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特許7565170回転角センサ、角度信号算出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】回転角センサ、角度信号算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01D5/245 B
G01D5/245 110L
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020103836
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021001879
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019115447
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】十河 健太
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛生
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028037(JP,A)
【文献】特表2015-508899(JP,A)
【文献】特開2010-197399(JP,A)
【文献】国際公開第99/013296(WO,A1)
【文献】特表2011-503630(JP,A)
【文献】特開2005-326291(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0238711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
G01B 7/00- 7/34
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており、前記回転軸を中心として回転可能に配置された磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を検出する第1磁気検出素子及び第2磁気検出素子と、
前記磁場の、前記第1方向とは異なる第2方向の成分を検出する第3磁気検出素子及び第4磁気検出素子と、
前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力を入力として第1磁場演算信号を出力し、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力を入力として前記第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を出力する演算信号生成部と、
前記第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号を入力として、前記磁石の回転角を示す角度信号を生成して出力する角度信号生成部と、
を備え、
前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子は、前記第1磁気検出素子と前記磁石とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記磁石とを結ぶ線分により形成される角度である第1配置角度が、0度超90度未満となる位置に配置されており、
前記第1配置角度は、平面視で前記第1磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、または断面視で前記第1磁気検出素子と前記磁石の中心とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度であり、
前記第1磁気検出素子は、前記第磁気検出素子とは異なる位置に配置されており、
前記演算信号生成部が、
前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子が前記第1方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第1磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第2磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の和を演算して、第1磁場演算信号を生成するとともに、前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子が前記第2方向を互いに正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第3磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第4磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の和を演算して、前記第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を生成し、前記第1磁場演算信号及び前記第2磁場演算信号を出力する
回転角センサ。
【請求項2】
平面視または断面視で、前記第3磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分及び前記第4磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度である第2配置角度が前記第1配置角度よりも小さい
請求項1に記載の回転角センサ。
【請求項3】
前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子が前記第2方向に沿って配置されている
請求項1または2に記載の回転角センサ。
【請求項4】
前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子が前記第1方向に沿って配置されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項5】
前記第1方向は、前記回転軸に垂直な方向である
請求項1から4のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項6】
前記第2方向は、前記回転軸に平行な方向であり、
前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子は、それぞれ前記磁石の前記回転軸方向の厚みの中心からずれた位置に配置されている
請求項5に記載の回転角センサ。
【請求項7】
前記第2方向は、前記第1方向に垂直かつ前記回転軸に垂直な方向である
請求項5に記載の回転角センサ。
【請求項8】
前記第2磁気検出素子が前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子とは異なる位置に配置されている請求項1に記載の回転角センサ。
【請求項9】
前記第1磁気検出素子及び前記第3磁気検出素子を有し、前記第1方向及び前記第2方向の双方の磁場を検出する第1二軸磁気検出素子と、前記第2磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子を有し、前記第1方向及び前記第2方向の双方の磁場を検出する第2二軸磁気検出素子と、のいずれか一方を少なくとも備える
請求項1から6のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項10】
少なくとも回転軸と平行な方向の磁場を検出する前記第1二軸磁気検出素子及び前記第2二軸磁気検出素子を備え、
前記第1二軸磁気検出素子及び前記第2二軸磁気検出素子は、平面視で前記磁石の回転軸を通り前記第1二軸磁気検出素子及び前記第2二軸磁気検出素子の磁場検出方向と平行な直線に対して、互いに線対称とならない位置に配置されている
請求項に記載の回転角センサ。
【請求項11】
前記第1二軸磁気検出素子又は前記第2二軸磁気検出素子は、磁気収束板と複数のホール素子とを有する
請求項又は10に記載の回転角センサ。
【請求項12】
前記第1磁気検出素子、前記第2磁気検出素子、前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子は、磁気抵抗素子である
請求項1から11のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項13】
前記角度信号生成部の前段に設けられ、前記演算信号生成部から入力された前記第1磁場演算信号及び前記第2磁場演算信号を入力として算出された補正値を用いて、前記第1磁場演算信号及び前記第2磁場演算信号の補正を行い、補正後の前記第1磁場演算信号及び前記第2磁場演算信号を前記角度信号生成部に出力する磁場信号補正部をさらに備える
請求項2から12のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項14】
前記角度信号生成部の後段に設けられ、前記角度信号生成部から入力された前記角度信号を入力として算出された補正値を用いて、前記角度信号の補正を行い、補正後の前記角度信号を出力する補正部をさらに備える
請求項1から12のいずれか1項に記載の回転角センサ。
【請求項15】
回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており前記回転軸を中心として回転可能に配置された磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子の出力として取得し、
前記磁場の前記第1方向の成分を、前記第1磁気検出素子とは異なる位置かつ第1磁気検出素子との第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された第2磁気検出素子であって、前記第1配置角度は、平面視で前記第1磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で前記第1磁気検出素子と前記磁石の中心とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度である前記第2磁気検出素子の出力として取得し、
前記磁場の前記第1方向とは異なる第2方向の成分を、前記第1磁気検出素子とは異なる位置に配置された第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力として取得し、
前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力を入力として、前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子が前記第1方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第1磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第2磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の和を演算することで、第1磁場演算信号を生成して出力し、
前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力を入力として、前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子が前記第2方向を互いに正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第3磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第4磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の和を演算して、前記第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を生成して出力し、
前記第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号を入力として、前記磁石の回転角を示す角度信号を出力する
角度信号算出方法。
【請求項16】
回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており前記回転軸を中心として回転可能に配置された磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子の出力として取得することと、
前記磁場の前記第1方向の成分を、前記第1磁気検出素子とは異なる位置かつ第1磁気検出素子との第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された第2磁気検出素子であって、前記第1配置角度は、平面視で前記第1磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で前記第1磁気検出素子と前記磁石の中心とを結ぶ線分及び前記第2磁気検出素子と前記中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度である前記第2磁気検出素子の出力として取得することと、
前記磁場の前記第1方向とは異なる第2方向の成分を、前記第1磁気検出素子とは異なる位置に配置された第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力として取得することと、
前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力を入力として、前記第1磁気検出素子及び前記第2磁気検出素子が前記第1方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第1磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第2磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第1方向の成分を検出する場合、前記第1磁気検出素子の出力及び前記第2磁気検出素子の出力の和を演算することで、第1磁場演算信号を生成して出力することと、
前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力を入力として、前記第3磁気検出素子及び前記第4磁気検出素子が前記第2方向を互いに正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の差を演算し、前記第3磁気検出素子が前記第1方向を正方向、前記第1方向とは反対の方向を負方向とし、前記第4磁気検出素子が前記第1方向を負方向、前記第1方向とは反対の方向を正方向として磁場の前記第2方向の成分を検出する場合、前記第3磁気検出素子の出力及び前記第4磁気検出素子の出力の和を演算して、前記第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を生成して出力することと、
前記第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号を入力として、前記磁石の回転角を示す角度信号を出力することと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転角センサ、角度信号算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石の回転によって変化する磁石周辺の磁場を検出し、検出された磁場に基づいて磁石の回転角θを検出する回転角センサが知られている。磁石には、モータ等の回転体が接続されている。このため、回転角センサは、磁石の回転を検出することにより、モータの回転を検出することができる。
【0003】
回転角センサでは、磁石と、磁石周辺に配置する磁気検出素子との配置や形状を検討することによって、磁石の回転角度の検出精度を向上させることが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第99/013296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転角センサを磁気式エンコーダとして用いる場合、モータからの漏れ磁束や地磁気等の外乱磁束により、回転角センサから出力される角度信号に誤差が生じ、モータの回転を正確に検出することが困難となる。
【0006】
そこで、本開示は、外乱磁束が生じる環境で使用した場合であっても高精度で磁石の回転角を検出することができる回転角センサ、角度信号算出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る回転角センサは、回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており、回転軸を中心として回転可能に配置された磁石と、磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を検出する第1磁気検出素子及び第2磁気検出素子と、磁場の、第1方向とは異なる第2方向の成分を検出する第3磁気検出素子及び第4磁気検出素子と、第1磁気検出素子の出力及び第2磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号を出力し、第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を出力する演算信号生成部と、第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号に基づいて、磁石の回転角を示す角度信号を生成して出力する角度信号生成部と、を備え、第1磁気検出素子及び第2磁気検出素子は、第1磁気検出素子と磁石とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と磁石とを結ぶ線分により形成される角度である第1配置角度が、0度超90度未満となる位置に配置されており、第1配置角度は、平面視で第1磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、または断面視で第1磁気検出素子と磁石の中心とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度であり、第1磁気検出素子は、第3磁気検出素子とは異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【0008】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る角度信号算出方法は、回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており回転軸を中心として回転可能に配置された磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子の出力として取得し、磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子とは異なる位置かつ第1磁気検出素子との第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された第2磁気検出素子であって、第1配置角度は、平面視で第1磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で第1磁気検出素子と磁石の中心とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度である第2磁気検出素子の出力として取得し、磁場の第1方向とは異なる第2方向の成分を、第1磁気検出素子とは異なる位置に配置された第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力として取得し、第1磁気検出素子の出力及び第2磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号を出力し、第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を出力し、第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号に基づいて、磁石の回転角を示す角度信号を出力することを特徴とする。
【0009】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係るプログラムは、回転軸に垂直な方向に少なくとも二極に分極しており回転軸を中心として回転可能に配置された磁石の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子の出力として取得することと、磁場の第1方向の成分を、第1磁気検出素子とは異なる位置かつ第1磁気検出素子との第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された第2磁気検出素子であって、第1配置角度は、平面視で第1磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と回転軸とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で第1磁気検出素子と磁石の中心とを結ぶ線分及び第2磁気検出素子と中心とを結ぶ線分により形成される角度のうち小さい角度である第2磁気検出素子の出力として取得することと、磁場の第1方向とは異なる第2方向の成分を、第1磁気検出素子とは異なる位置に配置された第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力として取得することと、第1磁気検出素子の出力及び第2磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号を出力することと、第3磁気検出素子の出力及び第4磁気検出素子の出力に基づいて第1磁場演算信号と位相の異なる第2磁場演算信号を出力することと、第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号に基づいて、磁石の回転角を示す角度信号を出力することと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、外乱磁束が生じる環境で使用した場合であっても高精度で磁石の回転角を検出することができる回転角センサ、角度信号算出方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態に係る回転角センサの一構成例を示す概略図である。
図2】第一実施形態に係る回転角センサにおける磁石及び回転角検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3図3(A)は、第一実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図であり、図3(B)は、第一実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す断面図である。
図4】第一実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図の他の例である。
図5図5(A)及び図5(B)は、第一実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図の他の例である。
図6図6(A)及び図6(B)は、第一実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図の他の例である。
図7】第一実施形態に係る回転角センサで実行される角度信号算出方法を説明するフローチャートである。
図8】第二実施形態に係る回転角センサにおける磁石及び回転角検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図9】第二実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図である。
図10】第二実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す断面図である。
図11】第三実施形態に係る回転角センサの一構成例を示す概略図である。
図12】第三実施形態に係る回転角センサにおける磁石及び回転角検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図13】第三実施形態に係る回転角センサにおける、磁気検出素子と磁石との配置関係を示す平面図である。
図14】第四実施形態に係る回転角センサにおける磁石及び回転角検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図15】第四実施形態に係る回転角センサにおける磁石及び回転角検出装置の構成の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。
【0013】
1.第1実施形態
図1から図7を用いて、第1実施形態に係る回転角センサ1について詳細に説明する。図1は、回転角センサ1の一構成例を示す。
【0014】
(1-1)回転角センサの構成
回転角センサ1は、回転する磁石10の回転角を非接触で検出する。回転角センサ1は、磁石10と回転角検出装置20とを備えている。
本実施形態では、磁石10の回転面をX-Y平面、磁石10の回転軸11Aと平行な方向をZ軸方向とする。回転角センサ1は、X-Y平面内で回転する磁石10の回転角θを検出して出力する。また、本実施形態において、回転角センサ1をZ軸と平行な方向に見る場合を「平面視」とする。
【0015】
磁石10は、例えば、外部の機器のモータ等(以下、回転体という場合がある)の回転に応じて回転する。
回転角検出装置20は、磁石10が回転することにより変化する磁石10周辺の磁場Brを磁場信号として検出し、磁場信号に基づいて磁石10の回転角に応じた角度信号Sθを生成して出力する。回転角検出装置20は、回転角センサ1に備えられた端子を介して、上述した回転体の制御部等に角度信号Sθを出力する。
これにより、外部の機器は、回転角センサ1から取得した角度信号Sθに基づいて、回転体の動作を制御することができる。
以下、回転角センサ1の各部について詳細に説明する。
【0016】
<磁石>
図2は、磁石10及び回転角検出装置20を備える回転角センサ1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、磁石10は、回転軸11Aに沿って伸びるシャフト11に対して固定され、回転軸11Aを中心として回転可能に配置されている。磁石10は、平面視において略円形であり、回転軸11Aに垂直な方向に少なくとも2極に分極している。本実施形態の磁石10は、半円形状の2つの領域に分割されており、一方の領域がS極、他方の領域がN極となった二極磁石である。
【0017】
シャフト11は、Z軸方向に延びている。シャフト11の一端は、磁石10の中心に接続され、シャフト11の他端は、外部の機器の回転体に接続されている。これにより、磁石10は、外部の機器の回転体の回転に応じてX-Y平面内で回転する。磁石10は、X-Y平面内で回転することによりS極及びN極の位置が変化して、磁石10の周辺に発生する磁場を変化させる。
【0018】
磁石10は、X-Y平面と略平行な面で回転することにより、回転角検出装置20は磁石10の回転に応じた周期的な磁場信号を検出する。当該磁場信号を(数1)式で示す。ここで、Bは、回転角検出装置20において検出される磁場の絶対値を示す。本実施形態において、Bは、略一定とし、定数(B=1)として取り扱うこととする。また、θは、予め定められた方向又は基準の方向に対する、磁石10の回転角度を示す。
(数1)
Br(θ)=B・cosθ
【0019】
<回転角検出装置>
回転角検出装置20は、磁石10の回転によって変化する磁場Brの第1方向の成分と第2方向の成分とを検出する。回転角検出装置20は、磁場Brの第1方向の成分と第2方向の成分とに基づいて、検出タイミングにおける磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成して出力する。
本実施形態において、「第1方向」と「第2方向」とは互いに異なる方向であればよい。
本実施形態では、「第1方向」は回転軸11Aに垂直な方向であり、「第2方向」は第1方向に垂直かつ回転軸11Aに垂直な方向である場合について説明する。具体的には、「第1方向」がX軸方向であり、「第2方向」がX-Y平面内においてX軸からδ度回転した方向である場合について説明する。なお、本実施形態では、δが90度であり、「第2方向」がY軸方向である場合について説明する。
【0020】
回転角検出装置20は、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bと、演算信号生成部40と、角度信号生成部50と、を備えている。
以下、回転角検出装置20の各部について説明する。以下、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bの配置位置において、一様な外乱磁場Beが生じているものとして説明する。
【0021】
(磁気検出素子)
図1に示すように、磁気検出素子31A、31B、32A及び32B(第1磁気検出素子、第2磁気検出素子、第3磁気検出素子及び第4磁気検出素子の一例)は、磁石10の側方に配置されている。
【0022】
磁気検出素子31A及び31Bは、磁場の第1方向の成分を検出する素子である。図2に示すように、磁気検出素子31Aは、検出タイミングにおいて磁気検出素子31Aに入力する磁場の第1方向の成分B1Aに応じた第1磁場信号S1Aを出力する。磁気検出素子31Bは、検出タイミングにおいて磁気検出素子31Bに入力する磁場の第2方向の成分B1Bに応じた第2磁場信号S1Bを出力する。
【0023】
磁気検出素子32A及び32Bは、磁場の第2方向の成分を検出する素子である。図2に示すように、磁気検出素子32Aは、検出タイミングにおいて磁気検出素子32Aに入力する磁場の第2方向の成分B2Aに応じた第3磁場信号S2Aを出力する。磁気検出素子32Bは、検出タイミングにおいて磁気検出素子32Bに入力する磁場の第3方向の成分B2Bに応じた第4磁場信号S2Bを出力する。
【0024】
第1磁場信号S1A、第2磁場信号S1B、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bは、例えば、電圧を示す信号である。磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bで検出されたアナログ電圧信号は、図示しない増幅部及びAD変換部において信号レベルの増幅及びデジタル信号への変換が行われ、第1磁場信号S1A、第2磁場信号S1B、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bとして出力される。
【0025】
磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bの配置位置に外乱磁場Beが発生している場合、磁気検出素子31A及び31Bは、磁場Brと外乱磁場Beとの合成磁場の第1方向の成分に応じた第1磁場信号S1A、第2磁場信号S1Bをそれぞれ出力する。同様に、磁気検出素子32A及び32Bは、当該合成磁場の第2方向の成分に応じた第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bをそれぞれ出力する。
【0026】
磁気検出素子31A及び31Bは、第1方向の同じ方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出しても良く、第1方向の反対方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出しても良い。すなわち、磁気検出素子31A及び磁気検出素子31Bは、同じ方向を向く感磁軸を有していても良く、反対方向を向く(感磁軸同士のなす角が180度である)感磁軸を有していても良い。
また、磁気検出素子32A及び32Bは、第2方向の同じ方向を互いに正方向として磁場の第2方向の成分を検出しても良く、第2方向の反対方向を互いに正方向として磁場の第2方向の成分を検出しても良い。すなわち、磁気検出素子32A及び磁気検出素子32Bは、同じ方向を向く感磁軸を有していても良く、反対方向を向く(感磁軸同士のなす角が180度である)感磁軸を有していても良い。
【0027】
磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子(MR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル効果磁気抵抗素子(TMR)、マグネトインピーダンス素子(MI素子)、及び/又はインダクタンスセンサのような磁電変換素子である。また、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、単一の磁電変換素子で構成されていてもよく、複数の磁電変換素子で構成されていてもよい。複数の磁電変換素子で構成された磁気検出素子としては、例えば複数の磁電変換素子で構成された回路(例えば、ハーフブリッジ回路やフルブリッジ回路等のブリッジ回路)が挙げられる。また、複数の磁電変換素子で構成された磁気検出素子としては、複数の方向の磁場成分を含む混成信号を出力する複数の磁電変換素子と、これらの混成信号から予め定められた方向の磁場成分(例えば、第1方向または第2方向の磁場成分)を抽出するため演算回路とを有する構成であってもよい。この場合、各磁電変換素子は、磁気収束板と隣接して配置され、磁気収束板によって方向が変化した磁場を検出することにより、磁場の第1方向の成分又は第2方向の成分を検出してもよい。
【0028】
(演算信号生成部)
演算信号生成部40は、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bの出力に基づいて、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を出力するための演算を行う。演算信号生成部40は磁気検出素子31A及び31Bの感磁軸の向きに応じて演算を行い、第1磁場演算信号S1を出力する。さらに、演算信号生成部40は磁気検出素子32A及び32Bの感磁軸の向きに応じて演算を行い、第2磁場演算信号S2を出力する。
【0029】
例えば、演算信号生成部40は、磁気検出素子31Aの感磁軸と磁気検出素子31Bの感磁軸とが同じ向きの場合は磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1Aと、磁気検出素子31Bの出力である第2磁場信号S1Bとの差を演算する。また、演算信号生成部40は、磁気検出素子32Aの感磁軸と磁気検出素子32Bの感磁軸とが反対向きの場合は磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2Aと、磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bとの和を演算する。
上記の演算を行うことによって、これら素子の配置環境下に発生するモータ等の回転体からの漏れ磁束や、地磁気等に起因する外乱磁場Beを低減することができる。
【0030】
すなわち、演算信号生成部40は、上述の演算を行うことによって、磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1Aに含まれる外乱磁場Be1と、磁気検出素子31Bの出力である第2磁場信号S1Bに含まれる外乱磁場Be1とが逆符号となる演算を行うことができる。これにより、演算信号生成部40は、外乱磁場Be1が除去された第1磁場演算信号S1を生成することができる。
【0031】
また、演算信号生成部40は、磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2Aに含まれる外乱磁場Be2と、磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bに含まれる外乱磁場Be2とが逆符号となる演算を行う。これにより、演算信号生成部40は、外乱磁場Be2が除去された第2磁場演算信号S2を生成する。
【0032】
磁気検出素子31A及び31Bが第1方向の同じ方向を互いに正方向として磁場の第1方向の成分を検出する場合、演算信号生成部40は、第1磁場信号S1Aと第2磁場信号S1Bとの差を演算する。これにより、演算信号生成部40は、(数8)式に示すように、第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bに含まれる外乱磁場の第1方向の成分Be1を低減した第1磁場演算信号S1を生成する。
【0033】
(数8)
S1=S1B-S1A
=[cos{θ+2(γ1-α)}+Be1]-{cos(θ-2α)+Be1}
=cos(θ-2α+2・γ1)-cos(θ-2α)
【0034】
同様に、演算信号生成部40は、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bの差を演算する。これにより、演算信号生成部40は、(数9)式に示すように、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bに含まれる外乱磁場の第2方向の成分Be2を低減し、かつ第1磁場演算信号S1と位相の異なる第2磁場演算信号S2を生成する。
【0035】
(数9)
S2=S2B-S2A
=[cos{θ+δ+2(γ2-β)}+Be2]-{cos(θ+δ-2β)+Be2}
=cos(θ+δ-2β+2・γ2)-cos(θ+δ-2β)
【0036】
一方、磁気検出素子31A及び31Bが、第1方向の異なる方向を正方向として磁場の第1方向の成分を検出する場合、演算信号生成部40は、第1磁場信号S1Aと第2磁場信号S1Bとの和を演算する。これにより、演算信号生成部40は、(数10)式に示すように、第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bに含まれる外乱磁場の第1方向の成分Be1を低減した第1磁場演算信号S1を生成する。
(数10)
S1=S1A+S1B
={cos(θ-2α)+Be1}+[-cos{θ+2(γ1-α)}-Be1]
=cos(θ-2α)-cos(θ-2α+2・γ1)
【0037】
同様に、演算信号生成部40は、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bの和を演算する。これにより、演算信号生成部40は、(数11)式に示すように、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bに含まれる外乱磁場の第2方向の成分Be2を低減し、かつ第1磁場演算信号S1と位相の異なる第2磁場演算信号S2を生成する。
(数11)
S2=S2A+S2B
={cos(θ+δ-2β)+Be2}+[-cos{θ+δ+2(γ2-β)}-Be2]
=cos(θ+δ-2β)-cos(θ+δ-2β+2・γ2)
【0038】
(数8)から(数11)式に示すように、演算信号生成部40で演算された第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2は、外乱磁場成分を含んでいない。また、第2磁場演算信号S2は、第1磁場演算信号S1と位相が異なる。
演算信号生成部40は、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を角度信号生成部50に出力する。
【0039】
(角度信号生成部)
角度信号生成部50は、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて、磁石10の回転角を示す角度信号Sθを生成し、回転角センサ1外部の機器(例えばモータ)の制御部に出力する。
角度信号生成部50は、磁石10を1回転させて得られる信号と、各素子の配置位置(配置角度α、β、γ1、γ2)、感磁軸のなす角δとに基づいて、磁石10の回転角θを求め、回転角θを示す角度信号を生成する。
【0040】
(磁気検出素子の配置)
本実施形態に係る磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bの配置の一例について説明する。図3(A)は、磁石10が発生する磁場Brの第1方向の成分を検出する磁気検出素子31A及び31Bと、磁場Brの第2方向の成分を検出する磁気検出素子32A及び32Bと、磁石10との配置関係を示す。
【0041】
図3(A)において、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bと重なる矢印は、各素子の感磁軸の方向を示している。磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、検出する磁場の向きが感磁軸と同じ方向を向いている場合に正の信号を出力し、検出する磁場の向きが感磁軸と反対の方向を向いている場合に負の信号を出力する。
また、図3(A)は、磁石10と磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bとの位置関係の一例を示しており、磁石10のS極及びN極の位置は図示した位置に限られない。
【0042】
図3(A)に示すように、磁気検出素子31Aと磁気検出素子31Bとは、配置角度γ1(第1配置角度の一例)を有するように配置される。磁気検出素子32Aと磁気検出素子32Bとは、配置角度γ2(第2配置角度の一例)を有するように配置される。
ここで、配置角度γ1は、平面視で、磁気検出素子31Aと回転軸11A(磁石10の回転中心O)とを結ぶ線分L1A、及び磁気検出素子31Bと回転軸11Aとを結ぶ線分L1Bにより形成される角度のうち小さい角度をいう。
また、配置角度γ2は、平面視で、磁気検出素子32Aと回転軸11A(磁石10の回転中心O)とを結ぶ線分L2A、及び磁気検出素子32Bと回転軸11Aとを結ぶ線分L2Bにより形成される角度のうち小さい角度をいう。
【0043】
図3(A)に示すように、磁気検出素子31Aと磁気検出素子32Aとは、配置角度γ3(第3配置角度の一例)を有するように配置される。磁気検出素子31Bと磁気検出素子32Bとは、配置角度γ4(第4配置角度の一例)を有するように配置される。
ここで、配置角度γ3は、平面視で、線分L1A及び線分L2Aにより形成される角度のうち小さい角度をいう。
また、配置角度γ4は、平面視で、線分L1B及び線分L2Bにより形成される角度のうち小さい角度をいう。
【0044】
また、図3(B)に示すように、磁気検出素子31A及び31Bが回転軸11A方向の異なる位置に配置されていてもよい。この場合、回転軸11Aと、磁気検出素子31A又は31Bとを通る断面視で、磁気検出素子31Aと磁石10の中心O’(回転軸11A上における磁石10の厚み方向の中心)とを結ぶ線分L1A’、及び磁気検出素子31Bと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L1B’により形成される角度のうち小さい角度を第1配置角度の他の例である配置角度γ1’としてもよく、磁気検出素子32A及び32Bが磁石10の厚み方向に異なる位置に配置されている場合は、回転軸11Aと、磁気検出素子32A又は32Bとを通る断面視で、磁気検出素子32Aと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L2A’、及び磁気検出素子32Bと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L2B’により形成される角度のうち小さい角度を第2配置角度の他の例である配置角度γ2’としてもよい。
図3(B)に示すように、磁気検出素子31Aと磁気検出素子32Aとは、第3配置角度の他の例である配置角度γ3’を有するように配置される。磁気検出素子31Bと磁気検出素子32Bとは、第4配置角度の他の例である配置角度γ4’を有するように配置される。
ここで、配置角度γ3’は、断面視で、線分L1A’及び線分L2A’により形成される角度のうち小さい角度をいう。
また、配置角度γ4’は、断面視で、線分L1B’及び線分L2B’により形成される角度のうち小さい角度をいう。
配置角度γ1’~γ4’は、以下説明する配置角度γ1~γ4に置き換えることができる。
なお、第1配置角度、第2配置角度に対して平面視および断面視のいずれについても角度を規定できる場合、いずれかの角度が0度超90度未満であればよい。例えば、γ1が15度、γ1’が0度の場合はγ1を第1配置角度とすることができる。
【0045】
図3(A)では、磁気検出素子31Aが、磁石10の回転中心Oを通り、磁気検出素子31A及び31Bの感磁軸と平行な直線L1に対して-α度の位置に配置された例を示す。図3(A)では、磁気検出素子32Aが、磁石10の回転中心Oを通り、磁気検出素子32A及び32Bの感磁軸と平行な直線L2に対して-β度の位置に配置された例を示す。
【0046】
図3(A)に示す配置の磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bの出力について説明する。ここで、各素子の配置位置において一様な外乱磁場Beが発生しているものとする。
図3(A)に示す磁気検出素子31Aの配置位置では、磁石10の回転角θに応じて周期的な磁場成分が発生する。ここで、簡単のために磁石10の回転中心と磁気検出素子31Aとを結ぶ線分に平行な方向の磁場成分をBrと置き、(数2)式で示す。この場合、磁石10の回転中心と磁気検出素子31Aとを結ぶ線分に垂直な方向の磁場成分をBtと置くと、(数3)式で示される磁場成分が発生する。なお、磁場の絶対値Bは「1」であるものとして説明する。
(数2)
Br=cos(θ-α)
(数3)
Bt=sin(θ-α)
【0047】
磁気検出素子31Aは、磁気検出素子31Aの配置位置における磁場の第1方向の成分を検出する。従って、磁気検出素子31Aは、磁石10の回転角θに応じた第1磁場信号S1Aとして、上述したBr及びBtに含まれる第1方向の成分の磁場を合成して得られる磁場信号を出力する。さらに、磁気検出素子31Aに外乱磁場が印加された場合には、当該外乱磁場の第1方向成分に応じた信号が出力される。よって、このとき磁気検出素子31Aは(数4)式で示される磁場方向成分を出力する。ここで、Be1は、外乱磁場Beの第1方向成分である。
(数4)
1A=cos(θ-2α)+Be1
【0048】
磁気検出素子31Bは、磁気検出素子31Aに対して配置角度γ1で配置されている。このため、上述の磁気検出素子31Aに対する説明と同様に計算すると、磁気検出素子31Bは、磁石10の回転角θに応じた第2磁場信号S1Bとして、(数5)式で示される磁場方向成分を出力する。
(数5)
1B=cos{θ+2(γ1-α)}+Be1
なお、磁気検出素子31Bの感磁軸の向きが磁気検出素子31Aと反対向きの場合、第2磁場信号S1Bは(数5’)式で示される磁場方向成分を出力する。
(数5’)
1B=-cos{θ+2(γ1-α)}-Be1
【0049】
磁気検出素子32Aは、磁場の第2方向の成分を検出する。磁気検出素子32Aは、磁気検出素子31Aに対して配置角度γ3で配置されている。このため、磁気検出素子32Aは、磁石10の回転角θに応じた第3磁場信号S2Aとして、(数6)式で示される磁場方向成分を出力する。ここで、Be2は、外乱磁場Beの第2方向成分である。
(数6)
2A=cos(θ+δ-2β)+Be2
【0050】
磁気検出素子32Bは、磁気検出素子32Aに対して配置角度γ2で配置されている。このため、磁気検出素子32Bは、磁石10の回転角θに応じた第4磁場信号S2Bとして、(数7)式で示される磁場方向成分を出力する。
(数7)
2B=cos{θ+δ+2(γ2-β)}+Be2
なお、磁気検出素子32Bの感磁軸の向きが磁気検出素子32Aと反対向きの場合、第2磁場信号S1Bは(数7’)式で示される磁場方向成分を出力する。
(数7’)
2B=-cos{θ+δ+2(γ2-β)}-Be2
【0051】
回転角センサ1では、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成するために、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bが以下の配置条件を満たすように配置されている。
【0052】
(a)磁気検出素子の第1配置条件
磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、演算信号生成部40での演算により、外乱磁場成分とともに磁石10によって発生した磁場成分が相殺されないように配置されることが好ましい。例えば、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、配置角度γ1及びγ2が0度超180度未満となる位置に配置される。
上述したように、演算信号生成部40では、磁気検出素子31Aの出力及び磁気検出素子31Bの出力に基づいた演算を行う。(数8)等より配置角度γ1及びγ2が0度又は180度である場合、演算信号生成部40での演算により、磁石10によって発生した磁場成分も相殺されることが把握できる。
このため、磁気検出素子31A及び31Bの配置角度γ1と磁気検出素子32A及び32Bの配置角度γ2とが0度超180度未満に調整される。
【0053】
また、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方が0度超90度以下となる位置に配置されていることがより好ましい。
配置角度γ1及びγ2は、90度に近づくほど回転角センサ1から出力される角度信号Sθが大きくなり、90度の場合に出力される角度信号Sθが最大となるため好ましい。
また、配置角度γ1が小さいほど磁気検出素子31Aと磁気検出素子31Bとの位置が近くなり、磁気検出素子31A及び31Bが検出する外乱磁場Beの第1方向の成分Be1の大きさが近い値となる。同様に、配置角度γ2が小さいほど磁気検出素子32A及び32Bが検出する外乱磁場Beの第2方向の成分Be2の大きさが近い値となる。このため、回転角センサ1では、配置角度γ1、γ2が小さい程外乱磁場成分の影響が小さくなることから、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方が0度超90度未満であると、磁石10の回転角の検出精度が向上するため好ましい。
配置角度γ1及びγ2は、回転角センサ1から出力される角度信号の大きさと、角度信号Sθの精度とに基づいて適切に選択されることが好ましい。
【0054】
また、図2においては第1方向の磁場成分を検出する磁気検出素子31A及び31Bと、第2方向の磁場成分を検出する32A及び32Bとが異なる位置に配置されている。外乱磁場Beの第1方向の成分Be1と第2方向の成分Be2とは等しくない場合がある。このため、各磁気検出素子を上述したように配置することで各成分の外乱磁場を相殺する効果を向上させ、角度信号Sθの精度を向上できるため好ましい。
また、磁気検出素子31A及び31Bと磁気検出素子32A及び32Bとが、図4のように配置されていてもよい。すなわち、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bのそれぞれが異なる位置に配置されるとともに、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方が0度超90度未満(図4では、配置角度γ1及びγ2のいずれも0度超90度未満)となるように配置されていてもよい。なお、図4においては磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bがすべて異なる位置に配置されているが、磁気検出素子31A及び31Bのいずれか一方と磁気検出素子32A及び32Bのいずれか一方とを異なる位置に配置するだけでもよい。
【0055】
また、図5(A)及び図5(B)に示すように、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方を0度超90度未満とし、かつ配置角度γ2が配置角度γ1よりも小さくなるように配置されていてもよい。図5(B)は、磁気検出素子31Bの磁場検出方向が図5(A)と180度異なる点で相違する。これは、磁気検出素子32Aと32Bとの距離が磁気検出素子31Aと31Bとの距離よりも小さくなるように配置されていると言い換えることもできる。磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bがこのように配置されていることで、外乱磁場Beの第2方向の成分Be2が第1方向の成分Be1よりも大きい場合にはBe2を相殺する効果を高めることができる。さらに、磁石10によって発生した第1方向の磁場成分から検知できる信号を大きくすることができる。
【0056】
また、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方を0度超90度未満とし、かつ磁気検出素子31A及び31B、又は磁気検出素子32A及び32Bのいずれかを磁気検出素子の磁気検出方向と垂直な方向に沿って配置しても良い。すなわち、図6(A)に示すように、磁気検出素子31A、31Bを第2方向に沿って配置してよく、図6(B)に示すように磁気検出素子32A、32Bを第1方向に沿って配置してもよい。各磁気検出素子を図6(A)及び図6(B)のように配置することで、外乱磁場Beの各成分を相殺する効果を高めることができる。
【0057】
(b)磁気検出素子の第2配置条件
回転角センサ1では、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成するために、第1磁場演算信号S1と第2磁場演算信号S2との位相差を検出する必要がある。従って、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは第1磁場演算信号S1と第2磁場演算信号S2との位相が一致しないように配置されることが好ましい。
例えば、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、直線L1及び線分L1Aがなす角度αと直線L2及び線分L2Aがなす角度βとが異なり、磁気検出素子31A及び31Bの感磁軸と磁気検出素子32A及び32Bの感磁軸とがなす角(直線L1と直線L2とがなす角)が、角度βと角度αとの差分の2倍と等しく、かつ配置角度γ1と配置角度γ2とが同一となる位置を除く位置に配置されることが好ましい(数8、数9)。
すなわち、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、図3(A)においてα≠β、δ=2(β-α)かつγ1=γ2となる位置を除く位置に配置されることが好ましい。
【0058】
上述したように、演算信号生成部40では、磁気検出素子31A及び磁気検出素子31Bの出力である第1磁場信号S1A、第2磁場信号S1Bを用いて、第1磁場演算信号S1を演算する。また、演算信号生成部40では、磁気検出素子32A及び磁気検出素子32Bの出力である第3磁場信号S2A、第4磁場信号S2Bを用いて、第2磁場演算信号S2を演算する。磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bがα≠β、δ=2(β-α)かつγ1=γ2となる位置に配置された場合、第1磁場演算信号S1と第2磁場演算信号S2との位相が一致し、角度信号Sθが得られない場合がある。
このため、磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、α≠β、δ=2(β-α)かつγ1=γ2となる位置を除く位置に配置されることが好ましい。
【0059】
以上により、回転角センサ1は、外乱磁場Beの影響を低減した角度信号Sθを出力することができる。
【0060】
(1-2)角度信号算出方法
以下、上述した回転角センサ1において実行される角度信号算出方法について、図1から図3(A)及び図3(B)を参照しつつ図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態の角度信号算出方法を説明するフローチャートである。
【0061】
回転角センサ1は、磁石10の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Aの出力(第1磁場信号S1A)として取得する(ステップS11)。回転角センサ1は、磁石10の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Bの出力(第2磁場信号S1B)として取得する(ステップS12)。
【0062】
回転角センサ1は、磁石10の回転によって変化する磁場の第2方向の成分を、磁気検出素子32Aの出力(第3磁場信号S2A)として取得する(ステップS13)。回転角センサ1は、磁石10の回転によって変化する磁場の第2方向の成分を、磁気検出素子32Bの出力(第4磁場信号S2B)として取得する(ステップS14)。
【0063】
ステップS11からステップS14で取得する第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1B、並びに第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bは、同一のタイミングで測定された信号であることが好ましい。第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bに含まれる外乱磁場Be1及び第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bに含まれる外乱磁場Be2は、測定のタイミングにより変化する場合がある。このため、第1磁場信号S1Aから第4磁場信号S2Bが同一のタイミングで測定された信号である場合、これら信号には同一の外乱磁場Beの第1方向又は第2方向の外乱磁場成分が含まれ、回転角θに応じた角度信号Sθの検出精度が向上する。
【0064】
次に、演算信号生成部40は、磁気検出素子31Aから取得した第1磁場信号S1A及び磁気検出素子31Bから取得した第2磁場信号S1Bの和又は差を演算して、第1磁場演算信号S1を生成する(ステップS15)。演算信号生成部40は、磁気検出素子32Aから取得した第3磁場信号S2A及び磁気検出素子32Bから取得した第4磁場信号S2Bの和又は差を演算して、第2磁場演算信号S2を生成する(ステップS16)。
【0065】
最後に、角度信号生成部50は、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて磁石10の回転角を示す角度信号Sθを生成し、例えば回転角センサ1外部の機器(例えばモータ)の制御部に出力する(ステップS17)。
【0066】
なお、ステップS11からステップS14における第1磁場信号S1A、第2磁場信号S1B、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bの取得は、同時に行われても良く、異なるタイミング又は異なる順序で行われても良い。また、ステップS15及びステップS16における演算は、ステップS11及びステップS12の後にステップS15が行われ、ステップS13及びステップS14の後にステップS16が行われていれば、同時に行われても良く、異なるタイミング又は異なる順序で行われても良い。
【0067】
以上説明した回転角センサ1は、例えば、少なくとも一つのプロセッサを備えている。回転角センサ1において、プロセッサが、回転軸11Aに垂直な方向に少なくとも二極に分極しており回転軸11Aを中心として回転可能に配置された磁石10の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1Aとして取得し、磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Aとは異なる位置かつ31Aとの第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された磁気検出素子31Bの出力として取得し、磁場の第1方向とは異なる第2方向の成分を、磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2A及び磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bとして取得し、磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1A及び磁気検出素子31Bの出力である第2磁場信号S1Bに基づいて第1磁場演算信号S1を出力し、磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2A及び磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bに基づいて第1磁場演算信号S1と位相の異なる第2磁場演算信号S2を出力し、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成して出力する角度信号算出方法を実行することにより、演算信号生成部40及び角度信号生成部50として機能する。
ここで、第1配置角度は、平面視で磁石10の回転軸11Aと磁気検出素子31Aとを結ぶ線分L1A及び磁気検出素子31Bと回転軸11Aとを結ぶ線分L1Bにより形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で磁気検出素子31Aと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L1A’及び磁気検出素子31Bと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L1B’により形成される角度のうち小さい角度である。
【0068】
(1-3)プログラム
以下、回転角センサ1の回転角検出装置20で行われる角度信号算出処理のためのプログラムについて説明する。回転角検出装置20は、以下の(a)~(f)の各ステップをコンピュータに実行させるプログラムに従って、回転角θに応じた角度信号Sθを生成して出力する。以下のプログラムは、例えばDVDディスク又はBlu-ray(登録商標)等の光ディスクや、ハードディスクドライブ、メモリ等の記録媒体に記録される。以下のプログラムは、インターネットを介して配布されても良い。さらに、以下のプログラムは、クラウドサーバに記録され、インターネットを介して各ステップが実行されても良い。
【0069】
(a)回転軸11Aに垂直な方向に少なくとも二極に分極しており、回転軸11Aを中心として回転可能に配置された磁石10の回転によって変化する磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1Aとして取得すること
(b)磁場の第1方向の成分を、磁気検出素子31Aとは異なる位置かつ磁気検出素子31Aとの第1配置角度が0度超90度未満となる位置に配置された磁気検出素子31Bの出力として取得すること
(c)磁場の第1方向とは異なる第2方向の成分を、磁気検出素子31Aとは異なる位置に配置された磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2A及び磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bとして取得すること
(d)磁気検出素子31Aの出力である第1磁場信号S1A及び磁気検出素子31Bの出力である第2磁場信号S1Bに基づいて第1磁場演算信号S1を出力すること
(e)磁気検出素子32Aの出力である第3磁場信号S2A及び磁気検出素子32Bの出力である第4磁場信号S2Bに基づいて第1磁場演算信号S1と位相の異なる第2磁場演算信号S2を出力すること
(f)第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを出力すること
ここで、第1配置角度は、平面視で磁石10の回転軸11Aと磁気検出素子31Aとを結ぶ線分L1A及び磁気検出素子31Bと回転軸11Aとを結ぶ線分L1Bにより形成される角度のうち小さい角度、又は断面視で磁気検出素子31Aと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L1A’及び磁気検出素子31Bと磁石10の中心O’とを結ぶ線分L1B’により形成される角度のうち小さい角度である。
【0070】
<第一実施形態の効果>
第一実施形態に係る回転角センサ1では、以下の効果を奏する。
(1)回転角センサ1は、第1方向の磁場を検出する2つの磁気検出素子と、第1方向とは異なる第2方向の磁場を検出する2つの磁気検出素子とを備えており、磁石10の回転角θの検出時に、同一方向の磁場を検出する磁気検出素子の出力同士の和又は差を演算する。回転角センサ1は、同一方向の磁場を検出する磁気検出素子の出力同士の和又は差を用いて回転角θに応じた角度信号Sθを検出する。このため、回転角センサ1は、外乱磁束が生じる環境で使用した場合であっても、外乱磁束の影響を低減し、磁石の回転角を高精度で検出することができる。
【0071】
(2)回転角センサ1では、同一方向の磁場を検出する2つの磁気検出素子同士の間の角度を0度超180度未満となるように当該磁気検出素子同士が配置されている。このため、外乱磁場成分を除去する演算を行っても、角度信号Sθの演算に用いる第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を得ることができる。
【0072】
(3)回転角センサ1では、同一方向の磁場を検出する2つの磁気検出素子同士の間の角度を0度超90度以下となるように当該磁気検出素子同士が配置されていることが好ましい。これにより、同一方向の磁場を検出する2つの磁気検出素子同士の間の角度が90度である場合角度信号Sθが最大となり、角度が小さい程外乱磁場成分の影響が小さくなって角度信号Sθの精度が向上する。
【0073】
2.第2実施形態
図1から図7を参照しつつ、図8から図10を用いて、第2実施形態に係る回転角センサ2について詳細に説明する。本実施形態では、回転角センサ2が検出する磁場の第1方向が回転軸11Aに垂直な方向であり、第2方向が回転軸11Aに平行な方向である場合について説明する。本実施形態では、「第1方向」がX軸方向であり、「第2方向」がZ軸方向であるものとして説明する。
【0074】
図8に示すように、回転角センサ2は、磁気検出素子31A、31B、33A及び33B、磁石10、演算信号生成部40及び角度信号生成部50を備えている。すなわち、回転角センサ2は、磁気検出素子32A及び32Bに替えて、Z軸方向の磁場方向成分を検出する磁気検出素子33A及び33Bを備える点で、第1実施形態に係る回転角センサ1と相違する。
【0075】
以下、磁気検出素子33A及び33Bについて詳細に説明する。また、磁気検出素子31A及び31B、磁石10、演算信号生成部40及び角度信号生成部50は、第1実施形態に係る回転角センサ1の対応する各部と同一の構成であるため説明を省略する。
【0076】
(磁気検出素子)
磁気検出素子31A及び31Bは、磁場の第1方向(X軸方向)の成分を検出する素子である。磁気検出素子31A及び31Bは、磁石10の回転角θに応じた第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bをそれぞれ出力する。
磁気検出素子33A及び33Bは、磁場の第2方向(Z軸方向)の成分を検出する素子である。磁気検出素子33Aは、検出タイミングにおいて磁気検出素子33Aに入力する磁場の第2方向の成分B3Aに応じた第5磁場信号S3Aを出力する。磁気検出素子33Bは、検出タイミングにおいて磁気検出素子33Bに入力する磁場の第2方向の成分B3Bに応じた第6磁場信号S3Bを出力する。
【0077】
第5磁場信号S3A及び第6磁場信号S3Bは、例えば、電圧を示す信号である。磁気検出素子33A、33Bで検出されたアナログ電圧信号は、図示しない増幅部及びAD変換部において信号レベルの増幅及びデジタル信号への変換が行われ、第5磁場信号S3A及び第6磁場信号S3Bとして出力される。
磁気検出素子33A及び33Bの配置位置に外乱磁場Beが発生している場合、磁気検出素子33A及び33Bは、磁場Brと外乱磁場Beとの合成磁場の第2方向(Z軸方向)の成分に応じた第5磁場信号S3A、第6磁場信号S3Bをそれぞれ出力する。
磁気検出素子33A及び33Bは、第2方向(Z軸方向)の同じ方向を互いに正方向として磁場の第2方向の成分を検出しても良く、第2方向の反対方向を互いに正方向として磁場の第2方向の成分を検出しても良い。
【0078】
(磁気検出素子の配置)
図9は、磁石10が発生する磁場Brの第1方向の成分を検出する磁気検出素子31A及び31Bと、磁場Brの第2方向の成分を検出する磁気検出素子33A及び33Bと、磁石10との配置関係を示す。
磁気検出素子33A及び33Bは、回転角センサ1の磁気検出素子32A及び32Bに替えて配置される。磁気検出素子31A及び31Bと磁気検出素子33A及び33Bとの配置関係は、回転角センサ1の磁気検出素子31A及び31Bと磁気検出素子32A及び32Bと同様である。
すなわち、磁気検出素子33Aと磁気検出素子33Bとは、配置角度γ2(第2配置角度の一例)を有するように配置される。磁気検出素子31Bと磁気検出素子33Bとは、配置角度γ4(第4配置角度の一例)を有するように配置される。
磁気検出素子33Aは、磁石10の回転中心Oを通り、磁気検出素子33A及び33Bの感磁軸と垂直な直線L3に対して-β度の位置に配置されている。
【0079】
図9に示す配置の磁気検出素子33A及び33Bの出力について説明する。ここで、各素子の配置位置において一様な外乱磁場Beが発生しているものとする。
【0080】
磁気検出素子33Aは、磁場の第2方向(Z軸方向)の成分を検出する。磁気検出素子33Aは、磁気検出素子31Aに対して配置角度γ3で配置されている。このため、磁気検出素子33Aは、磁石10の回転角θに応じた第5磁場信号S3Aとして、(数12)式で示される磁場方向成分を出力する。ここで、Be2は、外乱磁場Beの第2方向成分である。
(数12)
3A=cos(θ+δ-β)+Be2
【0081】
磁気検出素子33Bは、磁気検出素子33Aに対して配置角度γ2で配置されており、磁場の第2方向の成分を検出する。このため、磁気検出素子33Bは、磁石10の回転角θに応じた第6磁場信号S3Bとして、(数13)式で示される磁場方向成分を出力する。
(数13)
3B=cos(θ+δ-β+γ2)+Be2
【0082】
回転角センサ2では、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成するために、回転軸11Aに垂直な第1方向の磁場を検出する磁気検出素子31A、31Bと、回転軸11Aに平行な第2方向の磁場を検出する磁気検出素子33A、33Bとが以下の配置条件を満たすように配置されている。
【0083】
(a)磁気検出素子の第1配置条件
磁気検出素子の第1配置条件は、第一実施形態に記載の第1配置条件と同様である。
磁気検出素子31A、31B、33A及び33Bは、配置角度γ1及びγ2が0度超180度未満となる位置に配置されており、配置角度γ1及びγ2の少なくとも一方が0度超90度以下となる位置に配置されていることがより好ましい。
演算信号生成部40において、外乱磁場成分を相殺する演算を行う際に、外乱磁場成分とともに磁石10によって発生した磁場成分が相殺されないようにするためである。配置角度γ1及びγ2は、90度に近づくほど回転角センサ2から出力される角度信号Sθが大きくなり、90度の場合に出力される角度信号が最大となるため好ましい。
【0084】
(b)磁気検出素子の第2配置条件
磁気検出素子31A及び31Bは、磁石10の回転中心Oを通り磁気検出素子31A及び31Bの感磁軸と平行な直線L1に対して線対称ではない位置に配置される。また、磁気検出素子33A及び33Bは、磁石10の回転中心Oを通り磁気検出素子33A及び33Bの感磁軸と垂直な直線L3に対して線対称ではない位置に配置される。
【0085】
磁気検出素子31A及び31Bが直線L1に対して線対称な位置に配置され、磁気検出素子33A及び33Bが直線L3に対して線対称な位置に配置される場合、演算信号生成部40の出力である第1磁場演算信号S1と第3磁場演算信号S3との位相が一致し、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成することができない。
【0086】
(c)磁気検出素子の第3配置条件
図10は、図9のVII-VII線の断面図である。
回転軸11Aに平行な方向の磁場を検知する磁気検出素子33A及び33Bを用いる回転角センサ2において、磁気検出素子31Aは、磁気検出素子31Aの感磁面が磁石10の厚みの中心からずれた位置に配置されている。ここで、「磁石10の厚み」とは、磁石10の回転軸11A方向の距離をいう。
磁気検出素子31B、磁気検出素子33A及び磁気検出素子33Bも同様に、各素子の感磁面が磁石10の厚みの中心からずれた位置に配置されている。
【0087】
(d)磁気検出素子の第4配置条件
磁気検出素子31A、31B、33A及び33Bは、配置角度γ3と配置角度γ4とが、第1方向と第2方向とのなす角δと異なり、かつ配置角度γ1と配置角度γ2とが異なる位置にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0088】
(演算信号生成部)
演算信号生成部40は、磁気検出素子31A、31B、33A及び33Bの出力に基づいて演算を行い、第1磁場演算信号S1及び第3磁場演算信号S3を出力する。
演算信号生成部40は、第1磁場信号S1Aと第2磁場信号S1Bとの差を演算する。
これにより、演算信号生成部40は、(数14)式に示すように、第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bに含まれる外乱磁場の第1方向の成分Be1を低減した第1磁場演算信号S1を生成することができる。
(数14)式は、(数8)式と同一の式である。
【0089】
(数14)
S1=S1B-S1A
=[cos{θ+2(γ1-α)}+Be1]-{cos(θ-2α)+Be1}
=cos(θ-2α+2・γ1)-cos(θ-2α)
【0090】
演算信号生成部40は、磁気検出素子33Aの出力に含まれる外乱磁場Be2と、磁気検出素子33Bの出力に含まれる外乱磁場Be2とが逆符号となる演算を行うことにより、第3磁場演算信号S3を生成する。
演算信号生成部40は、磁気検出素子33Aの出力である第5磁場信号S3A及び磁気検出素子33Bの出力である第6磁場信号S3Bの差を演算する。これにより、演算信号生成部40は、(数15)式に示すように、第5磁場信号S3A及び第6磁場信号S3Bに含まれる外乱磁場の第2方向の成分Be2を低減し、かつ第1磁場演算信号S1と位相の異なる第3磁場演算信号S3を生成する。
【0091】
(数15)
S3=S3B-S3A
={cos(θ+δ-β+γ2)+Be2}-{cos(θ+δ-β)+Be2}
=cos(θ+δ-β+γ2)-cos(θ+δ-β)
【0092】
(数14)及び(数15)式に示すように、演算信号生成部40で演算された第1磁場演算信号S1及び第3磁場演算信号S3は、外乱磁場成分を含んでいない。また、第3磁場演算信号S3は、第1磁場演算信号S1と位相が異なる。
演算信号生成部40は、第1磁場演算信号S1及び第3磁場演算信号S3を角度信号生成部50に出力する。
【0093】
なお、磁気検出素子33A及び33Bが、第2方向の異なる方向を正方向として磁場の第2方向の成分を検出する場合、演算信号生成部40は、磁気検出素子33Aの出力である第5磁場信号S3Aと磁気検出素子33Bの出力である第6磁場信号S3Bとの和を演算する。これにより、外乱磁場がキャンセルされた第3磁場演算信号S3が生成される。
【0094】
以上により、回転角センサ2は、外乱磁場Beの影響を低減した角度信号Sθを出力することができる。
【0095】
<第二実施形態の効果>
第二実施形態に係る回転角センサ2では、第一実施形態に記載の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(4)回転角センサ2は、磁石10の回転面と平行な方向のみでなく、磁石10の回転面と垂直な方向の磁場を検出して磁石10の回転角θに応じた角度信号Sθを出力することができる。
【0096】
3.第3実施形態
図1から図7を参照しつつ、図11から図13を用いて、第3実施形態に係る回転角センサ3について詳細に説明する。本実施形態では、回転角センサ3が、第1方向であるX軸方向及び第1方向と異なる第2方向であるZ方向の二方向の磁場を検出可能な二軸磁気検出素子を有する場合について説明する。
【0097】
<回転角センサの構成>
図11は、回転角センサ3の構成の一例を示す。回転角センサ3は、二軸磁気検出素子30A及び30B、磁石10、演算信号生成部40及び角度信号生成部50(図11中、演算信号生成部40及び角度信号生成部50は不図示)を備えている。すなわち、回転角センサ3は、磁気検出素子31A及び32Aに替えて二軸磁気検出素子30Aを備え、磁気検出素子31B及び32Bに替えて二軸磁気検出素子30Bを備える点で、第1実施形態に係る回転角センサ1と相違する。
以下、二軸磁気検出素子30A、30Bについて詳細に説明する。また、磁石10、演算信号生成部40及び角度信号生成部50は、第1実施形態に係る回転角センサ1の対応する各部と同一の構成であるため説明を省略する。
【0098】
<二軸磁気検出素子>
二軸磁気検出素子30A、30Bは、第1方向であるX軸方向及び第1方向と異なる第2方向であるZ方向の二方向の双方の磁場を検出可能な磁気検出素子である。
二軸磁気検出素子30Aは、異なる方向の磁場を検出する磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aを有している。磁気検出素子31Aは、X軸方向の磁場を検出可能に配置された素子であり、磁気検出素子32Aは、Z軸方向の磁場を検出可能に配置された素子である。
二軸磁気検出素子30Aは、検出タイミングにおいて二軸磁気検出素子30Aに入力する磁場のX軸方向の成分B1Aに応じた第1磁場信号S1Aと、二軸磁気検出素子30Aに入力する磁場のY軸方向の成分B2Aに応じた第3磁場信号S2Aとを出力する。第1磁場信号S1A及び第3磁場信号S2Aは、検出タイミングにおける磁石10の回転角θに応じた信号である。
【0099】
二軸磁気検出素子30Bは、異なる方向の磁場を検出する磁気検出素子31B及び磁気検出素子32Bを有している。磁気検出素子31Bは、X軸方向の磁場を検出可能に配置された素子であり、磁気検出素子32Aは、Z軸方向の磁場を検出可能に配置された素子である。
二軸磁気検出素子30Bは、検出タイミングにおいて二軸磁気検出素子30Bに入力する磁場のX軸方向の成分B1Bに応じた第2磁場信号S1Bと、二軸磁気検出素子30Bに入力する磁場のY軸方向の成分B2Bに応じた第4磁場信号S2Bとを出力する。第2磁場信号S1B及び第4磁場信号S2Bは、検出タイミングにおける磁石10の回転角θに応じた信号である。
【0100】
磁気検出素子31A、31B、32A及び32Bは、例えば磁気抵抗素子である。
また、二軸磁気検出素子30A、30Bは、例えば、それぞれ磁気収束板と複数のホール素子とを含んでいても良い。
二軸磁気検出素子30Aは、2つの磁気検出素子(磁気検出素子31A及び磁気検出素子32A)が一体に形成された素子であっても良い。また、二軸磁気検出素子30Aは、別々に形成された磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aがそれぞれ内蔵された一つのデバイスであってもよい。
【0101】
磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aが一体に、すなわち同一基板上に形成されて二軸磁気検出素子30Aが形成されている場合、磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aは、基板の磁石10側寄りの領域に形成されることが好ましい。この場合、検出磁場が大きくなり、回転角センサ3の出力が大きくなるため好ましい。
また、磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aは、基板上の近接した領域に形成されることが好ましい。磁気検出素子31A及び磁気検出素子32Aに入力される外乱磁場Beの値の差が小さくなり、回転角センサ3における外乱磁場の除去効果が高くなるため好ましい。
二軸磁気検出素子30Bについても同様である。
【0102】
<二軸磁気検出素子と磁石との配置>
図13は、回転角センサ3の平面視における構成の一例を示す。以下、図13を用いて、回転角センサ3における二軸磁気検出素子30A及び30Bと磁石10との配置について説明する。
図13に示すように、二軸磁気検出素子30A及び30Bは、配置角度γ1を有するように配置される。図13では、二軸磁気検出素子30Aが、磁石10の回転中心Oを通り、二軸磁気検出素子30A及び30BのX軸方向の感磁軸と平行な直線L1に対して-α度の位置に配置された例を示す。
【0103】
このとき、二軸磁気検出素子30Aは、検出タイミングにおける磁石10の回転角θに応じた第1磁場信号S1A、第3磁場信号S2Aとして、(数16)、(数17)式で示される磁場信号を出力する。ここで、Be1は、外乱磁場BeのX軸方向の成分であり、Be2は、外乱磁場BeのY軸方向の成分である。
(数16)
1A=cos(θ-2α)+Be1
(数17)
2A=cos{θ+δ-2(δ+α)}+Be2
=cos(θ-δ-2α)+Be2
【0104】
また、二軸磁気検出素子30Bは、検出タイミングにおける磁石10の回転角θに応じた第2磁場信号S1B、第4磁場信号S2Bとして、(数18)、(数19)式で示される第2磁場信号S1B、第4磁場信号S2Bを出力する。
(数18)
1B=cos{θ+2(γ1-α)}+Be1
(数19)
2B=cos{θ+δ-2(δ+α-γ1)}+Be2=cos{θ-δ+2(γ1-α)}+Be2
なお、δ=90°の時、第3磁場信号S2A、第4磁場信号S2Bは(数17’)
(数19’)で示される第3磁場信号S2A、第4磁場信号S2Bを出力する。
(数17’)
2A=sin(θ-δ-2α)+Be2
(数19’)
2B=sin{θ-δ+2(γ1-α)}+Be2
【0105】
回転角センサ3では、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成するために、二軸磁気検出素子30A及び30Bが以下の配置条件を満たすように配置されている。
【0106】
(a)二軸磁気検出素子の第1配置条件
二軸磁気検出素子30A及び30Bは、磁石10の回転軸11Aを通り二軸磁気検出素子30A又は二軸磁気検出素子30Bの磁場検出方向(X軸方向及びZ軸方向)と平行な直線L1、L2に対して、互いに線対称とならない位置に配置されている。
これにより、回転角センサ3は、磁石10の回転角θを示す角度信号Sθを生成することができる。
【0107】
<演算信号生成部>
演算信号生成部40は、二軸磁気検出素子30A及び30Bの出力に基づいて演算を行い、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を出力する。演算信号生成部40は、第一実施形態の演算信号生成部40と同様に、第1磁場信号S1A及び第2磁場信号S1Bの和又は差を演算して第1磁場演算信号S1を生成し、第3磁場信号S2A及び第4磁場信号S2Bの和又は差を演算して第2磁場演算信号S2を生成する。演算信号生成部が上記演算を行うことによって二軸磁気検出素子30A及び30Bの出力に含まれる外乱磁場Be成分を低減することができる。
【0108】
<角度信号生成部>
角度信号生成部50は、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて、磁石10の回転角を示す角度信号Sθを生成し、回転角センサ3外部の機器(例えばモータ)の制御部に出力する。
角度信号生成部50は、磁石10を1回転させて得られる信号と、各素子の配置位置(配置角度α、γ1)、感磁軸のなす角δとに基づいて、磁石10の回転角θを求め、回転角θを示す角度信号を生成する。
【0109】
以上により、回転角センサ3は、外乱磁場Beの影響を低減した角度信号Sθを出力することができる。
<第三実施形態の効果>
第三実施形態に係る回転角センサ3では、第一実施形態に記載の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(5)回転角センサ3は、少なくとも二方向の磁場を検出可能な二軸磁気検出素子を用いている。異なる方向の磁場を検出可能な磁気検出素子同士が一体に(同一基板上に)形成された二軸磁気検出素子を用いる場合、異なる方向の磁場を検出可能な磁気検出素子同士が近接して配置されることから、角度信号Sθの精度が向上する。
【0110】
4.第4実施形態
図1から図13を参照しつつ、図14及び図15を用いて、第4実施形態に係る回転角センサ4について詳細に説明する。図14は、回転角センサ4の構成の一例を示すブロック図であり、図15は、回転角センサ4の構成の他の例を示すブロック図である。
回転角センサ4は、補正部60又は補正部70を備える点で、第1実施形態に係る回転角センサ1~第3実施形態に係る回転角センサ3と相違する。
【0111】
以下、補正部60又は補正部70について詳細に説明する。なお、図14及び図15では、回転角センサ4のうち演算信号生成部40から後段の構成を示し、磁石10、各磁気検出素子(磁気検出素子31A,31B,32A及び32B、又は二軸磁気検出素子30A及び30B)の記載は省略している。また、演算信号生成部40及び角度信号生成部50は、第1実施形態に係る回転角センサ1~第3実施形態に係る回転角センサ3の対応する各部と同一の構成であるため説明を省略する。
補正部60又は補正部70は、第1実施形態に係る回転角センサ1~第3実施形態に係る回転角センサ3のいずれにも組み合わせることができる。
【0112】
<補正部>
演算信号生成部40から出力される第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2は、誤差成分を有する場合がある。このような誤差の種類としては、第1磁場演算信号S1と第2磁場演算信号S2との間の振幅誤差、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2がそれぞれ他軸感度を有することに起因する他軸感度誤差、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2がそれぞれオフセット成分を有することに起因するオフセット誤差が挙げられる。本実施形態の回転角センサ4では、このような誤差成分の影響を低減するための補正部60又は70を有していてもよい。
【0113】
以下、補正部について詳細に説明する。まず、図14に示す回転角センサ4について説明する。
補正部60は、演算信号生成部40から入力された第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2の補正を行い、補正後の第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2である第1補正演算信号S1’及び第2補正演算信号S2’を角度信号生成部50に出力する。補正部60は、演算信号補正部61、記憶部62及び補正値算出部63を有している。また、補正部60は、取得部64及び供給部65を有している。
【0114】
(演算信号補正部)
演算信号補正部61は、演算信号生成部40に接続され、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を受けとる。また、演算信号補正部61は、補正値εに基づいて、第1磁場演算信号S1を補正した第1補正演算信号S1’及び第2磁場演算信号S2を補正した第2補正演算信号S2’を出力し、角度信号生成部50に供給する。
これにより、角度信号生成部50は、演算信号補正部61が供給する第1補正演算信号S1’及び第2補正演算信号S2’を、磁場演算信号として受け取り、角度信号Sθを出力することになる。
【0115】
記憶部62は、演算信号補正部61で補正演算を行う際に用いる補正値εを記憶する。記憶部62は、補正値εを複数記憶していてもよい。また、記憶部62は、後述する補正値算出部63から受けとった補正値εの作成日時が記憶された補正値εの作成日時よりも新しい場合に、補正値εを更新させてよい。これに代えて、記憶部62は、複数の補正値εを線形結合させて新たな補正値εとして記憶してもよい。
【0116】
補正値算出部63は、演算信号生成部40から第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を受け取り、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を補正する補正値εを算出する。補正値算出部63は、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を受け取り、これらの信号の有するオフセット誤差、振幅誤差、及び他軸感度誤差のうち、少なくとも1つの誤差を低減させる補正値εを算出する。補正値算出部63は、算出した補正値εを記憶部62に供給する。
【0117】
取得部64は、演算信号生成部40から第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を受けとり、補正値算出部63に出力する。
供給部65は、補正値算出部63から補正値εを受けとり、記憶部62に出力する。
【0118】
次に、図15に示す回転角センサ4について説明する。
補正部70には、角度信号生成部50において、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて算出された角度信号Sθが入力される。演算信号生成部40から出力される第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2が誤差成分を有する場合、第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2に基づいて算出された角度信号Sθにも誤差が含まれる。補正部70は、角度信号生成部50から入力された角度信号Sθを補正して、補正角度信号Sθ’を出力する。
補正部70は、角度信号補正部71、記憶部72及び補正値算出部73を有している。また、補正部70は、取得部74及び供給部75を有している。
【0119】
(角度信号補正部)
角度信号補正部71は、上述した誤差成分に起因して角度信号Sθに生じた誤差を低減するために、角度信号Sθを補正して補正角度信号Sθ’を生成し、出力する。角度信号補正部71には、角度信号Sθが入力され、補正値εに基づいて角度信号Sθの誤差を補正して角度信号Sθの誤差を低減した補正角度信号Sθ’を生成して出力する。
【0120】
記憶部72は、角度信号補正部71で補正演算を行う際に用いる補正値εを記憶する。記憶部72は、補正値を複数記憶していてもよい。また、記憶部72は、後述する補正値算出部73から受けとった補正値の作成日時が記憶された補正値の作成日時よりも新しい場合に、補正値を更新させてよい。これに代えて、記憶部72は、複数の補正値を線形結合させて新たな補正値として記憶してもよい。
【0121】
補正値算出部73は、角度信号生成部50から角度信号Sθを受け取り、角度信号Sθを補正する補正値を算出する。補正値算出部73は、角度信号Sθを受け取り、この信号の有する誤差を低減させる補正値を算出する。補正値算出部73は、算出した補正値を記憶部72に供給する。
【0122】
なお、本実施形態では、補正値が回転角センサ4の内部で算出される構成について説明したが、これに限られない。すなわち、補正値の算出は、回転角センサ4の外部で行われても良い。この場合、例えば、補正値算出部63、取得部64及び供給部65は、補正算出装置として回転角センサ4の外部に設けられる。このとき、取得部64は、回転角センサから第1磁場演算信号S1及び第2磁場演算信号S2を受けとり、供給部65は、回転角センサに補正値を供給する。
【0123】
<第四実施形態の効果>
第四実施形態の回転角センサ4では、第一、第三実施形態に記載の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(6)回転角センサ4は、補正部60又は70を有している。このため、演算信号生成部40における演算によっても除去しきれない誤差を補正し、より精度の高い角度信号(Sθ、Sθ’)を出力することができる。
【0124】
5.変形例
第1実施形態に係る回転角センサ1~第4実施形態に係る回転角センサ4では、磁石10が一つのS極と一つのN極とに分極された場合について説明したが、このような構成に限られない。
例えば、磁石10は、平面視で4極以上に分極されていてもよい。この場合であっても、各回転角センサは、2極に分極した磁石を用いた場合と同様に、4つの磁気検出素子又は2つの二軸磁気検出素子を用いて素子配置位置の磁場に応じた信号を検出することができる。このため、演算信号生成部40において、外乱磁場成分が低減された互いに位相の異なる第1磁場演算信号及び第2磁場演算信号が生成され、角度信号生成部50において、磁石の回転角を示す角度信号を生成して出力することができる。
【0125】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本開示の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0126】
1、2,3,4 回転角センサ
10 磁石
11 シャフト
11A 回転軸
20 回転角検出装置
30A,30B 二軸磁気検出素子
31A,31B,32A,32B,33A,33B 磁気検出素子
40 演算信号生成部
50 角度信号生成部
60,70 補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15