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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241001BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023513217
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021013789
(87)【国際公開番号】W WO2022097936
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0148016
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サンヒュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サンフン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミュンフイ・ウ
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088837(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221346(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/069793(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038343(WO,A1)
【文献】特開2012-094353(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080871(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/181877(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052-0587
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水性有機溶媒、リチウム塩、および下記化学式1で表される添加剤を含む電解質;
Si-炭素複合体を含む負極活物質を含む負極;および
正極活物質を含む正極
を含む、リチウム二次電池であって、
【化1】
(前記化学式1において、
~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C30アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C30アリール基である。)
前記化学式1で表される添加剤の含有量は前記非水性有機溶媒および前記リチウム塩含有量を100重量%としたとき、0.1重量%~10重量%であり、
前記Si-炭素複合体の含有量は前記負極活物質全体重量に対して0.1重量%~5重量%である、リチウム二次電池
【請求項2】
前記R~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C10アリール基である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記化学式1で表される添加剤はスルホラン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記負極活物質は結晶質炭素をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記非水性有機溶媒はプロピオネート系溶媒を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記プロピオネート系溶媒はメチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートまたはこれらの組み合わせである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記プロピオネート系溶媒の含有量は非水性有機溶媒全体体積に対して5体積%~80体積%である、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記Si-炭素複合体はSiナノ粒子および非晶質炭素を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記Si-炭素複合体はコアおよび前記コアを囲むコート層を含み、
前記コアは非晶質炭素または結晶質炭素と、Siナノ粒子を含み、
前記コート層は非晶質炭素を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記コート層の厚さは1nm~100nmである、請求項に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記Siナノ粒子の含有量は前記Si-炭素複合体全体100重量%に対して1重量%~60重量%である、請求項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は放電電圧が高くてエネルギ密度が高いため、多様な電子機器の電源として注目を浴びている。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としてはLiCoO、LiMn、LiNi1-xCo(0<x<1)などのようにリチウムイオンのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としてはリチウムの挿入/脱離が可能な人造、天然黒鉛、ハードカーボンを含む様な形態の炭素系材料が主に使用されている。
リチウム二次電池の電解質としてはリチウム塩が溶解した有機溶媒が使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は向上した高容量および向上したサイクル寿命特性を示すリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、非水性有機溶媒、リチウム塩、および下記化学式1で表される添加剤を含む電解質、Si-炭素複合体を含む負極活物質を含む負極および正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0007】
【化1】
(前記化学式1において、
~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C30アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C30アリール基である。)
【0008】
前記化学式1において、前記R~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C10アリール基であり得る。
【0009】
一実施形態で、前記化学式1で表される添加剤はスルホラン、メチルスルホラン、ジメチルスルホランまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
前記化学式1で表される添加剤の含有量は前記非水性有機溶媒および前記リチウム塩含有量を100重量%としたとき、0.1重量%~10重量%であり得る。
【0011】
前記Si-C炭素複合体の含有量は前記負極活物質全体重量に対して0.1重量%~5重量%であり得る。また、前記負極活物質は結晶質炭素をさらに含み得る。
【0012】
前記非水性有機溶媒はプロピオネート系溶媒を含み得る。前記プロピオネート系溶媒はメチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートまたはこれらの組み合わせであり得る。また、前記プロピオネート系溶媒の含有量は非水性有機溶媒全体体積に対して5体積%~80体積%であり得る。
【0013】
前記Si-炭素複合体はSiナノ粒子および非晶質炭素を含み得る。一実施形態によれば、前記Si-炭素複合体はコアおよび前記コアを囲むコート層を含み、前記コアは非晶質炭素または結晶質炭素と、Siナノ粒子を含み、前記コート層は非晶質炭素を含み得る。
【0014】
一実施形態で、前記コート層の厚さは1nm~100nmであり得る。
一実施形態で、前記Siナノ粒子の含有量は前記Si-炭素複合体全体100重量%に対して1重量%~60重量%であり得る。
その他実施形態の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は耐酸化安定性に優れた電解液を使用するので、高電圧特性を向上させることができ、また、抵抗を減少させることができ、高容量および優れたサイクル寿命特性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を簡略に示す図。
図2】実施例2および5と、比較例3により製造されたリチウム二次電池の初期直流抵抗、高温貯蔵直流抵抗および抵抗増加率を示すグラフ。
図3】実施例1~6、参考例1および2と、比較例1~7により製造されたリチウム二次電池の初期直流抵抗、高温貯蔵直流抵抗および抵抗増加率を示すグラフ。
図4】実施例1~3、参考例1と、比較例5により製造されたリチウム二次電池の初期直流抵抗、高温貯蔵直流抵抗および抵抗増加率を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0018】
本明細書で別段の定義がない限り、「置換」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、ClまたはI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C6~C30アリール基、C7~C30アリールアルキル基、C1~C4アルコキシ基、C1~C20ヘテロアルキル基、C3~C20ヘテロアリールアルキル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C15シクロアルケニル基、C6~C15シクロアルキニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキル基およびこれらの組み合わせより選ばれた置換基で置換されたものを意味する。
【0019】
一実施形態は非水性有機溶媒、リチウム塩、および下記化学式1で表される添加剤を含む電解質、Si-炭素複合体を含む負極活物質を含む負極および正極活物質を含む正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0020】
【化2】
【0021】
前記化学式1において、
~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C30アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C30アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C30シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C30アリール基である。
【0022】
一実施形態で、前記R~Rはそれぞれ独立して水素原子、置換若しくは非置換されたC1~C10アルキル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルケニル基、置換若しくは非置換されたC2~C10アルキニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルケニル基、置換若しくは非置換されたC3~C10シクロアルキニル基、または置換若しくは非置換されたC6~C10アリール基であり得る。
【0023】
例えば、前記化学式1で表される添加剤はスルホラン、メチルスルホラン、例えば、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、例えば2,4-ジメチルスルホラン、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0024】
この時、前記化学式1で表される添加剤の含有量は前記非水性有機溶媒および前記リチウム塩の重量に対して、すなわち非水性有機溶媒および前記リチウム塩含有量を100重量%としたとき(非水性有機溶媒およびリチウム塩含有量の全体100重量%に対して)、0.1重量%~10重量%であり得、一実施形態によれば、0.5重量%~7.5重量%であり得、他の一実施形態によれば、2.5重量%~7.5重量%でもあり得る。前記化学式1で表される添加剤の含有量が前記範囲に含まれる場合、高温信頼性特性、例えば高温抵抗増加率低減の効果を示すことができるため適切である。
【0025】
前記負極活物質は前記Si-C複合体以外の結晶性炭素をさらに含むことができる。この時、前記Si-C複合体の含有量は前記負極活物質全体重量、すなわち全体100重量%に対して0.1重量%~5重量%であり得る。
【0026】
前記化学式1の添加剤を含む電解質を使用する電池に、Si-C複合体を含む負極活物質を使用する場合、高温抵抗増加を効果的に抑制できるため適切であり、このような効果は負極活物質としてSi-C複合体を0.1重量%~5重量%含む場合、一実施形態によれば、1重量%~5重量%含む場合、他の一実施形態によれば、2.5重量%~5重量%含む場合、より増加し得る。負極活物質としてSi-C複合体を0.1重量%~5重量%含む場合、所望する高容量および体積膨張抑制効果を最もよく得ることができる。
【0027】
前記Si-炭素複合体はSiナノ粒子および非晶質炭素を含むことができる。一実施形態によれば、前記Si-炭素複合体はコアおよびこのコアを囲むコート層を含み、前記コアは非晶質炭素または結晶質炭素と、Siナノ粒子を含み、前記コート層は非晶質炭素を含むことができる。
【0028】
前記非晶質炭素はソフトカーボン、ハードカーボン、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスまたはこれらの組み合わせであり得る。前記結晶質炭素は天然黒鉛、人造黒鉛またはこれらの組み合わせであり得る。
【0029】
前記Si-炭素複合体がSiナノ粒子および非晶質炭素を含む場合、Siナノ粒子および非晶質炭素の混合比は2:1~1.5:1重量比であり得る。また、前記Si-炭素複合体がコアおよびコート層を含む場合、コート層の含有量は複合体全体100重量%に対して0.08:1~0.2:1重量比であり得、Siナノ粒子の含有量はSi-炭素複合体全体100重量%に対して1重量%~60重量%であり得、一実施形態によれば、3重量%~60重量%であり得る。また、コアに含まれる非晶質炭素または結晶質炭素の含有量は複合体全体100重量%に対して20重量%~60重量%であり得る。
【0030】
さらに、前記コート層の厚さは1nm~100nm、例えば5nm~100nmであり得る。
【0031】
また、Si-炭素複合体の形態とは関係なく、Siナノ粒子の粒径は5nm~150nmであり得る。例えば10nm~150nm、具体的には30nm~150nm、より具体的には50nm~150nm、そして狭くは60nm~100nm、より狭くは80nm~100nmであり得る。本明細書で、大きさは粒径であり得、粒径の平均粒径であり得る。この時、平均粒径とは、累積体積で測定する粒径(D50)を意味する。このような粒径(D50)は本明細書で別段の定義がない限り、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する平均粒径(D50)を意味する。D50は当業者に広く公知された方法で測定されることができ、例えば、粒度分析器(Particle size analyzer)で測定するか、TEM(Transmission electron microscopy)またはSEM写真から測定することもできる。他の方法の例えば、動的光散乱法(dynamic Light-scattering)を用いた測定装置を用いて測定した後、データ分析を実施してそれぞれのサイズ範囲に対して粒子数がカウントされると、これに基づいて計算して平均粒径を容易に得ることができる。
【0032】
一実施形態による電解質において、前記非水性有機溶媒はカーボネート系溶媒を含み得、また、プロピオネート系溶媒を含むことができる。
【0033】
前記非水性有機溶媒で前記プロピオネート系溶媒の含有量は非水性有機溶媒全体体積に対して5体積%~80体積%であり得る。非水性有機溶媒としてプロピオネート系溶媒を含む場合、特に前記含有量で含む場合、高温貯蔵または高温で使用時、ガス発生問題をより効果的に、特にパウチ型電池でより効果的に抑制することができる。
【0034】
前記プロピオネート系溶媒としてはメチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートまたはこれらの組み合わせであり得る。前記プロピオネート系溶媒を一つ以上使用する場合、その混合比は適宜調節することができる。例えば、前記プロピオネート系溶媒としてエチルプロピオネートおよびプロピルプロピオネートを混合して使用することができる。この時、非水性有機溶媒中の、エチルプロピオネートは5体積%~40体積%、プロピルプロピオネートは55体積%~75体積%であり得、カーボネート系溶媒を残量で含むことができる。エチルプロピオネートとプロピルプロピオネートの混合比は25:75~30:70体積比であり得る。プロピオネート系溶媒としてエチルプロピオネートとプロピルプロピオネートを使用する場合、特に前記含有量で使用する場合、ガス発生をより効果的に抑制し、かつ低温サイクル寿命特性もまた、より向上させることができる。
【0035】
前記カーボネート系溶媒はジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)またはこれらの組み合わせを使用することができる。前記カーボネート系溶媒を一つ以上使用する場合、その混合比は適宜調節することができる。また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用した方が良い。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合して使用すると優れた電解液の性能を示すことができる。
【0036】
一実施形態において、前記非水性有機溶媒はエステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒をさらに含むこともできる。
【0037】
前記エステル系溶媒としてはメチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。
【0038】
前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。
【0039】
前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としてはT-CN(Tは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類などを使用することができる。
【0040】
また、前記非水性有機溶媒は芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては下記化学式2の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0041】
【化3】
【0042】
(前記化学式2において、R10~R15は互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。)
【0043】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としてはベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0044】
前記リチウム二次電池用電解質は電池寿命を向上させるために、ビニルエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、下記化学式3のエチレンカーボネート系化合物またはこれらの組み合わせを寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0045】
【化4】
【0046】
(前記化学式3において、R16およびR17はそれぞれ独立して水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、前記 16 および 17 の少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選ばれ、ただし 16 17 はすべて水素ではない。)
【0047】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としてはジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、またはシアノエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適宜調節することができる。
【0048】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にして、正極と負極の間のリチウムイオン移動を促進する役割をする物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としてはLiPF、LiSbF、LiAsF、LiPO、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、Li(FSON(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide:LiFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiPO、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato) phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato) borate:LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキソラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選ばれる一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用した方が良い。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0049】
一実施形態で、前記負極活物質を含む負極は、この負極活物質を含む負極活物質層と、この負極活物質層を支持する電流集電体を含む。
【0050】
前記負極活物質層は負極活物質とバインダを含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。
【0051】
前記負極活物質層で負極活物質の含有量は負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。前記負極活物質層でバインダの含有量は負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また、導電材をさらに含む場合には負極活物質を90重量%~98重量%、バインダを1~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0052】
前記バインダは負極活物質粒子を互いによく付着させて、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割をする。前記バインダとしては非水溶性バインダ、水溶性バインダまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0053】
前記非水溶性バインダとしてはエチレンプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
前記水溶性バインダとしてはスチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
前記負極バインダとして水溶性バインダを使用する場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含むことができる。このセルロース系化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含有量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0056】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であれば、いかなるものでも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0057】
前記集電体としては銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコートされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より得られるものを使用することができる。
【0058】
一実施形態で、前記正極活物質を含む正極は、この正極活物質を含む正極活物質層および、この正極活物質層を支持する電流集電体を含む。
【0059】
前記正極活物質としてはリチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用することができ、具体的にはコバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから得られる金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のことを使用することができる。より具体的な例としては下記化学式のいずれか一つで表される化合物を使用することができる。Li1-b(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5);Li1-b(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);Li1-b(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);Li2-b4-c(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);LiNi1-b-cCoα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α≦2);LiNi1-b-cCo2-αα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiNi1-b-cCo2-α(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiNi1-b-cMnα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α≦2);LiNi1-b-cMn2-αα(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiNi1-b-cMn2-α(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.5,0<α<2);LiNi(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1);LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1);LiNiG(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1) LiCoG(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiMn1-b(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiMn(0.90≦a≦1.8,0.001≦b≦0.1);LiMn1-gPO(0.90≦a≦1.8,0≦g≦0.5);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiZO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePO(0.90≦a≦1.8)
【0060】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;XはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;DはO、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;EはCo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;TはF、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;QはTi、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;ZはCr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれ;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より得られる。
【0061】
もちろんこの化合物表面にコート層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコート層を有する化合物を混合して使用することもできる。このコート層はコーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらコート層をなす化合物は非晶質または結晶質であり得る。前記コート層に含まれるコーティング元素としてはMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コート層の形成工程は前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法など)でコートできれば、いかなるコーティング方法を用いてもよく、これについては当該分野に従事する人々によく理解される内容であるから詳しい説明は省略する。
【0062】
一実施形態例による正極活物質はLiCo1-b(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5)、LiCo1-b(0.90≦a≦1.8,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05);LiCo1-b(0≦b≦0.5,0≦c≦0.05)、またはこれらの組み合わせが適切である。
【0063】
前記正極で、前記正極活物質の含有量は正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であり得る。
【0064】
一実施形態において、前記正極活物質層はバインダおよび導電材をさらに含むことができる。この時、前記バインダおよび導電材の含有量は正極活物質層全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であり得る。
【0065】
前記バインダは正極活物質粒子を互いによく付着させて、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割をし、その代表的な例としてはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリレーティッドスチレン-ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性材料であればいかなるものでも使用可能である。導電材の例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0067】
前記電流集電体としてはアルミニウム箔、ニッケル箔またはこれらの組み合わせを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0068】
前記正極活物質層および負極活物質層は活物質、バインダおよび選択的に導電材を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。このような活物質層の形成方法は当該分野に広く知られた内容であるから本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN-メチルピロリドンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。また、負極活物質層に水溶性バインダを使用する場合、負極活物質組成物の製造時に使用される溶媒として水を使用することができる。
【0069】
また、リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在し得る。このようなセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用できるのはもちろんである。
【0070】
他の一実施形態によれば、前記セパレータは多孔性基材およびこの多孔性基材上に位置する機能層を含む複合多孔性セパレータであり得る。前記機能層は追加的な機能付加が可能なものであって、例えば、耐熱層および接着層の少なくとも一つであり得る。前記耐熱層は耐熱性樹脂および選択的にフィラーを含むことができる。また、前記接着層は接着性樹脂および選択的にフィラーを含むことができる。前記フィラーは有機フィラー、無機フィラーまたはこれらの組み合わせであり得る。前記耐熱性樹脂、接着性樹脂、フィラーは当該分野のセパレータに使用できるものはいかなるものでも使用することができる。
【0071】
図1に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示した。一実施形態によるリチウム二次電池はパウチ型電池を例に挙げて説明したが、本発明はこれに制限されるものではなく、円筒型、角型など多様な形態の電池に適用することができる。
【0072】
図1を参照すると、一実施形態によるリチウム二次パウチ電池100は正極10と負極20の間にセパレータ30を介在してワインディングされた電極組立体110、前記電極組立体110が内蔵されるケース120、そして前記電極組立体110で形成された電流を外部に誘導するための電気的通路の役割をする電極タブ130を含むことができる。前記ケース120の2つの面は互いに向かい合う面を重なって密封する。また、前記電極組立体110を収納しているケース120の内部に電解液が注液され、前記正極10、前記負極20および前記セパレータ30は電解液(図示せず)に含浸されている。
【実施例
【0073】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例だけであり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートを10:15:30:45体積%で混合した非水性有機溶媒に1.3M LiPFを溶解させて、下記化学式1aのスルホランを添加して、リチウム二次電池用電解質を製造した。この時、下記化学式1aのスルホラン含有量は前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、2.5重量%とした。
【0075】
【化5】
【0076】
天然黒鉛とSi-炭素複合体を95:5重量比で混合した負極活物質96重量%、スチレン-ブタジエンゴムバインダ2重量%およびカルボキシメチルセルロース2重量%を水溶媒の中で混合して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを銅箔にコーティング、乾燥および圧延して負極を製造した。この時、前記Si-炭素複合体は人造黒鉛およびシリコン粒子を含むコアおよび前記コアの表面にソフトカーボンがコートされた形態であり、この時、人造黒鉛の含有量はSi-炭素複合体全体重量に対して40重量%であり、前記シリコン粒子の含有量は40重量%であり、前記非晶質炭素の含有量は20重量%であった。前記ソフトカーボンコート層の厚さは20nmであり、前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は100nmであった。
【0077】
LiCoO正極活物質96重量%、ケッチェンブラック導電材2重量%およびポリビニリデンフルオライド2重量%をN-メチルピロリドン溶媒の中で混合して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーをアルミニウム箔にコーティング、乾燥および圧延して正極を製造した。
前記電解質、前記正極および前記負極を用いて通常の方法で、4.4V級パウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0078】
(実施例2)
前記化学式1aの添加剤含有量を前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、5重量%に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して電解質を製造し、この電解質および前記実施例1の負極と正極を使用して前記実施例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0079】
(実施例3)
前記化学式1aの添加剤含有量を前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、10重量%に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して電解質を製造し、この電解質および前記実施例1の負極と正極を使用して前記実施例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0080】
(参考例1)
前記天然黒鉛およびSi-炭素複合体の混合比を95:5重量比に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して負極を製造し、また、前記化学式1aの添加剤含有量を前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、12.5重量%に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して電解質を製造し、前記負極、前記電解質と、前記実施例1の正極を使用して前記実施例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0081】
(実施例4)
前記天然黒鉛およびSi-炭素複合体の混合比を97.5:2.5重量比に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して負極を製造し、前記実施例1の電解質および前記実施例1の正極を使用して前記実施例4と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0082】
(実施例5)
前記実施例4の負極、前記実施例2の電解質および前記実施例1の正極を使用して前記実施例4と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0083】
(実施例6)
前記実施例4の負極、前記実施例3の電解質および前記実施例1の正極を使用して前記実施例4と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0084】
(参考例2)
前記実施例4の負極、前記参考例1の電解質および前記実施例1の正極を使用して前記実施例4と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0085】
(比較例1)
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートを10:15:30:45体積%で混合した非水性有機溶媒に1.3M LiPFを溶解させてリチウム二次電池用電解質を製造した。
天然黒鉛負極活物質96重量%、スチレン-ブタジエンゴムバインダ2重量%およびカルボキシメチルセルロース2重量%を水溶媒の中で混合して負極活物質スラリーを製造した。前記負極活物質スラリーを銅箔にコーティング、乾燥および圧延して負極を製造した。
前記電解質および前記負極と、前記実施例1の正極を使用したことを除いては前記実施例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0086】
(比較例2)
前記実施例1の電解質、前記比較例1の負極および前記比較例1の正極を使用して、前記比較例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0087】
(比較例3)
前記化学式1aのスルホラン含有量を前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、5重量%に変更して製造された電解質を使用したことを除いては、前記比較例2と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0088】
(比較例4)
前記化学式1aのスルホラン含有量を前記非水性有機溶媒およびリチウム塩全体含有量100重量%に対して、10重量%に変更して製造された電解質を使用したことを除いては、前記比較例2と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0089】
(比較例5)
前記比較例1の電解質、前記実施例1の負極および前記実施例1の正極を使用したことを除いては前記比較例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0090】
(比較例6)
前記比較例1の電解質、前記実施例5の負極および前記比較例1の正極を使用したことを除いては前記比較例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0091】
(比較例7)
前記天然黒鉛およびSi-炭素複合体の混合比を92.5:7.5重量比に変更したことを除いては前記実施例1と同一に実施して負極を製造し、この負極と、前記比較例3の電解質および前記比較例1の正極を使用したことを除いては前記比較例1と同一に実施してパウチ型リチウム二次電池を製造した。
【0092】
前記実施例1~6、前記参考例1および2と、前記比較例1~7の黒鉛およびSi-炭素複合体の混合比および化学式1aのスルホラン含有量を下記表1に整理して示した。
【0093】
【表1】
【0094】
*直流内部抵抗(DC-IR:Direct current internal resistance)の評価
【0095】
前記実施例1~6、前記参考例1および2と、前記比較例1~7で製造されたリチウム二次電池を60℃でSOC100(state of charge、満充電状態、電池全体充電容量を100%としたとき、100%充電容量になるように充電した状態)で10秒間10Aの定電流で放電し、10秒間1Aの定電流放電した後、4秒間10Aの定電流放電した後、保管直前の電圧および電流値を測定し、また、前記電池を60℃で30日間保存して電圧および電流値を測定した。
【0096】
直流抵抗値を18秒および23秒のデータから式ΔR=ΔV/ΔIにより計算した。すなわち、(10A 10秒放電、1A 10秒放電および10A 4秒放電後の測定電圧値-10A 10秒放電および1A 8秒放電後の測定電圧値)/10A 10秒放電、8秒放電後電流値で求めた。
【0097】
保管直前の直流抵抗値と、30日後測定した直流抵抗値を用いて、下記式1により抵抗増加率を求めた。
【0098】
その結果である初期DC-IR、60℃で3日貯蔵後のDC-IRおよび抵抗増加率を下記表1に示した。また、その結果のうちSi-炭素複合体の含有量に応じた効果をより明確に調べるために、実施例2および5と、比較例3の結果を図2に示し、実施例1~6、参考例1および2と、比較例1~7の結果を図3に示した。さらに、化学式1aのスルホラン含有量に応じた効果をより明確に調べるために、実施例1~3、参考例1と、比較例5の結果を図4に示した。
[式1]
DCIR増加率=[DCIR(30d.)]/DCIR(0d.)×100%
式1中、DCIR(30d.)は30日後のDCIRを示し、DCIR(0d.)は保管直前のDCIRを示す。
【0099】
【表2】
【0100】
前記表2および図3に示すように、負極活物質として人造黒鉛およびSi-炭素複合体を使用し、化学式1aのスルホランを含む、特に0.1重量%~10重量%で含む電解質を使用した実施例1~6のリチウム二次電池が、適切な初期抵抗を維持し、かつ高温貯蔵後の抵抗増加率が低く示されることがわかる。
【0101】
負極活物質として人造黒鉛およびSi-炭素複合体を使用し、化学式1aのスルホランを含んでも、スルホランを12.5重量%で過量含む参考例1および2の場合、高温貯蔵後の抵抗増加率が非常に高く示されたことがわかる。
【0102】
前記表2および図3の比較例1~7の結果のように、負極活物質としてSi-炭素複合体を使用しない場合には、化学式1aのスルホランを含んでも、高温抵抗増加率が高く示されることがわかる。図2に示した結果から、化学式1aのスルホラン含むことによる60℃、30日貯蔵後のDC-IRおよび高温貯蔵増加率の低下効果は、Si-炭素複合体を負極活物質として含む場合、得られることを明確にわかることができる。
【0103】
さらに、化学式1aのスルホランを2.5重量%、5重量%および10重量%含む電解質を使用することにより60℃、30日貯蔵後のDC-IRおよび高温貯蔵増加率が低下することを図4の結果から明確にわかることができる。
【0104】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で製造することができ、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施できることを理解することができる。したがって、上記一実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4