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特許7564982基板ホルダ、めっき装置、基板ホルダに液体を導入する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-01
(45)【発行日】2024-10-09
(54)【発明の名称】基板ホルダ、めっき装置、基板ホルダに液体を導入する方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/06 20060101AFI20241002BHJP
   C25D 21/00 20060101ALI20241002BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20241002BHJP
【FI】
C25D17/06 Z
C25D21/00 Z
C25D17/08 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024521806
(86)(22)【出願日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 JP2024001675
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岳
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176311(JP,A)
【文献】特開2023-001082(JP,A)
【文献】特許第7132135(JP,B2)
【文献】特開2020-117765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/06
C25D 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダであって、
前記基板を挟んで保持する第1保持部材及び第2保持部材と、
前記第1保持部材及び前記第2保持部材で前記基板が保持された状態において、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の間に配置され、前記基板ホルダのコンタクトが接触する前記基板の外周部を密閉するシールと、
前記シールによって密閉された内部空間に液体を注入する液注入口と、
前記内部空間から気体を排出する排気口と、
を備え、
前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されており、前記排気口の流路面積は、前記液注入口の流路面積より大きい、
基板ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板ホルダにおいて、
前記液注入口は、前記第1保持部材又は前記第2保持部材に設けられている、基板ホルダ。
【請求項3】
請求項1に記載の基板ホルダにおいて、
前記液注入口は、前記基板ホルダをめっき装置において使用する状態で立てた状態における前記基板ホルダの下部に設けられている、基板ホルダ。
【請求項4】
請求項3に記載の基板ホルダにおいて、
前記基板ホルダをめっき装置において使用する状態で立てた状態で、
前記液注入口は、前記基板ホルダの前記基板を配置する領域より下方に設けられ、
前記排気口は、前記基板ホルダの前記基板を配置する領域より上方に設けられる、
基板ホルダ。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の基板ホルダにおいて、
前記シールは、弾性変形することにより前記液注入口を開放する弁部を有する、基板ホルダ。
【請求項6】
請求項5に記載の基板ホルダにおいて、
前記シールと前記第1又は第2保持部材との間に突起が挿入されることで、前記第1又は第2保持部材と前記突起部との間に形成される隙間として、前記液注入口が開放されるように構成されている、基板ホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載の基板ホルダにおいて、
前記シールは、前記内部空間の一部を他の部分よりも拡張するように配置された拡張区間を有し、前記突起は前記拡張区間の先端部に挿入される、基板ホルダ。
【請求項8】
請求項5に記載の基板ホルダにおいて、
前記シールは、切込みが設けられた肉厚部を有し、
内部を貫通する通路を有するピンが前記切込みに挿入されることで、前記液注入口が開口されるように構成されている、基板ホルダ。
【請求項9】
請求項8に記載の基板ホルダにおいて、
前記シールは、前記内部空間の一部を他の部分よりも拡張するように配置された拡張区間を有し、前記ピンは前記拡張区間の先端部に挿入される、基板ホルダ。
【請求項10】
請求項1から4の何れかに記載の基板ホルダにおいて、
前記排出部が、複数の排気口を有し、
前記複数の排気口の流路面積の合計が、前記液注入口の流路面積より大きい、
基板ホルダ。
【請求項11】
請求項1から4の何れかに記載の基板ホルダにおいて、
前記排出部が前記基板ホルダの幅方向に延びるスリットを有する、基板ホルダ。
【請求項12】
めっき装置であって、
請求項1から4の何れかに記載の基板ホルダと、
前記基板ホルダを収容するめっき槽と、
を備える、めっき装置。
【請求項13】
請求項12に記載のめっき装置において、
底面から突出する突起を有し、液体を保持する第1槽を更に備え、
前記基板ホルダは、前記基板ホルダが前記第1槽に収容されたとき、前記シールと前記第1又は第2保持部材との間に前記突起が挿入されることで、前記第1又は第2保持部材と前記突起部との間に形成される隙間として、前記液注入口が開口されるように構成されている、めっき装置。
【請求項14】
請求項12に記載のめっき装置において、
底面から突出するピンであって内部を貫通する通路を有するピンを有し、液体を保持する第1槽を更に備え、
前記シールは、切込みが設けられた肉厚部を有し、
前記基板ホルダは、前記基板ホルダが前記第1槽に収容されたとき、前記ピンが前記切込みに挿入されることで、前記通路として前記液注入口が開放されるように構成されている、めっき装置。
【請求項15】
基板を保持する基板ホルダに液体を導入する方法であって、
前記基板ホルダの第1保持部材及び第2保持部材で前記基板を挟んで保持すること、
前記基板の外周部がシールによって密閉して配置される前記基板ホルダの内部空間に、液注入口から液体を注入すると共に、前記液注入口の流路面積よりも大きい流通面積を有する排出口から前記内部空間内の気体を排出することであって、前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されていること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、基板ホルダ、めっき装置、基板ホルダに液体を導入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解めっきにおいて、何らかの不具合(基板の凹凸、シールの劣化等)によって、基板ホルダ内へのめっき液のリークが発生すると、ホルダ内部へ侵入しためっき液により、基板のシード層が腐食及び/又は溶解し、導通不良が発生することにより、めっきの均一性が低下する場合がある。
【0003】
特許第7132135号明細書(特許文献1)には、基板ホルダの上部に液注入口及び排気口を設け、基板ホルダを液体中に浸漬させるときに、液注入口を液面より下に位置させ且つ排気口を液面より上に位置させた状態で傾けて、基板ホルダ内の密閉空間(内部空間)内の空気を排気口から排気しつつ、液注入口から内部空間に液体を充填することが記載されている。特許第7097522号明細書(特許文献2)には、基板ホルダの内部空間と連絡する導入通路及び排出通路を設け、排気通路に減圧装置を接続し、減圧装置により内部空間を減圧した後に、内部空間に液体を導入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7132135号明細書
【文献】特許第7097522号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第7132135号明細書(特許文献1)に記載の基板ホルダでは、基板ホルダへの液体注入時に基板ホルダを傾ける機構を追加する必要があり、めっき装置の構成が複雑になる可能性がある。また、基板ホルダの液注入口と排気口とで十分な圧力差を確保できず、液注入速度が十分に確保できない懸念がある。特許第7095722号明細書(特許文献2)のように基板ホルダに減圧装置を接続する場合、基板ホルダに減圧装置を接続する工程を追加する必要がある。
【0006】
本発明の目的の1つは、上述した課題の少なくとも1つを解決することにある。また、本発明の目的の1つは、基板ホルダの内部空間に効率よく液体を導入することにある。また、本発明の目的の1つは、簡易な構成及び/又は工程で基板ホルダの内部空間に効率よく液体を導入することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、 基板を保持する基板ホルダであって、 前記基板を挟んで保持する第1保持部材及び第2保持部材と、 前記第1保持部材及び前記第2保持部材で前記基板が保持された状態において、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の間に配置され、前記基板ホルダのコンタクトが接触する前記基板の外周部を密閉するシールと、 前記シールによって密閉された内部空間に液体を注入する液注入口と、 前記内部空間から気体を排出する排気口と、を備え、 前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されており、前記排気口の流路面積は、前記液注入口の流路面積より大きい、 基板ホルダが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るめっき装置の全体配置図である。
図2】一実施形態に係るめっきモジュールを示す概略図である。
図3】一実施形態に係る基板ホルダの正面図である。
図4図3のA-Aに沿った断面図である。
図5】比較例に係る基板ホルダの内部空間の断面を拡大した概略図である。
図6A】一例に係る基板ホルダの正面図である。
図6B図6AのB-Bに沿う断面図である。
図7A】比較例に係る基板ホルダの正面図である。
図7B図7AのC-Cに沿う断面図である。
図8A】一例に係る液導入時の基板ホルダの正面図である。
図8B図8AのD-Dに沿う断面図である。
図9A】一例に係る液導入時の基板ホルダの断面図である。
図9B図9AのE-Eに沿った断面図である。
図10】めっき槽における基板ホルダの正面図である。
図11】基板ホルダの排気口の構成例である。
図12】基板ホルダの排気口の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0010】
本明細書において「基板」には、ウエハ等の半導体基板、ガラス基板、液晶基板、プリント回路基板だけでなく、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、微小機械素子、あるいは部分的に製作された集積回路、その他任意の被処理対象物を含む。基板は、多角形(四角形等)、円形を含む任意の形状のものを含む。また、本明細書において「前面」、「後面」、「フロント」、「バック」、「上」、「下」、「左」、「右」等の表現を用いるが、これらは、説明の都合上、例示の図面の紙面上における位置、方向を示すものであり、装置使用時等の実際の配置では異なる場合がある。
【0011】
図1は、一実施形態に係るめっき装置の全体配置図である。めっき装置100は、基板ホルダ200(図2)に基板を保持した状態で基板にめっき処理を施すものである。めっき装置100は、基板ホルダ200に基板をロードし、又は基板ホルダ200から基板をアンロードするロード/アンロードステーション110と、基板を処理する処理ステーション120と、洗浄ステーション50aとに大きく分けられる。処理ステーション120には、基板の前処理及び後処理を行う前処理・後処理モジュール120Aと、基板にめっき処理を行うめっきモジュール120Bとが配置されている。
【0012】
ロード/アンロードステーション110は、1又は複数のカセットテーブル25と、基板着脱モジュール29とを有する。カセットテーブル25は、1又は複数の基板を収納したカセット25a(例えば、FOUP)を搭載する。基板着脱モジュール29は、基板Wを基板ホルダ200に着脱するように構成される(図2参照)。また、基板着脱モジュール29の近傍(例えば下方)には、基板ホルダ200を収容するためのストッカ30が設けられる。洗浄ステーション50aは、めっき処理後の基板Wを洗浄して乾燥させる洗浄モジュール50を有する。
【0013】
カセットテーブル25、基板着脱モジュール29、及び洗浄ステーション50aで囲まれる位置には、これらのユニット(モジュール)間で基板を搬送する搬送ロボット27が配置されている。搬送ロボット27は、走行機構28により走行可能に構成される。搬送ロボット27は、例えば、めっき前の基板をカセット25aから取り出して基板着脱モジュール29に搬送し、めっき後の基板を基板着脱モジュール29から受け取り、めっき後の基板を洗浄モジュール50に搬送し、洗浄及び乾燥された基板を洗浄モジュール50から取り出してカセット25aに収納するように構成される。
【0014】
前処理・後処理モジュール120Aは、プリウェットモジュール32と、プリソークモジュール33と、第1リンスモジュール34と、ブローモジュール35と、第2リンスモジュール36と、を有する。プリウェットモジュール32は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール32は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。プリソークモジュール33は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸などの処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。第1リンスモジュール34では、プリソーク後の基板が基板ホルダ200と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール35では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2リンスモジュール36では、めっき後の基板が基板ホルダ200と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。なお、上記構成は一例であり、上述した構成に限定されず、前処理・後処理モジュール120Aは、他の構成を採用することが可能である。
【0015】
めっきモジュール120Bは、複数のめっき槽39(めっきセルとも称される)と、オーバフロー槽38とを有する。各めっき槽39は、内部に一つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを行う。ここで、めっき液の種類は、特に限られることはなく、用途に応じて様々なめっき液が用いられる。このめっきモジュール120Bの構成は一例であり、めっきモジュール120Bは、他の構成を採用することが可能である。
【0016】
めっき装置100は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ200を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した搬送装置37を有する。この搬送装置37は、基板着脱モジュール29、ストッカ30、プリウェットモジュール32、プリソークモジュール33、第1リンスモジュール34、ブローモジュール35、第2リンスモジュール36、及びめっきモジュール120Bとの間で基板ホルダ200を搬送するように構成される。図1では、搬送装置37が1台のトランスポータを備える例を記載しているが、搬送装置37が2台以上のトランスポータを備える構成としてもよい。
【0017】
以上のように構成されるめっき装置100は、上述した各部を制御するように構成された制御部としての制御モジュール(コントローラ)175を有する。コントローラ175は、所定のプログラムを格納したメモリ175Bと、メモリ175Bのプログラムを実行するCPU175Aとを有する。メモリ175Bを構成する記憶媒体は、各種の設定データ、めっき装置100を制御するプログラムを含む各種のプログラムなどを格納している。プログラムは、例えば、搬送ロボット27の搬送制御、基板着脱モジュール29における基板の基板ホルダ200への着脱制御、搬送装置37の搬送制御、各処理モジュールにおける処理の制御、各めっき槽39におけるめっき処理の制御、洗浄ステーション50aの制御を実行するプログラムを含む。記憶媒体は、不揮発性の記憶媒体及び/又は揮発性の記憶媒体を含むことが可能である。記憶媒体としては、例えば、コンピュータで読み取り可能なROM、RAM、フラッシュメモリなどのメモリや、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0018】
コントローラ175は、めっき装置100及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位コントローラと通信可能に構成され、上位コントローラが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。コントローラ175の一部又は全部の機能は、ASIC等のハードウェアで構成することができる。コントローラ175の一部又は全部の機能は、PLC又はシーケンサ等で構成してもよい。コントローラ175の一部又は全部は、めっき装置100の筐体の内部及び/又は外部に配置することができる。コントローラ175の一部又は全部は、有線及び/又は無線によりめっき装置100の各部と通信可能に接続される。
【0019】
(めっきモジュール)
図2は、めっきモジュール120Bを示す概略図である。同図に示すように、めっきモジュール120Bは、内部にめっき液Qを保持するめっき槽39と、めっき槽39内で基板ホルダ200に対向して配置されたアノード40と、アノード40を保持するアノードホルダ60と、を備えている。基板ホルダ200は、カソードとしての基板Wを着脱自在に保持し、かつ基板Wをめっき槽39内のめっき液Qに浸漬させるように構成されている。本実施形態に係るめっき装置100は、めっき液Qを介してアノード40と基板Wとの間に電流を流すことで基板Wの表面を金属でめっきする電解めっき装置である。他の実施形態では、めっき装置は無電解めっきであってもよい。アノード40としては、めっき液に溶解しない例えば酸化イリジウムまたは白金を被覆したチタンからなる不溶性アノードが用いられる。アノード40として、溶解性アノードを使用してもよい。溶解性アノードとして、例えば、含リン銅からなる溶解性アノードを用いることができる。基板Wは、例えば、半導体基板、ガラス基板、樹脂基板、又はその他任意の被処理対象物とすることができる。基板Wの表面にめっきされる金属は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、Sn-Ag合金、またはコバルト(Co)である。めっき液Qは、めっきする金属を含む酸性溶液であり、例えば、銅をめっきする場合は硫酸銅溶液である。
【0020】
アノード40および基板Wは鉛直方向に延在するように配置され、且つめっき液中で互いに対向するように配置される。但し、他の実施形態では、アノード40および基板Wが水平方向に延在するように配置される構成(横型又はカップ式と称される)が採用され得る。アノード40はアノードホルダ60を介して電源90の正極に接続され、基板Wは基板ホルダ200を介して電源90の負極に接続される。アノード40と基板Wとの間に電圧を印加すると、基板Wに電流が流れ、めっき液の存在下で基板Wの表面に金属膜が形成される。
【0021】
めっきモジュール120Bは、めっき槽39に隣接するオーバフロー槽38を更に備えている。めっき槽39内のめっき液はめっき槽39の側壁を越流してオーバフロー槽38内に流入するようになっている。オーバフロー槽38の底部には、めっき液の循環ライン58aの一端が接続され、循環ライン58aの他端はめっき槽39の底部に接続されている。循環ライン58aには、例えば、循環ポンプ58b、恒温ユニット58c、及びフィルタ58dが取り付けられる。めっき液Qは、めっき槽39の側壁をオーバフローしてオーバフロー槽38に流入し、さらにオーバフロー槽38から循環ライン58aを通ってめっき槽39に戻される。このように、めっき液Qは、循環ライン58aを通じてめっき槽39とオーバフロー槽38との間を循環する。
【0022】
めっき装置100は、基板W上の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)14と、めっき槽39内のめっき液を攪拌するパドル16とをさらに備えることができる。調整板14は、パドル16とアノード40との間に配置されており、めっき液中の電場を制限するための開口14aを有している。パドル16は、めっき槽39内の基板ホルダ200に保持された基板Wの表面近傍に配置されている。パドル16は例えばチタン(Ti)または樹脂から構成されている。パドル16は、基板Wの表面と平行に往復運動することで、基板Wのめっき中に十分な金属イオンが基板Wの表面に均一に供給されるようにめっき液Qを攪拌する。
【0023】
なお、上述した構成は一例であり、めっき装置100、めっきモジュール120B等の構成は、他の構成を採用することが可能である。
【0024】
(基板ホルダ)
<構成例1>
図3は、一例に係る基板ホルダの正面図である。図4は、図3のA-Aに沿った基板ホルダの断面図である。同図では、基板ホルダ200がめっき液Q中にある状態を示す。
【0025】
基板ホルダ200は、図4に示すように、第1保持部材210と第2保持部材220とを備え、第1保持部材210及び第2保持部材220により基板Wを両面側から挟んで保持する。第1保持部材210及び第2保持部材220には、基板Wの両面を露出する開口211Aが形成されている。第1保持部材210又は第2保持部材220の一方に開口211Aが設けられてもよい。第1保持部材210は、基板Wと第1保持部材210との間をシールする内側シール215と、正面視(図3)において内側シール215より外側で、第1保持部材210と第2保持部材220との間をシールする外側シール216とを備えている。第2保持部材220は、基板Wと第2保持部材220との間をシールする内側シール225を備えている。内側シール215、225と外側シール216とで囲まれる空間が基板ホルダ外部からシールされる内部空間240となっている。
【0026】
また、第1保持部材210は、外部接続端子218(図3)と、コンタクト213(図4)と、外部接続端子218とコンタクト213とを接続するバスバー214(図3図4)と、を備えている。図3では、コンタクト213を省略している。コンタクト213は、第1保持部材210及び第2保持部材220が基板Wを挟んで保持した状態で、基板Wのシード層401に接触して基板Wにめっき電流を流すための電気接点である。コンタクト213は、基板Wの外周部に沿って複数設けられる。また、図4の例では、基板Wのシード層401(例えば、Cu層)上に、めっきのパターンを区画するレジストパターン402が形成されている。また、基板ホルダ200は、基板ホルダ200を槽の縁に掛けて設置するためのハンドル212(図3)を有する。本実施形態では、外部接続端子218は、ハンドル212の一端に設けられる。他の実施形態では、外部接続端子218がハンドル212の両端に設けられても良い。
【0027】
図4に示すように、この基板ホルダ200の内部空間240には、液体(この構成例では、純水の一種である脱イオン水DIW)が導入されている。このようにコンタクト213が液体で覆われる構成を、ここでは、ウェットコンタクトと称する。内部空間240に注入する液体は、基板ホルダ200の内部空間240に露出する構成部品を腐食させない液体であれば、DIW以外の液体であってもよい。液体は、例えば、金属塩を含んでいない液体(金属塩の濃度が所定濃度(例えば5g/L)未満の液体)を用いることができる。このような液体は、例えば、水道水、天然水、純水を含む。純水は、例えば、脱イオン水(DIW)、蒸留水、精製水、又はRO水を含む。
【0028】
図4の例では、基板ホルダ200に設けられた導入通路231によりDIWが内部空間240に導入される。導入通路231の出口は、内部空間240で開口する液注入口511となっている。導入通路231の途中には、導入通路231の導通及び遮断を制御するためのバルブ231aが設けられている。バルブ231aは、例えば電磁弁とすることができ、開閉弁であっても、流量を制御可能な流量制御弁であってもよい。バルブ231aは、コントローラ175により制御される。バルブ231aは、基板ホルダ200の第2保持部材220の内部又は表面に設けることができる。導入通路231の一部又は全部は、基板ホルダ200の第2保持部材220の内部に形成された通路、及び/又は、第2保持部材220の表面に配置される配管として設けることができる。導入通路231は、例えば、基板ホルダ200の下部、特に、基板Wより下方に設けられることが好ましい。
【0029】
基板ホルダ200の上部には、図3に示すように、内部空間240に連通する排気口521が設けられている。排気口521は、基板ホルダ200の基板Wを保持する部分(ハンドル以外の部分)の上端部を基板ホルダ幅方向に延びる形状(図12の排気口521と同様のスリット形状)で構成される。本実施形態では、排気口521の流路面積は、液注入口511(導入通路231の出口)の流路面積よりも大きく形成される。この構成によれば、基板ホルダ200の内部空間240への液注入時に、流路面積が相対的に大きい排気口521から内部空間240内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口511から内部空間240内に液体を効率よく注入することができ、内部空間240への液体の注入速度を大きくすることができる。排気口521は、例えば、第1保持部材210に設けられた凹部(図示略)と、第2保持部材220に設けられた凹部(図示略)とを合わせて形成することができる。このように排気口521を形成すれば、排気口521の流路面積を大きくとり易い。なお、めっき槽39では、排気口521はめっき液面より上方に位置するように、基板ホルダ200がめっき液に浸漬される。
【0030】
図4において、基板ホルダ200の内部空間240には、犠牲電極及び/又はリーク電流検出電極として機能する電極235Aを設けることができる。また、めっき槽39において、電極235Aとバスバー214との間を電源236Aに接続することができる。電源236Aは、直流電源及び/又は交流電源で構成することができる。また、電源236A内又は電源236Aからの配線上に電流検出器237Aを設けても良い。この状態で、コントローラ175が、電極235Aと、コンタクト213(バスバー214)間に流れる電流又はそれらの間の電気抵抗をモニタすることにより、内部空間240へのめっき液のリークを検出することができる。めっき液のリークがない場合は、DIWの抵抗値が大きいため電極235Aとコンタクト213との間に電流は流れないが、めっき液のリークがある場合には、めっき液によってDIWの抵抗値が下がり、電極235Aとコンタクト213との間に電流が流れる。また、電極235Aが犠牲電極として機能する場合には、電極235Aをコンタクト213に優先させて溶解させることで、めっき液が内部空間240にリークした際にも、コンタクト213の腐食を抑制することができる。
【0031】
電極235Aは、シード層の材料よりも自然電位(標準電極電位)が高い材料から形成されてもよいし、又はそのような材料でコーティングされた不溶解性の電極であってもよい。電極235Aをコンタクト213と同一材料とする場合には、電極235Aをコンタクト213に対して高電位にバイアスして、電極235Aをコンタクト213より溶解し易い状態としてもよい。なお、犠牲電極としての電極235Aのみを設けてもよいし、リーク電流検出電極として機能する電極235Aのみを設けてもよく、電極235A及び関連する構成を省略しても良い。後述する構成例において、上述した電極235A及び関連する構成の一部又は全部を設けても良く、上述した電極235A及び関連する構成を設けなくてもよい。
【0032】
図5は、比較例に係る基板ホルダの内部空間の断面を拡大した概略図である。同図では、基板ホルダ200がめっき液Q中にある状態を示す。同図に示すように、比較例に係る基板ホルダ200Aでは、内部空間240Aが空洞であり、空気が存在する。比較例に係る基板ホルダ200Aでは、コンタクト213は、内部空間240内でドライな状態で配置されている。このようなコンタクト213は、ドライコンタクトと称される。
【0033】
比較例に係る基板ホルダ200Aでは、内部空間240Aが空洞であるため、めっき液Qが内部空間240A内に侵入するリークが一旦発生すると(リークパスが存在すると)、めっき液Qによる液圧によって内部空間240Aの空気が圧縮され、大量のめっき液Qがシール内へ侵入するおそれがある。また、めっき液Qのリークが発生すると、めっき液Qの原液が希釈されることなくコンタクト213近傍の露出したシード層401へ付着する。内部空間240A内のシード層401にめっき液Qが付着すると、内部空間240内に存在する空気がめっき液Qに溶解し、めっき液Q中の溶存酸素濃度勾配による局部電池作用、及び/又は、めっき電流の分流による電解腐食によって、シード層401が溶解し、電気的に絶縁(給電不良が発生)するおそれがある。
【0034】
一方、図4に示すように基板ホルダ200の内部空間240が液体(この例では、DIW)で満たされる場合には、以下のような有利な作用効果がある。
(1)リークのリスク低減
リークパスが存在しても、基板ホルダ200の内部空間240内が液体で満たされ、シール215、216内外の圧力がバランスされている為、めっき液Qの内部空間240内への侵入は拡散した分に限られる。
(2)リーク時のシード溶解抑制
リークした場合でもめっき液Qが液体で希釈され、更に気液界面が存在しない為、基板Wのシード401の腐食はおこり難い。
犠牲電極235Aを設置すれば、万一、腐食し得る量のめっき液のリークが発生しても、犠牲電極(例えば、Cu)に対して、コンタクト213やシード層401が貴にバイアスされているため、犠牲電極235Aが優先して溶解し、シード401の溶解は抑制される。
(3)リーク検知
シール近傍にリークセンサ(電極235A)を設置すれば、内部空間240へのめっき液のリークを検知可能である。
(4)量産時の信頼性
フィキシングの度(基板ホルダにより基板を保持する度)にシール内に液体を供給/排出する為、洗浄液の残水によるコンタクトの汚染の蓄積を抑制可能である。また、基板ホルダを自動クリーニングした後に、コンタクトを乾燥させずにめっき処理が可能である。
【0035】
<構成例2>
図6Aは、一例に係る基板ホルダの正面図である。図6Bは、図6AのB-Bに沿う断面である。この基板ホルダ200では、外側シール216の構成が前述の基板ホルダ(図3図4)のものとは異なる。また、図3では省略したが、図6A及び図6Bでは、第1保持部材210と第2保持部材220とをロックするクランプ(フック227、フック217)を表示している。他の構成については、前述した基板ホルダと同様の構成であるので、以下、異なる点を主に説明し、同様の構成についての説明を省略する。
【0036】
クランプは、第1保持部材210に設けられたフック217と、第2保持部材220に設けられたフック227と、を備えている。フック227は、バネによってフック217に係合する方向に付勢されている。第1保持部材210及び第2保持部材220で基板Wを挟んで保持する際に、フック227がフック217に係合することで、第1保持部材210と第2保持部材220とがロックされる。
【0037】
この構成例では、図6Aに示すように、排気口521が基板ホルダ200の左右方向の一端側に設けられる。外側シール216は、排気口521の構成に合わせて、排気口521の回りで途切れて構成されている。排気口521は、内部空間240と基板ホルダ200の外部とを流体的に連通する。図6Aの例では、排気口521は、後述する液注入口511より高い位置であれば、任意の箇所に設けることができる。但し、基板ホルダ200をめっき液Qに浸漬した際に(図10参照)、排気口521からのめっき液の侵入を防止する観点から、排気口521はめっき液面より高い位置にある必要がある。従って、排気口521は、基板Wを保持する領域より高い位置、例えば、基板ホルダ200の基板Wを保持する部分(ハンドル以外の部分)の上端部にあることが好ましい。
【0038】
基板ホルダ200の下部には、正面視(図6A)において、外側シール216で囲む部分(内部空間240)が他の部分よりも下方に拡張された部分を形成するように、外側シール216に拡張区間216Aが設けられており、内部空間240を基板ホルダ200の下端近傍まで延長している。そして、拡張区間216Aの先端/下端が、外側シール216によって開閉される液注入口511となっている。なお、内側シール215、225と外側シール216との間に、凸部330(図8A図8B)、ピン340(図9A)が侵入する十分なスペースがある場合には、拡張区間216Aは省略されてもよい。
【0039】
本実施形態では、排気口521の流路面積は、液注入口511の流路面積よりも大きく形成されている。この構成によれば、基板ホルダ200の内部空間240への液注入時に、流路面積が相対的に大きい排気口521から内部空間240内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口511から内部空間240内に液体を効率よく注入することができ、内部空間240への液体の注入速度を大きくすることができる。排気口521は、例えば、第1保持部材210に設けられた凹部(図示略)と、第2保持部材220に設けられた凹部(図示略)とを合わせて形成することができる。このように排気口521を形成すれば、排気口521の流路面積を大きくとり易い。
【0040】
本実施形態では、基板ホルダ200の内部空間240が、液注入口511から注入される液体(例えば、DIW)により満たされた状態で、めっき処理が実施される。なお、内部空間240を液体で満たすとは、少なくとも内部空間240内の全てのコンタクト213が液体で覆われていれば足りるとする。
【0041】
図7Aは、比較例に係る基板ホルダの正面図である。図7Bは、図7AのC-Cに沿う断面図である。比較例に係る基板ホルダ200Aは、図5の構成と同様に、内部空間240に対する液注入口511及び排気口521が設けられておらず、内部空間240に液体が注入されていない。この基板ホルダ200Aでは、内部空間240が液体で満たされていないので、図5を参照して上述したような種々の問題を生じる。一方、図6A及び図6Bに示される基板ホルダ200によれば、内部空間240が液体で満たされているので、比較例に係る基板ホルダ200Aにおける問題を解消することができ、前述した(1)~(4)の作用効果を奏し得る。
【0042】
図8Aは、一例に係る液導入時の基板ホルダ200の正面図である。図8Bは、図8AのD-Dに沿った断面図である。基板ホルダ200の構成は、図6A及び図6Bで説明した構成と同様である。ここでは、プリウェットモジュール32において、基板ホルダ200の内部空間240に液体を導入する場合を例に挙げて説明する。即ち、プリウェット処理(脱気水浸漬)のプロセス中に、液体(DIW)をコンタクトエリア(内部空間240)に導入する。なお、プリウェットモジュール32に代えて、第1リンスモジュール34、その他の液体を収容可能なモジュールにおいて、基板ホルダ200の内部空間240に液体を導入しても良い。
【0043】
この構成例では、プリウェットモジュール32は、プリウェット槽320と、プリウェット槽320から溢れたDIWを受けるオーバフロー槽321と、を備えている。オーバフロー槽321のDIWは、ポンプ及び脱気モジュールを介してプリウェット槽320に循環されるように構成されている。プリウェット槽320の底面には、液注入口511を開放するための凸部330が、底面から略垂直に突出する突起として設けられている。
【0044】
この構成例では、液注入口511は、第1保持部材210に設けられる。図8Bに示すように、液注入口511は、基板ホルダを立てた状態で外側シール216の下端(拡張区間216Aの先端)、かつ外側シール216のリップ部の先端側に対応する領域(外側シール216と凸部330との間の隙間に対応する領域)であり、凸部330によって開放される。
【0045】
基板ホルダ200がプリウェット槽320内の液体(この構成例では、DIW)に浸漬されたとき、排気口521は、液面より上方にあっても、液面よりも下方にあってもよい。排気口521が液体中にある場合でも、排気口521から内部空間240内の空気を排出しつつ、液注入口511及び排気口521から内部空間240内に液体を注入することが可能である。この場合であっても、排気口521の流路面積が、下方にある液注入口511の流路面積よりも大きく形成されているため、排気口521から効率よく空気を排出しつつ、内部空間240に液体を効率良く注入することができる。
【0046】
排出口521が液面より上方にある場合には、排出口521から内部空間240内に液体が流入しないので、より効率よく内部空間240内の空気を排気することができる。また、排気口521から流入した液体が空気を巻き込み、内部空間240内に空気が残留する可能性を低減できる。
【0047】
図8Bの左図から右図に示すように、基板ホルダ200が、プリウェット槽320内のDIWに浸漬されたとき、凸部330は、基板ホルダ200の下部の拡張区間216Aの下端において、外側シール216を変形させ、外側シール216と凸部330との間に隙間を形成し、液注入口511を開放する。開放された液注入口511から、プリウェット槽320内のDIWが、基板ホルダ200の内部空間240に注入される。液注入口511の流路面積は、外側シール216と凸部330との間に隙間の流路面積である。内部空間240への液体の注入後、基板ホルダ200が上方に移動され、凸部330が外側シール216から外れると、外側シール216は元の状態に戻り、内部空間240が再びシールされる。外側シール216は、液注入口511を開閉する弁として機能する。
【0048】
液注入口511から内部空間240への液体の注入時において、内部空間240内の空気は、上方の排気口521から排出される。前述したように、排気口521の流路面積が液注入口511の流路面積よりも大きいため、流路面積が相対的に大きい排気口521から内部空間240内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口(導入通路231)から内部空間240内に液体を効率よく注入することができ、内部空間240への液体の注入速度を大きくすることができる。
【0049】
また、基板ホルダ200の内部空間240へ下方より液体を注入するため、内部空間240内に空気が残留する可能性を低減できる。
【0050】
上記構成において、凸部330の内部に長手方向に延び、基端側及び先端側でプリウェット層320及び内部空間240に開口する内部通路を設け、内部通路を介してもDIW注入を行うようにしても良い。
【0051】
<構成例3>
図9Aは、他の例に係る液導入時の基板ホルダの断面図であり、図8AのD-Dと同様の位置における断面図である。図9Bは、図9AのE-Eに沿った断面図である。この構成例では、プリウェット槽320の底面には、凸部330に代えて、液注入口511を開放するためのピン340が、底面から略垂直に突出して設けられている。ピン340の内部には、長手方向に沿って延びると共に、基端側と先端側とに開口する通路341が設けられている。また、この構成例の基板ホルダ200では、前述した基板ホルダの構成において、拡張区間216Aの外側シール216に肉厚部216Bが設けられ、肉厚部216Bには、ピン340が通過可能な切込み512が設けられている。この構成例では、液注入口511は、第1保持部材210に設けられる。図9A及び図9Bに示すように、液注入口511は、基板ホルダの平面視で外側シール216の下端(拡張区間216Aの先端)、かつ、外側シール216の肉厚部216Bにおいてピン340の通路341で開放されることになる領域に対応する。他の構成については、前述した構成例1と同様である。
【0052】
この構成例では、基板ホルダ200が、プリウェット槽320内のDIWに浸漬されたとき、図9A及び図9Bに示すように、ピン340が、外側シール216の切込み512を押し広げて貫通し内部空間240内に入り込み、ピン340内の通路341によって切込み512(液注入口511)を開放し、ピン340の通路341を介して、プリウェット槽320内のDIWを基板ホルダ200の内部空間240に注入する。液注入口511の流路面積は、ピン340の通路341の流路面積である。内部空間240への液体の注入後、基板ホルダ200が上方に移動され、ピン340が外側シール216の切込み512から外れると、切込み512は元の状態に戻り、内部空間240が再びシールされる。外側シール216は、切込み512において、液注入口511を開閉する弁として機能する。
【0053】
この構成例では、外側シール216の切込み512は、通路341を有するピン340を通過させ、液注入口511を開放するように構成される。この構成では、液注入口511は、基板ホルダの正面視で外側シール216の下端(拡張区間216Aの先端)、かつ、外側シール216の肉厚部216Bにおいてピン340の通路341で開放されることになる領域と考えてもよい。
【0054】
この構成例でも、排気口521(図8A)の流路面積は、液注入口511の流路面積よりも大きく形成されている。この構成によれば、基板ホルダ200の内部空間240への液注入時に、流路面積が相対的に大きい排気口521から内部空間240内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口511から内部空間240内に液体を効率よく注入することができ、内部空間240への液体の注入速度を大きくすることができる。
【0055】
この構成でも、基板ホルダ200の内部空間240へ下方より液体を注入するため、内部空間240内に空気が残留する可能性を低減できる。
【0056】
(めっき槽における基板ホルダ)
図10は、めっき槽に配置された基板ホルダの正面図である。上述した実施形態に係る基板ホルダ200は、内部空間240内に液体が満たされた状態(コンタクトが液体で覆われた状態)で、めっき槽39のめっき液Qに浸漬される。めっき槽39では液注入口511は閉じており、液注入口511から内部空間240にめっき液は侵入しない。また、排気口521は、めっき液Qの液面Sよりも高い位置あり、排気口521から内部空間240にめっき液は侵入しない。
【0057】
(排気口の他の構成例)
図11及び図12は、基板ホルダの排気口の他の構成例を示す。基板ホルダ200の排気口521は、複数の箇所(2箇所以上)に設けられても良い(図11)。この場合、複数の排気口521の流路面積の合計が、液注入口511の流路面積より大きくなるようにすればよい。排気口521の数を調整することで、排気口521の流路面積を液注入口511の流路面積より大きく形成することが容易になる。また、基板ホルダ200の排気口521は、左右方向に延びるスリットとして形成してもよい(図12)。排気口521を基板ホルダの幅方向に延びるスリットとすることにより、排気口521の流路面積を液注入口511の流路面積より大きく形成することが容易になる。図11及び図12の排出口の構成は、上述した任意の実施形態に適用可能である。また、上述した任意の実施形態に係る排出口の構成、図11の排出口の構成、及び図12の排出口の構成のうち2つ以上を組み合わせても良い。
【0058】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、四角形の基板の基板ホルダを例に挙げて説明したが、円形、四角形以外の多角形その他任意の形状の基板の基板ホルダに上記実施形態を適用可能である。
(2)上記実施形態では、第1及び第2保持部材で基板を挟んで保持する基板ホルダを例に挙げたが、コンタクトがシールされた内部空間を有する基板ホルダであれば、任意の構成の基板ホルダに本発明を適用することができる。
(3)上記実施形態では、プリウェットモジュールにおいて基板ホルダの内部空間に純水を注入したが、他のモジュール(例えば第1リンスモジュール)において基板ホルダの内部空間に純水を注入してもよいし、基板ホルダの内部空間に純水等の液体を注入するための別のモジュールを設けてもよい。
【0059】
本発明は、以下の形態としても記載することができる。
[1]一形態によれば、基板を保持する基板ホルダであって、 前記基板を挟んで保持する第1保持部材及び第2保持部材と、 前記第1保持部材及び前記第2保持部材で前記基板が保持された状態において、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の間に配置され、前記基板ホルダのコンタクトが接触する前記基板の外周部を密閉するシールと、 前記シールによって密閉された内部空間に液体を注入する液注入口と、 前記内部空間から気体を排出する排気口と、を備え、 前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されており、前記排気口の流路面積は、前記液注入口の流路面積より大きい、 基板ホルダが提供される。
【0060】
この形態によれば、排気口の流路面積を液注入口の流路面積よりも相対的に大きくするため、流路面積が相対的に大きい排気口から基板ホルダの内部空間内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口から内部空間内に液体を効率よく注入することができ、内部空間への液体の注入速度を大きくすることができる。また、排気口の流路面積を液注入口の流路面積よりも相対的に大きくするという簡易な構成で、内部空間内に液体を効率よく注入することができる。また、基板を傾ける必要がなく、減圧装置等を接続する必要もなく、簡易な工程で、内部空間内に液体を効率よく注入することができる。
また、排気口は、第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されるので、排気口の流路面積を大きくし易い。一方、液注入口の流路面積が排気口の流路面積より相対的に小さいので、液注入口は第1保持部材又は第2保持部材の一方に設けてもよい。
【0061】
[2]一形態によれば、前記液注入口は、前記第1保持部材又は前記第2保持部材に設けられている。
【0062】
この形態によれば、液注入口の位置の選択の自由度が大きくなる。
【0063】
[3]一形態によれば、前記液注入口は、前記基板ホルダを立てた状態における前記基板ホルダの下部に設けられている。
【0064】
この形態によれば、基板ホルダを液体に浸漬したときに相対的に液圧の高い基板ホルダの下部に液注入口を設けるので、基板ホルダの内部空間に液体を効率よく注入することができる。また、下方より液体を注入するので、内部空間に空気が残留する可能性を低減できる。また、基板ホルダを傾けることなく、効率よく、下方の液注入口より内部空間に液体を注入すると共に、上方の排気口より内部空間の気体(空気)を排出することができる。
【0065】
[4]一形態によれば、 前記液注入口は、前記基板ホルダの前記基板を配置する領域より下方に設けられ、 前記排気口は、前記基板ホルダの前記基板を配置する領域より上方に設けられる。
【0066】
この形態によれば、基板ホルダを傾けることなく、効率よく、下方の液注入口より内部空間に液体を注入すると共に、上方の排気口より内部空間の気体(空気)を排出することができる。また、基板をめっき液に浸漬した際に、排気口をめっき液面よりも上方に位置させることが容易になる。これにより、排気口からのめっき液の侵入を抑制ないし防止することができる。
【0067】
[5]一形態によれば、前記シールは、弾性変形することにより前記液注入口を開放する弁部を有する。
【0068】
この形態によれば、液体注入時に液注入口を開放すると共に、液体注入後に液注入口を閉鎖し、基板ホルダをめっき液に浸漬した場合に、液注入口からめっき液が侵入することを抑制ないし防止することができる。また、基板ホルダの内部空間を密閉するシールを利用して、液注入口の弁を構成することができるので、液注入口を閉鎖するための弁を別途設ける必要がない。
【0069】
[6]一形態によれば、 前記シールと前記第1又は第2保持部材との間に突起が挿入されることで、前記第1又は第2保持部材と前記突起部との間に形成される隙間として、前記液注入口が開放されるように構成されている。
【0070】
この構成によれば、液体を保持する槽(例えば、プリウェット槽、リンス槽)の底面に突起を設け、槽内の液体に基板ホルダを浸漬させることで、液注入口を開放することができるので、工程の追加を抑制ないし防止することができる。
【0071】
[7]一形態によれば、 前記シールは、前記内部空間の一部を他の部分よりも拡張するように配置された拡張区間を有し、前記突起は前記拡張区間の先端部に挿入される。
【0072】
この形態によれば、内部空間において、液注入口を開放する突起を挿入するための内部空間内のスペースを確保し易くなる。
【0073】
[8]一形態によれば、 前記シールは、切込みが設けられた肉厚部を有し、 内部を貫通する通路を有するピンが前記切込みに挿入されることで、前記液注入口が開口されるように構成されている。
【0074】
この構成によれば、液体を保持する槽(例えば、プリウェット槽、リンス槽)の底面にピンを設け、槽内の液体に基板ホルダを浸漬させることで、液注入口を開放することができるので、工程の追加を抑制ないし防止することができる。また、ピン内部の通路の流路面積が、液注入口の流路面積となるので、安定した流路面積を確保することができる。
【0075】
[9]一形態によれば、前記シールは、前記内部空間の一部を他の部分よりも拡張するように配置された拡張区間を有し、前記ピンは前記拡張区間の先端部に挿入される。
【0076】
この形態によれば、内部空間において、液注入口を開放するピンを挿入するための内部空間内のスペースを確保し易くなる。
【0077】
[10]一形態によれば、 前記排出部が、複数の排気口を有し、 前記複数の排気口の流路面積の合計が、前記液注入部の流路面積より大きい。
【0078】
この形態によれば、排気口の数を調整することで、排気口の流路面積を液注入部の流路面積より大きく形成することが容易になる。
【0079】
[11]一形態によれば、 前記排出部が前記基板ホルダの幅方向に延びるスリットを有する。
【0080】
この形態によれば、排気口を基板ホルダの幅方向に延びるスリットとすることにより、排気口の流路面積を液注入口の流路面積より大きく形成することが容易になる。
【0081】
[12]一形態によれば、 めっき装置であって、 上記の基板ホルダと、 前記基板ホルダを収容するめっき槽と、を備える、めっき装置が提供される。
【0082】
この形態によれば、上述した作用効果を奏するめっき装置を提供することができる。
【0083】
[13]一形態によれば、底面から突出する突起を有し、液体を保持する第1槽を更に備え、 前記基板ホルダは、前記基板ホルダが前記第1槽に収容されたとき、前記シールと前記第1又は第2保持部材との間に前記突起が挿入されることで、前記第1又は第2保持部材と前記突起部との間に形成される隙間として、前記液注入口が開放されるように構成されている。
【0084】
この構成によれば、液体を保持する槽(例えば、プリウェット槽、リンス槽)の底面に突起を設け、槽内の液体に基板ホルダを浸漬させることで、液注入口を開放することができるので、工程の追加を抑制ないし防止することができる。また、基板ホルダへの液注入のための構造を簡易に構成することができる。
【0085】
[14]一形態によれば、 底面から突出するピンであって内部を貫通する通路を有するピンを有し、液体を保持する第1槽を更に備え、 前記シールは、切込みが設けられた肉厚部を有し、 前記基板ホルダは、前記基板ホルダが前記第1槽に収容されたとき、前記ピンが前記切込みに挿入されることで、前記通路として前記液注入口が開放されるように構成されている。
【0086】
この構成によれば、液体を保持する槽(例えば、プリウェット槽、リンス槽)の底面にピンを設け、槽内の液体に基板ホルダを浸漬させることで、液注入口を開放することができるので、工程の追加を抑制ないし防止することができる。また、基板ホルダへの液注入のための構造を簡易に構成することができる。
【0087】
[15]一形態によれば、基板を保持する基板ホルダに液体を導入する方法であって、 前記基板ホルダの第1保持部材及び第2保持部材で前記基板を挟んで保持すること、 前記基板の外周部がシールによって密閉して配置される前記基板ホルダの内部空間に、液注入口から液体を注入すると共に、前記液注入口の流路面積よりも大きい流通面積を有する排出口から前記内部空間内の気体を排出することであって、前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されていること、を含む、方法が提供される。
【0088】
この形態によれば、流路面積が相対的に大きい排気口から基板ホルダの内部空間内にある空気を効率よく排出しながら、液注入口から内部空間内に液体を効率よく注入することができ、内部空間への液体の注入速度を大きくすることができる。また、排気口の流路面積を液注入口の流路面積よりも相対的に大きくするという簡易な構成で、内部空間内に液体を効率よく注入することができる。また、基板を傾ける必要がなく、減圧装置等を接続する必要もなく、簡易な工程で、内部空間内に液体を効率よく注入することができる。
また、排気口は、第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されるので、排気口の流路面積を大きくし易い。一方、液注入口の流路面積が排気口の流路面積より相対的に小さいので、液注入口は第1保持部材又は第2保持部材の一方に設けてもよい。
【0089】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
特許第7132135号明細書(特許文献1)、特許第7095722号明細書(特許文献2)の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む全ての開示は、参照により全体として本願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0090】
32 プリウェットモジュール
33 プリソークモジュール
34 第1リンスモジュール
35 ブローモジュール
36 第2リンスモジュール
38 オーバフロー槽
39 めっき槽
100 めっき装置
120 処理ステーション
120A 前処理・後処理モジュール
120B めっきモジュール
175 コントローラ
200 基板ホルダ
210 第1保持部材
211A 開口
212 ハンドル
213 コンタクト
214 バスバー
215 内側シール
216 外側シール
216A 拡張区間
216B 肉厚部
217 フック
218 外部接続端子
220 第2保持部材
225 内側シール
227 フック
231 導入通路
231A バルブ
235A 電極
236A 電源
237A 電流検出器
240 内部空間
320 プリウェット槽
330 凸部(突起)
340 ピン
341 通路
401 シード層
402 レジストパターン
511 液注入口
512 切込み
521 排出口
Q めっき液
S 液面
【要約】
基板ホルダの内部空間に効率よく液体を導入することにある。
基板を保持する基板ホルダであって、 前記基板を挟んで保持する第1保持部材及び第2保持部材と、 前記第1保持部材及び前記第2保持部材で前記基板が保持された状態において、前記第1保持部材及び前記第2保持部材の間に配置され、前記基板ホルダのコンタクトが接触する前記基板の外周部を密閉するシールと、 前記シールによって密閉された内部空間に液体を注入する液注入口と、 前記内部空間から気体を排出する排気口と、を備え、 前記排気口は、前記第1保持部材の凹部と前記第2保持部材の凹部とが合わさって構成されており、前記排気口の流路面積は、前記液注入口の流路面積より大きい、基板ホルダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12