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特許7564909粘着フィルム、それを含む光学部材、およびそれを含む光学表示装置
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  • 特許-粘着フィルム、それを含む光学部材、およびそれを含む光学表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】粘着フィルム、それを含む光学部材、およびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241002BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20241002BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241002BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241002BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J133/14
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023063935
(22)【出願日】2023-04-11
(65)【公開番号】P2023160757
(43)【公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0050107
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】趙 成 ▲きん▼
(72)【発明者】
【氏名】金 成 漢
(72)【発明者】
【氏名】李 昇 勳
(72)【発明者】
【氏名】ナム イリナ
(72)【発明者】
【氏名】崔 柱 烈
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智子
(72)【発明者】
【氏名】金 源
(72)【発明者】
【氏名】金 一 鎭
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-008018(JP,A)
【文献】特開2020-189924(JP,A)
【文献】特開2010-196064(JP,A)
【文献】特表2015-525368(JP,A)
【文献】特表2010-516855(JP,A)
【文献】国際公開第2011/162125(WO,A1)
【文献】特開2022-151811(JP,A)
【文献】特開2019-65113(JP,A)
【文献】特開2020-186330(JP,A)
【文献】特表2011-510114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着フィルムであって、
前記粘着フィルムは、屈折率が1.55以上であり、
前記粘着フィルムは、下記数式1表される割合Aが1~8であり、下記数式2で表される割合Bが1~15であり、
前記粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率(G’ 60 )が、5kPa~70kPaであり、
前記粘着フィルムは、85℃における貯蔵弾性率(G’ 85 )が、1kPa~60kPaであり、
前記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体であり、
前記芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体は、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体を含み、
前記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、前記単量体混合物の全質量を100質量%として、30質量%~95質量%の含有量で含まれ、
前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、前記単量体混合物の全質量を100質量%として、5質量%~70質量%で含まれる、粘着フィルム:
【数1】

前記数式1および前記数式2中、
G’25は、25℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’60は、60℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’85は、85℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)である。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、下記数式3で表される経時剥離力の変化率が60%以下である、請求項1に記載の粘着フィルム:
【数2】

前記数式3中、
PS1は、粘着フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)であり、
PS2は、粘着フィルムを50℃で7日間放置した後の前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である。
【請求項3】
前記粘着フィルムは、被着体に対する剥離力が、400gf/inch(154.4mN/mm)以上である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、光開始剤および熱硬化型架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着フィルムは、前記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む粘着フィルム用組成物から形成される、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上である、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記単量体混合物は、前記単量体混合物の全質量を100質量%として、前記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は40質量%~95質量%であり、前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量は5質量%~60質量%である、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記粘着フィルム用組成物は、前記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体 100質量部、前記光開始剤 0.005質量部~5質量部、および前記熱硬化型架橋剤 0.05質量部以上5質量部未満を含む、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
レベリング剤をさらに含む、請求項に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記レベリング剤は、シリコン変性されたポリアクリレートのうちの1種以上を含む、請求項10に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学部材。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着フィルムを含む、光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルム、それを含む光学部材、およびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子表示装置において、発光層から出る光のうち80%以上は、発光素子または表示装置の各種層状構造の界面または内部で反射または吸収されることにより、表示装置の前面に出られず消失する。これにより、光の抽出効率が下がるため、目的とする輝度を具現するためには、電力の消費量が増えることを避けるのは難しく、これによって発光素子の寿命もまた短縮することになる。
【0003】
発光素子上に積層されるタッチスクリーンパネルは、アルミニウム、チタン等の金属材料から作られることによって、通常の粘着フィルムに比べて著しく高い高屈折率を有する。このことから、層間の屈折率の差を下げたり、界面反射される光の経路の変更によって光の抽出効率を上げたりするためには、屈折率の差を緩和させることのできる層または高屈折率の粘着フィルムをさらに積層する方法が考慮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国登録特許第10-1189698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高屈折率であり、かつ段差追従性、剥離力、および外観に優れた粘着フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、高屈折率であり、かつ経時剥離力の変化率が低い粘着フィルムを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、高屈折率であり、かつヘーズが低い粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点は、粘着フィルムに関する。
【0009】
1.本発明の粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体を含み、上記粘着フィルムは、屈折率が1.55以上であり、上記粘着フィルムは、下記数式1で表される割合Aが1~8であり、下記数式2で表される割合(B)が、1~15である:
【0010】
【数1】
【0011】
上記数式1および上記数式2中、
G’25は、25℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’60は、60℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’85は、85℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)である。
【0012】
2.上記1.において、上記粘着フィルムは、下記数式3で表される経時剥離力の変化率が60%以下になり得る:
【0013】
【数2】
【0014】
上記数式3中、
PS1は、粘着フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)であり、
PS2は、粘着フィルムを50℃で7日間放置した後の上記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である。
【0015】
3.上記1.または2.において、上記粘着フィルムは、被着体に対する剥離力が400gf/inch(154.4mN/mm)以上になり得る。
【0016】
4.上記1.~3.のいずれかにおいて、上記粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率(G’60)が、5kPa~70kPaになり得る。
【0017】
5.上記1.~4.のいずれかにおいて、上記粘着フィルムは、85℃における貯蔵弾性率(G’85)が1kPa~60kPaになり得る。
【0018】
6.上記1.~5.のいずれかにおいて、上記粘着フィルムは、光開始剤および熱硬化型架橋剤をさらに含み得る。
【0019】
7.上記1.~6.のいずれかにおいて、上記粘着フィルムは、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む粘着フィルム用組成物から形成され得る。
【0020】
8.上記7.において、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体であり、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体は、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体を含み得る。
【0021】
9.上記8.において、上記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、上記単量体混合物の全質量に対して30質量%以上含まれ得る。
【0022】
10.上記8.または9.において、上記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、0℃以上になり得る。
【0023】
11.上記8.~10.のいずれかにおいて、上記芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニリル(メタ)アクリレート、およびナフチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0024】
12.上記8.~11.のいずれかにおいて、上記単量体混合物は、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体をさらに含み得る。
【0025】
13.上記12.において、上記単量体混合物は、上記単量体混合物の全質量を100質量%として、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量は40質量%~95質量%であり、上記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量は5質量%~60質量%であり得る。
【0026】
14.上記7.~13.のいずれかにおいて、上記粘着フィルム用組成物は、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体 100質量部、上記光開始剤 0.005質量部~5質量部、および上記熱硬化型架橋剤 0.05質量部以上5質量部未満を含み得る。
【0027】
15.上記6.~14.において、上記粘着フィルムは、レベリング剤をさらに含み得る。
【0028】
16.上記15.において、上記レベリング剤は、シリコン変性されたポリアクリレートのうちの1種以上を含み得る。
【0029】
17.1において、上記芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体になり得る。
【0030】
本発明の別の観点は、光学部材である。
【0031】
光学部材は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0032】
本発明のまた別の観点は、光学表示装置である。
【0033】
光学表示装置は、本発明の粘着フィルムを含む。
【発明の効果】
【0034】
本発明の一観点によれば、高屈折率であり、かつ段差追従性、剥離力および外観に優れた粘着フィルムが提供される。
【0035】
本発明の他の一観点によれば、高屈折率であり、かつ経時剥離力の変化率が低い粘着フィルムが提供されるる。
【0036】
本発明のさらに他の一観点によれば、高屈折率であり、かつ高屈折率の無機粒子を含有しないためヘーズが低い粘着フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態にかかる光学表示装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付の図面を参照して、本発明を実施形態によって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0039】
図面で本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素については、同じ名称を使用した。図面において、各構成要素の長さおよび大きさは、本発明を説明するためのものであり、本発明が図面に記載の各構成要素の長さおよび大きさに制限されるものではない。
【0040】
本明細書において、「上部」と「下部」は、図面を基準に定義したものであり、見る角度によって、「上部」が「下部」に、「下部」が「上部」に変わる場合もある。
【0041】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0042】
本明細書において、「屈折率」は、可視光線領域、例えば、プリズムカプラーにより波長633nmで測定された値である。
【0043】
本明細書において、数値範囲の記載時に「X~Y」は、X以上Y以下(X≦および≦Y)を意味する。
【0044】
本発明は、高屈折率を示しながら、同時に段差追従性、剥離力および外観に優れるだけでなく、経時剥離力の変化率が低い粘着フィルムに対するものである。
【0045】
本発明の粘着フィルムは、高屈折率のため、高屈折率の被着体に積層されても、被着体から粘着フィルムに入射される光の反射を最小化することにより、光の抽出効率を高めることができる。
【0046】
本発明の粘着フィルムは、段差追従性に優れるため、パターン化された高屈折率の被着体に粘着しても、粘着フィルムと高屈折率の被着体との間に空間が生じ難く、粘着フィルムの浮きがないため、光の抽出効率を高めることができる。
【0047】
本発明の粘着フィルムは、経時剥離力の変化率が低い。経時剥離力の変化率が低いということは、粘着フィルム内の未硬化成分の含有量が低く、粘着フィルムの信頼性の評価時に、気泡および浮きがないことを意味する。
【0048】
以下、本発明の一実施形態にかかる粘着フィルムを説明する。
【0049】
本発明に係る粘着フィルムは、屈折率が1.55以上である。この屈折率の範囲であれば、高屈折率の被着体に積層されても、被着体から粘着フィルムに入射される光の反射を最小化することによって、光の抽出効率を高めることができる。例えば、粘着フィルムは、屈折率が1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、好ましくは1.55~1.8、より好ましくは1.55~1.65であり得る。
【0050】
本発明に係る粘着フィルムは、下記数式1で表される割合Aが1~8であり、下記数式2で表される割合Bが1~15である。
【0051】
【数3】
【0052】
上記数式1および上記数式2中、
G’25は、25℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’60は60℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
G’85は、85℃における粘着フィルムの貯蔵弾性率(単位:kPa)である。
【0053】
上記数式1および上記数式2は、高屈折率の粘着フィルムが、段差追従性に優れ、経時剥離力の変化率が低いことを評価するために考え出された関係式である。
【0054】
粘着フィルムが有する高屈折率は、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の完全重合または部分重合により得られる芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体またはそれを含む重合物を含む組成物によって具現され得る。芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムの製造に使用される通常の(メタ)アクリル系単量体に比べて、ホモポリマーのガラス転移温度が高い。上記数式1および上記数式2は、芳香環を有する(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の完全重合または部分重合により得られた、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体またはそれを含む重合物を含む組成物によって製造された粘着フィルムが、優れた段差追従性、優れた剥離力、および低い経時剥離力の変化率を有することを保証するために考え出された関係式である。段差追従性は、下記で示されるように、常温(例えば、23~25℃)で粘着フィルムをパターン化された被着体に合わせた後、高温(例えば、50~60℃)で所定時間処理することにより、評価される。経時剥離力の変化率は、下記数式3で表されるように、粘着フィルムを高温で長期間放置した後に測定されるものであり、経時剥離力の変化率が高いということは、粘着フィルム内の未反応の成分が多量残存することにより、変化率を測定する過程で剥離力が著しく増加したことを意味する。
【0055】
上記数式1で表される割合Aは本発明の範囲を満たすが、上記数式2で表される割合Bが本発明の範囲を満たさない粘着フィルムは、段差追従性、剥離力、および外観が低下する。上記数式2で表される割合Bは本発明の範囲を満たすが、上記数式1で表される割合Aが本発明の範囲を満たさない粘着フィルムは、剥離力および段差追従性、ならびに外観が低下する。
【0056】
例えば、上記数式1で表される割合Aは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、好ましくは1~7、より好ましくは2~6.5になり得る。例えば、上記数式2で表される割合Bは、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、好ましくは1~13、より好ましくは2~12になり得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、下記数式3で表される経時剥離力の変化率が60%以下、例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、具体的には5%~50%になり得る。経時剥離力の変化率が上記範囲内であれば、粘着フィルムの信頼性が高く、粘着フィルムを高温および/または高温高湿で長期間放置した後の気泡および浮きがほとんどなくなり得る。
【0058】
【数4】
【0059】
上記数式3中、
PS1は、粘着フィルムの被着体に対する初期剥離力(単位:gf/inch)であり、
PS2は、粘着フィルムを50℃で7日間放置した後の前記被着体に対する剥離力(単位:gf/inch)である。
【0060】
上記数式3中、初期剥離力は、粘着フィルムを50℃で7日間放置する前に測定された剥離力を意味する。
【0061】
上記「被着体」は、ガラス等を含む無機物、有機物、有機物と無機物との混合物等の1種以上を含み得る。上記「被着体」は、板、シート、フィルム、またはディスプレイパネル(タッチパネル層)の形態になり得る。上記「被着体」には、パターンが形成されてもよい。一実施形態において、上記被着体は、ガラス板、好ましくは無アルカリガラス板であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、被着体に対する剥離力が400gf/inch(154.4mN/mm)以上、例えば、400gf/inch(154.4mN/mm)、500gf/inch(193.0mN/mm)、600gf/inch(231.6mN/mm)、700gf/inch(270.2mN/mm)、800gf/inch(308.8mN/mm)、900gf/inch(347.4mN/mm)、1000gf/inch(386.0mN/mm)、1100gf/inch(424.6mN/mm)、1200gf/inch(463.2mN/mm)、1300gf/inch(501.8mN/mm)、1400gf/inch(540.4mN/mm)、1500gf/inch(579.0mN/mm)、1600gf/inch(617.6mN/mm)、1700gf/inch(656.2mN/mm)、1800gf/inch(694.8mN/mm)、1900gf/inch(733.4mN/mm)、2000gf/inch(772.0mN/mm)、2100gf/inch(810.6mN/mm)、2200gf/inch(849.2mN/mm)、2300gf/inch(887.8mN/mm)、2400gf/inch(926.4mN/mm)、2500gf/inch(965.0mN/mm)、例えば400gf/inch(154.4mN/mm)~2500gf/inch(965.0mN/mm)であり得る。被着体に対する剥離力が上記範囲内であれば、被着体に対して高信頼性で固定されることにより、さらなる被着体の積層を容易に行うことができる。なお、1gf/inch=0.386mN/mm=0.386kg/sである。
【0063】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、25℃における貯蔵弾性率(G’25)が10kPa~100kPa、例えば、10kPa、15kPa、20kPa、25kPa、30kPa、35kPa、40kPa、45kPa、50kPa、55kPa、60kPa、65kPa、70kPa、75kPa、80kPa、85kPa、90kPa、95kPa、100kPa、好ましくは10kPa~80kPaであり得る。25℃における貯蔵弾性率(G’25)が上記範囲内であれば、優れた段差追従性の提供が容易になり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率(G’60)が5kPa~70kPa、例えば、5kPa、10kPa、15kPa、20kPa、25kPa、30kPa、35kPa、40kPa、45kPa、50kPa、60kPa、65kPa、70kPa、好ましくは5kPa~50kPaであり得る。60℃における貯蔵弾性率(G’60)が上記範囲内であれば、優れた段差追従性の提供が容易になり得る。
【0065】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、85℃における貯蔵弾性率(G’85)が1kPa~60kPa、例えば、1kPa、5kPa、10kPa、15kPa、20kPa、25kPa、30kPa、35kPa、40kPa、45kPa、50kPa、55kPa、60kPa、好ましくは1kPa~40kPaであり得る。85℃における貯蔵弾性率(G’85)が上記範囲内であれば、信頼性評価時に気泡および浮きが発生しないようにさせることが容易になり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、可視光線領域、例えば波長550nmでヘーズが1%以下、例えば0%~0.5%であり得る。粘着フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、被着体から入射される光を透過させることにより、光の抽出効率を高めることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、厚さが50μm以下、例えば、0μm超30μm以下、または1μm~25μmであり得る。粘着フィルムの厚さが上記範囲内であれば、光学表示装置に使用できる。
【0068】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む。いくつかの実施形態において、上記粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む粘着フィルム用組成物から形成される。いくつかの実施形態において、上記粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む粘着フィルム用組成物の硬化物を含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体のための単量体混合物の完全または部分重合物、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体のための単量体混合物の完全または部分重合物、光開始剤、および熱硬化型架橋剤を含む粘着フィルム用組成物から形成され得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、粘着フィルムは、芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体のための単量体混合物の一部を含んでもよい。
【0072】
(メタ)アクリル系共重合体は、芳香族基および水酸基を含有して、粘着フィルムの剥離力と屈折率とを高めることができる。
【0073】
芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が20万g/mol~300万g/mol、具体的には40万g/mol~200万g/molであり得る。上記範囲内であれば、粘着フィルムの信頼性が安定して表れる効果を奏し得る。重量平均分子量は、当業者に知られている通常の方法で測定することができ、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーによって、ポリスチレンを標準試料にして測定することができる。
【0074】
芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、芳香環含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の(メタ)アクリル系共重合体を含み得る。芳香環を有する(メタ)アクリル系共重合体は、上記単量体混合物から製造されたランダム(random)共重合体になり得る。
【0075】
単量体混合物は、芳香環含有(メタ)アクリル系単量体として芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体を必須に含む。これにより、粘着フィルム用組成物に高屈折率の無機粒子を含有しなくても1.55以上の屈折率の確保が容易になり得る。ここで、高屈折率の無機粒子は、屈折率1.55以上、例えば、屈折率1.55~3.0の無機粒子としては、例えば、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ等であり得る。高屈折率の無機粒子を含む組成物で粘着フィルムを製造する場合、粘着フィルムの屈折率は容易に高められるが、組成物中の有機成分、つまり、(メタ)アクリル系共重合体との常用性を調節しなければならないという問題点、および粘着フィルムのヘーズ増加等の問題点が生じ得る。本発明の粘着フィルムは、高屈折率の無機粒子を含まなくても屈折率が1.55以上になり得る。
【0076】
なお、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体には、2個以上の芳香族単環が結合および/または縮合した多環式基を有する(メタ)アクリル系単量体も含まれる。
【0077】
一実施形態において、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物の全質量を100質量%として、30質量%以上、例えば、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、好ましくは40質量%~95質量%、より好ましくは70質量%~90質量%の含有量で含まれ得る。芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、高屈折率の無機粒子がなくても、粘着フィルムの屈折率を1.55以上にすることが容易になり得る。
【0078】
一実施形態において、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上、例えば、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、好ましくは0℃~60℃であり得る。芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、通常の(メタ)アクリル系粘着フィルム用組成物に含有される(メタ)アクリル系バインダーの製造に使用される通常のアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体や、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体に比べて、ホモポリマーのガラス転移温度が遥かに高い。この「ホモポリマーのガラス転移温度」は、当業者に知られている通常の方法で測定できる他、商業的に提供されるカタログ等を参照して得ることができる。例えば、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度が6℃であり、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート等を含むフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度が33℃であり、4-ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリルメチル(メタ)アクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度が6℃であり、ナフチルアクリレートは、ホモポリマーのガラス転移温度が31℃であり得る。
【0079】
一実施形態において、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーの状態で25℃における表面張力が40mN/m以上、例えば、40mN/m以上、45mN/m以上、50mN/m以上、55mN/m以上、60mN/m、好ましくは40mN/m~60mN/mであり得る。一般に、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、芳香環を1個有する(メタ)アクリル系単量体、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートに比べて、25℃の条件で表面張力が高い傾向がある。「表面張力」は、当業者に知られている通常の方法で測定できる他、商業的に提供されるカタログ等を参照して得ることができる。例えば、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートは、表面張力が41mN/m~42mN/mであり、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート等を含むフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートは、表面張力が42mN/mであり、4-ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリルメチル(メタ)アクリレートは、表面張力が42mN/m~43mN/mであり、ナフチルアクリレートは、表面張力が44mN/m~45mN/mである。これに対し、ベンジルアクリレートは、表面張力が36mN/m~37mN/mであり得る。
【0080】
本発明の粘着フィルムは、このように芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体を多量に含む単量体混合物から製造された共重合体を含む組成物から製造された場合、数式1および数式2を同時に満たして優れた段差追従性および優れた外観を提供し、経時剥離力の変化率を低減させることを特徴とする。
【0081】
一実施形態において、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、下記化学式1で表される(メタ)アクリル系単量体、および下記化学式2で表される(メタ)アクリル系単量体のうち1種以上を含むことができる:
【0082】
【化1】
【0083】
上記化学式1中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
は、単結合、酸素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
ArおよびArは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基である。
【0084】
【化2】
【0085】
上記化学式2中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、単結合、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数1~10のモノアルキレンオキシ基、または置換もしくは非置換の炭素数2~10のポリアルキレンオキシ基であり、
Arは、置換または非置換の炭素数10~30の芳香族縮合環基である。
【0086】
上記化学式1および化学式2において、アルキレンオキシ基は「-R-O-」(この際、Rは炭素数1~10のアルキレン基である)を意味する。
【0087】
本明細書の「置換または非置換の」において、「置換」とは、該当官能基中の1個以上の水素原子が炭素数6~10のアリール基、炭素数7~10のアリールアルキル基、炭素数1~5のアルキル基等で置換されたことを意味する。
【0088】
例えば、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4-ビフェニリルメチル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリルメチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート等を含むフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-ビフェニリル(メタ)アクリレート等を含むビフェニリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレートの1種以上、好ましくは2種以上を含み得る。
【0089】
芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物のうち1種以上、または2種以上を含有し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、芳香環を2個以上有する(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物に含有される芳香環含有(メタ)アクリル系単量体の合計質量を100質量%として、80質量%以上、例えば、80質量%、81質量%、82質量%、83質量%、84質量%、85質量%、86質量%、87質量%、88質量%、89質量%、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、例えば、90質量%~100質量%の含有量で含まれ得る。
【0091】
芳香環含有(メタ)アクリル系単量体は、芳香環を1個有する(メタ)アクリル系単量体をさらに含んでもよい。芳香環を1個有する(メタ)アクリル系単量体は、当業者に知られている通常の単量体を含むことができる。例えば、当該記単量体は、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、および(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0092】
芳香環を1個有する(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物の全質量を100質量%として、30質量%以下、例えば、0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、例えば0質量%~20質量%の含有量で含まれ得る。芳香環を1個有する(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果に影響を与えないと共に、屈折率の上昇を助け得る。
【0093】
芳香環含有(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物の全質量を100質量%として、30質量%以上、例えば、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、75質量%、80質量%、85質量%、90質量%、好ましくは40質量%~95質量%、より好ましくは50質量%~90質量%、70質量%~90質量%の含有量で含まれ得る。芳香環含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムの屈折率を高めることを助け得る。
【0094】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムの剥離力を提供し得る。
【0095】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-10℃以下、例えば、-70℃、-65℃、-60℃、-55℃、-50℃、-45℃、-40℃、-35℃、-30℃、-25℃、-20℃、-15℃、-10℃、例えば、-70℃~-10℃であり得る。水酸基含有(メタ)アクリル系単量体のホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲内であれば、粘着フィルムの剥離力の上昇が容易になり得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、エステル部位に1個以上の水酸基を含有する炭素数1~10の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を含有する(メタ)アクリレートの1種以上を含み得る。例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、および6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0097】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物の全質量を100質量%として、5質量%~70質量%、例えば、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、65質量%、70質量%、具体的には5質量%~60質量%、10質量%~50質量%、10質量%~30質量%の含有量で含まれ得る。水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムの高温および/または高湿信頼性で安定性を確保し、剥離力を高める効果を提供できる。
【0098】
芳香環含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の合計含有量は、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物の全質量を100質量%として、90質量%以上、例えば、90質量%、91質量%、92質量%、93質量%、94質量%、95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%、100質量%、例えば、95質量%~100質量%であり得る。芳香環含有(メタ)アクリル系単量体および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体の合計含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0099】
上記単量体混合物は、アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル系単量体、脂環式基を有する(メタ)アクリル系単量体、ヘテロ脂環式基を有する(メタ)アクリル系単量体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、アルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリル系単量体等の単量体の1種以上を含まない場合もある。しかし、上記単量体混合物は、本発明の効果である屈折率1.55以上、優れた段差追従性および低い経時剥離力変化率を妨げない範囲内で、上記単量体を微量で含むことにより、上記単量体の添加による効果を得ることができる。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリル系共重合体製造のための単量体混合物の全質量を100質量%として、上記単量体の含有量は、0質量%~5質量%、例えば0質量%超3質量%以下であり得る。
【0100】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、アミド基を有する(メタ)アクリル系単量体、脂環式基を有する(メタ)アクリル系単量体、ヘテロ脂環式基を有する(メタ)アクリル系単量体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、およびアルキレンオキシド基を有する(メタ)アクリル系単量体の具体的な化合物としては、当業者に知られている通常の化合物を含むことができる。
【0101】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体は、炭素数1~20(好ましくは炭素数2~20)の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、およびドデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0102】
(メタ)アクリル系共重合体は、当業者に知られている通常の方法を用いて製造できる。例えば、上記単量体混合物に熱重合開始剤を添加し、所定の重合温度および重合時間内で重合した後、精製等の処理を通じて製造できる。
【0103】
いくつかの実施形態において、(メタ)アクリル系共重合体は、ランダム共重合体である。ランダム共重合体は、反応器内に(メタ)アクリル系共重合体のための単量体混合物を一度に入れた後、重合開始剤を添加し、重合反応させることによって製造することができる。
【0104】
光開始剤は、粘着フィルム用組成物を基材フィルム等に塗布し、乾燥させて塗膜を製造し、当該塗膜を光硬化させる際に使用することができる。光開始剤は、粘着フィルムを上記数式1で表される割合Aおよび上記数式2で表される割合Bに到達させることを助ける。
【0105】
光開始剤は、UV等の光によって光ラジカルを生成する光ラジカル開始剤を含むことができる。
【0106】
光開始剤は、最大吸収波長が250nm以上、例えば、300nm~400nmの長波長吸収光開始剤を含み得る。上記最大吸収波長範囲で基材フィルムを通じてUVを照射する際、UV照射による粘着力の著しい減少効果を得ることができるため、弱いUV照射によっても本発明の効果を得ることができる。なお、「最大吸収波長」は、光開始剤を1mg/ml濃度となるようにシクロヘキサンに溶かした後、吸光度を測定した際に最大吸光度が表れる波長を意味する。
【0107】
光開始剤は、具体的には、ホスフィンオキシド系、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系またはアミノケトン系光開始剤等を使用できる。例えば、光開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4- ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0108】
光開始剤は、(メタ)アクリル系共重合体または単量体混合物100質量部に対して、0.005質量部~5質量部、例えば、0.005質量部、0.01質量部、0.015質量部、0.02質量部、0.025質量部、0.03質量部、0.035質量部、0.04質量部、0.045質量部、0.05質量部、0.055質量部、0.06質量部、0.065質量部、0.07質量部、0.075質量部、0.08質量部、0.085質量部、0.09質量部、0.095質量部、0.1質量部、0.2質量部、0.3質量部、0.4質量部、0.5質量部、0.6質量部、0.7質量部、0.8質量部、0.9質量部、1質量部、2質量部、3質量部、4,5質量部、具体的には0.01質量部~3質量部、より具体的には0.01質量部~0.1質量部の含有量で含むことができる。光開始剤の含有量が上記範囲内であれば、上記数式1で表される割合Aおよび上記数式2で表される割合Bに到達することを助け、剥離力および凝集力を調節して高温信頼性で気泡が発生することを防ぐことができる。
【0109】
熱硬化型架橋剤は、(メタ)アクリル系共重合体を熱硬化させて粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着フィルムが上記数式1で表される割合Aおよび上記数式2で表される割合Bに到達することを助ける。
【0110】
熱硬化型架橋剤は、(メタ)アクリル系重合体または単量体混合物100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部未満、例えば、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、0.55質量部、0.6質量部、0.65質量部、0.7質量部、0.75質量部、0.8質量部、0.85質量部、0.9質量部、1質量部、2質量部、3質量部、4質量部、具体的には0.1質量部~2質量部、より具体的には0.1質量部~0.8質量部の含有量で含まれ得る。熱硬化型架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムのマトリックスがうまく形成され、上記数式1で表される割合Aおよび上記数式2で表される割合に到達することを助ける。
【0111】
熱硬化型架橋剤は、(メタ)アクリル系共重合体を熱硬化させる際に使用される通常の熱硬化剤を含み得る。例えば、架橋剤は、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、およびエポキシ系架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。好ましくは、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤を含む。
【0112】
イソシアネート系架橋剤は、2官能以上、例えば、2官能~6官能のイソシアネート型架橋剤を含むことができる。一実施形態において、イソシアネート系架橋剤は、m-キシレンジイソシアネート等を含むキシレンジイソシアネート(XDI)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)等を含むメチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートの1種以上、これらの付加体、またはこれらのイソシアヌレート体を含み得る。例えば、上記付加体またはイソシアヌレート体としては、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、キシレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0113】
一実施形態において、粘着フィルムまたは粘着フィルム用組成物は、レベリング剤をさらに含むことができる。
【0114】
レベリング剤は、熱硬化型架橋剤に比べて、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対してより多くの含有量で含まれ得る。
【0115】
レベリング剤は、(メタ)アクリル系重合体または単量体混合物100質量部に対して、0.01質量部超2質量部以下、例えば、0.02質量部、0.03質量部、0.04質量部、0.05質量部、0.06質量部、0.07質量部、0.08質量部、0.09質量部、0.1質量部、0.2質量部、0.3質量部、0.4質量部、0.5質量部、0.6質量部、0.7質量部、0.8質量部、0.9質量部、1.0質量部、1.1質量部、1.2質量部、1.3質量部、1.4質量部、1.5質量部、1.6質量部、1.7質量部、1.8質量部、1.9質量部、2質量部、具体的には0.05質量部~1.0質量部、より具体的には0.1質量部~1.0質量部の含有量で含まれ得る。レベリング剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムの表面エネルギーを下げて外観不良を改善することができる。
【0116】
レベリング剤は、シリコン(silicone)変性されたポリアクリレートのうち1種以上を含み得る。レベリング剤は、水酸基(OH)を有することにより、本発明の効果の具現が容易になり得る。
【0117】
本発明に係る粘着フィルム用組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0118】
シランカップリング剤は、被着体に対する粘着フィルムの剥離力をより高める役割を有する。シランカップリング剤は、当業者に知られている通常の種類を含むことができる。例えば、シランカップリング剤は、アセチルアセトン系シランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;および3-クロロプロピルトリメトキシシラン等からなる群より選択される少なくとも1種を含み得るが、これらに制限されるものではない。好ましくは、シランカップリング剤は、アセチルアセトン系シランカップリング剤であり得る。
【0119】
シランカップリング剤は、(メタ)アクリル系重合体または単量体混合物100質量部に対して、0.01質量部~2質量部、例えば、0.05質量部、0.1質量部、0.15質量部、0.2質量部、0.25質量部、0.3質量部、0.35質量部、0.4質量部、0.45質量部、0.5質量部、0.55質量部、0.6質量部、0.65質量部、0.7質量部、0.75質量部、0.8質量部、0.85質量部、0.9質量部、0.95質量部、1質量部、1.05質量部、1.1質量部、1.15質量部、1.2質量部、1.25質量部、1.3質量部、1.35質量部、1.4質量部、1.45質量部、1.5質量部、1.55質量部、1.6質量部、1.65質量部、1.7質量部、1.75質量部、1.8質量部、1.85質量部、1.9質量部、1.95質量部、または2質量部、具体的には0.05質量部~1質量部の含有量で含まれ得る。シランカップリング剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムの別の物性に影響を与えないと共に、粘着フィルムの被着体に対する剥離力を高めることができる。
【0120】
粘着フィルムは、添加剤をさらに含むことができる。
【0121】
添加剤には、UV吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、イオン性液体、リチウム塩、軟化剤、分子量調節剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、凝集剤、潤滑剤等の通常の添加剤が含まれ得るが、これらに制限されるものではない。
【0122】
添加剤は、粘着フィルムの全質量に対して10質量%以下、具体的には0.01質量%~10質量%、具体的には0.01質量%~1質量%の含有量で含まれ得る。添加剤の含有量が上記範囲内であれば、粘着フィルムの粘着力および信頼性に影響を与えないと共に、添加剤の効果を奏することができる。
【0123】
本発明に係る粘着フィルムは、上述の粘着フィルム用組成物を基材フィルムの一表面にコーティングしてコーティング層を形成し、コーティング層を乾燥させて粘着フィルム用塗膜を形成し、さらに該塗膜を硬化させることにより製造することができる。塗膜を硬化させた後に、または硬化させる前に、粘着フィルムに異物が付着することを防止するために、コーティング層または粘着フィルムの一面に離型フィルムをさらに貼り合わせることができる。基材フィルムは、上記で説明した通りである。離型フィルムは、離型処理(例:シリコン処理またはフッ素処理)された高分子フィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を含むポリエステルフィルムであり得る。
【0124】
乾燥は、コーティング層を100℃~150℃で0.5分~5分処理する工程を含み得るが、これに制限されるものではない。硬化は、光硬化および熱硬化を含む。光硬化は、塗膜をUV等の光によって200mJ/cm~500mJ/cmの積算光量で照射する工程を含み、熱硬化(熟成)は、塗膜を40℃~80℃で0.5日~3日処理する工程を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0125】
以下、本発明の一実施形態にかかる光学部材を説明する。
【0126】
本実施形態にかかる光学部材は、本発明の粘着フィルムを含む。
【0127】
一実施形態において、光学部材は、粘着フィルムおよび当該粘着フィルムの少なくとも一面に積層される被着体を含む。一実施形態において、被着体は粘着フィルムに比べて高屈折率を有し得る。被着体の下部面には発光素子パネルが位置するが、発光素子パネルから入射した光は、被着体、粘着フィルム等を通じて順に透過し得る。本発明の粘着フィルムは、従来の粘着フィルムに比べて被着体との屈折率の差を低くすることによって、光の抽出効率を高くすることができる。例えば、被着体は、屈折率が1.5以上、具体的には1.5~2.0、より具体的には1.7~2.0になり得る。
【0128】
本発明の光学表示装置は、本発明の粘着フィルムまたは本発明の光学部材を含む。光学表示装置は、有機発光表示装置等を含む発光表示装置、液晶表示装置等を含み得る。
【0129】
一実施形態において、光学表示装置は、屈折率が1.5~2の1種以上の機能層を含むディスプレイパネル、第1粘着フィルム、および光学フィルムを含み、第1粘着フィルムは本発明の粘着フィルムを含む。
【0130】
一実施形態によれば、光学表示装置において、屈折率が1.5~2の機能層を含むディスプレイパネル、粘着フィルム、および光学フィルムが順に積層され得る。
【0131】
ディスプレイパネルは、発光素子を含み、表示装置の駆動のために発光する部分である。ディスプレイパネルのうち発光素子は、有機EL(OLED)、量子ドットディスプレイ(QD)、量子ドット有機EL(QD-OLED)等を含み得るが、これらに制限されるものではない。
【0132】
機能層は、屈折率が1.5~2であることが好ましく、光学表示装置またはディスプレイパネルの駆動時に追加的な機能を提供できる。機能層は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
【0133】
一実施形態において、機能層は、タッチスクリーンパネル、パッシベーション層等を含むことができる。タッチスクリーンパネルは、光学表示装置の画面上に手やペンでタッチした時にその位置を把握することにより、表示装置が特定処理を行えるように、画面で入力された資料を受け取る。タッチスクリーンパネルは、アルミニウム、チタニウム等の金属材料で形成することができる。パッシベーション層は絶縁層であり、有機物質および無機物質の1種以上で形成された多層で構成されていてもよい。
【0134】
光学フィルムは、ウィンドウフィルム、ウィンドウ、偏光板、カラーフィルター、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射偏光フィルム、反射防止フィルム、補償フィルム、輝度向上フィルム、配向膜、光拡散フィルム、ガラス飛散防止フィルム等を含むことができる。好ましくは、光学フィルムは、偏光子および偏光子の少なくとも一面に形成された保護層(例:保護フィルムまたは保護コーティング層)を含む偏光板になり得る。
【0135】
光学フィルムと第1粘着フィルムとの間には、上述の基材フィルムが含まれなくてもよい。これは、UV照射によって基材フィルムが粘着フィルムから容易に除去されることに起因する。これについては、下記の図1によって詳しく説明する。
【0136】
光学フィルムと第1粘着フィルムとの間には、第2粘着フィルムがさらに含まれてもよい。第2粘着フィルムは、光学フィルムに対する高い粘着力を提供できるのであれば、その種類に制限はない。例えば、第2粘着フィルムは、感圧粘着剤(PSA)であり得る。
【0137】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学表示装置の断面概略図である。
【0138】
図1を参照すると、光学表示装置は、ディスプレイパネル110、ディスプレイパネル110の上部面に順に積層されたタッチスクリーンパネル120、粘着フィルム140、および光学フィルム150を含み得る。タッチスクリーンパネル120の上部面には、パッシベーション層130がパターン化されて形成されている。ディスプレイパネル、タッチスクリーンパネル、粘着フィルム、光学フィルム、およびパッシベーション層は、それぞれ上記の通りである。
【実施例
【0139】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0140】
(実施例1)
窒素ガスが還流し、温度調節が容易になるように冷却装置が設けられた1Lの反応器内に、酢酸エチル 80質量部を添加した。この反応器内に、4-ビフェニリルメチルアクリレート(ホモポリマーのTg:6℃)70質量部と、2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:33℃)15質量部との混合物 85質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(ホモポリマーのTg:-30℃)15質量部と、を含む単量体混合物100質量部を添加した。反応器に窒素ガスを1時間投入して、単量体混合物から酸素を除去した後、反応器の内部温度を70℃に維持した。単量体混合物を均一に撹拌した後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル 0.05質量部を投入し、4時間反応させて、芳香族基(4-ビフェニル基および2-フェニルフェノキシ基)および水酸基を含有する(メタ)アクリル系ランダム共重合体(重量平均分子量:55万g/mol)含有溶液を製造した。その後、酢酸エチルを添加して、固形分35質量%の溶液を製造した。
【0141】
固形分基準で、上記で製造した(メタ)アクリル系共重合体100質量部、光開始剤としてリン系開始剤(Omnirad(登録商標)TPO H、IGM Resins B.V.社製)0.04質量部、熱硬化型架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤、CK-164、NCI社製)0.4質量部、シランカップリング剤としてアセチルアセトン系シランカップリング剤(A-50、綜研化学株式会社製)0.25質量部、レベリング剤としてシラン系レベリング剤(BYK(登録商標)-Silclean 3700、BYK社製)0.8質量部を添加し、トルエン 10質量部を添加して希釈した後、30分間撹拌して組成物を製造した。
【0142】
上記で製造した組成物を、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:75μm、離型処理されていない)の一面に所定の厚さで塗布し、120℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの粘着フィルム用塗膜を形成した。得られた塗膜の上に離型フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:38μm、離型処理されている)を覆った後、金属ハライドランプを用いて300mJ/cmの積算光量でUVを照射し、50℃で2日間硬化(熟成)させて、基材フィルム、粘着フィルム(厚さ:20μm)、および離型フィルムの積層体を製造した。
【0143】
(実施例2、実施例3、比較例1および比較例2)
各成分の含有量を下記表1(単位:質量部)のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法で、基材フィルム、粘着フィルム、および離型フィルムの積層体を製造した。
【0144】
【表1】
【0145】
実施例および比較例で製造した積層体に対して、下記の物性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0146】
(1)貯蔵弾性率(単位:kPa):積層体から基材フィルムと離型フィルムとを全て剥離して得た粘着フィルムに対して、貯蔵弾性率を測定した。動的粘弾性測定装置 ARES(Anton Parr社製、MCR-501)を使用して、温度スウィープ条件で貯蔵弾性率を評価した。上記粘着フィルムを複数個積層させて、600μmの厚さにサンプルを作製した。直径が8mmの穿孔機で積層物を穿孔して、試験片として使用した。8mmのジグを用いて試験片にノーマルフォース1.0Nで力を加えた状態で、frequency:1Hz、strain:1%、-30℃~100℃の温度で、10℃/minの温度上昇速度で温度を上昇させながら、下記表2に示す温度で貯蔵弾性率を求めた。
【0147】
(2)屈折率:積層体から基材フィルムおよび離型フィルムを分離して得た粘着フィルムに対して、屈折率測定機 Prism couplerを使用して、波長633nmで測定した。
【0148】
(3)剥離力(単位:gf/inch、mN/mm):実施例および比較例で製造した、基材フィルム/粘着フィルム/離型フィルムの積層体(横×縦、2.5cm×10cm)から離型フィルムを剥離した。その後、無アルカリガラス板(横×縦、3cm×10cm)に、粘着フィルム/基材フィルムの積層体を、上記粘着フィルムを介して貼り合わせて試験片を製造した。製造した試験片を剥離力測定装置であるTA Instrument社製の装置に固定させ、25℃、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で無アルカリガラス板から粘着フィルムを剥離する際の剥離力を測定した。なお、下記表2には、単位:mN/mmの場合の剥離力の値も示している。
【0149】
(4)段差追従性:ガラス板に、フォトレジストを使用して、互いに離隔された複数個のパターン(横×縦×高さ、25μm×25μm×3μm)を作製した。実施例および比較例で製造した積層体から離型フィルムを除去し、25℃で粘着フィルムを介して上記の作製したパターン上に貼り合わせた後、オートクレーブ(50℃および5.5barで1000秒間)処理した。パターン段差部分に気泡があるか、光学顕微鏡で確認した。気泡が全く発生していない場合はOK、気泡が少しでも発生している場合はNGと評価した。
【0150】
(5)外観:実施例および比較例で得られた粘着フィルム用組成物を一方向に塗布し、乾燥させて得た粘着フィルム用塗膜の表面に、塗布方向の直線形態のライン(凹凸)がある場合はNG、ラインがない場合はOKと評価した。上のラインがあると、最終の粘着フィルム表面にもラインが残り、粘着フィルムの外観が低下する。
【0151】
(6)経時剥離力の変化率(単位:%):実施例および比較例で製造した、基材フィルム/粘着フィルム/離型フィルムの積層体(横×縦、2.5cm×10cm)から離型フィルムを剥離した後、無アルカリガラス板(横×縦、3cm×10cm)に粘着フィルム/基材フィルムの積層体を、上記粘着フィルムを介して貼り合わせて試験片を製造した。製造した試験片を、剥離力測定装置であるTA Instrument社製の装置に固定させ、25℃、剥離速度300mm/min、剥離角度180°で無アルカリガラス板から粘着フィルムを剥離する際の剥離力(PS1)を測定した。
【0152】
上記積層体を、50℃および相対湿度50%RHの恒温恒湿チェンバー内で7日間放置した後、上記と同じ方法で剥離力(PS2)を測定した。PS1、PS2、および上記数式3を用いて経時剥離力の変化率を算出した。
【0153】
(7)信頼性:実施例および比較例における積層体から離型フィルムを剥離し、粘着フィルムを介してガラス板に貼り合わせた後、横×縦(100mm×100mm)に切断し、60℃および相対湿度95%RHのチェンバーで500時間放置した。気泡および浮きが発生した場合は×、気泡および浮きが発生しなかった場合は○と評価した。
【0154】
【表2】
【0155】
上記表2から明らかなように、本発明の粘着フィルムは、高屈折率であり、かつ段差追従性および外観に優れ、剥離力が高かった。また、本発明の粘着フィルムは、経時剥離力の変化率が低く信頼性に優れた。
【0156】
一方、本発明に係る数式1で表される割合Aが本発明の範囲を満たさない比較例1の粘着フィルムは、段差追従性、外観、および剥離力が良くなかった。本発明に係る数式1で表される割合Aおよび数式2で表される割合Bが、ともに本発明の範囲を満たさない比較例2の粘着フィルムは、経時剥離力の変化率が高すぎるため信頼性が良くなかった。
【0157】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【符号の説明】
【0158】
110 ディスプレイパネル、
120 タッチスクリーンパネル、
130 パッシベーション層、
140 粘着フィルム、
150 光学フィルム。
図1