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特許7564839フォトリソグラフィマスク上の要素の位置を決定するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィマスク上の要素の位置を決定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20241002BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20241002BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20241002BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20241002BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/147 B
H01J37/22 502Z
G03F1/84
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022084668
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2020007326の分割
【原出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2022109320
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】10 2019 200 696.5
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ブダッハ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル アウス
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-035962(JP,A)
【文献】特開2017-152087(JP,A)
【文献】特開2000-349021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0278666(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380210(US,A1)
【文献】特開昭60-201626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G03F 1/84-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル上の少なくとも1つの要素(130、540、940)の位置を決定するための装置(200)であって、
a.第1の基準オブジェクト(240)を備える少なくとも1つの走査型粒子顕微鏡(210)であって、前記走査型粒子顕微鏡(210)の少なくとも1つの粒子ビーム(225)により前記サンプル上の少なくとも1つの要素(130、540、940)を少なくとも部分的に走査することによって、前記第1の基準オブジェクト(240)に対する前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)の相対位置を決定するために前記走査型粒子顕微鏡(210)が使用されることが可能になるように、前記第1の基準オブジェクト(240)が前記走査型粒子顕微鏡(210)の出口に取り付けられる、走査型粒子顕微鏡(210)と、
b.前記第1の基準オブジェクト(240)と第2の基準オブジェクト(250)との間の距離を決定するように具体化された少なくとも1つの距離測定デバイス(270)であって、前記第2の基準オブジェクト(250)は、前記サンプル、前記サンプルのためのサンプルホルダ(230)、前記サンプルに取り付けられ、前記距離測定デバイス(270)の光ビーム(276)を反射するために用意された反射装置(255)、又は前記サンプルホルダに取り付けられ、前記距離測定デバイス(270)の光ビーム(276)を反射するために用意された反射装置、という群からの少なくとも1つの要素を含む、距離測定デバイス(270)と
を備える、装置(200)。
【請求項2】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、少なくとも1つの粒子ビーム(225)によって前記第1の基準オブジェクト(240)が少なくとも部分的に結像されることが可能になるように、前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)に対する前記走査型粒子顕微鏡(210)の出力に取り付けられる、請求項1に記載の装置(200)。
【請求項3】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、座標系を張る少なくとも3つのマーク(850、950)を備える、請求項1または2に記載の装置(200)。
【請求項4】
前記少なくとも3つのマーク(850、950)が、横方向の寸法が、1nm~5000nmに及び、ならびに/または、前記少なくとも3つのマーク(850、950)が、高さが、1nm~1000nmに及ぶ、請求項3に記載の装置(200)。
【請求項5】
前記少なくとも3つのマーク(850、950)が、前記第1の基準オブジェクト(240)の材料組成とは異なる材料組成を有する、請求項3または4に記載の装置(200)。
【請求項6】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、前記走査型粒子顕微鏡(200)の前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)の被写界深度内に配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項7】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、第1の数のユニットセル(880、980)を備え、各ユニットセル(880、980)が、少なくとも3つのマーク(850、950)を備え、第2の数の粒子ビーム(225)が、前記第1の数のユニットセル(880、980)を通過し、1≦第2の数≦第1の数が、前記第2の数に当てはまり、前記第1の数が、10よりも大きい領域を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項8】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、座標系を張る少なくとも3つのマーク(850)が配置された薄膜(810)を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項9】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、前記サンプルを検知するために、前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)が通過する少なくとも1つの開口部(420、430、920)を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項10】
前記走査型粒子顕微鏡(210)の走査ユニット(282)が、共通走査プロセスにおいて、前記第1の基準オブジェクト(240)の少なくとも一部にわたって、および前記サンプルの前記要素(130、540、940)にわたって、前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)を走査するように具体化される、請求項9に記載の装置(200)。
【請求項11】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、前記サンプルの表面電荷(120、125)を補償するために電気伝導性である、請求項1~10のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項12】
前記走査型粒子顕微鏡(210)が、前記走査型粒子顕微鏡(210)の前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)によって記録された前記第1の基準オブジェクト(240)の像の歪曲を決定するように具体化される、および/または、モデルに基づいて、前記走査型粒子顕微鏡(210)の前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)によって記録された前記第1の基準オブジェクト(240)の像の歪曲から、前記サンプルの静電荷を決定するように具体化される評価ユニット(286)を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの距離測定デバイス(270)が、少なくとも1つの干渉計を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項14】
前記第1の基準オブジェクト(240)が、前記距離測定デバイス(270)の光ビーム(273)を反射するように具体化される、請求項1~13のいずれか1項に記載の装置(200)。
【請求項15】
サンプル上の少なくとも1つの要素(130、540、940)の位置を決定するための方法(1100)であって、
a.走査型粒子顕微鏡(210)の少なくとも1つの粒子ビーム(225)によって、前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)、および第1の基準オブジェクト(240)を少なくとも部分的に走査すること(1120)であって、前記第1の基準オブジェクト(240)が前記走査型粒子顕微鏡(210)の出口に取り付けられる、少なくとも部分的に走査すること(1120)と、
b.前記第1の基準オブジェクト(240)に対する前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)の相対位置を走査データから決定すること(1130)と、
c.距離測定デバイス(270)を用いて前記第1の基準オブジェクト(240)と第2の基準オブジェクト(250)との間の距離を決定すること(1140)であって、前記第2の基準オブジェクト(250)は、前記サンプル、前記サンプルのためのサンプルホルダ(230)、前記サンプルに取り付けられ、前記距離測定デバイス(270)の光ビーム(276)を反射するために用意された反射装置(255)、又は前記サンプルホルダに取り付けられ、前記距離測定デバイス(270)の光ビーム(276)を反射するために用意された反射装置、という群からの少なくとも1つの要素を含む、決定すること(1140)と
というステップを含む、方法(1100)。
【請求項16】
前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)、および前記第1の基準オブジェクト(240)の少なくとも一部の前記少なくとも部分的な走査(1120)が、共通走査プロセスにおいて実行される、請求項15に記載の方法(1100)。
【請求項17】
前記第1の基準オブジェクト(240)と第2の基準オブジェクト(250)の間の前記距離、およびステップb.において決定された前記相対位置から、前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)の前記位置を決定すること、というステップをさらに含む、請求項15または16に記載の方法(1100)。
【請求項18】
ステップb.において前記相対位置を決定することが、前記サンプル上の前記少なくとも1つの要素(130、540、940)の前記少なくとも部分的な走査中に、前記サンプルに対する前記少なくとも1つの粒子ビーム(225)の位置の変化を決定することを含む、請求項1517のいずれか1項に記載の方法(1100)。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の装置(200)のコンピュータシステム(280)に、請求項1518のいずれか1項に記載の方法ステップを行うように促す命令を収めるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許商標庁に2019年1月21日に出願された、独国特許出願DE102019200696.5の優先権を主張し、全体として参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フォトリソグラフィマスク(photolithograhic mask)上の要素の位置を決定するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノテクノロジーの進歩により、構造要素がますます小さくなった構成要素を生産することが可能になる。ナノ構造を処理し、見せるために、構造要素の像を測定データから生成できるように、これらの構造を測定できるツールが必要になる。例として、これらの像は、設計によって設けられたサイトに構造要素があるかどうか、および/または前記構造要素が所定の寸法を有しているかどうかをチェックするために使用されることが可能である。さらに、ウエハを処理するとき、2つ以上のフォトマスクが可能な限りうまく重ね合わされていることは、像データに基づいて確かめることができる。
【0004】
現在、光学測定プロセスは、ナノテクノロジーの分野からの構成要素を測定するために使用されることが多い。しかし、光学測定プロセスの分解能は、構成要素を分析するために使用される放射線の波長によって制限される。現在、フッ化アルゴン(ArF)レーザは、およそ193nmの波長で放射し、最短波長の商用光源を形成している。
【0005】
いくつかの分野において、ArFレーザを光源として使用する顕微鏡の分解能は不十分である。例として、フォトリソグラフィマスク上のパターン要素を測定するには、1桁のナノメートル範囲で、またはさらには、ナノメートル未満の範囲での精度が必要である。
【0006】
走査型粒子顕微鏡(scanning particle microscope)は、この領域の空間分解能をもたらすことができる測定ツールである。走査型粒子顕微鏡において、粒子ビームは、サンプルと相互作用する。走査型粒子顕微鏡は、下記においてSBM(走査型粒子ビーム顕微鏡:Scanning particle Beam Microscope)略されている。例として、電子および/またはイオンが粒子として使用される。しかし、原子ビームまたは分子ビームなどの他の粒子ビームの使用も可能である。電子ビームまたはイオンビームを使用して、広いサンプル領域が、調節可能な分解能で走査されるか、検知されることが可能である。したがって、走査型粒子顕微鏡は、ナノテクノロジーにとって強力な分析ツールである。
【0007】
しかし、粒子ビームの位置をその休止位置(rest position)に一定に保つのは、走査型粒子顕微鏡には難しい。この点において、2つの主な誤差原因がある。第1に、走査型粒子顕微鏡のビーム位置の変化は、走査型粒子顕微鏡のカラム(column:柱部分)内からの原因によりもたらされる可能性がある。これに対する例は、例えば焦点調節および/またはスティグマティゼーション(stigmatization)を変更することによる、例えば調節の変更といった、走査型粒子顕微鏡の設定の変更を含む。SBMのカラムが頻繁に汚れるのを避けることができないと、SBMのカラムの構成部品に静電気が帯電し、粒子ビームを偏向させる。さらに、走査型粒子顕微鏡のカラム内の構成部品の熱ドリフトが、前述の原因に追加される可能性がある。
【0008】
出願人の特許である米国特許第9336983(B2)号は、原因がSBMのカラム内で主に見つかる、粒子ビームの休止位置の変動を確かめるため、および主に補償するためのオプションを説明している。
【0009】
第2に、走査型粒子顕微鏡のビーム位置は、由来がSBMカラムの外側にある原因によって影響を受ける可能性がある。粒子ビームの空間分解能の低下の重大な原因は、サンプルの静電荷にある。その上、外部の電界および磁界、ならびに擾乱放射の発生が、サンプル上のSPMの粒子ビームの入射点に影響を与える。検査予定のサンプルの粒子ビームの入射点に対する熱ドリフトは、SBMカラムの外側からの不調原因に同様に含まれる。
【0010】
小構造を測定することに加えて、走査型粒子顕微鏡は、極微構造の局所的な処理または修復に使用されることも多い。しかし、上記で概説された原因は、処理予定のサイトの粒子ビームによって結像を歪ませ、修復プロセスの品質を悪化させることが多い。
【0011】
これらの効果を最小化するために、処理予定のサンプル上の処理サイトの近くに基準構造または基準マークが取り付けられることが多く、規則的な間隔で検知される。基準位置に対する基準マークの位置の測定された偏位は、粒子ビームのビーム位置を補正するためにサンプルの処理手順の中で使用される。これは、「ドリフト補正」と呼ばれる。このために使用される基準マークは、当技術分野において「DCマーク」と呼ばれる。
【0012】
以下に挙げられた文献、米国特許第9721754(B2)号、米国特許第7018683号、EP1662538A2、特開2003-007247、米国特許出願公開第2007/0023689号、米国特許出願公開第2007/0073580号、米国特許第6740456(B2)号、米国特許出願公開第2010/0092876号、および米国特許第5504339号は、基準マークの話題を考察している。
【0013】
上記に指定された文献は、サンプル上の粒子ビームの入射点の相対変位を局所的に補償するための方法を説明している。しかし、例えばフォトリソグラフィマスクといった、サンプル上の要素の絶対位置を知っている必要があることが多い。
【0014】
したがって、本発明は、サンプル上の要素の位置を決定するための装置および方法を指定するという目的に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第9336983(B2)号
【文献】米国特許第9721754(B2)号
【文献】米国特許第7018683号
【文献】EP1662538A2
【文献】特開2003-007247
【文献】米国特許出願公開第2007/0023689号
【文献】米国特許出願公開第2007/0073580号
【文献】米国特許第6740456(B2)号
【文献】米国特許出願公開第2010/0092876号
【文献】米国特許第5504339号
【発明の概要】
【0016】
本発明の例示的実施形態によれば、この問題は、請求項1に記載の装置によって、および請求項16に記載の方法によって解決される。1つの実施形態において、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するための装置は、(a)第1の基準オブジェクトを備える少なくとも1つの走査型粒子顕微鏡であって、第1の基準オブジェクトが、第1の基準オブジェクトに対するフォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の相対位置を決定するために走査型粒子顕微鏡が使用されることが可能になるように走査型粒子顕微鏡上に配置される、走査型粒子顕微鏡と、(b)第1の基準オブジェクトと第2の基準オブジェクトとの間の距離を決定するように具体化された少なくとも1つの距離測定デバイスであって、第2の基準オブジェクトとフォトリソグラフィマスクとの間に関係がある、距離測定デバイスと、を備える。
【0017】
第1の基準オブジェクトに対するフォトリソグラフィマスクの要素の相対位置を決定することによって、および第1と第2の基準オブジェクトの間の測定されている距離によって、フォトリソグラフィマスクの基準点に対する、またはマスク内部の座標系に対する、フォトリソグラフィマスクの要素の絶対位置を際立った精度で確かめることができる。ここで、第1の基準オブジェクトおよび第2の基準オブジェクトは、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素の位置を決定するとき、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素を検知するために使用される粒子ビームの休止位置を変化させるカラム内部とカラム外部の両方の誤差原因を実質的に取り除くことを容易にする。
【0018】
第1と第2の基準オブジェクトの間の距離または距離の変化を測定すると、マスクの座標系から、フォトリソグラフィマスクがマウントされた装置のサンプルステージにリンクされた座標系に要素の位置を正確にコンバートすることができる。その結果、装置の粒子ビームの休止位置の変化は、一時的な変化がフォトリソグラフィマスクの変化より小さい外部安定基準に対するものであることが可能である。その結果、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素の位置を決定するときの精度が向上されることが可能になる。
【0019】
最終的に、本発明による装置を使用すると、フォトリソグラフィマスク上に、またはより一般には、サンプル上に、基準マークが複雑に堆積すること、および特に、処理プロセスの終了後、マスクまたはサンプルから、堆積した基準マークを除去することがしばしば困難になること、を防ぐ。
【0020】
第1の基準オブジェクトは、少なくとも1つの粒子ビームによって第1の基準オブジェクトが少なくとも部分的に結像される(imaged)ことが可能になるように、少なくとも1つの粒子ビームに対する走査型粒子顕微鏡の出力に取り付けられることが可能である。
【0021】
走査型粒子顕微鏡の視野すなわちFOV(field of view)は、第1の基準オブジェクトの一部にわたって粒子ビームを走査することによって生成される。視野は、SBMのモニタ上に示されることが可能である。例えば、走査型粒子顕微鏡の設定の変更といったSBMのカラム内部の擾乱があると、粒子ビームの走査領域が変位するので、走査型粒子顕微鏡の視野が変位する。
【0022】
走査型粒子顕微鏡の粒子ビームの出力にしっかりと接続された第1の基準オブジェクトの位置は、対照的に、走査領域が変位した場合に、依然として実質的に影響を受けない。走査型粒子顕微鏡の出力に第1の基準オブジェクトをしっかりと取り付けた結果、第1の基準オブジェクトを装備した走査型粒子顕微鏡は、第1の基準オブジェクトに対する視野を検出し、したがって、少なくとも1つの粒子ビームの入射点の変化を決定するために使用されることが可能なデバイスを結果的に含む。したがって、本発明による装置は、走査型粒子顕微鏡の設定を変更する前のフォトリソグラフィマスク上の粒子ビームの入射点と、例えば走査型粒子顕微鏡の設定を変更した後のフォトリソグラフィマスク上の粒子ビームの入射点との間の距離についての時間のかかる決定が繰り返されるのを防ぐ。
【0023】
ここで、および本説明の他の場所で、表現「実質的に(substantially)」は、従来の測定誤差の範囲内の量の指標を意味し、従来技術よる測定器具は、この量を決定するために使用される。
【0024】
第1の基準オブジェクトは、1つまたは2つのマークを備えることができる。
【0025】
フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの粒子ビームの入射点の変化は、第1の基準オブジェクト上にある1つまたは2つのマークを用いて、少なくとも部分的に検出されることが可能である。例えば、入射点の変化が目立って1つの方向で行われるように、変化のタイプについての追加の情報が知られている場合、1つまたは2つのマークを備える基準オブジェクトは、第1の基準オブジェクトに対するマスク上の要素の相対位置を決定するのに十分である可能性がある。
【0026】
第1の基準オブジェクトは、座標系を張る(span)少なくとも3つのマークを備えることができる。
【0027】
座標系を張る第1の基準オブジェクトの少なくとも3つのマークによって、フォトマスク上の少なくとも1つの粒子ビームの入射点の変化だけでなく量的に検出することができる。1つの基準フレームを形成する少なくとも3つのマークによって、走査型粒子顕微鏡の粒子ビームの休止位置だけでなくを確実に決定することができる。その上、少なくとも3つのマークは、例えば視野内の歪曲(distortion)といった、粒子ビームの走査領域の視野内の線形および/非線形の擾乱を確かめることを容易にする。これは、第1に、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するときの精度を向上させること、および、第2に、改善後の精度で、この要素のサイズおよび輪郭を決定することを可能にする。
【0028】
1つ、2つ、および/もしくは少なくとも3つのマークは、横方向の寸法が、1nm~5000nm、好ましくは2nm~1000nm、より好ましくは5nm~200nm、および最も好ましくは10nm~50nmに及ぶことが可能であり、ならびに/または、少なくとも3つのマークは、高さが、1nm~1000nm、好ましくは2nm~500nm、より好ましくは5nm~300nm、および最も好ましくは10nm~200nmに及ぶことが可能である。
【0029】
1つ、2つ、および/または少なくとも3つのマークは、第1の基準オブジェクトの材料組成とは異なる材料組成を有することができる。さらに、マークは、金属または金属合金を含むことができる。さらに、マークは、欠けている材料をフォトリソグラフィマスク上に堆積させるために使用される前駆体ガスから生み出されることが可能である。例として、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)または金属カルボニルは、このために使用される前駆体ガスである。
【0030】
異なる材料組成を有する第1の基準オブジェクトを第1の基準オブジェクトにマークすることによって、材料コントラストは、走査型粒子顕微鏡の粒子ビームでマークを走査するときにトポロジコントラストに加えて生じる。
【0031】
しかし、トポグラフィコントラストだけに基づくマークを使用することもできる。これは、第1の基準オブジェクトを構造化することによってマークが生成されることも可能であるということを意味する。
【0032】
第1の基準オブジェクトは、走査型粒子顕微鏡の少なくとも1つの粒子ビームの被写界深度(depth of field)内に配置されることが可能である。
【0033】
その結果、例えば走査型粒子顕微鏡の焦点調節といった、走査型粒子顕微鏡の設定を変更する必要もなく、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素と第1の基準オブジェクトのマークの両方を焦点に結像させる(image)ことができる。粒子ビームの休止位置が変化するSBMの設定の変更につながる擾乱の原因は、その結果、避けられることが可能である。
【0034】
第1の基準オブジェクトは、フォトリソグラフィマスクからの距離が、0.1nm~1000μm、好ましくは1nm~500μm、より好ましくは10nm~200μm、および最も好ましくは100nm~50μmに及ぶことが可能である。
【0035】
第1の基準オブジェクトは、第1の数のユニットセルを備えることができ、各ユニットセルは、少なくとも3つのマークを備えることができ、第2の数の粒子ビームは、第1の数のユニットセルを通過することができ、1≦第2の数≦第1の数が、第2の数に当てはまり、第1の数は、>10、好ましくは>50、より好ましくは>200、および最も好ましくは>1000、の領域を含むことができる。
【0036】
第1の基準オブジェクトは、2つ以上の粒子ビームで同時に動作する走査型粒子顕微鏡のために使用されることが可能になるように設計されることが可能である。この場合、第1の基準オブジェクトは、走査型粒子顕微鏡が粒子ビームを供給してサンプルを同時に検知できるだけの数のユニットセルを、少なくとも備えなければならない。
【0037】
第1の基準オブジェクトは、様々なユニットセルを識別するラベルを備えることができる。
【0038】
1つの粒子ビームまたは複数の粒子ビームは、異なるユニットセルを連続的に使用することができる。
【0039】
第1の基準オブジェクトは、その使用の過程において、使い古されるか、汚される可能性がある。特に、これは、第1の基準オブジェクトのマークに当てはまる可能性がある。これは、したがって、SBMによって供給された粒子ビームの分より実質的に多くのユニットセルを第1の基準オブジェクトが備える場合、有利である。その結果、第1の基準オブジェクトの耐用年数を著しく延ばすことができる。
【0040】
第1の基準オブジェクトは、座標系を張る少なくとも3つのマークが配置された薄膜(film)を備えることができる。薄膜には、開口部がなくてもよい。薄膜は、複数のユニットセルを備えることができる。
【0041】
薄膜を基に生産された第1の基準オブジェクトには3つの長所があり、第1に、薄膜には、穴のあいた構造と比較して大きな安定性があり、第2に、薄膜は、簡単に生産されることが可能であり、第3に、粒子ビームは、第1の基準オブジェクト内の開口部による影響を受けない。座標系を形成する、または基準フレームを形成する薄膜に取り付けられた少なくとも3つのマークによって、走査型粒子顕微鏡の粒子ビームの基準位置または休止位置に加えて、粒子ビームの走査領域を結像させる(imaging)ときの歪曲を確かめることがもう一度可能になり、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素の示された像における前記歪曲を補正することができる。
【0042】
薄膜は、<200nm、好ましくは<50nm、より好ましくは<20nm、および最も好ましくは<10nm、の厚さであることが可能である。薄膜は、例えば多結晶シリコン薄膜といったポリイミド薄膜または多結晶半導体材料の薄膜を備えることができる。
【0043】
第1の基準要素の薄膜の厚さを選ぶとき、フォトマスクの要素を検出するために使用される粒子は、上記において定義された装置の走査型粒子顕微鏡の検出器に達するために薄膜を同じように貫通しなければならないということに気付かれたい。さらに、薄膜によって吸収される2次電子の電流を決定すること、および2次電子の像を生成するときにこれを考慮することができる。
【0044】
第1の基準オブジェクトは、フォトリソグラフィマスクを検知するために、少なくとも1つの粒子ビームが通過する少なくとも1つの開口部を備えることができる。第1の基準オブジェクトの各ユニットセルは、フォトリソグラフィマスクを検知するために、粒子ビームが通過する開口部を有することができる。
【0045】
開口部は、任意の形であってよい。例えば、丸い開口部、または多角形の形の開口部といった、生産しやすい開口部が有利である。
【0046】
第1の基準オブジェクトは、開口部が異なるサイズのユニットセルを備えることができる。その結果、SBMの粒子ビームの走査領域の種々のサイズに第1の基準オブジェクトを合わせることができる。
【0047】
第1の基準オブジェクトは、グリッド様構造(grid-like structure)を備えることができる。グリッド様構造は、グリッド様構造の個々のセルを識別するラベルを備えることができる。グリッド様構造は、種々のサイズのセルを含むことができる。
【0048】
グリッド様構造は、走査型粒子顕微鏡のFOVすなわち視野、または測定フィールド内で、第1の基準オブジェクトの一部とサンプル表面(sample surface)の一部の両方を結像させ、その結果、一方ではサンプル表面を走査する動作モードと、他方では第1の基準オブジェクトを走査する動作モードとの間で簡単に交互にすることができる。
【0049】
第1の基準オブジェクトのグリッド様構造は、≦30μm、好ましくは≦10μm、より好ましくは≦5μm、および最も好ましくは≦2μm、の幅の開口部を含むことができる。第1の基準オブジェクトのグリッド様構造の網状組織には、≦5μm、好ましくは≦2μm、より好ましくは≦1μm、および最も好ましくは≦0.5μm、の広がりがある。第1の基準オブジェクトは、<5.0mm、好ましくは<1.0mm、より好ましくは<0.3mm、および最も好ましくは<0.1mm、の外部寸法を有することができる。
【0050】
走査型粒子顕微鏡は、第1の基準オブジェクトの少なくとも一部にわたって、および/またはフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素にわたって、走査型粒子顕微鏡の少なくとも1つの粒子ビームを走査するように具体化された走査ユニットを備えることができる。
【0051】
走査型粒子顕微鏡の走査ユニットは、共通走査プロセスで、第1の基準オブジェクトの少なくとも一部にわたって、およびフォトリソグラフィマスクの要素にわたって、少なくとも1つの粒子ビームを走査するように具体化されることが可能である。
【0052】
粒子ビームの被写界深度の範囲内に第1の基準オブジェクトを取り付けることによって、マスクの要素、および第1の基準オブジェクトの一部は、粒子ビームで検知することによって、際立った精度で同時に、すなわち1回の走査で結像されることが可能である。その結果、カラム内部とカラム外部の両方の擾乱がリアルタイムに検出され、計算によって補償されることが可能である。ここで、本出願は、例えばフォトマスクといったサンプル上のSBMの粒子ビームの入射点が、粒子ビームの走査領域内の、およびしたがって走査型粒子顕微鏡の視野内の、第1の基準オブジェクトの変位と同じように変化することを活用する。
【0053】
第1の基準オブジェクトのマークは、第1の基準オブジェクトの少なくとも部分的な走査中に、マークが、粒子ビームによって少なくとも部分的に検知されるように第1の基準オブジェクト上に配置される。
【0054】
第1の基準オブジェクトは、フォトリソグラフィマスクの表面電荷を補償するために電気伝導性であることが可能である。第1の基準オブジェクトの片側は、走査型粒子顕微鏡に、電気絶縁するように取り付けられることが可能である。第1の基準オブジェクトは、第1の基準オブジェクトから空間的に隔てられるように配置された増幅器、より詳細にはトランスインピーダンス増幅器を備えることができる。増幅器は、第1の基準オブジェクトに電気伝導的に接続されるように具体化されることが可能である。
【0055】
追加の像チャネルは、サンプル内またはサンプル上の粒子ビームによって生成された粒子の検出に加えて、追加として測定されている第1の基準オブジェクトにわたって粒子ビームを走査するときに第1の基準オブジェクトによって生成された電流によって検出される。本実施形態は、グリッド様構造の形で第1の基準オブジェクトが具体化される場合に特に有利である。グリッド様構造において粒子ビームによって生成された電流を測定することによって、粒子ビームが現在、第1の基準オブジェクトの一部にわたって誘導されているか、サンプルまたはフォトリソグラフィマスクの一部にわたって誘導されているかを区別するために重要な信号が供給される。
【0056】
グリッド様構造はラベルを有することができ、このラベルを用いて、走査中に測定されたデータは、第1の基準オブジェクトの一部に割り当てられることが可能である。
【0057】
走査型粒子顕微鏡の分解能は、典型的には、広い範囲にわたって変化させることができる。これには、FOV内で結像可能な第1の基準オブジェクトの一部の変化が伴う。したがって、これは、グリッド様構造の周期性にかかわらず個々の周期が明確に識別されるように、グリッド様構造の形で具体化された第1の基準オブジェクトが、グリッド様構造によって形成されたスケールに、座標系を提供するラベルを含む場合に、有利である。
【0058】
フォトリソグラフィマスクには、伝送フォトマスクまたは反射フォトマスクを含めることができる。フォトリソグラフィマスクは、バイナリマスク、位相シフトマスク、および、多重露光(multiple exposures)のための2つ以上のマスクを含むことができる。さらに、フォトリソグラフィマスクという用語は、ナノインプリントリソグラフィのためのテンプレートを含むことができる。さらに、フォトリソグラフィマスクという用語は、例えば、ウエハ、IC(集積回路)、MEMS(微小電気機械システム)、およびPIC(フォトニック集積回路)といった、フォトリソグラフィプロセスのさらなる構成部品を含むこともできる。
【0059】
フォトリソグラフィマスクの要素は、構造要素またはパターン要素、マークおよび欠損のグループの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0060】
走査型粒子顕微鏡は、第1の基準オブジェクトの変化から、粒子ビーム顕微鏡の少なくとも1つの粒子ビームによって記録された像の歪曲を決定するように具体化された評価ユニットを備えることができ、および/または、評価ユニットは、モデルに基づいて、第1の基準オブジェクトの変化から、サンプルまたはフォトリソグラフィマスクの静電荷を決定するようにさらに具体化されることが可能である。
【0061】
座標系を張る第1の基準オブジェクトのマークによって、マークの、互いに対する相対変位を評価するために、粒子ビームを用いて生成された像の視野の歪曲を決定し、補償することができる。この補正プロセスにおいて、サンプルまたはフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素と、第1の基準オブジェクトの少なくとも一部を同時に走査することは、やはり価値がある。
【0062】
走査型粒子顕微鏡は、走査型粒子顕微鏡の少なくとも1つの設定を変更するように具体化された設定ユニットを備えることができる。走査型粒子顕微鏡の設定は、倍率の設定、焦点の設定、スティグメータ(stigmator)の設定、加速電圧の設定、ビーム変位の設定、走査型粒子顕微鏡の粒子源の位置の調節、および停止の変更、というグループからの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0063】
走査型粒子顕微鏡は、設定の変更前後両方の、第1の基準オブジェクトに対するサンプルまたはフォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの粒子ビームの入射点の位置を、少なくとも1つの粒子ビームの走査中に測定されたデータに基づいて捉えるように具体化された評価ユニットを備えることができる。
【0064】
評価ユニットは、走査型粒子顕微鏡の一部であることが可能であり、または、別個のユニットとして提供されることが可能である。設定を変更する前、および設定の変更を実行した後の走査型粒子顕微鏡の視野内の第1の基準オブジェクトの位置を測定することによって、第1の基準オブジェクトに対する走査型粒子顕微鏡のビーム軸の変位を決定することができる。ここで、第1の基準オブジェクトは、設定が変更されたときに、サンプル表面に対して相変わらず変化していないということが仮定される。代わりに、設定の変更により、第1の基準オブジェクトとサンプル表面の両方に対して、走査型粒子顕微鏡の視野の相対変位が生じる。
【0065】
少なくとも1つの粒子ビームは、電子ビーム、イオンビーム、原子ビーム、分子ビーム、および光子ビーム、というグループの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0066】
少なくとも1つの距離測定ユニットは、少なくとも1つの干渉計を備えることができる。干渉計は、レーザ干渉計および/または微分干渉計を含むことができる。干渉計は、マッハツェンダー干渉計(Mach-Zehnder interferometer)、マイケルソン干渉計(Michaelson interferometer)、および/または白色光干渉計(white light interferometer)を含むことができる。
【0067】
少なくとも1つの距離測定ユニットは、位置センサを備えることができる。位置センサは、ポテンショメータトランスデューサ(potentiometer transducer)、歪みゲージ(strain gauge)、誘導センサ(inductive sensor)、容量センサ(capacitive sensor)、および渦電流センサ(eddy current sensor)、というグループの少なくとも1つの要素を備えることができる。
【0068】
第1の基準オブジェクトは、距離測定デバイスの光ビームを反射するように具体化されることが可能である。第1の基準オブジェクトは、少なくとも1つの干渉計の光ビームを反射するように具体化されることが可能である。少なくとも1つの反射面は、走査型粒子顕微鏡の粒子ビームのビーム軸に対して実質的に平行に配列されることが可能である。第1の基準オブジェクトは、粒子ビームのビーム軸に対して実質的に平行に配置され、互いに対して実質的に90°の角度を含む少なくとも2つの反射面を備えることができる。第1の基準オブジェクトは、ビーム軸に対して実質的に平行に配置され、互いに対して実質的に180°の角度を含む少なくとも2つの反射面を備えることができる。
【0069】
第2の基準オブジェクトは、フォトリソグラフィマスク、フォトリソグラフィマスクのためのサンプルホルダ、フォトリソグラフィマスクに取り付けられ、距離測定デバイスの光ビームのために用意された反射装置、および、サンプルホルダに取り付けられ、距離測定デバイスの光ビームのために用意された反射装置、というグループからの少なくとも1つの要素を備えることができる。
【0070】
サンプルホルダの一部として第2の基準オブジェクトを含むことが好ましい。本実施形態は、個々のサンプルに、第2の基準オブジェクト、または反射装置を取り付ける必要はない。
【0071】
第2の基準オブジェクトは、距離測定デバイスの少なくとも1つの光ビームのための反射装置を備えることができる。第1の基準オブジェクトの反射ユニット、および第2の基準オブジェクトの反射装置は、互いに対して実質的に平行に整列されることが可能である。
【0072】
さらに、第2の基準オブジェクトは、走査型粒子顕微鏡の少なくとも1つの粒子ビームに対して反射面が実質的に垂直に整列された第2の反射装置を備えることができる。第2の基準オブジェクトの第2の反射装置は、第2の基準オブジェクトと第1の基準オブジェクトとの間の距離を、ビーム方向(すなわちz方向)に決定するために使用されることが可能である。その結果、第1の基準オブジェクトが取り付けられることが可能な走査型粒子顕微鏡のカラムの出力と、走査型粒子顕微鏡の粒子ビームに面するフォトリソグラフィマスクの表面との間の距離が決定されることが可能である。例として、第1と第2の基準オブジェクトの間の、ビーム方向の距離は、干渉計を用いて確かめることができる。
【0073】
1つの実施形態において、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するための方法は、(a)走査型粒子顕微鏡の少なくとも1つの粒子ビームによって、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素、および第1の基準オブジェクトを少なくとも部分的に走査すること、(b)第1の基準オブジェクトに対するフォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の相対位置を走査データから決定すること、ならびに、(c)距離測定装置を用いて第1の基準オブジェクトと第2の基準オブジェクトとの間の距離を決定することであって、第2の基準オブジェクトとフォトリソグラフィマスクとの間に関係がある、決定すること、というステップを含む。
【0074】
フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素、および第1の基準オブジェクトの少なくとも一部の少なくとも部分的な走査は、共通走査プロセスにおいて実行されることが可能である。
【0075】
フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するための方法は、第1と第2の基準オブジェクトの間の距離、およびステップb.において決定された相対位置から、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定すること、というステップをさらに含むことができる。
【0076】
第1と第2の基準オブジェクトの間の距離を決定することは、少なくとも1つの要素、および第1の基準オブジェクトの少なくとも一部を走査する間の、第1と第2の基準オブジェクトの間の距離の変化を決定することを含むことができる。電子ビームの走査中に干渉計が読み取られることによって、位置の検出された変化を測定結果に含めることができる。
【0077】
フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素の位置を決定することは、マスク内部の座標系に対する少なくとも1つの要素の位置を決定することと、ステップb.において決定された相対位置、およびステップc.において決定された第1と第2の基準オブジェクトの間の距離の変化、を使用して決定された位置を補正することと、を含むことができる。
【0078】
ステップb.において相対位置を決定することは、フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の少なくとも部分的な走査中に、フォトリソグラフィマスクに対する少なくとも1つの粒子ビームの位置の変化を決定することをさらに含むことができる。
【0079】
第1の基準オブジェクトは、走査型粒子顕微鏡のカラムに対する基準点または基準位置を形成するだけではなく、粒子ビームのビーム方向に垂直の第1の基準オブジェクトの平面における座標系も定義する。この座標系またはこの座標系によって生成された基準フレームは、フォトリソグラフィマスクの要素、および第1の基準オブジェクトの少なくとも一部の共通走査中の、走査領域の線形および非線形の擾乱の発生の検出を容易にする。検出された擾乱は、走査領域の像を生成するときに補正されることが可能である。その結果、本発明による装置は、以前に達成されたことのない精度でフォトリソグラフィマスクの要素の結像を容易にする。
【0080】
フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するための方法は、走査中に第1の基準オブジェクトによって生成された電流を測定すること、というステップをさらに含むことができる。
【0081】
フォトリソグラフィマスク上の少なくとも1つの要素の位置を決定するための方法は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの要素、および第1の基準オブジェクトの少なくとも一部にわたって粒子ビームを走査するときの走査領域の歪曲を決定するために、粒子ビームの走査領域に対する第1の基準オブジェクトの様々な部分の相対変位を決定すること、というステップを含むことができる。
【0082】
第1の基準オブジェクトの様々な部分は、グリッド様構造の1つもしくは複数のグリッドセルの異なる側、および/または直線に沿って配置されていない第1の基準オブジェクトの少なくとも3つのマークを備えることができる。
【0083】
さらなる態様において、コンピュータプログラムは、上記において指定された態様のうちのいずれか1つによる装置のコンピュータシステムに、上述の態様の方法ステップを行うように促す命令を含むことができる。
【0084】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら、本発明の現在の好ましい例示的実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】サンプル(フォトリソグラフィマスク)の要素(構造要素)の位置およびサイズを決定するときの、帯電したサンプルの効果を概略的に説明する図である。
図2】サンプル上の要素の位置を決定するために使用されることが可能な装置のいくつかの重要な構成要素を通じた概略セクションを示す図である。
図3】サンプルの領域から図2の装置の拡大されたセクションを再現する図である。
図4】グリッドの形で具体化された第1の基準オブジェクトの第1の例示的実施形態の概略平面図である。
図5】サンプル表面の欠損の形の要素がある図4の第1の基準オブジェクトのグリッドの拡大されたセクションを示す図である。
図6】サンプル上の要素の周囲のグリッド開口部のサイトを含み、走査型粒子顕微鏡の設定の変更前に実行された走査領域を伴う図5を再現する図である。
図7】走査型粒子顕微鏡の設定の変更の実行後の図6の走査領域の変位を示す図である。
図8】マークのある薄膜として具体化された第1の基準オブジェクトの第2の例示的実施形態を示す図である。
図9】第1の基準オブジェクトの第3の例示的実施形態のユニットセルを示す図である。
図10】第1の基準オブジェクトの第1の例示的実施形態の変更形態を再現する図である。
図11】フォトリソグラフィマスク上の要素の位置を決定するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明による装置、および本発明による方法の現在の好ましい実施形態が、下記においてより詳細に説明されている。本発明による装置は、修正された走査型電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)に基づいて説明される。しかし、本発明による装置、およびフォトリソグラフィマスク上の要素の位置を決定するための方法は、下記において論じられる例に限定されない。むしろ、これらは、例えば、集束イオンビーム(FIB)顕微鏡といった、任意のSBMに基づいて実行されることも可能である。さらに、本発明による装置の使用は、フォトリソグラフィマスクに限定されず、下記において例示的に説明されているにすぎない。当然、本発明による装置は、例えば、ナノインプリントリソグラフィのためのテンプレート上、または、生産プロセス中のウエハ上の位置を決定するために、同様に使用されることが可能である。
【0087】
図1のダイアグラム100は、フォトリソグラフィマスクの構造要素のサイズおよび/または位置の決定に影響を与える外部擾乱、すなわち走査型電子顕微鏡のカラムの外側にある擾乱、具体的にはサンプルの静電荷の例を概略的に示している。図1のダイアグラム100は、帯電したサンプル110、および走査型電子顕微鏡160の出力165を通じた概略セクションを示している。既に言及されたように、サンプル110は、フォトマスクの電気絶縁基板であることが可能であり、または、ナノインプリントリソグラフィのためのテンプレートであることが可能である。サンプル110は、処理予定のウエハであることが可能であり、または、前記サンプルは、ウエハ上のフォトレジストによって実現されることが可能である。サンプル110には、サンプル110の表面115上に電位分布を生じる表面電荷の分布がある。像の左部分において、サンプル表面115は、正電荷120を有する。これは、図1に十字形120によって記号化されている。像の右部分において、サンプル表面115は、負電荷125が過剰にあることを示しており、これは、断続線125によって説明されている。参照符号120および125は、サンプル表面115の表面電荷の分布と、帯電した表面115によって生じた電位分布の両方を表すために使用されている。
【0088】
サンプル表面115の電荷120、125は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)160の電子ビーム175といった、帯電した粒子ビームによって生じることが可能である。しかし、サンプル表面115の電位分布120、125は、例えばイオンビームでサンプル110を処理するときの処理プロセスによって生み出すことも可能であり、ウエハに対するプラズマプロセス、および/またはウエハ上に配列されたフォトレジストに対する処理プロセスの場合に生じることが可能である。さらに、サンプル110の電荷120、125は、例えばサンプル110のハンドリングによって生じることが可能である。
【0089】
図1のダイアグラム100において表されたサンプル110の一部において、表面電荷120、125の分布は、一様な密度である。しかし、これは、ここで論じられる装置を使用するための前提条件を表していない。むしろ、本出願において示された方法および装置は、横方向の短い距離内で変化する電荷密度の変化に対処することもできる。
【0090】
図1の例において、偏向システム170は、電子ビーム175を偏向させ、これをサンプル表面115上で走査して、サンプル110上の構造要素130の寸法および/または位置を決定する。例として、構造要素130は、吸収体構造の要素、またはフォトリソグラフィマスクのパターン要素を含むことができる。構造要素130は、位相シフトマスクの要素であることも可能である。同様に、構造要素130は、フォトマスクがフォトレジストに投影した要素であることが可能である。別の例において、構造要素130は、ウエハのチップの要素である。
【0091】
ダイアグラム100の像の左部分に示されたように、構造要素130を走査する電子ビーム175は、サンプル表面115の近くにあるサンプル表面115の正電荷120の誘引効果によって、粒子ビーム175の光軸172の方向に偏向され、軌道174に沿って進む。電位分布120がなければ、電子ビーム175は、経路176に沿って進むはずである。固体構造135は、サンプル表面115の静電荷がなければ、電子ビーム175が決定するはずの構造要素130のサイズを示す。ダッシュ構造140は、サンプル110の正電荷の存在下で、構造要素130から電子ビーム175が生成する構造要素130のサイズを明示している。サンプル110の正電荷によって、電子ビーム175は、実際のところの構造要素130の実際の寸法135より大きい構造要素130のSEM像を生成する。構造要素130の縁部が、サンプル110上の構造要素130の配置を決定するために使用される場合、2本の垂直点線132および134は、静電荷によって生じたサンプル110上の構造要素130の配置の変位を明示している。
【0092】
類推によって、図1の像の右部分は、電子ビーム175の電子の経路移動(path movement)184上の負電荷125が帯電したサンプル表面115の反発効果を示している。電荷分布125によるサンプル表面115の近くでの電子ビーム175のさらなる偏向が原因で、走査データから生成されたSEM像内の構造要素130の実際の寸法145は、小さく見える。これは、図1においてダッシュ構造150によって説明されている。
【0093】
走査予定領域の周囲のサンプル表面115の電荷の状態、すなわち局所的な電位分布120、125は成功裏に決定された場合、SEM160の電子ビーム175の走査データまたは測定データの不正確な判読は、補正されることが可能である。その結果、構造要素130の位置および/またはサイズは、例えば再現できるように測定されることが可能であり、さらに2つのフォトマスクを可能な限りうまく重ね合わすのに最も重要である。その上、電子ビーム175および1つまたは複数のプロセスガスを用いた構造要素130の処理が必要である可能性がある場合、SEM160のパラメータを適切に設定することによって、意図した領域において構造要素130が実際に処理されるのを保証することができる。
【0094】
図1は、サンプル110の構造要素130の位置および/またはサイズを決定するときの外部擾乱源の効果を例示的に示している。下記で説明されるように、以下で説明される装置は、当然、サンプル110の構造要素130の配置および/またはサイズの決定に対するさらなる外部および/または内部の擾乱の影響を補正するために使用されることも可能である。
【0095】
図2は、サンプル110上の、例えば構造要素130といった要素の位置を決定するための装置200のいくつかの構成要素を通じたセクションを概略的に示している。修正後の走査型粒子システム210は、真空チャンバ202内に配置されている。図2において、修正後の走査型粒子顕微鏡210は、走査型電子顕微鏡210の形で具体化されている。走査型粒子顕微鏡210は、粒子発射器205およびカラム215から成り、ビーム光学ユニット220は、例えば、SBM210の電子光学ユニット220の形で配置されている。粒子発射器205は、粒子ビーム225を発生させ、電子光学ユニットまたはビーム光学ユニット220は、粒子ビーム225を集束させ、カラム215の出力におけるサンプル110に粒子ビーム225を向ける。
【0096】
サンプル110は、サンプルステージ230またはサンプルホルダ230上に配置されている。サンプルステージ230は、当技術分野において「ステージ」としても知られている。図2に矢印で示されたように、サンプルステージ230は、例えば図2に示されていないマイクロマニピュレータを用いて、SBM210のカラム215に対して3つの空間方向に動かされることが可能である。さらに、サンプルステージ230は、走査型粒子顕微鏡210のカラム215に対するサンプルステージ230の、3つの空間方向への移動を検出するように設計されたセンサを備えることができる。その上、サンプルステージ230は、(図2において示されていない)1つまたは複数の軸の周りを回転できるように具体化されることが可能である。
【0097】
並進移動のように、サンプルステージ230の回転移動は、センサによってモニタされることが可能である。センサは、図2に再現されていないが、例えば干渉計の形で具体化されることが可能である。
【0098】
粒子ビーム225は、測定点235においてサンプル110にぶつかる。サンプル110は、任意の微細構造の構成部品または構成要素であることが可能である。したがって、サンプル110は、例えば、透過性または反射性のフォトマスクおよび/またはナノインプリント技術のためのテンプレートを備えることができる。透過性および反射性のフォトマスクは、例えば、バイナリマスク、位相シフトマスク、MoSi(ケイ化モリブデン)マスク、または2重もしくは多重露光のためのマスクといった、フォトマスクの全てのタイプを含むことができる。
【0099】
上記で既に説明されたように、図2において説明された例示的実施形態における装置200は、走査型電子顕微鏡(SEM)の形で走査型粒子顕微鏡210を備える。粒子ビーム225のような電子ビーム225は、実質的にサンプル110にダメージを与える可能性がないという点で有利である。しかし、装置200において、イオンビーム、原子ビーム、または分子ビーム(図2に図示せず)を使用することもできる。
【0100】
カラム215に配置されたビーム光学ユニット220を電子ビーム225が離れるカラム215の低い方の端部において、第1の基準オブジェクト240が、カラム215に結び付けられている。第1の基準オブジェクト240の周囲の領域は、図3において拡大して示されている。第1の基準オブジェクト240の詳細は、図3図10に関する議論に基づいて説明されている。
【0101】
さらに、図2の装置200は、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)(図2に図示せず)の形で、1つまたは複数の走査型プローブ顕微鏡を備えることができ、それらはサンプル110を分析および/または処理するために使用されることが可能である。
【0102】
検出器245は、走査型粒子顕微鏡210のカラム215に配置され、測定点235において電子ビーム225によって生成された2次電子、および/またはサンプル110から後方散乱した電子を、電気測定信号にコンバートし、装置200のコンピュータシステム280の評価ユニット286に電気測定信号を転送する。検出器245は、エネルギーおよび/または立体角(図2に再現されていない)の観点から電子を区別するための、フィルタまたはフィルタシステムを収めることができる。
【0103】
装置200の走査型粒子顕微鏡210は、第1の測定点235において入射電子ビーム225によって生成された光子を検出するための検出器255をさらに備えることができる。検出器255は、例えば、生成された光子のエネルギースペクトルをスペクトルで分解することができ、このことにより、表面115、または、サンプル110の表面近くの層の構造について、結論を得ることができる。
【0104】
その上、走査型粒子顕微鏡210は、サンプル110が電気絶縁しているか、電気絶縁表面層を有する場合の第1の測定点235の領域内に低エネルギーイオンを供給するイオン源265を備えることができる。
【0105】
装置200は、図2に示された例において、干渉計270として、より具体的には微分干渉計として具体化された距離測定デバイス270をさらに備える。干渉計270は、光源としてレーザを備える。干渉計270は、第1の基準要素240の反射ユニット260に第1の光ビーム273を向ける。第1の基準要素240の反射ユニット260は、入射光ビーム273を反射させて、干渉計270に戻す。干渉計270は、第2の基準オブジェクト250に第2の光ビーム276を向ける。図2に示された例において、第2の基準オブジェクト250は、例えばフォトマスクといったサンプル110の側面である。第2の基準オブジェクト250は、本実施形態において、第2の基準オブジェクト250の反射率を高めるための反射装置255を備えることができる。図2に示された例において、第2の基準オブジェクトの反射装置255は、光ビーム276を反射するためのサンプル110の側面に反射層を適用することによって具体化されることが可能である。干渉計270は、相対位置、または位置および方向、第1の基準オブジェクト240と第2の基準オブジェクト250との間の変化を測定する。
【0106】
さらに、第2の基準オブジェクト250は、図2に再現されていないが、電子ビーム225の方向に整列された、第2の反射装置を備えることができる。第1の基準オブジェクト240と第2の基準オブジェクト250との間の距離は、例えば、同様に図2に示されていない干渉計を用いて、電子ビーム225のビーム方向に測定されることが可能である。その結果、サンプルの上側115、またはフォトリソグラフィマスク110の上側115からの第1の基準オブジェクト240の距離を確かめることができる。
【0107】
装置200は、コンピュータシステム280を収めている。コンピュータシステム280は、サンプル110にわたって、および少なくとも部分的に第1の基準オブジェクト240にわたって、電子ビーム225を走査する走査ユニット282を備える。さらに、コンピュータシステム280は、装置200の走査型粒子顕微鏡210の様々なパラメータを設定し、制御するための設定ユニット284を備える。
【0108】
その上、コンピュータシステム280は、検出器245および255からの測定信号を分析し、ここから像を生成する評価ユニット286を備え、前記像は、ディスプレイ290に表示される。サンプル110および/または基準オブジェクト240にわたって、走査ユニット282が電子ビーム225または粒子ビーム225を走査する領域は、コンピュータシステム280のモニタ290上に表示され、したがって、走査型粒子顕微鏡210の視野またはFOV明示される。特に、評価ユニット286は、粒子ビーム225が走査ユニット282によって走査されるときに発生する走査領域内の線形および非線形の擾乱を、サンプル110および第1の基準オブジェクト240からの信号を収める、検出器245の測定データから決定するように設計される。その上、評価ユニット286は、コンピュータシステム280のモニタ290上に検出器245の測定データを表現する際に、検出された擾乱を補正できる1つまたは複数のアルゴリズムを収める。評価ユニットのアルゴリズムは、ハードウェア、ソフトウェア、またはその組合せにおいて実行されることが可能である。
【0109】
評価ユニット286は、同様に、距離測定デバイス270または干渉計270の測定信号を処理し、これらの信号をモニタ290上にグラフで、または数字で表現する。このために、評価ユニット286は、干渉計270ならびに検出器245および/または255の測定信号、ならびに任意に、さらなる測定データから、像データを生成するように設計された1つまたは複数のアルゴリズムを収めている。
【0110】
さらに、評価ユニット286は、モニタ290上に、例えば構造要素130を表現するときなど、走査ユニット282によって検知された要素を表現するとき、検出器245の測定データに加えて、距離測定デバイス270の測定データも考慮に入れるように設計されることが可能である。
【0111】
コンピュータシステム280および/または評価ユニット286は、様々なサンプルのタイプに対する電荷の1つまたは複数のモデルを格納するメモリ(図2に図示せず)、好ましくは不揮発メモリを収めることができる。静電荷のモデルに基づいて、評価ユニット286は、検出器240の測定データからサンプル110の静電荷を計算するように設計されることが可能である。その上、評価ユニット286は、モニタ290上に走査領域を表現するとき、サンプル110の静電荷を考慮に入れるように設計される。その上、評価ユニット286は、電子ビーム225またはイオン源265の低エネルギーイオンによる局部照射によって、少なくとも部分的な補償を行うようにコンピュータシステム280に促すことができる。
【0112】
図2に明示されたように、評価ユニット286は、コンピュータシステム280に統合されることが可能である。しかし、装置200の内部または外側に、独立ユニットとして評価ユニット286を含むこともできる。特に、評価ユニット286は、そのタスクのうちのいくつかを、専用ハードウェアの実行によって行うように設計されることが可能である。
【0113】
最終的に、コンピュータシステム280は、マイクロマニピュレータに電気信号を送り込むことによって、1つ、2つ、または3つの空間方向にサンプルステージ230を移動するように促す変位ユニット288を収めることができる。
【0114】
コンピュータシステム280は、装置200に統合されること、または、独立の設備(図2に図示せず)として含まれることが可能である。コンピュータシステム280は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または組合せとして構成されることが可能である。
【0115】
図2に示されたものとは異なり、装置200の走査型粒子顕微鏡210は、複数の粒子ビームをサンプル110に同時に向けることができるマルチビーム走査型粒子顕微鏡を備えることができる(図2に図示せず)。マルチビーム走査型粒子顕微鏡は、個々の粒子ビームによって生成された2次粒子を並行に検出することができる検出器または検出器の配列を備える。その上、マルチビーム走査型粒子顕微鏡の評価ユニット286は、全体像を形成するために、個々の粒子ビームの2次粒子から生成された部分的な像を結合させるように設計される。
【0116】
図3のダイアグラム300は、サンプル110上の粒子ビーム225の入射点235の領域における装置200の拡大されたセクションを示す。第1の基準オブジェクト240は、ホルダ310によってカラム215の低い方の端部にしっかりと接続されている。電子ビーム225の走査領域内に、図3の例における基準オブジェクト240は、グリッド様構造320と実質的に相互作用せずに、電子ビーム225がグリッド様構造320を通過できる開口部のある、メッシュ様構造またはグリッド様構造320を備える。
【0117】
左手側に、第1の基準オブジェクト240は、図3の例では、第1の基準オブジェクト240のホルダ310に取り付けられた反射ユニット260を備える。ダイアグラム300において、反射ユニット260は、反射ユニット260によって入射光ビーム273の大部分が反射されるように(R>80%)、第1の基準オブジェクト240のホルダ310に取り付けられている。反射ユニット260の反射係数を最適化するために、距離測定デバイス270の光ビーム273に面する第1の基準オブジェクト240の反射ユニット260の側面は、反射層を備えることができる。ここで、反射層は、その反射係数が光ビーム273の波長における最大値になるように設計されることが可能である(図3に再現されず)。図3に再現された例において、第1の基準オブジェクト240は、ホルダ310、グリッド様構造320、および反射ユニット260を結果的に含む。
【0118】
図3に示された例において、例えばフォトリソグラフィマスク110といったサンプル110は、3点支持を用いてサンプルステージ230上に配置されている。サンプル110は、重力の作用によって、その位置に保持される。ダイアグラム300のセクションは、3点支持の3つの球体330のうちの2つを示している。第2の基準オブジェクト250は、図3に示された例におけるサンプルステージ230のフレーム構造340によって形成される。この最も単純な形で、サンプルステージ230のフレーム340には、金属反射性がある。この場合、距離測定デバイス270は、サンプルステージ230のフレーム部分340に光ビーム276を直接的に当てることができ、フレーム部分340は、光ビーム276の大部分を反射して、距離測定デバイス270または干渉計270に戻す。
【0119】
第1の基準オブジェクト240の反射ユニット260の場合のように、反射率を向上させるための反射層(図3に図示せず)のある、第2の基準オブジェクト250を形成するサンプルステージ230のフレーム構造340の一部を用意することもできる。これは、第2の基準オブジェクト250の反射層に第2の光ビームが入射する、干渉計270の第2の光ビーム276の反射成分を増加させる。
【0120】
装置200の走査型粒子顕微鏡210の粒子ビーム225は、サンプル110および/またはフォトマスク110上にあるマーカを測定するために使用されることが可能である。サンプル110またはフォトリソグラフィマスク110が、異なるマーカの形の内部座標系を有している場合、例えばサンプル110上の構造要素130の絶対位置を確かめることができる。第1の基準オブジェクト240は、第1の基準オブジェクト240に対する粒子ビーム225の位置および方向の変化を決定するために使用されることが可能である。さらに、距離測定デバイス270は、第2の基準オブジェクト250、すなわち、サンプル表面115に対する、第1の基準オブジェクト240、すなわち、走査型粒子顕微鏡210のカラム215の位置の変化を測定する。最終的に、これは、サンプル110に対する粒子ビーム225の休止位置の変化を検出する。その結果、構造要素の位置の決定を改善するために使用されることが可能な2つの補正値を確かめることができる。特に、距離測定デバイス270は、安定した外部基準に対する構造要素130の絶対位置を決定できるようにする。例として、外部安定基準は、サンプルステージ230に関する座標系であることが可能である。構造要素130の位置の決定に関する精度は、安定した外部基準点を経時的に参照することによって、著しく向上されることが可能である。
【0121】
ダイアグラム300に示された実施形態は、2つの基準オブジェクト240および250の、1つの方向に沿った位置の、互いに対する変化を決定できるようにする。第1の距離測定デバイス270に平行に整列されていない第2の距離測定デバイス270を装置200内に配置することによって、サンプル110の平面内での互いに対する、2つの基準オブジェクト240および250の位置の変化を決定することができる。2つの距離測定デバイス270は、粒子ビーム225のビーム軸の周りを、互いに対して90°の角度で回転させて装置200に設置されるのが好ましい。
【0122】
さらに、2つの距離測定装置270を各方向に使用することができ、前記距離測定装置は、第1の基準オブジェクト240または第2の基準オブジェクト250の両側の直線上に配置されるのが好ましい。これは、第1に、第1の基準オブジェクト240の長さの変化または歪曲を簡単に決定できるようにする。第2に、これは、表面がかなり不均一な大きいサンプルの分析も容易にする。2つの距離測定デバイス270のうちの少なくとも1つは、1つの方向に対して、サンプル110によって影を付けない方がよい。
【0123】
図2および図3に示された装置200において、距離測定デバイス270は、干渉計として具体化されている。位置センサの形で距離測定デバイス270を実装することもできる(図2および図3に図示せず)。例として、位置センサは、ポテンショメータトランスデューサまたは歪みゲージとして実装されることも可能である。しかし、位置センサは、抵抗性、容量性、および/または磁気誘導性距離センサとして具体化されることも可能である。
【0124】
図4のダイアグラム400は、第1の基準オブジェクト240の第1の例示的実施形態のグリッド様構造320の例を平面図に、概略的かつ大きく拡大して示している。図4に示された例において、グリッド様構造320は、正方形の開口部420のあるグリッド410を備える。グリッド410の個々の開口部420の幅は、「s」で表されている。例として、電子ビーム225または粒子ビーム225は、グリッド410の下に配置されたサンプル110に達するために、グリッド410の中心にある開口部420のうちの1つを通過することができる(サンプルは、図4に示されていない)。
【0125】
反射ユニット260は、図4の第1の基準オブジェクト240の左手側に見える。
【0126】
図4の410の例示的なレートは、外部寸法「W」を有する。第1の基準オブジェクト240のグリッド410の外部寸法は、前記グリッドが結び付けられたSBM210の結像特性によって決まる。その上、グリッド410またはグリッド様構造320の外部寸法は、全体として第1の基準オブジェクト240の外部寸法と同様に、サンプル110の表面トポロジによって決まる。サンプル110の一部およびグリッド410の一部を同時に焦点に結像できるようにするために、グリッド410は、サンプル表面115から可能な限り短い距離で取り付けられる方がよい。この必要性のために、第1の基準オブジェクト240のサイズ、およびしたがって、グリッド410の外部寸法「W」を、サンプル110の不均一さに合わせるのが有利である。しかし、走査型粒子顕微鏡210のビーム光学ユニット220は、粒子ビーム225の横方向の位置に焦点調節が実質的に影響を与えないように調節されるので、サンプル表面115からできるだけ短い距離に第1の基準オブジェクト240を配置する必要がないことが多い。表面115が実質的に平らなサンプル110の場合、第1に、サンプル110の生産が問題なく、第2に、サンプル110の外部寸法が、SEM210の粒子ビーム225の可能な限り広い走査領域に合わされることが可能になるように、グリッド410の外部寸法「W」を選ぶことができる。
【0127】
グリッド410、およびしたがって第1の基準オブジェクト240の外部寸法「W」は、およそ0.1mm~およそ10mmに及ぶことが可能である。サンプル表面115からのグリッド410、およびしたがって第1の基準オブジェクト240の距離は、およそ100nm~およそ50μmの範囲内で変化させることができる。グリッド410、およびしたがって第1の基準オブジェクト240は、図4の例において円形である。これは、SBM210のビーム開口部がこの形であるのが好ましいので有利である。しかし、第1の基準オブジェクト240は、円形の実施形態に限定されず、代わりに、例えば、三角形、四角形、または一般に、およびn角形といった、任意の形状の外部輪郭であることが可能である。
【0128】
図5は、図4のグリッド410の拡大されたセクション500を再現している。図5に示された410の例示的なグリッドのセクションにおいて、正方形の開口部420は幅が「s」であり、およそ0.5μm~およそ100μmに及ぶ。したがって、サンプル110は、電子ビーム225がグリッド410によって実質的に影響を受けないグリッド開口部420内の電子ビーム225を用いて、検知されることが可能である。電子ビーム225の典型的な走査領域は、およそ1μm×1μm~およそ1mm×1mmの面積を占める。グリッド410の網状組織には、およそ0.5μm~およそ50μmの材料強度「b」がある。
【0129】
図5に明示された例において、サンプル110は、グリッド410の下に取り付けられ、第1の基準オブジェクト240のグリッド410の中央開口部430の領域にある輪郭560をもつ要素540を備える。要素540は、サンプル110の欠損であることが可能である。しかし、要素540は、サンプル110の構造要素130であることも可能である。サンプル110がフォトマスク110である例において、要素540は、サンプル110に付けられた吸収体構造の要素またはマークであることが可能である。粒子ビーム225を用いた要素540の走査が、第1の基準オブジェクト240によって実質的に影響を受けないように、粒子ビーム225は、第1の基準オブジェクト240の網状組織から、ビーム径がいくらか離れていなければならない。集束された電子ビーム225には、典型的には、1桁のナノメートル範囲のビーム径があるので、電子ビーム225と第1の基準オブジェクト240の網状組織との間のおよそ10nmの距離は、第1の基準オブジェクト240によって要素540の走査が実質的に影響を受けないことを保証するのに十分である。その上、電子ビーム225または粒子ビーム225は、典型的には、0.1mrad~10mradに及ぶ開口角を有する。これは、電子ビームが、第1の基準オブジェクト240の領域において、焦点においてより広いことを意味する。これらの状況は、グリッド410の網状組織からの電子ビーム225の距離を推定するときに考慮される必要がある。ここで「mrad」は、ミリラジアンを表す。
【0130】
第1の基準オブジェクト240のグリッド410を座標系の中に形成するために、グリッド410は、図5の例では、マーク550を備えている。図5に示された例において、座標系の基準点は中央開口部430であり、ここを、サンプル110を走査するために電子ビーム225が通過するのが好ましい。しかし、要素540を走査するための任意のグリッド開口部420を使用することもできる。図5の例において、中央グリッド開口部430には、マーク550がない。中央グリッド開口部430を除く全てのグリッド開口部420には、中央グリッド開口部430に対する、それぞれのグリッド開口部420に一意にラベルを付けたx方向およびy方向の1つまたは複数のマーク550がある。図5に示された例において、これは、グリッド開口部420が中央グリッド開口部430から離れているという、各列および行に対する線の印である。
【0131】
第1の基準オブジェクト240のグリッド様構造310の個々のグリッド開口部420は、基準フレームを形成する。第1の基準オブジェクト240のグリッドセル420の確かめられた変形、または、要素540と、グリッド開口部430の網状組織の少なくとも一部を両方備える領域の走査中に確かめられた基準フレーム、に基づいて要素540を走査するときの線形または非線形の擾乱を決定することができる。前記擾乱は、モニタ290上に要素540を提示する前に、装置200のコンピュータシステム280の評価ユニット286によって補正されることが可能である。
【0132】
装置200の走査型粒子顕微鏡210がマルチビームSBMとして具体化される場合、第1の基準オブジェクト240のグリッド410は、マルチビームSBMの各個々の粒子ビーム225に対する中央グリッド開口部430を有するセグメントに分割されることが可能であり、前記中央グリッド開口部は、番号が付いたグリッド開口部420(図5に図示せず)によって取り囲まれている。
【0133】
像処理アルゴリズムを用いて第1の基準オブジェクト240に対する電極ビーム225の位置を決定できるようにするために、第1の基準オブジェクト240の縁部は、粒子ビーム225を用いてよく識別されるように、はっきりと定義された方がよい。さらに、またはこの代替として、(例えば、材料コントラストのために)SBM像内の第1の基準オブジェクト240によってもたらされたコントラストは、背景、すなわち、サンプル110によって生成された信号から、第1の基準オブジェクト240をかなり区別するはずである。その上、例えば、SBM像が異なる倍率で相似であることによって、像処理ができるだけ単純に保たれるように、第1の基準オブジェクト240の形状を選ぶのが有利である。
【0134】
例示的実施形態において、粒子ビーム225は、前記要素の配置および/またはサイズを分析するために、第1の基準オブジェクト240のグリッド410の中央開口部430内のサンプル110の要素540を走査する。例として、SBM210の1つまたは複数のパラメータの設定は、異なる分解能で、または、粒子ビーム225の粒子の異なる運動エネルギーで、要素540を検査するために変更される。走査型粒子顕微鏡210の設定をこのように変更すると、SBM210のカラム215に配置されたビーム光学ユニット220を通る粒子または電子の経路を移動させること、歪ませること、および/またはねじることができる。これは、サンプル110上の粒子ビームまたは電子ビーム225の入射点を変化させる。第1の基準オブジェクト240に対する粒子ビーム225の走査領域の変化が検出されることによって、装置200の評価ユニット286は、これらのカラム内部の擾乱を補正することができる。粒子ビーム225の走査領域の擾乱を補正することによって、装置200は、要素540の位置の決定を改善する。
【0135】
このようにして、サンプル110の表面115上の粒子ビーム210の入射点235を変化させるSBM200の設定が修正される前に、粒子ビーム225の走査領域は、粒子ビーム225が、少なくとも1つのグリッド開口部、好ましくは中央グリッド開口部430、および、前記開口部を取り囲む第1の基準オブジェクト240のグリッド410の網状組織またはロッドを結像する程度まで拡大される。図6は、粒子ビーム225の走査領域650、およびしたがって、同様にSBM210の像領域650を概略的に示している。コンピュータシステム280の評価ユニット286によって生成されたSBM像の焦点に、サンプル110の要素540とグリッド410の網状組織の両方が同時に示されるように、サンプル表面115とグリッド410との間の距離が、両方のオブジェクト、つまり要素540とグリッド410がSBM210の被写界深度の範囲内にあるように、できるだけ小さい場合に有利である。
【0136】
代替実施形態において、第1の走査時の電子ビーム225の焦点は、サンプル110の、または要素540の、表面115上にある。次に、粒子ビーム225の焦点はグリッド410の平面に合わされ、同じ走査領域650が再びサンプリングされる。本実施形態は、特に、サンプル表面115および第1の基準オブジェクト240の410のグリッドが広い間隔(例えば、>100μm)を有している場合に有利である。第1の基準オブジェクト240のグリッド410に相当する、走査領域650の走査からのデータは、コンピュータシステム185の評価ユニット286によって分析および/または格納される。
【0137】
次のステップにおいて、SBM210の設定の1つまたは複数の変更が行われる。SBM210の設定の変更の例は、倍率の変更、焦点の変更、スティグメータの変更、加速電圧の変更、ビーム変位の変更、停止の変更、および/または走査型粒子顕微鏡210の粒子源205の位置の調節を含む。上記で既に説明されたように、SBM210の設定のこれらの変更は、SBM210のカラム315内に配置されたビーム光学ユニット220を通る粒子の経路を移動させること、または歪ませることができる。走査領域650の走査を繰り返すと、第1の基準オブジェクト240、およびサンプル表面115の要素540に対して走査領域650が変位する。
【0138】
図7は、走査型粒子顕微鏡210の設定の変更を行う前、または設定を変更する前の走査領域650と比較して、走査領域750の変位を説明している。コンピュータシステム280の評価ユニット286は、SBM210の設定を変更する前(走査領域650)および後(走査領域850)の走査データから、サンプル110の表面115上の粒子ビーム225の入射点235の変位を決定する。走査領域750の変位に加えて、走査領域750は、走査型粒子顕微鏡210の設定の変更の結果としての変形または歪曲を受ける可能性もあり、これらの擾乱は、基準フレーム(図7に図示せず)を形成するグリッド開口部の形の変更に基づいて検出されることが可能である。
【0139】
図8は、第1の基準オブジェクト240の第2の例示的実施形態のセクション800の平面図を概略的に示している。図8に示された例において、第1の基準オブジェクト240は、薄膜810を備える。薄膜810は、厚さが10nm~200nmに及ぶ薄い金属薄膜を備えることができる。金属薄膜の代わりに、第1の基準オブジェクト240は、ポリイミド薄膜を備えることができる。水平断続線820および垂直断続線830によって、薄膜810は、図4および図7のグリッド様構造320のグリッド開口部420に対応するユニットセル880に分割される。薄膜810の厚さを選ぶとき、薄膜の下にあるサンプル110によって生成された2次粒子が、装置200の検出器245に達するために薄膜810を通過しなければならないということが考慮されなければならない。その上、グリッド310の形で第1の基準オブジェクト240について上記で既に説明されたように、サンプル110の2次電子によって生成された電流を測定し、2次電子の像を生成するときに前記電流を考慮することができる。
【0140】
グリッド410とは異なり、薄膜810は、走査型粒子顕微鏡210の粒子ビーム225のコントラスト信号を、前記粒子ビーム225が通過するときに供給することができない。したがって、薄膜810の各ユニットセル880は、4つの基準マーク850、または単にマーク850を備えている。図8の例において、これらは、正方形の角に取り付けられている。その結果、マーク850は、各ユニットセル880内の座標系を張る。薄膜810のマーク850は、図8の例では円形である。マーク850の直径は、50nm~200nmの範囲内であることが好ましい。マークの高さは、10nm~100nmの好ましい範囲を有する。薄膜810またはサンプル110およびマーク850を検知する粒子ビーム225が、トポロジコントラストに加えて、材料コントラストも追加としてもたらすように、薄膜の材料とは異なる材料から基準マーク850を構築するのが有利である。薄膜810のユニットセル880のサイズの選択について、図5に関する説明が参照される。
【0141】
薄膜810の様々なユニットセル880の間の相違を見分けられるようにするために、ユニットセル880は、例えば、2つの数字の組み合わせによって、ラベルを付けられることが可能である。図8において、これは、薄膜810のいくつかの中央ユニットセル880に対して指定されている。
【0142】
薄膜上のマーク850は、第1の基準オブジェクト240の実行動作中に劣化する可能性がある。第1に、これは、マーク850が汚れることによって生じる可能性があり、その結果、その空間分解能は低下する。第2に、マーク850の構造は、粒子ビーム225による頻繁な検知の結果として修正される可能性があり、したがって、前記マークは、やがて使用できなくなる。薄膜810の形で具体化される第1の基準オブジェクト240は、非常に多くのユニットセル840を有しているので、ユニットセル840は、サンプル110上の要素130、540の位置を決定するために連続的に使用されることが可能である。薄膜810として具体化される第1の基準オブジェクト240の耐用期間は、この結果、何倍も長くなる可能性がある。
【0143】
グリッド410の形の第1の基準オブジェクト240の実施形態と同様に、図8において論じられた薄膜810の形の第1の基準オブジェクト240の実施形態は、マルチビームSBMに同様に適している。その上、薄膜上のマーク850は座標系を張っているので、前記マークは、走査手順の中で走査領域内に発生する擾乱を検出し、評価ユニット286を用いて前記擾乱を補正するために使用されることが可能な基準フレームを形成する。
【0144】
全てのユニットセル880は、図8に示された例では、サイズが同じである。しかし、サイズが異なるユニットセル880を薄膜810上に配置することもできる。その結果、ユニットセル880のサイズは、装置200の走査型粒子顕微鏡210の粒子ビーム225の走査領域に合わされることが可能である(図8に図示せず)。
【0145】
薄膜810を基に第1の基準オブジェクト240を使用すると、薄膜810を通る要素540の結像は、最小限、粒子ビームに影響を与えるだけなので、有利である。これには、サンプル110の要素540の位置が決定される精度に有利な効果がある。その上、薄膜810は、簡単に生産することができる。第1の基準オブジェクト240の第2の例示的実施形態のマーキング850の検知については、図6の背景における説明が参照される。
【0146】
図9のダイアグラム900は、第1の基準オブジェクト240の第3の例示的実施形態のセクションの概略平面図を示している。図9に示されたセクションは、第1の基準オブジェクト240の第3の実施形態のユニットセル980を示している。ユニットセル980には開口部920がある。開口部920は、サンプル110の、またはフォトリソグラフィマスク110の、構造要素940の姿を見せている。図5の背景において説明されたように、グリッドのグリッド開口部420の網状組織を焦点に結像させるのは困難である可能性がある。これは、第1の基準オブジェクトの第3の例示的実施形態のユニットセル940の開口部920の縁部にも当てはまる。その結果、第1の基準オブジェクト240に対する構造要素940の位置の変化を確実に検出するのは困難である可能性がある。
【0147】
第1の基準オブジェクト240の第2の例示的実施形態は、薄膜810にマーク850を付けることによって、これらの困難を避ける。しかし、第2の例示的実施形態の短所は、粒子ビーム225と、サンプル110から生じる2次粒子の両方が、薄膜810を通らなければならないことである。第1の基準オブジェクト240の第3の例示的実施形態は、両方の短所を避ける。各ユニットセル920が開口部を有することによって粒子ビーム225も2次粒子も薄膜810を通って伝わる必要がない。追加として、当該の第1の基準オブジェクト240の第3の例示的実施形態は、第1の基準オブジェクト240に対する、およびしたがって、走査型粒子顕微鏡210のカラム215の出力に対する、構造要素940の位置を決定するために、ユニットセル920の開口部の縁部を使用しない。このために、第3の例示的実施形態における基準オブジェクト240は、ユニットセル920の開口部の周囲に配置された6つのマーク950を備える。
【0148】
各ユニットセル980のマーキング950は、第3の例示的実施形態では、十字構造である。しかし、マーク950は、例えば長方形または正方形のような、他の任意の形で具体化されることが可能である。図8の背景において上記で既に説明されたように、これは、マーク950が、第1の基準要素240の材料とは異なる材料組成である場合に有利である。その結果、マーク950は、粒子ビーム225での検知中に、トポロジコントラストに加えて材料コントラストを追加として生成する。図9の例において、ユニットセル980は、六角形である。しかし、ユニットセルの開口部920は、他の任意の形で、例えば、円形、長方形、または正方形の開口部(図9に図示せず)の形で具体化されることが可能である。さらに、ユニットセル980の開口部920の形に、ユニットセル920当たりのマーク950の数を合わせることが、必要ではないが有利である。第1の基準オブジェクト240の第3の例示的実施形態のユニットセル980当たり少なくとも3つのマーク980が座標系を形成すること、または基準フレームを張ることが必要である。
【0149】
図10は、第1の基準オブジェクト240の第1の例示的実施形態の変更形態を示している。第1の基準オブジェクト240のグリッド410が伝導性材料からできていることが下記で仮定される。例として、第1の基準オブジェクト240は、金属または金属合金からできていることが可能である。同時に、電気伝導性の第1の基準オブジェクト240は、サンプル110の表面118上の輪郭440を走査するときに生成されるか、サンプル110上に既にある、電荷120、125を遮蔽する遮蔽グリッドとして機能することが可能である。したがって、伝導性の第1の基準オブジェクト240は、サンプル110上にある電荷120、125による帯電した粒子ビーム225の偏向を防ぐことができる。サンプル110に入射する粒子ビーム225に加えて、粒子ビーム225によって生成された帯電した2次粒子は、サンプル110の要素130、540、980の像を生成するために使用され、サンプル110の表面115の電荷120、125によってサンプル表面115から検出器245の途中で偏向される。結果的に、電気伝導性の第1の基準オブジェクト240は、要素130、540、940を検査するときに測定結果の改ざんを同時に防ぐことができる。
【0150】
さらに、図4のグリッド410などのグリッド様構造320を有する電気伝導性の第1の基準オブジェクト240は、カラム215の粒子ビーム225の出口開口部に、電気伝導性ホルダ310の片側で接続されることが可能である。反射ユニット260は、電気伝導性の第1の基準オブジェクト230の左手側に取り付けられている。伝導性ホルダ310の第2の側は、電気絶縁体1010によって粒子ビーム225の出口開口部にしっかりと接続されている。図10は、この配列を通じた概略セクションを示している。グリッド様構造320の、またはグリッド410の、電気絶縁された側は、電気接続1020を介して電気増幅器1040の入力1030に接続されている。図10に明示された例において、電気増幅器1040は、トランスインピーダンス増幅器である。しかし、他の増幅器のタイプが使用されてもよい。
【0151】
トランスインピーダンス増幅器1040の第2の入力1050は、アース1060に接続されている。走査型粒子顕微鏡210のカラム215は、アース1060に同様に接続されている。電圧は、トランスインピーダンス増幅器1040の出力1070でタップされることが可能であり、前記電圧は、粒子ビーム215がグリッド様構造320のグリッドロッドをさらし(expose)、この時点で電荷を解放するときに生成された電流に比例する。トランスインピーダンス増幅器1040の出力1070にある信号は、粒子ビーム225が、サンプル110の表面115上を現在走査しているか、グリッド様構造320のグリッドロッドのうちの1つに現在当たっているか、を結果的に示す。したがって、トランスインピーダンス増幅器1040の出力信号1070は追加チャネルを形成して、評価ユニット286によって生成された像内の構造物がサンプル110の要素130、450、940から生じているか、グリッド410のグリッドロッドから生じているかを区別する。
【0152】
最後に、図11の流れ図1100は、フォトリソグラフィマスク110上の少なくとも1つの要素130、540、940の位置を決定するための説明された方法のステップをもう一度概説している。方法は、ステップ1110で始まる。次のステップ1120において、装置200のコンピュータシステム280の走査ユニット182は、要素130、540、940の少なくとも一部、および第1の基準オブジェクト240上で、走査型粒子顕微鏡210の少なくとも1つの粒子ビーム225を走査する。走査データから、コンピュータシステム280の評価ユニット286は、第1の基準オブジェクト240に対するフォトリソグラフィマスク110上の少なくとも1つの要素130、540、940の相対位置を決定する。次のステップ1140において、評価ユニット286は、第1の基準オブジェクト240と第2の基準オブジェクト250との間の距離を決定し、第2の基準オブジェクト250とフォトリソグラフィマスク110との間には関係がある。ステップ1150において、方法は終わる。
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図11