(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エッチング方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241003BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2020188671
(22)【出願日】2020-11-12
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】大類 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】須田 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/178030(WO,A1)
【文献】特開2020-115538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0206723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリコン窒化膜を含むシリコン含有膜を有する基板をチャンバ内に提供する工程と、
(b)前記チャンバ内で処理ガスからプラズマを生成して前記シリコン含有膜をエッチングする工程であり、該処理ガスは、リン含有ガス、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む、該工程と、
を含む、エッチング方法。
【請求項2】
前記(b)において、前記基板を支持する基板支持器の温度が0℃未満の温度に設定される、請求項
1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスは、フルオロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、フッ化水素、三フッ化窒素ガス及び六フッ化硫黄ガスのうち少なくとも一つを含む、請求項
1または
2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記処理ガスの流量に対するホウ素含有ガスの流量の割合は、6%以下である、請求項
1~
3の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記シリコン含有膜はシリコン酸化膜を更に含む、請求項
1~
4の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記リン含有ガスは、リン原子とハロゲン原子とを含むガスである、請求項
1~
5のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記リン含有ガスは、PF
3ガス、PF
5ガス、PCl
3ガス及びPOCl
3ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
1~
6の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記リン含有ガスは、PF
3ガス、PCl
3ガス及びPOCl
3ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
1~
6の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記フッ素含有ガスは、フッ化水素ガスを含む、請求項
1~
8の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記ホウ素含有ガスは、BCl
3ガスを含む、請求項
1~
9の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記処理ガスは、炭素含有ガスをさらに含む、請求項
1~1
0の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含む、請求項
1~1
1の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記基板は、前記シリコン含有膜上にマスクを有し、
前記マスクは、炭素含有材料、シリコン含有材料又は金属含有材料製である、
請求項1~1
2のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記基板は、前記シリコン含有膜上に金属含有マスクを有し、
前記金属含有マスクは、窒化チタン、タングステン又は炭化タングステン製である、請求項1~1
2の何れか一項に記載のエッチング方法。
【請求項15】
プラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するための基板支持器であり、前記基板は、シリコン窒化膜を含むシリコン含有膜を有する、基板支持器と、
処理ガスを前記チャンバ内に供給するように構成されたガス供給部であり、前記処理ガスは、リン含有ガス、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む、ガス供給部と、
前記チャンバ内で前記処理ガスからプラズマを生成するように構成されたプラズマ生成部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、エッチング方法を実行するように、前記プラズマ処理装置を制御するように構成され、前記エッチング方法は、
(b)前記チャンバ内で前記処理ガスから前記プラズマを生成して前記シリコン含有膜をエッチングする工程を含む、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、エッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造においては、基板のシリコン含有膜のプラズマエッチングが行われている。プラズマエッチングでは、処理ガスから生成されたプラズマを用いてシリコン含有膜のエッチングが行われる。特開2016-39309号公報は、シリコン含有膜のプラズマエッチングに用いられる処理ガスとして、水素ガス、フルオロハイドロカーボンガス、フッ素含有ガス、炭化水素ガス、三塩化ホウ素ガス、及び窒素ガスを含む処理ガスを開示している。特開2014-17406号公報は、シリコン含有膜のプラズマエッチングに用いられる処理ガスとして、ホウ素を含む処理ガスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-39309号公報
【文献】特開2014-17406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、シリコン含有膜のプラズマエッチングにおいて、シリコン含有膜に形成される開口の形状不良を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、(a)シリコン窒化膜を含むシリコン含有膜を有する基板をチャンバ内に提供する工程と、(b)前記チャンバ内で処理ガスからプラズマを生成して前記シリコン含有膜をエッチングする工程とを含む。該処理ガスは、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む。前記(b)において、前記基板を支持する基板支持器の温度が0℃未満の温度に設定される。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、シリコン含有膜のプラズマエッチングにおいて、シリコン含有膜に形成される開口の形状不良を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
【
図2】
図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図1に示すエッチング方法が適用された一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図5】開口の形状不良の程度を評価するための一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図6】第1及び第2の実験の結果を示すグラフである。
【
図7】第3及び第4の実験の結果を示すグラフである。
【
図8】第5~第8の実験の結果を示すグラフである。
【
図9】第5~第6及び第9~第13の実験の結果を示すグラフである。
【
図12】
図12の(a)~(c)はそれぞれ第16~第18の実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、(a)シリコン窒化膜を含むシリコン含有膜を有する基板をチャンバ内に提供する工程と、(b)前記チャンバ内で処理ガスからプラズマを生成して前記シリコン含有膜をエッチングする工程とを含む。該処理ガスは、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む。前記(b)において、前記基板を支持する基板支持器の温度が0℃未満の温度に設定される。
【0010】
上記エッチング方法によれば、シリコン含有膜のプラズマエッチングにおいて、シリコン含有膜に形成される開口の形状不良を抑制することができる。開口の形状不良が抑制されるメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。基板支持器の温度が低温(例えば0℃未満)であると、エッチングにより生成される副生成物(例えばケイフッ化アンモニウム((NH4)2SiF6))が揮発し難くなる。その結果、エッチング中に副生成物が開口の側壁又は底に堆積することによって、エッチングが深さ方向に直線的に進まなくなる。これにより、開口の側壁が曲がるため、開口の形状不良が発生し得る。しかしながら、処理ガスにホウ素含有ガスが含まれていると、副生成物の生成が抑制され、副生成物の分解が促進される。したがって、副生成物に起因する開口の形状不良が抑制される。
【0011】
一つの例示的実施形態において、前記処理ガスは、リン含有ガスを更に含んでもよい。処理ガスにリン含有ガスが含まれると、エッチングにより生成される副生成物の生成が促進される。そのような場合でも、処理ガスにホウ素含有ガスが含まれていると、副生成物の生成が抑制され、副生成物の分解が促進される。
【0012】
前記フッ素含有ガスは、フルオロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、フッ化水素ガス、三フッ化窒素ガス及び六フッ化硫黄ガスのうち少なくとも一つを含んでもよい。この場合、シリコン含有膜に形成される開口の形状不良を更に抑制することができる。
【0013】
前記処理ガスの流量に対するホウ素含有ガスの流量の割合は、6%以下であってもよい。この場合、ホウ素含有ガスの流量を少なくできる。
【0014】
前記シリコン含有膜はシリコン酸化膜を更に含んでもよい。
【0015】
他の一つの例示的実施形態において、エッチング方法が提供される。エッチング方法は、(a)シリコン窒化膜を含むシリコン含有膜を有する基板をチャンバ内に提供する工程と、(b)前記チャンバ内で処理ガスからプラズマを生成して前記シリコン含有膜をエッチングする工程とを含む。該処理ガスは、リン含有ガス、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む。
【0016】
上記エッチング方法によれば、シリコン含有膜のプラズマエッチングにおいて、シリコン含有膜に形成される開口の形状不良を抑制することができる。開口の形状不良が抑制されるメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。処理ガスにリン含有ガスが含まれると、エッチングにより生成される副生成物(例えばケイフッ化アンモニウム((NH4)2SiF6))の生成が促進される。その結果、エッチング中に副生成物が開口の側壁又は底に堆積することによって、エッチングが深さ方向に直線的に進まなくなる。これにより、開口の側壁が曲がるため、開口の形状不良が発生し得る。しかしながら、処理ガスにホウ素含有ガスが含まれていると、副生成物の生成が抑制され、副生成物の分解が促進される。したがって、副生成物に起因する開口の形状不良が抑制される。
【0017】
前記(b)において、前記基板を支持する基板支持器の温度が0℃未満の温度に設定されてもよい。基板支持器の温度が低温(例えば0℃未満)であると、エッチングにより生成される副生成物が揮発し難くなる。そのような場合でも、処理ガスにホウ素含有ガスが含まれていると、副生成物の生成が抑制され、副生成物の分解が促進される。
【0018】
前記処理ガスの流量に対するホウ素含有ガスの流量の割合は、6%以下であってもよい。この場合、ホウ素含有ガスの流量を少なくできる。
【0019】
前記シリコン含有膜はシリコン酸化膜を更に含んでもよい。
【0020】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
図1は、一つの例示的実施形態に係るエッチング方法の流れ図である。
図1に示すエッチング方法(以下、「方法MT」という)は、シリコン含有膜を有する基板に適用される。方法MTでは、シリコン含有膜がエッチングされる。
【0022】
図2は、
図1に示すエッチング方法が適用され得る一例の基板の部分拡大断面図である。
図2に示す基板Wは、DRAM、3D-NANDのようなデバイスの製造に用いられ得る。基板Wは、シリコン含有膜SFを有する。基板Wは、下地領域URを更に有していてもよい。シリコン含有膜SFは、下地領域UR上に設けられ得る。
【0023】
シリコン含有膜SFは、シリコン含有誘電体膜であり得る。シリコン含有誘電体膜は、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を含み得る。シリコン含有誘電体膜は、シリコンを含有する誘電体膜であれば、他の膜種を有する膜であってもよい。また、シリコン含有膜SFは、シリコン膜(例えば多結晶シリコン膜)を含んでいてもよい。また、シリコン含有膜SFは、シリコン窒化膜、多結晶シリコン膜、炭素含有シリコン膜、及び低誘電率膜のうち少なくとも一つを含んでいてもよい。炭素含有シリコン膜は、SiC膜及び/又はSiOC膜を含み得る。低誘電率膜は、シリコンを含有し、層間絶縁膜として用いられ得る。また、シリコン含有膜SFは、互いに異なる膜種を有する二つ以上のシリコン含有膜を含んでいてもよい。二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を含んでいてもよい。シリコン含有膜SFは、例えば、交互に積層された一つ以上のシリコン酸化膜及び一つ以上のシリコン窒化膜を含む多層膜であってもよい。シリコン含有膜SFは、交互に積層された複数のシリコン酸化膜及び複数のシリコン窒化膜を含む多層膜であってもよい。或いは、二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜及びシリコン膜を含んでいてもよい。シリコン含有膜SFは、例えば、交互に積層された一つ以上のシリコン酸化膜及び一つ以上のシリコン膜を含む多層膜であってもよい。シリコン含有膜SFは、交互に積層された複数のシリコン酸化膜及び複数の多結晶シリコン膜を含む多層膜であってもよい。或いは、二つ以上のシリコン含有膜は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及びシリコン膜を含んでいてもよい。
【0024】
基板Wは、マスクMKを更に有していてもよい。マスクMKは、シリコン含有膜SF上に設けられている。マスクMKは、工程ST2においてシリコン含有膜SFのエッチングレートよりも低いエッチングレートを有する材料から形成される。マスクMKは、有機材料から形成され得る。即ち、マスクMKは、炭素を含有してもよい。マスクMKは、例えば、アモルファスカーボン膜、フォトレジスト膜、又はスピンオンカーボン膜(SOC膜)から形成され得る。或いは、マスクMKは、シリコン含有反射防止膜のようなシリコン含有膜から形成されてもよい。或いは、マスクMKは、窒化チタン、タングステン、炭化タングステンのような金属含有材料から形成された金属含有マスクであってもよい。マスクMKは、3μm以上の厚みを有し得る。
【0025】
マスクMKは、パターニングされている。即ち、マスクMKは、工程ST2においてシリコン含有膜SFに転写されるパターンを有している。マスクMKのパターンがシリコン含有膜SFに転写されると、シリコン含有膜SFにはホール又はトレンチのような開口OP(
図4参照)が形成される。開口OPは凹部であってもよい。開口OPは、シリコン含有膜SFを厚さ方向に貫通してもよい。シリコン含有膜SFが、交互に積層された複数のシリコン酸化膜及び複数のシリコン窒化膜を含む多層膜である場合、開口OPは多層膜を厚さ方向に貫通してもよい。工程ST2においてシリコン含有膜SFに形成される開口OPのアスペクト比は20以上であってよく、30以上、40以上、又は50以上であってもよい。なお、マスクMKは、ラインアンドスペースパターンを有していてもよい。
【0026】
方法MTでは、シリコン含有膜SFのエッチングのためにプラズマ処理装置が用いられる。
図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図3に示すプラズマ処理装置1は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供する。チャンバ10はチャンバ本体12を含む。チャンバ本体12は、略円筒形状を有する。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから形成される。チャンバ本体12の内壁面上には、耐腐食性を有する膜が設けられている。耐腐食性を有する膜は、酸化アルミニウム、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0027】
チャンバ本体12の側壁には、通路12pが形成されている。基板Wは、通路12pを通して内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送される。通路12pは、ゲートバルブ12gにより開閉される。ゲートバルブ12gは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられる。
【0028】
チャンバ本体12の底部上には、支持部13が設けられている。支持部13は、絶縁材料から形成される。支持部13は、略円筒形状を有する。支持部13は、内部空間10sの中で、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部13は、基板支持器14を支持している。基板支持器14は、内部空間10sの中で基板Wを支持するように構成されている。
【0029】
基板支持器14は、下部電極18及び静電チャック20を有する。基板支持器14は、電極プレート16を更に有し得る。電極プレート16は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムなどの導体から形成されており、略円盤形状を有する。下部電極18は、電極プレート16に電気的に接続されている。
【0030】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、静電チャック20の上面の上に載置される。静電チャック20は、本体及び電極を有する。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有し、誘電体から形成される。静電チャック20の電極は、膜状の電極であり、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、スイッチ20sを介して直流電源20pに接続されている。静電チャック20の電極に直流電源20pからの電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間に静電引力が発生する。基板Wは、その静電引力によって静電チャック20に引き付けられて、静電チャック20によって保持される。
【0031】
基板支持器14上には、エッジリング25が配置される。エッジリング25は、リング状の部材である。エッジリング25は、シリコン、炭化シリコン、又は石英などから形成され得る。基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリング25によって囲まれた領域内に配置される。
【0032】
下部電極18の内部には、流路18fが設けられている。流路18fには、チャンバ10の外部に設けられているチラーユニットから配管22aを介して熱交換媒体(例えば冷媒)が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管22bを介してチラーユニットに戻される。プラズマ処理装置1では、静電チャック20上に載置された基板Wの温度が、熱交換媒体と下部電極18との熱交換により、調整される。
【0033】
プラズマ処理装置1には、ガス供給ライン24が設けられている。ガス供給ライン24は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス(例えばHeガス)を、静電チャック20の上面と基板Wの裏面との間の間隙に供給する。
【0034】
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備える。上部電極30は、基板支持器14の上方に設けられている。上部電極30は、部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。部材32は、絶縁性を有する材料から形成される。上部電極30と部材32は、チャンバ本体12の上部開口を閉じている。
【0035】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34の下面は、内部空間10sの側の下面であり、内部空間10sを画成する。天板34は、発生するジュール熱の少ない低抵抗の導電体又は半導体から形成され得る。天板34は、天板34をその板厚方向に貫通する複数のガス吐出孔34aを有する。
【0036】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する。支持体36は、アルミニウムなどの導電性材料から形成される。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。支持体36は、ガス拡散室36aから下方に延びる複数のガス孔36bを有する。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入口36cが形成されている。ガス導入口36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0037】
ガス供給管38には、流量制御器群41及びバルブ群42を介して、ガスソース群40が接続されている。流量制御器群41及びバルブ群42は、ガス供給部を構成している。ガス供給部は、ガスソース群40を更に含んでいてもよい。ガスソース群40は、複数のガスソースを含む。複数のガスソースは、方法MTで用いられる処理ガスのソースを含む。流量制御器群41は、複数の流量制御器を含む。流量制御器群41の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。バルブ群42は、複数の開閉バルブを含む。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、流量制御器群41の対応の流量制御器及びバルブ群42の対応の開閉バルブを介して、ガス供給管38に接続されている。
【0038】
プラズマ処理装置1では、チャンバ本体12の内壁面及び支持部13の外周に沿って、シールド46が着脱自在に設けられている。シールド46は、チャンバ本体12に反応副生物が付着することを防止する。シールド46は、例えば、アルミニウムから形成された母材の表面に耐腐食性を有する膜を形成することにより構成される。耐腐食性を有する膜は、酸化イットリウムなどのセラミックから形成され得る。
【0039】
支持部13とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウムから形成された部材の表面に耐腐食性を有する膜(酸化イットリウムなどの膜)を形成することにより構成される。バッフルプレート48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方、且つ、チャンバ本体12の底部には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを含む。
【0040】
プラズマ処理装置1は、高周波電源62及びバイアス電源64を備えている。高周波電源62は、高周波電力HFを発生する電源である。高周波電力HFは、プラズマの生成に適した第1の周波数を有する。第1の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。高周波電源62は、整合器66及び電極プレート16を介して下部電極18に接続されている。整合器66は、高周波電源62の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。なお、高周波電源62は、整合器66を介して、上部電極30に接続されていてもよい。高周波電源62は、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0041】
バイアス電源64は、電気バイアスを発生する電源である。バイアス電源64は、下部電極18に電気的に接続されている。電気バイアスは、第2の周波数を有する。第2の周波数は、第1の周波数よりも低い。第2の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。電気バイアスは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むために下部電極18に与えられる。電気バイアスが下部電極18に与えられると、基板支持器14上に載置された基板Wの電位は、第2の周波数で規定される周期内で変動する。
【0042】
一実施形態において、電気バイアスは、第2の周波数を有する高周波電力LFであってもよい。高周波電力LFは、高周波電力HFと共に用いられる場合には、基板Wにイオンを引き込むための高周波バイアス電力として用いられる。高周波電力LFを発生するように構成されたバイアス電源64は、整合器68及び電極プレート16を介して下部電極18に接続される。整合器68は、バイアス電源64の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスをバイアス電源64の出力インピーダンスに整合させるための回路を有する。
【0043】
なお、高周波電力HFを用いずに、高周波電力LFを用いて、即ち、単一の高周波電力のみを用いてプラズマを生成してもよい。この場合には、高周波電力LFの周波数は、13.56MHzよりも大きな周波数、例えば40MHzであってもよい。また、この場合には、プラズマ処理装置1は、高周波電源62及び整合器66を備えなくてもよい。この場合には、バイアス電源64は一例のプラズマ生成部を構成する。
【0044】
プラズマ処理装置1においてプラズマ処理が行われる場合には、ガスがガス供給部から内部空間10sに供給される。また、高周波電力HF及び/又は電気バイアスが供給されることにより、上部電極30と下部電極18との間で高周波電界が生成される。生成された高周波電界が内部空間10sの中のガスからプラズマを生成する。
【0045】
プラズマ処理装置1は、制御部80を更に備え得る。制御部80は、プロセッサ、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェイス等を備えるコンピュータであり得る。制御部80は、プラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部80では、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部80では、表示装置により、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、記憶部には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置1で各種処理を実行するために、プロセッサによって実行される。プロセッサは、制御プログラムを実行し、レシピデータに従ってプラズマ処理装置1の各部を制御する。
【0046】
再び
図1を参照する。以下、方法MTを、それがプラズマ処理装置1を用いて
図2に示す基板Wに適用される場合を例にとって、説明する。プラズマ処理装置1が用いられる場合には、制御部80によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において方法MTが実行され得る。以下の説明においては、方法MTの実行のための制御部80によるプラズマ処理装置1の各部の制御についても説明する。
【0047】
以下の説明では、
図1に加えて、
図4を参照する。
図4は、
図1に示すエッチング方法が適用された一例の基板の部分拡大断面図である。
【0048】
図1に示すように、方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1では、基板Wがチャンバ10内に提供される。基板Wは、チャンバ10内で静電チャック20上に載置されて、静電チャック20によって保持される。なお、基板Wは300mmの直径を有し得る。
【0049】
方法MTでは、次いで、工程ST2が実行される。工程ST2では、シリコン含有膜SFが、チャンバ10内で処理ガスから生成されたプラズマからの化学種により、エッチングされる。化学種はハロゲン化学種であり得る。
【0050】
一実施形態において、工程ST2で用いられる処理ガスは、フッ素含有ガス及びホウ素含有ガスを含む。処理ガスは、リン含有ガスを更に含んでいてもよい。処理ガスは、ハロゲン含有ガスを更に含んでいてもよい。ハロゲン含有ガスは、例えば塩素(Cl2)ガスを含有する。処理ガスは、炭素含有ガスを更に含んでいてもよい。処理ガスは、不活性ガスを更に含んでいてもよい。不活性ガスは、例えば貴ガスを含有する。処理ガスは、酸素含有ガスを更に含んでいてもよい。酸素含有ガスは、例えばO2を含有する。
【0051】
フッ素含有ガスは、ハイドロフルオロカーボン(CsHtFu)ガス、フルオロカーボン(CvFw)ガス、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス及び六フッ化硫黄(SF6)ガスのうち少なくとも一つを含んでもよい。ここで、s、t、u、v、wの各々は自然数である。ハイドロフルオロカーボンは、例えば、CH2F2、CHF3、CH3F、C2HF5、C3H2F4等のうちの少なくとも一つである。ハイドロフルオロカーボンは、2つ以上の炭素原子を含むハイドロフルオロカーボンであってもよい。フルオロカーボンは、例えば、CF4、C2F6、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C5F8等のうちの少なくとも一つである。フルオロカーボンおよびハイドロフルオロカーボンは炭素原子を含み、マスクを保護する役割を果たす。
【0052】
リン含有ガスは、リン原子とハロゲン原子とを含むガスであってもよいし、リン原子とフッ素原子とを含むガスであってもよい。リン原子とハロゲン原子とを含むガスの例は、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)及び塩化ホスホリル(POCl3)を含む。リン原子とフッ素原子とを含むガスの例は、三フッ化リン(PF3)及び五フッ化リン(PF5)を含む。リン含有ガスから生成されるリン化学種が基板Wの表面に存在する状態では、エッチャントの基板Wへの吸着が促進される。即ち、リン含有ガスから生成されるリン化学種が基板Wの表面に存在する状態では、開口(凹部)の底へのエッチャントの供給が促進されて、シリコン含有膜SFのエッチングレートが高められる。
【0053】
炭素含有ガスは、炭化水素(CxHy)ガスを含んでもよい。ここで、x、yの各々は自然数である。炭化水素は、例えば、CH4、C3H6等のうち少なくとも一つである。二つ以上の炭素原子を含む炭素含有ガスが用いられる場合には、マスクMK及びシリコン含有膜SFにおいて開口を画成する側壁面の保護効果がより大きくなり得る。
【0054】
ホウ素含有ガスは、三塩化ホウ素(BCl3)ガスを含んでもよい。処理ガスの流量に対するホウ素含有ガスの流量の割合は、0%よりも大きく、0.5%以上であってもよいし、1%以上であってもよい。当該割合は、6%以下であってもよいし、3%以下であってもよいし、2%以下であってもよい。ホウ素含有ガスの流量の割合を小さくすると、シリコン酸化膜のエッチングレートを大きくできると共にホウ素含有ガスによりマスクMKのエッチングされる量を抑制できる。
【0055】
工程ST2の実行のために、制御部80は、処理ガスをチャンバ10内に供給するようにガス供給部を制御する。制御部80は、チャンバ10内でのガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置50を制御する。制御部80は、基板支持器14の温度を指定された温度に設定するようにチラーユニットを制御する。制御部80は、処理ガスからプラズマを生成するようにプラズマ生成部を制御する。
【0056】
一実施形態では、工程ST2における基板支持器14の温度は、0℃未満、-20℃未満、-30℃未満又は-40℃以下の温度に設定されてもよいし、-170℃以上の温度に設定されてもよい。-30℃未満に基板Wの温度が設定されると、工程ST2におけるシリコン含有膜SFのエッチングレートが高くなる。
【0057】
上述の方法MTによれば、シリコン含有膜SFのプラズマエッチングにおいて、シリコン含有膜SFに形成される開口OPの形状不良(撚れ又は捩れ)を抑制することができる。開口OPの形状不良が抑制されるメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。
【0058】
基板支持器14の温度が低温(例えば0℃未満)であると、エッチングにより生成される副生成物(例えばケイフッ化アンモニウム((NH4)2SiF6)が揮発し難くなる。或いは、処理ガスにリン含有ガスが含まれると、エッチングにより生成される副生成物(例えばケイフッ化アンモニウム((NH4)2SiF6)の生成が促進される。その結果、エッチング中に副生成物が開口の側壁又は底に堆積することによって、エッチングが深さ方向に直線的に進まなくなる。これにより、開口の側壁が曲がるため、開口の形状不良が発生し得る。しかしながら、処理ガスにホウ素含有ガスが含まれていると、副生成物の生成が抑制され、副生成物の分解が促進される。したがって、副生成物に起因する開口の形状不良が抑制される。
【0059】
ホウ素含有ガスが、副生成物の生成を抑制するメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。ホウ素含有ガスはフッ素原子をスカベンジする機能を有する。その結果、副生成物のケイフッ化アンモニウムの生成反応が進まないため、副生成物の生成が抑制される。
【0060】
ホウ素含有ガスが、副生成物の分解を促進するメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。ホウ素含有ガスは副生成物の分解反応の活性化エネルギーを下げるので、副生成物の分解が促進される。
【0061】
リン含有ガスが、副生成物の生成を促進するメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。SiNとリン含有ガスとの反応によって、開口の側壁又は底に過剰なNH3が残存する。その結果、SiNとNH3とフッ素含有ガスとの反応によってケイフッ化アンモニウムが生成する。
【0062】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0063】
例えば、方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、プラズマ処理装置1以外の容量結合型のプラズマ処理装置であってもよい。或いは、方法MTにおいて用いられるプラズマ処理装置は、容量結合型以外のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。そのようなプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ処理装置、又はマイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置等であってもよい。
【0064】
また、プラズマ処理装置は、高周波電力LFを下部電極18に供給するバイアス電源64に加えて、負極性の直流電圧のパルスを断続的に又は周期的に下部電極18に印加するように構成された別のバイアス電源を備えていてもよい。
【0065】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0066】
(第1~第4の実験)
【0067】
図5は、開口の形状不良の程度を評価するための一例の基板の部分拡大断面図である。
図5に示される基板Wのシリコン含有膜SFには開口(凹部)OPが形成される。開口OPの中心基準線CLは、開口OPの上端における開口OPの幅の中点MPを通る。中心基準線CLからの中点MPのずれ量を開口OPの深さ方向に沿って測定することによって、開口OPの形状不良(撚れ又は捩れ)の程度を評価することができる。
【0068】
第1~第4の実験では、
図2に示した基板Wと同一の構造を有する複数のサンプル基板を準備した。複数のサンプル基板の各々は、シリコン含有膜及び当該シリコン含有膜上に設けられたマスクを有していた。シリコン含有膜は、交互に積層された複数のシリコン酸化膜と複数のシリコン窒化膜を有する多層膜であった。各シリコン窒化膜及び各シリコン酸化膜の厚さは数十nm程度であった。マスクは、アモルファスカーボン膜から形成されたマスクであった。第1~第4の実験の各々では、
図3のプラズマ処理装置1と同一の構造を有するプラズマ処理装置を用いて処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。
【0069】
第1の実験で用いた処理ガスは、38%のH2ガス、11%のハロゲン含有ガス、20%のCvFwガス、31%のO2ガスを含んでいた。第2の実験で用いた処理ガスは、35%のH2ガス、10%のハロゲン含有ガス、18%のCvFwガス、29%のO2ガス、8%のPF3ガスを含んでいた。各百分率は、処理ガスの流量(単位:sccm)に対する各ガスの流量(単位:sccm)の割合を示す。第1及び第2の実験において、基板支持器14の温度は-40℃であった。第3の実験で用いた処理ガスは、第1の実験の処理ガスと同じであった。第4の実験で用いた処理ガスは、第2の実験の処理ガスと同じであった。第3及び第4の実験において、基板支持器14の温度は-70℃であった。第1~第4の実験の各々の他の条件を以下に示す。
<第1~第4の実験の各々の他の条件>
チャンバ10内のガスの圧力:20mTorr(2.7Pa)
【0070】
第1~第4の実験の各々では、シリコン含有膜のエッチングを行った後、
図5に示されるように、開口OPの幅の中点MPの中心基準線CLからのずれ量を求めた。結果を
図6及び
図7に示す。
図6は、第1及び第2の実験の結果を示すグラフである。
図7は、第3及び第4の実験の結果を示すグラフである。
図6に示されるように、第2の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE2の最大ずれ量(22nm)は、第1の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE1の最大ずれ量(14nm)よりも大きかった。よって、処理ガスにリン含有ガスが含まれると、開口OPの形状不良の程度が悪化し得ることが分かった。
【0071】
また、
図6及び
図7に示されるように、第3の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE3の最大ずれ量(58nm)は、第1の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE1の最大ずれ量(14nm)よりも大きかった。第4の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE4の最大ずれ量(50nm)は、第2の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE2の最大ずれ量(22nm)よりも大きかった。よって、基板支持器14の温度が低くなると、開口OPの形状不良の程度が悪化することが分かった。
【0072】
(第5~第13の実験)
【0073】
第5~第13の実験では、第1~第4の実験で準備したサンプル基板と同じサンプル基板を準備した。第5~第13の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。第5の実験で用いた処理ガスは、96%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、3%のPF3ガスを含んでいた。第6の実験で用いた処理ガスは、91%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、6%のBCl3を含んでいた。第7の実験で用いた処理ガスは、92%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、5%のSiCl4を含んでいた。第8の実験で用いた処理ガスは、88%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、9%のCl2を含んでいた。第9の実験で用いた処理ガスは、90%のフッ素含有ガス、2%のC4F8、2%のPF3ガス、6%のBCl3を含んでいた。第10の実験で用いた処理ガスは、92%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、5%のBCl3を含んでいた。第11の実験で用いた処理ガスは、94%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、3%のBCl3を含んでいた。第12の実験で用いた処理ガスは、95%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、2%のBCl3を含んでいた。第13の実験で用いた処理ガスは、96%のフッ素含有ガス、1%のC4F8、2%のPF3ガス、1%のBCl3を含んでいた。第5~第13の実験の各々の他の条件を以下に示す。
<第5~第13の実験の各々の他の条件>
チャンバ10内のガスの圧力:27mTorr(3.6Pa)
基板支持器14の温度:-70℃
【0074】
第5~第13の実験の各々では、シリコン含有膜のエッチングを行った後、
図5に示されるように、開口OPの幅の中点MPの中心基準線CLからのずれ量を求めた。結果を
図8及び
図9に示す。
図8は、第5~第8の実験の結果を示すグラフである。
図8に示されるように、第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6の最大ずれ量(18nm)は、第5の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE5の最大ずれ量(38nm)よりも小さかった。よって、処理ガスにBCl
3を追加すると、開口OPの形状不良の程度が改善することが分かった。一方、第7の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE7の最大ずれ量(51nm)は、第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6の最大ずれ量(18nm)より大きかった。第8の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE8の最大ずれ量(26nm)は、第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6の最大ずれ量(18nm)より大きかった。第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6のずれ幅(18nm)は、第8の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE8のずれ幅(40nm程度)よりも小さかった。ずれ幅は、各プロファイルE6,E8のずれ量が変化する範囲に相当する。よって、処理ガスにBCl
3を追加すると、処理ガスにSiCl
4又はCl
2を追加する場合に比べて、開口OPの形状不良の程度が改善することが分かった。
【0075】
図9は、第5~第6及び第9~第13の実験の結果を示すグラフである。
図9に示されるように、第9の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE9の最大ずれ量(8.2nm)は、第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6の最大ずれ量(18nm)よりも小さかった。C
4F
8は、開口OPの形状不良の調整のために添加された。C
4F
8の添加により形状不良を調整した上でBCl
3を添加しても、開口OPの形状不良の程度を改善できる。また、第10の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE10の最大ずれ量(5.2nm)は、第6の実験における中点MPのずれ量を示すプロファイルE6の最大ずれ量(18nm)よりも小さかった。したがって、処理ガスの流量に対するBCl
3の流量の割合が例えば1%と少なくても、開口OPの形状不良の程度が改善することが分かった。
【0076】
(第14の実験)
【0077】
第14の実験では、複数のサンプル基板を準備した。各サンプル基板は、シリコン酸化膜を有していた。第14の実験では、プラズマ処理装置1を用いてBCl3を含む処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板のシリコン酸化膜をエッチングした。第14の実験では、処理ガスの流量に対するBCl3の流量の割合を0%、1%、2%、6%又は13%として各サンプル基板のシリコン酸化膜をエッチングした。基板支持器14の温度は-70℃であった。
【0078】
第14の実験では、シリコン酸化膜のエッチングを行った後、シリコン酸化膜のエッチングレートを求めた。結果を
図10に示す。
図10は、第14の実験の結果を示すグラフである。
図10に示されるように、BCl
3流量の割合が減少するに連れて、シリコン酸化膜のエッチングレートが大きくなることが分かった。
【0079】
(第15の実験)
【0080】
第15の実験では、複数のサンプル基板を準備した。各サンプル基板は、シリコン窒化膜を有していた。第15の実験では、プラズマ処理装置1を用いてBCl3を含む処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板のシリコン窒化膜をエッチングした。第15の実験では、処理ガスの流量に対するBCl3の流量の割合を0%、1%、2%、6%又は13%として各サンプル基板のシリコン窒化膜をエッチングした。基板支持器14の温度は-70℃であった。
【0081】
第15の実験では、シリコン窒化膜のエッチングを行った後、シリコン窒化膜のエッチングレートを求めた。結果を
図11に示す。
図11は、第15の実験の結果を示すグラフである。
図11に示されるように、BCl
3流量の割合が減少しても、シリコン窒化膜のエッチングレートが殆ど変わらないことが分かった。
【0082】
(第16~第18の実験)
【0083】
第16~第18の実験では、第1~第4の実験で準備した複数のサンプル基板と同じ複数のサンプル基板を準備した。第16~第18の実験の各々では、プラズマ処理装置1を用いて処理ガスからプラズマを生成してサンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。第16の実験で用いた処理ガスは、8%のCl2、4%のC4F8及び88%のその他のガスを含んでおり、BCl3を含んでいなかった。第17の実験で用いた処理ガスは、8%のCl2、4%のC4F8、5%のBCl3及び83%のその他のガスを含んでいた。第18の実験で用いた処理ガスは、5%のBCl3、5%のC4F8及び90%のその他のガスを含んでおり、Cl2を含んでいなかった。第16~第18の実験において、基板支持器14の温度は-40℃であった。
【0084】
第16~第18の実験の各々では、エッチングによりシリコン含有膜SFに形成された円形の開口OPの上面を観察した。結果を
図12に示す。
図12の(a)~(c)はそれぞれ第16~第18の実験の結果を示す図である。
図12に示されるように、第17の実験における開口OPの真円度は、第16の実験における開口OPの真円度に比べて改善していた。第18の実験における開口OPの真円度は、第17の実験における開口OPの真円度に比べて改善していた。よって、処理ガスにBCl
3を追加すると、真円度が改善することが分かった。また、処理ガスがCl
2を含まないと、真円度が更に改善することが分かった。
【0085】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0086】
10…チャンバ、14…基板支持器、W…基板、SF…シリコン含有膜。