部材は、前記給液受け部から出た液体の流量を制限するように構成されている、請求項1または2に記載の横軸ポンプ。
【請求項4】
前記流量制限部材は、低圧用ノズル又は弁を含む、請求項3に記載の横軸ポンプ。
【請求項5】
前記給液管は、透明な窓部を有しており、前記窓部から、前記流量制限部材を通過した液体が視認可能である、請求項3または4に記載の横軸ポンプ。
【請求項6】
前記給液管は、前記流量制限部材の上流側に、流量調整弁を有している、請求項3~5のいずれかに記載の横軸ポンプ。
【請求項7】
前記給液管は、前記流量制限部材の下流側に逆止弁を有している、請求項3~6のいずれかに記載の横軸ポンプ。
【請求項8】
前記給液受け部に、空気抜弁が設けられている、請求項1~7のいずれかに記載の横軸ポンプ。
【請求項9】
前記給液受け部に、溢流管が設けられている、請求項1~8のいずれかに記載の横軸ポンプ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の横軸ポンプの運転方法であって、
前記吸気弁を開いて前記ポンプケーシング内を吸気する共に、前記ポンプケーシングの吐出口に接続された吐出管に設けられる吐出弁を中間開度まで開き、ポンプモータを始動する第1の工程と、
前記ポンプケーシング内の満水状態が検知されたときに前記吸気弁を閉じると共に前記吐出弁を全開する、第2の工程と、を備え、
前記第1の工程は、前記第1の弁を閉じて前記第2の弁を開くことを含み、
前記第2の工程は、前記第1の弁を開くことを含む、
横軸ポンプの運転方法。
【請求項11】
前記吐出弁を閉じて前記ポンプモータを停止すると共に前記第2の弁を閉じる第3の工
程を備える、請求項10に記載の横軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、横軸ポンプ、特に揚水用または排水用に用いられる横軸ポンプに関する。本発明は、さらに、横軸ポンプの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川水などの液体を移送するために横軸ポンプが使用されている。 横軸ポンプとしては、横軸斜流ポンプ及び軸流ポンプ等が知られている。図6は、従来の横軸ポンプの一例を示す。この例では、横軸ポンプ10は、横軸斜流ポンプとして構成されている。図6に示すように、横軸ポンプ10の吸込ケーシング14の下方で、据付床1000を貫通して吸込管12が吸込ケーシング14と接続される。吸込管12は下端部の吸込口が開口している。横軸ポンプ10を始動する際の吸込側の液面は、主軸(換言すれば、回転軸)11や羽根車16の位置より低い位置にある。従って、吐出ケーシング18の吐出口に接続された開閉弁(換言すれば、吐出弁)20を閉じて、吸込ケーシング14と吐出ケーシング18内を、真空ポンプ22で真空引をおこなう。これにより、吸込管12内から吸込側の液面を上昇させ、吸込ケーシング14と吐出ケーシング18内を取扱液(換言すれば、横軸ポンプ10によって移送される液体)で満たすことができる。通常、吸込ケーシング14と吐出ケーシング18内が満水になった後に横軸ポンプ10の主軸11を回転させてポンピングを開始するとともに、開閉弁20を開く。
【0003】
ところで、一般に、横軸ポンプのポンプケーシング内で主軸の端部を支持する水中軸受部材(図6では符号24で示される)には、すべり軸受が採用される。水中軸受部材24の構成の一例を、図7に示す。
【0004】
図7の例では、軸受30が、半密封化された軸受ケース32に支持されている。図示しないポンプケーシングの外部からの潤滑油などの潤滑液が、供給配管52を介して、軸受30と主軸36との摺動部に供給(換言すれば、圧入)される。軸受ケース32には、主軸36の一方の端部を覆うように閉止板38が取り付けられ、軸受ケース32と閉止板38の間は、ポンプケーシング内の揚水が、軸受ケース32内に流入しないようにシールされている。閉止板38の開口部を通じて、供給配管52から軸受ケース32内に潤滑液が圧入される。軸受ケース32の羽根車側(図7の左側;換言すれば、閉止板38とは軸方向で反対の側)では、固定板40が、主軸11に取り付けられている。固定板40と軸受ケース32との間にオイルシール42が配置され、揚水の軸受ケース32内への流入を防止している。圧入された潤滑液は、固定板40と軸受ケース32との間から軸受ケース32の外部に流出可能である。そのため潤滑液は回収配管54からすべて回収されず、揚水中または排水中に漏れ出る可能性がある。
【0005】
図6に示す横軸ポンプ10では、据付床1000に置かれた潤滑液循環用のポンプ50からの潤滑液が、供給配管52を通して水中軸受部材24に供給される。潤滑液は、回収配管54により潤滑液循環用のポンプ50に戻される。図6には示されないが、配管52、54には、使用前の潤滑液を溜めておくタンクと使用後の潤滑液を溜めておくタンクを備えることができ、摺動熱により加熱された潤滑液を冷却するラジエーターを備えることができる。
【0006】
横軸斜流ポンプは、主として河川水などの液体を移送するので、ポンプの揚水中にスラリが含まれ得る。スラリは、日によって、または河川によって、その量が変化する。また、砂礫質または粘土質等、スラリの質も様々である。上記のようにポンプケーシングの外部から潤滑液が供給される水中軸受部材では、軸受自体は揚水から半密閉化されている。
従って、横軸ポンプは、すべり軸受の摺動部にスラリが侵入するおそれなく運転可能である。
【0007】
しかし、図7の水中軸受部材は、複雑な機構と外部から潤滑液を供給する設備を必要とする。さらに、水中軸受部材のメンテナンスを行うためにポンプが分解されると、使用時に揚水に接している部分(例えば、軸受ケース32の外面)と潤滑液に接している部分(例えば、軸受ケース32の内面)が同時に解放される。これにより、揚水が軸受30の摺動部等に入るおそれがあり、逆に、潤滑油等の潤滑液が軸受ケース32の外面等に付着するおそれがある。また、潤滑液の補給が定期的に必要となるので、補給設備のための追加の設置スペースが必要になる。従って、イニシャルコスト及びランニングコストが増加する。また、使用後の潤滑液を水中軸受部材から排出する必要があることから、軸受ケース32は、完全に密封状態にあるわけではない。しかし、ポンプから吐出される液体は、農業用または飲料用等に用いられる場合があるので、ポンプによって移送される液体に潤滑液が混入する可能性があることは、好ましくない。
【0008】
以上のような方式に対して、ポンプケーシングの外部から潤滑液を供給しない潤滑方式も提案されている。例えば、図8に示すように、軸受60を収容する軸受ケース62を、羽根車側(図8の左側)で開放させ、ポンプケーシング内の揚水の流れを受け入れる。この場合、ポンプで移送される液体は、羽根車側の回転軸64と、軸受ケース62に取り付けられた固定板66との間から、軸受ケース62の内部に流入する。これにより、軸受ケース62の内部が揚水で満たされる。すなわち、図8の方式では、ポンプによって移送される液体で軸受60の摺動部を浸すことによって潤滑が行われる。このような自己潤滑による水中軸受の場合には、ポンプによって移送される液体が、潤滑液として使用される。この方式では、 ポンプの外部から潤滑液を供給する場合に生じる設置スペース及びコストの問題を避けることができる。
【0009】
ところで、一般に、横軸ポンプでは、ポンプケーシング内の吸気を開始し、満水状態が検知された後に、主軸を回転させるモータを起動する。その後、ポンプの吐出弁が開かれ排水が開始される。しかし、満水後にポンプを起動する場合、始動電力が高くなりモータの負荷が大きくなる。また、ポンプの始動電力が高くなることは、ポンプが設置される地域の電圧降下にもつながり、好ましくない。
【0010】
そこで、ポンプケーシング内が非満水状態のときに吸気を開始するのと同時にポンプモータを起動し、満水状態が検知された後に排水を開始する、いわゆるドライ始動方式が採用される場合がある。図8で示される従来の水中軸受構成では、ポンプケーシング内の揚水の流れがそのまま潤滑液として使用されている。この構成では、ドライ始動時には、軸受60の摺動部がドライ状態のままポンプが運転されるので、摺動部を潤滑することができない。ドライ状態で回転軸64と摺接する軸受60の温度は、高い摩擦によって上昇するので、温度上昇を抑制するために軸受部の放熱構造の工夫や高価な材料を使う必要がある。
【0011】
非常用設備である排水機場は、管理運転(エンジン(モータ)、減速機、ポンプの健全性の確認)を定期的に行う必要があるが、通常河川は水位が低く、所定の運転水位まで水が達していないため排水運転をすることができない。そこで、ドライ状態で運転させて各機器の健全性を確認する場合がある。ドライ始動での管理運転を行うためには、回転軸64と摺接する軸受60の温度が高い摩擦によって上昇するので、温度上昇を抑制するために軸受部の放熱構造の工夫や高価な材料を使う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-346887号公報
【文献】特開2007-182769号公報
【文献】特開平7-217593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、ドライ始動時やドライ管理運転時にも水中軸受を潤滑することができる横軸ポンプ及び横軸ポンプの運転方法を提供することができる。また、本発明の一実施形態によれば、簡便な設備で水中軸受の潤滑を行うことができる横軸ポンプ及び横軸ポンプの運転方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、横軸ポンプであって、水平方向に延びる回転軸と、回転軸に固定された羽根車と、羽根車が収容されるポンプケーシングと、回転軸を支持する水中軸受部材と、ポンプケーシング内に負圧を導入可能な、吸気弁が設けられた吸気管と、吸気弁の上流側で吸気管に接続される入口端部と、水中軸受部材に接続される出口端部とを有する給液管と、給液管に設けられ、吸気管を通る液体の一部を受け入れ可能な給液受け部と、給液受け部の上流側で給液管に設けられる第1の弁と、給液受け部の下流側で給液管に設けられる第2の弁と、を備える、横軸ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による横軸ポンプの全体概要を示す模式図である。
図1A】給液受け部の配置の一例を説明する図である。
図2図1に示す給液管の下流側の構成を示す部分図である。
図3図1に示す水中軸受部材の詳細を示す図である。
図4】横軸ポンプの始動工程を示すフロー図である。
図5】横軸ポンプの停止工程を示すフロー図である。
図6】従来の横軸ポンプの構成例を示す図である。
図7】従来の水中軸受部材の構成例を示す図である。
図8】従来の水中軸受部材の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例を示すものであって、本願発明の技術的範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。また、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。尚、以下の説明において、「上」、「下」等の方向を示す用語は、図1等に示す横軸ポンプの設置状態における方向を意味する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態による横軸ポンプ100の全体概要を示す模式図である。横軸ポンプ100は、横軸斜流ポンプとして構成されている。しかし、他の実施形態では、横軸ポンプ100は、横軸軸流ポンプであってもよい。横軸ポンプ100は、据付床1000に据え付けられ、据付床1000を貫通する吸込管101に接続されるように構成されている。横軸ポンプ100は、ポンプケーシングとして、湾曲した管路を有する吸込ケーシング102と、吸込ケーシング102の下流側にフランジ接続される管状の吐出ケーシング104とを有する。吸込ケーシング102は、吸込口103を有し、吐出ケーシング104は、吐出口105を有する。吐出口105は、吐出弁107aを有する吐出管107に接続される。横軸ポンプ100は、略水平方向に延びる回転軸106を有する。回転軸106は、吸込ケーシング102を貫通し、吐出ケーシング104の内部まで延びる。回転軸106と吸込ケーシング102との隙間は、軸封部108により液密に封止される。
【0018】
回転軸106のポンプケーシング内の端部は、吐出ケーシング104内に配置される水中軸受部材110によって回転可能に支持される。水中軸受部材110は、回転軸106の方向に軸を揃えた略円筒形のすべり軸受(以下、軸受)112と、軸受112を支持する軸受ケース114とを備える。軸受ケース114は、内部ケーシング118の内部に、図示しないリブ等によって固定される。内部ケーシング118は、複数の案内羽根116を介して吐出ケーシング104内に固定される。
【0019】
回転軸106には、羽根車120が固定され、回転軸106の回転に伴って羽根車120が回転する。羽根車120と内部ケーシング118の内面により、水中軸受部材110を収容する空間である水中軸受室122が形成される。なお、水中軸受室122は、吐出ケーシング104の内周面と内部ケーシング118の外周面の間の空間から孤立して密閉されているのではなく、互いに液体の行き来は可能である。
【0020】
ポンプケーシングの外部に延びた回転軸106の端部は、軸継手124を介して、回転軸106を回転させるためのポンプモータ125に接続される。また、軸継手124と軸封部108との間には、吸込ケーシング102の外部において回転軸106を回転可能に支持する外部軸受126が設けられる。
【0021】
真空ポンプ128と吐出ケーシング104とが吸気管130で接続され、吸気管130には、吸気弁132、満水検知器134、及び真空破壊弁136が設けられている。吸気管130には、ストレーナ等の異物除去装置138を設けることができる。真空ポンプ128は、ポンプケーシング内部に負圧を提供し、ポンプケーシング内部を吸気することができる。真空破壊弁136は、横軸ポンプ100の始動時に閉じられ、停止時に開かれる。満水検知器134は、ポンプケーシング内部が取扱液で満たされた満水状態を検知するように構成されている。異物除去装置138は、吸気管130を通る流体から異物を除去することができる。
【0022】
横軸ポンプ100は、また、水中軸受部材110に潤滑液を供給するための給液管140を備えている。給液管140は、吸気弁132の上流側(図示の例では、満水検知器134と異物除去装置138との間)で吸気管130に接続される入口端部142を有している。換言すれば、給液管140は、吸気管130から分岐する枝管である。給液管140は、吐出ケーシング104及び内部ケーシング118の壁面を通過して、水中軸受部材110の内部につながる出口端部144を有している。こうして、本実施形態では、横軸ポンプ100の取扱液の一部を、潤滑液として水中軸受部材110に供給する。
【0023】
給液管140の入口端部142と出口端部144との間に、給液受け部146が設けられている。図1Aに、給液受け部146の配置の一例を示す。図1Aに示すように、給液受け部146は、ポンプケーシングの外部で、水中軸受部材110より高い位置に配置される。ここで、水中軸受部材110が配置される回転軸106の中心軸線の位置を、水中軸受部材110の位置Aとして定義することができる。水中軸受部材110の位置Aより高い位置Bに、給液受け部146の下面が配置される。これにより、給液受け部146内の液体を、自然流下によって軸受112に供給することができる。給液受け部146は、吸気管130から給液管140に流入した液体を受け入れ可能なタンクまたは槽の形態を有している。また、図1Aに示すように、満水検知器134が、給液受け部146より高い位置に配置されることが望ましい。具体的には、満水検知器134の本体の下面の位置Dを、給液受け部146の上面の位置Cより高く設定することが望ましい。これにより、吸気管130からの液体が、満水検知器134に入る前に給液受け部146に流入し得る。液体を受け入れる開口部(符号省略)は、給液受け部146の上壁148に形成されることができる。しかし、液体を受け入れる開口部は、給液受け部146の側壁に設けられ
てもよい。上壁148に、空気抜弁150を設けることができる。なお、空気抜弁150は、弁箱の内部にフロートが配置される既知の構成を有する空気抜弁であってよい。弁箱内に空気が溜まると水面と共にフロートが下降することにより、弁座が開放されて空気が排出される。給液受け部146には、吸気管130からの液体と空気が流入するが、溜まった空気を空気抜弁150によって逃がすことができる。上壁148は、開閉可能な蓋部を形成していてもよい。給液受け部146の容積は特に限られない。給液受け部146は、溢流管152を有することができ、給液受け部146内の液体は、開閉弁154によって、適宜、排出されてよい。
【0024】
給液受け部146は水中軸受部材110より高い位置に配置されるので、液体を、水中軸受部材110に向けて自然流下させる(例えば、滴下する)ことができる。給液管140において、給液受け部146より上流側の部分を上流側配管140aと称し、下流側の部分を下流側配管140bと称する。
【0025】
下流側配管140bは、流量制限部材156が配置される中間配管158を含む。図2は、中間配管158の構成を示す部分図である。中間配管158は、上下の配管にフランジ接続され、拡大した口径を有する拡大部160を含む。流量制限部材156は、スプレー式ノズル等の低圧用ノズル、フラップ弁等の弁部材、メッシュ状部材等、給液受け部146から水中軸受部材110に供給される液体の流量を低減することができる部材であれば、特に限定されない。液体は、流量制限部材156によって低減された流量で、水中軸受部材110に供給される。これにより、仮に給液受け部146の容積が小さい場合でも、微小量の液体を、潤滑液として比較的長い時間にわたって水中軸受部材110の軸受面に供給することができる。軸受面に対する供給流量は、毎分数ml程度にすることができる。
【0026】
流量制限部材156は、拡大部160の内部に配置されることができる。拡大部160の内部は、透明な窓部162によって可視化されてよい。図2に示されるように、流量制限部材156を通過した液体は、水滴状に滴下され得る。このような微小な流量の流れを、窓部162から目視によって確認することができる。本実施形態では、窓部162が透明な材料で形成されている。しかし、他の実施形態では、拡大部160の全体または中間配管158の全体が、透明な材料で形成されていてもよい。
【0027】
再び図1を参照すると、流量制限部材156の上流側に、流量調整弁164が設けられてよい。これにより、流量調整弁164によって流量が低減された液体を、流量制限部材156によってさらに微小な流量で、例えば滴下によって軸受面に供給することができる。しかし、流量調整弁164は、必ずしも設けられなくてよい。
【0028】
上流側配管140aに弁166が設けられており、弁166によって上流側配管140aの流路を開閉することができる。また、下流側配管140bに弁168が設けられ、弁168によって下流側配管140bの流路を開閉することができる。弁166,168は、横軸ポンプ100に備えられた図示しない制御部によって操作される電動弁であってよい。弁168の下流側に、逆止弁170を設けることができる。
【0029】
図3は、水中軸受部材110の内部構成を示す図である。図示されるように、回転軸106の外周面には、軸受112の内周面に対してすべり接触する円筒状のスリーブ106aが固定されている。スリーブ106aの外周面と軸受112の内周面との間には、非常に小さい隙間が設けられる。しかし、スリーブ106aは設けられていなくてもよい。
【0030】
軸受112は、全体として円筒状であり、内側に回転軸106及びスリーブ106aが挿通されてスリーブ106aの外周面とすべり接触する。軸受112は、軸受ケース11
4に支持されている。軸受ケース114には、回転軸106の一方の端部を覆うように閉止板172が取り付けられ、水中軸受室122の揚水が軸受ケース114と閉止板172の間を通じて軸受ケース114の内部に流れないように、シールが施されている。閉止板172と軸方向で反対の側では、軸受112と回転軸106(図示の例では、スリーブ106a)の隙間は、水中軸受室122に開口している。
【0031】
ここで、すべり面には、軸受112の内周面と外周面につながる開口112aが設けられている。軸受ケース114には、軸受112の開口112aに対応する位置に、開口114aが設けられている。つまり、水中軸受部材110は、軸受112のすべり面を貫通し、更に軸受ケース114も貫通する開口112a、114aを有している。開口112a及び開口114aは、軸受112の軸方向長さの半分より閉止板172に近い位置に配置されることが好ましい。軸受112の周方向において、開口112a及び開口114aは、水平方向に延びる回転軸106の上方(換言すれば、鉛直方向の上部;図1を参照)に配置される。この開口112a、114aを通って、給液受け部146の液体が、潤滑液として水中軸受部材110に供給され、開口174より、水中軸受部材110の外部に放出される。水中軸受部材110に供給された液体は、軸受ケース114と閉止板172によって、一方向、すなわち、回転軸106(図示の例では、スリーブ106a)と軸受112の隙間を通じて羽根車側の方向(図3の左方向)に流れ、水中軸受室122に流出する。
【0032】
(実施例)
PV値:1.1MPa・m/s、常温の使用条件下で、すべり軸受に対して回転軸を連続回転させると共に、軸受面に、0.1ml/min以上10.0ml/min以下の流量で潤滑液を供給したところ、60℃以下の安定した軸受温度が得られた。潤滑液の供給流量は、0.5ml/min以上5.0ml/min以下が好ましく、1.0ml/min以上3.0ml/min以下がより好ましい。
【0033】
横軸ポンプ100は、ドライ始動可能なポンプ、すなわち、気中運転可能なポンプである。以下、図4及び図5を参照して、横軸ポンプ100の運転方法を説明する。
【0034】
図4は、横軸ポンプ100の始動方法を説明するフロー図である。本フローは、横軸ポンプ100を始動する際に、横軸ポンプ100に備えられた図示しない制御部、またはユーザによって実行され得る。ドライ始動では、ポンプケーシング内が非満水状態のときに吸気が開始されるのと同時にポンプモータ125が起動され、満水状態が検知された後に排水が開始される。
【0035】
すなわち、予め設定された吸込水位等の始動条件が成立すると、ポンプモータ125を始動する(S10)とともに、弁操作を行う。具体的には、給液管140の上流側配管140aの弁166を閉じ(S12)、下流側配管140bの弁168を開く(S14)。これにより、給液受け部146の液体が自然流下により、流量制限部材156を介して水中軸受部材110に供給される。また、吸気弁132を開く(S16)と共に、真空破壊弁136を閉じ(S18)、吐出弁107aを中間開度(例えば、20%)に開く(S20)。なお、ポンプモータ125の始動及び弁操作は、同時に行われてもよいし、所定の順序で行われてもよい。
【0036】
吸気弁132の開弁後、真空ポンプ128を起動する(S22)。これにより、ポンプケーシング内部に負圧が導入され、ポンプケーシング内部に取扱液が吸い込まれる。
【0037】
満水検知器134によって満水状態が検知される(S24)と、吸気弁132を閉じ(S26)、真空ポンプ128を停止する(S28)。
【0038】
なお、ポンプモータ125の始動時に弁166を閉じずに開けたままとし、給液受け部146を満水にさせた後に、満水検知器134が満水状態を検知するように構成してもよい。
【0039】
次に、上流側配管140aの弁166を開き(S30)、吐出弁107aを全開に開く(S32)。これにより、吐出弁107aからの液体の排出が開始されるとともに、吐出ケーシング104内の液体の一部が給液受け部146に流入する。給液受け部146に液体が流入する際は、空気抜弁150から空気が抜け、給液受け部146は満水状態となる。横軸ポンプ100の運転中は、給液受け部146と軸受112との圧力差により、軸受112に液体が供給(例えば、滴下)される。また、横軸ポンプ100の吐出圧力が高い場合に備えて、減圧弁180を給液管140に設置してもよい。横軸ポンプ100の定格排水運転を検知する(S34)と、始動を完了する。
【0040】
なお、定格排水運転を検知する方法としては、例えば、横軸ポンプ100の吐出圧力、またはポンプモータ125の電流値により判断することができる。
【0041】
横軸ポンプ100の運転中に、万一、横軸ポンプ100の吐出圧力またはポンプモータ125の電流が所定の値に達しない場合(万一、ポンプ配管内の水が落水して無くなってしまう場合など)には、軸受112がドライ状態で運転されてしまう。しかし、そのような場合でも、給液受け部146内の液体を、自然流下により、流量制限部材156を介して水中軸受部材110に供給することができる。
【0042】
図5は、横軸ポンプ100の停止方法を説明するフロー図である。停止時には、吐出弁107aを閉じた(S40)後に、ポンプモータ125を停止する(S42)。次に、下流側配管140bの弁168を閉じ(S44)、真空破壊弁136を開く(S46)。弁168を閉じることにより、吐出ケーシング104からの液体は、給液受け部146に貯留される。真空破壊弁136を開くことによって、ポンプケーシング内部の負圧が解消する。本フローは、横軸ポンプ100を停止する際に、横軸ポンプ100に備えられた図示しない制御部、またはユーザによって実行される。
【0043】
ドライ管理運転を行う際には、給液受け部146に貯留された液体を用いることができる。具体的には、下流側配管140bの弁168を開くことにより、給液受け部146内の液体が、自然流下によって、流量制限部材156を介して水中軸受部材110に供給される。従って、ポンプ配管内に水が無くても横軸ポンプ100の運転が可能である。
【0044】
このように、本実施形態によれば、横軸ポンプ100の吐出ケーシング104内の取り扱い液の一部を、吸気管130を通して取り出し、水中軸受部材110のための潤滑液として使用することができる。吸気管130を通して取り出された液体は、給液受け部146に貯留しておくことができる。従って、横軸ポンプ100の運転が停止された後、再度の始動(すなわち気中運転の開始)に備えることができる。すなわち、始動条件が成立すると、始動に先立って弁168を開き、潤滑液の供給を開始することができる。
【0045】
給液受け部146を出た潤滑液は、流量制限部材156によって低減された微小な流量で、水中軸受部材110に供給される。従って、仮に給液受け部146の容積が小さい場合でも、微小量の潤滑液を比較的長い時間にわたって軸受面に供給することができる。上記実施例の結果に示されるように、気中運転の間、微小流量の潤滑液でも、十分に軸受温度の上昇を抑制することができる。
【0046】
給液受け部146を、水中軸受部材110より高い位置に配置することにより、微小流
量で供給される潤滑液を、水中軸受部材110に自然流下によって供給することができる。これにより、潤滑液の供給のためのポンプが不要になるので、設備コストを低減することができる。また、流量制限部材156を出る微小流量の潤滑液の流れを、給液管140の可視化された窓部162を通して、目視で容易に確認することができる。従って、必要に応じて、流量制限部材156のメンテナンスを容易に行うことができる。また、給液受け部146の上流側及び下流側に配置される弁166、168を電動弁にすることにより、横軸ポンプ100の潤滑液の供給を、自動制御により行うことが可能である。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0048】
本発明は、以下の態様を含む。
1.横軸ポンプであって、
水平方向に延びる回転軸と、
回転軸に固定された羽根車と、
羽根車が収容されるポンプケーシングと、
回転軸を支持する水中軸受部材と、
ポンプケーシング内に負圧を導入可能な、吸気弁が設けられた吸気管と、
吸気弁の上流側で吸気管に接続される入口端部と、水中軸受部材に接続される出口端部とを有する給液管と、
給液管に設けられ、吸気管を通る液体の一部を受け入れ可能な給液受け部と、
給液受け部の上流側で給液管に設けられる第1の弁と、
給液受け部の下流側で給液管に設けられる第2の弁と、
を備える、横軸ポンプ。
2.給液受け部は、ポンプケーシングの外部で、水中軸受部材より高い位置に配置される、上記1.に記載の横軸ポンプ。
3.給液管は、給液受け部の下流側に流量制限部材を備えており、流量制限部材は、給液受け部から出た液体の流量を制限するように構成されている、上記1.または2.に記載の横軸ポンプ。
4.流量制限部材は、低圧用ノズル又は弁を含む、上記3.に記載の横軸ポンプ。
5.給液管は、透明な窓部を有しており、窓部から、流量制限部材を通過した液体が視認可能である、上記3.または4.に記載の横軸ポンプ。
6.給液管は、流量制限部材の上流側に、流量調整弁を有している、上記3.~5.のいずれかに記載の横軸ポンプ。
7.給液管は、流量制限部材の下流側に逆止弁を有している、上記3.~6.のいずれかに記載の横軸ポンプ。
8.給液受け部に、空気抜弁が設けられている、上記1.~7.のいずれかに記載の横軸ポンプ。
9.給液受け部に、溢流管が設けられている、上記1.~8.のいずれかに記載の横軸ポンプ。
10.上記1.~9.のいずれかに記載の横軸ポンプの運転方法であって、
吸気弁を開いてポンプケーシング内を吸気する共に、ポンプケーシングの吐出口に接続された吐出管に設けられる吐出弁を中間開度まで開き、ポンプモータを始動する第1の工程と、
ポンプケーシング内の満水状態が検知されたときに吸気弁を閉じると共に吐出弁を全開する、第2の工程と、を備え、
第1の工程は、第1の弁を閉じて第2の弁を開くことを含み、
第2の工程は、第1の弁を開くことを含む、
横軸ポンプの運転方法。
11.吐出弁を閉じてポンプモータを停止すると共に第2の弁を閉じる第3の工程を備える、上記10.に記載の横軸ポンプ。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、横軸ポンプに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 横軸ポンプ
11 回転軸
12 吸込管
14 吸込ケーシング
16 羽根車
18 吐出ケーシング
20 開閉弁
22 真空ポンプ
24 水中軸受部材
30 軸受
32 軸受ケース
38 閉止板
40 固定板
42 オイルシール
50 ポンプ
52 供給配管
54 回収配管
60 軸受
62 軸受ケース
64 回転軸
66 固定板
100 横軸ポンプ
101 吸込管
102 吸込ケーシング
103 吸込口
104 吐出ケーシング
105 吐出口
106 回転軸
106a スリーブ
107 吐出管
107a 吐出弁
108 軸封部
110 水中軸受部材
112 軸受
112a 開口
114 軸受ケース
114a 開口
116 案内羽根
118 内部ケーシング
120 羽根車
122 水中軸受室
124 軸継手
125 ポンプモータ
126 外部軸受
128 真空ポンプ
130 吸気管
132 吸気弁
134 満水検知器
136 真空破壊弁
138 異物除去装置
140 給液管
140a 上流側配管
140b 下流側配管
142 入口端部
144 出口端部
146 給液受け部
148 上壁
150 空気抜弁
152 溢流管
154 開閉弁
156 流量制限部材
158 中間配管
160 拡大部
162 窓部
164 流量調整弁
166 電動弁
168 電動弁
170 逆止弁
172 閉止板
174 開口
180 減圧弁
1000 据付床
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8