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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】X線撮像装置及び処置具認識方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
A61B6/00 530Z
A61B6/00 550D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020204258
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091427
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和喜
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-508035(JP,A)
【文献】特開2018-068982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、検査対象を挟んで前記X線源と対向配置されたX線検出器と、前記検査対象を透過して前記X線検出器が検出したX線から前記検査対象のX線画像を生成するデータ処理部と、前記検査対象に対するX線の照射及び照射角度を制御する撮像制御部と、を備え、
前記データ処理部は、前記検査対象のX線画像を解析し、前記検査対象における処置具の3次元位置を算出する処置具位置算出部を備え、
前記撮像制御部は、前記照射角度が異なる複数の撮像位置または前記照射角度の所定の角度範囲で、複数回の撮像を行うように前記X線源、及び前記X線検出器を制御し、
前記処置具位置算出部は、
前記複数回の撮像を行うことにより得られた複数のX線画像のうち、撮像位置が異なる任意の2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、各組み合わせについて、前記処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出するパラメータ算出部と、
各組み合わせのパラメータを比較し、3次元位置算出の精度が最も高いパラメータとなる組み合わせを選択するパラメータ比較部と、
前記パラメータ比較部が選択した組み合わせについて前記パラメータ算出部が算出したパラメータを用いて前記処置具の3次元位置を算出する3次元位置算出部と、を備えることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線撮像装置であって、
前記処置具位置算出部は、前記X線画像から前記処置具の特徴を抽出し、前記X線画像における前記処置具の位置を算出する特徴抽出部をさらに備え、
前記パラメータ算出部は、前記2以上のX線画像について、前記特徴抽出部が算出した前記X線画像における前記処置具の位置と前記2以上のX線画像を取得した際の撮像位置の情報とに基づき前記パラメータを算出することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線撮像装置であって、
前記パラメータ算出部は、前記2以上のX線画像について、前記X線画像における前記処置具の位置に対応する前記X線検出器上の位置と前記撮像位置におけるX線照射角度とで決まる直線を設定し、それぞれの直線間の距離が最短となる各直線上の位置を用いて前記パラメータを算出することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線撮像装置であって、
前記パラメータ算出部は、前記2以上のX線画像について求めた、前記各直線上の位置間の距離を前記パラメータとし、
前記パラメータ比較部は、前記各直線上の位置間の距離が最小となる前記2以上のX線画像の組み合わせを、3次元位置算出の精度が最も高い組み合わせとして選択することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項5】
X線を照射するX線源と、検査対象を挟んで前記X線源と対向配置されたX線検出器と、前記検査対象を透過して前記X線検出器が検出したX線から前記検査対象のX線画像を生成するデータ処理部と、前記検査対象に対するX線の照射及び照射角度を制御する撮像制御部と、を備え、
前記データ処理部は、前記検査対象のX線画像を解析し、前記検査対象における処置具の3次元位置を算出する処置具位置算出部を備え、
前記撮像制御部は、前記照射角度が異なる複数の撮像位置または前記照射角度の所定の角度範囲で、複数回の撮像を行うように前記X線源、及び前記X線検出器を制御し、
前記処置具位置算出部は、
前記複数回の撮像を行うことにより得られた複数のX線画像のうち、撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、各組み合わせについて、前記処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出するパラメータ算出部と、
各組み合わせのパラメータを比較し、3次元位置算出の精度が最も高いパラメータとなる組み合わせを選択するパラメータ比較部と、
前記パラメータ比較部が選択した組み合わせについて前記パラメータ算出部が算出したパラメータを用いて前記処置具の3次元位置を算出する3次元位置算出部と、を備え、
前記パラメータを算出するX線画像の組み合わせは、3以上のX線画像の組み合わせであって、
前記パラメータ算出部は、前記3以上のX線画像についてそれぞれ前記X線画像における前記処置具の位置に対応する前記X線検出器上の位置と前記撮像位置におけるX線照射角度とで決まる直線を設定し、隣接する直線間の距離が最短となる各直線上の位置で画定される図形の、面積又は周囲長を前記パラメータとし、
前記パラメータ比較部は、前記面積又は周囲長が最小となる前記3以上のX線画像の組み合わせを、3次元位置算出の精度が最も高い組み合わせとして選択することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載のX線撮像装置であって、
前記撮像制御部は、複数の撮像位置のそれぞれにおいて、複数回の撮像を行う制御を行い、
前記パラメータ算出部は、撮像位置毎に得た複数のX線画像の組み合わせを異ならせて複数の組み合わせとし、当該複数の組み合わせについて、それぞれ、前記パラメータを算出することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載のX線撮像装置であって、
前記撮像制御部は、所定の角度範囲内の複数の撮像位置でそれぞれ1回の撮像を行う制御を行い、
前記パラメータ算出部は、前記角度範囲内の異なる撮像位置で得た複数のX線画像の組み合わせを異ならせて複数の組み合わせとし、当該複数の組み合わせについて、それぞれ、前記パラメータを算出することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項8】
請求項1に記載のX線撮像装置であって、
前記パラメータ算出部が算出したパラメータを、予め設定した閾値と比較し、比較結果をもとに、前記検査対象の位置変化を判定する判定部、をさらに備えることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載のX線撮像装置であって、
前記判定部は、複数の組み合わせについて前記パラメータ算出部が算出した全てのパラメータの値が前記閾値を超えるときに、前記検査対象に周期的体動以外の動きがあったと判定することを特徴とするX線撮像装置。
【請求項10】
請求項1に記載のX線撮像装置であって、
前記3次元位置算出部が算出した前記処置具の3次元位置を、予め取得した前記検査対象の3次元画像上にマッピングし、表示装置に表示させるマッピング部をさらに備えることを特徴とするX線撮像装置。
【請求項11】
検査対象に対するX線の照射角度が異なる複数の撮像位置または前記照射角度の所定の角度範囲で、複数回の撮像を行うことにより得られた複数のX線画像を解析し、X線撮像中に検査対象内に挿入された処置具の3次元位置を認識する処置具認識方法であって、
前記複数のX線画像のうち、撮像位置が異なる任意の2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、各組み合わせについて、前記処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
前記パラメータをもとに、複数の組み合わせのうち、3次元位置算出の精度が最も高いパラメータとなる組み合わせを選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択した組み合わせについて前記パラメータ算出ステップで算出したパラメータを用いて前記処置具の3次元位置を算出するステップと、を含む処置具認識方法。
【請求項12】
請求項11に記載の処置具認識方法であって、
前記パラメータ算出ステップは、前記X線画像における前記処置具の特徴部分を抽出し、前記X線画像における処置具の位置を検出するステップと、
前記処置具の位置と、前記2以上のX線画像を取得したときのX線照射角度とで決まる直線を設定するステップと、を含み、
それぞれの直線間の距離が最短となる各直線上の位置を用いて前記パラメータを算出することを特徴とする処置具認識方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮像装置に関し、特に検査対象の内部に処置具を挿入しながらX線撮像を行う際に、処置具の3次元的な位置を把握する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線撮影装置は、リアルタイムで被検体の特徴的構造を把握することができ、手術等処置中の撮影手段(インターベンショナル撮影手段)として広く使われている。処置中の撮影では、被検体に対する処置具の位置の把握が極めて重要である。X撮影装置では、X線画像に映し出される処置具から投影面内における処置具の位置もリアルタイムで把握することができるが、投影方向の位置や構造の把握は困難である。
【0003】
これに対し、コーンビームCTは、X線源と検出器とを被検体の周囲で回転させて3次元画像を取得することができ、画像から処置具の3次元的な位置を把握することができる。しかし、コーンビームCTは、X線撮影装置に比べ、1枚の画像を取得するのに時間を要し、回転中に被検体の体動などがあると処置具の位置精度が低下するという課題がある。
【0004】
また、特許文献1には、異なるパースペクティブで取得したX線画像を用いて、これらX線画像における処置具の位置関係から処置具の深さ(3次元的な位置)を算出する技術が開示されている。この技術でも3次元位置を算出するのに用いた2枚のX線画像で、取得したときの体動の時相が異なる場合には、位置算出の精度が劣化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5587861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
3次元位置を算出する際の体動の影響を低減するためには、呼吸動の周期などを外部機器でモニタリングしながら撮像することが考えられるが、術中撮像においては、処置を行う空間には、処置具以外のモニター器具などはできるだけ配置しないことが好ましく、またX線撮像装置側に外部信号を取り込むための手段を追加する必要がある。
【0007】
本発明は、体動モニター等の外部信号を用いることなく、X線画像の処理のみで処置具の3次元位置を算出することができ且つ体動の影響を排除できる技術を提供すること、それにより連続的な撮像を行いながら処置具を正確に示すことが可能なX線撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、異なる角度/時刻で取得した複数のX線画像から複数のX線画像の組み合わせを複数用いて、組み合わせ毎に、処置具の3次元位置の算出精度の指標となるパラメータを求め、最も精度の高いパラメータとなるX線画像の組み合わせから処置具の3次元位置を算出する。
【0009】
すなわち、本発明のX線撮像装置は、X線を照射するX線源と、検査対象を挟んでX線源と対向配置されたX線検出器と、検査対象を透過して前記X線検出器が検出したX線から検査対象のX線画像を生成するデータ処理部と、検査対象に対するX線の照射及び照射角度を制御する撮像制御部と、を備え、データ処理部は、前記検査対象のX線画像を解析し、検査対象における処置具の3次元位置を算出する処置具位置算出部を備える。撮像制御部は、照射角度が異なる複数の撮像位置または照射角度の所定の角度範囲で、複数回の撮像を行うように前記X線源、及びX線検出器を制御する。処置具位置算出部は、複数回の撮像を行うことにより得られた複数のX線画像のうち、撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、各組み合わせについて、前記処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出するパラメータ算出部と、各組み合わせのパラメータを比較し、3次元位置算出の精度が最も高いパラメータとなる組み合わせを選択するパラメータ比較部と、パラメータ比較部が選択した組み合わせについてパラメータ算出部が算出したパラメータを用いて処置具の3次元位置を算出する3次元位置算出部と、を備える。
【0010】
また本発明の処置具認識方法は、検査対象に対するX線の照射角度が異なる複数の撮像位置または前記照射角度の所定の角度範囲で、複数回の撮像を行うことにより得られた複数のX線画像を解析し、X線撮像中に検査対象内に挿入された処置具の3次元位置を監視する処置具認識方法であって、複数のX線画像のうち、撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、各組み合わせについて、前記処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、パラメータをもとに、複数の組み合わせのうち、3次元位置算出の精度が最も高いパラメータとなる組み合わせを選択する選択ステップと、選択ステップで選択した組み合わせについて前記パラメータ算出ステップで算出したパラメータを用いて前記処置具の3次元位置を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の組み合わせの中で最も処置具位置算出の精度が高い組み合わせを選択し、その組み合わせ画像と撮像位置とを用いて3次元位置を算出するので、体動の影響によって位置ずれを生じていても、ほぼ同時相の画像間の計算で3次元位置を算出することができ、体動の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】X線撮像装置の一実施形態の全体構成を示す機能ブロック図。
図2】撮像部の一例として、オーバーチューブ型の透視装置を示す図で、(A)及び(B)は、撮像位置(角度)が異なる状態を示す。
図3】撮像部の一例として、Cアーム型の撮像装置を示す図で、(A)及び(B)は、撮像位置(角度)が異なる状態を示す。
図4】X線撮像装置の動作を示すフロー図。
図5】実施形態1の画像生成部の機能ブロック図。
図6】実施形態1の3次元位置算出のフローを示す図。
図7】実施形態1の3次元位置算出におけるX線画像の組み合わせを説明する図。
図8】パラメータ算出を説明する図。
図9】実施形態2の3次元位置算出のフローを示す図。
図10】実施形態2の3次元位置算出におけるX線画像の組み合わせを説明する図。
図11】実施形態2のX線画像の組み合わせの変形例を説明する図。
図12】実施形態3の画像生成部の機能ブロック図。
図13】実施形態3の処理フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のX線撮像装置の実施形態を説明する。
【0014】
本実施形態のX線撮像装置1は、図1に示すように、X線源11及びX線検出器12を備えた撮像部10と、撮像部10を含む装置全体を制御する装置制御部20と、X線検出器12が検出したX線をもとにX線画像を生成するとともに画像データの処理を行うデータ処理部30と、X線画像等を表示する表示装置40とを備える。さらに図示していないが、装置制御部20やデータ処理部30に対し、処理に必要な指令をユーザーが入力するための入力デバイスや処理に必要なデータや予め取得した被検体の3次元画像などを格納する記憶装置などを備えていてもよい。
【0015】
X線源11としては、通常、X線管が使用され、X線管は図示しない高電圧発生装置に接続されている。またX線検出器12としては、FPD(フラットパネルディテクタ)が用いられる。本発明は、これらに限定されるものではないが、以下、X線検出器12を検出器パネルとも言う。
【0016】
X線撮像装置1には、X線源11及び検出器パネル12の支持構造や、X線源11の位置などによって、異なる種類の装置があるが、本実施形態は、被検体に対するX線源11の位置(X線の照射角度)を変えることが可能なものであれば、いずれの種類にも適用することができる。例えば、図2に示すようなオーバーチューブ型透視装置と呼ばれるX線撮像装置10Aや、図3に示すようなCアーム型X線撮像装置10Bに適用できる。
【0017】
図2に示すX線撮像装置1Aは、X線源11が、被検体が寝かせられるベッド13の上部にセットされ、ベッド13の内側にX線検出器12を構成する検出器パネルが設置されている。このX線撮像装置1Aでは、X線源11は、支持機構15を介して支持台14に対し、固定されており、支持機構15はX線源11を支持する支柱151と、支柱151を支持台14に対し回転可能に支持する支持腕152とを備えている。検出器パネル12を収納したベッド13は、水平方向や垂直方向に移動可能に支持腕152に支持されている。
【0018】
このような構成のX線撮像装置1Aでは、支持台14に対し支柱151を回転させることにより、図2(A)に示すような垂直の位置から(B)に示すような位置にX線源11の位置を変更することができ、ベッド13の上に寝かせられた被検体に対するX線の照射角度を変化させることができる。また図示していないが、図2の紙面と直交する方向に支柱151を移動したり支柱151に固定されたX線管を回転させたりする機構が備えられている場合もあり、その場合、X線の照射角度は2次元のみでなく3次元的にも変化させることができる。
【0019】
なお図2は、X線を被検体の上側から照射する構成のオーバーチューブ型透視装置を示しているが、X線源をベッドの下側に配置したアンダーチューブ型の透視装置でも同様に適用できる。
【0020】
図3は、Cアーム18でX線源11とX線検出器12を支持する構造のX線撮像装置1Bで、X線源11とX線検出器12との間の空間に、被検体が寝かせられるベッド13が配置される。Cアーム18は支持腕17を介して支持台16に固定されており、支持腕17に支持されるCアーム18の位置を変えることができ、それにより、図3(A)に示すようにX線源11がベッド13の直上にある位置から、(B)に示すような傾斜した位置に変化し、X線の照射角度を変化させることができる。また支持腕17は、支持台16に対し軸Pの周りで回転させることができ、それによりX線源11及びX線検出器12を紙面とは直交する面内で回転させて、X線の照射角度を変更することもできる。
【0021】
装置制御部20は、駆動部21とデータ収集部22を含む。駆動部21は、上述したX線源11とX線検出器12を支持する機構(例えば、図2の支持機構15)を駆動するモータなどの駆動源や、X線源11を駆動するための電源部などで構成される。データ収集部22は、検出器パネル12から出力される透過X線に相当する電気信号を入力し、撮像時間毎に2次元の画像データとして収集する。装置制御部20は、また、駆動部21の動作を制御して、X線源11の移動やX線源11からのX線照射を制御する撮像制御部としての機能を有する。本実施形態では、X線撮像中に被検体内に挿入された処置具の位置を検出するために、撮像時間及び撮像位置が異なる複数のX線画像を収集する。このため撮像制御部は、撮像位置や撮像回数などを所定の撮像手順に従い駆動部21を制御する。撮像手順の詳細は後述の実施形態で説明する。
【0022】
データ処理部30は、データ収集部22が一定時間収集した画像データを管理し、被検体の体動周期性と関連した組み合わせや群となるように選択する画像選択部31と、被検体内部に挿入された処置具の位置を監視する処置具位置算出部32とを備える。本実施形態の処置具位置算出部32は、撮像時間及び撮像位置が異なる複数のX線画像から選択した2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて処置具の3次元位置を算出する。このため処置具位置算出部32は、個々のX線画像において処置具の位置を検出する2次元位置検出部321と、2以上のX線画像の組み合わせ毎に、3次元位置を算出するためのパラメータを算出するパラメータ算出部322と、各組み合わせについて算出したパラメータを比較し、3次元位置の算出に用いる組み合わせ(パラメータ)を選択するパラメータ比較部323と、選択した組み合わせのパラメータを用いて処置具の3次元位置を算出する3次元位置算出部324とを備える。
【0023】
データ処理部30の機能は、CPU或いはGPUやメモリを備えた計算機が、各部の機能を実現するプログラムを読み込むことで実現することができる。また各部に含まれる演算の一部或いは機能の一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Progamable Gate Array)などのハードウェアで実現してもよい。
【0024】
上述した構成における撮像と処置具の位置算出の概要を図4に示す。まず、撮像制御部20の制御のもと撮像時間及び撮像位置が異なる複数のX線画像を取得した後(S1)、2次元位置検出部321が、X線画像における処置具の特徴(輝度値や形状の特徴)を用いて、処置具の特徴部位、例えば処置具先端、の位置を検出する(S2)。次いで、画像選択部31が複数のX線画像から選択した撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを決定し、パラメータ算出部322が、2以上のX線画像の組み合わせについて、各X線画像を取得したときの撮像位置(X線の照射角度)とX線画像における処置具の位置とを用いて、処置具の3次元位置算出用のパラメータを算出する(S3)。パラメータは、例えば、2以上のX線画像について、X線画像における処置具の位置とX線の照射角度で決まる直線を設定し、それぞれの直線間の距離が最短と各直線上の位置をもとに設定する。この場合、最短距離となる直線上の位置或いは最短距離自体がパラメータとなる。
【0025】
パラメータ比較部323は、複数の組み合わせのパラメータを比較し、組み合わせ内で処置具位置算出の精度が最も高くなる組み合わせを選択する(S4)。パラメータが複数の直線間の最短距離であれば、パラメータが最も小さいものを最も精度が高い組み合わせとして選択する。3次元位置算出部324は、精度が最も高い組み合わせのパラメータを用いて、処置具の3次元位置を算出する(S5)。例えば、直線距離が最も高くなる直線状の位置の中点を3次元位置とする。その後、算出した3次元位置を、予め取得した被検体の3次元画像にマッピングして表示してもよい(S6)。3次元画像は、X線画像のほか他のモダリティで得た画像でもよく、被検体との位置決め法は、例えば被検体の解剖学的構造を利用して3次元画像から作成した計算投影像とX線画像との位置合わせ補正などを含む公知のマッピング手法を採用することができる。
【0026】
本実施形態のX線撮像装置によれば、3次元位置を算出するために複数の撮像位置で撮像を行い且つ各位置で1回ないし複数回(撮像位置が2の場合には、2回以上)の撮像を行って複数のX線画像を得て、これら複数のX線画像から、撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを複数用いて、処置具の3次元位置を算出するためのパラメータを算出し比較し、最適な組み合わせを選択する。これにより、2以上のX線画像から3次元位置を算出する際に、体動の時相が同じであるか最も近い画像の組み合わせを用いることができ、体動の影響を抑制して、高い精度で処置具の3次元位置を算出することができる。
【0027】
以下、撮像手法及び2以上の画像の組み合わせ手法の異なる実施形態を説明する。
【0028】
<実施形態1>
本実施形態は、少なくとも2つの異なる位置で、それぞれ複数回の撮像を行い、得られた複数のX線画像を用いて処置具の3次元位置を算出する。以下の説明では、X線照射角度が異なる2つの撮像位置で、それぞれN(Nは2以上の整数)回の撮像を行う場合を例に説明する。
【0029】
本実施形態のX線撮像装置の構成の概要は、図1に示す構成と同様であるが、撮像制御部20は、2つの撮像位置と各撮像位置における撮像回数を設定し、その情報に基づき駆動部21を制御する。撮像位置と撮像回数は、デフォルトで所定の位置(例えばX線源11がベッド13の真上にある位置及び30度移動した位置など)及び回数を設定していてもよいし、撮像制御20が入力デバイス等を介してユーザー指定を受け付けてもよい。
【0030】
2つの撮像位置は、互いのX線照射角度の角度差が、30度以上であることが好ましく、それにより3次元位置の精度が向上する。また各撮像位置における撮像回数は、撮像の回数は特に限定されないが、体動の影響を排除するために、例えば呼吸動の一周期(3~4秒)程度の間、撮像を繰り返すことが好ましい。2つの位置における撮像回数は、同じでも異なっていてもよい。ここでは、同数である場合を例に説明する。
【0031】
データ処理部30の画像選択部31は、2つの撮像位置でそれぞれ得たN枚のX線画像のうち、撮像位置が異なる2つの画像を一つの組み合わせとして選択し、組み合わせられるX線画像を異ならせて、複数の組み合わせを選択し処置具位置算出部32に渡す。
【0032】
処置具位置算出部32は、図5に示すように、X線画像において処置具の特徴部分を抽出し、その位置を検出する特徴抽出部321Aを備えている。さらにマップ作成部を有していてもよい。特徴抽出部321Aは、図1の2次元位置検出部321に相当する機能を有するものであり、本実施形態では、X線画像における処置具の形状的特徴を抽出することで処置具先端の位置座標を求める。
【0033】
以下、図6のフローを参照して、本実施形態の撮像手順と処置具位置算出の流れを説明する。図6において、図4と同じ処理を行うステップは同じ符号で示す。
【0034】
まず撮像部10が、ステップS11で撮像制御部20に設定された撮像手順に従い、処置具位置を検出するための撮像を開始する。具体的には、X線源11を第1の撮像位置に移動し(S12)、ここで複数回(N回)の撮像を行い、N枚のX線画像を取得する(S13)。
【0035】
次にX線源11を第1の撮像位置とは異なる位置(第2の撮像位置)に移動し、ここでも複数回(N回)の撮像を行いN枚のX線画像を取得する。X線撮像装置1が、図2に示すようなオーバーチューブ型透視装置の場合には、同図(B)に示すように、X線源11を支持する支柱151を回転させて、X線源11から照射されるX線が、被検体に対し斜めから照射される位置に移動し、撮像する。
【0036】
異なる位置でそれぞれ複数回の撮像が終了し、2×N枚のX線画像を取得したならば(S14)、特徴抽出部321Aが各X線画像における処置具の位置検出を行う(S20)。処置具の検出は、例えば、処置具に付したマーカや、処置具の先端等の特徴部位を抽出する。一般に処置具はX線の高吸収領域であるため、X線撮影画像上では人体構造物に比較して高いコントラストを有している。このようなX線撮影画像上の人体構造物を示す領域と処置具を示す領域とにおけるコントラストの差異に基づいて、高コントラスト領域を抽出することで、特徴部位を検出する。検出した特徴部分の位置をX線画像における処置具の位置とする。特徴抽出部321Aは、取得した全てのX線画像について、処置具の位置を検出する。
なお撮像と処置具位置の検出とは平行して行ってもよい。すなわち、第2の撮像位置での撮像を行っている間に取得済のX線画像について順次位置検出を行ってもよい。
【0037】
次に画像選択部31が、複数(ここでは2×N)の画像から、パラメータ算出に用いる一組のX線画像を選択する(S31)。一組のX線画像は、第1の撮像位置で撮像して得た複数のX線画像のうちの1枚と、第2の撮像位置で撮像して得た複数のX線画像のうちの1枚とを一組としたもので、最初に、各撮像位置における1回目のX線画像を組み合わせるものとする。
【0038】
次いで、パラメータ算出部322が、選択した一組のX線画像について、第1の位置で撮像したときの処置具の位置及び第2の位置で撮像したときの処置具の位置の情報を用いて、パラメータを算出する(S32)。パラメータは、一組の画像から3次元位置を算出する際の算出の精度に関わる値である。本実施形態では、組み合わせを構成する2つのX線画像について、それらX線画像における処置具の位置に相当するX線検出器パネル上の位置(3次元位置)と、その位置とX線源11とを結ぶ直線を設定し、それぞれの直線間の距離が最短となる直線上の位置をもとにパラメータを算出する。
【0039】
本実施形態におけるパラメータの算出の一例を、図7を用いて、説明する。図7において、第1の撮像位置におけるX線源11の位置をS1、第2の撮像位置における位置をS2とし、第1の撮像位置及び第2の撮像位置における検出器パネル12上の処置具の位置をそれぞれP1、P2とする。またS1とP1を結ぶ直線をL1(そのベクトルをv1)、S2とP2を結ぶ直線をL2(そのベクトルをv1)とする。検出器パネル12上の処置具の位置P1、P2は、X線源11に対する検出器パネル12の幾何的な配置、及びステップS20で検出したX線画像における処置具の位置から算出することができる。
【0040】
X線源11と処置具位置とを結ぶ二つの直線L1、L2は、理想的には、処置具(の特徴部位)が存在する実空間上の一点で交わる。しかし実際には、装置誤差や測定誤差のほかに被検体の体動などに起因して、一点で交わらない「ねじれ」の関係となる。図7の右側は、直線L1、L2がねじれの関係にある状態を示している。パラメータ算出部322は、処置具に最も近い位置を算出するため、まず2つの直線が最短距離となる直線上の位置を算出する。この位置Q1、Q2は、X線源の位置S1、S2及び直線L1、L2のベクトルv1(=S1-P1)、v2(=S2-P2)を用いて、次式(1-1)、(1-2)で算出することができる。
【0041】
【数1】
【0042】
パラメータ算出部322は、直線L1、L2が最短距離となる直線上の位置Q1、Q2が算出されたならば、これらQ1、Q2を結ぶ線分(ベクトル)uを求め、これをパラメータとする。
【0043】
画像選択部31が、ステップS11~S14で取得した複数のX線画像から、別の組み合わせ(撮像位置が異なる一組のX線画像)を選択し(S33、S31)、パラメータ算出部322は、新たに選択した組み合わせについて、上述と同様にパラメータを算出する(S32)。画像選択部31が、複数のX線画像から順次一組のX線画像を選択する手法の一例を図8に示す。図8の(a)は第1の撮像位置で取得したN枚のX線画像群1、(b)は第2の撮像位置で取得したN枚のX線画像群2であり、それぞれ、取得順に沿って並べた状態である。画像選択部31は、まず、(a)(b)のX線画像群1、X線画像群2から同じn枚目(n=1~Nのいずれか)のX線画像どうしを組み合わせて、パラメータ算出部322に渡す。次に、(c)に示すように、n枚目と(n-1)枚目のX線画像を組み合わせて(X線画像群1の1枚目については、X線画像群2のN枚目と組み合わせて)、パラメータ算出部322に渡す。以降、同様にして、X線画像群1の画像と組み合わせるX線画像群2の画像をずらしながら、組み合わせを変更し、パラメータ算出部322は、各組み合わせについてパラメータを算出する。最終的に、N×Nの組み合わせについてパラメータが得られる。
【0044】
全ての組み合わせについてパラメータが算出されたならば、パラメータ比較部323は、これらパラメータ(ここでは2直線間の最短距離u)を比較し、最短距離が最も短い組み合わせを選択する(S4)。図7を用いて説明したように、理想的には2つの直線L1、L2は処置具の位置で交差し、Q1-Q2が近いほど2つの画像間での処置具位置の一致度が高く、3次元位置算出の精度が高いと言える。
【0045】
3次元位置算出部324は、パラメータ比較部323が選択したX線画像の組み合わせを用いて、次式(2)により処置具の3次元位置を算出する。すなわち、Q1とQ2の中点を処置具の3次元位置とする(S5)。
【0046】
[数2]
Q=(Q1+Q2)/2
【0047】
データ処理部30が、マッピング部33を備える場合には、算出した3次元位置を予め取得した被検体の3次元画像にマッピングし、表示装置に表示させる(S6)。
【0048】
このように本実施形態によれば、複数の2次元画像の組み合わせについて、それぞれ、処置具の3次元位置に関するパラメータを算出し、最適なパラメータとなる組み合わせを用いて3次元位置を算出することにより、異なる撮像位置にX線源を移動する間や各撮像位置で撮像を繰り返す間に体動などがあっても、体動時相が同じか最も近いときに取得したと推定される画像どうしから3次元位置を算出するので、体動の影響を受けずに精度よく処置具の3次元位置を算出することができる。また体動の影響を排除するために、体動モニターからの外部信号を不要とし、術中撮像などを行う際のシステム構成を簡易にすることができる。
【0049】
なお以上説明した実施形態1では、2つの撮像位置でそれぞれ取得した複数のX線画像を総当たり的に組み合わせる場合を説明したが、複数の組み合わせについてパラメータを算出すればよいので、組み合わせの仕方や数はこの例に限定されない。
【0050】
また実施形態1では、2つの異なる撮像位置で撮像し、撮像位置の異なる2つのX線画像を組み合わせてパラメータを算出したが、3以上の撮像位置で撮像し、3以上のX線画像を組み合わせてパラメータを算出することも可能である。この場合は、例えば、それぞれの撮像位置で決まるX線源と処置具位置とを結ぶ直線(複数の直線)の2直線間が最短距離となる位置Q1~Qm(mは3以上の整数)を算出し、これら位置Q1~Qmで画定される多角形等図形の面積や外周長をパラメータとしてもよい。処置具の3次元位置は、パラメータが面積であれば、パラメータが最小となる組み合わせの面積の重心位置とする。
【0051】
<実施形態2>
実施形態1では、2以上の撮像位置でそれぞれ複数回の撮像を行ったが、本実施形態は撮像位置(照射角度)を所定ピッチで変更しながら、1回ずつ撮像を行い、得られた複数のX線画像を用いて処置具の3次元位置を算出する。
【0052】
本実施形態のデータ処理部30及び処置具位置算出部32の構成は、実施形態1と同様であるが、画像選択部31は、角度が異なる複数のX線画像を周期性が含むように複数の群に分割し,少なくとも2つの画像群に含まれるX線画像から、パラメータを算出する画像の組み合わせを選択する。
【0053】
以下、図9及び図10を参照して、実施形態1とは異なる点を中心に本実施形態のX線撮像装置の動作を説明する。図9は、本実施形態における処置具位置算出のフローを示す。図9において図6と同じ処理のステップは同じ符号で示し、重複する説明は省略する。
【0054】
まず撮像部10が、撮像制御部20に設定された撮像手順に従い、処置具位置を検出するための撮像を開始する。本実施形態では、X線源11を初期位置から所定の撮像位置まで順次に移動しながら(S101)、各角度(各撮像位置)で1回のX線照射を行って、M枚のX線画像を取得する(S102、S103)。1回の撮像と次の撮像との間の角度差(θ)は特に限定されないが、大きいほうが好ましく、例えば1~数度とする。
【0055】
特徴抽出部321は、取得したX線画像のそれぞれについて、X線画像における処置具の位置を検出する(S2)。位置検出手法は実施形態1と同様であり処置具の特徴部分の形状をもとに特徴部分を抽出し、位置を検出する。
【0056】
次いで画像選択部31が、取得したX線画像から、撮像位置の異なる2以上のX線画像の組み合わせを選択し、パラメータ算出部322が、その組み合わせについて3次元位置算出用のパラメータを算出する。この際、2以上のX線画像の組み合わせは、互いの角度が一定の角度差、好ましくは30度以上の角度差となる組み合わせとする。このため、画像選択部31は、図10に示すように、撮像で得られた複数枚(M枚)のX線画像を、撮像位置(撮像したときの角度)によって群に分け(S301)、これら群の中から一定以上の角度差となる画像の組み合わせを選択する(S302)。図10に示す例では、X線画像を初期位置からの角度差が小さい画像から順に、1つの群に含まれる画像数をnとして、1~k(kは2以上の整数)までのk個の群に分けて、群内の最大角度と群内の最小角度が一定以上となる2つの群を選択する。ここでは1番目とk番目の群(X線画像群1とX線画像群k)を選択し、X線画像群1のn枚のX線画像が、それぞれ、X線画像群k番目のn枚のX線画像と組み合わせられるように、順次組み合わせを選択する。例えばX線画像群1の角度範囲が0~10度、X線画像群kの角度範囲が40~50度とすると、これら群から選択したX画像のすべての組み合わせで角度差が30度以上となる。
【0057】
また図10に示すX線画像群2~4の角度範囲が、それぞれ、10~20、20~30、30~40であるとすると、X線画像群1とX線画像群3との組み合わせやX線画像群2とX線画像群4との組み合わせで、群内の撮像順番が同じ画像を組み合わせた場合にも、一定の角度差以上の組み合わせとなるので、これら組み合わせを上述したX線画像群1とX線画像群kとの組み合わせに加えてもよい。これにより体動の全周期のX線画像をパラメータ算出と比較に含ませることができる。
【0058】
さらに、図11に示すように、所定の角度範囲で取得した1~MのX線画像を、初期撮像位置に対し所定の角度差(例えば30度以上)となる撮像位置で2分割して、1~mのX線画像群A、m+1~MのX線画像群Bとし、X線画像群Aの1番目の画像とX線画像群Bのm+1~MまでのX線画像を順次組み合わせ、X線画像群Aの2番目の画像とX線画像群Bのm+2~MまでのX線画像を順次組み合わせ、同様にX線画像群Aのj番目(但し、j≦m、且つ、m+j≦M)の画像とm+j~MまでのX線画像を順次組み合わせて、複数の組み合わせとしてもよい。
【0059】
各組み合わせについてのパラメータの算出手法は、実施形態1と同様であり、組み合わせを構成するX線画像における処置具位置(特徴部分の位置)と、X線画像を取得したときのX線源11の位置(角度)とで決まる直線から算出する(S303)。パラメータは、例えば、2直線が最短距離となる直線上の位置(図7、Q1、Q2)を結ぶ線分の長さである。
【0060】
最終的に、図10の例ではn×nの組み合わせ、図10の変形例では、n×n+2nの組み合わせについてパラメータを算出する(S304)。
【0061】
パラメータ算出後の処理は実施形態1と同様であり、パラメータ比較部323がすべての組み合わせについて算出されたパラメータを比較し、パラメータ(線分の距離)が最も小さくなるパラメータを持つ組み合わせを選択する(S4)。3次元位置算出部324は、選択した組み合わせの2点(Q1、Q2)の位置の中点を処置具の三次元位置として算出する(S5)。処置具の3次元位置は、必要に応じて、3次元画像上にマッピングされ、表示部40に表示される(S6)。
【0062】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、被検体の体動の影響を受けずに、精度よく処置具の3次元位置を算出することができる。
【0063】
また本実施形態においても、2画像の組み合わせだけでなく、複数に分割した3以上の撮像領域(角度範囲)のうち3以上の撮像領域のX線画像を組み合わせて、パラメータを算出することも可能である。
【0064】
<実施形態3>
実施形態1、2では、複数の組み合わせについて算出したパラメータを比較し、最適な結果が得られる組み合わせを選択したが、本実施形態ではパラメータについて予め閾値を設定し、閾値との比較結果に応じて、その後の位置算出を行うか否かを判断する。
【0065】
撮像の途中、例えば第1の撮像位置での撮像と第2の撮像位置での撮像との間で、被検体の周期動以外の位置変化があった場合、パラメータの算出に用いる2直線或いは複数の直線間の最短距離は不可逆的に変化する。その場合、パラメータに基づく3次元位置の算出の精度は大幅に下がる。本実施形態では、閾値を用いることで、このような周期動以外の位置変化があったか否かを判定し、パラメータを用いた3次元位置算出の実施・不実施を決定する。
【0066】
図12に本実施形態の処置具位置算出部32の構成を示す。本実施形態では、図5に示す構成に判定部325が追加される。またパラメータ比較部323には、パラメータどうしを比較する機能に加えて、パラメータを閾値と比較する機能(比較部としての機能)が追加される。図5の要素と同じ符号で示すその他の要素は、図5と同様の機能を持つ。パラメータ比較部323がパラメータの比較に用いる閾値は、例えば、ユーザーが望む3次元位置の精度等を考慮して、データ処理部30として機能する計算機に設定してもよいし、デフォルトとして設定しメモリ等に格納しておいてもよい。
【0067】
次に本実施形態のX線撮像装置における処置具位置算出の手順を、図13のフローを参照して説明する。
【0068】
実施形態1或いは実施形態2の撮像手法により撮像を行い、複数枚のX線画像を取得し(S1)、各X線画像について、特徴抽出により処置具位置を検出し(S2)、撮像手法に応じて、撮像位置が異なる2以上のX線画像の組み合わせを順次選択し、そのパラメータを算出する(S3)。
【0069】
パラメータ比較部323は、算出されたパラメータと閾値とを比較し(S41)、閾値以内のパラメータのみをその後の処理に用いるパラメータとする。すべてのパラメータと閾値を比較した結果、すべてのパラメータが閾値を超える場合には(S42)、判定部35は、撮像中に非可逆的な被検体の位置変化があったものとみなし(S43)、以後の処理は行わず、再撮像を行うか、撮像を停止する(S44)。閾値以下のパラメータが存在する場合には、その中で最小のパラメータとなる組み合わせを選択し、処置具の3次元位置を算出する(S4、S5)。なお図13では、すべてのパラメータが閾値を超える場合を示したが、一部のパラメータに閾値を超えるものがあるときに、位置変化があったとみなす構成とすることも可能である。
【0070】
本実施形態によれば、被検体の周期動以外の位置変化があった場合に、処置具位置の算出精度が低下することを防止することができる。
【0071】
以上、本発明のX線撮像装置の実施形態を説明したが、この実施形態において挙げた数値等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではない。また実施形態の手法は、技術的に矛盾がない限り、適宜組み合わせることが可能である。例えば、実施形態1は、複数の箇所でそれぞれ複数回の撮像を行う場合を、実施形態2では、所定の角度範囲で1回ずつ撮像を行う場合を説明したが、パラメータを算出するX線画像の組み合わせが、撮像場所の異なるものの組み合わせであって、複数の組み合わせが時間的な変化を含むような組み合わせとなるように複数のX線画像を取得できればよく、所定の角度範囲で2回ずつ撮像するなど、実施形態1と実施形態2との中間的な手法も採用でき、このような手法も本発明に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1、1A、1B:X線撮像装置、10:撮像部、11:X線源、12:X線検出器(検出器パネル)、13:寝台、14:支持台、15:支持機構部、16:支柱、18:Cアーム、20:装置制御部(撮像制御部)、21:駆動部、22:データ収集部、30:データ処理部、31:画像選択部、32:処置具位置算出部、321:特徴抽出部、322:パラメータ算出部、323:パラメータ比較部、324:3次元位置算出部、325:判定部、40:表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13