(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】複数のデバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
H01L21/78 P
H01L21/78 M
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020147957
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-140303(JP,A)
【文献】特開2020-064922(JP,A)
【文献】特開2019-175898(JP,A)
【文献】特開2012-164953(JP,A)
【文献】特開2007-036292(JP,A)
【文献】特開2019-096760(JP,A)
【文献】特開2005-285824(JP,A)
【文献】特開2018-206936(JP,A)
【文献】特開2002-118081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0261337(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0039020(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0007578(KR,A)
【文献】特開2000-021820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の分割予定ラインが設定され、該複数の分割予定ラインによって区画された領域の各々の該表面側にデバイスが形成されたウェーハを、各分割予定ラインに沿って分割することで、複数のデバイスチップを製造する複数のデバイスチップの製造方法であって、
各デバイスチップの仕上がり厚さに相当する深さの溝を、各分割予定ラインに沿って該ウェーハの該表面側に形成する溝形成工程と、
該溝が形成された該ウェーハの該表面側に、粘着層が設けられていない基材層を有する熱圧着シートを圧着することで貼り付ける熱圧着工程と、
該ウェーハの該熱圧着シート側を研削装置のチャックテーブルで保持した状態で、該ウェーハの裏面側を研削することで、該溝を該ウェーハの該裏面に露出させて、該ウェーハを該複数のデバイスチップに分割する研削工程と、
該研削工程後の該ウェーハの該裏面に
ダイシングテープ及びダイアタッチフィルムを有する積層体の該ダイアタッチフィルム
側を貼り付ける貼付工程と、
該ウェーハの該裏面に対応する該複数のデバイスチップの各々の該裏面に該ダイアタッチフィルムが貼り付けられ、且つ、該ウェーハの該表面に対応する該複数のデバイスチップの各々の表面に該熱圧着シートが貼り付けられた状態で、該熱圧着シートと、該ダイアタッチフィルムと、を該複数のデバイスチップ間の該溝に沿って切断する切断工程と、
該切断工程の後、該複数のデバイスチップの各々に対応して切断された該熱圧着シートを加熱して溶融させることで、連結して一体化する一体化工程と、
を備えることを特徴とする複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項2】
一体化した該熱圧着シートを、該複数のデバイスチップから剥離する第1の剥離工
程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項3】
該切断工程では、切り刃を有する環状の切削ブレードを含む切削ユニットを用いて、該熱圧着シートと、該ダイアタッチフィルムと、を該複数のデバイスチップ間の該溝に沿って切断することを特徴とする請求項1
又は2に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項4】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート又はポリエステル系シートであることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項5】
該熱圧着シートは、該ポリオレフィン系シートであり、
該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート又はポリスチレンシートであることを特徴とする請求項
4に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項6】
該熱圧着工程における該熱圧着シートの温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合には120℃以上140℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリプロピレンシートの場合には160℃以上180℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリスチレンシートの場合には220℃以上240℃以下であることを特徴とする請求項
5に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項7】
該熱圧着シートは、該ポリエステル系シートであり、
該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート又はポリエチレンナフタレートシートであることを特徴とする請求項
4に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【請求項8】
該熱圧着工程における該熱圧着シートの温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合には250℃以上270℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合には160℃以上180℃以下であることを特徴とする請求項
7に記載の複数のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定され、複数の分割予定ラインによって区画された領域の表面側の各々にデバイスが形成されたウェーハを、各分割予定ラインに沿って分割することで複数のデバイスチップを製造する、複数のデバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電子機器には、デバイスチップが搭載されている。デバイスチップを製造するプロセスでは、例えば、表面に複数の分割予定ラインが格子状に設定され、複数の分割予定ラインによって区画された領域の表面側の各々にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたウェーハを、各分割予定ラインに沿って分割する。
【0003】
ウェーハを分割する手法は、種々存在するが、例えば、先ダイシング(DBG:Dicing Before Grinding)プロセスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。先ダイシングプロセスでは、まず、各分割予定ラインに沿ってウェーハの表面側に、デバイスチップの厚さに相当する深さの切削溝を形成し、次いで、ウェーハの裏面側を研削してウェーハを薄化することで、ウェーハを複数のデバイスチップに分割する。
【0004】
ところで、個片化されたデバイスチップをリードフレーム上にダイボンディングするために、デバイスチップの裏面側には、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で形成され、且つ、10μm程度の厚さを有する、DAF(Die Attach Film)と呼ばれる接着フィルム(以下、DAFと略記する場合がある)が貼り付けられることがある。
【0005】
DBGプロセスに、DAFの貼り付けを適用する場合、次の様な手順が提案されている。まず、各分割予定ラインに沿ってウェーハの表面側に所定深さの切削溝を形成し、次いで、ウェーハの表面側に保護テープを貼り付ける。そして、ウェーハの表面側を吸引保持した状態で、ウェーハの裏面側を研削することで、ウェーハを複数のデバイスチップに分割する。
【0006】
そして、分割後のウェーハの裏面側に、DAF及びダイシングテープから成るDAF付きテープのDAF側を70℃程度に加熱して貼り付けた後、保護テープをウェーハの表面側から剥離する。この保護テープの剥離プロセスは、DAF付きテープのダイシングテープ側を、剥離装置のチャックテーブルで吸引保持した状態で行われる。
【0007】
保護テープの剥離後、ウェーハ及びDAF付きテープの積層体を、レーザー加工装置のチャックテーブルへ搬送して、このチャックテーブルでダイシングテープ側を吸引保持する。そして、デバイスチップ間に露出したDAFに対して、レーザービームの集光点を位置付けた状態で、チャックテーブルを加工送り方向に移動させることで、DAFを溶かして切断する(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかし、保護テープの剥離から、レーザー加工装置のチャックテーブルでダイシングテープ側を吸引保持するまでの間に、DAF付きテープの収縮歪み等に起因して、デバイスチップの位置が僅かに変化し、直線状であったデバイスチップ間の溝(カーフ)が蛇行するという現象(所謂、カーフシフト)が起きる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-21820号公報
【文献】特開2002-118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
デバイスチップ間の溝が蛇行していると、レーザービームの集光点に対するチャックテーブルの加工送り速度を比較的低速にする必要があるので、生産性が低下する。本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、デバイスチップ間の溝の蛇行を低減させた状態で加工を行うことで、裏面側にDAFが貼り付けられたデバイスチップを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、表面に複数の分割予定ラインが設定され、該複数の分割予定ラインによって区画された領域の各々の該表面側にデバイスが形成されたウェーハを、各分割予定ラインに沿って分割することで、複数のデバイスチップを製造する複数のデバイスチップの製造方法であって、各デバイスチップの仕上がり厚さに相当する深さの溝を、各分割予定ラインに沿って該ウェーハの該表面側に形成する溝形成工程と、該溝が形成された該ウェーハの該表面側に、粘着層が設けられていない基材層を有する熱圧着シートを圧着することで貼り付ける熱圧着工程と、該ウェーハの該熱圧着シート側を研削装置のチャックテーブルで保持した状態で、該ウェーハの裏面側を研削することで、該溝を該ウェーハの該裏面に露出させて、該ウェーハを該複数のデバイスチップに分割する研削工程と、該研削工程後の該ウェーハの該裏面にダイシングテープ及びダイアタッチフィルムを有する積層体の該ダイアタッチフィルム側を貼り付ける貼付工程と、該ウェーハの該裏面に対応する該複数のデバイスチップの各々の該裏面に該ダイアタッチフィルムが貼り付けられ、且つ、該ウェーハの該表面に対応する該複数のデバイスチップの各々の表面に該熱圧着シートが貼り付けられた状態で、該熱圧着シートと、該ダイアタッチフィルムと、を該複数のデバイスチップ間の該溝に沿って切断する切断工程と、該切断工程の後、該複数のデバイスチップの各々に対応して切断された該熱圧着シートを加熱して溶融させることで、連結して一体化する一体化工程と、を備える複数のデバイスチップの製造方法が提供される。
【0012】
好ましくは、複数のデバイスチップの製造方法は、一体化した該熱圧着シートを、該複数のデバイスチップから剥離する第1の剥離工程を更に備える。
【0015】
また、好ましくは、該切断工程では、切り刃を有する環状の切削ブレードを含む切削ユニットを用いて、該熱圧着シートと、該ダイアタッチフィルムと、を該複数のデバイスチップ間の該溝に沿って切断する。
【0016】
また、好ましくは、該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート又はポリエステル系シートである。
【0017】
また、好ましくは、該熱圧着シートは、該ポリオレフィン系シートであり、該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート又はポリスチレンシートである。
【0018】
また、好ましくは、該熱圧着工程における該熱圧着シートの温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合には120℃以上140℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリプロピレンシートの場合には160℃以上180℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリスチレンシートの場合には220℃以上240℃以下である。
【0019】
また、好ましくは、該熱圧着シートは、該ポリエステル系シートであり、該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート又はポリエチレンナフタレートシートである。
【0020】
また、好ましくは、該熱圧着工程における該熱圧着シートの温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンテレフタレートシートの場合には250℃以上270℃以下であり、該熱圧着シートが該ポリエチレンナフタレートシートの場合には160℃以上180℃以下である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る複数のデバイスチップの製造方法は、各デバイスチップの裏面にダイアタッチフィルム(DAF)が貼り付けられ、且つ、各デバイスチップの表面に熱圧着シートが貼り付けられた状態で、熱圧着シートと、DAFと、を該複数のデバイスチップ間の溝に沿って切断する切断工程を備える。
【0022】
この様に、各デバイスチップの両面が熱圧着シート及びDAFで挟まれているので、DAF付きテープの収縮歪み等の内部応力が生じていても、デバイスチップの表面側に保護テープや熱圧着シートが設けられていない場合に比べて、デバイスチップ同士の位置関係が変化し難い。それゆえ、デバイスチップ間の溝の蛇行の程度を低減させた状態で加工を行うことができる。
【0023】
加えて、蛇行の程度を低減できるので、比較的高価なレーザー加工装置を用いることなく、比較的安価な切削装置を用いても、熱圧着シート及びDAFを切断できる。更に、デバイスチップ間の溝が蛇行している状態でDAFをレーザー加工装置で切断する場合に比べて、直線的な加工を行うことで熱圧着シート及びDAFを切断できるので、生産性が向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【
図3】
図3(A)は溝形成工程を示す図であり、
図3(B)は溝形成工程後のウェーハの斜視図である。
【
図4】ウェーハの表面側に熱圧着シートを配置する様子を示す図である。
【
図6】
図6(A)は研削工程を示す図であり、
図6(B)は研削工程で分割された複数のデバイスチップ等を示す図である。
【
図7】貼付工程後のフレームユニットを示す図である。
【
図9】
図9(A)は一体化工程を示す図であり、
図9(B)は第1の剥離工程を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る製造方法のフロー図である。以下、基本的にこのフロー図に沿って、複数のデバイスチップ21(
図6(B)等参照)の製造方法について説明する。
【0026】
まず、被加工物となるウェーハ11について説明する。
図2は、ウェーハ11の構成例を示す斜視図である。ウェーハ11は、略円盤状のシリコン製の基板を有し、略円形の表面11a及び裏面11bを備える。
【0027】
表面11aには、格子状に複数の分割予定ライン(ストリート)13が設定されている。複数の分割予定ライン13で区画された領域の各々の表面11a側には、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。
【0028】
なお、ウェーハ11を構成する基板の材料は、シリコンに限定されない。また、基板の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。同様に、デバイス15の種類、数量、構造、大きさ等にも制限はない。
【0029】
本実施形態では、所謂、先ダイシングプロセスを経て、ウェーハ11から複数のデバイスチップ21を製造する。そのために、まず、各分割予定ライン13に沿って、表面11a側に、各デバイスチップ21の仕上がり厚さ21c(
図6(B)参照)に相当する深さ11dを有する切削溝(溝)11c(
図3(A)参照)を形成する(溝形成工程S10)。
【0030】
図3(A)は、溝形成工程S10を示す図である。溝形成工程S10では、切削装置2が使用される。切削装置2は、チャックテーブル4を有する。チャックテーブル4は、金属で形成された円盤状の枠体を有する。
【0031】
枠体の上部には、円盤状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には、多孔質セラミックスで形成されたポーラス板(不図示)が固定されている。ポーラス板は、所定の流路を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0032】
吸引源を動作させると、流路を介して、ポーラス板の上面に負圧が伝達される。ポーラス板の上面と、枠体の上面とは、略面一となっており、略平坦な保持面4aを構成する。チャックテーブル4の下部には、チャックテーブル4を回転させるためのθテーブル(不図示)が連結されている。
【0033】
θテーブルの下部には、ボールネジ式の加工送り機構(不図示)が設けられている。加工送り機構は、チャックテーブル4及びθテーブルを、加工送り方向(X軸方向)に移動させる。チャックテーブル4の上方には、ウェーハ11を切削するための切削ユニット6が配置されている。
【0034】
切削ユニット6は、割り出し送り方向(Y軸方向)に略平行に軸心が配置されたスピンドル8を有する。スピンドル8の一端部には、受けフランジ及び押えナットにより、環状の切削ブレード10が装着されている。
【0035】
本実施形態の切削ブレード10は、ハブレス型(ワッシャー型)であり、50μm程度の刃厚を有する切り刃10aを含む。切り刃10aは、ダイヤモンド等で形成された砥粒を有し、この砥粒は、ボンド材(例えば、ニッケルメッキ処理で形成された電鋳ボンド)で固定されている。
【0036】
スピンドル8の他端部には、モータ等の第1の回転駆動源(不図示)が連結されている。スピンドル8の一部は、スピンドルハウジング(不図示)内に回転可能に収容されており、スピンドルハウジングには、切削ユニット6を切り込み送り方向(Z軸方向、高さ方向、上下方向)に移動させる昇降機構(不図示)が連結されている。
【0037】
昇降機構には、切削ユニット6及び昇降機構を、Y軸方向に移動させるボールネジ式の割り出し送り機構(不図示)が連結されている。切削ユニット6には、レンズ、イメージセンサ等を含む顕微鏡ユニット(不図示)が設けられている。
【0038】
顕微鏡ユニットは、ウェーハ11の表面11a側に設けられた不図示のアライメントマーク、キーパターン等を撮像する。撮像により得られた画像は、例えば、ウェーハ11のアライメントを行うために利用される。
【0039】
溝形成工程S10では、まず、ウェーハ11の裏面11b側を保持面4aで吸引保持する。次に、顕微鏡ユニットにより得られた画像に基づいてθテーブルを動作させ、分割予定ライン13をX軸方向と略平行に調整する(アライメントを行う)。
【0040】
その後、高速で回転させた切削ブレード10の下端を、Z軸方向において仕上がり厚さ21cに対応する高さ(即ち、表面11aから深さ11dの位置)に位置付け、X軸方向において分割予定ライン13の延長線上に配置する。
【0041】
この状態で、チャックテーブル4をX軸方向へ移動させることで、1つの分割予定ライン13の表面11a側に切削溝11cが形成される。切削溝11cを形成した後、切削ユニット6を所定のインデックス量だけ割り出し送りし、同様に切削溝11cを形成する。
【0042】
一の方向に沿う全ての分割予定ライン13に切削溝11cを形成した後、チャックテーブル4を90度回転させて、他の方向に沿う全ての分割予定ライン13に、同様に、切削溝11cを形成する。
図3(B)は、溝形成工程S10後のウェーハ11の斜視図である。
【0043】
溝形成工程S10の後、ウェーハ11の表面11a側に、表面保護部材として機能する熱圧着シート17を貼り付ける(熱圧着工程S20)。
図4は、ウェーハ11の表面11a側に略円形の熱圧着シート17を配置する様子を示す図である。
【0044】
熱圧着シート17は、表面保護部材として通常使用される保護テープ(不図示)とは異なる。通常の保護テープは、樹脂で形成された基材層と、基材層の一面に設けられ、樹脂製の粘着剤で形成された粘着層(糊層)と、を有する。
【0045】
粘着層は、水、溶剤、熱等を使用しなくても、被着体と粘着層とが接した状態で、常温で短時間、圧力を印加するだけで被着体と接着できる。しかし、本実施形態の熱圧着シート17は、粘着層が設けられていない基材層のみを有する。
【0046】
つまり、ウェーハ11の表面11aと密着する熱圧着シート17の一面17aには、粘着層は設けられていない。本実施形態において、熱圧着シート17を構成する基材層は、ウェーハ11と略同じ径と、50μmから250μm程度の厚さと、を有する。また、基材層は、可視光に対して透明であるか、可視光を透過させる程に充分薄い。
【0047】
当該基材層は、ポリオレフィン系シート又はポリエステル系シートで形成されている。ポリオレフィン系シートとしては、ポリエチレン(PE)製のポリエチレンシート、ポリプロピレン(PP)製のポリプロピレンシート、ポリスチレン(PS)製のポリスチレンシート等を使用できる。
【0048】
また、ポリエステル系シートとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレート(PEN)製のポリエチレンナフタレートシート等を使用できる。
【0049】
熱圧着工程S20では、熱圧着装置14が使用される。熱圧着装置14は、例えば裏面11b側を吸引して保持するチャックテーブル(不図示)を有する。チャックテーブルの内部には、抵抗加熱、誘導加熱、誘電加熱等の任意の方式で熱を発する発熱体(不図示)が設けられている。
【0050】
なお、発熱体は、熱圧着シート17を加熱して所定の温度とし、熱圧着シート17を軟化させるために使用される。熱圧着シート17が軟化する所定の温度は、下記に示す様に、材料に応じて異なる。
【0051】
ポリエチレンシート :120℃以上140℃以下
ポリプロピレンシート :160℃以上180℃以下
ポリスチレンシート :220℃以上240℃以下
ポリエチレンテレフタレートシート:250℃以上270℃以下
ポリエチレンナフタレートシート :160℃以上180℃以下
【0052】
チャックテーブルの上方には、ウェーハ11の径よりも長い長さ(高さ)の円柱状のローラー16(
図5参照)が配置されている。
図5は、熱圧着工程S20を示す図である。熱圧着工程S20では、ウェーハ11を加熱することで、熱圧着シート17を上述の所定の温度とする。
【0053】
この状態で、ローラー16を熱圧着シート17に押し当て、他面17bの一端から、他面17bの中心を通り、他面17bの他端まで、ローラー16を所定方向に回転させながら移動させる。
【0054】
この様にして、熱圧着シート17をウェーハ11に圧着することで、軟化した熱圧着シート17の一面17aがウェーハ11の表面11aに密着した第1の積層体19が形成される。
【0055】
熱圧着工程S20の後、
図6(A)に示す様に、研削装置18を用いて、ウェーハ11の裏面11b側を研削することで、ウェーハ11を複数のデバイスチップ21に分割する(研削工程S30)。
【0056】
図6(A)は、研削工程S30を示す図である。研削装置18は、第1の積層体19の熱圧着シート17側を吸引して保持するチャックテーブル20を有する。チャックテーブル20は、セラミックスで形成された円盤状の枠体を有する。
【0057】
枠体の上部には、円盤状の凹部(不図示)が形成されており、この凹部には、多孔質セラミックスで形成されたポーラス板(不図示)が固定されている。ポーラス板は、所定の流路を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0058】
吸引源を動作させると、流路を介して、ポーラス板の上面に負圧が伝達される。ポーラス板の上面は、中央部が僅かに突出した円錐形状になっている。ポーラス板の上面と、枠体の上面とは、略面一となっており、チャックテーブル20の保持面を構成する。
【0059】
この保持面で第1の積層体19が吸引保持されると、第1の積層体19は、保持面の形状に倣う様に変形する。チャックテーブル20は、モータ等の第2の回転駆動源(不図示)により回転可能な態様で、傾き調整機構(不図示)により支持されている。
【0060】
傾き調整機構は、保持面の一部が研削砥石32の下面(研削面)と略平行になる様に、第2の回転駆動源の回転軸をZ軸方向(高さ方向、上下方向)から所定の角度傾ける。チャックテーブル20の上方には、研削ユニット22が配置されている。
【0061】
研削ユニット22には、研削ユニット22をZ軸方向に沿って移動させるためのボールネジ式の研削送りユニット(不図示)が連結されている。研削ユニット22は、円筒状のスピンドルハウジング(不図示)を有する。
【0062】
スピンドルハウジングの内部には、Z軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル24の一部が、回転可能に収容されている。スピンドル24の上端部には、モータ等の第3の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0063】
スピンドル24の下端部は、スピンドルハウジングから露出しており、当該下端部には、円盤状のマウント26の上面の中央部が固定されている。マウント26の下面側には、円環状の研削ホイール28が装着されている。研削ホイール28は、マウント26と略同径の環状基台30を備える。
【0064】
環状基台30の下面側には、複数の研削砥石32が、環状基台30の周方向に沿って離散的に配列されている。研削砥石32は、略直方体形状を有し、ダイヤモンド、cBN(cubic boron nitride)等で形成された砥粒を、金属、樹脂、ビトリファイド等の結合材で固定することにより形成される。
【0065】
研削工程S30では、まず、チャックテーブル20の保持面で、第1の積層体19の熱圧着シート17側(即ち、他面17b)を吸引保持する。このとき、ウェーハ11の裏面11b側が上方に露出する。また、チャックテーブル20の回転軸は、裏面11bの一部と、研削面とが、略平行になる様に、所定の角度傾けられる。
【0066】
この状態で、チャックテーブル20と、スピンドル24とを、例えば、略同じ方向に回転させて、研削ユニット22を下方に研削送りする。研削砥石32が裏面11b側に接触することにより、ウェーハ11は研削されて薄化される。
【0067】
裏面11b側が所定量研削されると、切削溝11cが裏面11b側に露出する。これにより、ウェーハ11は各分割予定ライン13に沿って複数のデバイスチップ21に分割される。
図6(B)は、研削工程S30で分割された複数のデバイスチップ21等を示す図である。
【0068】
研削工程S30の後、第1の積層体19を研削装置18から取り出し、各デバイスチップ21の裏面21b(
図7、
図8参照)(即ち、研削工程S30後のウェーハ11の裏面11b側)に、ダイアタッチフィルム(Die Attach Film:以下、DAF23)を貼り付ける(貼付工程S40)。
【0069】
貼付工程S40では、一般的な貼付装置(不図示)を用いてよい。例えば、まず、貼付装置(不図示)のチャックテーブルで熱圧着シート17側を吸引保持し、研削工程S30後のウェーハ11の裏面11bを上方に露出させる。
【0070】
この状態で、研削工程S30後のウェーハ11の周囲に、金属で形成された環状のフレーム29を配置する。そして、裏面11bと、フレーム29(
図7参照)の一面とに、DAF23及びダイシングテープ25を有するDAF付きテープ27のDAF23側を貼り付ける。
【0071】
DAF23は、例えば、熱硬化型樹脂で形成された10μmから20μm程度の厚さを有する粘着層(糊層)である。本実施形態のDAF23は、
図7に示す様に、ウェーハ11の径よりも僅かに大きい径を有するが、ウェーハ11と略同じ径を有してもよい。
【0072】
DAF23は、ダイシングテープ25の粘着層側に設けられている。ダイシングテープ25は、樹脂製の基材層と、基材層の一面側に設けられ、例えば紫外線硬化型樹脂で形成された粘着層と、で構成されている。
【0073】
一例において、基材層の厚さは、90μmから95μm程度であり、粘着層の厚さは、5μmから10μm程度であり、ダイシングテープ25の厚さは、約100μmである。
図7は、貼付工程S40後のフレームユニット31を示す図である。
【0074】
貼付工程S40により、各デバイスチップ21の裏面21bにDAF23が貼り付けられ、フレーム29の一面にダイシングテープ25の粘着層が貼り付けられ、且つ、各デバイスチップ21の表面21a(ウェーハ11の表面11aに対応する)に熱圧着シート17が貼り付けられたフレームユニット31が形成される。
【0075】
貼付工程S40の後、フレームユニット31の状態の熱圧着シート17及びDAF23を、切削溝11cに沿って切断する(切断工程S50)。
図8は、切断工程S50を示す図である。
【0076】
切断工程S50では、例えば、溝形成工程S10で用いた切削装置2とは別の切削装置42が用いられる。切削装置42は、チャックテーブル44を有する。チャックテーブル44の構成は、上述のチャックテーブル4と同様である。
【0077】
チャックテーブル44の保持面44aは、フレームユニット31のダイシングテープ25側を吸引保持する。これにより、熱圧着シート17の他面17b側が上方に露出する。チャックテーブル44の上方には、切削ユニット46が配置されている。
【0078】
切削ユニット46は、円柱状のスピンドル48を有する。切削ユニット46の構成は、上述の切削ユニット6と同様である。スピンドル48の一端部には、受けフランジ及び押えナットにより、円環状の切削ブレード50が装着されている。
【0079】
本実施形態の切削ブレード50は、ハブレス型(ワッシャー型)であり、溝形成工程S10で用いた切り刃10aに比べて薄い刃厚の切り刃50aを有する。切り刃50aの刃厚は、例えば、30μmである。
【0080】
切り刃50aの刃厚を、切り刃10aの刃厚よりも薄くすることで、切り刃10aに比べて耐摩耗性は低下するが、切断工程S50において、デバイスチップ21に接触することなく、熱圧着シート17及びDAF23を切削しやすくなる。
【0081】
但し、切り刃50aの砥粒及びボンド材は、切り刃10aと同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態の切り刃50aを構成する砥粒は、ダイヤモンドで形成されており、当該砥粒は、ニッケルメッキ処理で形成された電鋳ボンドで固定されている。
【0082】
切削装置42の他の構成要素の説明は省略するが、切削装置2と同様の構成要素を有する。切断工程S50では、まず、フレームユニット31のダイシングテープ25側を保持面44aで吸引保持する。
【0083】
次に、熱圧着シート17を介して表面11a(表面21a)側を撮像した画像に基づいて、切削溝11cをX軸方向と略平行に調整する。その後、高速で回転させた切削ブレード50の下端を、保持面44aと、ダイシングテープ25の上面と、の間に位置付け、切削溝11cの延長線上に配置する。
【0084】
この状態で、チャックテーブル44を加工送り方向へ移動させることで、熱圧着シート17及びDAF23は、切削溝11cに沿って切断される。1つの切削溝11cに沿って熱圧着シート17及びDAF23を切断した後、切削ユニット46を所定のインデックス量だけ割り出し送りする。
【0085】
そして、同様に切削溝11cに沿って熱圧着シート17及びDAF23を切断する。一の方向に沿う全ての切削溝11cに沿って熱圧着シート17及びDAF23を切断した後、チャックテーブル44を90度回転させる。
【0086】
これにより、他の方向に沿う切削溝11cをX軸方向と略平行に調整する。そして、同様に、熱圧着シート17及びDAF23を、切削溝11cに沿って切断することで、各デバイスチップ21に対応する形状に切断する。
【0087】
本実施形態の切断工程S50では、各デバイスチップ21の両面(表面21a及び裏面21b)が、熱圧着シート17及びDAF23で挟まれているので、デバイスチップ21同士の位置関係が変化し難い。
【0088】
それゆえ、DAF付きテープ27の収縮歪み等の内部応力が生じていても、デバイスチップ21間の切削溝11cが蛇行し難くなるので、切削溝11cの蛇行の程度を低減させた状態で加工を行うことができる。
【0089】
加えて、蛇行の程度を低減できるので、比較的高価なレーザー加工装置を用いることなく、比較的安価な切削装置42を用いても、熱圧着シート17及びDAF23を切断できる。
【0090】
更に、デバイスチップ21間の切削溝11cが蛇行している状態でDAF23をレーザー加工装置で切断する場合に比べて、直線的な加工を行うことで熱圧着シート17及びDAF23を切断できるので、生産性が向上し得る。
【0091】
切断工程S50の後、各デバイスチップ21に対応して分割された熱圧着シート17を溶融させて一体化する(一体化工程S60)。一体化工程S60では、加熱装置52(
図9(A)参照)が用いられる。
【0092】
加熱装置52は、フレームユニット31が配置される載置台(不図示)を有する。載置台の上方には、熱風噴射ユニット54が配置されている。熱風噴射ユニット54は、抵抗加熱、誘導加熱、誘電加熱等の任意の方式で熱を発生させる発熱体(不図示)を有する。
【0093】
発熱体で発生した熱は、ファン等の送風機構(不図示)により、熱風噴射ユニット54の開口(不図示)から載置台へ向けて、熱風56として噴射される。
図9(A)は、一体化工程S60を示す図である。
【0094】
一体化工程S60では、熱圧着シート17がポリエチレンシートである場合、ポリエチレンシートの融点(例えば、160℃)以上になる様に、開口近傍での温度が約200℃である熱風56で、1分以上の所定時間、ポリエチレンシートを加熱する。
【0095】
例えば、約130μmの厚さを有するポリエチレンシートの場合、開口近傍での温度が約200℃である熱風56で、1分以上2分以下の時間、ポリエチレンシートを加熱する。しかし、熱圧着シート17の材料に応じて、加熱温度及び加熱時間を適宜変更してもよい。
【0096】
熱圧着シート17がポリプロピレンシートである場合、ポリプロピレンシートの融点以上になる様に、例えば、熱風噴射ユニット54の開口近傍での温度が200℃以上である熱風56で、1分以上の所定時間、ポリプロピレンシートを加熱する。
【0097】
熱圧着シート17がポリスチレンシートである場合、ポリスチレンシートの融点以上になる様に、例えば、熱風噴射ユニット54の開口近傍での温度が260℃以上である熱風56で、1分以上の所定時間、ポリスチレンシートを加熱する。
【0098】
熱圧着シート17がポリエチレンテレフタレートシートである場合、ポリエチレンテレフタレートシートの融点以上になる様に、例えば、熱風噴射ユニット54の開口近傍での温度が290℃以上である熱風56で、1分以上の所定時間、ポリエチレンテレフタレートシートを加熱する。
【0099】
熱圧着シート17がポリエチレンナフタレートシートである場合、ポリエチレンナフタレートシートの融点以上になる様に、例えば、熱風噴射ユニット54の開口近傍での温度が200℃以上である熱風56で、1分以上の所定時間、ポリエチレンナフタレートシートを加熱する。
【0100】
所定の温度の熱風56を所定時間、熱圧着シート17に当てることで、分割された熱圧着シート17の少なくとも他面17b側が溶融して、切断されていた熱圧着シート17は、連結し一体化する(
図9(B)参照)。
【0101】
なお、熱風噴射ユニット54に代えて、発熱体が内蔵された加熱ローラー(不図示)又は平板状の加熱板で、一体化工程S60を行ってもよい。加熱ローラー又は加熱板を用いることで、熱圧着シート17の平面方向及び厚さ方向において加熱される領域が制御しやすくなるので、DAF23及びダイシングテープ25への熱の影響を低減できる。
【0102】
DAF23は、例えば、熱硬化性樹脂で形成されるので、DAF23への熱の影響を低減できれば、一体化工程S60後の処理プロセスの安定化に寄与し得る。また、ダイシングテープ25の熱変形を低減できれば、同様に、一体化工程S60後の処理プロセスの安定化に寄与し得る。
【0103】
一体化工程S60の後、一体化された熱圧着シート17を各デバイスチップ21から剥離する(第1の剥離工程S70)。第1の剥離工程S70では、例えば、剥離ユニット(不図示)が用いられる。
【0104】
剥離ユニットは、フレームユニット31のダイシングテープ25側を吸引保持するチャックテーブル(不図示)を有する。このチャックテーブルの上方には、アーム部(不図示)が配置されており、アーム部の先端部には、把持部(不図示)が配置されている。
【0105】
把持部は、短冊状の剥離用テープ(不図示)を把持している。剥離用テープを熱圧着シート17の他面17bの端部近傍の一部に貼り付けた後、把持部を上昇させて、熱圧着シート17を捲り上げる(
図9(B)の矢印参照)。
【0106】
図9(B)は、第1の剥離工程S70を示す図である。熱圧着シート17を捲り上げた後、アーム部を動作させて、熱圧着シート17を各デバイスチップ21から剥離する。なお、第1の剥離工程S70では、必ずしも短冊状の剥離用テープを用いなくてもよい。
【0107】
例えば、一体化された熱圧着シート17の外周部を摘まんだ状態で熱圧着シート17を捲り上げることで、熱圧着シート17を剥離することもできる。また、第1の剥離工程S70では、オペレーターが手作業で熱圧着シート17を剥離してもよい。
【0108】
第1の剥離工程S70の後、ダイシングテープ25の粘着層に紫外線を照射して、粘着力を低減させる。その後、コレット(不図示)等を用いてデバイスチップ21の表面21a側を吸引し、DAF23付きのデバイスチップ21を搬送する。
【0109】
なお、上述の溝形成工程S10では、切削装置2を用いて切削溝11cを形成するが、ウェーハ11に吸収される波長を有するパルス状のレーザービームを照射するレーザー加工装置(不図示)を用いて、ウェーハ11をアブレーション加工することにより、切削溝11cに対応する溝を形成してもよい。
【0110】
また、分割予定ライン13が露出する様にパターニングされたフォトレジスト層又は水溶性樹脂層(いずれも不図示)で表面11a側を部分的に覆った状態で、プラズマエッチング装置等のエッチング装置(不図示)を用いて、ウェーハ11をエッチングガスでエッチングすることにより、切削溝11cに対応する溝を形成してもよい。
【0111】
次に、第2の実施可能について説明する。
図10は、第2の実施形態に係る複数のデバイスチップ21の製造方法のフロー図である。第2の実施形態では、切断工程S50の後、一体化工程S60及び第1の剥離工程S70を行わず、剥離用テープ33(
図11参照)を用いて切断された各熱圧着シート17を剥離する(第2の剥離工程S80)。
【0112】
図11は、第2の剥離工程S80を示す図である。第2の剥離工程S80では、貼付・剥離ユニット(不図示)を用いる。貼付・剥離ユニットは、例えば、それぞれ一般的な、テープマウンタと、テープ剥離装置と、を含む。
【0113】
第2の剥離工程S80では、まず、切断工程S50で切断された熱圧着シート17の他面17b側の全体に、ウェーハ11と略同径の剥離用テープ33を貼り付ける。剥離用テープ33は、基材層及び粘着層を有するテープである。
【0114】
剥離用テープ33の粘着層を構成する粘着剤の種類は、剥離用テープ33と熱圧着シート17との粘着力が、デバイスチップ21と熱圧着シート17との密着力よりも高ければ、特に限定されない。
【0115】
剥離用テープ33の貼り付け後、貼付・剥離装置を用いて剥離用テープ33を剥がすと、切断された熱圧着シート17が各デバイスチップ21から剥離される。なお、貼付・剥離装置に代えて、オペレーターが手作業で、第2の剥離工程S80を行ってもよい。
【0116】
第2の剥離工程S80では、一体化工程S60及び第1の剥離工程S70を行う場合に比べて、デバイスチップ21、DAF23及びダイシングテープ25への熱的ダメージを著しく低減できる点が有利である。
【0117】
勿論、第2の実施形態でも、切断工程S50において、各デバイスチップ21の両面が、熱圧着シート17及びDAF23で挟まれているので、DAF付きテープ27の収縮歪み等の内部応力が生じていても、デバイスチップ21同士の位置関係が変化し難い。それゆえ、デバイスチップ21間の切削溝11cの蛇行の程度を低減させた状態で加工を行うことができる。
【0118】
加えて、蛇行の程度を低減できるので、比較的高価なレーザー加工装置を用いることなく、比較的安価な切削装置42を用いても、熱圧着シート17及びDAF23を切断できる。更に、デバイスチップ21間の切削溝11cが蛇行している状態でDAF23をレーザー加工装置で切断する場合に比べて、直線的な加工を行うことで熱圧着シート17及びDAF23を切断できるので、生産性が向上し得る。
【0119】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。上述した熱圧着工程S20では、ウェーハ11を加熱し、熱圧着シート17を圧着したが、熱圧着工程S20はこの方法に限定されるものではない。
【0120】
例えば、熱圧着シート17の上に裏面11bが上を向く様にウェーハ11を配置した状態で、発熱体を備えるローラー16で、ウェーハ11を加熱すると共に、ウェーハ11を熱圧着シート17へ圧着することもできる。
【0121】
この様に、ウェーハ11を介して間接的に熱圧着シート17を加熱することで、熱圧着シート17の一面17a側(熱圧着シート17とウェーハ11との界面近傍)を、他面17b側に比べて軟化させやすく、且つ、熱圧着シート17がローラー16等にくっつき難くなるというメリットがある。
【0122】
また、熱圧着シート17の上に裏面11bが上を向く様にウェーハ11を配置した状態で、熱圧着シート17側のチャックテーブルを加熱することで熱圧着シート17を加熱し、ローラー16でウェーハ11を熱圧着シート17へ圧着してもよい。
【0123】
但し、ウェーハ11の上に熱圧着シート17を配置した状態で、発熱体を備えるローラー16で熱圧着シート17を加熱すると共に、熱圧着シート17をウェーハ11に対して圧着してもよい。これにより、熱圧着シート17をウェーハ11に貼り付けることができる場合もある。
【符号の説明】
【0124】
2:切削装置、4:チャックテーブル、4a:保持面
6:切削ユニット、8:スピンドル、10:切削ブレード、10a:切り刃
11:ウェーハ、11a:表面、11b:裏面、11c:切削溝(溝)、11d:深さ
13:分割予定ライン、15:デバイス
14:熱圧着装置、16:ローラー
17:熱圧着シート、17a:一面、17b:他面
18:研削装置、20:チャックテーブル
19:第1の積層体
21:デバイスチップ、21a:表面、21b:裏面、21c:仕上がり厚さ
22:研削ユニット、24:スピンドル、26:マウント
23:DAF(ダイアタッチフィルム)、25:ダイシングテープ
27:DAF付きテープ
28:研削ホイール、30:環状基台、32:研削砥石
29:フレーム、31:フレームユニット
33:剥離用テープ
42:切削装置、44:チャックテーブル、44a:保持面
46:切削ユニット、48:スピンドル、50:切削ブレード、50a:切り刃
52:加熱装置、54:熱風噴射ユニット、56:熱風