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特許7564389すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20241001BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20241001BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L19/00 Z
A23L2/02 A
A23L2/02 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024010393
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-02-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示日 令和5年12月20日 (2)展示会名、開催場所 三菱食品 新商品商談会 プリズムホール(東京都文京区後楽1-3-61 東京ドームシティ) (3)公開者 キッコーマン食品株式会社 (4)公開された発明の内容 キッコーマン食品株式会社が、三菱食品新商品商談会にて、徳山城永及び市川千晶が発明した新商品の容器詰めすりおろし果実含有食品について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日 令和6年1月23日 (2)ウェブサイトのアドレス https://www.kikkoman.com/jp/news/2024/24016.html (3)公開者 キッコーマン食品株式会社 (4)公開された発明の内容 キッコーマン食品株式会社が、上記アドレスで公開されるキッコーマン株式会社のウェブサイトにて、徳山城永及び市川千晶が発明した新商品の容器詰めすりおろし果実含有食品について公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】徳山 城永
(72)【発明者】
【氏名】市川 千晶
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-202088(JP,A)
【文献】特開2015-037400(JP,A)
【文献】特開昭60-256370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0129591(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0058982(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すりおろし果実および/またはすりおろし野菜、果実ピューレおよび/または野菜ピューレ、および果汁を原料とし、すりおろし果実および/またはすりおろし野菜を20~80重量%含有し、
(1)B型粘度が500~6000mPa・sであり、
(2)ブリックスが8~16である、
ことを特徴とする、果実と野菜がストレート換算で100%以上である容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品。
【請求項2】
果実および/または野菜の目開き1.0mm以上の固形物を3~50重量%含有する、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
容器が、スパウトパウチまたはストロー付である、請求項1または2に記載の食品。
【請求項4】
果実と野菜がストレート換算で100%以上である容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品の製造方法であって、すりおろし果実および/またはすりおろし野菜が20~80重量%となるように、果実ピューレおよび/または野菜ピューレと果汁をブレンドして、B型粘度を500~6000mPa・sにおよびブリックスを8~16に調整して、容器に充填することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
果物や野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で栄養価が高く、特に果実は、果糖等の甘味とクエン酸、リンゴ酸等の酸味のバランスがよく、朝食や間食あるいはデザートとして好ましく喫食される。そのため、果物を家庭でだけではなく、外でも手軽に喫食したいという要望に応えて、果実成分だけの飲食品(特許文献1~3)が従来から開発され、販売されている。
【0003】
このような飲食品のうち、元の果実にできるだけ近い味と栄養素含有量を有する果実食品として、すりおろし果実からなる食品が販売されている。素材特有の食感がありデザートや上掛けソースとして喫食されているが、すりおろし果実だけでは粘度が高くなりすぎたり、繊維や果肉などの固形分が多すぎて口当たりや舌触り、喉ごしなどの食感が悪くなって飲み込みにくくなるため、飲用には適さない。また、すりおろし果実だけでは甘味が足りないために砂糖を添加する場合があるが、果実本来の甘さではなく砂糖の甘さが強調されるために、果実本来の風味とは異なり飲用には適さない。
【0004】
一方、忙しい時や小腹を満たすために手軽に喫食できるスパウトパウチ容器詰ゼリー飲料(特許文献4)は、さまざまな種類が販売されている。ゼリー飲料であるためゲル化剤を使用して食感を補強する必要があり、また、果汁を含む場合でも、果実感が感じられるほどの量は含まれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-333727号公報
【文献】特許第2912790号公報
【文献】特許第7026708号公報
【文献】特許第6762110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
果実や野菜をすりおろした原料を食品に配合すると、果実や野菜特有の風味と食感を付与することができるが、果実や野菜のすりおろし原料だけの食品は、適度な甘さに欠ける場合があることから、砂糖を添加して適度な甘さに調整した食品としているものの、果実や野菜の甘みというよりも砂糖特有の甘味が強調されるなどの問題があり、そのまま飲用するには適さない。また、食べる場合と飲む場合では、テクスチャーの感じ方が異なる。飲む場合では、食べる場合と異なり、食品を喉に流し込む必要があるため、ある程度の流動性が必要になり、流動性がないと飲み込みにくいといった問題がある。特に、スパウトパウチやストローで吸い出す場合において、とろみが強すぎたり、すりおろした繊維量や果肉量が多すぎたりすると、吸引経路の途中で詰まりやすくなり、吸い出しづらくなるといった問題がある。さらに、スパウトパウチ容器入り飲食品等の吸引飲食を行うフルーツ味の食品においては、果汁の含量が少ない商品や、飲食時に口当たりをよくするためにゲル化剤や増粘剤を用いてとろみを付ける商品が主流であり、果実や野菜の風味と食感を付与できるほどのすりおろし原料は配合されていない。
【0007】
本発明は、果実および/または野菜のすりおろし原料を多く含むことで、果実等を食べているような風味と食感が維持されていながら、適度な甘味と直接喫食できるとろみや食感を有し、果実そのものの味わいを楽しめる新感覚のすりおろし果実および/または野菜含有食品を提供することを、その課題とする。
また、本発明は、果物および/または野菜を含有した場合に、濃縮原料を含み、ストレート換算で100%以上配合されているものであって、スパウトパウチ等から吸引飲食するのに適した甘味、食感、とろみを有する、果汁やゼリーでは実現できない本物の果実の甘さと食感を楽しめる容器詰食品を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、果実や野菜原料以外の増粘効果のある原料や、甘味付与素材(砂糖、甘味料など)を使用しないで、すりおろし原料に、すりおろし原料とは甘味やとろみの異なる2つの果実由来原料をブレンドして食品の甘味やとろみを調整することで、すりおろし原料特有の風味と食感を十分維持した果実そのものの味わいが楽しめる食品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下[1]~[]に記載の容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品、または、[]に記載のその製造方法に関する。
[1]すりおろし果実および/またはすりおろし野菜、果実ピューレおよび/または野菜ピューレ、および果汁を原料とし、すりおろし果実および/またはすりおろし野菜を20~80重量%含有し、(1)B型粘度が500~6000mPa・sであり、(2)ブリックスが8~16である、ことを特徴とする、果実と野菜がストレート換算で100%以上である容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品。
[2]果実および/または野菜の目開き1.0mm以上の固形物を3~50重量%含有する、上記[1]に記載の食品。
[3]容器がスパウトパウチまたはストロー付である、上記[1]または[2]に記載の食品。
[4]果実と野菜がストレート換算で100%以上である容器詰すりおろし果実および/またはすりおろし野菜含有食品の製造方法であって、すりおろし果実および/またはすりおろし野菜が20~80重量%となるように、果実ピューレおよび/または野菜ピューレと果汁をブレンドして、B型粘度を500~6000mPa・sにおよびブリックスを8~16に調整して、容器に充填することを特徴とする、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
すりおろし原料の配合量を下げると固形量も下がるため、食感が弱くなり甘味も低下する。本発明においては、果汁および果実ピューレをブレンドして適度な甘味ととろみを付与するため、果実そのものの味わいを楽しむことができて、カットフルーツよりも手軽で生果実を食べたような満足感が得られる新感覚の飲食品が得られる。
また、食感の有無は、固形量以外にも、口の中に残る固形が残存する時間によって感じ方が変わる。固形量のみを下げてしまうと食感が弱くなるが、本発明においては、果実ピューレをブレンドしてとろみを上げることで、固形が口の中に残存する時間が長くなり、固形量を下げても液粘度の調整により風味と食感を維持できる。
【0011】
さらに、果汁により甘味を付与して全体の甘味の調整をするため、ジュースやゼリーでは実現できない本物のフルーツの甘さと食感を有し、またスパウトパウチ等から吸引飲食するのに適した甘味ととろみに調整されているため、容器から片手で手軽に喫食できる。
果実そのものの味わいを楽しめて、果実を食べているような満足感が得られるだけでなく、砂糖を使用せずに果実や野菜100%の食品となるため、食物繊維やビタミンCが豊富で健康増進に役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のすりおろし果実や野菜を含有する容器詰食品は、容器から出してそのまま喫食して果実そのものの味わいを楽しむことのできる、すりおろし果実、野菜を含む飲食品である。容器がスパウトパウチである場合には、容器から直接喫食できる。
【0013】
すりおろし果実や野菜の原料は、生食ができる果実や野菜であれば各種の果実、野菜を使用できる。すりおろし原料や果実ピューレや果汁の原料の果実、野菜として、例えば、モモ、リンゴ、パインアップル、マンゴー、バナナ、みかん、グレープフルーツ、トマト、にんじんが代表的なものである。
その他にも、例えば、ブドウ、イチゴ、ナシ、洋ナシ、ウメ、グアバ、スイカ、サクランボ、アメリカンチェリー、アンズ、ざくろ、ライチ、柿、メロン、レモン、キウイ、ブルーベリー、クランベリー、アボカド、ブロッコリー、セロリ、ほうれん草、大根、たまねぎ、とうもろこし等が挙げられる。
【0014】
本発明のすりおろし原料とは、果実または野菜原料を果肉や繊維が食感として残るように粗く破砕し、すりおろした性状のものをいう。この破砕処理には、パルパー、コミトロール、ダイサー等を用いる。
また、このすりおろした性状では、ストレートBx(ブリックス)または基準Bxにおける粒度分布で、目開き1.0mm以上のものが10重量%以上である。
ストレートBxとは非濃縮(ストレート)原料のBxであり、基準Bxとは、濃縮原料における濃縮前のBxである。果実に関しては、果実飲料の日本農林規格の別表3で基準Bxが規定されている。また、トマトに関しては、トマト加工品の日本農林規格のトマトジュースの規格(無塩可溶性固形分)で4.5%と規定されている。
【0015】
本発明の果実ピューレとは、果実を破砕、裏ごししたもので、流動性のあるなめらかな性状のものをいう。たとえば、ミキサーなどで破砕した後、細かな網状のピューレ用器具を通過させて製造する。
また、この流動性のあるなめらかな性状では、ストレートBxまたは基準Bxにおける粒度分布で、目開き1.0mm以上のものが10重量%未満であり、かつ基準BxにおけるB型粘度が50mPa・s以上である。
【0016】
本発明の果汁とは、果実を破砕、搾汁又は裏ごししたジュース状のものをいう。
また、このジュース状では、基準BxにおけるB型粘度が50mPa・s未満である。
すりおろし原料の果実と果実ピューレと果汁原料の果実は、同種であっても異種であってもよい。同種であれば生果実を食べたような味となり、異種であればミックス果実の甘さと食感が楽しめる。
【0017】
本発明のすりおろし果実、野菜含有食品は、すりおろし果実および/または野菜が目安として20~80重量%含まれるように、果実ピューレと果汁をブレンド(混合)することにより製造される。ブレンドする果実ピューレと果汁の量は、最終製品のB型粘度が500~6000mPa・sとなるように、かつブリックスが8~16となるように調整される。
また、最終製品の粒度分布で目開き1.0mm以上のものが3~50重量%となるように、すりおろし果実等と果実ピューレと果汁の量を調整することが好ましく、さらに最終製品の沈殿重量比が、10~40重量%となるように調整することがより好ましい。
【0018】
すりおろし果実、野菜含有食品のB型粘度とブリックスを所望の範囲に調整するために、すりおろし果実および/または野菜にブレンドする果実ピューレと果汁の量は、すりおろし果実や野菜の種類や量、および果実ピューレと果汁の果実の種類によって異なる。一般には、すりおろし果実、野菜含有食品に、果実ピューレを2~50重量%、果汁を1~25重量%の範囲でブレンドする。
また、本発明のすりおろし果実、野菜含有食品における含有量とは、すりおろし果実および/または野菜、果実ピューレおよび果汁からなる野菜果実原料、水、並びにその他原料を含めた製品全体を100重量%とした場合の含有率、配合率である。
【0019】
本発明における粒度分布の測定方法は、50gの検体に対して100gの加水をしたものを良く混合し、目開き1.0mmの篩の上にゆっくりと篩全体になじませるように注ぎ、その後、水を2L程度注ぎ、篩を傾けて水を切り、篩の上にある重量を測定して、測定値を検体全体の重量で除して得た割合を粒度分布とするという方法である。
また、沈殿重量比の測定方法は、遠沈管の風袋を測定(A)し、遠沈管に検体を入れて合計130gになるように秤量する。その後、高速冷却遠心機(「Suprema21」トミー精工社製)を使用し、18680G、4℃、30分の条件で遠心分離を行う。遠心分離後に遠沈管をゆっくりと傾けて上清を捨てた後、遠沈管を3分程度逆さまにして上清を除き、その後、遠沈管に残った沈殿分と風袋を含めた重量(B)を測定する。検体重量(130-A)および沈殿重量(B-A)を算出し、沈殿重量を検体重量で除して得た割合を沈殿重量比(重量%)とする方法である。
【0020】
本発明のすりおろし果実、野菜含有食品のB型粘度は、20℃で500~6000mPa・sであり、好ましくは1500~4000mPa・sである。
B型粘度が500mPa・s未満であると、とろみが足りないため果汁感が増して果実を食べているような果実感が低下する。また、B型粘度が6000mPa・sを超えると、とろみが強すぎて、スパウトパウチを使用する場合には、スパウトからの吸引飲食に適さなくなる。B型粘度は、主に果実ピューレにより調整される。
B型粘度の測定方法は、B型粘度計(「TV-10」東機産業社製)を用いて、回転数12rpmで50秒回転(すりおろし原料は120秒回転)の条件で測定する。
【0021】
本発明のすりおろし果実、野菜含有食品のブリックス(Bx)は、使用する果実の種類に応じて、生果実の甘味と同程度か少し甘い8~16に調整するのが好ましい。ブリックスは、主に果汁中の果糖、ブドウ糖などの単糖類により調整される。
本発明におけるブリックスとは、溶液中の可溶性固形分濃度を示し、ブリックスは一般的に、市販されている糖度計を用いて測定できる。
【0022】
本発明のすりおろし果実、野菜含有食品は、果実または野菜から得られ、「100%果実」または「100%野菜、果実」とラベル表示され、濃縮原料を含み、ストレート換算で100%以上配合されていることが好ましい。必要に応じて、元の生果実と類似の食品とするための水やクエン酸などの酸味料、色補正のための1種類以上の酸化防止剤、例えば、ビタミンCや酵素処理ルチン、着色料、香料等の添加剤を添加してもよい。
【0023】
B型粘度やブリックス等を調整して、必要があれば添加剤を添加したすりおろし果実、野菜含有食品を、加熱殺菌してから容器に密封充填する。
充填する容器は、缶容器、PET製容器、ガラス瓶、プラスチックカップ、スパウトパウチ等任意の容器を使用できるが、食品を吸引して飲食できるストロー付容器やスパウトパウチが好ましく用いられる。
【0024】
スパウトパウチ容器は、スパウト(注ぎ口)によって再封性があり経済的である包装容器であり、液体だけではなく半固形物にも対応できる。スパウトパウチ詰食品は、容器本体を圧縮してスパウト部分を吸引することで、簡単に吸引飲食される。また、スパウトの口径により中身の吸い出やすさは変化するので、口径サイズは直径4~12mmが好ましい。
【0025】
すりおろし果実、野菜含有食品の加熱殺菌の条件は、生果実の味や食感を損なわないで、かつ、常温流通に耐えることが必要かつ十分な殺菌条件である。そのため、加熱殺菌処理は、90℃~120℃の温度で3秒~90秒間、例えば95℃の温度で60秒間行う。このように加熱殺菌処理した食品を容器に密封充填する。
【0026】
以上本明細書において、数値間に記載の「~」は、その前後の数値を含む値であり、前の数値以上、後の数値以下を意味する。
以下、本発明を実施例と比較例とからなる試験例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の試験例によって何ら限定されるものではない。
また、試験例における「%」は全て「重量%」を意味する。
【実施例
【0027】
<測定装置>
実施例では、以下の測定装置を使用した。
・ブリックス(Bx):デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社)
・B型粘度:B型粘度計TV-10(東機産業社)
【0028】
[試験1]
[各官能評価項目の評価基準の設定]
<評価基準のための予備試験>
評価基準の設定のために、すりおろし原料用、果汁用、果実ピューレ用にそれぞれ複数の果実を選択して、それぞれのブリックス、B型粘度、粒度分布、沈殿重量比を測定した。結果を表1~3に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表1~3の測定結果に基づき、評価基準の設定のために、下記表4~6に示すそれぞれの基準品を設定した。
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
<評価方法>
「評価パネル」
果実および野菜の評価に秀でた分析型官能評価パネル(A~Cの3名、訓練期間3~17年)を用いて、各評価項目に関する評価訓練を行った。具体的には、評価項目の特性に対しては、パネル間で討議してすり合わせを行うことで、各パネリストが共通認識を持つようにした。また、官能試験の妥当性を担保するために、いくつかの評価サンプルを用いて該パネルに評価訓練をさせ、各パネリストにおける評価の再現性を確認した。これら評価訓練を行った後、該パネルを用いて各試験品の評価サンプルについて評価を行った。
【0036】
「評価項目」
評価項目は、以下の3項目である。
・すりおろし食感:スパウト口からの吸い出しやすさと固形の濃度
強すぎる場合:飲みづらい、くどい 弱すぎる場合:物足りない
・甘味:スパウトパウチから喫食した際に感じる甘味
甘すぎる場合:飲みづらい、くどい 薄すぎる場合:物足りない
・とろみ:スパウト口からの吸い出しやすさと濃厚さ
強すぎる場合:飲みづらい、くどい 弱すぎる場合:物足りない
【0037】
<評価基準の設定>
・すりおろし食感
すりおろし原料の基準品(1)~(4)を3点とした場合
3:スパウトパウチから喫食するのにちょうど良い強さ
2:スパウトパウチから喫食するにはやや強い、もしくはやや弱い
1:スパウトパウチから喫食するには強い、もしくは弱い
・甘味
果汁の基準品(5)~(7)を3点とした場合
3:スパウトパウチから喫食するのにちょうど良い甘さ
2:スパウトパウチから喫食するにはやや甘い、もしくはやや薄い
1:スパウトパウチから喫食するには甘い、もしくは薄い
【0038】
・とろみ
果実ピューレの基準品(8)~(10)を3点とした場合
3:スパウトパウチから喫食するのにちょうど良い強さ
2:スパウトパウチから喫食するにはやや強い、もしくはやや弱い
1:スパウトパウチから喫食するには強い、もしくは弱い
<評価>
1~3点の三段階評価であり、パネル3人の平均点を各項目の評価とした。
また、合格基準は、各パネルの各項目の評価の合計である総合評価におけるパネル3人の平均点が7点以上で、かつ、各項目の平均点が2点を下回らないこととした。
【0039】
[試験2]
[すりおろし果実または野菜、果汁、果実ピューレの処方と分析値および官能評価(その1)]
すりおろし果実として表1に示したりんご(処方1)またはパインアップル(処方2)を使用し、または、すりおろし野菜として表1に示した人参(処方3)またはトマト(処方4)を使用した。それぞれのすりおろし果実または野菜に、表2に示した果汁の一つと表3に示した果実ピューレの一つをブレンドして、すりおろし果実または野菜含有食品(処方1-4~6、2-4~6、3-4~6、4-4~6)を製造した。
また、比較のために、すりおろし原料のみの食品(処方1-1、2-1、3-1、4-1)、すりおろし原料に果汁をブレンドした食品(処方1-2、2-2、3-2、4-2)、すりおろし原料に果実ピューレをブレンドした食品(処方1-3、2-3、3-3、4-3)を製造した。
各処方のブリックス、B型粘度、粒度分布、沈殿重量比を測定し、各処方の官能評価を上記評価方法に従って行った。
試験2(その1)の内容と結果を表7~10(表7:すりおろし果実がりんご、表8:すりおろし果実がパインアップル、表9:すりおろし野菜が人参、表10:すりおろし野菜がトマト)に示す。
【0040】
1.りんご
【表7】
【0041】
2.パインアップル
【表8】
【0042】
3.人参
【表9】
【0043】
4.トマト
【表10】
【0044】
すりおろし原料に果汁と果実ピューレをブレンドして、B型粘度を500~6000mPa・sに、ブリックスを8~16に調整することにより初めて、すりおろし食感と甘味ととろみのいずれもが、すりおろし原料の食感と果汁の甘味と果実ピューレのとろみに近似するものとなった。すりおろし原料に果汁と果実ピューレをブレンドすることにより、本物のフルーツの甘さと食感を有し、果実そのものの味わいを楽しめる食品が得られた。
B型粘度が500~6000mPa・sでブリックスが8~16であっても、すりおろし原料のみ、すりおろし原料と果汁の組合せ、およびすりおろし原料と果実ピューレの組合せでは、官能試験の総合評価が合格基準に達しないことがわかる。
【0045】
[すりおろし果実または野菜、果汁、果実ピューレの処方と分析値および官能評価(その2)]
すりおろし果実として表1に示したりんごとパインアップルのブレンド(処方5-1~5-3)を使用し、または、すりおろし野菜として表1に示した人参とトマトのブレンド(処方5-4~5-6)を使用した。各ブレンドすりおろし原料に、表2に示した果汁の一つと表3に示した果実ピューレの一つをブレンドして、すりおろし果実または野菜含有食品(処方5-1~6)を製造した。
各処方についてブリックス、B型粘度、粒度分布、沈殿重量比を測定し、各処方の官能評価を上記評価方法に従って行った。試験2(その2)の内容と結果を表11に示す。
【0046】
【表11】
【0047】
すりおろし原料が果実や野菜のブレンドであっても、すりおろし食感と甘味ととろみのいずれの評価も高かった。この結果から、すりおろし原料だけでなく、果汁や果実ピューレについても、同様にブレンドでよいことがわかる。
【0048】
[試験3]
[既存製品との比較に関する試験]
市販されているパウチ入りまたはスパウトパウチ入りのすりおろし果実製品について、ブリックス、B型粘度、粒度分布、沈殿重量比を測定し、また、官能評価を上記評価方法に従って行った。
試験3の内容と結果を表12に示す。
【0049】
【表12】
【0050】
市販のすりおろし果実製品は、すりおろし果実だけ、あるいはすりおろし果実と果汁の組合せであり、果実ピューレを使用していない。さらに砂糖を使用しているものもあって、これらの官能評価は、本発明における合格基準には達していない。
【要約】
【課題】果実や野菜のすりおろし原料を含み、果実と同様の甘味と直接喫食できるとろみや食感を有し、果実そのものの味わいを楽しめる新感覚の容器詰すりおろし果実および/または野菜含有食品を提供する。
【解決手段】本発明は、すりおろし果実および/またはすりおろし野菜、果実ピューレ、および果汁を原料として、(1)B型粘度が500~6000mPa・sであり、(2)ブリックスが8~16である、容器詰すりおろし果実および/または野菜含有食品である。
【選択図】なし