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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】施工方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20241002BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
F16B35/00 B
G01L5/00 103B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022577971
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003355
(87)【国際公開番号】W WO2022162898
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】荒武 淳
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275796(JP,A)
【文献】特開2014-025489(JP,A)
【文献】特開2020-003234(JP,A)
【文献】特開2009-264852(JP,A)
【文献】特許第6751930(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/159245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 5/00- 5/12
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置を用いて、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部における少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されてる、Uボルトを被締結物に締結する施工方法であって、
前記検出装置により、
前記ひずみ検出用模様が付されている、前記少なくとも一方の軸部の前記少なくとも一部である模様領域を撮像することによって第1の観察画像を生成するステップと、
前記検出装置が備える撮像部の撮像素子によって結像された被写体の像に、前記第1の観察画像を重畳させた画像を撮像部の表示部に表示させるステップと、
前記軸部の前記ナットによる締め付けが調整された後に前記模様領域を撮像することによって第2の観察画像を生成するステップであって、前記表示部に表示された前記第1の観察画像における模様領域の像が、前記締め付けが調整された後に実空間に存在する模様領域に略一致するような画角で、実空間に存在する模様領域を撮像することによって前記第2の観察画像を生成するステップと、
前記第1の観察画像及び前記第2の観察画像に基づいて、前記模様領域のひずみを検出するステップと、
前記ひずみに基づいて、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力するステップと、を含む施工方法。
【請求項2】
第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されてる、Uボルトのひずみを検出するための検出装置であって、
前記ひずみ検出用模様が付されている、前記少なくとも一方の軸部の前記少なくとも一部である模様領域を撮像することによって第1の観察画像を生成し、前記第1の観察画像が生成されて、前記軸部の前記ナットによる締め付けが調整された後に、前記模様領域を撮像することによって第2の観察画像を生成する撮像部と、
前記第1の観察画像及び前記第2の観察画像に基づいて、前記模様領域のひずみを検出する検出部と、
前記ひずみに基づいて、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力する出力部と、を備え
前記撮像部は、被写体の像を結像する撮像素子と、画像を表示する表示部とを含み、
前記検出装置は、前記撮像素子によって結像された前記被写体の像に、前記第1の観察画像を重畳させた画像を表示部に表示させる設定部をさらに備え、
前記撮像部は、前記設定部によって前記表示部に表示された前記第1の観察画像における前記模様領域の像が、前記締め付けが調整された後に実空間に存在する前記模様領域に略一致するような画角で、前記実空間に存在する前記模様領域を撮像することによって前記第2の観察画像を生成する検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Uボルト、施工方法及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管等の締結物を架台、壁面等の被締結物に固定するために、Uボルトが用いられている。Uボルトとは、2つの直線状の軸部が橋梁部により連結されたU字形状のボルトである。Uボルトの内側に締結物を挟んだ状態で被締結物に設けられた2つの貫通孔それぞれにUボルトの軸部を挿入し、2つの軸部それぞれの端部からナットで締結することで、Uボルトと被締結物とで締結物を挟んで固定することができる。
【0003】
Uボルトで締結物を被締結物に固定する場合、Uボルトを被締結物に対して垂直に固定する必要がある。しかしながら、Uボルトは、構造上、傾いて取り付けられてしまうことが多い。Uボルトが傾いて取り付けられると、過大応力による破損の原因となり得る。
【0004】
非特許文献1には、ボルトに挿通されるワッシャーに圧電パッチを設け、圧電パッチにより計測された圧力に基づき、ボルトの締結力を計測する技術が記載されている。また、非特許文献2には、ボルトの軸部に圧電センサを埋め込み、圧電センサにより計測されたボルトの軸部のひずみに基づき、ボルトの締結力を計測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H. Yin, T. Wang, D. Yang, S. Liu, J. Shao, and Y. Li, “A smart washer for bolt looseness monitoring based on piezoelectric active sensing method,” Appl. Sci., vol.6, no.11, 2016
【文献】N. Shimoi, C. H. Cuadra, H. Madokoro, and M. Saijo, “Simple Smart Piezoelectric Bolt Sensor for Structural Monitoring of Bridges,” Int. J. Instrum. Sci., vol.1, no.5, pp.78-83, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した非特許文献1及び2に記載の技術は、直線状のボルトの締結力を計測するための技術であり、作業者は、この技術によって、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することはできない。
【0007】
上記のような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、作業者が、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することができるUボルト、施工方法及び検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本開示に係るUボルトは、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部とを備えるUボルトであって、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されている。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る施工方法は、検出装置を用いて、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の表面における少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されている、Uボルトを被締結物に締結する施工方法であって、前記検出装置により、前記ひずみ検出用模様が付されている、前記少なくとも一方の軸部の前記少なくとも一部である模様領域を撮像することによって第1の観察画像を生成するステップと、前記軸部の前記ナットによる締め付けが調整された後に前記模様領域を撮像することによって第2の観察画像を生成するステップと、前記第1の観察画像及び前記第2の観察画像に基づいて、前記模様領域のひずみを検出するステップと、前記ひずみに基づいて、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力するステップと、を含む。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る検出装置は、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されている、Uボルトのひずみを検出するための検出装置であって、前記ひずみ検出用模様が付されている、前記少なくとも一方の軸部の前記少なくとも一部である模様領域を撮像することによって第1の観察画像を生成し、前記第1の観察画像が生成されて、前記軸部の前記ナットによる締め付けが調整された後に、前記模様領域を撮像することによって第2の観察画像を生成する撮像部と、前記第1の観察画像及び前記第2の観察画像に基づいて、前記模様領域のひずみを検出する検出部と、前記ひずみに基づいて、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るUボルト、施工方法及び検出装置によれば、作業者は、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る、Uボルトの一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る、Uボルトの他の例を示す図である。
図3図1に示すUボルトの変形例を示す図である。
図4図2に示すUボルトの変形例を示す図である。
図5A】軸力が均一である場合に、Uボルトに作用する引張力及び圧縮力について説明するための図である。
図5B】軸力が不均一である場合に、Uボルトに作用する引張力及び圧縮力について説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る検出装置の機能構成の一例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係るUボルトを被締結物に締結するための動作の一例を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る検出装置の機能構成の一例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係るUボルトを被締結物に締結するための動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
(Uボルトの構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るUボルト10の一例を示す図である。図2は、本開示の第1の実施形態に係るUボルト10の他の例を示す図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係るUボルト10は、一対の軸部11A及び軸部11Bと、橋梁部12とを備える。
【0016】
軸部11A及び軸部11Bは、所定の方向に並び、該所定の方向と直交する方向に延在する。以下では、図1及び図2に示すように、軸部11A及び軸部11Bが並んで配置される方向をX軸方向(第1の方向)と称し、軸部11A及び軸部11Bが延在する方向をY軸方向(第2の方向)と称し、X軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向(第3の方向)と称する。また、以下では、軸部11A及び軸部11Bを区別しない場合には、軸部11と称する。また、以下では、軸部11A及び軸部11Bを合わせて一対の軸部11と称する。
【0017】
橋梁部12は、軸部11A及び軸部11Bそれぞれの一端を連結する。橋梁部12は、半円状に湾曲した形状とすることができ、橋梁部12が軸部11A及び軸部11Bそれぞれの一端を連結することで、Uボルト10はU字形状を形成する。軸部11A及び軸部11Bは、それぞれの他端側に、ねじ山構造を有するねじ部13を有している。
【0018】
図1及び図2に示すように、U字形状のUボルト10の内側(一対の軸部11及び橋梁部12により囲まれる空間)には、配管等の締結物1が配置される。締結物1が内側に配置された状態で、支持金物等の被締結物2に設けられた一対の貫通孔4A及び貫通孔4Bに、被締結物2の一面側からそれぞれ軸部11A及び軸部11Bが挿入される。貫通孔4A及び貫通孔4Bにそれぞれ軸部11A及び軸部11Bが挿入されることで、軸部11A及び軸部11Bそれぞれのねじ部13が被締結物2の他面側に突出する。被締結物2の他面側から突出した軸部11A及び軸部11Bそれぞれのねじ部13に、ねじ部13のねじ山構造と螺合するねじ山構造を有するナット3A及び3Bナット3A及び3Bがそれぞれ締め付けられることで、軸部11はナット3によって締め付けられる。これにより、Uボルト10は被締結物2に締結されて、締結物1は、Uボルト10と被締結物2とに挟まれて固定される。以下では、ナット3A及びナット3Bを区別しない場合には、ナット3と称する。また、貫通孔4A及び貫通孔4Bを区別しない場合には、貫通孔4と称する。
【0019】
軸部11A及び軸部11Bの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部にはひずみ検出用模様が付されている。以降において、ひずみ検出用模様が付されている、少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部を「模様領域PA」という。
【0020】
図1及び図2に示す例では、ひずみ検出用模様は、一方の軸部11Aの全部に付されているが、これに限られない。例えば、ひずみ検出用模様は、一方の軸部11Aの一部に付されていてもよい。具体的には、ひずみ検出用模様は、軸部11の軸に直交する断面の外縁の一部に付されていてもよいし、軸部11の軸が延在する方向において一部に付されていてもよい。ひずみ検出用模様は、被締結物2に設けられた一対の貫通孔2A及び2Bにそれぞれ一対の軸部11A及び軸部11Bが挿入され、Uボルト10と被締結物2の一面とに締結物1が挟まれて固定された状態において、被締結物2の一面の位置(位置a)と、軸部11と橋梁部12との境界の位置(位置b)との間に付されていてもよい。
【0021】
ひずみ検出用模様は、部材のひずみεを検出するための任意の方法において、該部材に付される模様であって、図1に示すようなスペックルパターン、又は図2に示すような格子模様とすることができる。
【0022】
スペックルパターンは、例えば、まだら模様とすることができる。スペックルパターンを構成している少なくとも2つの色のコントラストは高いことが好ましく、具体的には、2つの色の明度、彩度、又は色相の差が所定の閾値より高いことが好ましい。これによって、デジタル画像相関(DIC(Digital Image Correlation))法を用いて軸部11A及び軸部11Bのひずみεを高い精度で検出することができる。例えば、2つの色は、白及び黒のような明度のコントラストが高い色とすることができる。この場合、屋外環境のような測定誤差が大きくなりやすい環境においても、高い精度で軸部11A及び軸部11Bのひずみεを検出することができる。
【0023】
スペックルパターンは、スプレーを用いて2種類の塗料を塗布することで容易に得られる。例えば、スペックルパターンは、軸部11A及び軸部11Bそれぞれの表面に、白色塗料でベース塗装を施し、その上に黒色の模様を塗布することによって形成されてもよい。
【0024】
格子模様の格子間隔は任意であってよいが、1mm程度であることが好ましい。これによって、Uボルトの取り付けにおいて、サンプリングモアレ法を用いて、1mmの1/100である0.01mm程度の高い精度で、軸部11A及び軸部11Bのひずみεを検出することができる。
【0025】
なお、図1及び図2に示す例においては、軸部11Aにのみ、ひずみ検出用模様が付される構成を説明したが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、軸部11Bにのみ、ひずみ検出用模様が付されてもよい。また、図3及び図4に示すように、軸部11A及び軸部11Bの両方に、ひずみ検出用模様が付されてもよい。図3に示す例では、軸部11A及び軸部11Bの両方の全部にスペックルパターンが付されている。図4に示す例では、軸部11A及び軸部11Bの両方の全部に格子模様が付されている。また、軸部11A及び軸部11Bの両方のそれぞれ一部にひずみ検出用模様が付されてもよく、このような構成において、軸部11Aに付されているひずみ検出用模様と、軸部11Bに付されているひずみ検出用模様とは同じ高さに(Y軸方向に同じ位置に)位置していることが好ましい。
【0026】
このように、軸部11A及び軸部11Bの両方の一部又は全部にひずみ検出用模様が付されていることによって、軸部11A及び軸部11Bそれぞれのひずみ、すなわち軸部11A及び軸部11Bそれぞれに作用する軸力の違いを正確に検出することができる。
【0027】
図5A及び図5Bは、図3に示すUボルト10が被締結物2に締結された状態において作用する引張力及び圧縮力を示す図である。図5Aは、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一である場合に、Uボルト10に作用する引張力及び圧縮力を示す図である。図5Bは、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が不均一である場合に、Uボルト10に作用する引張力及び圧縮力を示す図である。なお、図5A及び図5Bにおいては、ひずみ検出用模様がスペックルパターンである例が示されているが、ひずみ検出用模様が格子模様である例についても同様である。
【0028】
図5Aに示すように、軸部11A及び軸部11Bが被締結物2に均一に締結されている場合、軸部11A及び軸部11Bのそれぞれ外側及び内側に同程度の大きさの引張力FAO、FAI、FBO、及びFBIが発生している。このため、軸部11A及び軸部11Bそれぞれに作用する軸力は略均一である。一方、図5Bに示すように、軸部11A及び軸部11Bが被締結物2に不均一に締結されている場合、軸部11Aの外側と軸部11Bの内側にそれぞれ圧縮力F’AO及びF’BIが発生し、軸部11Aの内側と軸部11Bの外側にそれぞれ引張力FAI及びFBOが発生している。このため、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力は不均一である。締結物1が強固に固定されるには、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力を略均一にする必要がある。そこで、上述したように、軸部11A及び軸部11Bの両方にひずみ検出用模様が付され、これを用いてひずみεが検出されることによって、作業者は、被締結物2に対するUボルト10の軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一であるか否かを確認することができる。これによって、作業者は、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一であるように軸部11をナット3によって締め付けて、適切にUボルト10を被締結物2に締結することができる。なお、図4に示すUボルト10が被締結物2に締結された状態おいて作用する引張力及び圧縮力も同様である。
【0029】
(検出装置のハードウェア構成)
図6は、本開示の一実施形態に係る検出装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図6においては、検出装置20がプログラム命令を実行可能なコンピュータにより構成される場合の、検出装置20のハードウェア構成の一例を示している。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッド、スマートフォン等であってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメント等であってもよい。検出装置20がスマートフォンである場合、作業者は、Uボルト10の設置又は点検において、Uボルト10を被締結物2に締結する場所に検出装置20を容易に携行することができ、利便性が向上される。
【0030】
図6に示すように、検出装置20は、プロセッサ110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、ストレージ140、入力部150、表示部160及び通信インタフェース(I/F)170を有する。各構成は、バス190を介して相対に通信可能に接続されている。プロセッサ110は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種または異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。
【0031】
プロセッサ110は、各構成の制御、及び各種の演算処理を実行する。すなわち、プロセッサ110は、ROM120またはストレージ140からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行する。プロセッサ110は、ROM120ストレージ140に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM120またはストレージ140には、本開示に係るプログラムが格納されている。
【0032】
プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0033】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ140は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0034】
入力部150は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0035】
表示部160は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部160は、タッチパネル方式を採用して、入力部150として機能してもよい。
【0036】
通信インタフェース170は、外部装置(図示しない)等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0037】
(検出装置の機能構成)
次に、第1の実施形態に係る検出装置20の機能構成について、図7を参照して説明する。
【0038】
図7に示すように、本開示に係る検出装置20は、撮像部21と、画像記憶部22と、検出部23と、検出結果記憶部24と、出力部25とを備える。撮像部21は、カメラによって構成される。画像記憶部22及び検出結果記憶部24は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリ等のメモリによって構成される。検出部23は、制御部(コントローラ)を構成する。制御部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。出力部25は、例えば、表示部160を含んでよい。
【0039】
撮像部21は、ひずみ検出用模様が付されている、少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部である模様領域PAを撮像することによって観察画像を生成する。具体的には、以降において、観察画像における、模様領域PAの像が示されている領域を「観察領域」という。
【0040】
撮像部21は、軸部11のナット3による締め付けを調整する前に、ひずみ検出用模様が付されている、少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部である模様領域PAを撮像することによって調整前観察画像(第1の観察画像)を生成する。撮像部21は、軸部11のナット3による締め付けが調整された後に、ひずみ検出用模様が付されている、少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部である模様領域PAを撮像することによって調整後観察画像(第2の観察画像)を生成する。
【0041】
ここで、「締め付けを調整する」とは、軸部11のナット3による締め付け度合いを調整することであり、軸部11を貫通孔4に挿入した後、軸部11を初めてナット3によって締め付けること、及び軸部11が既にナット3によって締め付けられている状態から締め付け度合いを変更することを含む。
【0042】
画像記憶部22は、撮像部21によって生成された観察画像を記憶する。具体的には、画像記憶部22は、調整前観察画像を記憶する。また、画像記憶部22は、調整後観察画像を記憶してもよい。
【0043】
検出部23は、調整前観察画像及び調整後観察画像に基づいて模様領域PAのひずみεを検出する。検出部23は、軸部11のナット3による締め付けが調整されるたびにひずみεを検出してもよい。
【0044】
ひずみ検出用模様がスペックルパターンである構成において、検出部23は、デジタル画像相関法を用いて模様領域PAのひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、調整後観察画像および調整前観察画像の観察領域それぞれに含まれているスペックルパターンの像の相違に基づいて模様領域PAのひずみεを検出する。
【0045】
一例では、k回目(kは自然数)の調整における調整後観察画像は、k回目の調整後であって、(k+1)回目の調整前に生成された観察画像である。k回目の調整における調整前観察画像は、軸部11がナット3による締め付けが調整されていないとき(すなわち、0回目の調整後であって1回目の調整前)に撮像された初期観察画像とすることができる。このような構成において、検出部23は、軸部11のナット3による締め付けを調整するたびに、初期観察画像及び調整後観察画像に基づいてひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、1回目の調整前における模様領域PAのひずみεに対する、k回目の調整後における模様領域PAのひずみεの変化量を検出し、これによりひずみεを検出する。
【0046】
他の例では、上述した一例と同様に、k回目の調整における調整後観察画像は、k回目の調整後であって、(k+1)回目の調整前に生成された観察画像である。k回目の調整における調整前観察画像は、上述した一例とは異なり、k回目の調整前であって、(k-1)回目の調整後に生成された直前観察画像である。このような構成において、検出部23は、(k-1)回目の調整により発生した模様領域PAのひずみεに対する、k回目の調整により発生した模様領域PAのひずみεの変化量を検出することができる。この場合、検出部23は、軸部11のナット3による締め付けを調整するたびに、直前観察画像及び調整後観察画像に基づいてひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、k回目の調整前であって(k-1)回目の調整後における模様領域PAのひずみεに対する、k回目の調整後における模様領域PAのひずみεの変化量を検出する。そして、検出部23は、1回目からk回目の調整における変化量を合計することによってひずみεを検出する。
【0047】
なお、Uボルト10を構成する材料に応じて、Uボルト10に作用する力に対するひずみεの変化量は異なる。そして、Uボルト10に作用する力に対するひずみεの変化量が小さいほど、誤差が累積されにくい。この場合、検出部23は、調整前観察画像として初期観察画像を用いることによって、ひずみεを容易に検出することができる。また、Uボルト10に作用する力に対するひずみεの変化量が大きいほど誤差が累積されて高い精度でひずみεを検出することが困難となる。したがって、この場合、調整前観察画像として調整の直前に生成された直前観察画像を用いることによってひずみεを検出することができる。
【0048】
原則としては、精度を重視するため、検出部23は、調整前観察画像として初期観察画像を用いることによって、ひずみεを検出することが好適である。ただし、一般的に1%を超える大きい変形が生じるようなUボルト10においては、検出部23が、調整前観察画像として初期観察画像を用いると、調整前観察画像と調整後観察画像とのマッチングが困難となり、正しい測定結果が得られないことがある。そこで、上述したように大きい変形が生じるようなUボルト10においては、検出部23が調整前観察画像として直前観察画像を用いることによって、大きい変形に伴ってマッチングが困難となることを回避することができる。なお、このように、検出部23が調整前観察画像として直前観察画像を用いることによって、誤差の累積は大きくなる。したがって、調整前観察画像として初期観察画像を用いるか、直前観察画像を用いるかは、Uボルト10の変形のしやすさによって適宜設計され得る。
【0049】
さらに、Uボルト10の被締結物2への締結の度合いが強くなるほど、ひずみの変化量は大きくなる。したがって、検出部23は、Uボルト10の被締結物2への締結の強さ、すなわち、Uボルト10に作用する目標とする軸力(目標軸力)の大きさに応じた調整前観察画像を用いてひずみεが検出されるとより好適である。例えば、検出部23は、目標軸力が所定値未満である場合に調整前観察画像として初期観察画像を用いてひずみεを検出し、目標軸力が所定値以上である場合に調整前観察画像として直前観察画像を用いてひずみεを検出してもよい。
【0050】
ひずみ検出用模様が格子模様である構成において、検出部23は、サンプリングモアレ法を用いて模様領域PAのひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、調整前観察画像および調整後観察画像の観察領域それぞれに含まれている格子模様の像に基づいて、調整後における模様領域PAの、調整前における模様領域PAからのひずみεを検出する。このときに用いられる調整前観察画像は、上述したような、ひずみ検出用模様がスペックルパターンである構成において用いられる調整前観察画像と同様である。
【0051】
また、検出部23は、ひずみεと、目標ひずみεとの差である目標差Δεを検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。目標ひずみεは、上述した目標軸力が作用している軸部11において発生するひずみεである。
【0052】
また、両方の軸部11A及び11Bにひずみ検出用模様が付され、撮像部21によって、両方の軸部11A及び11Bそれぞれの観察画像が生成された場合、検出部23は、両方の軸部11A及び11Bの観察領域それぞれに含まれている、ひずみ検出用模様の像に基づいて、両方の軸部11A及び軸部11Bそれぞれのひずみε及びひずみεを検出することができる。
【0053】
この場合、検出部23は、ひずみε及びひずみεそれぞれと、目標ひずみεとの差である目標差Δε1A及び目標差Δε1Bを目標差Δεとして検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、目標差Δε1A及び目標差Δε1Bの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。
【0054】
さらに、検出部23は、ひずみεとひずみεとの差である相対差Δεを検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。
【0055】
検出部23は、ひずみεに基づく、Uボルト10の軸部11のナット3による締め付けに関する締め付け情報を出力部25に出力させる。また、検出部23は、締め付け情報を検出結果記憶部24に記憶させる。
【0056】
締め付け情報は、ひずみε、目標差Δε、目標差指標、相対差Δε、相対差指標、の少なくとも1つ以上を含むことができる。目標差指標は、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを示す情報である。相対差指標は、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを示す情報である。
【0057】
また、検出部23によって、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であると判定された場合、締め付け情報は、目標差指標に代えてUボルト10の締結が完了したことを示す情報を含んでもよい。また、検出部23によって、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上であると判定された場合、締め付け情報は、目標差指標に代えてUボルト10の締結が完了していないことを示す情報を含んでもよい。
【0058】
また、検出部23によって、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であると判定された場合、締め付け情報は、相対差指標に代えて軸部11A及び軸部11Bが略均等によって締め付けられていることを示す情報を含んでもよい。また、検出部23によって、相対差Δεの絶対値が所定の閾値以上であると判定された場合、締め付け情報は、相対差指標に代えて軸部11A及び軸部11Bが略均等によって締め付けられていないことを示す情報を含んでもよい。
【0059】
検出結果記憶部24は、検出部23によって検出された締め付け情報を記憶する。こうすることで、例えば、正常な施工(Uボルト10の締結)が完了したことの証跡を残すことができる。
【0060】
出力部25は、検出部23により検出されたひずみεに基づく、Uボルト10の軸部11のナット3による締め付けに関する締め付け情報を出力する。
【0061】
(Uボルト取り付けの施工方法)
ここで、第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作について、図8を参照して説明する。図8は、第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作の一例を示すフローチャートである。図8を参照して説明するUボルト10を締結するための動作は第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための施工方法に相当する。
【0062】
ステップS11において、作業者が、Uボルト10の軸部11A及び軸部11Bをそれぞれ貫通孔2A及び2Bに貫通させる。
【0063】
ステップS12において、撮像部21が、ひずみ検出用模様が付されている、少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部である模様領域PAを撮像することによって調整前観察画像を生成する。
【0064】
ステップS13において、画像記憶部22が、ステップS12で生成された調整前観察画像を記憶する。
【0065】
ステップS14において、作業者が、軸部11のナット3による締め付けを調整する。
【0066】
ステップS15において、撮像部21が、軸部11のナット3による締め付けが調整された後に模様領域PAを撮像することによって調整後観察画像を生成する。
【0067】
ステップS16において、検出部23が、調整前観察画像及び調整後観察画像に基づいて、模様領域PAのひずみεを検出する。
【0068】
このとき、検出部23が、軸部11A及び軸部11Bの一方のひずみεを検出してもよい。検出部23が、軸部11A及び軸部11Bの両方のひずみεを検出してもよい。検出部23は、ひずみεと、目標ひずみεとの差である目標差Δεを検出してもよい。目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出してもよい。検出部23は、軸部11A及び軸部11Bの両方のひずみεを検出する場合、相対差Δεを検出してもよい。検出部23は、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを判定してもよい。
【0069】
ステップS17において、画像記憶部22が、ステップS16で撮像部21によって生成された調整後観察画像を調整前観察画像として記憶する。
【0070】
ステップS18において、出力部25が、検出部23によって検出された締め付け情報を出力する。
【0071】
ステップS19において、作業者が、締め付け情報に基づいて締結処理が完了したか否かを判定する。
【0072】
このとき、ステップS18で出力された締め付け情報に含まれるひずみεが目標ひずみεから所定の範囲である場合、作業者が、締結処理が完了したと判定してもよい。この場合、ひずみεが目標ひずみεから所定の範囲でない場合、作業者が、締結処理が完了していないと判定する。
【0073】
または、ステップS18で出力された締め付け情報に含まれる目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満である場合、作業者が、締結処理が完了したと判定してもよい。この場合、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上である場合、作業者が、締結処理が完了していないと判定してもよい。
【0074】
あるいは、ステップS18で出力された締め付け情報に含まれる目標差指標が、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であることを示している場合、作業者が、締結処理を完了すると判定してもよい。この場合、目標差指標が、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上であることを示している場合、作業者が、締結処理を完了しないと判定してもよい。
【0075】
ステップS19で、締結処理が完了したと判定された場合、本締結処理を終了する。ステップS19で、締結処理が完了していないと判定された場合、ステップS14に戻って処理を繰り返す。
【0076】
ステップS14~ステップS19の処理の繰り返しにおいて、作業者は、締め付け情報に基づいて、軸部11A及び軸部11Bの一方の締め付けを調整してもよいし、軸部11A及び軸部11Bの両方の締め付けを調整してもよい。また、作業者は、相対差Δεが所定の閾値未満となるように軸部11A又は軸部11Bの締め付けを調整してから、相対差Δεが所定の閾値未満となっている状態を維持しつつ、目標差Δεが小さくなるように軸部11A及び軸部11の締め付けをさらに調整してもよい。
【0077】
なお、上述においては、ステップS17の処理が実行された後にステップS18の処理が実行されたが、この限りではない。例えば、ステップS18の処理が実行された後にステップS17の処理が実行されてもよいし、ステップS17及びステップS18の処理が同じタイミングで実行されてもよい。
【0078】
また、上述においては、ステップS11の処理が実行されなくてもよい。例えば、被締結物2に既に締結されているUボルト10を点検する場合、上記の締結のための動作はステップS12の処理から開始される。
【0079】
上述したように、第1の実施形態によれば、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部にひずみ検出用模様が付されている。これにより、軸部11のひずみεが目標ひずみεとなるように、すなわち軸部11に目標軸力が作用するように、Uボルト10の軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10を被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0080】
また、第1の実施形態によれば、ひずみ検出用模様は、被締結物2に設けられた一対の貫通孔4に一対の軸部11が挿入され、Uボルト10と被締結物2の一面とで締結物1を挟んで固定した状態において、一方の軸部11における、被締結物2の一面と、軸部11と橋梁部12との境界との間に付されている。これにより、作業者は、Uボルト10の被締結物2への取り付けにおいて、締結物1を強固に固定するために必要となる軸部11に作用する軸力に応じたひずみεを認識することができ、強固に締結物1を固定することができる。
【0081】
さらに、ひずみ検出用模様は、被締結物2に設けられた一対の貫通孔4に一対の軸部11が挿入され、Uボルト10と被締結物2の一面とで締結物1を挟んで固定した状態において、両方の軸部11における、被締結物2の一面と、軸部11と橋梁部12との境界との間に付されている。これにより、作業者は、Uボルト10の被締結物2への取り付けにおいて、軸部11A及び軸部11Bそれぞれに付されているひずみ検出用模様を用いて検出されたひずみの差異が大きくならないように作業を行うことができる。したがって、作業者は、Uボルト10の軸部11をナット3によって締め付けることができる。これに伴い、作業者は、Uボルト10を被締結物2に適切に締結することができ、締結物1を強固に固定することができる。
【0082】
また、第1の実施形態によれば、検出装置20は、目標差Δεに基づく締め付け情報を出力する。このため、作業者は、Uボルト10に発生するひずみεが目標ひずみεとなるように、すなわちUボルト10に目標軸力が作用するように、Uボルト10の軸部11をナット3によって締め付けることができ、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、検出装置20は、相対差Δεに基づく締め付け情報を出力する。Uボルト10の軸部11のナット3による締め付けにおいては、締め付け完了時だけでなく、締め付け完了までの作業途中においても、軸部11Aのひずみεと軸部11Bのひずみεとが同程度となっている状態が維持される必要がある。そのため、作業者は、ひずみεとひずみεを目標ひずみεとするだけではなく、作業途中において、ひずみεとひずみεとの差異である相対差Δεが小さくなるようにする必要がある。したがって、上述したように、検出装置20が相対差Δεに基づく締め付け情報を出力することによって、作業者は、締結の作業途中において、相対差Δεを認識することができ、これに基づいてUボルト10の軸部11をナット3に適切によって締め付けることができる。したがって、作業者は、強固に締結物1を固定することができる。
【0084】
<第2の実施形態>
(Uボルトの構成)
本開示の第2の実施形態に係るUボルト10は、第1の実施形態に係るUボルト10と同様である。
【0085】
(検出装置のハードウェア構成)
第2の実施形態に係る検出装置20Aのハードウェア構成は、第1の実施形態に係る検出装置20のハードウェア構成と同様である。
【0086】
(検出装置の機能構成)
次に、第2の実施形態に係る検出装置20Aの機能構成について、図9を参照して説明する。検出装置20Aは、撮像部21と、画像記憶部22と、検出部23と、検出結果記憶部24と、出力部25と、設定部26とを備える。第2の実施形態における画像記憶部22、検出部23、検出結果記憶部24、及び出力部25は、第1の実施形態におけるそれぞれ画像記憶部22、検出部23、検出結果記憶部24、及び出力部25と同様である。
【0087】
第2の実施形態における撮像部21は、第1の実施形態における撮像部21と同様にカメラによって構成される。具体的には、撮像部21は、被写体の像を結像する撮像素子211と、画像を表示する表示部212とを含む。
【0088】
設定部26は、制御部(コントローラ)を構成する。設定部26は、撮像素子211によって結像された被写体の像に、画像記憶部22に記憶されている調整前観察画像を重畳させた画像を表示部212に表示させる。
【0089】
第2の実施形態における撮像部21は、第1の実施形態における撮像部21と同様にカメラによって構成される。撮像部21は、設定部26によって表示部212に表示された調整前観察画像における模様領域PAの像が、締め付けが調整された後に実空間に存在する模様領域PAに略一致するような画角で、実空間に存在する模様領域PAを撮像することによって調整後観察画像を生成する。
【0090】
一例では、作業者が、調整前観察画像における模様領域PAの像が、締め付けが調整された後に実空間に存在する模様領域PAに略一致するか否かを判定する。このような構成において、作業者は、調整前観察画像における模様領域PAの像が実空間に存在する模様領域PAに略一致すると判定したときに検出装置20Aに対して操作を行う。そして、設定部26は、作業者による操作に基づいて撮像部21の画角を取得し、撮像部21が該画角で撮像するように制御する。「調整前観察画像における模様領域PAの像が実空間に存在する模様領域PAに略一致する」とは、模様領域PAの像と、実空間に存在する模様領域PAとが重ならない領域の面積が、模様領域PAの像の面積に対して所定の割合以下であることである。
【0091】
他の例では、設定部26は、調整前観察画像における模様領域PAの像が、締め付けが調整された後に実空間に存在する模様領域PAに略一致するか否かを任意の画像処理方法により判定する。このような構成において、設定部26は、調整前観察画像における模様領域PAの像が実空間に存在する模様領域PAに略一致すると判定したときの撮像部21の画角を取得し、撮像部21が該画角で撮像するように制御する。
【0092】
(Uボルト取り付けの施工方法)
ここで、第2の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作について、図10を参照して説明する。図10は、第2の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作の一例を示すフローチャートである。図10を参照して説明するUボルト10を締結するための動作は第2の実施形態に係るUボルト10を締結するための施工方法に相当する。
【0093】
まず、ステップS31~ステップS34の処理が実行される。ステップS31~ステップS34の処理は、第1の実施形態におけるステップS11~ステップS14の処理と同様である。
【0094】
ステップS35においては、設定部26が、撮像部21の撮像範囲に調整前観察画像を重畳させる。
【0095】
ステップS36においては、設定部26が、撮像範囲に表示された調整前観察画像における模様領域PAの像が、締め付けが調整された後に実空間に存在する模様領域PAに略一致するような画角を取得する。
【0096】
ステップS37においては、撮像部21が、ステップS36で取得された画角で、実空間に存在する模様領域PAを撮像することによって調整後観察画像を生成する。
【0097】
続いて、ステップS38~ステップS41の処理が実行される。ステップS38~ステップS41の処理は、第1の実施形態におけるステップS16~ステップS19の処理と同様である。
【0098】
上述したように、第2の実施形態によれば、撮像部21は、調整前観察画像と同じ画角の調整後観察画像を生成することができる。したがって、検出部23は、互いに同じ画角の調整前観察画像及び調整後観察画像を用いて、軸部11のひずみεを検出することができる。このため、検出部23は、互いに異なる画角で撮像されることによって生成された整前観察画像及び調整後観察画像を用いて軸部11のひずみεを検出する場合に比べて正確にひずみεを検出することができる。また、検出部23は、互いに異なる画角で撮像されることによって生成された整前観察画像及び調整後観察画像における観察領域を補正することなく歪を検出することができるため、処理負荷を軽減することができる。
【0099】
<プログラム>
上述した検出装置20又は検出装置20Aの各部として機能させるためにコンピュータを好適に用いることが可能である。そのようなコンピュータは、検出装置20の各部の機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのプロセッサによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータを、上述した検出装置20又は検出装置20Aとして機能させることができる。また、当該プログラムを非一時的記憶媒体に記憶することも可能である。また、当該プログラムを、ネットワークを介して提供することも可能である。
【0100】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 締結物
2 被締結物
3,3A,3B ナット
4,4A,4B 貫通孔
10 Uボルト
11、11A,11B 軸部
12 橋梁部
13 ねじ部
20,20A 検出装置
21 撮像部
22 画像記憶部
23 検出部
24 検出結果記憶部
25 出力部
26 設定部
110 プロセッサ
120 ROM
130 RAM
140 ストレージ
150 入力部
160 表示部
170 通信I/F
190 バス
211 撮像素子
212 表示部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10