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特許7566714画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/11 20170101AFI20241007BHJP
   A22C 21/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G06T7/11
A22C21/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021168154
(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公開番号】P2023058253
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】今村 光
(72)【発明者】
【氏名】徳本 大
(72)【発明者】
【氏名】田中 基雅
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/11
A22C 5/00 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得する画像取得部と、
前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定する位置特定部と、
前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を特定する境界特定部と、
前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて決定する軌道決定部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記軌道決定部は、前記境界から所定の距離だけ離れた前記軌道を設定する、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得する画像取得機能と、
前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定する位置特定機能と、
前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を特定する境界特定機能と、
前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて決定する軌道決定機能と、
をコンピュータに実現させる画像処理プログラム。
【請求項4】
切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を画像取得部又は画像取得機能により取得し、
前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定し、
前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を境界特定部又は境界特定機能により特定し、
前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて軌道決定部又は軌道決定機能により決定する、
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等において取り扱われる食品には、余分な要素が含まれていることがある。例えば、食品が鶏もも肉である場合、皮、脂肪、筋等が余分な要素である。鶏もも肉から皮、脂肪、筋等を取り除き、鶏もも肉を整形する作業は、現在、全ての工程が人の手で行われている。ところが、この作業は、刃物を使用する必要があるため、危険を伴う。また、この作業は、低温下で行われる必要があるため、作業員にかかる負担が大きい。さらに、近年、人手不足の問題も顕在化してきている。これらの問題を解決するために開発された装置として、例えば、非特許文献1に開示されている装置がある。この装置は、ウォータージェットを使用して食品を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】「You Tube(登録商標) JBT - Protein - Europe, Middle East and Africa DSI 800s-PL」、[令和2年6月24日検索]、インターネット<URL:https://www.youtube.com/watch?v=kGfcRU7QpQw>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した装置は、鶏もも肉等、形状、色等にばらつきを有する食品から切り取る必要がある要素を切り取る作業を好適に実行し得ないことがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ばらつきを有する食品から切り取る必要がある要素を好適に切り取る作業を好適に支援することができる画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得する画像取得部と、前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定する位置特定部と、前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を特定する境界特定部と、前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて決定する軌道決定部と、を備える画像処理装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上記の画像処理装置であって、前記軌道決定部が、前記境界から所定の距離だけ離れた前記軌道を設定する。
【0010】
本発明の一態様は、切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得する画像取得機能と、前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定する位置特定機能と、前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を特定する境界特定機能と、前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて決定する軌道決定機能と、をコンピュータに実現させる画像処理プログラムである。
【0011】
本発明の一態様は、切り取る必要がある少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を画像取得部又は画像取得機能により取得し、前記画像に所定の図形を重畳し、少なくとも二つの前記要素の相対的な位置関係を利用して前記被写体における前記要素の位置を特定し、前記画像に画像処理を施すことにより前記画像上における前記要素と前記要素以外の部分との境界を境界特定部又は境界特定機能により特定し、前記要素を前記被写体から切り取る際の刃の軌道を前記境界に基づいて軌道決定部又は軌道決定機能により決定する、画像処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ばらつきを有する食品から切り取る必要がある要素を好適に切り取る作業を好適に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る画像処理装置と、撮影装置と、照明と、食品加工ラインとの一例を示す図である。
図3図2に示した鶏もも肉及びその周辺を上から見た場合の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る画像処理装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る画像処理装置により特定された第一の皮、第二の皮、第三の皮又は筋と赤身との境界の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る画像処理装置により特定された鶏もも肉の第一の皮の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る鶏もも肉を描出している画像に重畳された十二個の矩形の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る画像処理装置により特定された第一の皮と赤身との境界、第二皮と赤身との境界及び筋と赤身との境界の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る画像処理装置により決定された第一の皮を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道と、第二の皮を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道と、筋を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1から図10を参照しながら実施形態に係る画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法について説明する。まず、図1から図3を参照しながら実施形態に係る画像処理装置を構成しているハードウェア及び画像処理装置に付帯しているハードウェアについて説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。図1に示すように、画像処理装置10は、プロセッサ11と、主記憶装置12と、通信インターフェース13と、補助記憶装置14と、入出力装置15と、バス16とを備える。
【0016】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、画像処理プログラムを読み出して実行し、図4に示した機能を実現させる。また、プロセッサ11は、画像処理プログラム以外のプログラムを読み出して実行し、画像処理装置10が有する各機能を実現させる上で必要な機能を実現させてもよい。
【0017】
主記憶装置12は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、プロセッサ11により読み出されて実行される画像処理プログラムその他プログラムを予め記憶している。
【0018】
通信インターフェース13は、ネットワークを介して撮影装置154、制御装置200その他の機器と通信を実行するためのインターフェース回路である。通信インターフェース13は、例えば、図1及び図2に示した撮影装置154及び制御装置200が接続される。また、ここで言うネットワークは、例えば、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、インターネット、イントラネットである。
【0019】
補助記憶装置14は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid State Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
【0020】
入出力装置15は、例えば、入出力ポート(Input/Output Port)である。入出力装置15は、例えば、図1に示したマウス151、キーボード152及びディスプレイ153が接続される。図2は、実施形態に係る画像処理装置と、撮影装置と、照明と、食品加工ラインとの一例を示す図である。図3は、図2に示した鶏もも肉及びその周辺を上から見た場合の一例を示す図である。また、制御装置200は、照明155、照明156、照明157及び照明158が接続され、これら四つの照明を制御する。
【0021】
マウス151及びキーボード152は、例えば、画像処理装置10を操作するために必要なデータを入力する作業に使用される。
【0022】
ディスプレイ153は、例えば、液晶ディスプレイである。ディスプレイ153は、例えば、画像処理装置10のグラフィカルユーザインターフェース(GUI:Graphical User Interface)を表示する。
【0023】
撮影装置154は、被写体をカラーで撮影するカメラである。被写体は、例えば、図2に示した鶏もも肉Mである。鶏もも肉Mは、食品加工ライン20を構成しているベルトコンベア201により搬送され、光電センサ202、光電センサ203及び光電センサ204により順次検知される。ベルトコンベア201、光電センサ202、光電センサ203及び光電センサ204は、制御装置200により制御されている。撮影装置154は、例えば、図2に示すように、鶏もも肉Mがベルトコンベア201により光電センサ203と光電センサ204との間に搬送された際に上方から鶏もも肉Mを撮影可能な位置に設置されている。
【0024】
照明155、照明156、照明157及び照明158は、白色光等の光を被写体に照射する装置であり、例えば、LED(light emitting diode)を含む。照明155は、図2に示すように、ベルトコンベア201の上方に設置されており、撮影装置154よりもベルトコンベア201の上流側から鶏もも肉Mに光を照射する。照明156は、図2に示すように、ベルトコンベア201の上方に設置されており、撮影装置154よりもベルトコンベア201の下流側から鶏もも肉Mに光を照射する。照明157及び照明158は、図3に示すように、鶏もも肉Mがベルトコンベア201により搬送される軌道の側方に設置されており、撮影装置154により撮影可能な位置までベルトコンベア201により搬送されてきた鶏もも肉Mに側方から光を照射する。
【0025】
バス16は、プロセッサ11、主記憶装置12、通信インターフェース13、補助記憶装置14及び入出力装置15を互いにデータの送受信が可能なように接続している。
【0026】
次に、図4から図9を参照しながら実施形態に係る画像処理装置が実行する処理について説明する。図4は、実施形態に係る画像処理装置のソフトウェア構成の一例を示す図である。図4に示すように、画像処理装置10は、画像取得部101と、境界特定部102と、位置特定部103と、軌道決定部104とを備える。
【0027】
画像取得部101は、切り取る必要がある要素を含む被写体を描出している画像を取得する。例えば、画像取得部101は、少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得する。当該画像は、例えば、撮影装置154により撮影され、鶏もも肉Mを描出しているカラー画像である。また、当該要素は、例えば、被写体が鶏もも肉Mである場合、筋、第一の皮、第二の皮及び第三の皮である。
【0028】
筋は、鶏の足先から太腿に向かって骨に沿って切り込みを入れて肉を開いた場合に、当該肉の足先に近い部分に付着している白色の紐状の物体である。
【0029】
第一の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋から時計周りに辿った場合に、一番目に位置する皮である。或いは、第一の皮は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋をから時計周りに辿った場合に、三番目に位置する皮である。つまり、第一の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉である場合及び鶏もも肉Mが鶏の右足の肉である場合のいずれであっても、筋に対する相対的な位置が一意に定まっている。また、第一の皮は、鶏の臀部の皮である。
【0030】
第二の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋から時計周りに辿った場合に、二番目に位置する皮である。或いは、第二の皮は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋をから時計周りに辿った場合に、二番目に位置する皮である。つまり、第二の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉である場合及び鶏もも肉Mが鶏の右足の肉である場合のいずれであっても、筋に対する相対的な位置が一意に定まっている。また、第二の皮は、鶏の背中の皮である。
【0031】
第三の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋から時計周りに辿った場合に、三番目に位置する皮である。或いは、第三の皮は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、骨が付着していた側から見た鶏もも肉Mの外周を筋をから時計周りに辿った場合に、一番目に位置する皮である。つまり、第三の皮は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉である場合及び鶏もも肉Mが鶏の右足の肉である場合のいずれであっても、筋に対する相対的な位置が一意に定まっている。また、第三の皮は、鶏の臀部又は背中の皮である。
【0032】
境界特定部102は、画像取得部101により取得されたカラー画像から赤色の成分のみを抽出した画像の各画素の画素値と、当該カラー画像から緑色の成分のみを抽出した画像の各画素の画素値との差を演算し、各画素の画素値が当該差である差分画像を生成する。そして、境界特定部102は、当該画像に二値化処理を施すことにより、筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮を描出している領域と、これら以外の赤身を描出している領域とを分離し、両者の境界を特定する。
【0033】
図5は、実施形態に係る画像処理装置により特定された第一の皮、第二の皮、第三の皮又は筋と赤身との境界の一例を示す図である。図5に示した鶏もも肉Mは、鶏の左足の肉である。境界特定部102は、例えば、図5に示した差分画像を生成し、当該差分画像に二値化処理を施すことにより、図5に破線で示されている境界を特定する。図5に示した破線の内側の領域は、鶏もも肉Mの赤身が描出されている領域である。一方、図5に示した破線の外側の領域は、鶏もも肉Mの筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮が描出されている領域である。
【0034】
位置特定部103は、画像取得部101により取得された画像に基づいて切り取る必要がある要素の位置を特定する。位置特定部103は、例えば、境界特定部102より特定され、図5に破線で示されている境界の外側の領域の中で最も面積が大きい領域を第一の皮を描出している領域として特定する。
【0035】
図6は、実施形態に係る画像処理装置により特定された鶏もも肉の第一の皮の一例を示す図である。図6に示した鶏もも肉Mは、鶏の左足の肉である。図6に示した破線の内側の領域は、鶏もも肉Mの筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮が描出されている領域である。位置特定部103は、例えば、図6に示した破線の内側の領域の中で面積が最大である領域を第一の皮を描出している領域として特定する。
【0036】
図6は,実施形態に係る画像処理装置により特定された鶏もも肉の第一の皮の一例を示す図である。図6に示した鶏もも肉Mは、鶏の左足の肉である。図6に示した破線の内側の領域は、鶏もも肉Mの筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮が描出されている領域である。図6に示した二つの矩形は、いずれも長辺の長さが鶏もも肉Mの赤身を描出している領域の当該長辺に平行な方向の幅に等しい。また、これら二つの矩形は、図6に示すように、一方の長辺を共有している。位置特定部103は、例えば、図6に示した二つの矩形について、これら三つの皮のいずれかが描出されている領域の面積の大小を比較する。そして、位置特定部103は、これら三つの皮のいずれかが描出されている領域の面積が大きい矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定する。
【0037】
次に、位置特定部103は、画像に所定の図形を重畳し、所定の図形を利用して被写体における要素の位置を特定する。また、位置特定部103は、筋、第一の皮、第二の皮及び第三の皮の相対的な位置関係を利用して鶏もも肉Mにおけるこれら四つの要素の位置を特定する。例えば、位置特定部103は、画像取得部101により取得されたカラー画像に複数の矩形を重畳し、複数の矩形を利用して鶏もも肉Mにおける筋の位置、第一の皮の位置、第二の皮の位置及び第三の皮の位置を特定する。
【0038】
図7は、実施形態に係る鶏もも肉を描出している画像に重畳された十二個の矩形の一例を示す図である。図7に示した鶏もも肉Mは、鶏の左足の肉である。図7は、矩形P1、矩形P2、矩形P3、矩形P4、矩形P5、矩形P6、矩形P7、矩形P8、矩形P9、矩形P10、矩形P11及び矩形P12を示している。これら十二個の矩形の長辺は、いずれも図7に示した画像の上下の辺及び鶏もも肉Mが載置されている板状の部材の上下の辺に対して40度傾いている。また、矩形P4、矩形P5、矩形P8及び矩形P9を合わせた矩形は、図5に示した差分画像を使用して特定された鶏もも肉Mの赤身を描出している領域に外接している。
【0039】
位置特定部103は、図7に示すように鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P3が重畳されている部分を第一の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、図7に示すように鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P1又は矩形P2が重畳されている部分を第二の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、図7に示すように鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P9が重畳されている部分を第三の皮が描出されている領域であると特定する。そして、位置特定部103は、図7に示すように鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P8が重畳されている部分を筋が描出されている領域であると特定する。
【0040】
なお、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P10が重畳されている部分を第一の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P11又は矩形P12が重畳されている部分を第二の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の左足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P4が重畳されている部分を第三の皮が描出されている領域であると特定する。そして、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉である場合、鶏もも肉Mのうち矩形P5が重畳されている部分を筋が描出されている領域であると特定する。
【0041】
また、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P7が重畳されている部分を第一の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P11又は矩形P12が重畳されている部分を第二の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P5が重畳されている部分を第三の皮が描出されている領域であると特定する。そして、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち下側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P4が重畳されている部分を筋が描出されている領域であると特定する。
【0042】
また、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P6が重畳されている部分を第一の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P1又は矩形P2が重畳されている部分を第二の皮が描出されている領域であると特定する。次に、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P8が重畳されている部分を第三の皮が描出されている領域であると特定する。そして、位置特定部103は、鶏もも肉Mが鶏の右足の肉であり、図6に示した二つの矩形のうち上側の矩形の内側に第一の皮が描出されていると判定された場合、鶏もも肉Mのうち矩形P9が重畳されている部分を筋が描出されている領域であると特定する。
【0043】
境界特定部102は、画像に画像処理を施すことにより画像上における要素と要素以外の部分との境界を特定する。境界特定部102は、例えば、画像取得部101により取得されたカラー画像のうち鶏もも肉Mの赤身を描出している領域に外接する閉曲線を決定し、当該閉曲線のうち当該カラー画像において筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮を描出している領域を通過している部分を筋、第一の皮、第二の皮又は第三の皮と、鶏もも肉Mの赤身との境界として特定する。
【0044】
図8は、実施形態に係る画像処理装置により特定された第一の皮と赤身との境界、第二皮と赤身との境界及び筋と赤身との境界の一例を示す図である。図8に示した鶏もも肉Mは、鶏の右足の肉である。境界特定部102は、図8に示した鶏もも肉Mの赤身を描出している領域に外接する閉曲線Cを決定する。そして、境界特定部102は、閉曲線Cのうちの線L91を第一の皮と、鶏もも肉Mの赤身との境界として特定する。
また、境界特定部102は、閉曲線Cのうちの線L92を第二の皮と、鶏もも肉Mの赤身との境界として特定する。また、境界特定部102は、閉曲線Cのうちの線L94を筋と、鶏もも肉Mの赤身との境界として特定する。
【0045】
軌道決定部104は、要素を被写体から切り取る際の刃の軌道を境界に基づいて決定する。軌道決定部104は、例えば、境界特定部102により特定された境界を通る線分を当該刃の軌道として決定する。
【0046】
図9は、実施形態に係る画像処理装置により決定された第一の皮を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道と、第二の皮を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道と、筋を鶏もも肉から切り取る際の刃の軌道の一例を示す図である。図9は、点P11と点P12とを結ぶ線分L101と、点P21と点P22とを結ぶ線分L102と、点P41と点P42とを結ぶ線分L104とを示している。図9に示した画像の横方向は、X方向とされている。図9に示した画像の縦方向は、Y方向とされている。
【0047】
点P11は、鶏もも肉Mから第一の皮を切り取る際の刃の始点を表している。点P11のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「242.4」である。また、点P11のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「0」である。点P12は、鶏もも肉Mから第一の皮を切り取る際の刃の終点を表している。点P12のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「10」である。また、点P12のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「-239.8」である。線分L101は、鶏もも肉Mから第一の皮を切り取る際の刃の軌道を表している。なお、図9に示した画像の上部に示されている点P11の座標の下に示されている「T:-0.969」は、鶏もも肉Mから第一の皮を切り取る際の刃の速度を表している。また、図9に示した画像の上部に示されている点P12の座標の下に示されている「θ:-44.09」は、線分L101の傾きを表している。
【0048】
点P21は、鶏もも肉Mから第二の皮を切り取る際の刃の始点を表している。点P21のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「65.2」である。また、点P21のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「0」である。点P22は、鶏もも肉Mから第二の皮を切り取る際の刃の終点を表している。点P22のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「292.3」である。また、点P22のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「-151.8」である。線分L102は、鶏もも肉Mから第二の皮を切り取る際の刃の軌道を表している。なお、図9に示した画像の上部に示されている点P21の座標の下に示されている「T:1.404」は、鶏もも肉Mから第二の皮を切り取る際の刃の速度を表している。また、図9に示した画像の上部に示されている点P22の座標の下に示されている「θ:34.54」は、線分L102の傾きを表している。
【0049】
点P41は、鶏もも肉Mから筋を切り取る際の刃の始点を表している。点P41のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「70.8」である。また、点P41のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「0」である。点P42は、鶏もも肉Mから筋を切り取る際の刃の終点を表している。点P42のX座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「90.1」である。また、点P42のY座標は、図9に示した画像の上部に示されている通り、「-370.9」である。線分L102は、鶏もも肉Mから筋を切り取る際の刃の軌道を表している。なお、図9に示した画像の上部に示されている点P41の座標の下に示されている「T:0.036」は、鶏もも肉Mから筋を切り取る際の刃の速度を表している。また、図9に示した画像の上部に示されている点P42の座標の下に示されている「θ:2.06」は、線分L102の傾きを表している。
【0050】
軌道決定部104は、図8に示した線L91に基づいて第一の皮を鶏もも肉Mから切り取る際の刃の軌道を図9に示した線分L101に決定する。また、軌道決定部104は、図8に示した線L92に基づいて第二の皮を鶏もも肉Mから切り取る際の刃の軌道を図9に示した線分L102に決定する。また、軌道決定部104は、図8に示した線L94に基づいて筋を鶏もも肉Mから切り取る際の刃の軌道を図9に示した線分L104に決定する。
【0051】
軌道決定部104は、上述した境界から所定の距離だけ離れた前記軌道を設定してもよい。例えば、軌道決定部104は、上述した境界に垂直な方向に当該境界を所定の距離だけ移動させて得られる線を刃の軌道としてもよい。このような軌道としては、例えば、図9に示した線分L101、線分L102又は線分L104を所定の距離だけ平行移動させて得られる線分が挙げられる。また、この場合、鶏もも肉Mの赤身から遠ざかる方向への平行移動を正の方向への平行移動とし、鶏もも肉Mの赤身に近づく方向を負の方向への平行移動としてもよい。なお、軌道決定部104は、例えば、上述した境界が折れ線、曲線等であっても、当該境界を所定の距離だけ平行移動させた折れ線、曲線等を刃の軌道として設定してもよい。
【0052】
次に、図10を参照しながら実施形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例について説明する。図10は、実施形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0053】
ステップS1において、画像取得部101は、切り取る必要がある要素を含む被写体を描出している画像を取得する。
【0054】
ステップS2において、境界特定部102は、画像に画像処理を施すことにより画像上において切り取る必要がある要素と当該要素以外の部分との境界を特定する。
【0055】
ステップS3において、位置特定部103は、画像に所定の図形を重畳し、所定の図形を利用して被写体における要素の位置を特定する。
【0056】
ステップS4において、境界特定部102は、ステップS3で特定された各要素の位置に基づいて、各要素と、これらの要素以外の部分との境界を特定する。
【0057】
ステップS5において、軌道決定部104は、要素を被写体から切り取る際の刃の軌道をステップS4で特定した境界に基づいて決定する。
【0058】
以上、実施形態に係る画像処理装置、画像処理プログラム及び画像処理方法について説明した。画像処理装置10は、画像取得部101と、境界特定部102と、軌道決定部104とを備える。画像取得部101は、切り取る必要がある要素を含む被写体を描出している画像を取得する。境界特定部102は、画像に画像処理を施すことにより画像上における要素と要素以外の部分との境界を特定する。軌道決定部104は、要素を被写体から切り取る際の刃の軌道を境界に基づいて決定する。これにより、画像処理装置10は、ばらつきを有する食品から切り取る必要がある要素を好適に切り取る作業を好適に支援することができる。
【0059】
また、画像処理装置10は、画像に所定の図形を重畳し、所定の図形を利用して被写体における要素の位置を特定する位置特定部103を更に備える。これにより、画像処理装置10は、切り取る必要がある要素を特定し、要素を被写体から切り取る際の刃の軌道を好適に決定することができる。
【0060】
また、画像処理装置10は、少なくとも二つの要素を含む被写体を描出している画像を取得し、少なくとも二つの要素の相対的な位置関係を利用して被写体における要素の位置を特定する。これにより、画像処理装置10は、被写体に切り取る必要がある要素が複数含まれていても、各要素の位置を好適に特定し要素を被写体から切り取る際の刃の軌道を好適に決定することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、図1に示した画像処理装置10が画像処理プログラムを読み出して実行するプロセッサ11により実現される場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。図1に示した画像処理装置10の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよい。或いは、図1に示した画像処理装置10の少なくとも一部は、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。また、これらのハードウェアは、一つに統合されていてもよいし、複数に分かれていてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、被写体が鶏もも肉Mであり、切り取る必要がある要素が筋、第一の皮、第二の皮及び第三の皮である場合を例に挙げたが、これに限定されない。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述した。ただし、本発明の実施形態の具体的な構成は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の組み合わせ、変形、置換及び設計変更の少なくとも一つを上述した実施形態に加えたものであってもよい。
【0064】
また、上述した実施形態で説明した本発明の効果は、例として示した効果である。したがって、本発明は、上述した効果以外にも上述した実施形態の記載から当業者が認識し得る他の効果も奏し得る。
【符号の説明】
【0065】
10…画像処理装置、11…プロセッサ、12…主記憶装置、13…通信インターフェース、14…補助記憶装置、15…入出力装置、16…バス、101…画像取得部、102…境界特定部、103…位置特定部、104…軌道決定部、151…マウス、152…キーボード、153…ディスプレイ、154…撮影装置、155,156,157,158…照明、20…食品加工ライン、200…制御装置、201…ベルトコンベア、202,203,204…光電センサ、M…鶏もも肉

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10