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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】研磨パッド用組成物、研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241001BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20241001BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20241001BHJP
   C08K 5/375 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08L75/04
H01L21/304 622F
B24B37/24 C
B24B37/24 A
C08K5/18
C08K5/375
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023047202
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2020178447の分割
【原出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2023089007
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132512
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149599
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウンソン
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-501823(JP,A)
【文献】特開2015-113369(JP,A)
【文献】特開2011-202017(JP,A)
【文献】特開2011-202019(JP,A)
【文献】特開2011-202018(JP,A)
【文献】特開2000-248040(JP,A)
【文献】特開平05-125139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08G
C09D
H01L
B24B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、
前記硬化剤混合物が、含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、
前記第1硬化剤を前記第2硬化剤よりも更に多く含み、
前記第1硬化剤が、3,5-ジメチルチオ-2,6-ジアミノトルエンであり、
前記第2硬化剤が、1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)であり、
前記第1硬化剤を、組成物100重量部を基準に11重量部~18重量部の量で含み、
前記第2硬化剤を、組成物100重量部を基準に1重量部~10重量部の量で含む、組成物。
【請求項2】
前記第1硬化剤および前記第2硬化剤の含有量比が1:0.1~0.9重量比である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が硬化した後、50MPa~120MPaのモジュラスおよび90%~200%の伸び率を有し、
前記組成物が硬化した後、温度30℃、50℃および70℃における硬度がそれぞれ、50ショアD~60ショアD、50ショアD~58ショアD、および40ショアD~55ショアDである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1硬化剤は硫黄を含有する液相硬化剤であり、第2硬化剤は2個以上のベンゼン環を有するエステルを含有する固相硬化剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記固相硬化剤が、100℃~150℃の溶融点(m.p)を有する、請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、半導体の化学的機械研磨(CMP)工程に使用され得る研磨パッド用組成物、研磨パッドおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の中で化学機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、CMP)工程は、ウェーハ(wafer)のような半導体基板をヘッドに付着し、プラテン(platen)上に形成された研磨パッドの表面に接触するようにした状態で、スラリーを供給して半導体基板の表面を化学的に反応させながらプラテンとヘッドとを相対運動させ、機械的に半導体基板表面の凹凸部分を平坦化することである。
【0003】
研磨パッドは、このようなCMP工程において重要な役割を担う必須の材料として、一般的にポリウレタン系の樹脂からなる研磨層と支持層とを含み、研磨層の表面にスラリーの大きな流れを担う溝(groove)と、微細な流動をサポートする気孔(pore)とを備える。研磨層の気孔は、微細中空構造を有する固相発泡剤、揮発性液体を用いる液相発泡剤、不活性ガスのような気相発泡剤などを用いて形成されるか、または化学的反応によりガスを発生させて形成され得る。
【0004】
前記気孔を含む研磨層は、CMP工程中の半導体基板の表面と直接相互作用するので、半導体基板の表面の加工品質に影響を与える。
【0005】
特に、研磨層の成分と物性および気孔形状によってCMP工程の研磨率とスクラッチなどの欠陥(defect)発生率が敏感に変わり得る。また、研磨層をなす原料のうち、高硬度の添加物によってCMP工程中の半導体基板にスクラッチおよび表面欠陥を引き起こし得る。特に、CMP工程中、50℃以上の高温で行われる過程で、前記のような表面欠陥に起因して研磨率が低下し、これにより、半導体基板の品質が低下し得る。したがって、CMP工程中の半導体基板に発生するスクラッチおよび表面欠陥を最小化して、研磨率を向上させ得る研究が持続的に求められているのが実情である。
【0006】
併せて、CMP工程中、50℃以上の高温で行われる過程で、研磨パッドは熱的安定性が弱まり研磨率が低下することもあり、これによって半導体基板の品質が低下し得る。さらには、高温にて長時間研磨が行われる場合にも研磨率は低下する。そこで、前記問題点を解決して研磨安定性を高めるための様々な研究が進められてきた。例えば硬化剤として4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を用いて研磨率および研磨安定性を向上させる様々な方法が知られている。しかし、硬化剤としてMOCAを用いる場合、ある程度は物性特性および研磨特性を向上させ得るが、長時間使用するCMP工程では、より高い熱的安定性が求められる上、有害物質を含有しているので、人体および環境への悪影響を及ぼすため問題となっている。したがって、MOCAの使用量を減らすか、またはこれに代わり得る硬化剤を使用しつつ、50℃以上の高温においても熱的安定性に優れ、長時間行っても研磨速度の変化率が最小化することにより、研磨安定性を向上させ得る研磨パッド用組成物および研磨パッドに関する研究が切に必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するために考案されたものである。
本発明の解決しようとする技術的課題は、硬化剤の混合組成を利用することにより、優れた伸び率および硬度を確保し、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥を改善させ、研磨率をさらに向上させ得る組成物、これを用いた研磨パッドおよびその製造方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明の解決しようとする技術的課題は、適切な硬化剤の混合組成を実現することにより、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を使用しなくとも、引張強度、硬度、およびモジュラス等の物性特性および研磨率を向上させ得るのみならず、高温においても貯蔵弾性率の減少率が低いので熱的安定性に優れ、研磨安定性をさらに向上させ得る、環境にやさしい研磨パッド用組成物、これを用いた研磨パッドおよび前記研磨パッドを用いて半導体素子を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために一実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む組成物を提供する。
【0010】
他の実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤を前記第2硬化剤よりもさらに多く含む、組成物を提供する。
【0011】
また他の実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤は硫黄を含有する液相硬化剤であり、第2硬化剤は2個以上のベンゼン環を有するエステルを含有する固相硬化剤であり、重量を基準に前記固相硬化剤の含有量が前記液相硬化剤の含有量と同一またはより多い、組成物を提供する。
【0012】
また他の実現例は、ウレタン系プレポリマーを含む第1原料組成物を準備する段階と、含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む第2原料組成物を準備する段階と、発泡剤を含む第3原料組成物を準備する段階と、前記第1原料組成物を前記第2原料組成物および前記第3原料組成物と順次または同時に混合して、原料混合物を製造する段階と、前記原料混合物をモールド内に注入して硬化する段階と、を含む、研磨パッドの製造方法を提供する。
【0013】
また他の実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含む研磨層を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む、研磨パッドを提供する。
【0014】
また他の実現例は、研磨パッドを提供する段階と、前記研磨パッド上に研磨対象を配置する段階と、前記研磨対象を前記研磨パッドに対して相対回転させ、前記研磨対象を研磨する段階と、を含み、前記研磨パッドがウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む、半導体素子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
前記実現例による組成物は、含硫黄の第1硬化剤と含エステル基の第2硬化剤とを含む硬化剤混合物を使用し、必要による研磨パッドの物性を制御し得る。具体的に、前記硬化剤混合物において、第1硬化剤の含有量を第2硬化剤の含有量よりもさらに多く含ませることにより製造された研磨パッドは、CMP工程中の半導体基板の表面にスクラッチのような欠陥の発生を最小化するとともに、高い研磨率を提供し得る。また、前記硬化剤混合物において、第2硬化剤の含有量を第1硬化剤の含有量と同一またはより多く含ませることにより、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を使用しなくとも、適正範囲の引張強度およびモジュラス等の物性を満たすとともに、高温の温度変化による貯蔵弾性率の減少率を最小化することにより、熱的安定性を実現し得るので、研磨安定性をさらに向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1で製造した研磨パッド断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
図2図2は、実施例3で製造した研磨パッド断面のSEM画像である。
図3図3は、実施例5で製造した研磨パッド断面のSEM画像である。
図4図4は、比較例2で製造した研磨パッド断面のSEM画像である。
図5図5は、実施例1~5並びに比較例1および2で製造した研磨パッドの温度変化による研磨率の安定性を示すものである。
図6図6は、実施例1~5並びに比較例1および2で製造した研磨パッドを用いて半導体基板(ウェーハ)を研磨した後、半導体基板の表面上に現れる欠陥(defects)の数を示すものである。
図7図7は、実施例1~5並びに比較例1および2で製造した研磨パッドの温度変化による貯蔵弾性率を示すものである。
図8図8は、一実現例による半導体素子製造工程の概略的工程図を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実現例の説明において、各層またはパッド等が、各層またはパッド等の「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」および「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。
【0018】
また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさのことを指すものではない。
【0019】
また、本明細書に記載された構成成分の物性値、寸法等を表すすべての数値範囲は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0020】
本明細書では、用語「ヘテロアルキル」は、それ自体でまたは他の用語と組み合わせて、特に言及しない限り、明示した数の炭素原子からなり、O、N、SiおよびSからなる群より選択された1個~3個のヘテロ原子からの安定する直鎖または分岐鎖の炭化水素ラジカルのことを指し、この際、窒素および硫黄原子は任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子は任意に四級化され得る。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に位置し得る。
【0021】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、3~10の全体数の環原子を有し、N、OおよびSから選択された1個~5個のヘテロ原子を含有する飽和または部分的に不飽和された環系ラジカルのことを指し、この際、環原子として窒素および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子は環原子として任意に四級化される。特に異なる言及のない限り、「ヘテロシクロアルキル」は単環式、二患式、スピロ環式または多環式の環系であり得る。「ヘテロシクロアルキル」は、一以上の炭素環またはヘテロ原子により分子の残り部分に結合され得る。
【0022】
用語「アルキレン」は、それ自体でまたは他の置換基の一部として、-CHCHCHCH-で例示するように、アルカンから誘導された2価ラジカルのことを指す。
【0023】
用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体でまたは他の置換基の一部として、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-、-O-CH-CH=CH-、-CH-CH=C(H)CH-O-CH-、並びに-S-CH-C≡C-で例示するように、ヘテロアルキルから誘導された、飽和または不飽和の、または多重不飽和の2価ラジカルのことを指す。ヘテロ原子はまた、ヘテロアルキレン基に対して、鎖末端のいずれかまたは両方を占め得る(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。用語「ヘテロアルキレン」はまた、モノハロゲン化およびポリハロゲン化した変異体をも含み得る。
【0024】
用語「アリール」は典型的に、異なる言及のない限り、単環または一緒に融合された多環(3個以下の環)であり得る多重不飽和の芳香族炭化水素環のことを指す。用語「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択された1個~5個のヘテロ原子を含有するアリール環のことを指し、この際、窒素および硫黄原子は任意に酸化され、窒素原子は任意に四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子により分子の残りの部分に結合され得る。アリール基の非限定的な例は、フェニル基、ナフチル基、およびビフェニル基を含み、ヘテロアリール基の非限定的な例は、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、キノリニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シノリニル基、フタラジニル基、ベンゾトリアジニル基、プリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイソキサゾリル基、イソベンゾフリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンゾトリアジニル基、チエノピリジニル基、チエノピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、イミダゾピリジン基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、プテリジニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、チアゾリル基、フリル基、チエニル基等を含む。
【0025】
[組成物]
本発明の一実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む組成物を提供する。
【0026】
[第1硬化剤を第2硬化剤よりもさらに多く含む場合]
具体的に、一実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤を前記第2硬化剤よりもさらに多く含む、組成物を提供する。
【0027】
一実現例によると、前記含硫黄の第1硬化剤と前記含エステル基の第2硬化剤とを含む硬化剤混合物を使用することにより、研磨率および物性特性を向上させることができ、特に、前記硬化剤混合物において、第1硬化剤の含有量が第2硬化剤の含有量よりもさらに多いことにより、CMP工程中に半導体基板の表面に発生し得るスクラッチのような欠陥の発生を最小化するとともに、研磨率をさらに向上させ得る。
【0028】
前記第1硬化剤は、3,5-ジメチルチオ-2,6-ジアミノトルエン(3,5-dimethylthio-2,6-diaminotoluene)、2,6-ビス(メチルチオ)-4-メチル-1,3-ベンゼンジアミン(2,6-bis(methylthio)-4-methyl-1,3-benzenediamine)、硫化モリブデン(molybdenum sulfide)、硫化ニオブ(niobium sulfide)、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)、硫化タンタル(tantalum sulfide)、および二硫化タングステン(tungsten disulfide)からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0029】
本発明の一実現例によると、研磨パッドに含硫黄化合物を含むことにより、研磨パッドの伸び率および硬度などの物性が変わり、特に、熱的特性を向上させ得るだけでなく、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥を改善させ得る。
【0030】
前記第1硬化剤の含有量は、前記組成物100重量部を基準に11重量部~18重量部、11重量部~17重量部、12重量部~16重量部、11重量部~14重量部、または14重量部~18重量部であり得る。前記第1硬化剤の含有量が前記範囲を超えると、高温における熱的特性が低下したり硬度が弱すぎたりしてCMP工程性に問題となり得、第1硬化剤の含有量が前記範囲未満であると、伸び率が低くなり半導体基板表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥率が増加することがあり、研磨率が低下し得る。
【0031】
前記第2硬化剤は、下記化学式1、化学式2および化学式3の化合物からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0032】
[化1]
[化2]
[化3]
【0033】
前記化学式1において、前記Lは、炭素数1~20の線形または分岐形のアルキレン基、炭素数1~20の線形または分岐形のヘテロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のシクロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のヘテロシクロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のアリーレン基、および炭素数5~30の置換または非置換のヘテロアリーレン基の中から選ばれた少なくとも一つである。
【0034】
また、前記化学式2において、前記Lは、炭素数1~20の線形または分岐形のアルキレン基、炭素数1~20の線形または分岐形のヘテロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のシクロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のヘテロシクロアルキレン基、炭素数5~30の置換または非置換のアリーレン基、および炭素数5~30の置換または非置換のヘテロアリーレン基の中から選ばれた少なくとも一つである。
【0035】
また、前記R、およびRはそれぞれ独立して、炭素数1~20の線形または分岐形のアルキル基、炭素数1~20の線形または分岐形のヘテロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のシクロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のヘテロシクロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のアリール基、および炭素数5~30の置換または非置換のヘテロアリール基の中から選ばれた少なくとも一つである。
【0036】
また、前記化学式3において、前記Rは、炭素数1~20の線形または分岐形のアルキル基、炭素数1~20の線形または分岐形のヘテロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のシクロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のヘテロシクロアルキル基、炭素数5~30の置換または非置換のアリール基、および炭素数5~30の置換または非置換のヘテロアリール基の中から選ばれた少なくとも一つである。
【0037】
前記第2硬化剤は、1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)(1,3-propanediol bis(4-aminobenzoate)、PDPAB)、[4-(4-アミノベンゾイル)オキシフェニル]4-アミノベンゾエート([4-(4-aminobenzoyl)oxyphenyl]4-aminobenzoate)、[4-(4-アミノベンゾイル)オキシブチル]4-アミノベンゾエート([4-(4-aminobenzoyl)oxybutyl]4-aminobenzoate)、{4-[4-(4-アミノベンゾイル)オキシ-3-メチルブトキシ]ブチル}4-アミノベンゾエート({4-[4-(4-aminobenzoyl)oxy-3-methylbutoxy]butyl}4-aminobenzoate)、メチレンビス(アントラニル酸メチル)(methylene bis(methylanthranilate)、MBNA)、およびイソブチル3,5-ジアミノ-4-クロロベンゾエート(isobutyl 3,5 diamino 4-chlorobenzoate、BDACB)からなる群より選択された1種以上を含み得、具体的に1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)(1,3-propanediol bis(4-aminobenzoate)、PDPAB)を含み得る。
【0038】
前記第2硬化剤は、エステル基を含むことにより、高温において硬さ、引張強度、およびモジュラスを向上させ、熱的特性を向上させ、CMPパッドの摩耗特性を改善させ得る。
【0039】
前記第2硬化剤の含有量は、前記組成物100重量部を基準に1重量部~10重量部、2重量部~10重量部、3重量部~8重量部、2重量部~5重量部、または5重量部~10重量部であり得る。前記第2硬化剤の含有量が前記範囲を超えると伸び率が高くなり得、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥率が増加し、研磨率が低下し、前記範囲未満であると、高温における熱的特性が低下したり、硬度が弱すぎたりして、CMP工程性に問題となり得る。
【0040】
このように、前記第1硬化剤および第2硬化剤を一緒に混合して使用することにより、高温においても優れた硬度および伸び率を確保することができ、研磨特性を向上させ得る。また、前記硬化剤混合物において、第1硬化剤が前記第2硬化剤よりもさらに多く含むとき、硬度を適切に調節して半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥を改善させることができ、研磨率をさらに向上させ得る。
【0041】
前記第1硬化剤および第2硬化剤の含有量比は、1:0.1~0.9の重量比、1:0.1~0.5の重量比、1:0.1~0.4の重量比、または1:0.5~0.9の重量比であり得る。前記第1硬化剤の含有量が多すぎて前記範囲から外れると、高温における熱的特性が低下したり、硬度が弱すぎたりしてCMP工程性に問題となり得、前記第1硬化剤の含有量が少なすぎて前記範囲から外れると、伸び率が高くなりすぎ、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥率が著しく増加することがあり、研磨率が低下し得る。
【0042】
[第2硬化剤を第1硬化剤と同一またはより多く含む場合]
他の実現例は、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤は硫黄を含有する液相硬化剤であり、第2硬化剤は2個以上のベンゼン環を有するエステルを含有する固相硬化剤であり、重量を基準に前記固相硬化剤の含有量が前記液相硬化剤の含有量と同一またはより多い、組成物を提供する。
【0043】
本発明の一実現例によると、前記含硫黄の液相硬化剤と前記2個以上のベンゼン環を有する含エステルの固相硬化剤を含む硬化剤混合物を使用することにより、高温(50℃~100℃)における熱的特性を向上させ得る。特に、前記硬化剤混合物において、前記固相硬化剤(第2硬化剤)の含有量が前記液相硬化剤(第1硬化剤)の含有量と同一またはより多いことにより、温度変化による貯蔵弾性率の減少率を最小化して、熱的安定性および研磨率の安定性をさらに向上させ得る。
【0044】
前記液相硬化剤は硫黄を含む化合物として、分子内の硫黄元素を2つ以上含み得、具体的に分子内の硫黄元素を2つ含み得る。
【0045】
また、前記液相硬化剤は活性水素基を含有し得る。前記液相硬化剤は、活性水素基として、アミン基(-NH)、水酸基(-OH)、カルボン酸基(-COOH)、エポキシ基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種以上を含み得、具体的にアミン基(-NH)基を含み得る。
【0046】
前記液相硬化剤は、重量平均分子量が50g/mol~300g/molであり得、例えば、100g/mol~250g/mol、例えば、150g/mol~250g/mol、例えば、200g/mol~250g/molであり得る。
【0047】
また、前記液相硬化剤は常温にて液相であり得る。または、前記液相硬化剤は、沸点(b.p)が160℃~240℃、具体的に170℃~240℃、より具体的に170℃~220℃であり得る。
【0048】
前記液相硬化剤の例としては、3,5-ジメチルチオ-2,6-ジアミノトルエン(3,5-dimethylthio-2,6-diaminotoluene)および2,6-ビス(メチルチオ)-4-メチル-1,3-ベンゼンジアミン(2,6-bis(methylthio)-4-methyl-1,3-benzenediamine)からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0049】
一実現例によると、研磨パッドに含硫黄化合物を含むことにより、研磨パッドの伸び率および硬度などの物性が変わり得、これにより、研磨率および切削率を改善させることができ、特に、熱的特性を向上させ得るだけでなく、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥を改善させ得る。さらには、有害物質を含むMOCAを使用しなくとも、優れた物性を実現し得るので、環境にやさしく優れた研磨パッドを実現し得る。
【0050】
前記液相硬化剤の含有量は、前記組成物100重量部を基準に5重量部~30重量部、例えば、10重量部~30重量部、例えば、15重量部~25重量部、例えば、18重量部~23重量であり得る。前記液相硬化剤の含有量が前記範囲を満足すると、適切な引張強度およびモジュラスを実現することができるとともに、高温における温度変化による貯蔵弾性率の減少率を最小化することができ、研磨安定性を向上させ得る。
【0051】
前記固相硬化剤は、2個以上のベンゼン環を有する含エステル基の固相硬化剤であり得る。具体的に、前記固相硬化剤は、分子内のベンゼン環を有するエステル基を2個以上含み得、具体的に分子内のベンゼン環を有するエステル基を2個含み得る。前記固相硬化剤が2個以上のベンゼン環を有すると、固相硬化剤が1個のベンゼン環を有する場合に比べ、分子構造がより堅くて硬化物に全体として堅牢性を与え得るので、耐熱特性および硬度を向上させ得る。
【0052】
また、前記固相硬化剤は活性水素基を含有し得る。前記固相硬化剤は、活性水素基としてアミン基(-NH)を含み得る。
【0053】
前記固相硬化剤の重量平均分子量は、150g/mol~400g/mol、例えば、150g/mol~350g/mol、例えば、200g/mol~350g/mol、例えば、250g/mol~350g/mol、例えば、300g/mol~350g/molであり得る。前記固相硬化剤の溶融点(m.p)は、100℃~150℃であり得、例えば、100℃~140℃であり得、例えば、110℃~130℃であり得る。
【0054】
前記固相硬化剤は、前記化学式1、および化学式2の化合物からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0055】
[化1]
[化2]
【0056】
、L、R、およびRは前術の通りである。
具体的に、前記固相硬化剤は、1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)(1,3-propanediol bis(4-aminobenzoate)、PDPAB)、[4-(4-アミノベンゾイル)オキシフェニル]4-アミノベンゾエート([4-(4-aminobenzoyl)oxyphenyl]4-aminobenzoate)、[4-(4-アミノベンゾイル)オキシブチル]4-アミノベンゾエート([4-(4-aminobenzoyl)oxybutyl]4-aminobenzoate)、{4-[4-(4-アミノベンゾイル)オキシ-3-メチルブトキシ]ブチル}4-アミノベンゾエート({4-[4-(4-aminobenzoyl)oxy-3-methylbutoxy]butyl}4-aminobenzoate)、およびメチレンビス(アントラニル酸メチル)(methylene bis-methylanthranilate、MBNA)からなる群より選択された1種以上を含み、具体的に1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)(1,3-propanediol bis(4-aminobenzoate)、PDPAB)を含み得る。
【0057】
前記固相硬化剤はエステル基を含み、ベンゼン環を2個以上含有することにより、引張強度、モジュラス、および高温における硬度が優れており、特に50℃~100℃、特に50℃~70℃の高温に上がるにつれ、または、時間の経つにつれ研磨速度変化率が低く、貯蔵弾性率の減少率も低いので、研磨安定性をさらに向上させ得る。また、前記固相硬化剤は、1個のベンゼン環にハロゲン基、例えば、塩素(Cl)を含有した4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)とは異なり、ハロゲン基を含まないため、比較的環境に優しい点から好ましい。
【0058】
前記固相硬化剤の含有量は、前記組成物100重量部を基準に、8.5重量部~35重量部、例えば10重量部~30重量部、例えば15重量部~30重量部、例えば18重量部~28重量部、例えば18重量部~25重量部であり得る。前記固相硬化剤の含有量が前記範囲を満足すると、適切な引張強度およびモジュラスを実現できるとともに、高温における温度変化による貯蔵弾性率の減少率を最小化することができ、熱的安定性および研磨安定性を向上させ得る。
【0059】
このように、液相硬化剤および前記固相硬化剤を一緒に混合して使用することにより、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)を使用しなくとも、環境にやさしく高温においても優れた物性および研磨特性を向上させ得る。また、前記硬化剤混合物に固相硬化剤の含有量が前記液相硬化剤の含有量と同一またはより多く含まれると、高温および長時間の研磨による研磨率の変化率を減少して熱的安定性を向上させ得る。なお、そのためには、固相硬化剤および液相硬化剤の含有量比が重要であり得る。
【0060】
前記固相硬化剤および液相硬化剤の含有量比は、1:0.1~1の重量比、1:0.2~1の重量比、1:0.2~0.8の重量比、1:0.2~0.7の重量比、1:0.1~0.5の重量比、1:0.1~0.4の重量比、または1:0.1~0.25の重量比であり得る。前記液相硬化剤の含有量が多すぎるか、固相硬化剤の含有量が少なすぎて前記範囲から外れると、貯蔵弾性率が高温になるほど過度に減少し得るので、熱的特性が低下して研磨安定性に悪影響を与え得る。前記液相硬化剤の含有量が少なすぎるか、固相硬化剤の含有量が多すぎて前記範囲から外れると、モジュラスが過度に上昇し、伸び率が過度に減少し得る。
【0061】
一方、一実現例による組成物はウレタン系プレポリマーを含む。
プレポリマー(prepolymer)とは、一般に一種の最終成形品を製造するにおいて、成形しやすいように中間段階で重合度を中止させた比較的低い分子量を有する高分子のことを指す。プレポリマーは、それ自体でまたは他の重合性化合物と反応させた後、成形し得る。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーは、1種以上のジイソシアネートモノマーと1種以上のポリオールの予備重合反応生成物を含む。
【0062】
前記1種以上のジイソシアネートモノマーは、1種以上の芳香族ジイソシアネートモノマーおよび/または1種以上の脂肪族または脂環族ジイソシアネートモノマーであり得る。例えば、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-naphthalene diisocyanate、NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate、PPDI)、トリジンジイソシアネート(tolidine diisocyanate、TODI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate、H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)等からなる群より選択された1種以上のイソシアネートであり得る。
【0063】
前記ポリオールは、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物のことを指し、単分子ポリオールと高分子ポリオールとを含み得る。
【0064】
前記単分子ポリオールの例としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、プロパンジオール(PDO)、およびメチルプロパンジオール(MP-diol)からなる群より選択された1種以上が挙げられ、前記高分子ポリオールの例としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(polytetramethylene ether、PTMEG)、ポリエーテルポリオール(polyether polyol)、ポリエステルポリオール(polyester polyol)、ポリカーボネートポリオール(polycarbonate polyol)、およびポリカプロラクトンポリオール(polycarprolactone polyol)からなる群より選択された1種以上が挙げられる。前記高分子ポリオールは、300g/mol~3000g/molの重量平均分子量を有し得る。
【0065】
前記ウレタン系プレポリマーは、6重量%~12重量%、6重量%~11重量%、6重量%~10重量%、8重量%~10重量%、または8重量%~9重量%のイソシアネート末端基含有量(NCO%)を有し得る。
【0066】
また、前記ウレタン系プレポリマーおよび前記硬化剤混合物は、それぞれの分子内の反応性基(reactive group)、例えば、ウレタン系プレポリマーのイソシアネート末端基および硬化剤混合物において、第1硬化剤および第2硬化剤のNH基の当量比が1:0.7~1の当量比、具体的に1:0.75~1の当量比であり得る。前記ウレタン系プレポリマーのイソシアネート末端基および硬化剤混合物におけるNH基の当量比が前記範囲から外れる場合、本発明で意図した硬度調節に問題となり得、これにより、研磨パッドの研磨率を含む物性が低下し得る。
【0067】
また、前記硬化剤混合物は、前記第1硬化剤および第2硬化剤のほかに、通常用いられるその他の硬化剤をさらに含み得る。前記その他の硬化剤は、例えば、アミン化合物およびアルコール化合物中の1種以上であり得る。具体的に、前記その他の硬化剤は、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコール、および脂肪族アルコールからなる群より選択された1種以上の化合物を含み得る。
【0068】
例えば、前記その他の硬化剤は、ジエチルトルエンジアミン(diethyltoluenediamine、DETDA)、ジアミノジフェニルメタン(diaminodiphenylmethane)、ジアミノジフェニルスルホン(diaminodiphenylsulfone)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、イソホロンジアミン(isophoronediamine)、エチレンジアミン(ethylenediamine)、ジエチレントリアミン(diethylenetriamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylenetetramine)、ポリプロピレンジアミン(polypropylenediamine)、ポリプロピレントリアミン(polypropylenetriamine)、エチレングリコール(ethylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、ブタンジオール(butanediol)、ヘキサンジオール(hexanediol)、グリセリン(glycerine)、トリメチロールプロパン(trimethylolpropane)、およびビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)メタン(bis(4-amino-3-chlorophenyl)methane)からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0069】
前記組成物は、発泡剤および界面活性剤からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0070】
前記発泡剤は、研磨パッドの空隙形成に通常用いられるものであれば、特に制限しない。
【0071】
例えば、前記発泡剤は、中空構造を有する固相発泡剤、揮発性液体を用いた液相発泡剤、および不活性ガスから選ばれた1種以上であり得る。
【0072】
前記固相発泡剤は、熱膨張されサイズが調節されたマイクロカプセル(以下、「熱膨張されたマイクロカプセル」と言う)であり得る。前記熱膨張されたマイクロカプセルは、熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させて得られたものであり得る。前記熱膨張されたマイクロカプセルは、予め膨張されたマイクロバルーンの構造体として均一な大きさの粒径を有することにより、気孔の粒径サイズを均一に調節可能な利点を有する。具体的に、前記固相発泡剤は、5μm~200μmの平均粒径を有するマイクロバルーン構造体であり得る。
【0073】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を含む外皮と、前記外皮内部に封入された発泡剤とを含み得る。前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択された1種以上であり得る。さらには、前記発泡剤は、炭素数1~7の炭化水素からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0074】
前記固相発泡剤は、前記組成物100重量部を基準に、0.1重量部~2.0重量部の量で使用され得る。具体的に、前記固相発泡剤は、前記組成物100重量部を基準に0.5重量部~1.5重量部、または0.8重量部~1.4重量部の量で使用され得る。
【0075】
一方、液相発泡剤は、プレポリマーおよび硬化剤が混合され反応する過程に投入され気孔を形成し、プレポリマーと硬化剤間の反応に関与しない。また、前記液相発泡剤は、プレポリマーおよび硬化剤が混合され反応する過程で生成される熱によって物理的に気化され、気孔を形成する。
【0076】
前記液相発泡剤は、沸点の異なる2種以上の揮発性液相発泡剤を含み得る。具体的に、前記揮発性液相発泡剤は、1種以上の低沸点液相発泡剤および1種以上の高沸点液相発泡剤を含み得る。
【0077】
前記揮発性液相発泡剤は、イソシアネート基、アミド基、およびアルコール基と反応せず、25℃にて液相であり得る。具体的に、前記揮発性液相発泡剤は、トリクロロフルオロメタン(trichlorofluoromethane)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(2,2-dichloro-1,1,1-trifluoroethane)、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(1,1-dichloro-1- fluoroethane)、シクロペンタン(cyclopentane)、n-ペンタン(n-pentane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、n-ブチルアセテート(n-butyl acetate)、ビス(ノナフルオロブチル)(トリフルオロメチル)アミン(bis(nonafluorobutyl)(trifluoromethyl)amine);およびパーフルオロトリブチルアミン(perfluorotributylamine)、パーフルオロ-N-メチルモルホリン(perfluoro-N-methylmorpholine)、フルオロトリペンチルアミン(perfluorotripentylamine)、パーフルオロヘキサン(perfluorohexane)などのパーフルオロ化合物;からなる群より選択され得る。
【0078】
前記パーフルオロ化合物の市販品としては、FC-40(3M社)、FC-43(3M社)、FC-70(3M社)、FC-72(3M社)、FC-770(3M社)、FC-3283(3M社)、FC-3284(3M社)などが挙げられる。
【0079】
前記低沸点液相発泡剤は、反応初期に気化され、平均粒径45μm~90μmのメゾ気孔を形成し得る。具体的に、前記低沸点液相発泡剤は、1気圧にて30℃~100℃の沸点を有し得る。より具体的に、前記低沸点液相発泡剤は、1気圧にて40℃~~70℃の沸点を有し得る。さらに具体的に、前記低沸点液相発泡剤は、トリクロロフルオロメタン、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、n-ペンタン、パーフルオロ-N-メチルモルホリン、およびパーフルオロヘキサンからなる群より選択された1種以上であり得る。前記低沸点液相発泡剤の市販品としては、FC-72(3M社)、FC-770(3M社)、FC-3284(3M社)などが挙げられる。
【0080】
前記高沸点液相発泡剤は、遅延気化され平均粒径20μm~50μmの微細気孔を形成し得る。具体的に、前記高沸点液相発泡剤は、1気圧にて100℃~250℃の沸点を有し得る。より具体的に、前記高沸点液相発泡剤は、1気圧にて100℃~200℃の沸点を有し得る。さらに具体的に、前記高沸点液相発泡剤は、n-ブチルアセテート、ビス(ノナフルオロブチル)(トリフルオロメチル)アミン、パーフルオロトリブチルアミン、およびパーフルオロトリペンチルアミンからなる群より選択された1種以上であり得る。前記高沸点液相発泡剤の市販品としては、FC-40(3M社)、FC-43(3M社)、FC-70(3M社)、FC-3283(3M社)などが挙げられる。
【0081】
前記低沸点液相発泡剤と高沸点液相発泡剤とは、互いに20℃~80℃、具体的に、50℃~80℃の沸点差を有し得る。具体的に、低沸点液相発泡剤と高沸点液相発泡剤との組合として、シクロペンタンとnブチルアセテート、トリクロロフルオロメタンとビス(ノナフルオロブチル)(トリフルオロメチル)アミンの組合などが挙げられる。
【0082】
前記揮発性液相発泡剤は、低沸点液相発泡剤と高沸点液相発泡剤とを1:0.5~2のモル比で含み得る。具体的に、前記揮発性液相発泡剤は、低沸点液相発泡剤と高沸点液相発泡剤とを1:0.8~1.2のモル比で含み得る。前記液相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して1重量部~10重量部の量で投入され得る。また、前記液相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部に対して2重量部~8重量部の量で投入され得る。
【0083】
気相発泡剤は不活性ガスを含み得、前記不活性ガスは、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との間の反応に関与しないガスであれば、種類は特に限定されない。例えば、前記不活性ガスは、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)、アルゴンガス(Ar)、およびヘリウム(He)からなる群より選択される1種以上であり得る。具体的に、前記不活性ガスは、窒素ガス(N)または二酸化炭素ガス(CO)であり得る。
【0084】
前記不活性ガスは、組成物総体積の10%~30%に相当する体積で投入され得る。具体的に、前記不活性ガスは、組成物総体積の15%~30%に相当する体積で投入され得る。
【0085】
前記界面活性剤は、形成される気孔の重なりおよびまとまり現象を防止する役割をし得る。具体的に、前記界面活性剤は、シリコーン系非イオン性界面活性剤が適しているが、他にも研磨パッドに求められる物性に応じて多様に選択し得る。
【0086】
前記シリコーン系非イオン性界面活性剤としては、水酸基を有するシリコーン系非イオン性界面活性剤を単独で使用するか、水酸基を有さないシリコーン系非イオン性界面活性剤と一緒に使用し得る。
【0087】
前記水酸基を有するシリコーン系非イオン性界面活性剤は、イソシアネート含有化合物および活性水素化合物との相溶性に優れ、ポリウレタン技術分野に広く使われているものであれば特に制限しない。前記水酸基を有するシリコーン系非イオン性界面活性剤の市販物質は、例えば、ダウコーニング社のDOW CORNING-193(シリコーングリコール共重合体、液相;25℃における比重:1.07;20℃における粘度:465mm/s;引火点:92℃)(以下、DC-193と言う)などがある。
【0088】
前記水酸基を有さないシリコーン系非イオン性界面活性剤の市販物質は、例えば、ダウコーニング社のDOW CORNING-190(シリコーングリコール共重合体、ガードナー色数:2;25℃における比重:1.037;25℃における粘性:2000mm/s;引火点:63℃以上;Inverse solubility Point(1.0%水溶液):36℃)(以下、DC-190と言う)などがある。
【0089】
前記界面活性剤は、前記組成物100重量部を基準に0.1重量部~2重量部の量で含まれ得る。具体的に、前記界面活性剤は、前記組成物100重量部を基準に0.2重量部~0.8重量部、0.2重量部~0.7重量部、0.2重量部~0.6重量部、または0.2重量部~1.5重量部の量で含まれ得る。前記範囲内の含有量で界面活性剤を含む場合、気相発泡剤由来の気孔がモールド内で安定して形成および維持され得る。
【0090】
[ゲル化時間]
前記硬化剤混合物を含む前記組成物は、硬化によってゲル化するまで一定の時間が要されるが、これをゲル化時間(gel time)と言う。
【0091】
一実現例によると、第1硬化剤を第2硬化剤よりもさらに多く含む場合、前記組成物のゲル化時間は、50秒以上、70秒以上、80秒以上、100秒以上であり得る。例えば、前記組成物のゲル化時間は、50秒~200秒、50秒~150秒、50秒~100秒、100秒~200秒、150秒~200秒であり得る。具体的な一例として、前記組成物は、80秒~120秒のゲル化時間を有し得る。前記ゲル化時間は、例えば70℃にて測定された値であり得る。
【0092】
一実現例によると、第2硬化剤を第1硬化剤と同一またはより多く含む場合、前記組成物のゲル化時間は前述の通りである。
【0093】
[硬化後の特性]
前記組成物は硬化後、次のような物性が特定範囲に調節され得る。
【0094】
一実現例によると、第1硬化剤を第2硬化剤よりもさらに多く含む場合には、組成物が硬化した後の引張強度、伸び率、硬度などのような機械的物性が、特定範囲に調節され得る。
【0095】
具体的に、前記組成物の硬化後の引張強度は、5N/mm~30N/mm、10N/mm~25N/mm、10N/mm~20N/mm、15N/mm~30N/mmまたは17N/mm~23N/mmであり得る。
【0096】
また、前記組成物の硬化後の伸び率は、50%~300%、80%~300%、90%~200%、または100%~150%であり得る。
【0097】
また、前記組成物の硬化後の硬度は、30ショアD~80ショアD、40ショアD~70ショアD、50ショアD~70ショアD、40ショアD~60ショアD、または50ショアD~60ショアDであり得る。
【0098】
また、前記組成物の硬化後のモジュラスは、40MPa~150MPa、50MPa~120MPa、50MPa~110MPa、または50MPa~100MPaであり得る。
【0099】
具体的な一例としては、前記組成物は、硬化後に50MPa~120MPaのモジュラスおよび90%~200%の伸び率を有し得る。また、前記組成物は、硬化後に17N/mm~23N/mmの引張強度、90%~200%の伸び率、50ショアD~60ショアDの硬さ、および50MPa~120MPaのモジュラスを有し得る。
【0100】
前記組成物は、硬化後に多数の微細気孔を有し得る。
前記微細気孔の平均サイズは、10μm~50μm、20μm~50μm、20μm~40μm、20μm~30μm、または30μm~50μmであり得る。
【0101】
また、前記組成物は、硬化後の研磨率(removal rate)が約50℃~60℃にて1時間研磨時、3000Å/分~5000Å/分、3000Å/分~4000Å/分、3500Å/分~4000Å/分、3500Å/分~3800Å/分、3500Å/分~3770Å/分、または3600Å/分~3760Å/分であり得る。特に、前記組成物は硬化後、高温においても安定した熱的特性を示し得る。
【0102】
また、前記組成物は硬化後、温度30℃、50℃、および70℃における硬度が、それぞれ50ショアD~60ショアD、50ショアD~58ショアD、および40ショアD~55ショアDであり得る。具体的に、30℃、50℃、および70℃における硬度が、それぞれ55ショアD~60ショアD、52ショアD~55ショアD、および43ショアD~49ショアDであり得る。
【0103】
前記組成物は硬化後、温度30℃~70℃の硬度差が5ショアD~15ショアD、具体的に6ショアD~12ショアD、より具体的に7ショアD~12ショアDであり得る。
【0104】
前記組成物が硬化後、温度50℃~60℃にて半導体基板の表面欠陥数が、10以下、5以下、または4以下であり得る。前記欠陥数は、半導体基板、具体的に研磨対象ウェーハの全面積基準であり得る。例えば、前記ウェーハの大きさは、直径300mm(エッジ3mmを除く)であり得るが、所望の目的に応じてその大きさは多様に変更し得る。
【0105】
一実現例による前記組成物は、物性、特に伸び率に優れ、半導体基板の表面にスクラッチのような欠陥の発生を最小化すると同時に、高い研磨率を提供するので、研磨パッドの製造に有用に使用され得る。
【0106】
一実現例によると、第2硬化剤を第1硬化剤と同一またはより多く含む場合には、組成物が硬化後、貯蔵弾性率、引張強度、伸び率、硬度などのような機械的物性が特定範囲に調節され得る。
【0107】
一実現例による前記組成物は硬化後、60℃~80℃の温度、具体的に70℃の温度にて、貯蔵弾性率が2.3×10Pa以上、具体的に2.4×10Pa~3.25×10Pa、より具体的に2.5×10Pa~3.2×10Paであり得る。貯蔵弾性率が前記範囲にある組成物を用いた研磨パッドは、半導体基板研磨の平坦化に有用であり、また、高弾性率の研磨パッドが求められているガラス研磨用途においても有用である。また、このような研磨パッドは、安定的、かつ、高い研磨効率による研磨作業が可能である。
【0108】
貯蔵弾性率とは、弾性によって損失なく保存されるエネルギーのことを指すもので、例えば、動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)装置DMS6100(セイコーインスルメンツ社)を用いて、研磨パッドの貯蔵弾性率を測定し得る。具体的に、動的粘弾性測定装置により引張試験用治具を使用して、正弦波振動を加え、周波数1Hzで測定したときの50℃~100℃における組成物の貯蔵弾性率のことを言う。貯蔵弾性率の測定条件は、例えば、研磨時に研磨パッドは被加工物に圧迫され、双方が回転運動しているが、この運動がほぼ1Hzに相当し、またその時の摩擦熱により研磨パッドは約40℃に至るので、50℃~100℃、具体的に60℃~80℃の温度、より具体的に70℃の温度などにて測定され得る。
【0109】
また、前記貯蔵弾性率は、温度が高くなるほど保存されるエネルギーが減少する傾向があるが、その減少率が低いほど、耐熱性の面から好ましい。例えば、50℃~100℃の温度変化による貯蔵弾性率の減少率が大きいほど、耐熱性は減少する。
【0110】
一実現例によると、50℃から100℃へと温度が変化することによる貯蔵弾性率の減少率が77%以下、具体的に75%以下、より具体的に50%~75%であり得る。仮に、研磨パッドの貯蔵弾性率の減少率が77%を超える場合、温度変化により耐熱性が減少することと見なせる。したがって、本発明の一実現例による研磨パッドは、研磨時の温度、つまり40℃における研磨速度はもちろんのこと、50℃~100℃の高温においても耐熱性に優れる。
【0111】
前記組成物の硬化後の引張強度は、5N/mm~23N/mm、10N/mm~23N/mm、15N/mm~23N/mm、21N/mm~23N/mm、または21.8N/mm~22.5N/mmであり得る。
【0112】
また、前記組成物の硬化後の伸び率は、50%~300%、70%~200%、80%~250%、または80%~150%であり得る。
【0113】
また、前記組成物の硬化後の硬度は、30ショアD~80ショアD、40ショアD~70ショアD、50ショアD~70ショアD、40ショアD~60ショアD、または50ショアD~60ショアDであり得る。
【0114】
また、前記組成物の硬化後のモジュラスは、40MPa~150MPa、50MPa~120MPa、50MPa~110MPa、または63MPa~100MPaであり得る。
【0115】
具体的な一例として、前記組成物は硬化後に、63MPa~100MPaのモジュラスおよび21N/mm~23N/mmの引張強度を有し得る。
【0116】
前記組成物は硬化後に多数の微細気孔を有し得る。
前記微細気孔の平均サイズは10μm~50μm、20μm~50μm、20μm~40μm、20μm~30μm、または30μm~50μmであり得る。
【0117】
また、前記組成物は硬化後の研磨率が、約50℃~60℃にて、3000Å/分~5000Å/分、3000Å/分~4000Å/分、3500Å/分~4000Å/分、3500Å/分~3820Å/分、3620Å/分~3820Å/分、または3720Å/分~3820Å/分であり得る。
【0118】
特に、温度と時間の変化により、例えば、約50℃にて1時間~60℃にて8時間の変化により、前記組成物は硬化後の研磨率の差が、約1Å/分~100Å/分、3Å/分~80Å/分、または4Å/分~60Å/分であり得る。つまり、一実現例による組成物は、硬化後の温度と時間の変化にも研磨速度の変化がほとんどなく、高温においても安定した熱的特性を示し得る。本発明の一実現例によると、約50℃~約60℃の温度変化による研磨速度の変化率が2%以下、具体的に2%未満、または0.2%~1.9%、より具体的に0.3%~1.9%であり得る。
【0119】
また、前記組成物は硬化後の温度、30℃、50℃、および70℃における硬度が、それぞれ50ショアD~60ショアD、50ショアD~58ショアD、および40ショアD~55ショアDであり得る。具体的に、30℃、50℃、および70℃における硬度が、それぞれ55ショアD~60ショアD、52ショアD~55ショアD、および43ショアD~49ショアDであり得る。
【0120】
前記組成物は硬化後の温度30℃~70℃の硬度差が、5ショアD~15ショアD、具体的に6ショアD~12ショアD、より具体的に7ショアD~12ショアDであり得る。
【0121】
一実現例による前記組成物は、高温における貯蔵弾性率の減少率が低いので耐熱性に優れ、引張強度およびモジュラスが優れるとともに、高温において長時間における研磨安定性を向上させ得るので、研磨パッドの製造に有用に使用され得る。
【0122】
以下、本発明の一実現例による研磨パッドの製造方法により、研磨層の具体的な成分を詳細に説明する。
【0123】
[研磨パッドの製造方法]
一実現例による研磨パッドの製造方法は、ウレタン系プレポリマーを含む第1原料組成物を準備する段階と、含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含む第2原料組成物を準備する段階と、発泡剤を含む第3原料組成物を準備する段階と、前記第1原料組成物を、前記第2原料組成物および前記第3原料組成物と、順次または同時に混合して原料混合物を製造する段階と、前記原料混合物をモールド内に注入して硬化する段階と、を含む。
【0124】
前記第1原料組成物に含まれるウレタン系プレポリマー、第2原料組成物に含まれる第1硬化剤(または液相硬化剤)および第2硬化剤(または固相硬化剤)、第3原料組成物に含まれる発泡剤の種類および含有量は、前記組成物において説明した通りである。
【0125】
前記原料混合物を製造する段階は、前記第1原料組成物を前記第2原料組成物と混合した後、前記第3原料組成物とさらに混合するか、または前記第1原料組成物を前記第3原料組成物と混合した後、前記第2原料組成物とさらに混合して行われ得る。
【0126】
一例として、ウレタン系プレポリマー、硬化剤混合物、および発泡剤は、実質的にほぼ同時に混合過程に投入されてよく、発泡剤、界面活性剤、および不活性ガスを添加する場合、これらも実質的にほぼ同時に混合過程に投入されてよい。
【0127】
他の例として、ウレタン系プレポリマー、発泡剤、および界面活性剤は予め混合し、その後、硬化剤混合物を投入するか、硬化剤混合物および不活性ガスを一緒に投入し得る。
【0128】
前記混合において、ウレタン系プレポリマーと硬化剤混合物とを混合して反応を開始させ、発泡剤および不活性ガスを原料内にむらなく分散させ得る。この際、反応速度調整剤は、反応初期からウレタン系プレポリマーと硬化剤混合物との反応に介入して反応の速度を調節し得る。具体的に、前記混合は1000rpm~10000rpm、または4000rpm~7000rpmの速度で行われ得る。前記速度範囲であるとき、不活性ガスおよび発泡剤が原料内にむらなく分散するのに、より有利であり得る。
【0129】
また、前記原料混合物を製造する段階は、50℃~150℃の条件で行われ、必要に応じて真空脱泡条件下で行われ得る。
【0130】
前記原料混合物をモールド内に注入した後、硬化する段階は、60℃~120℃の温度条件および50kg/m~200kg/mの圧力条件下で行われ得る。
【0131】
また、前記製造方法は、得られた研磨パッドの表面を切削する工程、表面に溝を加工する工程、下層部との接着工程、検査工程、包装工程等をさらに含み得る。これらの工程は、通常の研磨パッドの製造方法により行われ得る。
【0132】
[研磨パッド]
一実現例による研磨パッドは、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含む研磨層を含み、前記硬化剤混合物が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤を前記第2硬化剤よりもさらに多く含む。
【0133】
前記研磨パッドの厚さは、0.8mm~5.0mm、1.0mm~4.0mm、1.0mm~3.0mm、1.5mm~2.5mm、1.7mm~2.3mm、または2.0mm~2.1mmであり得る。前記範囲内であるとき、気孔の上下部位別の粒径偏差を最小化しながらも、研磨パッドとしての基本物性を十分に発揮し得る。
【0134】
前記研磨パッドの比重は、0.6g/cm~0.9g/cm、または0.7g/cm~0.85g/cmであり得る。
【0135】
前記研磨パッドは、前記一実現例による組成物が硬化後に有する物性および気孔特性を同様に有し得る。
【0136】
また、前記研磨パッドの研磨率は、約50℃~60℃にて1時間の研磨時、3000Å/分~5000Å/分、3000Å/分~4000Å/分、3500Å/分~4000Å/分、3500Å/分~3800Å/分、3500Å/分~3770Å/分、または3600Å/分~3760Å/分であり得る。特に、前記研磨パッドは、高温においても安定した熱的特性を示し得る。
【0137】
前記研磨率は、研磨パッドの硬化直後(つまり製造直後)の初期研磨率であり得る。初期研磨率が前記範囲内であるとき、パッドグレージング(pad glazing)現象を抑制して、その後の繰り返される研磨工程において適正レベルの優れた研磨率を維持するのに有利である。
【0138】
前記研磨パッドは、表面に機械的研磨のための溝(groove)を有し得る。前記溝は、機械的研磨のための適切な深さ、幅、および間隔を有してよく、特に限定されない。
【0139】
他の実現例による研磨パッドは、上部パッドおよび下部パッドを含み、この際、前記上部パッドが前記一実現例による研磨パッドと同じ組成および物性を有し得る。
【0140】
前記下部パッドは、前記上部パッドを支持しながら、前記上部パッドに加わる衝撃を吸収して分散させる役割をする。前記下部パッドは、不織布またはスエードを含み得る。
【0141】
また、前記上部パッドおよび下部パッドの間には接着層が挿入され得る。
前記接着層はホットメルト接着剤を含み得る。前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群より選択される1種以上であり得る。具体的に、前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0142】
一実現例による研磨パッドは、ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤混合物を含み、前記硬化剤が含硫黄の第1硬化剤および含エステル基の第2硬化剤を含み、前記第1硬化剤は硫黄を含有する液相硬化剤であり、第2硬化剤は2個以上のベンゼン環を有するエステルを含有する固相硬化剤であり、重量を基準に前記固相硬化剤の含有量が、前記液相硬化剤の含有量と同一またはより多い。
【0143】
前記研磨パッドの厚さは、第1硬化剤を第2硬化剤よりもさらに多く含む場合と同じであり得る。
【0144】
前記研磨パッドは、前記一実現例による組成物が硬化後に有する物性および気孔特性を同様に有し得る。
【0145】
また、前記研磨パッドの研磨率は、約50℃~60℃にて、3000Å/分~5000Å/分、3000Å/分~4000Å/分、3500Å/分~4000Å/分、3500Å/分~3820Å/分、3620Å/分~3820Å/分、または3720Å/分~3820Å/分であり得る。
【0146】
特に、温度と時間の変化により、例えば、約50℃にて1時間~約60℃にて8時間の変化により、前記研磨パッドの研磨率差が約1Å/分~100Å/分、3Å/分~80Å/分、または4Å/分~60Å/分であり得る。
【0147】
つまり、一実現例による研磨パッドは、温度と時間の変化にも研磨速度の変化がほとんどなく、高温においても安定した熱的特性を示し得る。一実現例による研磨パッドは、約50℃~約60℃の温度変化による研磨速度変化率が2%以下、具体的に2%未満、または0.2%~1.9%、より具体的に0.3%~1.9%であり得る。前記研磨率は、研磨パッドの硬化直後(つまり製造直後)の初期研磨率であり得る。初期研磨率が前記範囲内であるとき、パッドグレージング現象を抑制して、その後の繰り返される研磨工程において適正レベルの優れた研磨率を維持するのに有利である。
【0148】
前記研磨パッドは、表面に機械的研磨のための溝を有し得る。前記溝は、機械的研磨のための適切な深さ、幅、および間隔を有してよく、特に限定されない。
【0149】
他の実現例による研磨パッドは、上部パッドおよび下部パッドを含み、この際、前記上部パッドが前記一実現例による研磨パッドと同じ組成および物性を有し得る。
【0150】
前記下部パッドは、前記上部パッドを支持しながら、前記上部パッドに加わる衝撃を吸収して分散させる役割をする。前記下部パッドは、不織布またはスエードを含み得る。
【0151】
また、前記上部パッドと下部パッドの間には、接着層が挿入され得る。
前記接着層は前記で言及した通りである。
【0152】
[半導体素子の製造方法]
一実現例による半導体素子の製造方法は、前記一実現例による研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含み得る。
【0153】
前記半導体素子の製造方法は、研磨層を含む研磨パッドを定盤に装着する段階と、前記研磨層の研磨面と半導体基板の表面とを当接するよう互いに相対回転させて、前記半導体基板の表面を研磨する段階と、を含み得る。
【0154】
具体的に、一実現例による半導体素子の製造方法は、研磨パッドを提供する段階と、前記研磨パッド上に研磨対象を配置する段階と、前記研磨対象を前記研磨パッドに対して相対回転させ前記研磨対象を研磨する段階と、を含む。
【0155】
より具体的に、前記一実現例による研磨パッドを定盤上に接着した後、オキシドまたはタングステンなどの金属を含む半導体基板を前記研磨パッド上に配置する。この際、前記半導体基板の表面は、前記研磨パッドの研磨面に直接接触する。研磨のために、前記研磨パッド上に研磨スラリーが噴射され得る。その後、前記半導体基板と前記研磨パッドとは互いに相対回転して、前記半導体基板の表面が研磨され得る。
【0156】
これに関して、一実現例による半導体素子製造工程の概略的な工程図を図8に示した。
図8を参照すると、前記一実現例による研磨パッド110を定盤120上に装着した後、半導体基板130を前記研磨パッド110上に配置する。この際、前記半導体基板130の表面は、前記研磨パッド110の研磨面に直接接触する。研磨のために、前記研磨パッド上にノズル140を介して研磨スラリー150が噴射され得る。前記ノズル140を介して供給される研磨スラリー150の流量は、約10cm/分~約1000cm/分の範囲内で目的に応じて選択され得、例えば、約50cm/分~約500cm/分であり得るが、これに限定されるものではない。
【0157】
その後、前記半導体基板130と前記研磨パッド110とは、互いに相対回転して前記半導体基板130の表面が研磨され得る。この際、前記半導体基板130の回転方向および前記研磨パッド110の回転方向は同じ方向でもよく、反対方向でもよい。前記半導体基板130と前記研磨パッド110との回転速度は、約10rpm~約500rpmの範囲で目的に応じて選択され得、例えば、約30rpm~約200rpmであり得るが、これに制限されるものではない。
【0158】
前記半導体基板130は、研磨ヘッド160に装着された状態で、前記研磨パッド110の研磨面に所定の荷重で加圧され当接するようにしてその表面が研磨され得る。前記半導体基板130表面が前記研磨パッド110の研磨面に当接するように加えられる荷重は、約1gf/cm~約1000gf/cmの範囲で目的に応じて選択され得、例えば、約10gf/cm~約800gf/cmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0159】
一実現例において、前記半導体素子の製造方法は、前記研磨パッド110の研磨面を研磨に適する状態に維持させるために、前記半導体基板130の研磨と同時にコンディショナー170により前記研磨パッド110の研磨面を加工する段階をさらに含み得る。
【0160】
一実現例による研磨パッドは、含硫黄の第1硬化剤と含エステル基の第2硬化剤とを含む硬化剤混合物を用いることにより、研磨特性を向上させ得る。
【0161】
一実現例による研磨パッドは、含硫黄の第1硬化剤を含エステル基の第2硬化剤よりもさらに多く含むことにより、高温においても優れた硬度を確保することができ、半導体基板の表面上に現れるスクラッチおよび表面欠陥を改善させ、研磨率をさらに向上させ得るので、半導体素子に有用に使用され得る。
【0162】
また、一実現例による研磨パッドは、2固以上のベンゼン環を有する含エステルの第2硬化剤を、含硫黄の第1硬化剤と同一またはより多く含むことにより、適正範囲の引張強度およびモジュラスなどの物性はもちろん、高温の温度変化による貯蔵弾性率の減少率を最小化することにより熱的安定性を実現し得るので、研磨安定性をさらに向上させ得る。
【0163】
(実施例)
以下、本発明を下記実施例によりさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0164】
(実施例1)
[1-1:ウレタン系プレポリマーの調製]
イソシアネート化合物としてトルエンジイソシアネート(TDI)およびジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリオールとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)およびジエチレングリコール(DEG)を4口フラスコに投入し、80℃にて3時間反応させてNCO基の含有量が9重量%であるウレタン系プレポリマーを調製した。
【0165】
[1-2:研磨パッドの製造]
ウレタン系プレポリマー、硬化剤、不活性ガス、発泡剤などの原料をそれぞれ供給するためのタンクおよび投入ラインが備えられているキャスティング装置において、前記調製したウレタン系プレポリマーを充填した。また、第1硬化剤として3,5-ジメチルチオ-2,6-ジアミノトルエン(DMTDA)と第2硬化剤として1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)(PDPAB)を80:20重量比の量で充填し、不活性ガスとして窒素ガス(N)を準備した。また、前記研磨パッド製造用組成物100重量部を基準に、 固相発泡剤(AkzoNobel社)1.18重量部およびシリコーン系界面活性剤(EVONIK社)0.39重量部をそれぞれのタンクに充填した。それぞれの投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、ウレタン系プレポリマーのNCO基、および第1硬化剤と第2硬化剤との混合硬化剤のNH基の当量比を1:1で合わせ、合計投入量を10kg/分の速度で維持した。また、不活性ガスは、研磨パッド製造用組成物の総体積を基準に、20体積%で一定に投入した。注入された原料は、5000rpmの高速で混合されモールド(縦1000mm、横1000mm、高さ3mm)に注入され、固相化してシート状の多孔質ポリウレタン研磨層を得た。この際、不活性ガスである窒素ガスの注入量を調節して、多孔質ポリウレタンの密度が0.8g/cmになるようにした。
【0166】
撹拌した原料をモールド(1000mm×1000mm×3mm)に吐出して反応を終了し、固相ケーキ状の成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端をそれぞれ0.5mmずつの厚さで切削して、厚さ2mmの上部パッドを得た。
【0167】
その後、上部パッドに対して表面ミーリング加工および溝形成工程を経て、ホットメルト接着剤により下部パッドと積層して、研磨パッドを製造した。
【0168】
(実施例2)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを60:40重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0169】
(実施例3)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを50:50重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0170】
(実施例4)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを40:60重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0171】
(実施例5)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを20:80重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0172】
(比較例1)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを100:0重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0173】
(比較例2)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてPDPABとを0:100重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0174】
(比較例3)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてMOCAとを60:40重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0175】
(比較例4)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてMOCAとを50:50重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0176】
(比較例5)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてMOCAとを40:60重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
【0177】
(比較例6)
第1硬化剤としてDMTDAと第2硬化剤としてMOCAとを0:100重量比の量で調節したことを除いては、実施例1と同様の方法により研磨パッドを製造した。
前記研磨パッドにおける上部パッドの具体的な工程条件を下記表1および表2にまとめた。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
(試験例)
前記実施例および比較例で得られた研磨パッドの下記の項目についてテストし、その結果を表3と4、および図1~7に示した。
【0181】
(1)硬度
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドのショアD硬度を測定し、前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを2cm×2cm(厚さ:2mm)の大きさに裁断して、温度25℃、30℃、50℃、70℃、および相対湿度50±5%の環境で16時間静置した。その後、硬度計(D型硬度計)を使用して多層研磨パッドの硬度を測定した。
【0182】
(2)比重
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×8.5cmの長方形(厚さ:2mm)に裁断して、温度23±2℃、湿度50±5%の環境で16時間静置した。比重計を使用して研磨パッドの比重を測定した。
【0183】
(3)引張強度
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)を使用して50mm/分の速度において研磨パッドの破断直前の最高強度値を測定した。
【0184】
(4)伸び率
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)を使用して50mm/分の速度において研磨パッドの破断直前の最大変形量を測定した後、最初の長さに対する最大変形量の比率を百分率(%)で示した。
【0185】
(5)モジュラス
前記実施例および比較例により製造された研磨パッドのそれぞれについて、下記引張強度測定方法と同様にテストして、応力-ひずみ曲線の初期弾性領域における傾きを計算した。
その結果を下記表3および表4にまとめた。
【0186】
【表3】
【0187】
【表4】
【0188】
前記表3および表4に示すように、第1硬化剤および第2硬化剤の含有量によって研磨パッドの物性が変化することが確認できる。
【0189】
具体的に、第2硬化剤の含有量に比べて第1硬化剤の含有量がより多い実施例1および2の研磨パッドは、硬度、モジュラス、および引張強度を適正に維持しながら伸び率が著しく優れていた。
【0190】
また、第2硬化剤の含有量が、第1硬化剤と同一またはより多い実施例3~5の研磨パッドは、引張強度、モジュラス、および温度別(30℃/50℃/70℃)の硬度の面で著しく優れていた。
【0191】
一方、第2硬化剤としてPDPABのみを使用した比較例2の場合、引張強度およびモジュラスが高すぎており、特に比較例2のモジュラスは、実施例3~5の研磨パッドのモジュラスに比べて約2倍近く上昇した
【0192】
さらに、実施例はいずれも、有害物質を含むMOCAを使用せずともMOCAを使用した研磨パッドと同等以上の物性を達成することができた。
【0193】
(6)気孔特性
研磨パッドの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、図1図4に示した。図1図4は、それぞれ実施例1、3、5、および比較例2で製造した研磨パッド断面のSEM画像である。図1図4で確認できるように、各実施例の研磨パッドは、気孔が広い面積に亘って微細かつ均一に分布している。
【0194】
また、実施例3、5、および比較例2については、SEM画像に基づいて気孔の特性を算出して下記表5にまとめた。
-数平均直径:SEM画像上の気孔直径の合計を気孔の数で除した平均
-気孔数:SEM画像上の0.3cm当りに存在する気孔の数
-気孔面積率:SEM画像の全面積に対する気孔のみの面積の百分率
【0195】
【表5】
【0196】
前記表5に示すように、実施例3および5の研磨パッドは、気孔の数平均直径が20μm~26μm前後であり、気孔面積率は41%~45%前後であることが分かる。
【0197】
(7)研磨率(removal rate)
研磨パッド製造直後の初期研磨率を以下のように測定した。
直径300mmのシリコンウェーハに酸化ケイ素を化学気相蒸着(CVD)工程により蒸着した。CMP装置に研磨パッドを貼り付け、シリコンウェーハの酸化ケイ素層が研磨パッドの研磨面を向くように設置した。研磨パッド上にか焼セリアスラリーを250mL/分の速度で供給しながら、4.0psiの荷重および150rpmの速度で60秒間酸化ケイ素膜を研磨した。
【0198】
研磨は、50℃~60℃にて1時間行われ、研磨後のシリコンウェーハをキャリアから取り外し、回転式脱水機(spin dryer)に装着して蒸留水で洗浄した後、窒素で15秒間乾燥した。乾燥したシリコンウェーハについて、分光干渉式ウェーハ厚み計(SI-F80R、Keyence社)を使用して研磨前後の膜厚変化を測定した。その後、下記式1をもって研磨率を計算した。その結果を下記表6に示した。
[式1]
研磨率(Å/分)=シリコンウェーハ研磨厚(Å)/研磨時間(分)
【0199】
【表6】
【0200】
また、酸化珪素膜を研磨した後、研磨温度および時間をより細分化して研磨を行い、前記と同様の方法により研磨率を計算した。具体的に、研磨は、51.3℃にて1時間、56.2℃にて4時間、および60.3℃にて8時間それぞれ研磨した。その結果を下記表7~表9および図5に示した。
【0201】
【表7】
【0202】
【表8】
【0203】
【表9】
【0204】
前記結果を見ると、実施例の研磨パッドは、研磨率が適正範囲で一定の速度を維持している。また、温度および時間の変化にも研磨速度変化率は一定に維持されている反面、比較例1の研磨パッドは約13%以上の上昇と、大きく変化した。
【0205】
(8)欠陥の数
研磨パッドを用いて前記(7)と同様の手順でCMP工程を行った後、欠陥検査装置(AIT XP+、KLA-Tencor社)を用いて、研磨後にウェーハ表面上に現れる欠陥の数を測定した(条件:threshold150、die filter threshold 280)。その結果を下記表10および図6に示した。
【0206】
【表10】
【0207】
前記結果を見ると、第1硬化剤をより多く含む硬化剤混合物を使用する場合(実施例1および2)、研磨パッドの研磨率が優れており、欠陥の数が比較例に比べて著しく低いことが分かる。
【0208】
具体的に見てみると、表6および表10の結果から、実施例1および2の研磨率は3733Å/分および3740Å/分と、概ね優れている反面、PDPABを使用していない比較例1の研磨パッドの研磨率は3715Å/分と、研磨率が著しく低調であり、PDPABのみを使用した比較例2の研磨パッドの研磨率は3763Å/分と、ハードセグメントの凝集が増加して初期研磨率が過度に高かった。これにより、比較例2の研磨パッドは、パッドグレージング(pad glazing)現象による研磨率の急激な低下が予想される。
【0209】
したがって、実施例1および2の研磨パッドの場合、研磨率を向上させるとともに、欠陥の数を著しく減少させ得ることが確認できる。
【0210】
(9)貯蔵弾性率
動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis)装置DMS6100(セイコーインスルメンツ社)を用いて、応力モード(tension mode)において振動数1Hz、昇温速度10℃/分として、実施例および比較例の研磨パッドの貯蔵弾性率を測定した。
【0211】
この際、-60℃~140℃の温度範囲で貯蔵弾性率(E')を測定し、50℃~100℃の温度範囲による貯蔵弾性率の減少率(ΔE')を求めた。前記貯蔵弾性率の減少率(ΔE')は下記式2により求め得る。
【0212】
[式2]
【0213】
前記式2において、E'50は50℃における貯蔵弾性率の値であり、E'100は100℃における貯蔵弾性率の値である。
その結果を図7に示した。
【0214】
図7から分かるように、第2硬化剤を第1硬化剤と同一またはより多い量で含有する硬化剤混合物を使用する場合(実施例3~5)、研磨パッドの貯蔵弾性率の減少率が、比較例1および2に比べて著しく減少することが分かる。
【0215】
具体的に見てみると、実施例3~5の研磨パッドの貯蔵弾性率の減少率は75%以下、具体的に実施例1,2、および3の研磨パッドの貯蔵弾性率の減少率がそれぞれ約75%、71%、および70%であるのに対し、比較例1の研磨パッドの場合は、貯蔵弾性率の減少率が84%以上であることを確認した。
【0216】
したがって、実施例3~5の研磨パッドの場合、貯蔵弾性率の減少率が減少したので、耐熱性が著しく改善されたことが分かる。
【符号の説明】
【0217】
110:研磨パッド
120:プラテン
130:半導体基板
140:ノズル
150:研磨スラリー
160:研磨ヘッド
170:コンディショナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8