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特許7566401ポリラクテートステレオコンプレックスおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ポリラクテートステレオコンプレックスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20241007BHJP
   C08G 63/06 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C08L67/04
C08G63/06
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022564047
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2021012104
(87)【国際公開番号】W WO2022050815
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113936
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118336
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ユン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】バンソク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・キム
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138239(JP,A)
【文献】特表2020-518696(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030766(WO,A1)
【文献】特開2016-210894(JP,A)
【文献】特開2006-299133(JP,A)
【文献】特開2015-004050(JP,A)
【文献】特開2003-096285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 63/00-64/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を70重量部~90重量部で含み、ポリ(D-ラクテート)を10重量部~30重量部含む、ポリラクテートステレオコンプレックスであって、
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体が、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含み、
前記ポリ(D-ラクテート)が、重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満である、
ポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項2】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を0重量部~90重量部で含み、
前記ポリ(D-ラクテート)を10重量部~0重量部含む、請求項1に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項3】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol~400,000g/molである、請求項1または2に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項4】
前記ポリ(D-ラクテート)は、重量平均分子量が15,000g/mol~50,000g/molである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項5】
溶融温度が200℃以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項6】
溶融エンタルピーが11J/g以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項7】
前記ポリラクテートステレオコンプレックスは、ASTM D638 Type Vのドッグボーン試験片を作製した後、引張強度測定器でIPC-TM-650の測定法により測定した伸び率が10%以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリラクテートステレオコンプレックス。
【請求項8】
リ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体70重量部~90重量部およびポリ(D-ラクテート)10重量部~30重量部を混合する段階を含む、ポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法であって、
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体が、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含み、
ポリ(D-ラクテート)の重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満である、
ポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法。
【請求項9】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下でラクチド単量体を開環重合して製造されるものである、請求項8に記載のポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法。
【請求項10】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、重量平均分子量が1,500g/mol~50,000g/molである、請求項9に記載のポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法。
【請求項11】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の含有量は、前記ラクチド単量体100重量部に対して10重量部以上である、請求項9または10に記載のポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2020年9月7日付韓国特許出願第10-2020-0113936号および2021年9月6日付韓国特許出願第10-2021-0118336号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を含むポリラクテートステレオコンプレックスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリラクテート(ポリラクチドあるいはポリ乳酸)樹脂は、とうもろこしなどの植物から得られる植物由来の樹脂であり、生分解性特性を有すると同時に、引張強度および弾性率にも優れる環境にやさしい素材として注目されている。具体的には、既存に使用されているポリスチレン(Polystyrene)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(Polyethylene)などの石油系樹脂とは異なり、石油資源枯渇防止、炭酸ガス排出抑制などの効果があるため、石油系プラスチック製品の短所である環境汚染を低減させることができる。したがって、廃プラスチックなどによる環境汚染問題が社会問題として台頭することに伴い、食品包装材および容器、電子製品ケースなど一般プラスチック(石油系樹脂)が使用されていた製品分野まで適用範囲を拡大するために努力している。
【0004】
しかし、ポリラクテート樹脂は、既存の石油系樹脂と比較して、耐衝撃性および耐熱性が落ちるため適用範囲に制限がある。また、伸び率特性が悪くて簡単に壊れる特性(Brittleness)を示して汎用樹脂として限界がある状況である。
【0005】
そこで、ポリラクテート樹脂の伸び率特性を補完するために、添加剤をコンパウンディングする、又は、機能性単量体と共重合体を形成する方法、耐熱性を補完するために核剤や無機添加剤を添加する方法などが提案されているが、このような方法に使用される添加剤はほとんど生分解性がないという問題がある。
【0006】
したがって、生分解性を維持しながらも、向上した耐熱性および伸び率特性を示す素材の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生分解性を維持しながらも、向上した耐熱性および伸び率特性を有するポリラクテートステレオコンプレックスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、
ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含むポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体;および
重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満であるポリ(D-ラクテート);を含むポリラクテートステレオコンプレックスが提供される。
【0009】
本発明の他の一実施形態によれば、
ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含むポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体および重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満であるポリ(D-ラクテート)を混合する段階を含むポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリラクテートステレオコンプレックスは、生分解性を維持しながらも、耐熱性および伸び率特性など機械的物性に優れるため、環境にやさしい汎用樹脂として好適に使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0012】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0013】
本明細書で「ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体」は、L-乳酸単量体および/またはL-ラクチド単量体に由来するポリ(L-ラクテート)繰り返し単位および3-ヒドロキシプロピオネート単量体に由来するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を含むブロック共重合体を称するものであり、「P(LLA-3-HP)ブロック共重合体」、または「P(LLA-b-3-HP)」のとおり表示され得る。
【0014】
また、本明細書で「ポリ(L-ラクテート)」は、L-ラクテート単量体および/またはL-ラクチド単量体の単独重合体であって、「PLLA」で表示され得、「ポリ(D-ラクテート)」は、D-乳酸単量体および/またはD-ラクチド単量体の単独重合体であって、「PDLA」で表示され得る。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリラクテートステレオコンプレックス
ポリラクテート樹脂は、微生物による分解性および生体適合性を有しており、代表的な生分解性樹脂として使用されているが、低い熱安定性および伸び率を示し、ポリオレフィンを代替する汎用樹脂としての活用に制限がある。
【0016】
そこで、本発明者らは、生分解性を維持しながらも、耐熱性および伸び率特性に優れた素材に対して研究を重ねた結果、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位含有量が10~50重量部を満足するポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体がポリ(D-ラクテート)とステレオコンプレックスを形成することができることを発見し、このようなポリラクテートステレオコンプレックスが既存のポリラクテート樹脂に比べて顕著に向上した耐熱性および伸び率特性を有する点を確認して、本発明を完成した。
【0017】
そこで、本発明の一実施形態によれば、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含むポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体;および重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満であるポリ(D-ラクテート);を含むポリラクテートステレオコンプレックスが提供される。
【0018】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位によりポリ(L-ラクテート)単独重合体に比べて優れた柔軟性と引張特性を示しながらも、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位の結晶性を維持しているため、ポリ(D-ラクテート)とステレオコンプレックスを形成することができる。
【0019】
つまり、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体内のポリ(L-ラクテート)部分は水素結合など分子間結合を通じてポリ(D-ラクテート)とジッパー(zipper)のように結合され得、そのため、本発明のポリラクテートステレオコンプレックスは優れた熱安定性および伸び率特性を示すことができる。
【0020】
前記のような特性を満足するために、好ましくは本発明のポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部以上~50重量部以下含み、一例として、10重量部以上、または20重量部以上であり、50重量部以下、または45重量部以下、または40重量部以下含むことができる。
【0021】
もし、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位の含有量がポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対して10重量部未満であればポリラクテートステレオコンプレックスの伸び率など物性改善効果を確保することができず、50重量部以上であればポリ(D-ラクテート)とステレオコンプレックスの形成率が大きく低下することがある。
【0022】
一方、前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上、または50,000g/mol以上、または70,000g/mol以上であり、400,000g/mol以下、または300,000g/mol以下、または200,000g/mol以下、または130,000g/molであり得る。
【0023】
もし、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の重量平均分子量が10,000g/mol未満であればステレオコンプレックスを形成した時、十分な強度を得ることができない。また、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の重量平均分子量が400,000g/molを超えれば加工が難しくなる問題があるため、前記範囲を満足することが好ましい。
【0024】
また、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、溶融温度(Tm)が145℃以上、150℃以上、または160℃以上であり得る。前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の溶融温度は、一例として180℃以下であり得る。
【0025】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位の含有量を満足するポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下でL-ラクチド単量体の開環重合により前記ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位およびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を形成する段階を含んで製造され得る。
【0026】
この時、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、重合活性が低下されずに、ブロック共重合体の優れた物性を示すために、重量平均分子量が1,500g/mol~50,000g/mol、2,000g/mol~40,000g/mol、4,000g/mol~45,000g/mol、または5,000g/mol~30,000g/molであることが好ましい。
【0027】
前記分子量の範囲を満足するポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤から製造されるポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位(ブロック)の結晶性を維持するため、ポリ(D-ラクテート)とステレオコンプレックスを形成することができる。
【0028】
前記本発明のポリラクテートステレオコンプレックスの形成に適したポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造方法は、ポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法の部分でより詳細に説明する。
【0029】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体とステレオコンプレックスを形成するポリ(D-ラクテート)は、D-乳酸単量体および/またはD-ラクチド単量体の単一重合体であって、光学純度が90%以上、95%以上、または98%以上であるものであり得る。
【0030】
前記ポリ(D-ラクテート)は、重量平均分子量が5,000g/mol以上、または7,000g/mol以上、または10,000g/mol以上、または15,000g/mol以上であり、100,000g/mol以下、70,000g/mol以下、または50,000g/mol以下であることが好ましい。もし、ポリ(D-ラクテート)の重量平均分子量が5,000g/mol未満であれば十分な結晶性を有することができないという問題があり、100,000g/molを超える場合に製造されるステレオコンプレックスの引張伸び率特性が顕著に落ちて本発明の効果を達成することができないため、前記範囲を満足することが好ましい。
【0031】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体、およびポリ(D-ラクテート)の重量平均分子量は、後述する実施例のようにゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を通じて測定することができる。
【0032】
前記ポリラクテートステレオコンプレックスは、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体70重量部~90重量部;およびポリ(D-ラクテート)10重量部~30重量部を含むものであり得る。このようにポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の含有量が高い場合、製造されるポリラクテートステレオコンプレックスの機械的物性をより向上させることができる。より好ましくは、前記ポリラクテートステレオコンプレックスは、ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体80重量部~90重量部;およびポリ(D-ラクテート)10重量部~20重量部を含む。
【0033】
本発明のポリラクテートステレオコンプレックスは、前述のようなポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)が複合体をなし、既存のポリラクテート樹脂と比較して顕著に向上した耐熱性および伸び率特性を示す。
【0034】
具体的には、前記ポリラクテートステレオコンプレックスの溶融温度(Tm)は、200℃以上であり、270℃以下、260℃以下、240℃以下、または220℃以下であり得る。
【0035】
溶融温度が200℃以上である場合、ポリラクテートステレオコンプレックスが形成されたと判断することができ、この時、溶融エンタルピーが高いほどステレオコンプレックスの形成率、つまり、各重合体がステレオコンプレックスの形成に参加する比率が高いと判断することができる。そこで、本発明の一実施形態によるポリラクテートステレオコンプレックスは、溶融エンタルピーが11J/g以上、または20J/g以上であり、50J/g以下、または45J/g以下であり得る。
【0036】
前記溶融温度および溶融エンタルピーは、示差走査熱量分析法により測定することができる。
【0037】
一方、前記ポリラクテートステレオコンプレックスは、ASTM D638 Type Vのドッグボーン試験片を作製した後、引張強度測定器でIPC-TM-650の測定法により測定した伸び率が30%以上、45%以上、または55%以上であり、既存のポリ(L-ラクテート)およびポリ(D-ラクテート)のステレオコンプレックスに比べて顕著に優れた伸び率を示す。前記伸び率の上限は、特に制限されないが、一例として150%以下、または110%以下であり得る。
【0038】
前記ポリラクテートステレオコンプレックスの溶融温度、溶融エンタルピー、および伸び率特性の測定法は、以下の実施例でより詳細に説明する。
【0039】
ポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法
一方、本発明の他の一実施形態によれば、前述したポリラクテートステレオコンプレックスの製造方法が提供される。
【0040】
具体的には、前記ポリラクテートステレオコンプレックスは、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位100重量部に対してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を10重量部~50重量部含むポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)を混合させる段階を含む製造方法により製造され得る。
【0041】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)の特徴は前述したとおりである。
【0042】
前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)の製造方法は、特に限定されるのではなく、公知の方法を応用することができる。
【0043】
一例として、前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下でL-ラクチド単量体の開環重合により前記ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位およびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位を形成する段階を含んで製造され得る。
【0044】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、末端にヒドロキシ基および/またはアルコキシ基を含むところ、ラクチド単量体の開環重合反応に添加するようになると、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の末端からラクチド単量体が添加(insertion)され始めて、結果的にポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を製造できるようになる。
【0045】
したがって、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の存在下で、ラクチド単量体の開環重合反応を行うと、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は重合開始剤としての役割も果たすと共に、ブロック共重合体内に繰り返し単位として含まれて、最終製造されるブロック共重合体の柔軟性および衝撃強度などの機械的物性を改善できるようになる。具体的には、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)は、最終製造されるブロック共重合体に含まれることによって、ブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)を低下させて柔軟性を増加させることができる。
【0046】
この時、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の投与含有量は、最終製造されるブロック共重合体内に含まれるポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の繰り返し単位の含有量および最小重合が開始されるのに必要な開始剤のヒドロキシ基および/またはアルコキシ基のモル比などを考慮して適切な範囲で選択され得る。
【0047】
具体的には、最終製造されるブロック共重合体のポリ(L-ラクテート)繰り返し単位の結晶性を維持しながらも、柔軟性および機械的物性を最適化し、開環重合反応の開始剤としての役割のための最小含有量を考慮して、L-ラクチド単量体100重量部に対して前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を10重量部以上、または20重量部以上であり、50重量部以下、または40重量部以下添加することができる。
【0048】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤は、重合活性を低下させることなく、ブロック共重合体が優れた物性を示すために、重量平均分子量が1,500g/mol~50,000g/mol、2,000g/mol~40,000g/mol、4,000g/mol~45,000g/mol、または5,000g/mol~30,000g/molであり得る。前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤の重量平均分子量が1,500g/mol未満であればポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の含有量が少なくなることがあり、50,000g/molを超えれば重合活性が低下することがある。
【0049】
一方、前記開環重合段階の前に、3-ヒドロキシプロピオネートを縮合重合して前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤を製造することができる。製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤およびラクチド単量体を含む反応物を乾燥させ、その後、乾燥されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)開始剤およびラクチド単量体を開環重合して前述したブロック共重合体を製造することができる。
【0050】
前記開環重合に使用される触媒は、ラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクテート樹脂の製造に一般的に使用される全ての触媒を使用することができる。例えば、前記開環重合は、有機金属錯体体触媒および有機触媒からなる群より選択された一つ以上の触媒下で行われ得る。
【0051】
前記有機金属錯体触媒は、一般的にラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクテート樹脂の製造に通常使用されるものであればその構成の限定なしに使用することができるが、例えば、前記有機金属錯体触媒は、下記の化学式1で表される触媒であり得る。
【0052】
[化学式1]
MA 2-p
前記化学式1で、MはAl、Mg、Zn、Ca、Sn、Fe、Y、Sm、Lu、TiまたはZrであり、pは0~2の整数であり、AとAは、それぞれ独立してアルコキシまたはカルボキシル基である。
【0053】
より具体的には、前記MA 2-pは、スズ(II)2-エチルヘキサノエート(Sn(Oct))であり得る。
【0054】
一方、前記有機触媒は、一般的にラクチド単量体の開環重合反応によるポリラクテート樹脂の製造に通常使用されるものであればその構成の限定なしに使用することができる。例えば、前記有機触媒は、下記1,5,7-トリアゾビシクロ-[4,4,0]デ-5-セン(TBD)、下記1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ-7-セン(DBU)、下記7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デ-5-セン(MTBD)、下記4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、下記4-(1-ピロリジニル)ピリジン(PPY)、イミダゾール、トリアゾリウム、チオ尿素、第3級アミンおよびクレアチニンからなる群より選択された一つ以上であり得る。
【化1】
【0055】
前記イミダゾールは、下記化合物から構成される群より選択された一つ以上であり得る。
【化2】
【0056】
前記トリアゾリウムは、下記化合物であり得る。
【化3】
【0057】
前記チオ尿素は、下記化合物から構成される群より選択された一つ以上であり得る。
【化4】
【0058】
前記第3級アミンは、下記化合物から構成される群より選択された一つ以上であり得る。
【化5】
【0059】
前述した触媒の存在下でラクチド開環重合反応を行う場合、最終製造されるブロック共重合体の解重合または分解が抑制され得、より大きい分子量および優秀な機械的物性を有するポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体をより高い転換率で得ることができる。
【0060】
前記一実施形態によるブロック共重合体の製造方法において、前記触媒の含有量は、前記ラクチド単量体100モル%に対して0.01モル%~10モル%、0.05モル%~8モル%、0.07モル%~5モル%、または0.09モル%~3モル%であり得る。前記ラクチド単量体100モル%に対する前記触媒の含有量が0.01モル%未満であれば重合活性が十分でないことがあり、10モル%を超えれば製造されたポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の残留触媒量が大きくなってトランスエステル化反応などの解重合による共重合体の分解または分子量減少などを招くことがある。
【0061】
前記開環重合は、150℃~200℃で5分~10時間行われ得る。
【0062】
また、前記開環重合反応は、実質的に溶媒を使用しないバルク重合で行うことができる。この時、実質的に溶媒を使用しないということは、触媒を溶解するための少量の溶媒、例えば、使用ラクチド単量体1kg当たり最大1ml未満の溶媒を使用する場合まで包括することができる。前記開環重合をバルク重合で行うことによって、重合後に溶媒除去などのための工程の省略が可能になり、このような溶媒除去工程での樹脂の分解または損失などを抑制することができる。また、前記バルク重合により前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体を高い転換率および収率で得ることができる。
【0063】
前記のように製造されたポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体は、ポリ(L-ラクテート)繰り返し単位の結晶性を維持しているため、ポリ(D-ラクテート)と重合してポリラクテートステレオコンプレックスを形成することができる。
【0064】
一方、ポリ(D-ラクテート)は、市販される製品を使用したり、公知の合成法により製造することができる。一実施形態において、ポリ(D-ラクテート)は、触媒の存在下でD-乳酸単量体を縮重合して製造することができる。
【0065】
次に、前記ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)を混合してステレオコンプレックスを製造する。この時、溶融混合法を使用することができ、この場合、製造されるポリラクテートステレオコンプレックスの分子量が多少減少することがあるが、短時間でステレオコンプレックスが形成され得、複合体の形成率も高く現れ得る。
【0066】
前記溶融混合は、140℃~200℃、または150℃~200℃、または170℃~200℃の温度で行うことができる。溶融混合時の温度が140℃未満である場合、ステレオコンプレックスの形成率が落ちることがあり、200℃を超えて過度に高い場合、重合体が熱変形される恐れがあるため、前述した範囲を満足することが好ましい。前記溶融混合は、常圧下で、つまり、700Torr~800Torrの圧力範囲内で行うことができる。前記のような温度および圧力条件下でポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体およびポリ(D-ラクテート)を20分以上、または30分~1時間攪拌してポリラクテートステレオコンプレックスを製造することができる。
【0067】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者に明白であり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例
【0068】
[製造例]
製造例1-1:ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
【0069】
(1)ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーの製造
3-ヒドロキシプロピオネート30g(416mmol)を乾燥した後、p-トルエンスルホン酸(p-Toluene Sulfonic Acid、p-TSA)触媒0.012g存在下で110℃の温度および0.1Torrの減圧条件で12時間縮重合反応して、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーを製造した。
【0070】
製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー(P3HP)の重量平均分子量は10,000g/molであった。
【0071】
(2)ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
100mLの丸形フラスコにL-ラクチド100重量部、前記(1)で製造したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー10重量部、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(L-ラクチド100重量%に対して)を投入して十分に真空をかけて常温で4時間真空乾燥した。
【0072】
その後、130℃プレヒーティング(pre-heating)されたオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後、60分~90分間開環重合反応した。反応が終結された後、反応物をクロロホルムに溶解した後、メタノールで抽出して重量平均分子量124,000g/molのP(LLA-b-3HP)共重合体を回収した。
【0073】
製造例1-2:ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
【0074】
前記製造例1-1の(2)段階で、L-ラクチド100重量部、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー20重量部、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(L-ラクチド100重量%に対して)を使用したことを除き、製造例1-1と同様な方法で重量平均分子量80,000g/molのP(LLA-b-3HP)共重合体を製造した。
【0075】
製造例1-3:ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
【0076】
(1)ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーの製造
3-ヒドロキシプロピオネート30g(416mmol)を乾燥した後、p-トルエンスルホン酸(p-Toluene Sulfonic Acid、p-TSA)触媒0.012g存在下で110℃の温度および0.1Torrの減圧条件で24時間縮重合反応してポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーを製造した。
【0077】
製造されたポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマーの重量平均分子量は25,000g/molであった。
【0078】
(2)ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
100mLの丸形フラスコにL-ラクチド100重量部、前記(1)で製造したポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー20重量部、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(L-ラクチド100重量%に対して)を投入して十分に真空をかけて常温で4時間真空乾燥した。
【0079】
その後、130℃プレヒーティング(pre-heating)されたオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後、90分間開環重合反応した。反応が終結された後、反応物をクロロホルムに溶解した後、メタノールで抽出して重量平均分子量115,100g/molのP(LLA-b-3HP)共重合体を回収した。
【0080】
製造例1-4:ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
【0081】
前記製造例1-3の(2)段階で、L-ラクチド100重量部、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー40重量部、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(L-ラクチド100重量%に対して)を使用したことを除き、製造例1-3と同様の方法で重量平均分子量70,000g/molのP(LLA-b-3HP)共重合体を製造した。
【0082】
製造例1-5:ポリ(L-ラクテート-3-ヒドロキシプロピオネート)ブロック共重合体の製造
【0083】
前記製造例1-3の(2)段階で、L-ラクチド100重量部、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)オリゴマー70重量部、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(L-ラクチド100重量%に対して)を使用したことを除き、製造例3と同様な方法で重量平均分子量30,000g/molのP(LLA-b-3HP)共重合体を製造した。
【0084】
製造例1-6:ポリ(L-ラクテート)の製造
【0085】
500mLの丸形フラスコにL-ラクチド25gおよびスズ(II)2-エチルヘキサノエート11.2μl(L-ラクチド100重量%に対して0.01モル%)を投入して十分に真空をかけて常温(25℃)で4時間真空乾燥した。
【0086】
その後、130℃プレヒーティング(pre-heating)されたオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後、90分間開環重合反応した。反応が終結した後、反応物をクロロホルムに溶解した後、メタノールで抽出して重量平均分子量118,000g/molのPLLA重合体を回収した。
【0087】
製造例2-1:ポリ(D-ラクテート)の製造
100mLの丸形フラスコにD-乳酸20gおよびp-トルエンスルホン酸(p-Toluene Sulfonic Acid)触媒6gを入れ、50mbar、110℃条件で3時間、20mbar、140℃条件で15時間反応させて重量平均分子量14,690g/molのPDLA重合体を得た。
【0088】
製造例2-2:ポリ(D-ラクテート)の製造
100mLの丸形フラスコにD-ラクチド10g(70mmol)、1-オクタノール(1-Octanol)0.036g(0.2mmol)、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(D-ラクチド100重量%に対して)を投入して十分に真空をかけて常温で4時間真空乾燥した。
【0089】
その後、130℃プレヒーティング(pre-heating)されたオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後、90分間開環重合反応した。反応が終結した後、反応物をクロロホルムに溶解した後、メタノールで抽出して重量平均分子量50,000g/molのPDLA重合体を回収した。
【0090】
製造例2-3:ポリ(D-ラクテート)の製造
100mLの丸形フラスコにD-ラクチド10g(70mmol)、1-オクタノール(1-Octanol)0.016g(0.1mmol)、およびスズ(II)2-エチルヘキサノエート0.01モル%(D-ラクチド100重量%に対して)を投入して十分に真空をかけて常温で4時間真空乾燥した。
【0091】
その後、130℃プレヒーティング(pre-heating)されたオイルバスに前記フラスコを入れ、180℃に昇温した後、90分間開環重合反応した。反応が終結した後、反応物をクロロホルムに溶解した後、メタノールで抽出して重量平均分子量120,000g/molのPDLA重合体を回収した。
【0092】
実施例1
攪拌が可能な反応器に前記製造例1-1で製造したP(LLA-b-3HP)共重合体90重量部および前記製造例2-1で製造したPDLA重合体10重量部を入れて常圧(760Torr)下で200℃で30分間攪拌して、ポリラクテートステレオコンプレックスを製造した。
【0093】
実施例2~6および比較例1~3
P(LLA-b-3HP)(またはPLLA)およびPDLAとして下記表2に記載された物質を使用し、PDLAの含有量を下記表2に記載されたとおり調節したことを除き、実施例1と同様な方法でポリラクテートステレオコンプレックスを製造した。
【0094】
比較例4
市販されるPLLA重合体である、Nature Works社のIngeo(商標名) Biopolymer 2003D(PLA 2003D)を比較例2とした。
【0095】
[実験例]
前記製造例で製造した重合体と実施例および比較例のポリラクテートステレオコンプレックスに対して下記方法で物性を評価し、その結果を表1および2に記載した。
【0096】
実験例1:GPC(Gel Permeation Chromatography)分析
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(Waters:Waters707)により重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を求め、測定された重量平均分子量を数平均分子量で割って多分散指数(PDI)を算出した。
【0097】
測定する重合体は、4000ppmの濃度になるようにクロロホルムに溶解してGPCに100μlを注入した。GPCの移動相はクロロホルムを使用し、1.0mL/分の流速で流入し、分析は35℃で行った。カラムは、Waters HR-05、1、2、4Eの4個を直列に連結した。検出器としては、RIおよびPAD検出器(Detector)を利用して35℃で測定した。
【0098】
実験例2:示差走査熱量分析
示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC、製造会社:Mettler Toledo)を利用して下記の方法で溶融エンタルピーおよび溶融温度を測定した。
【0099】
重合体(またはステレオコンプレックス)を230℃まで加熱した後5分間維持し、-40℃まで温度を下げて熱履歴を除去した後、再び230℃まで加熱して2次ヒーティング(Heating)でのピークから溶融温度(Tm)および溶融エンタルピー(ΔH)を測定した。この時、温度の上昇速度と下降速度はそれぞれ10℃/minで調節した。
【0100】
実験例3:伸び率測定
実施例1、3および比較例1のステレオコンプレックスと製造例3のP(LLA-b-3HP)共重合体に対して下記の方法で伸び率を測定した。
【0101】
ホットプレス(Hot-press)(Limotem QM900S)装備を利用して170℃でASTM D638 Type Vに該当するドッグボーン試験片を製造した。
【0102】
製造された試験片に対して引張強度測定器(製造会社:Instron、モデル名:3345 UTM)を利用してIPC-TM-650の測定法により伸び率を測定した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
前記表2を参照すれば、実施例1~6のステレオコンプレックスは、P(LLA-b-3HP)共重合体単独、あるいは市販されるポリラクテート樹脂に比べて顕著に改善された耐熱特性を示し、ポリ(L-ラクテート)およびポリ(D-ラクテート)から製造された比較例1のステレオコンプレックスと比較して顕著に向上した引張伸び率を有することを確認できる。
【0106】
一方、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位の含有量が50重量部を超えるP(LLA-b-3HP)を使用した比較例2は、溶融温度が200℃に達しないことからみると、複合体が形成されていないことを確認できる。また、重量平均分子量が100,000g/molを超えるPDLAを使用した比較例3の場合、ステレオコンプレックスの形成は行われたが、引張伸び率特性が実施例1~6に比べて顕著に落ちることが確認された。
【0107】
以上の結果から、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)繰り返し単位の含有量が10重量部以上~50重量部以下を満足するP(LLA-b-3HP)と重量平均分子量が5,000g/mol以上~100,000g/mol未満であるPDLAを利用して耐熱性および引張伸び率に優れたステレオコンプレックスを製造可能であることを確認できる。