(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いて密封された半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20241002BHJP
B29B 9/08 20060101ALI20241002BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20241002BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20241002BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241002BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C08L63/00 C
B29B9/08
B29B9/12
C08J3/12 CFC
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019230681
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166693
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 相 珍
(72)【発明者】
【氏名】金 相 均
(72)【発明者】
【氏名】嚴 泰 信
(72)【発明者】
【氏名】李 東 桓
(72)【発明者】
【氏名】李 英 俊
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲よう▼ 寒
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-159400(JP,A)
【文献】特開2017-039830(JP,A)
【文献】特開2011-153173(JP,A)
【文献】特開2007-077333(JP,A)
【文献】特開2007-258744(JP,A)
【文献】特開昭59-204614(JP,A)
【文献】特開昭60-224234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08G
H01L
C08J
B29B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物全体に対して、
(i)ASTM標準ふるいを用いた粉ふるいによって測定したとき、直径が0.1mm以上2.8mm未満で、高さが0.1mm以上2.8mm未満である錠剤の比率が97重量%以上で、
(ii)前記錠剤は、圧縮密度が1.7g/mL超過で、
(iii)前記錠剤は、硬化密度に対する圧縮密度の比が0.6以上0.87以下であ
り、
アルミナ及び窒化アルミニウムのうち1種以上を含む無機充填剤を含むものである、
錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記錠剤は円柱状を有するものである、請求項1に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機充填剤は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%で含まれるものである、請求項
1または2に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤はシリカを含み、前記シリカは、前記無機充填剤のうち90重量%以下で含まれるものである、請求項
1~3のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記窒化アルミニウムは、前記無機充填剤のうち50重量%以下で含まれるものである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填剤は、平均粒径(D50)が3μm~15μmである、請求項
1~5のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記アルミナは、前記無機充填剤のうち10重量%~100重量%で含まれるものである、請求項
1~6のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記アルミナは、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれるものである、請求項
1~7のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填剤としてアルミナとシリカとの混合物を含むものである、請求項
1~8のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記アルミナとシリカとの混合物は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれるものである、請求項
9に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填剤としてシリカと窒化アルミニウムとの混合物を含むものである、請求項
1~10のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項12】
前記シリカと窒化アルミニウムとの混合物は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれるものである、請求項
11に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
前記硬化密度は1.9g/mL~4g/mLである、請求項
1~12のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、錠剤圧縮成形によって製造されたものである、請求項
1~13のいずれか1項に記載の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項
1~14のいずれか1項の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を用いて密封された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いて密封された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器市場の中心が、スマートフォン及びタブレットPCに代表されるモバイル機器に移行していることによって、電子素子に対する技術開発も、さらに小さくて軽いながらも高性能を有するモバイル素子に集中している。これによって、高積層化、高性能化、高密度化、多機能化、及びスリム化の傾向に合わせたモバイル機器を具現するために、さらに薄く且つ高集積化された半導体装置を開発中である。このような高積層化及び高密度化半導体素子を小型及び薄型の半導体パッケージに密封する場合、半導体装置の作動時に発生する熱によってパッケージの誤作動及びクラック発生の頻度が高くなり得る。これを解消するために放熱板を使用しているが、放熱板は、一部のパッケージでのみ可能であり、工程追加による生産性の低下及び高費用の短所を有する。よって、熱伝導度を高めることができる半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物が要求されている。
【0003】
一方、前記傾向に伴い、圧縮成形(compression molding)によって半導体素子を密封する方法が開発中である。圧縮成形は、金型内で圧縮によって成形されることによって、半導体素子がマルチ-スタック(multi-stack)で積層された場合にもボイド(void)の発生を抑制することができ、近年注目されている成形方法である。圧縮成形時、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、金型内にフィルム状又はシート状で投入されてもよいが、組成物の成形性及び移動性などを考慮した上で、パウダー状又は顆粒状で投入されている実情にある。ところが、前記パウダー又は顆粒は、一定程度の大きさの分布を有するしかないので、ワイヤスイープ及び/又はパッケージの反りが発生するという問題を有する。
【0004】
従来の半導体素子圧縮成形用エポキシ樹脂組成物の製造方法としては、遠心製粉法及びホットカット(hot cut)法があった。しかし、これらの高い熱伝導特性を必要とする半導体素子圧縮成形方法では、エポキシ樹脂組成物の製造自体が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、熱伝導度が高い錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、圧縮成形による半導体素子の密封時、圧縮成形設備中の組成物の固着及び/又は飛散を防止し、設備汚染を低下できる錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、圧縮成形による半導体素子の密封時、ワイヤスイープを著しく低下できる錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物が提供される。
【0010】
第1具体例では、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物全体に対して、(i)ASTM標準ふるいを用いた粉ふるいによって測定したとき、直径が0.1mm以上2.8mm未満で、高さが0.1mm以上2.8mm未満である錠剤の比率が97重量%以上であって、(ii)前記錠剤は、圧縮密度が1.7g/mL超過であって、(iii)前記錠剤は、硬化密度に対する圧縮密度の比が0.6以上0.87以下である。
【0011】
第2具体例では、第1具体例において、前記錠剤は円柱状を有してもよい。
【0012】
第3具体例では、第1または第2具体例において、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、クレイ(clay)、タルク(talc)、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、及びホウ素窒化物(ボロンナイトライド)のうち1種以上を含む無機充填剤を含んでもよい。
【0013】
第4具体例では、第3具体例において、前記無機充填剤は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%で含まれてもよい。
【0014】
第5具体例では、第3または第4具体例において、前記シリカは、前記無機充填剤のうち90重量%以下で含まれてもよい。
【0015】
第6具体例では、第3~第5具体例のいずれか1つにおいて、前記窒化アルミニウムは、前記無機充填剤のうち50重量%以下で含まれてもよい。
【0016】
第7具体例では、第3~第6具体例のいずれか1つにおいて、前記無機充填剤は、平均粒径(D50)が3μm~15μmであってもよい。
【0017】
第8具体例では、第3~第7具体例のいずれか1つにおいて、前記アルミナは、前記無機充填剤のうち10重量%~100重量%で含まれてもよい。
【0018】
第9具体例では、第3~第8具体例のいずれか1つにおいて、前記アルミナは、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0019】
第10具体例では、第3~第9具体例のいずれか1つにおいて、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填剤としてアルミナとシリカとの混合物を含んでもよい。
【0020】
第11具体例では、第10具体例において、前記アルミナとシリカとの混合物は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0021】
第12具体例では、第3~第11具体例のいずれか1つにおいて、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、前記無機充填剤としてシリカと窒化アルミニウムとの混合物を含んでもよい。
【0022】
第13具体例では、第12具体例において、前記シリカと窒化アルミニウムとの混合物は、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち75重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0023】
第14具体例では、第1~第13具体例のいずれか1つにおいて、前記硬化密度は1.9g/mL~4g/mLになってもよい。
【0024】
第15具体例では、第1~第14具体例のいずれか1つにおいて、前記錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は錠剤圧縮成形によって製造されてもよい。
【0025】
本発明の半導体装置は、本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を用いて密封される。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、熱伝導度が高い錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0027】
本発明は、圧縮成形による半導体素子の密封時、圧縮成形設備中の組成物の固着及び/又は飛散を防止し、設備汚染を低下できる錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0028】
本発明は、圧縮成形による半導体素子の密封時、ワイヤスイープを著しく低下できる錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明において錠剤の形態及び該当の錠剤における直径と高さを説明する図である。
【
図2】圧縮成形によって半導体素子を密封する方法の一例を説明する図である。
【
図3】圧縮成形によって密封された半導体装置の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、添付の図面を参考にして、実施形態や実施例によって本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態に具現可能であり、ここで説明する実施形態や実施例に限定されることはない。
【0031】
本明細書において、「錠剤」は、第1面、第2面、及び前記第1面と前記第2面とを互いに連結する側面で構成されており、第1面と第2面は、互いに対向する形状を意味する。一実施例において、第1面と第2面はそれぞれ平面であって、側面は一つの曲面であってもよい。一具体例において、錠剤は円柱になってもよい。
図1を参照すると、錠剤は円柱になってもよく、円柱は、第1面(又は第2面)における直径(D)及び側面における高さ(H)を有してもよい。本発明において、「錠剤」は、直径(D)が高さ(H)と同じかそれより小さい場合のみならず、直径(D)が高さ(H)より大きい場合も含み得る。
【0032】
本明細書において、錠剤の「アスペクト比」は、「直径(D)に対する高さ(H)の比(高さ(H)/直径(D))になってもよい。
【0033】
本明細書において、「錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物」は、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち重量%で98%以上、例えば、99重量%以上が錠剤である組成物を意味し得る。
【0034】
本明細書において、「圧縮密度」は、ASTM標準ふるいを用いて篩ったとき、0.1mm以上2.8mm未満の粉ふるいに属する錠剤に対して測定される値である。0.1mm以上2.8mm未満の粉ふるいに属する錠剤のうち一部を秤量することによって試料を獲得し、電子秤を用いて重さ(W)を測定する。50mlのメスシリンダーに水を半分だけ充填し、シリコーン系界面活性剤を投入した後、正確な体積(V1)を測定する。重さを測定した錠剤をメスシリンダーに入れた後、変化した体積(V2)を正確に測定する。下記の式1によって圧縮密度(単位:g/mL)を計算する。このとき、錠剤の間にある空気を除去するためにメスシリンダーを振った後、体積を測定し、圧縮密度は、5回測定した後の平均値として計算することができる。
【0035】
【0036】
本明細書において、「硬化密度」は、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて金型温度175±5℃の範囲、注入圧力7MPa、硬化時間120秒にして直径50mm×厚さ3mmの円盤に成形し、PMC(Post mold curing)工程を175℃で4時間進めた後、質量及び体積を求め、体積に対する質量の比(質量/体積、g/mL)として計算することができる。
【0037】
本明細書において、「熱伝導度」は、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物で形成された試験片に対してASTM D5470によって25℃で測定された値である。
【0038】
本明細書において、数値範囲の記載時、「X~Y」は、X以上Y以下を意味する。
【0039】
本発明の一実施例に係る錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、下記の(i)、(ii)及び(iii)を全て満足する。(i)、(ii)及び(iii)を全て満足することによって、半導体素子の圧縮成形時、微粉の飛散による振動フィーダーなどの設備の汚染可能性を低下させることができ、ワイヤスイープ(wire sweep)を著しく低下させることができ、熱伝導度を著しく高めることができる。一具体例において、本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、熱伝導度が2W/mK以上、例えば、2W/mK~10W/mK、例えば、2W/mK~7.5W/mKになってもよい。前記範囲では、半導体素子の密封時に放熱効果が高くなり、作動時に発生する熱によるパッケージ誤作動及びクラック発生の頻度が低下し得る。
【0040】
特に、本発明の発明者らは、同一の種類の無機充填剤を同一の含量で含有する半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物であっても、下記の(i)、(ii)及び(iii)のうち1種以上を満足できない場合は、熱伝導度の改善、ワイヤスイープの減少及び微粉の飛散による設備の汚染可能性低下などの効果を全て得ることができないことを確認した。
【0041】
(i)ASTM標準ふるいを用いた粉ふるいによって測定したとき、直径が0.1mm以上2.8mm未満で、高さが0.1mm以上2.8mm未満である錠剤の比率が97重量%以上である。
【0042】
(ii)前記錠剤は、圧縮密度が1.7g/mL超過である。
【0043】
(iii)前記錠剤は、硬化密度に対する圧縮密度の比(圧縮密度/硬化密度)が0.6以上0.87以下である。
【0044】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、ASTM標準ふるいを用いた粉ふるいによって測定したとき、直径が0.1mm以上2.8mm未満で、高さが0.1mm以上2.8mm未満である錠剤の比率が全体の錠剤状のエポキシ樹脂組成物のうち97重量%以上である。直径又は高さが0.1mm未満である錠剤が3重量%を超える場合は、微粉の含量が高くなり、圧縮成形設備に微粉が固着することによって汚染が発生するという問題が生じ得る。また、直径又は高さが2.8mm以上である錠剤が3重量%を超える場合は、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物が移送中に崩れやすくなり、圧縮成形設備に汚染を引き起こすこともある。また、錠剤状の組成物の形態が不均一になり、圧縮成形設備で錠剤を計量するときにエラーが発生したり、それによって半導体パッケージの厚さの差を引き起こし、反りの偏差による不良を引き起こし得る。一具体例において、直径が0.1mm以上2.8mm未満で、高さが0.1mm以上2.8mm未満である錠剤の比率が全体の錠剤状のエポキシ樹脂組成物のうち97重量%~99重量%になってもよい。
【0045】
ASTM標準ふるいを用いた粉ふるいによると、0.1mmはASTMメッシュNo.140に該当し、2.8mmはASTMメッシュNo.7に該当する。
【0046】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、圧縮密度が1.7g/mL超過である。圧縮密度が1.7g/mL以下であると、熱伝導度が低くなり、その結果、半導体素子の密封時に放熱効果が低くなり、作動時に発生する熱によるパッケージ誤作動及びクラック発生の頻度が高くなり得る。圧縮密度測定方法は、上述した通りである。圧縮密度は、好ましくは1.7g/mL超過3.2g/mL以下、さらに好ましくは1.71g/mL~3.2g/mL、最も好ましくは1.71g/mL~3g/mLになってもよい。
【0047】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、圧縮密度と硬化密度との間の密度比(硬化密度に対する圧縮密度の比)が0.6以上0.87以下である。前記密度比が0.6未満であると、圧縮成形時に溶融性及び相溶性が良好でない場合がある。また、前記密度比が0.87超過であると、熱伝導度改善効果が微弱になったり、ワイヤスイープが大きくなり得る。
【0048】
一具体例において、硬化密度は、1.9g/mL~4g/mL、好ましくは1.95g/mL~3.5g/mL、さらに好ましくは1.95g/mL~3.2g/mLになってもよい。前記範囲では、圧縮成形時の溶融性及び相溶性が良好であり、ワイヤスイープ及びボイドの発生が減少し得る。硬化密度測定方法は、上述した通りである。
【0049】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、錠剤のアスペクト比が0.1~5、好ましくは0.25~4になってもよい。前記範囲では、半導体パッケージの厚さの偏差を減少させ、反りの偏差を減少させるという効果がさらにあり得る。
【0050】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、錠剤が円柱状になってもよい。
【0051】
以上で説明した本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、以下で説明する錠剤圧縮成形方法によって製造され得る。錠剤圧縮成形方法は、錠剤圧縮成形装置を用いてもよい。例えば、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を、連続ニーダーを用いて90℃~110℃で溶融・混練した後、冷却及び粉砕することによって粉末状の組成物に製造する。製造した粉末状の予備組成物を錠剤打錠設備フィーダーに投入し、上部パンチの下降によってダイに入っている粉末状の組成物を圧縮した後、上部パンチの昇降によって錠剤状の組成物を製造する。上部パンチの下降及び下部パンチの昇降によって組成物に加えられる圧縮荷重、ダイの直径及び高さなどを調節することによって半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0052】
一具体例において、圧縮荷重は、ダイの直径、ダイの高さ、ダイに投入された組成物の投入高さ及び直径などによって変わってもよく、圧縮荷重は0.1トン~1トンになってもよい。一具体例において、ダイの直径は0.1mm以上2.8mm未満になってもよく、ダイの高さは0.1mm以上2.8mm未満になってもよい。
【0053】
一方、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を成形する方法として、従来の遠心製粉法が知られている。遠心製粉法による場合、組成物が回転子の遠心力によって均一なパンチング鉄網を通過したとしても溶融・混練された状態で成形されるので、圧縮・成形時に溶融が確実に行われなく、その結果、ワイヤスイープ不良が発生し得る。また、顆粒の大きさの偏差によってパッケージの反り問題を発生させ得る。
【0054】
また、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を成形する他の方法として、従来のホットカット(hot cut)法が知られている。ホットカット法による場合、溶融・混練された状態のエポキシ樹脂組成物をカッティングして製造するので、圧縮成形時に溶融が確実に行われなく、その結果、ワイヤスイープ不良が発生し得る。
【0055】
以下では、本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の構成成分を説明する。
【0056】
本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化触媒、及び無機充填剤を含んでもよい。
【0057】
エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの混合物になってもよい。例えば、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線形脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、ビフェニル型ノボラックエポキシ樹脂などになってもよく、これらは、単独で含まれてもよく、2種以上が混合されて含まれてもよい。
【0058】
硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化できるものであれば特に限定されない。硬化剤としては、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ビフェニル型ノボラックフェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールから合成されたノボラック型フェノール樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジヒドロキシビフェニルを含む多価フェノール化合物、無水マレイン酸及び無水フタル酸を含む酸無水物、メタ-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンなどを挙げることができる。
【0059】
硬化触媒は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の硬化反応を促進できるものであれば制限なく使用可能である。例えば、硬化触媒としては、3級アミン、有機金属化合物、有機リン化合物、イミダゾール類、及びホウ素化合物などが使用可能である。3級アミンには、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジエチルアミノエタノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノール及びトリ-2-エチルへキシル酸塩などがある。有機金属化合物には、クロムアセチルアセトネート、亜鉛アセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネートなどがある。有機リン化合物には、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルボラン、トリフェニルホスフィン-1,4-ベンゾキノン付加物などがある。イミダゾール類には、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-アミノイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどがある。ホウ素化合物には、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、テトラフェニルホウ酸塩、トリフルオロボラン-n-へキシルアミン、トリフルオロボランモノエチルアミン、テトラフルオロボラントリエチルアミン、テトラフルオロボランアミンなどがある。その他にも、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene:DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene:DBU)及びフェノールノボラック樹脂塩などが使用可能である。硬化触媒としては、エポキシ樹脂又は硬化剤とのプレ反応によって作った付加物を使用することも可能である。
【0060】
無機充填剤としては、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物で通常的に使用される無機充填剤を使用してもよい。
【0061】
一具体例において、無機充填剤は、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム(aluminum nitride)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、クレイ(clay)、タルク(talc)、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、及びホウ素窒化物(ボロンナイトライド)のうち1種以上を含んでもよい。好ましくは、無機充填剤としてアルミナを含むことによって、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度を高めることができる。無機充填剤は、単独で含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。無機充填剤が2種以上含まれる場合、無機充填剤の平均粒径(D50)が同一又は異なってもよい。好ましくは、無機充填剤が2種以上含まれる場合、平均粒径(D50)は異なってもよい。
【0062】
一具体例において、無機充填剤としてアルミナのみが使用されてもよい。具体的には、アルミナは、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%、好ましくは75重量%~98重量%で含まれてもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0063】
他の具体例において、無機充填剤としてアルミナとシリカとの混合物が使用されてもよい。具体的には、アルミナとシリカとの混合物は、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%、好ましくは75重量%~98重量%で含まれてもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0064】
更に他の具体例において、無機充填剤としてアルミナと窒化アルミニウムとの混合物が使用されてもよい。具体的には、アルミナと窒化アルミニウムとの混合物は、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%、好ましくは75重量%~98重量%で含まれてもよい。
【0065】
更に他の具体例において、無機充填剤としてシリカと窒化アルミニウムとの混合物が使用されてもよい。具体的には、シリカと窒化アルミニウムとの混合物は、錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物のうち70重量%~99重量%、好ましくは75重量%~98重量%で含まれてもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0066】
一具体例において、無機充填剤中のアルミナの含量は、無機充填剤のうち10重量%以上、好ましくは10重量%~100重量%になってもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0067】
一具体例において、無機充填剤中のシリカの含量は、無機充填剤のうち90重量%以下、好ましくは10重量%~90重量%になってもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0068】
一具体例において、無機充填剤中の窒化アルミニウムの含量は、無機充填剤のうち50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは5重量%~30重量%になってもよい。前記範囲では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の熱伝導度が向上しながら本発明の効果も得ることができる。
【0069】
無機充填剤は、平均粒径(D50)が3μm~15μm、好ましくは5μm~15μm、さらに好ましくは5μm~12μmになってもよい。前記範囲では、エポキシ樹脂組成物の流動性が良好になり得る。前記「平均粒径」は、D50として、当業者に知られている通常の粒径D50を意味し、無機充填剤を重量基準で分布させたとき、50重量%に該当する無機充填剤の粒径を意味する。
【0070】
半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、上述した成分以外にも、通常の添加剤をさらに含んでもよい。具体例において、添加剤は、カップリング剤、離型剤、応力緩和剤、架橋増進剤、レベリング剤、及び着色剤のうち一つ以上を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン及びアルコキシシランからなる群から選ばれる1種以上を使用してもよいが、これに制限されない。離型剤としては、パラフィン系ワックス、エステル系ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、天然脂肪酸及び天然脂肪酸金属塩からなる群から選ばれる1種以上を使用してもよい。応力緩和剤としては、変性シリコーンオイル、シリコーンエラストマー、シリコーンパウダー及びシリコーンレジンからなる群から選ばれる1種以上を使用してもよいが、これに制限されない。着色剤としては、カーボンブラックなどを使用してもよい。
【0071】
半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂が0.5重量%~20重量%、具体的には3重量%~15重量%で含まれ、硬化剤が0.1重量%~13重量%、具体的には0.1重量%~10重量%で含まれ、無機充填剤が70重量%~99重量%、例えば、75重量%~98重量%で含まれ、硬化触媒が0.01重量%~2重量%、具体的には0.02重量%~1.5重量%で含まれ、各種添加剤が0.1重量%~10重量%で含まれてもよい。
【0072】
本発明の半導体素子は、本発明の錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を用いて圧縮成形によって密封され得る。半導体素子は、集積回路、トランジスタ、サイリスター、ダイオード、固体撮像素子などを含んでもよい。
【0073】
以下では、
図2を参照して、圧縮成形による半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の密封方法を説明する。
図2を参照すると、(a)では、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物1を振動フィーダー2によって組成物供給容器3に投入する。振動フィーダー2は、一定又は変化する供給速度で振動することによって、所定量の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を組成物供給容器3に一定の速度で投入させることができる。(b)では、組成物供給容器3にシャッター4などの手段が装着されており、シャッター4などを動かすことによって、組成物供給容器3内の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物1を瞬間的に下部成形キャビティ5に投入させることができる。下部成形キャビティ5上に半導体素子6などが装着された上部基板7と、下部成形キャビティ5が形成された下部基板8とを互いに圧縮する。この際、組成物供給容器3は上部基板7と下部基板8との圧縮の邪魔にならない側方に向かって移動する。また、下部基板7が上昇することで、上部基板7と下部基板8とを圧縮する。下部成形キャビティ5に投入された半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物1が下部基板8中に埋設されたヒーター9により溶融され、半導体素子6などが装着された上部基板7が下降しながら、半導体素子などが溶融物に徐々にディッピング(dipping)されることによって圧縮成形が完了する。
【0074】
図3は、圧縮成形によって密封された半導体装置の一例を説明する。
図3を参照すると、半導体素子101は、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物で形成された密封材102によって封止されている。半導体素子101は、ダイパッド103上にダイボンディング物質104によって固定されている。半導体素子101の電極パッドとリードフレーム105はワイヤ106によって連結されている。本発明の半導体装置は、本発明の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物で形成された密封材で密封されており、半導体パッケージの厚さ(T)の偏差が小さく、これによって反りの偏差が低い。
【実施例】
【0075】
以下では、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の理解を促進するためのものであって、本発明の範囲が下記の実施例に限定されることはない。
【0076】
(実施例1)
エポキシ樹脂として、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂であるNC-3000(日本化薬株式会社製)7.01重量%及びビフェニル型エポキシ樹脂YX-4000(ジャパンエポキシレジン株式会社製)5.73重量%;硬化剤として、フェノールノボラック樹脂DL-92(明和化成株式会社製)4.32重量%及びフェノールアラルキル型フェノール樹脂であるMEH-7851S(明和化成株式会社製)1.08重量%;硬化触媒として、トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)0.89重量%;無機充填剤として、アルミナ10重量%とシリカ70重量%との混合物80重量%;カップリング剤として、エポキシシランKBM-303(信越化学工業株式会社製)0.3重量%及びアミノシランKBM-573(信越化学工業株式会社製)0.2重量%;着色剤として、カーボンブラックMA-600B(三菱化学株式会社製)0.37重量%;離型剤として、カルナウバワックス0.1重量%をヘンシェルミキサー(KEUM SUNG MACHINERY CO.LTD(KSM-22))を用いて混合することによってマスターバッチ組成物を製造した。このとき、「重量%」は、半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物中の各成分の含量を示す。
【0077】
前記製造した組成物を、連続ニーダーを用いて90℃~110℃で溶融・混練した後、冷却及び粉砕することによって粉末状の組成物に製造した。製造した粉末状の予備組成物を、錠剤圧縮成形機を用いて錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物に製造した。
【0078】
具体的には、前記製造した粉末状の組成物を錠剤打錠設備フィーダーに投入し、上部パンチの下降によってダイに入っている粉末状の組成物を圧縮した後、上部パンチの昇降によって錠剤状の組成物を製造した。上部パンチの下降及び下部パンチの昇降によって組成物に加えられる圧縮荷重は0.6トンであった。また、ダイの直径及び高さを調節することによって、下記の表4の物性を有する錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0079】
(実施例2~実施例9)
実施例1で半導体素子密封用エポキシ組成物中の各成分の含量を下記の表1のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0080】
前記製造した半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物に対して圧縮荷重、ダイの直径、及び/又はダイの高さを調節することによって錠剤圧縮成形を行い、その結果、下記の表4の物性を有する錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0081】
(比較例1~比較例12)
実施例1で半導体素子密封用エポキシ組成物中の各成分の含量を下記の表2及び表3のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0082】
前記製造した半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物に対して圧縮荷重、ダイの直径、及び/又はダイの高さを調節することによって錠剤圧縮成形を行い、その結果、下記の表5及び表6の物性を有する錠剤状の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。比較例8では、錠剤圧縮成形時に錠剤を製造することができなかった。
【0083】
(比較例13)
実施例1で半導体素子密封用エポキシ組成物中の各成分の含量を下記の表3のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0084】
円筒状外周部の素材として、穴径2.5mmの小さい穴を備えた鉄製のパンチング鉄網を使用した。直径20cmの回転子の外周上に円筒状に加工した高さ25mm、厚さ1.5mmのパンチング鉄網を設置することによって円筒状外周部を形成した。回転子を3000RPMで回転させ、円筒状外周部を励磁コイルで115℃に加熱した。回転子の回転数及び円筒状外周部の温度が正常状態になった後、脱気装置によって脱気しながら2軸押出機によって前記マスターバッチを溶融・混練して得られた溶融物を、回転子の上側で二重管式円筒体を通じて2kg/hrの比率で回転子の内部に供給し、回転子を回転させて得ることができる遠心力によって円筒状外周部の複数の小さい穴に通過させることにより、遠心製粉法によって下記の表6の物性を有する樹脂組成物を得た。2軸押出機の混練温度は90℃~110℃であった。
【0085】
(比較例14~比較例16)
実施例1で半導体素子密封用エポキシ組成物中の各成分の含量を下記の表3のように変更したことを除いては、実施例1と同一の方法で半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を製造した。
【0086】
前記製造した半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物に対して、比較例13の遠心製粉と同一の遠心製粉を実施した。比較例14~比較例16の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物で遠心製粉を実施したときは、製造が不可能であった。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
前記表1~前記表3において、
エポキシ樹脂1は、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂で、
エポキシ樹脂2は、ビフェニル型エポキシ樹脂で、
硬化剤1は、フェノールノボラック型樹脂で、
硬化剤2は、フェノールアラルキル型フェノール樹脂で、
硬化触媒は、トリフェニルホスフィンで、
アルミナは、平均粒径(D50)が9μmで、
シリカは、平均粒径(D50)が8μmで、
窒化アルミニウムは、平均粒径(D50)が3μmで、
カップリング剤1は、エポキシシランで、
カップリング剤2は、アミノシランである。
【0091】
実施例及び比較例で成形した半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物に対して下記の物性を評価し、その結果を下記の表4、表5及び表6に示した。
【0092】
(1)製造された半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の錠剤の大きさ:ASTM標準MESHを用いて振動ふるい機に0.1mm[ASTM No 140]、2.8mm[ASTM No 7]のふるい目格子を用いて10分にわたってハンマー打数として1分当たり100打数で振動させ、試料を粉ふるいに通過させ、0.1mm以上2.8mm未満の粉ふるいでろ過される錠剤の重さ、及び0.1mm未満2.8mm以上の粉ふるいでろ過される錠剤の重さを測定し、0.1mm以上2.8mm未満に該当する半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物の錠剤の含量(%)を測定した。
【0093】
(2)圧縮密度:ASTM標準ふるいを用いて篩ったとき、0.1mm以上2.8mm未満の粉ふるいでろ過されるものに対して測定した。具体的には、前記0.1mm以上2.8mm未満の粉ふるいでろ過されるもののうち一部を秤量することによって試料を獲得し、電子秤を用いて重さ(W)を測定した。50mlのメスシリンダーに水を半分だけ充填し、シリコーン系界面活性剤(製品名:BYK-378、製造社:BYK社)0.1gを投入した後、正確な体積(V1)を測定した。重さを測定した錠剤をメスシリンダーに入れた後、変化した体積(V2)を正確に測定した。このとき、錠剤の密度は、下記の式1によって圧縮密度(単位:g/mL)として計算した。このとき、錠剤の間にある空気を除去するためにシリンダーを振った後、体積を測定し、圧縮密度は、5回測定した後の平均値として計算することができる。
【0094】
【0095】
(3)硬化密度:半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物は、トランスファー成形機を用いて金型温度175±5℃の範囲、注入圧力7MPa、硬化時間120秒にして直径50mm×厚さ3mmの円盤に成形し、PMC(Post mold curing)工程をオーブンで175℃で4時間進めた後、質量及び体積を求め、体積に対する質量の比(質量/体積、g/mL)として計算した。
【0096】
(4)熱伝導度:半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を金型温度175℃、注入圧力9MPa、硬化時間120秒の条件のトランスファー成形機に注入し、熱伝導度試験片を製造した後、ASTM D5470によって京都電子工業株式会社製のQTM-500測定装置を用いて25℃で評価した。
【0097】
(5)圧縮成形時の微粉飛散設備の汚染程度:圧縮成形装置としてコンプレッションモールド設備(PMC-1040、TOWA株式会社製)を使用した。振動フィーダー内に実施例及び比較例で製造したエポキシ樹脂組成物25gを入れ、供給速度1.0g/secで一定に投入する作動を20回繰り返し、投入の完了後、振動フィーダーを分離し、振動フィーダーの壁面に付着したエポキシ樹脂組成物の重さを測定した。付着したエポキシ樹脂組成物の重さが合計150mg未満で、肉眼で振動フィーダー内管の付着状態が見えない場合は×と判定し、付着したエポキシ樹脂組成物の重さが合計150mg未満で、肉眼で振動フィーダー内管の付着状態が観察される場合は△と判定し、付着したエポキシ樹脂組成物の重さが合計150mg以上で、肉眼で振動フィーダー内管が黒く変化し、エポキシ樹脂組成物の付着が著しく発生する場合は○と判定した。
【0098】
(6)ワイヤスイープ:プリント配線基板(基板サイズは、横×縦が240mm×77.5mm、ユニットサイズは、横×縦が14mm×18mm)上に、ダイ(横×縦×厚さが10mm×10mm×0.5mm)であるチップを実装した。そして、直径0.8mmのゴールドワイヤを用いて接続させた。このとき、コンプレションモールド設備(PMC-1040、TOWA株式会社製)を用いた。モールド設備に、実施例及び比較例の半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物を同一の含量で投入し、モールディング厚さ0.7mmを有する条件で金型温度175℃、硬化時間100秒、成形圧力10tonの条件で半導体装置を成形した。X線透過装備(東芝ITコントロールシステム株式会社製、Tosmicron-S4090)で分析し、パッケージのワイヤ10個(ワイヤの長さが3mmであるもの)に対してワイヤスイープを評価した。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
前記表4のように、本発明の実施例1~9の錠剤状のエポキシ樹脂組成物は、圧縮成形による半導体素子の密封時、圧縮成形設備中の組成物の固着及び/又は飛散を防止し、設備の汚染を低下させることができた。また、圧縮成形による半導体素子の密封時、ワイヤスイープを著しく低下させることができた。また、熱伝導度が2W/mK以上になることによって、半導体素子の密封時に放熱効果が高くなり、作動時に発生する熱によるパッケージ誤作動及びクラック発生の頻度を低下させることができた。
【0103】
その一方で、前記表5及び表6のように、錠剤圧縮成形方法によっても、比較例1~比較例12を参照すると、本願の(i)、(ii)、及び(iii)のうちいずれか一つでも満足しない場合、ワイヤスイープ低下効果が低いか、熱伝導度が低いか、粉塵による設備の汚染が高くなった。
【0104】
本発明の単純な変形及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【符号の説明】
【0105】
1 半導体素子密封用エポキシ樹脂組成物、
2 振動フィーダー、
3 組成物供給容器、
4 シャッター、
5 下部成形キャビティ、
6 半導体素子、
7 上部基板、
8 下部基板、
9 ヒーター、
101 半導体素子、
102 密封材、
103 ダイパッド、
104 ダイボンディング物質、
105 電極パッドとリードフレーム、
106 ワイヤ。