(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】基板処理装置、状態判定方法及びコンピュータ記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241003BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020173154
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】荒木 亮
(72)【発明者】
【氏名】牧 準之輔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 光輝
(72)【発明者】
【氏名】林 聖人
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-108834(JP,A)
【文献】特開平04-202775(JP,A)
【文献】特開2014-154814(JP,A)
【文献】特開2005-146768(JP,A)
【文献】特開2001-057335(JP,A)
【文献】特開2018-093018(JP,A)
【文献】特開平09-232404(JP,A)
【文献】特開2012-049443(JP,A)
【文献】特開2000-156396(JP,A)
【文献】特開2011-211119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え
、
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、
前記ノズルの形状は、基端側から先端に向けて細くなる円錐形状である、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持部は、吸着口を介して基板を吸着して保持可能に構成され、
前記基板保持部の内部には、前記吸着口に接続され吸着時に気体を通流させる吸着用流路と、前記ノズル用流路と、が個別に設けられている、請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部は、吸着口を介して基板を吸着して保持可能に構成され、
前記基板保持部の内部には、前記吸着口に接続され吸着時に気体を通流させる吸着用流路が設けられており、
前記ノズルは、前記基板保持部に対して着脱可能な治具に設けられ、
前記治具を前記基板保持部に取り付けたときに前記ノズルが前記吸着用流路に接続され、当該吸着用流路が前記ノズル用流路を兼ねる、請求項
1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、
前記基板保持部を移動自在に支持するベースと、
前記基板保持部内において前記ノズル用流路を構成する内部流路と、
前記内部流路に接続され、前記ベース内において前記ノズル用流路を構成する配管と、を有し、
前記配管は、前記基板保持部の移動に伴って変形自在な部分を有し、
前記流量センサは、前記配管における、前記変形自在な部分を間に挟んで、前記内部流路とは反対側の部分に設けられている、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記判定として、前記干渉物と前記基板保持部とが接触しているか否かの判定を行うものであり、
前記流量センサによる計測結果が所定の条件を満たすとき、前記干渉物と前記基板保持部とが接触していると判定する、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記流量センサによる計測値が閾値未満となる、という条件である、請求項
5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、
前記基板保持部は、吸着口を介して基板を吸着して保持可能に構成され、
前記基板保持部の内部には、前記吸着口に接続され吸着時に気体を通流させる吸着用流路が設けられており、
前記ノズルは、前記基板保持部に対して着脱可能な治具に設けられ、
前記治具を前記基板保持部に取り付けたときに前記ノズルが前記吸着用流路に接続され、当該吸着用流路が前記ノズル用流路を兼ねる、基板処理装置。
【請求項8】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、
前記制御部は、
前記判定として、前記干渉物と前記基板保持部とが接触しているか否かの判定を行うものであり、
前記流量センサによる計測結果が所定の条件を満たすとき、前記干渉物と前記基板保持部とが接触していると判定し、
前記所定の条件は、前記流量センサの計測値の時系列データに対し特異スペクトル変換を行い得られた変化度が閾値を超える、という条件である、基板処理装置。
【請求項9】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、
前記機能部は、基板を保持して基板を処理する基板処理ユニットの内部に配置され、処理時に基板を囲う囲い部材であり、
前記ノズルは、前記囲い部材の表面に設けられ、
前記制御部は、
前記判定として、前記干渉物と前記囲い部材とが接触しているか否かの判定をさらに行い、
前記流量センサによる計測結果が所定の条件を満たすとき、前記干渉物と前記囲い部材とが接触していると判定する、基板処理装置。
【請求項10】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、
前記制御部は、
前記判定として、前記干渉物と前記基板保持部とが接触しているか否かの判定を行うものであり、
前記流量センサによる計測結果が所定の条件を満たすとき、前記干渉物と前記基板保持部とが接触していると判定し、
前記所定の条件は、正常時の前記流量センサの計測値の時系列データであるリファレンス時系列データと、判定対象の前記流量センサの計測値の時系列データである判定対象時系列データと、を用いる条件である
、基板処理装置。
【請求項11】
前記所定の条件は、直近の前記リファレンス時系列データに対する前記判定対象時系列データの類似度が閾値未満となる、という条件である、請求項1
0に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記類似度は、動的時間伸縮法を用いて算出される、請求項1
1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記所定の条件は、前記リファレンス時系列データに基づいて機械学習を行い得られたモデルを用いる条件である、請求項1
0に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記モデルは、自己符号化器である、請求項1
3に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記リファレンス時系列データは、干渉物が無い状態で前記機能部を動作させたときに得られる、前記流量センサの計測値の時系列データである、請求項1
0~1
4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板を処理する基板処理装置であって、
前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、
前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、
前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、
前記ノズルは、複数あり、前記機能部の表面の互いに異なる領域それぞれに設けられており、
前記制御部は、複数の前記ノズルに接続された共通の流量センサによる計測結果に基づき、前記判定を行う
、基板処理装置。
【請求項17】
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられている、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記機能部は、基板を保持して基板を処理する基板処理ユニットの内部に配置され、処理時に基板を囲う囲い部材であり、
前記ノズルは、前記囲い部材の表面に設けられている、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項19】
基板を処理する基板処理装置の状態判定方法であって、
前記基板処理装置は、前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、を備え、
前記状態判定方法は、
前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する工程と、
前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う工程と、を含
み、
前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、
前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、
前記ノズルの形状は、基端側から先端に向けて細くなる円錐形状である、基板処理装置の状態判定方法。
【請求項20】
請求項19に記載の基板処理装置の状態判定方法を基板処理装置によって実行させるように、当該基板処理装置を制御する制御部のコンピュータ上で動作するプログラムを記憶した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、状態判定方法及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の基板を支持するウェハボードとキャリアとの間で基板を搬送する基板搬送装置を開示している。この基板搬送装置は、ウェハボードとの間で移載作業を行うことが可能な第1の移載作業位置およびキャリアとの間で移載作業を行うことが可能な第2の移載作業位置の間で移動可能な搬送装置本体と、この搬送装置本体に対して進退可能に設けられ、ウェハボートおよびキャリアの基板支持部との間で基板の受け渡しを行うためのフォークと、このフォークの両側部に取り付けられ、フォークと一体的に進退移動し、基板までの距離および基板の水平面内の位置を検出する静電容量センサと、を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理装置の一部を構成する機能部と干渉物との間の距離の状態に関する判定を、正確に行う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理装置であって、前記基板処理装置の一部を構成する機能部と、前記機能部の表面に設けられた、気体を通過させるノズルと、前記機能部のノズルと接続され前記気体を通流させるノズル用流路と、前記ノズル用流路を流れる気体の流量を計測する流量センサと、前記流量センサによる計測結果に基づき、干渉物と前記機能部との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備え、前記機能部は、基板を搬送する搬送機構の基板保持部であり、前記ノズルは、前記基板保持部の表面に設けられ、前記ノズルの形状は、基端側から先端に向けて細くなる円錐形状である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理装置の一部を構成する機能部と干渉物との間の距離の状態に関する判定を、正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置の内部構成の概略を示す説明図である。
【
図2】ウェハ処理装置の正面側の内部構成の概略を示す図である。
【
図3】ウェハ処理装置の面側の内部構成の概略を示す図である。
【
図4】搬送ユニットの構成の概略を示す側面図である。
【
図8】フォーク120とその下方のウェハWとが接触しているか否かの判定を流量センサ1の計測結果に基づいて行う理由を説明するための図である。
【
図9】模擬ノズルを取り付けた模擬フォークから干渉物までの距離と、流量センサによる実際の計測結果と、の関係を示す図である。
【
図10】模擬ノズルの通流孔の開口面積と、流量センサによる実際の計測結果と、の関係を示す図である。
【
図12】
図11の既設のフォークに、吸着部材に代えて治具を取り付けたときの様子を示す図である。
【
図14】ノズルをレジスト塗布ユニット内に設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従来、半導体デバイス等の製造プロセスでは、例えば半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板に対してレジスト塗布処理、露光処理、現像処理等の一連のフォトリソグラフィー処理を行う塗布現像処理装置や、ウェハに対してエッチング処理を行うエッチング処理装置等、各種の基板処理装置が用いられている。
【0009】
一般に、このような基板処理装置には、基板を搬送する搬送機構が設けられている。搬送機構は、基板を保持する基板保持部であるフォークを有し、フォークが移動自在に構成されている。上記搬送機構では、基板を保持したフォークを移動させることにより、例えば、基板を所望の位置に搬送することができる。
【0010】
ところで、フォークを移動させたときに、周囲の基板や構造物等に接触してしまうことがある。例えば、基板を複数枚収容するカセットに、基板の受け渡しのために、フォークを挿入させたときに、フォークがその下に位置する基板に意図せず接触してしまうことがある。当然、意図しない接触が生じないよう設計等がなされている。しかし、例えば、搬送機構の駆動系に、モータや減速機の故障、駆動ベルトの経時的変化等により、フォークに位置ずれが生じる場合がある。この位置ずれにより、フォークと基板との間に十分な距離が無くなると、フォークを高速に移動させたとき等に、共振周波数との関係で、フォークが大きく振動して基板と接触してしまうことがある。
【0011】
フォークの接触が発生すると、接触した基板や構造物の破損、パーティクルの発生等が起きるため、問題である。また、フォークが周囲と接触する場合には、フォークの移動条件の調整や、フォーク及びフォークが接触した基板や構造物の交換または廃棄等、適切に対応する必要がある。そのため、フォークの干渉物への接触または接近の発生を判定する方法、すなわち、フォークとフォークが接触しうる干渉物との間の距離の状態に関する判定を行う状態判定方法が考えられている。
【0012】
上記状態判定方法としては、例えば、フォークに取り付けられた、静電容量センサを利用する方法が考えられる。この方法では、静電容量センサのセンサ部と、フォークが接触しうる(すなわちフォークに干渉しうる)干渉物と、の間の容量を計測し、計測結果に基づいて、フォークと干渉物との接触等を判定する。しかし、センサ部と干渉物との間の容量は、干渉物の導電率や誘電率等、干渉物の材料の性質によって大きく変化する。そのため、上述の静電容量センサを利用する方法では、フォークと干渉物との間の距離の状態に関する判定を適切に行うことができない場合がある。
【0013】
上述の点は、基板処理装置の一部を構成する部分であって他の部分に対して相対的に移動自在に構成された機能部であれば、フォーク以外でも同様である。
【0014】
そこで、本開示にかかる技術は、基板処理装置の一部を構成する機能部と干渉物との間の距離の状態に関する判定を、正確に行う。
【0015】
以下、本実施形態にかかる基板処理装置及び状態判定方法を、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置1の内部構成の概略を示す説明図である。
図2及び
図3はそれぞれ、ウェハ処理装置1の正面側と背面側の内部構成の概略を示す図である。
【0017】
ウェハ処理装置1は、
図1に示すように、基板としてのウェハを複数収容な容器であるカセットCが搬入出されるカセットステーション2と、レジスト塗布処理やPEB等の所定の処理を施す複数の各種処理ユニットを備えた処理ステーション3と、を有する。そして、ウェハ処理装置1は、カセットステーション2と、処理ステーション3と、処理ステーション3に隣接する露光装置4との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。また、ウェハ処理装置1は、当該ウェハ処理装置1の制御を行う制御部6を有している。
【0018】
カセットステーション2は、例えばカセット搬入出部10とウェハ搬送部11に分かれている。例えばカセット搬入出部10は、ウェハ処理装置1のY方向負方向(
図1の左方向)側の端部に設けられている。カセット搬入出部10には、カセット載置台12が設けられている。カセット載置台12上には、複数、例えば4つの載置板13が設けられている。載置板13は、水平方向のX方向(
図1の上下方向)に一列に並べて設けられている。これらの載置板13には、ウェハ処理装置1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置することができる。
【0019】
ウェハ搬送部11には、ウェハWを搬送する搬送機構20が設けられている。搬送機構20は、X方向に延びる搬送路21と、搬送路21上を移動自在な搬送ユニット22が設けられている。搬送ユニット22は、Y方向に移動自在な、後述のフォークを有する。搬送ユニット22は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各載置板13上のカセットCと、後述する処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡しユニットとの間でウェハWを搬送できる。搬送ユニット22の詳細については後述する。
【0020】
処理ステーション3には、各種ユニットを備えた複数、例えば第1~第4の4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(
図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3のカセットステーション2側(
図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション3のインターフェイスステーション5側(
図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0021】
第1のブロックG1には、
図2に示すように複数の液処理ユニット、例えばウェハWを現像処理する現像処理部としての現像処理ユニット30、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布ユニット31が下からこの順に配置されている。
【0022】
例えば現像処理ユニット30、レジスト塗布ユニット31は、それぞれ水平方向に3つ並べて配置されている。なお、これら現像処理ユニット30、レジスト塗布ユニット31の数や配置は、任意に選択できる。
【0023】
これら現像処理ユニット30、レジスト塗布ユニット31では、例えばスピン塗布法でウェハW上に所定の処理液を塗布する。スピンコーティングでは、例えば吐出ノズルからウェハW上に処理液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、処理液をウェハWの表面に拡散させる。
【0024】
例えば第2のブロックG2には、
図3に示すようにウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う熱処理ユニット40や、ウェハWの外周部を露光する周辺露光ユニット41が上下方向と水平方向に並べて設けられている。これら熱処理ユニット40、周辺露光ユニット41の数や配置についても、任意に選択できる。なお、熱処理ユニット40の構成については後述する。
【0025】
第3のブロックG3には、複数の受け渡しユニット50が設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡しユニット60が設けられている。
【0026】
図1に示すように第1のブロックG1~第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えば搬送機構70が配置されている。
【0027】
搬送機構70は、例えばY方向、前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有している。搬送機構70は、ウェハWを保持した搬送アーム70aをウェハ搬送領域D内で移動させ、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定のユニットに、ウェハWを搬送できる。搬送機構70は、例えば
図3に示すように上下に複数台配置され、例えば各ブロックG1~G4の同程度の高さの所定のユニットにウェハWを搬送できる。
【0028】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送機構71が設けられている。
【0029】
シャトル搬送機構71は、支持したウェハWをY方向に直線的に移動させ、同程度の高さの第3のブロックG3の受け渡しユニット50と第4のブロックG4の受け渡しユニット60との間でウェハWを搬送できる。
【0030】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側には、搬送機構72が設けられている。搬送機構72は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム72aを有している。搬送機構72は、ウェハWを保持した搬送アーム70aを上下に移動させ、第3のブロックG3内の各受け渡しユニット50に、ウェハWを搬送できる。
【0031】
インターフェイスステーション5には、搬送機構73と受け渡しユニット74が設けられている。搬送機構73は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム73aを有している。搬送機構73は、搬送アーム73aにウェハWを保持して、第4のブロックG4内の各受け渡しユニット60、受け渡しユニット74及び露光装置4との間でウェハWを搬送できる。
【0032】
上述の制御部6は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、上述の各種処理ユニットや各種搬送機構等の駆動系の動作を制御して、後述のウェハ処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、後述の状態判定処理を制御するプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部6にインストールされたものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0033】
次に、ウェハ処理装置1を用いたウェハ処理について説明する。
【0034】
ウェハ処理装置1を用いたウェハ処理では、先ず、搬送ユニット22によって、カセット載置台12上のカセットCからウェハWが取り出され、処理ステーション3の受け渡しユニット50に搬送される。
【0035】
次にウェハWは、搬送機構70によって第2のブロックG2の熱処理ユニット40に搬送され温度調節処理される。その後、ウェハWは、第1のブロックG1のレジスト塗布ユニット31に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。その後ウェハWは、熱処理ユニット40に搬送され、プリベーク処理(PAB:Pre-Applied Bake)される。なお、プリベーク処理や後段のPEB処理、ポストベーク処理では、同様な熱処理が行われる。ただし、各熱処理に供される熱処理ユニット40は互いに異なる。
【0036】
その後、ウェハWは、周辺露光ユニット41に搬送され、周辺露光処理される。
次にウェハWは、露光装置4に搬送され、所定のパターンで露光処理される。
【0037】
次いで、ウェハWは、熱処理ユニット40に搬送され、PEB処理される。その後ウェハWは、たとえば現像処理ユニット30に搬送されて現像処理される。現像処理終了後、ウェハWは、熱処理ユニット40に搬送され、ポストベーク処理される。その後、ウェハWはカセット載置台12上のカセットCに搬送され、一連のフォトリソグラフィー工程が完了する。
【0038】
続いて、上述した搬送ユニット22の構成について
図4~
図7を用いて説明する。
図4は搬送ユニット22の構成の概略を示す側面図であり、
図5及び
図6はそれぞれ、後述のフォークの構成の概略を示す上面図及び下面図である。
図7は、後述のノズルの構成の概略を示す断面図である。
【0039】
搬送ユニット22は、
図4に示すように、ベース101を有する。
ベース101は、後述のフォークを水平方向に移動自在に支持するものである。このベース101は、例えばモータ等のアクチュエータを有する駆動部(図示せず)が発生する駆動力により、
図1の搬送路21に沿って移動自在且つ昇降自在に構成されている。また、ベース101は、内部が空洞の角筒状の筐体111を有する。筐体111の両側面には、水平方向に延伸するガイドレール112が形成されている。ガイドレール112には、取付部材113が装着されている。
【0040】
取付部材113には、ウェハWを保持する、基板保持部としてのフォーク120が設けられている。取付部材113は、例えばモータ等のアクチュエータを有する駆動部(図示せず)が発生する駆動力により、ガイドレール112に沿って摺動自在である。この構成により、フォーク120は、水平方向に移動自在となっている。フォーク120は、具体的には、カセットCへのウェハ搬入出時にフォーク120全体がカセットCの外側に位置する初期位置まで移動でき、さらに、同搬入出時にカセットCとの間でウェハWを受け渡す時の位置であってカセットC内の位置である受け渡し位置まで移動できる。
【0041】
フォーク120の先端側は、
図5に示すように、ウェハWの直径よりも横幅が小さい二股形状を有する。
【0042】
フォーク120の上面には、複数(図の例では3つ)の吸着口121と、各吸着口121の周囲に設けられた吸着パッド122が設けられている。また、フォーク120の内部には、先端側が3つに分岐され各吸着口121に接続され基端が排気機構(図示せず)に連通する第1内部流路123が形成されている。この構成により、フォーク120は、吸着口121を介してウェハWを、吸着して保持することが可能である。
第1内部流路123は、吸着時に吸着口121からの気体を通流させる吸着用流路を構成する。なお、
図4及び
図6では、第1内部流路123の図示は省略している。
【0043】
さらに、フォーク120の表面には、具体的には、フォーク120の下面には、
図6に示すように、ノズル124が設けられている。ノズル124は、複数(本例では2つ)あり、互いに異なる領域それぞれに1つずつ設けられている。ノズル124は、具体的には、例えば、フォーク120の先端側の分岐している部分それぞれの下面に1つずつ設けられている。
【0044】
ノズル124は、
図7に示すように、フォーク120の下面から下方に延びるように設けられている。つまり、ノズル124は、フォーク120の下方に干渉物であるウェハWが位置するときに、干渉物であるウェハWに向けて延びるように設けられている。ノズル124は、先端から基端へ貫通する(すなわち上下に貫通する)通流孔124aを有する。通流孔124aの直径は例えば0.5mm~3mmである。なお、ノズル124のフォーク120への固定は、例えば接着固定により行われる。
【0045】
ノズル124は、例えば、
図7に示すように、円筒状に形成されている。ノズル124の直径は例えば5mm~10mm、高さは例えば0.5~3mmである。ノズル124の材料には、例えばフォーク120と同じ材料が用いられる。
【0046】
さらに、フォーク120の内部には、先端がノズル124に接続された第2内部流路125が形成されている。第2内部流路125の先端は具体的にはノズル124の通流孔124aに接続されている。第2内部流路125は、先端側が2つに分岐され、分岐した部分それぞれの先端が、通流孔124aに接続されている。本例では、第1内部流路123と第2内部流路125とは個別に設けられている。なお、
図5では、第2内部流路125の図示は省略している。
【0047】
また、
図4に示すように、第2内部流路125の基端に先端が接続される中継流路113aが、取付部材113の内部に形成されている。
【0048】
さらに、中継流路113aの基端に先端が接続される配管130が、ベース101の筐体111内に設けられている。そして、配管130の基端は、予め定められた排気圧力で排気する排気機構(図示せず)に連通している。この構成により、ノズル124の先端周囲の気体を、通流孔124aからノズル124内に吸引させることが可能であり、通流孔124aからの気体を、第2内部流路125、中継流路113a及び配管130をこの順で通流させて、排気機構(図示せず)を介して排出することができる。第2内部流路125、中継流路113a及び配管130は、ノズル124と接続され気体を通流させるノズル用流路を構成する。
【0049】
また、配管130は、フォーク120の移動に伴って変形自在な部分131を有する。
さらに、配管130には、流量センサ140が介設されている。
【0050】
流量センサ140は、配管130を流れる気体の流量を計測する。流量センサ140は、例えば、配管130における、上記変形自在な部分131を間に挟んで、第2内部流路125とは反対側の部分に設けられる。
また、本例では、2つの通流孔124aに対し1つの流量センサ140が共通して用いられている。
流量センサ140の計測結果は制御部6に出力される。
【0051】
なお、取付部材113及びフォーク120は、例えばアルミニウムを用いて形成される。また、例えば、取付部材113及びフォーク120の外形を成すアルミニウム製の板材を切削加工して溝を形成し、溝の開口部側を埋めることで、中継流路113a及び第2内部流路125は形成される。なお、フォーク120はセラミック材料を用いて形成してもよい。
【0052】
制御部6は、流量センサ140の計測結果に基づいて、フォーク120と干渉物である下方のウェハWとの間の距離の状態に関する判定、具体的には、フォーク120の下面とウェハWの上面との間の距離の状態に関する判定を行う。上記判定は、例えば、フォーク120とその下方のウェハWとが接触しているか否かの判定である。なお、上記判定は、フォーク120がその下方のウェハWに接近している否かの判定であってもよい。以下の例では、フォーク120とその下方のウェハWとが接触しているか否かの判定を行うものとする。
【0053】
また、制御部6は、流量センサ140による計測結果が所定の条件を満たすとき、フォーク120とその下方のウェハWとが接触している、と判定する。
【0054】
上記接触しているか否かの判定を上述のように流量センサ140の計測結果に基づいて行う理由は、以下の通りである。すなわち、
図8に示すように、ノズル124の平坦な先端面とウェハWの上面との間の距離Lは、通流孔124aに向かう気体に対する有効断面積Aに比例する。また、予め定められた排気圧力で通流孔124aから気体を吸引している場合、ノズル124とウェハWが近いときには、上記有効断面積Aと、通流孔124aに向かう気体の流量とは、略比例する。したがって、ノズル124の平坦な先端面とウェハWの上面との間の距離Lが短ければ、通流孔124aに向かう気体の流量が少なくなり、その結果、配管130に設けられた流量センサ140で計測される流量も少なくなる。また、上記距離Lが長ければ、通流孔124aに向かう気体の流量が多くなり、その結果、配管130に設けられた流量センサ140で計測される流量も多くなる。つまり、上記距離Lに応じて流量センサ140で計測される流量が変化する。これが理由である。
【0055】
図9は、通流孔124aを有するノズル124と同形状のもの(以下、「模擬ノズル」という。)を取り付けたフォーク120と同形状のもの(以下、「模擬フォーク」という。)から干渉物までの距離と、流量センサによる実際の計測結果と、の関係を示す図である。
図9に示されているのは、模擬ノズルを1つ設け、模擬ノズルに形成された通流孔を介して、一定の排気圧力で気体を吸引させているときに、模擬ノズルと排気機構とを接続する配管に介設した流量センサで計測された結果である。横軸は、模擬フォークから干渉物までの距離を示し、縦軸は、流量の計測結果を表す流量センサの出力電圧を示している。
【0056】
図9から明らかな通り、模擬ノズルの通流孔の直径及び排気圧力によらず、模擬ノズルから干渉対象物までの距離が200μm以下の場合、この距離が短くなるにつれ、流量センサの出力電圧すなわち流量センサで計測された流量は少なくなる。この結果から、本実施形態のように、流量センサ140での計測結果に基づいて、フォーク120とその下方のウェハWとが接触したか否かの判定を行うことができることが分かる。
【0057】
図10は、模擬ノズルの通流孔の開口面積と、流量センサによる実際の計測結果と、の関係を示す図である。
図10の横軸は、模擬ノズルの通流孔の開口面積を示し、縦軸は、流量の計測結果を表す流量センサの出力電圧を示している。
また、
図10の線Mは、模擬ノズルを1つ設け、当該模擬ノズルの通流孔を開口させたときの結果を示している。
図10の点P1~P3は、本実施形態と同様に、2つの模擬ノズルを設け、2つの模擬ノズルそれぞれに先端が接続された管路を基端側で合流させた配管に共通の流量センサを介設させたときの、結果を示している。また、点P1は、2つの模擬ノズルの両方について通流孔を開口させたときの結果、点P2は、一方について通流孔を閉口させたときの結果、点P3は、両方について通流孔を閉口させたときの結果を示している。なお、点P1~P3の結果を得たときの、各模擬ノズルの通流孔の直径は0.7mmである。
また、
図10の結果が得られたときの排気圧力は-20kPaである。
ここで、直径が0.7mmの通流孔を有する模擬ノズルを2つ設けたときの、通流孔の総開口面積は、直径が1.0mmの通流孔を有する模擬ノズルを1つ設けたときの、通流孔の開口面積と略等しい。
【0058】
線Mで示すように、模擬ノズルを1つ設ける場合、排気圧力は-20kPaとすると、通流孔の開口面積が、通流孔の直径が1mmのときより小さい範囲では、開口面積に対して流量センサからの出力電圧はリニアに変化(応答)する。
また、
図10に示すように、直径が0.7mmの通流孔を有する模擬ノズルを2つ設け両通流孔を開口させたとき(点P1)の、共通の流量センサからの出力電圧は、直径が1.0mmの通流孔を有する模擬ノズルを1つ設け通流孔を開口させたときの、流量センサからの出力電圧と略等しい。
また、直径が0.7mmの通流孔を有する模擬ノズルを2つ設け片方の通流孔を閉口させたとき(点P1)の、共通の流量センサからの出力電圧は、直径が0.7mmの通流孔を有する模擬ノズルを1つ設け通流孔を開口させたときの、流量センサからの出力電圧と略等しい。
直径が0.7mmの通流孔を有する模擬ノズルを2つ設け両通流孔を閉口させたとき(点P1)の、共通の流量センサからの出力電圧は、略零である。
【0059】
この結果から、ノズル124を複数設ける場合、通流孔124aの総開口面積以下の範囲で、通流孔124aの開口面積に対して共通の流量センサ140からの出力電圧がリニアに変化するよう、排気圧力を設定すれば、各通流孔124aの塞がり具合が判別できることが分かる。つまり、適切な排気圧力を設定すれば、本実施形態のように、ノズル124をフォーク120に複数設け、両ノズル124と排気機構とを接続する配管130に流量センサ140を設けたときに、流量センサ140での計測結果に基づいて、フォーク120と下方のウェハWとが接触したか否かの判定を行うことができることが、
図10の結果から分かる。
【0060】
次に、ウェハ処理装置1の状態判定処理について説明する。以下の状態判定処理は、カセットC内においてフォーク120の下方に位置するウェハWとフォーク120との間の距離の状態に関する判定処理である。より具体的には、以下の状態判定処理は、カセットC内においてフォーク120の下方に位置するウェハWとフォークとが接触しているか否かの判定処理である。この判定処理は、例えば、メンテナンス時や装置立ち上げ時、ウェハ処理装置1による量産処理時すなわち装置稼働中等に行われる。
【0061】
(判定用データ取得)
まず、制御部6が、ノズル124に通ずる排気機構による予め定められた排気圧力での排気を開始させると共に、ウェハWを保持していないフォーク120を、カセットCに対する前述の初期位置から前述の受け渡し位置まで移動させる。
そして、制御部6は、フォーク120が上述のように移動している間、流量センサ140による流量の計測値(流量センサ140からの出力電圧)を取得し続ける。つまり、制御部6は、フォーク120が移動している間の、流量センサ140による流量の計測値の時系列データ(以下、「フォーク120に関する判定対象時系列データ」という。)を取得する。
【0062】
(判定)
そして、制御部6は、フォーク120に関する判定対象時系列データに基づいて、フォーク120と下方のウェハWとが接触したか否かを判定し、具体的には、フォーク120が移動している間にカセットC内のウェハWと接触しているか否か判定する。また、制御部6は、フォーク120に関する判定対象時系列データが所定の条件(以下、「判定条件」という。)を満たすとき、フォーク120が移動している間にカセットC内のウェハWと接触している、と判定する。
【0063】
以下、上記判定条件の具体例を説明する。
なお、以下の判定条件1~5のうち、判定条件3~5では、リファレンス時系列データを用いるのに対し、判定条件1,2では、リファレンス時系列データを用いない。リファレンス時系列データは、判定対象時系列データが得られたときと同様にフォーク120が移動している間の、流量センサ140による流量の計測値の時系列データであって、移動中にフォーク120と干渉物との接触が生じない正常時のデータである。具体的には、リファレンス時系列データは、例えば、予め、フォーク120との干渉が生じえない空間に対し、フォーク120を往復運動させて、取得することができる。なお、「フォーク120との干渉が生じえない空間」とは、例えば、カセット載置台12に載置された空のカセットC内の空間である。内部に構造物が全く設置されないモジュールを別途ウェハ処理装置1に設け、このモジュール内の空間を上記「フォーク120との干渉物が生じえない空間」としてもよい。また、リファレンス時系列データは、例えば、装置立ち上げ時に取得してもよいし、定期的に取得してもよい。
【0064】
(判定条件1)
判定条件1は、フォーク120に関する判定対象時系列データに含まれる、流量センサ140による計測値またはその微分値(具体的には時間微分値)が、予め定められた閾値未満となる、という条件である。
【0065】
(判定条件2)
判定条件2は、フォーク120に関する判定対象時系列データに対し特異スペクトル変換を行い得られた、各時刻tにおける変化度が、閾値を超える、という条件である。
なお、スペクトル変換では、時系列データに対しスライド窓を用いることで、部分時系列データが取得される。また、時刻tの周辺の部分時系列データを用いてテスト行列が生成され、時刻tより過去の部分時系列データを用いて履歴行列が生成される。そして、履歴行列に対するテスト行列の相違が時刻tにおける変化度として算出される。
【0066】
(判定条件3)
判定条件3は、リファレンス時系列データの統計値を用いる条件である。
具体的には、判定条件3は、リファレンス時系列データの統計値として予め算出された計測値の平均値μと偏差σを用いる条件であり、フォーク120に関する判定対象時系列データに、μ±3σの範囲外となる計測値が含まれる、という条件である。
また、判定条件3は、リファレンス時系列データにおける計測値の平均値μと偏差σから算出される、判定対象時系列データに含まれる計測値のマハラノビス距離が閾値を超える、という条件であってもよい。
判定条件3では、計測値の代わりに、計測値の微分値を用いてもよいし、計測値とその微分値の両方を用いてもよい。
【0067】
(判定条件4)
判定条件4は、時間的に直近のリファレンス時系列データに対する判定対象時系列データの類似度が閾値未満となる、という条件である。なお、流量センサ140による流量の計測値の時系列データは、上記計測値の時間変化を示す波形、とも言うことができる。
上記類似度は、例えば動的時間伸縮(DTW:Dynamic Time Warping)法を用いて算出される。動的時間伸縮法では、2つの時系列データの各データ間の距離を総当たりで算出した上で、2つの時系列データの距離が最短化されるよう、時間軸に沿って時系列データを伸長させる。そして、最短化されたときの距離が類似度とされる。
動的時間伸縮法を用いることにより、リファレンス時系列データと判定対象時系列データとのデータ長が異なる場合や、リファレンス時系列データと判定対象時系列データとで、時間変化の進み方(すなわち上記波形の形)は似ているが位相が異なる場合でも、上記類似度をより正確に取得することができる。
【0068】
(判定条件5)
判定条件5は、複数のリファレンス時系列データに基づいた機械学習を行い得られたモデルを用いる条件である。
上記モデルとして、例えば、ニューラルネットワークの1つである自己符号化器(Auto Encoder)を用いることができる。自己符号化器は、入力データを符号化し、符号化したデータを復号したときに、元の入力データが再現されるよう学習するモデルである。
正常な時系列データを学習した自己符号化器に、正常な時系列データが入力された場合、自己符号化器から出力される時系列データは入力された時系列データに対する誤差が少ない。それに対し、異常な時系列データについては自己符号化器では再現できないため、異常な時系列データが入力された場合、自己符号化器から出力される時系列データは入力された時系列データに対する誤差が大きくなる。
したがって、上記モデルとして自己符号化器を用いる場合、例えば、自己符号化器に入力される時系列データに対する自己符号化器が出力する時系列データの誤差が閾値を超える、という条件が、判定条件5とされる。
【0069】
以上のように、本実施形態にかかるウェハ処理装置1は、フォーク120と、フォークの下面に設けられた、気体を通過させるノズル124と、ノズル124と接続され気体を通流させるノズル用流路としての、第2内部流路125、中継流路113a及び配管130を備える。そして、ウェハ処理装置1は、上記ノズル用流路(具体的には配管130)を流れる気体の流量を計測する流量センサ140と、流量センサ140が計測した流量に基づき、カセットC内においてフォーク120の下方に位置するウェハWすなわち干渉物とフォーク120との間の距離の状態に関する判定を行う制御部と、を備える。上記判定に用いる、配管130を流れる気体の流量は、干渉物であるカセットC内のウェハWの導電率や誘電率等によって大きく変わることはない。したがって、本実施形態によれば、カセットC内のウェハWとフォーク120との間の距離の状態に関する判定を、当該ウェハWの導電率や誘電率によらず、正確に行うことができる。
【0070】
なお、フォークと干渉物とか接触しているか否かの判定方法として、本実施形態にかかる方法以外には、以下の方法が考えられる。すなわち、フォークに振動センサを設け、フォークと干渉物とが接触したときの振動を振動センサで検出できるようにし、振動センサでの検出結果に基づいて、フォークと干渉物とが接触しているか否か判定する方法が考えられる。しかし、この方法は、フォークが接触せずに振動している場合、誤判定することがある。それに対し、上述の判定条件2~5等を用いれば、フォークが接触せずに振動している場合でも、誤判定することがない。
【0071】
また、本実施形態では、流量センサ140は、配管130における、上記変形自在な部分131を間に挟んで、第2内部流路125とは反対側の部分に設けられる。
したがって、流量センサ140を第2内部流路125や中継流路113aに対し設ける場合に比べて、流量センサ140に対する信号線の這い回し等が容易であり、また、流量センサ140自体の設置も容易である。なお、流量センサ140と第2内部流路125との間に上記変形自在な部分131が存在すると、言い換えると、流量センサ140の上流側に屈曲部が存在すると、屈曲部で圧損の変動が推測され、それにより流量が変動し、流量センサ140の測定結果におけるS/N比が悪くなることが考えられる。しかし、本発明者らが鋭意調査したところ、圧損の変動によって生じる流量よりも十分にS/N比が取れることが判明したため、上述のような構成としている。
【0072】
次に、フォークの他の例を
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、既設のフォークの例を示し、
図12は、
図11の既設のフォークに、後述の吸着部材に代えて後述の治具を取り付けたときの様子を示す図である。
【0073】
図11に示すように、既設のフォーク200は、
図4等に示したフォーク120と同様、吸着口121と吸着パッド122とを有している。ただし、既設のフォーク200は、フォーク120と異なり、状態判定に用いられるノズル124を有していない。
【0074】
既設のフォーク200は具体的には、吸着部材201と、フォーク本体202とを有する。フォーク200の外形形状は、
図5等に示したフォーク120の略同一であり、先端側が二股形状となっている。
【0075】
吸着部材201は、フォーク本体202に着脱自在に取り付けられる。具体的には、吸着部材201は、フォーク本体202の下面に着脱自在に取り付けられる。なお、吸着部材201は例えば螺着によりフォーク本体202に対して固定される。吸着部材201の先端側は、その上面がフォーク本体202に覆われておらず、上方に向け開口した吸着口121が設けられている。また、吸着部材201の先端側の上面には、吸着口121の開口の周囲を覆うように吸着パッド122が設けられている。吸着部材201の内部には、先端が吸着口121に接続され気体を通流させる部材側内部流路201aが形成されている。
【0076】
フォーク本体202は、先端が部材側内部流路201aに接続され基端が排気機構(図示せず)に連通する本体側内部流路202aが設けられている。部材側内部流路201a及び本体側内部流路202aが、
図4等に示したフォーク120の第1内部流路123を構成している。つまり、部材側内部流路201a及び本体側内部流路202aは、吸着用流路を構成している。
【0077】
既存のフォーク200とその下方に位置するウェハWとの間の距離の状態に関する判定を行う場合は、
図12に示すように、吸着部材201を取り外し、代わりに、治具210を取り付ける。
【0078】
治具210は、フォーク本体202に対して着脱自在に取り付けられる。具体的には、吸着部材201は、フォーク本体202の下面に着脱自在に取り付けられる。この治具210の下面にノズル124が設けられている。また、治具210の内部には、先端がノズル124に接続され気体を通流させる治具内流路211が形成されている。そして、この治具210を、フォーク本体202に取り付けたときに、ノズル124が、治具内流路211を介して、本体側内部流路202aに連通されるようになっている。そのため、本体側内部流路202aが、治具内流路211と共に、
図4等に示したフォーク120の第2内部流路125を構成する。つまり、本体側内部流路202aは、ノズル用流路も兼ねることとなる。したがって、予め定められた排気圧力で排気する排気機構と本体側内部流路202aとを接続する配管に流量センサを設けておき、治具210を用いることにより、
既設のフォーク200とその下方に位置するウェハWとの間の距離の状態に関する判定を行うことができる。
【0079】
なお、吸着部材201が、前述のように計4つ設けられている場合、治具210は、例えば、フォーク200の先端側の2つの吸着部材201の代わりに取り付けられる。取り付けたままの、フォーク200の基端側の吸着部材201については、上記判定の際、その吸着口121は塞がれる。
【0080】
図13は、ノズルの形状の他の例を示す図である。
図13のノズル301の形状は、基端から先端に向けて細くなる円錐形状である。このような形状とすることにより、ノズル301の先端面の面積を小さくしながら、ノズル301の基端側を太くすることができる。
【0081】
ノズル301の先端面の面積が大きいと、ノズル301の先端面が、ノズル301の下方、すなわち、フォーク120の下方のウェハWの上面に近いときに、ノズル301が気体を吸引する力が、ウェハWに作用して吸い上げてしまうことがある。それに対し、ノズル301の先端面の面積を小さくすることで、ウェハWの上面における、ノズル301が気体を吸引する力が作用する領域が狭くなるため、ウェハWに作用する総吸引力を低下させることができる。その結果、ウェハWの吸い上げが生じるのを防ぐことができる。
また、ノズル301の基端側を太くすることで、ノズル301がウェハWに接触したときに破損すること等を防ぐことができる。
【0082】
以上の例では、フォーク120、200とその下方に位置するウェハWとの間の距離の状態に関する判定を行っていたが、フォーク120、200とその下方に位置する他の部材(例えばカセットC内の構造物等)との間の距離の状態に関する判定を行ってもよい。
また、ノズル124をフォークの下面に設け、フォークとその上方に位置する部材との間の距離の状態に関する判定を行ってもよいし、ノズル124をフォークの前面や側面に設け、フォークとその前方または側方の空間に位置する部材(例えば、カセットCの奥壁や側壁等)と間の距離の状態に関する判定を行ってもよい。
【0083】
また、搬送機構23のフォーク120にノズル124、301を設けていたが、同様のノズルを搬送機構23の他の部分(例えばベース101)に設けてもよい。そして、搬送機構の他の部分と干渉物との間の距離の状態に関する判定を行ってもよい。また、同様のノズルを搬送機構70等、他の搬送機構に設け、当該他の搬送機構と干渉物との間の距離の状態に関する判定を行ってもよい。
さらに、同様のノズルを、他の部分に対して相対的に移動する、搬送機構以外の部材に設け、当該部材と干渉物との間の距離の状態に関する判定を行ってもよい。
【0084】
図14は、ノズルをレジスト塗布ユニット32内に設けた例を示す図である。
レジスト塗布ユニット32は、
図14に示すように内部を密閉可能な処理容器400を有している。処理容器400の側面には、ウェハWの搬入出口(図示せず)が形成されている。
【0085】
処理容器400内には、ウェハWを保持するスピンチャック401が設けられている。このスピンチャック401は、保持したウェハWを回転させることもできる。スピンチャック401は、例えばモータ等のアクチュエータを有するチャック駆動部402により所定の速度に回転できる。また、チャック駆動部402には、例えばシリンダ等の昇降駆動機構が設けられており、スピンチャック401は昇降自在になっている。
【0086】
また、処理容器400内には、スピンチャック401に保持されるウェハWを囲み得るようにスピンチャック401の外側に配置される、囲い部材としてのカップ403が設けられている。カップ403は、ウェハWから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するアウターカップ404と、アウターカップ404の内周側に位置するインナーカップ405と、を含む。アウターカップ404の上部には、スピンチャック401に対するウェハWの受け渡しの前後にウェハWが通過する開口406が形成されている。
【0087】
さらに、処理容器400内には、レジスト液をウェハWに吐出する吐出ノズル407が上下方向及び水平方向に移動自在に設けられている。
【0088】
このレジスト塗布ユニット32は、スピンチャック401に保持されたウェハWとカップ403との間の距離の状態に関する判定を行うため、具体的には、上記ウェハWとインナーカップ405との間の距離の状態に関する判定を行うため、前述のノズル124と同様のノズル408がカップ403の表面に設けられている。ノズル408は、具体的にはインナーカップ405の上面に設けられている。
【0089】
また、レジスト塗布ユニット32は、ノズル408に接続され気体を通流させる管路を構成する配管409が設けられており、所定の排気圧力で排気する排気機構とノズル408とが配管409を介して連通されている。したがって、ノズル408の先端周囲の気体を、ノズル408の通流孔からノズル408内に吸引させることが可能である。そして、配管409には、流量センサ410が設けられている。
【0090】
この例では、スピンチャック401に保持されたウェハWとその下方に位置するインナーカップ405との間の距離の状態に関する判定を、流量センサ410での計測結果に基づいて行う。したがって、インナーカップ405の導電率や誘電率等によらず、上記判定を正確に行うことができる。
【0091】
なお、以上の例では、メンテナンス時に状態判定を行っていたが、例えば、
図4等に示したフォーク120を用いる場合は、前述のウェハ処理中等、常時行ってもよい。
【0092】
また、以上の例では、ノズル124、301、408の先端周囲の気体を、予め定められた排気圧力で、当該ノズル124、301、408を介して吸引していた。これに代えて、状態判定に用いるノズルの先端から気体を吐出するようにしてもよい。例えば、インナーカップ405等、カップ403の表面に状態判定用のノズルを設ける場合、ノズルの先端から気体が吐出されるように構成されていてもよい。これにより、気体と一緒のレジスト液等の処理液をノズルから吸引してしまうのを防ぐことができる。
【0093】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 ウェハ処理装置
6 制御部
23 搬送機構
113a 中継流路
120 フォーク
125 第2内部流路
130 配管
131 部分
140 流量センサ
202a 本体側内部流路
211 治具内流路
301 ノズル
405 インナーカップ
408 ノズル
409 配管
410 流量センサ
W ウェハ