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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発光マーカー粒子
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/552 20060101AFI20241004BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20241004BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241004BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20241004BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N33/552
G01N33/532 B
C12N15/11 Z
C07K16/00
C07K14/575
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021515076
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 GB2019052511
(87)【国際公開番号】W WO2020058668
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】1815325.4
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1911365.3
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ベーレント,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】オサリバン,メラニー
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/060722(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045961(WO,A1)
【文献】特表2013-511700(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082681(WO,A1)
【文献】特表2009-508105(JP,A)
【文献】特開2007-127630(JP,A)
【文献】特開2009-216483(JP,A)
【文献】国際公開第2022/196630(WO,A1)
【文献】特開2012-242394(JP,A)
【文献】特開2009-236848(JP,A)
【文献】特開2016-194529(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146694(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203614(WO,A1)
【文献】特表2011-516885(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146938(WO,A1)
【文献】特開2017-150867(JP,A)
【文献】特表2022-502534(JP,A)
【文献】京 基樹 他2名,表面プラズモン共鳴イメージング法による抗体アレイを用いた蛋白質のラベルフリー検出,高分子学会予稿集,2005年05月,第54巻1号,第2279頁
【文献】M. -Carmen Estevez,Highly Fluorescent Dye-Doped Silica Nanoparticles Increase Flow Cytometry Sensitivity for Cancer Cell Monitoring,Nano Res,2009年,Vol.2,Page.448-461
【文献】Junlong Geng,Micelle/Silica Co-protected Conjugated Polymer Nanoparticles for Two-Photon Excited Brain Vascular Imaging,Chem. Mater.,2014年02月18日,Vol.26,Page.1874-1880
【文献】Junlong Geng,A general approach to prepare conjugated polymer dot embedded silica nanoparticles with a SiO2@CP@SiO2 structure for targeted HER2-positive cellular imaging,Nanoscale,2013年,Vol.5,Page.8593-8601
【文献】Jonathan M. Behrendt,Hybrid inorganic-organic composite nanoparticles from crosslinkable polyfluorenes,J. Mater. Chem. C,2013年,Vol.1,Page.3297-3304
【文献】Aurelien Auger,A comparative study of non-covalent encapsulation methods for organic dyes into silica nanoparticles,Nanoscale Research Letters,2011年,Vol.6,Page.328
【文献】A. van Blaaderen,Synthesis and Characterization of Colloidal Dispersions of Fluorescent, Monodisperse Silica Spheres,Langmuir,1992年,Vol.8,Page.2921-2931
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/552
G01N 33/532
C12N 15/11
C07K 16/00
C07K 14/575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子をマーキングする方法であって、シリカマトリックスを含む発光粒子コアと、前記発光粒子コアのシリカに共有結合した第1の表面基と、前記発光粒子コアのシリカに共有結合した第2の表面基とを含む発光マーカー粒子に前記生体分子を結合する工程を含み、前記発光粒子コアが前記シリカマトリックスおよび発光ポリマーを含み、前記第1の表面基が極性基を含み、前記第1の表面基が25℃の水中で前記生体分子と接触した際に前記生体分子に結合しない不活性な表面基であり、前記第2の表面基が生体分子結合基を含み、前記第2の表面基のモル数が、前記第1の表面基と前記第2の表面基の総モル数の10%未満であり、前記第1の表面基が双性イオンを含ま
前記発光ポリマーは、メタノール中で少なくとも0.1mg/mlの溶解度を有する、方法。
【請求項2】
前記極性基がポリエーテル鎖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極性基が式(I)の基であり、
-((CR1415O)
(I)
式中、R14およびR15が、それぞれ独立してHまたはC1~6アルキルであり、
bが、少なくとも1であり、cが、少なくとも2である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体分子が、DNA、RNA、ペプチド、炭水化物、抗体、抗原、酵素、タンパク質およびホルモンからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の表面基が、前記発光粒子コアと前記生体分子結合基との間に極性基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の表面基のモル数が、前記第1の表面基と前記第2の表面基の総モル数の5%以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかの実施形態では、本開示は、バイオセンサー用途でマーカーとして使用するための発光マーカー粒子、場合により発光マーカーナノ粒子を提供する。
【0002】
シリカのナノ粒子と発光材料とは、標識または検出試薬として開示されてきた。
【0003】
国際公開第2018/060722号は、シリカと極性基を有する発光ポリマーとの混合物を含む複合粒子を開示している。
【0004】
Estevez,M-C.et al.‘Highly Fluorescent Dye-Doped Silica Nanoparticles Increase Flow Cytometry Sensitivity for Cancer Cell Monitoring’ Nano.Res.2009,2,448-461は、ポリエチレングリコールにより官能化された色素ドープシリカナノ粒子を開示している。
【0005】
米国特許第2010/209946号は、水分散性基、遮蔽基および生体分子結合基により官能化されたシリカナノ粒子を開示している。
【0006】
Nanoscale,2013,vol.5,pp8593-8601,Geng et al.は、LEPがペンダント非極性アルキル側鎖を有し、ナノ粒子が「SiO@CP@SiO」構造を有するシリカ共役ポリマー(CP)ナノ粒子を記載している。
【0007】
Behrendt et al.J.Mater.Chem.,2013,vol.1,pp3297-3304は、LEPがシリカに共有結合しているシリカ-LEPナノ粒子を記載している。発光ポリマーは、ナノ粒子の形成中にシリカモノマーと反応するポリマー主鎖由来のアルコキシシラン基ペンダントを有する。
【0008】
Nanoscale Res.Lett.,2011,vol.6,p 328は、シリカマトリックスへの小分子の捕捉を開示している。
【0009】
Langmuir,1992,vol.8,pp2921-2931は、シリカ球に取り込まれるシランカップリング剤に対する色素のカップリングを開示している。
【0010】
Chem.Mater.,2014,vol.26,pp1874-1880,Geng et al.は、ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレン-alt-2,1,3-ベンゾチアジアゾール)(PFBT)担持ナノ粒子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2018/060722号
【文献】米国特許第2010/209946号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Estevez,M-C.et al.‘Highly Fluorescent Dye-Doped Silica Nanoparticles Increase Flow Cytometry Sensitivity for Cancer Cell Monitoring’ Nano.Res.2009,2,448-461
【文献】Nanoscale,2013,vol.5,pp8593-8601,Geng et al.
【文献】Behrendt et al.J.Mater.Chem.,2013,vol.1,pp3297-3304
【文献】Nanoscale Res.Lett.,2011,vol.6,p 328
【文献】Langmuir,1992,vol.8,pp2921-2931
【文献】Chem.Mater.,2014,vol.26,pp1874-1880,Geng et al.
【発明の概要】
【0013】
本明細書に開示される特定の実施形態の態様の要約を以下に記載する。これらの態様は、読者にこれらの特定の実施形態の簡単な要約を提供するために単に提示されており、これらの態様は、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。実際、本開示は、記載されていない可能性のある様々な態様および/または態様の組合せを包含し得る。
【0014】
安定であり、特に、使用中および/または保存時に凝集しないコロイドを形成するために、生体分子に結合するように構成された発光粒子が望ましい。本発明者らは、そのようなコロイドの安定性を維持することは、生物学的アッセイで一般的に使用される水溶液、例えば水性緩衝液では、特に厄介であることを見出した。
【0015】
本発明者らは、発光マーカー粒子が生体分子に結合する能力を維持しながら、生体分子結合基を有する極性表面基と生体分子結合基を有しない表面基とを有する粒子から、発光マーカーナノ粒子を含有する安定なコロイドが形成され得ることを見出した。
【0016】
したがって、いくつかの実施形態では、発光材料を含有する発光粒子コアと、発光粒子コアに結合した第1および第2の表面基とを有する発光マーカー粒子が提供される。第1の表面基は極性基を含有し、不活性である。第2の表面基は生体分子結合基を含有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1の表面基:第2の表面基のモル比は、90:10よりも大きい。
【0018】
前述の凝集の問題は、発光材料がポリマーである発光粒子では悪化する可能性がある。しかし、本発明者らは、発光ポリマーを含有する発光コアについて本明細書に記載されるような表面基を使用して、良好な安定性が達成され得ることを見出した。したがって、いくつかの実施形態では、発光材料は、発光ポリマーである。
【0019】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子コアは無機マトリックスを含有する。無機マトリックスは、無機酸化物、場合によりシリカであり得る。
【0020】
本発明者らは、生体分子結合基を有するおよび生体分子結合基を有しない表面基を有するマーカー粒子が、生体分子結合基と非生体分子結合基との比が制御され得るように形成され得ることを見出した。この比は、粒子のコロイド安定性と粒子の生体分子結合能力とのバランスをとるように選択され得る。
【0021】
したがって、いくつかの実施形態では、発光マーカー粒子を形成する方法であって、その表面に結合した複数の第1の反応性基を有する発光粒子コアが、第1および第2の反応性化合物と反応して、それぞれ第1および第2の表面基を形成するか、1つ以上の追加の反応を受けて第1および第2の表面基を形成し得る、第1および第2の表面基の前駆体を形成する方法が提供される。
【0022】
粒子は、例えば、アッセイで使用するために、液体中に分散させてもよい。
【0023】
したがって、いくつかの実施形態では、液体中に懸濁された粒子を含むコロイド懸濁液が提供される。
【0024】
粒子は、生体分子をマーキングして、例えば、生体分子を追跡または検出するために使用され得る。したがって、いくつかの実施形態では、粒子に生体分子を結合する工程を含む、生体分子をマーキングする方法が提供される。
【0025】
いくつかの実施形態では、試料と本明細書に記載の発光マーカー粒子とを接触させること、および発光マーカーに対する標的分析物の何らかの結合を決定することを含む、標的分析物のアッセイ方法が提供される。
【0026】
発光マーカー粒子と接触した試料は、フローサイトメトリーによって分析されていてもよい。
【0027】
発光マーカー粒子に結合した標的分析物の量が決定されていてもよい。
【0028】
試料は細胞の混合物を含み、発光マーカーに結合した1つの又は複数の異なるタイプの標的細胞は同定および/または定量されていてもよい。
【0029】
本開示は、添付の図と併せて説明される。業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴が縮尺通りに描かれていないことが強調される。実際、様々な特徴の寸法は、説明を明確にするために任意に増減され得る。
【0030】
添付の図では、類似の構成要素および/または特徴は、同一の参照標識を有し得る。さらに、参照標識の後にダッシュを付け、類似の構成要素を区別する第2の標識を付けることによって、同じタイプの様々な構成要素が区別され得る。本明細書中で第1の参照標識のみが使用されている場合、第2の参照標識に関係なく、同一の第1の参照標識を有する類似の構成要素のいずれか1つに説明を適用することができる。
【0031】
これより、本発明は、以下の図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】いくつかの実施形態によるナノ粒子の概略図である。
図2】いくつかの実施形態による、ナノ粒子を形成する方法の概略図である。
図3】ナノ粒子表面基の0.1.1および10mol%がビオチン結合基を含有する発光ナノ粒子に関する信号対雑音比のグラフである。
図4】緩衝液中に分散された、メトキシ末端表面基を有するナノ粒子のZ平均直径の変化率対時間のグラフである。
図5】緩衝液中に分散された、カルボキシ末端表面基を有するナノ粒子のZ平均直径の変化率対時間のグラフである。
図6】ストレプトアビジンを介して抗ヒトCD4抗体に共役している、本開示の一実施形態によるビオチン化溶解発光ポリマーマーカー、および同じ抗体に共役している比較発光ナノ粒子によって染色されたCyto-Trol細胞の染色指標チャートである。
図7図6のストレプトアビジン共役ナノ粒子、アイソタイプに共役している発光ナノ粒子、およびストレプトアビジンに共役していない発光ナノ粒子によって染色されたCyto-Trol細胞の染色指標チャートである。
図8】ニュートラアビジンを介して抗ヒトCD4抗体に共役している、本開示の一実施形態によるビオチン化ナノ粒子、および同じ抗体に共役している比較溶解発光ポリマーマーカーによって染色されたCyto-Trol細胞の染色指標チャートである。
図9図8のニュートラアビジン共役ナノ粒子、アイソタイプに共役している発光ナノ粒子、およびニュートラアビジンに共役していない発光ナノ粒子によって染色されたCyto-Trol細胞の染色指標チャートである。
図10】ストレプトアビジンを介して抗ヒトCD4抗体に共役している、本開示の実施形態による、異なる量のビオチンを有するビオチン化ナノ粒子、および同じ抗体に共役している比較溶解発光ポリマーマーカーによって染色されたCyto-Trol細胞の染色指標チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprising)などの語句は、排他的または網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「以下を含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「接続された」、「結合された」、またはそれらの任意の変形例は、2つ以上の要素間の直接または間接の任意の接続または結合を意味する。さらに、「本明細書に(herein)」、「上述の(above)」、「以下の(below)」という語句、および同様の趣旨の語句は、本出願で使用される場合、本出願全体を参照し、本出願の任意の特定の部分を参照しない。また、文脈が許す場合、「発明を実施するための形態」で単数の数または複数の数を使用する語句は、それぞれ複数の数または単数の数を含み得る。「または」という語句は、2つ以上の項目の列挙を参照して、この語句の以下のあらゆる解釈、すなわち、列挙内の項目のいずれか、列挙内のあらゆる項目、および列挙内の項目の任意の組合せを網羅する。
【0034】
本明細書で提供される技術の教示は、必ずしも以下に説明されるシステムではなく、他のシステムに適用することができる。以下に説明される様々な例の要素および作用は、本技術のさらなる実装を提供するために組み合わせることができる。本技術のいくつかの代替的な実装は、以下に記載される実装に対する追加の要素を含み得るだけでなく、さらに少ない要素を含み得る。
【0035】
以下の詳細な説明に照らして、これらおよび他の変更を本技術に加えることができる。説明は、本技術の特定の例を記載し、企図される最良の形態を記載するが、説明がどれほど詳細に現れても、本技術は多くの方法で実施することができる。システムの詳細は、本明細書に開示されている技術に包含されているが、その特定の実装ではかなり異なる場合がある。上記のように、本技術の特定の特徴または態様を説明する際に使用される特定の用語は、その用語が関連付けられている技術の任意の特定の特性、特徴または態様に制限されるように、その用語が本明細書で再定義されていることを意味すると解釈されるべきではない。一般に、添付の特許請求の範囲で使用される用語は、「発明を実施するための形態」の節がそのような用語を明示的に定義しない限り、本明細書に開示された特定の例に本技術を限定すると解釈されるべきではない。したがって、本技術の実際の範囲は、開示された例だけでなく、特許請求の範囲に基づいて本技術を実施または実装するあらゆる同等の方法も包含する。
【0036】
請求項の数を減らすために、本技術の特定の態様が特定の請求項の形式で以下に示されているが、出願人は、任意の数の請求項の形式で本技術の様々な態様を企図している。
【0037】
以下の説明では、説明の目的で、開示された技術の実装の完全な理解を提供するために、多くの特定の詳細が示されている。ただし、開示された技術の実施形態がこれらの特定の詳細のいくつかを用いず実施され得ることは当業者には明らかであろう。
【0038】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による粒子100を示している。
【0039】
発光粒子100は、発光材料を含むか、それからなるコア101を有する。コア101は、マトリックス材料、場合により無機マトリックス材料、場合により無機酸化物、場合によりシリカを含み得る。
【0040】
マトリックス材料が存在する場合、いくつかの実施形態では、発光材料は、直接または間接的に、マトリックス材料に共有結合され得る。いくつかの実施形態では、発光材料は、マトリックス材料と混合され得る(すなわち、共有結合していない)。コア101は、発光材料、好ましくは発光ポリマーを含むか、それらからなる内部コアを部分的または完全に覆うシリカシェルを含み得る。
【0041】
コア101は、マトリックス材料と混合され、マトリックス材料を貫通する1つ以上の発光ポリマー鎖を含有し得る。1つ以上の発光ポリマー鎖は、マトリックス材料によって画定されるコアの表面を越えて突出し得る。
【0042】
好ましくは、粒子は、Malvern Zetasizer Nano ZSを使用する動的光散乱(DLS)によって測定される場合、5000nm以下、さらに好ましくは2500nm以下、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下または400nm以下の数平均直径を有する。好ましくは、粒子は、Malvern Zetasizer Nano ZSによって測定される場合、5~5000nm、場合により10~1000nm、好ましくは10~500nm、最も好ましくは10~100nmの数平均直径を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、発光材料は無機物である。無機発光材料は量子ドットであってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、発光材料は有機物である。いくつかの実施形態では、有機発光材料は非ポリマーである。いくつかの実施形態では、有機発光材料は、発光ポリマーである。
【0045】
第1の表面基103および第2の表面基105は、発光粒子コアに結合している。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の表面基103および/または第2の表面基105は、発光粒子コアのマトリックス材料に共有結合していてもよい。第2の表面基105は、生体分子結合基107を含む。第1の表面基103は不活性であり、すなわち、生体分子結合基を含まない。
【0047】
第1の表面基103は、第1の極性基PG1を含む。極性基は、水とファンデルワールス結合を形成することができるヘテロ原子、場合により、アルキレン鎖の1つ以上のC原子がOまたはNR(式中、Rは、C1~12ヒドロカルビル基、場合によりC1~12アルキル基またはC1~4アルキル基である)によって置換されている直鎖状または分岐状アルキレン鎖を含み得る。
【0048】
PG1は、直鎖状または分岐状極性基であり得る。
【0049】
好ましくは、PG1はポリエーテル鎖である。本明細書で使用される「ポリエーテル鎖」とは、複数のエーテル基を含む二価鎖を意味する。
【0050】
好ましくは、PG1は、式(I)の繰返し単位を含むか、それからなり、
-((CR1415O)
(I)
式中、R14およびR15は、それぞれ独立してHまたはC1~6アルキルであり、bは、少なくとも1、場合により1~5、好ましくは2であり、cは、少なくとも2、場合により2~1,000、好ましくは10~500、10~200または10~100である。
【0051】
最も好ましくは、PG1はポリエチレングリコール鎖を含む。
【0052】
第1の極性基は、一方の末端で直接または間接的に粒子コアに結合されている。極性基と粒子コアとの間に結合基を提供して、粒子コアに極性基を結合してもよい。
【0053】
結合基は、粒子コアの表面でシリカに結合したシロキサン基と、極性基に結合した結合基BGとを含み得る。
【0054】
結合基BGは、エステル、アミド、尿素、チオ尿素、シッフ塩基、一級アミン(C-N)結合、マレイミド-チオール付加物、またはアジドおよびアルキンの環化付加によって形成されるトリアゾールから選択される基を含むか、それらからなっていてもよい。
【0055】
第1の極性基PG1は、他方の末端(二価鎖の場合)、または他の各末端(分岐状、三価またはそれ以上の鎖の場合)で末端基EGによって置換されている。末端基は、酸基またはその塩もしくはエステル、場合によりカルボン酸基、スルホン酸基もしくはホスホン酸基、またはそれらの塩もしくはエステルであってもよい。
【0056】
第1の表面基は不活性である。「不活性」とは、25℃の水中で生体分子と接触した際に、第1の表面基が生体分子に結合しないことを意味する。
【0057】
好適には、第1の表面基は、タンパク質(特に、タンパク質のアミン基)、例えば、抗体または他のタンパク質に結合しない。
【0058】
第1の極性基は多分散であり得る。第1の極性基は、少なくとも500、場合により少なくとも2000のMnを有し得る。
【0059】
第1の表面基は、マルチモーダル重量分布(multimodal weight distribution)、場合によりバイモーダル重量分布(bimodal weight distribution)を有し得る。
【0060】
第2の表面基は、生体分子に結合することができる生体分子結合基107を含む。生体分子結合基には、限定するものではないが、DNA、RNA、ペプチド、炭水化物、抗体、抗原、酵素、タンパク質およびホルモンが含まれる。好ましい生体分子結合基はビオチンである。
【0061】
いくつかの実施形態では、ビオチン生体分子結合基は、標的分析物に直接結合する。
【0062】
いくつかの実施形態では、ビオチン生体分子結合基は、複数のビオチン結合部位、好ましくはストレプトアビジン、ニュートラアビジン、アビジンまたはそれらの組換え変異体もしくは誘導体を有するタンパク質に結合している。好ましくは、タンパク質は発光性ではない。第2のビオチン基を有するビオチン化生体分子は、同じタンパク質に結合している。ビオチン化生体分子は、標的分析物に従って選択され得る。ビオチン化生体分子は、抗原結合フラグメント、例えば、標的抗原に従って選択され得る抗体を含み得る。
【0063】
生体分子結合基107は、基105によって粒子コアに結合され得る。基105は、第2の極性基PG2であり得る。第2の極性基は、第1の表面基の第1の極性基PG1と同じであっても異なっていてもよい。基105は、粒子コアの表面に直接結合していてもよいか、結合基BGに結合していてもよく、この結合基BGは、第1の表面基の結合基BGと同じであっても異なっていてもよく、好ましくは同じであり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1の表面基は、750~7,500ダルトンの範囲、場合により1,000~3,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。
【0065】
図1は、2つの異なる表面基を有する粒子を示している。いくつかの実施形態では、粒子は、3つ、4つ、またはそれ以上の異なる表面基を有し得る。
【0066】
表面基の形成
図2は、本開示のいくつかの実施形態による、発光マーカー粒子を形成するプロセスを示している。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、第1および第2の表面基を有する発光マーカー粒子は、複数の第1の反応性基RG1を担持する発光粒子コア101から形成され得る。
【0068】
第1の反応性基RG1は、以下から選択されていてもよい:
アミン基、場合により-NR (式中、Rは、各出現時、独立して、Hまたは置換基、好ましくはHまたはC1~5アルキル、さらに好ましくはHである);-COOH;-OH、-SH;アルケン;アルキン;およびアジド。
【0069】
第1の反応性基RG1は、反応性基RG1を含む化合物と粒子コアとを反応させることによって、粒子コアに直接または間接的に付着され得る。
【0070】
粒子コアはシリカを含み、反応性基RG1を含む化合物は式(I)を有していてもよく、
(RO)Si-(Sp-RG1
(I)
式中、Rは、Hまたは置換基、好ましくはC1~10アルキル基であり、
Spはスペーサー基であり、
xは0または1であり、
RG1は第1の反応基である。
【0071】
好ましくは、式(I)の化合物の反応によって形成されたシランが、粒子コアの表面でシリカ上に単層を形成する。
【0072】
Spは、1つ以上の非隣接C原子がO、S、C(=O)、C(=O)O、C(=O)NR12またはNR12(式中、R12は、各出現時、独立して、HおよびC1~12ヒドロカルビル、場合によりC1~12アルキルから選択される)によって置換されていてもよい直鎖状または分岐状二価アルキレン鎖から選択されていてもよい。
【0073】
式(I)の例示的な化合物は、3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0074】
粒子は、第1および第2の反応性化合物と混合される。表面上のいくつかのRG1基は、第1の反応性化合物103’と反応し、いくつかのRG1基は、第2の反応性化合物105’と反応して、それぞれ第1および第2の表面基、またはその前駆体を形成する。
【0075】
第1および第2の反応性化合物のそれぞれは、上記のように、反応性基RG1と反応して結合基BGを形成することができる第2の反応性基RG2を含み、結合基BGは、第1および第2の表面基103および105を粒子コア101に共有結合する。
【0076】
第1および第2の反応性化合物のモル比は、所望の第1の表面基:第2の表面基のモル比に従って選択され得る。第2の反応性基RG2は、第1および第2の反応性化合物について同じであり得るか、異なっていてもよい。
【0077】
化合物103’は、多分散化合物であり得る。化合物103’は、マルチモーダル重量分布、場合によりバイモーダル重量分布を有し得る。マルチモーダル重量分布は、異なる平均分子量を有する多分散材料を混合することによって実現され得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物103’は、ポリ(エチレングリコール)を反応させて少なくとも1つのカルボン酸基またはそのエステルを形成するなどによって、前駆体化合物を変換して1つ以上の第2の反応性基RG2を形成することによって形成される。マルチモーダル重量分布を有する化合物103’は、1つ以上の反応性基RG2の形成の前または後に、異なる平均分子量の材料を混合することによって形成され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物103’は、複数の第2の反応性基RG2を含む。これらの実施形態によれば、化合物103’は、式(IIa)を有し得る:
RG2-PG1-RG2
(IIa)
いくつかの実施形態では、式(IIa)の各RG2基は、反応性基RG1と反応して、2つの結合基BGの間に延びる第1の表面基を形成する。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(IIa)の1つのRG2基のみが反応性基RG1と反応して、末端基として反応性基RG2を有する第1の表面基を形成する。反応性基RG2は、反応性基RG1とのその反応性のために選択されることが理解されるであろう。反応性基RG2は、標的生体分子に結合しない基から選択され得る。
【0081】
RG1およびRG2は、以下から選択され得る:
アミン、好ましくは-N(R(式中、Rは、各出現時、Hまたは置換基、好ましくはHまたはC1~5アルキル、さらに好ましくはHである);
ヒドロキシル;チオール;および
RG1とRG2との反応時にカルボン酸基またはその塩を形成するカルボン酸またはその誘導体、例えば、無水物、酸塩化物またはエステル。
【0082】
好ましくは、RG1およびRG2の一方は、カルボン酸またはその誘導体、例えば、エステル、好ましくはNHSエステル、酸塩化物基または酸無水物基であり、RG1およびRG2の他方は、プロトン性基、例えば、ヒドロキシル基、チオール基またはアミノ基、好ましくはアミノ基であり、RG1およびRG2は、反応してエステル結合基BGまたはアミド結合基BGを形成することができる。RG1およびRG2の一方は、RG2との反応の前に、例えば、カルボジイミド、例えば、EDCを使用するカルボン酸基の活性化の前に、活性化された形態に変換され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、PG1は、以下に説明されるように、1つまたは2つの反応性基RG2に直接結合している、式(I)の繰返し単位である。
【0084】
いくつかの実施形態では、PG1は、式(I)の繰返し単位であり、PG1は、反応性基RG2または各反応性基RG2に式(I)の繰返し単位を連結する連結基をさらに有する。連結基は、アミド基を含むか、それからなっていてもよい。
【0085】
式(IIa)の化合物は、以下の式を有していてもよい:
【化1】

【0086】
式中、RG2、R14、R15、bおよびcは、上記の通りであり;各yは、独立して0、1、2、3、4または5であり;各zは、独立して0または1であり;各R16は、独立してHまたはC1~6アルキル基である。
【0087】
第2の表面基105は、上記の極性基PG1から選択され得、かつ第1の表面基の極性基PG1と同じであっても異なっていてもよい極性基PG2を含み得る。
【0088】
生体分子結合基107は、RG1およびRG2と反応するための反応条件下でRG1と反応しないように、またはRG2がRG1と優先的に反応するように選択されることが好ましい。
【0089】
好ましくは、第1の表面基103の数は、第2の表面基105の数よりも多い。第1の表面基のモル数は、第2の表面基のモル数の少なくとも2倍、好ましくは3倍、さらに好ましくは少なくとも5倍であってもよい。最も好ましくは、第2の表面基の数は、第1および第2の表面基の総モル数の10mol%未満、場合により最大5mol%である。
【0090】
好ましくは、第2の表面基の数は、第1および第2の表面基の総モル数の0.1mol%超、場合により少なくとも0.5mol%である。
【0091】
ナノ粒子コア
粒子コアは、1つ以上の発光材料からなり得る。
【0092】
粒子コアは、1つ以上の発光材料およびマトリックス材料を含むか、それらからなり得る。マトリックス材料には、限定するものではないが、無機マトリックス材料、場合により無機酸化物、場合によりシリカが含まれる。
【0093】
いくつかの実施形態では、シリカ粒子は、例えば、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/060722号に記載されているように、Stober法によって形成される。
【0094】
いくつかの実施形態では、粒子コアは、例えば、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/060722号に記載されているように、発光材料の存在下でのシリカモノマーの重合によって形成され得る。
【0095】
粒子コアの総重量の少なくとも0.1重量%は、1つ以上の発光材料からなっていてもよい。好ましくは、粒子コアの総重量の少なくとも1、10、25重量%は、1つ以上の発光材料からなる。
【0096】
粒子コアの総重量の少なくとも50重量%は、シリカからなっていてもよい。好ましくは、粒子コアの総重量の少なくとも60、70、80、90、95、98、99、99.5、99.9重量%はシリカからなる。
【0097】
本明細書に記載の粒子コアは、表面結合基または表面基をその上に有しないコアである。
【0098】
本開示の一実施形態では、粒子コアの総重量の少なくとも70重量%は、1または複数の発光材料と、シリカとからなる。好ましくは、粒子コアの総重量の少なくとも80、90、95、98、99、99.5、99.9重量%は、1または複数の発光材料と、シリカとからなる。さらに好ましくは、粒子コアは、1つ以上の発光材料と、シリカとから本質的になる。
【0099】
発光材料
粒子コアの発光材料は、蛍光、リン光またはそれらの組合せを放出し得る。
【0100】
発光材料は、非ポリマー発光材料またはポリマー発光材料であり得る。ポリマー発光材料が好ましい。
【0101】
発光ポリマーは、ホモポリマーであり得るか、2つ以上の異なる繰返し単位を含むコポリマーであり得る。
【0102】
発光ポリマーは、ポリマー主鎖に、ポリマー主鎖からのペンダントとして、またはポリマー主鎖の末端基として、発光基を含み得る。リン光性ポリマーの場合、リン光性金属錯体、好ましくはリン光性イリジウム錯体が、ポリマー主鎖に、ポリマー主鎖からのペンダントとして、またはポリマー主鎖の末端基として提供され得る。
【0103】
発光ポリマーは、非共役主鎖を有し得るか、共役ポリマーであり得る。「共役ポリマー」とは、隣接する繰返し単位に直接共役している繰返し単位をポリマー主鎖に含むポリマーを意味する。共役発光ポリマーには、限定するものではないが、ポリマー主鎖に沿って互いに共役しているアリーレン基、ヘテロアリーレン基およびビニレン基のうちの1つ以上を含むポリマーが含まれる。
【0104】
発光ポリマーは、直鎖状、分岐状または架橋された主鎖を有し得る。
【0105】
発光ポリマーは、ポリマーの主鎖に、非極性および極性置換基から選択される1つ以上の置換基によって置換された1つ以上の繰返し単位を含み得る。
【0106】
好ましくは、発光ポリマーは、少なくとも1つの極性置換基を含む。1つ以上の極性置換基は、上記繰返し単位の唯一の置換基であり得るか、上記繰返し単位は、1つ以上の非極性置換基、場合により1つ以上のC1~40ヒドロカルビル基によってさらに置換されていてもよい。1つ以上の極性置換基によって置換された1または複数の繰返し単位は、ポリマーの唯一の繰返し単位であり得るか、ポリマーは、1つ以上の追加の共繰返し単位を含み得、共繰返し単位または各共繰返し単位は、非置換であるか、非極性置換基、場合により1つ以上のC1~40ヒドロカルビル置換基によって置換されている。
【0107】
本明細書に記載のC1~40ヒドロカルビル置換基には、限定するものではないが、C1~20アルキル、非置換フェニル、および1つ以上のC1~20アルキル基によって置換されたフェニルが含まれる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「極性置換基」は、単独で、または1つ以上の追加の極性置換基と組み合わせて、アルコール溶媒中で少なくとも0.01mg/ml、好ましくは、少なくとも0.1、1、5または10mg/mlの溶解度を有する発光ポリマーをもたらす置換基を指し得る。溶解度は0.01~10mg/mlの範囲であってもよい。溶解度は25℃で測定される。好ましくは、アルコール溶媒は、C1~10アルコール、さらに好ましくはメタノールである。
【0109】
極性置換基は、好ましくは、水素結合またはイオン性基を形成することができる置換基である。
【0110】
いくつかの実施形態では、発光ポリマーは、式-O(RO)-Rの極性置換基を含み、式中、Rは、各出現時、C1~10アルキレン基、場合によりC1~5アルキレン基であり、アルキレン基の1つ以上の非隣接、非末端C原子は、Oによって置換されていてもよく、Rは、HまたはC1~5アルキルであり、tは、少なくとも1、場合により1~10である。好ましくは、tは少なくとも2である。さらに好ましくは、tは2~5である。tの値は、式-O(RO)-Rの全部の極性基で同じであってよい。tの値は、同じポリマーの極性基間で異なってもよい。
【0111】
に関して本明細書で使用される「C1~5アルキレン基」とは、式-(CH-の基を意味し、式中、fは1~5である。
【0112】
好ましくは、発光ポリマーは、式-O(CHCHO)-Rの極性置換基を含み、式中、tは、少なくとも1、場合により1~10であり、Rは、C1~5アルキル基、好ましくはメチルである。好ましくは、tは少なくとも2である。さらに好ましくは、tは2~5であり、最も好ましくは、qは3である。
【0113】
いくつかの実施形態では、発光ポリマーは、式-N(Rの極性置換基を含み、式中、Rは、HまたはC1~12ヒドロカルビルである。好ましくは、各RはC1~12ヒドロカルビルである。
【0114】
いくつかの実施形態では、発光ポリマーは、アニオン性、カチオン性または双性イオン性であり得るイオン性基である極性置換基を含む。好ましくは、イオン性基はアニオン性基である。
【0115】
例示的なアニオン性基には、スルホン酸基である-COO;水酸化物;スルフェート;ホスフェート;ホスフィネート;またはホスホネートがある。
【0116】
例示的なカチオン性基には、-N(R があり、式中、Rは、各出現時、HまたはC1~12ヒドロカルビルである。好ましくは、各RはC1~12ヒドロカルビルである。
【0117】
カチオン性基またはアニオン性基を含む発光ポリマーは、これらのイオン性基の電荷を平衡化するための対イオンを含む。
【0118】
アニオン性基またはカチオン性基および対イオンは同じ原子価を有し得、対イオンは各アニオン性基またはカチオン性基の電荷を平衡化する。
【0119】
アニオン性基またはカチオン性基は、一価または多価であり得る。好ましくは、アニオン性基およびカチオン性基は一価である。
【0120】
発光ポリマーは、複数のアニオン性またはカチオン性の極性置換基を含み得、2つ以上のアニオン性基またはカチオン性基の電荷は、単一の対イオンによって平衡化される。極性置換基は、二価または三価の対イオンを含むアニオン性基またはカチオン性基を含んでいてもよい。
【0121】
対イオンは、場合によりカチオン、場合により金属カチオン、場合によりLi、Na、K、Cs、好ましくはCsであるか、有機カチオン、場合によりアンモニウム、例えば、テトラアルキルアンモニウム、エチルメチルイミダゾリウムまたはピリジニウムである。
【0122】
対イオンは、場合によりアニオン、場合によりハロゲン化物;スルホン酸基、場合によりメシレートもしくはトシレート;水酸化物;カルボキシレート;スルフェート;ホスフェート;ホスフィネート;ホスホネート;またはボレートである。
【0123】
いくつかの実施形態では、発光ポリマーは、式-O(RO)-Rの基、式-N(Rの基、式ORの基および/またはイオン性基から選択される極性置換基を含む。好ましくは、発光ポリマーは、式-O(CHCHO)の基、式-N(Rの基および/または式-COOのアニオン性基から選択される極性置換基を含む。好ましくは、極性置換基は、式-O(RO)-Rの基、式-N(Rの基および/またはイオン性基からなる群から選択される。好ましくは、極性置換基は、式-O(CHCHO)のポリエチレングリコール(PEG)基、式-N(Rの基および/または式-COOのアニオン性基からなる群から選択される。R、R、Rおよびtは上記の通りである。
【0124】
発光ポリマーの主鎖は、共役ポリマーであってもよい。共役発光ポリマーの主鎖は、式(III)の繰返し単位を含んでいてもよく:
【化2】

【0125】
式中、Arは、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり;Spはスペーサー基であり;mは0または1であり;Rは、各出現時、独立して極性置換基であり;mが0の場合、nは1であり、mが1の場合、nは、少なくとも1、場合により1、2、3または4であり;Rは、各出現時、独立して非極性置換基であり;pは、0または正の整数、場合により1、2、3または4であり;qは、0または正の整数、場合により1、2、3または4であり;Sp、RおよびRは、各出現時、独立して、同じであっても異なっていてもよい。
【0126】
好ましくは、mは1であり、nは2~4、さらに好ましくは4である。好ましくは、pは0である。
【0127】
式(III)のArは、C6~20アリーレン基または5~20員ヘテロアリーレン基であってもよい。Arは、好ましくはC6~20アリーレン基、場合によりフェニレン、フルオレン、ベンゾフルオレン、フェナントレン、ナフタレンまたはアントラセン、さらに好ましくはフルオレンまたはフェニレン、最も好ましくはフルオレンである。
【0128】
Sp-(R)nは、極性基、場合により-NH基または-OH基、例えばポリエチレンイミンによって置換された分岐基、場合により樹枝状基であり得る。
【0129】
好ましくは、Spは以下から選択される:
・1つ以上の非隣接C原子がO、S、NまたはC=Oによって置換されていてもよいC1~20アルキレンまたはフェニレン-C1~20アルキレン;
・1つ以上の置換基Rに加えて、非置換であってもよいか、1つ以上の非極性置換基、場合により1つ以上のC1~20アルキル基によって置換されていてもよいC6~20アリーレンまたは5~20員ヘテロアリーレン、さらに好ましくはフェニレン。
【0130】
本明細書で使用される「アルキレン」は、分岐状または直鎖状の二価アルキル鎖を意味する。
【0131】
本明細書で使用されるアルキル基の「非末端C原子」は、n-アルキル基の末端のメチル基または分岐状アルキル鎖の末端のメチル基以外のC原子を意味する。
【0132】
さらに好ましくは、Spは以下から選択される:
・1つ以上の非隣接C原子がO、SまたはCOによって置換されていてもよいC1~20アルキレン;および
・非置換であってもよいか、1つ以上の非極性置換基によって置換されていてもよいC6~20アリーレンまたは5~20員ヘテロアリーレン、さらになお好ましくはフェニレン。
【0133】
は、本明細書のいずれかに記載される極性置換基であり得る。好ましくは、Rは以下である:
・式-O(CHCHO)(式中、tは、少なくとも1、場合により1~10であり、Rは、C1~5アルキル基、好ましくはメチルである)のポリエチレングリコール(PEG)基;
・式-N(R(式中、Rは、HまたはC1~12ヒドロカルビルである)の基;または
・式-COOのアニオン性基。
【0134】
nが少なくとも2である場合、各Rは、各出現時、独立して、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、所与のSp基に付着した各Rは異なる。
【0135】
pが正の整数、場合により1、2、3または4である場合、基Rは以下から選択され得る:
・アルキル、場合によりC1~20アルキル;ならびに
・非置換であってもよいか、1つ以上の置換基によって置換されていてもよいアリール基およびヘテロアリール基、好ましくは1つ以上のC1~20アルキル基によって置換されたフェニル;
・各々が独立して置換されていてもよいアリール基またはヘテロアリール基、例えば式-(Ar(式中、各Arは、独立してアリール基またはヘテロアリール基であり、sは少なくとも2である)の基の直鎖または分岐鎖、好ましくは、それぞれが非置換であってもよいか、1つ以上のC1~20アルキル基によって置換されていてもよいフェニル基の分岐鎖または直鎖;ならびに
・架橋可能な基、例えば、そのような二重結合を含む基、およびビニル基もしくはアクリレート基、またはベンゾシクロブテン基。
【0136】
好ましくは、各Rは、存在する場合、C1~40ヒドロカルビルから独立して選択され、さらに好ましくは、C1~20アルキル;非置換フェニル;1つ以上のC1~20アルキル基によって置換されたフェニル;および各フェニルが非置換であってもよいか、1つ以上の置換基によって置換されていてもよいフェニル基の直鎖または分岐鎖から選択される。
【0137】
本明細書に記載のポリマーは、式(III)の繰返し単位の1つの形態のみを含み得るか、それからなり得るか、式(III)の2つ以上の異なる繰返し単位を含み得るか、それらからなり得る。
【0138】
式(III)の1つ以上の繰返し単位を含むポリマーは、1つ以上の共繰返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0139】
共繰返し単位が存在する場合、式(III)の繰返し単位は、ポリマーの繰返し単位の0.1~99mol%、場合により50~99mol%または80~99mol%を形成し得る。好ましくは、式(I)の繰返し単位は、ポリマーの繰返し単位の少なくとも50mol%、さらに好ましくは少なくとも60、70、80、90、95、98または99mol%を形成する。最も好ましくは、ポリマーの繰返し単位は、式(I)の1つ以上の繰返し単位からなる。
【0140】
ポリマーの繰返し単位または各繰返し単位は、ポリマーの所望の発光色を生成するように選択され得る。
【0141】
発光材料は、350~1000nmの範囲のピーク波長を有する光を放出し得る。
【0142】
青色発光材料、例えば、本明細書に記載の複合粒子の青色発光ポリマーは、500nm以下、好ましくは400~500nm、場合により400~490nmの範囲のピークを有するフォトルミネッセンススペクトルを有し得る。
【0143】
緑色発光材料、例えば、本明細書に記載の複合粒子の緑色発光ポリマーは、500nm超から最大580nm、場合により500nm超から最大540nmのピークを有するフォトルミネッセンススペクトルを有し得る。
【0144】
赤色発光材料、例えば、本明細書に記載の複合粒子の赤色発光ポリマーは、580nm超から最大630nm、場合により585nmから最大625nmのピークを有するフォトルミネッセンススペクトルを有し得る。
【0145】
発光材料は、300~900nmの範囲の最大値を有する吸収スペクトルを有し得る。
【0146】
発光材料は、10~850nmの範囲のストークスシフトを有し得る。
【0147】
本明細書に記載の発光ポリマーのフォトルミネッセンススペクトルは、Hamamatsuが提供する装置C9920-02を使用して溶液中で測定され得る。
【0148】
本明細書に記載の発光材料のUV/vis吸収スペクトルは、Cary 5000 UV-vis-IR分光計を使用して、溶液または懸濁液中で測定された場合のものであり得る。
【0149】
ポリマーのアリーレン繰返し単位には、限定するものではないが、フルオレン、好ましくは2,7-連結フルオレン;フェニレン、好ましくは1,4-連結フェニレン;ナフタレン、アントラセン、インデノフルオレン、フェナントレンおよびジヒドロフェナントレンの繰返し単位が含まれる。
【0150】
本明細書に記載の発光ポリマーまたはシリカポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されたポリスチレン等価数平均分子量(Mn)は、約1x10~1x10、好ましくは1x10~5x10の範囲であり得る。本明細書に記載のポリマーのポリスチレン等価重量平均分子量(Mw)は、1x10~1x10、好ましくは1x10~1x10であり得る。
【0151】
本明細書に記載のポリマーは、好適には非晶質ポリマーである。
【0152】
コロイド
粒子は、液体中に懸濁された粒子を含むコロイド懸濁液として提供され得る。好ましくは、液体は、水、C1~10アルコールおよびそれらの混合物から選択される。好ましくは、粒子は、液体中で均一な(凝集していない)コロイドを形成する。
【0153】
液体は、その中に溶解した塩を含む溶液、場合により緩衝液であり得る。緩衝液は、1~14、好ましくは5~8の範囲のpHを有し得る。緩衝液は、限定するものではないが、ホスフェート、例えば、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、アセテート、例えば、酢酸ナトリウム、ボレートおよび/または2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含有し得る。
【0154】
緩衝液の塩濃度は、約1mmol/L~200mmol/Lの範囲であり得る。
【0155】
コロイド懸濁液中の粒子の濃度は、好ましくは、0.1~20mg/mL、場合により5~20mg/mLの範囲である。
【0156】
いくつかの実施形態では、粒子は、コロイド懸濁液、場合により、0.1mg/mL、好ましくは少なくとも0.5mg/mLまたは1mg/mLを超える粒子濃度を有するコロイド懸濁液として保存され得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、粒子は、凍結乾燥または凍結された形態で保存され得る。
【0158】
用途
本開示の粒子は、蛍光性またはリン光性であり得る。好ましくは、粒子は蛍光性である。好ましくは、粒子は、生体分子を検出するための、または生体分子を標識するための蛍光プローブとして使用するためのものである。いくつかの実施形態では、粒子は、ラテラルフローイムノアッセイまたは固体イムノアッセイなどのイムノアッセイで蛍光プローブとして使用され得る。粒子は、蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、次世代シーケンシング、インビボイメージング、または標的分析物に結合するように構成された発光マーカーが分析対象の試料と接触させられる任意の他の用途で使用するためのものであってもよい。これらの用途は、患者(該当する場合)を含むか、研究目的であるかどうかにかかわらず、医学用途、獣医学用途、農業用途または環境用途のためのものであり得る。
【0159】
使用中、粒子の生体分子結合基は、限定するものではないが、DNA、RNA、ペプチド、炭水化物、抗体、抗原、酵素、タンパク質およびホルモンを含む標的生体分子に結合し得る。生体分子結合基は、標的生体分子に従って選択され得ることが理解されるであろう。
【0160】
分析される試料は、粒子、例えば、コロイド懸濁液中の粒子と接触させられ得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、粒子と接触した後の試料は、フローサイトメトリーによって分析される。フローサイトメトリーでは、粒子は、少なくとも1つの波長の光、場合により2つ以上の異なる波長、例えば、355、405、488、562および640nmのうちの少なくとも1つを含む1つ以上の波長によって照射される。粒子によって放出された光は、1つ以上の検出器によって収集され得る。検出器は、限定するものではないが、光電子増倍管およびフォトダイオードから選択され得る。染色指数を計算するためのバックグラウンド信号を提供するために、粒子に結合しない細胞と混合された粒子の測定が行われてもよい。
【0162】
いくつかの実施形態、例えば、プレートアッセイでは、標的生体分子は、粒子と接触させられる表面に固定化され得る。
【0163】
[実施例1]
ビオチン化ナノ粒子の形成
反応性アミン基を有する発光ナノ粒子コアの形成
Stober法によって、シリカのコアと発光ポリマーとを有するナノ粒子を形成し、ナノ粒子コアと、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/060722号の実施例に記載されているように(3-アミノプロピル)トリエトキシシランとを反応させて、動的光散乱による数平均直径が80nmであり、コアの表面上にアミン反応性基を有するナノ粒子を得た。
【0164】
アミノ修飾発光ナノ粒子に対する表面基の付着
上記の実施例で形成された、メタノール中のアミノ修飾ナノ粒子コアの懸濁液1mLを14,000rpmで2分間遠心分離して、上清のデカンテーションによってナノ粒子を分離した。α,ω-ビス{2-[(3-カルボキシ-1-オキソプロピル)アミノ]エチル}ポリエチレングリコール(以下に示すSAA-PEG-SAA、MW=2000g/mol)、ビオチン-PEG-COOH(MW=2000g/mol)、N-(3-アミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(2.1mg)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(2.5mg)のメタノール溶液1mLを使用して、穏やかな超音波処理によってナノ粒子ペレットを再分散させ、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌した。SAA-PEG-SAAとビオチン-PEG-COOHとの相対量を表1に示す。懸濁液を14,000rpmで2分間遠心分離して、過剰な未反応のPEG化試薬を含有する上清から、得られたシリカ-LEPナノ粒子を分離した。デカンテーションによって上清を除去し、穏やかな超音波処理を使用して、ナノ粒子の分離されたペレットを1mLの新鮮なメタノールに再分散させた。遠心分離、デカンテーション、およびメタノール(1mL)への再分散からなる洗浄サイクルをさらに2回繰り返した。最後の遠心分離およびデカンテーションの前に、懸濁液を4つの250μL部分に分注し、得られたペレットを使用前に-20℃で保存した。
【化3】


【化4】


【表1】

【0165】
[実施例2]
ストレプトアビジンへのビオチン化ナノ粒子の共役
穏やかな超音波処理によって、1mLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4、1重量%のウシ血清アルブミンを含有する)に実施例1の分離されたペグ化ナノ粒子ペレットの1つを再懸濁し、続いて、同じ緩衝液に50μLのストレプトアビジン溶液を直ちに加えた(1mg/mL)。懸濁液を室温で1時間撹拌した後、試料を14000rpmで3分間遠心分離して、上清および非共役タンパク質からタンパク質共役ナノ粒子を収集および分離した。穏やかな超音波処理によって、100μLのリン酸緩衝食塩水にペレットを再懸濁し、保存した。
【0166】
[実施例3]
ナノ粒子の安定性
リン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)を用いて、実施例1に記載の不活性PEG表面基およびビオチン置換PEG表面基を担持するナノ粒子のコロイドを形成し、動的光散乱を使用して、ナノ粒子のZ平均直径を定期的に測定して、ナノ粒子の凝集を決定した。
【0167】
表1を参照すると、ナノ粒子の濃度が高くなると、特に0.1mg/mLを超える濃度では、凝集が驚くほど減少する。
【0168】
1mol%または10mol%のビオチン置換PEG基を有する、実施例1および2に記載されたナノ粒子のPBS中の安定性(すなわち、ストレプトアビジンの有無にかかわらず)を試験した。
【0169】
表2を参照すると、ストレプトアビジンを有しない1mol%および10mol%のビオチン置換PEG基では、PBSの濃度が低い方が安定性がはるかに高い。それよりも高い濃度のビオチン置換PEG基でストレプトアビジンを付着させると、安定性が大幅に低下する。ただし、これらのナノ粒子はともに、表面基の100%がビオチン置換PEG基を担持するナノ粒子よりもはるかに安定であることが見出された。このナノ粒子は、PBSに分散してから数分以内に凝集することが見出された。
【表2】

【0170】
表2の安定性時間は、動的光散乱によって決定される粒子のZ平均直径が、測定の合間に撹拌されることなく5℃で保存された際に、開始直径の10%を超えるのに要する時間である。
【0171】
大過剰のストレプトアビジンとともに、実施例2のプロセスを使用して形成されたストレプトアビジン含有粒子を使用して、遊離ビオチン基を有するナノ粒子の発生を低減または排除することによって、様々なナノ粒子のビオチン分子に結合することによりストレプトアビジンが凝集を引き起こす可能性を検討した。同様の凝集が観察され、ストレプトアビジンが様々なナノ粒子に結合することによって凝集を促進していなかったことが示された。
【0172】
[実施例4]
バイオアッセイの感度に対する凝集の影響
バイオアッセイ用のビオチン-BSA修飾スライドガラスの作製
無水コハク酸(1g)およびトリメチルアミン(1.3mL)を含有するアセトニトリル(50mL)溶液に、(3-アミノプロピル)シランの自己組織化単層を用いて官能化したガラス顕微鏡スライドを16時間浸漬した後、新鮮なアセトニトリル(50mL)を用いて3回洗浄した。乾燥後、得られたカルボキシ官能化スライドガラスの表面に、Grace-Biolabs Secure Sealイメージングスペーサーを貼り付けて、4つの円形領域(直径=9mm)を隔離して、後続の結合アッセイで使用した。スライドの各隔離領域内に、N-(3-アミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド(77.0mg)およびN-ヒドロキシルスルホスクシンイミド(33.0mg)を含有する80μLの1mL溶液を加えた。室温で30分間放置した後、溶液を除去し、水(80μL)を用いて、隔離された領域を3回洗浄した。最後の洗浄液を除去した後、2つの領域に、ビオチン化ウシ血清アルブミン(50μg/mL)のリン酸緩衝食塩水(pH7.4)溶液80μLを加え、残りの2つの領域に、0.01重量%のTween-20を含有するリン酸緩衝食塩水(pH7.4)中のウシ血清アルブミン(3重量%)を含有するブロッキングバッファー80μLを加えた。室温で1時間後、ビオチン化ウシ血清アルブミン溶液を含有する2つの領域から溶液を除去し、代わりに上記のブロッキングバッファー80μLを加えた。室温でさらに1時間後、4つの全領域から溶液を除去し、0.01重量%のTween-20を含有するリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を用いて、それぞれを3回洗浄した。
【0173】
ストレプトアビジン修飾ナノ粒子を使用したビオチン結合アッセイ
実施例2に記載のストレプトアビジン修飾ビオチン化ナノ粒子を0.1mol%、1mol%および10mol%含有するコロイド(1%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水中0.1mg/mL)をスライドガラスに適用した。室温で30分間放置した後、溶液を除去し、80μLのリン酸緩衝食塩水(pH7.4)を用いて3回洗浄した。空気中で乾燥させた後、励起源(λex=365nm)として水銀ランプと検出用の光ファイバー分光計とを使用して、顕微鏡ベースの分光計を使用して、4つのアッセイ領域のそれぞれの蛍光強度を測定した。ビオチンにより官能化された領域からの平均積分強度を、BSAのみ(ビオチンなし)を用いてブロックされた領域の平均強度で割ることによって、信号-雑音を決定した。
【0174】
図3に示すように、1mol%のビオチン化ナノ粒子では、最も強い信号対雑音比が観察された。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、これは、0.1mol%のビオチン化ナノ粒子と比較してビオチン化基の割合が高く、10mol%のビオチン化ナノ粒子と比較して凝集が少ない(結合基にアクセスしにくくなり得る)ことに起因する。
【0175】
[実施例5]
表面基の分子量の影響
アミノ基をSAA-PEG-SAAのみ(Mw550、100、2000または5000Da)またはmPEG-SAAのみ(以下に示す、MW550、100、2000および5000Da)と反応させた、すなわち、得られた表面基が、生体分子結合基を有する基を含まなかったことを除いて、実施例1に記載されているようにナノ粒子を調製した。
【化5】
【0176】
粒子はいずれもメタノール中で分散液を形成し、1カ月超にわたり安定であったことが見出された。
【0177】
緩衝液中の粒子の安定性を決定するために、メタノール中のPEGコーティング粒子の1mg/mL分散液をDLSにより測定して、粒子のZ平均直径を決定した。
【0178】
次いで、遠心分離と上清のデカンテーションとによってメタノール分散剤から1mgのナノ粒子を分離し、超音波浴で5分間にわたり超音波処理することによって、1mLのリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)に再分散させた。
【0179】
5、60、300および1440分後に(またはそれらが凝集する時間まで)PBS中の分散液のDLS測定値を測定し、測定の合間に、密封された試料管内で室温で試料を放置した。
【0180】
図4を参照すると、コアとmPEG-SAAとの反応によって形成されたメトキシPEG末端表面基を有するナノ粒子はいずれも、PBSに分散してから5分以内に凝集していることが見出された。
【0181】
図5を参照すると、コアとSAA-PEG-SAAとの反応によって形成されたカルボキシ末端表面基を有するナノ粒子は、表面基のMwに応じて最大24時間にわたり安定であった。
【0182】
[実施例6]
ビオチン化抗体への共役
実施例2に記載のストレプトアビジン官能化ナノ粒子1mgに、0.5mg/mLのビオチン化ヤギ抗マウス抗体250μL(クローンPoly4053、Biolegendから購入)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。この工程を4回繰り返した。最終工程で、ペレットを500μLのBSA/PBSに再懸濁して、2mg/mLの最終粒子濃度を得た。
【0183】
[実施例7]
フローサイトメトリーアッセイ
Propel Labs YETI分析機器を用いて、フローサイトメトリー分析を行った。
【0184】
BV421-抗ヒトCD4(クローンSK3)[BV421-hCD4]およびBV421-マウスIgG1、κアイソタイプ(クローンMOPC-21)[BV421-アイソタイプ]をBiolegendから購入した。
【0185】
CYTO-TROL細胞は、Beckman Coulterによって供給された。
【0186】
1.CYTO-TROL細胞を室温に戻し、使用前に、製造業者から供給された緩衝液に再懸濁した。
【0187】
2.マイクロ遠心チューブ内のBSA/PBS中に、必要な濃度まで抗体タグを希釈した。
【0188】
3.抗体-NP希釈液のそれぞれに、100μLの調製したCyto-Trolを加えた。調製物を十分に混合し、静置して、直射光を避けて4℃で30分間インキュベートした。
【0189】
4.インキュベーション後、細胞染色緩衝液を用いて細胞を2回洗浄し、2000rpmで3分間4℃で遠心分離し、上清を廃棄した。
【0190】
5.分析の準備が整っている200μLの細胞染色緩衝液に細胞を再懸濁した。
【0191】
6.分析には、0.5μL/秒の流量を使用した。単一細胞に関してデータをゲート化し、各測定について10,000の事象がこのゲートで取得された。
【0192】
一連の異なる例示的なナノ粒子NP(x)-hCD4(式中、NPは実施例6に記載のナノ粒子であり、ストレプトアビジンではx=s;ニュートラアビジンではx=n;hCD4=抗ヒトCD4抗体)希釈液をスクリーニングして、各色素の最大染色指数に対する最適作用濃度を決定した。
【0193】
ニュートラアビジンを使用した抗体の共役は、ストレプトアビジンの代わりにニュートラアビジンの1mg/mL PBS溶液50μLを使用したことを除いて、ストレプトアビジンについて上記した通りである。
【0194】
染色指数[SI]は以下の通りである:
【数1】
【0195】
式中、MFI1は陽性集団の蛍光強度の中央値であり、MFI2は陰性集団の蛍光強度の中央値であり、SDは陰性信号の標準偏差である。
【0196】
比較マーカーBV421-hCD4についても同じことを行い、BV421は、BioLegendから入手可能な溶解蛍光ポリマーBrilliant Violet 421(商標)である。
【0197】
電圧は、陰性信号および陽性信号の両方がスケール上に確実にあるように調整した。NP(n)-hCD4では、陰性および陽性が完全にスケール上にある電圧を見出すことができなかったため、陰性が完全にスケール上にある電圧を分析に使用した。
【表3】

【0198】
各タグの最適濃度を以下のように決定した:
・BV421-hCD4:250μg/mL
・NP(s)-hCD4:31.3μg/mL
・NP(n)-hCD4:15.6μg/mL
各チャネルについてBV421-hCD4、NP(s)-hCD4およびNP(n)-hCD4の最適電圧は同じであり、表2に要約されている:
【表4】
【0199】
上記の最適濃度および最適化された電圧で、表3の以下のタグのそれぞれを3連で測定した。
【表5】

【0200】
実施例1のビオチン化ナノ粒子(すなわち、ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンを有しない)および未染色細胞についても同じことを行った。
【0201】
ストレプトアビジンまたはニュートラアビジンに共役していないこれらの粒子をマイクロ遠心チューブに分注した。懸濁液を14,000rpmで4分間遠心分離した。溶媒をデカンテーションし、超音波処理によってペレットを100μLのBSA/PBSに再懸濁して、10mg/mLの最終粒子濃度を得た。
【0202】
結果:NP(s)-hCD4
図6および表4では、NP(s)-hCD4によるCyto-Trol細胞の染色とBV421-hCD4とを比較している。BV421-hCD4と同様に、NP(s)-hCD4は陰性細胞のごくわずかな染色を示す。ただし、NP(s)-hCD4の陽性信号は、BV421-hCD4と比較して陽性信号の標準偏差がわずかに増加するにとどまりながら、比較的高い吸光係数に大幅にシフトする。MFI1のこの増加は、BV421と比較してNP(s)-hCD4の染色指数の約2.5倍の増加につながる。
【表6】

【0203】
図7および表5に、NP(s)由来粒子の低い陰性染色をさらに示す。官能化されていないNP(s)-アイソタイプもNP(s)-hCD4も、顕著な陰性染色を示さず、本明細書に記載の蛍光ナノ粒子ならびにそれらのストレプトアビジン共役誘導体および抗体共役誘導体では、細胞への非特異的吸収が低いことを示している。
【表7】

【0204】
結果:NP(n)-hCD4
図8および表6では、NP(s)-hCD4に関して、NP(n)-hCD4によるCyto-Trol細胞の染色とBV421-hCD4とを比較している。NP(s)-hCD4と同様に、NP(n)-hCD4はごくわずかな陰性染色を示す。NP(n)-hCD4の比較的明るい陽性信号は、BV421-hCD4と比較して5.4倍の染色指数を示す。
【表8】
【0205】
図9および表7に、NP(n)由来粒子の低い陰性染色をさらに示す。官能化されていないNP(n)アイソタイプもNP(n)-hCD4も、顕著な陰性染色を示さず、蛍光NPならびにそのニュートラアビジン共役誘導体および抗体共役誘導体では、細胞への非特異的吸収が低いことを示している。
【表9】

【0206】
第1のビオチン基密度の影響
ビオチン-PEG-COOH+SAA-PEG-SAAの総重量の割合としてのビオチン-PEG-COOHを0.5重量%、1重量%、5重量%および10重量%まで変化させたことを除いて、実施例1に記載のナノ粒子を使用して、第1のビオチン基密度(したがって、前駆体ナノ粒子の表面上のタンパク質結合部位の数)の影響を試験した。
【0207】
第1および第2の表面基の様々な重量パーセントに使用される試薬の体積を表8に示す。
【表10】
【0208】
Biolegendから供給されたビオチンマウス抗ヒトCD4抗体(クローンSK3)を使用して、抗ヒトCD4に共役しているナノ粒子[NP(x)-hCD4]を形成した。
【0209】
アイソタイプ対照粒子[NP(x)-アイソタイプ]では、Biolegendから供給されたビオチンマウスIgG1、κアイソタイプ(クローンMOPC-21)を使用した。
【0210】
一連の異なるNP(s)-x%hCD4(式中、x=0.5、1、5または10は、NPを官能化するために使用されるPEG-ビオチンの割合を表す)およびBV421-hCD4希釈液をスクリーニングして、各色素の最大染色指数に対する最適作用濃度を決定した。
【0211】
電圧は、陰性信号および陽性信号の両方がスケール上に確実にあるように調整した。
【表11】

【0212】
各タグの最適濃度を以下のように決定した:
・BV421-hCD4:250μg/mL
・NP(s)-0.5%hCD4:62.5μg/mL
・NP(s)-1%hCD4:250μg/mL
・NP(s)-5%hCD4:125μg/mL
・NP(s)-10%hCD4:62.5μg/mL
各チャネルについてBV421-hCD4およびNP(s)-x%hCD4の最適電圧は同じであり、表10に要約されている:
【表12】
【0213】
上記の最適濃度および最適化された電圧で、表11のタグを3連で測定した。
【表13】
【0214】
未染色細胞も測定した。
【0215】
Cyto-Trol細胞の染色に対する表面ビオチン基の割合の変化の影響を図10および表12に示す。他のタグと比較して非常に高い最適染色濃度(250μg/mL)に起因する1%ビオチンを除いて、全ビオチン濃度について、陰性集団は未染色細胞と比較してごくわずかなバックグラウンド染色を示した。この高い染色濃度の影響は、31.3μg/mLというはるかに低い最適染色濃度で陰性集団に対するごくわずかな染色が示される上記のストレプトアビジン/ニュートラアビジン比較実験で使用したNP(s)-1%hCD4から明らかである。
【0216】
したがって、表面ビオチン濃度が0.5~10%変動しても、Cyto-Trol細胞に対する得られたタグの非特異的結合は増加しないとの結論を下すことができる。
【表14】

【0217】
これらのデータは、表面ビオチンが多いほど、得られる抗体共役物の染色指数が高くなり、10重量%ビオチンタグが0.5重量%ビオチンタグの1.9倍の染色指数を示すことを示している。0.5重量%のビオチンであっても、染色指数はBV421-hCD4の染色指数を上回っている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10