(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-02
(45)【発行日】2024-10-10
(54)【発明の名称】着用物品と吸収パッドの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/72 20060101AFI20241003BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20241003BHJP
A61F 13/62 20060101ALI20241003BHJP
A61F 13/76 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61F13/72 100
A61F13/56 110
A61F13/62 100
A61F13/76
(21)【出願番号】P 2024546372
(86)(22)【出願日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2023033233
(87)【国際公開番号】W WO2024080054
(87)【国際公開日】2024-04-18
【審査請求日】2024-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2022164183
(32)【優先日】2022-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新保 洋介
(72)【発明者】
【氏名】梨子木 健人
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 沙也佳
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-24385(JP,A)
【文献】特表2004-538092(JP,A)
【文献】特開2011-182930(JP,A)
【文献】特開2021-133163(JP,A)
【文献】特開2022-142644(JP,A)
【文献】特開2007-319543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、
前記着用物品を収容する収容部材と、
を備えた、着用物品収容体であって、
前記着用物品は、再利用可能であり、
前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、
前記着用物品は、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、前記収容部材から取り出して、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
前記着用物品は、前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有し、
前記上下方向において、前記伸縮抑制手段と前記フック部材とが重複する部分を有し、
前記着用物品は、胴回り開口を備え、
前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、
前記上下方向において、前記伸縮抑制手段は、前記胴回り低伸縮領域から前記フック部材まで連続している、ことを特徴とする着用物品収容体。
【請求項2】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、
前記着用物品を収容する収容部材と、
を備えた、着用物品収容体であって、
前記着用物品は、再利用可能であり、
前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、
前記着用物品は、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、前記収容部材から取り出して、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
前記着用物品は、前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有し、
前記伸縮抑制手段は、左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部と、前記中央伸縮抑制部の前記左右方向の両側に設けられた一対のサイド伸縮抑制部と、を有する、ことを特徴とする着用物品収容体。
【請求項3】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、
前記着用物品を収容する収容部材と、
を備えた、着用物品収容体であって、
前記着用物品は、再利用可能であり、
前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、
前記着用物品は、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、前記収容部材から取り出して、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
前記着用物品は、
一対の脚回り開口を備え、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域と、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域と、
を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の前記一方側の端とを結んだ第1仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有しておらず、
前記左右方向の中央部に設けられ、前記上下方向に所定の長さを有する中央伸縮抑制部を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記中央伸縮抑制部の下端とを結んだ第2仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、ことを特徴とする着用物品収容体。
【請求項4】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品であって、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有し、
前記上下方向において、前記伸縮抑制手段と前記フック部材とが重複する部分を有し、
胴回り開口を備え、
前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、
前記上下方向において、前記伸縮抑制手段は、前記胴回り低伸縮領域から前記フック部材まで連続している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項5】
請求項4に記載の着用物品であって、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、13mN/mm2以上である、ことを特徴とする着用物品。
【請求項6】
請求項5に記載の着用物品であって、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、35mN/mm2以上である、ことを特徴とする着用物品。
【請求項7】
請求項4~6の何れか1項に記載の着用物品であって、
50mm×200mmのサンプル片を、前記上下方向若しくは前記左右方向に5Nで引っ張ったときの伸び率の最大値が、何れも200%以上となる生地で構成された本体部を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項8】
請求項4~6の何れか1項に記載の着用物品であって、
前記フック部材は前記雌フック部材である、ことを特徴とする着用物品。
【請求項9】
請求項8に記載の着用物品であって、
前記雌フック部材は、前記着用物品の肌側面に縫い付けられている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項10】
請求項4~6の何れか1項に記載の着用物品であって、
一対の脚回り開口を備え、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域を有し、
前記フック部材は前記胴回り領域に配置されている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項11】
請求項10に記載の着用物品であって、
前記上下方向において、前記フック部材の中央位置は、前記胴回り領域の中央位置よりも下側に位置している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項12】
請求項10に記載の着用物品であって、
胴回り開口を備え、
前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、
前記上下方向において、前記フック部材は、前記胴回り低伸縮領域よりも下側に配置されている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項13】
請求項12に記載の着用物品であって、
前記フック部材は、前記上下方向において、前記胴回り低伸縮領域の下端よりも、当該胴回り低伸縮領域の前記上下方向の幅以上下側に配置されている、ことを特徴とする着用物品。
【請求項14】
請求項10に記載の着用物品であって、
前記上下方向において、前記フック部材の中央位置は、前記胴回り領域の中央位置と前記胴回り領域の下端との中央位置よりも上側に位置している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項15】
請求項4~6の何れか1項に記載の着用物品であって、
一対の脚回り開口を備え、
自然状態において、前記脚回り開口の上端は、前記着用物品の前記左右方向の中央位置における下端よりも前記上下方向の上側に位置している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項16】
請求項15に記載の着用物品であって、
自然状態において、前記前後方向の前側における前記脚回り開口の周縁は、前記左右方向の内側に抉れた形状を有している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項17】
請求項16に記載の着用物品であって、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域
を有し、
自然状態における前記クロッチ領域の前記左右方向における長さは、自然状態における前記着用物品の前記左右方向における長さの25%以上、50%以下である、ことを特徴とする着用物品。
【請求項18】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品であって、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有し、
前記伸縮抑制手段は、左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部と、前記中央伸縮抑制部の前記左右方向の両側に設けられた一対のサイド伸縮抑制部と、を有する、ことを特徴とする着用物品。
【請求項19】
請求項18に記載の着用物品であって、
一対の脚回り開口を備え、
前記一対の脚回り開口のそれぞれの周縁に沿ったかがり縫い部を有し、
前記サイド伸縮抑制部と前記かがり縫い部とが交差する部分を有している、ことを特徴とする着用物品。
【請求項20】
請求項4~6の何れか1項に記載の着用物品であって、
一対の脚回り開口を備え、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域と、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域と、
を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の前記一方側の端とを結んだ第1仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、ことを特徴とする着用物品。
【請求項21】
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、
前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品であって、
前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、
前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、
前記着用物品を、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、
一対の脚回り開口を備え、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域と、
前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域と、
を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の前記一方側の端とを結んだ第1仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有しておらず、
前記左右方向の中央部に設けられ、前記上下方向に所定の長さを有する中央伸縮抑制部を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記中央伸縮抑制部の下端とを結んだ第2仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、ことを特徴とする着用物品。
【請求項22】
請求項21に記載の着用物品であって、
前記左右方向の中央部に設けられ、前記上下方向に所定の長さを有する中央伸縮抑制部を有し、
自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の他方側の端とを結んだ第3仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、ことを特徴とする着用物品。
【請求項23】
着用物品と吸収パッドの組み合わせであって、
請求項4、18、又は21に記載の着用物品と、
前記吸収パッドと、
を有し、
前記吸収パッドは、
伸長状態において互いに交差する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、
液吸収性の吸収体を有し、
前記雄フック部材及び前記雌フック部材のうち他方のフック部材を備えている、ことを特徴とする
、着用物品と吸収パッドの組み合わせ。
【請求項24】
請求項23に記載の
、着用物品と吸収パッドの組み合わせであって、
前記厚さ方向に見たときに、
前記フック部材は、前記吸収体と重複する部分を有している、ことを特徴とする
、着用物品と吸収パッドの組み合わせ。
【請求項25】
請求項24に記載の
、着用物品と吸収パッドの組み合わせであって、
前記フック部材は、接着剤を用いて前記吸収パッドに接合されており、
前記フック部材の周縁に沿ってドライエッジを有していない、ことを特徴とする、
着用物品と吸収パッドの組み合わせ。
【請求項26】
請求項23に記載の
、着用物品と吸収パッドの組み合わせであって、
前記縦方向における長さは300mm以上であり、前記横方向における長さは80mm以上である、ことを特徴とする、
着用物品と吸収パッドの組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用物品収容体、着用物品、及び、着用物品と吸収パッドの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮性を有するパンツ型の着用物品であって、尿等の排泄物を吸収する吸収パッドを股下部に取り付けて使用するパッド併用型の着用物品が知られている。例えば、特許文献1には、伸縮性を有するショーツ(着用物品)の内側面に設けられた面ファスナー(雌部材)と、吸収パッドに設けられた面ファスナー(雄部材)とを互いに係合させることによって、吸収パッドを併用して着用することが可能なショーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伸縮性の高い生地によって構成された着用物品に吸収パッドを係合させた状態で着用する際には、当該着用物品の上端部を掴んで上方に引っ張り上げる動作が行われる。このとき、着用物品と吸収パッドとを係合しているフック部材の剪断方向における係合力よりも、着用物品を上方へ引っ張る力の方が大きいと、着用物品と吸収パッドとの係合が外れてしまい、吸収パッドを引き上げにくくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、吸収パッドと係合させた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、前記着用物品を収容する収容部材と、を備えた、着用物品収容体であって、前記着用物品は、再利用可能であり、前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、前記着用物品は、前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、前記着用物品を、前記収容部材から取り出して、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きく、前記着用物品は、前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有し、前記上下方向において、前記伸縮抑制手段と前記フック部材とが重複する部分を有し、前記着用物品は、胴回り開口を備え、前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、前記上下方向において、前記伸縮抑制手段は、前記胴回り低伸縮領域から前記フック部材まで連続している、ことを特徴とする着用物品収容体である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収パッドと係合させた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2Aは、自然状態において着用物品1を前後方向の前側から見たときの平面図である。
図2Bは、自然状態において着用物品1を前後方向の後側から見たときの平面図である。
【
図4】吸収パッド100の平面図、及び、断面図である。
【
図5】
図5A,5Bは、比較例の着用物品2と吸収パッド100とを併用する場合の着用物品2の着用方法について説明する図である。
【
図6】
図6A~
図6Cは、着用物品1と吸収パッド100とを併用する場合の着用物品1の着用方法について説明する図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、着用物品1を上下方向に伸長させる際の最大引張荷重を測定する方法について説明する図である。
【
図8】
図8A~
図8Cは、雄フック部材と雌フック部材との係合力を測定する方法について説明する図である。
【
図9】複数種類のフック部材を用いて係合力の測定を行った結果及びその評価を示す表である。
【
図10】フック部材FK(係合領域30)の配置について説明する図である。
【
図11】着用物品収容体90の一例を表す概略斜視図である。
【
図12】着用物品1の前側の胴回り領域BRと後側の胴回り領域BRとを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(態様1)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品と、前記着用物品を収容する収容部材と、を備えた、着用物品収容体であって、前記着用物品は、再利用可能であり、前記収容部材は、前記着用物品が前記吸収パッドと併用されることを想起させる表示を備え、前記着用物品は、前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、前記着用物品を、前記収容部材から取り出して、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きい、ことを特徴とする着用物品収容体。
【0012】
態様1の着用物品収容体によれば、当該収容体から取り出した着用物品を着用する動作において、胴回り領域の所定の部分(手で掴んで引っ張られる部分)が上下方向に引っ張られたときの単位面積当たりの力の大きさよりも、雄フック部材と雌フック部材との係合面に沿った方向における単位面積当たりの力の方が強ければ、着用物品を引っ張る力に抗して、フック部材同士の係合が維持されやすくなる。したがって、吸収パッドを取り付けた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0013】
(態様2)
互いに交差する上下方向と左右方向と前後方向とを有し、前記上下方向及び前記左右方向に伸縮性を有し、吸収パッドと併用される着用物品であって、前記吸収パッドと係合するフック部材を有し、前記フック部材は、雄フック部材及び雌フック部材のうちいずれか一方の部材であり、前記着用物品を、自然状態から前記上下方向に2倍の長さに伸長させた状態を2倍伸張状態としたとき、前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、前記フック部材の下端よりも上側、且つ、前記着用物品の上端から20mmまでの領域における、前記自然状態から前記2倍伸張状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重よりも大きい、ことを特徴とする着用物品。
【0014】
態様2の着用物品によれば、着用動作時において、胴回り領域の所定の部分(手で掴んで引っ張られる部分)が上下方向に引っ張られたときの単位面積当たりの力の大きさよりも、雄フック部材と雌フック部材との係合面に沿った方向における単位面積当たりの力の方が強ければ、着用物品を引っ張る力に抗して、フック部材同士の係合が維持されやすくなる。したがって、吸収パッドを取り付けた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0015】
(態様3)
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、13mN/mm2以上である、態様2に記載の着用物品。
【0016】
態様3の着用物品によれば、雄フック部材と雌フック部材の係合力が13mN/mm2よりも小さい場合と比較して、着用物品の着用時に吸収パッドと係合させた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることが出来る。
【0017】
(態様4)
前記雄フック部材と前記雌フック部材の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は、35mN/mm2以上である、態様2または3に記載の着用物品。
【0018】
態様4の着用物品によれば、雄フック部材と雌フック部材の係合力が35mN/mm2よりも小さい場合と比較して、着用物品の着用時に吸収パッドと係合させた状態で着用物品を引っ張り上げる際に、吸収パッドと着用物品との係合をより外れ難くすることが出来る。
【0019】
(態様5)
50mm×200mmのサンプル片を、前記上下方向若しくは前記左右方向に5Nで引っ張ったときの伸び率の最大値が、何れも200%以上となる生地で構成された本体部を有する、態様2~4の何れかに記載の着用物品。
【0020】
態様5の着用物品によれば、伸縮性の高い生地によって構成されることにより、着用時におけるフィット性が向上し、また、着用者の身体のサイズの大小に応じやすく、サイズ適合性を向上させることができる。なお、そのような伸縮性の高い生地よって構成されることによって、着用動作時に着用物品が上下方向に伸長した場合であっても、態様2~4の条件を満たすフック部材を使用することによって、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることが可能である。
【0021】
(態様6)
前記フック部材は前記雌フック部材である、態様2~5の何れかに記載の着用物品。
【0022】
態様6の着用物品によれば、雌フック部材は係合用突起を有しておらず、雄フック部材よりも柔軟性が高いため、当該雌フック部材が設けられた着用物品を着用する際に、着用者の肌を傷つけにくい。また、着用物品の洗濯を行う際に着用物品の本体部を構成している生地を傷つけにくい。
【0023】
(態様7)
前記雌フック部材は、前記着用物品の肌側面に縫い付けられている、態様2~6の何れかに記載の着用物品。
【0024】
態様7の着用物品によれば、雌フック部材が着用物品から剥がれてしまうことを抑制できる。また、着用物品を洗濯する場合にも、雌フック部材が剥がれ難い。また、接着剤等を使用せずに着用物品に雌フック部材を取り付けることができるので、着用者の肌と接触した場合であっても、人体に安全であり、柔軟な肌触りを提供しやすい。
【0025】
(態様8)
一対の脚回り開口を備え、前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域を有し、前記フック部材は前記胴回り領域に配置されている、態様2~7の何れかに記載の着用物品。
【0026】
態様8の着用物品によれば、フック部材が、胴回り領域よりも下側(クロッチ領域)に設けられている場合と比較して、着用物品の上端からフック部材までの距離が近くなり、胴回り領域を上方へ引っ張り上げる力がフック部材に効率的に伝達される。したがって、吸収パッドを上方へ引き上げやすくすることができる。
【0027】
(態様9)
前記上下方向において、前記フック部材の中央位置は、前記胴回り領域の中央位置よりも下側に位置している、態様2~8の何れかに記載の着用物品。
【0028】
態様9の着用物品によれば、フック部材が胴回り領域の中央位置よりも下側に配置されていれば、着用動作時に、フック部材が手で掴まれてしまう可能性が低くなる。したがって、雄フック部材と雌フック部材との係合を剥がれ難くすることができる。
【0029】
(態様10)
胴回り開口を備え、前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、前記上下方向において、前記フック部材は、前記胴回り低伸縮領域よりも下側に配置されている、態様2~9の何れかに記載の着用物品。
【0030】
態様10の着用物品によれば、フック部材が胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部)と離間して配置されていれば、フック部材を介して係合されている吸収パッドが、低伸縮領域が発現する強い収縮力によって着用者の腹部や腰部に強く押し付けられることが抑制される。したがって、着用時に、着用者に不快感を生じ難くさせることができる。
【0031】
(態様11)
前記フック部材は、前記上下方向において、前記胴回り低伸縮領域の下端よりも、当該胴回り低伸縮領域の前記上下方向の幅以上下側に配置されている、態様2~10の何れかに記載の着用物品。
【0032】
態様11の着用物品によれば、フック部材と胴回り低伸縮領域との間隔が、胴回り低伸縮領域の幅よりも短い場合と比較して、フック部材が胴回り低伸縮領域の伸縮による影響を受け難くなる。したがって、フック部材を介して係合されている吸収パッドが着用者の肌側に押し付けられることがより抑制されやすくなり、着用者に不快感を生じ難くさせることができる。
【0033】
(態様12)
前記上下方向において、前記フック部材の中央位置は、前記胴回り領域の中央位置と前記胴回り領域の下端との中央位置よりも上側に位置している、態様2~11の何れかに記載の着用物品。
【0034】
態様12の着用物品によれば、上下方向において胴回り領域の中央位置と胴回り領域の下端との間の中央位置よりも下側にフック部材が配置されている場合と比較して、着用物品の上端からの距離が近くなり、胴回り領域を上方へ引っ張り上げる力がフック部材に伝達されやすくなる。また、上下方向において胴回り領域の中央位置よりも上側にフック部材が配置されている場合と比較して、胴回り低伸縮領域からの距離が遠くなり、胴回り低伸縮領域の強い伸縮力による影響を受けにくくなる。これにより、吸収パッドを引き上げやすく、また、着用者に不快感を生じ難くさせることができる。
【0035】
(態様13)
一対の脚回り開口を備え、自然状態において、前記脚回り開口の上端は、前記着用物品の前記左右方向の中央位置における下端よりも前記上下方向の上側に位置している、態様2~12の何れかに記載の着用物品。
【0036】
態様13の着用物品によれば、脚回り開口が、斜めに切れ上がるように形成されたショーツ型形状を有していることにより、ボクサーパンツ型形状と比較して、脚回り開口が着用者の脚に引っかかり難く、着用物品の全体をスムーズに引き上げやすい。したがって、胴回り領域が上下方向に過度に伸長してしまうことが抑制され、吸収パッドとの係合部に作用する剪断力が小さくなる。これにより、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0037】
(態様14)
自然状態において、前記前後方向の前側における前記脚回り開口の周縁は、前記左右方向の内側に抉れた形状を有している、態様2~13の何れかに記載の着用物品。
【0038】
態様14の着用物品によれば、着用状態で着用者が前側に脚を動かしたときに、脚回り開口が着用者の脚と干渉し難くなり、着用時の違和感を抑制できる。また、着用動作時に、脚回り開口に着用者の脚を通して上方へ引っ張り上げる際に、脚回り開口が着用者の脚に引っ掛かり難くなる。したがって、胴回り領域が上下方向に伸長することが抑制され、吸収パッドとの係合部に作用する剪断力が小さくなる。これにより、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0039】
(態様15)
自然状態における前記クロッチ領域の前記左右方向における長さは、自然状態における前記着用物品の前記左右方向における長さの25%以上、50%以下である、態様2~14の何れかに記載の着用物品。
【0040】
態様15の着用物品によれば、着用動作時に、脚回り開口が着用者の脚よりも広がりやすく、脚を通しやすいため、着用物品がスムーズに引き上げられ、胴回り領域が上下方向に伸長し難くなる。これにより、フック部材の係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなり、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0041】
(態様16)
前記上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段を有している、態様2~15の何れかに記載の着用物品。
【0042】
態様16の着用物品によれば、伸縮抑制手段が設けられている部分では、上下方向の伸長が抑制されるため、着用物品と吸収パッドとを係合しているフック部材の係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなる。これにより、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0043】
(態様17)
前記上下方向において、前記伸縮抑制手段と前記フック部材とが重複する部分を有している、態様2~16の何れかに記載の着用物品。
【0044】
態様17の着用物品によれば、伸縮抑制手段とフック部材とが重複している部分において、着用物品を構成している生地が上下方向に伸長し難くなる。したがって、フック部材の係合面に対して作用する係合面に沿った方向の力(剪断力)がより小さくなる。これにより、吸収パッドと着用物品との係合をより外れ難くすることができる。
【0045】
(態様18)
胴回り開口を備え、前記胴回り開口の周縁部に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きい、胴回り低伸縮領域を有しており、前記上下方向において、前記伸縮抑制手段は、前記胴回り低伸縮領域から前記フック部材まで連続している、態様2~17の何れかに記載の着用物品。
【0046】
態様18の着用物品によれば、胴回り低伸縮領域とフック部材とが、伸縮抑制手段によって上下に連結されることで、当該連結された部分が、着用物品の胴回り領域において骨格のように機能して、上下方向の伸長が抑制されやすくなる。すなわち、着用動作時に手で掴まれて引っ張り上げられる領域が上下方向に伸長し難くなる。したがって、フック部材の係合面に沿った方向の力が作用し難くなり、吸収パッドと着用物品との係合をより外れ難くすることができる。
【0047】
(態様19)
前記伸縮抑制手段は、左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部と、前記中央伸縮抑制部の前記左右方向の両側に設けられた一対のサイド伸縮抑制部と、を有する、態様2~18の何れかに記載の着用物品。
【0048】
態様19の着用物品によれば、着用動作時に、胴回り領域の両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる際に、サイド伸縮抑制部によって両側部が上下方向に伸長し難くなる。また、中央部にも中央伸縮抑制部が設けられていることから、胴回り領域が全体的に上下方向に伸長し難くなる。したがって、フック部材の係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなり、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0049】
(態様20)
一対の脚回り開口を備え、前記一対の脚回り開口のそれぞれの周縁に沿ったかがり縫い部を有し、前記サイド伸縮抑制部と前記かがり縫い部とが交差する部分を有している、態様2~19の何れかに記載の着用物品。
【0050】
態様20の着用物品によれば、着用動作時に、胴回り領域の両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる力が、サイド伸縮抑制部を介して脚回り開口周縁のかがり縫い部に伝達されやすくなり、脚回り開口が上方へ引き上げられやすくなる。したがって、脚回り開口が着用者の脚に引っ掛かり難く、着用物品がスムーズに引き上げられ、胴回り領域が上下方向に伸長し難くなる。これにより、フック部材の係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなり、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0051】
(態様21)
一対の脚回り開口を備え、前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の下端との間、且つ、前記左右方向において一対の前記脚回り開口の内側端同士の間に位置するクロッチ領域と、前記上下方向において前記脚回り開口の上端と前記着用物品の上端との間に位置する胴回り領域と、を有し、自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の前記一方側の端とを結んだ第1仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、態様2~20の何れかに記載の着用物品。
【0052】
態様21の着用物品によれば、着用動作時に、胴回り領域の両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる際に、第1仮想線に沿って発生する張力が、フック部材の係合面に沿った方向に作用することが抑制される。したがって、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0053】
(態様22)
前記左右方向の中央部に設けられ、前記上下方向に所定の長さを有する中央伸縮抑制部を有し、自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記中央伸縮抑制部の下端とを結んだ第2仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、態様2~21の何れかに記載の着用物品。
【0054】
態様22の着用物品によれば、着用動作時に、胴回り領域の両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる際に、第2仮想線に沿って発生する張力が、フック部材の係合面に沿った方向に作用することが抑制される。したがって、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0055】
(態様23)
前記左右方向の中央部に設けられ、前記上下方向に所定の長さを有する中央伸縮抑制部を有し、自然状態において、前記胴回り領域の上側且つ前記左右方向の一方側の端と、前記クロッチ領域の下側且つ前記左右方向の他方側の端とを結んだ第3仮想線が、前記フック部材と重複する部分を有していない、態様2~22の何れかに記載の着用物品。
【0056】
態様23の着用物品によれば、着用動作時に、胴回り領域の両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる際に、第3仮想線に沿って発生する張力が、フック部材の係合面に沿った方向に作用することが抑制される。したがって、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0057】
(態様24)
態様2~23の何れかに記載の着用物品と併用される吸収パッドであって、伸長状態において互いに交差する縦方向と横方向と厚さ方向とを有し、液吸収性の吸収体を有し、前記雄フック部材及び前記雌フック部材のうち他方のフック部材を備えている、ことを特徴とする吸収パッド。
【0058】
態様24の吸収パッドによれば、着用物品に設けられた一方側のフック部材と係合しやすい他方側のフック部材が設けられることにより、着用物品に対して吸収パッドを安定して係合させることができる。したがって、吸収パッドを係合させた状態で着用物品を上方へ引っ張り上げた場合であっても、両者の係合を外れ難くすることができる。
【0059】
(態様25)
前記厚さ方向に見たときに、前記フック部材は、前記吸収体と重複する部分を有している、態様24に記載の吸収パッド。
【0060】
態様25の吸収パッドによれば、剛性の高い吸収体と重複していることにより、フック部材の厚さ方向における変形が抑制され、平面状に維持されやすくなる。したがって、着用物品のフック部材と係合させやすくすることができる。そして、フック部材が平面状に維持されやすいことにより、着用物品と係合した状態で上方へ引っ張り上げる際に、当該フック部材の上下方向における端部が捲れて係合が剥離してしまうこと(ピーリング)が抑制される。これにより、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0061】
(態様26)
前記フック部材は、接着剤を用いて前記吸収パッドに接合されており、前記フック部材の周縁に沿ってドライエッジを有していない、態様24または25に記載の吸収パッド。
【0062】
態様26の吸収パッドによれば、フック部材の接合面全体に接着剤が設けられ、ドライエッジが形成されていないため、ピーリング等が生じてしまうことが抑制される。したがって、吸収パッドと着用物品との係合を外れ難くすることができる。
【0063】
(態様27)
前記縦方向における長さは300mm以上であり、前記横方向における長さは80mm以上である、態様24~26の何れかに記載の吸収パッド。
【0064】
態様27の吸収パッドによれば、横方向における長さが80mm以上であれば、逆の場合と比較して、フック部材の幅を広くすることができるため、着用物品に対してより強く係合させることができる。また、縦方向における長さが300mm以上であれば、逆の場合と比較して、吸水性能を発揮するために必要な液体吸収性繊維等を保持する十分な面積を確保しやすくなる。
【0065】
(態様28)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンを90重量%以上含んでいる、態様2~27の何れかに記載の着用物品。
【0066】
態様28の着用物品によれば、ポリエステル及びポリエチレンは、綿と比較して伸度が高い素材であり、そのような素材を多く含むことで、より伸び易さを実現できる。また、ポリエステル及びポリエチレンは、非吸水性であり、且つ、高い速乾性を有する素材であるため、着用物品の乾燥性が向上する。
【0067】
(態様29)
着用物品を構成している生地は、吸水性素材を含んでいない、態様2~28の何れかに記載の着用物品。
【0068】
態様29の着用物品によれば、吸水性素材を含まないことで、生地が水を含みにくくなる。それにより、洗濯後の乾燥時間を短縮でき、着用物品の乾燥性を向上させる。
【0069】
(態様30)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を10重量%未満含んでいる、態様28又は29に記載の着用物品。
【0070】
態様30の着用物品によれば、着用物品を構成している生地のうち、90重量%以上はポリエステル又はポリエチレンであるので、伸縮性がより高い素材が残りの10重量%未満に含まれることで、良好な乾燥性を担保しつつ、伸縮性の向上を実現できる。
【0071】
(態様31)
着用物品を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を含む領域と含まない領域とを有する、態様2~30の何れかに記載の着用物品。
【0072】
態様30の着用物品によれば、特にフィット性が必要なところに伸縮性の高い素材を配置する(すなわち、より伸縮性が高い素材を含む領域を形成する)ことで、着用物品の一部に限定してフィット性をより高めることができ、機能性が向上する。また、一部のフィット性を高めるだけでなく、例えば、より伸縮性が高い素材を含む領域を、間隔を空けて複数箇所設ける等により、着用物品の全体としてのフィット感を向上させることもできる。
【0073】
(態様31)
係合領域には、本体部を構成する編み生地とは異なる別体のシート部材が設けられており、当該別体のシート部材は、ポリエチレン又はポリエステルで構成されている、態様2~30の何れかに記載の着用物品。
【0074】
態様31の着用物品によれば、別体のシート部材は本体部に接合されるため、本体部と同様に、別体のシート部材も高い速乾性を有する素材によって構成されていることで、着用物品の乾燥性が向上する。
【0075】
(態様32)
別体のシート部材は、当該別体のシート部材の周縁部に沿って糸で縫い付けることにより、着用物品を構成している生地に接合される、態様31に記載の着用物品。
【0076】
態様32の着用物品によれば、糸で縫われた周縁部よりも内側の領域は、生地と別体のシート部材とが厚さ方向に密着(接合)しておらず、別体のシート部材と生地との間に空間が形成されている。つまり、別体のシート部材全体が生地に接合されている状態ではないため、全体が接合されている場合と比較すると、別体のシート部材のうち生地と接する面において空気と接触する面積が広くなり、水分を蒸発させやすくなる。それにより、乾燥性が向上する。
【0077】
(態様33)
厚さ方向に見たときに、別体のシート部材と伸縮抑制部とが重複する部分を有する、態様31又は32に記載の着用物品。
【0078】
態様33の着用物品によれば、伸縮抑制部が設けられていることにより、着用物品を構成している生地に収縮力の変化が生じ、生地の肌側面と別体のシート部材の非肌側面との間に、空間がより形成されやすくなる。そのような空間から空気が逃げやすくなることで、乾燥性が向上する。
【0079】
(態様34)
別体のシート部材の大きさは、上下方向の長さが50mm以下、且つ、左右方向の長さが150mm以下である、態様31~33の何れかに記載の着用物品。
【0080】
態様34の着用物品によれば、別体のシート部材が大きくなりすぎると、当該シート部材の部分が乾燥しにくくなるおそれがあるが、上述した範囲内の大きさとすることで、生地に対して十分な係合力を維持できる面積を確保しつつ、乾燥しやすくなる。
【0081】
(態様35)
別体のシート部材の厚さは、3mm以下である、態様31~34の何れかに記載の着用物品。
【0082】
態様35の着用物品によれば、生地に対して十分な係合力を維持できる厚みを確保しつつ、厚すぎないことで、乾燥しやすさも維持できる。
【0083】
(態様36)
着用物品の前側の胴回り領域と後側の胴回り領域とを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態において、上下方向において前側係合領域の上端と後側係合領域の上端との間、且つ、左右方向において前側係合領域及び後側係合領域の最も一方側の端と前側係合領域及び後側係合領域の最も他方側の端との間の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さい、態様2~35の何れかに記載の着用物品。
【0084】
態様36の着用物品によれば、着用物品を構成している生地のうち領域S1は、吸収パッドの装着時に吸収パッドによって覆われる領域である。そのため、仮に、着用物品の洗濯後の乾燥が若干不十分であったり、別の要因で吸収パッドを装着後に着用物品が濡れることがあった場合に、領域S1は、吸収パッドによって覆われていることでその後の乾燥性が低くなり易いが、着用物品を構成する生地において、領域S1の面積が領域S2の面積よりも小さいことにより、逆の場合と比較して、着用物品の全体の乾燥性の低下を抑制しやすい。
【0085】
(態様37)
着用物品の前側の胴回り領域と後側の胴回り領域とを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態において、上下方向において前側係合領域の上端と後側係合領域の上端との間、且つ、左右方向において前側係合領域及び後側係合領域の最も一方側の端と前側係合領域及び後側係合領域の最も他方側の端との間の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも大きい、態様2~35の何れかに記載の着用物品。
【0086】
態様37の着用物品によれば、着用物品の洗濯後の乾燥が若干不十分であっても、領域S1は、吸収パッドによって覆われるため肌が濡れにくく、着用感が悪化しにくい。
【0087】
===実施形態===
本発明の実施形態に係る着用物品の一例として、尿等の排泄物を吸収する吸収パッド100を内部に取り付けて使用することが可能な、パッド併用タイプのパンツ型着用物品1(以下では、単に「着用物品1」とも呼ぶ)について説明する。
【0088】
<着用物品1の基本的構成>
図1は、本実施形態に係る着用物品1の概略斜視図である。着用物品1は、
図1に示すパンツ型状態において、互いに直交する「上下方向」と「左右方向」と「前後方向」とを有している。上下方向のうち、着用者が着用物品1を着用した状態で着用者の胴側となる方を「上側」とし、着用者の股下側となる方を「下側」とする。また、前後方向のうち、着用状態で着用者の腹側となる方を「前側」とし、着用者の背側となる方を「後側」とする。また、着用物品1を構成している各資材(シート部材)は、各々「厚さ方向」を有している。厚さ方向のうち、着用者が着用物品1を着用した状態で着用者の肌に近い側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0089】
本実施形態の着用物品1は、上下方向の上側に設けられた胴回り開口BHと、上下方向の下側且つ左右方向の両側に設けられた一対の脚回り開口LH,LHを備えたパンツ型に形成されている。パンツ型の内側には、吸収パッド100を着脱自在に取り付け可能であり、吸収パッド100を交換することで、着用物品1自体は繰り返して使用(着用)することができる。例えば、吸収パッド100が取り付けられた着用物品1をユーザー(使用者)が着用した状態で尿等の排泄が行われた場合、排泄物を吸収して汚れた吸収パッド100を着用物品1から取り外して新しい吸収パッド100に交換することで、着用物品1を再利用することが可能である。また、着用物品1は洗濯することも可能であり、長期間(例えば2週間以上)にわたって衛生的に使用することができる。
【0090】
図2Aは、自然状態において着用物品1を前後方向の前側から見たときの平面図である。
図2Bは、自然状態において着用物品1を前後方向の後側から見たときの平面図である。
【0091】
ここで、「自然状態」とは、着用物品1を所定時間放置したときの状態である。例えば、折り畳まれて収容されている着用物品1をパッケージから取り出した後、歪が生じないように静かに広げて机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させ、着用物品1の表面にほとんど皺が残らないようにした状態を自然状態とする。
【0092】
着用物品1は、本体部10と、伸縮抑制部20と、係合領域30とを有している。
【0093】
本体部10は、着用物品1の外装を構成する部位であり、伸縮性を有するシート部材によって形成されている。本実施形態において、本体部10を形成するシート部材は、「織り生地」若しくは「編み生地」によって構成されており、上下方向及び左右方向にそれぞれ伸縮性を有している。なお、「織り生地」とは、平行に並べた多数のたて糸に対して、よこ糸を直角に交錯させて平面状に構成した生地であり、例えば「布帛」と呼ばれる生地を例示できる。織り生地では、伸縮性の高い糸を用いたり、糸の密度を変更したりすることで、伸縮性を有する織り生地を形成することができる。一方、「編み生地」とは、糸をループにして、このループに他のループを連結させて平面状に構成した生地であり、例えば「ニット」と呼ばれる生地を例示できる。編み生地は多数のループを連結させることで構成されているため、各々のループを変形させることにより、小さな力でも大きく伸縮させることができる。以下では、編み生地を用いて本体部10(着用物品1)が構成されているものとして説明を行う。
【0094】
本体部10は、上下方向に沿って筒状に編まれた、所謂丸編み生地によって構成されている。筒状の本体部10の上端部は、一部が上下方向の上側から下側に折り返されることで、胴回り折り返し部11が形成されている。この胴回り折り返し部11によって、丸編み生地の上端部(すなわち、胴回り開口BH)における糸のほつれが抑制される。さらに、胴回り折り返し部11には、他の部分よりも伸縮し難い糸が編み込まれている。これにより、胴回り開口BHの周縁に沿った収縮力が強くなり、着用物品1の着用時において、胴回り開口BHのずれ落ちが抑制され、フィット性を高めることができる。なお、丸編み生地の上端部を折り返すのではなく、当該上端部に別体のシート部材を積層させ接合することによって胴回り開口BHの周縁に沿って大きな収縮力が作用するようにしても良い。
【0095】
一方、本体部10の下端部では、丸編み生地の前側と後側とが縫い合わされた股下縫い部12が形成されている。股下縫い部12によって、本体部10の下端部が接合されることで、筒状の丸編み生地が、一対の脚回り開口LH,LHを有するパンツ型に形成される(後述する
図3参照)。本実施形態において、股下縫い部12は、着用物品1の上下方向における最も下側に位置している(
図2A及び
図2B参照)。
【0096】
一対の脚回り開口LH,LHは、本体部10の一部を切断することによって形成される(
図3参照)。そして、各々の脚回り開口LH,LHの周縁部には、脚回りかがり縫い部13が形成されている。脚回りかがり縫い部13は、脚回り開口LHの周縁に沿って、編み生地の端を糸で巻き込むように縫うことで形成され、これにより、脚回り開口LHの切断箇所における糸のほつれが抑制される。また、脚回りかがり縫い部13が形成されることによって、着用時における脚回り開口LHのフィット性が高められ、尿等の排泄物の横漏れを抑制しやすくすることができる。
【0097】
図2A及び
図2Bに示されるように、自然状態の着用物品1の上下方向において、脚回り開口LHの上端をLHtとする。上端LHtは、左右方向において、最も外側の端よりもやや内側に位置している。同様に、自然状態の着用物品1の上下方向において、脚回り開口LHの下端をLHbとする。下端LHbは、着用物品1の上下方向における最も下側、且つ、脚回り開口LHの左右方向における最も内側に位置している。
【0098】
着用物品1で、上下方向において脚回り開口LHの上端LHtと下端LHb(すなわち、着用物品1の下端)との間、且つ、左右方向において一対の脚回り開口LHの下端LHb,LHbの間(すなわち、脚回り開口LHの内側端同士の間)の斜線部で示される領域をクロッチ領域CRと定義する。クロッチ領域CRは、着用物品1の着用時に、主に着用者(ユーザー)の股間部に位置する領域であり、吸収パッド100を取り付けた際には、該吸収パッド100の少なくとも一部を保持する領域でもある。また、着用物品1で、上下方向において脚回り開口LHの上端LHtと着用物品1の上端との間に位置する領域を胴回り領域BRと定義する。胴回り領域BRは、着用物品1の着用時に、主に着用者(ユーザー)の胴回り部(腹部及び臀部~腰部)に位置する領域である。
【0099】
伸縮抑制部20は、着用物品1の上下方向における伸縮を抑制する伸縮抑制手段としての機能を有する部位である。本実施形態では、上下方向に所定の長さを有する複数の伸縮抑制部20が着用物品1の本体部10の所定の位置に設けられている。具体的には、着用物品1(本体部10)の前後方向の前側において、左右方向の中央部に前側中央伸縮抑制部21が設けられ、前側中央伸縮抑制部21の左右方向両側に一対の前側サイド伸縮抑制部23,23(両側部伸縮抑制手段に相当)が設けられている(
図2A参照)。同様に、着用物品1(本体部10)の前後方向の後側において、左右方向の中央部に後側中央伸縮抑制部22が設けられ、後側中央伸縮抑制部22の左右方向両側に一対の後側サイド伸縮抑制部24,24(両側部伸縮抑制手段)が設けられている(
図2B参照)。
【0100】
着用者(ユーザー)が着用物品1を着用する際には、一対の脚回り開口LHに脚を通した後、胴回り領域BRを掴んで股間部に引き上げる動作が行われるが、上述したように、本体部10は伸縮性を有する編み生地(若しくは織り生地)によって形成されている。そのため、着用物品1を引き上げる動作において本体部10が上下方向に過度に伸長してしまうと、着用物品1を引き上げ難くなるおそれがある。これに対して、本実施形態の着用物品1では、伸縮抑制部20が設けられた部分において、本体部10の上下方向の伸縮(伸長)が抑制されるため、着用物品1を上方に引き上やすくすることができる。
【0101】
伸縮抑制部20(伸縮抑制手段)は、本体部10を構成している編み生地に対して、上下方向に沿って当該編み生地の伸縮性を低減する加工が施されることによって実現される。例えば、本体部10を構成する編み生地の所定の領域に、伸縮性の低い糸を縫い込む(所謂「ステッチ」)加工を行うことで上下方向における伸縮性を低減することができる。また、編み生地を編む際に、所定の部位において編み方のパターンを変更したり、糸の伸縮性を変更したりすることで、編み生地中の一部で伸縮性を低減するようにしても良い。
【0102】
その他、シリコンやラバー等の部材を溶着や圧着する加工を施すことによって編み生地の伸縮性を低減しても良いし、編み生地中の所定の箇所に圧搾加工(エンボス加工等)を施すことで伸縮性を低減させるのであっても良い。
【0103】
係合領域30は、着用物品1に対して吸収パッド100を着脱自在に取り付けるための領域であり、本体部10の厚さ方向の肌側に設けられている。本実施形態では、前後方向の前側において、胴回り領域BRの肌側面に矩形状の前側係合領域31が設けられ(
図2A参照)、前後方向の後側において、胴回り領域BRの肌側面に矩形状の後側係合領域32が設けられている。
【0104】
着用物品1に設けられている係合領域30と、吸収パッド100に設けられる吸収パッド係合領域120(後述する
図4参照)とを互いに係合させることによって、着用物品1の内側(肌側)に吸収パッド100を取り付けて保持することができる。また、係合領域30は、ユーザーが着用物品1に対して吸収パッド100を取り付ける際の、基準(つまり目印)としての機能も有し、当該係合領域30を視認することにより、着用物品1の正しい位置に吸収パッド100を取り付けることが可能となる。
【0105】
本実施形態において、係合領域30には、フック部材FKが設けられている。フック部材FKは、基材シートの表面に複数の係合用突起が設けられた雄フック部材FK1、及び、基材シートの表面に複数の係合用ループが設けられた雌フック部材FK2のうち何れか一方の部材である。雄フック部材FK1と雌フック部材FK2とを対向させて、雄フック部材FK1の係合用突起を、雌フック部材FK2の係合用ループと係合させることにより、両者を係合させることが可能である。以下では、着用物品1の係合領域30に雌フック部材FK2が設けられているものとして説明を行う。なお、フック部材FK(FK1,FK2)としては、例えば、公知の面ファスナーを使用できる。また、視認性を高めるために、フック部材FKの色は、本体部10を構成する編み生地とは異なる色を有していることがより好ましい。
【0106】
ここで、着用物品1の製造方法の概略について説明する。
図3A~
図3Cは、着用物品1の製造方法について説明する図である。同
図3では、着用物品1が、上述した「編み生地」によって形成される場合について説明する。
【0107】
先ず、
図3Aに示されるように、糸を円形にぐるぐると編むことによって筒状の編み生地10A(所謂「丸編み」)を形成する。このとき、円筒状に丸編みされた生地10Aの中心軸の方向(
図1の上下方向に相当)に沿って、伸縮抑制部20(21~24)も形成される。伸縮抑制部20は、上述したように、編みのパターンを変更することや、異なる糸を縫い込むこと等の加工を施すことによって形成される。なお、丸編み生地10Aの形成工程(
図3A)とは異なる工程において伸縮抑制部20が形成されるのであっても良い。例えば、丸編み生地10Aが形成された後で、別途伸縮抑制部20(伸縮抑制手段)を形成するための加工が施されるのであっても良い。
【0108】
次いで、丸編み生地10Aを上下方向(軸方向)の所定の位置で切断して、
図3Bのように、個々の着用物品1を構成する本体部10を切り出す。ここでは、上下方向における位置C1及び位置C2にて丸編み生地10Aが切断される(
図3A参照)。切断位置C1が本体部10の上下方向の上側になり、切断位置C2が本体部10上下方向の下側になる。また、本体部10から脚回り開口LHとなる部分が切断される。
図3Bでは、筒状の本体部10の下端部において、左右方向の両側部が斜めに切断されることにより、一対の脚回り開口LH,LHとなる部分が形成される。
【0109】
次いで、
図3Cのように、筒状の本体部10の上下方向の上端部が折り返され、胴回り折り返し部11が形成される。また、筒状の本体部10の上下方向の下端部において、前側の下端縁12fと、後側の下端縁12bとが前後に縫い合わされて股下縫い部12が形成される。これにより、筒状の本体部10がパンツ型に形成される。そして、切断された脚回り開口LHの周縁に沿ってかがり縫いが行われ、脚回りかがり縫い部13が形成される。最後に、本体部10の内側(肌側)面に、フック部材FK(雌フック部材FK2)が取り付けられることにより、係合領域30(31,32)が形成される。これにより、
図1や
図2で説明した着用物品1が形成される。なお、
図3Cで説明した加工が実施される順番は変更されても良い。
【0110】
<着用物品1の伸縮性について>
着用物品1は、上下方向及び左右方向に伸縮性を有することを説明したが、具体的には、本体部10を構成している編み生地からサンプル片を切り出して引張試験を行った際に、以下の条件を満たしたときに、伸縮性を有するものとする。すなわち、50mm×200mmのサンプル片を、それぞれ上下方向及び左右方向に5Nの力で引っ張ったときの当該サンプル片の伸び率の最大値が200%以上である場合に、伸縮性を有するものとする。
【0111】
引張試験は、例えば下記のようにして行うことができる。先ず、着用物品1の本体部10から、上下方向に220mm、左右方向に50mmの長さを有する矩形状のサンプル片を切り出す。なお、サンプル片の上下方向において、220mmのうち両端部の10mm分は、それぞれ引張試験機のチャックの掴みしろである。また、サンプル片を切り出す際には、伸縮抑制部20及び係合領域30(フック部材FK)が含まれないようにすることが望ましい。次に、切り出したサンプル片の上下方向の両端部10mmmずつを公知の引っ張り試験器(例えば、インストロン社製万能材料試験機)のチャックで挟み込む。このとき、引っ張り試験器のチャック間の間隔G0=200mmとする。この状態からチャック間の間隔を開く方向に200mm/min程度の引っ張り速度でサンプル片を引っ張って伸長させ、引張試験による引っ張り力(力の大きさ)が5Nとなったときのチャック間の間隔G1(mm)を測定する。そして、サンプル片の引張前の長さに対する引っ張り後の長さ(=G1/G0)の値を算出し、伸び率として記録する。この試験を複数回繰り返し、伸び率(G1/G0)の最大値を求める。その結果、伸び率(G1/G0)の最大値が200%以上であれば、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、上下方向において伸縮性を有しているものとする。なお、チャックの掴みしろの大きさは適宜変更可能である。
【0112】
同様に、着用物品1の本体部10から、左右方向に220mm、上下方向に50mmの長さを有する矩形状のサンプル片を切り出して、上記の手順に従って左右方向の引張試験を行う。そして、伸び率が200%以上であれば、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、左右方向において伸縮性を有しているものとする。なお、着用物品1から左右方向に長いサンプル片を切り出す際には、伸縮抑制部20が含まれても良いものとする。伸縮抑制部20は、主に上下方向における伸縮性を低減させる機能を有しており、左右方向における伸縮性の測定には大きな影響を及ぼさないためである。
【0113】
<吸収パッド100の基本構成>
図4は、吸収パッド100の平面図、及び、断面図である。吸収パッド100は、平面視略長方形状であり、互いに直交する縦方向と幅方向と厚さ方向とを有する。縦方向は、着用物品1に取り付ける際に、着用物品1の上下方向(及び前後方向)に沿う方向であり、横方向は、着用物品1に取り付ける際に、着用物品1の左右方向に沿う方向である。縦方向の前側は、吸収パッド100を着用物品1に取り付けたときに着用者の腹側(着用物品1の前後方向の前側)に位置する側であり、縦方向の後側は、吸収パッド100を着用物品1に取り付けたときに着用者の背側(着用物品1の前後方向の後側)に位置する側であるものとする。
【0114】
吸収パッド100は、吸収体110と、吸収体110の肌側に配置されたトップシート111と、吸収体110の非肌側に配置されたバックシート112と、トップシート111よりも肌側において、左右方向の両側に一対設けられたサイドシート115,115を有している。また、着用物品1の係合領域30と係合するための吸収パッド係合領域120を有している。
【0115】
吸収体110は、高分子吸収剤(吸収性ポリマー:super absorbent polymer、「SAP」とも言う)と、パルプ繊維等の液体吸収性繊維とを有し、本実施形態では、
図4の破線で示されるように縦方向の中央部が左右方向の内側に窪んだ、略砂時計形状に形成されている。SAPを含有する液体吸収性繊維は、液透過性のコアラップシート(不図示)で覆われていても良い。また、吸収体110の構成は上記に限定されず、例えば、親水性のシートにSAP層を付着させたSAPシートや、液体吸収性繊維をエアレイド法によってシート状に成形したエアレイドシート等を例示できる。
【0116】
トップシート111は、吸収体110の肌側に配置された液透過性のシート部材であり、吸収パッド100の使用時には、装着者の肌や排泄口と直接接触する部材である。そのため、トップシート111はなるべく柔軟で肌当たりが柔らかいシート部材であることが望ましい。本実施形態のトップシート111を構成するシート部材としては、例えば、エアスルー不織布等を例示できる。また、吸収体110とトップシート111との厚さ方向に間に、トップシート111と略同様に液透過性のセカンドシート(
図4では不図示)が設けられていても良い。
【0117】
バックシート112は、吸収パッド100の厚さ方向において吸収体110よりも非肌側に配置された液不透過性且つ通気性のシート部材である。このバックシート112が設けられていることにより、吸収パッド100によって吸収された尿等の排泄液が、厚さ方向の非肌側に浸透してしまうことが抑制される。したがって、吸収パッド100を着用物品1の肌側に取り付けて使用する際に、吸収パッド100によって吸収された尿等の排泄液が、非肌側の着用物品1に浸透してしまうことを抑制できる。本実施形態のバックシート112を構成するシート部材としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンの樹脂フィルム等を例示できる。
【0118】
サイドシート115は、吸収パッド100の肌側面における横方向の両側部を構成する部材である。吸収パッド100の使用時には、サイドシート115も着用者の肌と直接接触する可能性が高いため、トップシート111と同様に、なるべく柔軟なシート部材であることが望ましい。本実施形態のサイドシート115を構成するシート部材としては、例えば、エアスルー不織布等を例示できる。
【0119】
また、一対のサイドシート115,115の横方向における内側端部には、糸ゴム等の吸収パッド弾性部材116がそれぞれ縦方向に沿って伸長された状態で設けられている。
【0120】
サイドシート115の横方向における内側端は、
図4のA-A断面図に示されるように横方向の外側に折り返されており、当該折り返された部分に挟み込まれるようにして吸収パッド弾性部材116が取り付けられている。吸収パッド100の使用時には、吸収パッド弾性部材116が発現する伸縮性に基づいて、一対のサイドシート115,115の内側端部が厚さ方向の肌側に起立して、防漏壁(立体ギャザー)として機能することにより、尿等の横漏れを抑制することができる。
【0121】
吸収パッド係合領域120は、バックシート112の非肌側面に設けられ、着用物品1の係合領域30と着脱自在に係合する部位であり、縦方向の前側端部に配置される前側吸収パッド係合領域121と、縦方向の後側端部に配置される後側吸収パッド係合領域122と、を有している。吸収パッド係合領域120には、着用物品1の係合領域30に設けられた雌フック部材FK2と係合する雄フック部材FK1が設けられる。また、上述した雌フック部材FK2(係合領域30)と同様の理由により、ユーザーが係合位置を視認しやすいよう、雄フック部材FK1はバックシート112の色とは異なる色で形成されていることが好ましい。
【0122】
吸収パッド100を着用物品1に取り付けて使用する際には、吸収パッド100の縦方向における中央位置CLにて、吸収パッド100の肌側面が内側となるように二つ折りにする。そして、二つ折りにした吸収パッド100を着用物品1の胴回り開口BHの上側から差し入れ、吸収パッド100の縦方向における中央位置CLが、着用物品1の最下端部(股下縫い部12と重なる位置)に配置されるように調整する。この状態で、前側吸収パッド係合領域121(雄フック部材FK1)を、着用物品1の前側係合領域31(雌フック部材FK2)と係合させ、後側吸収パッド係合領域122(雄フック部材FK1)を着用物品1の後側係合領域32(雌フック部材FK2)と係合させる。なお、吸収パッド係合領域120の縦方向(上下方向)における位置は、吸収パッド100を着用物品1の内側に差し入れた状態において、着用物品1の係合領域30と重複するように、予め調整されているため、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2とを簡単に係合させることができる。このようにすることで、着用物品1に対して吸収パッド100を正しく取り付けることができる。
【0123】
<吸収パッド100を併用する際の着用物品1の着用動作について>
続いて、吸収パッド100を併用する際の着用物品1の具体的な着用動作について説明する。
【0124】
先ず、比較例として、従来型のショーツ型着用物品2(以下、「着用物品2」とも呼ぶ)において吸収パッド100を併用して着用する場合の動作について説明する。
図5A,5Bは、比較例の着用物品2と吸収パッド100とを併用する場合の着用物品2の着用方法について説明する図である。
【0125】
比較例の着用物品2は、従来型のパンツ型の着用物品であり、着用物品1と同様に伸縮性を備えた生地によって構成され、所定の雌フック部材が設けられた係合領域を備えている。また、吸収パッド100は、
図4で説明した吸収パッド100と略同様のものを使用可能であり、着用物品1側の雌フック部材と係合可能な雄フック部材が設けられた係合領域を備えている。
【0126】
比較例において、着用物品2と吸収パッド100とを併用する場合、先ず、
図5Aのように、着用物品2に吸収パッド100を取り付ける。すなわち、着用物品2の雌フック部材と、吸収パッド100の雄フック部材とを係合させる。そして、吸収パッド100を取り付けた状態で、着用物品2の脚回り開口LH,LHに着用者の両脚を通して、膝上辺りまで引き上げる。なお、着用物品2に着用者の脚を通した後で吸収パッド100を取り付けるのであってもよい。
【0127】
次いで、
図5Bのように、着用物品2の胴回り開口付近(胴回り領域の上端部)を手で掴んで、着用者の股間部まで引っ張り上げる動作が行われる。このとき、着用物品2を上側に引っ張り上げる力が、吸収パッド100と着用物品2とを係合しているフック部材FK(雄フック部材及び雌フック部材)の係合力よりも大きいと、フック部材の係合が外れてしまう場合がある。すなわち、雄フック部材と雌フック部材との係合面に沿った方向に大きな剪断力が作用して、フック部材同士の係合が外れてしまう場合がある。そして、吸収パッド100と着用物品2との係合が外れると、吸収パッド100に対して引っ張り力が作用し難くなり、着用者の股間部にフィットさせることが難しくなる。
【0128】
特に、着用物品2は伸縮性の高い生地で構成されているため、フック部材同士の係合が外れた場合、着用物品2が
図5Bのように上下方向に大きく伸長しやすくなる。この場合、吸収パッド100を着用者の股下部にフィットさせるためには、さらに大きな力で着用物品2を引っ張ったり、引っ張る距離を長くしたりする必要が生じ、着用物品2が過度に伸長して生地が傷んだり破れたりしてしまうおそれがある。また、着用物品2の伸長に伴って吸収パッド100の位置ずれが生じやすくなるため、着用者の股下部において吸収パッド100を適切にフィットさせることが難しくなるおそれがある。
【0129】
次に、本実施形態の着用物品1において吸収パッド100を併用して着用する場合の動作について説明する。
図6A~
図6Cは、着用物品1と吸収パッド100とを併用する場合の着用物品1の着用方法について説明する図である。
【0130】
本実施形態では、先ず、着用物品1に対して吸収パッド100を取り付ける。吸収パッド100の取り付けは、上述したように、吸収パッド100の吸収パッド係合領域120に設けられた雄フック部材FK1と、着用物品1の係合領域30に設けられた雌フック部材FK2とを係合させることによって行われる。そして、
図6Aのように、吸収パッド100が取り付けられた状態の着用物品1の脚回り開口LH,LHに着用者の両脚を通して、膝上辺りまで引き上げる。
【0131】
次いで、着用物品1の胴回り領域BRを掴んで、上方へ引っ張り上げる動作が行われる。
図6Bでは、着用者が両手を用いて胴回り領域BRの左右方向両側部を掴んで上方へ引っ張っている。本実施形態では、比較例の着用物品2と比較して係合力が十分に強いフック部材FK(雄フック部材FK1,雌フック部材FK2)を用いて、吸収パッド100と着用物品1とが係合されている。具体的には、着用物品1を自然状態から上下方向に2倍の長さまで伸長させる程度の力で引っ張り上げた場合であっても、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2との係合が外れないようなフック部材FKを用いて吸収パッド100と着用物品1とが係合されている。したがって、着用物品1から吸収パッド100を離脱させることなく、両者を共に引っ張り上げることができる。また、着用物品1には伸縮抑制手段(伸縮抑制部20等)が設けられているため、胴回り領域BRが過度に伸長してしまうことが抑制され、着用物品1と共に吸収パッド100を引き上げやすい。
【0132】
着用物品1が着用者の股下部付近まで引っ張り上げられた後、
図6Cのように、着用物品1及び吸収パッド100の位置調整が行われる。着用物品1では、フック部材FK1,FK2を介して着用物品1と吸収パッド100とがしっかりと係合されているため、着用物品1を引っ張って位置を調整することで、吸収パッド100の位置も連動して調整することができる。したがって、吸収パッド100を着用者の股間部に適切にフィットさせることができる。
【0133】
このように、本実施形態では、係合が外れ難いフック部材FKを用いて吸収パッド100を着用物品1に係合させることで、着用動作をスムーズに行うことが可能となっている。ここで、フック部材FKの「係合が外れ難い」とは以下の状態を言う。すなわち、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2の、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力をF1として、着用物品1の胴回り領域BRの上下方向において、係合領域30(雌フック部材FK2)の下端よりも上側、且つ、着用物品1の上端から20mmまでの領域を、自然状態から上下方向に2倍の長さに伸長させた状態(2倍伸長状態)とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重をF2としたときに、F1がF2よりも大きい場合に、係合が外れ難いものとする。
【0134】
図7A及び
図7Bは、着用物品1を上下方向に伸長させる際の最大引張荷重を測定する方法について説明する図である。
図7Aは、着用物品1の胴回り領域BRのうち、引張試験の対象となる領域を表している。先ず、自然状態の着用物品1の前後方向の前側(「前身頃」とも呼ぶ)若しくは後側(「後身頃」とも呼ぶ)のうち、引張試験の対象となる領域として
図7Aの斜線部で示される引張領域TAを設定する。引張領域TAは、胴回り領域BRのうち着用動作時に手で掴んで引っ張られる部分であって、係合領域30の全体を含む部分である。具体的には、上下方向において、係合領域30の下端位置TAbよりも上側、且つ、着用物品1の上端から下側に20mmの位置TAtまでの、上下方向の長さLTAの部分である。引張領域TAの範囲を、位置TAtよりも下側としたのは、
図6Bのように着用物品1を引っ張り上げる際に、実際に着用者の指が引っかかって力が作用する部分が、着用物品1の上端よりも20mm以上離れた位置となるためである。
【0135】
図7Aでは、上下方向において、斜線部で示される引張領域TAの上端部及び下端部にそれぞれ所定の長さを有する領域GAを含む部分が、試験片として着用物品1の前身頃から切り出される。領域GAは、引張試験機のチャックで掴むための掴みしろとなる部分である。また、後身頃側から試験片を切り出す場合も、前身頃側と同様に、着用物品1の上端から下側に20mmの位置TAtと、係合領域30の下端位置TAbとの間に挟まれる引張領域TA、及び、上下の掴みしろとなる領域GAを切り出せばよい。
【0136】
切り出した試験片(引張領域TA)について、上下方向において引張試験を行う。
図7Bは、試験片を上下方向に引っ張る場合について説明する図である。引張試験は上述した公知の引っ張り試験器(例えば、インストロン社製万能材料試験機)を用いて行うことができる。上下方向の引張試験を行う際には、引っ張り試験器のチャックに、試験片の左右方向の全域を掴めるようなアダプタ等を取り付けて、試験片の領域GA(掴みしろ)部分を上下にそれぞれ挟み込む。そして、試験片に皺ができないようにチャック間の間隔G
0を、引張領域TAの上下方向における長さLTAとなるように調節する(G
0=LTA)。この状態からチャック間の間隔を開く方向に200mm/min程度の速度で試験片を上下に伸長させ、チャック間の間隔G
1=2LTAとなるまでに検出される最大引張荷重(N)を記録する。この試験を複数回繰り返し、最大引張荷重(N)の平均値を求める。これにより、引張領域TAを自然状態から上下方向に2倍の長さに伸長した状態(2倍伸長状態)とするまでの最大引張荷重が得られる。そして、この最大引張荷重を引張領域TAの面積で割ることで、自然状態から上下方向に2倍の長さに伸長させるまでの単位面積当たりの最大引張荷重(上述したF2に相当)が求められる。
【0137】
図8A~
図8Cは、雄フック部材と雌フック部材との係合力を測定する方法について説明する図である。係合力の測定は、雄フック部材のサンプル片501と雌フック部材のサンプル片502とを用意して両者を互いに係合させ、係合面に沿って反対方向に引っ張ったときに、係合が外れるまでの最大荷重を測定することによって行われる。
【0138】
図8Aは、係合力測定に用いられる雄フック部材のサンプル片501について説明する図である。サンプル片501は、所定の大きさにカットされた基材シートに測定対象となる雄フック部材125を貼付したものである。基材シートは剥離加工フィルム若しくは不織布により構成され、着用物品1の上下方向に沿った方向であるMD方向に50mm、着用物品1の左右方向に沿った方向であるCD方向に50mmの大きさを有する。但し、基材シートの大きさは適宜変更しても良い。また、基材シートに貼付される雄フック部材125のMD方向における長さをL125、CD方向における長さをW125とし、基材シートのMD方向における一方側(
図8Aでは左側)の端から5mm離間した位置に該雄フック部材125が離脱不能に貼付されるものとする。
【0139】
図8Bは、係合力測定に用いられる雌フック部材のサンプル片502について説明する図である。サンプル片502は、所定の大きさを有する直方体状の基板に測定対象となる雌フック部材35を巻き付けて固定したものである。基板は、MD方向に50mm、CD方向に90mmの大きさを有するアクリル板である。当該基板のMD方向に沿って雌フック部材35を巻き付け、厚さ方向の一方側の面にテープで固定する。但し、基板の大きさはサンプル片501の大きさに応じて適宜変更しても良い。
【0140】
サンプル片501,502の準備が出来たら、サンプル片501の雄フック部材125とサンプル片502の雌フック部材35とを厚さ方向に対向するように配置して、
図8Cのように係合させる。フック部材同士を係合させる際には、互いのMD方向が平行となるように軽く対向させ、圧着ローラーを用いて、厚さ方向に2kgの荷重をかけながらCD方向に一往復させることで、雄フック部材125と雌フック部材35とがしっかりと係合した状態となるようにする。
【0141】
次いで、係合した状態のサンプル片501,502のMD方向の両端部を引っ張り試験機のチャックでそれぞれ挟みこむ。このとき、MD方向におけるチャック間の間隔は100mmとする。そして、ロードセル5kg、引っ張り速度100mm/minの条件でMD方向の両側に引っ張り、雄フック部材125と雌フック部材35との係合が外れるまでの最大引張荷重を測定する。この測定をn回(例えば5回)繰り返して、その平均値を最大引張荷重値とする。算出された最大引張荷重値を雄フック部材125の面積(L35×W35)で割ることで、雄フック部材125と雌フック部材35との単位面積当たりの係合力(上述したF1に相当)が求められる。
【0142】
そして、着用物品1の係合領域30に設けられる雌フック部材FK2として雌フック部材35を用い、吸収パッド100の吸収パッド係合領域120に設けられる雄フック部材FK1として雄フック部材125を用いたときに、上述した単位面積当たりの係合力F1が、着用物品1を自然状態から2倍伸長状態とするまでの単位面積当たりの最大引張荷重F2よりも大きければ(FK1>FK2)、フック部材FKの係合が外れ難くなる。つまり、着用物品1の着用動作時において、着用物品1の胴回り領域BRのうち所定の領域(引張領域TA)が上下方向に引っ張られたときの単位面積当たりの力の大きさよりも、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2との係合面に沿った方向における単位面積当たりの力の方が強ければ、着用物品1を引っ張る力に抗して、フック部材FKの係合が維持されやすくなる。したがって、吸収パッド100を取り付けた状態で着用物品1を引っ張り上げる際に、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0143】
図9は、複数種類のフック部材を用いて
図8で説明した係合力の測定を行った結果及びその評価を示す表である。フック部材の係合力の測定は、雄フック部材125としてA~Dの4種類、雌フック部材35としてa~cの3種類のフック部材を使用し、これらについて、測定No.1~10の10通りの組み合わせについて測定を行った。また、それぞれの組み合わせについて係合力の評価を行った。係合力の評価は、互いに係合させた雄フック部材125と雌フック部材35とを係合面に沿った方向(剪断方向)に引っ張ったときの係合の外れ難さについて、複数人(例えば10人)の被検者による評価を表している。係合した状態のフック部材を各々の被検者が剪断方向に引っ張ったときに、被検者全員がフック部材の係合を外すことができなかった場合は、係合が非常に外れ難いものとして◎の評価とする。複数の被検者のうち係合を外すことができなかった人が7割以上であった場合は、係合が外れ難いものとして〇の評価とする。複数の被検者のうち全員が係合を外すことが出来た場合は、係合が外れやすいものとして×の評価とする。
【0144】
図9では、測定No.4のフック部材の組み合わせにおいて、単位面積当たりの係合力(平均値)が1.0mN/mm2のときに評価が×となり、それ以外のフック部材の組み合わせでは評価が〇若しくは◎となっている。したがって、雄フック部材と雌フック部材とを係合させたときの係合力の平均値が、少なくとも15.2mN/mm2(測定No.2における平均値)以上であれば、フック部材同士の係合が外れ難くなることが確認できた。より安全側に見ると、係合力の最小値が、13.4mN/mm2(測定No.10における最小値)以上であれば、評価が〇であり、フック部材同士の係合が外れ難くなることが分かる。なお、測定No.2において、単位面積当たりの係合力の最小値が1.2mN/mm2と測定されているが、他の測定結果と比較してばらつきが大きく、測定時のエラーである可能性が高いため、当該データは考慮しないこととする。
【0145】
これらのことから、吸収パッド100に設けられる雄フック部材FK1と、着用物品1に設けられる雌フック部材FK2とを係合させたときに、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は13mN/mm2以上であることが好ましい(測定No.10における最小値13.4mN/mm2よりもさらに安全側に見た値)。このような条件を満たすフック部材FKを用いることにより、逆の場合(係合力が13mN/mm2よりも小さい場合)と比較して、着用物品1の着用動作時に、吸収パッド100と係合させた状態で着用物品1を引っ張り上げる際に、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることが出来る。
【0146】
さらに、雄フック部材と雌フック部材とを係合させたときの係合力の平均値が、少なくとも49.8mN/mm2(測定No.9における平均値)以上であれば、評価が◎となり、フック部材同士の係合がより外れ難くなることが確認できた。より安全側に見ると、係合力の最小値が、36.8mN/mm2(測定No.2における最小値)以上であれば、フック部材同士の係合が外れ難くなることが分かる。
【0147】
したがって、吸収パッド100に設けられる雄フック部材FK1と、着用物品1に設けられる雌フック部材FK2とを係合させたときに、互いの係合面に沿う方向における単位面積当たりの係合力は35mN/mm2以上であることがより好ましい(測定No.2における最小値36.8mN/mm2よりもさらに安全側に見た値)。このような条件を満たすフック部材FKを用いることにより、逆の場合(係合力が35mN/mm2よりも小さい場合)と比較して、吸収パッド100と着用物品1との係合をより外れ難くすることが出来る。
【0148】
なお、着用物品1(本体部10)は、50mm×200mmのサンプル片を、上下方向若しくは左右方向に5Nで引っ張ったときの伸び率の最大値が、何れも200%以上となる生地で構成されている。このような伸縮性の高い生地を使用することにより、着用時におけるフィット性が向上し、また、着用者の身体のサイズの大小に応じやすく、サイズ適合性を向上させることができる。そして、そのような伸縮性の高い生地を使用することによって、着用動作時に着用物品1が上下方向に伸長した場合であっても、上述した係合力の条件を満たすフック部材FKを使用すれば、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることが可能である。
【0149】
また、本実施形態の着用物品1の係合領域30には、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2のうち、雌フック部材FK2が設けられている。係合領域30は、着用物品1を着用した際に、着用者の肌側に位置しており、着用者の肌と接触する可能性がある。そのため、仮に係合領域30に雄フック部材FK1が設けられていた場合、雄フック部材FK1の係合用突起によって着用者の肌が傷つけられてしまうおそれがある。これに対して、着用物品1の係合領域30に設けられる雌フック部材FK2は係合用突起を有しておらず、雄フック部材FK1よりも柔軟性が高い。したがって、着用者の肌と接触した場合であっても、着用者の肌を傷つけにくい。
【0150】
また、着用物品1は洗濯して繰り返し使用することが可能であることを説明したが、雌フック部材FK2は係合用突起を有していないので、洗濯を行う際に該係合用突起によって着用物品1の本体部10を構成している編み生地が傷ついてしまうことが抑制される。さらに、雌フック部材FK2は柔軟性が高いため、洗濯後の着用物品1を折り畳みやすく、繰り返して使用可能な着用物品1に好適である。
【0151】
その際、雌フック部材FK2は糸等を用いて着用物品1の肌側面に縫い付けられていることが好ましい。糸等で縫い付けられることにより、雌フック部材FK2が離脱不能に固定され、雌フック部材FK2自体が着用物品1の係合領域30から剥がれてしまうことを抑制できる。また、着用物品1を洗濯する場合であっても雌フック部材FK2が剥がれ難いので、ユーザーは安心して洗濯することができる。また、着用物品1との接合に接着剤等を使用していないので、着用物品1の肌側面において着用者の肌と接触する場合であっても、人体に安全であり、柔軟な肌触りを提供しやすい。
【0152】
また、着用物品1において、フック部材FK(係合領域30)は、胴回り領域BRに配置されている(
図2参照)。仮に、フック部材FKが胴回り領域BRよりも下側のクロッチ領域CRに配置されていた場合、着用物品1の上端からの距離が遠くなるため、着用物品1の着用動作時に、胴回り領域BRを上方へ引っ張り上げる力がフック部材FKに伝達され難く、吸収パッド100を引き上げにくくなるおそれがある。これに対して、本実施形態の着用物品1では、フック部材FKが、胴回り領域BRに設けられているため、上述の場合と比較して着用物品1の上端からの距離が近くなり、胴回り領域BRを上方へ引っ張り上げる力がフック部材FKに効率的に伝達される。したがって、吸収パッド100を上方へ引き上げやすくすることができる。
【0153】
また、上下方向において、フック部材FK(係合領域30)の中央位置CFKは、胴回り領域BRの中央位置CLBRよりも下側に位置している(
図2参照)。胴回り領域BRの中央位置CLBRよりも上側の領域(すなわち、胴回り領域BRのうち上半分の領域)は、着用物品1の着用動作時に、直接手で掴まれる可能性が高い。したがって、仮に、胴回り領域BRの上半分の領域にフック部材FKが配置され、吸収パッド100が係合されていた場合、雌フック部材FK2と雌フック部材FK2との係合が手で掴まれることによって剥がれてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態の着用物品1では、フック部材FKの中央位置CFKが、胴回り領域BRの中央位置CLBRよりも下側に配置されているため、着用動作時に、フック部材FKが手で掴まれてしまう可能性が低い。したがって、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2との係合を剥がれ難くすることができる。
【0154】
また、着用物品1の胴回り開口BHの周縁には、胴回り折り返し部11が設けられている。この胴回り折り返し部11は、伸縮し難い糸が編み込まれる等により、収縮力が強くなっている。言い換えると、胴回り開口BHの周縁に沿って単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさが、他の領域を単位長さだけ伸長させるのに要する力の大きさよりも大きくなっている。すなわち、着用物品1は、胴回り開口BHの周縁に沿って、胴回り領域BRの他の領域よりも伸縮し難い、胴回り低伸縮領域を有している。
【0155】
そして、フック部材FKは、上下方向において、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)よりも下側に配置されている(
図2参照)。言い換えると、フック部材FKは、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)から下側に所定距離だけ離間して配置されている。着用者が着用物品1を着用した状態において、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)では他の領域と比較して強い収縮力が作用している。そのため、仮に、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)と重複する位置に吸収パッド100が係合されていた場合、胴回り開口BHの周縁において吸収パッド100や雄フック部材FK1が着用者の腹部や腰部に強く押し付けられ、着用者に不快感や違和感を生じさせるおそれがある。これに対して、フック部材FKが胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)と離間して配置されていれば、該フック部材FKを介して係合されている吸収パッド100が着用者の肌側に押し付けられることが抑制される。したがって、着用物品1の着用時に、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。
【0156】
具体的に、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)の上下方向における長さ(幅)をW11とすると、フック部材FKは、上下方向において胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)の下端よりもW11以上下側に配置されている(
図2A参照)。胴回り折り返し部11の幅W11よりも離間してフック部材FKが配置されていることにより、逆の場合と比較してフック部材FKが胴回り折り返し部11の伸縮による影響を受け難くなる。したがって、フック部材FKを介して係合されている吸収パッド100が着用者の肌側に押し付けられることがより抑制されやすくなり、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。
【0157】
また、着用物品1の上下方向において、フック部材FK(係合領域30)の中央位置CFKは、胴回り領域BRの中央位置CLBRよりも下側、且つ、胴回り領域BRの中央位置CLBRと胴回り領域BRの下端位置(LHtの位置)との中央位置QLBRよりも上側に位置している(
図2参照)ことがより好ましい。言い換えると、上下方向において、フック部材FKの中央位置CFKは、胴回り領域BRを四等分したときの上から3番目の領域に位置していることが好ましい。このような配置であれば、フック部材FKの中央位置CFKが胴回り領域BRを四等分したときの上から4番目の領域に位置している場合と比較して、着用物品1の上端からの距離が近くなり、胴回り領域BRを上方へ引っ張り上げる力がフック部材FKに伝達されやすくなる。また、胴回り領域BRを四等分したときの上から2番目の領域に位置している場合と比較して、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)からの距離が遠くなり、胴回り低伸縮領域の強い伸縮力による影響を受けにくくなる。つまり、胴回り領域BRを引っ張り上げる力をフック部材FK伝達させることで吸収パッド100を引き上げやすく、且つ、胴回り開口BHの周縁(胴回り低伸縮領域)に沿って作用する強い伸縮力が過度に作用しないため、着用者に不快感を生じさせ難くすることができる。
【0158】
また、自然状態の着用物品1において、脚回り開口LHの上端LHtは、着用物品1の左右方向中央位置における下端(
図2Aでは、脚回り開口LHの下端LHbと同じ高さ)よりも上下方向の上側に位置している。すなわち、着用物品1は、脚回り開口LHが、左右方向の内側から外側且つ上下方向の下側から上側に向かって斜めに切れ上がるように形成された、所謂ショーツ型形状を有している。例えば、着用物品の形状が、脚回り開口が水平に形成された、所謂ボクサーパンツ型であった場合、着用動作時に、脚回り開口に着用者の脚を通して上方へ引っ張り上げる際に、脚回り開口が着用者の脚に引っかかりやすくなるおそれがある。この場合、脚回り開口が上方へ移動し難くなるため、着用物品が上下方向に伸長しやすくなり、吸収パッドとの係合部に大きな剪断力が作用して、フック部材の係合が外れやすくなるおそれがある。
【0159】
これに対して、本実施形態の着用物品1のようなショーツ型形状であれば、着用動作時に、脚回り開口LHに着用者の脚を通して上方へ引っ張り上げる際に、ボクサーパンツ型と比較して脚回り開口LHが着用者の脚に引っかかり難く、着用物品1の全体を上方へ引き上げやすい。したがって、胴回り領域BRを掴んで引っ張り上げたときに、胴回り領域BRが上下方向に過度に伸長してしまうことが抑制され、吸収パッド100との係合部に作用する剪断力が小さくなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0160】
また、自然状態の着用物品1の前後方向の前側(前身頃側)において、脚回り開口LHの周縁は、左右方向の内側に抉れた形状を有している。すなわち、
図2Aに示されるように、自然状態の着用物品1を前側から見ると、脚回り開口LHは左右方向に内側に向かって凸となった円弧状に形成されている。脚回り開口LHの周縁が内側に抉れていることにより、着用物品1を着用した状態で着用者が前側に脚を動かしたときに、脚回り開口LHの周縁が着用者の脚と干渉し難くなり、着用時の違和感を抑制できる。また、着用物品1の着用動作時に、上方へ引っ張り上げる際に、脚回り開口LHが着用者の脚に引っ掛かり難くなる。したがって、胴回り領域BRが上下方向に伸長することが抑制され、吸収パッド100との係合部に作用する剪断力が小さくなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0161】
また、本実施形態の着用物品1では、自然状態において、クロッチ領域CRの左右方向の長さ(幅)WCRは、着用物品1の左右方向の長さL0の25%以上、且つ、50%以下となっている(0.25×L0≦WCR≦0.5×L0)(
図2A参照)。上述したように、着用物品1(本体部10)を構成している編み生地は、左右方向に少なくとも200%伸長させることが可能である。そして、左右方向に200%伸長させたときの脚回り開口LHの左右方向における幅(WLH,不図示)はWLH=(L-WCR)/2=(2×L0-WCR)/2で表される。したがって、0.25×L0≦WCR≦0.5×L0の条件を満たす場合、脚回り開口LHの左右方向における幅は0.5×L0≦WLH≦0.75×L0の大きさとなる。
【0162】
着用物品1の着用動作時に、着用者が脚回り開口LHに脚を通す際に、脚回り開口LHの周縁に脚が引っ掛かり難くなるようにするためには、着用者の脚の径よりも脚回り開口LHを広くすることが望ましい。通常、着用者の脚の幅は、当該着用者の胴回りの幅の50%以下であることから、上述の条件(0.5×L0≦WLH≦0.75×L0)を満たしていれば、着用動作において伸長したときの脚回り開口LHの左右方向における幅WLHが、着用者の胴回りの幅L0の50%よりも広くなる。したがって、着用物品1の着用動作時に、脚回り開口LHが着用者の脚よりも広がりやすくなり、脚回り開口LHにより脚を通しやすくすることができる。これにより、着用動作時に着用物品1がスムーズに引き上げられやすくなり、着用物品1の上下方向の過度な伸長が抑制される。したがって、着用物品1と吸収パッド100とを係合しているフック部材FKの係合面に対して、該係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなる。また、クロッチ領域CRの左右方向における幅WCRが着用物品1の全体の幅L0に対してある程度広く確保されるので(0.25×L0≦WCRWLH≦0.75×L0)、クロッチ領域CRにおいて吸収パッド100を安定して保持しやすくすることができる。これらの構成により、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0163】
また、着用物品1には、上下方向に所定の長さを有する伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)が設けられている。当該伸縮抑制手段が設けられている部分では、着用動作時に着用物品1を上方へ引っ張り上げる際に、本体部10を構成している生地が上下方向に伸長し難くなる。したがって、着用物品1と吸収パッド100とを係合しているフック部材FKの係合面に対して、該係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0164】
そして、着用物品1の伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)は、上下方向において、フック部材FK(係合領域30)と重複する部分を有している(
図2参照)。このような構成であれば、伸縮抑制手段(例えば、前側中央伸縮抑制部21)とフック部材FK(雌フック部材FK2)とが重複している部分において、本体部10を構成している生地が上下方向に伸長し難くなる。したがって、フック部材FKの係合面に対して作用する剪断力がより小さくなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合をより外れ難くすることができる。
【0165】
また、伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)は、上下方向において、少なくとも胴回り開口BHの周縁に沿って設けられた胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)から、フック部材FK(係合領域30)まで連続して配置されている(
図2参照)。言い換えると、胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)とフック部材FK(係合領域30)とが、伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)によって上下に連結されている。したがって、当該連結された胴回り低伸縮領域(胴回り折り返し部11)とフック部材FK(係合領域30)とが、着用物品1の胴回り領域BRにおいて骨格のように機能して、上下方向の伸長が抑制されやすくなる。すなわち、着用物品1の着用動作時に、手で掴まれて引っ張り上げられる領域が上下方向に伸長し難くなる。これにより、フック部材FKの係合面に沿った方向の力が作用し難くなり、吸収パッド100と着用物品1との係合をより外れ難くすることができる。
【0166】
また、伸縮抑制手段(伸縮抑制部20)は、左右方向の中央部に設けられた中央伸縮抑制部21(22)(中央伸縮抑制手段)と、中央伸縮抑制部21(22)の左右方向に両側に設けられた一対のサイド伸縮抑制部23,23(24,24)(両側部伸縮抑制手段)とを有している。着用物品1の着用動作時には、胴回り領域BRの両側部を手で掴んで上方へ引っ張り上げる動作が行われる(
図6B参照)。このとき、胴回り領域BRの両側部にサイド伸縮抑制部23(24)が設けられていることにより、手で掴まれた部分が上下方向に伸長し難くなる。そして、左右方向の中央部にも中央伸縮抑制部21(22)が設けられていることから、胴回り領域BRが全体的に上下方向に伸長し難くなる。したがって、着用物品1と吸収パッド100とを係合しているフック部材FKの係合面に対して、該係合面に沿った方向の力が作用し難くなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0167】
また、サイド伸縮抑制部23(24,24)は、脚回り開口LHの周縁に沿って形成されている脚回りかがり縫い部13と交差する部分を有している。このような構成であれば、着用物品1の着用動作時に、胴回り領域BRの両側部を掴んで上方へ引っ張り上げる力が、サイド伸縮抑制部23(24)を介して脚回り開口LHの周縁(かがり縫い部13)に伝達されやすくなり、脚回り開口LHが上方へ引き上げられやすくなる。すなわち、脚回り開口LHが着用者の脚に引っ掛かり難くなるので、着用物品1がスムーズに引き上げられ、胴回り領域BRが上下方向に伸長し難くなる。したがって、着用物品1と吸収パッド100とを係合しているフック部材FKの係合面に対して、該係合面に沿った方向の力(剪断力)が作用し難くなる。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0168】
図10は、フック部材FK(係合領域30)の配置について説明する図であり、自然状態の着用物品1を前側から見たときの状態について表す平面図である。同
図10において、着用物品1の上下方向の上側、且つ、左右方向の一方側(
図10では左側)の端を力点Elとする。着用物品1の着用動作時には、胴回り領域BRの両側部が手で掴まれ、上方へ引っ張り上げられると説明したが(
図6B等参照)、このとき、力点Elが手で掴まれて力が加えられるものとする。
【0169】
また、同
図10において、一対の脚回り開口LH,LHのうち、左右方向の一方側(左側)の脚回り開口LHで、上下方向の下側且つ左右方向の内側に位置する端を一方側下端LHblとする。着用者の脚を脚回り開口LHに通して着用物品1を引っ張り上げる際には、この一方側下端LHblが、着用者の脚の内側(すなわち内腿付近)と接触して、摩擦を生じる。したがって、着用物品1を引っ張り上げる動作において、力点Elと一方側下端LHblとの間に張力が発生する。
【0170】
本実施形態の着用物品1で、自然状態において力点Elと一方側下端LHblとを直線で結んだ線を第1仮想線VL1とすると、フック部材FK(係合領域30)と第1仮想線VL1とが重複する部分を有していない。言い換えると、フック部材FK(係合領域30)は、第1仮想線VL1から所定距離だけ離間して設けられている。上述した様に、着用物品1を引っ張り上げる際には、第1仮想線VL1に沿って張力が発生する。したがって、仮に、第1仮想線VL1とフック部材FK(係合領域30)とが重複していた場合、フック部材FKの係合面に沿った方向に力(剪断力)が作用し、雄フック部材FK1と雌フック部材FK2との係合が外れやすくなるおそれがある。これに対して、着用物品1では、
図10のように第1仮想線VL1とフック部材FK(係合領域30)とが重複する部分を有していないため、フック部材FKに対して第1仮想線VL1に沿った張力が作用することが抑制される。したがって、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0171】
また、
図10において、伸縮抑制手段(中央伸縮抑制部21)の上下方向における下側の端を中央伸縮抑制部下端21bとする。着用者の脚を脚回り開口LHに通して着用物品1を引っ張り上げる際には、力点Elに加えられた力が中央伸縮抑制部21の下端21bに作用することによって、着用物品1及び吸収パッド100が上方へ引き上げられる。すなわち、着用物品1を引っ張り上げる動作において、力点Elと中央伸縮抑制部下端21bとの間に張力が発生する。
【0172】
着用物品1で、自然状態において力点Elと中央伸縮抑制部下端21bとを直線で結んだ線を第2仮想線VL2とすると、フック部材FK(係合領域30)と第2仮想線VL2とが重複する部分を有していない。言い換えると、フック部材FK(係合領域30)は、第2仮想線VL2から所定距離だけ離間して設けられている。このような構成であれば、フック部材FKに対して第2仮想線VL2に沿った張力が作用することが抑制されやすくなる。したがって、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0173】
また、同
図10において、一対の脚回り開口LH,LHのうち、左右方向の他方側(右側)の脚回り開口LHで、上下方向の下側且つ左右方向の内側に位置する端を他方側下端LHbrとする。着用者の脚を脚回り開口LHに通して着用物品1を引っ張り上げる際には、上述した一方側下端LHblと同様に、他方側下端LHbrも、着用者の脚の内側(内腿付近)と接触して、摩擦を生じる。したがって、着用物品1を引っ張り上げる動作において、力点Elと他方側下端LHbrとの間にも張力が発生する。
【0174】
着用物品1で、自然状態において力点Elと他方側下端LHbrとを直線で結んだ線を第3仮想線VL3とすると、フック部材FK(係合領域30)と第3仮想線VL3とが重複する部分を有していない。言い換えると、フック部材FK(係合領域30)は、第3仮想線VL3から所定距離だけ離間して設けられている。このような構成であれば、フック部材FKに対して第3仮想線VL3に沿った張力が作用することが抑制されやすくなる。
【0175】
したがって、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0176】
また、
図4で説明したように、吸収パッド100の吸収パッド係合領域120には、フック部材FKのうち雄フック部材FK1が設けられている。着用物品1の係合領域30に設けられた雌フック部材FK2と係合しやすい雄フック部材FK1が設けられることにより、着用物品1に吸収パッド100を安定して係合させることができる。したがって、吸収パッド100を係合させた状態で着用物品1を上方へ引っ張り上げた場合であっても係合が外れ難く、吸収パッド100を着用物品1から離脱し難くすることができる。なお、吸収パッド100において、雄フック部材FK1(吸収パッド係合領域120)は厚さ方向の非肌側に設けられている。したがって、着用物品1を着用する際に、雌フック部材FK2と比較して剛性の高い雄フック部材FK1(吸収パッド係合領域120)が着用者の肌と接触する可能性は低く、着用者に不快感を生じさせ難い。
【0177】
また、吸収パッド100の厚さ方向に見たときに、フック部材FK(吸収パッド係合領域120)は、吸収体110と重複する部分を有している(
図4参照)。剛性の高い吸収体110と重複していることにより、フック部材FK(雄フック部材FK1)の表面に弛みや撓みが生じ難くなる。すなわち、フック部材FKの厚さ方向における変形が抑制され、平面状に維持されやすくなる。したがって、着用物品1の係合領域30に設けられたフック部材FK(雌フック部材FK2)に対して吸収パッド100のフック部材FK(雄フック部材FK1)を係合させやすくすることができる。そして、フック部材FK(雄フック部材FK1)が平面状に維持されやすいことにより、着用物品1と係合した状態で上方へ引っ張り上げる際に、当該フック部材FKの上下方向における端部が捲れて係合が剥離してしまうこと(所謂、ピーリング)が抑制される。これにより、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0178】
また、吸収パッド100において、フック部材FK(雄フック部材FK1)は接着剤を用いて吸収パッド係合領域120に接合されている。その際、フック部材FKのうち、吸収パッド係合領域120との対向する面の全体に接着剤が塗布される。すなわち、吸収パッド100に設けられたフック部材FKは、当該フック部材FKの周縁に沿って接着剤が設けられていない部分であるドライエッジを有していない。仮に、フック部材FKの上下方向の端部にドライエッジが形成されていた場合、ドライエッジにおいて剥離(ピーリング)が生じやすくなり、着用物品1との係合が剥がれやすくなるおそれがある。これに対して、吸収パッド100では、フック部材FKの接合面全体に接着剤が設けられ、ドライエッジが形成されていないため、ピーリング等が生じてしまうことが抑制される。したがって、吸収パッド100と着用物品1との係合を外れ難くすることができる。
【0179】
なお、吸収パッド100の縦方向における長さL100は300mm以上であり、横方向における長さ(幅)W100は80mm以上であることが好ましい(L100≧300mm、W100≧80mm)。吸収パッド100の横方向における長さ(幅)W100が80mm以上であれば、逆の場合(W100<80mm)と比較して、フック部材FK(雄フック部材FK1)の幅を広くすることができるため、着用物品1に対してより強く係合させることができる。
【0180】
また、吸収パッド100の縦方向における長さL100が300mm以上であれば、逆の場合(L100<300mm)と比較して、吸水性能を発揮するために必要なSAPや液体吸収性繊維を保持する十分な面積を確保しやすくなる。例えば、吸収パッド100の基準吸水量を220ccとした場合、横方向の幅W100=80mmとしたときに、薄さを一定としたまま必要な量のSAPや液体吸収性繊維を保持するためには、縦方向の長さL100が300mm以上であることが好ましい。このような長さであれば、吸水性能を維持しつつ、また、着用者の陰部を覆い隠すための十分な面積を担保しやすくなる。
【0181】
<着用物品1の収容体について>
製造工場等で製造された着用物品1は、コンパクトに折り畳まれ、所定の収容部材に1個または複数個ずつ収容された状態で出荷され、市場に流通する。以下では、収容部材70に複数の着用物品1が収容された着用物品の収容体90について説明する。
【0182】
図11は、着用物品収容体90(以下、単に「収容体90」とも呼ぶ)の一例を表す概略斜視図である。収容体90は、袋状の部材である収容部材70と、該収容部材70の内部に収容される1以上の着用物品1とを有している。なお、収容体90には、吸収パッド100は収容されておらず、ユーザーが着用物品1と吸収パッド100とを併用する際には、別途吸収パッド100を購入する等により準備する必要がある。
【0183】
収容体90は、
図11に示されるように、互いに交差する第1方向と、第2方向と、第3方向と、を有している。そして、第1方向の一方側を上側とし、他方側を下側とする。
【0184】
同様に、第2方向の一方側を右側、他方側を左側とし、第3方向の一方側を前側、他方側を後側とする。
【0185】
収容部材70は、
図11に示されるような略直方体形状の容器であり、収容部材70を構成するシート部材である基材シート71を折り曲げて、所定の部位を接合することによって形成される。基材シート71は、樹脂製のシート部材であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の液不透過性の樹脂を使用できる。収容部材70に着用物品1を収容する際には、先ず。基材シート71を折り曲げて、第1方向の上端部に開口を有する袋状に形成し(不図示)、上端部の開口から所定数の着用物品1を収容する。着用物品1を収容した後、上端部にて
図1のように基材シート71を折り曲げ(例えば、ガゼット折り)、対向する面同士を接合して開口を閉じる。これにより、
図11の様な略直方体状の収容体90となる。但し、収容部材70の形状や基材シート71の折り曲げ方、着用物品1の封入方法はこの限りではない。
【0186】
収容部材70の第3方向の前側の面は、収容体90の正面に相当し、販売店等でユーザーが目視する面である。そして、収容部材70の正面には複数の文字や絵からなる情報が表示(印刷)されている。
図11の例では、商品名表示部72と、商品イメージ表示部73と、説明表示部74と、注記表示部75とが設けられている。商品名表示部72は、着用物品1の商品名を表す情報が表示される部分であり、ユーザーは、商品名表示部72を目印として多種類の吸収性物品のなかから着用物品1を選択して購入することができる。商品イメージ表示部73は、着用物品1やユーザーに関する画像を表す情報が表示される部分である。ユーザーは、商品イメージ表示部73を視認することで、商品の概要やその商品がどのような人を着用対象者としているのかを一見して理解しやすくなる。
【0187】
説明表示部74は、着用物品1の商品説明を表す情報が表示される部分であり、少なくとも吸収パッド100と併用されることを想起させる表示を備える。
図11では、着用物品1が吸収パッドと併用可能であることや、併用する吸収パッド(吸収パッド100)を説明する情報が表示されている。注記表示部75は、説明表示部74に表示された情報以外の注記が表示される部分であって、ユーザーの利益となる情報を表している。
図11では、着用物品1が繰り返して使用できることを表す情報が表示され、ユーザーは、着用物品1が再利用可能であることを認識することができる。
【0188】
なお、これらの情報表示部72~75は、収容部材70を構成する基材シート71に印刷されているのではなく、基材シート71の表面に所定の情報が表示されたシールを貼り付けること等によって構成されるのであっても良い。また、基材シート71が透明なシート部材である場合には、所定の情報が表示されたカード等を内部に封入して、外側から当該カードを視認可能にすること等によって構成されていても良い。
【0189】
このような収容体90として市場に流通することで、当該収容体90を視認したユーザーは、着用物品1の機能や使用態様を認識しやすくなり、着用物品1を正しく使用することができるようになる。
【0190】
<着用物品1の洗濯について>
着用物品1は洗濯して繰り返し使用することが可能であることを説明したが、洗濯を行った場合、乾きやすさが重要である。例えば、着用物品1の着用者が風呂に入っている間に、着用物品1を洗濯して乾かしておき、風呂から出た後に洗濯後の着用物品1を再度着用するような使用態様を想定した場合、着用物品1が高い乾燥性を備えていることが好ましい。
【0191】
本実施形態の着用物品1は、以下のような構成により、乾燥性を高めている。先ず、乾燥性を高める構成として、着用物品1を構成する生地の観点から説明する。本実施形態において、着用物品1(本体部10)を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンを90重量%以上含んでいる。ポリエステル及びポリエチレンは、綿と比較して伸度が高い素材であり、そのような素材を多く含むことで、より伸び易さを実現することができる。また、ポリエステル及びポリエチレンは、非吸水性であり、且つ、高い速乾性を有する素材であるため、洗濯後の乾燥時間を短縮することができ、着用物品1の乾燥性が向上する。なお、生地の組成(各素材の重量%)は、測定により確認可能であり、或いは、製品のタグに記載されている「混用率」を確認しても良い。
【0192】
また、本実施形態において、着用物品1を構成している生地は、吸水性素材を含んでいない。吸水性素材とは、例えば、綿やレーヨン等である。吸水性素材を含まないことで、生地が水を含みにくくなり、故に、洗濯後の乾燥時間を短縮でき、着用物品1の乾燥性を向上させる。
【0193】
また、着用物品1を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を10重量%未満含んでいる。そのようなより伸縮性の高い素材としては、例えば、ポリウレタン等が挙げられる。着用物品1を構成している生地のうち、90重量%以上はポリエステル又はポリエチレンであるので、上述した伸縮性がより高い素材が残りの10重量%未満に含まれることで、良好な乾燥性を担保しつつ、伸縮性の向上を実現できる。なお、そのような高伸縮性素材の混用率が多すぎる(10重量%以上になる)と、着用物品1(本体部10)に皺がよってしまうほど縮んでしまうおそれや、縮み過ぎて、脚回り開口LH、LHに脚を通す際に脚がひっかかり易くなるおそれもあるため、混用率は10重量%未満であることが好ましい。
【0194】
また、着用物品1を構成している生地は、ポリエステル、又はポリエチレンよりも伸縮性が高い素材を含む領域と含まない領域とを有する。例えば、着用物品1において特にフィット性が必要なところに伸縮性の高い素材を配置する(すなわち、より伸縮性が高い素材を含む領域を形成する)ことで、着用物品1の一部に限定してフィット性をより高めることができ、機能性が向上する。また、一部のフィット性を高めるだけでなく、例えば、より伸縮性が高い素材を含む領域を、間隔を空けて複数箇所設ける等により、着用物品1の全体としてのフィット感を向上させることもできる。
【0195】
次に、乾燥性を高める構成として、係合領域30の観点から説明する。係合領域30には、上述したように、本体部10を構成する編み生地とは異なる別体のシート部材(例えば、面ファスナー)が設けられることが好ましく、そして、当該別体のシート部材は、ポリエチレン又はポリエステルで構成されていることが好ましい。別体のシート部材は、本体部10に接合されるため、本体部10と同様に、別体のシート部材も高い速乾性を有する素材によって構成されていることで、着用物品1の乾燥性が向上する。
【0196】
また、別体のシート部材は、当該別体のシート部材の周縁部に沿って糸で縫い付けることにより、着用物品1を構成している生地(本体部10)に接合される。よって、糸で縫われた周縁部よりも内側の領域は、生地と別体のシート部材とが厚さ方向に密着(接合)しておらず、別体のシート部材と生地との間に空間が形成されている。つまり、別体のシート部材全体が生地に接合されている状態ではないため、全体が接合されている場合と比較すると、別体のシート部材のうち生地と接する面において空気と接触する面積が広くなり、水分を蒸発させやすくなる。そのような空気が逃げやすい構成を有することにより、乾燥性が向上する。
【0197】
さらに、本実施形態において、厚さ方向に見たときに、別体のシート部材と伸縮抑制部20(前側中央伸縮抑制部21及び後側中央伸縮抑制部22)とが重複する部分を有する(
図2参照)。具体的には、別体のシート部材は、収縮力の異なる領域(伸縮抑制部20)を跨ぐように配置されている。伸縮抑制部20が設けられていることにより、着用物品1を構成している生地に収縮力の変化が生じ、生地の肌側面と別体のシート部材の非肌側面との間に、空間がより形成されやすくなる。そのような空間から空気が逃げやすくなることで、乾燥性が向上する。
【0198】
また、別体のシート部材の大きさは、上下方向の長さが50mm以下、且つ、左右方向の長さが150mm以下であることが好ましい。別体のシート部材が大きくなりすぎると、当該シート部材の部分が乾燥しにくくなるおそれがあるが、上述した範囲内の大きさとすることで、生地に対して十分な係合力を維持できる面積を確保しつつ、乾燥しやすくなる。
【0199】
また、別体のシート部材の厚さは、3mm以下であることが好ましい。それにより、生地に対して十分な係合力を維持できる厚みを確保しつつ、厚すぎないことで、乾燥しやすさも維持できる。
【0200】
続いて、乾燥性を高める構成として、さらに別の観点から説明する。
図12は、着用物品1の前側の胴回り領域BRと後側の胴回り領域BRとを左右方向の両側端で切断し、上下方向に展開した状態を示す概略平面図である。具体的に、上述の展開した状態とは、上下方向に展開して、自然状態で水平面上に静置した状態である。
図12の展開状態においては、上下方向において前側係合領域31の上端31ueと後側係合領域32の上端32ueとの間、且つ、左右方向において前側係合領域31及び後側係合領域32の最も一方側(左側)の端31pe、32peと前側係合領域31及び後側係合領域32の最も他方側(右側)の端31re、32reとの間の領域S1(
図12にて斜線で示した部分)の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さい。着用物品1を構成している生地のうち領域S1は、通常、吸収パッド100の装着時に吸収パッド100によって覆われる領域である。そのため、仮に、着用物品1の洗濯後の乾燥が若干不十分であったり、別の要因で吸収パッド100を装着後に着用物品1が濡れることがあった場合に、領域S1は、吸収パッド100によって覆われていることでその後の乾燥性が低くなり易い。しかしながら、着用物品1を構成する生地において、領域S1の面積が領域S2の面積よりも小さいことにより、逆の場合と比較して、着用物品1の全体の乾燥性の低下を抑制しやすい。
【0201】
なお、本実施形態において、上述の領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも小さいが、これに限定されるものではない。上記とは逆に、領域S1の面積は、それ以外の領域S2の面積よりも大きくてもよい。この場合、着用物品1の洗濯後の乾燥が若干不十分であっても、領域S1は、吸収パッド100によって覆われるため肌が濡れにくく、着用感が悪化しにくい。
【0202】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0203】
上述の実施形態では、本体部10の伸縮を抑制する伸縮抑制手段として、伸縮抑制部20が設けられることを説明したが、伸縮抑制部20以外の伸縮抑制手段が設けられていても良い。例えば、係合領域30にフック部材FKが設けられている場合には、当該係合領域30(フック部材FK)においても本体部10の伸縮が抑制される。すなわち、係合領域30(フック部材FK)も伸縮抑制手段としての機能を備える場合がある。
【符号の説明】
【0204】
1 着用物品(パンツ型着用物品)、
2 着用物品(比較例)、
10 本体部、
11 胴回り折り返し部、12 股下縫い部、13 脚回りかがり縫い部、
20 伸縮抑制部(伸縮抑制手段)、
21 前側中央伸縮抑制部、22 後側中央伸縮抑制部、
23 前側サイド伸縮抑制部(両側部伸縮抑制手段)、
24 後側サイド伸縮抑制部(両側部伸縮抑制手段)、
30 係合領域、
31 前側係合領域、
31pe 一方側の端、31re 他方側の端、31ue 上端、
32 後側係合領域、
32pe 一方側の端、32re 他方側の端、32ue 上端、
35 雌フック部材、
70 収容部材、
71 基材シート、
72 商品名表示部、73 商品イメージ表示部、74 説明表示部、
75 注記表示部、
90 着用物品収容体、
100 吸収パッド、
110 吸収体、111 トップシート、112 バックシート、
115 サイドシート、116 吸収パッド弾性部材、
120 吸収パッド係合領域、
121 前側吸収パッド係合領域、122 後側吸収パッド係合領域、
125 雄フック部材、
501 サンプル片、502 サンプル片、
BH 胴回り開口、
LH 脚回り開口、LHt 上端、LHb 下端、
BR 胴回り領域、
CR クロッチ領域、
FK フック部材、FK1 雄フック部材、FK2 雌フック部材、
VL1 第1仮想線、VL2 第2仮想線、VL3 第3仮想線
S1 領域、S2 領域