IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用のペリクル膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20241004BHJP
【FI】
G03F1/62
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022506885
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2020073323
(87)【国際公開番号】W WO2021037662
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-14
(31)【優先権主張番号】19193590.7
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19203575.6
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19205058.1
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20161779.2
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ニキペロフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】バルタッセン,サンダー
(72)【発明者】
【氏名】バニネ,バディム,エヴィジェンエビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ドルゴフ,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ドンメズ ノヤン,インシ
(72)【発明者】
【氏名】ハウエリング,ゾマー,シルベスター
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デ ケルクホフ,マーカス,アドリアヌス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ワード,ティース,ウーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミューレン,ポール,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス,デイビッド,フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロニーナ,ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】イェーゲン,ハリル,ゴーケイ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194838(JP,A)
【文献】特表2011-530184(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03373069(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップが除去されたカーボンナノチューブ及び複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が、前記ナノチューブよりも高い水素再結合係数を有する材料を含み、前記ナノ粒子が、前記カーボンナノチューブの表面に配置される、
リソグラフィ装置用のペリクル膜。
【請求項2】
記ナノ粒子が複合ナノ粒子である、請求項1に記載のペリクル膜。
【請求項3】
前記ナノ粒子が、前記カーボンナノチューブの前記表面と前記カーボンナノチューブ内とに配置される、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、単壁ナノチューブ、多壁ナノチューブ、及びこれらの組み合わせから選択された、請求項1から3のいずれかに記載のペリクル膜。
【請求項5】
前記ナノ粒子の前記再結合係数が約0.1から約1である、請求項に記載のペリクル膜。
【請求項6】
前記ナノ粒子を含む前記材料が、金属、金属酸化物、ドープ金属、合金、又はこれらの組み合わせから構成される群から選択された、請求項1からのいずれかに記載のペリクル膜。
【請求項7】
前記ナノ粒子を含む前記材料が、Nb、Mo、Zr、Y、Ru、Rh、Pt、Pd、W、Cr、Ni、Fe、Co、Ag、Au、及びこれらの組み合わせから構成される群から選択された、請求項1からのいずれかに記載のペリクル膜。
【請求項8】
前記ナノ粒子が、O、N、B、Si、C、H、S、P、Cl、及びこれらの組み合わせを追加的に含む、請求項又はに記載のペリクル膜。
【請求項9】
前記キャップが除去されたカーボンナノチューブが不動態化された、好ましくは化学的に不動態化された、請求項1からのいずれかに記載のペリクル膜。
【請求項10】
前記キャップが除去されたカーボンナノチューブが、化学種の前記ナノチューブの表面への化学吸着によって不動態化された、請求項に記載のペリクル膜。
【請求項11】
前記キャップが除去されたカーボンナノチューブが、窒化、酸化、もしくはハロゲン化によって、又はストロンチウム、ホウ素、ベリリウム及び/又はケイ素の前記ナノチューブの表面への添加によって不動態化された、請求項又は10に記載のペリクル膜。
【請求項12】
前記キャップが除去されたカーボンナノチューブの前記表面が意図的に水素化されていない、請求項1から11のいずれかに記載のペリクル膜。
【請求項13】
キャップが除去されたカーボンナノチューブ及び複数のナノ粒子を含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜であって、前記ナノ粒子が、前記ナノチューブよりも高い水素再結合係数を有する材料を含み、前記ナノ粒子が、前記カーボンナノチューブの表面に配置され、前記キャップが除去されたカーボンナノチューブの表面の少なくとも一部分が化学的に不動態化され、好ましくは前記化学的不動態化が、窒化、酸化、及び/又はハロゲン化を含む、ペリクル膜。
【請求項14】
前記キャップが除去されたカーボンナノチューブが、炭素以外の原子でドープされ、任意選択で炭素以外の前記原子が窒素、ホウ素、及び/又はケイ素である、請求項1から13のいずれかに記載のペリクル膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2019年8月26日出願の欧州特許出願19193590.7、2019年10月16日出願の欧州特許出願19203575.6、2019年10月24日出願の欧州特許出願19205058.1、及び2020年3月9日出願の欧州特許出願20161779.2の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィ装置用のペリクル膜、ペリクル膜を再生する方法、ペリクル膜のエッチ速度を低下させる方法、及びリソグラフィ装置用のアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)からのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板にパターンを投影するためリソグラフィ装置が用いる放射の波長は、その基板上に形成することができるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nm内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いたリソグラフィ装置を使用すると、従来のリソグラフィ装置(例えば193nmの波長の電磁放射を使用できる)よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置がパターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)を含む。放射がパターニングデバイスを透過して提供されるか又はパターニングデバイスで反されて、基板上に像を形成する。浮遊微小粒子及び他の形態の汚染からパターニングデバイスを保護するため、ペリクルとも呼ばれる膜アセンブリが提供されることがある。パターニングデバイスの表面上の汚染は、基板上の製造欠陥を引き起こす可能性がある。
【0006】
[0006] ペリクルは、パターニングデバイス以外の光学コンポーネントを保護するために提供されることもある。ペリクルは、互いから封止されるリソグラフィ装置の領域間に、リソグラフィ放射用の通路を提供するために使用されることもある。ペリクルは、スペクトル純度フィルタなどのフィルタとして、又はリソグラフィ装置の動的ガスロックの一部として使用されることもある。
【0007】
[0007] マスクアセンブリが、パターニングデバイス(例えばマスク)を粒子汚染から保護するペリクルを含むことがある。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持され、ペリクルアセンブリを形成することがある。ペリクルは、例えばペリクル境界領域をフレームに接着するか又は別の方法で取り付けることによって、フレームに取り付けられることがある。フレームは、永久的に又は着脱可能にパターニングデバイスに取り付けられることがある。
【0008】
[0008] EUV放射ビームの光路内にペリクルが存在することによって、ペリクルは高いEUV透過率を有する必要がある。高いEUV透過率は入射放射のより大きな割合がペリクルを通過することを可能にし、ペリクルにより吸収されるEUV放射の量を低減させることでペリクルの動作温度が低下することがある。透過率は少なくとも部分的にペリクルの厚さに依存するので、リソグラフィ装置内の時に厳しい環境に耐えるのに十分な強度を確実に保ちつつ可能な限り薄いペリクルを提供することが望ましい。
【0009】
[0009] したがって、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置の過酷な環境に耐えることができるペリクルを提供することが望ましい。
【0010】
[00010] 本願は概してリソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置との関連でペリクルについて言及するが、本発明はペリクル及びリソグラフィ装置のみに限定されるものではなく、本発明の主題は任意の他の適切な装置又は状況において用いられ得ることが理解される。
【0011】
[00011] 例えば、本発明の方法は、スペクトル純度フィルタにも等しく適用されることがある。プラズマを用いてEUV放射を発生させるもの等、一部のEUV源は、所望の「帯域内」EUV放射ばかりでなく、望ましくない(帯域外)放射も放出する。この帯域外放射は、とりわけ深UV(DUV)放射範囲(100から400nm)にある。更に、例えばレーザ生成プラズマEUV源等、一部のEUV源では、通常は10.6ミクロンであるレーザからの放射は、有意な帯域外放射を呈する。
【0012】
[00012] リソグラフィ装置においては、いくつかの理由によりスペクトル純度が求められる。1つの理由は、レジストが放射の帯域外波長に感応性を有しているため、レジストがそのような帯域外放射に暴露された場合に、レジストに適用されるパターンの画質が劣化するおそれがあるためである。更に、帯域外放射赤外線、例えば一部のレーザ生成プラズマ源における10.6ミクロン放射は、リソグラフィ装置内のパターニングデバイス、基板、及び光学部品の望まれない且つ不要な加熱を引き起こす。そのような加熱は、これらの素子の損傷、寿命の低下、及び/又はレジストコートされた基板に投影及び適用されるパターンの欠陥もしくは歪みを引き起こすことがある。
【0013】
[00013] 典型的なスペクトル純度フィルタが、例えば、モリブデンなどの反射金属でコートされるシリコン基礎構造(例えば、アパーチャを備えたシリコングリッド、又は他の部材)から形成されることがある。使用時、典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば入射する赤外線及びEUV放射からの高い熱負荷にさらされることがある。この熱負荷によって、スペクトル純度フィルタの温度は800℃を上回ることがある。高ヘッドロード下では、反射性モリブデンコーティングとその下にあるシリコン支持構造との間の線膨張係数の差に起因して、コーティングが剥離する可能性がある。シリコン基礎構造の剥離及び劣化は、デブリ(例えば粒子などのデブリ)がリソグラフィ装置の特定の部分に出入りするのを抑制するためにスペクトル純度フィルタが使用される環境においてガスとして使用されることが多い水素の存在によって加速される。よって、スペクトル純度フィルタはペリクルとして使用されることがあり、逆も同様である。したがって、本願における「ペリクル」への言及は、「スペクトル純度フィルタ」への言及でもある。本願においては主にペリクルに言及しているが、その特徴の全てはスペクトル純度フィルタに等しく適用することができる。
【0014】
[00014] また、集光ミラー、ペリクル、又は動的ガスロックのコンポーネントなど、リソグラフィ装置内の光学素子の寿命を改善することが望ましい。これらの光学素子は、使用時にリソグラフィ装置の過酷な環境に暴露され、それによって経時的に損傷するおそれがある。光学素子の損傷を防止し、低減し、又は排除することが望ましい。
【0015】
[00015] リソグラフィ装置(及び/又は方法)においては、レジストコートされた基板にパターンを適用するために使用されている放射の強度損失を最小限に抑えることが望ましい。その1つの理由は、理想的には、例えば暴露時間を短縮すると共にスループットを向上させるべく、可能な限り多くの放射がパターンを基板に適用するために利用可能であるべきであるためである。同時に、リソグラフィ装置を通過して基板に入射する望ましくない放射(例えば帯域外放射)の量を最小限に抑えることが望ましい。
【0016】
[00016] 更に、リソグラフィ方法又は装置において使用されるスペクトル純度フィルタ及び/又はペリクルが、十分な寿命を有すること、並びにスペクトル純度フィルタ及びペリクルが暴露され得る高い熱又は放射負荷、及び/又はスペクトル純度フィルタ及びペリクルが暴露され得る水素及び対応する活性種(H*及びHO*を含むラジカル並びにH、H 及びH を含むイオンなど)の結果として経時的に急激に劣化しないことを保証することが望ましい。したがって、改良された(又は代替的な)スペクトル純度フィルタ及び/又はペリクルを提供すること、又はリソグラフィ装置及び/又は方法を環境のペリクル及び/又はスペクトル純度フィルタに対する侵食性を低下させるように適応させることが望ましい。
【0017】
[00017] 本発明は、上記で確認された課題の少なくとも一部に対処しようとして考案されたものである。
【発明の概要】
【0018】
[00018] 本発明の第1の態様によれば、キャップが除去されたカーボンナノチューブを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜が提供される。
【0019】
[00019] 使用時、ペリクル膜はリソグラフィ装置で使用されるEUV放射などの放射の直接光路中にある。これは、低い周囲圧力での動作と共に、膜が600℃を上回る可能性がある高温に達するという結果をもたらす。これは、結像性能の損失あるいはペリクルの破損をもたらし得るペリクル膜の化学的及び構造的劣化を促進する可能性がある。ペリクルの動作温度を低下させるために、一般に、ペリクルの放射率を上昇させることにより所与のパワーにおけるペリクルの動作温度を低下させる1つ以上の放射層が含まれる。放射層が設けられた連続膜ペリクルは通常、EUV電源が(中間焦点において)150~300Wの範囲であるEUVリソグラフィ装置において、400~650℃の範囲の動作温度を有し、電源が高くなるにつれて温度が高くなると予想されることがある。また、ペリクル膜の化学的劣化を遅らせる又は防ぐキャッピング層が設けられることがある。ペリクルの許容透過率及び赤外線(IR)放射率を維持するために、1つ以上の発光金属又は導電層は薄い。ただし、不活性基板上に堆積させた金属膜がエネルギー的に不利な状態にある。不活性(非金属)基板の上部に塗布された金属薄膜の加熱は、金属の融点を大きく下回る温度における熱的不安定さをもたらす可能性がある。十分な活性化エネルギーが供給されると、薄膜は表面拡散プロセスを通じて孔を形成し、孔は温度に強く依存した速度で時間と共に成長する。孔が合体するとき、表面上の材料は不規則な形のアイランドを形成する。このプロセスはディウェッティング及びアイランド形成と呼ばれる。金属膜と基板の間に接着層を設けることによってディウェッティング及びアイランド形成を抑えることが可能であるが、金属膜は依然としてエネルギー的に不利な状態にある。ペリクル上に塗布された薄い金属層は、一度アイランドに分割されるとその放射率特性を失うため使い物にならなくなる。
【0020】
[00020] キャップが除去されたカーボンナノチューブを含むペリクル膜が、特にEUVプラズマ誘起カーボンエッチングが十分に抑制され得る場合に、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置での使用に適していることが分かっている。これまでは、EUVのHプラズマ環境におけるカーボンエッチング及びカーボンナノチューブ(CNT)の破損の可能性に起因して、キャッピング層を備えたカーボンナノチューブだけが考えられてきた。しかしながら、EUVプラズマ抵抗を与えるために、水素プラズマに耐性がある材料でカーボンナノチューブをキャッピングすること及びこれらをリソグラフィ装置においてペリクル膜として使用することは適切ではない。また、カーボンナノチューブのキャッピングは、キャップが除去されたナノチューブと比較して透過率を低下させるため、同様に望ましくない。
【0021】
[00021] キャップが除去されたカーボンナノチューブベースのペリクルは、複数のナノ粒子を更に含むことがある。コンフォーマルコーティング又はキャッピング層とは対照的に、ナノ粒子はディウェッティング又はアイランド形成が起きにくいため、ペリクルの透過率及び放射率は使用中に影響を受けない。また、ナノ粒子は、対応する金属薄膜ほど大きなエネルギー的に不利な状態にはないため、使用中により安定的である。また、ナノ粒子準単分子層によるEUV散乱及び吸収が、ナノチューブに塗布された、同等の厚さを有するコンフォーマル層又は部分的コンフォーマル層による散乱及び吸収よりも小さいことは当然である。
【0022】
[00022] ナノ粒子は、好ましくはカーボンナノチューブと結び付けられる。したがって、ナノ粒子は、ナノチューブから切り離されるのではなくナノチューブに結合される。リソグラフィ装置、特にミラーやレチクルなどの光学素子の汚染を回避することが望ましく、そのため、ナノ粒子がペリクル膜から容易に除去できないことが望ましい。
【0023】
[00023] ナノ粒子はカーボンナノチューブの表面に配置されることがある。ナノ粒子はカーボンナノチューブ内に配置されることがある。ナノ粒子はナノチューブの表面とナノチューブ内の両方に配置されることがある。
【0024】
[00024] ナノ粒子は、任意の適切な手法によってカーボンナノチューブの表面に結合することができるが、本発明は選択された手法によって特に限定されない。カーボンナノチューブ-ナノ粒子構造を生成するのに用いられる方法は、例えば、いわゆる湿式化学に基づくか又は物理蒸着に基づく可能性がある。湿式化学方式では、ナノチューブの表面は機能的にすることができ、その後、ナノ結晶は、共有結合相互作用、非共有結合相互作用、又は静電相互作用によってナノチューブ上に集合させることができる。物理蒸着では、ナノ粒子は物理吸着によってナノチューブに結合することができる。
【0025】
[00025] 同様に、ナノチューブ内にナノ粒子を供給するための任意の適切な手法が用いられることがあり、本発明は用いられる手法に特に限定されない。1つの手法は、金属塩前駆体溶液がナノチューブに導入された後、水素で還元される初期湿式含浸である。焼成ステップが必要とされることもある。
【0026】
[00026] EUVリソグラフィ装置におけるカーボンエッチングのメカニズムが2要素プロセスであることが分かっている。具体的には、水素イオン(例えばH、H )と水素ラジカルH*の両方がカーボンをエッチングするのに必要とされる。科学的理論に拘束されることは望まないが、ナノチューブにおける炭素-炭素結合が高エネルギー水素イオンによって切断され得ると考えられる。切断された結合は、溶解又は吸着水素ラジカルによって不動態化されることがある。不動態化が起こらない場合、結合は回復することができる。ナノ粒子の添加により吸着水素ラジカルの再結合速度が増大するため、切断された炭素-炭素結合が水素ラジカルにより不動態化される可能性が低下すると考えられる。したがって、カーボンナノチューブがエッチングされる速度が低下する。
【0027】
[00027] 例えば、カーボンナノチューブがナノ粒子で装飾される実施形態では、吸着原子状水素がカーボンナノチューブに沿って拡散することができる。原子状水素は、分子状水素に再結合し、水素ガスとして脱ガスすることができるか、又は切断された炭素結合を不動態化して最終的に炭化水素の脱ガスをもたらすことができる。原子状水素の再結合は、ナノチューブよりナノ粒子上で急速に起こるため、ナノ粒子の存在が水素再結合速度を上昇させることによって、切断された炭素結合が不動態化される速度が低下し、ナノチューブがエッチングされる速度が低下する。
【0028】
[00028] ナノチューブ内側にナノ粒子が存在することが、原子状水素の分子状水素への再結合速度を上昇させる働きもすることが分かっている。CNT外面に吸着された原子状水素が、ホッピング/拡散によって(キラルCNTの)グラフェン膜又はグラフェン様膜を通過し、結果としてCNT内面を装飾しているナノ粒子に到達することがある。ここでも科学的理論に拘束されることは望まないが、ナノチューブ内にあるにもかかわらず、ナノ粒子の存在が吸着原子状水素の再結合速度を上昇させると考えられる。この実施形態の更なる利点は、ナノ粒子をナノチューブから除去することがほとんど不可能であるため、ナノ粒子がペリクル膜から放出され、リソグラフィ装置の他の部品を汚染するリスクがほとんどないことである。
【0029】
[00029] (EUV)ペリクル膜を含むナノチューブはガス透過性メッシュを形成することがある。ペリクル膜は一般に非常に薄い自立膜であるため、膜の2つの面の間に圧力差がある場合に変形しやすい。圧力差が小さくてもペリクル膜の変形が生じる可能性がある。他のペリクル膜は、実質的にガス不透過性の単体フィルムを含む。これに対して、本発明の一実施形態は、ガス透過性のペリクル膜を提供する。これにより膜の両面に圧力差が存在しないようにすることで膜の変形を抑制する。
【0030】
[00030] カーボンナノチューブは単壁又は多壁である場合がある。ペリクル膜は、単壁ナノチューブ、多壁ナノチューブ、又はこれらの組み合わせを含むことがある。好ましくは、ペリクル膜は単壁ナノチューブを含む。
【0031】
[00031] ナノ粒子の直径は、約1nm~約100nmである場合がある。好ましくは、ナノ粒子の直径は約5nm~約25nmである。ナノ粒子の直径は、好ましくは透過電子顕微鏡法によって測定される。他の測定技術も用いられ得ることが理解されるであろう。カーボンナノチューブ内に配置されたいずれのナノ粒子の直径もナノチューブの内径に依存することになる。したがって、いずれの内部ナノ粒子の直径も、そのナノ粒子が配置されるナノチューブの内径以下である場合がある。
【0032】
[00032] ナノ粒子の直径は、ナノ粒子集団内の各ナノ粒子について必ずしも同じである必要はない。したがって、一部のナノ粒子は他のナノ粒子より大きいこともあれば小さいこともある。実施形態では、ナノ粒子の平均直径は約1nm~約100nmであり、好ましくは約5nm~約25nmである。
【0033】
[00033] このようなナノ粒子のサイズは、EUV放射の屈折及び減衰を介して結像歪みを抑制するため有利である。
【0034】
[00034] ナノ粒子の直径は、好ましくは対応するレチクルのパターンのクリティカルディメンジョンの半分未満である。したがって、好ましくはナノ粒子のどれも又は実質的にどれも、対応するレチクルのパターンのクリティカルディメンジョンの半分より大きい直径を有しない。ナノ粒子がペリクル膜からレチクルに移動するとき、そのナノ粒子が移動先のレチクルのクリティカルディメンジョンの約半分よりも小さい場合、パターニングへの影響は悪いものにはならない。現在の技術では、約10nm以下の直径を有するナノ粒子が選好される。クリティカルディメンジョンが縮小するにつれて、ナノ粒子のサイズも小さくなる必要がある。
【0035】
[00035] 隣接するナノ粒子間の平均距離は、ナノ粒子の直径よりも大きい場合がある。例えば、ナノ粒子の直径が(TEMによる測定で)10nmである場合、隣接するナノ粒子間の平均距離は、好ましくは10nmよりも大きい。
【0036】
[00036] 隣接するナノ粒子間の平均距離は、ナノ粒子の直径の約1~約50倍である場合がある。隣接するナノ粒子間の平均距離は、ナノ粒子の直径の約10倍以上である場合がある。わずかに短い平均距離も許容可能な場合がある。
【0037】
[00037] ナノ粒子がペリクル膜の透過率を少し低下させることになるため、原子状水素再結合の増加という利点と、透過率の低下という欠点のバランスを取ることが望ましい。ナノ粒子をペリクル膜に広げることによって、ナノ粒子の保護特性を依然として維持しながら透過率の低下を管理する。また、ナノ粒子を広げることはまた、粒子のサイズの増大及び透過率の低下をもたらしかねないナノ粒子の凝集を抑制又は防止する。
【0038】
[00038] ナノ粒子は、好ましくはナノチューブよりも高い水素再結合係数を有する材料を含む。ナノ粒子の再結合係数は、好ましくは約0.1~約1である。再結合係数とは、表面を離れる前に分子を形成する吸着原子の割合である。したがって、1という数字は吸着原子の全てが表面を離れる前に分子を形成することを示すのに対して、0.1という数字は約10%が表面を離れる前に分子を形成することを示す。カーボンナノチューブの再結合率は約10-3であり、これはグラフェン又は非晶質炭素と同じである。ナノ粒子の再結合率がカーボンナノチューブの再結合率よりも大きいとき、吸着原子状水素がより素早く結合されることによって、切断された炭素-炭素結合が不動態化される可能性が制限される。
【0039】
[00039] ナノ粒子は、金属、金属酸化物、ドープ金属、合金、又はこれらの組み合わせを含むことがある。
【0040】
[00040] ナノ粒子は、Nb、Mo、Ru、Rh、Pt、Pd、W、Cr、Ni、Fe、Co、Ag、Au、Zr、Y、及びこれらの組み合わせを含むことがある。
【0041】
[00041] ナノ粒子は、O、N、B、Si、C、H、P、S、Cl、及びこれらの組み合わせを追加的に含むことがある。
【0042】
[00042] したがって、ナノ粒子は、O、N、B、Si、C、P、S、Cl、及びHのうちの1つ以上がドープ又は混合された、本明細書に記載の金属の1つ以上を含むことがある。
【0043】
[00043] ナノ粒子は複合材料を含むことがある。換言すれば、ナノ粒子は複合ナノ粒子である場合がある。したがって、ナノ粒子を形成する2種類以上の異なる材料が存在する場合がある。一部の材料は、吸着原子状水素の再結合率を上昇させる働きをすることがあり、他の材料は、CNTとの結合の改善を手助けすることがある。
【0044】
[00044] これらの材料(少なくともナノ粒子の金属相)は、炭素よりもはるかに高い再結合率を有するため、このような材料を含むナノ粒子は、炭素-炭素結合が吸着原子状水素により不動態化される速度を低下させることによって、カーボンナノチューブペリクル膜の寿命を延ばす働きをする。
【0045】
[00045] ナノ粒子の表面密度は、1平方ミクロンあたり約500粒子よりも大きく、好ましくは1平方ミクロンあたり約1000粒子よりも大きい場合がある。
【0046】
[00046] ナノ粒子が少なすぎるということは、カーボンナノチューブの少なくとも一部分が原子状水素不動態化から実質的に保護されないことを意味することになる。したがって、ナノ粒子に近いカーボンナノチューブの部分は保護される一方、ナノ粒子から離れ過ぎているカーボンナノチューブの部分は保護されないことになる。
【0047】
[00047] 付加的又は代替的に、キャップが除去されたカーボンナノチューブは不動態化されていることがある。不動態化は化学的不動態化である場合がある。キャップが除去されたカーボンナノチューブは、化学種のナノチューブ表面への化学吸着によって変質することがある。表面の変質は、(物理吸着とは対照的な)化学吸着による、又は窒化、酸化、又はハロゲン化などのプロセスを介した種のカーボンナノチューブ表面との反応による場合がある。水素化は、おそらくエッチングプロセスを促進することで、期待されるものとは逆の効果を及ぼすことになるため明示的に除外される。したがって、カーボンナノチューブの意図的な水素化は望ましくない。ペリクル膜はEUVリソグラフィ装置内の環境によって使用時に水素化されることがあるが、この水素化は、装置が動作する態様の望ましくない副作用であることが理解されるであろう。不動態化は、ストロンチウム、ホウ素、ベリリウム又はケイ素原子をカーボンナノチューブの表面に添加することによって達成されることもある。
【0048】
[00048] このアプローチは、カーボンナノチューブ自体の表面の化学的改質を伴うため、つまり界面層が形成されないため、カーボンナノチューブの表面にコーティングを施すこととは異なる。コーティングされたカーボンナノチューブを含むシステムで見られるような、異なる熱膨張係数に起因する剥離効果もない。
【0049】
[00049] 科学的理論に拘束されることは望まないが、ナノチューブの表面の変質が複数のメカニズムによってプラズマによるエッチングを軽減すると考えられる。カーボンナノチューブの表面に付着した原子は、ナノチューブの炭素原子を、EUV誘起水素プラズマの場合は主に水素イオンであるエッチングイオンによる衝撃から保護する。まずは表面原子をエッチングする必要があり、これによって炭素原子がエッチングされるまでの回復時間又は遅延を生じさせる。カーボンナノチューブを保護する他のメカニズムも存在することがある。表面原子がエッチングされることがあるが、ペリクル膜は表面の再不動態化によって修復されることがあることが理解されるであろう。これは本発明の第2の態様に係る方法によって達成されることがある。
【0050】
[00050] 好適な表面改質は、酸化、窒化、及びハロゲン化である。ハロゲン化は、炭素-ハロゲン結合、特に炭素-フッ素結合の強度に起因して、フッ素化及び塩素化が好適である。したがって、キャップが除去されたカーボンナノチューブを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜であって、キャップが除去されたカーボンナノチューブの表面の少なくとも一部分が化学的に不動態化されたペリクル膜が提供される。好ましくは、化学的不動態化には窒化、酸化、及び/又はハロゲン化が含まれる。化学的不動態化には水素化は含まれない。代替的又は付加的に、表面はストロンチウム、ホウ素、ベリリウム、及び/又はケイ素原子の添加によって改質されることがある。
【0051】
[00051] 実施形態では、キャップが除去されたカーボンナノチューブは、炭素以外の原子でドープされる。好ましくは、キャップが除去されたカーボンナノチューブは、窒素、ホウ素、及びケイ素の1種類以上でドープされる。コアカーボンナノチューブ構造のドーピングは、外来原子のコア構造への取り込みを伴う。自然に存在し得るか又は意図的に作られ得るカーボンナノチューブ構造の欠陥は、窒素、ホウ素、又はケイ素などの、炭素以外の原子で充填することができる。
【0052】
[00052] コア構造に窒素、ホウ素、及び/又はケイ素を追加的に含むように改質されたカーボンナノチューブを含むペリクルは、反応性を変化させる化学結合状態の変化によって水素イオン及びラジカルによるエッチングに対する感受性を低下させる。また、ナノチューブはキラリティや壁の数に関係のない金属性である。これによってナノチューブの放射率が上昇し、その結果、所与のパワーにおけるペリクルの動作温度が低下することによってペリクルの寿命が延びる。このナノチューブは、コア構造に欠陥を含むナノチューブよりも物理的に強い場合もある。
【0053】
[00053] ペリクル膜の片面又は両面にエアロゲル層が設けられることがある。エアロゲルは、非常に高い空孔率及び非常に低い密度を有する材料である。エアロゲルの空孔率は95%超、97%超、99%超、あるいは最大99.9%である場合がある。密度は0.01g/cm未満である可能性がある。
【0054】
[00054] 非常に高い空孔率及び密度に起因して、エアロゲルは高いEUV透過率を有する。エアロゲルは、高いEUV透過率に起因してペリクル膜の透過率を大きく低下させないため、カーボンナノチューブに保護層を提供することができ、水素プラズマとカーボンナノチューブベースのペリクル膜の間のバリアとしての機能を果たす。エアロゲルの空孔率が高いため、ペリクル膜両面の圧力差が回避される。
【0055】
[00055] エアロゲルは、ニオブ、モリブデン、又はジルコニウムを含むことがある。これらの材料は、リソグラフィ装置内側の水素プラズマ環境に耐性がある。
【0056】
[00056] その又は各エアロゲル層の厚さは、2ミクロン未満、1ミクロン未満、又は0.5ミクロン未満である場合がある。
【0057】
[00057] したがって、本発明の更なる態様によれば、リソグラフィ装置で使用される、エアロゲルを含む光学素子が提供される。
【0058】
[00058] 光学素子は、ペリクル膜、ミラー、レチクル、又はスペクトル純度フィルタである場合がある。光学素子は、リソグラフィ装置のある部分から別の部分への汚染物質の移動を防止又は抑制するために中間焦点位置に位置することがある。
【0059】
[00059] 光学素子は、本願のいずれかの態様に係るペリクル膜を含むことがある。
【0060】
[00060] 本発明の第2の態様によれば、ペリクル膜を再生及び/又は調整する方法であって、前駆体化合物を分解すること、及び分解生成物の少なくとも一部をペリクル膜上に堆積させることを含む方法が提供される。
【0061】
[00061] 上記のように、カーボンナノチューブがリソグラフィ装置内の水素によってエッチングされる。エッチングプロセスの間、炭素原子がカーボンナノチューブから炭化水素として除去される。時間が経つにつれ、ナノチューブからの炭素の除去がペリクル膜を弱めることで、粒子の形成又はペリクル膜の破損をもたらす可能性がある。前駆体化合物を提供及び分解して分解生成物を発生させることによって、分解生成物はペリクル膜のいずれの損傷も修復し、これによってその寿命を延ばすことができる。
【0062】
[00062] 前駆体は炭化水素である場合がある。炭化水素は、リソグラフィ装置内で分解されるとき、炭素と水素に分解される。ペリクル膜がカーボンナノチューブを含む場合、分解から生じる炭素はナノチューブの損傷を修復することができる。ペリクルがエッチングされ、炭化水素を放出し得ることが理解されるが、これらは濃度が低いため、追加の炭化水素の供給によって、ペリクル膜上に炭素が再堆積される速度が炭素がペリクルからエッチングされる速度とほぼバランスする。炭素がペリクル膜からエッチングされる速度が炭素が再堆積される速度と同じである場合、ペリクルは大幅に寿命が延びる可能性があることが理解されるであろう。リソグラフィ装置に取り込まれる炭化水素の速度及び量は、装置が動作しているパワーレベル及び装置内に存在する水素の分圧などの、リソグラフィ装置内の動作条件によって変化することになる。カーボンナノチューブペリクルのエッチングをバランスさせるために、取り込まれる炭化水素の速度及び量を調整することが可能である。この方法は必ずしもリソグラフィ装置内で行われず、リソグラフィ装置の外側で実行され得ることも理解されるであろう。したがって、この方法は、ペリクルがリソグラフィ装置で使用される前に事前調整ステップとして行われることがあるか、又は使用中にペリクルに生じた損傷を修復するためにペリクルがリソグラフィ装置で使用された後に行われることがある。
【0063】
[00063] 炭化水素は、飽和又は不飽和である場合がある。炭化水素は、C1‐C4炭化水素であるか、又は芳香族(C6以上)もしくは環状(C5以上)炭化水素である場合があり、N、O、B、P、及びClのいずれかを含むこともある。エテン又はエチンが炭化水素として使用されることがある。飽和炭化水素よりも大きい炭素対水素比を有するため、不飽和炭化水素が有利である場合がある。
【0064】
[00064] 炭化水素をEUV放射によって炭素と水素に分解することができる。炭化水素は他の手段によって分解することもでき、分解はEUV放射露光のみによると考えるべきではない。短鎖炭化水素が、リソグラフィ装置内のペリクル以外の表面に堆積及び付着し、光学部品の反射率の持続的な部分的損失をもたらす可能性が低いために好適である場合がある。最終的には、炭化水素の注入が終了すれば、このような炭素が豊富な層がEUV Hプラズマによって洗浄される。
【0065】
[00065] 前駆体化合物は、連続的に又は断続的に供給されることがある。前駆体化合物の連続供給は、ペリクル膜の一貫したエッチ速度が存在する場合に用いられることがあるため、炭化水素の連続添加は、炭素がペリクルからエッチングされる速度が炭素がペリクル膜上に堆積される速度と実質的に同じである場合に、ペリクル膜に定常状態を提供する。前駆体化合物は、リソグラフィ装置のスループットが悪影響を受けない一方、スループットを不透明炭素層の一部の光学素子上への堆積によって一時的に低下させ得るように、追加の炭化水素材料が所定の時間の間にのみ存在するように断続的に供給されることがある。
【0066】
[00066] 前駆体化合物の量が、ペリクル膜のエッチ速度、ペリクル膜が配置されるリソグラフィ装置の動作電力、及びペリクル膜の動作寿命のうちの1つ以上に依存して調整されることがある。例えば、装置が高いパワーで動作している場合であり得る、ペリクルのエッチ速度が高い場合に、より多量の前駆体化合物が、より高いエッチ速度を相殺するために導入されることがある。装置がより低いパワーで動作しているとき、導入される前駆体化合物の量は、炭素のペリクル膜又は装置のその他のエリア上への望ましくない堆積を回避するために低減されることがある。
【0067】
[00067] 方法は、前駆体化合物をペリクル膜に又はスキャナ環境に結合されるレチクルミニ環境(RME)内の少なくとも局所に向けることを含むことがある。前駆体化合物がペリクル膜を分解及び修復することが意図されているため、分解により発生した炭素を、装置の他のエリアではなくペリクル膜上に優先的に堆積させることが望ましい。したがって、前駆体化合物の流れをペリクル膜に向けることは、炭素がペリクル膜上に堆積される可能性を高める。
【0068】
[00068] 本発明の第2の態様の実施形態では、カーボンナノチューブペリクル膜を調整及び/又は修復する方法であって、カーボンナノチューブペリクル膜を炭化水素含有雰囲気中でアニールするステップを含む方法が提供される。
【0069】
[00069] 炭化水素含有雰囲気中でのアニーリングは、ダングリングボンドの修復及び炭素欠陥部位に結合された水素の炭化水素雰囲気からの炭素との交換をもたらす。アニーリングは約700~900Kの温度で行われることがある。必要に応じて他の温度も使用され得ることが理解されるであろう。炭化水素雰囲気中でのアニーリングは反応性アニーリングと呼ばれることがある。炭化水素前駆体の分解が、この反応性アニーリングステップ中に行われることが理解されるであろう。炭化水素含有ガスはイオン化されてプラズマを形成することがある。プラズマへのイオン化は、反応速度を上昇させ、より低い温度の使用を可能にし、反応選択性を向上させる。
【0070】
[00070] 本発明の第2の態様の方法は、真空アニーリングステップを更に含むことがあり、任意選択で真空アニーリングステップは、炭化水素含有雰囲気中でアニールするステップの前及び/又は後である。
【0071】
[00071] 方法は還元アニーリングステップを含むこともある。還元アニーリングステップは、反応性アニーリングステップの前及び/又は後に行われることがある。還元アニーリングは、水素などの還元ガス内で行われることがある。還元アニーリングステップは、緩く結合した非晶質炭素堆積物、及びカーボンナノチューブ成長プロセスからの残りの種ナノ粒子などの他の汚染物質を除去する。
【0072】
[00072] 好ましくは、最終アニーリングステップは、真空アニーリングステップ又は還元アニーリングステップである。これは、EUV放射並びに水素プラズマ及びイオンの存在に起因して還元性が強いスキャナ環境での暴露中の過渡効果を避けるためである。本発明の第2の態様の方法のペリクル膜は、本発明の任意の他の態様、特に第1の態様に係るペリクル膜である場合がある。
【0073】
[00073] 例示的な方法では、以下のステップが実行される。
1.真空アニーリング又は還元アニーリング、
2.炭化水素環境での反応性アニーリング、
3.ステップ1及び2の任意選択的な繰り返し、及び
4.真空アニーリング又は還元アニーリング。
この例示的な方法は、スキャナ環境にまだ暴露されていないペリクル膜に有用である。スキャナ環境にすでに暴露されたペリクル膜では、この方法は、不活性又は還元ヒーリングステップではなく反応性アニーリングステップから始まるように修正されることがある。
【0074】
[00074] カーボンナノチューブペリクル膜の製造中に反応性アニーリングステップが含まれない場合でも、真空アニーリングステップ及び/又は還元アニーリングステップがスキャナ環境においてペリクルを暴露する前に存在することがある。したがって、ペリクル膜を調整する方法であって、ペリクル膜をリソグラフィ装置で使用する前に真空アニール及び/又は還元アニールするステップを含む方法が提供される。
【0075】
[00075] 前述のアニーリングステップのいずれかは、約700K~約900Kの温度で実行されることがある。
【0076】
[00076] アニーリング中のペリクル膜の加熱は、任意の適切な手段によって実行されることがある。例えば、ペリクル膜は、高温ガスへの暴露によって伝導的及び/又は対流的に加熱されることがある。ペリクル膜は、電流をペリクル膜に流すことによって加熱されることがある。ペリクル膜はレーザ加熱によって加熱されることがある。様々な加熱方法の組み合わせも考えられる。
【0077】
[00077] 本発明の第3の態様によれば、ペリクルのエッチ速度を低下させる方法であって、1つ以上のバイアス素子をペリクルに近い又はペリクルの領域に設けることを含む方法が提供される。バイアスは、ペリクルが配置されるリソグラフィ装置の接地真空容器に対するものである。バイアスは陽イオンのフラックスをペリクルから遠ざかる方に方向転換する。好ましくは、バイアス素子のいずれか又はほとんどが、EUV光学部品に有害であり得るEUVプラズマ電位を上昇させないようにするために、(接地された)スキャナ真空容器に対して負電位を有する。したがって、ペリクル又は他の素子の相対バイアスが正である場合がある一方、絶対電位は、好ましくはプラズマ電位の上昇を抑えるために全て負である。
【0078】
[00078] プラズマは正電荷の水素原子を含むため、適切なバイアス/電場を与えることが、エッチングイオンのフラックスをペリクルから遠ざかる方に方向転換することになる。エッチングイオンのフラックスが減少することで、ペリクル膜の寿命が延びることになる。ペリクル膜はカーボンナノチューブペリクル膜である場合があるが、この方法は、他のペリクル膜材料についても同様に用いられることがある。
【0079】
[00079] 方法は、ペリクル膜をレチクル(前面)及び/又はReMaブレード及び/又はUNICOMに対してバイアスすることを含むことがある。ReMaブレードは、4つの独立に移動するマスキングブレードを含むシャッタシステムであるレチクルマスキングユニット(REMA)の一部である。REMAユニットは、(金属)ブレードを使用してレチクルの特定エリアからの光を遮断する。これらのブレードのうち、2つのYブレードはスキャン方向に配向されている一方、2つのXブレードはスキャン方向に対して垂直である。UNICOMは光学フィルタであり、その機能はレチクル近くの照明を調整してスリット均一性を確保することである。フィルタは一般に、照明を調整するためにYスキャン軸に沿って移動可能な2つの可動プレートを含む。最も近い1つ以上の表面に対してペリクル膜にバイアスをかけることにより(例えば、絶対負電位を印加すること、又はペリクルと他の電極との間に互いに対して正のバイアスを印加することにより)、ペリクル膜をエッチングする正の水素イオンのフラックスであるため、ペリクルに向かう水素イオンのフラックスは低減/方向転換される。方法は、代替的又は付加的に、ペリクルが浮いている又は接地されたままにしながら、EUV円錐内で生成されたイオンをペリクルに到達する前に抽出するために、例えば、レチクル(前面)及び/又はReMaブレード及び/又はUNICOMのバイアス又は相対的なバイアスなどの、ペリクル以外の表面の相対的なバイアスを含むことがある。レチクルミニ環境で絶対正電位電極が使用されることがあるが、このような電位は、感知コンポーネント近くのプラズマ電位及びイオンエネルギーを増加させることがあるため、このような実施形態では、このようなコンポーネントの保護のために追加措置が必要とされることがある。
【0080】
[00080] 本発明の第4の態様によれば、バイアスをかけられたペリクル膜及び/又はRME内の他の表面を含む、リソグラフィ装置用のアセンブリが提供される。他の表面は、レチクル前面、ReMaブレード又はUNICOM又はYノズルである場合がある。Yノズルは、レチクルに沿ってスキャン方向に向けられたパージガス供給用のノズルである。代替的又は付加的に、ペリクル膜及び/又はレチクル前面は浮いているのに対して、ReMaブレード及び/又はUNICOMは、接地された真空容器壁に対して負にバイアスをかけられる。
【0081】
[00081] 好ましくは、RME内の電極のいずれかに印加される絶対電位は、負であるか又はEUVプラズマ電位の上昇を回避する+50V以下に制限され、さもなければEUV光学部品が、エネルギーの高すぎるイオンによって影響を及ぼされることがある。RME内の表面に印加される絶対電位は、約-500V以下、好ましくは約-250V以下、より好ましくは約-50V以下である場合がある。バイアスはスパークを回避するために比較的低く抑えられる。スパークは、EUV吸収によりイオン化されたガスによってキャパシタ(例えば、ペリクル/レチクルマスキングユニット又はペリクル/レチクル)を放電することがある。1回のスパークによって、ペリクル膜が破損したり少なくとも欠陥をもたらしたりする可能性がある。比較的低い電圧でも、このようなバイアスは、各EUVフラッシュによりペリクル近くにもたらされたイオンの大部分に反発するのに十分である。また、最も近い電極に対するペリクルのバイアスを100V以下に制限することが、ペリクルに作用する静電圧を制限する。これによってペリクル膜の望ましくない撓み又は破断が回避される。
【0082】
[00082] バイアス源は、電流制限される、及び/又は好ましくはEUVフラッシュに同期させたバイアスパルスでパルス化されることがある。
【0083】
[00083] ペリクル膜は、レチクルマスキングユニット、レチクル、UNICOM、又は補助接地電極を含むレチクルミニ環境内の任意の他の電極のうちの1つ以上に対してバイアスをかけられることがある。
【0084】
[00084] アセンブリは、第1のブレード及び第2のブレードを含むレチクルマスキングユニットであって、第1のブレードと第2のブレードの間、又はブレードと接地真空容器の間に電気的バイアスが提供されるレチクルマスキングユニットを含むことがある。UNICOMはバイアスをかけられることがある。Yノズルはバイアスをかけられることがある。(浮いている)ペリクルは、光電子の抽出に起因して又は容量結合を介してブレード又はYノズルのバイアスに従うことがある。
【0085】
[00085] 少なくとも1つの補助接地電極が設けられることがある。接地電極は、力線が広がり過ぎるのを防止するため、ペリクルなどの装置内のコンポーネントに損傷を与え得るリソグラフィ装置内のスパークを防止することができる。
【0086】
[00086] 本発明の第5の態様によれば、ペリクル膜及びペリクル加熱手段を含む、リソグラフィ装置用のペリクル装置が提供される。
【0087】
[00087] EUVリソグラフィ装置の通常動作では、ペリクル膜がEUV放射ビームによって加熱されることになることが理解されるであろう。本発明は、EUV放射又はリソグラフィ目的の他の放射により与えられる加熱に追加される加熱手段を提供する。
【0088】
[00088] 本明細書に記載されるように、炭素ベースのペリクル膜のエッチングは、水素イオンと水素ラジカルの両方を必要とする2要素プロセスである。水素イオンは、十分なエネルギーでペリクル膜内の炭素-炭素結合を切断し、次いで切断された炭素-炭素結合は、吸着した水素ラジカルによって不動態化することができる。以前は、ペリクルは、ペリクル膜の寿命を延ばそうとするために、ペリクル膜の動作温度を低下させるように設計及び加工されていた。その一環として、追加の放射層がペリクルに追加されて、ペリクルの放射率を上昇させることによって、所与のパワーにおけるペリクル膜の動作温度を低下させていた。驚くべきことに、これに反してペリクル材料を加熱することが、ペリクル、特にカーボンナノチューブペリクルなどの炭素ベースのペリクルの動作寿命を延ばし得ることが分かっている。科学的理論に拘束されることは望まないが、吸着原子状水素の濃度は、ペリクル膜の温度を上昇させることによって大幅に下げることができると考えられる。カーボンナノチューブの表面などのグラフェン型構造上への水素の吸着は(凝縮に似たプロセスに典型的な)発熱を伴うため、ペリクル膜の加熱の結果として、吸着原子状水素の量が少なくなる(これは蒸発に似たプロセスとして扱うことができる)。300K(およそ室温)における吸着原子状水素の濃度は、ペリクルの近くのH*のフラックス/濃度が一定に保たれるならば、1300Kにおける吸着原子状水素の濃度よりも何桁も(約10)大きいと推定される。吸着原子状水素の濃度を低下させることによって、切断された炭素-炭素結合が不動態化される可能性が低下し、ペリクルのエッチ速度も低下する。
【0089】
[00089] 加熱手段は、ペリクル膜の所定の部分を加熱するように構成されることがある。上述のように、エッチングは水素ラジカル及び水素イオンによって引き起こされる。ペリクルを取り囲むエリアであるリソグラフィ装置のレチクルミニ環境では、リソグラフィに使用される放射ビーム、典型的にはEUV放射ビームが水素イオン及び水素ラジカルを発生させる。イオンは装置の壁との1回の衝突後に再結合するのに対して、ラジカルは容易には再結合しないため、イオンよりも遠くまで伝搬することができる。炭素-炭素結合開裂の主な原因と考えられるのはイオンであるため、イオンがペリクル膜と相互作用するペリクル膜のエリアにおける吸着原子状水素の濃度を低下させることが有利である。これはペリクル膜の全体ではないため、追加熱はペリクル膜の選択された部分だけに提供することができる。
【0090】
[00090] ペリクル膜の所定の部分は、最も高い水素イオンフラックスにさらされる部分である場合がある。上述のように、エッチングは2要素プロセスであると考えられるため、最も高いイオンフラックスにさらされるエリアにおけるペリクルの加熱は、加熱領域における吸着原子状水素の濃度を低下させ、ひいてはペリクル膜のエッチ速度を低下させる。原子状水素と水素イオンの両方が存在する場合にペリクル膜を加熱することが最も重要であることが理解されるが、ペリクル膜のより大きい割合あるいは全体を加熱することは当然可能である。
【0091】
[00091] 加熱手段は1つ以上のレーザを含むことがある。レーザは可視スペクトル又は赤外線スペクトルで動作することがある。実際にはペリクル膜の加熱をもたらすいずれの周波数も使用されることがある。いくつものレーザビームが使用されることがある。レーザビームは、ペリクル膜の加熱すべきエリアに向けられることがある。レーザ光をペリクル膜に向ける1つ以上の光学素子が存在することがある。1つ以上の光学素子は、入射レーザ光をペリクル膜上へ反射、屈折、又は回折することがある。1つ以上の光学素子は、レチクルマスキングユニットのブレード上にある場合がある。レーザ光は可視領域及び/又はIR領域にあることが好ましい。なぜなら、このような波長の光はリソグラフィ装置に既に存在するため、考慮することが必要になる「新しい」波長を有する光が装置に入射されないからである。VIS又はIR放射を使用する別の利点は、レジストを成長させないため、基板方向への散乱にある程度耐えられることである。
【0092】
[00092] 加熱手段は、1つ以上の抵抗加熱素子を含むことがある。抵抗加熱素子は電流の材料の通過に依存する。ペリクル膜が好ましくはカーボンナノチューブを含むため、これらのカーボンナノチューブは抵抗加熱素子としての機能を果たすことがある。したがって、ペリクル膜に電流源を取り付けることができ、膜を通過する電流が加熱して吸着原子状水素を追い出すことになる。
【0093】
[00093] ペリクル膜の少なくとも一部分に電流を分配する導電ストリップが設けられることがある。カーボンナノチューブはその長さに沿って導電性が高く、隣接するナノチューブ間の電気抵抗が高くなる。したがって、電流をペリクル膜により効率的に分配するために、電流をペリクル膜に分配する導電ストリップが設けられることがある。これに対して、ペリクル膜への単一の電気的接続は、電流の不均一分布をもたらす可能性がある。導電ストリップは、電流をペリクル膜の特定の部分、好ましくは最も高い水素イオンフラックスにさらされる部分に向けるように構成され得ることが理解されるであろう。
【0094】
[00094] ペリクル膜は、好ましくはカーボンナノチューブを含む。好ましくは、ペリクル膜は、本発明のいずれかの態様に係るペリクル膜である。カーボンナノチューブは1000℃以上の温度に耐えることができるため、温度上昇による損傷を受けない。また、本発明に係るペリクル膜は、吸着原子状水素の再結合率を上昇させるように構成されることもあるため、ペリクル膜の追加熱を併用して、ペリクル膜のエッチ速度を更に低下させることができる。また、水素イオンフラックスを減少させるための方法及び装置は、加熱されたペリクル及び/又はナノ粒子を含むペリクルと併用されることもある。
【0095】
[00095] 本発明の第6の態様によれば、ペリクル膜の動作寿命を延ばす方法であって、ペリクル膜のあるエリアを選択的に加熱することを含む方法が提供される。
【0096】
[00096] 同様の考慮が、本発明の第5の態様に適用される第6の態様にも適用される。ペリクル膜のあるエリアの加熱は、吸着原子状水素の濃度を低下させ、ひいてはペリクル膜のエッチ速度を低下させる。ペリクル膜がリソグラフィ自体に使用される(EUV)光によって加熱されることになること、及び本明細書に記載される加熱は通常加熱に追加されるものであることが理解されるであろう。
【0097】
[00097] 方法は、動作中にペリクル膜の最も高い水素イオンフラックスにさらされるエリアを加熱することを含むことがある。ペリクル膜の全体を加熱することが可能であるが、エッチングが最も行われるところである、ペリクルの最も高い水素イオンフラックスにさらされるエリアを加熱することが最も重要である。
【0098】
[00098] 加熱は、ペリクル膜上にレーザビームを向けることによってもたらされる(実行される)ことがある。レーザビームは好ましくは可視領域又はIR領域にある。レーザビームは、そのパワーを容易に調整でき、レーザ光をペリクル膜の所望のエリア上に正確に向けることが可能である点で有利である。
【0099】
[00099] レーザ光は、1つ以上の光学素子によって指向されることがある。ペリクル膜に直接レーザを発射することは不可能な場合があるため、レーザ光をペリクル膜の所望のエリア上に指向する光学素子が設けられることがある。
【0100】
[000100] 代替的又は付加的に、追加熱は、ペリクル膜に電流を流すことによってもたらされる(実行される)、又は別の方法で与えられることがある。電流によってペリクル膜が熱くなり、吸着原子状水素の濃度が低下することになる。電流は、様々な追加熱量を与えるために変化させることができる。電流は、最も高い水素イオンフラックスにさらされるエリアに加熱を引き起こすために、ペリクル膜の選択された部分に供給することもできる。
【0101】
[000101] 本発明のこの態様で使用されるペリクル膜は、本発明のいずれかの態様に記載されるペリクル膜である可能性がある。また、第6の態様の方法は、本明細書に記載される他のいずれかの態様の装置及び方法と組み合わせることができる。
【0102】
[000102] 本発明の第7の態様によれば、非整列ナノチューブのネットワークを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜が提供される。
【0103】
[000103] 非整列ナノチューブは、ランダムに整列されたナノチューブと呼ばれることもある。ランダムナノチューブのネットワークは多孔性を有する。多孔性はEUV吸収を低下させることによってEUV透過を高め、高いスキャナスループットをもたらす。多孔性はまた、ペリクルの2面間の圧力差の増加を抑制する。したがって、ペリクルは通気動作及びポンプ動作中の撓みが少なく、ペリクル損傷又は破損のリスクが低下する。また、このような非整列ネットワークの面内表面における質量分布は非常に一様であり、結像アーチファクトを回避するのに役立つ。また、十分な運動量の弾道粒子が膜と衝突する場合、ランダムに整列されたネットワークにおいて、亀裂伝播が細孔の一般的な寸法(例えば約100nm)だけ進んだ後に停止し、膜は無傷のままである。
【0104】
[000104] ネットワークは3次元多孔質ネットワークを含むことがある。
【0105】
[000105] ナノチューブは、単壁、二重壁、多壁、及び/又は同軸である場合がある。同軸ナノチューブは、一方のナノチューブがもう一方のナノチューブ内に配設される複合ナノチューブである。内側すなわちコアナノチューブは、外側すなわちキャッピングナノチューブと同じであるか又は異なる場合がある。二重壁カーボンナノチューブ及び多壁ナノチューブは放出性であり、単壁ナノチューブはそのキラリティに応じて放出性である場合がある。放出性であることはペリクルの動作温度を低下させるのを助けることがある。
【0106】
[000106] ペリクル膜は、1種類のナノチューブ又は2種類以上のナノチューブを含むことがある。したがって、本発明に係るペリクル膜は均質である場合がある。つまり、ナノチューブの全てが同じ材料から作られる。ペリクル膜は不均一である場合がある。つまり、様々な種類のナノチューブを使用してペリクル膜を形成することがある。1種類のナノチューブからなるペリクル膜を形成することで、膜の物理的性質は均一である。2種類以上のナノチューブからなるペリクル膜を形成することで、エッチ耐性及び強度などの、各材料のいくつかの異なる性質を有することから恩恵を受けることがある。
【0107】
[000107] 膜は、炭素、窒化ホウ素、及び/又は遷移金属カルコゲニドを含むことがある。これらの材料のそれぞれは、膜が作られ得るナノチューブを形成することができる。カーボンナノチューブは、既存のペリクルの動作温度を大幅に上回る高温まで安定している。窒化ホウ素ナノチューブもまた、EUVリソグラフィ装置内でペリクルが直面する温度で熱機械的に安定しており、最大900°まで耐酸化性もある。窒化ホウ素ナノチューブはまた電気絶縁性があり、アーク放電、化学蒸着、及びレーザアブレーションなどの既知の方法によって容易に合成することができる。
【0108】
[000108] 遷移金属は、Mo、W、Sb、又はBiから選択されることがある。したがって、遷移金属(TM)はMoである場合がある。TMはWである場合がある。TMはSbである場合がある。TMはBiである場合がある。
【0109】
[000109] カルコゲニドは、S、Se、又はTeから選択されることがある。したがって、カルコゲニドはSである場合がある。カルコゲニドはSeである場合がある。カルコゲニドはTeである場合がある。
【0110】
[000110] 例えば、遷移金属カルコゲニドは、二硫化タングステン又はテルル化アンチモンである場合がある。
【0111】
[000111] 少なくとも一部のナノチューブはキャッピング材料を含むことがある。キャッピング材料は、金属酸化物、酸化ケイ素、及び六方晶窒化ホウ素から選択されることがある。このようなキャッピング材料は、ナノチューブを損傷から保護する働きをすることがある。損傷は酸化又は還元によって生じることがある。例えば、ナノチューブがカーボンナノチューブである場合は、水素イオン及び水素ラジカルによる攻撃を受けやすい場合がある。キャッピング材料はこのような水素エッチングに耐性があるため、ペリクルの寿命を延ばすことがある。コア材料及びキャッピング材料の熱膨張係数が、動作中に温度が上昇するときにもたらされる熱応力を回避するために同程度であることは重要である。キャッピング層の熱的安定性、耐酸化性及び水素誘起ガス放出も、キャッピング層を選択するときに重要な考慮事項である。酸化ケイ素は、カーボンナノチューブ及び窒化ホウ素ナノチューブに特に適している場合がある。六方晶窒化ホウ素はカーボンナノチューブに特に適している場合がある。
【0112】
[000112] 金属酸化物の金属は、アルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、チタン、モリブデン、及びハフニウムから選択されることがある。これらの金属酸化物は、ナノチューブ、特にカーボンナノチューブ及び窒化ホウ素ナノチューブのキャッピング層としての機能を果たす適切な物理的性質及び化学的性質を有することが分かっている。
【0113】
[000113] 六方晶窒化ホウ素及び三酸化二アルミニウムは、キャッピング材料として特定使用されることがある。酸化アルミニウムはアルファ相である場合がある。酸化アルミニウムは、酸素の存在によってEUV光を吸収し得るが、(既にその酸化状態にあり)更なる酸化に耐性があり、還元にも耐性がある。また、堆積される材料に対して良好な適合性を示して適用することができる。非晶質状態で堆積される場合は、約150~350℃の適度な温度で堆積されることがある。続いて非晶質酸化アルミニウムは約1115℃の温度でアニールされてコランダム(アルファ)状態に結晶化することがある。アニーリングによってペリクル膜内の欠陥の数が減少することもある。
【0114】
[000114] ペリクル膜は同軸ナノチューブを含むことがある。同軸ナノチューブは、水素に耐性があるナノチューブ内にカーボンナノチューブコアを含むことがある。一方のナノチューブをもう一方のナノチューブの内側に有することによって、加熱により生じる熱機械的応力の低減を経験する。外側ナノチューブは内側ナノチューブに結合されていないか又は弱く結合されているだけなので、幅広い種類の材料、つまり熱膨張係数が大きく異なる材料さえも使用することが可能である。したがって、内側ナノチューブは強度で選択されることがあり、外側ナノチューブはエッチ耐性で選択されることがある。このようにして、このような同軸ナノチューブを含むペリクル膜は、高い強度及び高い化学的安定性を示すことがある。したがって、ナノチューブを形成することができ、かつ動作中のEUVリソグラフィ装置の環境に耐性がある任意のキャッピング材料が使用されることがある。
【0115】
[000115] 同軸ナノチューブは、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブコアを取り囲む二硫化モリブデン又は硫化タングステンシェルを含むことがある。カーボンナノチューブコアは非常に丈夫であり、かつ非常に高い温度に耐えることができる。外側ナノチューブ材料は、動作中のEUVリソグラフィ装置の環境、特に水素エッチングに耐性がある。したがって、このような同軸ナノチューブを含むペリクル膜は、水素エッチングに耐性があると同時に丈夫である。
【0116】
[000116] 本発明の8つの態様によれば、本発明の第1、第4、第5、第7、又は第9の態様に係るリソグラフィ装置が提供される。
【0117】
[000117] 本発明の第9の態様によれば、カーボンナノチューブペリクル膜を調整する方法であって、ペリクル膜を電磁放射で加熱することによって、ペリクル膜からナノ粒子汚染及び/又は非晶質炭素を選択的に除去することを含み、調整がリソグラフィ装置の外側で行われる方法が提供される。
【0118】
[000118] カーボンナノチューブ(CNT)膜は、CNTの合成中に触媒として採用された金属含有ナノ粒子を含むことがある。CNT膜に存在するこのようなナノ粒子又はその残余物が、EUV透過損失を引き起こすことがあり、レチクル汚染のリスクをもたらすこともある。通常、触媒ナノ粒子をその金属状態に還元して触媒活性を高めるために、気体のエッチング種がCNT合成中に存在する。気体のエッチング種は通常、水素又はアンモニアから得られる。エッチング種はまた、形成される非晶質炭素をエッチングする。しかし、一旦CNT合成が完了しても、構造中にダングリングボンド又は欠損原子を生じ得る非晶質炭素が依然として残っていることがある。残っている非晶質炭素及び触媒ナノ粒子を除去することは望ましい。触媒ナノ粒子は、鉄、酸化鉄、コバルト、ニッケル、クロム、モリブデン及び/又はパラジウムを含むことがある。
【0119】
[000119] カーボンナノチューブペリクル膜に電磁放射を照射することによって、ペリクルが熱くなる。薄いCNT膜の極端に低い吸光度と比べて金属粒子の吸光度が高いため、金属ナノ粒子汚染物質のすぐ近く及び金属ナノ粒子汚染物質自体が照射中に熱くなる。これはペリクル膜から金属ナノ粒子汚染物質を除去することが分かっている。この調整ステップは、リソグラフィ装置の内側を汚染する可能性を回避するために、リソグラフィ装置の外側でペリクルとしての使用の前に行われる。
【0120】
[000120] CNTペリクル膜は、真空又は還元環境中で加熱されることがある。カーボンナノチューブの酸化を回避するために、加熱は真空内で行われることがある。還元環境を利用する実施形態では、酸化鉄を含み得る金属含有ナノ粒子汚染物質はその金属形に還元される。また、残っている非晶質炭素が除去される。更に、CNTの結晶化度が高まる。
【0121】
[000121] 還元環境は水素環境である場合がある。付加的又は代替的に、アンモニアを使用して還元環境を作り出すことがある。
【0122】
[000122] 他の実施形態では、金属触媒ナノ粒子と反応する気体が使用されることがある。例えば、酸化炭素、酸素又は他の適当な気体が金属触媒と反応して、低エネルギー光照射下で揮発性化合物を形成することがある。場合により酸素を膜中の炭素と反応させることにより形成される酸化炭素が、金属に結合して、後に光誘起励起によって除去することができる金属カルボニルを形成することがある。また、非晶質炭素が、還元環境における非晶質炭素の炭化水素としての除去と同様の方法で、酸化炭素として除去されることがある。
【0123】
[000123] 金属ナノ粒子により吸収され、金属ナノ粒子を昇温させ得る光の任意の波長が使用されることがある。例えば、810nmといった赤外又は近赤外波長が使用されることがある。使用される光の波長は、約700nmから約1000nmである場合がある。このような光の波長は容易に提供され、安全で取り扱いが容易である。
【0124】
[000124] CNTペリクル膜は、任意の適切な時間加熱されることがある。適切な時間は、金属含有ナノ粒子汚染物質の50%超が除去される時間である。実施形態では、適切な時間は、ナノ粒子汚染物質の60%超、70%超、80%超、又は90%超が除去される時間である。金属汚染物質の数は、走査電子顕微鏡法によって容易に測定されることがあり、その結果、金属ナノ粒子の所望の割合を除去するのに必要な時間の長さを定期的に決定することができる。
【0125】
[000125] CNT膜は、最大10分間、最大5分間又は最大2分間加熱されることがある。CNT膜は、15s間、30s間、45s間、60s間、75s間、又は90s間加熱されることがある。
【0126】
[000126] ペリクル膜の加熱に使用される電磁放射は低パワーである場合がある。したがって、パワーは20W/cm未満、15W/cm未満、10W/cm未満、又は5W/cm未満である場合がある。パワーは約3W/cm、2W/cm、1W/cm、又は0.5W/cmである場合がある。このような低パワーによって、ペリクル膜に損傷を与えるリスクを回避すると同時に、ナノ粒子及び/又は非晶質炭素を除去することが可能になる。
【0127】
[000127] 一実施形態について説明される特徴が、別の実施形態について説明されるいずれの特徴とも組み合わせられ得ること、及び全てのそのような組み合わせが本明細書において明示的に考慮及び開示されていることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
[000128] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【0129】
図1】[000129] 本発明のある実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
図2】[000130] キャッピング層を含むカーボンナノチューブの束を含む従来技術のペリクル膜の概略を示す。
図3a】[000131] 本発明に係るペリクル膜の概略を示す。
図3b】[000131] 本発明に係るペリクル膜の概略を示す。
図4a】[000132] 本発明に係るペリクル膜の概略を示す。
図4b】[000132] 本発明に係るペリクル膜の概略を示す。
図5】[000133] 電気的にバイアスをかけられたペリクル/レチクルを含むリソグラフィ装置の概略を示す。
図6】[000134] 電気的にバイアスをかけられたペリクル/レチクルマスキングユニットを含むリソグラフィ装置の概略を示す。
図7a】[000135] 電気的にバイアスをかけられたレチクルマスキングユニットブレードを含むリソグラフィ装置の概略を示す。
図7b】[000135] 電気的にバイアスをかけられたレチクルマスキングユニットブレードを含むリソグラフィ装置の概略を示す。
図8】[000136] カーボンナノチューブペリクル膜のエッチングに関与する主要プロセスの概略を示す。
図9】[000137] レチクルミニ環境と、EUV放射、水素イオン及び水素ラジカルのおおよその範囲とを示す。
図10】[000138] 本発明のある実施形態を示す。
図11a】[000139] 本発明のある実施形態を示す。
図11b】[000139] 本発明のある実施形態を示す。
図12a】[000140] 本発明に係る方法の実施形態を示す。
図12b】[000140] 本発明に係る方法の実施形態を示す。
図13】[000141] エアロゲル層を含む、本発明に係るペリクル膜の概略断面を示す。
図14a】[000142] 本発明のある実施形態に係る、調整される前のCNT膜の走査電子顕微鏡画像を示す。
図14b】[000142] 本発明のある実施形態に係る、調整された後のCNT膜の走査電子顕微鏡画像を示す。
図15】[000143] 本発明のある実施形態に係る、調整される前と調整された後のCNT膜のラマンスペクトルを示す。
図16】[000144] 本発明のある実施形態に係る、調整される前と調整された後のCNT膜のFTIRスペクトルを示す。
【0130】
[000145] 本発明の特徴及び利点は、同様の参照符号は全体を通して対応する要素を識別する図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことで更に明白になるであろう。図面では、一般に、同様の参照番号が同一の、機能が類似した、及び/又は構造が類似する要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0131】
[000146] 図1は、本発明に係るペリクル15(膜アセンブリとも呼ばれる)を含むリソグラフィシステムを示している。リソグラフィシステムは、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを含む。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを発生させるように構成されている。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを含む。照明システムILは、パターニングデバイスMAに入射する前に放射ビームBを調整するように構成されている。投影システムは、放射ビームB(すでにマスクMAによりパターン形成されている)を基板W上に投影するように構成されている。基板Wは先に形成されたパターンを含むことがある。その場合、リソグラフィ装置は、パターン形成された放射ビームBを先に基板W上に形成されたパターンと位置合わせする。この実施形態では、ペリクル15は、放射の経路内に示されており、パターニングデバイスMAを保護している。ペリクル15は、任意の所要の位置にある場合があり、リソグラフィ装置内のミラーのいずれかを保護するのに使用され得ることが理解されるであろう。
【0132】
[000147] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSはすべて、外部環境から隔絶できるように構築及び配置されることがある。放射源SOに大気圧を下回る圧力のガス(例えば水素)が提供されることがある。照明システムIL及び/又は投影システムPSに真空が提供されることがある。照明システムIL及び/又は投影システムPSに大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)が提供されることがある。
【0133】
[000148] 図1に示される放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれ得るタイプのものである。例えばCOレーザである場合があるレーザは、レーザビームを介して、エネルギーを燃料放出器から提供されるスズ(Sn)などの燃料に付与するように配置される。以下の説明ではスズについて言及するが、任意の適当な燃料が使用されることがある。燃料は、例えば液体の形態である場合があり、例えば金属又は合金である場合がある。燃料放出器は、例えば液滴の形態のスズを、プラズマ形成領域に向かう軌道に沿って導くように構成されたノズルを含むことがある。レーザビームは、プラズマ形成領域においてスズに入射する。スズへのレーザエネルギーの付与は、プラズマ形成領域においてプラズマを生成する。EUV放射を含む放射が、プラズマのイオンの脱励起及び再結合の間にプラズマから放出される。
【0134】
[000149] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ(より一般的に法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)によって収集及び集束される。コレクタは、EUV放射(例えば13.5nmといった所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置される多層構造を有することがある。コレクタは、2つの楕円焦点を有する楕円形構成を有することがある。以下で考察するように、第1の焦点がプラズマ形成領域にある場合があり、第2の焦点が中間焦点にある場合がある。
【0135】
[000150] レーザは放射源SOから分離されることがある。その場合、レーザビームは、例えば適当な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを含むビームデリバリシステム(図示せず)、及び/又は他の光学部品の助けを借りて、レーザから放射源SOへと渡されることがある。レーザ及び放射源SOは、併せて放射システムと見なされることがある。
【0136】
[000151] コレクタにより反射された放射は放射ビームBを形成する。放射ビームBはある点で集束されてプラズマ形成領域の像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源の役割を果たす。放射ビームBが集束される点は、中間焦点と呼ばれることがある。放射源SOは、中間焦点が放射源の閉鎖構造の開口に又はその付近に位置するように配置される。
【0137】
[000152] 放射ビームBは、放射源SOから放射ビームを調整するように構成された照明システムILに入る。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことがある。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は併せて、所望の断面形状及び所望の角度分布を有する放射ビームBを提供する。放射ビームBは照明システムILから、支持構造MTにより保持されたパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームBを反射し、これにパターン形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又は代えて、他のミラー又はデバイスを含むことがある。
【0138】
[000153] パターニングデバイスMAからの反射に続き、パターン形成された放射ビームBは、投影システムPSに入る。投影システムは、基板テーブルWTにより保持された基板W上に放射ビームBを投影するように構成される複数のミラー13、14を含む。投影システムPSは、ある縮小係数を放射ビームに適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する像を形成することがある。例えば、4という縮小係数が適用されることがある。図1では投影システムPSは2つのミラー13、14を有しているが、投影システムは任意の数のミラー(例えば6つのミラー)を含むことがある。
【0139】
[000154] 図1に示される放射源SOは、図示されていないコンポーネントを含むことがある。例えば、放射源にスペクトルフィルタが設けられることがある。スペクトルフィルタは、EUV放射を実質的に透過させるが、赤外線放射などの他の波長の放射を実質的に遮断することがある。
【0140】
[000155] ある実施形態では、膜アセンブリ15はEUVリソグラフィ用のパターニングデバイスMAのためのペリクルである。本発明の膜アセンブリ15は、動的ガスロック又はペリクル又は別の目的に使用することができる。ある実施形態においては、膜アセンブリ15は、入射するEUV放射の少なくとも90%を透過するように構成された少なくとも1つの膜層から形成された膜を含む。EUV透過の最大化及び結像性能への影響の最小化を保証するために、膜は縁のみで支持するのが好適である。
【0141】
[000156] パターニングデバイスMAが保護されないままにされると、汚染によって、パターニングデバイスMAを洗浄又は廃棄することが必要になる可能性がある。パターニングデバイスMAを洗浄することは貴重な製造時間を中断し、パターニングデバイスMAを廃棄することは費用がかかる。パターニングデバイスMAを交換することも、貴重な製造時間を中断する。
【0142】
[000157] 図2はカーボンナノチューブの束100の概略図であり、カーボンナノチューブはキャッピング層101を含む。カーボンナノチューブの典型的な直径は約2~約30nmであり、キャッピング層101の厚さhは、一般的には約10nm未満であり、典型的には約1nmである。キャッピング層は非常に薄いにもかかわらず、コンフォーマルコーティングを含むペリクル膜の透過率は、キャップが除去されたナノチューブを含むペリクル膜と比較して低い。また、上述のように、薄層はディウェッティングを生じやすい場合がある。また上述のように、ナノチューブのキャッピングによってペリクルEUV散乱が耐え難いものになることがある。ナノチューブの束はペリクル膜を含むことがある。ペリクル膜は、ペリクル膜を支持するフレームに付着されることがある。
【0143】
[000158] 図3aは、カーボンナノチューブの外面がナノ粒子103で装飾されている、本発明のある実施形態に係るカーボンナノチューブの束102の概略図である。ナノ粒子の直径はDnpと表示される。ナノ粒子の直径は、任意の適切な方法によって測定されることがある。好ましくは、直径はTEM(透過電子顕微鏡法)によって測定される。ナノ粒子の直径は最大直径から最小直径まで様々な場合がある。粒子のサイズは必ずしも同じである必要はないが、ナノ粒子は狭いサイズ範囲内にあることが好ましい。狭いサイズ範囲には±15nm、±10nm又は±5nmが含まれることがある。製造上の限界により、一部のナノ粒子が許容範囲外にあり得ることが理解されるであろう。隣接又は近接するナノ粒子間の距離を示すために用語Lnpが使用される。これは同じナノチューブ上のナノ粒子であるか又は異なるナノチューブ上のナノ粒子である可能性があることが理解されるであろう。
【0144】
[000159] 図3bは、カーボンナノチューブが吸着原子状水素の存在及び水素イオンによる炭素-炭素結合の破壊によってどのように侵食され得るかを概略的に示している。水素ラジカルH*は、カーボンナノチューブの表面に吸着し、ナノ粒子に到達するまでナノチューブに沿って移動することができる。水素ラジカルの分子状水素への再結合速度が、カーボンナノチューブにおけるよりもナノ粒子において速いことで、ナノ粒子における分子状水素の生成率がカーボンナノチューブ上の他の場所よりも大きいため、吸着原子状水素が除去される結果、吸着原子状水素の濃度が取り除かれ、破壊された炭素-炭素結合が不動態化される可能性が低くなる。これに対して、ナノ粒子により保護されていないエリアでは、吸着水素ラジカルが容易に再結合されないため、炭素-炭素結合が水素イオンによって破壊された場合に、結合の不動態化が生じ、最終的には炭化水素がナノチューブから放出されてナノチューブの損傷をもたらす可能性がある。
【0145】
[000160] 図4a及び図4bは、図3a及び図3bの実施形態に類似した実施形態を示しているが、ナノ粒子がナノチューブ内に配置されている。図3a及び図3bと同様に、カーボンナノチューブ107の束105が示されており、ナノ粒子106がカーボンナノチューブ内にある。一部の実施形態では、ナノ粒子がナノチューブの内側と外側の両方に配置され得ることが理解されるであろう。Wnpはナノ粒子の直径であり、Unpは隣接又は近接するナノ粒子間の距離である。図3bと同様に、吸着原子状水素は、分子状水素に再結合されるナノチューブに沿って移動することができ、その後ナノチューブから脱離することができる。ナノ粒子は、ナノチューブの内側にあるにもかかわらず、原子状水素の再結合を増大させることによってナノチューブをエッチングから保護する。
【0146】
[000161] 図5は、クランプ110により基準マーカ111及び112を用いてチャック109に取り付けられたパターン付きレチクル108を示している。レチクル108はペリクル131で覆われている。ペリクルが本発明に係るペリクル又は別のタイプのペリクルであり得ることは理解されるであろう。ペリクル131は、浮いているペリクルを形成するために任意の絶縁構造120を介してレチクルに結合されることがある。ペリクル131はコネクタ121を介してバイアス電極に接続されている。レチクル前面品質エリア132は、コネクタ122を介して他のバイアス電極に接続されている。レチクルマスキングブレード(REMAブレード)151及び152並びに均一性補正モジュール(UNICOM)180が、EUV放射200によるレチクル108の照明を規定する。REMAブレード及びUNICOMが実際のEUVリソグラフィ装置で使用され、付加的な文脈に含まれることは理解されるであろう。本発明は、これらの特徴を用いずに実施されることがある。ペリクル131とレチクル108の間のバイアスは、ペリクル131とレチクル108の間のガスをイオン化することにより作り出される、及び/又はペリクル131の細孔を通ってペリクルとREMAブレード151、152との間の容積から拡散されることによって送出されるイオンを、ペリクル131からレチクル108に向かって離れるように偏向させる。これは、カーボンナノチューブペリクル膜であり得るペリクル膜のエッチングを抑制する。
【0147】
[000162] 図6は、電気的バイアスがペリクル131とREMAブレード151、152との間に付与される構成を示している。UNICOM180にもREMAブレードと同様又は同等の電位が与えられることがある。図5の構成と同様に、ペリクル131はコネクタ121を介して電極に接続される。任意選択で、ペリクルは浮いたままにされることがあり、その場合、コネクタ121は省略されることがある。REMAブレード151、152の電位は負である。使用時、バイアスはペリクルと電極の間だけではなく、EUVプラズマ自体(大部分がEUV円錐内に含有される)と電極の間にも導入されることがある。典型的には、プラズマ電位は、最も大きく最も近い電極(一般に、接地真空容器壁である)に対していくらか正(+5....+25V)であり、したがって、絶対負電位電極(例えばREMAブレード又はUNICOM又はYノズル)を導入することによって、プラズマから陽イオンを抽出し、これらを(浮いている又はバイアスをかけられた)ペリクルから離れるように方向転換することが可能である。
【0148】
[000163] 図7a及び図7bは、電気的バイアスがREMAブレード151、152間に与えられる構成を示している。図7bに最もはっきりと見られるように、大きいREMAブレード151と小さいREMAブレード152がある。好ましくは、大きいREMAブレード151は、浮いているペリクルの容量性(負の)バイアスの可能性を低下させるために、小さいREMAブレード152よりも接地真空容器に対してかけられる負のバイアスが小さい。
【0149】
[000164] 図8は、カーボンナノチューブのエッチングに関与する主要プロセスを示している。矢印301は、Hの会合脱離による吸着原子状水素の除去を示す。吸着原子状水素の移動(水素ラジカルホッピングとしても知られている)は矢印302で示される。水素ラジカルの吸着は矢印300で示され、水素ラジカルの脱離は矢印303で示される。水素イオンによる炭素-炭素結合の開裂は線304で示される。図示される様々なプロセスのうち、水素ラジカル脱離303が最大の関連エネルギーバリアを有し、その他のプロセスがより低いエネルギーバリアを有する。したがって、ペリクルを加熱することによって、最高のエネルギーバリアを有するプロセス、すなわち原子状水素脱離が最も加速される。したがって、全てのプロセスが加速されることがあるが、原子状水素の脱離は他のプロセスよりも加速される。また、水素イオンを伴うプロセス304は、入ってくる水素イオンのエネルギーに関連するため、ペリクル温度への依存が少ない(又は全くない)。
【0150】
[000165] 図9は、レチクル430を取り囲むレチクルミニ環境(RME)を示しており、EUV放射ビームのおおよその範囲(W_EUV)、メインの水素イオンフラックスの範囲(W_ion)、及びメインの水素ラジカルフラックスの幅(W_radical)を示す。これらの領域を示す円錐が説明のためのものであり、本発明の理解を助けるためのものであることが理解されるであろう。ペリクル401は、任意選択のフレクシャ402を介してレチクル400に支持される。EUV円錐420は、RME内に様々な影響力があるラジカル及びイオンを発生させる。通常、レチクルマスキングユニットブレード411及び410間の距離は、EUV放射ビームの幅(W_EUV)とほぼ同じである。通常、ペリクルの最高温領域は、多孔質カーボンナノチューブ膜の熱伝導率に限りがあるため、W_EUVよりも少しだけ(例えば数ミリメートル)大きい。水素イオンは表面と1回衝突した後に再結合するため、イオンの及ぶ範囲W_ionは、W_EUVにレチクルマスキングユニットブレードとペリクル401との間の距離(H_rema)の約2~4倍を加えたものとほぼ同じである。H_remaは通常、約2~5mmである。一方、ラジカルは表面との複数回の衝突に耐えることができるため、その範囲(W_radical)ははるかに大きく、ペリクルのサイズとほぼ同じである場合がある。したがって、イオンフラックスとラジカルフラックスの両方にさらされるエリアはペリクルの表面の全体ではない。その結果、エッチングを遅らせる目的で吸着水素ラジカルの濃度を低下させるために、この重なるエリアのみが加熱されることがある。
【0151】
[000166] 図10は、レーザを使用してペリクル膜に追加熱を供給する本発明のある実施形態を示している。図に示すように、レーザビーム510及び520が提供される。本発明は2つのレーザビームのみに限定されず、必要に応じてより少ない又はより多いレーザビームを使用できることが理解されるであろう。図示された例では、各レーザビームは、レーザビームをペリクル上に指向する関連光学素子510、521を有する。おおよその追加加熱領域の幅はW_ext.heatで示される。レーザ光の加熱効果は、イオンフラックスが最も高いエリアの吸着ラジカル濃度を抑制することによってエッチ速度を低下させる。選択的加熱は、レチクルに対する全体的な熱負荷を制限する。任意の適切なレーザパワーが選択されることがあり、例えば、所要の追加熱を与えるために、吸収されたエネルギーの0.1~10w/cmを供給することが望ましい場合がある。(レチクルに指向させた)透過放射512、522のパワーは、入射パワーの一部(例えば、約5~50%)と推定され、高温ペリクルからのIR放射と同じようにレチクルでほとんど完全に反射されるため、レチクルが耐えられる熱負荷である。
【0152】
[000167] 図11a及び図11bは、抵抗加熱を含む本発明のある実施形態を示している。電流源600が、接点601、602、及び/又はチャックもしくはクランプに組み込まれたワイヤを介してペリクル401に接続される。ペリクルフィルム620内の電流640を、高導電性ストリップ630をペリクルフレーム610上に設けることによって実質的に均一にすることができ、電流はこのようなストリップに流れる。導電性ストリップ630は、ペリクル膜の最も高い水素イオンフラックスにさらされる部分に電流を分配するように構成することができる。
【0153】
[000168] 図12a及び図12bは、ペリクル膜を再生、調整及び/又は修復する方法に関する概略的なフローチャートを示している。まず図12aを参照すると、製造後、ペリクル膜は真空又は還元アニーリングステップ701を経る。これによって、緩く結合した非晶質の炭素、及びカーボンナノチューブ成長プロセスからの残りの種ナノ粒子などの他の汚染物質が除去される。ペリクル膜は続いて、炭化水素含有雰囲気において反応性アニーリングプロセス702を経る。炭化水素は任意の炭化水素である場合があるが、メタン、エタン、プロパン、又はブタンなどの短鎖(C1-4)炭化水素を使用することが好適である。炭化水素は飽和又は不飽和である場合がある。エテンやエチンなどの不飽和炭化水素が、炭素対水素比率が高くなるため好適である。反応性アニーリングステップ702に続いて、ペリクル膜はルート705経由で再び真空又は還元アニーリング701を受けることがある。スキャナでの使用704の前に、ペリクル膜は、スキャナ環境での暴露中の過渡効果を避けるために真空アニーリングステップ703を経る。そのような過渡効果には、リソグラフィ装置内のスキャナ環境におけるEUV放射並びに水素イオン及び水素ラジカルへの暴露の後のペリクル膜のEUV透過率の変化が含まれる。別の方法では、矢印706で示されるように、ペリクル膜は、反応性アニーリングを受けることなくスキャナにおいて使用されることがある。
【0154】
[000169] 図12bは、リソグラフィ装置のスキャナ環境に暴露されたペリクル膜を再生、調整、及び/又は修復する方法に関する概略的なフローチャートを示している。ペリクル膜はリソグラフィ装置内の還元性の高い雰囲気にすでに暴露されているであろうため、ペリクルを還元アニーリングステップにおいて更にアニールする必要はない。また、ペリクル膜は使用中に損傷してしまうことがあるため、損傷を修復することが必要になるが、修復は炭化水素雰囲気における反応性アニーリングにより達成される。反応性アニーリング702の後に、ペリクル膜は真空又は還元アニーリング701を受けることがある。これは繰り返されることがある。ペリクル膜は、一旦十分に修復されると、リソグラフィ装置で再び使用されることがある(704)。
【0155】
[000170] 図13は、各面にエアロゲル層801を有するペリクル膜層800を含むペリクル膜の断面を示している。一部の実施形態では、エアロゲル層801が片面にのみ設けられることが理解されるであろう。エアロゲル層800は、下にあるペリクル膜層800を水素プラズマによるエッチングから保護することができる。リソグラフィ装置のその他の光学素子も同様にエアロゲルによって保護され得ることが理解されるであろう。
【0156】
[000171] 図14a及び図14bは、同じCNT膜のエリアの走査電子顕微鏡画像である。図14aでは、CNT膜は、本発明の第9の態様の方法に従って未だ調整されていない。ナノ粒子汚染物質は、CNT膜に分散された白い点としてはっきりと見ることができる。図14bは、調整された後の同じCNT膜を示している。具体的には、CNT膜は810nmの放射への暴露によって調整された。図に示すように、ナノ粒子汚染物質の数が大幅に減っている。
【0157】
[000172] 図15は、未調整のCNT膜及び本発明の第9の態様に従って調整されたCNT膜のラマンスペクトルを示している。2つのピークが観察される。約1350cm-1における第1のピークは、原始(調整前の)CNT膜に関連する線が調整済みのCNTに関連する線よりも高いことを示す。このラマンシフトにおいて、より高い線は、欠陥のあるCNT、非晶質炭素、又はその両方の存在を示すより大きな欠陥度又は欠陥量を示す。CNTペリクル膜を調整することによって、欠陥、非晶質炭素、又はその両方の量を減少させる。約1580cm-1におけるピークは、調整済みのCNTペリクル膜に関連する線が調整前のCNT膜に関連する線よりも高いことを示す。約1580cm-1におけるピークは、結晶性炭素の量に関連し、調整済みのCNTペリクル膜は調整前のCNTペリクル膜よりも結晶性炭素の量が多いことを示す。
【0158】
[000173] 図16は、CNTペリクル膜の調整済みのエリア及び調整前のエリアから得られたFTIRスペクトルを示している。原始(調整前の)CNTペリクル膜から得られたスペクトルは、約2.5ミクロンでより低いピーク、約4ミクロンでほぼ同じ吸収、4ミクロン超の波長で概ねより高い吸収を示す。これに対して、調整(照射)済みのCNTペリクル膜は、2.5ミクロンではるかに高い吸収ピークを、そして4ミクロン超の波長で概ねより低い吸収を有する。2.5ミクロンでの明確なピークは、調整後にCNT膜の結晶品質が高くなることを更に示す。
【0159】
[000174] 本発明の様々な態様が組み合わせて提供され得ることが理解されるであろう。例えば、電気的バイアスを含む実施形態は、本明細書に記載のペリクル膜と組み合わせて、又は他のタイプのペリクル膜と組み合わせて用いられることがある。ペリクルを再生する方法は、電気的バイアス法と組み合わせて用いられることがあり、本明細書に記載のペリクル膜又は別のタイプのペリクル膜を使用することを更に含むことがある。
【0160】
[000175] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0161】
[000176] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。例えば、様々なレイヤを、同じ機能を実行する他のレイヤに置き換えることができる。
【0162】
[000177] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
【0163】
1.キャップが除去されたカーボンナノチューブを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜。
2.リソグラフィ装置用のペリクル膜であって、膜が複数のナノ粒子を更に含み、任意選択でナノ粒子が複合ナノ粒子であるペリクル膜。
3.ナノ粒子がカーボンナノチューブと結び付けられた、条項2に記載のペリクル膜。
4.ナノ粒子が、カーボンナノチューブの表面に配置される、又はカーボンナノチューブ内に配置される、又はカーボンナノチューブの表面とカーボンナノチューブ内とに配置される、条項2又は3に記載のペリクル膜。
5.ナノチューブがガス透過性メッシュを形成する、条項1から4のいずれかに記載のペリクル膜。
6.カーボンナノチューブが、単壁ナノチューブ、多壁ナノチューブ、及びこれらの組み合わせから選択された、条項1から5のいずれかに記載のペリクル膜。
7.ナノ粒子の直径が、約1nmから約100nm、好ましくは約1nmから約25nmである、条項1から6のいずれかに記載のペリクル膜。
8.ナノ粒子の直径が、対応するレチクルのパターンのクリティカルディメンジョンの半分未満である、条項1から7のいずれかに記載のペリクル膜。
9.隣接するナノ粒子間の平均距離がナノ粒子の直径よりも大きい、条項1から8のいずれかに記載のペリクル膜。
10.隣接するナノ粒子間の平均距離が、ナノ粒子の直径の約1から約50倍である、条項9に記載のペリクル膜。
11.隣接するナノ粒子間の平均距離が、ナノ粒子の直径の10倍以上である、条項9に記載のペリクル膜。
12.ナノ粒子が、ナノチューブよりも高い水素再結合係数を有する材料を含む、条項1から11のいずれかに記載のペリクル膜。
13.ナノ粒子の再結合係数が約0.1から約1である、条項12に記載のペリクル膜。
14.ナノ粒子を含む材料が、金属、金属酸化物、ドープ金属、合金、又はこれらの組み合わせから構成される群から選択された、条項1から13のいずれかに記載のペリクル膜。
15.ナノ粒子を含む材料が、Nb、Mo、Zr、Y、Ru、Rh、Pt、Pd、W、Cr、Ni、Fe、Co、Ag、Au、及びこれらの組み合わせから構成される群から選択された、条項1から14のいずれかに記載のペリクル膜。
16.ナノ粒子が、O、N、B、Si、C、H、S、P、Cl、及びこれらの組み合わせを追加的に含む、条項14又は15に記載のペリクル膜。
17.ナノ粒子の表面密度が、1平方ミクロンあたり約500粒子よりも大きく、好ましくは1平方ミクロンあたり約1000粒子よりも大きい、条項1から16のいずれかに記載のペリクル膜。
18.キャップが除去されたカーボンナノチューブが不動態化された、好ましくは化学的に不動態化された、条項1から17のいずれかに記載のペリクル膜。
19.キャップが除去されたカーボンナノチューブが、化学種のナノチューブの表面への化学吸着によって不動態化された、条項18に記載のペリクル膜。
20.キャップが除去されたカーボンナノチューブが、窒化、酸化、もしくはハロゲン化によって、又はストロンチウム、ホウ素、ベリリウム及び/又はケイ素のナノチューブの表面への添加によって不動態化された、条項18又は19に記載のペリクル膜。
21.キャップが除去されたカーボンナノチューブの表面が意図的に水素化されていない、条項1から20のいずれかに記載のペリクル膜。
22.キャップが除去されたカーボンナノチューブがフッ素化又は塩素化によって不動態化される、条項18から21のいずれかに記載のペリクル膜。
23.キャップが除去されたカーボンナノチューブを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜であって、キャップが除去されたカーボンナノチューブの表面の少なくとも一部分が化学的に不動態化され、好ましくは化学的不動態化が、窒化、酸化、及び/又はハロゲン化を含む、ペリクル膜。
24.キャップが除去されたカーボンナノチューブが、炭素以外の原子でドープされ、任意選択で炭素以外の原子が窒素、ホウ素、及び/又はケイ素である、条項1から23のいずれかに記載のペリクル膜。
25.ペリクル膜を再生及び/又は調整する方法であって、方法が、前駆体化合物を分解すること、及び分解生成物の少なくとも一部をペリクル膜上に堆積させることを含む方法。
26.ペリクル膜が条項1から24のいずれかに記載の膜である、条項25に記載の方法。
27.前駆体が炭化水素であり、好ましくは炭化水素が、飽和又は不飽和C1~4炭化水素、又は環状炭化水素(C5以上)、又は芳香族炭化水素(C6以上)であり、任意選択で前駆体がO、N、B、P、S、Clのうちの少なくとも1つを含む、条項25又は26の方法。
28.前駆体化合物が連続的に又は断続的に供給される、条項25から27のいずれかの方法。
29.前駆体化合物の量が、ペリクル膜のエッチ速度、ペリクル膜が配置されるリソグラフィ装置の動作電力、及びペリクル膜の動作寿命のうちの1つ以上に依存して調整される、条項25から28のいずれかの方法。
30.方法が、前駆体化合物をペリクル膜に向かわせることを含む、条項25から29のいずれかの方法。
31.方法が、カーボンナノチューブペリクル膜を調整及び/又は修復する方法を含み、方法が、カーボンナノチューブペリクル膜を炭化水素含有雰囲気中でアニールするステップを含む、条項25から29のいずれかの方法。
32.アニーリングが約700Kから約900Kの温度で行われる、条項31に記載の方法。
33.方法が真空アニーリングステップを含み、任意選択で真空アニーリングステップが、ペリクル膜を炭化水素含有雰囲気中でアニールするステップの前及び/又は後である、条項25から32のいずれかに記載の方法。
34.方法が還元アニーリングステップを含み、任意選択で還元アニーリングステップが、反応性アニーリングステップの前及び/又は後であり、任意選択で還元アニーリングが水素などの還元ガス中で行われる、条項25から33のいずれかに記載の方法。
35.最終アニーリングステップが真空アニーリングステップ又は還元アニーリングステップである、条項25から34のいずれかに記載の方法。
36.ペリクル膜が条項1から24のいずれかに記載のペリクル膜である、条項25から35のいずれかに記載の方法。
37.任意選択で条項1から24のいずれかに記載の膜であるペリクル膜を再生及び/又は調整する方法であって、方法が、以下のステップ、
a)真空又は還元アニーリング、
b)炭化水素環境での反応性アニーリング、
c)ステップa)及びb)の任意選択的な繰り返し、及び
d)真空又は還元アニーリングの最終ステップ、を含む方法。
38.ペリクル膜のエッチ速度を低下させる方法であって、方法が、ペリクル膜の領域に少なくとも1つのバイアス素子を設けることを含み、好ましくはペリクル膜がカーボンナノチューブペリクル膜である、方法。
39.最も近い電極に対してバイアスをかけられたペリクル膜を含み、レチクル前面及び/又はシャッタシステム及び/又は光学フィルタ及び/又はパージガス供給を含み得るリソグラフィ装置用のアセンブリであって、任意選択でペリクル膜及び/又はレチクル前面が浮いているのに対して、シャッタシステム及び/又は光学フィルタが接地真空容器壁に対して負のバイアスをかけられた、アセンブリ。

40.任意の電極間の絶対バイアスが、約-500V以下、好ましくは約-250V以下、より好ましくは約-50V以下であり、任意選択で全ての電極が接地真空容器壁に対して負である、条項39に記載のアセンブリ。
41.バイアスが電流制限された、又は任意選択でEUVパルスに同期させたパルスでパルス化された、条項39又は40に記載のアセンブリ。
42.ペリクル膜が、レチクルマスキングユニット、レチクル、光学フィルタ及びレチクルミニ環境内の補助電極のうちの1つ以上に対してバイアスをかけられた、条項39から41のいずれかに記載のアセンブリ。
43.アセンブリが、第1及び第2のブレードを含むレチクルマスキングユニットを含み、ブレード間に電気的バイアスが与えられた、条項39から42のいずれかに記載のアセンブリ。
44.接地電極が設けられた、条項39から43のいずれかに記載のアセンブリ。
45.リソグラフィ装置用のペリクル装置であって、ペリクル装置がペリクル膜及びペリクル加熱手段を含むペリクル装置。
46.加熱手段がペリクル膜の所定の部分を加熱するように構成された、条項45に記載のペリクル装置。
47.ペリクル膜の所定の部分が最も高い水素イオンフラックスにさらされる部分である、条項45又は条項46に記載のペリクル装置。
48.加熱手段が、i)1つ以上のレーザ、及び/又は、ii)1つ以上の抵抗加熱素子を含む、条項45から47のいずれかに記載のペリクル装置。
49.1つ以上のレーザが可視スペクトル又は赤外線スペクトルで動作する、条項48に記載のペリクル装置。
50.装置が、ペリクル膜上にレーザ光を指向するように構成された少なくとも1つの光学素子を更に含む、条項47又は48i)に記載のペリクル装置。
51.ペリクル膜が、ペリクル膜を含む材料が抵抗加熱器の役割を果たすように電流源に接続された、条項48ii)に記載のペリクル装置。
52.ペリクル膜の少なくとも一部分に電流を分配する導電性ストリップが設けられた、条項48ii)又は条項51に記載のペリクル装置。
53.ペリクル膜がカーボンナノチューブを含み、好ましくはペリクル膜が条項1から17のいずれかに記載のペリクル膜を含む、条項45から52のいずれかに記載のペリクル装置。
54.ペリクル膜の動作寿命を延ばす方法であって、ペリクル膜のあるエリアを選択的に加熱することを含む方法。
55.方法が、動作中に最も高い水素イオンフラックスにさらされるペリクルのエリアを加熱することを含む、条項54に記載の方法。
56.ペリクル膜上にレーザビームを指向することによって加熱が行われる、条項54又は条項55に記載の方法。
57.レーザビームを1つ以上の光学素子によって指向させる、条項54、55、又は56に記載の方法。
58.ペリクル膜に電流を流すことによって加熱が行われる、条項54又は条項55に記載の方法。
59.ペリクル膜が条項1から24のいずれかに記載のペリクル膜である、条項58に記載の方法。
60.非整列ナノチューブのネットワークを含む、リソグラフィ装置用のペリクル膜。
61.ネットワークが3次元多孔質ネットワークを含む、条項50に記載のペリクル膜。
62.ナノチューブが、単壁、二重壁、多壁及び/又は同軸である、条項60又は61に記載のペリクル膜。
63.膜が1種類のナノチューブ又は2種類以上のナノチューブを含む、条項60から62のいずれかに記載のペリクル膜。
64.膜が炭素、窒化ホウ素、及び/又は遷移金属カルコゲニドを含む、条項60から63のいずれかに記載のペリクル膜。
65.遷移金属がMo、W、Sb、又はBiから選択された、条項64に記載のペリクル膜。
66.カルコゲニドがS、Se、又はTeから選択された、条項64又は65に記載のペリクル膜。
67.ナノチューブの少なくとも一部がキャッピング材料を含む、条項60から66のいずれかに記載のペリクル膜。
68.キャッピング材料が金属酸化物、酸化ケイ素、及び六方晶窒化ホウ素から選択された、条項67に記載のペリクル膜。
69.金属酸化物の金属がアルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、チタン、モリブデン、及びハフニウムから選択され、好ましくはアルファ酸化アルミニウムである、条項68に記載のペリクル膜。
70.膜が同軸ナノチューブを含む、条項60から69のいずれかに記載のペリクル膜。
71.同軸ナノチューブが、水素エッチングに耐性のあるナノチューブ内にカーボンナノチューブコアを含む、条項70に記載のペリクル膜。
72.同軸ナノチューブが、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブコアを取り囲む二硫化モリブデン、又は硫化タングステンシェルを含む、条項71に記載のペリクル膜。
73.エアロゲルを含む、リソグラフィ装置での使用のための光学素子。
74.光学素子がペリクル膜、ミラー、レチクル、又はスペクトル純度フィルタである、条項73に記載の光学素子。
75.光学素子が、条項1から24、45から53、又は60から72のいずれか一項に記載のペリクル膜を含む、条項73又は条項74に記載の光学素子。
76.条項1から24、45から53、又は60から72のいずれか一項に記載のペリクル膜を含むリソグラフィ装置。
77.カーボンナノチューブペリクル膜を調整する方法であって、方法が、ペリクル膜を電磁放射で加熱することによってペリクル膜から金属含有ナノ粒子及び/又は非晶質炭素を選択的に除去することを含み、調整がリソグラフィ装置の外側で行われる方法。
78.CNTペリクル膜が真空環境又は還元環境で加熱される、条項77に記載の方法。
79.還元環境が、水素及びアンモニアの一方又は両方を含む、条項78に記載の方法。
80.CNTペリクル膜が、酸化炭素及び酸素の1種類以上を含む環境で加熱される、条項77に記載の方法。
81.CNTペリクル膜が、金属ナノ粒子の50%超、60%超、70%超、80%超、又は90%超を除去するのに十分な時間加熱される、条項77から80のいずれかに記載の方法。
82.CNT膜が、15s、30s、45s、60s、75s、90s間、又は最長2分間、最長5分間、もしくは最長10分間加熱される、条項77から81のいずれかに記載の方法。
83.電磁放射のパワーが、約0.5W/cm、1W/cm、2W/cm、3W/cm、5W/cm未満、10W/cm未満、15W/cm未満、又は20W/cm未満である、条項77から82のいずれかに記載の方法。
84.電磁放射が、赤外線放射又は近赤外線放射であり、任意選択で放射が約700から約1000nmの波長を有する、条項77から83のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図13
図14a
図14b
図15
図16