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  • 特許-酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/08 20060101AFI20241007BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241007BHJP
   B01D 53/40 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B01J20/08 C ZAB
B01J20/28 Z
B01D53/40
B01J20/08 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024096345
(22)【出願日】2024-06-14
【審査請求日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2023120841
(32)【優先日】2023-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹綱 啓尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 敏明
(72)【発明者】
【氏名】亀田 知人
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-141354(JP,A)
【文献】国際公開第2023/089913(WO,A1)
【文献】特開2017-000951(JP,A)
【文献】国際公開第2022/054318(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0333826(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0074225(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336050(US,A1)
【文献】米国特許第05785938(US,A)
【文献】米国特許第05116587(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
B01D 53/34 - 53/73
B01D 53/74 - 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガス吸着法により測定される平均細孔径が30nm以上、かつ、硫酸イオン含有量が1質量%以下である、炭酸型のMg-Al系層状複水酸化物からなる、酸性ガス処理剤。
【請求項2】
前記Mg-Al系層状複水酸化物のMg及びAlの元素モル比が2~3である、請求項1に記載の酸性ガス処理剤。
【請求項3】
前記Mg-Al系層状複水酸化物は、累積体積50%粒子径D50が13.0~16.0μm、かつ、累積体積10%粒子径D10に対する累積体積90%粒子径D90の比(D90/D10)が55~75である、請求項1に記載の酸性ガス処理剤。
【請求項4】
請求項1に記載の酸性ガス処理剤を含む、成形体。
【請求項5】
請求項1に記載の酸性ガス処理剤又は請求項に記載の成形体と、酸性物質を含有する酸性ガスとを接触させて、前記酸性物質を除去する、酸性ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガス中の、塩化水素、硫黄酸化物及び窒素酸化物等の酸性物質を除去する酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電や廃棄物焼却等において発生する燃焼排ガス中には、塩化水素、硫黄酸化物(SO)及び窒素酸化物(NO)等の有害な酸性物質が含まれている。このため、前記酸性物質を含む酸性ガスについて、種々の方法で該酸性物質を除去する処理が行われている。
【0003】
このような酸性物質を除去する処理方法に関し、本出願人は、複数種の酸性物質を同時に処理できる効率的な処理技術として、Mg-Al系層状複水酸化物(以下、層状複水酸化物を、LDH(Layered Double Hydroxide)と略称する場合もある。)を利用した酸性排ガスの処理方法及び処理剤等を提案している(特許文献1、非特許文献1及び2参照)。
例えば、非特許文献1には、炭酸型Mg-Al系LDHが塩化水素ガスを効率的に除去でき、また、炭酸型Mg-Al系LDHスラリーが塩化水素ガスのみならず、硫黄酸化物ガスを除去できることが記載されている。非特許文献2には、炭酸型Mg-Al系LDH量を増加させることにより、塩化水素ガスの除去率が増大することが記載されている。
【0004】
さらに、本願出願人は、Mg-Al系LDHの使用済み処理剤を再生し、繰り返し利用するシステムを提案している(特許文献2及び3参照)。
特許文献2では、処理排ガスを再生に使用するオンサイト再生方法、また、特許文献3では、水酸化物型Mg-Al系LDHを用いた酸性排ガス処理及び使用済み処理剤の再生方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6954569号公報
【文献】特許第6898627号公報
【文献】特許第7130197号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of the Society of Inorganic Materials, 2014, Vol.21, p.197-203
【文献】Atmospheric Pollution Research, 2020, Vol.11, Issue 2, p.290-295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸性排ガスの処理に用いられる従来のMg-Al系LDHは、窒素酸化物や硫黄酸化物等の酸性物質の吸着能が必ずしも高いとは言えず、飽和に達するのが早く、高い頻度での再生処理が必要であり、再生処理工程の労力及びコストの負担が大きかった。
このため、酸性排ガス中の前記酸性物質の吸着能を高め、かつ、再生処理の頻度を低減するために、破過時間が長いMg-Al系LDHが求められている。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、該処理剤の再生処理の頻度を低減させるべく、酸性物質に対する吸着能が高く、破過時間が長いMg-Al系LDHによる酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、Mg-Al系LDHの平均細孔径及び硫酸イオン含有量が所定範囲内であることにより、酸性物質に対する吸着能が高く、破過時間が長い、酸性ガス処理剤が得られることを見出したことに基づく。
【0010】
本発明は、以下の手段を提供する。
[1]窒素ガス吸着法により測定される平均細孔径が30nm以上、かつ、硫酸イオン含有量が1質量%以下であるMg-Al系層状複水酸化物からなる、酸性ガス処理剤。
[2]前記Mg-Al系層状複水酸化物が炭酸型又は水酸化物型である、[1]の酸性ガス処理剤。
[3]前記Mg-Al系層状複水酸化物のMg及びAlの元素モル比が2~3である、[1]又は[2]の酸性ガス処理剤。
[4]前記Mg-Al系層状複水酸化物は、累積体積50%粒子径D50が13.0~16.0μm、かつ、累積体積10%粒子径D10に対する累積体積90%粒子径D90の比(D90/D10)が55~75である、[1]~[3]のいずれかの酸性ガス処理剤。
[5][1]~[4]のいずれかの酸性ガス処理剤を含む、成形体。
[6][1]~[4]のいずれかに記載の酸性ガス処理剤又は[5]の成形体と、酸性物質を含有する酸性ガスとを接触させて、前記酸性物質を除去する、酸性ガス処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸性物質に対する吸着能が高く、破過時間が長いMg-Al系LDHによる酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法が提供される。ひいては、本発明によれば、酸性ガス処理剤の再生処理の頻度を低減させることができ、酸性ガス中の酸性物質の除去効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例の酸性ガス吸着試験における破過曲線を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後の数値が下限値及び上限値であることを意味する。好ましい数値範囲は、好ましい下限値及び上限値のそれぞれを任意に組み合わせることができる。
【0014】
本発明の酸性ガス処理剤は、窒素ガス吸着法により測定される平均細孔径が30nm以上、かつ、硫酸イオン含有量が1質量%以下であるMg-Al系LDHからなる。
【0015】
Mg-Al系LDHは、水酸化物基本層([Mg2+ 1-xAl3+ (OH)])と、層間アニオン(An-)及び層間水から構成される中間層([(An-)x/n・yHO])とが交互に積層した構造を有するナノ粒子である。水酸化物基本層がx相当分の正電荷を持ち、これを補償する負電荷を持つアニオンが層間に存在している不定比化合物である。
Mg-Al系LDHは、天然に産出する粘土鉱物も存在するが、公知の方法で合成されたものが一般的である。
【0016】
Mg-Al系LDHは、酸性ガスを接触させると、水酸化物基本層を保持したまま、塩化水素、硫黄酸化物及び窒素酸化物等の酸性物質を層間に取り込むことができる。層間アニオンが、前記酸性物質由来のアニオンにイオン交換されることにより、酸性物質に対する吸着能を発揮する。この酸性物質に対する吸着能は、イオン交換の進行による層間アニオンの減少に伴って低下し、該Mg-Al系LDHによる酸性ガス処理剤は破過する。
このようにして破過した酸性ガス処理剤のMg-Al系LDHは、公知の方法による層間アニオンへのアニオン交換によって、再生して再使用することができる。
【0017】
Mg-Al系LDHは、酸性物質に対する良好な吸着能及び再生による繰り返し使用のしやすさ等の観点から、層間アニオンが炭酸イオン又は水酸化物イオンである、炭酸型又は水酸化物型Mg-Al系LDHであることが好ましい。
【0018】
また、Mg-Al系LDHは、層間アニオンのイオン(アニオン)交換能及び三価金属イオンであるアルミニウムイオンの固溶限界の観点から、Mg及びAlの元素モル比(Mg/Alモル比)が、好ましくは2~3、より好ましくは2~2.8、さらに好ましくは2~2.5である。
【0019】
本発明の酸性ガス処理剤は、Mg-Al系LDHが所定の範囲内の平均細孔径及び硫酸イオン含有量であることにより、酸性物質に対して高い吸着能を有し、かつ、長い破過時間を有する。
【0020】
前記平均細孔径は、具体的には、窒素ガス吸着法により測定される平均細孔径が30nm以上であり、好ましくは31nm以上、より好ましくは32nm以上である。
窒素ガス吸着法による平均細孔径は、Mg-Al系LDHについて、吸着等温線からBET1点法で求められた比表面積A、及び、1点法全細孔容積Vから、4V/Aとして求められる。具体的には、比表面積/細孔分布測定装置での測定により求められる。
【0021】
Mg-Al系LDHの平均細孔径と酸性物質に対する吸着能とには相関があり、平均細孔径が30nm以上であることにより、Mg-Al系LDHの層間の吸着サイトへの酸性物質の進入が容易になり、酸性物質に対する吸着能が高まる。
平均細孔径の上限は、実際上の観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは48nm以下、さらに好ましくは45nm以下である。
【0022】
Mg-Al系LDHの平均細孔径の制御方法は、特に限定されるものではない。平均細孔径の30nm以上への拡大は、例えば、メカノケミカル法等により行うことができ、具体的には、水と接触させた後、乾燥し、メカノケミカル法での粉砕混合を行う方法が挙げられる。Mg-Al系LDHは、機械的応力の印加により、一部の細孔が変形して拡大するため、平均細孔径を拡大させることができる。
粉砕方法としては、例えば、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、カッターミル、自生粉砕機、スタンプミル、石臼型粉砕機等を用いて行う方法が挙げられる。粉砕するMg-Al系LDHが少量である場合は、家庭用コーヒーミルを用いることもできる。
【0023】
本発明の酸性ガス処理剤におけるMg-Al系LDHの硫酸イオン含有量は、1質量%以下であり、好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
硫酸イオン含有量は、蛍光X線分析法による硫黄元素の元素分析値から換算して求められる。なお、Mg-Al系LDH中の硫酸イオンは、例えば、Mg-Al系LDHの製造原料に由来するものとして含まれ得る。
【0024】
Mg-Al系LDHの硫酸イオン含有量と酸性物質に対する吸着能とには相関があり、Mg-Al系LDHの層間に存在する硫酸イオンは、酸性物質の吸着を阻害する。硫酸イオン含有量が1質量%以下であることにより、層間アニオンと酸性物質由来のアニオンとのアニオン交換がされやすく、酸性物質に対する吸着能の向上が顕著であり、酸性ガス処理剤の破過時間も長くなる。
【0025】
Mg-Al系LDHの硫酸イオン含有量の制御方法は、特に限定されるものではない。硫酸イオン含有量を1質量%以下に低減させる方法としては、例えば、Mg-Al系LDHに炭酸ナトリウム水溶液を接触させて、Mg-Al系LDHに含まれる硫酸イオンを炭酸イオンに置き換える方法が挙げられる。炭酸ナトリウム水溶液の接触は、水和膨潤等の作用により、Mg-Al系LDHの細孔径を拡大させることができるため好ましい。
【0026】
Mg-Al系LDHに炭酸ナトリウム水溶液を接触させる場合、接触させて、乾燥した後に、メカノケミカル法等での粉砕混合による平均細孔径の制御を行うことが好ましい。Mg-Al系LDHは、湿潤状態で塊状になりやすいため、十分に乾燥させた状態とした後、粉砕を1回のみ行う方が、平均細孔径及び硫酸イオン含有量の制御のプロセスとして合理的である。
【0027】
また、本発明の酸性ガス処理剤におけるMg-Al系LDHは、酸性ガスの流通効率の観点から、累積体積50%粒子径D50が13.0~16.0μmであり、かつ、累積体積10%粒子径D10に対する累積体積90%粒子径D90の比(D90/D10)が55~75であることが好ましい。Mg-Al系LDHは、D50が13.5~15.5μm、かつ、D90/D10が60~70であることがより好ましい。
なお、D50、D10及びD90は、レーザー回折・散乱式粒度分析計にて測定した体積基準粒度分布から求められる。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0028】
本発明の酸性ガス処理剤の形態は、Mg-Al系LDHの平均細孔径及び硫酸イオン含有量が上述した本発明で規定する範囲内であれば、特に限定されない。
本発明の酸性ガス処理剤は、その使用態様や取り扱い容易性等の観点から適宜加工されてもよく、押出造粒法等の公知の方法により造粒した顆粒であってもよい。また、例えば、バインダー等を用いてペレットや球状粒等に成形した成形体として用いることもできる。すなわち、本発明の成形体は、前記酸性ガス処理剤を含むものである。
【0029】
前記成形体の粒径は、取り扱い容易性の観点から、好ましくは1~5mm、より好ましくは2~4mm、さらに好ましくは2.5~3.5mmである。
ここで、成形体の粒径とは、成形体が球状であればその直径に該当し、ペレット状の場合、当該ペレットを2枚の平行な板で挟んだとき、板同士の間隔が最も大きくなる部位の長さ(2枚の板の最大間隔)を意味する。粒径1~5mmの成形体とは、篩分けにより目開き1mmの篩を通過せず、目開き5mmの篩を通過する粒状物である。
【0030】
本発明の酸性ガス処理方法は、上述した本発明の酸性ガス処理剤又は成形体と、酸性物質を含有する酸性ガスとを接触させて、前記酸性物質を除去するものである。
前記酸性物質は、特に限定されないが、上述したように、例えば、塩化水素、硫黄酸化物及び窒素酸化物等である場合に、これらの酸性物質が、本発明の酸性ガス処理剤又は成形体に好適に吸着除去され得る。
【0031】
なお、本発明の酸性ガス処理剤は、上述したように、Mg-Al系LDHが所定の範囲内の平均細孔径及び硫酸イオン含有量であることにより、本発明の優れた効果を発揮するものであるが、例えば、酸性物質に対する吸着能を有する他の金属元素で構成されるLDH等と併用することもできる。
【実施例
【0032】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。本発明は、下記実施例により限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能である。
【0033】
[試料の分析]
下記実施例及び比較例の試料について、平均細孔径及び硫酸イオン含有量の測定を以下のようにして行った。
(平均細孔径)
比表面積/細孔分布測定装置(「BELSORP(登録商標)-mini」、マイクロトラック・ベル株式会社製)にて、窒素ガス吸着法により平均細孔径を測定した。
(硫酸イオン含有量)
蛍光X線分析装置にて元素分析を行い、硫黄元素含有量を硫酸イオン含有量に換算して求めた。
【0034】
(累積体積50%粒子径D50、累積体積90%粒子径D90及び累積体積10%粒子径D10)
レーザー回折・散乱式粒度分布計(「MT-3300 EXII」、マイクロトラック・ベル株式会社製)にて、0.025質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を循環させた試料循環器に試料粉体を添加して(透過率80~95%)、体積基準の粒度分布を測定し、D50及びD90/D10を求めた。
【0035】
[試料の準備]
(実施例1)
炭酸ナトリウム8.6gをイオン交換水1Lに溶解して70℃に加温し、炭酸ナトリウム水溶液を調製した。この炭酸ナトリウム水溶液に、Mg-Al系LDH(1)(堺化学工業株式会社製;Mg/Alモル比2)100gを添加して、70℃で1時間撹拌して混合した。得られた混合液をろ過し、ろ紙上の固形分をイオン交換水で洗浄し、洗液の導電率が100μS/cm以下になるまで水洗した。水洗した固形分を105℃で乾燥した後、家庭用コーヒーミルにて30秒間粉砕して、試料としてMg-Al系LDH(2)を得た(平均細孔径:32.0nm、硫酸イオン含有量:0.55質量%、D50:14.5μm、D90/D10:65.8)。
【0036】
(比較例1)
実施例1で用いたMg-Al系LDH(1)を未処理のまま試料とした(平均細孔径:28.5nm、硫酸イオン含有量:2.76質量%、D50:30.2μm、D90/D10:81.0)。
【0037】
(比較例2)
実施例1で用いたMg-Al系LDH(1)を家庭用コーヒーミルで30秒間粉砕して、試料としてMg-Al系LDH(3)を得た(平均細孔径:29.5nm、硫酸イオン含有量:2.75質量%、D50:12.0μm、D90/D10:48.7)。
【0038】
[酸性ガス吸着試験]
ガラスウールを詰めた反応管(内径17mm)内に試料0.15gを装入し、ガラスウールを載せて、通気性を有するように試料が装入された反応管を準備した。この反応管を、設定温度150℃の管型電気炉で加熱した。塩化水素ガスを、濃度300質量ppm(バランスガス:窒素)になるようにマスフローコントローラーで供給量を制御しながら、反応管に下向流(線速度1.0m/min)で流通させた。
反応管出口の塩化水素ガスの濃度を、ガス分析用赤外分光分析装置にて測定した。
【0039】
図1に、横軸を塩化水素ガスの流通時間、縦軸を反応管の入口及び出口における塩化水素ガスの濃度比(出口濃度Cout/入口濃度Cin)としたときの試料の破過曲線を示す。
図1から分かるように、比較例1及び2の試料は、破過時間が60分未満であるのに対して、実施例1の試料は、破過時間が110分以上と長かった。また、実施例1の試料は、反応管の出口における塩化水素ガスの濃度比が、比較例1及び2の試料に比べて小さいことから、塩化水素ガスの吸着能が高いことが確認された。
【要約】
【課題】該処理剤の再生処理の頻度を低減させるべく、酸性物質に対する吸着能が高く、破過時間が長い、Mg-Al系層状複水酸化物による酸性ガス処理剤及び酸性ガス処理方法を提供する。
【解決手段】窒素ガス吸着法により測定される平均細孔径が30nm以上、かつ、硫酸イオン含有量が1質量%以下であるMg-Al系層状複水酸化物からなる、酸性ガス処理剤。
【選択図】なし
図1