(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】未乾燥ガーリックを原料に使用したペペロンチーノソースの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20241007BHJP
【FI】
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2021116816
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】小川 紀子
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-185178(JP,A)
【文献】特開平10-066536(JP,A)
【文献】S&Bシーズニング ペペロンチーノ [シーズニングスパイス 12g], ヨドバシ.com[online], 2024年04月30日検索,2016年,https://www.yodobashi.com/product/100000001003187357/
【文献】メガにんにくペペロンチーノ, 「MEN LOVES 麺」[online], 2024年04月30日検索,2020年02月29日,https://www.neosnappy.net/entry/2020/02/29/193241
【文献】ペペロンチーノは最後にニンニクのすりおろしを入れるでは駄目なんですか?,Yahoo!知恵袋[online], 2024年04月30日検索,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10244123285
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料として、ガーリック粉砕物、ガーリックスライス、ガーリックペーストからなる群から選択される1種以上の未乾燥ガーリックとセロリーシードとを使用したペペロンチーノソースの製造方法であって、前記未乾燥ガーリックの使用量は前記ペペロンチーノソース中5質量%以上13質量%以下であり、前記セロリーシードの使用量は前記未乾燥ガーリック100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下であることを特徴とするペペロンチーノソースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未乾燥ガーリックを原料に使用したペペロンチーノソースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペペロンチーノソースとは、少なくとも原料としてガーリック、唐辛子を使用したソースをいい必要に応じてパセリ・アンチョビ・胡椒・ブイヨン等も使用する場合もある。
製造方法として、ガーリックと唐辛子の旨味と香りを油に抽出し水を加え乳化して調製する方法が一般的である。
ペペロンチーノソースを和えた茹でスパゲッティは一般的にペペロンチーノと称され広く人気のあるパスタ料理である。
ペペロンチーノに求められる食味は多様であるが特にガーリック風味に優れたものが好まれる傾向にある。
【0003】
セロリーシードとは、セロリー(野菜)の野生種の種子、特にスモーリッジ種の種子であり、スパイスの一種として知られている。
セロリーシードは、食肉類や魚介類などを用いる各種料理の臭い消しや香り付けに使用されることがある。
【0004】
ペペロンチーノソースではないが、セロリーシードを使用したパスタソースとして例えば、水溶性セルロースエーテルと乾燥こんにゃく加工品及び/ 又は澱粉を含むことを特徴とするパスタソースであってセロリーシードパウダーを0 . 0 4質量%使用したカルボナーラソースが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、ペペロンチーノソースにはガーリック風味が求められている。
ガーリック風味の強いペペロンチーノソースを製造する場合、ガーリックの使用量を増やすことが考えられる。
乾燥ガーリックを使用した場合は使用量を増やすことで旨味は強くなるが乾燥によりガーリックの風味が損なわれているためにガーリックの風味を強くするには効率的ではない。
また、ガーリックオイルを使用した場合は、香りは強くなるがガーリックの旨味を付与するには効率的ではない。
一方、未乾燥ガーリックを使用した場合は、香りと旨味とを付与することは出来るが、未乾燥ガーリックの使用量を増やすと調理工程で十分に加熱されているにも関わらず未乾燥ガーリックの「生っぽい」いやな香りが残ってしまうという問題があった。
従って、本発明の目的は、未乾燥ガーリックを使用したペペロンチーノソースであってもガーリックの旨味があり未乾燥ガーリックの「生っぽい」いやな香りが抑えられたペペロンチーノソースの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、未乾燥ガーリックに対してセロリーシードを特定の割合で使用することでガーリックの旨味があり未乾燥ガーリックの「生っぽい」いやな香りが抑制されたペペロンチーノソースが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、原料として、ガーリック粉砕物、ガーリックスライス、ガーリックペーストからなる群から選択される1種以上の未乾燥ガーリックとセロリーシードとを使用したペペロンチーノソースの製造方法であって、前記未乾燥ガーリックの使用量は前記ペペロンチーノソース中5質量%以上13質量%以下であり、前記セロリーシードの使用量は前記未乾燥ガーリック100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下であることを特徴とするペペロンチーノソースの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペペロンチーノソースの製造方法により、ガーリックの旨味があり「生っぽい」いやな香りが抑制されたペペロンチーノソースを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する未乾燥ガーリックとは、乾燥処理をしていないガーリックをいい、粉砕されたものやスライスされたもの、又はペースト状のものが使用でき、形状には特に限定はなく、従来からペペロンチーノソースに使用されている未乾燥ガーリックが使用できる。
【0010】
未乾燥ガーリックを使用する場合、使用量が多くなるにつれガーリックの旨味は増すが 未乾燥ガーリックの「生っぽい」いやな香りが強くなるため、一般的な使用量はペペロンチーノソース中2質量%~4質量%程度である。
本発明では、セロリーシードを未乾燥ガーリックに対して特定量使用することで、「生っぽい」いやな香りを抑えることができ、未乾燥ガーリックの使用量を増やして、ガーリックの旨味の効いたペペロンチーノソースを得ることができる。
しかし、未乾燥ガーリックの使用量がペペロンチーノソース中13質量%を超えた場合、セロリーシードを使用しても「生っぽい」いやな香りを抑えることができないため、未乾燥ガーリックの使用量は、ペペロンチーノソース中13質量%が上限である。
また、未乾燥ガーリックの使用量がペペロンチーノソース中5質量未満では、「生っぽい」いやな香りは許容範囲であり、セロリーシードを使用して、ガーリックの旨味を損なってまで「生っぽい」いやな香りを抑制する必要はない。
【0011】
本発明で使用するセロリーシードは、粒径が1mm程度と細かいので粒のまま使用できるが、粉砕して粉状にしたものも使用できる。
本発明では、セロリーシードを未乾燥ガーリック100質量部に対して0.1質量部以上0.3質量部以下使用することで「生っぽい」いやな香りを抑制することができる。
セロリーシードの使用量が0.1質量部未満では、効果が十分に得られず、0.3質量部を超えると未乾燥ガーリックの「生っぽい」いやな香りは抑制することができるがセロリーシードの苦味が出てしまい、未乾燥ガーリックの旨味を抑制してしまうので好ましくない。
【0012】
本発明のペペロンチーノソースは、前記のとおり、未乾燥ガーリック100質量部に対してセロリーシードを特定量使用する以外は、その他の配合や製造方法は従来のペペロンチーノソースと同様でよい。
【0013】
例えば、使用できる油としては、植物性油脂(サラダ油、パーム油、菜種油、綿実油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、胡麻油、コーン油、米油、シソ油、オリーブ油、アマニ油、エゴマ油等)、動物性油脂(魚油等)、加工油脂(硬化油、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等)などを挙げることができる。
また、必要に応じて、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、甘藷澱粉、これらを物理的・化学的・酵素的に処理した加工澱粉等の澱粉類、乳化剤、砂糖、グルコース等の糖類、甘味料、調味料(例えば、食塩、グルタミン酸ナトリウム、カツオパウダー、チキンエキスなどの粉末調味料;ソース、エキス、醤油、だし汁、ハチミツなどの液体調味料)、香辛料、香料、色素等を発明の効果を損なわない範囲でパスタソースに配合してもよい。
使用方法も従来のペペロンチーノソースと同様でよく、パスタソースやサラダ等のドレッシングとして使用できる。
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例1]ペペロンチーノソースの製造
加熱調理用ニーダー(株式会社カジワラ製:KR-J型)にサラダ油20質量部、ガーリックペースト4質量部、セロリーシードパウダー0質量部を投入し歩留が90質量%になるまで炒めた。
これに赤唐辛子粉末0.8質量部、食塩3.5質量部、チキンエキス3.7質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉1質量部、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル)1質量部及び水を投入した。
水は全体が100質量部になるように投入した。
これを芯温(製造中のソースの中心分の温度)が85℃になるまで再度加熱した後、20℃に冷却してペペロンチーノソースを得た。
なお、ガーリックペーストは生のガーリックをペースト状にしたもので、セロリーシードパウダーはセロリーシードを粉状にしたものである。
【0015】
[実施例1~5、比較例1~2]ガーリックペーストとセロリーシードの配合率
参考例1において、表1及び表2に示す割合にガーリックペーストとセロリーシードパウダーを変更した以外は、参考例1と同様にしてペペロンチーノソースを得た。
表中、配合割合の単位は質量部である。
【0016】
得られたペペロンチーノソースを、参考例1をコントロール(3点)として、以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
ガーリックの香りが3点以上、ガーリックの旨味が3.5点以上であるものを合格とした。
・ガーリックの香り
5点 生っぽさがなく、非常に良い
4点 生っぽさがほとんどなく、良い
3点 普通
2点 生っぽさがややあり、悪い
1点 生っぽさがあり、非常に悪い
・ガーリックの旨味
5点 旨味があり、非常に良い
4点 旨味がややあり、良い
3点 普通
2点 旨味がややなく、悪い
1点 旨味がなく、非常に悪い
得られた評価結果を表1、表2に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0017】
【0018】
【0019】
ガーリックペーストの使用量が5質量%以上13質量%以下の範囲では、セロリーシードパウダーを適量使用することで、「生っぽい」いやな香りが抑えられたガーリックの旨味に優れたペペロンチーノソースを得ることができた。
比較例1、比較例2は、ガーリックペーストの使用量が13質量%を越えた場合であるが、ガーリックペーストの使用量が13質量%を越えるとセロリーシードパウダーを使用しても、ガーリックの旨味はあるが、「生っぽい」いやな香りを抑える事ができず劣る結果となった。
比較例3、ガーリックペーストの使用量が適当であってもセロリーシードパウダーの使用量が少ない場合は、「生っぽい」いやな香り、を抑えることができず満足できるペペロンチーノソースを得ることができなかった。
比較例4は、ガーリックペーストの使用量が適当であっても、セロリーシードパウダーの使用量が多すぎる場合は、香りは問題ないが、セロリーシードパウダーの苦味が出てしまい満足できる旨味が得られず満足できるペペロンチーノソースを得ることができなかった。
【0020】
[参考例2]ペペロンチーノによる評価
容器に、茹でたスパゲッティ200gと前記ペペロンチーノソース50gを盛付け、-35℃の凍結庫で品温-18℃以下になるまで凍結し3日間保存した後、500Wの電子レンジで加熱解凍し同様にして評価したが、ガーリックの香りと旨味についてはスパゲッティとソースを合わせても同様の結果となった。