(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成装置本体、画像形成装置用システム及び設置用部品
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20241003BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20241003BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J29/00 A
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2021042057
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2020049429
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】石田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智也
(72)【発明者】
【氏名】平田 宗和
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155890(JP,A)
【文献】特開平01-222567(JP,A)
【文献】特開平09-123537(JP,A)
【文献】特開平03-182356(JP,A)
【文献】実開平01-125645(JP,U)
【文献】実開昭63-165958(JP,U)
【文献】特開2019-217732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0069118(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 29/00
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する側に、画像を記録する記録部と、回転可能なローラとを備える画像形成装置において、
前記記録媒体と少なくとも3点で接触するように設けた接触部分と、
前記ローラを、前記接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と前記接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、
前記ローラを前記突出した位置に向けて付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記ローラ、前記保持手段及び前記付勢手段を、画像形成装置本体に対して一体で着脱可能な設置用部品に設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記設置用部品に前記接触部分を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一に記載の画像形成装置において、
記録媒体上に載置したとき、画像形成装置の自重に抗して前記接触部分を記録媒体から離間させ得るように、前記付勢手段の付勢力を設定したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記接触部分は、前記対向する側における他の箇所よりも記録媒体との摩擦係数が小さな材料で形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記接触部分と前記ローラの少なくとも一方は表面部をフッ素系樹脂で形成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一に記載の画像形成装置において、
記録媒体上での前記ローラの回転を伴う移動をさせながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、
記録媒体上での位置を検知する位置検知手段と、位置検知手段の検知結果に基づいて前記記録部の駆動を制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記ローラは、少なくとも2つが一方の回転軸に取り付けられたローラユニットを構成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置は走査方向に走査されることで画像の記録を行い、
前記画像形成装置を記録媒体側から見たときに、前記走査方向と直交する方向において前記記録部を挟んで一方側と他方側にそれぞれ前記接触部分が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置は走査方向に走査されることで画像の記録を行い、
前記画像形成装置の移動距離を検知する検知手段を備え、
前記検知手段と前記記録部は走査方向と直交する方向で並んで配置されており、
前記画像形成装置を記録媒体側から見たときに、走査方向と直交する方向において、前記検知手段を挟んで一方側と他方側にそれぞれ前記接触部分が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一に記載の画像形成装置において、
前記画像形成装置は走査方向に走査されることで画像の記録を行い、
前記画像形成装置の移動距離を検知する検知手段を備え、
前記検知手段と前記記録部は走査方向と直交する方向で並んで配置されており、
前記検知手段と前記記録部の前記直交する方向における両者の間には、少なくとも2つの前記接触部分が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体に画像を記録する記録部で使用される記録用物質の収容部と前記記録部の少なくとも一方を備えた着脱ユニットが着脱される画像形成装置本体であって、
回転可能なローラと、
前記記録媒体と少なくとも3点で接触するように設けた接触部分と、
前記ローラを、前記接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と前記接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、
前記ローラを前記突出した位置に向きて付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする画像形成装置本体。
【請求項14】
記録媒体に画像を記録する記録部で使用される記録用物質の収容部と前記記録部の少なくとも一方を備えた着脱ユニットが着脱される筐体と、
前記記録媒体と少なくとも3点で接触するように設けた接触部分と、
前記筐体に対して選択的に取り付けられる二以上の設置用部品とからなる画像形成装置用システムであって、
前記二以上の設置用部品の少なくもと一つは、
回転可能なローラと、
前記ローラを、前記接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と前記接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、
前記ローラを前記突出した位置に向きて付勢する付勢手段とを設けたものであることを特徴とする画像形成装置用システム。
【請求項15】
記録媒体に画像を記録する記録部を備えた画像形成装置の前記記録媒体に対向する側に取り付けられる設置用部品であって、
前記記録媒体と少なくとも3点で接触するように設けた接触部分と、
回転可能なローラと、
前記ローラを、前記接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と前記接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、
前記ローラを前記突出した位置に向けて付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする設置用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成装置本体、画像形成装置用システム及び設置用部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に画像を記録する記録部と、記録部を収容する装置の筐体とを備える画像形成装置が知られている。
例えば特許文献1には、係る画像形成装置であって、回転可能なローラを記録材(記録媒体)の表面上で接触回転させるように画像形成装置本体を走査方向に移動せしめられながら記録材に画像を形成する携帯型画像形成装置が記載されている。回転可能なローラを用いることで直進走行性が得られるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
直進走行性に加えて表面に凹凸がある記録媒体に画像を形成するときに画像が乱れるのを抑制できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、記録媒体に対向する側に、画像を記録する記録部と、回転可能なローラとを備える画像形成装置において、前記記録媒体と少なくとも3点で接触するように設けた接触部分と、前記ローラを、前記接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と前記接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、前記ローラを前記突出した位置に向けて付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、直進走行性に加えて表面に凹凸がある記録媒体に画像を形成するときに画像が乱れるのを従来に比して抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態のHMP1の動作を説明する模式図。
【
図4】同HMPと記録紙上の印字部画像との位置関係を示す概略上面図。
【
図5】同HMPの電気回路の一部を示すブロック図。
【
図9】同印刷媒体接触ユニットの爪部材のスライド移動の説明図。
【
図10】同印刷媒体接触ユニットの可動の係合部の説明図。
【
図12】本実施形態のローラ進退型の印刷媒体接触ユニットを備えたHMP1の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を、画像形成装置としての携帯型画像形成装置であるハンディモバイル型インクジェットプリンタ(以下、HMPという)に適用した一実施形態について説明する。まず、実施形態に係るHMPの装置本体の基本的な構成について説明する。
【0008】
図2は、実施形態に係るHMP1の斜視図である。HMP1の筐体は、上部ユニット2と下部ユニット3とから主に構成されている。上部ユニット2は下部ユニット3に対して開閉するように下部ユニット3に支持されている。図示の状態は、
図3に記載の状態から上部ユニット2が下部ユニット3の内部に操作者がアクセスできるように下部ユニット3に対して上部ユニット回転軸3aを支点に反時計回り方向に回動された状態(下部ユニット3に対して開けられた状態)を示す。下部ユニット3の内部には、記録部あるいは着脱ユニットとしてのインクカートリッジ40が収容される。
図2には取り出したインクカートリッジ40を合わせて描いている。このインクカートリッジ40はインクジェットヘッド41とインクタンクとを一体で備える。インクタンクは記録用物質であるインクを収容する。インクカートリッジ40は画像形成物質であるインクの液滴を吐出するインクジェットヘッド41が鉛直方向下方を向くように装着される。このインクジェットヘッド41は、吐出口(ノズル)からインクの液滴を吐出して画像を記録することで画像形成を行うものである。インクタンクにはインクが収容されている。
【0009】
HMP1は、上部ユニット2が下部ユニット3に対して閉じた状態で、全体的に略直方体形状をなしている。HMP1の本体(画像形成装置本体)の下面にインクジェットヘッド41が露出する。この下面における左右方向(短手方向)をX軸方向とし、その下面におけるX軸方向に直交する本体長手方向をY軸方向とする。短手方向(X軸方向)の長さは、使用者が掌で掴める程度である。
【0010】
HMP1は、筐体の本体の一部である下部ユニット3に対して一体で着脱可能な設置用部品である印刷媒体接触ユニット100を備えている。この印刷媒体接触ユニット100がHMP1における記録媒体に対して少なくとも3点で接触する部分を備えている。後に詳述する。
図2に示す下部ユニット3の側面を左側面32とし、上部ユニット2を閉じたときに筐体側面を構成する上部ユニット2の面を正面35とする。
図1に示すように、下部ユニット3の側面である左側面32と対向する側面を右側面33とし、上部ユニット2を閉じたときに筐体側面を構成する上部ユニット2の面である正面35と対向する下部ユニット3の面を背面34とする。
【0011】
図3は、HMP1を左側方(左側面32側)から見た概略断面図である。
図3に示すように、上部ユニット2は、Y軸方向に延在する水平延在部2aとZ軸方向に延在する垂直延在部2bとを備えるL字形状になっている。上部ユニット2の垂直延在部2bの内部には、HMP1の各機器に電力供給するための電源であるバッテリ15が配置されている。水平延在部2aには制御基板14が配置されている。制御基板14には、印字ボタン5a及び電源ボタン5bが接続されている。
【0012】
下部ユニット3は、背面34側の箇所に上部ユニット2を回転可能に支持する上部ユニット回転軸3aを備える。また、インクカートリッジ40との接続部としてのFPC接点部13も備える。FPC接点部13はフレキシブルフラットケーブル25を介して上部ユニット2内の制御基板14に電気的に接続される。また、位置検知センサ18、上部ユニットロック爪11等も備える。下部ユニット3の内部はインクカートリッジ40の収容空間となっている。下部ユニット3に対して上部ユニット2を上部ユニット回転軸3aを支点に
図3中の矢印「B」方向に回転させることで、下部ユニット3の内部空間上方の開口部が露出し、ハウジング80の内部に配置されたインクカートリッジ40を取り外すことが可能となる。
【0013】
位置検知センサ18は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP1の移動距離を検知したりするセンサである。位置検知センサ18は、置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサ18の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0014】
図4は、HMP1と記録媒体としての記録紙P上の印字部画像との位置関係を示す概略上面図である。図示の記録紙Pは例えばA4サイズである。
図4中の破線で示すHMP1は走査方向に移動前の位置を示し、
図4中の実線で示すHMP1は走査方向に移動後の位置を示す。使用者が印字ボタン5aを一度押してからHMP1を走査方向に移動させると、HMP1本体は走査方向に移動しながら吐出孔の列の幅に対応した印字領域の複数の吐出孔のそれぞれからインクが吐出され、記録媒体としての記録紙P上に印字(記録)される。
図4中の破線で示す移動前のHMP1の位置から
図4中の実線で示す移動後のHMP1の位置まで移動させた場合、
図4中の、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」の順に画像が形成される。HMP1を用いたプリント動作は上述した動作に限定されるものではない。
【0015】
図5は、HMP1の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板14は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU155、近距離無線通信用のBt(Bluetooth(登録商標))基板152、データを一時記憶するRAM153、ROM154、記録制御部156などを有している。
【0016】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器との近距離無線通信(Bluetooth(登録商標)通信)によってデータ通信を行うものである。また、ROM154は、HMP1のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッドの駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部156は、インクジェットヘッドを駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0017】
制御基板14には、ジャイロセンサ157、位置検知センサ18、キャッピングセンサ158、LEDランプ5c、インクジェットヘッド41、印字ボタン5a、電源ボタン5b、バッテリ15などが電気的に接続されている。バッテリ15にはUSB接続口15aが接続されている。
【0018】
ジャイロセンサ157は、周知の技術により、HMP1の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板14に送信するものである。LEDランプ14aは、印字ボタン5aにおける光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、印字ボタン5aを発光させるものである。
【0019】
電源ボタン5bを押してHMP1の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU155はROM154に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM153に展開する。画像データを外部機器から近距離無線通信等の通信によって受信すると、記録制御部156は、受信した画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサ18によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッドからのインクの吐出を制御する。この記録制御部156が位置検知手段の検知結果に基づいて前記記録部の駆動を制御する駆動制御手段に相当する。
【0020】
また、制御基板14は、外部機器との近距離無線通信によって画像データの取得中であるときは、LEDランプ14aを点滅させることで、光透過性のある印字ボタン5aを発光点滅させる。その後、制御基板14は、画像データの取得が完了したら、LEDランプ14aを連続点灯させることで、印字ボタン5aを連続発光させる。これを見たユーザーは、HMP1が画像データの取得を終えたことを知り、HMP1を記録材上に置いて印字ボタン5aを押す。
【0021】
一方、制御基板14は、LEDランプ14aの連続点灯制御を開始すると、印字ボタン5aが押されるのを待機する。そして、印字ボタン5aが押されると、LEDランプ14aを点滅させることで、印字ボタン5aを発光点滅させる。これを見たユーザーは、HMP1の走査直交方向への移動操作(手動走査)を開始する。
【0022】
HMP1の移動操作(手動走査)を終えたユーザーは、印字ボタン5aをもう一度押す。これにより、制御基板14は、LEDランプ14aを消灯させて、印字ボタン5aの発光を停止させる。また、印字ボタン5aを押さずにHMP1を記録材から取り上げて卓上などにそのまま置いた場合、位置検知センサ18は、HMP1が記録材上から取り上げられたときに、位置の検知ができなくなる。よって、制御基板14は、位置検知センサ18が位置を検知しなくなったタイミングで、LEDランプ14aを消灯させて、印字ボタン5aの発光を停止させる。
【0023】
なお、移動操作(手動走査)中に印字ボタン5aを押し続ける必要はない。移動操作に先立って印字ボタン5aを押して離せば、位置検知センサ18による検知結果に基づく画像形成処理が、次のタイミングまで継続される。つまり、画像形成の終了まで、印字ボタン5aがもう一度押されるまで、あるいは、位置検知センサ18による位置検知が不能になる又は所定距離以上記録材から離れたことを検知するまで、継続される。
【0024】
記録媒体である記録材としては、記録紙Pなどの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板などであり、記録可能な媒体であれば全て含まれる。インクカートリッジ40からインク等の液体・液滴を吐出して記録を行う、いわゆるインクジェット機構は周知の構成を適用できる。また、インクジェット機構としては、HMP1に搭載可能であれば、適宜採用可能である。
【0025】
インクジェットヘッド41で同時に印字可能な領域は吐出孔の形成領域に対応し、この吐出孔から吐出されるインク(液体)は、吐出孔から吐出可能な粘度や表面張力を有する液体であればよく、特に限定されない。ただし、常温常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下になるものであることが好ましい。詳しくは、インク(液体)は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0026】
本実施形態における印刷媒体接触ユニット100は、使用する印刷媒体接触ユニット100を切り替えることで直進走行性と湾曲走行性とを両立させ、しかも、物理的な制約を従来に比して少なくもするものである。
【0027】
特許文献1の
図15及び
図17に記載の携帯型画像形成装置は、携帯型画像形成装置本体に対して、着脱可能なスペーサー部材(例えばスペーサー部材75)を用いる。このスペーサー部材は、携帯型画像形成装置本体を点支持するための複数の突起(突起76)を有する。携帯型画像形成装置本体に装着された状態で、携帯型画像形成装置本体と記録材の表面との間にスペーサー部材が介在し、直進性を確保するためのローラを記録材の表面から浮かせる。これにより、湾曲性を良くする。このようなスペーサー部材の脱着で直進走行性と湾曲走行性とを両立させる。
【0028】
ところが、特許文献1のスペーサー部材を着脱可能にする具体例は磁石を用いるものであり、装着状態の維持の安定性をより高めることが求められる。また、直進走行性と湾曲走行性との両立にかぎらず、異なる印刷媒体に印刷する場合にはその印刷媒体に適した接触部の構成が必要となる。特許文献1のように、すでに搭載されているローラなどの接触部の構成に対してスペーサー部材などの新たな接触部の構成を追加で組み込むのでは物理的な制約が多く、対応可能な接触部の構成に限りがある。
【0029】
本実施形態では、記録媒体に対して少なくとも3点で接触する部分である印刷媒体接触ユニット100を、筐体の本体に対して一体で着脱可能な設置用部品として構成し、印刷媒体接触ユニット100の筐体の本体に対する取り付けを機械的な係合で行う。少なくとも3点で接触する部分はこれらの点で平面を規定するものであり、少なくとも1点が他の2点を結ぶ直線から外れた箇所に位置する。
【0030】
図6は本実施形態のHMP1を斜め下方から見た外観斜視図である。この図はインクカートリッジ40がセットされていない状態である。また、図示の状態は印刷媒体接触ユニット100をHMP1の筐体の本体(下部ユニット3)から分離した状態である。下部ユニット3の下面(底面)30には位置検知センサ18が位置する。インクジェットヘッド41を露出させるための開口30aも形成されている。下面30における背面34側の箇所のX軸方向ほぼ中央に、引っ掛け孔210aが形成された引っ掛け板部210が設けられている。下面30における正面35(
図3参照)側にはX軸方向の両端側それぞれに引っ掛け孔220aが形成された引っ掛け板部220が設けられている。
【0031】
印刷媒体接触ユニット100は板状のベース部材100aで直進性を確保するための互いに回転軸が平行な4つのローラ37a、37b、38a、38bを保持するものである。こらのローラが互いに平行な回転軸線回りで回動可能である。これらのローラが記録媒体に接触部分に相当する。ベース部材100aは位置検知センサ18の光学センサなどの検出部を露出させるための開口部100bと、インクジェットヘッド41を露出させるための開口部100cとが形成されている。そして、ベース部材100aに下部ユニット3の各引っ掛け孔210a、220aに入り込んで機械的な係合としての引っ掛け係合を行うための引っ掛け部110、120、120を備えている。
【0032】
図7は印刷媒体接触ユニット100を下部ユニット3に対して引っ掛け係合によって装着した状態のHMP1を斜め下方から見た外観斜視図である。
図6や
図7に符号300で示すのは後述するヘッドカバー部材310(
図11参照)の取り付け部である。
【0033】
図8は印刷媒体接触ユニット100の拡大斜視図であり、(a)は下面(底面)側から見た図を示し(b)は上面側(下部ユニット3に取り付けた時に下部ユニット3と対面する側)から見た図を示す。
図8(a)に示すように、4つのローラ37a、37b、38a、38bは、次のようにベース部材100aに保持されている。つまり、左側第一ローラ37a及び左側第二ローラ37bは左側回転軸37cに固定され、左側回転軸37cがベース部材100aに対して回転可能に保持されている。同様に、右側第一ローラ38a及び右側第二ローラ38bは右側回転軸38cに固定され、右側回転軸38cがベース部材100aに対して回転可能に保持されている。左側回転軸37cと右側回転軸38cとは、印刷媒体接触ユニット100が下部ユニット3に取り付けられた状態でそれぞれY軸方向に延在し、平行となるように構成されている。
【0034】
図8(a)に示すように、
図7に示す背面34側に位置する側(背面側)の引っ掛け部110はベース部材100aから垂直上方(Z軸方向)に延びる垂直部110aとその先端から背面34側に水平(-Y軸方向)に延びる水平部110bとを有する。水平部110bが下部ユニット3側の引っ掛け孔210aに入り込んで係合する。
【0035】
図3に示す正面35側に位置する側(正面側)の左右の引っ掛け部120は互いに左右対称な構造をしている。
図8(a)の右側の引っ掛け部120について符号を付して示すように、固定解除用の操作部121が設けられている。この操作部121を水平方向(±Y軸方向)にスライドガイドするためベース部材100aには上方の延びる側壁部130がある。この側壁部130に水平に延びるガイド孔130aが形成されている。このガイド孔130aを貫通する軸部121aが操作部121に一体的に取り付けられている。
【0036】
図8(b)に示すように、軸部121aの側壁部130を貫通した先端部には、爪部材124を軸部121aに固定するための抜け止め部材123が固定されている。この軸部121aに爪部材124が固定され操作部121とともにスライド移動するようになっている。爪部材124には下部ユニット3側の引っ掛け孔220a(
図6参照)に入り込んで係合する爪部124aが一体に形成されている。ベース部材100aの爪部材124に対向する箇所には付勢用の圧縮スプリングの収容部132も形成されている。爪部材124が可動に設けた係合部に相当する。操作部121が、筐体の本体の周囲の複数の面のうち、記録部を露出させる面と交差する側面の部分(側壁外面の部分)に設けた操作部に相当する。
【0037】
図9は爪部材124のスライド移動の説明図であり、(a)は最も正面側(Y軸方向側)にスライドした状態を示し、(b)は矢印A7による移動で最も背面側(-Y軸方向側)にスライドした状態を示す。
図9(a)に示すように収容部132には圧縮スプリング125が収容されており、爪部材124が図中右側である正面側に付勢されている。ベース部材100aの上面から上方(Z軸方向)に立ち上がるように形成された正面側側壁部131の内面に爪部124aの先端が当接している。通常はこのように当接した状態を取る。印刷媒体接触ユニット100が下部ユニット3に装着されている状態では、この状態で爪部124aが下部ユニット3側の係合孔に進入して係合した状態にする。圧縮スプリング125が、可動に設けた係合部を係合する係合位置をとるように付勢する付勢手段に相当する。
【0038】
図9(b)に図中矢印A7で示すように圧縮スプリング125に抗して操作部121を操作して爪部材124を最も背面側にスライドした状態では、爪部124aが、下部ユニット3側の引っ掛け孔220a(
図6参照)から完全に抜ける。つまり、この操作部121をシフト(移動)することにより、引っ掛け部120の爪部材124がシフトし、下部ユニット3との引っ掛け(係合)が解除される。下部ユニット3側の引っ掛け孔220aから爪部材124が外れることにより勘合(係合)が解除される。
【0039】
図10は、印刷媒体接触ユニット100を下部ユニット3に装着するとき(印刷媒体接触ユニット100を下部ユニット3側に押し当てるとき)の可動の引っ掛け部120の説明図である。
図10(a)はX-X断面の断面位置の説明図、
図10(b)~(d)は
図10(a)におけるX-X断面を矢印A方向から見た図である。
図10(b)、(c)、(d)という順で装着が進行する。
図10(b)の状態では圧縮スプリング125で爪部材124が
図9(a)の状態に位置している。(b)の右側に爪部材124の爪部124aを拡大して示すように爪部124aには下部ユニット3側の引っ掛け板部220の先端部220bに当接するテーパ部124bが形成されている。
図10(b)から(c)まで印刷媒体接触ユニット100が下部ユニット3側に押し込まれて装着が進行する。この間に、このテーパ部124bが先端部220bから受ける当接力によって圧縮スプリング125に抗して爪部材124が図中左側にスライド(移動)させられる。
【0040】
そして、
図10(c)に示すように爪部124aの先端が引っ掛け板部220の内側の側面220cに当接する状態になる。この
図10(c)からさらに装着が進行すると
図10(d)に示すように、爪部124aが引っ掛け板部220の引っ掛け孔220aに対向し、圧縮スプリング125の付勢力で引っ掛け孔220a内に押し込まれて係合が完了する。このとき、爪部材124は
図9(a)の状態になっている。
【0041】
印刷媒体接触ユニット100側を可動にするのに代え、下部ユニット3側を可動にしたり、両方を可動にしたりすることもできる。正面側に代え、固定である背面側を可動にしたり、両方を可動にしたりしてもよい。
【0042】
なお、
図10(a)には、ヘッドカバー部材310がHMP1の筐体の本体(下部ユニット3)に取り付けられている状態が示されている。ヘッドカバー部材310は下部ユニット3の取り付け部300(
図6参照)に両端を保持された回転軸301により、回動可能に取り付けられている。ヘッドカバー部材310にはインクジェットヘッド領域(吐出孔列41aが形成されている領域)をキャッピングするためのキャッピング部311が設けられている。
【0043】
図11はヘッドカバー部材310の説明図である。
図11(a)はヘッドカバー部材310が開らかれた状態の左側面図、
図11(b)は同状態の底面図(
図11(a)に記載の下面が正面となるように90°回転させた図)である。
図11(c)はヘッドカバー部材310を閉じられた状態の左側面図、
図11(d)は同状態の底面図(
図11(a)に記載の下面が正面となるように90°回転させた図)である。ヘッドカバー部材310は閉じられた状態で下部ユニット3に装着されている印刷媒体接触ユニット100を外側から部分的に覆う。この覆った状態での
図11(c)での底面となる底面壁部310aと、この底面壁部310aのX軸方向の両側部から起立して設けられた側壁面部310bとを有している。この側壁面部310bのそれぞれに係合部310cが形成されている。下部ユニット3の左側面32と反対側の右側面33のそれぞれにヘッドカバー部材310のロック部材32b、33bが設けられている。各係合部310cに各ロック部材32b、33bの下端にある爪が係合し、この係合によってインクジェットヘッド領域のキャッピングが保持される。各ロック部材32b、33bは上端部を揺動支点にして下端がX軸方向に揺動するように構成されている。
【0044】
印刷媒体接触ユニット100が本体に装着された状態でのヘッドカバー部材310と印刷媒体接触ユニット100の位置関係は、印刷媒体接触ユニット100が下部ユニット3とヘッドカバー部材310の間に位置する。ヘッドカバー部材310が閉じられた状態では、ヘッドカバー部材310は印刷媒体接触ユニット100を部分的に覆って下部ユニット3をキャッピングしている。このため、ヘッドカバー部材310が閉じられることに対して印刷媒体接触ユニット100の有無が影響しない。また、このような位置関係にすることにより、ヘッドカバー部材310が閉じられた状態では印刷媒体接触ユニット100を取り外せなくすることができる。
【0045】
なお、
図11(b)においてL3で示す範囲は、印刷媒体接触ユニット100のベース部材100aにおけるインクジェットヘッド41を露出させるための開口部100cのX軸方向両側に設けられた他の箇所よりも凹んだ形状(特定の形状)にされている特定形状範囲100dである(
図8(a)参照)。この特定形状範囲100dの幅L3を記録部としてのインクジェットヘッド41による記録位置であるインクジェット領域(ノズル列である吐出孔列41aの領域に対応)の幅範囲L2と一致させることが望ましい。これによれば、
図11(a)に幅範囲L3で示すように、側方から目視したときに、上下方向の凹凸(上方への凹部がL3)によって操作者はインクジェットヘッド41の領域を確認できる。図中、L1で示すのはローラ対の中心位置の間隔距離である。
【0046】
以上、説明した印刷媒体接触ユニット100は、4つのローラ37a、37b、38a、38bの左側回転軸37cと右側回転軸38cの何れも、ベース部材100aに対し回転自在に取り付ける。このベース部材100aへの取り付け位置は、記録媒体に対する離接方向であるZ軸方向では定位置である。このようなの印刷媒体接触ユニット100では、表面に凹凸がある記録媒体、例えば、段ボールのフルート構成のような表面形状(連続した凹凸形状)を走査した場合に、印刷画像の倍率が変動するという問題が生じることがわかった。
【0047】
図1(d)は表面に凹凸がある記録媒体に画像形成を行っている状態の説明図である。凹部、凸部それぞれ紙面に垂直な方向に延在するような凹凸形状だとする。左側回転軸37cと右側回転軸38cも、紙面に垂直な方向に平行な姿勢で図中左右方向に走査させているものとする。右側、例えば右側第二ローラ38bが凹部に位置し、左側、例えば左側第二ローラ37bが凸部に位置すると、図中の位置検知センサ18についての補助線で示すように角度θだけ左側が高くなるようにHMP1が傾く。走行中平行になったり逆に傾斜したり、さらには、HMP1本体と記録媒体との距離が変動したりする。これにより、記録部であるインクジェットヘッド41の記録媒体に対する向きや距離が変動し、その結果、画像の倍率が変動してしまう。このように記録媒体の凹凸の影響を受けてしまうのである。
【0048】
そこで、本実施形態では、印刷媒体の凹凸によるHMP1本体の傾きや高さ変動を軽減でき、かつ、ローラによる直進性の機能を高めることができるように、印刷媒体接触ユニット100として次のものを用意する。つまり、記録媒体と少なくとも3点で接触するように記録部を備えた外面に設けた接触部分と、ローラを、接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段と、ローラを突出した位置に向きて付勢する付勢手段と、を備える印刷媒体接触ユニット100である。ローラが進退可能であることから、必要に応じローラ進退型の印刷媒体接触ユニット100という。
【0049】
図1(a)はローラ進退型の印刷媒体接触ユニット100を記録紙P上に載置した状態を示す。この状態では印刷媒体にローラのみが接しており、接触部分としての摺動部180は印刷媒体から一定の距離が離れた状態にある。摺動部180とローラの最下部は高さが異なる位置となる。ローラの最下部の方が摺動部より印刷媒体に近い位置となる。
【0050】
図1(b)は手による下方への加圧力FでHMP1を押し込み、接触部分としての摺動部180をローラとともに記録紙Pに接触させた状態を示す。ローラは印刷媒体側に付勢されており、印刷媒体方向にHMP1本体を押し込むとローラが印刷媒体と当接した状態でローラの位置が摺動部180を含むHMP1本体に対して変わる。具体的には、ローラが印刷媒体側から力を受けることによりHMP1本体の上側に移動する。初期状態ではローラの方が摺動部180より印刷媒体に近い位置にあるが、HMP1本体を押さえることによりローラがHMP1本体上側に移動することで摺動部180と記録媒体の距離が狭くなる。HMP1本体を印刷媒体側に押し込み続けると、摺動部180が印刷媒体に当接する。摺動部180が印刷媒体に当接することにより、印刷媒体に対してインクジェットヘッド41や位置検知センサ18の位置が安定して決まる。
【0051】
このようにローラと摺動部180とが記録媒体に当接した状態で表面凹凸のある記録媒体上を走査すると、ローラが常時記録媒体側に付勢されていることから、
図1(c)に示すように、ローラが印刷媒体の凹凸に追従しながら上下に移動する。この結果、摺動部180の印刷媒体への当接が維持され、この当接によって決まる印刷媒体に対するインクジェットヘッド41や位置検知センサ18の位置が安定しつづける。
【0052】
図1(a)に示すように記録媒体上に載置したとき、画像形成装置の自重に抗して摺動部180を記録紙Pから離間させ得るように、付勢手段の付勢力を設定することが望ましい。これによれば、HMP1を記録媒体上に載置し、摺動部180を記録媒体から浮かせた状態で画像形成を開始したい位置にHMP1の位置を微調整し、その後に加圧力FでHMP1を押し込む。この押し込むときに、ローラが印刷媒体に接触しているため、記録紙Pに対してHMP1本体の位置がズレにくい。
【0053】
図12は、ローラ進退型の印刷媒体接触ユニット100の具体例の説明図である。
図12(a)はこの具体例の装置を、
図11(a)のローラが進退しない印刷媒体接触ユニット100と同じ方向から見た左側面図であり、
図12(b)は同状態の底面図(
図12(a)に記載の下面が正面となるように90°回転させた図)である。
図12(b)に示すように、ローラ部分(37a、37b、38a、38b)がHMP1の本体(下部ユニット3)よりX軸方向の外側に位置している。記録媒体の凹凸面にローラが追従できるようにローラ部分の上下方向の移動ストロークを確保するためである。
【0054】
図13(a)は
図12(b)におけるY-Y断面を矢印B方向から見た図である。
図13(b)は
図13(a)における二点鎖線の丸で囲った範囲Cの拡大図である。
図13(b)に示すように、ベース部材100aには左側回転軸37cの軸受部材190を上下移動可能にガイドするガイド部100eが形成されている。軸受部材190を下方に押し下げる圧縮スプリングなどの付勢部材191も設けられている。右側に拡大して示すように軸受部材190にはガイド部100eの当接した降下位置を規定する降下ストップ部190aも形成されている。このような軸受部材とガイド部の構造が、左側回転軸37cの他方のローラ37b側の軸端部にも設けられ、ローラを、接触部分よりも記録媒体側に突出した位置と接触部分から記録媒体側に突出しない位置との間で進退可能に保持する保持手段を構成している。また、右側回転軸38cについても同様に両端部側に設けられている。
【0055】
図14は
図12(b)におけるZ-Z断面を矢印D方向から見た図である。軸受部材190の軸受穴190bに左側回転軸37cの端部が挿入されて受けられている。右側回転軸38cについても同様の構造になっている。ローラは同一軸に二個付いており、左右における前後のローラが同じ軸で回転する。前後各々のローラの周辺には印刷媒体側にローラを加圧するためのバネ部材としての圧縮スプリングなどの付勢部材191を有している。この付勢部材191により、ローラと軸受部品を印刷媒体側に向けて加圧している。これにより左右前後においてローラでは印刷媒体の凹凸に追従する構成になっている。図示の例は同一軸に二個取り付けているが三個以上取付てもよい。また、図示の例では軸に対してローラを回転不能に固設しているが、回動可能に取り付けてもよい。いずれにしても一体で軸受部材190に取り付けられるユニット(ローラユニット)になっている。これに代え、ローラ毎に独立に上下移動ストロークを確保し独立に付勢されるようにしてもよい。
【0056】
付勢部材191の付勢力は、満タンのインクカートリッジ40を装着したHMP1の本体に印刷媒体接触ユニット100を取り付けた状態で、全体の自重をローラ部分で受け、印刷媒体接触ユニット100のベース部材100aの底面が接触面から離間した状態を取り得る程度の付勢力に設定される。好ましくは、この状態で、軸受部材190の降下ストップ部190aがガイド部100eで規制されることで決まるローラ部が最も降下した位置を取り得る付勢力に設定する。
【0057】
図12(b)示すように、ベース部材100aの底面には、水平面に設置したときに、インクジェットヘッド41が鉛直下方を向く姿勢をHMP1に取らせるため3点支持部を構成する摺動部が設けられている。具体的には、位置検知センサ18よりも正面35側に幅方向(X軸方向)のほぼ全幅に延在する摺動部180が形成されている。位置検知センサ18と吐出孔列41aが存在するインクヘッド領域との間にはインクジェット領域を幅方向で避けた両側それぞれに幅短めの摺動部181、182が形成されている。そして、インクヘッド領域よりも背面側に、幅方向中央の幅短めの摺動部183が形成されている。何れの摺動部も底面から突出した形状になっている。底面からの突出高さは互いに等しい。
【0058】
各摺動部180,181,182,183の配置は次のようにいえる。画像形成装置を記録媒体側から見たときに、ユーザが画像形成を行うときの走査方向(X方向)と直交する方向(Y方向)においてインクジェットヘッド41(記録部)を挟んで一方側(+Y方向)に摺動部180,181,182が設けられ、他方側(-Y方向)に摺動部183が設けられている。また、移動距離を検知する検知手段としての位置検知センサ18とインクジェットヘッド41(記録部)はユーザの走査方向(X方向)と直交する方向(Y方向)で並んで配置されており、画像形成装置を記録媒体側から見たときに、走査方向(X方向)と直交する方向(Y方向)において、位置検知センサ18を挟んで一方側(+Y方向)に摺動部180が設けられ、他方側(-Y方向)に摺動部181,182,183が設けられている。位置検知センサ18とインクジェットヘッド41(記録部)との間には少なくとも2つの接触部分としての摺動部181,182が設けられ、走査方向(Y方向)においてインクジェットヘッド41(記録部)または位置検知センサ18を挟んで一方側(+X方向)に摺動部182が配置され,他方側(-X方向)に摺動部181が配置されている。
【0059】
以上の各摺動部はベース部材100aにおける他の箇所よりも記録媒体との摩擦係数が小さい材料で形成することが好ましい。摺動負荷を軽減して直線性を向上させるためである。摺動部やローラの記録媒体と接触する少なくもと表面部もフッ素系樹脂で形成することが好ましい。フッ素樹脂での形成はコーティングによることができる。インクが付着しにくくでき、ローラや摺動部を介してインクが記録媒体に転写されるのを抑制できる。
【0060】
図13(b)に示すように、ローラ37aなどで自重をうけた状態で摺動部181などの高さレベルH1は設置面レベルH2(記録材の表面)よりも上方にある。そして、付勢部材191の付勢力は、このように記録材上にHMP1を設置した状態で操作者が下方に押し下げることによって、摺動部180~183を記録材の表面に接触させることができる程度に設定される。このように下方に押し下げた状態で移動操作することで記録を行う。
【0061】
図15は
図12のHMP1の押し下げ状態の説明図である。
図15(a)は背面図、
図15(b)は記録紙Pに載置し、押し下げしていない状態の記録紙P近傍の拡大図、
図15(c)は押し下げた状態の記録紙P近傍の拡大図である。
図15(b)の状態では、摺動部183が記録紙Pから離間している。
図15(c)の状態では、摺動部183が記録紙Pに接触している。他の摺動部181,182も記録紙Pに接触する。このように押し下げて摺動部181~183を記録紙Pに接触させながらHMP1を移動操作して記録を行う。
【0062】
なお、
図12乃至
図15に示す具体例では、
図12(a)に示すように、印刷媒体接触ユニット100の側壁部140を長手方向(Y軸方向)においてインクジェット領域をカバーする範囲にも形成し、しかも、その側壁部140のインクジェット領域に対向する幅範囲L2を内側に凹ませている。
【0063】
この凹みの境界線140a、140bを目視できることから、
図11における上下の凹凸による幅範囲L3よりもめだたせることができる。しかも、この
図12では、
図11の幅範囲L3よりも狭いL2という吐出孔列41aが形成されたインクジェットヘッド領域により近い範囲に境界線を設定できている。印刷媒体接触ユニット100の外形形状を確認することで、インクジェット領域を確認することが可能となる。インクジェット領域を示せれば良いため、凹形状に代えて凸形状にしても良い。印刷媒体接触ユニット100の側面に、上下の凹凸による幅範囲L3に対応する凹形状または凸形状を更に設けてもよい。これによれば、操作者の確認をよりし易くできる。このような幅L2やL3の側面の形状は、
図11の印刷媒体接触ユニット100にも同様に設けることができる。
【0064】
図12(b)と
図11(b)との比較から明らかように、
図12(b)の方がローラ部を正面側に寄せて配置している。これは、
図12(a)のヘッドカバー部材310の側壁面部310bのうち上下高さが大きい部分が、ヘッドカバー部材310を閉じるときに、HMP1の本体(下部ユニット3)よりX軸方向の外側に位置しているローラ部に干渉しないようにするためである。ローラ部を正面側に寄せて配置するのに伴って、ローラ対間の距離が図中L4で示すように、
図10(b)の例のL1よりも短くなつている。
【0065】
なお、
図12の例とは異なり、ローラ部の配置を
図11(b)と同様にしてもよい。
図16は、そのようなローラ部配置にした場合の構成例を図示したものである。
図11乃至
図15におけるもの同一の部材には同一の符号を付している。
【0066】
図12乃至
図15を用いて説明した印刷媒体接触ユニット100は、操作者により摺動部180~183が記録媒体に接触する高さになるまで押し下げられたことを記録動作の許可条件とすることかできる。これに代え、摺動部180~183は接触していない高さでも、ローラが接触している高さであれば、記録動作を許可するようにしてもよい。以上の記録動作の許可・禁止の制御は、位置検知センサ18の出力を用いて制御基板14によって行うことができる。つまり制御基板14が記記録部の仮想平面に対する距離が所定未満の場合に画像形成を禁止する制御手段に相当する。記録動作の禁止状態は、LEDランプ14aの制御でユーザーに報知できる。たとえば、HMP1が記録材上から取り上げられ位置検知センサ18が位置の検知ができなくなったときと同様に、記録動作を禁止するときに、LEDランプ14aを消灯させて、印字ボタン5aの発光を停止させる。
【0067】
図17は印刷媒体接触ユニット100の他の例の説明図である。
図17(a)はこの例の装置を
図7に示すのとほぼ同じ方向から見た斜視図であり、
図17(b)はこの例の装置の右側面33を図中で上に向けた状態の底面図である。この例の印刷媒体接触ユニット100は、ローラ部を備えておらず、三点支持部として、
図12及び
図13の実施例と同じ複数の摺動部180~183を備えているのみである。移動操作として直線的な移動が少なく、曲線的な移動走査が多い場合に適した接触ユニットである。
図17では
図7におけると同様にカバー部材は取り外している。
図7とは異なり、インクカートリッジ40やロック部材33bがセットされた状態を示す。
【0068】
印刷媒体接触ユニット100として、
図6乃至
図11を用いて説明したもの、
図12乃至
図15を用いて説明したもの、そして、
図17を用いて説明したものというように互いに異なる印刷媒体接触ユニット100を用意してシステムとすれば、多種多様の走査の仕方に対応でき、また、表面凹凸の記録媒体での不具合も防止できる。
【0069】
以上、
図1、
図12乃至
図15を用いて説明した印刷媒体接触ユニット100では、印刷媒体接触ユニット100に摺動部を設けたが、摺動部はHMP1本体に形成し、印刷媒体接触ユニット100には、このHMP1本体の摺動部を底面に露出させる開口を設けるようにしてもよい。
【0070】
また、
図1、
図12乃至
図15を用いて説明した印刷媒体接触ユニット100を備えたHMP1では、記録媒体の表面凹凸にローラを追従させ、表面凹凸に起因する不具合を抑制できるが、印刷媒体接触ユニット100を用いずに、HMP1本体にローラと摺動部とを設け、これらのローラにつき、ローラを摺動部よりも記録媒体側に突出した位置と退避した位置との間で進退可能に保持する保持手段と、ローラを突出した位置に向きて付勢する付勢手段とを設けてもよい。
【0071】
さらに、本実施形態では、インクジェット方式のHMP10に本発明を適用した例について説明したが、本発明の構成は他の画像形成方法による装置にも適用できる。例えば、感熱方式、又は熱転写方式など適宜な方式の記録装置に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 :HMP
2 :上部ユニット
2a :水平延在部
2b :垂直延在部
3 :下部ユニット
3a :上部ユニット回転軸
5a :印字ボタン
5b :電源ボタン
5c :LEDランプ
11 :上部ユニットロック爪
13 :FPC接点部
14 :制御基板
14a :LEDランプ
15 :バッテリ
15a :USB接続口
18 :位置検知センサ
25 :フレキシブルフラットケーブル
30 :下面
30a :開口
32 :左側面
32b :ロック部材
33 :右側面
33b :ロック部材
34 :背面
35 :正面
37a :左側第一ローラ
37b :左側第二ローラ
37c :左側回転軸
38a :右側第一ローラ
38b :右側第二ローラ
38c :右側回転軸
40 :インクカートリッジ
41 :インクジェットヘッド
41a :吐出孔列
52 :Bt基板
75 :スペーサー部材
76 :突起
80 :ハウジング
100 :印刷媒体接触ユニット
100a :ベース部材
100b :開口部
100c :開口部
100d :特定形状範囲
100e :ガイド部
110 :引っ掛け部
110a :垂直部
110b :水平部
120 :引っ掛け部
120a :引っ掛け孔
121 :操作部
121a :軸部
123 :抜け止め部材
124 :爪部材
124a :爪部
124b :テーパ部
125 :圧縮スプリング
130 :側壁部
130a :ガイド孔
131 :正面側側壁部
132 :収容部
140 :側壁部
140a :境界線
140b :境界線
152 :基板
153 :RAM
154 :ROM
155 :CPU
156 :記録制御部
157 :ジャイロセンサ
158 :キャッピングセンサ
180 :摺動部
181 :摺動部
182 :摺動部
183 :摺動部
190 :軸受部材
190a :降下ストップ部
191 :付勢部材
210 :引っ掛け板部
210a :引っ掛け孔
220 :引っ掛け板部
220a :引っ掛け孔
220b :先端部
220c :側面
300 :取り付け部
301 :回転軸
310 :ヘッドカバー部材
310a :底面壁部
310b :側壁面部
310c :係合部
311 :キャッピング部
A :矢印
A7 :矢印
B :矢印
C :範囲
H1 :高さレベル
H2 :設置面レベル
L2 :幅範囲
L3 :幅範囲
P :記録紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】