(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】処理チャンバの表面からの金属汚染物質の除去
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241004BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241004BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/31 C
C23C16/44 J
(21)【出願番号】P 2021518441
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2019054477
(87)【国際公開番号】W WO2020072762
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-27
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー・ジンイ
(72)【発明者】
【氏名】タン・サマンサ・シャンファ
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ・セオンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン・ゲー
(72)【発明者】
【氏名】カナカサバパシー・シバ・クリシュナン
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180663(WO,A1)
【文献】特開2018-006742(JP,A)
【文献】特開2011-192872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0012759(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理チャンバの表面を洗浄する方法であって、
a)四塩化ケイ素(SiCl
4)、四塩化炭素(CCl
4)、炭化水素(C
xH
y、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、および塩化チオニル(SOCl
2)からなる群から選択される第1のガスを供給することであって、前記第1のガスは、ケイ素(Si)に対してスズ(Sn)を選択的にエッチングするように構成されている、第1のガスの供給;
b)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面からSnをSiに対して選択的にエッチングすること;
c)前記b)で打たれた前記プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にすること;
a)からc)をN回(Nはゼロより大きい整数)繰り返すこと;ならびに
a)からc)のN回の繰り返しの後、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および
前記基板処理チャンバの前記表面の予備コーティングの後、前記基板処理チャンバ内において基板について基板処理を実施すること
であって、前記基板はSnを含有する、基板処理の実施、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
d)フッ素種を含む第2のガスを供給することであって、前記第2のガスは、Snに対してSiを選択的にエッチングするように構成されている、第2のガスの供給;
e)前記d)の後に、前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面からSiをSnに対して選択的にエッチングすること;
f)前記e)で打たれた前記プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にすること;ならびに
g)上記a)~c)に加えてd)~f)を
前記N回繰り返すこと、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3)、六フッ化硫黄(SF
6)、および四塩化炭素(CF
4)からなる群から選択される、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、a)~g)は、前記基板処理チャンバ内で基板を基板支持体上に配置せずに実施される、方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすることは、前記g)の後に、実施される、方法。
【請求項6】
請求項2に記載の方法であって、a)~c)は、N回の各回のd)~f)の後に実施される、方法。
【請求項7】
請求項2に記載の方法であって、a)~c)は、N回の各回のd)~f)の前に実施される、方法。
【請求項8】
請求項2に記載の方法であって、
a)~g)を実施する前に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および
前記基板処理チャンバの前記表面の予備コーティングの後、前記基板処理チャンバ内において第2の基板について第2の基板処理を実施すること
であって、前記基板はSnを含有する、第2の基板処理の実施
をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記基板処理は、エッチングを含む、方法。
【請求項10】
請求項2に記載の方法であって、
b)の間、前記基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御すること;および
e)の間、前記基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御し、前記第1の圧力範囲は、前記第2の圧力範囲よりも小さいこと
をさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記第1の圧力範囲は、1~30mTであり、前記第2の圧力範囲は、30~150mTである、方法。
【請求項12】
基板を処理するための基板処理システムであって、
チャンバ壁および基板支持体を有する基板処理チャンバ;
前記基板処理チャンバへガスを選択的に供給するガス供給システム;
前記基板処理チャンバ内にプラズマを選択的に発生させるプラズマ発生器;ならびに
コントローラであって、
a)四塩化ケイ素(SiCl
4)、四塩化炭素(CCl
4)、炭化水素(C
xH
y、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、および塩化チオニル(SOCl
2)からなる群から選択される第1のガスであって、ケイ素(Si)に対してスズ(Sn)を選択的にエッチングするように構成されている第1のガスを供給し;
b)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面からSnをSiに対して選択的にエッチングし;
c)前記b)で打たれたプラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にし;
a)からc)をN回(Nはゼロより大きい整数)繰り返し;
a)からc)のN回の繰り返しの後、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;
前記基板処理チャンバの前記表面の予備コーティングの後、前記基板処理チャンバ内において、Snを含有する基板について基板処理を実施する、
ために、前記ガス供給システムおよび前記プラズマ発生器を制御するように構成される、コントローラ
を含む、基板処理システム。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、
d)フッ素種を含有する第2のガスであって、Snに対してSiを選択的にエッチングするように構成されている第2のガスを供給し;
e)前記d)の後に、前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面からSiをSnに対して選択的にエッチングし;
f)前記e)で打たれたプラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にし;
g)a)~c)に加えてd)~f)を
前記N回繰り返すようにさらに構成される、基板処理システム。
【請求項14】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3)、六フッ化硫黄(SF
6)、および四塩化炭素(CF
4)からなる群から選択される、基板処理システム。
【請求項15】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、a)~g)を実施する前に前記基板支持体から基板を取り除くように構成される、基板処理システム。
【請求項16】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、前記ガス供給システムおよび前記プラズマ発生器を制御して、前記ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすることを、g)の後に実施するように構成される、基板処理システム。
【請求項17】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、N回の各回のd)~f)の後にa)~c)を実施するように構成される、基板処理システム。
【請求項18】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、N回の各回のd)~f)の前にa)~c)を実施するように構成される、基板処理システム。
【請求項19】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、前記ガス供給システムおよび前記プラズマ発生器を制御して、
a)~g)を実施する前に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;
前記基板処理チャンバの前記表面の予備コーティングの後、前記基板処理チャンバ内において、Snを含有する第2の基板について第2の基板処理を実施する
ように構成される、基板処理システム。
【請求項20】
請求項19に記載の基板処理システムであって、前記基板処理は、エッチングを含む、基板処理システム。
【請求項21】
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、
b)の間、前記基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御し;
e)の間、前記基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御し、前記第1の圧力範囲は、前記第2の圧力範囲よりも小さい
ように構成される、基板処理システム。
【請求項22】
請求項21に記載の基板処理システムであって、前記第1の圧力範囲は、1~30mTであり、前記第2の圧力範囲は、30~100mTである、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示は、2018年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/741,754号の利益を主張するものである。上記出願の開示を参照してその全容を本願に援用する。
【0002】
本開示は、基板処理システムに関し、さらに詳細には、処理チャンバの表面から金属汚染物質を除去するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載する背景技術の説明は、本開示の背景を全般的に紹介することを目的としている。この背景技術の段落に記載されている範囲で本出願に明記されている発明者らの作業のほか、出願時に先行技術とみなしてはならない説明文の態様は、明示的にも黙示的にも本開示に対する先行技術としては認められない。
【0004】
半導体ウエハなどの基板のエッチング、堆積、および/またはそれ以外の処理を実施するために基板処理システムを使用してよい。処理過程では、基板を処理チャンバ内の基板支持体上に配置する。処理チャンバの中には、ガス供給システムを介して1種類以上のガスを注入する。処理チャンバ内部の化学反応を促進するために、処理過程でプラズマを打ってよい。イオンエネルギーを制御するために基板支持体にはRFバイアスも供給してよい。
【0005】
例えば、エッチングは、誘電体ウィンドウに隣接する処理チャンバの外側に配置された誘導コイルによって発生する誘導結合プラズマ(ICP)を用いて実施してよい。処理チャンバの内部を流れる処理ガスに点火してプラズマを発生させる。基板支持体の電極にはRFバイアス電力も供給してよい。
【0006】
堆積またはエッチングなどの基板処理過程では、チャンバ壁などの処理チャンバの表面に残留物が堆積することがある。残留物は、基板の処理過程で欠陥を生じさせることがある。残留物を除去するために洗浄を実施してよい。
【発明の概要】
【0007】
基板処理チャンバの表面を洗浄する方法は、a)四塩化ケイ素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)、炭化水素(CxHy、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl2)、三塩化ホウ素(BCl3)、および塩化チオニル(SOCl2)からなる群から選択される第1のガスを供給すること;b)基板処理チャンバ内でプラズマを打って基板処理チャンバの表面をエッチングすること;c)プラズマを消失させて基板処理チャンバを空にすること;d)フッ素種を含む第2のガスを供給すること;e)基板処理チャンバ内でプラズマを打って基板処理チャンバの表面をエッチングすること;ならびにf)プラズマを消失させて基板処理チャンバを空にすることを含む。
【0008】
他の特徴では、本方法は、g)a)~c)およびd)~f)をN回繰り返し、Nはゼロよりも大きい整数であることを含む。第2のガスは、三フッ化窒素(NF3)、六フッ化硫黄(SF6)、および四塩化炭素(CF4)からなる群から選択される。a)~g)は、基板処理チャンバ内で基板を基板支持体上に配置せずに実施される。
【0009】
他の特徴では、本方法は、g)の後に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングすることを含む。
【0010】
他の特徴では、a)~c)は、N回の各回のd)~f)の後に実施される。a)~c)は、N回の各回のd)~f)の前に実施される。
【0011】
他の特徴では、a)~g)を実施する前に、本方法は、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および基板処理を実施することを含む。他の特徴では、本方法は、g)の後に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および基板処理を実施することを含む。
【0012】
他の特徴では、基板処理は、エッチングを含む。基板は、スズ(Sn)を含有する。
【0013】
他の特徴では、本方法は、b)の間、基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御すること;およびe)の間、基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御することを含む。第1の圧力範囲は、第2の圧力範囲よりも小さい。
【0014】
他の特徴では、第1の圧力範囲は、1~30mTであり、第2の圧力範囲は、30~150mTである。
【0015】
基板を処理するための基板処理システムは、チャンバ壁および基板支持体を有する処理チャンバを含む。ガス供給システムは、処理チャンバへガスを選択的に供給する。プラズマ発生器は、処理チャンバ内にプラズマを選択的に発生させる。コントローラは、a)四塩化ケイ素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)、炭化水素(CxHy、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl2)、三塩化ホウ素(BCl3)、および塩化チオニル(SOCl2)からなる群から選択される第1のガスを供給し;b)基板処理チャンバ内でプラズマを打って基板処理チャンバの表面をエッチングし;c)プラズマを消失させて基板処理チャンバを空にし;d)フッ素種を含む第2のガスを供給し;e)基板処理チャンバ内でプラズマを打って基板処理チャンバの表面をエッチングし;f)プラズマを消失させて基板処理チャンバを空にするために、ガス供給システムおよびプラズマ発生器を制御するように構成される。
【0016】
他の特徴では、コントローラは、g)a)~c)およびd)~f)をN回繰り返し、Nはゼロよりも大きい整数であるようにさらに構成される。第2のガスは、三フッ化窒素(NF3)、六フッ化硫黄(SF6)、および四塩化炭素(CF4)からなる群から選択される。コントローラは、a)~g)を実施する前に基板支持体から基板を取り除くように構成される。コントローラは、g)の後に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングするように構成される。コントローラは、N回の各回のd)~f)の後にa)~c)を実施するように構成される。コントローラは、N回の各回のd)~f)の前にa)~c)を実施するように構成される。
【0017】
他の特徴では、コントローラは、a)~g)を実施する前に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;基板処理を実施するように構成される。g)の後に、コントローラは、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される材料で基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;基板処理を実施するように構成される。
【0018】
他の特徴では、基板処理は、エッチングを含む。基板は、スズ(Sn)を含有する。
【0019】
他の特徴では、コントローラは、b)の間、基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御し;e)の間、基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御するように構成される。第1の圧力範囲は、第2の圧力範囲よりも小さい。
【0020】
他の特徴では、第1の圧力範囲は、1~30mTであり、第2の圧力範囲は、30~150mTである。
【0021】
本開示のさらに他の適用可能領域は、詳細な説明、特許請求の範囲および図面から明らかになるであろう。詳細な説明および具体的な例は、単なる例示を目的としており、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0022】
本開示は、詳細な説明および添付の図面から完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示による洗浄システムを含む基板処理システムの一例の機能ブロック図である。
【0024】
【
図2A】本開示による基板処理システムの表面洗浄を示す図である。
【
図2B】本開示による基板処理システムの表面洗浄を示す図である。
【
図2C】本開示による基板処理システムの表面洗浄を示す図である。
【
図2D】本開示による基板処理システムの表面洗浄を示す図である。
【0025】
【
図3A】本開示による基板処理システムの表面洗浄の別の一例を示す図である。
【
図3B】本開示による基板処理システムの表面洗浄の別の一例を示す図である。
【
図3C】本開示による基板処理システムの表面洗浄の別の一例を示す図である。
【
図3D】本開示による基板処理システムの表面洗浄の別の一例を示す図である。
【
図3E】本開示による基板処理システムの表面洗浄の別の一例を示す図である。
【0026】
【
図4】本開示による基板処理システムの表面を洗浄する方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面では、符号は同様および/または同一の要素を識別するために再度使用されることがある。
【0028】
本開示は、金属の交差汚染を軽減するためにチャンバ壁などの処理チャンバの表面を洗浄するシステムおよび方法に関する。本明細書に記載の洗浄方法は、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、鉄(Fe)、および/またはその他の金属などの金属汚染物質を従来の洗浄方法よりも効果的に除去するものである。本開示による洗浄システムおよび方法は、処理チャンバを定期的に元の清潔な状態に戻すために使用できる。
【0029】
処理チャンバ内の金属汚染物質は、エッチング速度の変化などのプロセスシフトをもたらすおそれがある。金属汚染物質は、装置の性能に有害な影響を及ぼす欠陥を生じさせるおそれもある。本明細書に記載の洗浄システムおよび方法は、金属汚染物質を大幅に減少させることができる。
【0030】
例えば、誘導結合プラズマ処理チャンバの表面は通常、ケイ素(Si)または酸化ケイ素(SiOx)などの層で予備コーティングされる。Snを含有する基板のエッチングを実施した後、酸化スズ(SnOx)エッチングの副産物または残留物が処理チャンバの表面に堆積する。洗浄は、分子状塩素(Cl2)を用いる第1のプラズマ処理工程および三フッ化窒素(NF3)を用いる第2のプラズマ処理工程を含んでいてよい。ただし、この化学作用は、不揮発性のエッチング副産物が原因でSnOxエッチングの速度が大変遅い。換言すると、Snハロゲン化物(SnFx、SnClx、およびSnBrx)は不揮発性である。最大300秒の比較的長いエッチング期間であっても、汚染レベルは1e11/cm2から1e12/cm2以上のままである。
【0031】
分子状水素(H2)プラズマを用いる別の洗浄法では、SnまたはSnOxをエッチングして揮発性の水素化スズ(SnHx)を形成する。ただし、SnHxは、高温では安定せず、解離して金属Snに戻り、処理チャンバの表面に再堆積する傾向がある。
【0032】
本開示によるシステムおよび方法は、金属汚染物質を軽減するために処理チャンバ内の表面を洗浄するために用いられる。いくつかの例では、処理チャンバの表面は、SiまたはSiOxなどの層で予備コーティングされる。処理チャンバは、1つ以上の基板を処理するために使用される。処理チャンバから基板を取り除いた後、本システムおよび方法は、四塩化ケイ素(SiCl4)、炭化水素(CxHy、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl2)、四塩化炭素(CCl4)、三塩化ホウ素(BCl3)、および塩化チオニル(SOCl2)からなる群から選択される第1のガスを供給する。いくつかの例では、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、または分子状窒素(N2)などの不活性ガスを供給してエッチングガスを希釈してもよい。プラズマは、第1の所定期間にわたって打たれ、その後消滅する。
【0033】
第1のエッチング工程では、Siに対してSnを選択的にエッチングする。揮発性化合物SnRxOyClzが形成される(式中R=ホウ素(B)、炭素(C)、硫黄(S)、ケイ素(Si)など)。エッチング後、処理チャンバを空にし、その後フッ素種を含有する第2のガスを供給する。いくつかの例では、第2のガスは、三フッ化窒素(NF3)、六フッ化硫黄(SF6)、および四塩化炭素(CF4)からなる群から選択される。いくつかの例では、不活性ガスが供給されてもよい。プラズマは、第2の所定期間にわたって打たれる。第2のエッチング工程では、Snに対してSiを選択的にエッチングする。第1の工程と第2の工程の順序は、逆にできる。
【0034】
いくつかの例では、第1および第2のエッチング工程は、繰り返されないか、予備コーティング層が完全に除去されるか実質的に除去されるまで1回以上繰り返される。複数回のサイクルの後、金属汚染物質レベルを減少させることができる。その後、処理チャンバの表面は、再び予備コーティングされ、基板処理は再び実施される。
【0035】
いくつかの例では、処理チャンバ内の圧力は、第1の工程と第2の工程とで異なる圧力に調整される。他の例では、処理チャンバ内の圧力は、第1の工程と第2の工程とで同じである。追加の詳細を以下にさらに説明する。
【0036】
ここで
図1を参照すると、本開示による基板処理システム110の一例が示されている。本開示を誘導結合プラズマ(ICP)処理チャンバの文脈で説明するが、他の種類の処理チャンバを使用できる。
【0037】
基板処理システム110は、コイル駆動回路111を含む。RF電力にパルスを発生させてオンおよびオフを行い、RF電力の振幅またはレベルを変化させるためにパルス回路114を使用してよい。調整回路113は、1つ以上の誘導コイル116に直接接続されてよい。調整回路113は、RF源112の出力を所望の周波数および/または所望の位相に調整し、コイル116間でコイル116のインピーダンスを一致させて電力を分割する。いくつかの例では、コイル駆動回路111は、RFバイアスの制御とともに以下でさらに説明する駆動回路のうちの1つに置き換えられる。
【0038】
いくつかの例では、高温および/または低温の空気流を用いて誘電体ウィンドウ124の温度を制御するために、コイル116と誘電体ウィンドウ124との間にプレナム120を配置してよい。誘電体ウィンドウ124は、処理チャンバ128の片側に沿って配置される。処理チャンバ128は、基板支持体(またはペデスタル)132をさらに備えている。基板支持体132は、静電チャック(ESC)、または機械チャックまたはその他の種類のチャックを含んでいてよい。処理チャンバ128に処理ガスを供給し、処理チャンバ128の内部にプラズマ140を選択的に発生させる。プラズマ140は、基板134の露出表面をエッチングする。動作中に基板支持体132内の電極にRFバイアスを提供ために駆動回路152を使用してよい。
【0039】
エッチングガス、前駆体ガス、不活性ガスなどの処理ガスを処理チャンバ128に供給するためにガス供給システム156を使用してよい。ガス供給システム156は、ガス源157、バルブおよびマスフローコントローラなどのガス計量システム158、ならびにマニホールド159を含んでいてよい。バルブ61を介してガス162をプレナム120に供給するためにガス供給システム160を使用してよい。ガスは、コイル116および誘電体ウィンドウ124を冷却するために使用する冷却ガス(空気)を含んでいてよい。基板支持体132を所定温度に加熱/冷却するために加熱器/冷却器164を使用してよい。パージまたは排出によって処理チャンバ128から反応物を除去するために、排出システム165がバルブ166およびポンプ167を備えている。バルブ166およびポンプ167は、処理チャンバ内の圧力を制御するために使用されてよい。
【0040】
処理チャンバ内部の圧力を感知するために圧力センサ153を使用してよい。エッチング処理を制御するためにコントローラ154を使用してよい。コントローラ154は、温度および圧力などのシステムパラメータを監視する。コントローラ154は、ガスの供給、プラズマを打ち、維持し、消すこと、反応物の除去、冷却ガスの供給などを制御する。コントローラ154は、処理チャンバ内の圧力を変化させるためにバルブ166およびポンプ167を制御してよい。また、以下に詳述するように、コントローラ154は、本明細書に記載の洗浄プロセスを制御してよい。
【0041】
次に、
図2A~
図2Dを参照すると、本明細書に記載の洗浄システムおよび方法を用いて洗浄している間の処理チャンバ210の表面が示されている。
図2Aには、チャンバ壁などの処理チャンバ210の表面220が示されている。基板処理に先立って、処理チャンバ210の表面220は、予備コーティング層224で処理されてよい。いくつかの例では、予備コーティング層224は、ケイ素(Si)または酸化ケイ素(SiO
x)を含んでいるが、それ以外の予備コーティング層224を使用できる。
【0042】
堆積またはエッチングなどの基板処理過程では、残留物226が予備コーティング層224を汚染する。例えば、予備コーティング層にSnOxを堆積させてよい。残留物を除去するための工程を実施する。
図2Bでは、第1のガスが処理チャンバ210に供給され、プラズマが第1の所定期間にわたって打たれ、その後消失する。いくつかの例では、第1のガスは、四塩化ケイ素(SiCl
4)、四塩化炭素(CCl
4)、炭化水素(C
xH
y、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、および塩化チオニル(SOCl
2)からなる群から選択される。第1のガスは、ケイ素(Si)に対してスズ(Sn)を選択的にエッチングする。
【0043】
処理チャンバ210は、第1の所定期間の後に空にされる。
図2Cでは、フッ素種を含有する第2のガスが処理チャンバ210に供給され、プラズマが第2の所定期間にわたって打たれ、その後消失する。いくつかの例では、第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3)、六フッ化硫黄(SF
6)、および四塩化炭素(CF
4)からなる群から選択される。第2のガスは、Snに対してSiを選択的にエッチングする。この例では、1サイクルのみを実施する。
【0044】
図2Dでは、ケイ素または酸化ケイ素(SiO
x)の予備コーティング層は、前の予備コーティング層の残存物全体にわたって塗布される。例えば、四塩化ケイ素(SiCl
4)、シラン(SiH
4)、もしくはその他のケイ素(Si)などの前駆体ガスまたは酸化ケイ素(SiO
x)前駆体ガスが所定期間にわたって供給され、プラズマが打たれる。いくつかの例では、分子状酸素(O
2)ガスも処理チャンバに供給される。予備コーティング層を堆積した後、基板処理を継続できる。いくつかの例では、予備コーティング層は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)を用いて堆積される。
【0045】
次に、
図3A~
図3Eを参照すると、本明細書に記載の洗浄システムおよび方法を用いて洗浄している間の処理チャンバ310の表面が示されている。
図3Aには、チャンバ壁などの処理チャンバ310の表面320が示されている。基板処理に先立って、処理チャンバ310の表面320に予備コーティング層324が堆積されてよい。いくつかの例では、予備コーティング層324は、ケイ素または二酸化ケイ素を含んでいるが、それ以外の予備コーティング層324を使用できる。
【0046】
基板処理過程では(堆積またはエッチング過程など)、SnまたはSnO
xなどの残留物326が予備コーティング層324を汚染する。プロセスのドリフトまたは欠陥を防ぐために、汚染された予備コーティング層をエッチングする。
図3Bでは、処理チャンバ310に第1のガスが供給され、プラズマが第1の所定期間にわたって打たれる。いくつかの例では、第1のガスは、四塩化ケイ素(SiCl
4)、四塩化炭素(CCl
4)、三塩化ホウ素(BCl
3)、炭化水素(C
xH
y、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2)、および塩化チオニル(SOCl
2)からなる群から選択される。プラズマは、ケイ素(Si)に対してスズ(Sn)を選択的にエッチングする。
【0047】
処理チャンバ310は、第1の所定期間の後に空にされる。
図3Cでは、フッ素種を含む第2のガスが処理チャンバ310に供給され、プラズマが第2の所定期間にわたって打たれる。いくつかの例では、第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3)、六フッ化硫黄(SF
6)、および四塩化炭素(CF
4)からなる群から選択される。プラズマは、Snに対してSiを選択的にエッチングする。
図3Bおよび
図3Cに示した工程は、1回以上繰り返すことができる。いくつかの例では、工程は、予備コーティング層および残留物が表面から除去されるまで繰り返される。
【0048】
図3Dには、予備コーティング層および残留物を除去した後の処理チャンバの表面が示されている。
図3Eでは、酸化ケイ素(SiOx)の予備コーティング層が再び塗布され、処理チャンバは基板処理を再び実施できる状態にある。
【0049】
次に、
図4を参照すると、基板処理システムの表面を洗浄する方法410が示されている。基板処理に先立って、処理チャンバの表面に予備コーティング層を塗布する。414で、基板に1つ以上の基板処理を実施する。基板処理過程では、残留物が処理チャンバの表面に形成される。いくつかの例では、基板処理は、堆積、エッチング、洗浄またはその他の処理を含む。
【0050】
418で、本方法は、そのチャンバが洗浄の対象かどうかを判断する。チャンバの洗浄は、イベントを基準に(イベントが起きたときなど)、または他の基準を用いて、P回ごとの処理サイクル(Pはゼロよりも大きい整数)のように、定期的に実施できる。チャンバの洗浄を418で実施する場合、422で基板を処理チャンバから取り除く(必要であれば)。426で、チャンバの圧力を第1の圧力範囲内の第1の圧力値に設定する。430で、第1のガス(または第2のガス)を処理チャンバに供給し、プラズマを第1の所定期間にわたって打つ。いくつかの例では、第1のガスは、四塩化ケイ素(SiCl4)、四塩化炭素(CCl4)、三塩化ホウ素(BCl3)、炭化水素(CxHy、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl2)、および塩化チオニル(SOCl2)からなる群から選択される。いくつかの例では、第2のガスは、三フッ化窒素(NF3)、六フッ化硫黄(SF6)、および四塩化炭素(CF4)からなる群から選択される。
【0051】
434で、チャンバ圧力を第2の圧力範囲内の第2の圧力値に設定する。438で、第2のガス(または第1のガス)を処理チャンバに供給し、プラズマを第2の所定期間にわたって打つ。442で、プロセスを1回以上繰り返してよい。1回以上のサイクルが完了した後、処理チャンバの表面を予備コーティングし、その後、処理チャンバで追加の基板処理を実施できる。
【0052】
いくつかの例では、塩素種エッチング中のチャンバ圧力は、1~30mT(ミリトル)の所定範囲に維持される。他の例では、塩素種エッチング中のチャンバ圧力は、4~12mTの所定範囲に維持される。他の例では、塩素種エッチング中のチャンバ圧力は、7~9mTの所定範囲に維持される。他の例では、塩素種エッチング中のチャンバ圧力は、8mTに維持される。
【0053】
いくつかの例では、フッ素種エッチング中のチャンバ圧力は、30~150mTの所定範囲に維持される。他の例では、フッ素種エッチング中のチャンバ圧力は、50~80mTの所定範囲に維持される。他の例では、フッ素種エッチング中のチャンバ圧力は、60~70mTの所定範囲に維持される。他の例では、フッ素種エッチング中のチャンバ圧力は、65mTに維持される。
【0054】
いくつかの例では、塩素およびフッ素エッチング種のエッチング期間は、1~30秒の範囲内である。いくつかの例では、塩素およびフッ素エッチング種のエッチング期間は、1~10秒の範囲内である。いくつかの例では、塩素およびフッ素エッチング種のエッチング期間は、3~7秒の範囲内である。いくつかの例では塩素およびフッ素エッチング種のエッチング期間は、5秒である。理解できるように、エッチング期間は、処理チャンバ、エッチングガスの濃度、および使用するプラズマの種類に応じて変化する。また、エッチング期間は、プラズマ電力に応じても変化する。プラズマが高いほどエッチング速度は増し、エッチング期間は短くなる。
【0055】
いくつかの例では、塩素およびフッ素エッチング中のプラズマ電力は、100W~3000Wの範囲内である。いくつかの例では塩素およびフッ素エッチング中のプラズマ電力は、500W~2500Wの範囲内である。いくつかの例では塩素およびフッ素エッチング中のプラズマ電力は、1300W~2300Wの範囲内である。いくつかの例では塩素およびフッ素エッチング中のプラズマ電力は、1800Wである。いくつかの例では、予備コーティング中のプラズマ電力は、500W~2000Wの範囲内である。いくつかの例では、予備コーティング中のプラズマ電力は、500W~1500Wの範囲内である。いくつかの例では、予備コーティング中のプラズマ電力は、1000Wである。
【0056】
いくつかの例では、それぞれのエッチング工程で、100~300標準立方センチメートル(sccm)の塩素種またはフッ素種含有ガスが供給される。いくつかの例では、それぞれのエッチング工程で、200sccmの塩素種またはフッ素種含有ガスが供給される。
【0057】
以上の説明は、単に例示的なものであり、本開示、その応用または使用を何ら限定する意図はない。本開示の幅広い教示は、多様な形態で実施できる。したがって、本開示は特定の実施例を含んでいるが、図面、明細書、および以下の特許請求の範囲を検討することでその他の修正が明らかになるため、本開示の実際の範囲がそのように限定されるべきではない。1つの方法の中の1つ以上の工程は、本開示の原理を変更することなく異なる順序で(または同時に)実行されてよいことを理解すべきである。さらに、各々の実施形態を特定の特徴を有するものとして前述したが、本開示のいずれかの実施形態に関して記載したそのような特徴のいずれか1つ以上を、任意の他の実施形態で実施でき、かつ/または任意の他の実施形態の特徴と組み合わせることができ、その組み合わせが明示的に記載されていなくてもよい。換言すると、記載した実施形態は、相互に排除し合うものではなく、1つ以上の実施形態を互いに入れ替えたものも依然として本開示の範囲内である。
【0058】
要素間(例えば、モジュール間、回路要素間、半導体層間など)の空間的および機能的関係は、「接続され(connected)」、「係合され(engaged)」、「結合され(coupled)」、「隣接する(adjacent)」、「~の隣(next to)」、「~の上に(on top of)」、「~の上方に(above)」、「~の下に(below)」、および「配置され(disposed)」などの様々な用語を用いて記載されている。「直接」と明示的に記載されていなければ、第1の要素と第2の要素との関係が上記の開示に記載されているとき、その関係は、第1の要素と第2の要素との間に他の介入要素がない直接の関係であり得るが、第1の要素と第2の要素との間に(空間的または機能的に)1つ以上の介入要素がある間接の関係でもあり得る。本明細書で使用したように、A、B、およびCのうちの少なくとも1つという句は、非排他的論理ORを使用して、論理の(AまたはBまたはC)という意味に解釈されるべきであり、「Aの少なくとも1つと、Bの少なくとも1つと、Cの少なくとも1つ」という意味に解釈してはならない。
【0059】
いくつかの実施態様では、コントローラはシステムの一部であり、システムは、上記の実施例の一部としてよい。このようなシステムは、1つまたは複数の処理ツール、1つまたは複数のチャンバ、処理用の1つまたは複数のプラットフォーム、および/または特定の処理構成要素(ウエハペデスタル、ガス流システムなど)を含む半導体処理装置を備えることができる。これらのシステムは、半導体ウエハまたは基板を処理する前、その間、およびその後にシステムの動作を制御する電子機器と一体化していてよい。電子機器は、「コントローラ」と呼ばれてよく、1つまたは複数のシステムの様々な構成要素またはサブパーツを制御してよい。コントローラは、システムの処理要件および/または種類に応じて、処理ガスの供給、温度設定(例えば加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、高周波(RF)発生ツールの設定、RF整合回路の設定、周波数設定、流量設定、流体供給の設定、電位および動作の設定、ツールおよびその他の移送ツールの中へまたはそこからのウエハ移送および/または特定のシステムに接続されているか、特定のシステムのインターフェースとなっているロードロックなど、本明細書に開示したいずれかの処理を制御するようにプログラムされてよい。
【0060】
概して、コントローラは、命令を受け、命令を発し、動作を制御し、洗浄動作を可能にし、エンドポイント測定を可能にするなどを行う、様々な集積回路、論理回路、メモリ、および/またはソフトウェアを有する電子機器であると定義されてよい。集積回路は、プログラム命令を保存するファームウェア形態のチップ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)と定義されるチップ、および/または1つ以上のマイクロプロセッサ、またはプログラム命令(例えばソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを備えていてよい。プログラム命令は、半導体ウエハ上で、もしくは半導体ウエハ用に、またはシステムに対して、特定の処理を実行する動作パラメータを定義する様々な個別の設定(またはプログラムファイル)の形態でコントローラへと伝達される命令としてよい。動作パラメータは、いくつかの実施形態では、1つ以上の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、および/またはウエハのダイを製造する過程で1つ以上の処理工程を達成するために処理エンジニアによって定義されたレシピの一部としてよい。
【0061】
コントローラは、いくつかの実施態様では、システムと一体化し、システムと接続している、あるいはシステムとネットワーク接続されている、またはこれらを組み合わせた状態であるコンピュータの一部であってもよいし、このコンピュータに接続していてもよい。例えば、コントローラは、「クラウド」にあってもよいし、あるいはウエハ処理の遠隔アクセスを可能にできるファブホストコンピュータシステムの全体または一部であってもよい。コンピュータは、製造動作の現在の進捗を監視し、過去の製造動作の履歴を調査し、複数の製造動作から傾向または性能メトリックを調査し、現在の処理のパラメータを変更し、処理ステップを設定して現在の処理に従い、または新しい処理を始めるために、システムへの遠隔アクセスを可能にしてよい。いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えばサーバ)は、ネットワークを介してシステムに処理レシピを提供でき、このネットワークは、ローカルネットワークまたはインターネットを含んでいてよい。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインターフェースを含んでいてよく、それらのパラメータおよび設定はその後、リモートコンピュータからシステムへ伝達される。いくつかの例では、コントローラは、1つ以上の動作中に実行される各々の処理工程に対するパラメータを指定するデータ形態の命令を受け取る。パラメータは、実行される処理の種類、およびコントローラがインターフェースするか制御するように構成されるツールの種類に対して固有のものとしてよいと理解すべきである。そのため、前述したように、一緒にネットワーク化され、本明細書に記載した処理および制御などの共通の目的に向かって機能する1つ以上の別個のコントローラを備えることなどによってコントローラを分散してよい。このようにするために分散したコントローラの例が、(例えばプラットホームレベルで、またはリモートコンピュータの一部として)遠隔地に位置する1つ以上の集積回路と通信するチャンバ上にあって、組み合わさってこのチャンバ上の処理を制御する1つ以上の集積回路であろう。
【0062】
非限定的に、例としてのシステムには、プラズマエッチングチャンバまたはモジュール、析出チャンバまたはモジュール、スピンリンスチャンバまたはモジュール、金属めっきチャンバまたはモジュール、洗浄チャンバまたはモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバまたはモジュール、化学蒸着(CVD)チャンバまたはモジュール、原子層堆積(ALD)チャンバまたはモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはモジュール、イオン注入チャンバまたはモジュール、トラックチャンバまたはモジュール、ならびに、半導体ウエハの製造および/または生産に関連するか使用されてよい任意のその他の半導体処理システムがあってよい。
【0063】
上記のように、ツールによって実行される1つまたは複数の処理工程に応じて、コントローラは、他のツール回路もしくはモジュール、他のツール構成要素、クラスタツール、他のツールインタフェース、隣接するツール、近隣のツール、工場全体に位置するツール、主コンピュータ、別のコントローラ、または、ウエハの容器を、半導体製造工場内のツール位置および/または搭載ポートへ運び、そこから運び出す材料輸送に使用されるツールのうちの1つ以上のツールと通信することがあってよい。
本発明は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。
適用例1:
基板処理チャンバの表面を洗浄する方法であって、
a)四塩化ケイ素(SiCl
4
)、四塩化炭素(CCl
4
)、炭化水素(C
x
H
y
、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2
)、三塩化ホウ素(BCl
3
)、および塩化チオニル(SOCl
2
)からなる群から選択される第1のガスを供給すること;
b)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面をエッチングすること;
c)前記プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にすること;
d)フッ素種を含む第2のガスを供給すること;
e)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面をエッチングすること;ならびに
f)前記プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にすること
を含む、方法。
適用例2:
請求項1に記載の方法であって、
g)a)~c)およびd)~f)をN回繰り返し、Nはゼロよりも大きい整数であることをさらに含む、方法。
適用例3:
請求項1に記載の方法であって、前記第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3
)、六フッ化硫黄(SF
6
)、および四塩化炭素(CF
4
)からなる群から選択される、方法。
適用例4:
請求項2に記載の方法であって、a)~g)は、前記基板処理チャンバ内で基板を基板支持体上に配置せずに実施される、方法。
適用例5:
請求項2に記載の方法であって、g)の後に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすることをさらに含む、方法。
適用例6:
請求項1に記載の方法であって、a)~c)は、N回の各回のd)~f)の後に実施される、方法。
適用例7:
請求項1に記載の方法であって、a)~c)は、N回の各回のd)~f)の前に実施される、方法。
適用例8:
請求項2に記載の方法であって、
a)~g)を実施する前に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および
基板処理を実施すること;ならびに
g)の後に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングすること;および
基板処理を実施すること
をさらに含む、方法。
適用例9:
請求項8に記載の方法であって、前記基板処理は、エッチングを含む、方法。
適用例10:
請求項9に記載の方法であって、基板は、スズ(Sn)を含有し、Snの汚染は、g)の後で1e
10
/cm
2
未満である、方法。
適用例11:
請求項1に記載の方法であって、
b)の間、前記基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御すること;および
e)の間、前記基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御し、前記第1の圧力範囲は、前記第2の圧力範囲よりも小さいこと
をさらに含む、方法。
適用例12:
請求項11に記載の方法であって、前記第1の圧力範囲は、1~30mTであり、前記第2の圧力範囲は、30~150mTである、方法。
適用例13:
基板を処理するための基板処理システムであって、
チャンバ壁および基板支持体を有する処理チャンバ;
前記処理チャンバへガスを選択的に供給するガス供給システム;
前記処理チャンバ内にプラズマを選択的に発生させるプラズマ発生器;ならびに
コントローラであって、
a)四塩化ケイ素(SiCl
4
)、四塩化炭素(CCl
4
)、炭化水素(C
x
H
y
、式中xおよびyは整数)および分子状塩素(Cl
2
)、三塩化ホウ素(BCl
3
)、および塩化チオニル(SOCl
2
)からなる群から選択される第1のガスを供給し;
b)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面をエッチングし;
c)プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にし;
d)フッ素種を含有する第2のガスを供給し;
e)前記基板処理チャンバ内でプラズマを打って前記基板処理チャンバの表面をエッチングし;
f)プラズマを消失させて前記基板処理チャンバを空にする
ために、前記ガス供給システムおよび前記プラズマ発生器を制御するように構成される、コントローラ
を含む、基板処理システム。
適用例14:
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、
g)a)~c)およびd)~f)をN回繰り返し、Nはゼロよりも大きい整数であるようにさらに構成される、基板処理システム。
適用例15:
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記第2のガスは、三フッ化窒素(NF
3
)、六フッ化硫黄(SF
6
)、および四塩化炭素(CF
4
)からなる群から選択される、基板処理システム。
適用例16:
請求項14に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、a)~g)を実施する前に前記基板支持体から基板を取り除くように構成される、基板処理システム。
適用例17:
請求項14に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、g)の後に、ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングするように構成される、基板処理システム。
適用例18:
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、N回の各回のd)~f)の後にa)~c)を実施するように構成される、基板処理システム。
適用例19:
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、N回の各回のd)~f)の前にa)~c)を実施するように構成される、基板処理システム。
適用例20:
請求項14に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、
a)~g)を実施する前に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;
基板処理を実施し;
g)の後に、
ケイ素(Si)および酸化ケイ素(SiO
x
)からなる群から選択される材料で前記基板処理チャンバの表面を予備コーティングし;
基板処理を実施する
ように構成される、基板処理システム。
適用例21:
請求項20に記載の基板処理システムであって、前記基板処理は、エッチングを含む、基板処理システム。
適用例22:
請求項21に記載の基板処理システムであって、前記基板は、スズ(Sn)を含有し、Snの汚染は、g)の後で5e
9
/cm
2
未満である、基板処理システム。
適用例23:
請求項13に記載の基板処理システムであって、前記コントローラは、
b)の間、前記基板処理チャンバ内の第1の圧力を第1の圧力範囲内に制御し;
e)の間、前記基板処理チャンバ内の第2の圧力を第2の圧力範囲内に制御し、前記第1の圧力範囲は、前記第2の圧力範囲よりも小さい
ように構成される、基板処理システム。
適用例24:
請求項23に記載の基板処理システムであって、前記第1の圧力範囲は、1~30mTであり、前記第2の圧力範囲は、30~100mTである、基板処理システム。