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特許7565564化合物、有機半導体材料、および有機電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】化合物、有機半導体材料、および有機電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/20 20060101AFI20241004BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20241004BHJP
   H10K 10/20 20230101ALI20241004BHJP
   H10K 10/46 20230101ALI20241004BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241004BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
C07D513/20 CSP
C07D519/00
C07D519/00 301
C08G61/12
H10K10/20
H10K10/46
H10K85/10
H10K85/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023541123
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2022045473
(87)【国際公開番号】W WO2023106405
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021200324
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】陣内 青萌
(72)【発明者】
【氏名】三枝 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 一剛
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/070582(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/098254(WO,A1)
【文献】LI,S.B. et al.,Theoretical design and characterization of pyridalthiadiazole-based chromophores with fast charge tr,RSC Advances,2015年,Vol.5, No.37,pp.29401-29411,DOI:10.1039/C5RA00785B
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、合計で2つまたは3つ有する化合物であり、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されており、
前記アクセプター性ユニットが、縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子とヘテロ原子である、下記式(Ac-1)~式(Ac-17)のいずれかで表されるヘテロ芳香族縮環型ユニットを含む低分子型化合物。
【化1】

[式(Do-A)中、Rは炭素数2~6のアルキレン基を表し、*は、結合手を表す。]
【化2】

[式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、-CH=CH-であるか、-C≡C-であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピラジン環である。
は、水素原子であるか、炭化水素基であるか、-(CH-ORであり、Rは、炭化水素基であり、pは1~5の整数である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうち、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
は、炭化水素基である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうちに、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
およびAは、それぞれ独立に、-(CH-ORであるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Rは、炭化水素基であり、qは1~5の整数である。
は、CHまたは窒素原子である。アクセプター性ユニットが複数のDを有するとき、当該複数のDのうちに、互いに同一のDがあってもよく、互いに異なるDがあってもよい。
は、炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子である。
nは、0または1である。
*は、結合手を表す。式(Ac-1)~式(Ac-17)で表されるユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子である
化合物が複数のアクセプター性ユニットを有するとき、T、T、R、R、A、A、D、およびDは各々、ユニット間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基が結合していてもよい。]
【請求項2】
下記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ2つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されており、
前記アクセプター性ユニットが、縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子とヘテロ原子である、下記式(Ac-1)~式(Ac-17)のいずれかで表されるヘテロ芳香族縮環型ユニットを含む高分子型化合物。
【化3】

[式(Do-A)中、Rは炭素数2~6のアルキレン基を表し、*は、結合手を表す。]
【化4】

[式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、-CH=CH-であるか、-C≡C-であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピラジン環である。
は、水素原子であるか、炭化水素基であるか、-(CH-ORであり、Rは、炭化水素基であり、pは1~5の整数である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうち、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
は、炭化水素基である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうちに、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
およびAは、それぞれ独立に、-(CH-ORであるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Rは、炭化水素基であり、qは1~5の整数である。
は、CHまたは窒素原子である。アクセプター性ユニットが複数のDを有するとき、当該複数のDのうちに、互いに同一のDがあってもよく、互いに異なるDがあってもよい。
は、炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子である。
nは、0または1である。
*は、結合手を表す。式(Ac-1)~式(Ac-17)で表されるユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
化合物が複数のアクセプター性ユニットを有するとき、T、T、R、R、A、A、D、およびDは各々、ユニット間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基が結合していてもよい。]
【請求項3】
前記ドナー性ユニットと、前記アクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有する請求項2に記載の高分子型化合物。
【請求項4】
前記ドナー性ユニットと前記アクセプター性ユニットとが交互に配置されている請求項3に記載の高分子型化合物。
【請求項5】
重量平均分子量(Mw)が1500以上である請求項3に記載の高分子型化合物。
【請求項6】
前記高分子型化合物に含まれる複数のドナー性ユニットが、更に下記式(Do-K)で表される単位を含む請求項3に記載の高分子型化合物。
【化4】

[式(Do-K)中、*は、結合手を表す。]
【請求項7】
前記ドナー性ユニットに2つの前記アクセプター性ユニットが連結されている請求項1に記載の低分子型化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の低分子型化合物を含む有機半導体材料。
【請求項9】
請求項2に記載の高分子型化合物を含む有機半導体材料。
【請求項10】
請求項8または9に記載の有機半導体材料を含む有機電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを有する化合物、該化合物を含む有機半導体材料、および該有機半導体材料を含む有機電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、有機エレクトロニクス分野において重要な材料であり、単量体化合物や高分子化合物が有機半導体材料として用いられている。有機半導体材料は、電子供与性のp型有機半導体材料と電子受容性のn型有機半導体材料に分類でき、p型有機半導体材料およびn型有機半導体材料を適切に組合せることにより様々な有機電子デバイスを製造できる。有機電子デバイスとしては、例えば、電子と正孔が再結合して形成する励起子(エキシトン)の作用により発光する有機エレクトロルミネッセンス素子、電流量または電圧量を制御する有機薄膜トランジスタ素子、有機光電変換素子、光を電力に変換する有機薄膜太陽電池モジュールなどが挙げられる。
【0003】
有機半導体材料の一例として、n型有機半導体材料として用いられる重合体が特許文献1に提案されている。特許文献1に提案されている重合体は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位の少なくとも1つと、下記一般式(III)で表される繰り返し単位の少なくとも1つとを有する含窒素縮合環重合体である。式(II)中、ZおよびZとしてS(硫黄原子)が例示されており、式(III)中、Arとして2価の芳香族炭化水素基または2価の複素環基が例示されている。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-215278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機電子デバイスは、例えば、有機半導体材料を真空蒸着法によって有機薄膜にしたり、有機半導体材料を溶媒等に溶解したものを所定の製膜法によって有機薄膜にしたりすることにより、製造される。有機半導体材料が溶媒(特に、有機溶媒)に可溶であれば、例えば、印刷プロセスでの製膜が可能となるため、有機薄膜の大面積化および製造コストの削減ができる。そのため有機半導体材料には、溶媒への溶解性が良好であることが望まれる。しかし、上記特許文献1の実施例では、有機半導体材料として含窒素縮合環化合物を用い、有機半導体素子を真空蒸着法により作製している。真空蒸着法が採用されているのは、含窒素縮合環化合物が溶媒へ溶解しにくいことに原因があると考えられ、特許文献1においては含窒素縮合環化合物の溶媒への溶解性について検討されていない。本発明者らが有機半導体材料の溶解性について検討したところ改善の余地があることが判明した。
【0007】
本発明の目的は、有機半導体材料として好ましく用いることができる化合物であって、溶媒への溶解性が良好な化合物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、こうした化合物を含む有機半導体材料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、こうした有機半導体材料を含む有機電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 下記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物。下記式(Do-A)中、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、*は、結合手を表す。
【化2】
[2] 前記アクセプター性ユニットが、(1)縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子とヘテロ原子である、ヘテロ芳香族縮環型ユニット、(2)縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子である、芳香族縮環型ユニット、及び(3)芳香族環を有し、縮環構造を有さない、単環型ユニット、からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]に記載の化合物。
[3] 前記ドナー性ユニットと、前記アクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有する[1]または[2]に記載の高分子型化合物。
[4] 前記ドナー性ユニットと前記アクセプター性ユニットとが交互に配置されている[3]に記載の高分子型化合物。
[5] 重量平均分子量(Mw)が1500以上である[3]または[4]に記載の高分子型化合物。
[6] 前記高分子型化合物に含まれる複数のドナー性ユニットが、更に下記式(Do-K)で表される単位を含む[3]~[5]のいずれかに記載の高分子型化合物。下記式(Do-K)中、*は、結合手を表す。
【化3】
[7] 前記ドナー性ユニットおよび前記アクセプター性ユニットを合計で2つまたは3つ有する[1]に記載の低分子型化合物。
[8] 前記ドナー性ユニットに2つの前記アクセプター性ユニットが連結されている[1]に記載の三量体型化合物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の化合物を含む有機半導体材料。
[10] [9]に記載の有機半導体材料を含む有機電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、有機半導体材料として好ましく用いることができ、しかも溶媒への溶解性が良好な化合物を提供できる。また、本発明によれば、こうした化合物を含む有機半導体材料、およびこうした有機半導体材料を含む有機電子デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、高分子型化合物1の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図2図2は、高分子型化合物2の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図3図3は、高分子型化合物3の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図4図4は、高分子型化合物4の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図5図5は、高分子型化合物5の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図6図6は、高分子型化合物6の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図7図7は、高分子型化合物7の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図8図8は、高分子型化合物8の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図9図9は、高分子型化合物9の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図10図10は、高分子型化合物10の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図11図11は、高分子型化合物11の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図12図12は、高分子型化合物12の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図13図13は、高分子型化合物13の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図14図14は、バンドギャップの算出方法を説明するための模式図であり、高分子型化合物9を含む薄膜のUV測定を行って得られた紫外可視吸収スペクトルに対して補助線を引いた模式図である。
図15図15は、低分子型化合物1の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図16図16は、低分子型化合物3の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図17図17は、低分子型化合物4の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図18図18は、低分子型化合物5の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図19図19は、低分子型化合物6の紫外可視吸収スペクトルを示す。
図20図20は、低分子型化合物7の紫外可視吸収スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の化合物は、下記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されているものである。下記式(Do-A)中、Rは炭素数2~10のアルキレン基を表し、*は、結合手を表す。下記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
【0012】
【化4】
【0013】
化合物を構成するドナー性ユニットとは、電子供与性の構造単位を意味する。化合物を構成するアクセプター性ユニットとは、電子受容性の構造単位を意味する。
【0014】
式(Do-A)で表される単位は、電子供与性に優れている。式(Do-A)で表される単位は、また、アセタール構造を含むスピロ骨格を有しているため、溶媒への溶解性が良好である。そのため、式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを組み合わせた化合物を用いれば、当該化合物の溶媒への溶解性は良好となる。ゆえに、当該化合物を基板に塗布した膜の膜質が良好となり、当該膜の電子移動度が良好となる。また、式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを組み合わせた化合物を用いれば、イオン化エネルギーの値(HOMOの値)とLUMOの値のバンドギャップが小さくなり、電子が移動しやすくなる。さらに、分子間で静電相互作用が働くことで配向性も良好となり、電子移動度の向上が期待出来る。また、LUMOの値が、例えば、-3.5eV以下となり、大気安定性を有するものとなる。従って当該式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物は、例えば、有機半導体材料として好適に用いることができる。
【0015】
本発明の化合物は、上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されているものである。このような化合物のうち、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットを合計で2つまたは3つ有する化合物を、以下、低分子型化合物とよぶことがある。また、上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有する化合物を、以下、高分子型化合物とよぶことがある。高分子型化合物は、換言すると、上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ2つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物である。低分子型化合物のうち、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットを合計で2つ有する化合物(即ち、1つのドナー性ユニットと1つのアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物)を二量体型化合物とよぶ。低分子型化合物のうち、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットを合計で3つ有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物を、以下、三量体型化合物、または、単に三量体とよぶことがある。三量体型化合物は、1つのアクセプター性ユニットに2つのドナー性ユニットが連結されている化合物であってもよいが、1つのドナー性ユニットに2つのアクセプター性ユニットが連結されている化合物であることが好ましい。低分子型化合物である場合、高分子型化合物よりも溶媒への溶解性が一層良好となる。その結果、低分子型化合物を用いることにより、例えば、スピンコートにより均質な薄膜を製造できるため、電子移動度が良好となる。
【0016】
式(Do-A)中、前記Rの炭素数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。アルキレン基は、直鎖アルキレン基でもよく、分岐を有するアルキレン基でもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。Rとしては、例えば、エチレン基、n-プロピレン基、1-メチル-エタン-1,2-イル基、1,2-ジメチル-エタン-1,2-イル基、1-メチル-プロパン-1,3-イル基などが挙げられ、これらのなかでも、エチレン基、n-プロピレン基が好ましい。
【0017】
式(Do-A)で表される単位において、前記Rが炭素数2のエチレン基である場合は、式(Do-A)で表される単位は下記式(Do-a)で表される。
【0018】
【化5】
【0019】
本発明の化合物を構成するドナー性ユニットは、上記式(Do-A)で表される単位を含んでいればよく、公知のドナー性ユニットや後述する式(Do-K)で表される単位などの他のドナー性ユニットを含んでいてもよい。ドナー性ユニット全体を100mol%としたとき、上記式(Do-A)で表される単位の割合は、例えば、40mol%以上であることが好ましく、より好ましくは50mol%以上であり、更に好ましくは80mol%以上である。ドナー性ユニットの全体(100mol%)が上記式(Do-A)で表される単位であってもよい。
【0020】
化合物を構成するドナー性ユニットと組み合わせるアクセプター性ユニットは、公知のアクセプター性ユニットを用いることができる。アクセプター性ユニットは、例えば、下記(1)~(3)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(1)縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子とヘテロ原子である、ヘテロ芳香族縮環型ユニット。
(2)縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子である、芳香族縮環型ユニット。
(3)芳香族環を有し、縮環構造を有さない、単環型ユニット。
【0021】
以下、(1)~(3)のユニットについて説明する。
【0022】
(1)ヘテロ芳香族縮環型ユニット
ヘテロ芳香族縮環型ユニットとは、縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子とヘテロ原子である構造単位である。ヘテロ原子とは、炭素原子以外の原子のことである。ヘテロ芳香族縮環型ユニットを換言すると、芳香族環を含有する縮環型ユニットであって、この縮環型ユニットの縮環を構成する環の少なくとも1つが炭素原子とヘテロ原子から構成される複素環であるユニットである。即ち、縮環構造を有している縮環型ユニットは、少なくとも1つの複素環を有している。ヘテロ原子は各々、例えば窒素原子、硫黄原子、または酸素原子である。
【0023】
縮環構造を構成する環の数は特に限定されないが、例えば、2以上、10以下が好ましい。環の数は、3以上であってもよく、8以下であってもよい。
【0024】
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、複素芳香族環(芳香族複素環と呼ばれることもある)であってもよい。
【0025】
環を構成する元素は、炭素原子およびヘテロ原子であり、環は、ヘテロ原子を少なくとも1個含み、残部は炭素原子である。ヘテロ原子の数は、2個以上であってもよいし、3個以上であってもよい。ヘテロ原子の数の上限は縮環構造を構成する原子の数によるが、例えば、10個以下が好ましく、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下である。
【0026】
環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでもフッ素が好ましい。炭化水素基(以下、炭化水素基Rと呼ぶことがある。)は、脂肪族炭化水素基、アラルキル基などであることが好ましく、前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状の脂肪族炭化水素基であってもよいが、分岐を有する脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0027】
炭化水素基Rの炭素数は特に限定されず、例えば、1~30が好ましい。炭化水素基Rの炭素数は、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。但し、炭化水素基Rがアラルキル基の場合、炭素数の下限は7以上が好ましい。本発明の化合物が高分子型化合物の場合、炭化水素基Rの炭素数は大きい方が好ましく、炭素数が大きくなるほど溶媒への溶解性が良好となる。高分子型化合物の場合における炭化水素基Rの炭素数は、8以上が好ましく、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上である。本発明の化合物が低分子型化合物の場合、炭化水素基Rの炭素数は小さい方が好ましく、炭素数が小さくなるほど配向性がよくなり、電子が分子間を移動しやすくなり、電子移動度が向上する。低分子型化合物の場合における炭化水素基Rの炭素数は、24以下が好ましく、より好ましくは20以下、更に好ましくは14以下である。
【0028】
炭化水素基Rとしては、例えば、メチル基等の炭素数1のアルキル基;エチル基等の炭素数2のアルキル基;n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数3のアルキル基;n-ブチル基等の炭素数4のアルキル基;n-ペンチル基等の炭素数5のアルキル基;n-ヘキシル基等の炭素数6のアルキル基;n-ヘプチル基等の炭素数7のアルキル基;n-オクチル基、1-n-ブチルブチル基、1-n-プロピルペンチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、2,5-ジメチルヘキシル基等の炭素数8のアルキル基;n-ノニル基、1-n-プロピルヘキシル基、2-n-プロピルヘキシル基、1-エチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、6-メチルオクチル基、2,3,3,4-テトラメチルペンチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基等の炭素数9のアルキル基;n-デシル基、1-n-ペンチルペンチル基、1-n-ブチルヘキシル基、2-n-ブチルヘキシル基、1-n-プロピルヘプチル基、1-エチルオクチル基、2-エチルオクチル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、3,7-ジメチルオクチル基等の炭素数10のアルキル基;n-ウンデシル基、1-n-ブチルヘプチル基、2-n-ブチルヘプチル基、1-n-プロピルオクチル基、2-n-プロピルオクチル基、1-エチルノニル基、2-エチルノニル基等の炭素数11のアルキル基;n-ドデシル基、1-n-ペンチルヘプチル基、2-n-ペンチルヘプチル基、1-n-ブチルオクチル基、2-n-ブチルオクチル基、1-n-プロピルノニル基、2-n-プロピルノニル基等の炭素数12のアルキル基;n-トリデシル基、1-n-ペンチルオクチル基、2-n-ペンチルオクチル基、1-n-ブチルノニル基、2-n-ブチルノニル基、1-メチルドデシル基、2-メチルドデシル基等の炭素数13のアルキル基;n-テトラデシル基、1-n-ヘプチルヘプチル基、1-n-ヘキシルオクチル基、2-n-ヘキシルオクチル基、1-n-ペンチルノニル基、2-n-ペンチルノニル基等の炭素数14のアルキル基;n-ペンタデシル基、1-n-ヘプチルオクチル基、1-n-ヘキシルノニル基、2-n-ヘキシルノニル基等の炭素数15のアルキル基;n-ヘキサデシル基、2-n-ヘキシルデシル基、1-n-オクチルオクチル基、1-n-ヘプチルノニル基、2-n-ヘプチルノニル基等の炭素数16のアルキル基;n-ヘプタデシル基、1-n-オクチルノニル基等の炭素数17のアルキル基;n-オクタデシル基、1-n-ノニルノニル基等の炭素数18のアルキル基;n-ノナデシル基等の炭素数19のアルキル基;n-エイコシル基、2-n-オクチルドデシル基等の炭素数20のアルキル基;n-ヘンエイコシル基等の炭素数21のアルキル基;n-ドコシル基等の炭素数22のアルキル基;n-トリコシル基等の炭素数23のアルキル基;n-テトラコシル基、2-n-デシルテトラデシル基等の炭素数24のアルキル基;n-ペンタコシル等の炭素数25のアルキル基;n-ヘキサコシル等の炭素数26のアルキル基;n-ヘプタコシル等の炭素数27のアルキル基;n-オクタコシル等の炭素数28のアルキル基;n-ノナコシル等の炭素数29のアルキル基;n-トリアコンチル等の炭素数30のアルキル基;フェニルメチル基、フェニルエチル基などのアラルキル基;等が挙げられる。
【0029】
アルコキシ基は、-ORで表され、Rは炭化水素基である。Rで表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0030】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基等が挙げられる。
【0031】
エステル基としては、例えば、アセトキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、リン酸エステル基等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン化アルキル基は、上記で説明した炭化水素基Rの一部の水素がハロゲン原子に置換した置換基を意味する。
【0033】
ヘテロ芳香族縮環型ユニットとしては、例えば、下記式(Ac-1)~式(Ac-17)で表されるユニットを挙げることができる。
【0034】
【化6】
【0035】
[式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、-CH=CH-であるか、-C≡C-であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピラジン環である。
は、水素原子であるか、炭化水素基であるか、-(CH-ORであり、Rは、炭化水素基である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうち、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
は、炭化水素基である。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうちに、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
およびAは、それぞれ独立に、-(CH-ORであるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基またはオルガノシリル基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭化水素基、オルガノシリル基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基で置換されていてもよいフェニル基であり、Rは、炭化水素基である。
は、CHまたは窒素原子である。アクセプター性ユニットが複数のDを有するとき、当該複数のDのうちに、互いに同一のDがあってもよく、互いに異なるDがあってもよい。
は、炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子である。
nは、0または1である。
*は、結合手を表す。式(Ac-1)~式(Ac-17)で表されるユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
化合物が複数のアクセプター性ユニットを有するとき、T、T、R、R、A、A、D、およびDは各々、ユニット間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0036】
、Tがチオフェン環である場合、チオフェン環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0037】
、Tがチアゾール環である場合、チアゾール環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0038】
、Tがピリジン環である場合、ピリジン環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0039】
、Tがピラジン環である場合、ピラジン環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0040】
式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であることが好ましい。特に、高分子型化合物の場合は、式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であることが好ましく、低分子型化合物の場合は、式(Ac-1)~式(Ac-17)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であることが好ましい。
【0041】
が炭化水素基である場合、炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。高分子型化合物の場合は、分岐を有する脂肪族炭化水素基が好ましい。これにより溶媒への溶解性を担保できる。低分子型化合物の場合は、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。これにより配向性の向上が見込まれるため、電子移動度が向上すると考えられる。
【0042】
が-(CH-ORである場合、Rで表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。pは、例えば1~5の整数である。
【0043】
式(Ac-1)~式(Ac-17)中、Rは、炭化水素基であることが好ましい。アクセプター性ユニットが複数のRを有するとき、当該複数のRのうちに、互いに同一のRがあってもよく、互いに異なるRがあってもよい。
【0044】
で表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0045】
、Aが-(CH-ORである場合、Rで表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。qは、例えば1~5の整数である。
【0046】
、Aがチオフェン環である場合、チオフェン環が置換されて有していてもよいアルコキシ基は、-OR51で表され、R51は炭化水素基である。R51で表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。R51で表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0047】
チオフェン環が置換されて有していてもよいチオアルコキシ基は、-SRで表され、Rは炭化水素基である。Rで表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。Rで表される炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0048】
チオフェン環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0049】
チオフェン環が置換されて有していてもよいオルガノシリル基としては、Si原子に1個以上の炭化水素基が置換した1価の基である。Si原子に置換する炭化水素基は、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、または、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0050】
Si原子に置換する脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~18であり、より好ましくは1~8である。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、イソブチル基、オクチル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0051】
Si原子に置換する芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6~8であり、より好ましくは6~7であり、特に好ましくは6である。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0052】
Si原子に置換する炭化水素基は、なかでも脂肪族炭化水素基が好ましく、分岐を有する脂肪族炭化水素基がより好ましく、イソプロピル基が特に好ましい。
【0053】
Si原子に置換する炭化水素基の数は、2個以上であることが好ましく、3個であることがさらに好ましい。Si原子に置換する炭化水素基の数が2個以上の場合、Si原子に置換する炭化水素基は、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0054】
Si原子に置換する炭化水素基の数が3個の場合の具体例としては、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソブチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基等のアルキルシリル基;トリフェニルシリル基、tert-ブチルクロロジフェニルシリル基等のアリールシリル基;等が挙げられる。中でも、アルキルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基が特に好ましい。
【0055】
、Aがチアゾール環である場合、チアゾール環が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0056】
チアゾール環が置換されて有していてもよいオルガノシリル基としては、上記で説明したオルガノシリル基と同様のものが挙げられる。
【0057】
、Aがフェニル基である場合、フェニル基が置換されて有していてもよいアルコキシ基としては、上記で説明したアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0058】
フェニル基が置換されて有していてもよいチオアルコキシ基としては、上記で説明したチオアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
【0059】
フェニル基が置換されて有していてもよい炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0060】
フェニル基が置換されて有していてもよいオルガノシリル基としては、上記で説明したオルガノシリル基と同様のものが挙げられる。
【0061】
フェニル基が置換されて有していてもよいハロゲン原子としては、上記で説明したハロゲン原子と同様のものが挙げられる。
【0062】
フェニル基が置換されて有していてもよいハロゲン化アルキル基としては、炭化水素基の一部または全部の水素原子がハロゲン原子で置換されている基が挙げられ、なかでも全部の水素原子がハロゲン原子で置換されている基(パーフルオロアルキル基)が好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでもフッ素が好ましい。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。
【0063】
は、炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子であり、Dが炭素原子またはケイ素原子の場合のnは1であり、Dが窒素原子の場合のnは0である。
【0064】
上記式(Ac-1)は、下記式(Ac-1-1)~式(Ac-1-4)のいずれかであることが好ましい。
【0065】
【化7】
【0066】
上記式(Ac-2)は、下記式(Ac-2-1)または式(Ac-2-2)であることが好ましい。
【0067】
【化8】
【0068】
上記式(Ac-3)は、下記式(Ac-3-1)または式(Ac-3-2)であることが好ましい。
【0069】
【化9】
【0070】
上記式(Ac-4)は、下記式(Ac-4-1)~式(Ac-4-6)のいずれかであることが好ましい。
【0071】
【化10】
【0072】
上記式(Ac-5)は、下記式(Ac-5-1)または式(Ac-5-2)であることが好ましい。
【0073】
【化11】
【0074】
上記式(Ac-6)は、下記式(Ac-6-1)であることが好ましい。
【0075】
【化12】
【0076】
上記式(Ac-7)は、下記式(Ac-7-1)~式(Ac-7-7)のいずれかであることが好ましい。
【0077】
【化13】
【0078】
上記式(Ac-8)は、下記式(Ac-8-1)~式(Ac-8-3)のいずれかであることが好ましい。
【0079】
【化14】
【0080】
上記式(Ac-9)は、下記式(Ac-9-1)または式(Ac-9-2)であることが好ましい。
【0081】
【化15】
【0082】
上記式(Ac-10)は、下記式(Ac-10-1)であることが好ましい。
【0083】
【化16】
【0084】
上記式(Ac-11)は、下記式(Ac-11-1)であることが好ましい。
【0085】
【化17】
【0086】
上記式(Ac-12)は、下記式(Ac-12-1)であることが好ましい。
【0087】
【化18】
【0088】
上記式(Ac-13)は、下記式(Ac-13-1)であることが好ましい。
【0089】
【化19】
【0090】
上記式(Ac-14)は、下記式(Ac-14-1)または式(Ac-14-2)であることが好ましい。
【0091】
【化20】
【0092】
上記式(Ac-15)は、下記式(Ac-15-1)~式(Ac-15-3)のいずれかであることが好ましい。
【0093】
【化21】
【0094】
上記式(Ac-16)は、下記式(Ac-16-1)であることが好ましい。
【0095】
【化22】
【0096】
上記式(Ac-17)は、下記式(Ac-17-1)であることが好ましい。
【0097】
【化23】
【0098】
ヘテロ芳香族縮環型ユニットは、上記式(Ac-1)、式(Ac-7)、式(Ac-10)、式(Ac-13)、式(Ac-15)、または式(Ac-17)のいずれかで表されるユニットが好ましく、より好ましくは上記式(Ac-1-1)~式(Ac-1-4)、式(Ac-7-1)~式(Ac-7-7)、式(Ac-10-1)、式(Ac-13-1)、式(Ac-15-1)、式(Ac-15-2)、または式(Ac-17-1)のいずれかで表されるユニットであり、更に好ましくは上記式(Ac-1-1)、式(Ac-7-2)、式(Ac-7-5)、式(Ac-10-1)、式(Ac-13-1)、式(Ac-15-1)、式(Ac-15-2)、または式(Ac-17-1)のいずれかで表されるユニットである。特に、低分子型化合物の場合は、ヘテロ芳香族縮環型ユニットは、上記式(Ac-15)で表されるユニットが好ましく、より好ましくは上記式(Ac-15-1)または式(Ac-15-2)で表されるユニットであり、更に好ましくは上記式(Ac-15-1)で表されるユニットである。
【0099】
(2)芳香族縮環型ユニット
芳香族縮環型ユニットとは、縮環構造を有し、かつ環の少なくとも1つが芳香族環であり、環を構成する元素が炭素原子である構造単位である。
【0100】
縮環構造を構成する環の数は特に限定されないが、例えば、2以上、10以下が好ましい。環の数は、3以上であってもよく、8以下であってもよい。
【0101】
環を構成する元素は、炭素原子であり、ヘテロ原子は含まない。ヘテロ原子とは、炭素原子以外の原子である。環を構成する元素とは、縮環構造に含まれるそれぞれの環構造を構成する全ての元素を意味し、縮環構造の環の少なくとも1つが芳香族環であるとき、該芳香族環は、実質的に芳香族炭化水素環を意味する。
【0102】
環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、アシル基、エステル基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基などが挙げられる。
【0103】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでもフッ素が好ましい。
【0104】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基であってもよいが、分岐を有する脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0105】
炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0106】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基等が挙げられる。
【0107】
エステル基としては、例えば、アセトキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、リン酸エステル基等が挙げられる。
【0108】
ハロゲン化アルキル基は、上記で説明した炭化水素基Rの一部の水素がハロゲン原子に置換した置換基を意味する。
【0109】
芳香族縮環型ユニットは、例えば、下記式(Ac-21)で表されるユニットを挙げることができる。
【0110】
【化24】
【0111】
[式(Ac-21)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、-CH=CH-であるか、-C≡C-であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピラジン環である。
は、炭化水素基であり、Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
*は、結合手を表す。式(Ac-21)で表されるユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
化合物が複数のアクセプター性ユニットを有するとき、T、T、およびRは各々、ユニット間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0112】
およびTの説明は、上記(1)における説明が援用できる。TとTは、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0113】
で表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0114】
上記式(Ac-21)は、下記式(Ac-21-1)であることが好ましい。
【0115】
【化25】
【0116】
(3)単環型ユニット
単環型ユニットとは、芳香族環を有し、縮環構造を有さない構造単位である。
【0117】
芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよいし、複素芳香族環(芳香族複素環と呼ばれることもある)であってもよいし、複数の芳香族環が炭素原子またはヘテロ原子を介して結合しているものであってもよい。
【0118】
環には、置換基が結合していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、アシル基、エステル基、ハロゲン化アルキル基、シアノ基などが挙げられる。
【0119】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでもフッ素が好ましい。
【0120】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基であってもよいが、分岐を有する脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0121】
炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば、1~30が好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下である。
【0122】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレオイル基、リノレノイル基等が挙げられる。
【0123】
エステル基としては、例えば、アセトキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、リン酸エステル基等が挙げられる。
【0124】
ハロゲン化アルキル基は、上記で説明した炭化水素基Rの一部の水素がハロゲン原子に置換した置換基を意味する。
【0125】
単環型ユニットは、例えば、下記式(Ac-31)~式(Ac-33)で表されるユニットを挙げることができる。
【0126】
【化26】
【0127】
[式(Ac-31)~式(Ac-33)中、TおよびTは、それぞれ独立に、単結合であるか、-CH=CH-であるか、-C≡C-であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチオフェン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいチアゾール環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピリジン環であるか、炭化水素基で置換されていてもよいピラジン環である。
*は、結合手を表す。式(Ac-31)~式(Ac-33)で表されるユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
化合物が複数のアクセプター性ユニットを有するとき、TおよびTは各々、ユニット間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0128】
およびTの説明は、上記(1)における説明が援用できる。
【0129】
上記式(Ac-31)は、下記式(Ac-31-1)~式(Ac-31-3)のいずれかであることが好ましい。上記式(Ac-32)は、下記式(Ac-32-1)であることが好ましい。上記式(Ac-33)は、下記式(Ac-33-1)または式(Ac-33-2)であることが好ましい。
【0130】
【化27】
【0131】
本発明の化合物は、例えば、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有している高分子型化合物であってもよい。高分子型化合物である場合、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットは、ランダムに配置されていてもよいが、交互に配置されていることが好ましい。
【0132】
本発明の高分子型化合物を構成する複数のドナー性ユニットは、上記式(Do-A)で表される単位を少なくとも1つ以上含み、更に下記式(Do-K)で表される単位を含んでもよい。下記式(Do-K)中、*は、結合手を表す。下記式(Do-K)で表される単位を含むドナー性ユニットが化合物の末端の場合は、*は水素原子であってもよい。
【0133】
【化28】
【0134】
上記式(Do-K)で表される単位も電子供与性に優れている。また、上記式(Do-K)で表される単位を含むことにより、分子間での相互作用による配向性向上や、LUMOの深化によるデバイスの安定性向上が期待出来る。そのためドナー性ユニットが、更に上記式(Do-K)で表される単位を含むことにより、性能と溶解性を適宜調整できる。
【0135】
本発明の高分子型化合物を構成する複数のドナー性ユニットは、ドナー性ユニット全体を100mol%としたとき、上記式(Do-A)で表される単位と上記式(Do-K)で表される単位の合計は、例えば、50mol%以上であることが好ましく、より好ましくは70mol%以上であり、更に好ましくは90mol%以上である。ドナー性ユニットの全体(100mol%)が上記式(Do-A)で表される単位および上記式(Do-K)で表される単位であってもよい。
【0136】
本発明の高分子型化合物を構成する複数のドナー性ユニットが、上記式(Do-A)で表される単位と上記式(Do-K)で表される単位の両方を含有する場合、上記式(Do-A)で表される単位と上記式(Do-K)で表される単位の混合比[式(Do-A)で表される単位/上記式(Do-K)で表される単位]は特に限定されないが、モル比で、3/7~7/3であることが好ましい。混合比は、モル比で、4/6~6/4であることがより好ましい。
【0137】
本発明の化合物は、例えば、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットを合計で2つまたは3つ有する低分子型化合物であってもよい。低分子型化合物である場合、ドナー性ユニットに2つのアクセプター性ユニットが連結されている三量体型化合物であることが好ましい。
【0138】
本発明の化合物の分子量は、該化合物を構成するドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットの分子量によるため、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットの分子量によっては、低分子型化合物の分子量の方が、高分子型化合物の分子量よりも大きくなることがある。
【0139】
本発明の高分子型化合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1500以上が好ましく、より好ましくは3000以上、更に好ましくは7000以上である。高分子型化合物の重量平均分子量(Mw)の上限は特に限定されないが、例えば、300000以下であればよく、200000以下であってもよい。
【0140】
本発明の高分子型化合物の数平均分子量(Mn)は、例えば、1000以上が好ましく、より好ましくは2000以上であり、更に好ましくは4000以上である。高分子型化合物の数平均分子量(Mn)の上限は特に限定されないが、例えば、300000以下であればよく、200000以下であってもよい。
【0141】
本発明の低分子型化合物の分子量は、例えば、2500以下が好ましい。当該分子量は、2300以下がより好ましく、さらに好ましくは1300以下である。
【0142】
本発明の化合物の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィを用い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて算出することができる。
【0143】
本発明の化合物のイオン化エネルギーは、-4eV以下であることが好ましく、より好ましくは-4.5eV以下、さらに好ましくは-5eV以下、特に好ましくは-5.1eV以下である。イオン化エネルギーの下限は、特に限定されないが、例えば、-7eV以上が好ましく、より好ましくは-6.5eV以上、更に好ましくは-6.2eV以上である。
【0144】
本発明には、上記化合物を含む有機半導体材料も含まれる。例えば、上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットは、電子供与性に優れているため、当該ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結している化合物は、有機半導体材料として有用である。また、本発明の化合物は、アセタール構造でスピロ化された上記式(Do-A)で表される単位を含んでいるため、溶媒への溶解性が良好となる。そのため、本発明の化合物を含む有機半導体材料は、溶媒への溶解性が良好となり、基板に塗布した膜の膜質が良好となり、電子移動度が良好となる。
【0145】
上記溶媒は、ハロゲン系有機溶媒およびノンハロゲン系有機溶媒が挙げられる。本発明の化合物は、溶媒、特にハロゲン系有機溶媒および/またはノンハロゲン系有機溶媒への溶解性が良好である。ハロゲン系有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等が挙げられる。ノンハロゲン系有機溶媒としては、例えば、トルエン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン等が挙げられる。本発明の化合物は、少なくともハロゲン系有機溶媒に溶解することが好ましい。
【0146】
本発明の有機半導体材料は、n型有機半導体材料として好ましく用いることができる。
【0147】
本発明には、上記有機半導体材料を含む有機電子デバイスも含まれる。即ち、上記有機半導体材料は、有機電子デバイスの素材として好適に用いることができ、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜トランジスタ素子、有機光電変換素子、有機薄膜太陽電池モジュール等の有機電子デバイスの材料として用いることができる。
【0148】
次に、本発明の化合物を製造できる方法について説明する。
【0149】
本発明の化合物は、例えば、ドナー性ユニットの結合手に有機置換基を有するスズが結合した化合物(以下、ドナー原料と呼ぶ場合がある)と、アクセプター性ユニットの結合手にハロゲン原子が結合した化合物(以下、アクセプター原料と呼ぶ場合がある)とをカップリング反応させることによって製造できる(以下、カップリング工程と呼ぶ場合がある)。
【0150】
ドナー原料には、前記(Do-A)単位に対応する下記式(do-A)で表される化合物を用いることができる。
【0151】
【化29】
【0152】
式(do-A)中、Rは前記と同じである。式(do-A)で表される化合物において、前記Rが炭素数2のエチレン基である場合は、式(do-A)で表される化合物は下記式(do-a)で表される。
【0153】
【化30】
【0154】
11およびR12は、有機置換基を表し、それぞれ独立に、炭化水素基である。複数のR11のうちに、互いに同一のR11があってもよいし互いに異なるR11があってもよく、複数のR12のうちに、互いに同一のR12があってもよいし互いに異なるR12があってもよい。R11、R12で表される炭化水素基としては、上記で説明した炭化水素基Rと同様のものが挙げられる。R11、R12で表される炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下である。R11とR12は、互いに異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0155】
式(do-A)で表される化合物は、特開2009-215278号公報に記載の方法に基づいて製造できる。
【0156】
なお式(Do-K)で表される単位は、式(do-A)で表される化合物をカップリングした後、アセタール構造をケトン構造に変化させることで合成できる。
【0157】
アクセプター原料に結合する前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでも臭素が好ましい。
【0158】
アクセプター原料には、例えば、上述した(1)ヘテロ芳香族縮環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物、(2)芳香族縮環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物、(3)単環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物が挙げられる。
【0159】
(1)ヘテロ芳香族縮環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物は、例えば、下記式(ac-1)~式(ac-17)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(ac-1)~式(ac-17)には、ヘテロ芳香族縮環型ユニットが結合手を2つ有しており、それぞれの結合手にハロゲン原子Yが結合している化合物を示したが、ドナー性ユニットに対して、下記(ac-1)~式(ac-17)で表される化合物を末端として結合させる場合は、結合手を1つにした化合物を用いればよい。
【0160】
【化31】
【0161】
[式(ac-1)~式(ac-17)中、T、T、R、R、A、A、D、D、およびnは、前記式(Ac-1)~式(Ac-17)について説明したのと同じである。
Yは、ハロゲン原子を表す。
式(ac-1)~式(ac-17)で表されるアクセプター原料の2種以上を組み合わせて用いるとき、T、T、R、R、A、A、D、D、およびYは各々、アクセプター原料間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0162】
ハロゲン原子Yとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでも臭素が好ましい。
【0163】
(2)芳香族縮環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物は、例えば、下記式(ac-21)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(ac-21)には、芳香族縮環型ユニットが結合手を2つ有しており、それぞれの結合手にハロゲン原子が結合している化合物を示したが、ドナー性ユニットに対して、下記(ac-21)で表される化合物を末端として結合させる場合は、結合手を1つにした化合物を用いればよい。
【0164】
【化32】
【0165】
[式(ac-21)中、T、T、及びRは、前記式(Ac-21)と同じである。
Yは、ハロゲン原子を表す。
式(ac-21)で表されるアクセプター原料の2種以上を組み合わせて用いるとき、T、T、R、およびYは各々、アクセプター原料間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0166】
ハロゲン原子Yとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでも臭素が好ましい。
【0167】
(3)単環型ユニットの結合手にハロゲン原子が結合している化合物は、例えば、下記式(ac-31)~式(ac-33)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式(ac-31)~式(ac-33)には、単環型ユニットが2つの結合手を有しており、それぞれの結合手にハロゲン原子が結合している化合物を示したが、ドナー性ユニットに対して、下記(ac-31)~式(ac-33)で表される化合物を末端として結合させる場合は、結合手の数を1つにした化合物を用いればよい。
【0168】
【化33】
【0169】
[式(ac-31)~式(ac-33)中、TおよびTは、前記式(Ac-31)~式(Ac-33)について説明したのと同じである。
Yは、ハロゲン原子を表す。
式(ac-31)~式(ac-33)で表されるアクセプター原料の2種以上を組み合わせて用いるとき、T、T、およびYは各々、アクセプター原料間で同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
環には、上述した置換基が結合していてもよい。]
【0170】
ハロゲン原子Yとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、なかでも臭素が好ましい。
【0171】
上記式(do-A)で表される有機スズ化合物と、アクセプター性ユニットのハロゲン化物は、金属触媒の存在下でカップリング反応させることが好ましい。
【0172】
カップリング反応に用いる金属触媒としては、例えば、パラジウム系触媒、ニッケル系触媒、鉄系触媒、銅系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒などの遷移金属触媒が挙げられる。これらのなかでも、パラジウム系触媒が好ましい。パラジウム系触媒に含まれるパラジウムの価数は特に限定されず、0価でも2価でもよい。
【0173】
パラジウム系触媒としては、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酸化パラジウム(II)、硫化パラジウム(II)、テルル化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)、セレン化パラジウム(II)、パラジウムシアニド(II)、パラジウムアセテート(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノフェロセン)]パラジウム(II)、ジクロロ[1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加体、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体、ジクロロ[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](3-クロロピリジル)パラジウム(II)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロ[2,5-ノルボルナジエン]パラジウム(II)、ジクロロビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられる。これらのなかでも、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体を用いることが好ましい。
【0174】
銅系触媒としては、例えば、銅、フッ化銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、フッ化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)等のハロゲン化銅化合物;酸化銅(I)、硫化銅(I)、酸化銅(II)、硫化銅(II)、酢酸銅(I)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等が挙げられる。
【0175】
金属触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0176】
カップリング工程において、上記式(do-A)で表される有機スズ化合物と金属触媒とのモル比(式(do-A)で表される有機スズ化合物:金属触媒)は、例えば、1:0.0001~1:0.5程度であり、1:0.001~1:0.4が好ましく、1:0.005~1:0.3がより好ましく、1:0.01~1:0.2がさらに好ましい。
【0177】
カップリング工程では、金属触媒に配位子を配位させてもよい。配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、ビス(tert-ブチル)メチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニル(メチル)ホスフィン、トリフェニスホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート、2-ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-ジフェニルホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-(N,N’-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノビフェニル、2-(ジ-tert-ブチル)ホスフィノ-2’-メチルビフェニル、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ブタン、1,2-ビスジフェニルホスフィノエチレン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2-エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、2,2’-ビピリジル、1,3-ジフェニルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ジメチルジヒドロイミダゾリリデン、ジエチルジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)ジヒドロイミダゾリリデン、1,10-フェナントロリン、5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン、バトフェナントロリンが挙げられる。これらのなかでも、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、ビス(tert-ブチル)メチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニル(メチル)ホスフィン、トリフェニスホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(2-フリル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィンが好ましく、より好ましくはトリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンである。
【0178】
配位子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0179】
金属触媒に配位子を配位させる場合、金属触媒と配位子とのモル比(金属触媒:配位子)は、例えば、1:0.5~1:10程度であり、1:1~1:8が好ましく、1:1~1:7がより好ましく、1:1~1:5がさらに好ましい。
【0180】
カップリング工程では、溶媒を用いることが好ましく、溶媒は、反応に影響を及ぼさない限り特に限定されることはなく、例えば、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒等を用いることができる。
【0181】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジオキサンなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラリンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリンなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパンなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-(1H)-ピリミジンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。スルホン系溶媒としては、例えば、スルホラン等が挙げられる。これらのなかでも、芳香族系溶媒が好ましく、より好ましくはクロロベンゼンである。
【0182】
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0183】
カップリング工程で用いる溶媒の量は、上記式(do-A)で表される有機スズ化合物とアクセプター性ユニットのハロゲン化物の合計1gに対して、例えば、1mL以上、150mL以下程度であり、好ましくは5mL以上、より好ましくは8mL以上であり、好ましくは100mL以下、より好ましくは80mL以下である。
【0184】
カップリング工程における反応温度は特に限定されないが、反応収率を高める観点から0℃以上、200℃以下が好ましく、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
【0185】
カップリング反応後は、常法に従って固液分離し、回収した固体を洗浄することによって上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物を製造できる。化合物が、高分子型化合物の場合は、例えば、固液分離し、回収した固体をソックスレー洗浄および抽出することによって高分子型化合物を製造できる。化合物が、低分子型化合物の場合は、例えば、セライトろ過によって触媒を除去した後、濃縮して得られた固体を分散洗浄することによって低分子型化合物を製造できる。
【0186】
高分子型化合物を構成する複数のドナー性ユニットとして、更に上記式(Do-K)で表される単位を含む高分子型化合物は、上記式(Do-A)で表される単位を含むドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有する高分子型化合物を、水の存在下で、酸性条件で、加熱撹拌することにより、アセタール構造をケトン構造に変化させることで製造できる。
【0187】
本願は、2021年12月9日に出願された日本国特許出願第2021-200324号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記日本国特許出願第2021-200324号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0188】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0189】
実験1では高分子型化合物を合成し、実験2では低分子型化合物を合成し、溶媒への溶解性、および有機半導体材料として好適に用いることができるかどうかを評価した。実施例で用いた測定方法は、下記の通りである。
【0190】
[測定方法]
(NMRスペクトル測定)
NMRスペクトル測定装置として、Varian社製の「400-MR」、およびBruker社製の「AVANCE NEO 600」を用いて、NMRスペクトル測定を行った。
(高分子型化合物の紫外可視吸収スペクトル測定)
紫外可視吸収スペクトルの測定は、高分子型化合物を溶媒に溶解させた溶液の状態で測定した。具体的には、高分子型化合物を、濃度が0.03g/Lになる様にクロロホルムに溶解し、紫外・可視分光装置(島津製作所社製、「UV-3600i Plus」)、および光路長1cmのセルを用いて、溶液状態における紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(低分子型化合物の紫外可視吸収スペクトル測定)
紫外可視吸収スペクトルの測定は、低分子型化合物を溶媒に溶解させた溶液の状態で測定した。具体的には、低分子型化合物を、濃度が0.03g/Lになる様にクロロホルムに溶解し、紫外・可視分光装置(島津製作所社製、「UV-3600i Plus」)、および光路長1cmのセルを用いて、溶液状態における紫外可視吸収スペクトルを測定した。測定結果は実線で示した。
【0191】
特開2009-215278号公報の実施例2に基づいて化合物Hを調製した。化合物Hは、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane]であり、以下、Ac-CBTZ-SBと表記することがある。
【0192】
[実験1]
(実施例1)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、217mg、0.265mmol)、3,6-Bis(5-bromo-2-thienyl)-2,5-bis(2-hexyldecyl)-2,5-dihydropyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione(HD-DPP-DB、242mg、0.265mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(10mg、9.7μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(16mg、45μmol)およびクロロベンゼン(8mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(45mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が110.3mg(収率42%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-HD-DPP(以下、高分子型化合物1ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物1の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図1に実線で示す。横軸は測定波長、縦軸は吸光度を示す(以下、紫外可視吸収スペクトル測定の結果について同じ)。
【0193】
【化34】
【0194】
(実施例2)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、3,6-Bis(5-bromo-2-thienyl)-2,5-bis(3,7-dimethyloctyl)-2,5-dihydropyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione(DMO-DPP-DB、90.1mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(6.7mg、19μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が36.7mg(収率37%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-DMO-DPP(以下、高分子型化合物2ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物2の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図2に実線で示す。
【0195】
【化35】
【0196】
(実施例3)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、3,6-Bis(5-bromo-2-pyridinyl)-2,5-dihydro-2,5-bis(2-octyldodecyl)pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione(ODD-DPPDPy-DB、116mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(6.7mg、19μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が107.2mg(収率86%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-ODD-DPPDPy(以下、高分子型化合物3ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物3の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図3に実線で示す。
【0197】
【化36】
【0198】
(実施例4)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、5,13-Dibromo-2,9-bis(2-octyldodecyl)anthra[2,1,9-def:6,5,10-d’e’f’]diisoquinoline-1,3,8,10(2H,9H)-tetrone(ODD-PDI-DB、135mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(6.7mg、19μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、褐色固体が48.4mg(収率39%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた褐色固体は、P-Ac―CBTZ-ODD-PDI(以下、高分子型化合物4ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物4の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図4に実線で示す。
【0199】
【化37】
【0200】
(実施例5)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、1,3-Dibromo-5,7-bis(2-butyloctyl)-4H,8H-benzo[1,2-c:4,5-c’]dithiophene-4,8-dione(BO-BDT-DB、87.5mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、褐色固体が22.9mg(収率29%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた褐色固体は、P-Ac―CBTZ-BO-BDT(以下、高分子型化合物5ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物5の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図5に実線で示す。
【0201】
【化38】
【0202】
(実施例6)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、4,9-Dibromo-2,7-bis(2-octyldodecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(ODD-NDI-DB、120mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が8.8mg(収率8%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-ODD-NDI(以下、高分子型化合物6ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物6の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図6に実線で示す。
【0203】
【化39】
【0204】
(実施例7)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、6-Bromo-3-(5-bromo-2,3-dihydro-3-oxo-2-ethylhexyl-1H-isoindol-1-ylidene)-2,3-dihydro-2-ethylhexyl-1H-Isoindol-1-one(EH-IND-DB、78.6mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(6.7mg、19μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が23.4mg(収率34%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-EH-IND(以下、高分子型化合物7ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物7の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図7に実線で示す。
【0205】
【化40】
【0206】
(実施例8)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、4,9-Dibromo-2,7-bis(2-octyldodecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(ODD-NDI-DB、121.4mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え、溶解性を確認しながら50℃から100℃まで段階的に昇温し、100℃で15時間反応した。50℃から100℃までの昇温は、溶解性を確認しながら50℃で1時間保持、65℃に昇温して1時間保持、75℃に昇温して1時間保持、85℃に昇温して1時間保持した後、100℃に昇温した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が43.2mg(収率41%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-ODD-NDI(以下、高分子型化合物8ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物8の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図8に実線で示す。
【0207】
【化41】
【0208】
(実施例9)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、4,9-Dibromo-2,7-bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(TD-NDI-DB、134mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え130℃で15時間反応した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が42.4mg(収率36%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-TD-NDI(以下、高分子型化合物9ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物9の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図9に実線で示す。
【0209】
【化42】
【0210】
(実施例10)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、217mg、0.265mmol)、3,6-Bis(5-bromo-2-thienyl)-2,5-bis(2-hexyldecyl)-2,5-dihydropyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione(HD-DPP-DB、242mg、0.265mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(10mg、9.7μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(16mg、45μmol)およびクロロベンゼン(8mL)を加え130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(45mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が110.3mg(収率42%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-HD-DPPであった。
【0211】
得られた紺色固体の一部(41.2mg,41.9μmol)をクロロホルムに溶かし、メタンスルホン酸および水を大過剰に加えて60℃で15時間攪拌した。攪拌後、濃縮し、メタノールを加え、ろ取した結果、紺色固体が26.1mg(収率64%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-HD-DPP/P-CBTZ-HD-DPP(50/50)(以下、高分子型化合物10ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物10の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図10に実線で示す。
【0212】
【化43】
【0213】
(実施例11)
マイクロウェーブ反応装置としてBiotage製の「Initiator+ Microwave System 356700」を用い、5mLのマイクロウェーブ(MW)用反応容器に、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、1,3-Dibromo-5-(2-decyltetradecyl)-4H-thieno[3,4-c]pyrrole-4,6(5H)-dione(TD-IMTH-DB、79.0mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え180℃で10分間MW反応を実施した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が63.7mg(収率89%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-TD-IMTH(以下、高分子型化合物11ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物11の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図11に実線で示す。
【0214】
【化44】
【0215】
(実施例12)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、100mg、0.122mmol)、4,9-Dibromo-2,7-bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(TD-NDI-DB、134mg、0.122mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(5mg、4.8μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(7.5mg、21μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を加え、溶解性を確認しながら50℃から100℃まで段階的に昇温し、100℃で15時間反応した。50℃から100℃までの昇温は、溶解性を確認しながら50℃で1時間保持、70℃に昇温して1時間保持した後、100℃に昇温した。反応終了後、メタノール(30mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン)した。次いでソックスレー抽出(クロロホルム)した結果、紺色固体が125mg(収率91%)得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-TD-NDI(以下、高分子型化合物12ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物12の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図12に実線で示す。
【0216】
【化45】
【0217】
(実施例13)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、300mg、0.367mmol)、4,9-Dibromo-2,7-bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(TD-NDI-DB、402mg、0.367mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(15mg、14.7μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(22.0mg、62μmol)およびクロロベンゼン(12mL)を加え、130℃で24時間反応した。反応終了後、メタノール(90mL)に反応液を加えて析出した固体をろ取して、得られた固体をソックスレー洗浄(メタノール、アセトン、ヘキサン、クロロホルム)した。次いでソックスレー円筒ろ紙内部の固体を取り出し、再度クロロホルム中、超音波および攪拌操作によって溶解した結果、紺色固体が285.3mg(収率70%)得られた。クロロホルム可溶部に関してNMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、P-Ac―CBTZ-TD-NDI(以下、高分子型化合物13ということがある)であった。この際に、得られた高分子型化合物13の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行い、その測定結果も考慮に入れた。紫外可視吸収スペクトルの測定結果を図13に実線で示す。
【0218】
【化46】
【0219】
(実施例14)
20mLフラスコに、4-bromo-2,7-bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(TD-NDI-DB、299.2mg、0.2727mmol)、2-(tributylstannyl)-Thiazole(Bu3Sn-Thz、299.1mg、0.799mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(34mg、30μmol)およびトルエン(6.4mL)を添加し、110℃で16時間反応した。反応終了後、ブライン洗浄、トルエン抽出を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(10mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、黄色固体が247.9mg(収率82.2%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた黄色固体は、TD-NDI-2Thz(以下、化合物14ということがある)であった。
H NMR(400MHz,CDCl):8.915(s,1H),8.018(d,2H),7.645(d,2H),4.024(d,4H),1.895(bs,2H),1.199(bs,80H),0.847(t,12H)
【0220】
【化47】
【0221】
(実施例15)
20mLフラスコに、実施例14で得られた化合物14(TD-NDI-2Thz、18.1mg、0.02mmol)およびテトラヒドロフラン(0.25mL)を添加し、-78℃で冷却後、ノルマルブチルリチウム(1.6mol/L、0.05mL)を添加し1時間反応させた。その後、1,3-Dibromo-5,5-dimethylhydantoin(DBH、15.51mg、0.06mmol)を添加し、室温で1時間反応した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、亜硫酸ナトリウム、水洗を実施し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=10)、メタノール(10mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、黄色固体が15mg(収率72.5%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた黄色固体は、TD-NDI-2Thz―Br(以下、化合物15ということがある)であった。
H NMR(400MHz,CDCl):9.140(s,2H),7.931(s,2H),4.085(d,4H),1.227-1.186(bs,80H),0.855(t,12H)
【0222】
【化48】
【0223】
(実施例16)
20mLフラスコ中において、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB)と、実施例15で得られた化合物15と、触媒量のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体と、触媒に配位させる配位子としてのトリス(2-メトキシフェニル)ホスフィンをクロロベンゼン中で加熱して反応させる。Ac-CBTZ-SBと化合物15のモル比は、1:1とする。反応液から、P-Ac-CBTZ-TD-NDI―2Thz(以下、高分子化合物16ということがある)を単離する。
【0224】
【化49】
【0225】
図1図13から明らかなように、本発明の高分子型化合物1~13は、長波長領域の光を吸収できることが分かる。
【0226】
次に、得られた高分子型化合物1~13の分子量を測定した。分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いた。測定に際しては、高分子型化合物を0.8g/Lの濃度となるように移動相溶媒(クロロホルム)に溶解し、下記条件で測定を行い、ポリスチレンを標準試料として作成した較正曲線に基づいて換算することによって、高分子型化合物の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を算出した。測定におけるGPC条件は、下記の通りである。
装置:高速液体クロマトグラフ L-2420/L-2130(株式会社日立ハイテク社製)
移動相:クロロホルム流速1mL/min
カラム:Shodex GPC K-803L(昭和電工株式会社製)
【0227】
分子量の測定結果を下記表1に示す。なお、分子量を示すピークが2つ検出された場合は、2つの分子量を下記表1に示した。
【0228】
次に、得られた高分子型化合物1~13の溶媒への溶解性について評価した。溶媒はクロロホルム、クロロベンゼン、またはトルエンを用いた。クロロホルムを用いた場合は、高分子型化合物の濃度が5質量%となるようにクロロホルムを添加し、60℃で30分間加熱した。クロロベンゼンを用いた場合は、高分子型化合物1~12を1mg/mLとなるようにクロロベンゼンを室温で添加した。高分子型化合物13については1mg/mLとなるようにクロロベンゼンを添加し、130℃で60分間加熱した。トルエンを用いた場合は、高分子型化合物1~9、11、12を1mg/mLとなるようにトルエンを室温で添加した。高分子型化合物13については1mg/mLとなるようにトルエンを添加し、100℃で60分間加熱した。なお、高分子型化合物10については、トルエンを用いた評価は行わなかった。
【0229】
溶媒を添加した後または加熱後、高分子型化合物が溶解しているか目視で観察し、下記基準に基づいて評価した。評価結果を下記表1に示す。
<評価基準>
○:溶媒に溶解した。
△:高分子型化合物の一部が溶解せずに残っていた。
×:溶媒に溶解しなかった。
【0230】
次に、得られた高分子型化合物1~13を用い、イオン化エネルギー、バンドギャップ、電子移動度μe、しきい値電圧、オン/オフ比を測定した。また、イオン化エネルギーの値およびバンドギャップの値からLUMOの値を求めた。
【0231】
(イオン化エネルギーの測定)
高分子型化合物の濃度が8mg/mLとなるようにクロロベンゼンに溶解し、得られた溶液をITO基板上にドロップキャストして成膜した。この膜について、常温、減圧下(0.1Pa以下)で、イオン化エネルギー測定装置(分光計器株式会社製、「BIP-KV202GD」)によりイオン化エネルギー(eV)を測定した。測定したイオン化エネルギーの値(eV)を下記表1に示す。
【0232】
(バンドギャップ)
高分子型化合物のバンドギャップは、高分子型化合物を含む薄膜のUV(紫外可視吸収スペクトル)測定を行い、UVの立ち上がりに基づいて算出した。即ち、高分子型化合物の濃度が8mg/mLとなるようにクロロベンゼンに溶解し、得られた溶液をガラス基板(2.5cm×2.5cm四方、厚み0.8~1.0mm)上にスピンコートして薄膜を成膜した。この薄膜について、常温常圧下で、紫外・可視分光装置(島津製作所社製、「UV-3600i Plus」)によりUV測定を行った。薄膜の状態で測定したUV測定の結果を図1図5図7図13に点線で示した。なお、実施例6については、薄膜の状態でのUV測定は行わなかった。また、UVの立ち上がりに基づいてバンドギャップ(eV)を算出した。算出したバンドギャップの値(eV)を下記表1に示す。
【0233】
バンドギャップの算出方法について、図14を用いて説明する。図14は、バンドギャップの算出方法を説明するために作成した模式図であり、高分子型化合物9を含む薄膜のUV測定を行って得られた紫外可視吸収スペクトルに対して補助線を引いた模式図である。200nm~1000nmの領域で測定した紫外可視吸収スペクトルについて、図14に示すように、化合物由来のピークの長波長側にピークトップ付近から接線を引き、接線と横軸(波長)との交点から立ち上がりの波長λを求めた。即ち、最大吸収を示すピークの曲線における高波長側から低波長側に向かって吸収が大きくなる領域の曲線に対して補助線として接線を引き、この接線と吸光度が0を示す横軸との交点における波長を読み取り、この波長をUVの立ち上がり波長λとした。図14に示した高分子型化合物9の場合は、立ち上がり波長λは841nmとなる。
【0234】
HOMO-LUMO間のバンドギャップ(エネルギーギャップ)をE、プランク定数をh、真空中の光速をcとすると、次式の関係が成立する。
E=hc/λ
【0235】
ここで、プランク定数hは6.626×10-34、真空中の光速cは2.998×10であるから、立ち上がり波長λとして841を代入すると、バンドギャップEは下記式の通り1.47eVとなる。
E=1239.8/841≒1.47(eV)
【0236】
一方、イオン化エネルギーの値(HOMOの値)は、-5.96eVであるので、LUMOの値は、下記の通り-4.49eVとなる。
LUMO=-5.96+1.47=-4.49(eV)
【0237】
下記表1に示したイオン化エネルギーとバンドギャップに基づいて算出したLUMOの値(eV)を下記表1に示す。
【0238】
(電子移動度、しきい値電圧、オン/オフ比の測定)
オゾン処理したシリコン基板上を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)またはオクタデシルトリクロロシラン(ODTS)を用いて処理した。処理後の基板表面に、高分子型化合物の濃度が0.5質量%(7.4mg/mL)のクロロホルム溶液をスピンコートすることで、有機電界効果型トランジスタ(OFET)素子を作製した。なお、実施例13については、クロロホルムの代わりにクロロベンゼンを用い、高分子型化合物の濃度が0.5質量%のクロロベンゼン溶液をスピンコートした。作製したOFET素子につき、100℃で1時間のアニールを実施、放冷、150℃で1時間のアニールを実施、放冷後、Id-Vg特性を測定した。Id-Vg特性は、窒素雰囲気下または真空下で測定した。Id-Vg特性の測定には、ケースレーインスツルメンツ(KEITHLEY)製の「4200-SCS」を用い、有機半導体素子のチャネル長さは25μm、チャネル幅は294mmとした。Id-Vg特性の測定を行い、電子移動度μe(cm/Vs)、しきい値電圧Vth(V)、オン/オフ比(Ion/Ioff)を求めた。150℃で1時間アニールを実施した後に測定したId-Vg特性の結果を下記表1に示す。なお、下記表1に示したイオン化エネルギー、バンドギャップ、LUMOの値の欄に記載した「-」は未実施を示している。
【0239】
【表1-1】
【0240】
【表1-2】
【0241】
表1から次のように考察できる。本発明の高分子型化合物1~13は、所定の構造を有するドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物であり、特に、ドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを繰り返し単位として有している化合物である。本発明の高分子型化合物1~13は、溶媒、特にハロゲン系有機溶媒への溶解性が良好であった。また、本発明の高分子型化合物1~13は、有機半導体材料として好ましく用いることができる。また、本発明の高分子型化合物1~13は、150℃のアニールを行っても良好な電子移動度を示した。実施例16で得られる高分子化合物16については、チアゾールユニットを含んでいるため、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットとの間の歪みが少なくなり、平面に近い構造となり、分子同士が配列しやすくなり、結晶性が上がり、電子移動度が上がることが期待できる。
【0242】
[実験2]
(実施例21)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-dibutyl-benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(BU-NDI-MB、67.3mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、クロロホルム(3mL)、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が52.7mg(収率72.3%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(Bu-NDI)(以下、低分子型化合物1ということがある)であった。得られた低分子型化合物1の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図15に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.075(s,2H),8.847(d,2H),8.826(d,2H),4.596(s,4H),4.216-4.134(m,8H),1.771-1.597(m,8H),1.407-1.201(m,16H),0.862(t,12H)
【化50】
【0243】
(実施例22)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-bis(2-ethylhexyl)-benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(EH-NDI-MB、84.3mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(10mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が40.1mg(収率44.2%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(EH-NDI)(以下、低分子型化合物2ということがある)であった。
H NMR(400MHz,CDCl):9.367(s,2H),8.818(d,2H),8.788(d,2H),4.597(s,4H),4.218-4.139(m,8H),1.407-1.201(m,49H),0.951-0.864(m,32H)
【化51】
【0244】
(実施例23)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-dihexyl-benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(Hex-NDI-MB、75.3mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が59.9mg(収率73.3%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(Hex-NDI)(以下、低分子型化合物3ということがある)であった。得られた低分子型化合物3の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図16に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.334(s,2H),8.821(d,2H),8.786(d,2H),4.596(s,4H),4.218(quin,8H),1.836-1.588(m,4H),1.547-1.318(m,32H),0.894(t,12H)
【化52】
【0245】
(実施例24)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-dioctyl-benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(n-o-NDI-MB、83.5mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が71.7mg(収率80%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(n-o-NDI)(以下、低分子型化合物4ということがある)であった。得られた低分子型化合物4の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図17に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.341(s,2H),8.832(d,2H),8.787(d,2H),4.596(s,4H),4.218(quin,8H),1.535-1.153(m,48H),0.826(t,12H)
【化53】
【0246】
(実施例25)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7- bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(DMO-NDI-MB、91.2mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が85.9mg(収率95.5%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(DMO-NDI)(以下、低分子型化合物5ということがある)であった。得られた低分子型化合物5の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図18に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.355(s,2H),8.814(d,2H),8.778(d,2H),4.599(s,4H),4.214(quin,8H),1.505-1.123(m,48H),1.008(t,24H),0.849(t,12H)
【化54】
【0247】
(実施例26)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-didecylbenzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(DE-NDI-MB、92.5mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が57.5mg(収率71.0%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(DE-NDI)(以下、低分子型化合物6ということがある)であった。得られた低分子型化合物6の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図19に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.341(s,2H),8.820(d,2H),8.785(d,2H),4.596(s,4H),4.180(quin,4H),1.719(bs,4H),1.423-1.340(m,56H),0.859(t,12H)
【化55】
【0248】
(実施例27)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-bis(2-decyltetradecyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(TD-NDI-MB、183.4mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が58.3mg(収率38.3%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(TD-NDI)(以下、低分子型化合物7ということがある)であった。得られた低分子型化合物7の紫外可視吸収スペクトル測定を溶液の状態で行ない、測定結果を図20に実線で示す。
H NMR(400MHz,CDCl):9.393(s,2H),8.817(d,2H),8.780(d,2H),4.600(s,4H),4.131(t,4H),1.974(bs,4H),1.546-0.867(m,168H),0.818(t,12H)
【化56】
【0249】
(実施例28)
20mLフラスコに、2,5-Bis(tributylstannyl)spiro[7H-cyclopenta[1,2-d:4,3-d’]bisthiazole-7,2’-[1,3]dioxolane](Ac-CBTZ-SB、60mg、0.0735mmol)、4-bromo-2,7-bis(2-phenylethyl)benzo[lmn][3,8]phenanthroline-1,3,6,8(2H,7H)-tetrone(PhEt-NDI-MB、81.8mg、0.147mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体(6mg、5.9μmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(8.9mg、25.0μmol)およびクロロベンゼン(4mL)を添加し、130℃で16時間反応した。反応終了後、セライトろ過を実施し、濃縮した。さらに、メタノール(7mL)を加え、析出した固体をろ取した結果、紺色固体が68.3mg(収率84.2%)で得られた。NMRスペクトル測定の結果、得られた紺色固体は、Ac-CBTZ-2(PhEt-NDI)(以下、低分子型化合物8ということがある)であった。
H NMR(400MHz,CDCl):8.931(s,2H),8.806(d,2H),8.772(d,2H),7.732-7.205(m,10H),4.441-4.390(m,4H),3.055-3.006(m,8H)
【化57】
図15図20から明らかなように、本発明の低分子型化合物1、3~7は、溶液の状態でも、薄膜の状態でも、長波長領域の光を吸収できることが分かる。なお、低分子型化合物2は試料量が少なかったため紫外可視吸収スペクトルを測定できなかった。低分子型化合物8は、クロロホルムにほとんど溶解しなかったため、紫外可視吸収スペクトルを測定できなかった。
【0250】
次に、得られた低分子型化合物1~8の溶媒への溶解性について評価した。溶媒はクロロホルム、クロロベンゼン、トルエン、テトラクロロエタン、または1-メチルナフタレンを用いた。クロロホルムを用いた場合は、低分子型化合物の濃度が1質量%となるようにクロロホルムを室温で添加した。クロロベンゼンを用いた場合は、低分子型化合物が1質量%となるようにクロロベンゼンを室温で添加した。トルエンを用いた場合は、低分子型化合物が1質量%となるようにトルエンを室温で添加した。テトラクロロエタンを用いた場合は、低分子型化合物が1質量%となるようにテトラクロロエタンを室温で添加した後、110℃に加熱した。1-メチルナフタレンを用いた場合は、低分子型化合物が1質量%となるように1-メチルナフタレンを室温で添加した後、110℃に加熱した。なお、低分子型化合物1のクロロホルムに対する溶解性は、低分子型化合物1の濃度が1質量%となるようにクロロホルムを室温で添加した後、50℃に加熱して評価した。低分子型化合物1のクロロベンゼンに対する溶解性は、低分子型化合物1の濃度が1質量%となるようにクロロベンゼンを室温で添加した後、110℃に加熱して評価した。
【0251】
溶媒を添加した後、低分子型化合物が溶解しているか目視で観察し、下記基準に基づいて評価した。評価結果を下記表2に示す。下記表2において「-」は評価していないことを示している。
<評価基準>
○:溶媒に溶解した。
△:低分子型化合物の一部が溶解せずに残っていた。
×:溶媒に溶解しなかった。
【0252】
次に、得られた低分子型化合物1、3~7を用い、イオン化エネルギー、バンドギャップ、電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比を測定した。イオン化エネルギー、バンドギャップ、電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比の測定条件は、上記高分子型化合物を用いて測定した場合と同じである。測定結果を下記表2に示す。また、薄膜の状態で測定したUV測定の結果を図15図20に点線で示した。なお、電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比を測定するための有機電界効果型トランジスタ(OFET)素子を作製する際には、スピンコートする溶液の溶媒として、クロロホルム、クロロベンゼン、またはテトラクロロエタンを用いた。用いた溶媒を下記表2に併せて示す。また、イオン化エネルギーおよびバンドギャップからLUMOの値を求めた。
【0253】
次に、低分子型化合物2、8について、アクセプター性ユニットを構成する窒素に結合する置換基がメチル基の三量体型化合物を設計し、DFT計算によってイオン化エネルギーの値(HOMOの値)およびLUMOの値を予測した。計算に用いた三量体型化合物を下記式に示す。DFT計算は、計算ソフトとしてGaussian 16を用いた。イオン化エネルギーの値、およびLUMOの値(eV)を下記表2に示す。また、下記表2には、イオン化エネルギーの値とLUMOの値から算出したバンドギャップ(eV)の値も示した。また、低分子型化合物2を用い、電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比を測定した。電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比の測定条件は、上記高分子型化合物を用いて測定した場合と同じである。測定結果を下記表2に示す。なお、低分子型化合物8については、電子移動度μe、しきい値電圧、およびオン/オフ比を測定しなかった。
【0254】
【化58】
【表2】
【0255】
表2から次のように考察できる。本発明の低分子型化合物1~8は、所定の構造を有するドナー性ユニットと、アクセプター性ユニットとを、それぞれ1つ以上有し、ドナー性ユニットとアクセプター性ユニットが互いに連結されている化合物であり、特に、ドナー性ユニットおよびアクセプター性ユニットを合計で3つ有する化合物(詳細には、トナー性ユニットに2つのアクセプター性ユニットが連結されている三量体型化合物)である。本発明の低分子型化合物1~8は、溶媒への溶解性が良好であった。また、本発明の低分子型化合物1~8は、有機半導体材料として好ましく用いることができる。また、本発明の低分子型化合物1~7は、150℃のアニールを行っても良好な電子移動度を示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20