(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発光組成物
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20241004BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241004BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20241004BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241004BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241004BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20241004BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20241004BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241004BHJP
【FI】
H10K50/12
C09K11/06 660
C09K11/06 690
H10K71/40
H10K85/10
H10K85/60
H10K101:10
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2021537039
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 GB2020050230
(87)【国際公開番号】W WO2020157516
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-21
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,イアン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077069(JP,A)
【文献】特開平08-259939(JP,A)
【文献】国際公開第2009/110186(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/107822(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/153731(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/144863(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/038456(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031840(WO,A1)
【文献】特開2012-191234(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089217(WO,A1)
【文献】特開2006-172762(JP,A)
【文献】特開2018-083941(JP,A)
【文献】Shigeru IKAWA et al.,White polymer light-emitting diodes co-doped with three phosphorescent iridium(III) complexes aimed at improvement,Journal of Luminescence,Vol.155 (2014),Elsevier B.V.,2014年06月04日,pp.368-373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する第1の半導体ホスト化合物と、第1の発光材料と、ポリマーと、を含む、組成物
であって、
前記第1の半導体ホスト化合物が、式(I)又は式(II):
【化1】
【化2】
(式中、
Ar
1
が、非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されているアリーレン基もしくはヘテロアリーレン基であり、
各Yが、独立して、OまたはSであり、
R
1
、R
2
、およびR
3
が、独立して、各出現時において、置換基であり、
各xが、独立して、0、1、2、または3であり、
各bが、独立して、0、1、2、または3である)
を有する、該組成物。
【請求項2】
前記第1の半導体ホスト化合物の前記Tgが、70℃未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の半導体ホスト化合物の前記Tgが、65℃未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマーが、不活性ポリマーである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、非共役骨格を有する、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリスチレンである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の半導体ホスト化合物が、前記組成物の質量の40~95重量%を構成する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の発光材料が、前記組成物の質量の0.5~45重量%を構成する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリマーが、前記組成物の質量の10~40重量%を構成する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第1の発光材料が、燐光発光材料である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の発光材料が、青色発光材料である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記第1の半導体ホスト化合物が、真空準位から2.5eV以下のLUMOを有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物と、1つ以上の溶媒と、を含む、調合物。
【請求項14】
アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間の発光層と、を含む、有機発光デバイスであって、前記発光層が、請求項1~
12のいずれか一項に記載の組成物を含む、有機発光デバイス。
【請求項15】
前記アノードおよびカソードのうちの一方の上方に前記発光層を形成することと、前記発光層の上方に前記アノードおよび前記カソードのうちの他方を形成することと、を含み、前記発光層の形成が、請求項
13に記載の調合物の堆積と、前記1つ以上の溶媒の蒸発と、を含む、請求項
14に記載の有機発光デバイスを形成する方法。
【請求項16】
前記1つ以上の溶媒の蒸発が、前記第1の半導体ホスト材料の前記ガラス転移温度を上回る温度で前記堆積された調合物を加熱することを含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱温度が、80~180℃の範囲内にある、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の実施形態は、特に有機発光ダイオードのための発光組成物に関する。
【0002】
活性有機材料を含有する電子デバイスは、有機発光ダイオード(OLED)、有機光応答デバイス(特に有機太陽電池デバイスおよび有機光センサ)、有機トランジスタ、およびメモリアレイデバイスなどのデバイスで使用するために知られている。活性有機材料を含有するデバイスは、低重量、低消費電力、および柔軟性などの利点を提供する。さらに、可溶性有機材料を使用することで、デバイス製造における溶液処理、例えば、インクジェット印刷またはスピンコーティングの使用が可能となる。
【0003】
OLEDは、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間の1つ以上の有機発光層と、を担持する基板を含んでもよい。
【0004】
正孔は、アノードを通してデバイスに注入され、電子は、デバイスの動作中にカソードを通して注入される。発光材料の最高占有分子軌道(HOMO)内の正孔と最低非占有分子軌道(LUMO)内の電子とが結合して、そのエネルギーを光として放出する励起子を形成する。
【0005】
発光材料としては、低分子材料、高分子材料、および樹状体材料が挙げられる。発光ポリマーとしては、ポリ(アリーレンビニレン)、例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、およびアリーレン繰り返し単位、例えばフルオレン繰り返し単位を含有するポリマーが挙げられる。
【0006】
発光層は、ホスト材料と、ホスト材料から発光ドーパントにエネルギーが伝達される発光ドーパントと、を含んでもよい。例えば、J.Appl.Phys.65,3610,1989には、蛍光発光ドーパント(すなわち、一重項励起子の崩壊を介して光が放出される発光材料)でドープされたホスト材料が開示されている。
【0007】
燐光発光ドーパント(すなわち、三重項励起子の崩壊を介して光が放出される発光ドーパント)もまた知られている。
【0008】
US2016/197275は、OLEDの放出層で使用される混合ホストを開示している。
【発明の概要】
【0009】
本明細書に開示される特定の実施形態の態様の要約を以下に記載する。これらの態様は、これらの特定の実施形態の簡潔な要約を読者に提供するために提示されているだけであり、これらの態様は、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。実際に、本開示は、記載されない場合がある様々な態様および/または態様の組み合わせを包含し得る。
【0010】
OLEDの発光層が、溶液堆積法を使用して層の構成要素を堆積させることによって形成される場合、層を加熱して溶媒を除去することが望ましい。本発明者らは、低いガラス転移温度(Tg)、例えば、約80℃未満のTgを有するホスト材料を含有する発光層を加熱することによって、結果として得られるOLEDからの輝度の急速な減衰をもたらし得ることを見出した。
【0011】
本発明者らは、OLEDの発光層中のポリマーの存在が、OLEDの輝度が減衰する速度を遅らせることができることを見出した。
【0012】
したがって、いくつかの実施形態では、80℃未満のTgを有する半導体ホスト材料と、発光材料と、ポリマーと、を含む、組成物が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つ以上の溶媒に溶解または分散されている、本明細書に記載される組成物を含む調合物が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間の発光層と、を含む、有機発光デバイスが提供され、発光層は、本明細書に記載される組成物を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、アノードおよびカソードのうちの一方の上方に発光層を形成することと、発光層の上方にアノードおよびカソードのうちの他方を形成することと、を含む、有機発光デバイスを形成する方法が提供され、発光層の形成は、本明細書に記載される調合物の堆積と、1つ以上の溶媒の蒸発と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示は、添付の図面と併せて説明される。業界における標準的な慣行に従って、様々な特徴が縮尺どおりに描かれていないことが強調されている。実際、様々な特徴の寸法は、考察を明確にするために、任意に増加または減少され得る。
添付の図面では、同様の構成要素および/または特徴は、同じ参照ラベルを有し得る。さらに、同じタイプの様々な構成要素は、参照ラベルの後にダッシュを付け、同様の構成要素間を区別する第2のラベルを付けることによって区別されてもよい。本明細書では、第1の参照ラベルのみが使用される場合、本説明は、第2の参照ラベルにかかわらず、同じ第1の参照ラベルを有する同様の構成要素のうちのいずれか1つに適用可能である。
【
図1】本開示のいくつかの実施形態によるOLEDを示す。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態によるOLED、および発光層がポリマーを含有しない比較OLEDの輝度対時間のグラフである。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態によるOLED、および発光層がポリマーを含有しない比較OLEDの輝度対時間のグラフである。
【
図4】発光層が半導体ホスト材料を含有しない比較OLEDの輝度対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、アノード101と、カソード105と、アノードとカソードとの間の発光層103と、を含む、一実施形態によるOLED100を示している。デバイス100は、基板107、例えば、ガラスまたはプラスチック基板の上に支持されている。
【0018】
1つ以上のさらなる層、例えば、正孔輸送層、電子輸送層、正孔遮断層、および電子遮断層は、アノード101とカソード105との間に設けられてもよい。デバイスは、2つ以上の発光層を含有してもよい。
【0019】
例示的なデバイス構造としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
アノード/正孔注入層/発光層/カソード
アノード/正孔輸送層/発光層/カソード
アノード/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/カソード
アノード/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子搬送層/カソード。
【0020】
好ましくは、正孔輸送層および正孔注入層のうちの少なくとも1つが存在する。好ましくは、正孔注入層および正孔輸送層の両方が存在する。
【0021】
発光材料としては、赤色、緑色、および青色の発光材料が挙げられる。
【0022】
青色発光材料は、400~490nm、任意選択で、420~490nmの範囲のピークを有する光輝性スペクトルを有してもよい。
【0023】
緑色発光材料は、490nm超~580nm、任意選択で、490nm超~540nmの範囲のピークを有する光輝性スペクトルを有してもよい。
【0024】
赤色発光材料は、任意選択で、その光輝性スペクトルにおいて、580nm超~630nm、任意選択で、585~625nmのピークを有してもよい。
【0025】
式(I)の化合物の光輝性スペクトルは、ポリスチレンフィルム中の材料の5重量%を石英基板上に鋳造し、Hamamatsuから供給される装置C9920-02を使用して窒素環境中で測定することによって測定されてもよい。
【0026】
発光層103は、第1の発光材料でドープされた80℃未満のTgを有する第1の半導体ホスト化合物を含む組成物を含有する。発光層は、ポリマーをさらに含有する。
【0027】
発光層103は、本質的にこれらの材料からなってもよいか、または1つ以上のさらなる材料、例えば、1つ以上のさらなる半導体ホスト材料および/または1つ以上のさらなる発光材料を含有してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、半導体ホスト化合物は、組成物の質量の40~95重量%、任意選択で40~75重量%、任意選択で40~60重量%を構成する。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の発光材料は、組成物の質量の0.5~45重量%、任意選択で5~45重量%、任意選択で10~30重量%を構成する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、組成物の質量の10~40重量%、任意選択で15~30重量%、任意選択で20~25重量%を構成する。
【0031】
第1の発光材料および任意のさらなる発光材料は、蛍光および燐光発光材料から選択されてもよい。
【0032】
蛍光材料の場合、ホスト材料または各ホスト材料の最低励起状態の一重項(S1)は、好ましくは、蛍光発光材料のそれよりも下回る0.1eV以下であり、より好ましくは、蛍光発光材料のそれとほぼ同じであるか、またはそれよりも高い。
【0033】
燐光発光材料の場合、ホスト材料または各ホスト材料の最低励起状態の三重項(T1)エネルギー準位は、好ましくは、燐光発光材料のそれよりも下回る0.1eV以下であり、より好ましくは、燐光発光材料のそれとほぼ同じであるか、またはそれよりも高い。
【0034】
発光層が燐光発光ドーパントを含む場合、ホスト化合物または各ホスト化合物は、好ましくは、2.8eV超、好ましくは3.0eV超のT1を有する。
【0035】
ホスト化合物と燐光発光化合物の三重項エネルギー準位は、低温燐光発光分光法によって測定された燐光発光スペクトルのエネルギー開始から測定することができる(Y.V.Romaovskii et al,Physical Review Letters,2000,85(5),p1027,A.van Dijken et al,Journal of the American Chemical Society,2004,126,p7718)。
【0036】
第1のホスト化合物は、好ましくは真空準位から少なくとも5.8eVの、好ましくは真空準位から少なくとも5.9eVのHOMO準位を有する。
【0037】
第1のホスト化合物は、好ましくは、真空準位から2.5eV以下、任意選択で、真空準位から2.0eV以下のLUMO準位を有する。
【0038】
本明細書に与えられるHOMOおよびLUMO準位は、方形波ボルタンメトリによって測定されたものである。
【0039】
第1のホスト化合物
第1のホスト化合物は、80℃未満、任意選択で75℃、70℃、または65℃以下のTgを有する。
【0040】
第1のホスト化合物は、式(I):
【化1】
(式中、
Ar
1が、非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されているアリーレン基もしくはヘテロアリーレン基であり、
各Yが、独立して、OまたはSであり、
R
3が、独立して、各出現時において、置換基であり、
各xが、独立して、0、1、2、または3である)を有してもよい。
【0041】
Ar1は、単環式または縮合アリーレンまたはヘテロアリーレン基であってもよい。Ar1は、任意選択で、C6-20アリーレンおよび5-20員ヘテロアリーレンから選択される。好ましくは、Ar1は、フェニレンである。
【0042】
Ar1は、非置換であってもよいか、または1つ以上の基R4で置換されていてもよく、R4は、各出現時において、独立して、置換基である。存在する場合、置換基R4は、任意選択で、分岐状、直鎖状、または環状C1-20アルキル(1つ以上の隣接していないC原子が、O、S、CO、またはCOOで置き換えられていてもよい)から選択される。
【0043】
任意選択で、式(I)のジベンゾフランまたはジベンゾフラン基のうちの一方または両方は、それらの2-位を通じてAr1に結合される。
【0044】
好ましくは、各xは、0または1であり、より好ましくは0である。
【0045】
任意選択で、式(I)の化合物は、式(Ia):
【化2】
(式中、aが、0、1、2、または3、好ましくは、0、または1である)を有する。
【0046】
任意選択で、第1のホスト化合物は、式(II):
【化3】
(式中、Ar
1、Y、R
3、およびxは、式(I)に関して記載されるとおりであり、R
1は、置換基であり、R
2は、置換基であり、各bは、独立して、0、1、2、または3である)を有する。
【0047】
任意選択で、R1は、
アルキル、任意選択でC1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、C=O、または-COOから選択される基で置き換えられていてもよい)、および
式-(Ar2)nの基(Ar2が、各出現時において、独立して、非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されているC6-20アリールまたは5~20員ヘテロアリール基であり、nが、少なくとも1、任意選択で1、2、または3である)からなる群から選択される。
【0048】
本明細書で使用されるアルキル基の「非末端のC原子」とは、n-アルキル鎖の末端のメチル基または分岐アルキル鎖の末端のメチル基以外のアルキル鎖の原子を意味する。
【0049】
任意選択で、Ar2は、フェニルである。
【0050】
Ar2の置換基は、存在する場合、C1-12アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、C=O、または-COOから選択される基で置き換えられていてもよく、アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)から選択され得る。
【0051】
存在する場合、R2は、各出現時において、独立して、C1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、アルキルの非末端の炭素原子が、O、S、C=O、またはCOOで置き換えられていてもよく、アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)からなる群から選択され得る。
【0052】
好ましくは、bは、0または1であり、より好ましくは、0である。
【0053】
式(II)の化合物は、式(IIa):
【化4】
を有してもよい。
【0054】
式(I)の例示的な化合物は、以下である。
【化5】
【0055】
式(II)の例示的な化合物は、以下である。
【化6】
【0056】
ポリマー
ポリマーは、不活性ポリマー、すなわち、OLEDの発光層内の正孔または電子輸送に寄与しないポリマーであってもよい。
【0057】
不活性ポリマーは、好ましくは、非共役骨格、例えば、非置換であってもよいか、または1つ以上の置換基で置換されていてもよい、sp3-混成炭素原子の直鎖状または分岐状骨格を有する。単環式芳香環は、例えば、ポリスチレン中にあるように、ポリマー骨格から懸垂していてもよい。
【0058】
不活性ポリマーは、第1の発光材料よりも少なくとも1eV深い(真空準位から離れた)HOMOを有してもよい。不活性ポリマーは、組成物の任意の他の材料よりも浅い(真空により近い)LUMOを有してもよい。
【0059】
不活性ポリマーの最低三重項励起状態(T1)は、発光層中の任意の他の材料のそれよりも好適に高い。任意選択で、ポリマーのT1は少なくとも3.0eV、任意選択で少なくとも3.5eVである。
【0060】
任意選択で、ポリマーの重量平均分子量は、少なくとも10,000、任意選択で少なくとも100,000、任意選択で少なくとも250,000である。任意選択で、ポリマーのMwは、最大約2,000,000であってもよい。
【0061】
発光化合物
本明細書に記載される第1の発光材料およびさらなる発光材料を含む、発光層のための発光材料としては、各々が蛍光性または燐光発光性であってもよい高分子および非高分子発光材料が挙げられる。
【0062】
好ましくは、第1の発光材料は、非高分子発光材料である。
【0063】
例示的な燐光発光化合物は、式(IX):
ML1
qL2
rL3
s
(III)
(式中、Mが、金属であり、L1、L2、およびL3の各々が、独立して、非置換であってもよいか、または1つ以上の置換基で置換されていてもよい配位基であり、qが、正の整数であり、rおよびsが、各々独立して、0または正の整数であり、(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計が、M上で利用可能な配位点の数に等しく、aが、L1上の配位点の数であり、bが、L2上の配位点の数であり、cが、L3上の配位点の数である)を有する。
【0064】
a、b、およびcは、好ましくは、各々独立して、1、2、または3である。好ましくは、L1、L2、およびL3は、各々、二座配位子である(a、b、およびcは、各々、2である)。一実施形態では、qは3であり、rおよびsは0である。別の実施形態では、qは、1または2であり、rは、1であり、sは、0または1であり、好ましくは、0である。
【0065】
重元素Mは、強力なスピン軌道結合を誘導し、三重項以上の状態からの迅速なシステム間交差および発光を可能にする。好適な重金属Mとしては、dブロック金属、特に2列目および3列目の元素、すなわち39~48および72~80の元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、および金が挙げられる。イリジウムが、特に好ましい。
【0066】
例示的な配位子L
1、L
2、およびL
3は、式(IV):
【化7】
(式中、Ar
5およびAr
6は、同じであってもよいか、または異なっていてもよく、独立して、置換または非置換アリールまたはヘテロアリールから選択されてもよく、X
1およびY
1は、同じであってもよいか、または異なってもよく、独立して、炭素または窒素から選択されてもよく、Ar
5およびAr
6は、一緒に縮合されてもよい)のポルフィリンまたは二座配位子などの炭素または窒素供与体を含む。X
1が炭素であり、Y
1が窒素である配位子が好ましく、特に、Ar
5が単環であるか、またはN原子およびC原子のみの縮合ヘテロ芳香族であり、例えば、ピリジルまたはイソキノリンであり、Ar
6が単環または縮合芳香族であり、例えば、フェニルまたはナフチルである配位子が好ましい。
【0067】
Ar5およびAr6の各々は、1つ以上の置換基を担持してもよい。これらの置換基のうちの2つ以上が連結して、環、例えば芳香環を形成してもよい。好ましい置換基は、D、F、C1-20アルキル基(1つ以上の隣接していないC原子が、O、S、CO、またはCOOで置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)、非置換であってもよいか、または1つ以上の置換基で置換されていてもよいフェニルまたはビフェニル、任意選択で1つ以上のC1-10アルキルまたはC1-12アルコキシ基、ならびにデンドロンから選択される。
【0068】
赤色発光を達成するために、Ar5は、フェニル、フルオレン、ナフチルから選択されてもよく、Ar6は、キノリン、イソキノリン、チオフェン、およびベンゾチオフェンから選択される。
緑色発光を達成するために、Ar5は、フェニルまたはフルオレンから選択されてもよく、Ar6は、ピリジンであってもよい。
【0069】
青色発光を達成するために、Ar5は、フェニルから選択されてもよく、Ar6は、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、およびテトラゾールから選択されてもよい。
【0070】
X
1が炭素であり、Y
1が窒素である式(X)の二座配位子の実施例は、
【化8】
(式中、R
14が、置換基であり、各C原子が、独立して、非置換であってもよいか、または置換基R
15で置換されていてもよい)である。
【0071】
置換基R14およびR15は、好ましくは、C1-40ヒドロカルビル基、好ましくは直鎖状、分岐状、または環状C1-20アルキル基、非置換であってもよいか、または1つ以上のC1-12アルキル基で置換されていてもよいフェニルまたはビフェニル、ならびにデンドロンから選択される。
【0072】
dブロック元素との使用に好適な他の配位子としては、各々が置換されていてもよいO、O-二座配位子、任意選択でジケトン酸塩、O、N-二座配位子、およびN、N-二座配位子、特にアセチルアセトネート(acac)、テトラキス-(ピラゾール-1-イル)ボレート、2-カルボキシピリジル、トリアリールホスフィン、およびピリジンが挙げられる。
【0073】
L1、L2、およびL3のうちの1つ以上は、カルベン基を含んでもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、式(III):
(qは、2または3であり、各L1は、式(IV);
rは、0または1であり、L2は、存在する場合、式(IV)のC、N-二座配位子またはO、O-、N、N-もしくはO、N-二座配位子であり;
sは、0であり、
Mは、イリジウムである)の青色燐光発光材料を含む。
【0075】
本明細書に記載されるデンドロンは、金属錯体の配位子に結合した分岐点と、2つ以上の樹状分岐と、を含む。好ましくは、デンドロンは、少なくとも部分的に共役され、分岐点および樹状分岐のうちの少なくとも1つは、アリール基またはヘテロアリール基、例えば、フェニル基を含む。1つの配置では、分岐点基および分岐基はすべてフェニルであり、各フェニルは、独立して、1つ以上の置換基、例えば、C1-20アルキルまたはアルコキシで置換されてもよい。
【0076】
デンドロンは、任意選択で、置換された式(V)
【化9】
(式中、BPは、コアへの結合の分岐点を表し、G
1は、第1世代分岐基を表す)を有していてもよい。
【0077】
デンドロンは、第1、第2、第3、またはそれ以上の世代のデンドロンであってもよい。G
1は、任意選択で、置換された式(Va):
【化10】
(式中、uは、0または1であり、vは、uが0の場合は0であるか、またはuが1の場合は0もしくは1であってもよく、BPが、コアへの結合のための分岐点を表し、G
1、G
2、およびG
3が、第1、第2、および第3世代のデンドロン分岐基を表す)のように、2つ以上の第2世代分岐基G
2などで置換されてもよい。好ましい一実施形態では、BPおよびG
1、G
2…G
nの各々は、フェニルであり、各フェニルBP、G
1、G
2…G
n-1は、3,5-連結フェニルである。
【0078】
好ましいデンドロンは、式(Vb):
【化11】
(式中、*は、デンドロンの配位子への結合点を表す)の置換または非置換のデンドロンである。
【0079】
BPおよび/または任意の基Gは、1つ以上の置換基、例えば、1つ以上のC1-20アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0080】
発光層は、第1の発光材料と、1つ以上のさらなる発光材料、例えば、一緒に白色発光を提供する発光材料の混合物とを含んでもよい。
【0081】
白色発光OLEDは、本明細書に記載される発光組成物を含有する単一の白色発光層を含有してもよいか、または組み合わせると白色光を生成する異なる色を放出する2つ以上の層を含有してもよく、発光層のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載される組成物を含む。
【0082】
白色発光OLEDから放出される光は、2500~9000Kの範囲の温度で黒体によって放出されるものと同等のCIEx座標、および黒体によって放出される当該光のCIEy座標の0.05または0.025以内のCIEy座標、任意選択で、2700~6000Kの範囲の温度で黒体によって放出されるものと同等のCIEx座標を有してもよい。
【0083】
電荷輸送および電荷遮断層
本明細書に記載されるOLEDは、電荷輸送および電荷遮断層から選択される1つ以上の層を有してもよい。
【0084】
正孔輸送層は、アノードとOLEDの発光層(複数可)との間に設けられてもよい。電子輸送層は、カソードと発光層(複数可)との間に設けられてもよい。
【0085】
電子遮断層は、アノードと発光層(複数可)との間に設けられてもよく、正孔遮断層は、カソードと発光層(複数可)との間に設けられてもよい。電荷輸送層および電荷遮断層は、組み合わせて使用されてもよい。層内の材料(複数可)のHOMOおよびLUMO準位に応じて、単一の層は、正孔および電子のうちの一方を輸送し、正孔および電子のうちの他方を遮断してもよい。
【0086】
存在する場合、アノードと発光層(複数可)との間に位置する正孔輸送層は、好ましくは、方形波ボルタンメトリによって測定される5.5eV以下、より好ましくは約4.8~5.5eVまたは4.9~5.3eVのHOMO準位を有する材料を有する。正孔輸送層内の材料のHOMO準位は、発光層の発光材料の0.2eV以内、任意選択で0.1eV以内となるように選択されてもよい。発光層の不活性ポリマーは、正孔輸送層の任意の材料よりも少なくとも1eV深いHOMO準位を有し得る。
【0087】
正孔輸送層は、高分子または非高分子電荷輸送材料を含有してもよい。正孔輸送ポリマーは、WO99/54385、WO2004/060970、WO2005/049546、またはWO2013/108023に記載されるようなものであってもよく、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
電荷輸送層または電荷遮断層は、特に電荷輸送層または電荷遮断層の上にある層が溶液から堆積される場合、架橋されてもよい。この架橋のために使用される架橋性基は、このような反応性二重結合、およびビニルもしくはアクリレート基、またはベンゾシクロブタン基を含む架橋性基であってもよい。架橋性基は、電荷輸送層または電荷遮断層を形成するために使用される電荷輸送材料または電荷遮断材料の置換基として提供されてもよいか、またはそれと混合されてもよい。架橋性基は、正孔輸送ポリマーの繰り返し単位の置換基として、例えば、WO2016/005749に記載されるように提供されてもよく、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
燐光発光材料を含有する発光層に隣接する電荷輸送層は、好ましくは、三重項励起子の消光を回避するために、燐光発光材料(複数可)のT1励起状態エネルギー準位よりも低く、好ましくはそれと同じ、またはそれよりも高い、0.1eV以下の最低三重項励起状態(T1)励起状態を有する電荷輸送材料を含有する。
【0090】
本明細書に記載される電荷輸送層は、非放射性であってもよいか、またはその層が電荷輸送発光層であるように発光材料を含有してもよい。電荷輸送層がポリマーである場合、発光ドーパントは、ポリマーの側鎖基、ポリマーの骨格内の繰り返し単位、またはポリマーの末端基として提供されてもよい。任意選択で、本明細書に記載される正孔輸送ポリマーは、ポリマーの側鎖基、ポリマーの骨格内の繰り返し単位、またはポリマーの末端基の中に燐光発光ポリマーを含む。
【0091】
正孔注入層
導電性有機または無機材料から形成され得る導電性正孔注入層は、アノードから半導体ポリマーの層(複数可)への正孔注入を支援するために、
図1に示すように、アノード101とOLEDの発光層103との間に設けられてもよい。ドープされた有機正孔注入材料の例としては、任意選択で置換されたドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、特に、EP0901176およびEP0947123に開示されているポリスチレンスルホネート(PSS)などの電荷バランシングポリ酸とドープされたPEDOT、ポリアクリル酸またはフッ化スルホン酸、例えばNafion(登録商標)、US5723873およびUS5798170に開示されているポリアニリン、ならびに任意選択で置換されたポリチオフェンまたはポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。導電性無機材料の例としては、遷移金属酸化物、例えば、Journal of Physics D: Applied Physics(1996),29(11),2750-2753に開示されているVOx、MoOx、およびRuOxが挙げられる。
【0092】
カソード
カソード105は、OLEDの発光層への電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードと発光材料との間の有害な相互作用の可能性などの他の要因が、カソードの選択に影響を与える。カソードは、アルミニウムの層などの単一の材料からなってもよい。代替的に、カソードは、例えば、WO98/10621に開示されている、金属などの複数の導電性材料、例えば、低仕事関数材料および高仕事関数材料、例えばカルシウムおよびアルミニウムの二重層を含んでもよい。カソードは、例えば、WO98/57381、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634、およびWO02/84759に開示されているような元素のバリウムを含んでもよい。カソードは、薄い層の金属化合物(例えば、1~5nm)、特にアルカリもしくはアルカリ土類金属の酸化物もしくはフッ化物をデバイスの有機層と1つ以上の導電性カソード層との間に、電子注入を支援するために、例えば、WO00/48258に開示されているフッ化リチウム、Appl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されているフッ化バリウム、および酸化バリウムを含んでもよい。デバイスへの電子の効率的な注入を提供するために、カソードは、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数は、例えば、Michaelson,J.Appl.Phys.48(11),4729,1977に見出すことができる。
【0093】
カソードは、不透明であってもよいか、または透明であってもよい。透明なカソードは、そのようなデバイス内の透明なアノードを通る発光が発光画素の下に位置する駆動回路によって少なくとも部分的に遮断されるため、活性マトリックスデバイスに特に有利である。透明なカソードは、透明であるのに十分に薄い電子注入材料の層を含む。典型的には、この層の側方導電性は、その薄さの結果として低くなる。この場合には、電子注入材料の層は、より厚い層の透明導電性材料、例えばインジウムスズ酸化物と組み合わせて使用される。
【0094】
透明なカソードデバイスは、(当然ながら、完全に透明なデバイスが所望ではない場合は)透明なアノードを有する必要がないので、底部発光デバイスのために使用される透明なアノードは反射性材料の層、例えばアルミニウムの層と置き換えられてもよいか、または補完されてよいことは理解されるであろう。透明なカソードデバイスの例は、例えば、GB2348316に開示されている。
【0095】
封入
有機系の光電子デバイスは、水分および酸素に感受性である傾向がある。したがって、基板は、好ましくはデバイス内への水分および酸素の進入を防止するための優れた障壁特性を有する。基板は一般にガラスであるが、特にデバイスの柔軟性が所望である場合には、代替の基板を使用することができる。例えば、基板は、1つ以上のプラスチック層、例えば代替プラスチックおよび誘電体障壁層、または薄層ガラスおよびプラスチックの積層板の基板を含んでもよい。
【0096】
デバイスは、水分および酸素の進入を防止するために封入材料を用いて封入することができる。好適な封入材料としては、ガラス板、好適な障壁特性を有するフィルム、例えば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、窒化ケイ素またはポリマーおよび誘電体の交互スタック、または気密容器が挙げられる。透明なカソードデバイスの場合には、透明な封入層、例えば、一酸化ケイ素もしくは二酸化ケイ素は、ミクロンレベルの厚さへ堆積されてもよいが、1つの好ましい実施形態では、そのような層の厚さは20~300nmの範囲内にある。基板もしくは封入材料を通して浸透することができる任意の大気水分および/または酸素を吸収するためのゲッター材料は、基板と封入材料との間に配置されてもよい。
【0097】
調合物の処理
OLEDの発光層を形成するのに好適な調合物は、1つ以上の溶媒中に本明細書に記載される組成物の構成要素を溶解または分散させることによって形成されてもよい。
【0098】
調合物は、組成物の溶液であってもよいか、または組成物の1つ以上の構成要素が溶解していない分散液であってもよい。好ましくは、調合物は、溶液である。
【0099】
例示的な溶媒としては、1つ以上のC1-10アルキルまたはC1-10アルコキシ基で置換されたベンゼン、例えば、トルエン、キシレン、およびメチルアニソールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
調合物は、少なくとも100℃、任意選択で110℃、または120℃の沸点を有する少なくとも1つの溶媒を含有してもよい。
【0101】
特に好ましい溶液堆積技術は、スピンコーティング、インクジェット印刷およびスロットダイコーティングなどの印刷およびコーティング技術を含む。
【0102】
スピンコーティングは、発光層のパターン化が不要であるデバイスのため、例えば、照明用途または単純単色分割表示に特に好適である。
【0103】
インクジェット印刷は、大量の情報の内容表示、特にフルカラー表示に特に好適である。デバイスは、第1の電極の上方にパターン化層を提供すること、および1色(単色デバイスの場合)または多色(マルチカラー、特にフルカラーデバイスの場合)を印刷するためのウェルを規定することよってインクジェット印刷されてもよい。パターン化層は、典型的には、例えば、EP0880303に記載されるように、ウェルを規定するようにパターン化されたフォトレジストの層である。
【0104】
ウェルの代替物として、インクを、パターン化層内に規定されたチャネル内に印刷してもよい。特に、フォトレジストは、ウェルとは異なり、複数の画素の上方に伸長し、チャネル端部で閉鎖または開放することのできるチャネルを形成するためにパターン化されてもよい。
【0105】
他の溶液堆積技術としては、浸漬コーティング、ロール印刷、およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0106】
調合物の堆積後、調合物を大気圧または真空で加熱して、溶媒(複数可)を蒸発させてもよい。任意選択で、調合物を、第1のホストのTgを上回る温度に加熱する。任意選択で、調合物を、80~180℃、任意選択で100~150℃の範囲の温度に加熱する。
【実施例】
【0107】
材料
以下の反応スキームに従って、ホスト2を調製した。
【化12】
【0108】
ステップ1-中間体3の合成
機械的オーバーヘッド撹拌機、窒素吸気、および排気を備えた10Lの3口丸底フラスコ中で、1,3-ジブロモベンゼン(288g、1.220mol)をテトラヒドロフラン(2L)中で取り出し、-78℃に冷却した。
【0109】
ヘキサン(443mL、1.109mol)中の2.5Mのn-ブチルリチウムをゆっくりと添加し、同じ温度で2時間撹拌した。THF(500mL)中の9-フルオレノン(200g、1.109mol)を同じ温度でゆっくりと添加した。反応混合物を室温にし、18時間撹拌した後、飽和NH4Cl溶液(200mL)で消光し、EtOAc(3×1L)で抽出した。
【0110】
組み合わせた有機相を水(1000mL)、食塩水(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。
【0111】
残渣は、約60%の中間体3を示し、これをさらに精製することなく使用した。
【0112】
ステップ2-中間体4の合成
中間体3(約60%純度、420g、0.771mol)およびトリエチルシラン(186mL、1.156mol)を、機械式オーバーヘッド撹拌機、窒素吸気、および排気を備えた10Lの3口丸底フラスコ中の乾燥ジクロロメタン(3L)中で取り出した。
【0113】
反応混合物を-10℃に冷却し、0.5時間撹拌した。トリフルオロ酢酸(175mL、2.313mol)をゆっくりと添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。粗GCMS分析により、出発物質の完全な変換が示された。反応混合物を水(300mL)で消光し、有機相を水(500mL)、ブライン(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮して、326gの粗生成物を得た。
【0114】
粗生成物を、ヘキサン中の3~4%酢酸エチルを溶出液として使用するシリカカラムクロマトグラフィーによって精製し、生成物をメタノールで粉砕して、92.9%のHPLC純度を有する216gの中間体4を得た。ホットアセトニトリルを使用して化合物を結晶化して、97.02%純度を有する195gの中間体4を得た。
【0115】
ステップ3-中間体5の合成
中間体4(195g、0.607mol)を乾燥テトラヒドロフラン(1800mL)に溶解させ、機械式オーバーヘッド撹拌機、窒素吸気、および排気を備えた10Lの3口丸底フラスコ中でN2で1時間脱気し、次いで-20℃に冷却した。
【0116】
脱気THF(1200mL)に、カリウムtert-ブトキシドカリウム(68.1g、0.607mol)を添加し、1時間窒素パージした。ヨウ化メチル(37.9mL、0.607mol)および脱気カリウムtert-ブトキシド溶液を中間体4に滴下添加した。
【0117】
反応混合物をゆっくりと室温に温め、18時間撹拌した。次いで反応混合物をNH4Cl溶液(500mL)で消光し、酢酸エチル(3×1L)で抽出した。組み合わせた有機相を水(1L)、ブライン(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した(210g)。粗生成物(210g)を、溶出液としてヘキサン中の5~6%酢酸エチルを使用してシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋な画分をホットメタノール結晶化によって2回精製して、99.19%HPLC純度を有する155gの中間体5を得た。
【0118】
ステップ4-ホスト2の合成
トルエン(360mL)中の中間体5(18g、0.053mol)およびジベンゾチオフェン-4ボロン酸(18.3g、0.053mol)の混合物に、N2ガスを1時間パージした。別の容器で、25%水酸化テトラエチルアンモニウム(124mL、0.212mol)溶液をN2で1時間脱気した。
【0119】
反応混合物を60℃に加熱した。S-phos(0.43g、0.0011mol)およびPd2(dba)3(0.41g、0.00053mol)を60℃で添加した。脱気した水酸化テトラエチルアンモニウムを添加し、110℃で18時間還流させた。反応混合物を濾過し、トルエンで洗浄した。有機相を水(400mL)、ブライン(300mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した(28g)。粗生成物を、ヘキサン中5%酢酸エチルを溶出液として使用してシリカカラムクロマトグラフィーによって精製して、91.6%HPLC純度を有する24gのホスト2を得た。
【0120】
生成物をホットトルエン/アセトニトリルで2回再結晶して、99.70%純度を有する16gを得、次いでトルエンに溶解させ、濃縮硫酸で洗浄し、濃縮して、99.91%HPLC純度有する15.5gのM849を得た。
【0121】
HOMOおよびLUMO測定
設備:
ソフトウェアを備えたCHI660D Electrochemical workstation(IJ Cambria Scientific Ltd))
CHI 104 3mm Glassy Carbon Disk Working Electrode(IJ Cambria Scientific Ltd))
白金ワイヤ補助電極
参照電極(Ag/AgCl)(Havard Apparatus Ltd)
【0122】
化学物質
アセトニトリル(Hi-dry無水グレード-ROMIL)(セル溶液溶媒)
トルエン(Hi-dry無水グレード)(サンプル調製溶媒)
フェロセン-FLUKA(参照標準)
テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート-FLUKA(セル溶液塩)
【0123】
サンプル調製
半導体ホスト化合物のHOMOおよびLUMO値は、トルエン中の希釈溶液(0.3重量%)から測定した。
【0124】
電気化学セル
測定セルは、電解質、ガラス状炭素作用電極、白金対電極、およびAg/AgCl参照ガラス電極を含有する。フェロセンは、参照材料(LUMO(フェロセン)=-4.8eV)として実験の終わりにセルに添加する。
【0125】
Tg測定
本明細書に与えられるTg値は、以下の方法に従ってPerkinElmer DSC8500を使用した示差走査熱量測定によって測定された。
装置を、20ml/分で窒素ガスでパージする。
【0126】
5~10mgのサンプルをサンプルパンに秤量し、蓋をサンプルパンに圧着して閉じる。
【0127】
参照パン(空のサンプルパンおよび蓋)を参照炉内に配置し、サンプルをサンプル炉内に充填する。
【0128】
加熱および冷却は、以下の温度プログラムに従って実施する。
1)-50.00℃で1.0分間保持する。ステップ開始時に20.0ml/分でガスをヘリウムに切り替える。
2)300.00℃/分で-50.00℃から300.00℃まで加熱する。
3)300.00℃で1.0分間保持する。
4)300.00℃/分で300.00℃から50.00℃まで冷却する。
5)-50.00℃で1.0分間保持する。
6)20.00℃/分で-50.00℃から300.00℃まで加熱する。
7)300.00℃で1.0分間保持する。
8)20.00℃/分で300.00℃から-50.00℃まで冷却する。
9)-50.00℃で1.0分間保持する。
10)100.00℃/分で-50.00℃から300.00℃まで加熱する。
11)300.00℃で1.0分間保持する。
12)100.00℃/分で300.00℃から-50.00℃まで冷却する。
13)-50.00℃で1.0分間保持し、ステップ終了時に20.0ml/分でガスを窒素に切り替える。
【0129】
分析後、サンプルTgは、20℃/分の上昇温度ランプから判定される(すなわち、上記のステップ6)。100℃/分の降下温度ランプを使用して、Tg事象を確認する。
【0130】
調合物実施例1
ホスト1(50重量%)、青色燐光発光体1(25重量%)、およびポリスチレン(25重量%)の調合物を混合キシレンに溶解させた。
【化13】
ホスト1は、54℃のTgおよび1.78eVのLUMOを有する。
【0131】
比較調合物1
比較の目的のために、ポリスチレンを省略し、ホスト1と青色燐光発光体1との重量比を75:25としたことを除いて、調合物実施例1について記載されたとおりに調合物を調製した。
【0132】
調合物実施例2
ホスト2(55重量%)、青色燐光発光体2(25重量%)、およびポリスチレン(20重量%)の調合物を混合キシレンに溶解させた。
【化14】
ホスト2は、62℃のTgおよび1.93eVのLUMOを有する。
【0133】
比較調合物2
比較の目的のために、ポリスチレンを省略し、ホスト2と青色燐光発光体2との重量比を75:25としたことを除いて、調合物実施例2について記載されたとおりに調合物を調製した。
【0134】
デバイス実施例1
以下の構造を有する有機発光デバイスを作製した。
ITO/HIL/HTL/LEL/ETL/カソード
式中、ITOはインジウム-スズ酸化物アノードであり、HILは正孔注入材料を含む正孔注入層であり、HTLは正孔輸送層であり、LELは発光層であり、ETLは電子輸送層である。
【0135】
ITO(45nm)を担持する基板をUV/オゾンを使用して洗浄した。Nissan Chemical Industriesから入手可能な正孔注入材料の調合物をスピンコーティングすることにより、約35nmの厚さに正孔注入層を形成した。架橋性フルオレン繰り返し単位、アミン繰り返し単位、および赤色燐光発光繰り返し単位を含有する架橋性正孔輸送ポリマーをスピンコーティングし、180℃で加熱することによってポリマーを架橋することにより、約20nmの厚さに正孔輸送層を形成した。スピンコーティング調合物実施例1によって約90nmの厚さに発光層を形成し、続いて130℃で10分間加熱した。電子輸送層は、WO2012/133229に記載されている電子輸送単位1のセシウム塩を含むポリマーを10nmの厚さにスピンコーティングすることによって形成した。約10nm厚のフッ化ナトリウムの第1の層、約100nm厚のアルミニウムの層、および約100nm厚の銀の層の電子輸送層上にカソードを形成した。
【化15】
【0136】
デバイス実施例2
調合物実施例1の代わりに調合物実施例2を使用したことを除いて、デバイス実施例1について記載したようにデバイス実施例2を作製した。
【0137】
比較デバイス1および2
比較調合物1および2をそれぞれ調合物実施例1および2の代わりに使用したことを除いて、それぞれデバイス実施例1および2について記載したように比較デバイス1および2を作製した。
【0138】
図2を参照すると、T
70(輝度が一定電流の初期値の70%まで低下するのに要した時間)は、デバイス実施例1の場合の方が比較デバイス1の場合よりもはるかに長い。
【0139】
図3を参照すると、T
70は、デバイス実施例2の場合の方が比較デバイス2の場合よりもはるかに長い。
【0140】
比較デバイス3
ポリスチレン(50重量%)および燐光発光青色発光体3(50重量%)を含有する調合物から発光層を形成したことを除いて、デバイス実施例1について記載したように比較デバイス3を作製した。
【化16】
【0141】
比較デバイス4
比較デバイス4は、ポリスチレン:燐光発光青色発光体3の重量比が、40:60であったことを除いて、比較デバイス3について記載したように作製した。
【0142】
図4を参照すると、輝度の非常に急速な減衰が観察され、デバイス実施例1および2で観察された寿命の改善は、ポリスチレンの存在のみに起因するものではないことが実証された。
【0143】
上記の説明は、好ましい例示的な実施形態(複数可)のみを提供し、本発明の範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図するものではない。むしろ、好ましい例示的な実施形態(複数可)の後続の記載は、本発明の好ましい例示的な実施形態を実装するための有効な記載を当業者に提供するであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、異なる実施形態の特徴の組み合わせを含む要素の機能および配置に様々な変更が行われ得ると理解されたい。
【0144】
文脈が別途明確に必要としない限り、説明および特許請求の範囲を通じて、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的または網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、「含むが、これらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、用語「接続される」、「結合される」、またはそれらの任意の変形は、2つ以上の要素間の直接的または間接的ないずれかの任意の接続または結合を意味し、要素間の結合または接続は、物理的、論理的、電磁的、またはそれらの組み合わせであり得る。追加的に、単語「本明細書」、「上」、「下」、および同様の意味の単語は、本出願で使用される場合、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではない。文脈が許す限り、単数または複数の数字を使用する「発明を実施するための形態」の単語には、それぞれ複数または単数も含まれ得る。2つ以上の項目のリストに関しての単語「または」は、単語の以下の解釈のすべて、つまり、リスト内の項目のいずれか、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組み合わせをカバーする。
【0145】
本明細書で提供される技術の教示は、必ずしも以下に説明されるシステムではなく、他のシステムに適用可能である。以下に記載される様々な実施例の要素および動作を組み合わせて、技術のさらなる実装形態を提供することができる。技術のいくつかの代替の実装形態は、以下に説明されるそれらの実装形態に対する追加の要素だけでなく、より少ない要素も含み得る。
【0146】
これらおよび他の変更は、以下の詳細な説明に照らし合わせて本技術に加えることができる。説明は、技術の特定の例を説明し、企図される最良のモードを説明しているが、説明がどれほど詳細に見えるとしても、本技術は多くの方法で実践することができる。システムの詳細は、その具体的な実装形態においてかなり異なる場合があるが、本明細書に開示される技術にはなおも包含されている。上述したように、本技術の特定の特徴または態様を説明する際に使用される特定の用語は、その用語が関連する技術の任意の特定の特性、特徴、または態様に限定されるように本明細書で用語が再定義されていることを暗示するとみなされるべきではない。一般に、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、「発明を実施するための形態」セクションがそのような用語を明示的に定義しない限り、本技術を本明細書に開示される特定の例に限定すると解釈されるべきではない。したがって、本技術の実際の範囲は、開示された実施例だけでなく、特許請求の範囲に基づく技術を実践または実装するすべての同等の方法も包含する。
【0147】
請求項の数を減少させるために、本技術の特定の態様は、特定の特許請求の範囲の形態で以下に提示されるが、本出願人は、本技術の様々な態様を任意の特許請求の範囲の形態で企図している。例えば、本技術のいくつかの態様は、コンピュータ可読媒体の特許請求の範囲として列挙され得るが、他の態様は、同様に、コンピュータ可読媒体の特許請求の範囲として、またはミーンズプラスファンクションの特許請求の範囲で具体化されるなど、他の形態で具体化されてもよい。
【0148】
上の説明では、説明の目的で、開示される技術の実装形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、開示される技術の実施形態がこれらの特定の詳細のうちのいくつかを伴わずに実践できることは、当業者には明らかであろう。