(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241007BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L23/14 C
(21)【出願番号】P 2020111987
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小汲 泰一
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033623(WO,A1)
【文献】特開2008-218731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散層を含むSiC半導体基板と、
前記SiC半導体基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた第2の電極と、
前記SiC半導体基板の平面サイズと略同じ平面サイズであり、かつ前記第2の電極を封止するように設けられた樹脂部と、
を備え
、
前記樹脂部は、第1の樹脂部であり、
前記第1の電極と接する第2の樹脂部と、
前記第1の電極及び前記第2の電極と接するように設けられた第3の樹脂部とを更に備え、
前記第3の樹脂部の開口は、前記第2の樹脂部の開口よりも狭い、
半導体装置。
【請求項2】
拡散層を含むSiC半導体基板と、前記SiC半導体基板上に設けられた第1の電極とを含む基板に対して、所定のマスク材を配置し、前記第1の電極上に第2の電極を形成する工程と、
所定のマスク材を除去した後に、前記第2の電極を封止するように樹脂部を形成する工程と、
を含
み、
前記樹脂部は、第1の樹脂部であり、
前記SiC半導体基板と前記第1の電極と前記第1の電極と接する第2の樹脂部とを含む前記基板に対して、前記第2の樹脂部の開口よりも狭い開口を有する第3の樹脂部を形成する工程を更に含み、
前記第2の電極を形成する工程は、前記基板に対して前記第3の樹脂部が形成された後に、前記第2の電極を形成する、
半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記所定のマスク材は、フィルム状のレジストである、
請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記所定のマスク材は、液状のレジストである、
請求項
2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WL-CSP(ウエハレベルチップサイズパッケージ)は、ウエハプロセスで再配線、電極の形成、樹脂封止及びダイシングまでを行う半導体装置のパッケージング技術である。例えば、特許文献1には、WL-CSPにおける半導体装置およびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シリコンカーバイド(SiC)は、シリコン(Si)に比べて小型化、低消費電力化、及び高効率化等が可能な素子を実現する材料であり、有用性が高い材料である。
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されている製造方法では、Siなどの半導体基板が想定されており(例えば、段落[0019]を参照。)、SiCに関しては想定されていない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、WL-CSPにおいてSiCを半導体基板とする半導体装置の信頼性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る半導体装置は、拡散層を含むSiC半導体基板と、前記SiC半導体基板上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設けられた第2の電極と、前記SiC半導体基板の平面サイズと略同じ平面サイズであり、かつ前記第2の電極を封止するように設けられた樹脂部と、を含む。
【0008】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、拡散層を含むSiC半導体基板と、前記SiC半導体基板上に設けられた第1の電極とを含む基板に対して、所定のマスク材を配置し、前記第1の電極上に第2の電極を形成する工程と、所定のマスク材を除去した後に、前記第2の電極を封止するように樹脂部を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、WL-CSPにおいてSiCを半導体基板とする半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置の全体構成を示す図である。
【
図2A】第1実施形態に係る半導体装置の部分的な構成を拡大して示す断面図である。
【
図2B】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図2C】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図2D】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図2E】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る半導体装置の部分的な構成を拡大して示す断面図である。
【
図4】第3実施形態に係る半導体装置の部分的な構成を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0012】
<第1実施形態>
【0013】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1の全体構成を示す図である。
図2Aは、半導体装置1の部分的な構成を拡大して示す断面図であり、
図1におけるA-A´線に沿った断面図である。
【0014】
半導体装置1は、拡散層11を含むSiC半導体基板10と、SiC半導体基板10上に設けられた第1の電極12とを含む。また、半導体装置1は、更に、第1の電極12と接する第2の樹脂部14と、第1の電極12上に設けられた第2の電極18と、第1の樹脂部20と、を含む。
【0015】
第1の樹脂部20は、SiC半導体基板10の平面サイズと略同じ平面サイズであり、かつ第2の電極18を封止するように設けられている。例えば、
図1のような半導体装置1の上面視において、第1の樹脂部20が矩形状のSiC半導体基板10の平面サイズと略同じ平面サイズになるように、第1の樹脂部20はSiC半導体基板10の各辺上に沿って形成される。また、第1の電極12は、例えばAl等により構成される。また、第2の電極18は、Cu等により構成される。
【0016】
半導体装置1は、パッケージの形態がWL-CSPの形態を有する。すなわち、半導体装置1は、パッケージの平面サイズが、SiC半導体基板10の平面サイズと略同じである。
【0017】
拡散層11を含むSiC半導体基板10の表面には、トランジスタ、抵抗素子及びキャパシタ等の回路素子(図示せず)が形成されている。SiC半導体基板10の表面はSiO2等の絶縁体からなる層間絶縁膜(図示せず)で覆われている。
【0018】
その層間絶縁膜の表面には、SiC半導体基板10上に形成された回路素子に接続される第1の電極12が設けられ、第1の電極12の表面を部分的に露出させる開口部を有する第2の樹脂部14が設けられている。
図2Aに示されるように、第2の樹脂部14は、第1の電極12と接している。第2の樹脂部14は、いわゆるパッシベーション膜であり、ポリイミド樹脂等の感光性有機系絶縁部材で構成される。
【0019】
以下に、第1実施形態に係る半導体装置1の製造方法について
図2B~
図2Eを参照しつつ説明する。
図2B~
図2Eは、半導体装置1の製造工程を示す断面図である。
【0020】
はじめに、拡散層11を含むSiC半導体基板10の製造プロセスが完了した半導体ウエハを用意する(
図2B)。SiC半導体基板10の製造プロセスは、SiC半導体基板10上にトランジスタ等の回路素子(図示せず)を形成する工程、SiC半導体基板10の表面にSiO
2等の絶縁体で構成される層間絶縁膜を形成する工程、層間絶縁膜の表面に第1の電極12を形成する工程、及び第1の電極12を部分的に露出させるように第2の樹脂部14を形成する工程を含む。
【0021】
次に、第2の樹脂部14の開口部において露出する第1の電極12の表面を覆うUBM膜(図示せず)を形成する。UBM膜は、例えば、既知のスパッタ法を用いて、Ti膜及びCu膜を順次成膜することで形成される。
【0022】
次に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて、UBM膜の表面に、開口部を有する所定のマスク材16の一例であるドライフィルムを配置した上で貼り付ける。ドライフィルムは、フィルム状であり露光及び現像処理を施すことでUBM膜の表面に形成される。
【0023】
次に、既知の電界めっき法を用いて、UBM膜の表面に第2の電極18を形成する(
図2C)。具体的には、めっき液にSiC半導体基板10の表面を浸漬し、UBM膜に接続されためっき電極(図示せず)に電流を供給する。これにより、UBM膜(めっきシード層)の露出部分に金属が析出し、UBM膜上に第2の電極18が形成される。第2の電極18の材料として、例えばCuを用いることができる。
【0024】
第2の電極18の形成後、公知のプロセスを用いてマスク材16を除去する(
図2D)。これにより、第2の電極18が形成される。そして、第2の電極18に対して既知のエッチング処理を施す。
【0025】
次に、例えば、公知のプロセスを用いて、上記の各処理を経ることによって形成された構造体の表面に、ポリイミドまたはPBO等の感光性有機系絶縁部材を用いて、既知のフォトリソ技術(例えば、コート、露光、現像、及びキュア等の各工程を含むフォトリソ技術)にて、
図2Aに示されるような第1の樹脂部20を含む半導体装置1が生成される。なお、ポリイミドまたはPBO等の感光性有機系絶縁部材は、エポキシ樹脂でも良く、その場合、
図2Eに示されるような第1の樹脂部20を塗布後に研磨することにより、
図2Aに示されるような第1の樹脂部20を含む半導体装置1が生成される。
【0026】
第1実施形態に係る半導体装置1及びその製造方法によれば、SiC半導体基板10上の第2の電極18を封止するように第1の樹脂部20を設けることにより、WL-CSPにおいてSiCを半導体基板とする半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。また、SiC半導体基板10を薄くして低オン抵抗化を図ろうとする際に、第1の樹脂部20を支持基体とすることができる。これにより、SiC半導体基板を含む半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【0027】
また、第1実施形態に係る半導体装置1及びその製造方法によれば、第1の樹脂部20に用いられるフィラー材の径よりも第1の樹脂部20の膜厚を厚くすることにより、より信頼性を向上させることができる。また、第1の樹脂部20を形成する際に、マスク材16の配置位置を調整することにより、第1の電極12の開口面積通りに第2の電極18を形成することができる。なお、第1の樹脂部20としてポリイミドまたはPBO等を用いた場合には、その厚さを薄くすることができ、応力が小さいという効果が得られる。また、第1の樹脂部20としてエポキシ樹脂を用いた場合には、エポキシ樹脂が黒色であることにより遮光性が得られ、また機械的強度を強くすることができるという効果が得られる。
【0028】
<第2実施形態>
【0029】
図3は、第2実施形態に係る半導体装置100の断面図である。
【0030】
第2実施形態の半導体装置100は、第1実施形態の構成と同様であり、拡散層11を含むSiC半導体基板10と、SiC半導体基板10上に設けられた第1の電極12とを含む。また、半導体装置1は、更に、第1の電極12と接する第2の樹脂部14と、第1の電極12上に設けられた第2の電極18と、第1の樹脂部20と、を含む。第1の樹脂部20は、SiC半導体基板10の平面サイズと略同じ平面サイズであり、かつ第2の電極18を封止するように設けられている。
【0031】
次に、第2実施形態に係る半導体装置100の製造方法を説明する。第2実施形態に係る半導体装置100の製造方法は、第2の電極18を形成する際の所定のマスク材が液状のレジストである点が第1実施形態と異なる。
【0032】
このため、第2実施形態の製造方法により製造された半導体装置100の第2の電極18の厚さは、第1実施形態の製造方法により製造された半導体装置1の第2の電極18の厚さよりも薄い。また、同様に、第2実施形態の製造方法により製造された半導体装置100の第1の樹脂部20の厚さは、第1実施形態の製造方法により製造された半導体装置1の第1の樹脂部20の厚さよりも薄い。
【0033】
なお、第2実施形態の半導体装置及びその製造方法の他の構成については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0034】
第2実施形態に係る半導体装置100及びその製造方法によれば、SiC半導体基板10上の第2の電極18を封止するように第1の樹脂部20を設けることにより、WL-CSPにおいてSiCを半導体基板とする半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。また、第2の電極18を形成する際に所定のマスク材として液状のレジストを用いるため、製造コストを低減させることができる。
【0035】
<第3実施形態>
【0036】
図4は、第3実施形態に係る半導体装置200の断面図である。
【0037】
第3実施形態に係る半導体装置200は、第1実施形態の半導体装置1又は第2実施形態の半導体装置100の構成に加え、第1の電極12及び第2の電極18と接するように設けられた第3の樹脂部15を更に備える。また、
図4に示されるように、第3の樹脂部15の開口は、第2の樹脂部14の開口よりも狭い。
【0038】
次に、第3実施形態に係る半導体装置200の製造方法を説明する。
【0039】
第3実施形態に係る半導体装置200の製造方法は、第1実施形態の製造方法又は第2実施形態の製造方法に加え、SiC半導体基板10と第1の電極12と第1の電極12と接する第2の樹脂部14とを含む基板に対して、第2の樹脂部14の開口よりも狭い開口を有する第3の樹脂部15を形成する工程を更に含む。
【0040】
具体的には、
図2Aに示されるような、拡散層11を含むSiC半導体基板10の製造プロセスが完了した半導体ウエハである基板に対して、第2の樹脂部14の開口よりも狭い開口を有する第3の樹脂部15を形成する。第3の樹脂部15は、例えば、PBO等の感光性有機系絶縁部材である。
【0041】
そして、第3の樹脂部15の開口部において露出する第1の電極12の表面を覆うUBM膜(図示せず)を形成する。そして、第3の樹脂部15及びUBM膜がSiC半導体基板10上に形成された後に、第2の電極18を形成する。
【0042】
なお、第3実施形態の半導体装置及びその製造方法の他の構成については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
第3実施形態に係る半導体装置200及びその製造方法によれば、SiC半導体基板10上の第2の電極18を封止するように第1の樹脂部20を設けることにより、WL-CSPにおいてSiCを半導体基板とする半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。また、第3の樹脂部15を設けることにより、ウェハボンディングとして必要最低限の第2の電極18を設けることができる。具体的には、第3の樹脂部15の開口は、第2の樹脂部14の開口よりも狭くすることが可能であるため、第2の電極18に用いる金属の量を節減することができる。これにより、第2の電極18を形成する際の電気めっきの際の電源の電力量を低減させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,100,200 半導体装置
10 SiC半導体基板
11 拡散層
12 第1の電極
14 第2の樹脂部
15 第3の樹脂部
16 マスク材
18 第2の電極
20 第1の樹脂部