(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】基板の研磨方法および研磨用組成物セット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241004BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241004BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20241004BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20241004BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 621
B24B37/00 H
B24B1/00 A
B24B1/00 F
C09K3/14 550Z
C09G1/02
(21)【出願番号】P 2023018109
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2019530579の分割
【原出願日】2018-07-18
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017141762
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】田畑 誠
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/135949(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/002525(WO,A1)
【文献】特開2010-021487(JP,A)
【文献】特開2015-185672(JP,A)
【文献】特開2015-159259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
B24B 1/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を研磨する方法であって、
前記基板を両面研磨装置を用いて予備研磨液を供給して予備研磨する予備研磨工程と、該予備研磨工程の後に片面研磨装置を用いて仕上げ研磨液を供給して仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と、を含み、
前記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階を含み、
前記複数の予備研磨段階は、前記基板に対して、前記予備研磨液としての第1研磨液を供給して行われる第1予備研磨段階と、前記予備研磨液としての第2研磨液を供給して行われる第2予備研磨段階と、前記予備研磨液としての第3研磨液を供給して行われる第3予備研磨段階とを、この順で含み、
前記第1研磨液に含まれる水溶性高分子P
1の含有量COM
P1と、前記第2研磨液に含まれる水溶性高分子P
2の含有量COM
P2と、前記第3研磨液に含まれる水溶性高分子P
3の含有量COM
P3との関係が、COM
P1<COM
P2<COM
P3を満たし、
前記第2研磨液は、砥粒A
2を含み、
かつ、以下の条件:
(1)前記第3研磨液に含まれる砥粒A
3の平均一次粒子径D
A3が、前記第1研磨液に含まれる砥粒A
1の平均一次粒子径D
A1および前記第2研磨液に含まれる砥粒A
2の平均一次粒子径D
A2よりも小さい;および
(2)前記第3研磨液は、砥粒A
3を含まない;
のいずれか一方を満たす、研磨方法。
【請求項2】
前記第1研磨液に含まれる砥粒A
1の含有量COM
A1と、前記第2研磨液に含まれる砥粒A2の含有量COM
A2と、前記第3研磨液に含まれる砥粒A3の含有量COM
A3との関係が、COM
A3<COM
A2≦COM
A1を満たす、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の研磨方法に用いられる研磨用組成物セットであって、
前記第1研磨液またはその濃縮液である第1予備研磨用組成物と、
前記第2研磨液またはその濃縮液である第2予備研磨用組成物と、
前記第3研磨液またはその濃縮液である第3予備研磨用組成物とを含み、
前記第1予備研磨用組成物と前記第3予備研磨用組成物とは互いに分けて保管される、研磨用組成物セット。
【請求項4】
前記第2予備研磨用組成物は、前記第1予備研磨用組成物および前記第3予備研磨用組成物とは互いに分けて保管される、請求項3に記載の研磨用組成物セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の研磨方法および基板の研磨に用いられる研磨用組成物セットに関する。本出願は、2017年7月21日に出願された日本国特許出願2017-141762号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造等に用いられる基板の表面は、一般に、ラッピング工程(粗研磨工程)とポリシング工程(精密研磨工程)とを経て高品位の鏡面に仕上げられる。上記ポリシング工程は、典型的には、予備ポリシング工程(予備研磨工程)と仕上げポリシング工程(仕上げ研磨工程)とを含む。シリコンウェーハ等の半導体基板の研磨に関する技術文献として特許文献1~3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許出願公開2003-257906号公報
【文献】日本国特許出願公開2014-103398号公報
【文献】日本国特許出願公開2001-239452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、シリコンウェーハ等の半導体基板その他の基板について、平坦度が高くかつ欠陥が少ないより高品位の表面が要求されるようになってきている。そのため、仕上げ研磨工程の前工程として行われる予備研磨工程においても、研磨後において平坦度が高くかつ表面欠陥が少ないことが求められている。この点について、研磨後の基板の平坦度や表面欠陥を改善する目的で、予備研磨用組成物に水溶性高分子を含有させることが検討されている。しかし、予備研磨用組成物に水溶性高分子を含有させると、研磨後の平坦度や表面欠陥は改善するものの、研磨速度が低下するため、研磨工程に要する時間(所要研磨時間)が長期化するという問題がある。研磨後において平坦度が高くかつ欠陥の少ない表面を効率よく実現し得る研磨方法が求められている。
【0005】
そこで本発明は、平坦度が高く欠陥の少ない表面を効率よく実現し得る基板研磨方法を提供することを目的とする。関連する他の目的は、かかる研磨方法に好ましく用いられ得る研磨用組成物セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書によると、基板の研磨方法が提供される。その方法は、前記基板を予備研磨する予備研磨工程を含む。前記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階を含む。前記複数の予備研磨段階は、前記基板に対して、第1研磨液を供給して行われる第1予備研磨段階と、第2研磨液を供給して行われる第2予備研磨段階と、第3研磨液を供給して行われる第3予備研磨段階とを、この順で含む。前記第1研磨液に含まれる水溶性高分子P1の含有量COMP1と、前記第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2と、前記第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3との関係が、COMP1<COMP2<COMP3を満たし、かつ、以下の条件:(1)前記第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3が、前記第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1および第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2よりも小さい;および(2)前記第3研磨液は、砥粒A3を含まない;の何れか一方を満たす。上記の研磨方法によると、研磨後において平坦度が高くかつ欠陥の少ない表面を効率よく実現することができる。
【0007】
ここに開示される研磨方法の好ましい一態様では、前記第1研磨液は、水溶性高分子P1を含まない。上記第1研磨液を用いることにより、ここに開示される研磨方法を好ましく実施することができる。
【0008】
ここに開示される研磨方法は、種々の基板の予備研磨工程に用いることができる。なかでも、シリコン基板の予備研磨工程に好ましく用いられ得る。特にシリコンウェーハの予備研磨に用いられる研磨方法として好適である。
【0009】
ここに開示される研磨方法の好ましい一態様では、前記第2研磨液は、前記第1研磨液と前記第3研磨液との混合物からなる。前記第2予備研磨段階は、前記基板に対して、前記第1研磨液と前記第3研磨液とを同時に供給することにより行われる。このように、第1研磨液と第3研磨液とを同時に供給して第2予備研磨段階を行うことにより、ここに開示される研磨方法をより簡便かつ効果的に実施することができる。
【0010】
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの研磨方法に用いられる研磨用組成物セットが提供される。その研磨用組成物セットは、前記第1研磨液またはその濃縮液である第1予備研磨用組成物と、前記第3研磨液またはその濃縮液である第3予備研磨用組成物とを含む。前記第1予備研磨用組成物と前記第3予備研磨用組成物とは互いに分けて保管される。
一態様では、前記研磨用組成物セットは、前記第2研磨液またはその濃縮液である第2予備研磨用組成物をさらに含む。前記第2予備研磨用組成物は、前記第1予備研磨用組成物および前記第3予備研磨用組成物とは互いに分けて保管される。
ここに開示される研磨方法は、このような構成の研磨用組成物セットを用いて好適に実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0012】
ここに開示される技術は、種々の基板を研磨対象物とする研磨に好ましく適用される。研磨対象物の材質は、例えば、シリコン、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銅、タンタル、チタン、ステンレス鋼等の金属もしくは半金属、またはこれらの合金;石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ガラス状カーボン等のガラス状物質;アルミナ、シリカ、サファイア、窒化ケイ素、窒化タンタル、炭化チタン等のセラミック材料;炭化ケイ素、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム等の化合物半導体基板材料;ポリイミド樹脂等の樹脂材料;等であり得る。これらのうち複数の材質により構成された基板であってもよい。
【0013】
ここに開示される研磨方法は、シリコンからなる表面を有するシリコン基板の研磨、典型的にはシリコンウェーハの研磨に特に好ましく使用され得る。ここでいうシリコンウェーハの典型例はシリコン単結晶ウェーハであり、例えば、シリコン単結晶インゴットをスライスして得られたシリコン単結晶ウェーハである。ここに開示される技術における研磨対象面は、典型的には、シリコンからなる表面である。
上記シリコン基板には、ここに開示される予備研磨工程の前に、ラッピングやエッチング等の、予備研磨工程より上流の工程においてシリコン基板に適用され得る一般的な処理が施されていてもよい。
【0014】
なお、以下の説明において、いずれの予備研磨段階で用いられる研磨液であるかを問わず、予備研磨工程において使用される研磨液を包括的に指す用語として「予備研磨液」の語を用いることがある。すなわち、予備研磨液とは、後述する第1研磨液、第2研磨液および第3研磨液を包括的に示す用語である。同様に、いずれの研磨工程に用いられる研磨液であるかを問わず、ポリシング工程において使用される研磨液を包括的に指す用語として「研磨液」の語を用いることがある。すなわち、研磨液とは、予備研磨工程に用いられる研磨液および仕上げ研磨工程に用いられる研磨液を包括的に示す用語である。
【0015】
<予備研磨液>
ここに開示される研磨方法における予備研磨工程は、同一の定盤上で、研磨対象の基板を第1研磨液で研磨する第1予備研磨段階と、該研磨対象物を第2研磨液で研磨する第2予備研磨段階と、該研磨対象物を第3研磨液で研磨する第3予備研磨段階と、をこの順に実施する態様で行われる。すなわち、第1予備研磨段階と第2予備研磨段階と第3予備研磨段階とは、途中で研磨対象物を別の研磨装置または別の定盤に移動させることなく行われる。第1予備研磨段階、第2予備研磨段階および第3予備研磨段階は、同一の研磨対象物に対して、段階を追って行われる。ただし、各予備研磨段階において複数の研磨対象物を同時に並行して研磨すること、すなわちバッチ式の研磨を行うことは妨げられない。
【0016】
各予備研磨段階において使用される予備研磨液は、それぞれ、典型的には砥粒、水溶性高分子および水を含み得る。具体的には、第1予備研磨段階において使用される第1研磨液は、砥粒A1、水溶性高分子P1および水を含み得る。第2予備研磨段階において使用される第2研磨液は、砥粒A2、水溶性高分子P2および水を含み得る。第3予備研磨段階において使用される第3研磨液は、砥粒A3、水溶性高分子P3および水を含み得る。
【0017】
ここに開示される技術は、予備研磨工程において、第1研磨液に含まれる水溶性高分子P1の含有量COMP1と、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2と、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3との関係が、COMP1<COMP2<COMP3を満たし、かつ、以下の条件:
(1)第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3が、第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1および第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2よりも小さい;および
(2)第3研磨液は、砥粒A3を含まない;
のいずれか一方を満たす態様で実施される。
かかる態様によると、研磨後において平坦度が高くかつ欠陥の少ない表面を効率よく実現することができる。
【0018】
このような効果が発揮される理由としては、例えば以下のように考えられる。すなわち、水溶性高分子は、研磨時に基板表面保護効果を発揮する。そのため、該水溶性高分子を含む予備研磨液を用いることにより、研磨後の平坦度を高めたり表面欠陥を低減したりし得る一方、研磨速度が低下する傾向がある。また、大径の砥粒は、小径の砥粒に比べて機械的な研磨力が強いため、該大径の砥粒を用いることにより、基板の表面を効率的に削れる一方、研磨後の表面平坦性が低下したり表面欠陥が増加したりする傾向がある。ここに開示される技術では、予備研磨工程における研磨途中で、研磨対象物に供給する予備研磨液を、第1研磨液から第2研磨液、第3研磨液へと順次切り替える。第1研磨液は、水溶性高分子の含有量が少なくかつ大径の砥粒を含むため、基板の表面を大きく削ることで研磨時間の短縮に寄与する。第2研磨液は、第1研磨液よりも水溶性高分子の含有量が多くかつ大径の砥粒を含むため、第1研磨液の研磨により大きく削られた表面を適度に削って形状を整えることで表面平坦性の向上に寄与する。第3研磨液は、第2研磨液よりも水溶性高分子の含有量が多くかつ小径の砥粒を含むもしくは砥粒を含まないため、第2研磨液の研磨により形状が整えられた表面に水溶性高分子が適度に吸着して該表面の保護が図られることで表面欠陥の低減に寄与する。したがって、上記関係を満たす第1研磨液、第2研磨液および第3研磨液をこの順に供給することにより、予備研磨工程において、表面平坦性の向上および表面欠陥の低減がより短い所要研磨時間で達成されるものと考えられる。また、これらの予備研磨液を同一定盤上において切り替えて供給することにより、作業の煩雑化や設備の複雑化を抑えつつ、上記複数種類の予備研磨液を用いる予備研磨工程を効率よく実施することができる。以下、予備研磨液の構成につき、より詳細に説明する。
【0019】
(水溶性高分子)
各予備研磨液は、水溶性高分子を含み得る。ここに開示される予備研磨液に含まれる水溶性高分子の種類は制限されず、研磨液の分野において公知の水溶性高分子のなかから適宜選択することができる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記水溶性高分子は、分子中に、カチオン性基、アニオン性基およびノニオン性基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものであり得る。上記水溶性高分子は、例えば、分子中に水酸基、カルボキシ基、アシルオキシ基、スルホ基、第1級アミド構造、複素環構造、ビニル構造、ポリオキシアルキレン構造等を有するものであり得る。凝集物の低減や洗浄性向上等の観点から、上記水溶性高分子としてノニオン性のポリマーを好ましく採用し得る。
【0021】
水溶性高分子の例としては、セルロース誘導体、デンプン誘導体、オキシアルキレン単位を含むポリマー、窒素原子を含有するポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、セルロース誘導体、窒素原子を含有するポリマー、ポリビニルアルコールが好ましく、セルロース誘導体がより好ましい。これらの水溶性高分子を使用することで、研磨後における表面平坦性および表面欠陥を改善することができる。
【0022】
セルロース誘導体は、主たる繰返し単位としてβ-グルコース単位を含むポリマーである。セルロース誘導体の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。なかでもHECが好ましい。
【0023】
デンプン誘導体は、主たる繰返し単位としてα-グルコース単位を含むポリマーである。デンプン誘導体の具体例としては、アルファ化デンプン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、シクロデキストリン等が挙げられる。なかでもプルランが好ましい。
【0024】
オキシアルキレン単位を含むポリマーとしては、ポリエチレンオキサイド(PEO)や、エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)またはブチレンオキサイド(BO)とのブロック共重合体、EOとPOまたはBOとのランダム共重合体等が例示される。そのなかでも、EOとPOのブロック共重合体またはEOとPOのランダム共重合体が好ましい。EOとPOとのブロック共重合体は、PEOブロックとポリプロピレンオキサイド(PPO)ブロックとを含むジブロック共重合体、トリブロック共重合体等であり得る。上記トリブロック共重合体の例には、PEO-PPO-PEO型トリブロック共重合体およびPPO-PEO-PPO型トリブロック共重合体が含まれる。通常は、PEO-PPO-PEO型トリブロック共重合体がより好ましい。
EOとPOとのブロック共重合体またはランダム共重合体において、該共重合体を構成するEOとPOとのモル比(EO/PO)は、水への溶解性や洗浄性等の観点から、1より大きいことが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上、例えば5以上であることがさらに好ましい。
【0025】
窒素原子を含有するポリマーとしては、主鎖に窒素原子を含有するポリマーおよび側鎖官能基(ペンダント基)に窒素原子を有するポリマーのいずれも使用可能である。主鎖に窒素原子を含有するポリマーの例としては、N-アシルアルキレンイミン型モノマーの単独重合体および共重合体が挙げられる。N-アシルアルキレンイミン型モノマーの具体例としては、N-アセチルエチレンイミン、N-プロピオニルエチレンイミン等が挙げられる。ペンダント基に窒素原子を有するポリマーとしては、例えばN-ビニル型のモノマー単位を含むポリマー等が挙げられる。例えば、N-ビニルピロリドンが50モル%以上の割合で重合されたN-ビニルピロリドンの単独重合体および共重合体の少なくとも1種(以下「PVP」ともいう。)が好ましく用いられる。
【0026】
水溶性高分子としてポリビニルアルコール(PVA)を用いる場合、該ポリビニルアルコールのけん化度は特に限定されない。一態様において、けん化度が90モル%以上、典型的には95モル%以上、例えば98モル%以上のポリビニルアルコールを用いることができる。
【0027】
ここに開示される技術において、水溶性高分子の分子量は特に限定されない。水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、例えば200×104以下とすることができ、分散安定性等の観点から、通常は180×104以下、典型的には150×104以下が適当である。また、研磨後における研磨対象物の表面保護性向上の観点から、通常は、Mwが0.5×104以上が適当であり、0.8×104以上がより好ましく、1×104以上がさらに好ましい。
【0028】
水溶性高分子としてセルロース誘導体を用いる場合、Mwは、概ね50×104以上が適当であり、好ましくは80×104以上、より好ましくは100×104以上である。また、上記Mwは、例えば200×104以下、好ましくは180×104以下である。水溶性高分子として窒素原子を含有するポリマーを用いる場合、Mwは、概ね1×104以上とすることが適当であり、好ましくは2×104以上、より好ましくは3×104以上、さらに好ましくは4×104以上である。また、上記Mwは、好ましくは20×104以下、より好ましくは10×104以下、さらに好ましくは6×104以下である。水溶性高分子としてポリビニルアルコールを用いる場合、Mwは、概ね0.5×104以上とすることが適当であり、好ましくは0.8×104以上、より好ましくは1×104以上である。また、上記Mwは、好ましくは5×104以下、より好ましくは3×104以下、さらに好ましくは2×104以下である。
【0029】
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との関係は特に制限されない。凝集物の発生防止等の観点から、例えば分子量分布(Mw/Mn)が10.0以下であるものが好ましく、7.0以下であるものがさらに好ましい。
【0030】
なお、水溶性高分子のMwおよびMnとしては、水系のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく値(水系、ポリエチレンオキサイド換算)を採用することができる。
【0031】
ここに開示される技術は、前述のように、第1研磨液に含まれる水溶性高分子P1の含有量COMP1と、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2と、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3との関係が、COMP1<COMP2<COMP3を満たす態様で実施される。
【0032】
第1研磨液に含まれる水溶性高分子P1の含有量COMP1は、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2より小さければよく、特に限定されない。COMP1は、典型的には0.1重量%以下であり得る。研磨効率等の観点からは、COMP1は、0.01重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.005重量%以下、さらに好ましくは0.001重量%以下、特に好ましくは0.0001重量%以下である。COMP1は、例えば0.00001重量%未満であってもよく、典型的には0.000005重量%以下であってもよい。ここに開示される技術は、第1研磨液が水溶性高分子P1を実質的に含まない態様でも実施され得る。
【0033】
第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2は、上記COMP1よりも大きく、かつ、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3より小さければよく、特に限定されない。COMP2は、典型的には0.00001重量%以上であり得る。より平坦度の高い表面が得られやすい等の観点からは、COMP2は、好ましくは0.00005重量%以上、より好ましくは0.0001重量%以上、さらに好ましくは0.0003重量%以上である。また、COMP2は、典型的には1重量%以下であり得る。所要研磨時間を短縮する等の観点からは、COMP2は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%以下、特に好ましくは0.003重量%以下である。ここに開示される技術は、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2のCOMP2が0.0003重量%以上0.002重量%以下である態様で好ましく実施され得る。
【0034】
ここに開示される技術の一態様において、水溶性高分子P2のCOMP2から水溶性高分子P1のCOMP1を減算した値は、好ましくは0.00005重量%以上、より好ましくは0.0001重量%以上、さらに好ましくは0.0003重量%以上である。また、水溶性高分子P2のCOMP2から水溶性高分子P1のCOMP1を減算した値は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%以下、特に好ましくは0.003重量%以下である。かかる態様によると、研磨効率の向上と表面平坦性の向上とが好適に両立され得る。
【0035】
第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3は、上記COMP2よりも大きければよく、特に限定されない。COMP3は、典型的には0.0001重量%以上であり得る。より高品位の表面を得る等の観点からは、COMP3は、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.003重量%以上である。また、COMP3は、典型的には3重量%以下であり得る。所要研磨時間を短縮する等の観点からは、COMP3は、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.03重量%以下である。ここに開示される技術は、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3のCOMP3が0.003重量%以上0.02重量%以下である態様で好ましく実施され得る。
【0036】
水溶性高分子P2のCOMP2に対する水溶性高分子P3のCOMP3の倍率、すなわちCOMP2に対するCOMP3の比(COMP3/COMP2)は、1倍よりも大きければよく、特に限定されない。上記倍率は、通常、2倍以上とすることが適当であり、3倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましく、8倍以上がさらに好ましい。また、上記倍率は、通常、40倍以下が適当であり、30倍以下が好ましく、25倍以下がより好ましい。ここに開示される技術は、上記倍率が5倍以上25倍以下である態様で好ましく実施され得る。上記倍率が大きすぎず、かつ小さすぎないことにより、表面平坦性の向上と表面欠陥の低減とが好適に両立され得る。
【0037】
ここに開示される技術の一態様において、水溶性高分子P3のCOMP3から水溶性高分子P2のCOMP2を減算した値は、好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、さらに好ましくは0.003重量%以上である。また、水溶性高分子P3のCOMP3から水溶性高分子P2のCOMP2を減算した値は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.03重量%以下である。かかる態様によると、表面平坦性の向上と表面欠陥の低減とが好適に両立され得る。
【0038】
(砥粒)
ここに開示される技術において使用される予備研磨液に含まれる砥粒の材質や性状は特に制限されず、使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。砥粒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒の例としては、無機粒子、有機粒子、および有機無機複合粒子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、シリカ粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子等のシリコン化合物粒子や、ダイヤモンド粒子等が挙げられる。有機粒子の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子、ポリアクリロニトリル粒子等が挙げられる。なかでも無機粒子が好ましい。
【0039】
ここに開示される技術において特に好ましい砥粒として、シリカ粒子が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、上記砥粒が実質的にシリカ粒子からなる態様で好ましく実施され得る。ここで「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上がシリカ粒子であることをいう。砥粒を構成する粒子の好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%、例えば100重量%がシリカ粒子であってもよい。
【0040】
シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。研磨対象物表面にスクラッチを生じにくく、かつ良好な研磨性能を発揮し得ることから、コロイダルシリカが特に好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば、イオン交換法により水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカや、アルコキシシランの加水分解縮合反応により製造されたアルコキシド法コロイダルシリカを好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
シリカ粒子を構成するシリカの真比重は、1.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.6以上、さらに好ましくは1.7以上である。シリカの真比重の増大により、研磨レートは高くなる傾向にある。かかる観点から、真比重が2.0以上、例えば2.1以上のシリカ粒子が特に好ましい。シリカの真比重の上限は特に限定されないが、典型的には2.3以下、例えば2.2以下である。シリカの真比重としては、置換液としてエタノールを用いた液体置換法による測定値を採用し得る。
【0042】
第3研磨液が砥粒A3を含む場合、第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3は、第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1および第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2よりも小さい(すなわちDA3<DA1かつDA3<DA2)。このような平均一次粒子径の大小関係を満たす砥粒をそれぞれ含有する第1研磨液、第2研磨液および第3研磨液を順次使用することにより、予備研磨工程において、表面平坦性の向上と表面欠陥の低減との両立を効率よく実現することができる。
【0043】
第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1は、砥粒A3のDA3よりも大きければよく、特に限定されない。例えば、DA1は、概ね20nm以上にすることが適当であり、研磨効率等の観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは40nm以上、特に好ましくは50nm以上である。また、平坦性の良い表面を実現する等の観点から、砥粒A1のDA1は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。一態様において、砥粒A1のDA1が65nm以下、例えば60nm以下であってもよい。
【0044】
特に限定するものではないが、第3研磨液が砥粒A3を含む場合、DA1とDA3との関係が1<DA1/DA3<3を満たすことが好ましい。ここに開示される技術は、例えば、DA1とDA3との関係が、1.2≦DA1/DA3≦2.5、より好ましくは1.4≦DA1/DA3≦2、さらに好ましくは1.5≦DA1/DA3≦1.8である態様で好ましく実施され得る。DA1は、DA3より5nm以上大きいことが好ましく、10nm以上大きいことがより好ましく、15nm以上大きいことがさらに好ましい。また、DA1からDA3を減じた値(すなわちDA1-DA3)は、好ましくは30nm以下であり、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは22nm以下である。
【0045】
第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2は、砥粒A3のDA3よりも大きければよく、特に限定されない。例えば、DA2は、概ね15nm以上にすることが適当であり、研磨効率等の観点から、好ましくは25nm以上、より好ましくは35nm以上、特に好ましくは45nm以上である。また、より平坦度の高い表面が得られやすい等の観点から、砥粒A2のDA2は、好ましくは95nm以下、より好ましくは75nm以下、さらに好ましくは65nm以下である。一態様において、砥粒A2のDA2が60nm以下、例えば55nm以下であってもよい。砥粒A2のDA2は、砥粒A1のDA1と同じであってもよく異なっていてもよいが、DA1よりも小さいことが好ましい。
【0046】
第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3は、DA1およびDA2との間で前記関係を満たす限りにおいて特に限定されない。例えば、DA3は、概ね5nm以上にすることが適当であり、研磨効率等の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上である。また、表面欠陥をより良く低減する等の観点から、砥粒A3のDA3は、好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。一態様において、砥粒A3のDA3が45nm以下、例えば40nm以下であってもよい。
【0047】
第3研磨液が砥粒A3を含まない場合、砥粒A1および砥粒A2の平均一次粒子径は特に限定されない。例えば、研磨効率等の観点から、砥粒A1および砥粒A2の平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、特に好ましくは30nm以上である。また、より平坦度の高い表面が得られやすい等の観点から、砥粒A1および砥粒A2の平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。一態様において、砥粒A1および砥粒A2の平均一次粒子径が65nm以下、例えば60nm以下であってもよい。
【0048】
砥粒の平均一次粒子径は、BET法により測定される比表面積(BET値)から、平均一次粒子径(nm)=6000/(真密度(g/cm3)×BET値(m2/g))の式により算出される粒子径をいう。例えばシリカ粒子の場合、平均一次粒子径(nm)=2727/BET値(m2/g)により平均一次粒子径を算出することができる。比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0049】
砥粒の形状(外形)は、球形であってもよく、非球形であってもよい。非球形をなす粒子の具体例としては、ピーナッツ形状すなわち落花生の殻の形状、繭型形状、金平糖形状、ラグビーボール形状等が挙げられる。例えば、粒子の多くがピーナッツ形状をした砥粒を好ましく採用し得る。
【0050】
各予備研磨液における砥粒の含有量は特に制限されない。一態様において、上記含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上である。砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上であってもよく、典型的には1重量%以上であってもよい。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。また、研磨対象物からの除去性等の観点から、上記含有量は、通常、10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、例えば2重量%以下である。
【0051】
ここに開示される技術は、第1研磨液に含まれる砥粒A1の含有量COMA1と、第2研磨液に含まれる砥粒A2の含有量COMA2と、第3研磨液に含まれる砥粒A3の含有量COMA3との関係が、COMA3<COMA2≦COMA1を満たす態様で好ましく実施され得る。COMA3<COMA2<COMA1の関係を満たすことがより好ましい。このような砥粒の含有量の関係を満たす第1研磨液、第2研磨液および第3研磨液を順次使用することにより、予備研磨工程において、表面平坦性の向上と表面欠陥の低減とを効率よく実現することができる。
【0052】
好ましい一態様において、第1研磨液に含まれる砥粒A1の含有量COMA1は、0.1重量%以上であり得る。COMA1は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上である。また、COMA1は、通常、10重量%以下が適当であり、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、例えば2重量%以下である。
【0053】
好ましい一態様において、第2研磨液に含まれる砥粒A2の含有量COMA2は、0.05重量%以上であり得る。COMA2は、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上、さらに好ましくは0.8重量%以上である。また、COMA2は、通常、8重量%以下が適当であり、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、例えば1.5重量%以下である。
【0054】
好ましい一態様において、第3研磨液に含まれる砥粒A3の含有量COMA3は、例えば0.01重量%以上であり得る。COMA3は、例えば0.05重量%以上、典型的には0.1重量%以上、例えば0.2重量%以上であってもよい。また、COMA3は、通常、5重量%以下が適当であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.8重量%以下である。COMA3は、例えば0.5重量%以下であってもよく、典型的には0.03重量%以下であってもよい。一態様では、第3研磨液が砥粒A3を含まない。ここに開示される技術は、第3研磨液が砥粒A3を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0055】
(水)
予備研磨液は、典型的には水を含む。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。使用する水は、予備研磨液に含有される他の成分の働きが阻害されることを極力回避するため、例えば遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下であることが好ましい。例えば、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって水の純度を高めることができる。
【0056】
(塩基性化合物)
予備研磨液は、好ましくは塩基性化合物を含有する。本明細書において塩基性化合物とは、水に溶解して水溶液のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物としては、窒素を含む有機または無機の塩基性化合物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、各種の炭酸塩や炭酸水素塩等を用いることができる。窒素を含む塩基性化合物の例としては、第四級アンモニウム化合物、アンモニア、アミン等が挙げられる。アミンは、好ましくは水溶性アミンである。このような塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類等が挙げられる。第四級ホスホニウム化合物の具体例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム等の水酸化第四級ホスホニウムが挙げられる。
【0058】
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキルアンモニウム塩、ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩を好ましく用いることができる。かかる第四級アンモニウム塩におけるアニオン成分は、例えば、OH-、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、BH4
-等であり得る。なかでも好ましい例として、アニオンがOH-である第四級アンモニウム塩、すなわち水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。水酸化第四級アンモニウムの具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウムおよび水酸化テトラヘキシルアンモニウム等の水酸化テトラアルキルアンモニウム;水酸化2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリンともいう。)等の水酸化ヒドロキシアルキルトリアルキルアンモニウム;等が挙げられる。これらのうち水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、なかでも水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が好ましい。
【0059】
予備研磨液は、上述のような第四級アンモニウム化合物と弱酸塩とを組み合わせて含み得る。弱酸塩としては、シリカ粒子を用いる研磨に使用可能であって、第四級アンモニウム化合物との組合せで所望の緩衝作用を発揮し得るものを適宜選択することができる。弱酸塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。弱酸塩の具体例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、オルト珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト等が挙げられる。アニオン成分が炭酸イオンまたは炭酸水素イオンである弱酸塩が好ましく、アニオン成分が炭酸イオンである弱酸塩が特に好ましい。また、カチオン成分としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属イオンが好適である。特に好ましい弱酸塩として、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムが挙げられる。なかでも炭酸カリウム(K2CO3)が好ましい。
【0060】
予備研磨液における塩基性化合物の濃度は特に制限されない。研磨速度向上等の観点から、通常は、上記濃度を研磨液の0.00001重量%以上とすることが好ましく、0.00005重量%以上、例えば0.0001重量%以上、典型的には0.0002重量%以上とすることがより好ましい。また、ヘイズ低減等の観点から、上記濃度は、1重量%以下とすることが適当であり、0.5重量%以下とすることが好ましく、0.3重量%以下とすることがより好ましい。
【0061】
(キレート剤)
予備研磨液には、任意成分として、キレート剤を含有させることができる。キレート剤は、予備研磨液中に含まれ得る金属不純物と錯イオンを形成してこれを捕捉することにより、金属不純物による研磨対象物の汚染を抑制する働きをする。キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。なかでも好ましいものとして、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミン五酢酸が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。キレート剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
(その他の成分)
予備研磨液は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、水溶性高分子、界面活性剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨液に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0063】
予備研磨液は、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。予備研磨液中に酸化剤が含まれていると、当該予備研磨液が研磨対象物に供給されることで該研磨対象物の表面が酸化されて酸化膜が生じ、これにより研磨レートが低下してしまうことがあり得るためである。研磨対象物は、例えばシリコン基板である。ここでいう酸化剤の具体例としては、過酸化水素(H2O2)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。なお、予備研磨液が酸化剤を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には酸化剤を含有させないことをいう。
【0064】
(pH)
予備研磨液のpHは、典型的には8.0以上であり、好ましくは8.5以上、より好ましくは9.0以上、さらに好ましくは9.5以上、例えば10.0以上である。予備研磨液のpHが高くなると、研磨レートや隆起解消性が向上する傾向にある。一方、砥粒の溶解を防ぎ、該砥粒による機械的な研磨作用の低下を抑制する観点から、予備研磨液のpHは、12.0以下であることが適当であり、11.8以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。後述する仕上げ研磨液においても同様のpHを好ましく採用し得る。
【0065】
なお、ここに開示される技術において、液状の組成物のpHは、pHメーターを用いて3点校正した後で、ガラス電極を測定対象の組成物に入れて、2分以上経過して安定した後の値を測定することにより把握することができる。液状の組成物は、研磨液、その濃縮液、後述するリンス液等であり得る。標準緩衝液は、例えば、フタル酸塩pH緩衝液:pH4.01(25℃)、中性リン酸塩pH緩衝液:pH6.86(25℃)、炭酸塩pH緩衝液:pH10.01(25℃)である。
【0066】
<予備研磨工程>
ここに開示される予備研磨工程は、前述のように、研磨対象物を第1研磨液で研磨する第1予備研磨段階と、該研磨対象物を第2研磨液で研磨する第2予備研磨段階と、該研磨対象物を第3研磨液で研磨する第3予備研磨段階と、をこの順に実施する態様で行われる。研磨対象物は、一般的にワークとしても把握され得る。各研磨液の供給開始および供給終了にあたっては、供給量を徐々にまたは段階的に変化させてもよく、一度に変化させてもよい。
【0067】
好ましい一態様では、予備研磨工程において、第1研磨液と第2研磨液と第3研磨液とを用意し、研磨対象の基板に対して、第1研磨液を供給して第1予備研磨段階を開始する。第1予備研磨段階の開始から所定時間経過後、供給する研磨液を第1研磨液から第2研磨液に変更して第2予備研磨段階を開始する。第2予備研磨段階の開始から所定時間経過後、供給する研磨液を第2研磨液から第3研磨液に変更して第3予備研磨段階を開始する。これにより、同一の定盤上で複数の予備研磨段階を好適に実施することができる。
【0068】
他の好ましい一態様では、第2研磨液は、第1研磨液と第3研磨液との混合物からなる。第2予備研磨段階は、研磨対象の基板に対して、第1研磨液と第3研磨液とを同時に供給することにより行われる。一態様では、第1研磨液の供給時期と、第3研磨液の供給時期とを部分的に重複させ、かかる重複部分において第2予備研磨段階を実施する。典型的には、予備研磨工程において、第1研磨液と第3研磨液とを用意し、研磨対象の基板に対して、第1研磨液を供給して第1予備研磨段階を開始する。第1予備研磨段階の開始から所定時間経過後、第1研磨液の供給を継続しつつ、第3研磨液を供給して第2予備研磨段階を開始する。第2予備研磨段階の開始から所定時間経過後、第3研磨液の供給を継続しつつ、第1研磨液の供給を停止して第3予備研磨段階を開始する。このように、第1研磨液と第3研磨液とを同時に供給して第2予備研磨段階を行うことにより、ここに開示される研磨方法をより簡便かつ効果的に実施することができる。
【0069】
第2予備研磨段階における第1研磨液の供給レートと第3研磨液の供給レートとの比(第1研磨液/第3研磨液)は特に限定されない。研磨効率等の観点から、上記供給レート比は、通常、2以上が適当であり、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。より平坦な表面を得る等の観点から、上記供給レート比は、通常、50以下が適当であり、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。
【0070】
他の一態様では、第2研磨液は、第1研磨液と第4研磨液との混合物からなる。第4研磨液は、予備研磨液に使用し得る砥粒および水溶性高分子として例示したものの1種または2種以上を含み得る。第2予備研磨段階は、研磨対象の基板に対して、第1研磨液と第4研磨液とを同時に供給することにより行われる。典型的には、予備研磨工程において、第1研磨液と第3研磨液と第4研磨液とを用意し、研磨対象の基板に対して、第1研磨液を供給して第1予備研磨段階を開始する。第1予備研磨段階の開始から所定時間経過後、第1研磨液の供給を継続しつつ、第4研磨液を供給して第2予備研磨段階を開始する。第2予備研磨段階の開始から所定時間経過後、供給する研磨液を第1研磨液および第4研磨液から第3研磨液に変更して第3予備研磨段階を開始する。ここに開示される技術は、このように第1研磨液と第4研磨液とを同時に供給して第2予備研磨段階を行う態様でも実施され得る。
【0071】
第1予備研磨段階における研磨時間T1は特に限定されないが、第3予備研磨段階における研磨時間T3との関係が、T3<T1を満たすことが好ましい。例えば、第3予備研磨段階の研磨時間T3に対する第1予備研磨段階の研磨時間T1の倍率、すなわちT3に対するT1の比T1/T3は、通常、2倍以上とすることが適当である。上記倍率T1/T3は、所要研磨時間を短縮する等の観点から、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。また、上記倍率T1/T3は、通常、15倍以下が適当であり、10倍以下が好ましく、8倍以下がより好ましい。このような研磨時間の比率で第1予備研磨段階と第3予備研磨段階とを実施することにより、所要研磨時間の短縮と表面欠陥の低減とが好適に両立され得る。第1予備研磨段階の研磨時間T1としては、例えば10分~30分、典型的には15分~25分に設定され得る。
【0072】
第2予備研磨段階における研磨時間T2は特に限定されないが、第1予備研磨段階における研磨時間T1との関係が、T2<T1を満たすことが好ましい。例えば、第2予備研磨段階の研磨時間T2に対する第1予備研磨段階の研磨時間T1の倍率、すなわちT2に対するT1の比T1/T2は、通常、2倍以上とすることが適当である。上記倍率T1/T2は、所要研磨時間を短縮する等の観点から、3倍以上が好ましく、4倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。また、上記倍率T1/T2は、通常、15倍以下が適当であり、10倍以下が好ましく、8倍以下がより好ましい。このような研磨時間の比率で第1予備研磨段階と第2予備研磨段階とを実施することにより、所要研磨時間の短縮と表面平坦性の向上とが好適に両立され得る。第2予備研磨段階の研磨時間T2としては、例えば0.3分~8分、典型的には0.5分~3分に設定され得る。
【0073】
第3予備研磨段階における研磨時間T3は特に限定されない。第3予備研磨段階の研磨時間T3は、第2予備研磨段階の研磨時間T2よりも短くてもよく長くてもよいが、長いことがより好ましい。例えば、第2予備研磨段階の研磨時間T2に対する第3予備研磨段階の研磨時間T3の倍率、すなわちT2に対するT3の比T3/T2は、通常、0.5倍~3倍とすることが適当であり、好ましくは0.8倍~2.5倍、より好ましくは0.9倍~2倍、さらに好ましくは1倍~2倍、例えば1.1倍~1.5倍である。このような研磨時間の比率で第2予備研磨段階と第3予備研磨段階とを実施することにより、表面平坦性の向上と表面欠陥の低減とが好適に両立され得る。第3予備研磨段階の研磨時間T3としては、例えば0.5分~10分、典型的には1分~5分に設定され得る。
【0074】
ここに開示される予備研磨工程は、研磨対象物を第1研磨液で研磨する第1予備研磨段階の前に、該第1予備研磨段階と同一定盤上で研磨対象物に研磨液Eiを供給して行われる予備研磨段階Eiを含んでもよい。かかる予備研磨工程は、上記研磨対象物の研磨途中で、該研磨対象物に供給する研磨液を研磨液Eiから第1研磨液に切り替える態様で好ましく実施され得る。また、ここに開示される予備研磨工程は、研磨対象物を第3研磨液で研磨する第3予備研磨段階の後に、該第3予備研磨段階と同一定盤上で研磨対象物に研磨液Fiを供給して行われる予備研磨段階Fiを含んでもよい。かかる予備研磨工程は、上記研磨対象物の研磨途中で、該研磨対象物に供給する研磨液を第3研磨液から研磨液Fiに切り替える態様で好ましく実施され得る。予備研磨段階Eiおよび予備研磨段階Fiは、それぞれ、二以上の研磨段階を含んでいてもよい。
【0075】
ここに開示される技術において、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階、すなわち第1予備研磨段階、第2予備研磨段階および第3予備研磨段階を少なくとも含む複数の予備研磨段階の数は、3段階であってもよく、4段階以上であってもよい。予備研磨工程が過度に煩雑になることを避ける観点から、通常は、上記予備研磨段階の数を6段階以下とすることが適当である。4段階以上の予備研磨段階を含む予備研磨工程は、上記第1段階、上記第2段階および上記第3段階が、最初の3つの段階であるか、または最後の3つの段階である態様で好ましく実施され得る。
【0076】
上記予備研磨工程は、同一定盤上で行われる複数の予備研磨段階の他に、別の定盤上で行われる1または2以上の予備研磨段階をさらに含んでもよい。別の定盤は、例えば同一の研磨装置の有する別の定盤、または別の研磨装置の定盤であり得る。
【0077】
<仕上げ研磨液>
予備研磨工程を終えた研磨対象物は、典型的には、さらに仕上げ研磨工程に供される。したがって、この明細書に開示される事項には、ここに開示されるいずれかの研磨方法における予備研磨工程と、該予備研磨工程の後に行われる仕上げ研磨工程と、を含む基板の研磨方法、該研磨方法を適用することを特徴とする研磨物の製造方法、および上記研磨方法または製造方法に好ましく用いられ得る研磨用組成物セットが包含される。
【0078】
仕上げ研磨工程は、通常、予備研磨工程とは別の研磨装置を用いて、研磨対象物に仕上げ研磨液を供給して行われる。仕上げ研磨工程は、同一の定盤上または異なる定盤上で行われる複数の仕上げ研磨段階を含んでいてもよい。
【0079】
仕上げ研磨工程において使用される仕上げ研磨液は、典型的には、砥粒および水を含む。水としては、予備研磨液に用いられ得る水と同様のものを用いることができる。
【0080】
(砥粒)
仕上げ研磨液用の砥粒としては、予備研磨液と同様、シリカ粒子を好ましく使用し得る。シリカ粒子としてはコロイダルシリカが特に好ましく、例えば、イオン交換法により、水ガラス(珪酸Na)を原料として作製されたコロイダルシリカを好ましく採用することができる。コロイダルシリカは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。シリカ粒子の好ましい真比重、砥粒の外形および平均アスペクト比については、予備研磨液の砥粒と同様であるので、重複する記載は省略する。
【0081】
仕上げ研磨液に含まれる砥粒の平均一次粒子径は特に限定されない。研磨効率等の観点から、上記平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。より高い研磨効果、例えば、ヘイズの低減、欠陥の除去等の効果を得る観点から、平均一次粒子径は、15nm以上が好ましく、20nm以上、例えば20nm超がより好ましい。また、より平滑性の高い表面が得られやすいという観点から、砥粒の平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。より高品位の表面を得やすい等の観点から、平均一次粒子径が35nm以下、典型的には35nm未満、好ましくは32nm未満、例えば30nm未満の砥粒を用いてもよい。
【0082】
仕上げ研磨液における砥粒の含有量は特に制限されない。一態様において、上記含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.03重量%以上、さらに好ましくは0.05重量%以上、例えば0.08重量%以上とすることができる。砥粒の含有量の増大によって、より高い研磨効果が実現され得る。また、研磨対象物からの除去性等の観点から、仕上げ研磨液の砥粒含有量は、通常、7重量%以下が適当であり、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0083】
(水溶性高分子)
仕上げ研磨液は、好ましくは水溶性高分子を含有する。水溶性高分子としては、予備研磨液に使用し得る水溶性高分子として例示したものの1種または2種以上を使用し得る。
【0084】
(塩基性化合物)
仕上げ研磨液は、好ましくは塩基性化合物を含有する。塩基性化合物としては、予備研磨液に使用し得る塩基性化合物として例示したものの1種または2種以上を使用し得る。
【0085】
(界面活性剤)
好ましい一態様において、仕上げ研磨液は、界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、研磨液またはその濃縮液の分散安定性向上に寄与し得る。界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性のものを好ましく採用し得る。低起泡性やpH調整の容易性の観点から、ノニオン性の界面活性剤がより好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体;等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。複数種のオキシアルキレンの共重合体としては、例えば、ジブロック型共重合体、トリブロック型共重合体、ランダム型共重合体、交互共重合体が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
界面活性剤のMwは、典型的には1×104未満であり、研磨液の濾過性や研磨対象物の洗浄性等の観点から9500以下が好ましい。また、界面活性剤のMwは、典型的には200以上であり、ヘイズ低減効果等の観点から250以上が好ましく、300以上、例えば500以上がより好ましい。界面活性剤のMwとしては、GPCにより求められる値(水系、ポリエチレングリコール換算)または化学式から算出される値を採用することができる。なお、ここに開示される技術は、上述のような界面活性剤を実質的に含まない仕上げ研磨液を用いる態様で実施することができる。
【0087】
(その他の成分)
仕上げ研磨液は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、防腐剤、防カビ剤等の、研磨液に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。キレート剤としては、予備研磨液に用いられ得るキレート剤と同様のものを使用し得る。ここに開示される技術は、キレート剤を実質的に含まない仕上げ研磨液を用いる態様で実施することができる。
【0088】
なお、仕上げ研磨液は、予備研磨液と同様、酸化剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0089】
<研磨>
予備研磨工程および仕上げ研磨工程における研磨は、例えば以下の操作を含む態様で行うことができる。
すなわち、各研磨工程または各研磨段階で用いられる研磨液を用意する。次いで、その研磨液(例えばワーキングスラリー)を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、研磨対象物を研磨装置にセットし、該研磨装置の定盤(研磨定盤)に固定された研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。
【0090】
各研磨液は、研磨対象物に供給される前には濃縮された形態であってもよい。濃縮された形態とは、研磨液の濃縮液の形態であり、研磨液の原液としても把握され得る。このように濃縮された形態の研磨液は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は特に限定されず、例えば、体積換算で2倍~100倍程度とすることができ、通常は5倍~50倍程度、例えば10倍~40倍程度が適当である。
【0091】
このような濃縮液は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、該研磨液を研磨対象物に供給する態様で使用することができる。上記希釈は、例えば、上記濃縮液に水を加えて混合することにより行うことができる。
【0092】
上記濃縮液における砥粒の含有量は、例えば50重量%以下とすることができる。上記濃縮液の取扱い性、例えば砥粒の分散安定性や濾過性等の観点から、通常、上記濃縮液における砥粒の含有量は、好ましくは45重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。また、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から、砥粒の含有量は、例えば0.5重量%以上とすることができ、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、例えば4重量%以上である。好ましい一態様において、砥粒の含有量は、5重量%以上としてもよく、10重量%以上、例えば15重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上としてもよい。
【0093】
ここに開示される技術において使用される研磨液またはその濃縮液は、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨液の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとを混合し、必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨液が調製されるように構成されていてもよい。
【0094】
研磨液またはその濃縮液の調製方法は特に限定されない。例えば、翼式攪拌機、超音波分散機、ホモミキサー等の周知の混合装置を用いて、研磨液またはその濃縮液に含まれる各成分を混合するとよい。これらの成分を混合する態様は特に限定されず、例えば全成分を一度に混合してもよく、適宜設定した順序で混合してもよい。
【0095】
各研磨工程または各研磨段階において、研磨液は、いったん研磨に使用したら使い捨てにする態様(いわゆる「かけ流し」)で使用されてもよいし、循環して繰り返し使用されてもよい。研磨液を循環使用する方法の一例として、研磨装置から排出される使用済みの研磨液をタンク内に回収し、回収した研磨液を再度研磨装置に供給する方法が挙げられる。
【0096】
各定盤において用いられる研磨パッドは特に限定されない。例えば、発泡ポリウレタンタイプ、不織布タイプ、スウェードタイプ等の研磨パッドを用いることができる。各研磨パッドは、砥粒を含んでもよく、砥粒を含まなくてもよい。
【0097】
研磨装置としては、研磨対象物の両面を同時に研磨する両面研磨装置を用いてもよく、研磨対象物の片面のみを研磨する片面研磨装置を用いてもよい。特に限定するものではないが、例えば、予備研磨工程においては両面研磨装置、例えばバッチ式の両面研磨装置を好ましく採用し得る。また、仕上げ研磨工程において片面研磨装置を好ましく採用し得る。各研磨装置の備える定盤の数は、1でもよく2以上でもよい。各研磨装置は、一度に一枚の研磨対象物を研磨するように構成された枚葉式の研磨装置でもよく、同一の定盤上で複数の研磨対象物を同時に研磨し得るバッチ式の研磨装置でもよい。
【0098】
特に限定するものではないが、同一の定盤上で行われる複数の予備研磨段階において、上記定盤への研磨液の供給レートは、研磨効率等の観点から、通常、0.3L/分以上とすることが適当であり、好ましくは0.5L/分以上、より好ましくは1L/分以上、例えば2L/分以上である。また、上記定盤への研磨液の供給レートは、経済性や環境負荷軽減等の観点から、通常、15L/分以下とすることが適当であり、10L/分以下、例えば7L/分以下とすることがより好ましい。
一態様において、研磨対象面の総面積約0.71m2当たりの研磨液の供給レートとして、上記供給レートを好ましく適用することができる。上記研磨対象面の総面積約0.71m2当たりの研磨液の供給レートは、実際に研磨する研磨対象面の総面積に応じて、該総面積当たりの供給レートが概ね同程度に維持されるように適宜増減することができる。
【0099】
予備研磨工程を終えた研磨対象物は、仕上げ研磨工程を開始する前に、典型的には洗浄される。この洗浄は、適当な洗浄液を用いて行うことができる。使用する洗浄液は特に限定されず、例えば、半導体等の分野において一般的なSC-1洗浄液、SC-2洗浄液等を用いることができる。SC-1洗浄液としては、例えば、水酸化アンモニウム(NH4OH)と過酸化水素(H2O2)と水(H2O)との混合液が挙げられる。SC-2洗浄液としては、例えば、塩化水素(HCl)とH2O2とH2Oとの混合液が挙げられる。洗浄液の温度は、例えば室温、典型的には約15℃~25℃以上、約90℃程度までの範囲とすることができる。洗浄効果を向上させる観点から、50℃~85℃程度の洗浄液を好ましく使用し得る。なお、仕上げ研磨工程を終えた研磨対象物も、同様にして洗浄され得る。上記洗浄は、典型的には、予備研磨工程に用いた研磨装置の外部で、すなわち上記研磨装置から研磨対象物を取り外した後に行われる。
【0100】
ここに開示される研磨方法によると、上述のような予備研磨工程およびその後の仕上げ研磨工程を経て、研磨対象物の研磨が完了する。したがって、ここに開示される技術の他の側面として、ここに開示されるいずれかの研磨方法を適用して上記研磨対象物を研磨することを特徴とする、研磨物の製造方法が提供される。
【0101】
<研磨用組成物セット>
この明細書によると、ここに開示される研磨方法に好ましく使用され得る研磨用組成物セットが提供される。その研磨用組成物セットは、互いに分けて保管される第1予備研磨用組成物と第3予備研磨用組成物とを少なくとも含む。第1予備研磨用組成物は、上記第1研磨液またはその濃縮液であり得る。第3予備研磨用組成物は、上記第3研磨液またはその濃縮液であり得る。
また、一態様では、上記第2研磨液またはその濃縮液である第2予備研磨用組成物をさらに含む。第2予備研磨用組成物は、第1予備研磨用組成物および第3予備研磨用組成物とは互いに分けて保管される。
ここに開示される研磨方法は、かかる研磨用組成物セットを用いて好適に実施することができる。したがって、上記研磨用組成物セットは、ここに開示される研磨方法や、該研磨方法を実施することを含む研磨物製造方法等に好ましく利用され得る。研磨用組成物セットを構成する各研磨用組成物は、それぞれ、一剤型であってもよく、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。多剤型の研磨用組成物は、例えば、各研磨用組成物の構成成分のうち少なくとも砥粒を含むパートAと、残りの成分を含むパートBとに分けて保管され、上記パートAと上記パートBとを混合して必要に応じて適切なタイミングで希釈することにより研磨用組成物または研磨液が調製されるように構成され得る。
【実施例】
【0102】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0103】
1.研磨液の調製
(組成物A)
コロイダルシリカ、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、炭酸カリウムおよびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカを1.2重量%、TMAHを0.086重量%、K2CO3を0.037重量%の含有量で含む組成物Aを調製した。
【0104】
(組成物B)
コロイダルシリカ、アンモニア、ヒドロキシエチルセルロース(HEC:Mw1200000)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカを0.5重量%、アンモニアを0.01重量%、HECを0.012重量%の含有量で含む組成物Bを調製した。
【0105】
(組成物C)
コロイダルシリカ、TMAH、炭酸カリウム、PVP(Mw45000)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカを1.2重量%、TMAHを0.086重量%、炭酸カリウムを0.037重量%、PVPを0.0012重量%の含有量で含む組成物Cを調製した。
【0106】
(組成物D)
PVP(Mw45000)およびイオン交換水を混合することにより、PVPを0.0121重量%の含有量で含む組成物Dを調製した。
【0107】
(組成物E)
ポリビニルアルコール(PVA:Mw13000)およびイオン交換水を混合することにより、PVAを0.00403重量%の含有量で含む組成物Eを調製した。
【0108】
(組成物F)
アンモニア、HECおよびイオン交換水を混合することにより、アンモニアを0.00037重量%、HECを0.012重量%の含有量で含む組成物Fを調製した。
【0109】
(組成物G)
コロイダルシリカ、アンモニア、ヒドロキシエチルセルロース(HEC:Mw1200000)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカを0.5重量%、アンモニアを0.01重量%、HECを0.006重量%の含有量で含む組成物Gを調製した。
【0110】
(組成物H)
コロイダルシリカ、TMAH、炭酸カリウム、PVP(Mw45000)およびイオン交換水を混合することにより、コロイダルシリカを1.2重量%、TMAHを0.086重量%、炭酸カリウムを0.037重量%、PVPを0.012重量%の含有量で含む組成物Hを調製した。
【0111】
なお、組成物A~HのpHは、いずれも10以上11以下となるように調節した。各組成物で使用した砥粒の平均一次粒子径および含有量、塩基性化合物の含有量、水溶性高分子の含有量を表1に示す。砥粒の平均一次粒子径は、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」により求めた。
【0112】
【0113】
2.シリコンウェーハの研磨
<実施例1~8>
各組成物A~Hを単独でまたは組み合せて混合した研磨液を使用して、表2に示す予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した。研磨対象物(試験片)としては、ラッピングおよびエッチングを終えた直径300mmの市販シリコン単結晶ウェーハ(厚み:785μm、伝導型:P型、結晶方位:<100>、抵抗率:1Ω・cm以上100Ω・cm未満)を使用した。
【0114】
予備研磨工程は、具体的には次のようにして行った。すなわち、以下に示す両面研磨装置に5枚の試験片(研磨対象面の総面積;約0.71m2)をセットし、第1研磨液を供給して第1予備研磨段階を開始した。第1予備研磨段階の開始から18分経過後、供給する研磨液を第2研磨液に変更して第2予備研磨段階を開始した。第2予備研磨段階の開始から2.3分経過後、供給する研磨液を第3研磨液に変更して第3予備研磨段階を開始した。第3予備研磨段階の開始から3分経過後、第3研磨液の供給および両面研磨装置の作動を停止した。
【0115】
[予備研磨条件]
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨装置、型番「DSM20B-5P-4D」
研磨荷重:150g/cm2
上定盤相対回転数:20rpm
下定盤相対回転数:-20rpm
研磨パッド:ニッタハース社製、商品名「MH S-15A」
加工キャリア:両面DLCコーティング済みキャリア、平均厚み776ミクロン
研磨環境の保持温度:23℃
【0116】
(洗浄)
予備研磨後の試験片を研磨装置から取り外し、NH4OH(29%):H2O2(31%):脱イオン水(DIW)=1:3:30(体積比)の洗浄液を用いて洗浄した(SC-1洗浄)。より具体的には、周波数950kHzの超音波発振器を取り付けた洗浄槽を2つ用意し、それら第1および第2の洗浄槽の各々に上記洗浄液を収容して60℃に保持し、予備研磨後の試験片を第1の洗浄槽に6分、その後超純水と超音波によるリンス槽を経て、第2の洗浄槽に6分、それぞれ上記超音波発振器を作動させた状態で浸漬した。
【0117】
<比較例1~8>
本例では、各組成物A~Hを単独でまたは組み合わせて混合した研磨液を使用して、表2に示す2段の予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した。すなわち、第1研磨液を供給して第1予備研磨段階を開始した。第1予備研磨段階の開始から所定時間経過後、供給する研磨液を第2研磨液に変更して第2予備研磨段階を開始した。第2予備研磨段階の開始から所定時間経過後、第2研磨液の供給および両面研磨装置の作動を停止した。その他の点は実施例1~8と同様にして、シリコンウェーハの予備研磨工程を実施した。
【0118】
3.評価
<所要研磨時間の算出>
上記条件で研磨を行う前および後の試験片の平均厚みを黒田精工株式会社製の平坦度測定装置「ナノメトロ300TT」を用いて測定し、研磨により減少した厚さ(研磨取り代)を算出した。
研磨取り代が10μmではない場合には、上記の研磨条件から研磨時間を変更し、研磨取り代が10μmとなる研磨時間を見出して、所要研磨時間[分]として記録した。ここでは、第1予備研磨段階の研磨時間と、第2予備研磨段階の研磨時間と、第3予備研磨段階の研磨時間との合計を所要研磨時間として算出した。
【0119】
<欠陥個数>
各例により得られたシリコンウェーハ(予備研磨工程およびその後の洗浄を終えた試験片)について、ケーエルエー・テンコール社製の「SURFSCAN SP2 XP」を使用して上記ウェーハの全面を検査し、0.2ミクロン以上の欠陥の数をカウントした。得られた欠陥数を、以下の4段階で評価した。結果を表2の「欠陥個数」の欄に示した。
4:10個以下
3:10個を超えて20個以下
2:20個を超えて30個以下
1:30個超
【0120】
<平坦度(GBIR)>
黒田精工株式会社製の平坦度測定装置「ナノメトロ300TT」を使用し、SEMI規格に準拠してGBIR(エッジ除外領域2mm)を測定した。得られた測定値を以下の3段階で評価した。
3:200nm以下
2:200nmを超えて300nm以下
1:300nm超
【0121】
上記所要研磨時間、欠陥個数および平坦度の評価結果を表2に示した。表2には、各予備研磨段階で使用した組成物、流量レート、研磨時間および第2予備研磨段階における水溶性高分子(ポリマー)の含有量の値を併せて示している。
【0122】
【0123】
表1および表2に示されるように、実施例1~4,7,8は、第1研磨液に含まれる水溶性高分子の含有量COMP1と、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2と、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3との関係が、COMP1<COMP2<COMP3を満たし、かつ、第3研磨液が砥粒を含まない。また、実施例5,6は、COMP1<COMP2<COMP3を満たし、かつ、第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3が、第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1および第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2よりも小さい。かかる3段の予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した実施例1~8によると、所要研磨時間が短く、平坦度が高くかつ欠陥が少ない高品位な表面が効率よく得られた。これに対して、2段の予備研磨段階からなる予備研磨工程を実施した比較例1~4は、いずれも、平坦度向上、表面欠陥低減、所要研磨時間短縮のバランスを欠くことが確認された。また、比較例5,6は、第1研磨液に含まれる水溶性高分子の含有量COMP1と、第2研磨液に含まれる水溶性高分子P2の含有量COMP2と、第3研磨液に含まれる水溶性高分子P3の含有量COMP3との関係が、COMP1<COMP2<COMP3を満たさない。比較例7は、第3研磨液に含まれる砥粒A3の平均一次粒子径DA3が、第1研磨液に含まれる砥粒A1の平均一次粒子径DA1および第2研磨液に含まれる砥粒A2の平均一次粒子径DA2よりも大きい。比較例8は、水溶性高分子の含有量および砥粒の平均一次粒子径のいずれについても、上記好ましい条件を満たさない。これら比較例5~8は、いずれも、平坦度向上、表面欠陥低減、所要研磨時間短縮のバランスを欠くことが確認された。
【0124】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。