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特許7564402粘着剤層付きタッチセンサ、画像表示装置
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  • 特許-粘着剤層付きタッチセンサ、画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】粘着剤層付きタッチセンサ、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241001BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241001BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241001BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20241001BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241001BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241001BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241001BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241001BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/95 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
G06F3/041 495
B32B7/025
B32B27/00 M
B32B27/18 Z
C09J7/38
C09J11/04
C09J201/00
G06F3/041 490
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G09F9/30 365
H10K50/86 865
H10K59/10
H10K59/40
H10K59/95
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024092907
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2024087068の分割
【原出願日】2024-05-29
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2024030303
(32)【優先日】2024-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】片桐 健介
(72)【発明者】
【氏名】欧陽 テンカ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165401(JP,A)
【文献】特開2000-194503(JP,A)
【文献】特開2017-141442(JP,A)
【文献】特開2016-138234(JP,A)
【文献】特開2000-149664(JP,A)
【文献】中国実用新案第206348771(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
3/041 - 3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサと、
前記タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層と、を含む粘着剤層付きタッチセンサであって、
前記粘着剤層が可視光吸収材を含み、
前記粘着剤層が、以下の試験Xより算出される内部吸光度A0.0004~0.03であり、かつ、パラメータXが20~3000 ある、粘着剤層付きタッチセンサ。
試験X:JIS R 3106:2019に記載の方法で、支持白板の可視光反射率ρを得る。JIS R 3106:2019に記載の方法で、前記支持白板と前記粘着剤とを積層してなる積層体に対し、測定光を前記積層体の前記粘着剤側に入射して可視光反射率ρを得る。前記可視光反射率ρ及び前記可視光反射率ρから以下の式(1)により前記粘着剤層の内部吸光度Aを算出する。算出された内部吸光度A及び前記粘着剤層の厚みD(m)から以下の式(2)によりパラメータX(m-1)を算出する。
式(1) A = -log10{(ρ/ρ0.5
式(2) X = A/D
【請求項2】
前記粘着剤層の厚みが10~300μmである、請求項1に記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
【請求項3】
前記可視光吸収材が黒色顔料であり、
前記黒色顔料の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して5~200質量ppmである、請求項1に記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
【請求項4】
前記粘着剤層の厚みが10~300μmであり、
前記可視光吸収材が黒色顔料であり、
前記黒色顔料の含有量が、前記粘着剤層の全質量に対して5~200質量ppmである、請求項1に記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤層付きタッチセンサを有する、タッチパネル。
【請求項6】
画像表示素子と、
請求項1~4のいずれか1項に記載の粘着剤層付きタッチセンサと、を有する、画像表示装置。
【請求項7】
前記画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、請求項6に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘着剤層付きタッチセンサ及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タブレット型コンピュータ及びスマートフォン等の携帯情報機器を始めとした各種の電子機器において、指又はスタイラスペンを画面に接触又は近接させる、いわゆるタッチ操作を検知するタッチセンサが用いられている。このようなタッチセンサは、通常、基材の表面に形成され、タッチ操作を検知する検知電極を有している。
【0003】
例えば、特許文献1には、基板と、基板の少なくとも一方の表面上に設けられる導体配線とを有する導電性フィルムであって、導体配線が金属層と視認抑制層とを有し、視認抑制層が透明層とクロム含有層と透明層とをこの順に有する導電性フィルム、並びに、タッチパネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-182285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示素子にタッチセンサが積層されてなる画像表示装置において、高いコントラストを訴求する画像表示素子が用いられる例が、近年増加している。本発明者らは、特許文献1に開示されている技術を参照しながら、タッチセンサを有する画像表示装置の表示性能について鋭意検討したところ、タッチセンサを有さない画像表示装置に比べて、白と黒とを同時に表示する黒白表示をした際に、白表示部に隣接する黒表示部の輝度が増加し、コントラストが低下する傾向にあることを知見した。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、画像表示装置に適用して黒白表示をした際に、黒表示と白表示とのコントラストに優れ、かつ、白表示の輝度低下を抑制する性能に優れる粘着剤層付きタッチセンサの提供を課題とする。また、本発明は、上記粘着剤層付きタッチセンサを有する画像表示装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
〔1〕
タッチセンサと、上記タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層と、を含む粘着剤層付きタッチセンサであって、上記粘着剤層が可視光吸収材を含み、上記粘着剤層が、後述する試験Xより算出される内部吸光度Aが0.03以下であり、かつ、パラメータXが20m-1以上である、粘着剤層付きタッチセンサ。
〔2〕
上記粘着剤層の厚みが300μm以下である、〔1〕に記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
〔3〕
上記可視光吸収材が黒色顔料であり、上記黒色顔料の含有量が、上記粘着剤層の全質量に対して5~200質量ppmである、〔1〕又は〔2〕に記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
〔4〕
上記粘着剤層の厚みが300μm以下であり、上記可視光吸収材が黒色顔料であり、上記黒色顔料の含有量が、上記粘着剤層の全質量に対して5~200質量ppmである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粘着剤層付きタッチセンサ。
〔5〕
〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着剤層付きタッチセンサを有する、タッチパネル。
〔6〕
画像表示素子と、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着剤層付きタッチセンサと、を有する、画像表示装置。
〔7〕
上記画像表示素子が有機エレクトロルミネッセンス表示素子である、〔6〕に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像表示装置に適用して黒白表示をした際の黒表示と白表示とのコントラストに優れ、かつ、白表示の輝度低下を抑制する性能に優れる粘着剤層付きタッチセンサを提供できる。また、本発明によれば、上記粘着剤層付きタッチセンサを有する画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の粘着剤層付きタッチセンサを有する画像表示装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の粘着剤層付きタッチセンサ及び画像表示装置について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされるものであり、本発明はそのような実施形態のみに制限されない。また、各図面は、本発明を説明するために例示するものであり、視認又は説明を容易にするために各構成要素の縮尺を実際の縮尺から変更する場合がある。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
角度について「直交」又は「垂直」とは、90°±5°の範囲を意味し、「平行」とは、0°±5°の範囲を意味する。同様に、具体的な数値で表された角度は、特に記載が無ければ、厳密な角度との差異が5度以内であることを意味する。上記の直交、垂直及び平行並びに上記の角度と厳密な角度との差異は、4度以内が好ましく、3度以内がより好ましい。
【0012】
「ポリマー」、「高分子」又は「重合体」は、それぞれ、重量平均分子量が2000以上である化合物を意味する。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いて下記条件で測定されるポリスチレン換算値として定義される。
・装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
・カラム:東ソー株式会社製 TSK-GEL G3000PWXL
・カラム温度:35℃
・流速:0.5mL/min
・検量線:創和科学株式会社製 POLY SODIUM ACRYLATE STANDARD
・溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液。
【0013】
「主面」とは、フィルム状、シート状又は板状の部材における面積が最大の面を意味する。
「可視光」とは、波長380~780nmの波長域の光を意味する。
「透明」とは、可視光波長域における光透過率が40%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上であることを意味する。光透過率は、公知の透過率測定器を用いて、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に従って測定される。
【0014】
本明細書において、「アクリル樹脂」は、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの単量体に由来する単位を含む重合体及び共重合体の一方又は両方の意味で使用される。
【0015】
[粘着剤層付きタッチセンサ]
本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、タッチセンサと、タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層と、を含む。
以下、図面を参照しながら、本発明の粘着剤層付きタッチセンサについて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の粘着剤層付きタッチセンサを有する画像表示装置の一例を示す模式的断面図である。
図1に示す画像表示装置100は、画像表示素子30と、本発明の粘着剤層付きタッチセンサ20と、保護層40とが、この順で積層方向に積層されている。本発明の粘着剤層付きタッチセンサ20は、タッチセンサ10と、タッチセンサ10の画像表示素子30側の表面10bに配置された粘着剤層4と、タッチセンサ10の保護層40側の表面10aに配置された粘着剤層5と、を含む。
また、タッチセンサ10は、基材1と、基材1の一方の表面に配置された検知電極11と、基材1の他方の表面に配置された検知電極12とを有する。図示するように、粘着剤層5は、タッチセンサ10の表面10aにおいて検知電極11を覆うように配置され、粘着剤層4は、タッチセンサ10の表面10bにおいて検知電極12を覆うように配置されている。
画像表示装置100では、画像表示素子30の表示面30aに表示された画像(図示せず)が、粘着剤層付きタッチセンサ20及び保護層40を通して視認される。また、保護層40のタッチセンサ10とは反対側の表面40aが、画像表示装置100のタッチ面であり、操作面となる。
【0017】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、タッチセンサと、タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層であって、可視光吸収材を含み、後述する試験Xより算出される内部吸光度Aが0.03以下であり、かつ、パラメータXが20m-1以上である粘着剤層と、を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサが、画像表示装置に適用して黒白表示をした際、黒表示と白表示とのコントラスト、並びに、白表示の輝度低下も抑制する性能に優れることの機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
本発明者らは、画像表示素子に積層されたタッチセンサを有する画像表示装置における上記のコントラスト低下の問題について鋭意検討したところ、まず、外部光線が存在しない暗室下においても黒表示の輝度の増加が観測されることから、黒表示の輝度の増加及びコントラストの低下が外部光線の反射に起因しないことを知見した。更に検討を進め、上記の原因が、画像表示素子にタッチセンサを積層する際に用いた粘着剤層の内部において、白表示部から出射した光の一部が散乱又は反射等により透過又は伝播して、白表示部と隣接する黒表示部に向かい、観察者が観察する位置にまで到達した結果、黒表示の輝度が増加する可能性があると推定した。
この推定機序に基づいて、タッチセンサの表面に配置される粘着剤層に可視光吸収材を添加し、粘着剤層の内部を透過又は伝播する光を低減することで、白表示に隣接して表示された黒表示の輝度の増加を大幅に抑制でき、黒表示と白表示のコントラストを改善できることを見出した。
更に、本発明のタッチセンサでは、所定の試験方法で測定される粘着剤層の内部吸光度A及びパラメータXがそれぞれ所定の範囲に規定されている。これにより、白表示部において画像表示素子から出射する光の低減を抑制し、白表示の輝度をほとんど損なうことなくコントラストを改善できることから、タッチセンサを有さない画像表示装置と遜色ない表示特性を実現できるものと推測される。
【0019】
本明細書において、「本発明の効果が優れる」との表記は、粘着剤層付きタッチセンサを画像表示装置に適用して黒白表示をした際における、黒表示と白表示とのコントラスト、及び、白表示の輝度低下を抑制する性能の少なくとも一方が優れることを意味する。
【0020】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサが有する各部材についてより詳しく説明する。
以下、タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層であって、可視光吸収材を含み、内部吸光度Aが0.03以下であり、かつ、パラメータXが20m-1以上である粘着剤層を、「特定粘着剤層」ともいう。
【0021】
<特定粘着剤層>
特定粘着剤層は、以下の試験Xより算出される内部吸光度Aが0.03以下であり、かつ、パラメータXが20m-1以上である。
試験X:JIS R 3106:2019に記載の方法で、支持白板の可視光反射率ρを得る。同様に、JIS R 3106:2019に記載の方法で、支持白板と粘着剤層とを積層してなる積層体に対し、測定光を積層体の粘着剤層側に入射して積層体の可視光反射率ρを得る。可視光反射率ρ及び可視光反射率ρから以下の式(1)により粘着剤層の内部吸光度Aを算出する。算出された内部吸光度A及び粘着剤層の厚みD(m)から以下の式(2)によりパラメータX(m-1)を算出する。
式(1) A = -log10{(ρ/ρ0.5
式(2) X = A/D
支持白板としては、全光線分光反射率の測定用標準白板(完全拡散板)として市販されているのものを用いることができる。より具体的には、例えば、硫酸バリウム板及びスペクトラロン標準反射板等を用いることができる。また、必要に応じて、光透過率が93%以上である支持基材を上記標準白板と組み合わせてなる支持白板を用いてもよい。透明支持体を上記標準白板と組み合わせる場合、上記標準白板に透明支持体を積層し、測定光を透明支持体側に入射して、可視光反射率ρの測定を行う。
【0022】
ここで、粘着剤層に対して可視光を入射した際の入射光の光学強度に対する出射光の光学強度の比率を、粘着剤層の内部透過率Tとすると、粘着剤層の内部吸光度Aは、下記式(3)で表される。
式(3) A = -log10(T
また、試験Xの測定方法から、粘着剤層の内部透過率T、上記積層体の可視光反射率ρ、及び、支持白板の可視光反射率ρは、下記式(4)の関係を満たすとみなすことができる。
式(4) ρ = T×ρ×T
上記の式(3)及び式(4)から上記式(1)が成り立つ。このように、式(1)を用いて積層体の可視光反射率ρ及び支持白板の可視光反射率ρから粘着剤層の内部吸光度Aを求めることができる。
【0023】
上記の支持白板の可視光反射率ρ及び積層体の可視光反射率ρは、JIS R 3106:2019に記載の可視光反射率の測定方法及び算定方法に従うことにより得られる。
更に具体的な試験Xの実施方法については、後述する実施例に記載する。
【0024】
上記の粘着剤層の内部吸光度Aは、粘着剤層の内部において光が減衰する程度を表すものであり、粘着剤層の両主面における反射は内部吸光度A及びパラメータXに影響しない。内部吸光度A及びパラメータXのそれぞれを上記範囲内とすることによって、粘着剤層付きタッチセンサの積層方向に沿って透過する白表示の輝度を維持しながら、粘着剤層の内部での光の透過及び伝播による黒表示の輝度の増加を抑制し、黒表示と白表示のコントラストを改善することができると推測される。
【0025】
上記内部吸光度Aは、本発明の効果がより優れる点で、0.0004~0.0300が好ましく、0.0010~0.0050がより好ましい。
内部吸光度Aは、例えば、特定粘着剤層に添加する可視光吸収材の種類及び含有量、特定粘着剤層を構成する粘着剤の種類、並びに、特定粘着剤層の厚み等により調整できる。
【0026】
パラメータXは、本発明の効果がより優れる点で、20~3000m-1が好ましく、60~1000m-1がより好ましい。
パラメータXは、例えば、特定粘着剤層に添加する可視光吸収材の種類及び含有量、特定粘着剤層を構成する粘着剤の種類、並びに、特定粘着剤層の厚み等により調整できる。
【0027】
特定粘着剤層は、可視光吸収材を含み、タッチセンサと他の部材とを固定する機能を有する層であれば、その構成成分は特に制限されない。
特定粘着剤層は、透明であり、かつ、電気絶縁性を有することが好ましい。
【0028】
特定粘着剤層の周波数100kHzの比誘電率は、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。下限値は特に制限されず、例えば、2.0以上であってよい。
特定粘着剤層の比誘電率が4.0以下であると、画像表示素子等の部材からの電磁波ノイズの影響を遮断する性能がより優れる。なお、比誘電率は、JIS K 6911:2006に準じて求められる。
【0029】
(可視光吸収材)
特定粘着剤層に含まれる可視光吸収材は、可視光(波長380~780nm)を吸収する吸収波長特性を有する物質であればよく、例えば、380~780nmの極大吸収波長を有する物質が使用できる。
【0030】
可視光吸収材としては、例えば、染料及び顔料が挙げられ、顔料が好ましく、黒色顔料がより好ましい。また、可視光吸収材を構成する材料としては、炭素材料、有機材料、無機酸化物、無機窒化物及び無機酸窒化物等が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、黒鉛、アニリンブラック、シアニンブラック、黒色酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、窒化チタン及び酸窒化チタンが挙げられ、窒化チタン又は酸窒化チタンが好ましい。
【0031】
上記顔料としては、粒子状の顔料が使用でき、その形状は特に制限されない。
光散乱によってディスプレイの表示機能を損なうことを防ぐ観点から、顔料の平均一次粒子径は、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。下限値は特に制限されないが、10nm以上が好ましい。
顔料の平均一次粒子径は、100個の対象物の球相当径を測定して、それらを算術平均した平均値として得られる。球相当径とは、同じ体積を有する球形粒子の直径を意味する。ただし、顔料の市販品を用いる場合は、平均一次粒子径としてカタログ値を優先的に採用する。
【0032】
可視光吸収材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
可視光吸収材(好ましくは黒色顔料)の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、特定粘着剤層の全質量に対して、0.1~500質量ppmが好ましく、5~200質量ppmがより好ましい。
【0033】
特定粘着剤層は、粘着剤を含むことが好ましい。
特定粘着剤層に用いられる粘着剤としては、例えば、光学的に透明な粘着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)、及び、UV(Ultra Violet)硬化樹脂等の光学的に透明な樹脂(OCR:Optical Clear Resin)が挙げられる。
OCA及びOCRとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、オキセタン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリビニルエーテル等)、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、及び、変性ポリオレフィンが挙げられる。上記樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。中でも、耐候性、コストの点で(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0034】
特定粘着剤層における粘着剤の含有量は、特定粘着剤層の全質量に対して、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。上限値は特に制限されず、例えば、99質量%以下であってよい。また、特定粘着剤層における粘着剤の含有量は、可視光吸収材及び任意の添加剤の残部であってよい。
【0035】
特定粘着剤層は、粘着剤層としての機能及び本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を任意に含んでいてもよい。
添加剤としては、架橋剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤及び腐食防止剤挙げられる。
【0036】
特定粘着剤層の厚みDは、本発明の効果がより優れる点で、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、150μm以下が更に好ましく、100μm以下が特に好ましい。下限値は特に制限されず、例えば10μm以上であってよい。
粘着剤層の厚みDは、リニヤゲージ(例えば株式会社ミツトヨ製)を用いて測定できる。粘着剤層の厚みDの測定方法について詳しくは後述の実施例に記載する。
【0037】
特定粘着剤層の形成方法は、公知の各種の方法が適用できる。
特定粘着剤層の形成方法としては、例えば、タッチセンサの検知電極が配置された表面に、可視光吸収材及び粘着剤を含む粘着剤組成物を塗布して、特定粘着剤層を形成する方法(塗布法)、並びに、仮支持体上に上記粘着剤組成物を用いて特定粘着剤層を形成した後、特定粘着剤層をタッチセンサの検知電極が配置された表面に転写する方法(転写法)が挙げられる。
中でも、タッチセンサーと特定粘着剤層を個別に作製、検査して、良品同士を用いることによって、粘着剤層付きタッチセンサの収率を高められる点で、転写法が好ましい。
タッチセンサ又は仮支持体の表面に形成された粘着剤組成物の塗布膜に対して、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。粘着剤組成物を塗布する方法、及び、塗布膜の乾燥処理はいずれも、公知の方法が適用できる。
【0038】
粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、例えば、粘着剤及び可視光吸収材を含む。粘着剤組成物は、上記の添加剤を更に含んでいてもよい。また、粘着剤組成物は、溶剤、界面活性剤及び増粘剤等の塗布助剤を更に含んでいてもよい。
粘着剤組成物は、溶剤を更に含むことが好ましい。溶剤としては、水及び有機溶剤が挙げられ、粘着剤及び可視光吸収材等の成分を溶解又は分散可能な溶剤が適宜選択される。
粘着剤組成物が溶剤を含む場合、粘着剤組成物の固形分濃度は5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。なお、粘着剤組成物の「固形分」とは、粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層を構成する成分を意味し、粘着剤組成物が溶剤を含む場合、溶剤を除いた全ての成分を意味する。粘着剤層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
【0039】
<タッチセンサ>
タッチセンサとしては、タッチ操作を検知するセンサとして機能する素子であれば特に制限されず、例えば、基材と、基材の少なくとも一方の表面に配置されている検知電極とを有する導電性基材が挙げられる。
タッチセンサの具体例としては、図1に示すような、基材1と、基材1の一方の表面に配置された検知電極11と、基材1の他方の表面に配置された検知電極12とを有するタッチセンサ10が挙げられる。
タッチセンサは、図1に示す態様に制限されない。例えば、検知電極は、基材の一方の表面にのみ配置されていてもよい。
【0040】
(基材)
基材は、検知電極を支持する機能を有する部材である。
基材としては、特に制限されないが、樹脂基材が好ましい。
基材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、並びに、ポリアミド樹脂が挙げられる。
基材としては、製造が容易である点で、ポリエステル樹脂で構成されたフィルムが好ましく、力学的物性及びコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、又は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)がより好ましい。
基材は、上記樹脂の単層であってもよく、複数の樹脂層で構成される複合フィルムであってもよい。
【0041】
基材は、上記樹脂に加えて、光安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、易滑剤(微粒子)、核剤(結晶化剤)及び結晶化阻害剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。
また、基材は、可視光吸収材を更に含んでいてもよい。
【0042】
基材は、両主面の少なくとも一方に下塗り層を有していてもよい。即ち、基材は、支持体と下塗り層との複層構造により構成されていてもよい。
基材が支持体と下塗り層との複層構造からなる場合、下塗り層は、検知電極が設けられる基材の表面に配置することが好ましい。下塗り層は、支持体の両面に配置されていてもよい。
下塗り層と複層構造をなす支持体としては、上記の基材として挙げた部材を使用できる。
下塗り層を構成する材料としては、例えば、バインダー樹脂及び界面活性剤が挙げられる。
【0043】
基材の厚みは、例えば400μm以下であり、150μm以下が好ましく、110μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましく、40μm以下が特に好ましく、また、タッチセンサの強度がより優れる点で、10μm以上がより好ましい。
なお、基材が上記の下塗り層を有する場合、基材の厚みには、下塗り層の厚みも含まれる。
基材の厚みは、リニヤゲージ(例えば株式会社ミツトヨ製)を用いて測定できる。基材の厚みの測定方法について詳しくは後述の実施例に記載する。
【0044】
(検知電極)
検知電極は、複数の導電性細線により構成されており、タッチ操作を検知するためのセンサ電極として機能する部材である。
タッチセンサは、基材の一方の表面において、面内の第1方向に沿って延びる複数の検知電極と、基材の他方の表面において、面内の第1方向に直交する第2方向に沿って延びる複数の検知電極とを有することが好ましい。
検知電極は、基材の一方の表面に1つのみ配置されていてもよい。また、検知電極は、基材の一方の表面にのみ配置されていてもよい。
【0045】
検知電極は、導電性細線により形成される所定のパターンを有していてもよい。形成されるパターンは特に制限されず、メッシュ状(メッシュパターン)であることがより好ましい。メッシュ状とは、交差する導電性細線により構成される複数の開口部(格子)を含む形状を意味する。
検知電極が有するメッシュパターンの形状としては、正三角形、二等辺三角形、直角三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形等の四角形、(正)六角形、(正)八角形等の(正)n角形、円、楕円、及び、星形等を組み合わせた幾何学図形が挙げられる。また、開口部の一辺の形状を直線状の他、湾曲形状にしてもよいし、円弧状にしてもよい。円弧状とする場合は、例えば、対向する2辺については、外方に凸の円弧状とし、他の対向する2辺については、内方に凸の円弧状としてもよい。また、各辺の形状を、外方に凸の円弧と内方に凸の円弧が連続した波線形状としてもよい。もちろん、各辺の形状を、サイン曲線にしてもよい。メッシュパターンとしては、特に制限されるものでなく、ランダムなパターンでも規則的なパターンでもよく、合同な形状が複数繰り返し配置された規則的なメッシュパターンでもよい。
【0046】
検知電極が有するメッシュパターンとしては、同じ形状のひし形又は正方形の開口部を有する規則的なメッシュパターンが好ましい。開口部の一辺の長さLは、視認性の点で、5~1500μmが好ましく、10~1000μmがより好ましい。開口部の一辺の長さが上記の範囲である場合には、透明性を良好に保つことが可能であり、粘着剤層付きタッチセンサを画像表示装置の表示面に取り付けた際に、違和感なく表示画像を視認できる。
検知電極が有するメッシュパターンの開口率は、可視光透過率の点で、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100%未満が挙げられる。開口率とは、検知電極が設けられた領域において導電性細線を除いた開口部が検知電極が設けられた領域全体に占める面積比に相当する。
なお、検知電極が有するメッシュパターンは、光学顕微鏡を用いて観察及び測定できる。
【0047】
検知電極を構成する導電性細線の線幅は、視認性がより優れる点で、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。下限値は特に制限されないが、導電性細線の導電特性がより優れる点で、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
また、導電性細線の高さは、特に制限されないが、例えば、0.1~10μmであり、0.3~5μmが好ましい。
上記の導電性細線の線幅及び高さは、走査型電子顕微鏡を用いて、任意の5箇所の導電性細線を選択し、測定された線幅及び高さに相当する値を算術平均することにより得られる。
【0048】
導電性細線は、金属を含むことが好ましい。
金属としては、導電性がより優れる点で、銀(金属銀)、銅(金属銅)、金(金属金)、ニッケル(金属ニッケル)、パラジウム(金属パラジウム)、又は、これらのうちの2種以上の混合物が好ましく、銀、銅、又は、その混合物がより好ましく、銀が更に好ましい。導電性細線に、金属として銀だけが含まれていてもよく、金属は全て銀で構成されることが好ましい。金属を全て銀で構成することにより、導電性細線の断線故障の発生が低下する。導電性細線における金属の形態は制限されず、例えば、粒子状の形態、及び、金属が層状となって導電性細線中に分散した形態が挙げられる。
【0049】
導電性細線は、メッシュパターンの形成に好適な、金属銀、並びに、ゼラチン及びアクリル・スチレン系ラテックス等の高分子バインダーを含む導電性細線であってもよい。導電性細線が高分子バインダーを含む場合、金属粒子が、高分子中に離散して存在してもよく、高分子中に、金属粒子が凝集して凝集体として存在してもよい。高分子の種類は特に制限されず、公知の高分子を使用することができる。
導電性細線は、アルミニウム、銅、銀、モリブデン及びチタンの金属並びにその合金で構成された金属細線であってもよい。また、これらの積層構造であってもよく、例えば、モリブデン/銅/モリブデン、モリブデン/アルミニウム/モリブデン等の積層構造を有する金属細線が使用できる。
導電性細線は、金属酸化物粒子、銀ペースト及び銅ペースト等の金属ペースト、並びに、銀ナノワイヤ及び銅ナノワイヤ等の金属ナノワイヤ粒子を含んでいてもよい。
【0050】
基材の表面には、検知電極以外の他の部材が配置されていてもよい。
他の部材としては、例えば、検知電極の一端に形成される電極接続端子、電極接続端子に電気的に接続された周辺配線、及び、周辺配線及び外部の機器に電気的に接続された外部接続端子が挙げられる。これらの部材は、検知電極において検知した電気信号を外部の機器に伝える機能を有する。
また、基材の表面には、他の部材としてダミー電極が配置されていてもよい。
【0051】
(タッチセンサの製造方法)
タッチセンサの製造方法は、上記の方法で製造された基板の表面に上記の検知電極を形成できる方法であれば特に制限されない。検知電極の形成方法としては、例えば、スパッタ法、めっき法、銀塩法及び印刷法等が適宜利用可能である。
【0052】
スパッタ法による検知電極の形成方法について説明する。まず、スパッタにより、銅箔層を形成し、フォトリソグラフィの方法により銅箔層から銅配線を形成することにより、検知電極を形成できる。なお、スパッタの代わりに、いわゆる蒸着により銅箔層を形成することもできる。銅箔層は、スパッタ銅箔又は蒸着銅箔以外にも、電解銅箔が利用可能である。より具体的には、特開2014-029614号公報に記載の銅配線を形成する工程を利用することができる。
【0053】
めっき法による検知電極の形成方法について説明する。例えば、無電解めっき下地層に無電解めっきを施すことにより下地層上に金属めっき膜が形成される。この金属めっき膜を検知電極として用いることができる。この場合、検知電極は、少なくとも金属微粒子を含有する触媒インクを基材上にパターン状に形成した後に、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより形成される。より具体的には、特開2014-159620号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を利用することができる。
【0054】
また、検知電極は、少なくとも金属触媒前駆体と相互作用し得る官能基を有する樹脂組成物を基材上にパターン状に形成した後、触媒又は触媒前駆体を付与し、基材を無電解めっき浴に浸漬し、金属めっき膜を形成することにより、形成される。より具体的には、特開2012-144761号公報に記載の金属被膜基材の製造方法を応用することができる。
【0055】
銀塩法による検知電極の形成方法について説明する。まず、ハロゲン化銀が含まれる銀塩乳剤層に、検知電極のパターンに対応する露光パターンを用いて露光処理を施し、その後現像処理を行うことで、検知電極を形成することができる。より具体的には、特開2012-006377号公報、特開2014-112512号公報、特開2014-209332号公報、特開2015-022397号公報、特開2016-192200号公報及び国際公開第2016/157585号に記載の金属細線の製造方法を利用することができる。
【0056】
印刷法による検知電極の形成方法について説明する。まず、導電性粉末を含有する導電性ペーストを検知電極と同じパターンとなるように基板に塗布し、その後、加熱処理を施すことにより検知電極を形成することができる。導電性ペーストを用いたパターン形成は、例えば、インクジェット法又はスクリーン印刷法によりなされる。導電性ペーストとしては、より具体的には、特開2011-028985号公報に記載の導電性ペーストを利用することができる。
【0057】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、タッチセンサの一方の表面に配置された特定粘着剤層を有するものであればよく、特定粘着剤層とは反対側の表面には、特定粘着剤層以外の他の層が配置されていてもよい。
他の層としては、例えば、特定粘着剤層以外の粘着剤層が挙げられ、可視光吸収材を含まない粘着剤層が好ましい。即ち、特定粘着剤層、タッチセンサ、及び、可視光吸収材を含まない粘着剤層をこの順に有する態様は、粘着剤層付きタッチセンサの好ましい態様の1つである。
可視光吸収材を含まない粘着剤層を構成する材料及び厚みについては、可視光吸収材を含まないこと以外は、好ましい態様も含めて、特定粘着剤層と同じであってよい。
【0058】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサの製造方法としては、上記の特定粘着剤層の形成方法に従って、タッチセンサの一方の表面に特定粘着剤層を形成する方法が挙げられる。本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、他の方法で製造してもよい。
【0059】
本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、取り扱い時及び搬送時において、特定粘着剤層に剥離シート等の他の部材が貼り合わされてなる積層体の形態で用いられてもよい。剥離シートは、積層体の搬送時に、導電部材における傷の発生を防止するための保護シートとして機能する。また、粘着剤層付きタッチセンサは、例えば、粘着剤層付きタッチセンサと、特定粘着剤層に接して配置されている保護層とを有する複合体の形態で取り扱われてもよい。
【0060】
[タッチパネル]
本発明のタッチパネルは、本発明の粘着剤層付きタッチセンサを有する。本発明のタッチパネルは、静電容量型タッチパネルとしてより好適に用いることができる。
本発明のタッチパネルの構成としては、本発明の粘着剤層付きタッチセンサを備えること以外は、特に制限されず、例えば、三谷雄二及び板倉義雄監修「月刊ディスプレイ別冊 新・タッチパネル実用講座」(株式会社テクノタイムズ社、2011年)に記載の構成を参照できる。また、本発明のタッチパネルには、「最新タッチパネル技術」(株式会社テクノタイムズ、2009年7月6日)、三谷雄二監修「タッチパネルの技術と開発」(株式会社シーエムシー出版、2004年12月)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、及び、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用できる。
タッチパネルの型式としては、外付け型でもよく、ディスプレイ一体型でもよい。外付け型としてはフィルムセンサが挙げられる。ディスプレイ一体型の例としては、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19)、及び、他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6)が挙げられる。
本発明のタッチパネルの使用形態は、特に制限されないが、画像表示素子と組み合わせ画像表示装置とすることが好適である。
【0061】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、画像表示素子と、本発明の粘着剤層付きタッチセンサと、を有する。画像表示装置は、画像表示装置及びタッチセンサによりタッチパネル(静電容量式タッチパネル)として用いることができる。
本発明の画像表示装置の構成の一例としては、図1に示す画像表示装置100のような、画像表示素子30と、粘着剤層付きタッチセンサ20と、保護層40とをこの順に有する態様が挙げられる。
画像表示装置においては、タッチセンサの画像表示素子側の表面に配置されている粘着剤層が特定粘着剤層であることが好ましい。換言すると、画像表示装置においては、画像表示素子、特定粘着剤層及びタッチセンサがこの順に配置されていることが好ましい。
【0062】
画像表示素子は、画像等を表示する表示面を備える素子が利用でき、例えば、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス表示素子(OLED)、陰極線管(CRT)画像表示装置、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)及び電子ペーパーが挙げられる。
画像表示素子としては、その用途に応じた形態の画像表示素子が適宜利用される。画像表示装置をより薄くできる点で、液晶表示パネル及び有機エレクトロルミネッセンス表示パネル等のパネルの形態の画像表示素子が好ましい。
【0063】
画像表示装置は、図1に示すように、タッチセンサの視認側(画像表示素子とは反対側)に、保護層を更に有していてもよい。この場合、保護層の視認側の表面が、画像表示装置のタッチ面、かつ、操作面である。即ち、保護層の視認側の表面が操作面として入力操作される。なお、タッチ面とは、指又はスタイラスペン等の接触を検出する面を意味する。保護層の視認側の表面が、画像表示素子の表示面に表示された画像の視認面となる。
保護層の表面はタッチ面となるため、必要に応じて表面にハードコート層を設けてもよい。また、保護層の表面には防傷処理、防眩処理、防汚処理、防曇処理、及び、反射防止処理等の各種機能を付与する処理を施すことが好ましい。
【0064】
保護層の構成は、特に制限されないが、画像表示素子の表示面に表示された画像を視認できるように透明であることが好ましい。保護層は、例えば、プラスチックフィルム、プラスチック板、及び、ガラス板等が用いられる。保護層の厚みはそれぞれの用途に応じて適宜選択することが好ましい。なお、ガラスで構成されている保護層は、カバーガラスと呼ばれる。
上記のプラスチックフィルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン及びEVA(酢酸ビニル共重合ポリエチレン)等のポリオレフィン類、ビニル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィン系樹脂(COP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルサルホン(PES)、高分子アクリル樹脂、フルオレン誘導体、並びに、結晶性COP等のポリマーが挙げられる。
また、保護層としては、偏光板及び円偏光板等を用いてもよい。
【0065】
軽量化の観点に加えて、コントラスト向上の観点から、保護層は薄いことが好ましい。具体的には、保護層の厚みは、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。下限値は特に制限されず、例えば0.1mm以上で合ってよい。
保護層の屈折率は1.40~1.70であることが好ましい。保護層と他の部材との屈折率差は0.1以下が好ましい。
【0066】
本発明は、基本的に以上のように構成される。本発明は上記の実施形態に制限されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更を行ってもよい。
【実施例
【0067】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0068】
[実施例1]
〔粘着剤組成物1の調製〕
酢酸エチルに、ブチルアクリレート(BA)及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を質量比が75:25になるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶解して、溶液を得た。得られた溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、アクリル重合体を得た。
得られたアクリル重合体と、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製「コロネート(登録商標)L」、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液)、可視光吸収材(三菱マテリアル電子化成株式会社製「UF-8」、酸窒化チタン、平均一次粒子径=20nm)、紫外線吸収剤1(BASFジャパン社製「Tinuvin(登録商標)477」、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物)、紫外線吸収剤2(BASFジャパン社製「Tinuvin 384-2」、ベンゾトリアゾール系化合物)、及び、溶剤(酢酸エチル)を混合することで、固形分濃度が31質量%である、粘着剤組成物1を得た。
粘着剤組成物1の固形分の全質量に対して、架橋剤の含有量は0.6質量%であり、可視光吸収剤の含有量が26質量ppmであり、紫外線吸収剤の合計含有量が1.00質量%であり、残部がアクリル重合体であった。
【0069】
〔粘着剤層付きタッチセンサの作製〕
粘着剤組成物1を、剥離シート(三菱ケミカル株式会社製重セパレータフィルム、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)の離型処理面に、乾燥後の厚みDが150μmとなるように塗工した。その後、塗膜を100℃で5分間乾燥させて溶剤を除去し、粘着剤層を有する粘着シートを形成した。
この粘着シートの粘着剤層が形成された面に、特開2022-161790号公報の実施例1に記載の方法に従って作製したタッチセンサを貼り合わせ、実施例1の粘着剤層付きタッチセンサ1を得た。
【0070】
[実施例2]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が16.5質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物2を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物2を用いたことと、剥離シートの離型処理面に、乾燥後の厚みDが50μmとなるように粘着剤組成物2を塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粘着剤層付きタッチセンサ2を得た。
【0071】
[実施例3]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が15質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物3を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粘着剤層付きタッチセンサ3を得た。
【0072】
[実施例4]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が150質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物4を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粘着剤層付きタッチセンサ4を得た。
【0073】
[実施例5]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が34質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物5を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物5を用いたことと、剥離シートの離型処理面に、乾燥後の厚みDが250μmとなるように粘着剤組成物5を塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の粘着剤層付きタッチセンサ5を得た。
【0074】
[実施例6]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が96質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例5の粘着剤組成物5の調製方法と同様にして、粘着剤組成物6を調製した。粘着剤組成物5に代えて粘着剤組成物6を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6の粘着剤層付きタッチセンサ6を得た。
【0075】
[実施例7]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が36質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物7を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物7を用いたことと、剥離シートの離型処理面に、乾燥後の厚みDが400μmとなるように粘着剤組成物7を塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の粘着剤層付きタッチセンサ7を得た。
【0076】
[比較例1]
可視光吸収材を添加しなかったこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物C1を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物C1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粘着剤層付きタッチセンサC1を得た。
【0077】
[比較例2]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が4質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物C2を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物C2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の粘着剤層付きタッチセンサC2を得た。
【0078】
[比較例3]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が250質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例1の粘着剤組成物1の調製方法と同様にして、粘着剤組成物C3を調製した。粘着剤組成物1に代えて粘着剤組成物C3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の粘着剤層付きタッチセンサC3を得た。
【0079】
[比較例4]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が150質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例5の粘着剤組成物5の調製方法と同様にして、粘着剤組成物C4を調製した。粘着剤組成物5に代えて粘着剤組成物C4を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、比較例4の粘着剤層付きタッチセンサC4を得た。
【0080】
[比較例5]
固形分の全質量に対する可視光吸収材の含有量が12質量ppmになるように可視光吸収材の添加量を調整したこと以外は、実施例7の粘着剤組成物7の調製方法と同様にして、粘着剤組成物C5を調製した。粘着剤組成物7に代えて粘着剤組成物C5を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、比較例5の粘着剤層付きタッチセンサC5を得た。
【0081】
[基材及び粘着剤層の厚みの測定]
基材及び粘着剤層の厚みは、リニヤゲージ(株式会社ミツトヨ製、セパレート形ゲージヘッド高精度リニヤゲージ「LGH-1010C-B-EH」、及び、リニヤゲージカウンタ「EH-10S」)を用いて、以下の手順で測定した。
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製、厚み40μm)からなる支持基材1及び支持基材2を用意した。一方の支持基材において任意に9箇所の測定位置を選択して厚みを測定した。次いで、他方の支持基材について、一方の支持基材で選択した測定位置と厚み方向において一致する9箇所の測定位置での厚みを測定した。
各例の粘着剤シートの粘着剤層を、支持基材1及び支持基材2の間に貼り合わせ、厚み測定用の複合部材を作製した。得られた複合部材について、上記の9箇所の測定位置における厚みを測定し、複合部材の9箇所それぞれの厚みから、各測定位置での支持基材1及び支持基材2の厚みを差し引いた。得られた9点の差の算術平均値を、基材の厚みDとした。
【0082】
[粘着剤層の光学性能の測定]
各例で設けられた粘着剤層の光学性能を、積分球ユニット付き分光光度計(日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計「V-660」、積分球ユニット「ISV-722」)を用いて、以下の手順で測定した。
【0083】
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製、厚み40μm)からなる支持基材と、スペクトラロン標準反射板(日本分光株式会社製、ケース付き標準白板6916-H422A)とを積層して積層体を作製し、支持白板とした。作製された支持白板を、上記積分球ユニットの反射率測定用試料フォルダに測定光が支持基材に入射するように設置して、JIS R 3106:2019に記載の方法に従って支持白板の可視光反射率ρを得た。
【0084】
<2>試料基板の測定
各実施例及び比較例で作製した粘着剤シートの粘着剤層を、上記可視光反射率ρの測定に用いた支持基材に転写して複合部材を作製した。さらに、得られた複合部材と上記スペクトラロン標準反射板とを、スペクトラロン標準反射板、支持基材及び粘着剤層の順に配置されるように積層して積層体を作製した。作製された積層体を、上記積分球ユニットの反射率測定用試料フォルダに、測定光が粘着剤層側の表面に入射するように設置して、上記と同様に測定及び算出を行い、上記積層体の可視光反射率ρを得た。
【0085】
得られた支持白板の可視光反射率ρ及び積層体の可視光反射率ρから、以下の式(1)により粘着剤層の内部吸光度Aを算出した。算出された内部吸光度A及び粘着剤層の厚みD(m)から、以下の式(2)によりパラメータX(m-1)を算出した。
式(1) A = -log10{(ρ/ρ0.5
式(2) X = A/D
後述する表1に、各粘着剤層の内部吸光度A及びパラメータXを示す。
【0086】
なお、実施例1~7で設けられた粘着剤層の周波数100kHzの比誘電率を測定した結果、上記比誘電率は2.5~3.0の範囲内であった。
【0087】
[評価]
(評価用タッチパネルの作製)
表示素子の個体差の影響を除外して厳密に試料の比較を行うために、以下に述べる方法で模擬タッチパネルを作製した。
【0088】
-複合部材の作製-
各実施例及び比較例で得られた粘着剤層付きタッチセンサを含む以下の部材を貼り合わせて、各部材が以下の順で配置されている複合部材を作製した。
・ガラス基板(厚み0.4mm)
・透明粘着剤層(スリーエムジャパン株式会社製8146-3、厚み75μm)
・粘着剤層付きタッチセンサ
・TACフィルム(富士フイルム株式会社製、厚み40μm)
なお粘着剤層付きタッチセンサは、粘着剤層がTACフィルムと接するように配置されている。
【0089】
-模擬パネルの作製-
14インチの有機ELパネル(Samsung Display Co., Ltd社製、型番号「ATNA40CU03」)の表示面上に、マッチングオイル(光陽化学工業株式会社製ニュートンリング防止剤「HM-30」)を0.7mL滴下し、その上に、TACフィルムが有機ELパネルに対向するように、かつ、空気が入り込まないように上記複合部材を載せて、模擬パネルを作製した。
なお、模擬パネルでの評価値が、実際のタッチパネルの製品(例えば、ガラス、透明粘着剤層、タッチセンサ、透明粘着剤層及び有機ELパネルをこの順に有する部材構成を備えるタッチパネル等)においてもおおよそ一致すること、並びに、評価の序列に相違ないことを、それぞれ確認した上で、実装形態での評価方法として上記評価方法を採用した。
【0090】
-黒表示輝度の測定-
窓のない暗室で、表示面が鉛直上方を向くように模擬パネルを設置した。模擬パネルの画面中央に80mm×80mmの黒((R、G、B)=(0、0、0))の正方形画像を表示させ、黒表示画像の周囲全体に白((R、G、B)=(255、255、255))の画像を表示させた。模擬パネルの画面中央部に、黒い厚紙を丸めて作製した円筒(直径60mm、長さ350mm)を、模擬パネルの黒表示画像の中心と円筒の中心軸がほぼ一致するように、垂直に立てた。円筒の先に分光放射輝度計(コニカミノルタ株式会社製CS-3000HDR)をセットして、以下の測定条件で、模擬パネルが表示する画像の輝度を測定し、黒表示輝度とした。
(輝度計測定条件)
・スピードモード:FAST
・ダークセッティング:スタンダード
・アパーチャーアングル:1deg
【0091】
-白表示輝度の測定-
模擬パネルに表示する画像を、全体が白((R、G、B)=(255、255、255))の画像としたこと以外は、黒表示輝度の測定方法と同様にして、輝度を測定し、白表示輝度とした。
なお、黒表示輝度の測定において表示した画像の白と黒を反転した画像を表示したこと以外は上記と同様の方法で輝度を測定したところ、得られた輝度の値は、全面に白の画像を表示して測定された白表示輝度と同じであった。
【0092】
各実施例及び各比較例で作製した粘着剤層付きタッチセンサの黒表示輝度及び白表示輝度の測定結果を、後述する表1に示す。
なお、複合部材を積層せずに有機ELパネル単独で測定した場合には、黒表示輝度=0.2mCd/m、白表示輝度=441Cd/m、コントラスト比(黒表示輝度に対する白表示輝度の比率)=221万であった。
【0093】
(コントラストの評価)
上記で得られた黒表示輝度及び白表示輝度の測定結果から、黒白表示をした際の黒表示と白表示とのコントラストを評価した。
具体的には、黒表示輝度の測定値に対する白表示輝度の測定値の比率をコントラスト比として算出し、得られたコントラスト比から以下の基準に基づいて、各タッチセンサのコントラストを評価した。
【0094】
-コントラスト評価基準-
「A」:コントラスト比が90万以上。
「B」:コントラスト比が60万以上90万未満。
「C」:コントラスト比が30万以上60万未満。
「D」:コントラスト比が30万未満。
【0095】
(白表示輝度の評価)
上記で得られた白表示輝度の測定結果から、タッチセンサによる白表示輝度の低下抑制性能を評価した。
具体的には、各模擬パネルの白表示輝度の測定結果と、有機ELパネルを単独で用いた場合の白表示輝度の測定結果から、下記式を用いてタッチセンサによる白表示輝度の損失率を計算し、得られた損失率から以下の基準に基づいて、各タッチセンサによる白表示輝度の低下抑制性能を評価した。
白表示輝度の損失率(%)=(1-模擬パネルの白表示輝度/有機ELパネルの白表示輝度)×100
【0096】
-白表示輝度の低下抑制性能の評価基準-
「A」:白表示輝度の損失率が2%以下。
「B」:白表示輝度の損失率が2%超4%以下。
「C」:白表示輝度の損失率が4%超6%以下。
「D」:白表示輝度の損失率が6%超。
【0097】
表1に、各例についての粘着剤層の特性、輝度測定結果、及び、各評価結果を示す。
高輝度かつ高コントラストなタッチパネルを実現可能なタッチセンサの判定基準としては、各評価がいずれもA~Cであれば許容可能なレベルであり、各評価がいずれもA又はBであれば良好なレベルであり、各評価がいずれもAであれば優秀なレベルである。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1の結果から、実施例1~7の本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、表示装置に適用して黒白表示をした際の黒表示と白表示とのコントラストに優れ、かつ、白表示の輝度低下を抑制する性能に優れることが確認された。
それに対して、パラメータXが20m-1未満である比較例1、比較例2及び比較例5の粘着剤層付きタッチセンサは、白表示輝度は高く保てているが、コントラストの改善が不十分であった。
また、内部吸光度Aが0.03超である比較例3及び比較例4の粘着剤層付きタッチセンサは、白表示輝度の損失が大きく、輝度低下を抑制する性能が不十分であった。
【0101】
実施例2及び3の比較、並びに、実施例4及び6の比較から、内部吸光度Aが同等であっても、特定粘着剤層の厚みDが薄いほど、黒白表示をした際の黒表示と白表示とのコントラストがより優れることが確認された。
これらの比較から、特定粘着剤層の厚みは300μm以下である場合、白表示の輝度低下を抑制しながら、黒白表示をした際の黒表示と白表示とのコントラストを向上させることができ、更に、特定粘着剤層の厚みは100μm以下である場合、白表示の輝度低下を抑制しながら、上記コントラストをより一層向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
1 基材
4,5 粘着剤層
10 タッチセンサ
10a,10b,40a 表面
11,12 検知電極
20 粘着剤層付きタッチセンサ
30 画像表示素子
30a 表示面
40 保護層
100 画像表示装置
【要約】
【課題】本発明は、画像表示装置に適用して黒白表示をした際に、黒表示と白表示とのコントラストに優れ、かつ、白表示の輝度低下を抑制する性能に優れる粘着剤層付きタッチセンサ、及び、上記粘着剤層付きタッチセンサを有する画像表示装置の提供を課題とする。
【解決手段】本発明の粘着剤層付きタッチセンサは、タッチセンサと、上記タッチセンサの一方の表面側に配置された粘着剤層と、を含み、上記粘着剤層が可視光吸収材を含み、上記粘着剤層が、試験Xより算出される内部吸光度Aが0.03以下であり、かつ、パラメータXが20m-1以上である。
【選択図】図1
図1