(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20241007BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241007BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241007BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20241007BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B24B41/06 L
H01L21/78 A
B24B27/06 M
B24B49/12
B23Q17/24 B
(21)【出願番号】P 2020110751
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】山田 千悟
(72)【発明者】
【氏名】美細津 祐成
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192603(JP,A)
【文献】特開昭61-071968(JP,A)
【文献】特開2012-256749(JP,A)
【文献】特開2010-087141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 49/12
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置であって、
該保持手段は、透明板で構成され該X軸方向及び該Y軸方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた透明テーブルと、該透明テーブルの該保持面の反対側に空間を形成して該透明テーブルを支持する枠体と、を含み構成され、
該切削手段は、該切削ブレードを該X軸方向及び該Y軸方向と直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該切削ブレードに対向し該透明テーブルを挟んで該空間に位置付けられる撮像手段と、を備え、
該撮像手段は、被加工物を切削
している切削ブレードの切り刃を、該透明テーブルを介して
該Z軸方向下面側から撮像し、
該制御手段は、
撮像された被加工物を切削している該切削ブレードの切り刃
の幅が基準値よりも大きく維持されるように、該Z軸移動手段を作動する切削装置。
【請求項2】
該保持手段は、該X軸移動手段によってX軸方向に移動し、
該切削手段は、該撮像手段と共に該Y軸移動手段によってY軸方向に移動し、
該空間は、該撮像手段のX軸方向の通過を許容するようにコの字状に形成される請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持手段に保持された被加工物を切削する切削手段を備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、を少なくとも備えていてウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【0004】
また、切削ブレードの切り刃は摩耗すると切込み深さが浅くなるため、切込み深さが不十分となることがないように、実験等により予め切削ブレードの摩耗状態を時間毎に計測して記憶しておき、定期的に切削ブレードの切込み深さを補正して、ウエーハを適正に切削しようとする摩耗補正方法が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1に記載された技術においては、予め行った実験の結果や経験から得られた摩耗量と、加工された溝の長さとの関連に基づいて摩耗補正量を決定して、定期的に切込み深さの補償をすることとしている。しかし、ウエーハの厚みや材質が変化した場合には、切削ブレードの摩耗状態が変化するため、摩耗状態が変化する場合に摩耗補正量を適切に決定し、切込み深さの制御を適正に実施することは困難であり、切込み深さが均一にならず、デバイスチップの品質が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の特性が変化し切削ブレードの摩耗状態が変化して切込み深さが変化するような場合であっても、切削ブレードの切込み深さを常に均一にすることができる切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置であって、該保持手段は、透明板で構成され該X軸方向及び該Y軸方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた透明テーブルと、該透明テーブルの該保持面の反対側に空間を形成して該透明テーブルを支持する枠体と、を含み構成され、該切削手段は、該切削ブレードを該X軸方向及び該Y軸方向と直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該切削ブレードに対向し該透明テーブルを挟んで該空間に位置付けられる撮像手段と、を備え、該撮像手段は、被加工物を切削している切削ブレードの切り刃を、該透明テーブルを介して該Z軸方向下面側から撮像し、
該制御手段は、撮像された被加工物を切削している該切削ブレードの切り刃の幅が基準値よりも大きく維持されるように、該Z軸移動手段を作動する切削装置が提供される。
【0009】
該保持手段は、該X軸移動手段によってX軸方向に移動し、該切削手段は、該撮像手段と共に該Y軸移動手段によってY軸方向に移動し、該空間は、該撮像手段のX軸方向の通過を許容するようにコの字状に形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の切削装置は、被加工物を保持する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、制御手段と、を少なくとも備えた切削装置であって、該保持手段は、透明板で構成され該X軸方向及び該Y軸方向で規定され被加工物を保持する保持面を備えた透明テーブルと、該透明テーブルの該保持面の反対側に空間を形成して該透明テーブルを支持する枠体と、を含み構成され、該切削手段は、該切削ブレードを該X軸方向及び該Y軸方向と直交するZ軸方向に移動するZ軸移動手段と、該切削ブレードに対向し該透明テーブルを挟んで該空間に位置付けられる撮像手段と、を備え、該撮像手段は、被加工物を切削している切削ブレードの切り刃を、該透明テーブルを介して該Z軸方向下面側から撮像し、該制御手段は、撮像された被加工物を切削している該切削ブレードの切り刃の幅が基準値よりも大きく維持されるように、該Z軸移動手段を作動するようにしていることから、被加工物の特性が異なって摩耗状態が変化し、切削ブレードの摩耗によって切込み深さが変化しても、切削ブレードの切込み深さを常に一定の範囲に収めることができ、被加工物を分割する際の品質が低下するという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】(a)
図1に記載の切削装置に配設される保持手段の分解斜視図、(b)(a)に示す構成により組み立てられた保持手段の斜視図である。
【
図3】
図2に示す保持手段にウエーハを載置する態様を示す斜視図である。
【
図4】ウエーハに対する切削工程が実施される態様を示す斜視図、及び表示手段を示す図である。
【
図5】(a)
図4の表示手段に示された状態から摩耗が進行した切削ブレードの摩耗状態を表示する表示手段、(b)(a)に示す状態からさらに切削ブレードの摩耗状態が進行した状態を表示する表示手段である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される切削装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態の切削装置1の斜視図が示されている。切削装置1は、被加工物を保持する保持手段3と、保持手段3に保持された被加工物を切削する切削ブレード41を回転可能に備えた切削手段4と、基台2上に配設され保持手段3と切削手段4とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段5と、基台2上に配設され保持手段3と切削手段4とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段6と、制御手段7と、を少なくとも備えている。
【0014】
X軸移動手段5は、モータ51の回転運動を、モータ51によって回転させられるボールねじ52を介して直線運動に変換し、上面53aに保持手段3が固定されるX軸方向可動板53に伝達し、基台2上においてX軸方向に沿って配設された一対の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板53を進退させる。Y軸移動手段6は、モータ61の回転運動を、モータ61によって回転させられるボールねじ62を介して直線運動に変換し、切削手段4を保持する垂直壁部64を備えたY軸方向可動板63に伝達して、基台2上においてY軸方向に沿って配設された一対の案内レール2b、2bに沿ってY軸方向可動板63を進退させる。
【0015】
切削手段4は、Y軸方向可動板63の側方に立設された垂直壁部64の側面に配設され、切削ブレード41が端部に配設されたスピンドル43を回転可能に保持するスピンドルハウジング42と、切削ブレード41をカバーするブレードカバー44と、スピンドル43を回転駆動するモータ45と、を備え、さらに、スピンドルハウジング42を保持する保持部81を介して、切削ブレード41をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に移動して保持手段3に保持された被加工物に対して切込み送りするZ軸移動手段8と、切削ブレード41と対向する位置であって、切削ブレード41を撮像可能な位置に配設された撮像手段9と、を備えている。
【0016】
Z軸移動手段8は、Z方向に沿って配設される図示しないボールネジと、該ボールネジと平行に配設された一対の案内レール82、82と、該ボールネジを回動させるモータ83とを備え、保持部81の内部に形成されたナット(図示はされていない)が該ボールネジと螺合し、保持部81が案内レール82、82に沿ってZ軸方向に摺動可能に保持されている。この構成によりモータ82が該ボールネジを回動させることでスピンドルハウジング42と共に保持部81が案内レール82、82に沿ってガイドされてZ軸方向にて移動し、切削ブレード41がZ軸方向において切り込み送りされる。
【0017】
撮像手段9は、先端部に可視光線を照射して画像を捕らえるカメラ91が配設された支持プレート92を備え、Y軸方向可動板63上に配設されている。カメラ91は、制御手段7に接続され、切削ブレード41とZ軸方向で対向し、切削ブレード41の直下に位置付けられて、下方から切削ブレード41を撮像することができる。本実施形態においては、カメラ91と切削ブレード41とは、X軸方向、Y軸方向において相対的に移動しないように固定されており、上記したX軸移動手段5、Y軸移動手段6、Z軸移動手段8によって、切削手段4と保持手段3とが相対的に移動する場合であっても、常にカメラ91の撮像範囲で切削ブレード41の切り刃の先端位置が撮像されるようになっている。
【0018】
図2を参照しながら、本実施形態の保持手段3についてより具体的に説明する。
図2(a)に示すように、保持手段3は、透明板で構成されX軸方向及びY軸方向で規定され被加工物を保持する保持面31を有する透明テーブル32と、透明テーブル32を支持する枠体34と、を含み構成されている。本実施形態において透明テーブル32は、円筒状の支持筒35を介して、枠体34の上面34aに載置され保持される。透明テーブル32は、例えばガラス板、アクリル板等により形成される。枠体34は、例えば、図に示すように上面34aと、下面34bと、上面34a及び下面34bを接続する縦壁34cとでコの字状で形成され、透明テーブル32の保持面31の反対側に空間33を形成する。
【0019】
枠体34の上面34aには、透明テーブル32を支持する支持筒35を回転自在に保持する支持筒保持部36が形成されている。支持筒保持部36は、支持筒35の内壁35eに挿入される円筒部36aと、円筒部36aが形成される枠体34の上面34aにおいて円筒部36aを囲繞するように形成され支持筒35が摺動自在に載置される環状の摺動部36bと、円筒部36aと摺動部36bとの間に形成される第一吸引溝36cと、第一吸引溝36cの底部に形成される第一吸引孔36dと、を備えている。第一吸引孔36dは、図示しない吸引源に接続され第一吸引溝36cに負圧域を形成する。摺動部36bの上面にはフッ素樹脂がコーティングされており、これにより摩耗の進行が抑制され、良好な摺動特性が長期間維持される。
【0020】
支持筒35の下端側の外周には、枠体34に形成された回転伝達部37と係合する係合溝35aが形成されており、
図2(b)に示すように、枠体34の上面34aの円筒部36aに支持筒35を挿入して載置した状態で、回転伝達部37を図示しないステップモータにより回転させることで、支持筒35を矢印R1で示す方向に回転させることができる。
図2(a)に示すように、支持筒35の上面35bには、第二吸引孔35cが形成されている。第二吸引孔35cは、支持筒35を枠体34の上面34aに載置した状態で、支持筒35を構成する壁部内を上下に連通する連通路(図示は省略する)を介して、支持筒保持部36の第一吸引溝36cに接続され、該吸引源を作動することで、支持筒35の上面35bに形成された第二吸引孔35cに負圧を作用させることができる。支持筒35の上端側には、後述する被加工物を保持する際に使用するクランプ35dが均等な間隔で4つ配設されている。
【0021】
図2(a)に示すように、透明テーブル32を構成する保持面31の外周領域には環状の第二吸引溝32aが形成され、第二吸引溝32aの底部には、上下に貫通する第三吸引孔32bが形成されている。透明テーブル32を支持筒35の上面35bに載置し保持する場合は、第三吸引孔32bが、支持筒35の第二吸引孔35cと一致するように載置される。
図2(a)に示す各構成を組み立てることにより、
図2(b)に示す保持手段3が形成される。
図2(b)に示す状態で、図示しない吸引源を作動することにより、第一吸引孔36d、第二吸引孔35c、第三吸引孔32bを介して透明テーブル32上の第二吸引溝32aに負圧を作用させることができる。
【0022】
本実施形態の保持手段3をX軸移動手段5によって移動し、透明テーブル32を切削手段4の切削ブレード41の直下に移動させることにより、切削ブレード41と対向する位置に配設された撮像手段9のカメラ91が保持手段3の枠体34によって形成された空間33内に位置付けられる。そして、切削ブレード41とカメラ91との間には透明板で形成された透明テーブル32の保持面31以外に遮るものが存在しておらず、カメラ91は、透明テーブル32を通して切削ブレード41の切り刃を撮像することができる。
【0023】
なお、図示は省略するが、X軸方向移動手段5、Y軸方向移動手段6、Z軸移動手段8、及び支持筒35の係合溝35aの近傍には、それぞれ位置検出手段が配設されており、保持手段3のX軸方向の位置、切削手段のY軸方向、Z軸方向の位置、透明テーブル32の回転位置が正確に検出され、制御手段7から指示される信号に基づいてX軸方向移動手段5、Y方向移動手段42、Z軸移動手段8、及び回転伝達部37が駆動され、保持手段3の透明テーブル32と、切削手段4の切削ブレード41とを、所望の位置に正確に位置付けることが可能である(
図1では、説明の都合上、制御手段7と、Z軸移動手段8及びカメラ91とが接続された状態のみを示している)。
【0024】
制御手段7は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、撮像手段9のカメラ91が撮像した画像情報、及び演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。なお、
図1では、説明の都合上、制御手段7を切削装置1の外部に示しているが、実際は、切削装置1の内部のいずれかに配設される。本実施形態の切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下に、その作用、効果について説明する。
【0025】
本実施形態の切削手段1によって加工される被加工物は、
図3に示された半導体のウエーハ10であって、ウエーハ10の表面10aにおいて、格子状に形成された分割予定ライン14によって区画された各領域にデバイス12が形成されている。ウエーハ10は、透明な樹脂によって形成された粘着テープTに対して裏面10b側が貼着され、粘着テープTを介して環状のフレームFに保持されている。
【0026】
上記したウエーハ10を加工するに際し、
図3に示すように、フレームFによって保持されたウエーハ10を、粘着テープT側(裏面10b側)を下方に向けて保持手段3の透明テーブル32の保持面31上に載置する。次いで、図示を省略する吸引源を作動して、第三吸引孔32bを介して第二吸引溝32aに負圧を作用させて、ウエーハ10を透明テーブル32の保持面31上に吸引保持し、クランプ35dによってフレームFを固定する。
【0027】
保持手段3にウエーハ10を固定したならば、
図1に示すX軸移動手段5を作動して、X軸可動板53と共に保持手段3をX軸方向において移動し、図示しないアライメント手段の直下に位置付ける。アライメント手段を用いて、ウエーハ10の表面10aを撮像し、ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン14の位置を検出すると共に、枠体34に配設された回転伝達部37を作動して透明テーブル32と共にウエーハ10を回転して、所定方向の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。検出された分割予定ライン14の位置の情報は、制御手段7に送られて記憶される(アライメント工程)。
【0028】
上記したアライメント工程によって検出された分割予定ライン14の位置情報に基づき、X軸移動手段5、Y軸移動手段6を作動して、所定の分割予定ライン14の加工開始位置の上方に切削手段4の切削ブレード41を位置付ける。この際、上記したように、本実施形態の撮像手段9のカメラ91は、切削ブレード41と対向する位置であって、切削ブレード41の直下に配設されている。よって、枠体34が切削ブレード41の直下に位置付けられると、撮像手段9のカメラ91は、枠体34によって形成される内部の空間33に位置付けられる。
【0029】
切削ブレード41をウエーハ10の分割予定ライン14の加工開始位置の上方に位置付けたならば、予め記憶されたウエーハ10の厚み、又はアライメント工程において検出されたウエーハ10の厚みに従いZ軸移動手段8を作動して切削手段4を下降させて、
図4に示すように、切削ブレード41をウエーハ10の分割予定ライン14に対して切込み送りすると共に、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして、分割予定ライン14に沿って分割溝100を形成する。さらに、分割溝100を形成した分割予定ライン14にY軸方向で隣接し、分割溝100が形成されていない分割予定ライン14上に切削手段4の切削ブレード41を割り出し送りして、上記と同様にして分割溝100を形成する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って分割溝100を形成する。次いで、回転伝達部37を作動して、透明テーブル32を90度回転し、先に分割溝100を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施し、ウエーハ10に形成されたすべての分割予定ライン14に沿って分割溝100を形成する。このようにして分割工程を実施することで、分割予定ライン14に沿ってウエーハ10をデバイス12ごとのデバイスチップに分割する。
【0030】
ところで、上記した分割工程を実施する際には、
図4に示すように、撮像手段9のカメラ91によって、切削ブレード41と対向する位置から、透明テーブル32の保持面31、及び粘着テープTを介してウエーハ10の裏面10b側を撮像する。撮像された画像は、制御手段7に送られ、必要に応じ表示手段17に出力されて表示される。切削ブレード41に摩耗が生じていない状態で、ウエーハ10の厚みに従い正確に切込み送りがなされた場合には、
図4に示す表示手段17の画像のように、裏面10b側から切削溝100が撮像され表示されると共に、切削溝100を形成する切削ブレード41の切り刃が所定の幅W1で撮像され表示される。切削ブレード41の切り刃の幅W1の値は、制御手段7の画像処理プログラムにより演算され、該幅W1(=分割溝100の幅)が、基準値WA(例えば20μm)より大きいか否かの判定が、制御手段7が実施するプログラムによって自動で行われる。該幅W1が基準値WAより大きい場合は、正常に切込み送りがなされていることになり、切削工程はそのまま継続して実施される。
【0031】
他方、切削ブレード41の切り刃の摩耗量が大きくなると、
図5(a)に示すように撮像手段9によって撮像される切削溝100、及び切削ブレード41の切り刃の幅が細くなり(=幅W2)、そのまま何らの補償も行わずに切削工程を実施し続けると、
図5(b)に示すようにさらに切削ブレード41の摩耗が進行して幅W2よりも細い幅W3となり、やがて分割溝100が形成されず、切削ブレード41の切り刃が撮像されない状態となる。
【0032】
この問題に対応すべく本実施形態では、カメラ91によって撮像される摩耗が進行した切削ブレード41の切り刃の幅W2が基準値WA以下(W2≦WA)となったことが制御手段7によって判定された場合は、その切り刃の幅W2の数値に応じたZ軸移動手段8のモータ83に対する駆動信号の補正量を決定して出力し、該補正量に基づくZ軸移動手段8の作動により切削ブレード41を下降させて切込み送り量の補正を行い、切り刃の幅が再び基準値WAよりも大きくなるようにし、切削工程を実施する際、常に切削ブレード41の切り刃の撮像が維持されるように、Z軸移動手段8を制御する。
る。
【0033】
本実施形態によれば、ウエーハの特性が異なって摩耗状態が変化し、切削ブレード41の摩耗によって切込み深さが変化しても、切削ブレード41の切込み深さを常に一定の範囲に収めることができ、ウエーハ10を分割して得られるデバイスチップの品質が低下するという問題が解消する。
【0034】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されない。例えば、上記した実施形態では、保持手段3において空間33を形成する枠体34が、上面34a、下面34b、及び縦壁34cによるコの字状で形成したが、撮像手段9が位置づけ可能な空間を形成することができるのであれば、いかなる形状であってもよい。
【0035】
また、上記した実施形態では、透明テーブル32と枠体34の上面34aとの間に、支持筒35を介在させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、枠体34に対して、直接透明テーブル32を載置して保持するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:切削装置
2:基台
2a:案内レール
2b:案内レール
3:保持手段
31:保持面
32:透明テーブル
31a:第二吸引溝
31b:第三吸引孔
33:空間
34:枠体
34a:上面
34b:下面
34c:縦壁
35:支持筒
35a:係合溝
35b:上面
35c:第二吸引孔
35d:クランプ
36:支持筒保持部
36a:円筒部
36b:摺動部
36c:第一吸引溝
36d:第一吸引孔
37:回転伝達部
4:切削手段
41:切削ブレード
42:スピンドルハウジング
43:スピンドル
44:ブレードカバー
5:X軸移動手段
51:モータ
52:ボールねじ
53:X軸方向可動板
6:Y軸移動手段
61:モータ
62:ボールねじ
63:Y軸方向可動板
64:垂直壁部
7:制御手段
8:Z軸移動手段
81:保持部
82:案内レール
83:モータ
9:撮像手段
91:カメラ
92:支持プレート
100:切削溝