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  • 特許-歯間清掃具 図1
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  • 特許-歯間清掃具 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A61C15/02 501
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018248340
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103849
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
(72)【発明者】
【氏名】朝山 紘貴
【合議体】
【審判長】平瀬 知明
【審判官】小河 了一
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-777(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076241(WO,A1)
【文献】特許第6423049(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から延在する軸部と、を有する基材部と、
前記軸部の先端から基端に向かって少なくとも16mmにわたって前記軸部を被覆する被覆部と、前記被覆部から突き出る複数の突起部と、を有する軟質部と、を備え、
前記軸部は、その基端から先端に向かうにつれて先細りのテーパ形状を有し、
前記軸部のうち前記軸部の先端から基端に向かって15mm~20mmの範囲であって前記軸部が前記被覆部によって被覆されている領域において、前記被覆部との境界となる前記突起部の底面の面積(M)と前記突起部の底面からの前記突起部の長さ(L)との比(L/M)が2~5に設定され、前記突起部の底面の面積(M)は、前記比(L/M)が2~5に増加するに従って0.9mm2~0.15mm2減少するように設定される、歯間清掃具。
【請求項2】
前記比(L/M)が4.4~4.8に設定され、前記突起部の底面の面積(M)は、前記比(L/M)が4.4~4.8に増加するに従って0.42mm2~0.34mm2減少するように設定される、請求項1に記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間を清掃する歯間清掃具が知られている。例えば特許文献1に開示された歯間清掃具は、合成樹脂から形成された基材部と、エラストマーから形成された軟質部と、を備えている。基材部は、持ち手としての扁平なハンドル部と、ハンドル部の先端から延びる細長い芯基材部と、を備えている。軟質部は、芯基材部の少なくとも一部を覆う被覆部と、被覆部の表面から突き出る複数の突起部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/176297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芯基材部は、その先端に向かうにつれて縮径するテーパ形状に形成されている。そして、突起部も歯間清掃具の先端に向かうにつれて小さくなっており、比較的狭い歯間から比較的広い歯間までを効果的に清掃することができる。一方で、歯間清掃具の突起部はその第一目的である歯間の清掃のみならず、清掃時に歯茎に触れ、歯肉をマッサージするという目的にも使用されており、特に歯茎が下がってくる中高年以降でのニーズが高い。歯肉のマッサージ効果を高める方法としては、突起部の強度(コシ)を強くする、すなわち突起部の底面積を広くすることが考えられるが、先端から基端に向かって例えば15mm以上の芯基材部の比較的直径が大きい領域では軟質部の歯間への挿入性が悪化してしまうという課題が発生する。
【0005】
そこで、本発明は、軸部の直径が比較的大きい領域において歯間への挿入性と歯肉へのマッサージ力とのバランスがとれた歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歯間清掃具は、基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、
軸部の先端から基端に向かって少なくとも16mmにわたって軸部を被覆する被覆部と、被覆部から突き出る複数の突起部と、を有する軟質部と、を備え、
軸部の先端から基端に向かって15mm~20mmの範囲の被覆部の領域において、被覆部との境界となる突起部の底面の面積(M:mm2)と突起部の底面からの突起部の長さ(L:mm)との比(L/M)が2~5に設定され、突起部の底面の面積(M)は、比(L/M)が2~5であることに対して0.92~0.152に設定される。
【0007】
この態様によれば、本発明者らが実施した検証結果に基づけば、歯間への挿入性と歯肉へのマッサージ力とのバランスがとれた歯間清掃具を提供することができる。
【0008】
上記態様において、比(L/M)が4.4~4.8に設定され、突起部の底面の面積(M)は、比(L/M)が4.4~4.8であることに対して0.42mm2~0.34mm2に設定されることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軸部の直径が比較的大きい領域において歯間への挿入性と歯肉へのマッサージ力とのバランスがとれた歯間清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す平面図である。
図3図1の3-3線に沿った断面図である。
図4】実施例及び比較例の検証結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1図3に示されるように、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具1は、基材部10と、基材部10の少なくとも一部を被覆する軟質部20と、を備えている。歯間清掃具1は、例えば基材部10に形成された1対の接続部30、30によって歯間清掃具1の短手方向D1に例えば10個の歯間清掃具1が並列に接続されて形成された接続体40から個別に切り離されたものである。
【0012】
基材部10は、使用者が把持する基部11と、基部11の先端から歯間清掃具1の短手方向D1に直交する長手方向D2に延在して、使用者の歯間に挿入される軸部12と、を備えている。なお、本明細書において、基部11から軸部12に向かう側を先端側とし、軸部12から基部11に向かう側を基端側とする。
【0013】
基部11は、例えば扁平に広がる板状に形成されており、本実施形態では、例えば平たい直方体形状に形成されているが、使用者が把持することができる形状であれば、その他の形状に形成されてもよい。
【0014】
軸部12は、基部11の一端である先端から長手方向D2に延在している。軸部12は、基部11から連続して扁平な板状に延在する移行部13と、移行部13の先端から軸部12の先端まで細い軸状に延びる先端部14と、を備えている。移行部13は、軸部12の先端に向かうにつれて短手方向D1に沿って規定される幅を減少させるテーパ形状に形成される。
【0015】
基材部10は例えば合成樹脂材料から成形される。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド等を採用することができる。また、合成樹脂材料には、例えば1~30重量%程度の割合でガラス繊維等の繊維素材が添加されてもよい。
【0016】
軟質部20は、軸部12の先端部14の少なくとも一部の外周面を被覆する被覆部21と、被覆部21から突き出る複数の突起部22と、を備えている。突起部22は、例えば円錐形状に形成されており、被覆部21の基端から先端まで、軸部12の先端部14の軸心周りに螺旋状に配置されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは、被覆部21の基端から先端に向かうにつれて減少する。
【0017】
軟質部20は、基部10の合成樹脂材料の硬度よりも低い硬度を有する樹脂材料から形成される。樹脂材料としてはエラストマーを採用することができ、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、シリコーン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さタイプA(JISK6253)が、10~50であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。本実施形態では、デュロメータ硬さタイプAは35である。
【0018】
本実施形態の歯間清掃具1において、長手方向D2に規定される基材部10の長さL1は例えば45mm~55mmに設定されている。短手方向D1に規定される基部11の幅W1は例えば3mm~10mmに設定されている。また、短手方向D1及び長手方向D2に直交する厚さ方向D3に規定される基部11の厚さT1は例えば0.5mm~10mmに設定されている。
【0019】
被覆部21は、長手方向D2に規定されるその基端から先端までの長さは、例えば10mm~25mmに設定されており、本実施形態では例えば20mmに設定されている。被覆部21は、長手方向D2の同じ位置では均一な厚さで形成されており、その厚さは例えば0.1mm~2.5mmに設定されている。被覆部21との境界となる突起部22の底面(すなわち、円錐の円形の底面)からの突起部22の長さ(すなわち、円錐の底面から頂点までの高さ)は例えば0.1mm~5.0mmに設定されている。
【0020】
軸部12の軸心に直交する軸部12の先端部14の断面はほぼ正円形状に設定されている。先端部14は、その基端から先端に向かうにつれてその縮径するテーパ形状に形成されており、その直径は例えば0.6mm~3.0mmに設定されている。
【0021】
上述した実施形態に係る歯間清掃具1では、軸部12の先端から基端に向かって15mm~20mmの範囲の被覆部21の領域において、被覆部21との境界となる突起部22の底面の面積(M:mm2)と、突起部22の底面からの突起部22の長さ(L:mm)との比(L/M)が2~5に設定される。この場合の突起部22の底面の面積(M)は、比(L/M)が2~5であることに対して0.9cm2~0.15cm2に設定される。また、この比(L/M)は4.4~4.8に設定されることがさらに好ましい。この比(L/M)が4.4~4.8であることに対して突起部22の底面の面積(M)は0.42mm2~0.34mm2に設定される。こうした比(L/M)の設定によれば、歯間への挿入性と歯肉へのマッサージ力とのバランスがとれた歯間清掃具1を提供することができる。
【0022】
本発明者らは、上記実施形態の歯間清掃具1の効果の検証を行った。検証にあたって、図4に示すように、実施例1~4に係る歯間清掃具並びに比較例1及び2に係る歯間清掃具を製造した。具体的には、軸部の先端から基端に向かって15mm~20mmの範囲の被覆部の領域(軸部の直径1.04mm~1.27mm、軟質部の厚さ0.22mm)におけるすべての突起部の底面の面積(M:mm2)と、突起部の底面からの突起部の長さ(L:mm)との比(L/M)が、図4に示すとおり、比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、比較例2においてそれぞれ、7.6、5、4.8、4.4、2、1に設定された歯間清掃具で検証を実施した。なお、突起部の底面の面積(M)はそれぞれ、0.08mm2、0.15mm2、0.34mm2、0.42mm2、0.9mm2、1.1mm2に設定された。
【0023】
本発明者らは、上述した実施例1~4並びに比較例1及び2に係る歯間清掃具の挿入のしやすさ(挿入性)及び歯肉へのマッサージ力の観点について、評価者(5人)に当該歯間清掃具を使用してもらった際の評価の聞き取りを行った。挿入性及びマッサージ力の評価は、0点~10点までの数値による11段階評価において実施した。0点は、「歯間に挿入することができなかった」又は「マッサージした感覚が得られなかった」、10点は、「歯間に抵抗なく挿入することができた」又は「満足にマッサージすることができた」とした。
【0024】
以上の数値による評価に基づいて算定された挿入性及びマッサージ力の評価として、評価者の数値の平均が、7.5点以上である場合を「◎」、5点以上7.5点未満である場合を「○」、2.5点以上5点未満である場合を「△」、2.5点未満である場合を「×」とした。挿入性及びマッサージ力の評価を基に、下記の基準に従って総合評価を行った。
[挿入性]
◎ 平均点が7.5以上
○ 平均点が5.0以上7.5未満
△ 平均点が2.5以上5.0未満
× 平均点が2.5未満
[マッサージ力]
◎ 平均点が7.5以上
○ 平均点が5.0以上7.5未満
△ 平均点が2.5以上5.0未満
× 平均点が2.5未満
[総合評価]
○ 挿入性・マッサージ力ともに○以上である
△ ○又は◎がある一方で△がある
× 1つでも×がある
【0025】
図4に示すように、実施例2及び3については、挿入性及マッサージ力ともに「○」でバランスがとれており、総合評価は「○」である。従って、この結果によれば、突起部の底面の面積(M:mm2)と、突起部の底面からの突起部の長さ(L:mm)との比(L/M)が4.4~4.8に設定されることが最も好ましいことが分かる。この場合、比(L/M)が4.4~4.8であることに対して面積(M)は0.42cm2~0.34cm2に設定される。
【0026】
また、実施例1については、挿入性が「○」である一方で、マッサージ力は「△」であり、総合評価は「△」である。同様に、実施例4については、マッサージ力が「◎」である一方で、挿入性が「△」であり、総合評価は実施例1と同様に「△」である。ただし、いずれも一方では「○」や「◎」の評価を有しており、「×」の評価がないので、実施例1及び4も許容することができる。この結果によれば、比(L/M)は2~5の範囲に設定されてもよい。この場合、比(L/M)が2~5であることに対して面積(M)は0.9cm2~0.15cm2に設定される。
【0027】
一方で、比較例1については、挿入性が「◎」である一方で、マッサージ力が「×」であり、総合評価も「×」である。比較例2については、マッサージ力が「◎」である一方で、挿入性が「×」であり、総合評価も「×」である。突起部のL/M比が大きくなると、突起の強度(コシ)が低下するため挿入性が向上するがその一方でマッサージ力が低下してしまい、バランスが悪化することを意味している。一方で、突起部のL/M比が小さくなりすぎると、マッサージ力は向上するが、突起部の変形が起こり難くなり、挿入性が低下するため、こちらもバランスが悪化することを意味している。
【0028】
次に、歯間清掃具1の製造方法について以下に説明する。まず、基材部10の外形を象った第1金型の充填空間に溶融した合成樹脂材料が充填されて基材部10が成形される。その後、基材部10は第1金型から取り出される。続いて、成形された基材部10は、軟質部20の外形を象った第2金型の充填空間内に配置される。充填空間には、溶融したエラストマーが充填され軟質部20が成形される。こうして歯間清掃具1が成形される。歯間清掃具1は、その後、第2金型から取り出される。
【0029】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…歯間清掃具、10…基材部、11…基部、12…軸部、20…軟質部、21…被覆部、22…突起部、M…突起部の底面の面積、L…突起部の底面からの突起部の長さ
図1
図2
図3
図4