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特許7565875硬化性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 18/10 20060101AFI20241004BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08F18/10
C08F2/44 A
C08F2/46
C08F290/06
C08F290/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021098716
(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190405
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】千坂 博樹
(72)【発明者】
【氏名】河津 信介
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109762(JP,A)
【文献】特開2021-031669(JP,A)
【文献】特開2017-214465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 18/10
C08F 2/44
C08F 2/46
C08F 290/06
C08F 290/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物であって、
前記光重合性モノマー(A)が、下記式(a1):
【化1】
(式中、R は、単結合、又はメチレン基を表し、は、単結合、メチレン基、又はエチレン基を表し、Rは、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数2以上4以下のアルケニル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、又はヒドロキシ基を表し、nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記R 、及び前記R は、単結合を表し、前記R は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数2以上4以下のアルケニル基を表し、前記nは、0を表す、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記金属酸化物ナノ粒子(B)の表面が、エチレン性不飽和二重結合含有基で修飾されている、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤(C)が、フォスフィンオキサイド系化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
光線波長550nmにおいて測定される屈折率が1.60以上である、請求項に記載の硬化物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物を成形することと、
成形された前記硬化性組成物に対して露光することと、
を含む硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学部材の形成に、高屈折率材料が用いられている。高屈折材料として、例えば、酸化チタンや酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を有機成分中に分散させた組成物が用いられている。
このような高屈折材料を形成するための組成物として、特定の粒子径の金属酸化物(A)と、(メタ)アクリレート(B)と、光重合開始剤(C)とを含有するエネルギー線硬化性組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-214465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来の硬化性組成物を硬化させて得た高屈折材料は、反射率が高くなりやすく、ディスプレイ等に用いた場合、視認性が低下しやすい。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、高い屈折率を有しつつ、反射率の上昇は抑制された硬化物を形成可能である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物に、光重合性モノマー(A)として、特定の構造を有する化合物を含有させることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
本発明の第1の態様は、光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物であって、
光重合性モノマー(A)が、下記式(a1):
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基を表し、nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含む、硬化性組成物である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る硬化性組成物の硬化物である。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係る硬化性組成物を成形することと、
成形された硬化性組成物に対して露光することと、
を含む硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い屈折率を有しつつ、反射率の上昇は抑制された硬化物を形成可能である硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物と、前述の硬化性組成物を用いる硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<硬化性組成物>
硬化性組成物は、光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む。光重合性モノマー(A)は、上記式(a1)で表される化合物を含む。 光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物に、光重合性モノマー(A)として、上記式(a1)で表される化合物を含有させることにより、高い屈折率を有しつつ、反射率の上昇は抑制された硬化物を形成可能である硬化性組成物を得ることができる。
【0012】
本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの双方を意味する。本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの双方を意味する。本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「アクリル系モノマー」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を有するモノマーを意味する。
【0013】
硬化性組成物は溶媒(S)を含んでいてもよい。硬化物を形成する際の、溶媒(S)による硬化物の強度低下の抑制の観点等から、硬化性組成物が溶媒(S)を少量しか含まないか、硬化性組成物が溶媒(S)を含まないのが好ましい。
硬化性組成物の溶媒(S)の含有量は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が最も好ましい。硬化性組成物における溶媒(S)の含有量の下限値は特になく、0質量%以上が好ましい。
硬化性組成物は、溶媒(S)を実質的に含まないのが最もとりわけ好ましい。硬化性組成物が溶媒(S)を実質的に含まないとは、原料等に付随してごく少量の溶媒(S)が不可避的に硬化性組成物に持ち込まれる他、硬化性組成物に意図的に溶媒(S)が加えられていないことをいう。硬化性組成物が溶媒(S)を実質的に含まない場合の、硬化性組成物の溶媒(S)の含有量は、特に限定されず、例えば、0.2質量%以下であり、0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更により好ましい。
【0014】
硬化性組成物の粘度は、特に限定されず、25℃にて、E型粘度計を用いて測定される粘度として70cP以下が好ましく、60cP以下がより好ましく、50cP以下が更により好ましい。硬化性組成物の粘度は、例えば、可塑剤(D)の含有量を調整したり、光重合性モノマー(A)や金属化合物粒子(B)の含有量を調整したり、硬化性組成物に少量の溶媒(S)を加えたりすること等によって調整することができる。
【0015】
以下、硬化性組成物が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0016】
〔光重合性モノマー(A)〕
硬化性組成物は、光重合性モノマー(A)を含む。光重合性モノマー(A)は、下記式(a1):
【化2】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、単結合又はアルキレン基を表し、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基を表し、nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含む。その結果、高い屈折率を有しつつ、反射率の上昇は抑制された硬化物を形成可能である。上記式(a1)で表される化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記式(a1)中、R及びRとしてのアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素原子数1以上6以下のアルキレン基が挙げられ、反射率上昇の抑制等の観点から、炭素原子数1以上4以下のアルキレン基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数1又は2のアルキレン基が更により好ましい。R及びRは、同一でも異なっていてもよい。反射率上昇の抑制等の観点から、R及びRは、単結合であることが好ましい。
【0018】
上記式(a1)中、Rとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等の炭素原子数1以上12以下のアルキル基が挙げられ、反射率上昇の抑制等の観点から、炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が更により好ましい。
【0019】
上記式(a1)中、Rとしてのアルケニル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、ビニル基、イソプロペニル基、アリル基等の炭素原子数2以上12以下のアルケニル基が挙げられ、反射率上昇の抑制等の観点から、炭素原子数2以上8以下のアルケニル基が好ましく、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基がより好ましく、炭素原子数2以上4以下のアルケニル基が更により好ましい。
【0020】
上記式(a1)中、Rとしてのアルコキシ基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1以上12以下のアルコキシ基が挙げられ、反射率上昇の抑制等の観点から、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が更により好ましい。
【0021】
反射率上昇の抑制等の観点から、Rは、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ビニル基、又はイソプロペニル基であることが特に好ましい。
【0022】
反射率上昇の抑制等の観点から、nは0を表すことが好ましい。
【0023】
上記式(a1)で表される化合物の具体例は、以下の通りであるが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【0024】
光重合性モノマー(A)は、上記式(a1)で表される化合物に加えて、アクリル系モノマーを含んでもよい。アクリル系モノマーとしては、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル系モノマー(A1)(以下、「3官能以上アクリル系モノマー(A1)」ともいう。)、2個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル系モノマー(以下、「2官能アクリル系モノマー(A2)」ともいう。)、及び1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能アクリル系モノマー(以下、「単官能アクリル系モノマー(A3)」ともいう。)が挙げられる。なお、以下、3官能以上アクリル系モノマー(A1)及び2官能アクリル系モノマー(A2)を「多官能アクリル系モノマー」と総称する場合がある。
【0025】
光重合性モノマー(A)の質量に対する、アクリル系モノマーの質量の比率は、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更により好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0026】
なお、光重合性モノマー(A)の質量に対する、上記式(a1)で表される化合物の質量の比率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更により好ましく、75質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば100質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更により好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0027】
光重合性モノマー(A)は、特に、3官能以上アクリル系モノマー(A1)を含むと、金属酸化物ナノ粒子(B)の局在が抑制された硬化物を形成可能である。透明性の高い硬化物を得やすい点や、硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在を抑制しやすい点で、3官能以上アクリル系モノマー(A1)は、芳香族基を含まない脂肪族化合物であるのが好ましい。硬化性組成物の硬化性や、硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在の抑制の点で、3官能以上アクリル系モノマー(A1)が有する(メタ)アクリロイル基の数は、3以上6以下が好ましい。
【0028】
3官能以上アクリル系モノマー(A1)の好適な具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等が挙げられる。
【0029】
また、3官能以上アクリル系モノマー(A1)は、下記式(a2)で表される化合物、又は下記式(a3)で表される化合物を含むのが好ましい。
【化4】
(MA-(O-Ra1na1-X-CH-CH-X-(Ra1-O)na1-MA・・・(a3)
(式(a2)及び式(a3)中、MAは、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイル基であり、Xは、それぞれ独立に、酸素原子、-NH-、又は-N(CH)-であり、Ra1は、それぞれ独立に、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、又はプロパン-1,3-ジイル基であり、Ra2は、水酸基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は-X-(Ra1-O)na1-MAで表される基であり(Xは前記と同様であり)、na1、及びna2は、それぞれ独立に、0又は1である。)
【0030】
式(a2)において、Ra2としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらのアルキル基の中では、メチル基、及びエチル基が好ましい。
【0031】
式(a2)で表される化合物及び式(a3)で表される化合物の好ましい例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及び下記の1)~32)の化合物が挙げられる。下記1)~32)の化合物においてMAは(メタ)アクリロイル基である。
1)(MA-NH-CH-C
2)(MA-N(CH)-CH-C
3)(MA-O-CHCHCH-O-CH-C
4)(MA-O-CHCH-O-CH-C
5)(MA-O-CHCHCH-NH-CH-C
6)(MA-O-CHCH-NH-CH-C
7)(MA-O-CHCHCH-N(CH)-CH-C
8)(MA-O-CHCH-N(CH)-CH-C
9)(MA-NH-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-NH-MA)
10)(MA-N(CH)-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-N(CH)-MA)
11)(MA-O-CHCHCH-O-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-O-CHCHCH-O-MA)
12)(MA-O-CHCH-O-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-O-CHCH-O-MA)
13)(MA-O-CHCHCH-NH-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-NH-CHCHCH-O-MA)
14)(MA-O-CHCH-NH-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-NH-CHCH-O-MA)
15)(MA-O-CHCHCH-N(CH)-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-N(CH)-CHCHCH-O-MA)
16)(MA-O-CHCH-N(CH)-CH-C-CH-O-CH-C-(CH-N(CH)-CHCH-O-MA)
17)(MA-NH-CH-CH-NH-MA
18)(MA-N(CH)-CH-CH-N(CH)-MA
19)(MA-O-CHCHCH-O-CH-CH-O-CHCHCH-O-MA
20)(MA-O-CHCH-O-CH-CH-C-O-CHCH-O-MA
21)(MA-O-CHCHCH-NH-CH-CH-NH-CHCHCH-O-MA
22)(MA-O-CHCH-NH-CH-CH-NH-CHCH-O-MA
23)(MA-O-CHCHCH-N(CH)-CH-CH-N(CH)-CHCHCH-O-MA
24)(MA-O-CHCH-N(CH)-CH-CH-N(CH)-CHCH-O-MA
25)(MA-NH-CH-C-CHCH
26)(MA-N(CH)-CH-C-CHCH
27)(MA-O-CHCHCH-O-CH-C-CHCH
28)(MA-O-CHCH-O-CH-C-CHCH
29)(MA-O-CHCHCH-NH-CH-C-CHCH
30)(MA-O-CHCH-NH-CH-C-CHCH
31)(MA-O-CHCHCH-N(CH)-CH-C-CHCH
32)(MA-O-CHCH-N(CH)-CH-C-CHCH
【0032】
硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在の抑制の点で、光重合性モノマー(A)の質量に対する、3官能以上アクリル系モノマー(A1)の質量の比率は、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更により好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0033】
2官能アクリル系モノマー(A2)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物)、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル等が挙げられる。
【0034】
高屈折率の硬化物を形成しやすい点から、アクリル系モノマーは、下記式(a4)で表される化合物を2官能アクリル系モノマー(A2)として含むのが好ましい。
【化5】
式(a4)中、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。p、及びqはそれぞれ独立に0又は1である。
【0035】
、及びRは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基である。R、及びRは、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。式(a4)で表される化合物の合成や入手が容易であることから、R、及びRが同一であるのが好ましい。
【0036】
、及びRは、それぞれ独立に炭素原子数1以上5以下のアルキル基である。R、及びRは、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。式(a4)で表される化合物の合成や入手が容易であることから、R、及びRが同一であるのが好ましい。
【0037】
、及びRとしての炭素原子数1以上5以下のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R、及びRとしての炭素原子数1以上5以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基が挙げられる。
【0038】
式(a4)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化6】
【0039】
光重合性モノマー(A)が、2官能アクリル系モノマー(A2)を含む場合、光重合性モノマー(A)の質量に対する、2官能アクリル系モノマー(A2)の質量の比率は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。光重合性モノマー(A)の質量に対する、2官能アクリル系モノマー(A2)の質量の比率は、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更により好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
光重合性モノマー(A)が、式(a4)で表される化合物を2官能アクリル系モノマー(A2)として含む場合、光重合性モノマー(A)の質量に対する式(a4)で表される化合物の質量の比率は、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更により好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0040】
単官能アクリル系モノマー(A3)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能アクリル系モノマー(A3)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
硬化性組成物の粘度を下げつつ、高屈折率の硬化物を形成しやすい点から、アクリル系モノマーは、単官能アクリル系モノマー(A3)として、下記式(a5)で表される化合物を含んでいることが好ましい。
【化7】
式(a5)中、R10は、水素原子又はメチル基である。R11は、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基である。R12は、単結合、酸素原子、又は硫黄原子である。R13は炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、又はフェニル基である。sは0以上5以下の整数である。tは、0、1又は2である。
【0042】
式(a5)において、tが2である場合、複数のR11は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。tが2である場合、複数のR12は、同一であっても異なっていてもよく、同一であるのが好ましい。
【0043】
11は炭素原子数1以上3以下のアルキレン基である。アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、及びプロパン-2,2-ジイル基が挙げられる。これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)、プロパン-1,3-ジイル基、及びプロパン-1,2-ジイル基が好ましく、エタン-1,2-ジイル基(エチレン基)がより好ましい。
【0044】
12は、単結合、酸素原子、又は硫黄原子であり、単結合が好ましい。R12が単結合である場合、tは1が好ましい。
【0045】
13は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、フェノキシ基、又はフェニル基であり、低粘度化の点で好ましくはアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。これらの中では、メトキシ基、及びエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
sは、0以上5以下の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0046】
式(a5)で表される化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化8】
【0047】
光重合性モノマー(A)が単官能アクリル系モノマー(A3)を含む場合、光重合性モノマー(A)の質量に対する、単官能アクリル系モノマー(A3)の質量の比率は、所望する効果が損なわれない範囲で特に限定されない。光重合性モノマー(A)の質量に対する、単官能アクリル系モノマー(A3)の質量の比率は、0質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更により好ましく、15質量%以上が特に好ましい。上記比率の上限は、例えば、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更により好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0048】
硬化性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対する、光重合性モノマー(A)の質量の比率は、20質量%以上90質量%以下が好ましく、40質量%以上75質量%以下がより好ましく、45質量%以上70質量%以下が更に好ましい。
【0049】
〔金属酸化物ナノ粒子(B)〕
硬化性組成物は、金属酸化物ナノ粒子(B)を含む。金属酸化物ナノ粒子を構成する金属酸化物の種類は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。金属酸化物ナノ粒子(B)の好ましい例としては、酸化ジルコニウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、チタン酸バリウムナノ粒子、及び酸化セリウムナノ粒子からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。硬化性組成物は、これらの金属酸化物ナノ粒子(B)のうちの1種を単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
硬化性組成物が、上記の金属酸化物ナノ粒子(B)を含むことにより高屈折率を示す硬化物を形成できる。
【0050】
金属酸化物ナノ粒子(B)の平均粒子径は、硬化物の透明性の点から、500nm以下が好ましく、2nm以上100nm以下がより好ましい。
【0051】
金属酸化物ナノ粒子(B)の表面は、修飾されていなくてもよいし、エチレン性不飽和二重結合含有基で修飾されていてもよい。
金属酸化物ナノ粒子(B)の表面がエチレン性不飽和二重結合含有基で修飾されている場合、硬化物を形成する際に、光重合性モノマー(A)が金属酸化物ナノ粒子(B)とともに重合しつつ、金属酸化物ナノ粒子(B)が光重合性モノマー(A)の重合体からなるマトリックス中に固定されやすい。これにより金属酸化物ナノ粒子(B)の凝集が起こりにくくなるため、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面がエチレン性不飽和二重結合含有基で修飾されていると、硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在を特に抑制しやすい。
【0052】
例えば、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面に、エチレン性不飽和二重結合を含むキャッピング剤を作用させることにより、共有結合等の化学結合を介してその表面が、エチレン性不飽和二重結合含有基で修飾された金属酸化物ナノ粒子(B)が得られる。
【0053】
金属酸化物ナノ粒子(B)の表面に、エチレン性不飽和二重結合を含むキャッピング剤を、共有結合等の化学結合を介して結合させる方法は特に限定されない。金属酸化物ナノ粒子(B)の表面には通常、水酸基が存在している。かかる水酸基とキャッピング剤が有する反応性基とを反応させることにより、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面にキャッピング剤が共有結合する。
キャッピング剤が有する反応性基の好ましい例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシリル基等のトリアルコキシシリル基;ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基等のジアルコキシシリル基;モノメトキシシリル基、モノエトキシシリル基等のモノアルコキシシリル基;トリクロロシリル基等のトリハロシリル基;ジクロロシリル基等のジハロシリル基;モノクロロシリル基等のモノハロシリル基;カルボキシ基;クロロカルボニル基等のハロカルボニル基;水酸基;ホスホノ基(-P(=O)(OH));ホスフェート基(-O-P(=O)(OH))が挙げられる。
【0054】
トリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基、トリハロシリル基、ジハロシリル基、及びモノハロシリル基は、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面とシロキサン結合を形成する。
カルボキシ基、及びハロカルボニル基は、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面と、(金属酸化物-O-CO-)で表される結合を形成する。
水酸基は、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面と、(金属酸化物-O-)で表される結合を形成する。
ホスホノ基、及びホスフェート基は、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面と、(金属酸化物-O-P(=O)<)で表される結合を形成する。
【0055】
キャッピング剤において、上記の反応性基に結合する基としては、水素原子と、種々の有機基が挙げられる。有機基は、O、N、S、P、B、Si、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
上記の反応性基に結合する基としては、例えば、直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、酸素原子(-O-)で中断されていてもよいアルキル基、直鎖状でも分岐鎖状であってもよく、酸素原子(-O-)で中断されていてもよいアルケニル基、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、酸素原子(-O-)で中断されていてもよいアルキニル基、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、及び複素環基等が挙げられる。
これらの基は、ハロゲン原子、グリシジル基等のエポキシ基含有基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、及びイソシアネート基等の置換基で置換されていてもよい。また、置換基の数は特に限定されない。
【0056】
また、上記の反応性基に結合する基としては、-(SiRb1b2-O-)-(SiRb3b4-O-)-Rb5で表される基も好ましい。Rb1、Rb2、Rb3、及びRb4は、それぞれ、同一であっても異なっていてもよい有機基である。有機基の好適な例としては、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基等の芳香族炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基等のエポキシ基含有基;(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。
上記式中Rb5としては、例えば、-Si(CH、-Si(CHH、-Si(CH(CH=CH)、及び-Si(CH(CHCHCHCH)等の末端基が挙げられる。
上記式中のr及びsは、それぞれ独立に0以上60以下の整数である。上記式中のr及びsは双方が0であることはない。
【0057】
キャッピング剤の好適な具体例としては、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン,1-ヘキセニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の不飽和基含有アルコキシシラン;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、及び3-アリルオキシプロパノール等の不飽和基含有アルコール類;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸クロライド等の(メタ)アクリル酸ハライド等が挙げられる。
【0058】
金属酸化物ナノ粒子(B)の表面に、キャッピング剤を共有結合等の化学結合を介して結合させる際のキャッピング剤の使用量は特に限定されない。好ましくは、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面の水酸基のほぼ全てと反応するのに十分な量のキャッピング剤が使用される。
【0059】
硬化性組成物中の金属酸化物ナノ粒子(B)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物中の金属酸化物ナノ粒子(B)の含有量は、硬化性組成物の溶媒(S)の質量を除いた質量に対して、5質量%以上70質量%以下が好ましく、20質量%以上55質量%以下がより好ましく、25質量%以上50質量%以下が更により好ましい。
硬化性組成物中の金属酸化物ナノ粒子(B)の含有量が上記の範囲内であることにより、硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在を抑制しつつ、高屈折率の硬化物を形成しやすい。
なお、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面がエチレン性不飽和二重結合含有基で修飾されている場合、金属酸化物ナノ粒子(B)の表面に存在するエチレン性不飽和二重結合含有基を有するキャッピング剤の質量を、金属酸化物ナノ粒子(B)の質量に含める。
【0060】
〔光重合開始剤(C)〕
光重合開始剤(C)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0061】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1-オクタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(C)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
光重合開始剤(C)の中では、硬化性組成物の感度の点で、オキシムエステル化合物が好ましい。
オキシムエステル化合物としては、下記式(c1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0063】
【化9】
(式(c1)中、
n1は、0、又は1であり、
c2は、一価の有機基であり、
c3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、
*は結合手である。)
【0064】
式(c1)で表される部分構造を有する化合物は、カルバゾール骨格、フルオレン骨格、ジフェニルエーテル骨格や、フェニルスルフィド骨格を有することが好ましい。
式(c1)で表される部分構造を有する化合物は、式(c1)で表される部分構造を1つ又は2つ有することが好ましい。
【0065】
式(c1)で表される部分構造を有する化合物としては、下記式(c2)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化10】
(式(c2)中、Rc1は、下記式(c3)、(c4)、又は(c5)で表される基であり、
n1は、0、又は1であり、
c2は、一価の有機基であり、
c3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。)
【0067】
【化11】
(式(c3)中、Rc4及びRc5は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
n2は、0以上3以下の整数であり、
n2が2又は3の場合、複数のRc5は同一でも異なっていてもよく、複数のRc5は互いに結合して環を形成してもよい。
*は結合手である。)
【0068】
【化12】
(式(c4)中、Rc6及びRc7は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子であり、
c6とRc7とは互いに結合して環を形成してもよく、
c7とフルオレン骨格中のベンゼン環とが互いに結合して環を形成してもよく、
c8は、ニトロ基、又は1価の有機基、であり、
n3は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
【0069】
【化13】
(式(c5)中、Rc9は、1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基であり、
Aは、S又はOであり、
n4は、0以上4以下の整数であり、
*は結合手である。)
【0070】
式(c3)中、Rc4は、1価の有機基である。Rc4は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c4の好適な例としては、炭素原子数1以上20以下の置換基を有してもよいアルキル基、炭素原子数3以上20以下の置換基を有してもよいシクロアルキル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよい飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
【0071】
c4の中では、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましい。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。式(c3)で表される化合物の硬化性組成物中での溶解性が良好である点から、Rc4としてのアルキル基の炭素原子数は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上が特に好ましい。また、硬化性組成物中での、式(c3)で表される化合物と、他の成分との相溶性が良好である点から、Rc4としてのアルキルの基の炭素原子数は、15以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0072】
c4が置換基を有する場合、当該置換基の好適な例としては、水酸基、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシル基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシルオキシ基、フェノキシ基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基、-PO(OR)で表される基(Rは炭素原子数1以上6以下のアルキル基)、ハロゲン原子、シアノ基、ヘテロシクリル基等が挙げられる。
【0073】
c4が、ヘテロシクリル基である場合、当該ヘテロシクリル基は、脂肪族複素環基であっても、芳香族複素環基であってもよい。Rc4がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
c4がヘテロシクリル基である場合、当該ヘテロシクリル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0074】
以上説明したRc4の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ペンタン-3-イル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
また、硬化性組成物中での式(c3)で表される化合物の溶解性が良好である点から、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
【0075】
式(c3)中、Rc5は、1価の有機基である。Rc5は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c5として好適な1価の有機基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、1、2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基(ただし、Xは、各々独立に、ハロゲン原子である)等が挙げられる。
【0076】
c5がアルキル基である場合、アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc5がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc5がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc5がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0077】
c5がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。また、Rc5がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rc5がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc5がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0078】
c5がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、シクロアルキル基又はシクロアルコキシ基の炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。Rc5がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rc5がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0079】
c5が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、2以上21以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc5が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n-ブタノイル基、2-メチルプロパノイル基、n-ペンタノイル基、2,2-ジメチルプロパノイル基、n-ヘキサノイル基、n-ヘプタノイル基、n-オクタノイル基、n-ノナノイル基、n-デカノイル基、n-ウンデカノイル基、n-ドデカノイル基、n-トリデカノイル基、n-テトラデカノイル基、n-ペンタデカノイル基、及びn-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rc5が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n-ブタノイルオキシ基、2-メチルプロパノイルオキシ基、n-ペンタノイルオキシ基、2,2-ジメチルプロパノイルオキシ基、n-ヘキサノイルオキシ基、n-ヘプタノイルオキシ基、n-オクタノイルオキシ基、n-ノナノイルオキシ基、n-デカノイルオキシ基、n-ウンデカノイルオキシ基、n-ドデカノイルオキシ基、n-トリデカノイルオキシ基、n-テトラデカノイルオキシ基、n-ペンタデカノイルオキシ基、及びn-ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0080】
c5がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2以上20以下が好ましく、2以上7以下がより好ましい。Rc5がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec-ペンチルオキシカルボニル基、tert-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec-オクチルオキシカルボニル基、tert-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0081】
c5がフェニルアルキル基である場合、フェニルアルキル基の炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上10以下がより好ましい。また、Rc5がナフチルアルキル基である場合、ナフチルアルキル基の炭素原子数は、11以上20以下が好ましく、11以上14以下がより好ましい。Rc5がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。Rc5がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。Rc5が、フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基である場合、Rc5は、フェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0082】
c5がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、式(c3)中のRc4がヘテロシクリル基である場合と同様であり、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
c5がヘテロシクリルカルボニル基である場合、ヘテロシクリルカルボニル基に含まれるヘテロシクリル基は、Rc5がヘテロシクリル基である場合と同様である。
【0083】
c5が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素原子数2以上21以下の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上20以下のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素原子数11以上20以下のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rc5と同様である。1、又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、n-ヘプチルアミノ基、n-オクチルアミノ基、n-ノニルアミノ基、n-デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n-ブタノイルアミノ基、n-ペンタノイルアミノ基、n-ヘキサノイルアミノ基、n-ヘプタノイルアミノ基、n-オクタノイルアミノ基、n-デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α-ナフトイルアミノ基、及びβ-ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
【0084】
c5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基(例えば、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基)、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、ベンゾイル基、ハロゲン、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、1以上4以下が好ましい。Rc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0085】
c5に含まれる、ベンゾイル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、2-テノイル基(チオフェン-2-イルカルボニル基)、フラン-3-イルカルボニル基及びフェニル基等が挙げられる。
【0086】
Xで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0087】
HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基を有する基等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、又はHXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基であることがより好ましい。
【0088】
HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基を有する基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されている芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されているシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基で置換されている芳香族基であることが好ましい。
【0089】
HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基を有する基としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されている芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されているアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等)、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されているシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)等が挙げられ、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基で置換されている芳香族基であることが好ましい。
【0090】
また、Rc5としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、Rc5に含まれるフェニル基が有していてもよい置換基と同様である。
【0091】
1価の有機基の中でも、Rc5としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素原子数1以上20以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上8以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。置換基を有していてもよいフェニル基の中では、メチルフェニル基が好ましく、2-メチルフェニル基がより好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上10以下が好ましく、5以上8以下がより好ましく、5又は6が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。シクロアルキルアルキル基の中では、シクロペンチルエチル基が好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数は、1以上8以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、2が特に好ましい。芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基の中では、2-(4-クロロフェニルチオ)エチル基が好ましい。
【0092】
式(c3)で表される基において、Rc5が複数存在し、複数のRc5が互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、炭化水素環や、複素環等が挙げられる。複素環に含まれるヘテロ原子としては、例えば、N、OやSが挙げられる。複数のRc5が互いに結合して形成する環としては、特に芳香族環が好ましい。かかる芳香族環は、芳香族炭化水素環であっても、芳香族複素環であってもよい。かかる芳香族環としては、芳香族炭化水素環が好ましい。式(c3)において、複数のRc5が互いに結合してベンゼン環を形成した場合の具体例を、以下に示す。
【0093】
【化14】
【0094】
式(c4)で表される基において、Rc8は、ニトロ基又は1価の有機基である。Rc8は、式(c4)中の縮合環上で、-(CO)n1-で表される基に結合する芳香環とは異なる6員芳香環に、結合する。式(c4)中、Rc8の結合位置は特に限定されない。式(c4)で表される基が1以上のRc8を有する場合、式(c4)で表される化合物の合成が容易であること等から、1以上のRc8のうちの1つが、フルオレン骨格の7位の位置に結合することが好ましい。すなわち、式(c4)で表される基が1以上のRc8を有する場合、式(c4)で表される基は、下記式(c6)で示されることが好ましい。Rc8が複数の場合、複数のRc8は同一であっても異なっていてもよい。
【0095】
【化15】
(式(c6)中、Rc6、Rc7、Rc8、n3は、それぞれ式(c4)におけるRc6、Rc7、Rc8、n3と同様である。)
【0096】
c8が1価の有機基である場合、Rc8は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c8が1価の有機基である場合の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基の好適な例と同様の基が挙げられる。
【0097】
式(c4)中、Rc6及びRc7は、それぞれ、置換基を有してもよい鎖状アルキル基、置換基を有してもよい鎖状アルコキシ基、置換基を有してもよい環状有機基、又は水素原子である。Rc6及びRc7とは相互に結合して環を形成してもよい。これらの基の中では、Rc6及びRc7として、置換基を有してもよい鎖状アルキル基が好ましい。Rc6及びRc7が置換基を有してもよい鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基は直鎖アルキル基でも分岐鎖アルキル基でもよい。
【0098】
c6及びRc7が置換基を持たない鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rc6及びRc7がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0099】
c6及びRc7が置換基を有する鎖状アルキル基である場合、鎖状アルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。この場合、置換基の炭素原子数は、鎖状アルキル基の炭素原子数に含まれない。置換基を有する鎖状アルキル基は、直鎖状であるのが好ましい。
【0100】
アルキル基が有してもよい置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。置換基の好適な例としては、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、及びアルコキシカルボニル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。環状有機基としては、シクロアルキル基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。シクロアルキル基の具体例としては、Rc8がシクロアルキル基である場合の好適な例と同様である。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。ヘテロシクリル基の具体例としては、Rc8がヘテロシクリル基である場合の好適な例と同様である。Rc8がアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシカルボニル基に含まれるアルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0101】
鎖状アルキル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。好ましい置換基の数は鎖状アルキル基の炭素原子数に応じて変わる。置換基の数は、典型的には、1以上20以下であり、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。
【0102】
c6及びRc7が置換基を持たない鎖状アルコキシ基である場合、鎖状アルコキシ基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上6以下が特に好ましい。Rc6及びRc7が鎖状アルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec-オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rc6及びRc7がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0103】
c6及びRc7が置換基を有する鎖状アルコキシ基である場合に、アルコキシ基が有してもよい置換基は、Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0104】
c6及びRc7が環状有機基である場合、環状有機基は、脂環式基であっても、芳香族基であってもよい。環状有機基としては、脂肪族環状炭化水素基、芳香族炭化水素基、ヘテロシクリル基が挙げられる。Rc6及びRc7が環状有機基である場合に、環状有機基が有してもよい置換基は、Rc6及びRc7が鎖状アルキル基である場合と同様である。
【0105】
c6及びRc7が芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基は、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が炭素-炭素結合を介して結合して形成される基であるか、複数のベンゼン環が縮合して形成される基であるのが好ましい。芳香族炭化水素基が、フェニル基であるか、複数のベンゼン環が結合又は縮合して形成される基である場合、芳香族炭化水素基に含まれるベンゼン環の環数は特に限定されず、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1が特に好ましい。芳香族炭化水素基の好ましい具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0106】
c6及びRc7が脂肪族環状炭化水素基である場合、脂肪族環状炭化水素基は、単環式であっても多環式であってもよい。脂肪族環状炭化水素基の炭素原子数は特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。単環式の環状炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0107】
c6及びRc7がヘテロシクリル基である場合、式(c3)中のRc5としてのヘテロシクリル基と同様の基が挙げられる。
【0108】
c6及びRc7とは相互に結合して環を形成してもよい。Rc6及びRc7が形成する環からなる基は、シクロアルキリデン基であるのが好ましい。Rc6及びRc7が結合してシクロアルキリデン基を形成する場合、シクロアルキリデン基を構成する環は、5員環~6員環であるのが好ましく、5員環であるのがより好ましい。
【0109】
c7とフルオレン骨格のベンゼン環と環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。
【0110】
c6及びRc7が結合して形成する基がシクロアルキリデン基である場合、シクロアルキリデン基は、1以上の他の環と縮合していてもよい。シクロアルキリデン基と縮合していてもよい環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、及びピリミジン環等が挙げられる。
【0111】
以上説明したRc6及びRc7の中でも好適な基の例としては、式-A-Aで表される基が挙げられる。式中、Aは直鎖アルキレン基であり、Aは、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、環状有機基、又はアルコキシカルボニル基である挙げられる。
【0112】
の直鎖アルキレン基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。Aがアルコキシ基である場合、アルコキシ基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。Aがハロゲン原子である場合、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。Aがハロゲン化アルキル基である場合、ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましい。ハロゲン化アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aが環状有機基である場合、環状有機基の例は、Rc6及びRc7が置換基として有する環状有機基と同様である。Aがアルコキシカルボニル基である場合、アルコキシカルボニル基の例は、Rc6及びRc7が置換基として有するアルコキシカルボニル基と同様である。
【0113】
c6及びRc7の好適な具体例としては、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基等のアルキル基;2-メトキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、5-メトキシ-n-ペンチル基、6-メトキシ-n-ヘキシル基、7-メトキシ-n-ヘプチル基、8-メトキシ-n-オクチル基、2-エトキシエチル基、3-エトキシ-n-プロピル基、4-エトキシ-n-ブチル基、5-エトキシ-n-ペンチル基、6-エトキシ-n-ヘキシル基、7-エトキシ-n-ヘプチル基、及び8-エトキシ-n-オクチル基等のアルコキシアルキル基;2-シアノエチル基、3-シアノ-n-プロピル基、4-シアノ-n-ブチル基、5-シアノ-n-ペンチル基、6-シアノ-n-ヘキシル基、7-シアノ-n-ヘプチル基、及び8-シアノ-n-オクチル基等のシアノアルキル基;2-フェニルエチル基、3-フェニル-n-プロピル基、4-フェニル-n-ブチル基、5-フェニル-n-ペンチル基、6-フェニル-n-ヘキシル基、7-フェニル-n-ヘプチル基、及び8-フェニル-n-オクチル基等のフェニルアルキル基;2-シクロヘキシルエチル基、3-シクロヘキシル-n-プロピル基、4-シクロヘキシル-n-ブチル基、5-シクロヘキシル-n-ペンチル基、6-シクロヘキシル-n-ヘキシル基、7-シクロヘキシル-n-ヘプチル基、8-シクロヘキシル-n-オクチル基、2-シクロペンチルエチル基、3-シクロペンチル-n-プロピル基、4-シクロペンチル-n-ブチル基、5-シクロペンチル-n-ペンチル基、6-シクロペンチル-n-ヘキシル基、7-シクロペンチル-n-ヘプチル基、及び8-シクロペンチル-n-オクチル基等のシクロアルキルアルキル基;2-メトキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、4-メトキシカルボニル-n-ブチル基、5-メトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-メトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-メトキシカルボニル-n-ヘプチル基、8-メトキシカルボニル-n-オクチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、4-エトキシカルボニル-n-ブチル基、5-エトキシカルボニル-n-ペンチル基、6-エトキシカルボニル-n-ヘキシル基、7-エトキシカルボニル-n-ヘプチル基、及び8-エトキシカルボニル-n-オクチル基等のアルコキシカルボニルアルキル基;2-クロロエチル基、3-クロロ-n-プロピル基、4-クロロ-n-ブチル基、5-クロロ-n-ペンチル基、6-クロロ-n-ヘキシル基、7-クロロ-n-ヘプチル基、8-クロロ-n-オクチル基、2-ブロモエチル基、3-ブロモ-n-プロピル基、4-ブロモ-n-ブチル基、5-ブロモ-n-ペンチル基、6-ブロモ-n-ヘキシル基、7-ブロモ-n-ヘプチル基、8-ブロモ-n-オクチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0114】
c6及びRc7として、上記の中でも好適な基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、2-メトキシエチル基、2-シアノエチル基、2-フェニルエチル基、2-シクロヘキシルエチル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-n-ペンチル基である。
【0115】
式(c5)中、感度に優れる光重合開始剤を得やすい点から、AはSであることが特に好ましい。
【0116】
式(c5)中、Rc9は、1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基、又はシアノ基である。
式(c5)におけるRc9が1価の有機基である場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
式(c5)においてRc9が有機基である場合の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基と同様の基が挙げられる。
【0117】
c9の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素原子数1以上6以下のアルキル基、モルホリン-1-イル基、ピペラジン-1-イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基;置換基を有していてもよいベンゾフラニルカルボニル基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2-メチルフェニルカルボニル基;4-(ピペラジン-1-イル)フェニルカルボニル基;4-(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
【0118】
また、式(c5)において、n4は、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。n4が1である場合、Rc9の結合する位置は、Rc9が結合するフェニル基が酸素原子又は硫黄原子と結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
【0119】
式(c1)及び(c2)中、Rc2としての1価の有機基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
c2としての1価の有機基の好適な例としては、式(c3)中のRc5としての1価の有機基と同様の基が挙げられる。これらの基の具体例は、式(c3)中のRc5について説明した基と同様である。
また、Rc2としてはシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェノキシアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基、も好ましい。フェノキシアルキル基、及びフェニルチオアルキル基が有していてもよい置換基は、式(c3)中のRc5に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基と同様である。
【0120】
有機基の中でも、Rc2としては、上記HXC-又はHXC-で表される基を含む置換基、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はシクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基が好ましい。アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、シクロアルキルアルキル基に含まれるシクロアルキル基の炭素原子数、シクロアルキルアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数、シクロアルキルアルキル基、芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基に含まれるアルキレン基の炭素原子数、又は芳香環上に置換基を有していてもよいフェニルチオアルキル基については、式(c3)のRc5と同様である。
【0121】
また、Rc2としては、-A-CO-O-Aで表される基も好ましい。Aは、2価の有機基であり、2価の炭化水素基であるのが好ましく、アルキレン基であるのが好ましい。Aは、1価の有機基であり、1価の炭化水素基であるのが好ましい。
【0122】
がアルキレン基である場合、アルキレン基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、直鎖状が好ましい。Aがアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上6以下がより好ましく、1以上4以下が特に好ましい。
【0123】
の好適な例としては、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、炭素原子数7以上20以下のアラルキル基、及び炭素原子数6以上20以下の芳香族炭化水素基が挙げられる。Aの好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、及びβ-ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0124】
-A-CO-O-Aで表される基の好適な具体例としては、2-メトキシカルボニルエチル基、2-エトキシカルボニルエチル基、2-n-プロピルオキシカルボニルエチル基、2-n-ブチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ペンチルオキシカルボニルエチル基、2-n-ヘキシルオキシカルボニルエチル基、2-ベンジルオキシカルボニルエチル基、2-フェノキシカルボニルエチル基、3-メトキシカルボニル-n-プロピル基、3-エトキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ブチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ペンチルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-n-ヘキシルオキシカルボニル-n-プロピル基、3-ベンジルオキシカルボニル-n-プロピル基、及び3-フェノキシカルボニル-n-プロピル基等が挙げられる。
【0125】
また、Rc2としては、下記式(c7)又は(c8)で表される基も好ましい。
【化16】
(式(c7)及び(c8)中、Rc10及びRc11は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、
n5は0以上4以下の整数であり、
c10及びRc11がベンゼン環上の隣接する位置に存在する場合、Rc10とRc11とが互いに結合して環を形成してもよく、
c12は、1価の有機基であり、
n6は1以下8以下の整数であり、
n7は1以上5以下の整数であり、
n8は0以上(n7+3)以下の整数である。)
【0126】
式(c7)中のRc10及びRc11としての有機基は、式(c4)中のRc8と同様である。Rc10としては、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルコキシ基、HXC-又はHXC-で表される基を含むハロゲン化アルキル基、アルキル基又はフェニル基が好ましい。Rc10とRc11とが結合して環を形成する場合、当該環は、芳香族環でもよく、脂肪族環でもよい。式(c7)で表される基であって、Rc10とRc11とが環を形成している基の好適な例としては、ナフタレン-1-イル基や、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基等が挙げられる。
上記式(c7)中、n7は0以上4以下の整数であり、0又は1であるのが好ましく、0であるのがより好ましい。
【0127】
上記式(c8)中、Rc12は有機基である。有機基としては、式(c4)中のRc8について説明した有機基と同様の基が挙げられる。有機基の中では、アルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。アルキル基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上3以下が特に好ましい。Rc12としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基であることがより好ましい。
【0128】
上記式(c8)中、n7は1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。上記式(c8)中、n8は0以上(n7+3)以下であり、0以上3以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0が特に好ましい。
上記式(c8)中、n8は1以上8以下の整数であり、1以上5以下の整数が好ましく、1以上3以下の整数がより好ましく、1又は2が特に好ましい。
【0129】
式(c2)中、Rc3は、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有してもよいアリール基である。Rc3が脂肪族炭化水素基である場合に有してもよい置換基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましく例示される。
【0130】
式(c1)及び(c2)中、Rc3としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2-シクロペンチルエチル基、2-シクロブチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ナフチル基等が好ましく例示され、これらの中でも、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0131】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c3)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化17】
【0132】
【化18】
【0133】
【化19】
【0134】
【化20】
【0135】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c4)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化21】
【0136】
【化22】
【0137】
【化23】
【0138】
【化24】
【0139】
【化25】
【0140】
式(c2)で表され、且つRc1として式(c5)で表される基を有する化合物の好適な具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【化26】
【0141】
光重合開始剤(C)としては、硬化性組成物の深部硬化性が良好である点から、フォスフィンオキサイド化合物も好ましい。フォスフィンオキサイド化合物としては、下記式(c9)で表される部分構造を含むフォスフィンオキサイド化合物が好ましい。
【化27】
式(c9)中、Rc21及びRc22は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、炭素原子数2以上20以下の脂肪族アシル基、又は炭素原子数7以上20以下の芳香族アシル基である。ただし、Rc21及びRc22の双方が脂肪族アシル基又は芳香族アシル基ではない。
【0142】
c21及びRc22としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上12以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましい。Rc21及びRc22としてのアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2,4,4,-トリメチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、及びn-ドデシル基が挙げられる。
【0143】
c21及びRc22としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、5以上12以下が好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、及びシクロドデシル基が挙げられる。
【0144】
c21及びRc22としてのアリール基の炭素原子数は、6以上12以下が好ましい。アリール基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基等が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0145】
c21及びRc22としての脂肪族アシル基の炭素原子数は、2以上20以下であり、2以上12以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、2以上6以下が更に好ましい。脂肪族アシル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
脂肪族アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、及びイコサノイル基が挙げられる。
【0146】
c21及びRc22としての芳香族アシル基の炭素原子数は、7以上20以下である。芳香族アシル基は置換基を有してもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基等が挙げられる。芳香族アシル基の具体例としては、ベンゾイル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,6-ジメチルベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、2,4,6-トリメチルベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基が挙げられる。
【0147】
式(c9)で表される構造部分を含むフォスフィンオキサイド化合物の好ましい具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0148】
光重合開始剤(C)の含有量は、後述する有機溶剤(S)の質量を除いた硬化性組成物の質量(固形分全体)に対して0.5質量%以上30質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。光重合開始剤(C)の含有量を上記の範囲とすることにより、硬化性が良好である硬化性組成物を得ることができる。
【0149】
光重合開始剤(C)に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3-メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0150】
〔可塑剤(D)〕
硬化性組成物は、可塑剤(D)を含んでいてもよい。可塑剤(D)は、硬化性組成物の硬化性や、硬化物の屈折率を大きく損なうことなく、硬化性組成物を低粘度化させる成分である。
【0151】
可塑剤(D)としては、下記式(d-1)で表される化合物が好ましい。
d1-Rd3 -X-Rd4 -Rd2・・・(d-1)
(式(d-1)中、Rd1及びRd2は、それぞれ独立に、1以上5以下の置換基を有してもよいフェニル基であり、前記置換基が、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択され、Rd3及びRd4は、それぞれ独立にメチレン基又はエタン-1,2-ジイル基であり、r及びsは、それぞれ独立に0又は1であり、Xは、酸素原子又は硫黄原子である。)
【0152】
硬化性組成物がかかる可塑剤(D)を含むことにより、硬化性組成物の硬化性や、硬化物の屈折率を大きく損なうことなく、硬化性組成物が低粘度化される。
硬化性組成物の低粘度化の観点で、可塑剤(D)の、25℃においてE型粘度計により測定される粘度は、10cP以下が好ましく、8cP以下がより好ましく、6cP以下が更により好ましい。
また、可塑剤(D)が揮発しにくく、硬化性組成物の低粘度化の効果を維持しやすい点から、可塑剤(D)の大気圧下での沸点が250℃以上であるのが好ましく、260℃以上であるのがより好ましい。可塑剤(D)の大気圧下での沸点の上限は特に限定されないが、例えば、300℃以下でよく、350℃以下でもよい。
【0153】
式(d-1)におけるRd1及びRd2は、それぞれ独立に、1以上5以下の置換基を有してもよいフェニル基である。フェニル基に結合する置換基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される基である。フェニル基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は、1以上5以下であり、1又は2が好ましく、1が好ましい。硬化性組成物の低粘度化の観点からは、Rd1及びRd2がいずれも無置換のフェニル基であるのが好ましい。
【0154】
置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が挙げられる。置換基としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基が挙げられる。置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
【0155】
式(d-1)におけるRd3及びRd4は、それぞれ独立にメチレン基又はエタン-1,2-ジイル基である。また、r及びsは、それぞれ独立に0又は1である。
式(d-1)におけるXは、酸素原子又は硫黄原子である。
【0156】
以上説明した式(d-1)で表される化合物の好ましい具体例としては、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、ジベンジルエーテル、ジベンジルスルフィド、ジフェネチルエーテル、及びジフェネチルスルフィドが挙げられる。これらの中では、ジフェニルスルフィド及び/又はジベンジルエーテルがより好ましい。
【0157】
硬化性組成物における可塑剤(D)の含有量は、硬化性組成物全体の質量に対して、粘度調整と金属酸化物ナノ粒子(B)の分散性との両立の点で、0質量%超35質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0158】
〔含窒素化合物(E)〕
硬化物における金属酸化物ナノ粒子(B)の局在を更に抑制しやすくする目的で、硬化性組成物は、下記式(e1)で表されるアミン化合物(E1)、及び/又は下記式(e2)で表されるイミン化合物(E2)を、含窒素化合物(E)として含んでいてもよい。
NRe1e2e3・・・(e1)
(式(e1)中、Re1、Re2、及びRe3は、それぞれ独立に水素原子、又は有機基である。)
e4-N=CRe5e6・・・(e2)
(式(e2)中、Re4、Re5、及びRde6は、それぞれ独立に水素原子、又は有機基である。)
【0159】
式(e1)、及び式(e2)において、Re1、Re2、Re3、Re4、Re5、及びRde6が有機基である場合、当該有機基は、所望する効果が損なわれない範囲で、種々の有機基から選択できる。有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
有機基の好適な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基等が挙げられる。
【0160】
有機基としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。アルキル基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
【0161】
有機基としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、3以上10以下が好ましく、3以上6以下がより好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。
【0162】
有機基としてのフェニルアルキル基の炭素原子数は、7以上20以下が好ましく、7以上10以下がより好ましい。また、有機基としてのナフチルアルキル基の炭素原子数は、11以上20以下が好ましく、11以上14以下がより好ましい。フェニルアルキル基の具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。ナフチルアルキル基の具体例としては、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-(α-ナフチル)エチル基、及び2-(β-ナフチル)エチル基が挙げられる。フェニルアルキル基、又はナフチルアルキル基は、フェニル基、又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
【0163】
有機基としてのヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、式(c3)中のRc4がヘテロシクリル基である場合と同様であり、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
【0164】
有機基としてのヘテロシクリル基は、脂肪族複素環基であっても、芳香族複素環基であってもよい。ヘテロシクリル基は、1以上のN、S、Oを含む5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基であるのが好ましい。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、キノキサリン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0165】
上記の有機基中に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が置換基を有する場合の置換基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1以上6以下のハロゲン化アルコキシ基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシル基、炭素原子数2以上7以下のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2以上7以下の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、ベンゾイル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
有機基中に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が置換基を有する場合、その置換基の数は、特に限定されず、1以上4以下が好ましい。有機基中に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0166】
式(e1)中、Re1、Re2、及びRe3は、それぞれ独立に水素原子、又は有機基であり、Re1、Re2、及びRe3の少なくとも1つが芳香族基含有基である。
また、式(e2)中、Re4、Re5、及びRde6は、それぞれ独立に水素原子、又は有機基であり、Re4、Re5、及びRde6の少なくとも1つが芳香族基含有基である。
芳香族基含有基中の芳香環は、芳香族炭化水素環でも、芳香族複素環でもよい。芳香族基含有基としては、炭化水素基が好ましい。芳香族基含有基としては、芳香族炭化水素基(アリール基)、及びアラルキル基が好ましい。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、及びナフタレン-2-イル基が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の中では、フェニル基が好ましい。
アラルキル基としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、及び4-フェニルブチル基が挙げられる。
【0167】
式(e1)において、Re1、Re2、及びRe3の少なくとも1つがAre1-CH-で表される基であるのが好ましい。また、式(d2)において、Re4がAre1-CH-で表される基であるのが好ましい。Are1は、置換基を有してもよい芳香族基である。
Are1としての芳香族基は、芳香族炭化水素基でも、芳香族複素環基でもよい。Are1としての芳香族基としては、芳香族炭化水素基が好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフタレン-1-イル基、及びナフタレン-2-イル基が挙げられる。これらの芳香族炭化水素基の中では、フェニル基が好ましい。
Are1としての芳香族基が有してもよい置換基は、Re1、Re2、Re3、Re4、Re5、及びRde6としての有機基がフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基である場合に、これらの基が有してもよい置換基と同様である。
【0168】
式(e1)で表されるアミン化合物の好適な具体例としては、トリフェニルアミン、N,N-ジフェニルベンジルアミン、N-フェニルジベンジルアミン、トリベンジアルミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N-メチルジフェニルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N-メチルジベンジルアミン、N-メチル-N-ベンジルフェニルアミン、N,N-ジエチルフェニルアミン、N-エチルジフェニルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N-エチルジベンジルアミン、及びN-エチル-N-ベンジルフェニルアミンが挙げられる。
【0169】
式(e2)で表されるイミン化合物の好適な具体例としては、N-ベンジルフェニルメタンイミン、N-ベンジルジフェニルメタンイミン、N-ベンジル-1-フェニルエタンイミン、及びN-ベンジルプロパン-2-イミンが挙げられる。
【0170】
硬化性組成物における含窒素化合物の含有量は、所望する効果が損なわれない限り特に限定されない。含窒素化合物(E)の含有量は、光重合性モノマー(A)の質量に対して、5質量%以上25質量%以下が好ましく、7質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0171】
〔溶媒(S)〕
硬化性組成物は、硬化性組成物の質量に対して5質量%以下の溶媒(S)を含んでいてもよい。溶媒(S)の種類は特に限定されないが、典型的には有機溶媒である。
【0172】
硬化性組成物に配合され得る有機溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0173】
〔その他の成分〕
硬化性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、以上説明した成分の他に、従来から感光性組成物やインク組成物に配合されている種々の添加剤を含んでいてもよい。硬化性組成物に配合される好ましい添加剤としては、分散剤、シランカップリング剤等の密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されず、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等の公知の成分を用いることができる。
【0174】
〔硬化性組成物の製造方法〕
以上説明した成分を、それぞれ所定量混合したのち、混合物を均一に撹拌することにより硬化性組成物が得られる。
【0175】
<硬化物の製造方法>
以上説明した硬化性組成物は、典型的には、
硬化性組成物を、好ましくは、形成される硬化物の形状に応じて、成形することと、
成形された硬化性組成物に対して露光することと、
を含む方法によって、硬化物とされる。
【0176】
上記の方法により製造される硬化物は、例えば、波長550nmにおける屈折率として、好ましくは1.60以上、より好ましくは1.61以上、更により好ましくは1.62以上の、特に好ましくは1.63以上の高屈折率を示す。一方、上記の方法により製造される硬化物は、例えば、波長380~780nmの全域において、反射率が、好ましくは2.5%未満、より好ましくは2.0%未満である。このため、上記の方法により製造される硬化物は、高屈折率とともに反射率上昇の抑制が要求される光学用途において好適に使用される。
【0177】
例えば、前述の硬化性組成物の硬化物からなる膜は、有機ELディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネル等の種々のディスプレイパネルにおいて反射防止膜等を構成する高屈折率膜として好適に使用される。
【0178】
前述の硬化性組成物の硬化物からなる高屈折率膜の膜厚は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。高屈折率膜の膜厚は、典型的には、1nm以上40μm以下が好ましく50nm以上30μm以下がより好ましい。
【0179】
硬化性組成物を成形する方法は特に限定されず、硬化物の形状に応じて適宜選択される。硬化物の形状としては、これらに限定されないが、膜形状、レンズ形状、ライン形状、プリズム形状等が挙げられる。これらの形状の中では、膜形状が好ましい。
硬化性組成物を成形する方法としては、特に限定されない。硬化物の形状がレンズ形状やプリズム形状等である場合には、硬化物の形状に応じた鋳型中に硬化性組成物をスキージ等を用いて充填してもよい。
硬化物の形状がライン形状等である場合、硬化物の形状に応じて、基材上に硬化性組成物を塗布すればよい。塗布方法としては、例えば、インクジェット法等の印刷法が挙げられる。
硬化物を膜形状に塗布する方法としては、ロールコータ、リバースコータ、バーコータ等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコータ等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、インクジェット法等の印刷法によって硬化性組成物を膜形状に塗布することもできる。
【0180】
硬化性組成物が溶媒(S)を含む場合、硬化性組成物を所望する形状に成形した後、加熱等の方法によって成形された硬化性組成物から溶媒(S)を除去してもよい。
【0181】
なお、例えば、膜形状等の所望する形状に成形された硬化性組成物に対して、硬化性組成物が完全に硬化しない程度の露光を行った後に、インプリント法等の方法によって半硬化状態の硬化性組成物に対して賦形してもよい。この場合、賦形された半硬化状態の硬化性組成物に対して、更に露光が行われ、硬化性組成物を所望する程度まで十分に硬化させる。
また、前述の硬化性組成物を、3Dプリンティング法に適用して、インクジェット印刷と、露光による硬化とを繰り返して薄膜状の硬化物を積層することにより、所望する形状の硬化物を形成してもよい。
【0182】
上記の方法により成形された硬化性組成物を硬化させるための露光方法としては、感光性組成物の硬化方法として知られている種々の方法を適宜適用できる。
成形された硬化性組成物に対する露光は、例えば、紫外線、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行われる。
【0183】
成形された硬化性組成物に対する露光は、例えば、マスクを介する露光のような方法により、位置選択的に行われてもよい。露光を位置選択的に行う場合、露光された硬化性組成物を、有機溶媒を用いて現像して未露光部を除去することで、パターン化された硬化物を形成することができる。
現像処理を行う場合、現像後に加熱による乾燥等の方法により、現像液を十分に除去するのが好ましい。
【0184】
以上説明した方法により、溶媒(S)を含まないか少量しか含まない前述の硬化性組成物を用いて、所望する形状の高屈折率を示す硬化物が形成される。
【実施例
【0185】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されない。
【0186】
〔実施例1~10並びに比較例1及び2〕
実施例及び比較例において、光重合性モノマー(A)として、下記の化合物を用いた。
【0187】
<式(a1)で表される化合物>
【化28】
【0188】
<多官能アクリル系モノマー>
A2-a:下記構造の化合物
【化29】
【0189】
<単官能モノマー>
A3-a:フェニルビニルスルホキシド
A3-b:フェニルアクリレート
【0190】
実施例及び比較例において、金属酸化物ナノ粒子(B)として、酸化ジルコニウム粒子B1(平均粒径10nm、表面修飾なし)を用いた。酸化ジルコニウム粒子B1は、特開2018-193481号公報の段落[0223]に記載された方法に沿って、遠心分離により回収されたナノ結晶を乾燥させることによって得た。
【0191】
実施例、及び比較例において、光重合開始剤(C)として、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドを用いた。
【0192】
表1に記載の種類及び量の光重合性モノマー(A)と、表1に記載の種類及び量の金属酸化物ナノ粒子(B)と、表1に記載の種類及び量の光重合開始剤(C)と、を均一に混合し、実施例1~10並びに比較例1及び2の硬化性組成物を得た。なお、上記量の単位は、質量部である。
【0193】
<Z平均粒径>
得られた硬化性組成物を5質量%以下の濃度でPGMEA中に分散させたところ、単分散性であった。得られた分散液について、Malvern Zetasizer Nano S(動的光散乱(DLS)装置)により、Z平均粒径を測定した。結果を表2に示す。なお、DLS装置で測定されるZ平均粒径は、酸化ジルコニウム粒子B1を取り囲むモノマー殻を含む粒子径である。
【0194】
<屈折率測定方法>
ガラス基板上にインクジェット装置を用いて、各実施例、比較例の硬化性組成物を塗布した。その後、395nmのUV-LED露光機を用いて、露光量2J/cmで塗布膜を露光して硬化させ、厚さ20μmの硬化膜を得た。その膜についてMetricon社製プリズムカプラを用いて光線波長550nmでの屈折率を求めた。結果を表2に示す。
【0195】
<反射率測定方法>
屈折率測定方法の場合と同様に、厚さ20μmの硬化膜を得た。その膜について、紫外可視近赤外分光光度計UH4150(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、光線波長380~780nmの範囲での反射率を求めた。下記表示を用いて、結果を表2に示す。
2.0%未満:上記範囲の全体において、反射率が2.0%未満であった。
2.5%未満:上記範囲の少なくとも一部において、反射率が2.0%以上であったが、上記範囲の全体において、反射率が2.5%未満であった。
2.5%以上:上記範囲の少なくとも一部において、反射率が2.5%以上であった。
【0196】
<総合評価>
上記測定の結果に基づき、総合評価を下記の基準によって行った。結果を表2に示す。
A:極めて良好、B:良好、C:不良
【0197】
【表1】
【0198】
【表2】
【0199】
表1及び表2によれば、光重合性モノマー(A)と、金属酸化物ナノ粒子(B)と、光重合開始剤(C)とを含む硬化性組成物に、光重合性モノマー(A)として、上記式(a1)で表される化合物を配合することにより、高い屈折率を有しつつ、反射率の上昇は抑制された硬化物を形成可能であることが分かる。