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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20241003BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H05K3/46 H
H05K1/02 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022055565
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147839
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】久保 昇
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 正人
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-119654(JP,A)
【文献】特開2005-101366(JP,A)
【文献】特開2003-204209(JP,A)
【文献】特開平06-037454(JP,A)
【文献】特開2007-158675(JP,A)
【文献】特開2021-108359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0217830(US,A1)
【文献】国際公開第2014/115578(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子部品が実装されることになる配線基板であって、
第1の接地導体層と、
前記第1の接地導体層に接する第1のセラミック絶縁層と、
前記第1のセラミック絶縁層に接する第2の接地導体層と、
前記第2の接地導体層に接する第2のセラミック絶縁層と、
前記第2のセラミック絶縁層に接する第3の接地導体層と、
を厚み方向において順に備え、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層から離れた第1の信号ビア電極と、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記厚み方向において前記第1の信号ビア電極に連結され、前記第2の接地導体層および前記第3の接地導体層から離れた第2の信号ビア電極と、
前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、平面視において前記第1の信号ビア電極から離れた複数の第1の接地ビア電極と、
前記第2の接地導体層と前記第3の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極から離れた複数の第2の接地ビア電極と、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第1の信号ビア電極と前記複数の第1の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第1の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第1の空洞ビアと、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極と前記複数の第2の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第2の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第2の空洞ビアと、
をさらに備え、
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、
前記第3の接地導体層に接する第3のセラミック絶縁層と、
前記第3のセラミック絶縁層に接する第4の接地導体層と、
を前記厚み方向において順にさらに備え、
前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通し、前記厚み方向において前記第2の信号ビア電極に連結され、前記第3の接地導体層および前記第4の接地導体層から離れた第3の信号ビア電極と、
前記第3の接地導体層と前記第4の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第3の信号ビア電極から離れた複数の第3の接地ビア電極と、
前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第3の信号ビア電極と前記複数の第3の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第3の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第3の空洞ビアと、
をさらに備え、
前記平面視において、前記複数の第3の空洞ビアの各々は、前記複数の第2の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第2の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、かつ前記複数の第1の空洞ビアと少なくとも部分的に重なって配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと50%より大きな面積で重なっている、配線基板。
【請求項2】
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから外れて配置されている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記平面視において前記第1の信号ビア電極の中心と、前記複数の第1の接地ビア電極のうち前記第1の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第1の空洞ビアは配置されておらず、
前記第2の信号ビア電極の中心と、前記複数の第2の接地ビア電極のうち前記第2の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第2の空洞ビアは配置されていない、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記配線基板は、配線パターンを有する被実装部材へ表面実装されることになる表面実装型パッケージであって、
前記少なくとも1つの電子部品から配線されることになる、前記第1の信号ビア電極に電気的に接続された配線層と、
前記配線層に少なくとも前記第1の信号ビア電極および前記第2の信号ビア電極を介して電気的に接続され、前記厚み方向において前記配線層からずらされて配置された外部電極層と、
をさらに備える、
請求項1からのいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電子部品は光通信用の電子部品を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記複数の第1の空洞ビアは6つ以下の空洞ビアであり、かつ、前記複数の第2の空洞ビアは6つ以下の空洞ビアである、
請求項1からのいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記複数の第1の空洞ビアは5つの空洞ビアであり、かつ、前記複数の第2の空洞ビアは5つの空洞ビアである、
請求項1からのいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記平面視において、前記第1の接地導体層は前記複数の第1の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっており、かつ、前記第2の接地導体層は前記複数の第2の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっている、
請求項1からのいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項9】
少なくとも1つの電子部品が実装されることになる配線基板であって、
第1の接地導体層と、
前記第1の接地導体層に接する第1のセラミック絶縁層と、
前記第1のセラミック絶縁層に接する第2の接地導体層と、
前記第2の接地導体層に接する第2のセラミック絶縁層と、
前記第2のセラミック絶縁層に接する第3の接地導体層と、
を厚み方向において順に備え、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層から離れた第1の信号ビア電極と、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記厚み方向において前記第1の信号ビア電極に連結され、前記第2の接地導体層および前記第3の接地導体層から離れた第2の信号ビア電極と、
前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、平面視において前記第1の信号ビア電極から離れた複数の第1の接地ビア電極と、
前記第2の接地導体層と前記第3の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極から離れた複数の第2の接地ビア電極と、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第1の信号ビア電極と前記複数の第1の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第1の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第1の空洞ビアと、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極と前記複数の第2の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第2の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第2の空洞ビアと、
をさらに備え、
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、
前記平面視において前記第1の信号ビア電極の中心と、前記複数の第1の接地ビア電極のうち前記第1の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第1の空洞ビアは配置されておらず、
前記第2の信号ビア電極の中心と、前記複数の第2の接地ビア電極のうち前記第2の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第2の空洞ビアは配置されていない、配線基板。
【請求項10】
少なくとも1つの電子部品が実装されることになる配線基板であって、
第1の接地導体層と、
前記第1の接地導体層に接する第1のセラミック絶縁層と、
前記第1のセラミック絶縁層に接する第2の接地導体層と、
前記第2の接地導体層に接する第2のセラミック絶縁層と、
前記第2のセラミック絶縁層に接する第3の接地導体層と、
を厚み方向において順に備え、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層から離れた第1の信号ビア電極と、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記厚み方向において前記第1の信号ビア電極に連結され、前記第2の接地導体層および前記第3の接地導体層から離れた第2の信号ビア電極と、
前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、平面視において前記第1の信号ビア電極から離れた複数の第1の接地ビア電極と、
前記第2の接地導体層と前記第3の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極から離れた複数の第2の接地ビア電極と、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第1の信号ビア電極と前記複数の第1の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第1の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第1の空洞ビアと、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極と前記複数の第2の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第2の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第2の空洞ビアと、
をさらに備え、
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、
前記配線基板は、配線パターンを有する被実装部材へ表面実装されることになる表面実装型パッケージであって、
前記少なくとも1つの電子部品から配線されることになる、前記第1の信号ビア電極に電気的に接続された配線層と、
前記配線層に少なくとも前記第1の信号ビア電極および前記第2の信号ビア電極を介して電気的に接続され、前記厚み方向において前記配線層からずらされて配置された外部電極層と、
をさらに備える、配線基板。
【請求項11】
少なくとも1つの電子部品が実装されることになる配線基板であって、
第1の接地導体層と、
前記第1の接地導体層に接する第1のセラミック絶縁層と、
前記第1のセラミック絶縁層に接する第2の接地導体層と、
前記第2の接地導体層に接する第2のセラミック絶縁層と、
前記第2のセラミック絶縁層に接する第3の接地導体層と、
を厚み方向において順に備え、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層から離れた第1の信号ビア電極と、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記厚み方向において前記第1の信号ビア電極に連結され、前記第2の接地導体層および前記第3の接地導体層から離れた第2の信号ビア電極と、
前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、平面視において前記第1の信号ビア電極から離れた複数の第1の接地ビア電極と、
前記第2の接地導体層と前記第3の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極から離れた複数の第2の接地ビア電極と、
前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第1の信号ビア電極と前記複数の第1の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第1の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第1の空洞ビアと、
前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通し、前記平面視において前記第2の信号ビア電極と前記複数の第2の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第2の信号ビア電極から別々の方向へ離された3つ以上の複数の第2の空洞ビアと、
をさらに備え、
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、
前記平面視において、前記第1の接地導体層は前記複数の第1の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっており、かつ、前記第2の接地導体層は前記複数の第2の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっている、配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関し、特に、セラミックス絶縁層およびそれを貫通する信号ビア電極を含む配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2004-119654号公報(特許文献1)は、積層セラミック技術を用いて製造される半導体素子収納用パッケージを開示している。半導体素子収納用パッケージは基体を有している。前記基体は、複数の絶縁層が積層されて成る絶縁基体を有している。前記絶縁基体の上面には、半導体素子が載置される載置部と、該載置部の周囲に形成された略円形の上面電極とが設けられている。前記絶縁基体の下面には、前記上面電極に対向する略円形の下面電極と、該下面電極の周囲に前記下面電極の中心に略同心状に形成された円環状の導体非形成部と、該導体非形成部の周囲に形成された接地導体層とが設けられている。半導体素子収納用パッケージはさらに、前記上面電極および前記下面電極を電気的に接続する貫通導体と、前記基体の内部に形成された内層導体層と、を有している。前記内層導体層は、前記導体非形成部の外周により形成された円の内側領域を底面とする円筒領域の外側に位置している。前記絶縁基体の内部には、前記導体非形成部から上方に向けて、上端が前記上面と前記内層導体層との間に位置するようにして前記円筒領域の軸方向に略平行な複数の穴が形成されている。上記公報における主張によれば、前記複数の穴が形成されることによって、内層導体層および接地導体層を有する構成と、上面電極、下面電極および貫通導体を有する構成と、の間で発生する浮遊容量を低減させることができ、これによって、貫通導体等の伝送路からの高周波信号の漏れを防ぐことができる。
【0003】
一方、高周波伝送に適した伝送路として、同軸ケーブルに代表されるように、同軸構造を有する伝送路が広く用いられている。同軸構造は、伝送路の延在方向に垂直な断面視において、内部導体(芯線)と、絶縁体を介してそれを円環状に取り囲む外部導体とを有している。しかしながら、積層セラミック技術を用いて製造されるパッケージの厚み方向に沿って、理想的な同軸構造を設けることは、その製造方法上困難である。そこで、同軸構造ほどに軸対称性を有しないもののそれに近い構造を有する疑似同軸構造が設けられることがある。積層セラミック技術における典型的な疑似同軸構造においては、同軸構造の内部導体に対応するものとして、厚み方向(積層方向)において互いに連結された信号ビア電極が用いられる。また、外部導体に対応するものとして、信号ビア電極の周りを離散的に囲む複数の接地ビア電極が用いられる。同一層内に配置された複数の接地ビア電極は共通の接地導体層に接する。
【0004】
特開2007-201479号公報(特許文献2)は、マイクロ波帯・ミリ波帯といった高周波の伝送特性を良好なものすることが意図された高周波信号伝送用積層構造と、それを用いた高周波半導体パッケージとを開示している。高周波信号伝送用積層構造は、4層以上の誘電体層が積層されることによって構成された積層基板を有している。誘電体層は、最上層と、最下層と、これらの間の内層とを有している。高周波信号伝送用積層構造はさらに、最上層に設けられた信号配線導体と、最下層に設けられた信号配線導体と、最上層上の信号配線導体の一端と最下層上の信号配線導体の一端とをつなぐ信号経路とを有している。当該信号経路は、信号用貫通導体(信号ビア電極)を含む。高周波信号伝送用積層構造はさらに、内層に部分的に設けられた内層接地導体(接地導体層)と、接地用貫通導体(接地ビア電極)とを有している。また当該公報は、前記高周波信号伝送用積層構造と、その積層基板上の枠体および蓋体とを有する高周波半導体パッケージを開示している。高周波半導体パッケージには高周波半導体素子が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-119654号公報
【文献】特開2007-201479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配線基板において、上記特開2007-201479号公報に開示されているような疑似同軸構造を用いての信号伝送は、同軸構造の場合と同様に、Transverse Electro Magnetic(TEM)モードで行われる。TEMモードを用いて良好に信号を伝送することが可能な信号周波数には周波数上限がある。この上限を信号周波数が超えると、TEモードまたはTMモードのような高次モードが発生し、その結果、良好な信号伝送が困難となる。疑似同軸構造における絶縁体としてのセラミック材料として誘電率の低いものを選択すれば、この周波数上限を高めることができる。しかしながら、機械的強度のような他条件の制約があり、セラミック材料の単純な選択によって誘電率を低減することには限界がある。そこで、絶縁体中に空洞を形成することによって、当該空洞およびその周辺での平均的な誘電率、すなわち実効誘電率、を低減させることが考えられる。しかしながら、上記特開2004-119654号公報に記載されているように単純に空洞を形成すると、高周波伝送特性は高められるかもしれないものの、配線基板の機械的強度、または焼成されることによって配線基板となる仕掛かり品の機械的強度が、当該空洞部に起因して過小となりやすい。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高周波伝送特性を高めつつ、機械的強度が過小となることを避けることができる配線基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様による配線基板は、少なくとも1つの電子部品が実装されることになるものである。前記配線基板は、第1の接地導体層と、前記第1の接地導体層に接する第1のセラミック絶縁層と、前記第1のセラミック絶縁層に接する第2の接地導体層と、前記第2の接地導体層に接する第2のセラミック絶縁層と、前記第2のセラミック絶縁層に接する第3の接地導体層と、を厚み方向において順に備えている。前記配線基板はさらに、第1の信号ビア電極と、第2の信号ビア電極と、複数の第1の接地ビア電極と、複数の第2の接地ビア電極と、3つ以上の複数の第1の空洞ビアと、3つ以上の複数の第2の空洞ビアと、を備えている。前記第1の信号ビア電極は、前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通しており、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層から離れている。前記第2の信号ビア電極は、前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通しており、前記厚み方向において前記第1の信号ビア電極に連結されており、前記第2の接地導体層および前記第3の接地導体層から離れている。前記複数の第1の接地ビア電極は、前記第1の接地導体層と前記第2の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通しており、平面視において前記第1の信号ビア電極から離れている。前記複数の第2の接地ビア電極は、前記第2の接地導体層と前記第3の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通しており、前記平面視において前記第2の信号ビア電極から離れている。前記複数の第1の空洞ビアは、前記厚み方向において前記第1のセラミック絶縁層を貫通しており、前記平面視において前記第1の信号ビア電極と前記複数の第1の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第1の信号ビア電極から別々の方向へ離されている。前記複数の第2の空洞ビアは、前記厚み方向において前記第2のセラミック絶縁層を貫通しており、前記平面視において前記第2の信号ビア電極と前記複数の第2の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第2の信号ビア電極から別々の方向へ離されている。前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっている。
【発明の効果】
【0009】
上記態様に係る配線基板によれば、第1に、前記配線基板の絶縁体部分を構成する前記第1のセラミック絶縁層および前記第2のセラミック絶縁層に前記複数の第1の空洞ビアおよび前記第2の複数の空洞ビアが設けられることによって、絶縁体部分の実効誘電率が低減される。これにより、前記配線基板の高周波伝送特性を高めることができる。第2に、前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第2の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっている。これにより、前記複数の第1の空洞ビアから厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を前記複数の第2の空洞ビアのいずれかが形成することが避けられるか、または、当該空洞部が形成されるにしても平面視におけるその面積が抑制される。よって、平面視において大きな面積を有する空洞部が、前記第1のセラミック絶縁層と前記第2のセラミック絶縁層との総厚みに相当する大きな長さにわたって前記厚み方向に沿って連続的に延びることが避けられる。よって、前記配線基板または焼成されることによって前記配線基板となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。以上から、高周波伝送特性を高めつつ、前記配線基板または焼成されることによって前記配線基板となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。
【0010】
前記平面視において、前記複数の第2の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアから外れて配置されていてよい。これにより、前記第1の空洞ビアから厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を前記第2の空洞ビアが形成することが避けられる。よって、前記第1の空洞部の長さと前記第2の空洞部の長さとの合計に相当する大きな長さにわたって前記厚み方向に沿って空洞部が連続的に延びることが避けられる。よって、前記配線基板または焼成されることによって前記配線基板となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを、より十分に防止することができる。
【0011】
前記配線基板はさらに、前記第3の接地導体層に接する第3のセラミック絶縁層と、前記第3のセラミック絶縁層に接する第4の接地導体層と、を前記厚み方向において順に備えていてよい。前記配線基板はさらに、第3の信号ビア電極と、複数の第3の接地ビア電極と、3つ以上の複数の第3の空洞ビアと、を備えていてよい。前記第3の信号ビア電極は、前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通しており、前記厚み方向において前記第2の信号ビア電極に連結されており、前記第3の接地導体層および前記第4の接地導体層から離れている。前記複数の第3の接地ビア電極は、前記第3の接地導体層と前記第4の接地導体層とをつなぐように前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通しており、前記平面視において前記第3の信号ビア電極から離れている。前記複数の第3の空洞ビアは、前記厚み方向において前記第3のセラミック絶縁層を貫通しており、前記平面視において前記第3の信号ビア電極と前記複数の第3の接地ビア電極との最短距離よりも小さい距離で前記第3の信号ビア電極から別々の方向へ離されている。前記平面視において、前記複数の第3の空洞ビアの各々は、前記複数の第2の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第2の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっており、かつ前記複数の第1の空洞ビアと少なくとも部分的に重なって配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと50%より大きな面積で重なっている。以上の構成によれば、第1に、前記平面視において前記複数の第3の空洞ビアの各々が、前記複数の第2の複数の空洞ビアから少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第2の空洞ビアと0%以上50%以下の面積で重なっている。これにより、前記複数の第2の空洞ビアから厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を前記複数の第3の空洞ビアのいずれかが形成することが避けられるか、または、当該空洞部が形成されるにしても平面視におけるその面積が抑制される。よって、平面視において大きな面積を有する空洞部が、前記第2のセラミック絶縁層と前記第3のセラミック絶縁層との総厚みに相当する大きな長さにわたって前記厚み方向に沿って連続的に延びることが避けられる。よって、前記配線基板または焼成されることによって前記配線基板となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。第2に、前記平面視において前記複数の第3の空洞ビアの各々は、前記複数の第1の空洞ビアと少なくとも部分的に重なって配置されており、かつ前記複数の第3の空洞ビアの各々の面積を基準として前記複数の第1の空洞ビアと50%より大きな面積で重なっている。これにより、前記複数の第3の空洞ビアの配置を、前記複数の第1の空洞ビアの配置に近いもの、または実質的に同じものとすることができる。
【0012】
前記平面視において前記第1の信号ビア電極の中心と、前記複数の第1の接地ビア電極のうち前記第1の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第1の空洞ビアは配置されている必要はなく、前記第2の信号ビア電極の中心と、前記複数の第2の接地ビア電極のうち前記第2の信号ビア電極に最も近いものの中心とを結ぶ直線上には、前記複数の第2の空洞ビアは配置されている必要はない。これにより、第1に、前記複数の第1の接地ビア電極を前記第1の信号ビア電極の近く配置することによって疑似同軸構造の高周波伝送特性を高めつつ、前記第1の信号ビア電極の中心と、前記複数の第1の接地ビア電極のうち前記第1の信号ビア電極に最接近しているものの中心とを結ぶ直線上に前記複数の第1の空洞ビアが配置されていないことによって、この最接近している第1の接地ビア電極と、前記複数の第1の空洞ビアとの間の最短距離が過小となることが避けられる。よって、当該最短距離が過小であることに起因して機械的強度が過小となることを避けることができる。第2に、前記複数の第2の接地ビア電極を前記第2の信号ビア電極の近く配置することによって疑似同軸構造の高周波伝送特性を高めつつ、前記第2の信号ビア電極の中心と、前記複数の第2の接地ビア電極のうち前記第2の信号ビア電極に最接近しているものの中心とを結ぶ直線上に前記複数の第2の空洞ビアが配置されていないことによって、この最接近している第2の接地ビア電極と、前記複数の第2の空洞ビアとの間の最短距離が過小となることが避けられる。よって、当該最短距離が過小であることに起因して機械的強度が過小となることを避けることができる。
【0013】
前記配線基板は、配線パターンを有する被実装部材へ表面実装されることになる表面実装型パッケージであってよく、配線層と、外部電極層とをさらに備えていてよい。前記配線層は、前記少なくとも1つの電子部品から配線されることになるものであって、前記第1の信号ビア電極に電気的に接続されている。前記外部電極層は、前記配線層に少なくとも前記第1の信号ビア電極および前記第2の信号ビア電極を介して電気的に接続されており、前記厚み方向において前記配線層からずらされて配置されている。この場合、前記配線層と前記外部電極層との間を互いにつなぐ電気的経路は、前記厚み方向にわたって延びる必要がある。このような電気的経路を前記配線基板は有することができる。
【0014】
前記少なくとも1つの電子部品は光通信用の電子部品を含んでよい。光通信用の電子部品の動作周波数は非常に高いことがあり、その場合、前記配線基板が有する優れた高周波伝送特性を活用することができる。
【0015】
前記複数の第1の空洞ビアは6つ以下の空洞ビアであってよく、かつ、前記複数の第2の空洞ビアは6つ以下の空洞ビアであってよい。これにより、前記複数の第1の空洞ビアおよび前記複数の第2の空洞ビアの各々の大きさをより大きくすることができる。よって、前記複数の第1の空洞ビアおよび前記複数の第2の空洞ビアにより実効誘電率を低減する効果を高めることができる。
【0016】
前記複数の第1の空洞ビアは5つの空洞ビアであってよく、かつ、前記複数の第2の空洞ビアは5つの空洞ビアであってよい。一般に、2つのビア構造間の距離が過小となると、機械的強度の低下が懸念される。これを勘案して、仮に、前記第1の信号ビア電極の中心から所定距離を空けて前記複数の第1の空洞ビアの中心を配置し、かつ、互いに隣接する前記複数の第1の空洞ビアの中心間も前記所定距離を空けて配置する、という設計条件が適用されたとする。その場合、前記第1の信号ビア電極の周りに前記第1の空洞ビアが6回対称で配置されるので、前記第1の空洞ビアの個数は6つである。同様の設計条件によれば、前記複数の第2の空洞ビアの個数も6つである。ここで、絶縁体部分の実効誘電率をより低減させるためには、各空洞ビアの直径は、ある程度大きいことが望まれ、これを勘案すると、上記の設計条件では、隣接する空洞ビア間の距離(言い換えれば、一方の空洞ビアの縁と、他方の空洞ビアの縁との間の距離)が過小となる。これを改める方法として、6回対称性を維持しつつ、前記第1の信号ビア電極の中心から前記複数の第1の空洞ビアの中心までの距離を、必要最小限に増大させるという設計思想も想定される。しかしながら本発明者らの詳細な検討によれば、前記複数の第1の空洞ビアの個数と、前記複数の第2の空洞ビアの個数と、の各々の個数を、6個ではなく5個に減じた方が、機械的強度を確保しつつも空洞ビアによって高周波伝送特性を高める効果を、より十分に得やすい。
【0017】
前記平面視において、前記第1の接地導体層は前記複数の第1の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっていてよく、かつ、前記第2の接地導体層は前記複数の第2の空洞ビアの各々を部分的にのみ縁どっていてよい。本発明者らによるシミュレーションによれば、前記第1の接地導体層および前記第2の接地導体層をこのように配置することによって、前記配線基板の前述した効果を確保しつつ、前記配線基板の特性インピーダンスを、標準的な特性インピーダンスである50Ωに容易に整合させることができる。
【0018】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態1における配線基板の構成を模式的に示す上面図である。
図2図1の配線基板が含む配線構造の構成を概略的に示す底面図である。
図3図2の配線構造を矢印III(図1)の向きで概略的に見た斜視図である。
図4図2の配線構造を矢印IV(図1)の向きで概略的に見た斜視図である。
図5図1の配線基板において信号配線が延びる様子を示す模式図である。
図6図1の配線基板において接地配線が延びる様子を示す模式図である。
図7】同軸構造のTEMモードにおける電界を示す模式図である。
図8】同軸構造のTE11モードにおける電界を示す模式図である。
図9図2図4の配線構造が有する疑似同軸構造の、図10の線IX-IXに沿った部分断面図である。
図10図9の線X-Xに沿った部分断面図である。
図11図9の第1の積層単位の構成を概略的に示す部分平面図である。
図12図9の第2の積層単位の構成を概略的に示す部分平面図である。
図13】第1の積層単位の構成を点線で、第2の積層単位の構成を実線で、概略的に示す部分平面図である。
図14】信号ビア電極と空洞ビアとの間の距離と、隣接する空洞ビア間の距離と、について説明する部分平面図である。
図15】信号ビア電極の配置を基準としての複数の空洞ビアの配置と、信号ビア電極および複数の空洞ビアの配置を基準としての接地ビア電極の配置と、について説明する部分平面図である。
図16図13の第1の変形例を示す部分平面図である。
図17図13の第2の変形例を示す部分平面図である。
図18】シミュレーション用のモデルを示す平面図である。
図19図18の線XIX-XIXに沿う断面斜視図である。
図20図18の線XIX-XIXに沿う断面図である。
図21図18図20のモデルの通過特性のシミュレーション結果を、比較例と共に示すグラフ図である。
図22図18図20のモデルの反射特性のシミュレーション結果を、比較例と共に示すグラフ図である。
図23図18図20のモデルのインピーダンス特性のシミュレーション結果を、比較例と共に示すグラフ図である。
図24】実施の形態2における配線基板において信号配線が延びる様子を示す模式図である。
図25】実施の形態2における配線基板において接地配線が延びる様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図面間での方向関係を理解しやすくするために、いくつかの図にはXYZ直交座標が示されている。また平面視は、厚み方向に垂直な平面への射影を意味する。言い換えれば、厚み方向は、平面視に垂直な方向である。上記XYZ直交座標系によれば、厚み方向はZ方向(具体的にはマイナスZ方向)に対応し、厚み方向に垂直な平面はXY面に対応する。
【0021】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態におけるパッケージ801(配線基板)を模式的に示す上面図である。パッケージ801は高周波モジュールを製造するためのものである。パッケージ801は、枠体FLと、枠体FLに囲まれたキャビティCVとを有している。キャビティCVは、実装領域RMおよび端子領域RTを有する底部を有している。パッケージ801には、少なくとも1つの電子部品900が実装されることになる。具体的には、キャビティCVにおいて実装領域RM上には少なくとも1つの電子部品900が実装されることになる。キャビティCVが閉じられた空間となるように枠体FL上に蓋体(図示せず)を取り付けることによって、電子部品900が外部環境から封止される。これにより電子部品900を外部環境から保護することができる。
【0022】
電子部品900はIC(集積回路)を含んでいてよい。ICが外部(他の高周波回路など)と送受信する信号の周波数帯域の上限は65GHz以上であってよい。また電子部品900は、光通信用の電子部品を含んでいてよく、その場合、パッケージ801は、光モジュールを製造するための光パッケージである。光通信用の電子部品は、典型的には光半導体素子であり、例えば、光源用のレーザーダイオードまたは光検出用のフォトダイオードである。光パッケージとしてのパッケージ801は、パッケージ801の外部に配置された光ファイバ(図示せず)からの光を受けるためまたは光ファイバへ光を送るための経路を確保するために、枠体FLに開口部OPを有している。なお開口部OPを封止する透光性部材が取り付けられていてもよい。
【0023】
信号端子SI1~SI4(信号用の配線層)および接地端子GI1~GI3(接地用の配線層)は、実装領域RM上に実装された少なくとも1つの電子部品900から、例えばワイヤボンディングなどによって、配線されることになる。これにより電子部品900は、パッケージ801に含まれる配線構造701を介して、パッケージ801の外部環境と電気的に接続可能とされる。配線構造701は、パッケージ801の外部へ露出された信号リードSO1~SO4(外部接続端子)と、パッケージ801の外部へ露出された接地リードGO1~GO3(第1~第3の接地電極)と、キャビティCV内の信号端子SI1~SI4と、キャビティCV内の接地端子GI1~GI3と、キャビティCV内のキャパシタC1~C4とを有している。
【0024】
信号リードSO1と信号端子SI1とは、信号配線WS1によって互いに接続されている。信号リードSO2と信号端子SI2とは、信号配線WS2によって互いに接続されている。信号リードSO3と信号端子SI3とは、信号配線WS3によって互いに接続されている。信号リードSO4と信号端子SI4とは、信号配線WS4によって互いに接続されている。信号配線WS1は、図5を参照して後述するが、水平導体層Q1と、外部電極層P1(図2)と、厚み方向においてこれらをつなぐ貫通導体T1とを有している。信号配線WS2~WS4も同様である。信号配線WS1~WS4のそれぞれは、直流の伝達を防止するためのキャパシタC1~C4を実装するための導体パターンを含んでいてよい。これら導体パターンへキャパシタC1~C4の各々がはんだBRを用いて実装され得る(図3および図4を参照)。接地リードG01~G03のそれぞれは、接地配線WGによって接地端子GI1~GI3に接続されている。接地配線WGは、図6を参照して後述するが、水平導体層QGと、外部電極層PGと、厚み方向においてこれらをつなぐ貫通導体TGとを有している。
【0025】
なお、キャパシタC1~C4は、パッケージ801に含まれていてよく、あるいは、パッケージ801へ実装されることになるものであってよい。また、キャパシタC1~C4は、必ずしも必要ではなく、変形例として省略されてよい。キャパシタC1~C4が省略された箇所は、信号配線WS1~WS4が連続して延びることによって短絡されていてよい。
【0026】
信号リードSO1および信号端子SI1を有する信号配線WS1と、信号リードSO2および信号端子SI2を有する信号配線WS2とは、第1の差動配線を構成している。また、信号リードSO3および信号端子SI3を有する信号配線WS3と、信号リードSO4および信号端子SI4を有する信号配線WS4とは、第2の差動配線を構成している。よって、第1の差動配線は信号リードSO1,SO2および信号端子SI1,SI2を有しており、第2の差動配線は、信号リードSO3,SO4および信号端子SI3,SI4を有している。なお本実施の形態の配線構造701は上記のように2つの差動配線を有しているが、差動配線の数は特定の数に限定されるものではない。
【0027】
図2は、配線構造701の構成を概略的に示す底面図である。また図3および図4のそれぞれは、配線構造701を矢印IIIおよびIV(図1)の向きで概略的に見た斜視図である。各図には、互いに直交する方向X、YおよびZを有する直交座標系が示されている。配線構造701は、上述した部材に加えてさらに、積層体LBと、金属ベース板10とを有している。なお、図を見やすくするために、下面SB上および端子領域RT上の配線パターン(図2図4)が占める面的な領域にドットが付されている。
【0028】
積層体LBは,積層セラミック技術を用いて形成されている。具体的には、積層体LBは、アルミナなどの誘電体セラミックスからなる複数のセラミック絶縁層LIと、導体からなり適宜パターニングされた複数の導体層LMとが交互に積層されることによって形成されている。導体層LMの各々のパターンは、詳しくは後述するように、接地電位とされる部分と、信号電位とされる部分とを有していてよく、これらの部分は互いに分離されている。積層体LBは、下面SBと、枠体FL(図1)の外周面および内周面のそれぞれをなす側面SOおよび側面SI(第1の側面および第2の側面)と、枠体FLの上面をなす上面STとを有していてよい。
【0029】
本実施の形態においては、積層体LBの積層数が、XY面における場所によって異なっている。具体的には、枠体FL(図1参照)の積層数に比して、端子領域RTの積層数の方が少なくなっている。これにより端子領域RTは、枠体FLの内側に張り出したテラス形状を有している。このテラス形状の表面(図3および図4における上面)は、セラミック絶縁層LIと、その上に配置され、図3および図4においてドットが付されたパターンを有する導体層LMとから構成されている。
【0030】
積層体LBの下面SBには、外部電極層PG(図2)および外部電極層P1~P4(図2)が配置されている。信号リードSO1~SO4のそれぞれは、外部電極層P1~P4に接合されている。これにより信号リードSO1~SO4のそれぞれは、積層体LBの下面SBに外部電極層P1~P4を介して取り付けられている。接地リードGO1~GO3の各々は外部電極層PGに接合されている。これにより接地リードGO1~GO3の各々は、積層体LBの下面SBに外部電極層PGを介して取り付けられている。
【0031】
信号リードSO1~SO4の各々は、本実施の形態においては、平面レイアウト(すなわちXY面におけるレイアウト)において積層体LBの下面SBからX方向に向かって突出する突出電極である。また接地リードGO1~GO3は、本実施の形態においては、平面レイアウトにおいて積層体LBの下面SBからX方向に向かって突出する突出電極である。なお変形例として、平面視において下面SBから突出する上記のような突出電極に代わって、平面視において下面SBから突出しない非突出電極が用いられてもよい。例えば、Ball Grid Array(BGA:ボールグリッドアレイ)パッケージは、非突出電極としてのはんだボールを有する。またLand Grid Array(LGA:ランドグリッドアレイ)パッケージは、非突出電極としてのランドを有する。
【0032】
図5および図6のそれぞれは、配線構造701において信号配線WS1および接地配線WGが延びる様子を示す模式図である。信号配線WS1は、信号端子SI1から水平に(厚み方向に垂直に)延びる水平導体層Q1と、外部電極層P1と、貫通導体T1とを有している。外部電極層P1は水平導体層Q1から厚み方向においてずらされて配置されており、これらを厚み方向において貫通導体T1が互いにつないでいる。外部電極層P1には信号リードSO1に接合されている。よって、貫通導体T1が厚み方向において延びる範囲に対応して、外部電極層P1は厚み方向において信号端子SI1からずらされて配置されている。なお、外部電極層P2~P4(図2)をそれぞれ有する信号配線WS2~WS4も、信号配線WS1と同様の構成を有している。外部電極層P2~P4(図2)のそれぞれには、信号リードSO2~SO4が接合されている。接地配線WGは、水平導体層QGと、外部電極層PGと、厚み方向においてこれらをつなぐ貫通導体TGとを有している。外部電極層PGには、接地リードGO1(図2および図6)と、接地リードGO2~GO6(図6)とが接合されている。
【0033】
パッケージ801(図1)の配線構造701(図5および図6)は、被実装部材950へ表面実装されることになる。よってパッケージ801は、被実装部材950へ表面実装されることになる表面実装型パッケージである。具体的には、信号リードSO1は、被実装部材950が有する配線パターンPS1上に表面実装によって接合されることになる。信号リードSO2~SO4(図2)についても同様である。また接地リードGO1は、被実装部材950が有する配線パターンPG1上に表面実装によって接合されることになる。接地リードGO2~GO4(図2)についても同様である。
【0034】
信号配線WS1の貫通導体T1(図5)と、接地配線WGの貫通導体TG(図6)とは、厚み方向に延びる疑似同軸構造を有しており、これについての詳細は後述する。疑似同軸構造における高周波伝送特性は、理想的な同軸構造における高周波伝送特性によって、近似して見積もることができる。そこで、以下においてまず、同軸構造によって近似された高周波伝送特性について説明し、その後、配線構造701が有する疑似同軸構造について説明する。
【0035】
図7および図8のそれぞれは、同軸構造のTEMモードおよびTE11モードにおける電界を示す模式図である。図中、前述した貫通導体T1が同軸構造の内部導体によって近似されており、前述した貫通導体TGが同軸構造の外部導体によって近似されている。内部導体(貫通導体T1)は直径aを有しており、外部導体(貫通導体TG)は内径bを有している。同軸構造の外部導体の電位は基準電位(すなわち接地電位)とされ、同軸構造の内部導体の電位変化によって信号が伝送される。
【0036】
同軸構造によって伝送される信号の周波数が十分に低ければTEMモード(図7)での良好な信号伝送が可能である。一方で、周波数が過度に高くなると、高次モードが発生することに起因して信号伝送が困難となる。高次モードのうち最も低い周波数で発生するのがTE11モード(図8)であり、当該周波数がTEMモード伝送を良好に行える周波数の上限に対応する。よってこの周波数を、以下において遮断周波数fと称する。遮断周波数fは、真空中の光速c、内部導体と外部導体との間の絶縁体の比誘電率εを用いて、以下のように表される。
【0037】
【数1】
【0038】
一方、同軸構造の特性インピーダンスZは、さらに真空の誘電率εを用いて、以下のように表される。
【0039】
【数2】
【0040】
上記2つの式から、遮断周波数fは、以下のように表される。
【0041】
【数3】
【0042】
上式によれば、遮断周波数fは、直径a、比誘電率ε、および特性インピーダンスZの3つの変数に依存しており、遮断周波数fをより高くするためには、これら3つの変数のいずれかを低減すればよい。
【0043】
第1に、遮断周波数fを高める意図で特性インピーダンスZをより低減することは、特性インピーダンスの整合性の犠牲を伴う。ある程度そのような犠牲が許容される場合もしばしばあるが、そのような場合であっても、特性インピーダンスの不整合は、伝送特性の観点で、通常、数パーセント以内に抑えられる必要がある。特性インピーダンスの目標値が50Ωの場合、不整合が許容されるのは、例えば、47Ω程度までである。
【0044】
第2に、遮断周波数fを高める意図で内部導体(貫通導体T1)の直径aをより低減することは、生産性上の課題を伴う。このことについて、以下に説明する。積層体LBは、通常、最終的に焼成されることになるセラミックグリーンシートを積層することによって形成される。配線構造701の製造における貫通導体T1の形成は、機械加工またはレーザ加工によってセラミックグリーンシートに孔を形成する工程と、この孔に導体ペーストを充填する工程とを伴う。直径aが小さくされると、機械加工の場合においては、セラミックグリーンシートに突き刺されるピンの強度または寿命の確保が困難となる。またレーザ加工の場合においては、孔が厚み方向において過度にテーパ状になりやすいという問題がある。さらに、小さな孔への導体ペーストの充填性を確保するためには、導体ペーストの粘度、導体ペースト中に分散された粒子の大きさなどに制約があり、この制約が生産性の低下につながりやすい。セラミックグリーンシートの各々の厚みを小さくすれば、穴の形成および導体ペーストの充填は容易となるが、所望の配線構造701の厚みを確保するためのシート数が増大するので、生産性が低下する。また、直径aが過小な場合、電気抵抗の増加も懸念される。
【0045】
第3に、遮断周波数fを高める意図で絶縁体の比誘電率εを低減することは、それが単に絶縁材料の選択によって行われる場合、積層体LB(図3および図4参照)の機械的強度の低下につながりやすい。なぜならば、配線構造701においてこの絶縁体を構成するのはセラミック絶縁層LIであるところ、それをなすセラミック材料の誘電率を低減するには、通常、セラミック材料中のガラス成分量または気孔率を増加させる必要があるからである。積層体LBの機械的強度が不足すると、特に、積層体LBと金属部材(例えば、信号リードSO1~SO4および接地リードGO1~GO3)とを接合する工程、または、パッケージ801のキャビティCVを封止する工程において、問題を生じやすい。
【0046】
一方、セラミック絶縁層LIの絶縁材料の気孔率を増加させることにより比誘電率εを低減させることができることに類した原理で、セラミック絶縁層LI中の適当な箇所に複数の空洞ビアを配置することによっても、実効的な比誘電率εを低減させることができる。その場合、積層体LBの製造のためのセラミックグリーンシートに、信号ビア電極および接地ビア電極のためのビアだけでなく、空洞ビアも形成されることになる。本発明者らの検討によれば、単に空洞ビアを形成するのではなく、その配置を適切なものとすることによって、焼成工程前および焼成工程後における積層体LBの機械的強度が空洞ビアに起因して不十分となることが避けられる。このように適切な配置を有する空洞ビアが、本実施の形態における配線構造701の疑似同軸構造には配置される。
【0047】
図9は、配線構造701が有する疑似同軸構造の、図10の線IX-IXに沿った部分断面図である。図10は、図9の線X-Xに沿った部分断面図である。疑似同軸構造は、前述したように、信号配線WS1の貫通導体T1(図5参照)と、その周りに配置された接地配線WGの貫通導体TG(図6参照)とを有しており、厚み方向(図9における縦方向)に延びている。配線構造701(図5および図6)の疑似同軸構造は、図9に示された例においては、積層構造として積層単位L1~積層単位L6(第1~第6の積層単位)を含む。なお積層単位の数は、少なくとも2以上であり、好ましくは4以上である。図11および図12のそれぞれは、図9の積層単位L1および積層単位L2の構成を概略的に示す部分平面図である。図13は、積層単位L1の構成を点線で、積層単位L2の構成を実線で、概略的に示す部分平面図である。
【0048】
積層単位L1~L6(図9)のそれぞれはセラミック絶縁層LI1~LI6(第1~第6のセラミック絶縁層)を有している。また積層単位L1(図9)は、セラミック絶縁層LI1上に接地導体層LR1(第1の接地導体層)を有している。同様に積層単位L2~L6のそれぞれも、セラミック絶縁層LI2~LI6上に接地導体層LR2~LR6(第2~第6の接地導体層)を有している。また積層単位L1(図9)は、セラミック絶縁層LI1を厚み方向において貫通する信号ビア電極VS1(第1の信号ビア電極)を有している。同様に積層単位L2~L6のそれぞれも、セラミック絶縁層LI2~LI6を厚み方向において貫通する信号ビア電極VS2~VS6(第2~第6の信号ビア電極)を有している。また積層単位L1(図9)は、セラミック絶縁層LI1を厚み方向において貫通する複数の接地ビア電極VR1を有している。同様に積層単位L2~L6のそれぞれも、セラミック絶縁層LI2~LI6を厚み方向において貫通する複数の接地ビア電極VR2~VR6(第2~第6の接地ビア電極)を有している。また積層単位L1は、セラミック絶縁層LI1を厚み方向において貫通する複数の空洞ビアVG1(第1の空洞ビア)を有している。同様に積層単位L2~L6のそれぞれも、セラミック絶縁層LI2~LI6を厚み方向において貫通する複数の空洞ビアVG2~VG6(第2~第6の空洞ビア)を有している。また積層単位L1(図9および図11)は、例えば製造上の理由により、セラミック絶縁層LI1上において信号ビア電極VS1を取り巻く信号導体層LS1(図9および図11)を有していてよい。例えば信号導体層LS2は、信号ビア電極VS1と信号ビア電極VS2とを確実に接続するために設けられる。同様に積層単位L2~L6(図9)のそれぞれも、セラミック絶縁層LI2~LI6上において信号ビア電極VS2~VS6を取り巻く信号導体層LS2~LS6(図9)を有していてよい。なお、積層単位L1において、信号導体層LS1および接地導体層LR1は、1つの導体層LM(図3および図4)における互いに離れた部分に相当するものである。他の積層単位における信号導体層および接地導体層についても同様である。
【0049】
積層単位L1~L4において、図9に示されているように、接地導体層LR1と、接地導体層LR1に接するセラミック絶縁層LI1と、セラミック絶縁層LI1に接する接地導体層LR2と、接地導体層LR2に接するセラミック絶縁層LI2と、セラミック絶縁層LI2に接する接地導体層LR3と、接地導体層LR3に接するセラミック絶縁層LI3と、セラミック絶縁層LI3に接する接地導体層LR4と、接地導体層LR4に接するセラミック絶縁層LI4と、が厚み方向(図9における、マイナスZ方向)において順に配置されている。さらに、積層単位L5~L6も同様に配置されている。
【0050】
信号ビア電極VS1~VS6は、厚み方向において順に連結されており、例えば、厚み方向において、信号ビア電極VS1は信号ビア電極VS2に連結されており、信号ビア電極VS3は信号ビア電極VS2に連結されている。よって、信号端子SI1(図5)は、疑似同軸構造の信号ビア電極VS1~VS6に電気的に接続されており、少なくともこれらを介して信号端子SI1に外部電極層P1が電気的に接続されている。信号端子SI2~SI4(図1)も同様である。厚み方向において互いに連結されている信号ビア電極(例えば、信号ビア電極VS1と信号ビア電極VS2)は、平面視において、少なくとも部分的に重なっており、好ましくは実質的に共通の中心を有しており、より好ましくは互いに実質的に完全に重なっている。なお、「実質的に」の文言は、例えば、積層セラミック技術における通常の製造誤差を無視することを意味する。
【0051】
信号ビア電極VS1は、接地導体層LR1および接地導体層LR2から離れている。信号ビア電極VS2は、接地導体層LR2および接地導体層LR3から離れている。信号ビア電極VS3は、接地導体層LR3および接地導体層LR4から離れている。信号ビア電極VS4は、接地導体層LR4および接地導体層LR5から離れている。信号ビア電極VS5は、接地導体層LR5および接地導体層LR6から離れている。
【0052】
複数の接地ビア電極VR1は、平面視において信号ビア電極VS1から離れている。複数の接地ビア電極VR2は、平面視において信号ビア電極VS2から離れている。複数の接地ビア電極VR3は、平面視において信号ビア電極VS3から離れている。同様に、複数の接地ビア電極VR4~VR6のそれぞれは、平面視において信号ビア電極VS4~VS6から離れている。
【0053】
複数の接地ビア電極VR1の各々は、接地導体層LR1と接地導体層LR2とをつなぐように厚み方向においてセラミック絶縁層LI1を貫通している。複数の接地ビア電極VR2の各々は、接地導体層LR2と接地導体層LR3とをつなぐように厚み方向においてセラミック絶縁層LI2を貫通している。複数の接地ビア電極VR3の各々は、接地導体層LR3と接地導体層LR4とをつなぐように厚み方向においてセラミック絶縁層LI3を貫通している。複数の接地ビア電極VR4の各々は、接地導体層LR4と接地導体層LR5とをつなぐように厚み方向においてセラミック絶縁層LI4を貫通している。複数の接地ビア電極VR5の各々と、複数の接地ビア電極VR6の各々と、についても同様である。
【0054】
空洞ビアVG1(図11)の数は3つ以上であり、好ましくは6つ以下であり、より好ましくは、図11に示されているように5つである。空洞ビアVG2~VG6の数も同様である。
【0055】
複数の空洞ビアVG1は、平面視(図11)において信号ビア電極VS1と複数の接地ビア電極VR1との最短距離DR1よりも小さい距離DG1で信号ビア電極VS1から別々の方向へ離されている。図11においては、信号ビア電極VS1から5つの方向のそれぞれにおいて距離DG1ほど離れて5つの空洞ビアVG1が配置されている。なお、5つの空洞ビアVG1に対応しての5つの距離DG1は、必ずしも等しい必要はないが、好ましくは実質的に等しい。同様に、複数の空洞ビアVG2は、平面視(図12)において信号ビア電極VS2と複数の接地ビア電極VR2との最短距離DR2よりも小さい距離DG2で信号ビア電極VS2から別々の方向へ離されている。図12においては、信号ビア電極VS2から5つの方向のそれぞれにおいて距離DG2ほど離れて5つの空洞ビアVG2が配置されている。なお、5つの空洞ビアVG2に対応しての5つの距離DG2は、互いに必ずしも等しい必要はないが、互いに実質的に等しくてよく、さらに距離DG1(図11)と実質的に等しくてもよい。
【0056】
距離DG1は、機械的強度を確保する観点では、セラミック絶縁層LI1の厚み以上であることが好ましい。一方、実効比誘電率を効果的に下げることによって遮断周波数fをより高くする観点では、距離DG1は小さいさい方が好ましい。これら観点から、例えばセラミック絶縁層LI1の厚みが125μmの場合、距離DG1は、125μm~150μm程度が好ましい。同様に、距離DG2は、機械的強度を確保する観点では、セラミック絶縁層LI2の厚み以上であることが好ましい。一方、実効比誘電率を効果的に下げることによって遮断周波数fをより高くする観点では、距離DG2は小さいさい方が好ましい。これら観点から、例えばセラミック絶縁層LI2の厚みが125μmの場合、距離DG2は、125μm~150μm程度が好ましい。
【0057】
最短距離DR1および最短距離DR2は実質的に同じであってよい。最短距離DR1および最短距離DR2の各々は、材料の物性値にも依存するが一般的には、250μm以上、400μm以下であることが好ましく、例えば320μmである。平面視の図示を省略するが、同様に複数の空洞ビアVG3は、平面視において信号ビア電極VS3と複数の接地ビア電極VR3との最短距離よりも小さい距離で信号ビア電極VS3から別々の方向へ離されている。複数の空洞ビアVG4~VG6についても同様である。
【0058】
図13に示された平面視においては、複数の空洞ビアVG2の各々は、複数の空洞ビアVG1からちょうど外れて配置されている(矢印NB1の箇所を参照)。よって、複数の空洞ビアVG2の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG1と0%の面積で重なっている。言い換えれば、複数の空洞ビアVG2の各々は複数の空洞ビアVG1と重なっていない。なお、図13に示された配置の変形例として、詳しくは後述される図16および図17に示された配置も許容される。これら変形例も考慮すれば、平面視において、複数の空洞ビアVG2の各々は、複数の空洞ビアVG1から少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ複数の空洞ビアVG2の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG1と0%以上50%以下の面積で重なっている。同様に、平面視において、複数の空洞ビアVG3の各々は、複数の空洞ビアVG2から少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ複数の空洞ビアVG3の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG2と0%以上50%以下の面積で重なっている。複数の空洞ビアVG4~VG6についても同様である。
【0059】
平面視における、複数の空洞ビアVG1の組と複数の空洞ビアVG3の組との位置関係について説明すると、次のようになる。平面視において、複数の空洞ビアVG3は、複数の空洞ビアVG1と実質的に同じように配置されていてよい。その場合、平面視において、複数の空洞ビアVG3の各々は、複数の空洞ビアVG1とちょうど重なって配置される。ただし複数の空洞ビアVG3の配置はそのようなものに限定されるわけではない。平面視において、複数の空洞ビアVG3の各々は、複数の空洞ビアVG1と少なくとも部分的に重なって配置されていてよく、かつ複数の空洞ビアVG3の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG1と50%より大きな面積で重なっていてよい。複数の空洞ビアVG2の組と複数の空洞ビアVG4の組との位置関係についても同様である。また複数の空洞ビアVG3の組と複数の空洞ビアVG5の組との位置関係についても同様である。また複数の空洞ビアVG4の組と複数の空洞ビアVG6の組との位置関係についても同様である。
【0060】
積層単位L1の平面視(図11)において信号ビア電極VS1の中心と、複数の接地ビア電極VR1のうち信号ビア電極VS1に最も近いものの中心とを結ぶ直線SL1上には、複数の空洞ビアVG1は配置されていないことが好ましい。同様に、積層単位L2の平面視(図12)において、信号ビア電極VS2の中心と、複数の接地ビア電極VR2のうち信号ビア電極VS2に最も近いものの中心とを結ぶ直線SL2上には、複数の空洞ビアVG2は配置されていないことが好ましい。積層単位L3~L6についても同様である。なお、信号ビア電極VS1の中心と、複数の接地ビア電極VR1のうち信号ビア電極VS1に最も近いものの中心との間の距離(図11における直線SL1の長さ)は、例えば400μm~420μm程度が望ましい。同様に、信号ビア電極VS2の中心と、複数の接地ビア電極VR2のうち信号ビア電極VS2に最も近いものの中心との間の距離(図12における直線SL2の長さ)は、例えば400μm~420μm程度が望ましい。
【0061】
積層単位L1の平面視(図11)において、図示されているように、接地導体層LR1は複数の空洞ビアVG1の各々を部分的にのみ縁どっていてよい。この場合、接地導体層LR1の、信号ビア電極VS1に面する縁は、複数の空洞ビアVG1を縁どる部分と、互いに隣り合う空洞ビアVG1をつなぐように延びる部分と、によって構成されている。互いに隣り合う空洞ビアVG1をつなぐように延びる部分の各々は、信号ビア電極VS1の中心周りの円弧であってよい。この円弧の直径は、同軸構造(図7)における外部導体の内径bに類したパラメータであり、疑似同軸構造の特性インピーダンスに大きな影響を与える。具体的には、特性インピーダンス50Ω調整を前提とした場合の円弧の直径は、この円弧の直径は、セラミック層の厚みにも依存するが、400μm以上、500μm以下であることが好ましく、例えば、460μmである。同様に、積層単位L2の平面視(図12)において、図示されているように、接地導体層LR2は複数の空洞ビアVG2の各々を部分的にのみ縁どっていてよい。この場合、接地導体層LR2の、信号ビア電極VS2に面する縁は、複数の空洞ビアVG2を縁どる部分と、互いに隣り合う空洞ビアVG2をつなぐように延びる部分と、によって構成されている。互いに隣り合う空洞ビアVG2をつなぐように延びる部分の各々は、信号ビア電極VS2の中心周りの円弧であってよい。この円弧の直径は、接地導体層LR1のものと同程度であってよい。積層単位L3~L6についても同様である。なお、本実施の形態においては、接地導体層LR1~LR6のそれぞれが、空洞ビアVG1~VG6の各々を部分的にのみ縁取っているが、これは必須の要件ではない。例えば、接地導体層LR1~LR6のそれぞれが空洞ビアVG1~VG6に全く重ならなくてもよく、その場合、接地導体層LR1~LR6の各々の内縁の形状は一の円形であってよい。
【0062】
厚み方向における空洞ビアVG1~VG6のそれぞれの大きさは、セラミック絶縁層LI1~LI6の厚みに対応する。例えば、積層単位L1については、互いに対向する2つの接地導体層LR1とLR2との間の空間における導波管モード共振の発生を避ける観点では、セラミック絶縁層LI1の厚みは、疑似同軸構造が伝送する信号の周波数の波長の四分の1以下であることが好ましい。具体的には、例えば、セラミック絶縁層の材料がアルミナであって、上記周波数が100GHzの場合、当該厚みは250μm以下であることが好ましい。したがって、空洞ビアVG1の厚み方向の大きさも250μm以下であることが好ましい。一方で、厚み方向における空洞ビアVG1の大きさの下限は、製造可能なセラミック絶縁層LI1の厚みの下限に対応し、例えば100μmである。上記は、積層単位L1以外の積層単位においても同様である。
【0063】
平面視における空洞ビアVG1~VG6の各々の空洞ビアの大きさは、その形状を円で近似したときの直径によって評価されてよい。当該直径は、周波数および材料物性値にも依存するが、例えば150μm程度である。同一の積層単位に属する複数の空洞ビアの直径は実質的に同じであってよい。厚み方向において互いに隣り合う積層単位L1と積層単位L2との間での比較においては、空洞ビアVG1の直径に対する空洞ビアVG2の直径の割合は、0.7以上、1.3以下であることが好ましい。積層単位L2と積層単位L3との間、積層単位L3と積層単位L4との間、などの比較についても同様である。
【0064】
平面視における信号ビア電極VS1~VS6の各々の信号ビア電極の大きさは、その形状を円で近似したときの直径によって評価されてよく、当該直径は、周波数および材料物性値にも依存するが、例えば60μm程度である。平面視における接地ビア電極VR1~VR6の各々の接地ビア電極の大きさは、その形状を円で近似したときの直径によって評価されてよく、当該直径は、信号ビア電極の大きさ以上であることが好ましく、例えば80μm程度である。
【0065】
次に、上述した疑似同軸構造の平面レイアウトを設計する方法の一例について、図14および図15を参照しつつ、以下に説明する。
【0066】
図14は、信号ビア電極VS1と空洞ビアとの間の距離DG1と、隣接する空洞ビア間の距離DNと、について説明する部分平面図である。図中、空洞ビアVG1aおよび空洞ビアVG1bは、複数の空洞ビアVG(図11)に含まれるものであって互いに隣接するものである。
【0067】
信号ビア電極VS1の直径は、製造上の理由などを勘案して決められる。信号ビア電極VS1から距離DGを空けて空洞ビアVG1aが配置される。次に、信号ビア電極VS1から距離DGを空けて、空洞ビアVG1aに隣り合う空洞ビアVG1bが配置される。空洞ビアVG1aと空洞ビアVG1bとの間の最小距離はDNとされる。機械的強度の確保の観点では、ビアの種類を問わず、隣接するビア間の距離を所定の値以上に保つことが考えられる。その場合、距離DNは距離DG1に等しい。ここで仮に、信号ビア電極VS1、空洞ビアVG1aおよび空洞ビアVG1bの各々の直径を実質的にゼロとみなすと、信号ビア電極VS1、空洞ビアVG1aおよび空洞ビアVG1bの位置は、正三角形の3つの頂点の位置に対応する。したがって、信号ビア電極VS1から空洞ビアVG1aに向かう方向と、信号ビア電極VS1から空洞ビアVG1bに向かう方向と、の方向差は、60°であり、よって、信号ビア電極VS1の周りには、6つの空洞ビアVGを配置することができる。しかしながら、実際のところにおいては、信号ビア電極VS1の直径よりも大きな直径を各々有する空洞ビアVG1が適用されることが、伝送特性の改善の上で望まれる。その結果、信号ビア電極VS1から空洞ビアVG1aに向かう方向と、信号ビア電極VS1から空洞ビアVG1bに向かう方向と、の方向差は、60°よりも若干大きくなり、よって空洞ビアVG1を6つ配置することはできない。一方で、伝送特性の改善の上で、空洞ビアVG1の数を最大化するならば、その数は5つとなる。
【0068】
図15を参照して、上記理由から、信号ビア電極VS1を囲むように、前述した複数の空洞ビアVG1に対応する5つの空洞ビアVG1a~VG1eが配置される。5つの空洞ビアVG1a~VGbの中心は、正五角形の頂点に対応するように配置される。ここで、図13に示されたような配置が想定される場合は、平面視において空洞ビアVG1および空洞ビアVG2としての10個の円が互いに接触しながら環状に配置されるので、空洞ビアVG1(および空洞ビアVG2)の直径も一の値に定まる。なお、第1の変形例として、図16の矢印NB2に示すように、平面レイアウトにおいて、複数の空洞ビアVG2の各々が、複数の空洞ビアVG1から、間隔を空けて外れて配置されてもよく、その場合、上記直径が若干低減されればよい。第2の変形例として、図17の矢印NB3に示すように、平面レイアウトにおいて、複数の空洞ビアVG2の各々が、複数の空洞ビアVG1から部分的にのみ外れて配置されてもよく、その場合、上記直径が若干増大されればよい。
【0069】
次に、疑似同軸構造を構成することを勘案して、信号ビア電極VS1から距離DG1よりも大きく離されている複数の接地ビア電極VR1(図14参照)の配置が検討される。まず、複数の接地ビア電極VR1のうち、信号ビア電極VS1に近いものの配置を検討すると、空洞ビアVG1aおよび空洞ビアVG1bとの距離DGRが最低限確保された位置に、接地ビア電極VR1aが配置される。これに類した配置によって、複数の接地ビア電極VR1のうち、信号ビア電極VS1に近いものとして、5つの接地ビア電極VR1a~VR1eが配置される。この場合、信号ビア電極VS1の中心と、接地ビア電極VR1a~VR1eの中心とを結ぶ直線(例えば、図11の直線SL1参照)上には、空洞ビアVG1a~VG1eは配置されない。続いて、接地ビア電極VR1a~VR1e以外の接地ビア電極VR1の各々が、他の接地ビア電極および空隙ビアとの距離を最低限確保された位置に配置されてよい。
【0070】
次に、再び図14を参照して、接地導体層LR1の、信号ビア電極VS1に面する縁の位置が、矢印AJで示されているように調整される。矢印AJは信号ビア電極VS1を中心とした放射方向である。この位置調整により、疑似同軸構造の特性インピーダンスが調整される。
【0071】
上記により、積層単位L1の平面レイアウトが設計される。積層単位L2の平面レイアウトは、積層単位L1の中心(信号ビア電極VS1の中心)周りに36°回転することによって得ることができる。ここで、角度36°は、積層単位L1における空洞ビアVG1の数(5つ)で360°を除した角度の半分である。積層単位L3および積層単位L5の各々の平面レイアウトは、積層単位L1の平面レイアウトと同一とすることができる。積層単位L4および積層単位L6の各々の平面レイアウトは、積層単位L2の平面レイアウトと同一とすることができる。つまり、積層単位L1と積層単位L2とを厚み方向において交互に配置することによって、疑似同軸構造の平面レイアウトが定められる。
【0072】
なお、積層単位L1における空洞ビアのVG1の数は、上記のように5つであることが最適であることが多いが、何らかの理由によってこの数を調整することが必要な場合もある。そこでこの数をn個に一般化して説明すると、信号ビア電極VS1を囲むように、n個の空洞ビアVG1が配置される。n個の空洞ビアVGの中心は、ちょうどn個の頂点を有する正多角形の当該頂点に対応するように配置される。積層単位L2の平面レイアウトは、積層単位L1の中心(信号ビア電極VS1の中心)周りに、360°/nの半分の角度回転することによって得ることができる。ここで、角度36°は、積層単位L1における空洞ビアVG1の数(5つ)で360°を除した角度の半分に対応している。伝送特性の向上の観点で、疑似同軸構造中を空洞ビアが占める割合を十分に大きくするためには、n≦6が満たされることが好ましく、n≦5がより好ましい。また、疑似同軸構造の伝送特性を理想的な同軸構造の伝送特性に近づける観点では、n≧3が必要であり、n≧4が好ましく、n≧5がより好ましい。
【0073】
以上、疑似同軸構造の平面レイアウトを設計する方法の一例について説明した。なお、完成品としてのパッケージ801が有する疑似同軸構造は、例えば、X線を用いたコンピュータ断層撮影法(CT:Computerized Tomography)によって観察することができる。当該観察は、例えば、島津製作所製のX線CT装置「inspeXio SMX-225CT」によって行われてよい。
【0074】
本実施の形態によれば、第1に、パッケージ801の絶縁体部分を構成するセラミック絶縁層LI1およびセラミック絶縁層LI2に複数の空洞ビアVG1および複数の空洞ビアVG2が設けられることによって、絶縁体部分の実効誘電率が低減される(図9参照)。これにより、パッケージ801の高周波伝送特性を高めることができる。第2に、平面視(図13)において、複数の空洞ビアVG2の各々は、複数の空洞ビアVG1から少なくとも部分的に外れて配置されており、かつ複数の空洞ビアVG2の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG1と0%以上50%以下の面積で重なっている。これにより、複数の空洞ビアVG1から厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を複数の空洞ビアVG2のいずれかが形成することが避けられるか、または、当該空洞部が形成されるにしても平面視におけるその面積が抑制される。よって、平面視において大きな面積を有する空洞部が、セラミック絶縁層LI1とセラミック絶縁層LI2との総厚みに相当する大きな長さにわたって厚み方向に沿って連続的に延びることが避けられる。よって、パッケージ801または焼成されることによってパッケージ801となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。以上から、高周波伝送特性を高めつつ、パッケージ801または焼成されることによってパッケージ801となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。
【0075】
平面視(図13)において、複数の空洞ビアVG2の各々は、複数の空洞ビアVG1から外れて配置されていてよい。これにより、空洞ビアVG1から厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を空洞ビアVG2が形成することが避けられる。よって、空洞部の長さと空洞部の長さとの合計に相当する大きな長さにわたって厚み方向に沿って空洞部が連続的に延びることが避けられる。よって、パッケージ801または焼成されることによってパッケージ801となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを、より十分に防止することができる。
【0076】
平面視において複数の空洞ビアVG3の各々が、複数の空洞ビアVG2から少なくとも部分的に外れて配置されていてよく、かつ複数の空洞ビアVG3の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG2と0%以上50%以下の面積で重なっていてよい。これにより、複数の空洞ビアVG2から厚み方向に沿って連続的に延びる空洞部を複数の空洞ビアVG3のいずれかが形成することが避けられるか、または、当該空洞部が形成されるにしても平面視におけるその面積が抑制される。よって、平面視において大きな面積を有する空洞部が、セラミック絶縁層LI2とセラミック絶縁層LI3との総厚みに相当する大きな長さにわたって厚み方向に沿って連続的に延びることが避けられる。よって、パッケージ801または焼成されることによってパッケージ801となる仕掛かり品の機械的強度が当該空洞部に起因して過小となることを防止することができる。
【0077】
平面視において複数の空洞ビアVG3の各々は、複数の空洞ビアVG1と少なくとも部分的に重なって配置されていてよく、かつ複数の空洞ビアVG3の各々の面積を基準として複数の空洞ビアVG1と50%より大きな面積で重なっていてよい。これにより、複数の空洞ビアVG3の配置を、複数の空洞ビアVG1の配置に近いもの、または実質的に同じものとすることができる。
【0078】
平面視において信号ビア電極VS1の中心と、複数の接地ビア電極VR1のうち信号ビア電極VS1に最も近いものの中心とを結ぶ直線SL1(図11)上には、複数の空洞ビアVG1は配置されている必要はない。また、信号ビア電極VS2の中心と、複数の接地ビア電極VR2のうち信号ビア電極VS2に最も近いものの中心とを結ぶ直線SL2(図12)上には、複数の空洞ビアVG2は配置されている必要はない。これにより、第1に、複数の接地ビア電極VR1を信号ビア電極VS1の近く配置することによって疑似同軸構造の高周波伝送特性を高めつつ、信号ビア電極VS1の中心と、複数の接地ビア電極VR1のうち信号ビア電極VS1に最接近しているものの中心とを結ぶ直線上に複数の空洞ビアVG1が配置されていないことによって、この最接近している接地ビア電極VR1と、複数の空洞ビアVG1との間の最短距離が過小となることが避けられる。よって、当該最短距離が過小であることに起因して機械的強度が過小となることを避けることができる。第2に、複数の接地ビア電極VR2を信号ビア電極VS2の近く配置することによって疑似同軸構造の高周波伝送特性を高めつつ、信号ビア電極VS2の中心と、複数の接地ビア電極VR2のうち信号ビア電極VS2に最接近しているものの中心とを結ぶ直線上に複数の空洞ビアVG2が配置されていないことによって、この最接近している接地ビア電極VR2と、複数の空洞ビアVG2との間の最短距離が過小となることが避けられる。よって、当該最短距離が過小であることに起因して機械的強度が過小となることを避けることができる。
【0079】
パッケージ801は、配線パターンPS1を有する被実装部材950(図5)へ表面実装されることになる表面実装型パッケージであってよい。この場合、信号端子SI1と外部電極層P1との間を互いにつなぐ電気的経路は、厚み方向にわたって延びる必要がある。このような電気的経路をパッケージ801は疑似同軸構造を用いて構成することができる。
【0080】
少なくとも1つの電子部品900は光通信用の電子部品900(図1)を含んでよい。光通信用の電子部品900の動作周波数は非常に高いことがあり、その場合、パッケージ801が有する優れた高周波伝送特性を活用することができる。
【0081】
複数の空洞ビアVG1は6つ以下の空洞ビアであってよく、かつ、複数の空洞ビアVG2は6つ以下の空洞ビアであってよい(図13参照)。これにより、複数の空洞ビアVG1および複数の空洞ビアVG2の各々の大きさをより大きくすることができる。よって、複数の空洞ビアVG1および複数の空洞ビアVG2により実効誘電率を低減する効果を高めることができる。
【0082】
複数の空洞ビアVG1は5つの空洞ビアであってよく、かつ、複数の空洞ビアVG2は5つの空洞ビアであってよい(図13参照)。一般に、2つのビア構造間の距離が過小となると、機械的強度の低下が懸念される。これを勘案して、仮に、信号ビア電極VS1の中心から所定距離を空けて複数の空洞ビアVG1の中心を配置し、かつ、互いに隣接する複数の空洞ビアVG1の中心間も上記所定距離を空けて配置する、という設計条件が適用されたとする。その場合、信号ビア電極VS1の周りに空洞ビアVG1が6回対称で配置されるので、空洞ビアVG1の個数は6つである。同様の設計条件によれば、複数の空洞ビアVG2の個数も6つである。ここで、絶縁体部分の実効誘電率をより低減させるためには、各空洞ビアの直径は、ある程度は大きいことが望まれ、これを勘案すると、上記の設計条件では、隣接する空洞ビア間の距離(言い換えれば、一方の空洞ビアの縁と、他方の空洞ビアの縁との間の距離)が過小となる。これを改める方法として、6回対称性を維持しつつ、信号ビア電極VS1の中心から複数の空洞ビアVG1の中心までの距離を、必要最小限に増大させるという設計思想も想定される。しかしながら本発明者らの検討によれば、前述したように、第1の空洞ビアVG1の個数と第2の空洞ビアVG2の個数との各々の個数を、6個ではなく5個に減じた方が、機械的強度を確保しつつも空洞ビアによって高周波伝送特性を高める効果を、より十分に得やすい。
【0083】
平面視において、接地導体層LR1(図11)は複数の空洞ビアVG1の各々を部分的にのみ縁どっていてよく、かつ、接地導体層LR2(図12)は複数の空洞ビアVG2の各々を部分的にのみ縁どっていてよい。後述するシミュレーション結果によれば、接地導体層LR1および接地導体層LR2をこのように配置することによって、パッケージ801の前述した効果を確保しつつ、パッケージ801の特性インピーダンスを、標準的な特性インピーダンスである50Ωに容易に整合させることができる。
【0084】
なお上記説明においては、図5に示されているように、信号配線WS1(および信号配線WS2~WS4)が1つの貫通導体T1を有する形態について詳述したが、変形例として、この1つの貫通導体T1に代わって、水平導体層によって互いに連結された複数の貫通導体T1が用いられてよい。その場合、水平導体層を介して互いに接続される信号ビア電極の対が存在し、これら信号ビア電極は平面視において互いに重ならない。例えば、詳しくは後述する図20の構成では、平面視において、積層単位LB5~LB17の信号ビア電極が互いに重なる一方で、これらに積層単位LB4の信号ビア電極は重なっておらず、そのような信号ビア電極が信号配線WS1(および信号配線WS2~WS4)に含まれてよい。
【0085】
<伝送特性のシミュレーション>
空洞ビアVG1~VG6(図9および図10:実施の形態1)を有する疑似同軸構造の伝送特性と、空洞ビアを有しない比較例の伝送特性と、のシミュレーション結果について、以下に説明する。
【0086】
図18は、シミュレーション用のモデルMSを示す平面図である。図19および図20のそれぞれは、図18の線XIX-XIXに沿う断面斜視図および断面図である。
【0087】
図19および図20における積層単位LB13~LB17の構造は、図9(実施の形態1)において説明された積層単位L1~L5の構造に対応しているので、その説明は繰り返さない。図19および図20における積層単位LB13~LB17の各部材の寸法値としては、実施の形態1において例示されたものを用いる。図19および図20における積層単位LB7~LB12は図9における積層単位L1~L6と同じである。
【0088】
図19および図20における積層単位LB6は、図9における積層単位L2とおおよそ同様であるが、マイナスX方向へ延びる部分が付加されている。図19および図20における積層単位LB5は、図9における積層単位L1とおおよそ同様であるが、マイナスX方向へ延びる部分が付加されている。図19および図20における積層単位LB4の信号ビア電極VSB4は、信号導体層LSB5を介して、積層単位LB5の信号ビア電極VSB5に電気的に接続されている。同様に、積層単位LB3の信号ビア電極VSB3は、信号導体層LSB4を介して、積層単位LB4の信号ビア電極VSB4に電気的に接続されている。信号ビア電極VSB5~VSB3のX方向における位置は、この順に、マイナスX方向に向かってシフトされている。積層単位LB3の信号導体層LSB3は、信号ビア電極VSB3に接続されており、かつ、マイナスX方向に向かってモデルMSの端面まで延びている。信号導体層LSB3の、当該端面における端部が、シミュレーションにおける信号入力部F1とされる。一方、信号導体層LSB18の、マイナスZ方向に向かって露出された面が、シミュレーションにおける信号出力部F2とされる。なお積層単位LB2は、接地ビア電極VRB2を有しているが、信号導体層および信号ビア電極は有していない。積層単位LB1は、接地ビア電極VRB1を有しているが、信号導体層および信号ビア電極は有していない。
【0089】
図21図23のそれぞれは、通過特性S21と、反射特性S11と、特性インピーダンスZとについての、上述したモデルMSに対してのシミュレーション結果(図中、実線)を、比較例に対するシミュレーション結果(図中、破線)と共に示すグラフ図である。図21において、横軸は図20に示す伝送路を伝わる信号の周波数fであり、縦軸は通過特性S21である。一般に、より高い通過特性S21は、より良好な伝送路を意味する。図22において、横軸は図20に示す伝送路を伝わる信号の周波数fであり、縦軸は反射特性S11である。一般に、より低い反射特性S11は、より良好な伝送路を意味する。図23の横軸における時間tは、実質的には、図20の伝送路における空間位置に対応する。図23の縦軸は、各空間位置における特性インピーダンスZを示す。
【0090】
図23を参照して、空間位置によらず特性インピーダンスZ=50Ωである場合が、インピーダンス整合が完全な状態に対応している。モデルMS(図23における実線)の特性インピーダンスはほぼ50Ωに保たれているが、比較例(破線)の特性インピーダンスは47Ω程度まで低くなっている箇所がある。特性インピーダンスが低いことは、前述したように遮断周波数fを高めることにつながるので、伝送特性上は有利である。それにもかかわらず、図21および図22に示されているように、比較例(破線)の伝送特性の方が、モデルMS(実線)の伝送特性に比して劣っている。具体的には、比較例では、周波数fがおおよそ95GHzを超える箇所で伝送効率が顕著に低下している。一方、モデルMSでは、周波数fがおおよそ105GHzを超える箇所まで、高い伝送効率が保たれている。
【0091】
以上から、比較例に比してモデルMSの方が、特性インピーダンスをより整合させつつも、伝送特性を良化することができている。また、モデルMSの寸法を微調整することによってその特性インピーダンスが比較例の特性インピーダンス程度に低くされれば、伝送特性は、より良化することは、容易に推測される。以上から、空洞ビアを適用することによって高周波伝送特性を顕著に良化することができることがわかる。
【0092】
<実施の形態2>
前述した実施の形態1の図5および図6を参照して、配線構造701においては、外部電極層P1(および、図5および図6においては図示されていない外部電極層P2~P4(図2参照))と外部電極層PGとが下面SB上に配置されている。図24および図25を参照して、これに対して本実施の形態の配線構造702においては、外部電極層P1(および、図24および図25においては図示されていない外部電極層P2~P4(図2参照))と外部電極層PGとが上面ST上に配置されている。なお配線構造702の上記以外の特徴については、配線構造701とほぼ同様であるため、その説明を繰り返さない。本実施の形態によっても、前述した実施の形態1の場合とほぼ同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0093】
701,702:配線構造
801 :パッケージ
900 :電子部品
950 :被実装部材
CV :キャビティ
LI :セラミック絶縁層
LI1~LI6:第1~第6のセラミック絶縁層
LM :導体層
LR1~LR6:第1~第6の接地導体層
LS1~LS6:第1~第6の信号導体層
MS :モデル
P1~P4 :外部電極層
PS1 :配線パターン
SI1~SI4:信号端子(配線層)
SO1~SO4:信号リード(外部接続端子)
VG1~VG6:第1~第6の空洞ビア
VR1~VR6:第1~第6の接地ビア電極
VS1~VS6:第1~第6の信号ビア電極
図1
図2
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