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特許75667405員環モノチオカーボネート基を有する化合物を含むコーティング組成物又はシーラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】5員環モノチオカーボネート基を有する化合物を含むコーティング組成物又はシーラント
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20241007BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20241007BHJP
   C07D 327/04 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
C09D175/04
C08G75/045
C07D327/04 CSP
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021530092
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2019081639
(87)【国際公開番号】W WO2020109053
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】18209383.1
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティール,アンドル
(72)【発明者】
【氏名】ジェゲルカ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】フェンロン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ,ピーター
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02468791(EP,A1)
【文献】特開平11-292969(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208643(WO,A1)
【文献】特開平09-059324(JP,A)
【文献】特開2000-204159(JP,A)
【文献】特開2007-178903(JP,A)
【文献】特開2002-053706(JP,A)
【文献】特開2012-232954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C08G
C07D
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを、又はシールされた材料を調製する方法であって、
少なくとも1個の5員環モノチオカーボネート基を有する化合物A)を含む第1成分、及び 以下アミノ基と称される、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ブロックされた第一級アミノ基及びブロックされた第二級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)を含む第2成分
を含む、コーティング組成物又はシーラントが使用され、
化合物A)又はB)は少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を追加的に有しているか、又は
コーティング組成物又はシーラントは少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する化合物C)を更に含み、
化合物A)は式I
【化1】
[R 1a ~R 4a は、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R 2a 、R 4a 、及びチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよい]
の化合物、
又は式II
【化2】
[R 1b ~R 4b は、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R 2b 、R 4b 、及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよく、R 1b ~R 4b 基のうちの1個はZへの連結基であり、nは、2~5の整数を表し、Zは、n価の有機基を表す]
の化合物であり、
化合物A)と、化合物B)と、任意に化合物C)とが反応してコーティング又はシーラントのバインダーであるポリマーが形成され、
前記ポリマーは、エチレン基を介してウレタン基の酸素に結合された硫黄原子を有するウレタン基を含み、
化合物A)の5員環モノチオカーボネート基の環系は、化合物B)のアミノ基によって開環され、メルカプト基-SHを有する付加物が生じ、付加物のメルカプト基-SHは、化合物A)若しくはB)それ自体の、又は化合物C)のいずれかの重合性エチレン性不飽和基と更に反応し、
コーティング組成物を表面に塗布し、硬化させて、厚さ0.01~10ミリメートルのコーティングを得、又はシーラントを間隙又は空洞に塗布し、硬化させて、シールされた材料を得る、方法。
【請求項2】
R1a~R4aのうちの3個は水素を表し、R1a~R4aのうちの残りの基は水素又は最大30個までの炭素原子を有する有機基を表し、前記残りの基はR1a又はR2aである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1b~R4b基のうちの3個は水素を表し、R1b~R4bのうちの残りの基は最大30個までの炭素原子を有する有機基である連結基であり、前記残りの基はR1b又はR2bである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
nが2又は3である、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
化合物A)又はB)が、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
コーティング又はシーラント組成物が化合物C)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物C)が1個~5個の重合性エチレン性不飽和基を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
化合物A)が、1バール21℃で液体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
液体の化合物A)が、1バール21℃で固体である化合物A)を1バール21℃で液体である化合物Aに溶解することによって得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティング組成物又はシーラントが、化合物A)の5員環モノチオカーボネート基1mol当たり、化合物B)のアミノ基0.8~1.2molを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
コーティング組成物又はシーラントが、すべての化合物A)、B)、及びC)の100重量部当たり、顔料又は充填剤5~500重量部を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、
コーティングを、又はシールされた材料を調製する方法であって、
少なくとも1個の5員環モノチオカーボネート基を有する化合物A)を含む第1成分、及び
以下アミノ基と称される、第一級若しくは第二級アミノ基、又はブロックされた第一級若しくは第二級アミノ基から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)を含む第2成分
を含み、化合物A)又はB)が少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を追加的に有してもよい、
コーティング組成物又はシーラントが使用され、
コーティング組成物又はシーラントは少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する化合物C)を更に含んでもよい、方法である。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは重要な工業用ポリマーである。ポリウレタンは非常に良好な機械的特性を有し、したがって、多くの技術的用途において、例えば、コーティング剤及びシーリング剤におけるバインダーとして使用される。
【0003】
ポリウレタン系のコーティング組成物及びシーラントは通常、ポリイソシアネートを含む1つの成分及びポリオールを含む第2成分から成る二成分システムとして塗布される。2つの成分を混合し、塗布して、望ましいポリウレタン系のコーティング剤及びシーリング剤を得る。
【0004】
イソシアネート基を有する化合物は通常、反応性が高い。そのような反応性により感湿性が増大し、これはいくつかの技術的用途において問題となる。イソシアネート基を有するいくつかの化合物は、有害であると考えられ、皮膚接触又は吸入時にアレルギーを引き起こすことがある。
【0005】
ウレタン基を有する代替のポリマーを見出すことが必要である。そのような代替のポリマーは、ポリイソシアネートから得るべきではないが、良好な適用特性を有するコーティング剤及びシーラントの調製に適しているべきである。
【0006】
WO 2013/144299には、環式5員カーボネート環系(アルキリデン-1,3-ジオキソラン-2-オン)を有するラジカル重合性化合物が開示されている。ウレタン基は、これらの化合物又はそれらのポリマーとアミノ化合物とを反応させることによって形成される。WO 2011/157671には、エポキシ樹脂において反応性希釈剤として使用するための同様の化合物が開示されている。しかしながら、そのような化合物の合成は冗長である。必要な合成の前駆体は市販されていない。
【0007】
EP-A 2468791の対象は、酸素及び硫黄を含む5員環式環系を有する化合物を含むエポキシ組成物である。
【0008】
D.D. Reynolds、D. L.Fields及びD. L. Johnson.Journal of Organic Chemistry、1961、5111~5115ページには、5員環モノチオカーボネート環系を有する化合物及びその反応が開示されている。中でも、アミノ化合物との反応が言及されている。
【0009】
出願番号17186542.1(INV 170282)及び17186545.4(INV 170283)の非公開欧州特許出願は、少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する化合物の合成のプロセスに関する。
【0010】
出願番号17186543.9(INV 170338)及び17186544.7(INV 170938)の非公開欧州特許出願は、少なくとも1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を反応させることによって得られるポリマーに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、コーティング剤及びシーリング剤を調製する代替的な方法を提供することであった。イソシアネート基を有する化合物の使用は回避するべきである。得られるコーティング剤及びシーリング剤は、良好な適用特性、例えば機械的特性、光学特性、UV保護及び腐食防止としての安定性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、上に記載される方法及び当該方法によって得られるコーティング剤及びシーリング剤が見出された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
化合物A)について
化合物A)は、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を含む。
【0014】
5員環式モノチオカーボネート基は5員の環系であり、そのうち3員はモノチオカーボネート-O-C(=O)-S-に由来し、更なる2員は5員環を閉じる炭素原子である。
【0015】
化合物A)は、低分子化合物又はポリマー化合物であってもよく、例えば最大1000個までの、特に最大500個までの、好ましくは最大100個までの5員環式モノチオカーボネート基、及び最大1000個までの、特に最大500個までの、好ましくは最大100個までの重合性エチレン性不飽和基を含んでもよい。
【0016】
化合物A)は、例えば、モノチオカーボネート基を有する化合物と第一級又は第二級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン基含有付加物であってもよく、ここで、モノチオカーボネート基がアミノ基と比較して化学量論的過剰であり、よってモノチオカーボネート基をなおも有するウレタン基含有付加物が得られる。
【0017】
好ましい実施形態において、化合物A)は、1~3個の環式モノチオカーボネート基を含む。
【0018】
最も好ましい実施形態において、化合物A)は、1個又は2個の5員環モノチオカーボネート基を含む。
【0019】
好ましい化合物A)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、最大500g/molまでの分子量を有する化合物A)である。
【0020】
化合物A)は、重合性エチレン性不飽和基、エーテル基、又はカルボン酸エステル基を含んでもよい。
【0021】
好ましい実施形態において、化合物A)は、環式モノチオカーボネート基、重合性エチレン性不飽和基、エーテル基、チオエーテル基、又はエステル基以外の官能基を含まない。
【0022】
好ましい化合物A)は、式I
【0023】
【化1】
[R1a~R4aは、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R2a、R4a、及びチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよい]
の化合物、又は式II
【0024】
【化2】
[R1b~R4bは、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R2b、R4b、及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよく、R1b~R4b基のうちの1個はZへの連結基であり、nは、少なくとも2の整数を表し、Zは、n価の有機基を表す]
の化合物である。
【0025】
式Iの化合物A)について
式Iの化合物A)は、5員環モノチオカーボネート基を1個だけ有する。
【0026】
R1a~R4aのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは最大30個までの、より好ましくは最大20個までの炭素原子を有する有機基である。更なる好ましい実施形態において、R2a及びR4aは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒に5~10員の炭素環を形成しない。
【0027】
R1a~R4aのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、上に列挙されるヘテロ原子及び官能基を含んでもよい。具体的には、そのような有機基は、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、及びクロライド(chloride)を含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は酸素又はクロライドを含んでもよい。R1a~R4aは、例えばエーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基、又はカルボキシ基の形態で酸素を含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は、酸素、窒素、又はクロライド、特に酸素を含んでもよい最大30個までの炭素原子を有する脂肪族有機基である。
【0028】
より好ましい実施形態において、有機基は、アルキル基から、-CH2-O-R5a基、又は-CH2-O-C(=O)-R6a基、又は-CH2-NR7aR8a基から選択され、R5a~R8aは最大30個までの炭素原子、好ましくは最大20個までの炭素原子を有する有機基である。具体的には、R5a~R8aは脂肪族基又は芳香族基を表し、脂肪族基又は芳香族基は、酸素を、例えばエーテル基の形態で含んでもよい。好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、例えば1~10個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、又はポリアルコキシ基を表す。最も好ましい実施形態において、R5a~R8aは、脂肪族炭化水素基、特に1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
【0029】
最も好ましい実施形態において、有機基は、-CH2-O-R5a基又は-CH2-O-C(=O)-R6a基である。
【0030】
式I中のR1a~R4aのうちの2~4個すべてが水素を表し、残りのR1a~R4a基が有機基を表すことが好ましい。
【0031】
式I中のR1a~R4aのうちの2個及び/又は3個が水素を表し、残りのR1a~R4a基が有機基を表すことがより好ましい。
【0032】
式I中のR1a~R4aのうちの3個が水素を表し、R1a~R4aのうちの残りの基が有機基を表すことが最も好ましい。好ましい実施形態において、R1a又はR2aは有機基を表す残りの基である。
【0033】
1個の5員モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物A)としては、
【0034】
【化3】
を挙げることができる。
【0035】
式IIの化合物A)について
式IIの化合物A)は、少なくとも2個の5員環モノチオカーボネート基を有する。
【0036】
R1b~R4bのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は、好ましくは最大30個までの炭素原子を有する有機基である。更なる好ましい実施形態において、R2b及びR4bは、チオカーボネート基の2個の炭素原子と一緒に5~10員の炭素環を形成しない。
【0037】
R1b~R4bのうちのいずれかが有機基を表す場合、そのような有機基は炭素及び水素以外の元素を含んでもよい。具体的には、そのような有機基は、酸素、窒素、硫黄、及びクロライドを含んでもよい。好ましい実施形態において、有機基は酸素又はクロライドを含んでもよい。R1b~R4bは、例えばエーテル基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケト基、又はカルボキシ基の形態で酸素を含んでもよい。
【0038】
R1b~R4b基のうちの1個は、Zへの連結基である。
【0039】
連結基は、単に結合であるか、又はCH2-O-基又はCH2-O-C(=O)-基又はCH2-NR5b-基であり、R5bは、脂肪族基、特に最大20個の炭素原子を有するアルキル基であることが好ましい。
【0040】
連結基は、単に結合であるか、又はCH2-基又はCH2-O-基又はCH2-O-C(=O)-基であることがより好ましい。
【0041】
最も好ましい実施形態において、連結基はCH2-O-基である。
【0042】
式I中R1b~R4b基のうちの2個又は3個は水素であることが好ましい。
【0043】
最も好ましい実施形態において、R1b~R4b基のうちの3個は水素を表し、R1b~R4bのうちの残りの基はZへの連結基である。
【0044】
最も好ましい実施形態においてR1b又はR2b基はZへの連結基である。
【0045】
nは少なくとも2の整数を表す。例えば、nは、2~1000、特に2~100、個別には2~10の整数であってもよい。
【0046】
好ましい実施形態において、nは2~5の整数であり、特にnは2又は3である。
【0047】
最も好ましい実施形態において、nは2である。
【0048】
Zはn価の有機基を表す。nが、例えば10~1000のように大きな数字である場合、Zは、例えば重合又は共重合、例えばエチレン性不飽和モノマーのラジカル重合、重縮合、又は重付加によって得られるポリマー基、特にポリマー骨格であってもよい。例えば、ポリエステル又はポリアミドは、水又はアルコールを除去しながらの重縮合によって得られ、ポリウレタン又はポリ尿素は重付加により得られる。
【0049】
式IIIのそのような化合物は、例えばモノチオカーボネート基を含むエチレン性不飽和モノマーの、又はその後モノチオカーボネート基に変換されるエポキシ基を含むモノマーのラジカル重合又は共重合によって得られるポリマーである。
【0050】
好ましい実施形態において、Zは、最大50個までの炭素原子、特に最大30個までの炭素原子を有し、且つ炭素及び水素以外の元素を含んでもよいn価の有機基であり、nは2~5、特に2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0051】
特に好ましい実施形態において、Zは、最大50個までの炭素原子、特に最大30個までの炭素原子を有し、且つ炭素、水素、及び任意選択で酸素のみを含み、且つ更なる元素を含まないn価の有機基であり、nは2~5、特に2又は3、最も好ましくは2の整数である。
【0052】
好ましい実施形態において、Zは式G1
(V-O-)mV
[式中、VはC2~C20アルキレン基を表し、mは少なくとも1の整数である]
のポリアルコキシレン基である。末端アルキレン基Vは、R1b~R4b基のうちの1個である連結基に結合されている(上述を参照されたい)。
【0053】
C2~C20アルキレン基はC2~C4アルキレン基、特にエチレン又はプロピレンであることが好ましい。mは、例えば1~100、特に1~50の整数であってもよい。
【0054】
更に好ましい実施形態において、Zは式G2
【0055】
【化4】
[式中、Wは、最大10個の炭素原子を有する二価の有機基であり、nは2であり、R10b~R17bは互いに独立して、H又はC1~C4アルキル基を表し、Wに対してパラ位にある2個の水素原子は、R1b~R4b基(上述を参照されたい)のうちの1個である連結基への結合によって置き換えられる]
の基である。
【0056】
R10b~R17bのうちの少なくとも6個は水素であることが好ましい。最も好ましい実施形態において、R10b~R17bのすべては水素である。
【0057】
W基は、例えば
【0058】
【化5】
である。
【0059】
Wは、炭素及び水素のみから成る有機基であることが好ましい。
【0060】
最も好ましいWは、ビスフェノールAの構造に対応する
【0061】
【化6】
である。
【0062】
更なる好ましい実施形態において、ZはG3基であり、ここでG3は、アルキレン基、特にC2~C8アルキレン基を表し、そのようなアルキレン基の好ましい例は、エチレン(CH2-CH2)、n-プロピレン(CH2-CH2-CH2)、特にn-ブチレン(CH2-CH2-CH2-CH2)である。
【0063】
少なくとも2個の5員環式モノチオカーボネート基を有する好ましい化合物の例は、特に、以下のエポキシ化合物のすべてのエポキシ基を5員環式モノチオカーボネート基に変換させることによって得られる化合物である。
【0064】
非グリシジルエポキシド:
1,2:5,6-ジエポキシヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、ジシクロペンタジエンジオキシド、エポキシ化植物油又はその誘導体、例えばダイズ油又はその誘導体。
【0065】
グリシジルエーテル:
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)、水素化BADGE、その他のジオール、トリオール、テトラオール及びポリオールのグリシジルエーテル、例えばブタンジオール-ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン-トリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、イソソルビドジグリシジルエーテル、メチルフェニルプロパンジオールジグリシジルエーテル。これは、オリゴマー状/ポリマー状のグリシジルエーテル、例えばポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、ビスフェノールAと過剰なエピクロロヒドリンとを反応させることによって得られるオリゴマー又はポリマーも含む。
【0066】
グリシジルエステル:
テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、オルトフタル酸ジグリシジル
【0067】
グリシジルアミン:
N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、テトラグリシジルメチレンジアニリン
【0068】
グリシジルイミド:
トリグリシジルイソシアヌレート
【0069】
少なくとも2個の5員環モノチオカーボネート基を有する特に好ましい化合物A)は、式III
【0070】
【化7】
[式中、Gは、2~10個の、特に2~6個の炭素原子を有するアルキレン基を表す]
の化合物、及び式
【0071】
【化8】
を有する1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-ビス[2-オキソ-1,3-オキサチオラン-5-イル]エステルである。
【0072】
式IIIの好ましい化合物は、式
【0073】
【化9】
を有するビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)]である。
【0074】
重合性エチレン性不飽和基を有する化合物A)について
化合物A)はまた、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を含んでもよい。
【0075】
少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する好ましい化合物A)は、式Iの化合物A)であって、式中、R1a~R4aのうちの1個は、1個の重合性エチレン性不飽和基を含む有機基を表し、R1a~R4aの残りの3個は、水素又は最大20個の炭素原子を有する有機基を表し、好ましくはR1a~R4aの残りの3個は水素を表す。
【0076】
重合性エチレン性不飽和基の好ましい例は、ビニル基H2C=CH-、オレフィン基-HC=CH-であり、ここで、二重結合の2個の炭素原子はそれぞれ1個のみの水素が置換されており、更なる置換基は特に炭素原子、及びアクリル基又はメタクリル基(略称は(メタ)アクリル基)である。この特許出願において、「ビニル基」という用語は(メタ)アクリル基を含まない。
【0077】
より好ましい実施形態において、重合性エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリル基、最も好ましくはメタクリル基である。
【0078】
化合物A)は、重合性エチレン性不飽和基を含まないか又は1個の重合性エチレン性不飽和基を含むことが好ましい。
【0079】
重合性エチレン性不飽和基を有する化合物A)の例は、
式:
【0080】
【化10】
の5-ブテニル-1,3-オキサチオラン-2-オン
式:
【0081】
【化11】
の5-エテニル-1,3-オキサチオラン-2-オン
式:
【0082】
【化12】
の5-(エテニルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン
式:
【0083】
【化13】
の5-(2-プロペン-1-イルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン
式:
【0084】
【化14】
の5-(メタクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン
及び式:
【0085】
【化15】
の5-(アクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オンである。
【0086】
最も好ましいのは、5-(メタクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オン及び5-(アクリロイルオキシ)メチル-1,3-オキサチオラン-2-オンである。
【0087】
化合物A)の合成について
1個のモノチオカーボネート基を有する化合物を合成するいくつかの方法は、技術水準において記載されている。
【0088】
US 3,072,676及び3,201,416によれば、エチレンモノチオカーボネートは2段階プロセスによって調製され得る。第1の段階において、メルカプトエタノールとクロロカルボキシレートとを反応させてヒドロキシエチルチオカーボネートを得て、第2の段階において、これを金属塩触媒の存在下で加熱してエチレンモノチオカーボネートを得る。
【0089】
US 3,517,029によれば、アルキレンモノチオカーボネートは、メルカプトエタノールと炭酸ジエステルとをトリウムの触媒活性塩の存在下で反応させることにより得られる。
【0090】
US 3,349,100に開示されるプロセスによれば、アルキレンモノチオカーボネートは、エポキシドと硫化カルボニルとを反応させることによって得られる。硫化カルボニルの入手可能性(availability)は限定されている。得られるアルキレンモノチオカーボネートの収率及び選択率は低い。M。
【0091】
ホスゲンを出発材料として使用する合成は、US 2,828,318から公知である。ホスゲンをヒドロキシメルカプタンと反応させる。モノチオカーボネートの収率はなおも低く、重合による副生成物が観察される。
【0092】
化合物A)及びC)を調製する好ましいプロセスは、
a)少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物(略称はエポキシ化合物)を出発材料として使用し、
b)化合物をホスゲン又はクロロギ酸アルキルと反応させ、それにより付加物を得、
c)付加物を、アニオン性硫黄を含む化合物と反応させ、少なくとも1個の5員環式モノチオカーボネート基を有する化合物を得る、
プロセスである。
【0093】
このプロセスは、出願番号17186545.4(INV 170283)の非公開欧州特許出願に詳細に記載されている。
【0094】
化合物B)について
化合物B)は、第一級又は第二級アミノ基から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物である。この特許出願において、アミノ基という単語は、別段の指示がない場合、又は内容からそれ以外が明白でない場合、第一級又は第二級アミノ基を意味するものとする。
【0095】
化合物B)は、例えば最大500.000g/molまでの分子量を有してもよい。化合物B)が高分子化合物、例えばアミノ基を含むポリマーである場合、後半が当てはまり得る。
【0096】
化合物B)は、例えば、モノチオカーボネート基を有する化合物と第一級又は第二級アミノ基を有する化合物とを反応させることによって得られるウレタン基含有付加物であってもよく、ここで、アミノ基がモノチオカーボネート基と比較して化学量論的過剰であり、よってなおも第一級又は第二級アミノ基を有するがモノチオカーボネート基を有しないウレタン基含有付加物が得られる。
【0097】
好ましい化合物B)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物B)である。
【0098】
化合物B)は、モノチオカーボネート基を含まない。
【0099】
化合物B)は、重合性エチレン性不飽和基、エーテル基、又はカルボン酸エステル基を含んでもよい。
【0100】
好ましい実施形態において、化合物B)は、第一級又は第二級アミノ基、重合性エチレン性不飽和基、又はエーテル基以外のいかなる官能基も含まない。
【0101】
好ましい実施形態において、化合物B)は、1~10個のアミノ基、好ましくは1個又は5個のアミノ基を含み、最も好ましい実施形態において化合物B)は1~5個のアミノ基を含む。
【0102】
好ましい実施形態において、B)のアミノ基のうちの少なくとも1個は第一級アミノ基である。
【0103】
最も好ましい実施形態において、化合物B)のすべてのアミノ基は第一級アミノ基である。
【0104】
1個のアミノ基を有する化合物B)は、例えば、第一級アミノ基を有するモノアルキルアミン、例えばC1~C20アルキルアミン若しくはシクロアルキルアミン、又はエーテルアミン、例えば2-メトキシエチルアミン若しくは3-メトキシプロピルアミン、又はジエーテルアミン若しくはポリエーテルアミン、例えばジグリコールアミン若しくはポリグリコールアミン、ポリオキシプロピレンアミンである。
【0105】
2個以上のアミノ基を有する化合物B)は、例えば、
- アルキレンジアミン又はアルキレンポリアミン、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、オクタメチレンジアミン、1,3ジアミノペンタン、2-メチルペンタン-1,5-ジアミン
- エーテル基を含むアルキレンジアミン又はアルキレンポリアミン(ポリエーテルアミン)、例えばそのようなポリグリコールジアミン、オキシプロピレンジアミン、又はポリオキシプロピレンジアミン
- 脂環式ジアミン、例えばシクロヘキシルジアミン、例えば1,2ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、1-メチル-2,6-ジアミノシクロヘキサン又はこれらの混合物、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5-ビスアミノメチルテトラヒドロフラン、3,3'-ジメチル-4,4'ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン
- 芳香族ジアミン、例えば1,2-フェニレンジアミン又は1,4フェニレンジアミン、トルエンジアミン、4,4'ジアミノ-ジフェニルメタン、4,4'ジアミノジフェニルスルホン、2,5-ビスアミノメチルフランである。
【0106】
化合物B)はまた、アミノ基が保護基で保護された形態で使用してもよい。必要になった又は所望された際にはすぐに、保護基は除去され、それにより遊離アミノ基を有する上記の化合物B)が得られる。通常は、保護基の除去は反応条件下で行われる。一般的な、アミノ基に関して保護されたアミノ基は、例えばケタミン、アルジミン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、ルイス酸錯体化アミン、カルバメート、ベンジルオキシカルボニルアミン、アシルオキシム、ホルムアニリジンである。脱保護反応は、例えば温度、光、pH、又は水/湿度の存在によって引き起こすことができる。
【0107】
更なる適切な化合物B)は、例えば出願番号17186543.9(INV 170338)及び17186544.7(INV 170938)の非公開欧州特許出願に列挙される。
【0108】
上述のように、化合物B)はまた、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を含んでもよい。少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する好ましい化合物B)は、1個のアミノ基及び1個の重合性エチレン性不飽和基を有する化合物B)である。
【0109】
重合性エチレン性不飽和基の好ましい例は、ビニル基H2C=CH-、オレフィン基-HC=CH-であり、ここで、二重結合の2個の炭素原子はそれぞれ1個のみの水素が置換されており、更なる置換基は特に炭素原子、及びアクリル基又はメタクリル基(略称は(メタ)アクリル基)である。この特許出願において、「ビニル基」という用語は(メタ)アクリル基を含まない。
【0110】
より好ましい実施形態において、化合物B)の任意選択の重合性エチレン性不飽和基は、ビニル基である。
【0111】
適切な化合物B)は、例えば、アミノプロピルアミンビニルエーテル及びアリルアミンであり、以下の式
【0112】
【化16】
を参照されたい。
【0113】
化合物C)について
化合物C)は、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する化合物である。
【0114】
化合物C)は、5員環モノチオカーボネート基を含まず、アミノ基を含まない。
【0115】
化合物C)は、例えば最大500.000g/molまでの分子量を有してもよい。化合物C)が高分子化合物、例えばポリマーである場合、後半が当てはまり得る。
【0116】
化合物C)は、例えば、モノチオカーボネート基を有する化合物、第一級又は第二級アミノ基を有する化合物、及び不飽和基を有する化合物を、すべてのモノチオカーボネート基及びアミノ基が反応し且つ不飽和基のみが残る比において反応させることによって得られるウレタン基含有付加物であってもよい。
【0117】
好ましい化合物C)は最大10000g/molまでの、特に最大5000g/molまでの、特に最大1000g/molまでの分子量を有する。最も好ましいのは、60g/mol~500g/molの分子量を有する化合物C)である。
【0118】
好ましい実施形態において、化合物C)は、重合性エチレン性不飽和基、及び任意選択でエーテル基、又はカルボン酸エステル基以外のいかなる官能基も含まない。
【0119】
好ましい実施形態において、化合物C)は、1~10個の重合性エチレン性不飽和基、好ましくは1個又は5個の重合性エチレン性不飽和基を含み、最も好ましい実施形態において化合物C)は1~3個の重合性エチレン性不飽和基を含む。
【0120】
重合性エチレン性不飽和基の好ましい例は、ビニル基H2C=CH-、オレフィン基-HC=CH-であり、ここで、二重結合の2個の炭素原子はそれぞれ1個のみの水素が置換されており、更なる置換基は特に、環式系の炭素原子を含む炭素原子、及びアクリル基又はメタクリル基(略称は(メタ)アクリル基)である。この特許出願において、「ビニル基」という用語は(メタ)アクリル基を含まない。
【0121】
化合物C)のための特に好ましいエチレン性不飽和基は、ビニル基及び(メタ)アクリル基である。
【0122】
化合物C)の最も好ましいエチレン性不飽和基は、メタクリル基である。
【0123】
1個のエチレン性不飽和基を有する化合物C)は、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、イタコン酸エステル若しくはラクトン、シトラコン酸エステル若しくはラクトン、ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルラクタム、例えばN-ビニルピロリドン、スチレンのようなビニル芳香族化合物、塩化ビニル若しくはフッ化ビニルのようなビニルハロゲン化物、又は1個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、若しくはノルボルネン型化合物のような環式オレフィン化合物である。
【0124】
2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物C)は、例えば、少なくとも2個の(メタ)アクリル基、少なくとも2個のビニル基を有する化合物、又は少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィン、又はポリオレフィン、例えばポリブタジエン若しくはポリイソプレン、及び不飽和ポリエステル、特にマレイン酸、フマル酸若しくはイタコン酸、及びシトラコン酸のポリエステルである。
【0125】
厳密に2個の炭素-炭素二重結合を有するオレフィンは、例えばブタジエン、シクロオクタジエン、シクロドデカトリエン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、イソプレン、リモネン、ジビニルシクロヘキサン、又はジシクロペンタジエンである。
【0126】
少なくとも2個のアクリル基又はメタクリル基を有するオリゴマーは、特に多官能性アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシル化多官能性アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、又はヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル化合物、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物とを反応させることによって得られる化合物である。
【0127】
ポリエステロールの(メタ)アクリル酸エステルもオリゴマーとして挙げることができる。
【0128】
(メタ)アクリル酸及びエポキシド化合物の付加物(エポキシ系ビニルエステルとして公知である)、又はウレタン(メタ)アクリレートも適切なオリゴマーであり得る。
【0129】
少なくとも2個のビニル基を有するオリゴマーは、例えばジビニルエーテル、例えばジエチレングリコール-ジビニルエーテル、又はトリエチレングリコール-ジビニルエーテルである。
【0130】
好ましい実施形態において、重合性エチレン性不飽和基を有する化合物C)は、(メタ)アクリル化合物、特に多官能性アルコールの(メタ)アクリレート、又はビニルエーテル基を有する化合物、又は不飽和ポリエステルである。特に好ましい実施形態において、重合性エチレン性不飽和基を有する化合物C)は、メタクリル化合物である。
【0131】
コーティング組成物又はシーラントのバインダーについて
化合物A)、B)及び任意選択でC)は、反応して、得られるコーティング剤又はシール剤のバインダーであるポリマーを形成する。
【0132】
化合物A)、B)及び任意選択でC)の反応の原理は、先の出願番号17186543.9(INV 170338)及び17186544.7(INV 170938)の欧州特許出願に記載される。
【0133】
化合物A)の5員環モノチオカーボネート基の環系は、化合物B)のアミノ基によって開環され、メルカプト基-SHを有する付加物が生じる。
【0134】
付加物のメルカプト基-SHは、-SH反応性基と、特に化合物A)若しくはB)それ自体の、又は追加の化合物C)のいずれかの重合性エチレン性不飽和基と更に反応させてもよい。メルカプト基は、-SH反応性基に付加する。重合性エチレン性不飽和基の-SHへの付加は、マイケル付加又はチオール-エン反応として公知である。
【0135】
以下の表は、本特許出願のコーティング組成物及びシーラントに好適な、環式モノチオカーボネート基(TC)を有する化合物A)、第一級又は第二級アミノ基(略してアミノ基)を有する化合物B)、及び不飽和基を有する化合物C)の組み合わせを示す。A)、B)、及びC)の組み合わせにより、ポリマーP1~P5が得られる。表1には、TC-基、アミノ基、及び官能基の数が列挙される。
【0136】
【表1】
【0137】
ポリマーP1及びP2は、メルカプト基と重合性エチレン性不飽和基(略して不飽和基)との頭尾重付加(head to tail polyaddition)によって得られる。
【0138】
ポリマーP1の場合、モノチオカーボネート基(略してTC-基)は、化合物B)の少なくとも1個のアミノ基によって開環され、メルカプト基及び不飽和基を含む付加物を生じ、次いで頭尾重付加し、例えば以下の反応
【0139】
【化17】
を参照されたい。
【0140】
ポリマーP2にも同じことが適用されるが、不飽和基が化合物B)によって与えられる点のみが異なる。
【0141】
ポリマーP3~P5は、少なくとも2個の化合物が少なくとも2個の官能基を有する通常の重付加反応と同様にして得られる。
【0142】
ポリマーP3は、2個の5員環モノチオカーボネート基を有する化合物A)及び2個のアミノ基を有する化合物B)から得られ、例えば以下の反応
【0143】
【化18】
を参照されたい。
【0144】
ポリマーP4及びP5の場合、追加の化合物C)が使用される。C)の不飽和基は、化合物A)及びB)由来の付加物の任意のメルカプト基と反応する。化合物C)によって与えられる追加の官能基に起因して、上記の表に示されるように、化合物A)又はb)の官能性は少なくとも1に低減されることがある。
【0145】
不飽和基と反応しないメルカプト基-SHは酸化することがあり、ジスルフィド架橋を形成することになることに言及するべきである。そのような酸化は、酸素又は他の酸化物質の存在下室温で起こり得る。ジスルフィド架橋は、得られるポリマーの機械的特性を向上し得る。
【0146】
得られるポリマーは、構造成分として、エチレン基を介してウレタン基の酸素に結合された硫黄原子を有するウレタン基を含む。この構造成分は以下の式によって、表すことができる。
【0147】
【化19】
【0148】
可変要素A~Eは、置換基による任意の可能な置換を表す。
【0149】
好ましいのは、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する、少なくとも1種の化合物A)、B)、又はC)を含むコーティング組成物又はシーラントである。
【0150】
そのような好ましいコーティング組成物又はシーラントは、化合物A)又はB)のうちの少なくとも1種、好ましくは化合物A)又はB)のうちの1種が、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を含む、コーティング組成物又はシーラントを含む。そのようなコーティング組成物又はシーラントは、更なる化合物C)を任意選択で含んでもよいが、更なる化合物C)を必要とはしない。
【0151】
そのような好ましいコーティング組成物又はシーラントは、化合物A)及び化合物B)の両方が重合性エチレン性不飽和基を含まず且つコーティング組成物又はシーラントが化合物C)を含む、コーティング組成物又はシーラントを更に含む。
【0152】
特に好ましいのは、表2による環式モノチオカーボネート基(TC)を有する化合物A)、第一級又は第二級アミノ基(略してアミノ基)を有する化合物B)、及び不飽和基を有する化合物C)を含む、コーティング組成物又はシーラントである。
【0153】
【表2】
【0154】
コーティング組成物又はシーラントは、上記の表において列挙されるようなポリマーP1~P5に必要とされるものより更なる化合物を含んでもよい。特に、コーティング組成物又はシーラントは、1個の官能基を有する追加の化合物A)、B)、又はC)を含んでもよい。1個の官能基を有する化合物の追加の使用により、分子量が低減することがあるか、又は架橋反応が低減することがある。
【0155】
好ましい実施形態において、化合物A)は1バール21℃で液体である。
【0156】
化合物A)は、種々の化合物A)の混合物であってもよい。特に、化合物A)は、1バール21℃で固体である化合物A)を1バール21℃で液体である化合物Aに溶解し、したがって、1バール21℃で液体である、種々の化合物A)の混合物を化合物A)として得ることによって得てもよい。
【0157】
化合物A)、B)及び任意選択でC)は、上に記載されるように反応し、得られるコーティング剤又はシール剤のバインダーであるポリマーを形成する。
【0158】
コーティング組成物又はシーラントは、バインダーに寄与する更なる化合物を含んでもよい。
【0159】
コーティング組成物又はシーラントは、化合物A)の5員環モノチオカーボネート基1mol当たり、化合物B)のアミノ基0.8~1.2molを含むことが好ましい。
【0160】
任意選択で、重合性エチレン性不飽和基以外の-SH反応性基を含む化合物D)を使用して、コーティング組成物又はシーラントのバインダーを形成してもよい。そのような-SH反応性基は、特にエポキシ基である。
【0161】
コーティング組成物又はシーラントは、化合物A)の5員環モノチオカーボネート基1mol当たり、化合物A)、B)、C)、及びD)の-SH反応性基0.5~1.2molを含むことが好ましい。
【0162】
好ましい実施形態において、得られるコーティング剤又はシーラントのバインダーは、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%の化合物A)、B)、及びC)のみから成る。特に好ましい実施形態において、得られるコーティング剤又はシーラントのバインダーは、少なくとも95重量%の化合物A)、B)、及びC)から成る。特に、得られるコーティング剤又はシーラントのバインダーは、100重量%の化合物A)、B)、及びC)から成る。
【0163】
コーティング組成物又はシーラントの更なる構成成分について
コーティング組成物又はシーラントは、バインダーのみから成ってもよく、又は更なる化合物、例えば触媒、安定剤、溶媒、顔料、若しくは充填剤、又は意図される用途に所望であるか若しくは必要とされる更なる添加剤を含んでもよい。
【0164】
触媒を使用して、化合物A)、B)、及び任意選択でC)の反応を補助してもよい。付加反応のラジカル機構は、ラジカルを形成する開始剤によって補助される。そのような開始剤は、ラジカル重合から周知の熱開始剤、レドックス開始剤、電気化学的開始剤、又は光活性開始剤のいずれかである。
【0165】
溶媒を使用して、例えば粘度を調整してもよい。適切な溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジオキサン、メタノール、エタノール、水、テトラヒドロフラン、及びジメチルホルムアミドである。化合物A)、B)並びに任意選択でC)のうちの少なくとも1個が通常液体であり、すでに溶媒として機能し得るため、追加の溶媒が通常必要とされないことが、このプロセスの利点である。
【0166】
安定剤は、例えば、副反応とも思われるS-H基の酸化を低減又は回避するレドックス安定剤であり、加えてもよい。S-H基の酸化により近隣の分子間でジスルフィド架橋が形成されることにより、重合性エチレン性不飽和基との反応に利用可能なS-H基の数を低減するおそれがある。そのような安定剤の例は、トリアルキルホスフィン又はトリアリールホスフィンである。更なる安定剤は、UV安定剤、防腐剤である。
【0167】
充填剤及び顔料を使用して、例えば、コーティング剤又はシール剤のある特定の適用特性及び/又は所望の外観を得てもよい。充填剤の主な目的はまた、間隙(gap)若しくは空洞(cavity)を充填するために必要とされるか又はコーティングの所望の厚さを得るために必要とされるバインダーの量を低減することである。
【0168】
好適な充填剤の例としては、天然に存在するケイ酸塩若しくはケイ酸アルミニウム若しくはケイ酸マグネシウム、例えばカオリン、タルク、ケイ質土、マイカ、又はアルカリ土類金属炭酸塩、好ましくはカルサイトの形態の炭酸カルシウム、白亜、又はドロマイトが挙げられる。更に、酸化物及び水酸化物、例えば石英粉、トリヒドロキシアルミニウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムを挙げることができる。沈降シリカ若しくはケイ酸塩又は焼成シリカは、合成により得られる充填剤である。
【0169】
典型的な顔料は、例えば二酸化チタン、好ましくはルチル型の二酸化チタンである。他の白色又は着色顔料は、例えば酸化亜鉛、バライト、カーボンブラック又はグラファイト又は酸化鉄である。合成有機中空顔料は、同様に公知であり、通常白色顔料とブレンドして使用される。耐磨耗性の高い材料、例えば -酸化アルミニウム、炭化ホウ素、又は炭化ケイ素は、スペシャリティ用途において、微粉砕された形態で少量で利用される。
【0170】
充填剤及び顔料は、混合して使用してもよい。充填剤及び顔料の平均粒径(d50値として表される)は、好ましくは0.1~200μmの範囲、特に1~50μmの範囲である。
【0171】
好ましい実施形態において、コーティング組成物又はシーラントは、充填剤、又は顔料、又はそれらの混合物を含む。コーティング組成物又はシーラントは、すべての化合物A)、B)、及びC)100重量部当たり顔料又は充填剤5~500重量部、より好ましくは10~200重量部を含むことが好ましい。
【0172】
更なる添加剤は、例えば、湿潤剤、例えばポリリン酸ナトリウム又はポリリン酸カリウム、ポリアクリル酸、それらのアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、増粘剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、消泡剤、疎水化剤(hydrophobicizer)、レベリング剤、難燃剤、繊維及び染料、接着促進剤、防食添加剤、帯電防止添加剤若しくは導電性添加剤、コーティング剤若しくはシーラントにバリア機能を与える添加剤、又は屈折率に影響を与えることにより光学的外観(光沢)を改善する添加剤である。
【0173】
コーティング組成物又はシーラントの塗布
コーティング組成物又はシーラントは、少なくとも2つの成分、
少なくとも1個の5員環モノチオカーボネート基を有する化合物A)を含む第1成分、及び
以下アミノ基と称される、第一級若しくは第二級アミノ基、又はブロックされた第一級若しくは第二級アミノ基から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)を含む第2成分
を含む。
【0174】
追加で使用してもよい任意の化合物C)、及びコーティング組成物又はシーラントの任意の更なる構成成分は、第1成分又は第2成分に加えてもよい。化合物C)はまた、第1及び第2成分が混合された後で加えてもよい。
【0175】
化合物B)のアミノ基がブロックされたアミノ基である場合、第1及び第2成分は組み合わせて、安定であり且つ保存可能なコーティング組成物又はシーラントを提供してもよい。そのような安定であり且つ保存可能な組成物は1K(一成分)組成物として公知である。
【0176】
化合物B)のアミノ基がブロックされたアミノ基でない場合、第1及び第2成分は別々に保つべきであり、コーティング組成物又はシーラントとして塗布される直前に混合するべきであり、そのような組成物は2K(二成分)組成物として公知である。
【0177】
化合物A)、B)、及びC)間の反応は、通常、すでに室温(20℃)で開始し、室温で完了してもよい。反応は、コーティング組成物又はシーラントの温度を、例えば最高100℃まで上昇させることによって、補助してもよい。代替的に又は追加的に、反応のための活性化エネルギーを、高エネルギー放射線、例えば可視光又はUV光によって与えてもよい。反応が低温において容易に起こり、著しい更なるエネルギー、例えば高温又は高エネルギー放射線の供給を必要としないことは本発明の利点である。
【0178】
コーティング組成物は、通常の手段、例えばナイフコーティング、ローラーコーティング、噴霧によって、任意の表面、特に木材の表面、鉱物表面、金属表面、布地、又は合成ポリマーの表面に塗布してもよい。コーティング組成物は、単一コーティングとして使用してもよく、又は多層コーティング系若しくは粉末コーティングにおいて使用してもよい。
【0179】
コーティングは、保護コーティング又は装飾コーティングであってもよい。
【0180】
好ましい実施形態において、コーティング組成物を表面に塗布し硬化させて、厚さ0.01~10ミリメートルのコーティングを得る。
【0181】
シーラントを間隙又は空洞に塗布し硬化させて、シールされた材料を得てもよい。シーラントを使用して、任意の種類の材料、例えば鉱物材料、例えばコンクリート、乾式壁、スクリード、又は木材における間隙又は空洞を埋めてもよい。
【0182】
コーティングは、及びシールされた材料は、本発明の方法によって容易に且つ経済的に得られる。方法は湿度又は酸素に影響されにくい。方法は通常、エネルギーを更に供給せずに室温で実施することができる。方法は、メルカプタン基を有する化合物の存在を必要としないが、それにもかかわらず、硫黄及びそれから得られる恩恵、例えば接着性、バリア機能、耐化学性、低減した腐食性、及び高屈折率を含むコーティング剤及びシール材料を提供する。得られるコーティング剤及びシール剤は、良好な適用特性、特に良好な機械特性を有する。
【実施例
【0183】
[実施例]
試験法:
振り子硬度
コーティング組成物を室温でガラスプレートにコーティングし、6日間室温で保存する。その後、それらを5日間60℃で保存した。
【0184】
ガラスプレート上でKoenigの方法によって振り子硬度を決定した(DIN EN ISO 1522)。
【0185】
表3に振動数を列挙する。
【0186】
クロスカット
Bonderパネル上でDIN EN ISO 2409に準拠して、クロスカットを決定した。
【0187】
得られたコーティング剤を最初に室温で6日間保存した。その後、それらを5日間60℃で保存した。硬化に続いて、1日間(1d)又は7日間(7d)、23±2℃及び湿度50±10%でコンディショニングした。コーティングのパネルへの接着性を、0~100%の目盛りに従って判断した。100%が「観察されるコーティング層の剥離がない」を表し、0が「完全な剥離」を表す。
【0188】
Erichsen深絞り
DIN EN ISO 20482/DIN EN ISO 1520に準拠して、Erichsen深絞りを決定した。Erichsen深絞りは、コーティングの可撓性を表す。そのような目的のために、曲げ試験機においてコーティングに曲げ応力を加えた。
【0189】
コーティング組成物を、室温で金属プレートにコーティングし、6日間室温で保存する。その後、それらを5日間60℃で保存した。金属プレートのコーティング側を、規定圧力を有するパンチで変形させる。金属プレートの他方側に、隆起が形成される。コーティングにおける最初の亀裂が目で見えるようになる際の隆起の深さがコーティングの弾性の尺度である。表3に隆起の深さの値をミリメートル(mm)で報告する。
【0190】
以下の化合物を実施例において使用した:
化合物A:
【0191】
【化20】
のビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)]
【0192】
【化21】
の1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-ビス[2-オキソ-1,3-オキサチオラン-5-イル]エステル
化合物B:
【0193】
【化22】
の1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
化合物C:
【0194】
【化23】
のジ-ヒドロキシエチルメタクリレート-トリメチルヘキシル-ジカルバメート
ビスフェノールA-グリセロレート-ジメタクリレート
【0195】
【化24】
トリメチロールプロパントリメタクリレート
【0196】
【0197】
【化25】
のビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)の合成
第1工程:1,4-ブタンジオールビスグリシジルエーテルのホスゲン化
2つの凝縮器(-30℃及び-78℃(ドライアイス))、ホスゲン浸漬管、及び内部温度計が装備された2L撹拌槽型ガラス反応器(stirred tank glas reactor)に、980g(4.60mol、1.00eq.)の1,4-ブタンジオールビスグリシジルエーテルを窒素雰囲気下導入した。出発材料を加えた後、槽型反応器の冷却を作動させ、15℃に調整した。反応器がこの温度に達した後、13.5g(0.0490mol、1.00mol%)の塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl)を加えた。TBAClの溶媒和の後、気体ホスゲン(全体で1011g、10.2mol、2.22eq.)を、浸漬管を介して反応器に加えた。反応混合物の温度を継続的に監視し、ホスゲン添加の速度を注意深く調整することによって25℃未満に保った。全体としてホスゲン添加は約10時間かかった。ホスゲン添加が完了した後、反応器の当初の冷却をわずかな加熱(30℃)に置き換えた。反応混合物を2時間この温度で撹拌した。その後、反応混合物を、一晩30℃で窒素を用いてストリッピングしてホスゲンなしにした。得られたわずかに粘性であり無色の油(1834g、4.59mol、>99%収率、位置異性体純度:ca.95%)を、チオカーボネート形成のために更なる精製なしで直接使用した。
【0198】
第2工程:硫黄化合物との反応
クロロギ酸β-クロロアルキル([2-クロロ-1-[4-(3-クロロ-2-クロロカルボニルオキシ-プロポキシ)ブトキシメチル]エチル]カルボノクロリデート)(845g、2.1mol)及びジクロロメタン(2.5L)それぞれを8L反応器に配置した。溶液を0℃まで冷却してから、Na2S(2equiv.、15wt%の水溶液)をゆっくりと加え、温度を5℃で維持した。添加を完了した後、反応混合物を室温まで昇温させた。相を分離させ、ジクロロメタン(0.5L)で水性相を抽出した。減圧下で、合わせた有機相から溶媒を除去した。粘性の油を0.3Lのジクロロメタンに再溶解させ、セライトによってろ過した。減圧下での溶媒の除去後、所望の生成物を透明な粘性の油(656g、96%)として得た。
【0199】
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-ビス[2-オキソ-1,3-オキサチオラン-5-イル]エステル
【0200】
【化26】
の合成
第1工程:ビス(2,3-エポキシプロピル)-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートのホスゲン化
2つの凝縮器(-30℃及び-78℃(ドライアイス))、ホスゲン浸漬管、及び内部温度計が装備された250ml撹拌槽型ガラス反応器に、115g(0.404mol、1.00eq.)のビス(2,3-エポキシプロピル)-シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレートを窒素雰囲気下導入した。出発材料を加えた後、2.20g(8.00mmol、1mol%)の塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl)を加えた。TBAClの溶媒和の後、気体ホスゲン(全体で100g、1.01mol、2.50eq.)を、浸漬管を介して反応器に加えた。反応混合物の温度を継続的に監視し、ホスゲン添加の速度を注意深く調整することによって40℃未満に保った。全体としてホスゲン添加は約4時間かかった。ホスゲン添加が完了した後、反応混合物を45℃まで加熱し、更に2時間撹拌した。その後、反応混合物を、一晩45℃で窒素を用いてストリッピングしてホスゲンなしにした。得られた高粘性で無色の油(179g、0.370mol、92%収率、位置異性体純度:ca.95%)を、チオカーボネート形成のために更なる精製なしで直接使用した。
【0201】
第2工程:硫黄化合物との反応
クロロギ酸β-クロロアルキル(ビス(3-クロロ-2-クロロカルボニルオキシ-プロピル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート)(320g、0.66mol)及びジクロロメタン(0.8L)を4L反応器に配置した。溶液を0℃まで冷却してから、Na2S(2equiv.、15wt%の水溶液)をゆっくりと加え、温度を5℃で維持した。添加を完了した後、反応混合物を室温まで昇温させた。相を分離させ、ジクロロメタン(0.5L)で水性相を抽出した。減圧下で、合わせた有機相から溶媒を除去した。粘性の油を0.3Lのジクロロメタンに再溶解させ、セライトによってろ過した。減圧下での溶媒の除去後、所望の生成物を透明な粘性の油(240g、74%)として得た。
【0202】
[実施例1]
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)][5g]及びビスフェノールA-グリセロレート-ジメタクリレート(CAS 1565-94-2)[7.9g]を室温で撹拌下混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン[2.2g]を加え、室温で更に20分間撹拌を継続し、経時的に粘度を増大させた。反応混合物を、様々な基材:
ガラス

ポリカーボネート(PC)
を使用してドクターブレード(60mu)によるコーティング塗布に移した。
【0203】
均質の被膜を様々な基材に塗布することができた。試料を完全に乾燥するまで室温で硬化させた(t<24h)。
【0204】
[実施例2]
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)][5g]、トリメチロールプロパントリメタクリレート[1.75g]及びジ-HEMA-トリメチルヘキシルジカルバメート(CAS 72869-86-4、異性体混合物)[3.65g]を室温で撹拌下混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン[2.2g]を加え、室温で更に20分間撹拌を継続し、経時的に粘度を増大させた。反応混合物を、様々な基材:
ガラス

ポリカーボネート(PC)
を使用してドクターブレード(60mu)によるコーティング塗布に移した。
【0205】
均質の被膜を様々な基材に塗布することができた。試料を完全に乾燥するまで室温で硬化させた(t<48h)。
【0206】
[実施例3]
ビス-1,3-オキサチオラン-2-オン,5,5'-[1,4-ブタンジイルビス(オキシメチレン)][5g]、トリメチロールプロパントリメタクリレート[3.49g]を室温で撹拌下混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン[2.2g]を加え、室温で更に20分間撹拌を継続し、経時的に粘度を増大させた。反応混合物を、ドクターブレード(60mu)によるコーティング塗布に移した。基材:
ガラス、鋼。
【0207】
均質の被膜を様々な基材に塗布することができた。試料を完全に乾燥するまで室温で硬化させた(t<48h)。
【0208】
[実施例4]
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸,1,2-ビス[2-オキソ-1,3-オキサチオラン-5-イル]エステル[5g]、トリメチロールプロパントリメタクリレート[2.78g]を室温で撹拌下混合した。続いて、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン[2.1g]を加え、更に3分間撹拌を継続し、経時的に粘度を増大させた。反応混合物を、ガラス、鋼、及びPC基材を用いて、ドクターブレード(60mu)によるコーティング塗布に移した。
【0209】
室温で90分後、コーティングは完全に乾燥した。
【0210】
【表3】

本発明は例えば以下の態様を含む。
[項1]
コーティングを、又はシールされた材料を調製する方法であって、
少なくとも1個の5員環モノチオカーボネート基を有する化合物A)を含む第1成分、及び 以下アミノ基と称される、第一級若しくは第二級アミノ基、又はブロックされた第一級若しくは第二級アミノ基から選択される少なくとも1個のアミノ基を有する化合物B)を含む第2成分
を含み、化合物A)又はB)が少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を追加的に有してもよい、
コーティング組成物又はシーラントが使用され、
コーティング組成物又はシーラントは少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する化合物C)を更に含んでもよい、方法。
[項2]
化合物A)が式I
【化27】
[R1a~R4aは、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R2a、R4a、及びチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよい]
の化合物、
又は式II
【化28】
[R1b~R4bは、互いに独立して水素又は最大50個までの炭素原子を有する有機基を表し、ここで、代替として、R2b、R4b、及びモノチオカーボネート基の2個の炭素原子は、一緒になって5~10員の炭素環を形成してもよく、R1b~R4b基のうちの1個はZへの連結基であり、nは、少なくとも2の整数を表し、Zは、n価の有機基を表す]
の化合物である、項1に記載の方法。
[項3]
コーティング組成物又はシーラントが、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を有する、少なくとも1種の化合物A)、B)、又はC)を含む、項1又は2に記載の方法。
[項4]
化合物A)又はB)のうちの1種が、少なくとも1個の重合性エチレン性不飽和基を含む、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項5]
化合物A)及び化合物B)が、重合性エチレン性不飽和基を含まず、且つコーティング又はシーラント組成物が化合物C)を含む、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項6]
化合物A)が、1バール21℃で液体である、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
[項7]
液体の化合物A)が、1バール21℃で固体である化合物A)を1バール21℃で液体である化合物Aに溶解することによって得られる、項6に記載の方法。
[項8]
コーティング組成物又はシーラントが、化合物A)の5員環モノチオカーボネート基1mol当たり、化合物B)のアミノ基0.8~1.2molを含む、項1から7のいずれか一項に記載の方法。
[項9]
コーティング組成物又はシーラントが、すべての化合物A)、B)、及びC)の100重量部当たり、顔料又は充填剤5~500重量部を含む、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
[項10]
コーティング組成物を表面に塗布し、硬化させて、厚さ0.01~10ミリメートルのコーティングを得る、項1から9のいずれか一項に記載の方法。
[項11]
シーラントを間隙又は空洞に塗布し、硬化させて、シールされた材料を得る、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
[項12]
式III
【化29】
[式中、Gは2~10個の炭素原子を有するアルキレン基を表す]
の化合物A)。
[項13]

【化30】
の化合物A)。