(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】クッキー用可塑性油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20241004BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20241004BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20241004BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A23D9/00 502
A21D2/16
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2022511803
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2021010474
(87)【国際公開番号】W WO2021200087
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2020059909
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】牧田 成人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 守雄
(72)【発明者】
【氏名】志村 聡志
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-187930(JP,A)
【文献】特開2017-189132(JP,A)
【文献】特開2018-164444(JP,A)
【文献】特開2006-160906(JP,A)
【文献】クックパッド [オンライン], 2018.12.08 [検索日 2021.04.26], インター ネット:<URL:https://cookpad.com/recipe/5011693>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00
A23D 9/00
A21D 2/16
A21D 13/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相中に牛脂および牛脂分別脂から選ばれる1種以上を含む
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物であって、
前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が、前記油相を構成する成分の全量に対して20質量%以上70質量%以下である、
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物。
【請求項2】
前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が、前記油相を構成する成分の全量に対して40質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物。
【請求項3】
前記油相を構成する成分の20℃における固体脂含量が21%以上34%以下である、請求項1または2に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物。
【請求項4】
水の含有量が、前記可塑性油脂組成物の全量に対して、3質量%以上30質量%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物を含む
押し出し板状クッキー生地。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物を、
押し出し板状クッキー生地中に配合する工程を含む、
押し出し板状クッキー生地の製造方法。
【請求項7】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物を、
押し出し板状クッキー生地に配合して
押し出し板状クッキー生地を準備する工程と、
前記
押し出し板状クッキー生地を加熱する工程と
を含む、
押し出し板状クッキーの製造方法。
【請求項8】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の
押し出し板状クッキー用可塑性油脂組成物を、
押し出し板状クッキー生地中に配合することを含む、
押し出し板状クッキー生地の機械耐性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッキー用可塑性油脂組成物、クッキー生地、クッキー生地の製造方法、クッキーの製造方法、クッキー生地の機械耐性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クッキーは、ショートニング、バター、マーガリンなどの食用油脂に砂糖を混ぜ、これに穀粉などを混ぜ合わせた生地を、適当な形状に成型し焼成した菓子である。
クッキーの種類は、クッキー生地の成型方法によって、圧延生地クッキー、絞りだしクッキーおよびアイスボックスクッキーの3種類に大きく分類できる。いずれの場合も、クッキー生地を適当な形状に成型するためには、クッキー生地にコシ(可塑性)が求められる。特に、型抜きクッキーなどのクッキー生地を板状に延ばしてカットする圧延生地クッキーや、クッキー生地を板状に絞りだしてカットする絞りだしクッキーを製造する場合、クッキー生地をカットする前に薄い板状に延ばすため、製造ラインの途中でちぎれたり、割れたりすることがないよう、クッキー生地には十分なコシが求められる。また、特に製造ラインにおいて機械を用いる場合、機械耐性、すなわち機械の使用に耐えうる十分なコシが求められる。特に型抜きクッキーでは、型抜き後の残りのクッキー生地をコンベアに乗せてホッパーに戻して、クッキー生地として再利用するが、コンベアの動きによってちぎれたり、割れたりすることがないよう、十分なコシが求められる。
例えば、型抜きクッキーを製造する場合、製造ラインにおいて、クッキー生地を型抜きした後、型抜きしたままの状態を維持しながら、残りのクッキー生地が、返送コンベアを上ってホッパーに戻り、クッキー生地として再利用されることが一般的であるため、クッキー生地には、返送コンベアを上るために十分なコシが求められる。しかし、クッキー生地のコシが強すぎると、コンベアの動きにクッキー生地が追随することができず、返送コンベア上からクッキー生地が剥がれてしまう。逆に、クッキー生地のコシが弱すぎると、クッキー生地がべたついて、巻き上げコンベアや返送コンベア上で剥がれにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4032596号公報
【文献】特許第4841136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、クッキー生地の機械耐性を向上させ、クッキー生地を安定的に生産させることが必要である。そのためにはクッキー生地のコシを向上させることが望ましい。
【0005】
本発明者らは、クッキー生地中に配合される食用油脂が、クッキー生地にコシを付与しうることを見出した。
クッキー生地に用いられる食用油脂に関して、例えば、特許文献1では、油脂またはそのエマルションを冷却晶析する際に加圧することで、生地の軟化やべたつきを起こしにくく、成型時の作業性を改善できることが記載されている。
また、特許文献2では、製菓・製パン用に適した可塑性油脂組成物として、動物油脂と極度硬化油脂とからなる油脂配合物をエステル交換してなる油脂を含む可塑性油脂組成物が記載されている。
しかし、クッキー生地のコシを安定化させて、クッキー生地の成型時の作業性を改善し、安定的に生産することについては検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示すクッキー用可塑性油脂組成物、クッキー生地、クッキー生地の製造方法、クッキーの製造方法、およびクッキー生地の機械耐性を向上させる方法に関するものである。
[1]油相中に牛脂および牛脂分別脂から選ばれる1種以上を含むクッキー用可塑性油脂組成物であって、
前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が、前記油相を構成する成分の全量に対して20質量%以上70質量%以下である、クッキー用可塑性油脂組成物。
[2]前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が、前記油相を構成する成分の全量に対して40質量%以上70質量%以下である、前記[1]に記載のクッキー用可塑性油脂組成物。
[3]前記油相を構成する成分の20℃における固体脂含量が21%以上34%以下である、前記[1]または[2]に記載の可塑性油脂組成物。
[4]水の含有量が、前記可塑性油脂組成物の全量に対して、3質量%以上30質量%以下である、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物。
[5]押し出し板状クッキー用である、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物。
[6]前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物を含むクッキー生地。
[7]前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物を、クッキー生地中に配合する工程を含む、クッキー生地の製造方法。
[8]前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物を、クッキー生地に配合してクッキー生地を準備する工程と、
前記クッキー生地を加熱する工程と
を含む、クッキーの製造方法。
[9]前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のクッキー用可塑性油脂組成物を、クッキー生地中に配合することを含む、クッキー生地の機械耐性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のクッキー用可塑性油脂組成物を用いることにより、クッキー生地のコシを安定化させ、さらには、クッキー生地の成型時の機械耐性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の可塑性油脂組成物、クッキー生地、クッキー生地の製造方法、クッキーの製造方法、クッキー生地の機械耐性を向上させる方法について順に説明する。
【0009】
1.クッキー用可塑性油脂組成物
本発明の可塑性油脂組成物は、油相中に牛脂および牛脂分別脂から選ばれる1種以上を含むクッキー用可塑性油脂組成物であって、
前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が、前記油相を構成する成分の全量に対して20質量%以上70質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の可塑性油脂組成物は、油相中に牛脂および牛脂分別脂から選ばれる1種以上を所定の量比で含むことで、クッキー生地中に配合したときにクッキー生地のコシを安定化させ得るため、クッキー生地中に配合される可塑性油脂組成物として好適に用いられる。以下、本発明の可塑性油脂組成物について説明する。
【0011】
(1)牛脂および牛脂分別
本発明の可塑性油脂組成物においては、油相中に牛脂および牛脂分別脂から選ばれる1種以上を含む。
牛脂は、食用であれば特に制限されなく、産地および種別は特に制限されない。また、牛脂は、精製されたものであってもよく、精製されていないものでもよい。牛脂の精製方法も特に制限されない。
牛脂分別脂は、牛脂を固体分の多い画分と液状分の多い画分とに分別したものである。本発明においては、固体分の多い画分および液状分の多い画分のいずれも使用可能である。牛脂分別脂は、精製されたものであってもよく、精製されていなくてもよい。また、牛脂の分別方法は、化学的な変性加工を伴わないものであれば特に制限されない。
【0012】
本発明の可塑性油脂組成物において、前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計は、前記油相を構成する成分の全量に対して20質量%以上70質量%以下であり、好ましくは40質量%以上70質量%以下、より好ましくは40質量%以上50質量%以下である。前記牛脂および牛脂分別脂の含有量の合計が上記範囲であると、クッキー生地中に配合したときにクッキー生地のコシを安定化させることができる。本発明の好ましい態様によれば、製造ラインにおいてクッキー生地の成型時に十分なコシを付与することができ、機械耐性を向上させることができる。なお、本明細書において、数値範囲を示した場合、数値範囲の上限値と下限値は適宜組み合わせることができることとする。
【0013】
(2)牛脂および牛脂分別以外の食用油脂
本発明の可塑性油脂組成物において、油相中に、牛脂および牛脂分別脂以外の食用油脂を含むことができる。
牛脂および牛脂分別脂以外の食用油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂;豚脂(ラード)、鶏脂、兎脂、羊脂、馬脂、魚油、鯨油等の動物脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド;およびこれらの油脂に、エステル交換、水素添加および分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂が挙げられるが、これらに制限されない。これらの食用油脂は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
また、牛脂および牛脂分別脂以外の食用油脂として、任意に、油相中に乳由来の油脂を用いてもよい。乳由来の油脂としては、特に制限されなく、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生緬羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳または加工乳に含まれる油脂などが挙げられる。これらは、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記油相中に乳由来の油脂を含むことで、本発明の可塑性油脂組成物にバター風味を付与することができる。
これらの中でも、バター中に含まれる油脂、無水乳脂(以下「バターオイル」ともいう)、またはこれらの分別油脂などの加工油脂、あるいはそれらの組み合わせが好ましく用いられ、バター中に含まれる油脂がより好ましく用いられる。
【0015】
(3)任意成分
本発明の可塑性油脂組成物は、本発明の目的および効果を阻害しない範囲であれば、他の成分を含有してもよい。
例えば、レシチン、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート等の乳化剤;カロテン等の着色料;トコフェロール、アスコルビン酸エステル等の酸化防止剤;香料等の油溶性成分を含有してもよい。
また、本発明の可塑性油脂組成物がエマルションの形態である場合はさらに、食塩、糖類、各種エキス類、乳加工品、脱脂粉乳、バターミルク、バターミルクパウダー等の非油溶性成分を含有してもよい。
これらの任意成分は、1種で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(4)可塑性油脂組成物の形態
本発明の可塑性油脂組成物は、水分を実質的に含有しない油性組成物の形態であってもよく、水分を含有するエマルションの形態であってもよいが、エマルションの形態であることが好ましい。
【0017】
本発明の可塑性油脂組成物が油性組成物の形態(ショートニング)である場合、油相を構成する成分の含有量の合計は、可塑性油脂組成物の全量に対して、85質量%以上99.9質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以上99.5質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上99質量%以下である。
また、本発明の可塑性油脂組成物中の水分は1質量%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の可塑性油脂組成物がエマルションの形態である場合、連続相である油相中に水相が分散してなる油中水型油脂組成物(マーガリン)であることが好ましい。
本発明の可塑性油脂組成物が油中水型油脂組成物の形態である場合、油相を構成する成分の含有量の合計は、可塑性油脂組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以上93質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上90質量%以下、さらにより好ましくは80質量%以上90質量%以下である。
また、本発明の可塑性油脂組成物が、油中水型油脂組成物である場合、可塑性油脂組成物中の水分は、3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは7質量%以上18質量%以下である。
【0019】
(5)固体脂含量
本発明の油脂組成物中の油相を構成する成分の20℃における固体脂含量は、21%以上34%以下であることが好ましく、より好ましくは23%以上32%以下、さらに好ましくは27%以上31%以下である。
油相を構成する成分の固体脂含量が上記の範囲であることで、可塑性油脂組成物が適度な保形性と融解性を保持するため、クッキー生地に適度なコシを付与することができる。
なお、本明細書において、固体脂含量は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0020】
(6)可塑性油脂組成物の調製
本発明の可塑性油脂組成物は、従来公知の方法で調製することができる。
例えば、本発明の可塑性油脂組成物が油性組成物である場合は、食用油脂および必要に応じて任意の油溶性成分を、必要に応じて加熱しながら混合し、急冷混捏装置を用いて混捏して調製することができる。
本発明の可塑性油脂組成物が、油中水型油脂組成物などのエマルションである場合は、食用油脂および任意の油溶性成分(乳化剤を含む)を含む油相、および水および必要に応じて任意の非油溶性成分を含む水相をそれぞれ調製した後、油相と水相を必要に応じて加熱しながら混合し、得られる乳化物を、急冷混捏装置を用いて混捏して調製することができる。
急冷混捏装置としては、例えば、パーフェクター、コンビネーター、ボテーター、ネクサス等が挙げられる。
【0021】
2.クッキー生地およびその製造方法
本発明の可塑性油脂組成物は、クッキー生地中に配合される食用油脂として好適に用いられる。
クッキーは、一般的に、圧延生地クッキー、絞りだしクッキーおよびアイスボックスクッキーの3種類に大きく分類することができる。本発明の可塑性油脂組成物は、これらのうちいずれのタイプのクッキー生地にも配合することができる。特に、本発明の可塑性油脂組成物は、クッキー生地を板状に押し出して成形するタイプの押し出し板状クッキー用のクッキー生地の食用油脂として好適に用いることができる。
押し出し板状クッキーとしては、例えば、型抜きクッキーなどのクッキー生地を板状に延ばしてカットする圧延生地クッキーや、クッキー生地を板状に絞りだしてカットする絞りだしクッキーが挙げられる。
これらのタイプのクッキーを製造する場合、クッキー生地をカットする前に薄い板状に延ばすため、製造ラインの途中でちぎれたり、割れたりすることがある。本発明の態様によれば、本発明の可塑性油脂組成物は、これらのタイプのクッキー生地中に配合した場合にも十分なコシを付与することができ、製造ラインにおいてちぎれたり、割れたりすることを低減することができる。
【0022】
本発明のクッキー生地は、少なくとも穀粉と可塑性油脂組成物と砂糖を含む。本発明のクッキー生地は、穀粉100質量部に対して、本発明の可塑性油脂組成物を5質量部以上50以下質量部配合することが好ましく、より好ましくは15質量部以上40以下質量部、さらに好ましくは20質量部以上30以下質量部配合する。
【0023】
穀粉としては、小麦粉、米粉、大豆粉、ライ麦粉、大麦粉、とうもろこし粉等が挙げられる。
小麦粉としては、クッキーに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、強力粉、中力粉、薄力粉およびこれらの組合せを使用できるが、薄力粉を含むことが好ましい。
米粉としては、クッキーに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、うるち米粉を使用できる。
大豆粉としては、クッキーに用いられるものであれば特に制限されなく、例えば、全脂大豆粉、脱脂大豆粉およびこれらの組合せを使用できる。
ライ麦粉、大麦粉およびとうもろこし粉としては、それぞれクッキーに用いられるものであれば特に制限されない。
これらの穀粉は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のクッキー生地には、穀粉、可塑性油脂組成物、砂糖のほか、卵、水、乳化剤、チーズ、生クリーム、合成クリーム、ヨーグルト、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー、カゼイン、牛乳、濃縮乳、合成乳、食塩、イースト、澱粉、膨張剤、食塩、甘味料、風味パウダー、品質改良剤、グルテン、カカオマス、ココアパウダー、チョコレート、コーヒー、紅茶、抹茶、野菜類、果物類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、肉類、魚介類、豆類、きな粉、豆腐、豆乳、大豆蛋白、調味料、香辛料、着色料、フレーバー等の1種または2種以上をさらに添加してもよい。これらの配合量は、用途および目的に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
本発明のクッキー生地の製造方法は、本発明の可塑性油脂組成物をクッキー生地中に配合する工程を含むものであれば特に制限されない。例えば、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法などの公知の方法を用いることができる。
シュガーバッター法は、砂糖と可塑性油脂組成物を先に混ぜ合わせてから、卵、穀粉などの他の材料を混ぜ合わせる方法である。
フラワーバッター法は、穀粉と可塑性油脂組成物を先に混ぜ合わせてから、卵、砂糖などの他の材料を混ぜ合わせる方法である。
オールインミックス法は、可塑性油脂組成物以外の材料を混ぜ、最後に溶かした可塑性油脂組成物を混ぜ合わせる方法である。
クッキー生地の製造方法は、クッキーの種類や求められる特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
3.クッキーおよびその製造方法
クッキー生地を加熱してクッキーを調製することができる。本発明のクッキーは、前述したクッキー生地を加熱してなるものであれば特に制限されない。本発明のクッキーは、圧延生地クッキー、絞りだしクッキーおよびアイスボックスクッキーのいずれでもよいが、クッキー生地を板状に押し出して成形するタイプの押し出し板状クッキーが、本発明の可塑性油脂組成物の効果をより発揮することができる。
【0027】
本発明のクッキーの製造方法は、
クッキー用可塑性油脂組成物を、クッキー用生地中に配合してクッキー生地を準備する工程と、
前記クッキー生地を加熱する工程と
を含む。
【0028】
クッキー生地を準備する工程は、クッキー生地中にクッキー用可塑性油脂組成物を配合することを含む。この工程については、前記「2.クッキー生地およびその製造方法」で述べたとおりである。
【0029】
クッキー生地を加熱する工程において、クッキー生地の加熱方法は、特に制限されなく、オーブン等で焼成すればよい。
加熱温度は、クッキーの種類や求められる特性等に応じて適宜決定すればよい。例えば、150℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上240℃以下がより好ましく、180℃以上220℃以下がさらに好ましい。
【0030】
4.クッキー生地の機械耐性を向上させる方法
本発明は、クッキー用可塑性油脂組成物を、クッキー生地中に配合することを含む、クッキー生地の機械耐性を向上させる方法をも含むものである。
クッキー用可塑性油脂組成物については、前記「1.クッキー用可塑性油脂組成物」において述べたとおりである。また、クッキー生地およびクッキー用可塑性油脂組成物をクッキー生地中に配合する方法については、前記「2.クッキー生地およびその製造方法」で述べたとおりである。
ここで「クッキー生地の機械耐性」とは、機械の使用に耐えうるクッキー生地のコシを意味し、クッキー生地の可塑性、すなわち、外力を受けるとそれに反応して変形し、その形状が保持される性質を意味する。クッキー生地の機械耐性は、例えば、クッキー生地を所定の厚さ(3.5mm)の板状に圧延し、生地の端を1秒間で一定の高さ(10cm)まで持ち上げたときに生地が切れるまでの時間で評価することができる。例えば、実施例に記載の方法でクッキー生地の機械耐性を評価することができる。
本発明によれば、本発明のクッキー用可塑性油脂組成物をクッキー生地中に配合することで、クッキー生地の機械耐性を向上させることができる。
本発明において、機械耐性を向上させることができるクッキー生地は特に制限されなく、圧延生地クッキー、絞りだしクッキーおよびアイスボックスクッキー用のクッキー生地のいずれであってもよい。これらの中で、型抜きクッキーなどのクッキー生地を板状に延ばしてカットする圧延生地クッキーや、クッキー生地を板状に絞りだしてカットする絞りだしクッキー用のクッキー生地は、十分なコシが求められる。このため、本発明の上記方法は、これらのクッキー生地の機械耐性を向上させるために特に有用である。
また、製造ラインにおいて機械を用いる場合、特に型抜きクッキーでは、型抜き後の残りのクッキー生地をコンベアに乗せてホッパーに戻して、クッキー生地として再利用するが、コンベアの動きによってちぎれたり、割れたりすることがないよう、十分なコシが求められる。本発明の態様によれば、このような場合も十分なコシをクッキー生地に付与することができる。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0032】
1.可塑性油脂組成物の調製
以下のようにして可塑性油脂組成物を調製した。なお、実施例1~7はマーガリンの例であり、実施例8はショートニングの例である。また、比較例1~3はすべてマーガリンの例である。
【0033】
(1)マーガリンの調製(実施例1~7、比較例1~3)
表1に記載の配合で下記の手順により可塑性油脂組成物を調製した。なお、表1中の「油脂」は、表2および3の配合で得られたものを意味する。
まず、油相の各成分をミキシングタンクに入れて、ミキシングタンク内の温度を65℃に加熱しながら撹拌し混合した。
次に、水相の各成分をミキシングタンクに加え、ミキシングタンク内の温度を65℃に保ったまま撹拌を続けることで乳化液を得た。
得られた乳化液をパーフェクターに通して充填時温度が15℃になるように急冷混捏し、可塑性油脂組成物を得た。
【0034】
(2)ショートニングの調製(実施例8)
表1に記載の配合で下記の手順により可塑性油脂組成物を調製した。なお、表1中の「油脂」は、表2および3の配合で得られたものを意味する。
各成分をミキシングタンクに入れて、ミキシングタンク内の温度を65℃に加熱しながら撹拌し混合した。
得られた混合液をパーフェクターに通して充填時温度が15℃になるように急冷混捏し、可塑性油脂組成物を得た。
【0035】
【0036】
【0037】
(エステル交換油Aの調製)
パームステアリン75質量%、パーム油10質量%、大豆油15質量%を配合した油脂配合物100質量部に、ナトリウムメトキシドを触媒として0.3質量部添加し、80℃、真空度2.7kPaの条件で60分間攪拌しながらランダムエステル交換反応をおこなった。ランダムエステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色処理をおこない、さらに脱臭処理をおこない、エステル交換油Aを得た。
【0038】
【0039】
<固体脂含量(20℃)(%)>
表2および3で得られた可塑性油脂組成物の油相の20℃における各固体脂含量(%)は以下の方法で測定した。
可塑性油脂組成物を70℃に設定した恒温槽に入れ溶解させた。
上層を、ろ紙(定性濾紙No.2、アドバンテック東洋株式会社製)を使って恒温槽内でろ過し、ろ液を油相として回収し、得られた油相についてAOCS Official Method Cd 16b-93に記載のMETHOD Iに従って、20℃における固体脂含量(%)を測定した。
【0040】
2.クッキー生地およびクッキーの調製
以下の手順でクッキー生地およびクッキーを調製した。
まず、表2および3に記載の食用油脂を配合して得られた表1に記載の各可塑性油脂組成物300gに上白糖200gを加え、ホバートミキサー(HOBART CANADA社製)を用いて、低速で1分ミキシングした後、生地をかき取り、その後、さらに低速で1分ミキシングした。
次に、全卵50gを一度に加えて、乳化するまで、低速でミキシングした。
続いて、薄力粉500gを添加し、寸動を40回行い、その後、低速で10秒ミキシングした。
得られた生地をひとまとめにし、袋に入れて、四角く伸ばし、12℃で一晩静置した。
その後、得られた生地を30回捏ね、17cm×19cmの長方形になるよう成型した。
リバースシーターにて、順に30mm、20mm、10mmの厚さになるよう3回圧延した。
10mm圧延後の生地を18cm×30cmにカットし、リバースシーターにて、順に7mm、5mm、3.5mmの厚さになるよう3回圧延した。
3.5mmの厚さの生地を30cm×40cmにカットし、15cm間隔で、直径6.2mmの円型で型抜きし、型抜きクッキー生地を得た。
型抜きクッキー生地を180℃/180℃のオーブンにて10.5分焼成し、クッキーを得た。
【0041】
3.評価方法
【0042】
(1)クッキー生地のコシ
型抜き後の残りのクッキー生地の端を1秒で下から10cmの高さまで手で持ち上げ、クッキー生地が切れるまでの時間を測定し、下記の評価基準で評価した。
5:15秒以上生地が切れずさらに良好である
4:10秒以上生地が切れず良好である
3:5秒以上生地が切れず良好である
2:5秒以内に生地が切れる
1:3秒以内に生地が切れる
なお、クッキー生地のコシは3以上が合格である。
【0043】
(2)クッキーの食感
得られたクッキーについて、専門パネラー3名で食し、サクサク感および硬さについて、下記の評価基準で評価し、平均値を評価値とした。結果を表2および3に示す。
【0044】
a)サクサク感
4:非常にサクサクしており良好である
3:サクサクしており良好である
2:ややサクサク感が弱い
1:サクサク感が弱い
なお、クッキーのサクサク感は3以上が合格である。
【0045】
b)硬さ
4:硬さが適切で、非常に良好
3:硬さが適切で、良好
2:やや硬い
1:硬く、食感が悪い
なお、クッキーの硬さは3以上が合格である。
【0046】
表2および3の結果に示されるとおり、本発明のクッキー生地用可塑性組成物を配合することで、クッキー生地のコシを安定化させることがわかった。また、本発明のクッキー生地を焼成してなるクッキーは、サクサク感および硬さが程よく、食感が良好であった。本発明の好ましい態様によれば、食感を損なうことなく、クッキー生地の機械耐性を改良することができ、クッキー生地の成型時の作業性を改善することができるので、クッキー生地を安定的に生産できる。