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特許7565948熱堆積ケイ素含有膜のための組成物およびそれを用いる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】熱堆積ケイ素含有膜のための組成物およびそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20241004BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021569456
(86)(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020033897
(87)【国際公開番号】W WO2020236994
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】62/850,717
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラ ハリピン
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0003045(KR,A)
【文献】特開2011-080108(JP,A)
【文献】特表2006-500769(JP,A)
【文献】特開2002-217190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/314
H01L 21/32
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にケイ素含有膜を堆積させる方法であって、
a)基材を反応器内に準備する工程、
b)前記反応器内に以下の式Iを有する、少なくとも1つのイソシアネート基を有する少なくとも1種のケイ素化合物を、随意選択的に第1の触媒とともに、導入する工程、
【化1】
式中、Rは、水素、直鎖C~Cアルキル基、分岐Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基から独立して選択され、RおよびRは、水素、C~C直鎖アルキル基、分岐C~Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基からなる群からそれぞれ独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよく、nは0、1または2であり、そしてmは0、1、2または3であり、ここでn+m=0、1、2または3である、
c)前記反応器をパージガスでパージする工程、
d)前記反応器中に、酸素源、および随意選択的に、前記第1の触媒と同じであるか、または異なっていてよい第2の触媒を導入して、前記少なくとも1種のケイ素化合物と反応させて、そして前記ケイ素含有膜を生成させる工程、ならびに、
e)反応器をパージガスでパージする工程、
を含んでなる方法であって、
工程b~eは、前記基材上に前記ケイ素含有膜の所望の厚さが堆積されるまで繰り返され、前記方法は、20~600℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度で行れ、
前記第1および第2の触媒の少なくとも一方が用いられ、そして、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、およびトリ-イソ-プロピルアミンからなる群から選択される、
方法。
【請求項2】
前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ケイ素含有膜が、酸化ケイ素膜または炭素ドープ酸化ケイ素膜である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のケイ素化合物が、n=0である式Iから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のケイ素化合物が、ジメチルアミノトリイソシアネートシラン、ジエチルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-イソ-プロピルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-sec-ブチルアミノトリイソシアネートシラン、ピロリジノトリイソシアネートシランおよびテトライソシアネートシランからなる群から選択される、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種のケイ素化合物が、Rがメチルであり、そしてn=1である式Iを有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1記載の方法を用いてケイ素含有膜を堆積させるための装置であって、
前記堆積プロセスが行われる反応器、
前記反応器に、前記ケイ素化合物を供給する供給源、
前記反応器と流体連結された触媒供給源、ならびに、
前記反応器または前記触媒供給源と流体連結された酸素源、
を含んでな
装置。
【請求項8】
請求項1記載の方法を用いてケイ素含有膜を堆積させるための装置であって、
前記堆積プロセスが行われる反応器、
前記反応器に、前記ケイ素化合物を供給する供給源、ならびに、
前記反応器と流体連結された容器中の酸素源と触媒供給源との混合物、
を含んでな
装置。
【請求項9】
前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項記載の装置。
【請求項10】
前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月21日提出の米国仮出願第62/850,717号に対して優先権を主張し、その全ての内容を全ての許容される目的においてここに参照することによって、本明細書の内容とする。
【背景技術】
【0002】
ここに開示されているのは、電子装置の製造のための組成物および方法である。より具体的には、ここに記載されているのは、ケイ素含有膜、例えば、限定するものではないが、酸化ケイ素膜、炭素ドープ酸化ケイ素膜、炭素ドープ窒化ケイ素膜、炭素ドープ酸窒化ケイ素膜、または炭化ケイ素膜、の堆積のための化合物、ならびにそれを含む組成物および方法である。
【0003】
当技術分野では、半導体工業における特定の用途のための、ケイ素含有膜、例えば酸化ケイ素膜または炭素ドープ酸化ケイ素膜の堆積のための、非ハロゲン化前駆体および緩やかな酸化剤を用いた組成物および方法を提供することへの要求がある。
【0004】
米国特許第7,084,076号および第6,992,019号明細書には、原子層堆積(ALD)を用いた二酸化ケイ素膜の堆積のための方法が記載されており、ここではハロゲンまたはNCO置換シロキサンがSi源として用いられている。
【0005】
米国出願公開第2013/022496号には、半導体基材上へのSi-C結合を有する誘電体膜を形成するALDによる方法が教示されており、この方法は、(i)前駆体を基材の表面上に吸着する工程、(ii)吸着された前駆体および反応ガスをその表面上で反応させる工程、ならびに(iii)工程(i)および(ii)を繰り返して基材上に少なくともSi-C結合を有する誘電体膜を形成すること、を含んでいる。
【0006】
米国出願公開第2014/302688号には、パターン化された基材上に誘電体層を形成するための方法が記載されており、この方法は、化学気相堆積チャンバ内のプラズマフリー基材処理領域において、ケイ素および炭素含有前駆体とラジカル酸素前駆体を組み合わせることを含むことができる。ケイ素および炭素含有前駆体およびラジカル酸素前駆体は、反応して、パターン化された基材上に、流動性ケイ素-炭素-酸素層を堆積させる。
【0007】
米国出願公開第2014/302690号には、基材上に低k誘電体材料を形成するための方法が記載されている。これらの方法は、励起されていない前駆体をリモートプラズマ領域中に流動させることによって、ラジカル前駆体を生成させる工程、およびこのラジカル前駆体を、気相ケイ素前駆体と反応させて、基材上に流動性膜を堆積させる工程を含むことができる。気相ケイ素前駆体は、少なくとも1つのケイ素および酸素含有化合物ならびに少なくとも1つのケイ素および炭素結合剤を含むことができる。流動性膜は、硬化されて低k誘電体材料を形成することができる。
【0008】
米国出願公開第2014/051264号には、基材上に最初は流動性の誘電体膜を堆積させる方法が記載されている。これらの方法は、ケイ素含有前駆体を、基材を収容する堆積チャンバに導入することを含んでいる。これらの方法は、堆積チャンバの外側に配置されたリモートプラズマシステムで、少なくとも1種の励起された前駆体、例えばラジカル窒素または酸素前駆体を発生されることを更に含んでいる。励起された前駆体はまた、堆積チャンバに導入され、そこで、それは、反応区域において、ケイ素含有前駆体と反応し、基材上に最初は流動性の膜を堆積させる。この流動性の膜は、例えば、スチーム環境の中で処理されて、酸化ケイ素膜を形成させることができる。
【0009】
国際公開WO2011/043139A1には、ケイ素含有膜の形成のためのトリイソシアネートシラン(HSi(NCO))を含む含有原材料が記載されている。
【0010】
国際公開WO2014/134476A1には、SiCNおよびSiCONを含む膜の堆積のための方法が記載されている。特定の方法では、基材表面を第1および第2の前駆体に暴露することが含まれており、第1の前駆体は、式(X3-ySi)CH4-z、(X3-ySi)(CH)(SiX2-p)(CH)(SiX3-y)または(X3-ySi)(CH(SiX3-y)を有しており、ここで、Xはハロゲンであり、yは1~3の範囲の値を有しており、zは1~3の範囲の値を有しており、pは0~2の範囲の値を有しており、そしてnは2~5の範囲の値を有しており、そして第2の前駆体は、還元性アミンを含んでいる。特定の方法はまた、SiCONを含む膜を提供するための、基材表面の酸素源への暴露を含んでいる。
【0011】
Gasser, W, Z.らの「Quasi-monolayer deposition of silicon dioxide」, Thin Solid Films, 1994, 250, 213 の表題の参照文献には、新規なケイ素源ガス、すなわちテトライソシアネートシラン(Si(NCO))から層ごとに堆積されたSiO膜が開示されている。
【0012】
Yamaguchi, K.らの「Atomic-layer chemical-vapor-deposition of silicon dioxide films with an extremely low hydrogen content」, Applied Surface Science, 1998, 130, 212の表題の参照文献には、Si(NCO)およびN(Cを用いた、極めて低いH含有量を備えたSiOの原子層堆積が開示されている。
【0013】
Mayangsari, T.らの「Catalyzed Atomic Layer Deposition of Silicon Oxide at Ultra-low Temperature Using Alkylamine」の表題の参照文献には、SiCl、HOおよび種々のアルキルアミンを用いた酸化ケイ素の触媒された原子層堆積(ALD)が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここに記載された組成物および方法は、いずれかのハロゲン化前駆体(すなわち、クロロシラン)または強酸化剤、例えば酸素プラズマもしくはオゾンなしに形成する、ケイ素含有膜を堆積させるための組成物または配合物を提供することによって、従来技術の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つの態様では、堆積された膜は、不純物、例えば、X線光電子分光法(XPS)によって1原子%未満の窒素および炭素、を有する酸化ケイ素である。本方法は、テトライソシアネートシラン(TiCS)および水を触媒とともに用いた熱ALDによって酸化ケイ素を堆積することを含んでいる。
【0016】
他の特定の態様では、ここに記載された組成物は、熱ALDを用いて、X線光電子分光法(XPS)によって1~15原子%の範囲の炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素膜を堆積する方法に用いることができる。
【0017】
1つの態様では、ケイ素含有膜を堆積させるための組成物は、少なくとも1つのイソシアネート基を有し、そして下記の式Iによって表されるケイ素化合物を含んでいる。
【化1】
式中、Rは、水素、直鎖C~Cアルキル基、分岐Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基から独立して選択され、RおよびRは、水素、C~C直鎖アルキル基、分岐C~Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基からなる群からそれぞれ独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよく、nは0、1または2であり、そしてmは0、1、2または3であり、ここでn+m=0、1、2または3である。
【0018】
他の態様では、基材表面上に、酸化ケイ素膜および炭素ドープ酸化ケイ素膜から選択される膜を堆積させる、以下の工程を含む方法が提供される。
a.基材を反応器中に配置し、そしてその反応器を約20℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱すること、
b.反応器中に上記の式Iによる前駆体を導入すること、および随意選択的に触媒を反応器中に導入すること、
c.反応器をパージガスでパージすること、
d.酸素源および随意選択的に触媒を、反応器中に供給して、表面と反応させて、堆積されたままの膜を形成すること、この触媒は、ルイス塩基を含んでいる、ならびに、
e.反応器をパージガスでパージすること、
ここで、工程b~eは、酸化ケイ素または炭素ドープ酸化ケイ素の所望の厚さが基材上にケイ素含有膜として堆積されるまで繰り返される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の1つの態様は、ケイ素含有膜、例えば、XPSによって測定された、好ましくは1原子%未満の炭素および/または窒素含有量を有する酸化ケイ素、または好ましくは約1原子%~15原子%の炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素を堆積させるための、少なくとも1つのイソシアネート基を有するケイ素化合物、およびそれを含む組成物に向けられている。本発明の他の態様は、ここに記載された組成物および方法を用いて堆積された膜に向けられており、この膜は、希HF中で、好ましくは約0.20Å/秒以下もしくは約0.15Å/秒以下の、極めて低いエッチング速度を示し、一方で、他の調整可能な特性、例えば限定するものではないが、密度、誘電率、屈折率および元素組成において可変性を示す。
【0020】
1つの態様では、ケイ素含有膜を堆積させるための組成物は、下記の式Iを有する少なくとも1つのイソシアネート基を有するケイ素化合物を含んでいる。
【化2】

式中、Rは独立して、水素、直鎖C~Cアルキル基、分岐Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基から独立して選択され、RおよびRは、水素、C~C直鎖アルキル基、分岐C~Cアルキル基、C~C環式アルキル基、C~Cアルケニル基、C~Cアルキニル基、およびC~C10アリール基からなる群からそれぞれ独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよく、nは0、1または2であり、そしてmは0、1、2または3であり、ここでn+m=0、1、2または3である。
【0021】
本発明による式Iを有するケイ素化合物および式Iを有するケイ素前駆体化合物を含む組成物は、好ましくはハロゲン化物を実質的に含まない。ここで用いられる用語「実質的に含まない」は、ハロゲン化物イオン(またはハロゲン化物)、例えば塩化物(すなわち、塩化物含有種、例えばHClまたは少なくとも1つのSi-Cl結合を有するケイ素化合物)およびフッ化物、臭化物およびヨウ化物に関する場合には、イオンクロマトグラフィ(IC)または誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)によって測定された5ppm(質量基準)未満、好ましくはICまたはICP-MSによって測定された3ppm未満、そしてより好ましくはICまたはICP-MSによって測定された1ppm未満、そして最も好ましくはICまたはICP-MSによって測定された0ppmを意味している。塩化物は、式Iを有するケイ素化合物に対する分解触媒として作用することが知られている。最終製品中の有意な水準の塩化物は、ケイ素前駆体化合物の分解を引き起こす可能性がある。ケイ素化合物の漸次の分解は、膜の堆積プロセスに直接に影響を与える可能性があり、半導体製造者が膜の仕様に合致させることを困難にさせる。更に、貯蔵寿命または安定性は、式Iを有するケイ素化合物のより高い分解速度によって悪影響を受け、それによって1~2年の貯蔵寿命を保証することを困難にさせる。従って、式Iを有するケイ素化合物の促進された分解は、それらの可燃性および/または自然発火性の気体状副生成物の形成に関する安全および性能の懸念を生じさせる。式Iを有するケイ素化合物は、好ましくは金属イオン、例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を実質的に含まない。ここで用いられる用語「実質的に含まない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Crに関する場合には、ICP-MSによって測定された、5ppm(質量基準)未満、好ましくは3ppm未満、そしてより好ましくは1ppm未満、そして最も好ましくは0.1ppmを意味する。幾つかの態様では、式Iを有するケイ素化合物は、金属イオン、例えば、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+を含まない。ここで用いられる用語「含まない」は、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、貴金属、例えば合成で用いられたルテニウムもしくは白金触媒からの揮発性RuまたはPt錯体に関する場合には、ICP-MSまたは金属を測定するための他の分析法によって測定された1ppm未満、好ましくは0.1ppm(質量基準)を意味している。更に、式Iを有するケイ素化合物は、ケイ素含有膜を堆積するための前駆体として用いられる場合には、GCによって測定された、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上の純度を有している。
【0022】
本発明の他の態様は、式Iを有する少なくとも1種のケイ素化合物を用いた、1原子%未満の炭素および/または窒素含有量を有する酸化ケイ素膜を堆積させる方法を含んでいる。好ましい態様によれば、1種のケイ素前駆体は、テトライソシアネートシラン(TiCS)であり、これが触媒および酸素源、例えば水の存在の下で堆積される。この、そして他の態様では、触媒は、ルイス塩基、例えばピリジン、ピペラジン、アンモニア、また他の有機アミン、例えば第1級アミンHNR、第2級アミンHNR、または第3級アミンRNR、から選択され、ここでR1-3は、前記で規定されたとおりであり、そしてR1-3は水素ではない。有機アミンの例としては、限定されるものではないが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、およびトリ-イソ-プロピルアミンが挙げられる。幾つかの態様では、触媒は、反応器中に、別のガスラインを用いて供給され、一方で、他の態様では、触媒は、0.001~99.99質量%の範囲の触媒濃度で、酸素源と予備混合され、そして次いで反応器中に、直接の液体注入(DLI)またはバブリングまたは蒸気吸引、好ましくはDLIによって供給される。酸素源、例えば水、の触媒中の量は、0.001質量%~99.99質量%の範囲である。
【0023】
ここに記載された方法の1つの態様では、ケイ素含有膜は、熱AlDまたはサイクリックCVDプロセスを用いて堆積される。この態様では、本方法は、以下の工程を含んでいる。
a.基材を反応器中に配置し、そしてその反応器を約20℃~約600℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度に加熱すること、
b.反応器中に、少なくとも1つのイソシアネート基を有する少なくとも1種のケイ素化合物を含む前駆体、好ましくは上記の式Iによる化合物を導入すること、および随意選択的に触媒を反応器中に導入すること、
c.反応器をパージガスでパージすること、
d.酸素源および随意選択的に触媒を、反応器中に供給して、表面と反応させて、堆積されたままの膜を形成すること、この触媒は、ルイス塩基を含んでいる、ならびに、
e.反応器をパージガスでパージすること、
ここで、工程b~eは、酸化ケイ素または炭素ドープ酸化ケイ素の所望の厚さが基材上にケイ素含有膜として堆積されるまで繰り返される、
随意選択的に、堆積されたままの膜を、前記の加熱温度よりも高い1つもしくは2つ以上の温度でアニールすること、ここで、このアニール工程は、約400℃~約1000℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度で行われる、
随意選択的に、堆積されたままの膜を、酸素源で、約室温~約1000℃、または約100℃~400℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度で、後堆積処理を行って、より高い密度を有する膜を与えること、
随意選択的に、堆積されたままの膜をUV源に暴露すること、ならびに
随意選択的に、処理された膜を貴ガスまたは水素を含むプラズマに後堆積処理すること。酸素源は、緩やかな酸化剤であり、すなわちそれは基材、例えばアモルファス炭素は酸化することがでず、そして水、過酸化水素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0024】
ケイ素含有膜、例えば1原子%未満の炭素または窒素のいずれか、または両方を有する純粋な酸化ケイ素の堆積のための1つの具体的な態様では、ケイ素化合物は、100ppm以下の塩化物を含むテトライソシアネートシランである。ケイ素含有膜、例えば1原子%未満の炭素または窒素のいずれか、または両方を有する酸化ケイ素の堆積のための他の具体的な態様では、ケイ素化合物は、Si(NR(NCO)4-m-n(ここで、式Iでは、n=0、m=1、2。3)から選択される少なくとも1種の有機アミノ基を有する化合物である。例示的な化合物としては、限定するものではないが、ジメチルアミノトリイソシアネートシラン、ジエチルアミノトリイソシアネートシラン、エチルメチルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-イソ-プロピルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-sec-ブチルアミノトリイソシアネートシラン、およびピロリジノトリイソシアネートシランが挙げられる。有機アミノ基とイソシアネート基の両方を有するケイ素化合物は、イソシアネート基だけを有するものによりもより反応性であり、従ってより多くのケイ素断片が固定されることを可能にし、それがより高い成長速度を与えることが信じられる。更に、ケイ素含有膜、例えば約1原子%~15原子%の炭素含有量を有する炭素ドープ酸化ケイ素の堆積のための他の態様では、ケイ素化合物は、MeSi(NR(NCO)4-m-n(ここで、式Iにおいて、n=1、m=0、1、2)から選択される。
【0025】
特定の態様では、1つもしくは2つ以上の工程は、触媒の存在で行われる。この態様または他の態様では、触媒は、ルイス塩基、例えばピリジン、ピペラジン、アンモニア、または他の有機アミン、例えば第1級アミンHNR、第2級アミンHNR、または第3級アミンRNRから選択され、ここでR1-3は前記の通りであり、そしてR1-3は水素ではない。有機アミンの例としては、限定するものではないが、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-イソ-プロピルアミンが挙げられる。幾つかの態様では、触媒は、反応器中に、別のガスラインを用いて供給され、他の態様では、触媒は酸素源と、0.01ppm~99.9質量%の範囲の触媒濃度で予備混合されて、そして次いで、反応器中へ、直接液体注入(DLI)またはバブリングまたは蒸気吸引、好ましくはDLIによって供給される。
【0026】
上記の式において、そして本明細書を通じて、用語「アルキル」は、1~10個もしくは1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐官能基を表す。例示の直鎖アルキル基としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、およびヘキシルが挙げられる。例示の分岐アルキル基としては、限定するものではないが、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソ-ペンチル、tert-ペンチル、およびイソ-ヘキシルが挙げられる。特定の態様では、アルキル基は、それらに結合した、1つもしくは2つ以上の官能基、例えば、限定するものではないが、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、またはそれらの組み合わせを有することができる。他の態様では、アルキル基は、それらの結合した、1つもしくは2つ以上の官能基を有さない。
【0027】
上記の式において、そして本明細書を通して、用語「環式アルキル」は、3~10個または4~10個の炭素原子を有する環式官能基を意味している。例示の環式アルキル基としては、限定するものではないが、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0028】
上記の式において、そして本明細書を通して、用語「アルケニル基」は、1つもしくは2つ以上の炭素-炭素二重結合を有し、そして2~10個または2~6個の炭素原子を有する基を意味している。例示のアルケニル基としては、限定するものではないが、ビニルまたはアリル基が挙げられる。
【0029】
上記の式において、そして本明細書を通して、用語「アルキニル基」は、1つもしくは2つ以上の炭素-炭素三重結合を有し、そして2~10個または2~6個の炭素原子を有する基を意味している。
【0030】
上記の式において、そして本明細書を通して、用語「アリール」は、4~10個の炭素原子、5~10個の炭素原子、または6~10個の炭素原子を有する芳香族の環式官能基を意味している。例示のアリール基としては、限定するものではないが、フェニル、ベンジル、クロロベンジル、トリル、o-キシリル、1,2,3-トリアゾリル、ピロリル、およびフラニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびイミダゾリルが挙げられる。
【0031】
前記のように、ケイ素含有膜は、基材、例えば半導体基材の少なくとも1つの表面上に堆積される。ここに記載された方法では、基材は、当技術分野においてよく知られている種々の材料、例えばシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、無定形炭素、酸炭化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ゲルマニウムドープシリコン、金属、例えば銅、タングステン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、タンタル)、金属窒化物、例えば窒化チタン、窒化タンタル、酸化金属、III/V族金属またはメタロイド、例えば、GaAs、InP、GaPおよびGaN、ならびにそれらの組み合わせの膜から構成される、および/または被覆されていることができる。これらのコーティングは、半導体基材を完全に被覆することができ、種々の材料の複数の層であることができ、そして下にある材料の層を露出するように部分的にエッチングされていることができる。この表面はまた、その上に、パターンで露光され、そして現像されて基材を部分的に被覆するフォトレジスト材料を有することができる。特定の態様では、半導体基材は、細孔、ビア、トレンチおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの表面フィーチャを有している。
【0032】
ケイ素含有膜またはコーティングを形成するのに用いられる堆積方法は、堆積プロセスである。ここに開示される方法のための好適な堆積プロセスの例としては、限定するものではないが、サイクリック化学気相堆積または原子層堆積プロセスが挙げられる。ここで用いられる用語「サイクリック化学気相堆積プロセス」は、基材が、1種もしくは2種以上の揮発性前駆体に暴露され、それが、基材表面上で反応および/または分解して所望の堆積を生成させる、いずれかのプロセスを表している。ここで用いられる用語「原子層堆積プロセス」は、基材上に種々の組成の材料の膜を堆積させる、自己制限的(例えば、各反応サイクルで堆積される膜材料の量が一定である)、逐次的表面化学を表している。ここで用いられる前駆体、試薬および供給源は「気体状」としばしば記載されるけれども、それらの前駆体は、直接の蒸発、バブリングまたは昇華によって、反応器中に、不活性ガスとともに、または不活性ガスなしで移送される、液体または固体のいずれかであることができることが理解される。幾つかの場合には、蒸発された前駆体は、プラズマ発生器を通過することができる。
【0033】
1つの態様では、ケイ素含有膜は、ALDプロセスを用いて堆積される。他の態様では、ケイ素含有膜は、CCVDプロセスを用いて堆積される。更なる態様では、ケイ素含有膜は、熱ALDプロセスを用いて堆積される。ここで用いられる「反応器」として、限定するものではないが、反応チャンバまたは堆積チャンバが挙げられる。
【0034】
特定の態様では、ここに開示された方法は、反応器への導入の前および/または間において前駆体を分離するALD法またはCCVD法を用いることによって、前駆体の予備反応を回避する。これに関連して、堆積技術、例えばALDまたはCCVDプロセスが、ケイ素含有膜を堆積するのに用いられる。1つの態様では、この膜は、ALDプロセスによって、典型的な単一ウエハALD反応器、セミバッチ式ALD反応器、またはバッチ式ファーネスALD反応器中で、基材表面を、交互に、1種もしくは2種以上のケイ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、または他の前駆体または試薬に暴露することによって、堆積される。膜の成長は、表面反応、それぞれの前駆体または試薬のパルス長さ、ならびに堆積温度の自己制限的制御によって進行する。しかしながら、基材の表面が一度飽和されたら、膜の成長は停止する。他の態様では、それぞれの反応物、例えばケイ素および反応性ガスは、基材を反応器の異なる区域に移動するまたは回転させることによって、基材に暴露され、そしてそれぞれの区域は、不活性ガスのカーテンによって分離されている、すなわち空間的ALD反応器またはロールツーロールALD反応器。
【0035】
堆積方法に応じて、特定の態様では、ここで記載されるケイ素前駆体および随意選択的な他のケイ素含有前駆体は、反応器中に、所定のモル堆積で、または約0.1~約1000マイクロモルで、導入される。この態様または他の態様では、前駆体は、反応器中に、所定の時間に亘って導入される。特定の態様では、この時間は、約0.001~約500秒間の範囲である。
【0036】
特定の態様では、ここに記載された方法を用いて堆積されたケイ素含有膜は、酸素源、酸素を含む試薬もしくは前駆体を用いて、酸素の存在下で形成される。酸素源は、反応器中に、少なくとも1種の酸素源の形態で導入されることができ、および/または堆積プロセスに用いられる他の前駆体中に随伴的に存在することができる。好適な酸素源ガスとしては、例えば、水(HO)(例えば、脱イオン水、純水、蒸留水、水蒸気、水蒸気プラズマ、含酸素水、水を含む組成物、および他の有機液体、例えば触媒としての有機アミン、過酸化水素、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。特定の態様では、酸素源は、反応器中に、約1~約2000平方立法センチメートル(sccm)又は約1~約1000sccmの範囲の流量で導入される、酸素源ガスを含んでいる。酸素源は、約0.1~約100秒間の範囲の時間に亘って導入することができる。
【0037】
膜がALDまたはサイクリックCVDプロセスによって堆積される態様では、前駆体パルスは、0.01秒間超のパルス継続時間を有することができ、そして酸素源は、0.01秒間未満のパルス継続時間を有することができ、一方で、水のパルス継続時間は、0,01秒間未満のパルス継続時間を有することができる。
【0038】
特定の態様では、酸素源は、反応器中への連続的な流れであり、一方で、前駆体パルスとプラズマは、逐次に導入される。前駆体パルスは、0.01秒間超のパルス継続時間を有し、一方で、プラズマ継続時間は、0,01~100秒間の範囲であることができる。
【0039】
特定の態様では、1つもしくは2つ以上の工程は、触媒の存在で行われる、この態様または他の態様では、触媒は、ルイス塩基、例えばピリジン、ピペラジン、アンモニアまたは他の有機アミンから選択される。
【0040】
ここに開示された堆積方法は、1種もしくは2種以上のパージガスを含むことができる。パージガスは、消費されていない反応物および/または反応副生成物をパージするのに用いられ、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスとしては、限定するものではないが、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の態様では、パージガス、例えばArは、反応器中に、約10~約2000sccmの範囲の流量で、約0.1~1000秒間に亘って供給され、それによって反応器中に残っている可能性がある未反応の材料およびいずれかの副生成物をパージする。
【0041】
ケイ素前駆体、酸素源、窒素含有源、および/または他の前駆体、供給源ガス、および/または試薬を供給するそれぞれの工程は、結果として得られる膜の化学量論的組成を変化させるように、それらを供給するための時間を変化させることによって、行うことができる。
【0042】
特定の態様では、第2のRF周波数源を、基材表面におけるプラズマ特性を変化させるように用いることができる。堆積がプラズマを含む態様では、プラズマ発生プロセスは、プラズマが反応器中で直接に発生される直接プラズマ発生プロセス、あるいはプラズマが反応器の外で発生され、そして反応器中に供給される遠隔プラズマ発生プロセスを含むことができる。
【0043】
ケイ素前駆体および/または他のケイ素含有前駆体は、反応チャンバ、例えばCVDまたはALD反応器へと、種々の方法で、供給されることができる。1つの態様では、液体供給システムを用いることができる。他の態様では、組み合わされた液体供給および蒸発プロセス装置、例えば、ミネソタ州、ショアヴューのMSP Corporation製のターボ蒸発器、を用いて、低揮発性材料が容量測定的に供給されることを確実にすることができ、それが、前駆体の熱分解なしに、再現性のある移送および堆積をもたらす。液体供給配合物では、ここに記載された前駆体は、正味の液体の形態で供給されることができ、あるいはそれを含む溶媒配合物または組成物で用いられることができる。従って、特定の態様では、前駆体配合物は、基材上に膜を形成するための所定の最終用途に望ましく、そして有利であるように、好適な特性の溶媒成分を含むことができる。
【0044】
この態様または他の態様では、ここに記載された方法の工程は、種々の順序で行われることができ、逐次的に、または同時に(例えば、他の工程の少なくとも一部の間に)、およびそれらの組み合わせで行うことができることが理解される。前駆体および窒素含有源ガスを供給するそれぞれの工程は、結果として得られるケイ素含有膜の化学量論的組成を変化させるように、それらを供給する時間の継続時間を変化させることによって、行われることができる。
【0045】
ここに記載された方法のまた更なる態様では、膜または堆積されたままの膜は、処理工程に付される。処理工程は、堆積工程の少なくとも1部の間に、堆積工程の後に、そしてそれらの組み合わせで行われることができる。例示的な処理工程としては、限定するものではないが、膜の1つもしくは2つ以上の性質に影響を与える、高温の熱アニーリングによる処理、プラズマ処理、紫外(UV)線処理、レーザ、電子線処理およびそれらの組み合わせが挙げられる。ここに記載されたケイ素前駆体で堆積された膜は、同じ条件下で従来開示されたケイ素前駆体で堆積された膜と比較した場合に、向上した性質、例えば、限定するものではないが、その処理工程前の膜の湿式エッチング速度よりも低い湿式エッチング速度、または処理工程前の密度よりも高い密度を有している。1つの特定の態様では、堆積プロセスの間に、堆積されたままの膜は、断続的に処理される。それらの断続的な、または堆積中の処理は、例えばそれぞれのALDサイクルの後に、特定の数のALDサイクルの後に、例えば、限定するものではないが2回の(2)ALDサイクル、5回の(5)ALDサイクル、または10回(10)もしくは11回以上のALDサイクル毎に行われることができる。
【0046】
ケイ素含有膜が高温アニーリング工程で処理される態様では、アニーリング温度は、100℃以上であるか、または堆積温度よりも高い。この態様または他の態様では、アニーリング温度は、約400℃~約1000℃の範囲である。この態様または他の態様では、アニーリング処理は、真空(760トール未満)中で、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行われることができる。
【0047】
ケイ素含有膜がUV処理で処理される態様では、膜は広帯域UV、あるいは約150ナノメートル(nm)~約400nmの範囲の波長を有するUV源に暴露される。1つの特定の態様では、堆積されたままの膜は、UVに、所望の膜厚に到達した後に、堆積チャンバとは異なるチャンバ中で暴露される。
【0048】
ケイ素含有膜がプラズマで処理される態様では、プラズマ源は、窒素プラズマ、窒素およびヘリウムを含むプラズマ、窒素およびアルゴンを含むプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニアおよびヘリウムを含むプラズマ、アンモニアおよびアルゴンを含むプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、ネオンプラズマ、水素プラズマ、水素およびヘリウムを含むプラズマ、水素およびアルゴンを含むプラズマ、有機アミンプラズマ、有機ジアミンプラズマ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。1つの特定の態様では、プラズマは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される不活性ガスを含んでいる。
【0049】
他の態様では、ケイ素含有膜は、一般式RNSiRを有するアルキルアミノシランで化学的に処理され、ここでR1-3は、上記で規定したとおりであり、そしてR4-5は、独立して水素、直鎖C~Cアルキル基、分岐C~Cアルキル基である。例としては、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノトリエチルシラン、ジイソプロピルアミノトリメチルシラン、ジイソプロピルアミノシラン、ジsecブチルアミノシランがある。
本発明は、以下の態様を含んでいる。
(1)基材上にケイ素含有膜を堆積させる方法であって、
a)基材を反応器内に準備する工程、
b)前記反応器内に以下の式Iを有する、少なくとも1つのイソシアネート基を有する少なくとも1種のケイ素化合物を、随意選択的に第1の触媒とともに、導入する工程、
Si(NR (NCO) 4-m-n
式中、R は、水素、直鎖C ~C アルキル基、分岐C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基から独立して選択され、R およびR は、水素、C ~C 直鎖アルキル基、分岐C ~C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基からなる群からそれぞれ独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよく、nは0、1または2であり、そしてmは0、1、2または3であり、ここでn+m=0、1、2または3である、
c)前記反応器をパージガスでパージする工程、
d)前記反応器中に、酸素源、および随意選択的に、前記第1の触媒と同じであるか、または異なっていてよい第2の触媒を導入して、前記少なくとも1種のケイ素化合物と反応させて、そして前記酸化ケイ素膜を生成させる工程、ならびに、
)反応器をパージガスでパージする工程、
を含んでなる方法であって、
工程b~eは、前記基材上に前記酸化ケイ素膜の所望の厚さが堆積されるまで繰り返され、前記方法は、20~600℃の範囲の1つもしくは2つ以上の温度で、そして50ミリトール(mT)~760トールの範囲の1つもしくは2つ以上の圧力で行われる、
方法。
(2)前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、(1)記載の方法。
(3)前記ケイ素含有膜が、酸化ケイ素膜または炭素ドープ酸化ケイ素膜である、(1)記載の方法。
(4)前記第1および第2の触媒のそれぞれが、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、第1級アミンH NR 、第2級アミンHNR 、および第3級アミンR NR からなる群から選択され、ここでR 1-3 は(1)で規定されたとおりであり、そしてR 1-3 は水素でない、(1)記載の方法。
(5)前記第1および第2の触媒の少なくとも一方は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、およびトリ-イソ-プロピルアミンからなる群から選択される、(4)記載の方法。
(6)前記少なくとも1種のケイ素化合物が、n=0である式Iから選択される、(1)記載の方法。
(7)前記少なくとも1種のケイ素化合物が、ジメチルアミノトリイソシアネートシラン、ジエチルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-イソ-プロピルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-sec-ブチルアミノトリイソシアネートシラン、ピロリジノトリイソシアネートシランおよびテトライソシアネートシランからなる群から選択される、(6)記載の方法。
(8)前記少なくとも1種のケイ素化合物が、R がメチルであり、そしてn=1である式Iを有する、(1)記載の方法。
(9)式Iの方法によって生成される酸化ケイ素膜。
(10)堆積プロセスを用いてケイ素含有膜を堆積させるための組成物であって、下記の式Iによって表される構造を有する少なくとも1種のケイ素前駆体、
Si(NR (NCO) 4-m-n
式中、R は、水素、直鎖C ~C アルキル基、分岐C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基から独立して選択され、R およびR は、水素、C ~C 直鎖アルキル基、分岐C ~C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基からなる群からそれぞれ独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよく、nは0、1または2であり、そしてmは0、1、2または3であり、ここでn+m=0、1、2または3である、
を含んでなる組成物。
(11)前記組成物が、ハロゲン化物化合物、金属イオン、金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種もしくは2種以上の不純物を実質的に含まない、(10)記載の組成物。
(12)前記ハロゲン化物化合物が、塩化物含有種を含む、(11)記載の組成物。
(13)前記塩化物濃度が、ICまたはICP-MSによって測定された50ppm未満である、(12)記載の組成物。
(14)前記塩化物濃度が、ICまたはICP-MSによって測定された10ppm未満である、(13)記載の組成物。
(15)前記塩化物濃度が、ICまたはICP-MSによって測定された5ppm未満である、(14)記載の組成物。
(16)n=0である、(10)記載の組成物。
(17)ジメチルアミノトリイソシアネートシラン、ジエチルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-イソ-プロピルアミノトリイソシアネートシラン、ジ-sec-ブチルアミノトリイソシアネートシラン、ピロリジノトリイソシアネートシランおよびテトライソシアネートシランからなる群から選択される、(10)記載の組成物。
(18)R がメチルであり、そしてn=1である、(10)記載の組成物。
(19)堆積プロセスを用いてケイ素含有膜を堆積させるための装置であって、
前記堆積プロセスが行われる反応器、
前記反応器に、(10)記載の前記組成物を供給する供給源、
前記反応器と流体連結された触媒供給源、ならびに、
前記反応器または前記触媒供給源と流体連結された酸素源、
を含んでなり、
前記触媒が、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、第1級アミンH NR 、第2級アミンHNR 、および第3級アミンR NR からなる群から選択され、ここでR 1-3 は直鎖C ~C アルキル基、分岐C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基から独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよい、
装置。
(20)堆積プロセスを用いてケイ素含有膜を堆積させるための装置であって、
前記堆積プロセスが行われる反応器、
前記反応器に、(10)記載の前記組成物を供給する供給源、ならびに、
前記反応器と流体連結された容器中の酸素源と触媒供給源との混合物、
を含んでなり、
前記触媒が、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、第1級アミンH NR 、第2級アミンHNR 、および第3級アミンR NR からなる群から選択され、ここでR 1-3 は直鎖C ~C アルキル基、分岐C アルキル基、C ~C 環式アルキル基、C ~C アルケニル基、C ~C アルキニル基、およびC ~C 10 アリール基から独立して選択され、そして結合して環状環構造を形成していても、もしくはしていなくてもよい、
装置。
(21)前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、(19)記載の装置。
(22)前記酸素源が、水蒸気、過酸化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、(20)記載の装置。
【実施例
【0050】
一般的な膜堆積の例
膜の堆積が、試験室規模の熱原子層堆積(ALD)反応器中で、少なくとも1つのイソシアネート基を有するケイ素化合物と酸素源を用いて行われた。テトライソシアネートシラン(TiCS)がケイ素前駆体として、そして水、トリエチルアミン(TEA)またはその2つの組み合わせた酸素源として用いられた。随意選択的に、水は、反応器中に導入される前に、トリエチルアミン(TEA)と混合された。TiCSを有する容器は、50℃に加熱され、一方で、酸素源が室温で供給された。TiCSと酸素源の両方が、蒸気吸引を用いて供給された。ALDサイクル工程およびプロセス条件は、下記の表1に与えられている。
【表1】

工程4~9は、所望の厚さを得るまで複数回繰り返される。膜厚は、Scientific Computing International (SCI)からのFilmtek 3000 PAR SEエリプソメータを用いて測定された。
【0051】
比較例1.テトライソシアネートシラン(TiCS)および水を用いたケイ素含有膜の堆積
【0052】
ケイ素含有膜の堆積は、ケイ素前駆体としてTICSを、そして酸素源として水を用いて、表1に示した条件を用いて、50~150℃の基材温度で、行われた。用いられた基材は、固有の酸化物を有するシリコン片であった。TiCS流は、180秒間に、そして水の流れは120秒間に設定された。ALD工程は、100回繰り返された。表I中の工程4~9のサイクルを異なる温度で行った後の堆積された膜厚である、サイクル当たりの膜成長(GPC)が、表II中に列挙されている。
【表2】

膜成長は、50℃で比較的に高く、そしてより高い温度では成長は非常に小さいか、成長を示さない。
【0053】
比較例2.TiCSおよびトリエチルアミンを用いたケイ素含有膜の堆積
【0054】
ケイ素含有膜の堆積は、ケイ素前駆体としてTiCSを、そして触媒としてトリエチルアミンを用いて、上記の工程を用いて、150℃超の基材温度で行われた。トリエチルアミン中の水分量は、80ppmであった。用いられた基材は、固有の酸化物を有するシリコン片であった。TiCSの流れは120秒間に、そしてトリエチルアミンの流れは120秒間に設定された。ALD工程は、100回繰り返された。31Åの膜厚が得られて、0.31Å/サイクルのGPCを与えた。
【0055】
例1.TiCSおよび水/トリエチルアミンを用いたケイ素含有膜の堆積
ケイ素含有膜の堆積が、ケイ素前駆体としてTiCSを、そして酸素源として水を用いて、150℃の基材温度で、行われ、ここで水は触媒と混合された。用いられた基材は、固有の酸化物を有するシリコン片であった。トリエチルアミンが、触媒として選択された。1質量%の濃度の水が、乾燥トリエチルアミンと、堆積の前に容器中で混合された。堆積は、表1に記載された工程に従って行われた。ALD工程は、100回繰り返されて、90Åの膜厚と0.90Å/サイクルのGPCを与え、水と触媒としてのトリエチルアミンの組み合わせが、GPCを有意に向上させることを示している。
【0056】
例2.TiCSおよび水/トリエチルアミン用いたケイ素含有膜の堆積
【0057】
ケイ素含有膜の堆積が、ケイ素前駆体としてTiCSを、そして酸素源として水を用いて実施され、ここで水は触媒と混合された。トリエチルアミンが、触媒として選択された。この実験では、80ppm~10質量%の範囲の濃度の水が、堆積の前に、トリエチルアミンの容器中で混合された。用いられた基材は、固有の酸化物を有するシリコン片であった。堆積温度は、150℃に設定された。TiCSの流れは120秒間に、そしてトリエチルアミン/水溶液の流れは120秒間に設定された。ALD工程は、100回繰り返されて、計測のための所望の厚さが得られた。種々の水濃度での膜厚が、表IIIにまとめられている。
【表3】

表IIIは、より高い水の濃度(80ppm超)において、より高い膜成長(すなわち、より高い膜のGPC)を明確に示している。トリエチルアミン中の80ppmの水の濃度でのGPCは、0.3Å/サイクルであり、一方で、より高い水の濃度、すなわちトリエチルアミン中に0.1質量%超では、約0.8Å/サイクルのGPCのケイ素含有膜を与える。