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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】分離回収方法及び分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20241004BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20241004BHJP
   B03B 5/28 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B09B3/30
B03B5/28 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020088310
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181075
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時宗 章
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀尚
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀道
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-019003(JP,A)
【文献】特開2016-166345(JP,A)
【文献】特開2013-234240(JP,A)
【文献】特開2012-232266(JP,A)
【文献】特開2006-231304(JP,A)
【文献】特開2003-093858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
B03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる複数種類の材料が積層された複合材料の破砕物と、モノエタノールアミン水溶液とを含む処理液とを剥離槽に投入して加熱及び撹拌し、前記破砕物に含まれる前記材料の層間を剥離した破砕混合物を得る剥離工程と、
前記破砕混合物を比重差選別によって分離回収する第1分離回収工程と、
を含み、
前記第1分離回収工程では、前記攪拌後、各材料の比重に応じた前記剥離槽での滞留位置で前記破砕混合物を分離回収する、分離回収方法。
【請求項2】
前記第1分離回収工程で分離回収された前記破砕混合物を比重差選別によって前記複数種類の材料に分離回収する第2分離回収工程を更に含み、
前記第2分離回収工程では、前記滞留位置の各々で分離回収された破砕混合物から、前記複数種類の材料を分離回収する処理を並列で実行する、
請求項1に記載の分離回収方法。
【請求項3】
前記モノエタノールアミン水溶液に含まれるモノエタノールアミンの含有量は、2重量%以上100重量%以下である、
請求項1又は2に記載の分離回収方法。
【請求項4】
前記モノエタノールアミン水溶液は、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方を含む、
請求項1~3の何れか一項に記載の分離回収方法。
【請求項5】
前記剥離工程では、前記処理液中にマイクロバブルを発生させて前記処理液を撹拌し、前記材料の層間の剥離を促す、
請求項1に記載の分離回収方法。
【請求項6】
前記剥離工程では、前記処理液中に超音波を伝搬させて前記マイクロバブルを発生させる、
請求項5に記載の分離回収方法。
【請求項7】
前記第2分離回収工程は、
前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する遠心分離工程と、
前記遠心分離工程で遠心分離された前記処理液中の前記破砕混合物に含まれる前記複数種類の材料と比重の異なる比重選別液を用いて、比重選別により前記材料を種類毎に分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記材料の各々を乾燥する乾燥工程と、
を含む請求項2に記載の分離回収方法。
【請求項8】
比重の異なる複数種類の材料が積層された複合材料の破砕物と、モノエタノールアミン水溶液とを含む処理液とを剥離槽に投入して加熱及び撹拌し、前記破砕物に含まれる前記材料の層間を剥離した破砕混合物を得る剥離部と、
前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する遠心分離部と、
前記遠心分離部で遠心分離された前記処理液中の前記破砕混合物に含まれる前記複数種類の材料と比重の異なる比重選別液を用いて、比重選別により前記材料を種類毎に分離する分離部と、
前記分離部で分離された前記材料の各々を乾燥する乾燥部と、
を備え
前記剥離部は、前記攪拌後、各材料の比重に応じた前記剥離槽での滞留位置で前記破砕混合物を分離回収し、
前記遠心分離部は、前記剥離部で分離回収された前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する、分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離回収方法及び分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の材料が積層された複合材料から特定の材料を分離する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複合系プラスチックから成分を分離回収する方法として、トリエチレングリコールを分離溶剤として用い、沸点近傍に加熱した分離溶剤に各種被処理物を投入して撹拌することで、各成分を分別回収する技術が開示されている。また、特許文献2には、混合廃プラスチックの内、リサイクル可能な材質の樹脂をマテリアルリサイクルするとともに、リサイクル不可能な材質の樹脂を熱分解油化処理し分解油として回収する技術が開示されている。また、特許文献3には、高沸点アルコールを主成分とする溶媒を用いて、基材から有機被膜を剥離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-6948号公報
【文献】特開2008-95024号公報
【文献】特表2019-516004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示の技術では、高温に加熱することが要求されるため多くのエネルギーを消費し、安全性の上でも懸念がある。また、特許文献3に開示の技術では、主溶剤に可燃性且つ炭素数の多い高級アルコールを使うためランニングコストが嵩むという問題がある。そのため、複合材料から材料の分離回収を効率的に行うことが可能な技術が要求されている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数種類の材料が積層された複合材料から効率よく材料を分離することができる、分離回収方法及び分離回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分離回収方法の一態様は、比重の異なる複数種類の材料が積層された複合材料の破砕物と、モノエタノールアミン水溶液とを含む処理液とを剥離槽に投入して加熱及び撹拌し、前記破砕物に含まれる前記材料の層間を剥離した破砕混合物を得る剥離工程と、前記破砕混合物を比重差選別によって分離回収する第1分離回収工程と、を含み、前記第1分離回収工程では、前記攪拌後、各材料の比重に応じた前記剥離槽での滞留位置で前記破砕混合物を分離回収する。
【0008】
前記第1分離回収工程で分離回収された前記破砕混合物を比重差選別によって前記複数種類の材料に分離回収する第2分離回収工程を更に含み、前記第2分離回収工程では、前記滞留位置の各々で分離回収された破砕混合物から、前記複数種類の材料を分離回収する処理を並列で実行する。
【0009】
前記モノエタノールアミン水溶液に含まれるモノエタノールアミンの含有量は、2重量%以上100重量%以下である。
【0010】
前記モノエタノールアミン水溶液は、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方を含む場合もある。
【0011】
前記剥離工程では、前記処理液中にマイクロバブルを発生させて前記処理液を撹拌し、前記材料の層間の剥離を促す。
【0012】
前記剥離工程では、前記処理液中に超音波を伝搬させて前記マイクロバブルを発生させる。
【0013】
前記第2分離回収工程は、前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する遠心分離工程と、前記遠心分離工程で遠心分離された前記処理液中の前記破砕混合物に含まれる前記複数種類の材料と比重の異なる比重選別液を用いて、比重選別により前記材料を種類毎に分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記材料の各々を乾燥する乾燥工程と、を含む。
【0014】
また、本発明の分離回収装置の一態様は、比重の異なる複数種類の材料が積層された複合材料の破砕物と、モノエタノールアミン水溶液とを含む処理液とを剥離槽に投入して加熱及び撹拌し、前記破砕物に含まれる前記材料の層間を剥離した破砕混合物を得る剥離部と、前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する遠心分離部と、前記遠心分離部で遠心分離された前記処理液中の前記破砕混合物に含まれる前記複数種類の材料と比重の異なる比重選別液を用いて、比重選別により前記材料を種類毎に分離する分離部と、前記分離部で分離された前記材料の各々を乾燥する乾燥部と、を備え、前記剥離部は、前記攪拌後、各材料の比重に応じた前記剥離槽での滞留位置で前記破砕混合物を分離回収し、前記遠心分離部は、前記剥離部で分離回収された前記破砕混合物を含む前記処理液を遠心分離する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、複数種類の材料が積層された複合材料から効率よく材料を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る分離回収装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る分離回収方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態の分離回収方法を説明するための図である。
図4図4は、実施形態の分離回収方法を説明するための図である。
図5図5は、実施形態の分離回収方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して分離回収方法及び分離回収装置の一の実施形態を説明する。なお、本明細書において、同じ部材または同じ機能を示す部分には、同じ符号を付与し、説明を省略する場合がある。
【0018】
図1は、本実施形態に係る分離回収装置1の構成の一例を示す模式図である。分離回収装置1は、複合材料CM1から当該複合材料CM1を構成する材料を分離し回収する装置である。
【0019】
ここで、分離回収装置1の処理対象となる複合材料CM1は、複数種類の材料が接着剤によって積層されたものであればよく、その形状や構成は特に問わないものとする。
【0020】
例えば、複合材料CM1は、各種の合成樹脂フィルム、合成樹脂シート、及び金属箔等の薄膜材料から選択される2種類以上の薄膜材料が接着剤を介して積層されたものであってもよい。このような複合材料CM1の一例としては、ラミネートフィルムが挙げられる。
【0021】
また、例えば、複合材料CM1は、木材や金属、合成樹脂等の材料で形成された構造物に上述した薄膜材料を、接着剤を介して貼付したものであってもよい。この場合、薄膜材料はコーティングフィルムとも称せられる。なお、薄膜材料の構成材料や数、組み合わせ等については特に限定されないものとする。
【0022】
薄膜材料に使用される合成樹脂の代表例としては、ポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)、ポリメタクリル酸系樹脂(PMMA)、セロファン、ポリスチレン系樹脂(PS)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)等が挙げられる。また、薄膜材料に使用される金属箔としては、アルミ箔(AL)等が挙げられる。また、薄膜材料は、合成樹脂フィルムや金属箔以外にも各種の材料を用いることができる。例えば、他の種類の材料としては、紙、熱硬化性樹脂フィルム、塗料等が挙げられる。また、薄膜材料の接着に用いられる接着剤としては、例えば、エーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、エステル系接着剤等が挙げられる。
【0023】
なお、本実施形態では、複合材料CM1が、種別の異なる第1材料M1と第2材料M2とで構成され、第2材料M2の比重が第1材料M1の比重より大きいものとする。一例として、第1材料M1は、PE(比重0.9~0.9g/cm3)であり、第2材料M2は、PET(比重1.29~1.40g/cm3)である。
【0024】
分離回収装置1は、図1に示すように、破砕部10と、剥離部20と、遠心分離水洗部30と、乾燥部40とを備える。以下、分離回収装置1の各部の構成について説明する。
【0025】
[剥離部の構成]
破砕部10は、処理対象の複合材料CM1を小片に破砕する。具体的には、破砕部10は、破砕機11と、ブロア12と、ホッパー13とを有する。
【0026】
破砕機11は、例えばローラーミルであり、複合材料CM1を複数の小片に破砕する。具体的には、破砕機11は、複合材料CM1を1~60mm程度の小片、より好ましくは5~10mm程度の小片に破砕する。このように、複合材料CM1を細かく破砕することで、端部の面積を増やすことができるため、後述する剥離部20(剥離工程)において、小片に含まれた材料の層間の剥離を促進させることができる。以下では、破砕部10により破砕された複合材料CM1の小片を「破砕物CM2」とも表記する。
【0027】
なお、破砕機11は、複合材料CM1を破砕する際に、小片に多数の切り込みや小孔を設けておいてもよい。このように、小片に切り込みや小孔を設けておくことで、後述する剥離液21aに接触する小片の周辺端部の接触面積を増加させることができる。
【0028】
破砕部10で破砕された破砕物CM2は、ブロア12によりホッパー13に搬送される。ホッパー13の排出口部分には、破砕物CM2の排出を開閉によって調整するためのバルブV1が取り付けられている。バルブV1が開状態とされることで、ホッパー13に収納された破砕物CM2が後述する剥離槽21に投入される。
【0029】
なお、破砕部10は、上記の構成に限定されないものとする。例えば、破砕部10は、ブロア12及びホッパー13を除いた構成としてもよい。また、ブロア12に代えてベルトコンベア等の搬送装置を用いてもよい。
【0030】
[剥離部の構成]
剥離部20は、剥離部の一例である。剥離部20は、破砕物CM2が投入された剥離液21aを加熱及び撹拌し、破砕物CM2に含まれる材料の層間を剥離した破砕混合物を得るための装置である。なお、剥離液21aは処理液の一例である。
【0031】
具体的には、剥離部20は、剥離槽21と、加温部22と、撹拌部23とを有する。
【0032】
剥離槽21は、後述する剥離液タンク51から供給される剥離液21aを保持するための容器である。剥離液21aは、モノエタノールアミン(以下、MEAと記す)水溶液を含む。剥離液21aにおけるMEAの含有量は、例えば2重量%以上100重量%以下であり、5重量%以上80重量%以下とすることが好ましい。更には、剥離液21aにおけるMEAの含有量は、10重量%以上20重量%以下とすることが特に好ましい。なお、溶媒に使用する水は、特別な純度である必要はなく、一般の工業用水、水道水、井戸水等をそのまま使用することができる。
【0033】
また、剥離液21aは、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の何れか一方又は両方を添加剤として含んでもよい。添加剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。添加剤は、活性剤(界面活性剤)として機能し、破砕物CM2に含まれる材料の層間の剥離を促進することができる。なお、剥離液21aにおける添加剤の含有量は、5重量%以下とすることが好ましい。また、剥離液21aのpH(水素イオン指数)は8~13の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
剥離液21aに投入された破砕物CM2は、MEA水溶液の作用により、破砕物CM2に含まれた材料の層間が剥離、つまり接着剤が剥離される。これにより、接着剤で接合された第1材料M1と第2材料M2とが分離され、第1材料M1と第2材料M2とが混合された状態となる。以下では、第1材料M1と第2材料M2との混合物を「破砕混合物」とも言う。
【0035】
このように、剥離部20では、比較的安価なMEAを含んだ剥離液21aを用いることで、ランニングコストの低下を図ることができる。また、剥離液21aにおけるMEAの含有量を、10重量%以上20重量%以下等とし、水を主成分とすることで、MEAが有する危険性・毒性を低下させることできるため、安全性の向上を図ることができる。
【0036】
また、剥離槽21内の剥離液21aは、破砕混合物に含まれた第1材料M1と第2材料M2とを比重差選別によって分離するための比重選別液として機能する。具体的には、21aに対する第1材料M1及び第2材料M2の比重差により、第1材料M1及び第2材料M2は剥離槽21の異なる位置(高さ)に滞留する。
【0037】
例えば、MEAは、比重が1.02g/cm3程度であり、水に対して任意の割合で溶解する。そのため、剥離液21aは、比重1.0~1.02g/cm3の比重選別液として使用できる。剥離液21a内で剥離した材料はその比重に応じた位置(高さ)に滞留する。例えば、第1材料M1がPEであり第2材料M2がPETである場合、図1に示すように、第1材料M1は剥離槽21(剥離液21a)の上方に、第2材料M2は剥離槽21(剥離液21a)の下方に滞留する。
【0038】
剥離槽21には、高さ方向の異なる位置に排水口(図示せず)が設けられており、排出口の各々と遠心分離水洗部30(後述する第1遠心分離部31、第2遠心分離部32)とが配管で接続される。図1では、剥離槽21の上方と下方との2箇所に排水口を設けられており、当該排水口の各々に配管T1と配管T2と接続した例を示している。ここで、排水口の設置位置は、剥離(分離)された第1材料M1及び第2材料M2の滞留位置に対応する。つまり、配管T1には、第1材料M1を多く含んだ剥離液21aが排出される。また、配管T2には、第2材料M2を多く含んだ剥離液21aが排出される。
【0039】
配管T1及び配管T2には、配管内を流れる液体の流量を開閉によって調整するためのバルブV2、V3がそれぞれ設けられている。また、配管T1及び配管T2には、配管内を流れる液体を、後述する第1遠心分離部31と第2遠心分離部32とに送出するためのポンプP1、P2がそれぞれ設けられている。
【0040】
また、剥離槽21は、配管T3を介して剥離液タンク51と接続される。配管T3には、配管T3内を流れる液体の流量を開閉によって調整するためのバルブV4が設けられている。また、配管T3には、配管内を流れる液体を、剥離槽21に送出するためのポンプP3が設けられている。
【0041】
加温部22は、ボイラーや電気等による熱源を有し、剥離槽21に蓄えられた剥離液21aを加温する。剥離液21aの温度は、例えば25℃以上95℃以下であり、より好ましくは60℃以上95℃以下である。このように、剥離部20では、比較的低温の25℃以上95℃以下の範囲で剥離液21aを加温するため、安全性の向上を図るとともに、エネルギーの消費量を抑えることができる。
【0042】
撹拌部23は、破砕物CM2が投入された剥離液21aを撹拌する。剥離液21aの撹拌方法は特に問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、撹拌部23は、超音波により撹拌を行う撹拌装置であってもよい。この場合、撹拌部23は、剥離槽21等を介して剥離液21aに25kHz以上の超音波を伝搬することで、剥離液21aに発生したマイクロバブルや音響流により剥離液21aを撹拌し、破砕物CM2に含まれる材料の層間の剥離を促進する。
【0043】
また、例えば、撹拌部23は、剥離液21a内にエアーを放出してマイクロバブルを発生させる撹拌装置であってもよい。この場合、撹拌部23は、剥離槽21の下方からエアーを放出することで、剥離液21a内に発生したマイクロバブルにより剥離液21aを撹拌し、破砕物CM2に含まれる材料の層間の剥離を促進する。また、例えば、撹拌部23は、プロペラ等の撹拌子を物理的に回転させることで撹拌を行う撹拌装置であってもよい。この場合、撹拌部23は、剥離液21a内に設置した撹拌子を回転させることで撹拌を行う。なお、撹拌部23は、上記した撹拌方法を組み合わせたものであってもよい。
【0044】
ここで、加温部22による剥離液21aの加温、及び撹拌部23による剥離液21aの撹拌は、破砕物CM2に含まれた材料の層間の剥離を促進させるためのものである。具体的には、剥離液21aを加熱することで剥離液21aが活性化し、破砕物CM2に浸透し易くなるため材料間の剥離を促すことができる。また、剥離液21aを撹拌することで、剥離液21aによって緩んだ材料間の接着を効率的に剥離させることができる。
【0045】
また、超音波又はバブリングにより剥離液21a内にマイクロバブルを発生させる場合、破砕物CM2の周縁端部にマイクロバブルが付着することで、浮力や揺動により第1材料M1と第2材料M2との分離や、接着剤との分離を促すことができる。したがって、剥離液21a内にマイクロバブルを発生させることで、第1材料M1と第2材料M2との剥離(分離)を効率的に行うことができる。さらに、超音波を用いてマイクロバブルを発生させる構成とすることで、剥離液21aの温度上昇も図ることができるため、加温部22で印加する熱量を削減することでき、少ないエネルギーで剥離液21aを加温することができる。
【0046】
なお、剥離部20は、上記の構成に限定されないものとする。例えば、剥離部20は、剥離液タンク51を含んだ構成としてもよい。また、剥離部20は、上述したホッパー13等を含んだ構成としてもよい。
【0047】
[遠心分離洗浄部の構成]
遠心分離水洗部30は、剥離部20で分離された第1材料M1と第2材料M2とを洗浄しながら、比重差による分離回収(比重差選別)を更に実行する。
【0048】
具体的には、遠心分離水洗部30は、第1遠心分離部31と、第2遠心分離部32と、第1水洗槽33と、第2水洗槽34とを有する。ここで、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32は、遠心分離部の一例である。第1水洗槽33及び第2水洗槽34は、分離部の一例である。
【0049】
第1遠心分離部31は、配管T1に接続される。第1遠心分離部31には、配管T1を流れる液体がポンプP1により供給される。また、第2遠心分離部32は、配管T2に接続される。第2遠心分離部32には、配管T2を流れる液体がポンプP2により供給される。
【0050】
例えば、バルブV2が開状態であり、後述するバルブV14が閉状態の場合、第1遠心分離部31には、剥離槽21から排出された剥離液21aが供給される。また、例えば、バルブV2が閉状態であり、後述するバルブV14が開状態の場合、第1遠心分離部31には、第1水洗槽33及び第2水洗槽34から排出された洗浄水が供給される。
【0051】
例えば、バルブV3が開状態であり、後述するバルブV15が閉状態の場合、第2遠心分離部32には、剥離槽21から排出された剥離液21aが供給される。また、例えば、バルブV3が閉状態であり、後述するバルブV15が開状態の場合、第2遠心分離部32には、第1水洗槽33及び第2水洗槽34から排出された洗浄水が供給される。
【0052】
第1遠心分離部31は、モータ31aを備えた遠心分離機である。第1遠心分離部31は、モータ31aを駆動源とし、配管T1を介して供給された液体を遠心分離することで、液体に含まれた破砕混合物を抽出する。また、第2遠心分離部32は、第1遠心分離部31と同様、モータ32aを備えた遠心分離機である。第2遠心分離部32は、モータ32aを駆動源とし、配管T2を介して供給された液体を遠心分離することで、液体に含まれた破砕混合物を抽出する。
【0053】
なお、上述した剥離部20による比重差選別、及びこれから説明する遠心分離水洗部30での比重差選別により、第1遠心分離部31に供給される液体には、第1材料M1が多く含まれることになる。また、同様の比重差選別により、第2遠心分離部32に供給される液体には、第2材料M2が多く含まれることになる。そのため、以下では、第1遠心分離部31(及び第1水洗槽33)で処理する破砕混合物を第1材料M1、第2遠心分離部32(及び第2水洗槽34)で処理する破砕混合物を第2材料M2ともいう。
【0054】
また、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々は、配管T4を介して剥離液タンク51に接続される。配管T4には、バルブV5が設けられている。バルブV5が開状態の場合、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32で遠心分離された液体(剥離液21a)が、配管T4を介して剥離液タンク51に排出される。
【0055】
剥離液タンク51は、剥離液21aを貯蔵するための容器である。剥離液タンク51に貯蔵された剥離液21aは、配管T3を介して剥離槽21に供給することが可能となっている。
【0056】
剥離液タンク51には、剥離液21aの成分濃度を計測するための成分濃度計51aが設けられている。また、剥離液タンク51には、バルブV6を介して洗浄水が流れる配管T6に接続されている。分離回収装置1では、例えば成分濃度計51aで計測される成分濃度に基づきバルブV6を開閉制御することで、剥離液タンク51に貯蔵される剥離液21aを所望の成分濃度に調整することが可能となっている。
【0057】
第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々は、配管T5を介して第2洗浄水タンク62に接続される。配管T5には、バルブV7が設けられている。バルブV7が開状態の場合、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32で遠心分離された液体(洗浄水)が、配管T5を介して第2洗浄水タンク62に排出される。
【0058】
第1遠心分離部31は、バルブV8を介して第1水洗槽33に接続される。また、第2遠心分離部32は、バルブV9を介して第2水洗槽34に接続される。バルブV8及びバルブV9が開状態の場合、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々で分離された破砕混合物が、対応する第1水洗槽33及び第2水洗槽34に排出される。
【0059】
第1水洗槽33及び第2水洗槽34は、配管T6を介して第1洗浄水タンク61と第2洗浄水タンク62とに接続される。第1水洗槽33と、配管T6とを繋ぐ経路上にはバルブV10が設けられている。また、第2水洗槽34と、配管T6とを繋ぐ経路上にはバルブV11が設けられている。
【0060】
ここで、第1洗浄水タンク61及び第2洗浄水タンク62は、遠心分離された材料を洗浄するための洗浄水を貯蔵する容器である。具体的には、第1洗浄水タンク61は、外部の給水施設(図示せず)から供給される洗浄水61aを貯蔵する。洗浄水61aは、特別な純度である必要はなく、一般の工業用水、水道水、井戸水等をそのまま使用することができる。
【0061】
第2洗浄水タンク62は、洗浄に使用された使用済みの洗浄水61aを洗浄水62aとして貯蔵する。また、第2洗浄水タンク62には、洗浄水62aの成分濃度を計測するための成分濃度計62bが設けられている。なお、以下では、洗浄水61aと洗浄水62aとを区別しない場合、単に洗浄水という。
【0062】
第1洗浄水タンク61と配管T6とを繋ぐ経路上には、バルブV12が設けられている。第2洗浄水タンク62と配管T6とを繋ぐ経路上には、バルブV13が設けられている。また、配管T6の経路上には、第1洗浄水タンク61及び第2洗浄水タンク62に貯蔵された洗浄水を第1水洗槽33及び第2水洗槽34に供給するためのポンプP4が設けられている。
【0063】
ポンプP4は、バルブV12が開状態であり、且つバルブV13が閉状態の場合に、第1洗浄水タンク61に蓄えられた洗浄水61aを第1水洗槽33及び第2水洗槽34に供給する。また、ポンプP4は、バルブV12が閉状態であり、且つバルブV13が開状態の場合に、第2洗浄水タンク62に蓄えられた洗浄水62aを第1水洗槽33及び第2水洗槽34に供給する。
【0064】
第1水洗槽33は、配管T6を介して供給された洗浄水を用いて、第1遠心分離部31で遠心分離された第1材料M1を洗浄する。また、第2水洗槽34は、配管T6を介して供給された洗浄水を用いて、第2遠心分離部32で遠心分離された第2材料M2を洗浄する。洗浄方法は特に問わず、種々の洗浄方法を採用することができる。
【0065】
例えば、図1に示すように、第1水洗槽33は、モータ33aを備え、当該モータ33aを駆動源として、洗浄水内に設置したプロペラ等の撹拌子33bを回転させることで洗浄(撹拌)する構成としてもよい。また、同様に第2水洗槽34は、モータ34aを備え、当該モータ34aを駆動源として、洗浄水内に設置した撹拌子34bを回転させることで洗浄(撹拌)する構成としてもよい。なお、第1水洗槽33と第2水洗槽34とで洗浄方法は異ならせてもよい。また、第1水洗槽33及び第2水洗槽34は、超音波等を用いて洗浄する構成としてもよい。
【0066】
また、第1水洗槽33及び第2水洗槽34内の洗浄水は、上述した剥離液21aと同様、第1材料M1と第2材料M2とを比重差選別によって分離するための比重選別液として機能する。具体的には、洗浄水に対する第1材料M1及び第2材料M2の比重差により、第1材料M1及び第2材料M2は第1水洗槽33及び第2水洗槽34内の異なる位置(高さ)に滞留する。例えば、洗浄水として水を用いる場合、上述したMEA水溶液の場合と同様に、第1材料M1は洗浄水の上方に、第2材料M2は洗浄水の下方に滞留する。
【0067】
第1水洗槽33及び第2水洗槽34の各々には、洗浄水を第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32に戻すための排水口(図示せず)が設けられている。かかる排水口は、第1材料M1及び第2材料M2の各々の滞留位置に対応する位置(高さ)に設けられる。具体的には、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の各々において、第1材料M1の滞留位置に対応する上方の排出口には、配管T1に繋がる配管T7に接続される。また、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の各々において、第2材料M2の滞留位置に対応する下方の排出口には、配管T2に繋がる配管T8に接続される。これにより、配管T7には、第1材料M1を多く含んだ洗浄水が排出される。また、配管T8には、第2材料M2を多く含んだ洗浄水が排出される。
【0068】
配管T7は、配管T1の経路上のバルブV2とポンプP1との間に接続される。また、配管T7には、配管T1との接続部近傍にバルブV14が設けられる。また、配管T8は、配管T2の経路上のバルブV3とポンプP2との間に接続される。また、配管T7には、配管T2との接続部近傍にバルブV15が設けられる。
【0069】
ここで、バルブV2とバルブV14、バルブV3とバルブV15の各組において、何れか一方のバルブが開状態となるよう排他制御することで、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32に供給される液体を、剥離液21a又は洗浄水に切り替えることができる。
【0070】
なお、後述するように、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32では、洗浄水から分離した第1材料M1及び第2材料M2を、第1水洗槽33及び第2水洗槽34に再び投入することで、遠心分離と洗浄(比重差選別)とを繰り返し実行することが可能となっている。これにより、第1水洗槽33には第1材料M1が収集され、第2水洗槽34には第2材料M2が収集されることになる。
【0071】
また、第1水洗槽33には、洗浄及び比重差選別が完了した第1材料M1を乾燥部40に排出するための排出口(図示せず)が設けられている。かかる排出口は、乾燥部40に繋がる配管T9に接続される。配管T9の経路上にはバルブV16とポンプP5とが設けられる。ポンプP5は、バルブV16が開状態の場合に、第1材料M1を含んだ洗浄水を第1水洗槽33から汲み出し、乾燥部40(第1乾燥部41)に供給する。
【0072】
また、第2水洗槽34にも、洗浄及び比重差選別が完了した第2材料M2を排出するための排出口(図示せず)が設けられている。かかる排出口は、乾燥部40に繋がる配管T10に接続される。配管T10の経路上にはバルブV17とポンプP6とが設けられる。ポンプP6は、バルブV17が開状態の場合に、第2材料M2を含んだ洗浄水を第2水洗槽34から汲み出し、乾燥部40(第2乾燥部42)に供給する。
【0073】
なお、遠心分離水洗部30は、上記の構成に限定されないものとする。例えば、遠心分離水洗部30は、剥離液タンク51、第1洗浄水タンク61、及び第2洗浄水タンク62等を含んだ構成としてもよい。
【0074】
また、図1の構成では、遠心分離水洗部30で洗浄及び比重差選別が完了した材料を、第1水洗槽33及び第2水洗槽34から乾燥部40に供給する構成としたが、これに限らないものとする。例えば、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々分離された材料を、ベルトコンベア等の搬送装置を用いて乾燥部40に供給する構成としてもよい。
【0075】
また、図1の構成では、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32と、第2洗浄水タンク62とを接続する構成としたが、第1水洗槽33及び第2水洗槽34と、第2洗浄水タンク62とを接続する構成としてもよい。これにより、第1水洗槽33及び第2水洗槽34で使用された洗浄水を第2洗浄水タンク62に供給することができる。
【0076】
[乾燥部の構成]
乾燥部40は、乾燥部の一例である。乾燥部40は、遠心分離水洗部30で洗浄及び比重選別された第1材料M1及び第2材料M2の各々を乾燥する処理を行う。
【0077】
具体的には、乾燥部40は、第1乾燥部41と、第2乾燥部42とを有する。
【0078】
第1乾燥部41は、遠心分離水洗部30(第1遠心分離部31)から配管T9を介して供給された第1材料M1を乾燥する。また、第2乾燥部42は、遠心分離水洗部30(第2遠心分離部32)から配管T10を介して供給された第2材料M2を乾燥する。そして、乾燥部40で乾燥された第1材料M1及び第2材料M2は、その材料種類毎に回収される。
【0079】
なお、第1乾燥部41及び第2乾燥部42での乾燥方法は特に問わず、種々の乾燥方法を使用することができる。例えば、第1乾燥部41及び第2乾燥部42は、90℃程度の温風を送風することで乾燥を行う乾燥装置であってもよい。また、第1乾燥部41及び第2乾燥部42は、第1材料M1又は第2材料M2を収納した密閉容器を減圧排気することで減圧乾燥を行う乾燥装置であってもよい。
【0080】
次に、本実施形態の分離回収装置1で実行される分離回収方法について説明する。
【0081】
図2は、分離回収方法の手順の一例を示すフローチャートである。図2に示すように、分離回収方法は、破砕工程S1と、剥離工程S2と、遠心分離工程S3と、水洗工程S4と、乾燥工程S5とを含む。ここで、剥離工程S2は、剥離工程の一例である。また、遠心分離工程S3、水洗工程S4、及び乾燥工程S5は、分離回収工程の一例である。なお、剥離工程S2で行う比重差選別処理は、分離回収工程に含める構成としてもよい。
【0082】
上述した分離回収方法の各工程は、例えば、コンピュータ構成の制御装置(図示せず)によって実行される。制御装置は、プロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置等のコンピュータ構成を備え、補助記憶装置に記憶されたプログラム等と協働することで、上述した分離回収方法の各工程を実行する。この場合、制御装置は、分離回収装置1の各部に設けられたバルブの開閉制御、ポンプの駆動制御等とともに、図示しないセンサ装置のセンシング結果等に基づき分離回収装置1の動作を制御する。
【0083】
制御装置は、分離回収装置1の動作を統括的に制御する一台構成の制御装置であってもよいし、破砕部10、剥離部20、遠心分離水洗部30及び乾燥部40の各部の動作を個別に制御する複数台構成の制御装置であってもよい。なお、本実施形態では、制御装置の制御により分離回収方法の各工程が実行されるものとして説明するが、これに限らず、人手によって各工程が実行されてもよい。
【0084】
以下、図1及び図3図5を参照しながら、図2の各工程について説明する。
【0085】
[破砕工程]
破砕工程S1は、主に破砕部10で実行される。破砕工程S1では、処理対象となる複合材料CM1が破砕機11により小片である破砕物CM2に破砕される。破砕物CM2は、ブロア12等の搬送手段によりホッパー13へと搬送される。
【0086】
[剥離工程]
剥離工程S2は、主に剥離部20で実行される。剥離工程S2では、まず、制御装置は、バルブV2及びバルブV3を閉状態、バルブV4を開状態とし、ポンプP3を駆動することで、剥離液タンク51に貯水された剥離液21aが剥離槽21に供給する。剥離槽21に供給された剥離液21aが所定量に達すると、制御装置は、ポンプP3を停止し、バルブV4を閉状態とする。次いで、制御装置は、加温部22を動作させ、剥離槽21の剥離液21aを所定温度に加熱(加温)する。
【0087】
続いて、制御装置は、バルブV1を開状態とすることで、ホッパー13に収容された破砕物CM2を剥離槽21の剥離液21a内に投入させる。なお、本実施形態では、剥離液21aを供給した後に破砕物CM2を投入する形態としたが、これに限らず、例えば破砕物CM2を投入した後に剥離液21aを供給してもよい。
【0088】
剥離液21aに破砕物CM2の投入が完了すると、制御装置は、撹拌部23を駆動することで剥離液21aを撹拌させる。剥離液21aの撹拌により、破砕物CM2に含まれる接着剤の層が剥離液21aに接触する頻度や面積が増加する。また、加温部22による剥離液21aの加温により、剥離液21aが破砕物CM2に含まれる接着剤の層に浸透し易くなる。
【0089】
これにより、剥離部20(剥離工程S2)では、破砕物CM2から接着剤の剥離を効率的に行うことができるため、第1材料M1と第2材料M2との分離を効率的に行うことができる。また、破砕物CM2から接着剤を取り除くことができるため、分離回収される第1材料M1と第2材料M2の品質を向上させることができる。
【0090】
次いで、制御装置は、加温部22及び撹拌部23を停止し、剥離液21aを所定時間静置させる。剥離液21aの静置により、剥離した第1材料M1及び第2材料M2は、その比重に応じた位置(高さ)に分離する。具体的には、比重の小さい第1材料M1は剥離槽21の上方に滞留し、比重の大きい第2材料M2は剥離槽21の下方に滞留する。ここで、剥離液21aを静置する静置時間は特に問わないものとする。例えば、制御装置は、破砕物CM2の大きさや剥離液21aの粘性等に応じて静置時間を調整する形態としてもよい。
【0091】
続いて、制御装置は、バルブV2及を開状態(バルブV14を閉状態)とし、ポンプP1を駆動させることで、剥離槽21の上方の剥離液21aを第1遠心分離部31に供給する。また、制御装置は、バルブV3及を開状態(バルブV15を閉状態)とし、ポンプP2を駆動させることで、剥離槽21の下方の剥離液21aを第2遠心分離部32に供給する。具体的に、第1遠心分離部31には、主に第1材料M1を含んだ剥離液21aが供給され、第2遠心分離部32には、主に第2材料M2を含んだ剥離液21aが供給される。
【0092】
なお、剥離工程S2では、主となる一方の材料群の中に他方の材料が紛れ込む等の理由により、他方の材料が混在した状態で第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32に剥離液21aが供給される可能性がある。そのため、本実施形態の分離回収方法では、後述する遠心分離工程及び水洗工程において、第1材料M1と第2材料M2との分離処理を更に行う。
【0093】
[遠心分離工程、水洗工程]
遠心分離工程S3及び水洗工程S4は、主に遠心分離水洗部30で実行される。以下、図3図5を参照しながら、遠心分離工程S3及び水洗工程S4について説明する。
【0094】
図3図5は、遠心分離工程S3及び水洗工程S4を説明するための図である。実線で示す矢印は回収の対象となる第1材料M1、第2材料M2の動きを示している。また、破線で示す矢印は剥離液21aの動きを示している。また、一点鎖線で示す矢印は洗浄水の動きを示している。また、図3図5では、開通状態にある配管を実線で、不通状態にある配管を破線で示している。
【0095】
まず、遠心分離工程S3では、図3に示すように、バルブV2及びバルブV3が開状態、バルブV14及びバルブV15が閉状態とされる。そして、制御装置は、ポンプP1及びポンプP2を駆動し、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32に剥離液21aを供給させる。
【0096】
第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々では、モータ31a及びモータ32aが駆動され、供給された剥離液21aを液体(剥離液21a)と固体(破砕混合物)とに遠心分離する。このとき、制御装置は、バルブV5が開状態とすることで、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32の各々で分離された剥離液21aが剥離液タンク51に排出させるよう制御する。これにより、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32で使用された剥離液21aを再利用することができるため、ランニングコストの低下を図ることができる。
【0097】
制御装置は、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32による遠心分離が完了すると、バルブV8及びバルブV9を開状態とすることで、分離された破砕混合物が第1水洗槽33及び第2水洗槽34に排出される。
【0098】
続く水洗工程S4では、制御装置は、図4又は図5に示すように、第1洗浄水タンク61又は第2洗浄水タンク62から供給された洗浄水を用いて、第1水洗槽33及び第2水洗槽34で破砕混合物を洗浄させる。次いで、制御装置は、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の洗浄水を静置することで、上述した剥離部20と同様、第1材料M1と第2材料M2とを比重差選別する。
【0099】
続いて、制御装置は、バルブV2を閉状態、バルブV14を開状態とすることで、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の各々から、第1材料M1を含んだ洗浄水を第1遠心分離部31に供給させる。また、制御装置は、バルブV3を閉状態、バルブV15を開状態とすることで、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の各々から、第2材料M2を含んだ洗浄水を第2遠心分離部32に供給させる。そして、制御装置は、洗浄水を用いた遠心分離工程S3及び水洗工程S4を所定回数実行することで、第1材料M1と第2材料M2との分離を繰り返し実行する。
【0100】
また、制御装置は、洗浄水を用いて遠心分離工程S3を行う際には、バルブV5を閉状態とし、バルブV7を開状態とすることで、遠心分離された洗浄水が第2洗浄水タンク62に排出されるよう制御する。これにより、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32で使用された洗浄水を、洗浄水62aとして再利用することができるため、洗浄に使用する水量を削減できるとともに、ランニングコストの低下を図ることができる。
【0101】
なお、最初(又は、最初の数回)の水洗工程S4では、第2洗浄水タンク62に蓄えられた洗浄水62aを用いて洗浄し、仕上げの段階の水洗工程S4で、第1洗浄水タンク61に蓄えられた洗浄水61aを用いて洗浄することが好ましい。この場合、制御装置は、例えば以下の手順で遠心分離工程S3と水洗工程S4とを実行してもよい。
【0102】
まず、図4に示すように、バルブV10、バルブV11、及びバルブV13が開状態、バルブV12が閉状態とされることで、第2洗浄水タンク62に蓄えられた洗浄水62aが、ポンプP4によって第1水洗槽33及び第2水洗槽34に供給される。なお、このとき、バルブV14及びバルブV15は、閉状態にあるものとする。
【0103】
洗浄水62aの供給量が所定量に達すると、制御装置は、バルブV10、バルブV11、及びバルブV13を閉状態とし、ポンプP4を停止する。次いで、制御装置は、第1水洗槽33及び第2水洗槽34を動作させ、供給された洗浄水62aを用いて洗浄を開始する。
【0104】
制御装置は、所定時間洗浄を行うと第1水洗槽33及び第2水洗槽34の動作を停止し、洗浄水62aを所定時間の間静置させる。
【0105】
続いて、制御装置は、バルブV14を開状態とし、ポンプP1を駆動することで、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の上方の洗浄水62aを第1遠心分離部31に供給させる。また、制御装置は、バルブV15を開状態とし、ポンプP2を駆動することで、第1水洗槽33及び第2水洗槽34の下方の洗浄水62aを第2遠心分離部32に供給させる。
【0106】
続いて、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32では、上述と同様、液体(洗浄水62a)と固体(第1材料M1、第2材料M2)とを分離する遠心分離工程S3が実行される。ここで、遠心分離された洗浄水62aは、廃棄する形態としてもよいし、第2洗浄水タンク62に排出する形態としてもよい。また、遠心分離された固体は、第1水洗槽33及び第2水洗槽34に再び投入される。なお、洗浄水62aを用いた水洗工程S4は1又は複数回実行してもよい。
【0107】
そして、洗浄水62aを用いた水洗工程S4が所定回数実行されると、仕上げの洗浄として、第1洗浄水タンク61の洗浄水61aを用いた水洗工程S4が1又は複数回実行される。
【0108】
具体的には、図5に示すように、バルブV10、バルブV11、及びバルブV12が開状態とされ、バルブV13が閉状態とされることで、第1洗浄水タンク61に蓄えられた洗浄水61aが、ポンプP4によって第1水洗槽33及び第2水洗槽34に供給される。このとき、バルブV14及びバルブV15は、閉状態にあるものとする。
【0109】
制御装置は、洗浄水61aの供給量が所定量に達すると、バルブV10、バルブV11、及びバルブV12を閉状態とし、ポンプP4を停止させる。次いで、制御装置は、第1水洗槽33及び第2水洗槽34を動作させ、供給された洗浄水61aを用いて洗浄を開始する。
【0110】
ここで、制御装置は、所定時間洗浄を行った後、上述した手順と同様に比重分離選択を行った第1材料M1、第2材料M2を、第1遠心分離部31及び第2遠心分離部32に再度戻す形態としてもよい。この場合、制御装置は、遠心分離工程S3において、バルブV5を閉状態とし、バルブV7を開状態とすることで、遠心分離した洗浄水61aを洗浄水62aとして第2洗浄水タンクに排出させる。
【0111】
また、制御装置は、洗浄及び比重分離選択が完了した第1材料M1及び第2材料M2を、乾燥工程S5に移行させてもよい。この場合、制御装置は、バルブV16を開状態とし、ポンプP5を駆動させることで、第1水洗槽33に溜まった第1材料M1を洗浄水61aとともに第1乾燥部41に供給させる。また、同様に、制御装置は、バルブV17を開状態とし、ポンプP6を駆動させることで、第2水洗槽34に溜まった第2材料M2を洗浄水61aとともに第2乾燥部42に供給させる。
【0112】
このように、本実施形態の分離回収方法では、遠心分離工程S3と水洗工程S4とを複数回行うことで、第1材料M1及び第2材料M2の洗浄と比重差選別を繰り返し実行する。これにより、本実施形態の分離回収方法では、第1材料M1及び第2材料M2の洗浄度を向上させることができるとともに、第1材料M1と第2材料M2との分離精度を向上させることができる。したがって、本実施形態の分離回収方法では、第1材料M1と第2材料M2との分離回収を効率的に行うことができるとともに、分離回収される第1材料M1と第2材料M2の品質を向上させることができる。
【0113】
また、本実施形態の分離回収方法では、材料の剥離に使用した剥離液21aを再利用することができるとともに、材料の洗浄で使用した洗浄水61aを、洗浄水62aとして再利用することができる。したがって、本実施形態の分離回収方法では、材料の剥離に使用する剥離液21aの水量や、材料の洗浄に使用する水量の削減を図ることができるため、材料の分離回収を効率的に行うことができる。
【0114】
[乾燥工程]
乾燥工程S5は、主に乾燥部40で実行される。乾燥工程S5では、水洗工程S4で洗浄、比重差選別された第1材料M1及び第2材料M2の各々を乾燥する処理が行われる。以下、図5を参照して、乾燥工程S5を説明する。
【0115】
制御装置は、第1乾燥部41を駆動し、遠心分離水洗部30から供給された第1材料M1を乾燥することで、第1材料M1の回収を行う。また、制御装置は、第2乾燥部42を駆動し、遠心分離水洗部30から供給された第2材料M2を乾燥することで、第2材料M2の回収を行う。
【0116】
以上説明したように、本実施形態に係る分離回収装置1では、複数種類の材料が接着剤を介して積層された複合材料の破砕物CM2と、MEA水溶液とを含む剥離液21aを加熱及び撹拌し、前記破砕物から前記接着剤を剥離した破砕混合物を得る剥離工程を実行する。これにより、分離回収装置1では、破砕物CM2から接着剤の剥離を容易に行うことができるため、複数種類の材料の分離を効率的に行うことができる。
【0117】
また、本実施形態の分離回収装置1では、剥離工程又は水洗工程において、破砕混合物を比重差選別によって複数種類の材料に分離する。これにより、分離回収装置1では、接着剤の剥離によりばらばらとなった複数種類の材料を、その比重に基づき分離することができる。
【0118】
また、本実施形態の分離回収装置1では、MEAの含有量が、2重量%以上100重量%以下のMEA水溶液(剥離液21a)を用いて、破砕物CM2から接着剤の剥離を行う。これにより、分離回収装置1では、MEAが有する危険性・毒性を低下させることできるため、安全性の向上を図ることができる。
【0119】
また、本実施形態の分離回収装置1では、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方を含んだMEA水溶液(剥離液21a)を用いて、破砕物CM2から接着剤の剥離を行う。これにより、分離回収装置1では、破砕物CM2から接着剤の剥離を促進することができるため、複数種類の材料の分離を効率的に行うことができる。
【0120】
また、本実施形態の分離回収装置1では、剥離液21a中にマイクロバブルを発生させて剥離液21aを撹拌する。これにより、分離回収装置1では、破砕物CM2から接着剤の剥離を促進することができるため、複数種類の材料の分離を効率的に行うことができる。
【0121】
(変形例1)
上述の実施形態では、回収対象の材料を2つ(第1材料M1、第2材料M2)としたため、遠心分離部と水洗部との組を2つ用意する構成としたが、これに限らず、回収対象の材料の個数に応じて、分離回収装置1の構成を変更することが可能である。
【0122】
例えば、回収対象の材料が3つ(但し、比重は相違)の場合、遠心分離部と水洗部との組を3つ用意する。また、剥離槽21では、各材料の比重に応じた位置(高さ)に排出口を設け、当該排出口と各組の遠心分離部と接続する配管を設置する。また、各組の水洗部でも、各材料の比重に応じた位置(高さ)に排出口を設け、当該比重の比重差選別を担当する組の遠心分離部に接続する配管を設置する。これにより、剥離槽21で剥離(分離)された各材料を、各組の遠心分離部に接続された乾燥部40で分離回収することができる。
【0123】
(変形例2)
上述の実施形態では、破砕部10(破砕工程S1)を含んだ分離回収装置1(分離回収方法)を説明したが、例えば、予め破砕された複合材料CM1が用意される場合には、破砕部10(破砕工程S1)を除去した構成としてもよい。この場合、剥離部20(剥離工程S2)では、予め破砕された複合材料CM1(破砕物CM2)を用いて処理することで、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0124】
(変形例3)
上述の実施形態では、剥離液21aは、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方を添加剤として含む構成としたが、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の何れも含まない構成としてもよい。この場合、上述の実施形態と比較し、添加剤(活性剤)の機能が欠けることになるが、以下に挙げる利点を得ることができる。
【0125】
まず、剥離液21aがアルカリ土類金属やアルカリ金属を含む場合、回収対象となる合成樹脂(PET等)や金属(AL等)にダメージを与える可能性がある。具体的には、アルカリ土類金属やアルカリ金属は、合成樹脂を分解する作用を有するため、剥離工程S2の際に合成樹脂を劣化させる可能性がある。また、アルカリ土類金属やアルカリ金属は、ALと反応することでALを水酸化アルミ又は酸化アルミに変化させるとともに、水素ガスを発生させるため爆発等の危険性が増す。したがって、アルカリ土類金属やアルカリ金属を使用しない構成とすることで、回収する材料の品質や安全性の向上を図ることができる。
【0126】
また、乾燥工程S5で減圧乾燥する場合、無機物のアルカリ土類金属やアルカリ金属は、揮発しないで残留するため、回収対象の材料にアルカリ土類金属やアルカリ金属が混在することになる。したがって、アルカリ土類金属やアルカリ金属を使用しない構成とすることで、回収対象の材料以外の残留物を減らすことができるため、回収する材料の品質向上を図ることができる。
【0127】
さらに、剥離液21aがアルカリ土類金属やアルカリ金属を含むと、剥離液21aを最終処分する際の処理が煩雑となる。一方で、剥離液21aがアルカリ土類金属やアルカリ金属を含まない場合、主成分となるMEAは燃焼可能であるため、他燃料に混ぜて燃焼処理することができる。したがって、アルカリ土類金属やアルカリ金属を使用しない構成とすることで、剥離液21aの廃棄に係る負担の軽減化を図ることができる。
【0128】
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1 分離回収装置
10 破砕部
11 破砕機
12 ブロア
13 ホッパー
20 剥離部
21 剥離槽
22 加温部
23 撹拌部
30 遠心分離水洗部
31 第1遠心分離部
32 第2遠心分離部
33 第1水洗槽
34 第2水洗槽
40 乾燥部
41 第1乾燥部
42 第2乾燥部
51 剥離液タンク
61 第1洗浄水タンク
62 第2洗浄水タンク
図1
図2
図3
図4
図5