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▶ 株式会社J−オイルミルズの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】食品の塩味増強剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20241007BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020121861
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018627
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】西村 紗希
(72)【発明者】
【氏名】松澤 俊
【審査官】三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132833(JP,A)
【文献】国際公開第2011/102477(WO,A1)
【文献】特開2018-029548(JP,A)
【文献】特開2015-084675(JP,A)
【文献】特開2015-027274(JP,A)
【文献】特開2018-093732(JP,A)
【文献】特開2020-188704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆脂肪酸、米糠脂肪酸からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂(菜種油、又は、アスコルビン酸、エリソルビン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、及びコハク酸、並びにこれらの塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機酸またはその塩が分散した油脂を除く)を原料とする塩味増強剤の製造方法であって、
前記油脂に前記油脂1g当り1mg以上の水を添加する工程を含み、
前記油脂を70℃以上250℃以下で加熱する工程を含み、
前記加熱する工程と同時にさらに500Pa以上10000Pa以下の条件下となるよう減圧処理を行う工程を含む、
前記塩味増強剤の製造方法。
【請求項2】
前記水を添加する工程における水の添加量が、前記油脂1g当り20mg以上200mg以下である、
請求項1に記載の前記塩味増強剤の製造方法。
【請求項3】
前記加熱する工程における加熱時間は0.1時間以上2時間以下である、
請求項1または2に記載の前記塩味増強剤の製造方法。
【請求項4】
前記脂肪酸中に含まれるリノール酸及びオレイン酸の合計が30質量%以上、リノレン
酸は0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1または2乃至3いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
【請求項5】
食品に請求項1または2乃至4いずれかに記載の方法で製造された塩味増強剤を添加する、食品の塩味を増強させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の塩味を増強することが可能な塩味増強剤の製造方法及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩は、食品の風味として非常に重要な塩味を付与し、食品の美味しさを増強させる調味料である。しかも、身体を正常に機能させるための重要な役割を担っている。一方で、食塩の過剰摂取は、高血圧,心疾患,脳卒中,胃がん等を誘発する原因になると考えられている。
【0003】
そこで、食塩の使用量を低減し、更に食品の塩味を損なわない減塩食品や減塩調味料の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アルギニン及び/又はその塩、乳酸及び/又はその塩、並びにグルコン酸及び/又はその塩を原料に所定量添加する、塩味の増強された食品の製造方法が開示されている。しかしながら、近年、減塩食品への関心はますます高くなっており、食塩の使用量を減らしても食品の塩味を損なわない技術の更なる開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-208057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、食品の塩味を増強させることができ、食塩の使用量の低減を可能にする新規の塩味増強剤の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、脂肪酸又は油脂に水を添加して加熱することにより、新規の塩味増強剤を製造できることを見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
脂肪酸、そのエステル体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂を原料とする塩味増強剤の製造方法であって、少なくとも前記油脂に水を添加する工程と、加熱する工程とを含む前記製造方法。
[2]
前記油脂に脂肪酸を添加する工程を含む[1]に記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[3]
前記水を添加する工程における水の添加量が、前記脂肪酸、そのエステル体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂1g当り1mg以上である、[1]乃至[2]いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[4]
前記加熱する工程においてさらに減圧処理を同時に行う、 [1]乃至[3]いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[5]
前記加熱する工程は50℃以上250℃以下で0.1時間以上2時間以下加熱処理することにより行う、[1]乃至[4]いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[6]
前記減圧工程が500Pa以上10000Pa以下の条件下となるよう前記油脂を減圧する[4]乃至[5]いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[7]
前記脂肪酸中に含まれるリノール酸及びオレイン酸の合計が30質量%以上、リノレン酸は0.1質量%以上10質量%以下である、[1]乃至[6]いずれかに記載の前記塩味増強剤の製造方法。
[8]
[1]乃至[7]の方法で製造した塩味増強剤。
[9]
食品に[8]に記載の塩味増強剤を添加する、食品の塩味を増強させる方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脂肪酸又はそのエステル体を含有する油脂に水を添加して加熱することで、新規の塩味増強剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、脂肪酸、そのエステル体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂を原料とする塩味増強剤の製造方法であって、少なくとも前記油脂に水を添加する工程と、加熱する工程とを含む前記製造方法である。
【0010】
前記製造方法に用いられる脂肪酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などが挙げられる。そのうち、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキドン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びアラキドン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましく、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが更により好ましい。
【0011】
前記製造方法に用いられるエステル体は、特に限定されないが、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが挙げられる。
【0012】
前記製造方法に用いられる油脂は、大豆油、菜種油、パーム油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、紅花油、ひまわり油、綿実油、米油、落花生油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂、牛脂、豚脂、鶏脂、魚油、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、あるいはこれら油脂に分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂などが挙げられる。これらの油脂は、1種類を単品で用いてもよく、あるいは2種類以上が混合されたものを用いてもよい。
【0013】
前記水を添加する工程(以下、加水工程という)では、前記脂肪酸、そのエステル体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂に水を添加する。
【0014】
前記加熱する工程(以下、加熱工程という)は、工業的スケールで生産する観点からは、タンク等の適当な容器に収容したうえ、容器に備わる電熱式、直火バーナー式、マイクロ波式、蒸気式、熱風式などの加熱手段で、所定の加熱処理を行うことが好ましい。加熱工程の条件は、適宜、所望量の結果物(例えば前記塩味増強剤)が得られるように設定すればよい。
【0015】
前記製造方法では、前記油脂に一種又は二種以上の前記脂肪酸を含有せしめて用いてもよい。前記油脂に含有せしめる前記脂肪酸は、前述の通りである。
【0016】
前記製造方法では、前記加水工程における水の添加量が、上限は特にないが、脂肪酸、そのエステル体からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含有する油脂1g当り1mg以上が好ましく、1g当り10mg以上がより好ましく、1g当り100mg以上が更により好ましく、1g当たり200mg以上が殊更好ましい。
【0017】
前記製造方法では、前記加熱工程においてさらに減圧処理を同時に行うことが好ましい。減圧処理の工程は、往復式ポンプ、水封式ポンプ、油回転ポンプ、メカニカルブースター、ターボモレキュラーポンプ、スチームエジェクター、油エジェクター、油拡散ポンプ、水銀拡散ポンプ、クライオポンプ、スパッタイオンポンプなどの手段を用いて実施される。容器内の圧力は、容器の容量に応じて、ポンプの能力を調整する、バルブの開閉を調整することなどで、調節することが可能である。
【0018】
前記加熱工程の条件は、加熱温度40℃以上300℃以下で、加熱時間が0.1時間以上10時間以下で、好ましくは、加熱温度50℃以上250℃以下で、加熱時間が0.1時間以上2時間以下である。
【0019】
前記減圧処理は、特に制限はないが、0.1Pa以上15000Pa以下の条件下となるよう前記油脂を減圧することが好ましく、10Pa以上12000Pa以下となることがより好ましく、500Pa以上10000Pa以下となることが更により好ましい。
【0020】
前記脂肪酸中に含まれるリノール酸及びオレイン酸の合計が30質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、73質量%以上が更により好ましい。
【0021】
前記脂肪酸中に含まれるリノレン酸は1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることが更により好ましい。
【0022】
前記製造方法により、食品の塩味を増強する塩味増強剤を得ることができる。前記塩味増強剤は、更に他の油脂と混合して、油脂組成物となしてもよい。前記他の油脂に用いられる油脂は、前述の通りである。
【0023】
本発明によれば、塩味成分を含有する食品に前記塩味増強剤を含有せしめることで、その食品の塩味を増強することができる。より詳細には、食品に含まれる塩味成分の塩味を増強する効果に優れる。このような塩味成分を含有する食品の塩味を増強する効果は、例えば、公正な水準を満たす専門パネラーによる官能評価などによって、客観的に判定し得る。
【0024】
前記塩味増強剤は、また、食品に含ませることにより当該食品の塩味を増強することができる。すなわち、少ない食塩の使用量でも高い塩分を有しているかのように塩味を感じさせることができる。食品中に含まれる前記塩味増強剤の割合は、0.0001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.001質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。上記食品は、食塩又は塩味を感じる成分を含むものであれば特に限定されない。例えば、炒め調理品、焼き調理品、蒸し調理品、茹で調理品、炊き調理品、煮込み調理品又は調味料等であり、炒め調理品であることが好ましい。具体例としては、例えば、パスタ料理、炒飯、野菜炒め、焼き肉、焼き魚、温野菜、中華まん、焼売、肉団子、ハム、ソーセージ、おにぎり、炊き込みご飯、スープ、ルウ、チーズ、スナック菓子、和菓子、パンが挙げられる。
【実施例
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
本実施例において使用した材料及び調理器具は、以下の通りである。
〔脂肪酸〕
・大豆脂肪酸:高級脂肪酸TFA-130、築野食品工業社製
・米糠脂肪酸:築野食品工業社製
〔油脂〕
・菜種油:AJINOMOTOさらさらキャノーラ油、株式会社J-オイルミルズ製
・大豆油:AJINOMOTOコクとうまみの大豆の油、株式会社J-オイルミルズ製
〔食材〕
・スープ:大人むけのスープ冷たい枝豆のヴィシソワーズ、ハインツ日本株式会社製
〔加熱器〕
・オイルバス:SH-12、タイテック株式会社製
・撹拌機: NZ-1100、EYELA 東京理科器械株式会社製
〔減圧処理機〕
・真空ポンプ:TSW-300、佐藤真空株式会社製
・マントルヒーター:フレキシブルマントルヒーターFN-B-R、東京硝子器械株式会社
【0027】
〔加熱処理〕
加熱処理は以下のように行った。まず、脂肪酸又は油脂と水(以下、サンプルという)を計240gになるよう500mLステンレスジョッキに張り込んだ。なお、前記サンプルの脂肪酸又は油脂と水の比率は実施例の条件に従った。次に、前記ステンレスジョッキをオイルバス中に置き、設定温度になるよう調整した。撹拌機を前記ステンレスジョッキに投入し、200rpmで混合撹拌しながら、設定温度と設定時間で加熱処理した。なお、設定温度と設定時間は実施例の条件に従った。
【0028】
〔減圧処理〕
減圧処理は以下のように行った。まず、脂肪酸又は脂肪酸と油脂を計180gとなるように500mLのクライゼンフラスコに張り込んだ。なお、前記脂肪酸又は脂肪酸と油脂の比率は実施例の条件に従った。次にクライゼンフラスコを減圧加熱装置にセットし、真空ポンプのスイッチを入れ、内部の圧力が各実施例の圧力になるように調節したのち、ガスバーナーを用いて設定温度に達するまで昇温させ、設定時間加熱し、サンプルを調製した。その際、水をマントルヒーターで加熱して水蒸気の状態にし、クライゼンフラスコ内に水を所定量吹き込んだ。設定時間加熱したら、水蒸気の吹込みと加熱を止め、サンプル温度が60℃付近まで下がるのを待ち、サンプルを回収した。
【0029】
〔官能評価〕
以下に、官能評価の方法を記載する。官能評価は2名の専門パネルで行い、以下の基準で示すー3~+7の評点で評価した。各専門パネルの評価値から平均値を算出した。なお、対象は塩味増強剤を含まない食品とした。
【0030】
(基準)
(塩味の質)
+7:対照よりこの上なく強い
+6:対照よりもかなり強い
+5:対照よりも相当強い
+4:対照よりも強い
+3:対照よりも比較的強い
+2:対照よりもやや強い
+1:対照よりもわずかに強い
0:対照と同等
-1:対照よりもやや弱い
-2:対照よりも弱い
-3:対照よりもかなり弱い
【0031】
[試験例1]
<加熱条件1>
表1の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%を使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水100mg含有するようサンプルを調製し、表1に示す設定温度と設定時間で加熱処理して実施例1-1と1-2の試験油を得た。なお、表1に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例1の試験油とした。また、加熱処理後の実施例1-1と1-2の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して4.9~6.2mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例1の試験油は0.5mgであった。
【0032】
【表1】
【0033】
<加熱条件1の試験油入りスープの調製>
菜種油を0.495g、スープを49.5gに対し、表1で調製した比較例1、実施例1ー1、実施例1ー2の試験油をそれぞれ0.005g添加した試験油入りスープについて官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0034】
その結果、表2に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例1の試験油と比較して、水を添加し加熱処理をした実施例1-1と1ー2では塩味増強効果が高かった。以上の結果より、水を添加し加熱処理した試験油では塩味向上効果の高いことが明らかとなった。
【0035】
【表2】
【0036】
[試験例2]
<加熱条件2>
表3の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%を使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水100mg含有するようサンプルを調製し、表3に示すように設定温度140℃、設定時間45分間で、減圧工程での設定減圧条件を1500~7000Paに変更し、実施例2-1~2-5の試験油を得た。なお、表3に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例2の試験油とした。また、加熱処理後の実施例2-1~2-4の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して0.1~0.7mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例2の試験油は0.5mgであった。
【0037】
【表3】
【0038】
<加熱条件2の試験油入りスープの調製>
大豆油を0.495g、スープを49.5gに対し、表3で調製した比較例2、実施例2ー1~2ー5の試験油をそれぞれ0.005g添加した試験油入りスープについて官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0039】
その結果、表4に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例2の試験油と比較して、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした実施例2-1~2-5では塩味増強効果が高かった。特に、減圧工程を2700~7000Paの範囲に設定した条件で、塩味増強効果がもっとも高かった。以上の結果より、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした試験油では塩味向上効果の高いことが明らかとなった。
【0040】
【表4】
【0041】
<加熱条件3>
表5の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%を使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水20~200mg含有するようサンプルを調製し、表5に示すように設定温度140℃、設定時間45分間で、減圧工程での設定減圧条件を2700Paにし、実施例3-1~3-3の試験油を得た。なお、表5に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例3の試験油とした。また、加熱処理後の実施例3-1~3-3の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して0.2~0.7mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例3の試験油は0.5mgであった。
【0042】
【表5】
【0043】
<加熱条件3の試験油入りスープの調製>
菜種油を0.495g、スープを49.5gに対し、表5で調製した比較例3、実施例3ー1~3ー3の試験油をそれぞれ0.005g添加した試験油入りスープについて官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0044】
その結果、表6に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例3の試験油と比較して、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした実施例3-1~3-3では塩味増強効果が高かった。特に、大豆脂肪酸100質量%1gに対して水200mg含有するようサンプルを調製した実施例3-3で、塩味増強効果がもっとも高かった。
【0045】
【表6】
【0046】
<加熱条件4>
表7の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%を使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水100mg含有するようサンプルを調製し、表7に示すように設定温度90~140℃、設定時間45分間で、減圧工程での設定減圧条件を2700Paにし、実施例4-1~4-4の試験油を得た。なお、表7に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例4の試験油とした。また、加熱処理後の実施例4-1~4-4の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して0.1~0.6mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例4の試験油は0.5mgであった。
【0047】
【表7】
【0048】
<加熱条件4の試験油入りスープの調製>
菜種油を0.495g、スープを49.5gに対し、表7で調製した比較例4、実施例4ー1~4ー4の試験油をそれぞれ0.005g添加した試験油入りスープについて官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0049】
その結果、表8に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例4の試験油と比較して、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした実施例4-1~4-4では塩味増強効果が高かった。
【0050】
【表8】
【0051】
<加熱条件5>
表9の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%を使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水100mg含有するようサンプルを調製し、表9に示すように設定温度140℃、設定時間10~70分間で、減圧工程での設定減圧条件を2700Paにし、実施例5-1~5-4の試験油を得た。なお、表9に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例5の試験油とした。また、加熱処理後の実施例5-1~5-4の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して0.1~0.4mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例5の試験油は0.5mgであった。
【0052】
【表9】
【0053】
<加熱条件5の試験油入りスープの調製>
菜種油を0.495g、スープを49.5gに対し、表9で調製した比較例5、実施例5ー1~5ー4の試験油をそれぞれ0.005g添加した試験油入りスープについて官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0054】
その結果、表10に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例5の試験油と比較して、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした実施例5-1~5-4では塩味増強効果が高かった。
【0055】
【表10】
【0056】
<使用油の種類>
表11の条件に従い、大豆脂肪酸100質量%、大豆脂肪酸10質量%と菜種油90質量%、米糠脂肪酸100質量%をそれぞれ使用油として水を添加し加熱処理した。具体的には、使用油1gに対して水100mg含有するようサンプルを調製し、表11に示すように設定温度140℃、設定時間45分間で、減圧工程での設定減圧条件を2700Paにし、実施例6-1~6-3の試験油を得た。なお、表11に示すとおり、水を添加せず加熱処理を行わない大豆脂肪酸100質量%を比較例5の試験油とした。また、加熱処理後の実施例6-1~6-3の試験油に含まれる最終水分量は使用油1gに対して0.1~1.7mg、水を添加せず加熱処理を行わない比較例6の試験油は0.5mgであった。
【0057】
【表11】
【0058】
<使用油の異なる試験油入りスープの調製>
表11で調製した試験油を表12に示す配合で含有させて調製した試験油入りスープについて、官能評価を行った。具体的には得られたスープを食したときの塩味の増強効果を、試験油を含まないスープを対照として、評価した。
【0059】
【表12】
【0060】
その結果、表13に示すように、水を添加せず加熱処理をしなかった比較例6の試験油と比較して、水を添加し減圧工程を含む加熱処理をした実施例6-1~6-3では塩味増強効果が高かった。
【0061】
【表13】