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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水溶性金属加工油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/00 20060101AFI20241007BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20241007BHJP
   B23Q 11/10 20060101ALI20241007BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 133/08 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 129/56 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
C10M173/00
B24B55/02 Z
B23Q11/10 Z
C10N40:20 Z
C10N40:22
C10N30:04
C10M133/06
C10M133/08
C10M129/26
C10M129/56
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020194347
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083091
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】岡野 知晃
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-227987(JP,A)
【文献】特開昭59-232181(JP,A)
【文献】特開昭59-227991(JP,A)
【文献】特開2002-088390(JP,A)
【文献】特開平08-337787(JP,A)
【文献】特開昭59-108098(JP,A)
【文献】特開昭59-145296(JP,A)
【文献】特開2004-256771(JP,A)
【文献】国際公開第2020/175595(WO,A1)
【文献】特開2011-006763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散剤と水溶性金属加工油剤とを含む、水溶性金属加工油組成物であって、
前記分散剤は、下記一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを含み、
【化1】
[式中、
は、炭素数8~18の炭化水素基を表し、
、R およびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3の炭化水素基を表し、
およびA はそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基を表し、
はポリオキシアルキレン基を表し、
Lは炭素数1~8の炭化水素基を表し、
pは0または1の整数である。]
前記水溶性金属加工油剤は、脂肪酸類を含み、前記脂肪酸類の含有量は、前記金属加工油剤の水を除く全量基準で7~70質量%であり、
前記アミン化合物Iの含有量は、前記金属加工油剤の水を除く成分の合計質量100質量部に対して、0.1~11質量部である、組成物
【請求項2】
前記水溶性金属加工油剤は、前記式(I)で表されるアミン化合物I以外のアミン類、油性剤、界面活性剤、消泡剤、抗菌剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧剤、水、および基油から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記水溶性金属加工油剤は、前記式(I)で表されるアミン化合物I以外のアミン類をさらに含み、前記アミン類の含有量は、前記金属加工油剤の水を除く全量基準で7~50質量%である、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記アミン化合物Iは、前記水溶性金属加工油組成物の合計質量100質量%に対して、0.1質量%以上含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項5】
前記式(I)において、R は、炭素数8~18のアルキル基またはアルケニル基であり、
、R およびR は水素原子であり、
およびA はそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基であり、
はポリオキシアルキレン基であり、
Lは炭素数1~8のアルキレン基であり、
pは0または1の整数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(I)において、pは0である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミン化合物Iは、HLBが12以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物と、希釈水とを含む金属加工液。
【請求項9】
切削加工または研削加工に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物または請求項に記載の金属加工液。
【請求項10】
水溶性金属加工油剤または水溶性金属加工油剤と希釈水とを含む金属加工液の分散性を向上する方法であって、
水溶性金属加工油剤、金属加工に用いる前の金属加工液、または金属加工に用いた後の金属加工液に分散剤を添加する工程を含み、
前記分散剤は、下記一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを含み、
【化2】
[式中、
は、炭素数8~18の炭化水素基を表し、
、R およびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3の炭化水素基を表し、
およびA はそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基を表し、
はポリオキシアルキレン基を表し、
Lは炭素数1~8の炭化水素基を表し、
pは0または1の整数である。]
前記水溶性金属加工油剤は、脂肪酸類を含み、前記脂肪酸類の含有量は、前記金属加工油剤の水を除く全量基準で7~70質量%であり、
前記分散剤は、前記アミン化合物Iの量が水溶性金属加工油剤のうちの水を除く成分の合計質量100質量部に対して0.1~11質量部の量となるように、添加される、方法。
【請求項11】
前記アミン化合物Iは、HLBが12以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物または請求項8または9に記載の金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含む、金属加工方法。
【請求項13】
金属加工方法であって、
水溶性金属加工油剤と希釈水とを含む金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含み、
前記加工の工程前、工程中、および工程後の少なくとも一つの段階で、前記金属加工液に分散剤を添加することを特徴とし、
前記分散剤は、下記一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを含み、
【化3】
[式中、
は、炭素数8~18の炭化水素基を表し、
、R およびR はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3の炭化水素基を表し、
およびA はそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基を表し、
はポリオキシアルキレン基を表し、
Lは炭素数1~8の炭化水素基を表し、
pは0または1の整数である。]
前記水溶性金属加工油剤は、脂肪酸類を含み、前記脂肪酸類の含有量は、前記金属加工油剤の水を除く全量基準で7~70質量%であり、
前記分散剤は、前記アミン化合物Iの量が前記金属加工液の合計質量100質量部に対して0.005~0.75質量部の範囲となるように、添加される、方法。
【請求項14】
前記加工は切削加工または研削加工である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記アミン化合物Iは、HLBが12以上である、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性金属加工油用の分散剤、これを含む水溶性金属加工油組成物、これを用いた分散性を向上する方法および金属加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工や研削加工などの金属加工分野では、加工効率の向上、被加工材と被加工材を加工する工具との摩擦抑制、工具の寿命延長効果、切り屑の除去などを目的として金属加工油剤が使用される。金属加工油剤には、鉱物油、動植物油、合成油などの油分を主成分したものと、油分に界面活性を持つ化合物を配合して水溶性を付与したものとがある。近年では、安全性等の理由、例えば加工時の発熱等に起因する火災の抑制に鑑みて、水溶性を付与した水溶性金属加工油剤が多く用いられるようになってきている。
【0003】
水溶性加工油剤は、通常、水で希釈して、金属加工液(クーラント)として使用される。この金属加工液における切粉分散性は重要な性能の一つである。切粉分散性が低いと、工作機械内部の汚れや切り屑の凝集によって油泥状不溶解物が発生する。油泥状不溶解物は、加工不良や、洗浄、除去などの工数増加に伴う生産効率の低下を引き起こすことが知られており、分散性を向上するべく検討が行われている。例えば、特許文献1には、切り屑分散性に優れる水溶性金属加工油剤として、特定のジアミンのアルキレンオキシド付加物を配合したものが提案されている。特許文献1をはじめとするこれまでの水溶性金属加工油剤の分散性向上技術は、金属加工油剤に特定成分を含有させることで分散性の向上を図るものであった。そのため、水溶性金属加工油剤そのものの仕様(組成)変更を伴うものであり、生産ラインを停止させて、油剤の一部または全部の交換を行うといった対応しかできなかった。また、特許文献1のジアミンのアルキレンオキシド付加物は汎用品ではないことから、製造コスト面でも問題がある。
既存の水溶性金属加工油剤や金属加工液に対して後添加で分散性を向上させる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-80769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況において、金属加工液における分散性を向上させる新たな手段が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の実施形態を含む。
[1] 下記一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを含む、水溶性金属加工油用の分散剤。
【化1】
[式中、
は、炭素数8~18の炭化水素基を表し、
、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3の炭化水素基を表し、
およびAはそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基を表し、
はポリオキシアルキレン基を表し、
Lは炭素数1~8の炭化水素基を表し、
pは0または1の整数である。]
[2] Rは、炭素数8~18のアルキル基またはアルケニル基であり、
、RおよびRは水素原子であり、
およびAはそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基であり、
はポリオキシアルキレン基であり、
Lは炭素数1~8のアルキレン基であり、
pは0または1の整数である、[1]に記載の分散剤。
[3] pは0である、[1]または[2]に記載の分散剤。
[4] 切粉分散剤である、[1]~[3]のいずれかに記載の分散剤。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の分散剤と水溶性金属加工油剤とを含む、水溶性金属加工油組成物。
[6] 前記アミン化合物Iは、前記水溶性金属加工油組成物の合計質量100質量%に対して、0.1質量%以上含まれる、[5]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[7] 前記アミン化合物Iは、前記水溶性金属加工油剤のうちの水を除く成分の合計質量100質量部に対して、0.1質量部以上の量で含まれる、[5]または[6]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[8] [1]~[4]のいずれかに記載の分散剤と、水溶性金属加工油剤と、希釈水とを含む金属加工液
[9] 切削加工または研削加工に用いられる、[1]~[4]のいずれかに記載の分散剤、[5]~[7]のいずれかに記載の水溶性金属加工油組成物または[8]に記載の金属加工液。
[10] 水溶性金属加工油剤または金属加工液の分散性を向上する方法であって、
水溶性金属加工油剤、金属加工に用いる前の金属加工液、または金属加工に用いた後の金属加工液に[1]~[4]のいずれかに記載の分散剤を添加する工程を含む、方法。
[11] 前記分散剤は、前記アミン化合物Iの量が水溶性金属加工油剤のうちの水を除く成分の合計質量100質量部に対して0.1質量部以上の量となるように、添加される、[10]に記載の方法。
[12] [5]~[8]のいずれかに記載の水溶性金属加工油組成物または[9]に記載の金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含む、金属加工方法。
[13] 金属加工方法であって、
水溶性金属加工油剤と希釈水とを含む金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含み、
前記加工の工程前、工程中、および工程後の少なくとも一つの段階で、前記金属加工液に[1]~[4]のいずれかに記載の分散剤を添加することを特徴とする、方法。
[14] 前記分散剤は、前記アミン化合物Iの量が前記金属加工液の合計質量100質量部に対して0.2~1質量部の範囲となるように、添加される、[13]に記載の方法。
[15] 前記加工は切削加工または研削加工である、[13]または[14]に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以下の一以上の効果を有する。
(1)金属加工油剤または金属加工液に対して後添加により添加して分散性を向上させることができる分散剤、これを用いた分散性を向上する方法および金属加工方法が提供される。
(2)金属加工の前後に、金属加工油剤または金属加工液に対して後添加することで分散性を向上させることができるため、金属加工油剤自体の設計変更が不要である。
(2)分散性に優れる新規な水溶性金属加工油剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
本明細書に記載された数値範囲の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、「A~B」および「C~D」が記載されている場合、「A~D」および「C~B」の範囲も数値範囲として、本発明に範囲に含まれる。また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は下限値以上、上限値以下であることを意味する。
【0009】
以下に本明細書において記載する用語等の意義を説明する。
「炭化水素基」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、環状または分岐状の飽和または不飽和の炭化水素から水素原子を1個または2個以上除いた基を意味する。具体的には、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基などが挙げられる。
「アルキル基」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
「シクロアルキル基」とは、指定された数の炭素原子を有する環状の1価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
「アルキレン基」とは、指定された数の炭素原子を有する直鎖状、環状または分岐状の2価の飽和脂肪族炭化水素基を意味する。
「アルケニル基」とは、指定された数の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐の1価の炭化水素基を意味する。「アルケニレン基」とは、指定された数の炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐の2価の炭化水素基を意味する。「アルケニル」や「アルケニレン」としては例えば、モノエン、ジエン、トリエン及びテトラエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「アリール基」とは、芳香族性の炭化水素環式基を意味する。
「アルキルアリール基」とは、1以上のアルキルが結合したアリールを意味する。
「アリールアルキル基」とは、アリール環に結合したアルキルを意味する。
「ポリオキシアルキレン基」とは、アルキレンオキサイドの重合鎖から構成される2価の基を意味し、具体的には、「-(RO)-」(Rは出現するごとにそれぞれ独立してアルキレン基を表し、mは1以上の整数である)で表される基である。
【0010】
1.分散剤
本発明の一形態は、下記一般式(I)で表されるアミン化合物I(以下、単に「アミン化合物I」ともいう)を含む、水溶性金属加工油用の分散剤に関する。
【化2】
【0011】
本実施形態のアミン化合物Iは、水溶性金属加工油剤または水溶性金属加工油剤を希釈した金属加工液(クーラント)に添加されることで、金属加工時に生じる金属加工液における切粉などの分散性を向上させ、凝集を抑制することができる。
【0012】
本明細書において、「切粉」は、例えば、金属加工において生じる、金属の切り屑(切削屑など)や工作機械から排出される金属屑(例えば、研削盤装置などから排出される研削屑など)をいう。
本明細書において、「分散性」は、例えば、切粉、汚れ等の金属加工液中に存在する微粒子が、凝集体を形成することなく、分散する性質を意味する。微粒子は、例えば、直径がマイクロメートルスケールからミリメートルスケールの範囲(例えば1μm~10mm)でありうる。
本明細書において、「切粉分散性」は、例えば、切粉が、切粉同士の凝集体または切粉と他の物質との凝集体を形成することなく、分散する性質を意味する。
本明細書において、「分散剤」は、例えば、切粉、汚れ等の微粒子を金属加工液中に分散するための添加剤をいう。
本明細書において、「切粉分散剤」は、例えば、切粉同士の凝集体および/または切粉と他の物質との凝集体の形成を抑制し、切粉を金属加工液中に分散するための添加剤をいう。
【0013】
本実施形態で用いられるアミン化合物IのHLBは9以上である。かかる範囲のアミン化合物Iを用いることにより良好な分散性が得られる。特に、本実施形態のアミン化合物Iは金属加工液に含まれる微粒子の分散性(特に、切粉分散性)に優れている。したがって、いくつかの実施形態において、分散剤は、切粉分散剤である。
分散性の観点から、アミン化合物IのHLBは、10以上がより好ましく、11以上がさらに好ましい。一実施形態において、アミン化合物IのHLBは12以上である。アミン化合物IのHLBの上限は特に制限されないが、クーラントとの相溶性の点から、19以下が好ましく、18以下がより好ましく、17以下がさらに好ましい。アミン化合物IのHLBは例えば、分散性およびクーラントとの相溶性の点から、9~19が好ましく、10~18がより好ましく、11~17がさらに好ましい。一実施形態において、アミン化合物IのHLBは12~17である。
なお、本明細書において、HLBとは、Hydrophile-lipophile balance(親水親油バランス)の略称であり、界面活性剤の分子内における親水基と親油基のつり合いを示す指標である。本明細書において、HLBは、グリフィン法より算出される値を指す。
【0014】
式(I)において、Rは、炭素数8~18(8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18)の炭化水素基を表す。該炭化水素基の炭素数は潤滑性および溶解性の点から、好ましくは10~18、より好ましくは11~18、さらに好ましくは12~18である。
【0015】
炭化水素基は、例えば、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ベンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル(ステアリル)等のアルキル基;オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、オクタデセニル(オレイルなど)等のアルケニル基(二重結合の位置は任意である);ジメチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、プロピルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、へプチルシクロヘキシル等の、シクロアルキル基;ナフチル、アントラセニル、ビフェニル、ターフェニル等のアリール基;ジメチルフェニル、ブチルフェニル、ノニルフェニル、ジメチルナフチル等のアルキルアリール基;フェニルエチル、ジフェニルメチル等のアリールアルキル基等が挙げられる。
炭化水素基は、合成由来であっても天然由来であってもよい。例えば、炭化水素基は、ヤシアルキル、牛脂アルキル、硬化牛脂アルキル、大豆アルキルなどの天然由来の混合アルキル基またはアルケニル基であってもよい。天然由来の炭化水素基(混合アルキルまたは混合アルケニルなど)には、炭素数の異なる複数種の炭化水素基が含まれる。例えば、ヤシアルキルは、通常、炭素数12~16の範囲の飽和または不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基を主要成分とする。牛脂アルキルは、通常、炭素数16~18の範囲の飽和または不飽和の直鎖状脂肪族炭化水素基を主要成分とする。硬化牛脂アルキルは、通常、炭素数10~18の範囲の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を主要成分とする。本発明においては、天然由来の炭化水素基の主要成分(例えば炭化水素基の50質量%以上)が、所定の炭素数の範囲(炭素数6~30、より好ましくは8~24、さらに好ましくは10~22、特に好ましくは12~20)を占めるものを、Rとして使用できる。
【0016】
は、潤滑性および溶解性の点から、好ましくは炭素数8~18(より好ましくは炭素数10~18、さらに好ましくは炭素数11~18、特に好ましくは12~18)の直鎖状または分岐状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8~18(より好ましくは炭素数10~18、さらに好ましくは炭素数11~18、特に好ましくは12~18)のアルキル基またはアルケニル基であり、さらに好ましくは、ヤシアルキル、牛脂アルキル、ラウリル、オレイル、およびステアリルから選択される。
【0017】
式(I)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3の炭化水素基を表す。炭素数1~3の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル等が挙げられる。フラックス付着性の点から、R~Rは好ましくは水素原子である。
【0018】
式(I)中、pは、0または1の整数である。
分散性の観点から、pは0の整数であることが好ましい。すなわち、一実施形態において、アミン化合物Iはモノアミンである。
【0019】
式(I)中、Lは、炭素数1~8(1、2、3、4、5、6、7、または8)の炭化水素基を表す。Lは、分散性の点から、好ましくは炭素数1~6(より好ましくは炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数3~4)の直鎖状又は分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基であり、より好ましくは炭素数1~8(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数3~4)の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1~8(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数2~5、さらに好ましくは炭素数3~4)の直鎖状アルキレン基である。
【0020】
式(I)中、AおよびAはそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基を表す。
なお、Aおよび/またはAが単結合である場合は、R、Rが直接窒素原子(N)に結合していることを意味する。
式(I)中、Aはポリオキシアルキレン基を表す。
【0021】
~Aにおけるポリオキシアルキレン基としては、特に制限されないが、HLBが上記範囲に含まれるものが好ましい。例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシイソプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシ1,2-ブチレン、ポリオキシ2,3-ブチレン、ポリオキシペンチレン、ポリオキシオクチレンなどが挙げられる。
、A、およびA(A~A)におけるポリオキシアルキレン基は、好ましくは、炭素数1~6(より好ましくは炭素数1~4、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキレンオキサイドの重合鎖から構成される2価数の基であり、より好ましくは炭素数2~3のアルキレンオキサイドの重合鎖から構成される基(すなわち、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)であり、さらに好ましくはポリオキシエチレンである。
~Aのポリオキシアルキレン基はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、A~Aのポリオキシアルキレン基は、炭素数が異なるアルキレンオキサイドがランダムまたはブロックに結合してなるものであってもよい。例えば、A~Aのポリオキシアルキレン基は、エチレンオキサイド(EO)基とプロピレンオキサイド(PO)基とが、ランダムまたはブロックに結合してなるものであってもよい。
~Aのポリオキシアルキレン基を構成するアルキレンオキサイド単位の繰り返し数(平均付加モル数)は、HLBが上記範囲に含まれる限り特に制限されないが、一例をあげると、A~Aのポリオキシアルキレン基を構成するアルキレンオキサイド単位の繰り返し数(平均付加モル数)の合計が、1~45の範囲(好ましくは5~30、より好ましくは10~30)である。
【0022】
一実施形態において、式(I)中、pは1であり、A~Aはいずれもポリオキシアルキレン基である。かかる場合には、分散性に優れる。
一実施形態において、式(I)中、pは0であり、Aは単結合であり、Aはポリオキシアルキレン基である。かかる場合には、分散性に優れる。
一実施形態において、式(I)中、pは0であり、AおよびAはいずれもポリオキシアルキレン基である。かかる場合には、分散性に優れる。
【0023】
一実施形態において、アミン化合物Iは、上記一般式(I)において
は、炭素数8~18のアルキル基またはアルケニル基であり、
~Rは水素原子であり、
およびAはそれぞれ独立して単結合またはポリオキシアルキレン基であり、
はポリオキシアルキレン基であり、
Lは炭素数1~8のアルキレン基であり、
pは0または1の整数である、化合物である。
当該実施形態において、R、A~A、L、およびpの好ましい態様は上記に記載したとおりである。
【0024】
一実施形態において、アミン化合物Iは下記一般式(II)で表される。
【化3】
【0025】
式(II)中、R~R、L、およびpの定義および好ましい態様は式(I)と同様である。
式(II)中、m1およびm2はそれぞれ独立して0以上のエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
式(II)中、m3は、0を超えるエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
m1~m3の上限値は特に制限されないが、それぞれ独立して、例えば15以下、10以下、8以下、または7以下であり得る。m1~m3はアミン化合物IのHLBが所定の範囲となるように設定されることが好ましい。
一例をあげると、m1およびm2はそれぞれ0以上15以下(好ましくは0以上6以下)の数であり、m3は0以上15以下(好ましくは0を超え6以下)の数である。
例えば、m1+m2+m3は0を超え45以下(好ましくは5以上30以下の数、より好ましくは10以上30以下)である。
【0026】
上記形態のアミン化合物Iをそのまま分散剤(特に切粉分散剤)として用いることができる。あるいは、上記形態のアミン化合物Iを他の分散剤成分とともに混合したものを分散剤(特に切粉分散剤)として用いることができる。
【0027】
一実施形態において、分散剤は、上記形態のアミン化合物Iと、他の分散剤成分とを含む。他の分散剤成分としては、特に制限されないがイミド化合物等が挙げられる。当該形態において、分散剤におけるアミン化合物Iおよび他の分散剤成分の含有量は特に限定されない。例えば、他の分散剤成分としてイミド化合物を含む場合、分散剤におけるアミン化合物Iとイミド化合物との配合(質量比)は、1:5~2:1の範囲(好ましくは1:3~1:1の範囲)であり得る。
【0028】
2.水溶性金属加工油組成物
本発明の一形態は、上記形態の分散剤と水溶性金属加工油剤(以下「金属加工油剤」ともいう)とを含む、水溶性金属加工油組成物(以下「金属加工油組成物」ともいう)に関する。分散剤の具体的態様は、上記「1.分散剤」において記載したものと同様である。金属加工油組成物は、場合によって、配合された成分の少なくとも一部が変性または反応等することで生じる別の化合物を含有していてもよく、このような形態も本発明の金属加工油組成物に包含されるものとする。分散剤を金属加工油剤とともに配合することにより、分散性(特に切粉分散性)に優れる金属加工油組成物が得られる。
【0029】
分散剤は、金属加工油組成物中のアミン化合物Iの含有量が、水溶性金属加工油組成物の合計質量100質量%に対して、0.1質量%以上の範囲で含まれることが好ましい。金属加工油組成物中のアミン化合物Iの含有量は、より好ましくは0.1~15質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.5~10質量%の範囲であり、特に好ましくは1~5質量%の範囲である。
また、金属加工油組成物中のアミン化合物Iの含有量は、水溶性金属加工油剤のうちの水を除く成分の合計質量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.1~16.5質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5~11質量部の範囲であり、特に好ましくは1~5.5質量部の範囲である。
【0030】
(水溶性金属加工油剤)
水溶性金属加工油剤の組成は特に制限されず、従来公知の水溶性金属加工油剤を用いることができる。例えば、水溶性金属加工油剤は、従来の水溶性金属加工油剤に用いられている成分、例えば、脂肪酸類、アミン類(ただし上記式(I)で表されるアミン化合物Iを除く)、油性剤、界面活性剤、消泡剤、抗菌剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、極圧剤、水、基油、等から選択される1種または複数の成分を任意に選択して配合することができる。
【0031】
(脂肪酸類)
脂肪酸としては、例えば、脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪酸のダイマー酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、及び、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸の混合物である、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、米糠油脂肪酸、綿実油脂肪酸等を用いてもよい。
前記脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0032】
前記ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等が挙げられる。
前記ヒドロキシ脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0033】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0034】
前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸を構成するヒドロキシ不飽和脂肪酸としては、リシノール酸(12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノン酸)等が挙げられる。また、ひまし油等のリシノール酸を含む脂肪酸混合物を用いてもよい。
そして、前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸や、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸のアルコール性水酸基とモノカルボン酸とを脱水縮合した縮合脂肪酸等が挙げられる。
【0035】
脂肪酸類の含有量は、特に制限されない。一実施形態において、脂肪酸類の含有量は、金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、好ましくは5~70質量%、より好ましくは7~60質量%、更に好ましくは10~50質量%である。また、一実施形態において、脂肪酸類の含有量は、金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは2~60質量%、より好ましくは3~50質量%、更に好ましくは5~40質量%である。
【0036】
(アミン類)
水溶性金属加工油剤は、上記式(I)で表されるアミン化合物I以外のアミン類を含んでもよい。
アミン類としては、一分子中にアミノ窒素原子を1つ有するモノアミン、一分子中にアミノ窒素原子を2つ有するジアミン、及び、一分子中にアミノ窒素原子を3つ以上有するポリアミンのいずれであってもよい。中でも、抗菌性、防錆性、及び加工性等をより向上させた金属加工液となり得る水溶性金属加工油剤とする観点から、モノアミンが好ましい。
【0037】
モノアミンとしては、置換基Rの個数によって、下記式(i)で表される第1級アミン、下記式(ii)で表される第2級アミン、及び下記式(iii)で表される第3級アミンに分類される。
【化4】
【0038】
上記式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示す。複数のRは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。該置換基としては、アルキル基、水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、フェニル基、及びベンジル基等が挙げられる。
【0039】
置換基Rとして選択し得る、前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
また、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~10、より更に好ましくは1~6、特に好ましくは1~4である。
【0040】
置換基Rとして選択し得る、前記水酸基を有するアルキル基としては、上述のアルキル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基に置換された基が挙げられる。
当該基を構成するアルキル基も、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
前記水酸基を有するアルキル基の炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~10、より更に好ましくは1~6、特に好ましくは2~4である。
【0041】
置換基Rとして選択し得る、前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロぺニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
当該アルケニル基は、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
また、当該アルケニル基の炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~10、より更に好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。
【0042】
置換基Rとして選択し得る、前記シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0043】
また、アミン類として、水酸基を有するアルキル基を少なくとも1つ有するアルカノールアミンを含んでもよい。
アルカノールアミンとしては、前記式(i)中のRが水酸基を有するアルキル基である第1級アルカノールアミン、前記式(ii)中のRの少なくとも1つが水酸基を有するアルキル基である第2級アルカノールアミン、及び、前記式(iii)中のRの少なくとも1つが水酸基を有するアルキル基である第3級アルカノールアミンが挙げられる。
【0044】
第1級アルカノールアミンとしては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0045】
第2級アルカノールアミンとしては、例えば、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-オクチルエタノールアミン、N-ステアリルエタノールアミン、N-オレイルエタノールアミン、N-シクロヘキシルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-ベンジルエタノールアミン等のモノエタノールアミン;N-メチルプロパノールアミン、N-エチルプロパノールアミン、N-プロピルプロパノールアミン、N-ブチルプロパノールアミン、N-オクチルプロパノールアミン、N-ステアリルプロパノールアミン、N-オレイルプロパノールアミン、N-シクロヘキシルプロパノールアミン、N-フェニルプロパノールアミン、N-ベンジルプロパノールアミン等のモノプロパノールアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等が挙げられる。
【0046】
第3級アルカノールアミンとしては、例えば、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミン、N-ジプロピルエタノールアミン、N-ジブチルエタノールアミン、N-ジオクチルエタノールアミン、N-ジステアリルエタノールアミン、N-ジオレイルエタノールアミン、N-ジシクロヘキシルエタノールアミン、N-ジフェニルエタノールアミン、N-ジベンジルエタノールアミン等のモノエタノールアミン;N-ジメチルプロパノールアミン、N-ジエチルプロパノールアミン、N-ジプロピルプロパノールアミン、N-ジブチルプロパノールアミン、N-ジオクチルプロパノールアミン、N-ジステアリルプロパノールアミン、N-ジオレイルプロパノールアミン、N-ジシクロヘキシルプロパノールアミン、N-ジフェニルプロパノールアミン、N-ジベンジルプロパノールアミン等のモノプロパノールアミン;N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-オクチルジエタノールアミン、N-ステアリルジエタノールアミン、N-オレイルジエタノールアミン、N-シクロヘキシルジエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-ベンジルジエタノールアミン等のジエタノールアミン;N-メチルジプロパノールアミン、N-エチルジプロパノールアミン、N-プロピルジプロパノールアミン、N-ブチルジプロパノールアミン、N-オクチルジプロパノールアミン、N-ステアリルジプロパノールアミン、N-オレイルジプロパノールアミン、N-シクロヘキシルジプロパノールアミン、N-フェニルジプロパノールアミン、N-ベンジルジプロパノールアミン等のジプロパノールアミン;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられる。
【0047】
脂環式アミンを含むことが好ましい。
脂環式アミンとしては、前記式(i)中のRがシクロアルキル基である第1級脂環式アミン、前記式(ii)中のRの少なくとも1つがシクロアルキル基である第2級脂環式アミン、及び、前記式(iii)中のRの少なくとも1つがシクロアルキル基である第3級脂環式アミンが挙げられる。
【0048】
第1級脂環式アミンとしては、例えば、N-シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
第2級脂環式アミンとしては、例えば、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-プロピルシクロヘキシルアミン、N-オレイルシクロヘキシルアミン等のモノシクロヘキシルアミン;N-シクロヘキシルエタノールアミン、N-シクロヘキシルプロパノールアミン等のモノシクロヘキシルアルカノールアミン;N-ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
第3級脂環式アミンとしては、例えば、N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N-ジプロピルシクロヘキシルアミン、N-ジオレイルシクロヘキシルアミン、N-ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルモノシクロヘキシルアミン;N-シクロヘキシルジエタノールアミン、N-シクロヘキシルジプロパノールアミン等のモノシクロヘキシルジアルカノールアミン;N-メチルジシクロヘキシルアミン、N-エチルジシクロヘキシルアミン、N-プロピルジシクロヘキシルアミン、N-オレイルジシクロヘキシルアミン等のモノアルキルジシクロヘキシルアミン;N-ジシクロヘキシルエタノールアミン、N-ジシクロヘキシルプロパノールアミン等のジシクロヘキシルアルカノールアミン;トリシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0049】
アミン類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アミン類の含有量は、特に制限されない。一実施形態において、アミン類の含有量は、金属加工油剤の水を除く全量(100質量%)基準で、好ましくは3~70質量%、より好ましくは5~60質量%、更に好ましくは7~50質量%である。また、一実施形態において、アミン類の含有量は、金属加工油剤の全量(100質量%)基準で、好ましくは2~40質量%、より好ましくは4~35質量%、更に好ましくは6~30質量%である。
(油性剤)
油性剤としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
油性剤の配合量は、特に制限されないが、金属加工油剤の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0050】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、及びこれらの塩等がある。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などの四級アンモニウム塩等がある。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのエーテル類や、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのエステル類、脂肪酸アルカノールアミドのようなアミド類が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン系としてアルキルベタインなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下の範囲であり、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0051】
(乳化助剤)
乳化助剤としては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等の不飽和脂肪酸エステル;2-フェノキシエタノール、2-フェニルエチルアルコールの芳香族アルコール;等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
乳化助剤の好ましい配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.001質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0052】
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、エステル系化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
消泡剤の好ましい配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.001質量%以上5質量%以下の範囲である。
【0053】
(抗菌剤)
抗菌剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系抗菌剤、ベンズイミダゾール系抗菌剤、ベンゾチアゾリン系抗菌剤、チアジアゾール系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
抗菌剤の好ましい配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下の範囲である。
【0054】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤、さらにモリブデン系酸化防止剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
酸化防止剤の配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下の範囲である。
【0055】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、およびチアジアゾール等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
金属不活性化剤の配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、0.01質量%以上3質量%以下の範囲である。
【0056】
(極圧剤)
極圧剤としては、例えば、硫黄系、リン系、ホウ素系の極圧剤が挙げられる。硫黄系極圧剤としては、硫化オレフィン、硫化油脂、硫化エステル、チオカーボネート類、ジチオカーバメート類、ポリスルフィド類などが挙げられる。リン系極圧剤としては、ジチオリン酸亜鉛、ホスファイト、アルキルまたはアリールアシッドホスフェートあるいはそのアミン塩、トリアルキルまたはトリアリールホスフェートなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。
極圧剤の配合量は、特に制限されないが、例えば、金属加工油剤の全質量に対して、5質量%以下である。
【0057】
(水)
金属加工油剤は、保管時の安全性を向上させるために、水を配合してもよい。水としては、特に制限されず、蒸留水のような高純度の水を使用してもよいが、水道水を使用してもよい。
水は、金属加工油剤の全質量に対して、0~20質量%であることが好ましい。
【0058】
(基油)
基油としては、一般に水溶性金属加工油の基油として用いられている鉱油または合成油であればよく、特に制限はない。
鉱油としては、例えばパラフィン基系原油、中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、またはこれを常法にしたがって精製することによって得られる精製油、例えば、溶剤精製油、水添精製油、脱蝋処理油、白土処理油などを挙げることができる。
合成油としては、例えば、ポリα-オレフィン、α-オレフィンコポリマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。合成油の中では、ポリα-オレフィン、α-オレフィンコポリマーが好適である。
これらの基油は、それぞれ単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができ、鉱油と合成油を組み合わせて使用してもよい。
金属加工油剤における基油の含有量は特に制限されないが、金属加工油剤の全質量に対して、例えば1~20質量%である。
【0059】
金属加工油組成物は、上記分散剤および金属加工油剤を混合することにより製造される。例えば、金属加工油組成物は、金属加工油剤に対して分散剤を添加することにより製造され得る。
あるいは、金属加工油組成物は、上記分散剤を構成する成分および金属加工油剤を構成する成分を混合することにより製造されてもよい。各成分はいかなる順序およびいかなる方法で混合されてもよく、その手法は特に制限されない。
【0060】
3.金属加工液
本発明の一形態は、上記形態の分散剤と、水溶性金属加工油剤と、希釈水とを含む金属加工液に関する。分散剤の具体的態様は、上記「1.分散剤」において記載したものと同様であり、「水溶性金属加工油剤」の具体的態様は、上記「2.金属加工油組成物」において記載したものと同様である。
希釈水としては、特に制限されず、蒸留水のような高純度の水を使用してもよいが、水道水を使用してもよい
【0061】
分散剤と、水溶性金属加工油剤と、希釈水は、いかなる方法で混合されてもよく、配合の順序およびその手法は限定されない。
【0062】
いくつかの形態において、金属加工液は、分散剤と水溶性金属加工油剤とを混合して、金属加工油組成物を調製し、次いで当該組成物に希釈水を添加することにより調製される。当該形態において、金属加工油組成物は、上記分散剤を構成する成分および金属加工油剤を構成する成分を混合することにより製造されてもよい。
【0063】
いくつかの形態において、金属加工液は、水溶性金属加工油剤に希釈水を添加して金属加工油剤の希釈液を調製し、次いで当該希釈液に分散剤を添加して、金属加工液を得てもよい。当該形態において、分散剤が添加される金属加工油剤の希釈液は、金属加工を行う前のものであっても、金属加工中であっても、金属加工後のものであってもよい。
【0064】
希釈水の量は、その使用目的に応じて選択される。
金属加工液(希釈液)は、水溶性金属加工油剤の濃度が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上となるように希釈することが望ましい。すなわち、一実施形態の金属加工液における水溶性金属加工油組成物の割合は好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。下限値以上とすることで加工性を向上させることができる。一方、希釈濃度の上限は特に制限されないが、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下となるように希釈することが望ましい。すなわち、一実施形態の金属加工液における水溶性金属加工油組成物の割合は好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上限値以下とすることで加工後の装置のベタツキを抑制することができる。
【0065】
本発明において、水溶性金属加工油剤および水溶性金属加工油組成物は水への溶解性に優れるものであるが、金属加工油剤や組成物(原液)であっても金属加工液(希釈液)であってもすべての配合成分が均一に溶解することを必須とするものではない。従って、エマルジョンのような分散形態であってもよい。
【0066】
4.金属加工方法
本発明の一形態は、金属加工方法に関する。いくつかの形態において、金属加工方法は、上記形態の水溶性金属加工油組成物または上記形態の金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含む。「水溶性金属加工油剤」の具体的態様は、上記「2.金属加工油組成物」において記載したものと同様であり、「金属加工液」の具体的態様は、上記「3.金属加工液」において記載したものと同様である。上記形態の水溶性金属加工油組成物または金属加工液は、分散性(特に切粉分散性)に優れるため、これらを用いて金属加工を行うことにより、金属加工時の切粉の凝集による油泥状不溶解物が発生を抑制できる。
【0067】
いくつかの形態において、金属加工方法は、水溶性金属加工油剤と希釈水とを含む金属加工液を用いて金属材を加工する工程を含み、前記加工の工程前、工程中、および工程後の少なくとも一つの段階で、金属加工液に分散剤を添加することを特徴とする方法である。
本実施形態の分散剤は、金属加工油剤を希釈した後の金属加工液に添加することにより、金属加工液に分散性(特に切粉分散性)を付与できる。したがって、従来必須であった、金属加工油剤自体の設計変更を行わずとも、分散性を向上させることができる。
【0068】
金属加工の種類は特に制限されず、例えば研削加工、切削加工、打ち抜き加工、研磨、絞り、抽伸、圧延等の各種の金属加工が挙げられる。これらの中では、切削加工、研削加工が好ましく、切削加工がより好ましい。切削加工としては、旋削加工、平削り加工、穴あけ加工、フライス削り加工等が挙げられる。研削加工としては、円筒研削加工、平面研削加工等が挙げられる。
【0069】
金属材は、特に制限されず、ステンレス鋼、合金鋼及び炭素鋼等の鉄系材料、アルミニウム合金、銅合金等が挙げられる。
【0070】
分散剤は、分散性の観点から、アミン化合物Iが、金属加工液の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.005質量部以上(より好ましくは0.025質量部以上、さらに好ましくは0.05質量部以上)の量となるように添加される。分散剤は、アミン化合物Iが、金属加工液の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.75質量部以下(より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.25質量部以下)の量となるように添加される。分散剤は、分散性などの点から、アミン化合物Iが、金属加工液の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.005~0.75質量部、より好ましくは0.025~0.5質量部、さらに好ましくは0.05~0.25質量部の範囲の量となるように、添加される。
【0071】
分散剤は、分散性の観点から、アミン化合物Iが、金属加工液に含まれる水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上(より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上)の量となるように添加される。分散剤は、アミン化合物Iが、金属加工液に含まれる水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは16.5質量部以下(より好ましくは11質量部以下、さらに好ましくは5.5質量部以下)の量となるように添加される。分散剤は、分散性の点から、アミン化合物Iが、金属加工液に含まれる水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.1~16.5質量部、さらに好ましくは0.5~11質量部、特に好ましくは1~5.5質量部の範囲の量となるように、添加される。
【0072】
5.分散性の向上方法 本発明の一形態は、水溶性金属加工油組成物または金属加工液の分散性を向上方法に関する。本形態の方法は、上記形態の水溶性金属加工油剤、金属加工に用いる前の金属加工液、または金属加工に用いた後の金属加工液に分散剤を添加する工程を含む。一実施形態において、前記分散性は、切粉分散性である。
分散剤は、分散性(特に切粉分散性)に優れるため、水溶性金属加工油剤、金属加工に用いる前の金属加工液、または金属加工に用いた後の金属加工液に添加することで、金属加工時に発生した切粉の凝集を抑制でき、これにより油泥状不溶解物が発生を抑制できる。
【0073】
分散剤は、分散性の観点からアミン化合物Iが、水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上(より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上)の量となるように添加される。分散剤は、アミン化合物Iが、水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは16.5質量部以下(より好ましくは11質量部以下、さらに好ましくは5.5質量部以下)の量となるように添加される。分散剤は、分散性の点から、アミン化合物Iが、水溶性金属加工油剤の水を除く成分の合計質量(100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.1~16.5質量部、さらに好ましくは0.5~11質量部、特に好ましくは1~5.5質量部の範囲の量となるように、添加される。
【実施例
【0074】
以下、本発明について実施例を参照して詳述するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。本明細書において「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り質量パーセントを示す。
【0075】
実施例および比較例で用いた各原料の各物性評価は、以下に示す方法で行った。
(1)40℃動粘度
JIS K2283:2000に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて、40℃における動粘度(40℃動粘度)を測定した。
(2)HLB
グリフィン法より算出した。
【0076】
[実施例1~10、比較例1~4:切削油組成物]
水溶性金属加工油剤として水溶性切削油剤を使用し、水溶性切削油剤と分散剤とを含む水溶性金属加工油組成物(切削油組成物)を調製した。具体的には、下記表1に示す水溶性切削油剤の各構成成分および分散剤を混合して、実施例および比較例の切削油組成物(原液)を調製し、以下の評価を行った。表1中、分散剤の括弧書きで示した数値は、水溶性切削油剤のうちの水を除く成分の合計質量(100質量部)に対する、分散剤(アミン化合物A1~A7,R1~R3)の含有量(質量部)を示す。
結果を表1に示す。
【0077】
[評価1]
(1)グラファイト分散性
各切削油組成物(原液)をイオン交換水で20倍に希釈して切削油剤希釈液(5質量%希釈液)を得、100mLにメスアップし、グラファイト(和光純薬製、粒度(45μm通過分):95%以上、乾燥残量(105℃)0.4%以上)) 3gを添加した。得られた切削油剤希釈液を30秒間振とうし、振とう停止後グラファイトが凝集するまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。なお、試験は室温にて実施した。
(評価基準)
A:6分以上、グラファイトが凝集しない
B:2分以上6分未満の時間、グラファイトが凝集しない
C:30秒以上2分未満の時間、グラファイトが凝集しない
D:30秒未満の時間でグラファイトが凝集した

グラファイトは、粒径が均一であり、かつ粒径も非常に小さいため表面積が大きく、金属加工液中に分散する粒子の中でも特に凝集しやすい粒子である。そのため、グラファイトを用いた分散性試験は凝集しやすい粒子を用いた最も厳しい環境での試験であるといえる。グラファイトの分散性の優れるものほど、切粉などの粒子(より粒径の大きな粒子)の分散性に優れるといえ、上記のグラファイト分散性の評価結果から切粉分散性を評価することが可能である。
【0078】
(2)アルミニウム変色試験
切削油組成物(原液)を水で20倍に希釈して切削油剤希釈液(5質量%希釈液)を得、100mLにメスアップした。得られた切削油剤希釈液に、試験片(アルミニウム合金 A6061/ADC12)を30℃で24時間、さらに60℃で2時間半浸漬させた後、試験片の外観を観察して評価した。
(評価基準)
A:変色なし
B:変色あり
【0079】
【表1】
【0080】
なお、上記表1で使用した成分は、以下のとおりである。
(水溶性切削油剤)
脂肪酸混合物:ドデカン二酸、ネオデカン酸、トール油脂肪酸及びリシノール酸重合脂肪酸(ひまし油重合脂肪酸)の混合脂肪酸(酸価=32.3mgKOH/g、水酸基価=1.1mgKOH/g)
アミン混合物:下記アミン1、アミン2、アミン3、アミン4、およびアミン5の混合物
アミン1:N-メチルエタノールアミン
アミン2:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール
アミン3:N-メチルジエタノールアミン
アミン4:N-メチルジシクロヘキシルアミン
アミン5:N-メチルジシクロヘキシルアミン
非イオン性界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
アルミニウム変色防止剤(アニオン性界面活性剤):ポリオキシエチレンC12-C15アルキルエーテルリン酸
金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール
乳化助剤:オレイン酸メチル
基油:パラフィン系鉱油(40℃動粘度:7.117mm/s)
BIT系抗菌剤:1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン
ピリジン系抗菌剤:2-メルカプトピリジン-N-オキサイドナトリウム
消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0081】
(分散剤)
表1中の、アミン化合物A1~A7およびアミン化合物R1~R3の構造を以下の表Aに示す。アミン化合物A1~A7は本発明のアミン化合物Iであり、アミン化合物R1~R3は比較化合物である。
【化5】
【表A】
【0082】
表1より、一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを分散剤として配合した実施例1~10の切削油組成物を希釈して得られた切削油剤希釈液は、グラファイトの分散性に優れ、しかも、アミン化合物Iの使用により生じやすいアルミニウムの変色も確認されなかった。したがって、一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを分散剤として配合した金属加工油組成物およびこれを水で希釈した金属加工液は、金属加工の際に、アルミニウムの変色を防止しつつ、優れた分散性(特に切粉分散性)を有することが期待される。
これに対して、一般式(I)のアミン化合物Iを使用していない比較例1やHLBが9未満である一般式(I)のアミン化合物Iを分散剤として配合した比較例2~4は、グラファイトの分散性に劣っていた。
【0083】
[実施例11~17、比較例5~9:分散剤の後添加]
水溶性金属加工油剤として、上記表1に示す比較例1の水溶性切削油剤の各構成成分を混合して調製した水溶性切削油剤を用いた。この水溶性切削油剤をイオン交換水で20倍に希釈して切削油剤希釈液(5質量%希釈液)を得た。
分散剤として、上記表Aに示されるアミン化合物A1~A7およびアミン化合物R1~R3、ならびに、下記表Bに示されるジアミン化合物であるアミン化合物R4~R5を用いた。アミン化合物A1~A7は本発明のアミン化合物Iである。アミン化合物R1~R3およびアミン化合物R4~R5は比較化合物である。
【表B】
これらの分散剤および切削油剤希釈液を用いて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
[評価2]
(1)グラファイト分散性
切削油剤希釈液を100mLにメスアップし、グラファイト(和光純薬製、粒度(45μm通過分):95%以上、乾燥残量(105℃)0.4%以上) 3gを添加した。これに、表2に示す分散剤を添加し、30秒間振とうした。振とう停止後グラファイトが凝集するまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。なお、試験は室温にて実施した。
(評価基準)
A:6分以上、グラファイトが凝集しない
B:2分以上6分未満の時間、グラファイトが凝集しない
C:30秒以上2分未満の時間、グラファイトが凝集しない
D:30秒未満の時間でグラファイトが凝集した
【0085】
(2)アルミニウム変色試験
切削油剤希釈液を100mLにメスアップし、次いで、表2に示す分散剤を添加した。これに、試験片(アルミニウム合金 A6061/ADC12)を30℃で24時間、さらに60℃で2時間半浸漬させた後、試験片の外観を観察して評価した。
(評価基準)
A:変色なし
B:変色あり
【表2】
【0086】
表2より、一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iを分散剤として後添加した実施例11~17は、グラファイトの分散性に優れ、しかも、アミン化合物Iを用いることで生じやすいアルミニウムの変色も確認されなかった。したがって、一般式(I)で表され、HLBが9以上であるアミン化合物Iは、金属加工の際に、金属加工液に少量を後添加することで、アルミニウムの変色を抑制しつつ、優れた分散性(特に切粉分散性)を発揮することが期待される。
これに対して、一般式(I)のアミン化合物Iを使用していない比較例1やHLBが9未満である一般式(I)のアミン化合物Iを分散剤として後添加した比較例5~7は、グラファイトの分散性に劣っていた。
また、特許文献1(特開平11-80769号公報)に記載されるジアミンのアルキレンオキシド付加物(アミン化合物R4、R5)を分散剤として後添加した比較例8~9は、グラファイトの分散性に劣っていた。
【0087】
本発明の範囲は以上の説明に拘束されることはなく、上記例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の分散剤は、水溶性金属加工油剤または金属加工液に添加することで、良好な分散性を付与できることから、切粉の発生を伴う金属加工に好適に用いられる。