(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】セグメント(S1)、(S2)、及び(S3)を含むアモルファスポリマー(P)
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20241007BHJP
【FI】
C08G65/40
(21)【出願番号】P 2021558900
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2020056360
(87)【国際公開番号】W WO2020200666
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-27
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マレツコ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンネンベルガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルムス,アクセル
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0310804(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103613763(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104497300(CN,A)
【文献】特開2008-037897(JP,A)
【文献】特開平03-285916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00- 67/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
のセグメント(S1)と;
式
【化2】
のセグメント(S2)と;
式
【化3】
のセグメント(S3)と
を含むアモルファスポリマー(P)であって、
アモルファスポリマー(P)に含まれるセグメント(S1)及びセグメント(S2)の全モル数基準で
80.1~89モル%のセグメント(S1)、及び
11~19.9モル%のセグメント(S2)
を含む、アモルファスポリマー(P)。
【請求項2】
セグメント(S1)を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU1)を含む、請求項1に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項3】
芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)が、4,4’-ジハロゲンジフェニルスルホン及び4,4’-ビス[(4-クロロフェニル)スルホニル]-1,1’-ビフェニルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項2に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項4】
セグメント(S2)を含む少なくとも1種のジハロゲン化合物(D2,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU2)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項5】
2.0から≦5.0までの範囲内の多分散性(Q)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項6】
ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として使用し、狭分散性ポリメチルメタクリレートを測定において標準物質として使用した、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される30,000~120,000g/molの範囲内の平均分子量(M
W)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項7】
ジハロゲン化合物(D2,1)が4,4’-ジハロゲンベンゾフェノンである、請求項4に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項8】
セグメント(S2)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(D2,2)と少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(aDHa1)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU3)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項9】
セグメント(S3)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(D3,1)と少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(aDHa2)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU4)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項10】
芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)及び/又は(aDHy2)が4,4’-ビフェノールである、請求項
2又は4に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項11】
アモルファスポリマー(P)が繰り返し単位(RU1)及び(RU2)を含み、繰り返し単位(R1)が、セグメント(S1)を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)との反応により得ることができ、繰り返し単位(RU2)が、セグメント(S2)を含む少なくとも1種のジハロゲン化合物(D2,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)との反応により得ることができ、アモルファスポリマー(P)が繰り返し単位(RU1)及び(RU2)以外の繰り返し単位を含まない、請求項1から
7及び10のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項12】
繰り返し単位(RU1)が、モノマーである4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ビフェノールの反応により得られる、請求項2
、3及び11のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項13】
繰り返し単位(RU2)が、モノマーである4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4,4’-ビフェノールの反応により得られる、請求項4
又は11に記載のアモルファスポリマー(P)。
【請求項14】
(A1)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)と、
(A2)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)と、
(B1)4,4’-ビフェノールと、
(C)反応混合物(R
G)中の成分(C)の全質量に対して少なくとも80質量%の炭酸カリウムを含む、少なくとも1種の炭酸塩成分と、
(D)少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒と
を成分として含む反応混合物(R
G)を転化させることにより、請求項1から13のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー(P)を製造する方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー
(P)を含む、組成物。
【請求項16】
請求項1から13のいずれか一項に記載のアモルファスポリマー
(P)又は請求項15に記載の組成物を含む、物品。
【請求項17】
継手、パイプ、バルブ、マニフォールド、航空機の内装パネル又は部材、調理器具、医療機器又は機器の部品、医療用ケース又はトレー、実験動物のケージ、実験器具、コーティング、複合材、ファイバー、及び布からなる群から選択される、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
透明である、請求項16又は17に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン基を含有するセグメント(S1)、ケトン基を含有するセグメント(S2)、及びポリアリーレン基を含有するセグメント(S3)を含む、アモルファスポリマー(P)に関する。さらに、本発明は、前記アモルファスポリマー(P)を製造する方法、アモルファスポリマー(P)を含む組成物、及びアモルファスポリマー(P)を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、それらが高い耐熱性、良好な機械的特性、及び固有の難燃性を特徴とするという点で、高性能な熱可塑性物質である(E.M.Koch、H.-M.Walter、Kunststoffe 80(1990)1146;E.Doering、Kunststoffe 80、(1990)1149、N.Inchaurondo-Nehm、Kunststoffe 98、(2008)190)。ポリアリーレンエーテルは生体適合性が高く、そのため透析膜を形成するための材料としても使用される(N.A.Hoenich、K.P.Katapodis、Biomaterials 23(2002)3853)。
【0003】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、とりわけ、最初にジヒドロキシ成分及び水酸化物から塩を形成させる水酸化物法によって、又は炭酸塩法のいずれかによって、形成することができる。
【0004】
水酸化物法によるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの形成に関する一般的な情報は、とりわけR.N.Johnsonらの、J.Polym.Sci.A-1 5(1967)2375において見られ、一方で炭酸塩法はJ.E.McGrathらの、Polymer 25(1984)1827に記載されている。
【0005】
非プロトン性溶媒中、1種又は複数種のアルカリ金属又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩の存在下で、芳香族ビスハロゲン化合物及び芳香族ビスフェノール又はその塩からポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを形成する方法は、当業者に既知であり、例えばEP-A297363に記載されている。
【0006】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーなどの高性能な熱可塑性物質は、典型的には高い反応温度において、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの双極性非プロトン性溶媒中で行われる、重縮合反応により形成される。
【0007】
ポリマー膜におけるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの応用はますます重要である。
【0008】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーはアモルファスである。アモルファスのポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、ポリフェニレンスルフィドのような半結晶性ポリマーと比較して、FAM B(トルエン含有試験流体)又はSkydrol(リン酸エステルの混合物)のような有機流体に対しての耐性が劣っている。
【0009】
有機溶媒に対する耐性を改善するために、EP2225328は、スルホニル基、ケトン基、及びポリアリーレン基を含有する半結晶性ポリマーを記載している。EP2225328によれば、半結晶性ポリマーを得るために、好ましくは4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルをジフェニルスルホン中で反応させる。EP2225328による半結晶性ポリマーの融点は300℃を超える。しかしEP2225328に記載されるポリマーは、N-メチルピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のような一般的な溶媒中で不十分な溶解性を示し、したがって、これらのポリマーを使用して転相により膜を製造する場合に問題が生じる。
【0010】
さらに、EP2225328に記載されるポリマーは透明ではない。
【0011】
JP2008-37897は、スルホン基、ケトン基、及びポリアリーレン基を含んでいてもよい、スルホン酸基含有光架橋性ポリマーを開示している。
【0012】
L.H.Xiaoら、Chin.Chem.Lett.19(2008)227の論文「Synthesis and characterization of novel poly(aryl ether sulfone ketone)s containing phthalazinone and biphenyl moieties」は、とりわけ、4,4’-ビフェノール(BP)、4,4’ジクロロベンゾスルホン(DCS)、及び4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(DFK)を反応させることによる、アモルファスのポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)の製造を開示している。
【0013】
CN103613763及びCN104497300は、スルホン基、ケトン基、及びポリアリーレン基を含む半結晶性高流動ポリフェニレンエーテルスルホンケトンの合成を記載している。
【0014】
GB2241245は、スルホン基対ケトン基のモル比が1:1である、スルホン基、ケトン基、及びポリアリーレン基を含むアモルファスのポリスルホンエーテルケトンポリマーを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】EP-A297363
【文献】EP2225328
【文献】JP2008-37897
【文献】CN103613763
【文献】CN104497300
【文献】GB2241245
【非特許文献】
【0016】
【文献】E.M.Koch、H.-M.Walter、Kunststoffe 80(1990)1146
【文献】E.Doering、Kunststoffe 80、(1990)1149
【文献】N.Inchaurondo-Nehm、Kunststoffe 98、(2008)190
【文献】N.A.Hoenich、K.P.Katapodis、Biomaterials 23(2002)3853
【文献】R.N.Johnsonら、J.Polym.Sci.A-1 5(1967)2375
【文献】J.E.McGrathら、Polymer 25(1984)1827
【文献】L.H.Xiaoら、Chin.Chem.Lett.19(2008)227「Synthesis and characterization of novel poly(aryl ether sulfone ketone)scontaining phthalazinone and biphenyl moieties」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明の目的は、先行技術の欠点を有しない、又は先行技術の欠点が軽減した、アモルファスポリマー(P)を提供することである。アモルファスポリマー(P)はFAM B又はSkydrolのような有機溶媒に対して良好な耐薬品性を示すべきである。本発明の別の目的は、前記アモルファスポリマー(P)を製造する方法を提供することである。この方法は好ましくは短い反応時間内に行われるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、
式
【化1】
のセグメント(S1)と;
式
【化2】
のセグメント(S2)と;
式
【化3】
のセグメント(S3)と
を含むアモルファスポリマー(P)によって実現される。
【0019】
この目的は、
式
【化4】
のセグメント(S1)と、
式
【化5】
のセグメント(S2)と、
式
【化6】
のセグメント(S3)と
を含むアモルファスポリマー(P)であって、
アモルファスポリマー(P)に含まれるセグメント(S1)及びセグメント(S2)の全モル数基準で
80~90モル%のセグメント(S1)、及び
10~20モル%のセグメント(S2)
を含む、アモルファスポリマー(P)によってさらに実現される。
【0020】
驚くことに、アモルファスポリマー(P)がFAM B又はSkydrolのような有機溶媒に対して良好な耐薬品性を示すこと、及びアモルファスポリマーがN-メチルピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のような一般的な溶媒中で良好な溶解性を示すことが分かった。さらに、アモルファスポリマー(P)で作製された物品は透明である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を以下でより詳細に説明する。
【0022】
本発明によるアモルファスポリマー(P)は一般に、上記で定義されるセグメント(S1)、(S2)、及び(S3)を含む。セグメント(S1)、(S2)、及び(S3)は、本発明によるアモルファスポリマー(P)においてその骨格、その鎖末端、及び/又はその繰り返し単位に存在していてもよい。好ましくは、セグメント(S1)、(S2)、及び(S3)は、アモルファスポリマー(P)の繰り返し単位中に含まれる。本発明によるアモルファスポリマー(P)は、好ましくは2個以上の繰り返し単位から得られる。より好ましくは、これは2種の異なる繰り返し単位から得られる。
【0023】
好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)は、それぞれの場合でアモルファスポリマー(P)に含まれるセグメント(S1)及びセグメント(S2)の全モル数基準で、80~90モル%、より好ましくは80.1~89モル%、さらにより好ましくは80.2~88モル%、特に好ましくは80.3~87モル%、最も好ましくは80.4~86.5モル%のセグメント(S1)、及び10~20モル%、より好ましくは11~19.9モル%、さらにより好ましくは12~19.8モル%、特に好ましくは13~19.7モル%、最も好ましくは13.5~19.6モル%のセグメント(S2)を含む。
【0024】
したがって、本発明の別の目的は、
アモルファスポリマー(P)に含まれるセグメント(S1)及びセグメント(S2)の全モル数基準で、
80~90モル%のセグメント(S1)、及び
10~20モル%のセグメント(S2)
を含む、アモルファスポリマー(P)である。
【0025】
別の好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)に含有される、セグメント(S2)のモル数に対するセグメント(S1)のモル数の比は、4~9、より好ましくは4.02~8.09、さらにより好ましくは4.05~7.33、特に好ましくは4.08~6.69、最も好ましくは4.10~6.41である。
【0026】
好ましい実施形態における本発明によるアモルファスポリマー(P)の点から見た用語「アモルファス」は以下のように定義される。好ましい実施形態において、用語「アモルファス」は、アモルファスポリマー(P)が0~5W/gの範囲内、好ましくは0~4W/gの範囲内、さらにより好ましくは0~3W/gの範囲内、特に好ましくは0~2.5W/gの範囲内、最も好ましくは0~2W/gの範囲内の融解エンタルピーΔHmを有することを意味する。別の最も好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)は融点を示さない。この場合、融解エンタルピーΔHmは0である。略称W/gはワット毎グラムを意味する。
【0027】
好ましい実施形態における本発明によるアモルファスポリマー(P)の点から見た用語「アモルファス」は、さらに以下のように定義される。好ましい実施形態において、用語「アモルファス」はさらに、アモルファスポリマー(P)が0~5W/gの範囲内、好ましくは0~4W/gの範囲内、さらにより好ましくは0~3W/gの範囲内、特に好ましくは0~2.5W/gの範囲内、最も好ましくは0~2W/gの範囲内の結晶化エンタルピーΔHcを有することを意味する。別の最も好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)は結晶点を示さない。この場合、結晶化エンタルピーΔHmは0である。略称W/gはワット毎グラムを意味する。
【0028】
融解エンタルピーΔHm(存在する場合)及び結晶化エンタルピーΔHc(存在する場合)は、20℃で開始し、アモルファスポリマー(P)の試料を20K/minの速度で360℃の温度まで加熱し、続いて>100K/minの速度で20℃まで冷却し、続いて20K/minの速度で360℃まで2回目加熱を行い、続いて>100K/minの速度で20℃まで2回目冷却を行うDSC(示差走査熱量測定法)により測定され、融解エンタルピーΔHm及び結晶化エンタルピーΔHcは2回目の加熱及び2回目の冷却の間に測定される。
【0029】
アモルファスポリマー(P)を250℃で0.5時間アニーリングすると、場合によっては0.1から<4W/gの範囲内の融解エンタルピーΔHmを示す小さい相転移(融点)をDSCにより検出できる可能性がある。アモルファスポリマー(P)を250℃で0.5時間アニーリングすると、さらに、場合によっては0.1から<4W/gの範囲内の結晶化エンタルピーΔHcを示す小さい相転移(結晶点)をDSCにより検出できる可能性がある。
【0030】
アモルファスポリマー(P)をアニーリングしない場合、好ましい実施形態においてDSC(上記の方法を使用)により融点を検出することができない。アモルファスポリマー(P)をアニーリングしない場合、さらに、好ましい実施形態においてDSC(上記の方法を使用)により結晶点を検出することができない。
【0031】
繰り返し単位(RU1)
上記のようなアモルファスポリマー(P)は、少なくとも1個のセグメント(S1)を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU1)を含んでいてもよい。芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)は「芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)」とも呼ばれる。これらの用語は同義に使用され、同じ意味を有する。繰り返し単位(RU1)はセグメント(S1)を含む。繰り返し単位(RU1)は2個以上のセグメント(S1)を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)は1個のセグメント(S1)を含む。繰り返し単位(RU1)はセグメント(S2)及び/又はセグメント(S3)も含んでいてもよい。これはまたセグメント(S2)及びセグメント(S3)を含んでいなくてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)はセグメント(S1)及びセグメント(S2)又はセグメント(S3)を含む。より好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)はセグメント(S1)及びセグメント(S3)を含む。
【0032】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)はセグメント(S1)及びセグメント(S2)又はセグメント(S3)からなる。最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)はセグメント(S1)及びセグメント(S3)からなる。
【0033】
芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)から繰り返し単位(RU1)を得ることができるような芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)は、好ましくは4,4’-ジハロジフェニルスルホン又は4,4’-ビス[(4-クロロフェニル)スルホニル]-1,1’-ビフェニルである。より好ましくは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンである。さらにより好ましくは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0034】
芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)から繰り返し単位(RU1)を得ることができるような芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)は、好ましくは4,4’-ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、又はそれらの混合物であり、4,4’-ビフェノールが特に好ましい。
【0035】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)は、モノマーである4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ビフェノールの反応により得られる。
【0036】
繰り返し単位(RU2)
上記のようなアモルファスポリマー(P)は、少なくとも1個のセグメント(S2)を含む少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)と少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU2)を含んでいてもよい。芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)は「芳香族ジハロゲンケトン(D2,1)」とも呼ばれる。これらの用語は同義に使用され、同じ意味を有する。繰り返し単位(RU2)はセグメント(S2)を含む。繰り返し単位(R2)は2個以上のセグメント(S2)を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)は1個のセグメント(S2)を含む。繰り返し単位(RU2)はセグメント(S1)及び/又はセグメント(S3)も含んでいてもよい。これはまたセグメント(S1)及びセグメント(S3)を含んでいなくてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)又はセグメント(S3)を含む。より好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)はセグメント(S2)及びセグメント(S3)を含む。
【0037】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)又はセグメント(S3)からなる。最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)はセグメント(S2)及びセグメント(S3)からなる。
【0038】
芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)から繰り返し単位(RU2)を得ることができるような芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)は、好ましくは4,4’-ジハロベンゾフェノンである。より好ましくは、4,4’-ジハロベンゾフェノンは、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、4,4’-ジクロロベンゾフェノンが特に好ましい。
【0039】
芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)から繰り返し単位(RU2)を得ることができるような芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)は、好ましくは4,4’-ビフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、又はそれらの混合物であり、4,4’-ビフェノールが特に好ましい。
【0040】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU2)は、モノマーである4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4,4’-ビフェノールの反応により得られる。
【0041】
繰り返し単位(RU3)
上記のようなアモルファスポリマー(P)は、少なくとも1個のセグメント(S2)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(D2,2)と少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(aDHa1)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU3)を含んでいてもよい。繰り返し単位(RU3)はセグメント(S2)を含む。繰り返し単位(R3)は2個以上のセグメント(S2)を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)は1個のセグメント(S2)を含む。繰り返し単位(RU3)はセグメント(S1)及び/又はセグメント(S3)も含んでいてもよい。これはまたセグメント(S1)及びセグメント(S3)を含んでいなくてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)又はセグメント(S3)を含む。より好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)を含む。
【0042】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)又はセグメント(S3)からなる。最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)はセグメント(S2)及びセグメント(S1)からなる。
【0043】
芳香族ジヒドロキシ化合物(D2,2)から繰り返し単位(RU3)を得ることができるような芳香族ジヒドロキシ化合物(D2,2)は、好ましくは4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンである。
【0044】
芳香族ジハロゲン化合物(aDHa1)は、好ましくは4,4’-ジハロジフェニルスルホン又は4,4’-ビス[(4-クロロフェニル)スルホニル]-1,1’-ビフェニルである。より好ましくは、これは4,4’-ジハロジフェニルスルホンである。さらにより好ましくは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0045】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU3)は、モノマーである4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの反応により得られる。
【0046】
繰り返し単位(RU4)
上記のようなアモルファスポリマー(P)は、少なくとも1個のセグメント(S3)を含む少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(D3,1)と少なくとも1種の芳香族ジハロゲン化合物(aDHa2)との反応により得ることができる繰り返し単位(RU4)を含んでいてもよい。繰り返し単位(RU4)はセグメント(S3)を含む。繰り返し単位(R4)は2個以上のセグメント(S3)を含んでいてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)は1個のセグメント(S3)を含む。繰り返し単位(RU4)はセグメント(S1)及び/又はセグメント(S2)も含んでいてもよい。これはまたセグメント(S1)及びセグメント(S2)を含んでいなくてもよい。好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)はセグメント(S3)及びセグメント(S1)又はセグメント(S2)を含む。より好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)はセグメント(S3)及びセグメント(S1)を含む。
【0047】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)は、セグメント(S3)及びセグメント(S1)又はセグメント(S2)からなる。最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)はセグメント(S3)及びセグメント(S1)からなる。この場合、繰り返し単位(R4)は繰り返し単位(RU1)と等しい。
【0048】
芳香族ジヒドロキシ化合物(D3,1)から繰り返し単位(RU4)を得ることができるような芳香族ジヒドロキシ化合物(D3,1)は、好ましくは4,4’-ビフェノールである。
【0049】
芳香族ジハロゲン化合物(aDHa2)は、好ましくは4,4’-ジハロジフェニルスルホン又は4,4’-ビス[(4-クロロフェニル)スルホニル]-1,1’-ビフェニルである。より好ましくは、これは4,4’-ジハロジフェニルスルホンである。さらにより好ましくは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、4,4’-ジクロロジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0050】
特に好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU4)は、モノマーである4,4’-ビフェノール及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの反応により得られる。この場合、繰り返し単位(R4)は繰り返し単位(RU1)と等しい。
【0051】
アモルファスポリマー(P)は、一般に≦5、好ましくは≦4.5の多分散性(Q)を有する。
【0052】
多分散性(Q)は比Mw:Mn(Mw/Mn)と定義される。好ましい一実施形態において、アモルファスポリマー(P)の多分散性(Q)は2.0から≦5までの範囲内、好ましくは2.1から≦4.5までの範囲内である。
【0053】
質量平均分子量(MW)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用して測定される。
【0054】
アモルファスポリマー(P)の多分散性(Q)及び平均分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定した。ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒として使用し、狭分散性ポリメチルメタクリレートを測定において標準物質として使用した。
【0055】
本発明の方法により得ることができるアモルファスポリマー(P)の質量平均分子量(MW)は、一般に30,000~120,000g/molの範囲内、好ましくは40,000~100,000g/molの範囲内、より好ましくは45,000~80,000g/molの範囲内である。質量平均分子量(MW)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される。この測定は上記のように行われる。
【0056】
アモルファスポリマー(P)の末端基は一般に、ハロゲン基、特に塩素基か、又はエーテル化基、特にアルキルエーテル基のいずれかである。エーテル化末端基は、末端OH/フェノキシド基を適切なエーテル化剤と反応させることにより得ることができる。
【0057】
適切なエーテル化剤の例は、単官能性のハロゲン化アルキル又はハロゲン化アリール物、例えばC1~C6塩化アルキル、臭化アルキル、又はヨウ化アルキル、好ましくは塩化メチル、又は塩化ベンジル、臭化ベンジル、若しくはヨウ化ベンジル、又はそれらの混合物である。本発明によるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの末端基は、好ましくはハロゲン基、特に塩素であり、さらにまたアルコキシ基、特にメトキシ、アリールオキシ基、特にフェノキシ、又はベンジルオキシである。
【0058】
アモルファスポリマー(P)の全質量に対する、アモルファスポリマー(P)に含有される繰り返し単位(RU1)、(RU2)、(RU3)、及び(RU4)の全質量の比は、有利には0.7を超える。この比は好ましくは0.8を超え、より好ましくは0.9を超え、さらにより好ましくは0.95を超える。最も好ましくは、本発明によるポリマーは、繰り返し単位(RU1)、(RU2)、(RU3)、及び(R4)以外の繰り返し単位を含まない。
【0059】
好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)の全質量に対する、アモルファスポリマー(P)に含有される繰り返し単位(RU1)、(RU2)、及び/又は(RU3)の全質量の比は、有利には0.7を超える。この比は好ましくは0.8を超え、より好ましくは0.9を超え、さらにより好ましくは0.95を超える。最も好ましくは、本発明によるポリマーは、繰り返し単位(RU1)、(RU2)、及び/又は(RU3)以外の繰り返し単位を含まない。
【0060】
別のより好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)の全質量に対する、アモルファスポリマー(P)に含有される繰り返し単位(RU1)及び(RU2)の全質量の比は、有利には0.7を超える。この比は好ましくは0.8を超え、より好ましくは0.9を超え、さらにより好ましくは0.95を超える。最も好ましくは、本発明によるポリマーは、繰り返し単位(RU1)及び(RU2)以外の繰り返し単位を含まない。
【0061】
好ましい実施形態において、繰り返し単位(RU1)は、モノマーである4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ビフェノールの反応により得ることができ、繰り返し単位(RU2)は、モノマーである4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4,4’-ビフェノールの反応により得ることができ、及び/又は繰り返し単位(RU3)は、モノマーである4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン及び4,4’-ジクロロジフェニルスルホンの反応により得ることができる。
【0062】
好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)は、繰り返し単位(RU1)、(RU2)、及び/又は(RU3)を製造するための上記で定義される化合物の反応により得ることができ、したがって上記の説明及び選択が適用される。
【0063】
好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)は、
芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)と芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)との反応、及び
芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)と芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy2)との反応
により得ることができ、
ここで芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)及び(aDHy2)は共に4,4’-ビフェノールであり、芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)は4,4’-ジクロロジフェニルスルホンであり、反応で使用される芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)のモル量は、80~90モル%、より好ましくは80.1~89モル%、さらにより好ましくは80.2~88モル%、特に好ましくは80.3~87モル%、最も好ましくは80.4~86.5モル%の範囲内であり、
反応で使用される芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)のモル量は、10~20モル%、より好ましくは11~19.9モル%、さらにより好ましくは12~19.8モル%、特に好ましくは13~19.7モル%、最も好ましくは13.5~19.6モル%の範囲内であり、
それぞれの場合で反応で使用される芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)及び芳香族ジハロゲン化合物(D2,1)の総モル量基準とする。
【0064】
別の好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)を得ることができる反応において使用される、ジハロゲン化合物(D2,1)のモル数に対する芳香族ジハロゲン化合物(D1,1)のモル数は、4~9、より好ましくは4.02~8.09、さらにより好ましくは4.05~7.33、特に好ましくは4.08~6.69、最も好ましくは4.10~6.41である。
【0065】
本発明のさらなる態様は、アモルファスポリマー(P)を含む組成物である。好ましい実施形態において、この組成物は少なくとも1種のさらなる成分を含んでいてもよい。さらなる成分は、好ましくは、さらなるポリマー、溶媒、フィラー、添加剤、着色剤、補強剤、平滑剤、熱安定剤、加工助剤、静電防止剤、抗酸化剤、及び難燃剤からなる群から選択することができる。適切なさらなるポリマーは、例えば、好ましくは350℃を超える加工温度に耐える熱安定性を有する、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドである。適切なフィラーは、例えば、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭素ファイバー、タルク、炭酸カルシウム、珪灰石、及びポリアミドファイバーである。
【0066】
適切な着色剤は、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックなどのような顔料又は染料である。
【0067】
本発明による組成物は、組成物の全質量に対して、好ましくは50質量%を超える、より好ましくは75質量%を超える、特に好ましくは90質量%を超えるアモルファスポリマー(P)を含む。少なくとも1種の成分の質量は一般に、組成物の全質量に対して、0~50%、好ましくは0~25%、特に好ましくは0~10質量%の範囲内である。別の実施形態において、組成物は上記の成分を実質的に含まなくてもよい。
【0068】
本発明の別の態様は、アモルファスポリマー(P)を含む物品である。好ましい実施形態において、物品は、継手、パイプ、バルブ、マニフォールド、航空機の内装パネル又は部材、調理器具、医療機器又は機器の部品、医療用ケース又はトレー、実験動物のケージ、実験器具、コーティング、複合材、ファイバー、及び布からなる群から選択される。
【0069】
アモルファスポリマー(P)を製造する方法
本発明の別の態様は、アモルファスポリマー(P)を製造する方法である。アモルファスポリマー(P)の点から見た上記の説明及び選択は、したがってアモルファスポリマー(P)を製造する方法に適用される。さらに、アモルファスポリマー(P)を製造する方法の観点で以下に示す説明及び選択は、したがってアモルファスポリマー(P)に適用される。
【0070】
本発明の別の目的は、
(A1)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)と、
(A2)少なくとも1種の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)と、
(B1)4,4’-ビフェノールと、
(C)反応混合物(RG)中の成分(C)の全質量に対して少なくとも80質量%の炭酸カリウムを含む、少なくとも1種の炭酸塩成分と、
(D)少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒と
を成分として含む反応混合物(RG)を転化させることにより、アモルファスポリマー(P)を製造する方法である。
【0071】
好ましい実施形態において、アモルファスポリマー(P)を製造する本発明の方法は、上記の成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)、及び(D)を含む反応混合物(RG)を転化させる工程I)を含む。
【0072】
成分(A1)、(A2)、及び(B1)が重縮合反応に関与する。
【0073】
成分(D)は溶媒として作用し、成分(C)は縮合反応の前又は縮合反応中に成分(B1)を脱プロトン化する塩基として作用する。
【0074】
反応混合物(RG)は、アモルファスポリマー(P)を製造するための本発明による方法で使用される混合物を意味すると理解される。本発明の場合、反応混合物(RG)に関して示されるあらゆる詳細は、したがって重縮合の前に存在している混合物に関する。重縮合は、反応混合物(RG)が成分(A1)、(A2)、及び(B1)の重縮合により反応して目的の生成物であるアモルファスポリマー(P)が得られる、本発明による方法の間に起きる。目的生成物であるアモルファスポリマー(P)を含む、重縮合後に得られる混合物は、生成物混合物(PG)とも呼ばれる。生成物混合物(PG)は通常、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))及びハロゲン化物化合物をさらに含む。ハロゲン化物化合物は、反応混合物(RG)の転化の間に形成される。転化の間にまず、成分(C)が成分(B1)と反応して成分(B1)を脱プロトン化する。脱プロトン化成分(B1)は次いで成分(A1)と反応し、ここでハロゲン化物化合物が形成される。この方法は当業者に既知である。
【0075】
本発明の一実施形態において、工程I)で第1のアモルファスポリマー(P1)が得られる。この実施形態は下記でより詳細に説明される。この実施形態において、生成物混合物(PG)は第1のアモルファスポリマー(P1)を含む。そのため生成物混合物(PG)は通常、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))及びハロゲン化物化合物をさらに含む。ハロゲン化物化合物について上記の詳細が当てはまる。
【0076】
反応混合物(RG)の成分は一般に同時に反応させる。個々の成分を上流の工程で混合し、その後反応させてもよい。個々の成分を反応器中へ供給し、ここでこれらを混合し次いで反応させることも可能である。
【0077】
本発明による方法において、反応混合物(RG)の個々の成分は一般に工程I)で同時に反応させる。この反応は好ましくは一段階で行われる。このことは、成分(B1)の脱プロトン化、並びにまた成分(A1)、(A2)、及び(B1)の間の縮合反応が、中間生成物、例えば成分(B1)の脱プロトン化種を単離することなく1つの反応段階で行われることを意味する。
【0078】
本発明の工程I)による方法は、いわゆる「炭酸塩法」にしたがって行われる。本発明による方法はいわゆる「水酸化物法」にしたがって行われない。このことは、本発明による方法がフェノレートアニオンの単離を含む2段階で行われないことを意味する。
【0079】
反応混合物(RG)がトルエン又はクロロベンゼンを含まないことがさらに好ましい。反応混合物(RG)が水との共沸混合物を形成するいかなる物質も含まないことが特に好ましい。
【0080】
したがって本発明の別の目的はまた、反応混合物(RG)が水との共沸混合物を形成するいかなる物質も含まない方法である。
【0081】
成分(A1)、(A2)の合計と成分(B1)ののモル比(比(A1+A2)/(B1))は、原理上は理論的な塩化水素の除去を進行させる重縮合反応の化学量論から得られ、既知の方法で当業者により立証される。
【0082】
好ましくは、成分(B1)対成分(A1)及び(A2)の合計のモル比は0.95~1.08、特に0.96~1.06、最も好ましくは0.97~1.05である。
【0083】
したがって本発明の別の目的はまた、反応混合物(RG)中の成分(B1)対成分(A1)、(A2)の合計のモル比が0.97~1.08の範囲内である方法である。
【0084】
好ましい実施形態において、反応混合物(RG)は、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)、及び(D)に加えて、反応混合物(RG)の全質量に対して最大で15質量%、より好ましくは最大で7.5質量%、特に好ましくは最大で2.5質量%、最も好ましくは最大で1質量%の、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)、及び(D)とは異なるさらなる成分を含む。
【0085】
別の最も好ましい実施形態において、反応混合物(RG)は成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)、及び(D)からなる。
【0086】
好ましくは、重縮合反応における転化は少なくとも0.9である。
【0087】
アモルファスポリマー(P)の製造のための方法の工程I)は、典型的にはいわゆる「炭酸塩法」の条件下で行われる。このことは、反応混合物(RG)をいわゆる「炭酸塩法」の条件下で反応させることを意味する。反応(重縮合反応)は一般に80~250℃の範囲内、好ましくは100~220℃の範囲内の温度で行われる。温度の上限は、標準圧力(1013.25mbar)での少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))の沸点により決定される。反応は一般に標準圧力で行われる。反応は好ましくは2~12時間、特に3~10時間の範囲内の時間にわたって行われる。
【0088】
生成物混合物(PG)中の、本発明による方法で得られるアモルファスポリマー(P)の単離は、水中又は水と他の溶媒との混合物中の生成物混合物(PG)の析出により行われてもよい。析出したアモルファスポリマー(P)をその後水で抽出し次いで乾燥させることができる。本発明の一実施形態において、析出物は酸性媒体中に取り込むこともできる。適切な酸は、例えば有機酸又は無機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、又はクエン酸などのカルボン酸、及び塩酸、硫酸、又はリン酸などの鉱酸である。
【0089】
本発明の一実施形態において、工程I)で第1のアモルファスポリマー(P1)が得られる。次いで本発明の方法は好ましくはさらに
II)工程I)で得られた第1のアモルファスポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる工程
を含む。
【0090】
したがって本発明の別の目的はまた、工程I)において第1のアモルファスポリマー(P1)が得られ、
II)工程I)で得られた第1のアモルファスポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる工程
をさらに含む、方法でもある。
【0091】
当業者にとって、工程II)が行われない場合、第1のアモルファスポリマー(P1)がアモルファスポリマー(P)に相当することは明らかである。
【0092】
第1のアモルファスポリマー(P1)は通常、反応混合物(RG)中に含まれる成分(A1)、(A2)、及び成分(B1)の重縮合反応の生成物である。第1のアモルファスポリマー(P1)は、反応混合物(RG)の転化の間に得られる上記の生成物混合物(PG)に含まれ得る。上記のように、この生成物混合物(PG)は第1のアモルファスポリマー(P1)、成分(D)、及びハロゲン化物化合物を含む。第1のアモルファスポリマー(P1)は、これをハロゲン化アルキルと反応させる際にこの生成物混合物(PG)に含まれ得る。
【0093】
第1の生成物混合物(P1)からのハロゲン化物化合物の分離は、当業者に既知の任意の方法によって、例えばろ過又は遠心分離により行うことができる。
【0094】
第1のアモルファスポリマー(P1)は通常、末端ヒドロキシ基を含む。工程II)において、これらの末端ヒドロキシ基をハロゲン化アルキルとさらに反応させてポリアリーレンエーテルスルホンポリマー(P)を得る。好ましいハロゲン化アルキルは、特に1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を有する塩化アルキル、特に第1級塩化アルキル、特に好ましくはハロゲン化メチル、特に塩化メチルである。
【0095】
工程II)による反応は、好ましくは90℃~160℃の範囲内、特に100℃~150℃の範囲内の温度で行われる。必要な時間は広範囲の時間にわたって様々であってもよく、通常は少なくとも5分、特に少なくとも15分である。工程II)による反応に必要な時間は15分~8時間、特に30分~4時間であることが好ましい。
【0096】
様々な方法をハロゲン化アルキルの添加に使用できる。化学量論量又は過剰量のハロゲン化アルキルを添加することがさらに可能であり、過剰量は例として最大で5倍であってもよい。好ましい一実施形態において、ハロゲン化アルキルは連続的に、特にガス流の形態で連続導入により添加される。
【0097】
工程II)において、通常はアモルファスポリマー(P)及び成分(D)を含むポリマー溶液(PL)が得られる。工程II)において工程I)からの生成物混合物(PG)を使用した場合、ポリマー溶液(PL)は典型的にはハロゲン化物化合物をさらに含む。ポリマー溶液(PL)を工程II)の後にろ過することが可能である。それによりハロゲン化物化合物を除去できる。
【0098】
したがって本発明は、工程II)においてポリマー溶液(PL)が得られ、
III)工程II)で得られたポリマー溶液(PL)をろ過する工程
をさらに含む、方法も提供する。
【0099】
ポリマー溶液(PL)中の、本発明による工程II)で得られたアモルファスポリマー(P)の単離は、生成物混合物(PG)中で得られたアモルファスポリマー(P)の単離として行われてもよい。例えば、単離は水中又は水と他の溶媒との混合物中のポリマー溶液(PL)の析出により行われてもよい。析出したアモルファスポリマー(P)をその後水で抽出し次いで乾燥させることができる。本発明の一実施形態において、析出物は酸性媒体中に取り込むこともできる。適切な酸は、例えば有機酸又は無機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、又はクエン酸などのカルボン酸、及び塩酸、硫酸、又はリン酸などの鉱酸である。
【0100】
成分(A1)
反応混合物(RG)は、少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)を含む。「少なくとも1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)」という用語は、本発明の場合、ちょうど1種の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)、及びまた2種以上の芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)の混合物も意味すると理解される。
【0101】
成分(A1)に対して、したがって芳香族ジハロゲンスルホン化合物(D1,1)の点から見た上記の説明及び選択が適用される。
【0102】
成分(A2)
反応混合物(RG)は少なくとも1種の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)を含む。「少なくとも1種の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)」という用語は、本発明の場合、ちょうど1種の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)、及びまた2種以上の芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)の混合物も意味すると理解される。成分(A2)に対して、したがって芳香族ジハロゲンケトン化合物(D2,1)の点から見た上記の説明及び選択が適用される。
【0103】
成分(B1)
成分(B1)に対して、したがって少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1)及び(aDHy2)の点から見た上記の説明及び選択が適用される。本発明の場合における成分(B1)は、ちょうど1種の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1;aDHy2)、並びに2種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物(aDHy1;aDHy2)の混合物を意味すると理解される。好ましい実施形態において、成分(B1)は4,4’-ビフェノールである。
【0104】
成分(C)
反応混合物(RG)は少なくとも1種の炭酸塩成分を成分(C)として含む。「少なくとも1種の炭酸塩成分」という用語は、本発明の場合、ちょうど1種の炭酸塩成分、及びまた2種以上の炭酸塩成分の混合物も意味すると理解される。少なくとも1種の炭酸塩成分は、好ましくは少なくとも1種の金属炭酸塩である。金属炭酸塩は好ましくは無水物である。
【0105】
アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩が金属炭酸塩として優先される。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属炭酸塩は金属炭酸塩として特に好ましい。炭酸カリウムが最も好ましい。
【0106】
例えば、成分(C)は、反応混合物(RG)中の少なくとも1種の炭酸塩成分の全質量に対して、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%の炭酸カリウムを含む。
【0107】
したがって本発明の別の目的はまた、成分(C)が、成分(C)の全質量に対して少なくとも50質量%の炭酸カリウムを含む、方法でもある。
【0108】
好ましい実施形態において、成分(C)は炭酸カリウムから本質的になる。
【0109】
本発明の場合の「から本質的になる」とは、成分(C)が、各々の場合において反応混合物(RG)中の成分(C)の全質量に対して99質量%を超える、好ましくは99.5質量%を超える、特に好ましくは99.9質量%を超える炭酸カリウムを含むことを意味すると理解される。
【0110】
特に好ましい実施形態において、成分(C)は炭酸カリウムからなる。
【0111】
200μm未満の体積加重平均粒径を有する炭酸カリウムが炭酸カリウムとして特に好ましい。炭酸カリウムの体積加重平均粒径は、Malvern Mastersizer 2000 Instrument粒径分析計を使用して、クロロベンゼン/スルホラン(60/40)中の炭酸カリウムの懸濁液において測定される。
【0112】
好ましい実施形態において、反応混合物(RG)はいかなるアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物も含まない。
【0113】
成分(D)
反応混合物(RG)は、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒を成分(D)として含む。「少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒」は、本発明によれば、ちょうど1種の非プロトン性極性溶媒、及びまた2種以上の非プロトン性極性溶媒の混合物も意味すると理解される。
【0114】
適切な非プロトン性極性溶媒は、例えば、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、スルホラン、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される。
【0115】
好ましくは、成分(D)は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される。N-メチルピロリドンが成分(D)として特に好ましい。
【0116】
したがって本発明の別の目的はまた、成分(D)が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される、方法である。
【0117】
成分(D)がスルホランを含まないことが好ましい。反応混合物(RG)がジフェニルスルホンを含まないことがさらに好ましい。
【0118】
成分(D)が、反応混合物(RG)中の成分(D)の全質量に対して少なくとも50質量%の、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。N-メチルピロリドンが成分(D)として特に好ましい。
【0119】
さらに好ましい実施形態において、成分(D)はN-メチルピロリドンから本質的になる。
【0120】
「から本質的になる」とは、本発明の場合、成分(D)が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びジメチルホルムアミドからなる群から選択され、N-メチルピロリドンが優先される、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒を、98質量%を超えて、特に好ましくは99質量%を超えて、より好ましくは99.5質量%を超えて含むことを意味すると理解される。
【0121】
好ましい実施形態において、成分(D)はN-メチルピロリドンからなる。N-メチルピロリドンはNMP又はN-メチル-2-ピロリドンとも呼ばれる。
【実施例】
【0122】
使用される成分
DCDPS:4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、
DCBPO:4,4’ジクロロベンゾフェノン、
BP:4,4’-ビフェノール、
炭酸カリウム:K2CO3;無水;34.5μmの体積平均粒径、
NMP:N-メチルピロリドン、
PPSU:ポリフェニレンスルホン(ULTRASON(登録商標)P3010)
【0123】
一般的手順
ポリマーの粘度数を、DIN EN ISO 1628-1に準拠して、NMP中の1%溶液において25℃で測定する。
【0124】
ポリマーの単離は、ポリマーのNMP溶液を脱塩水中に室温(25℃)で滴下することにより行われる。滴下の高さは0.5mであり、流量は約2.5l/hである。次いで得られるビーズを水により(水の流量160l/h)85℃で20時間かけて抽出する。0.1質量%未満の残留水分になるまで、ビーズを150℃で24時間減圧乾燥させる(<100mbar)。
【0125】
得られるアモルファスポリマー(P)をZSK 18押出機により粒状化した。300rpmの回転スピードで処理量は2.5kg/hであり、溶融物の温度を溶融ケーキにおいて挿入温度計により測定し、385℃未満であった。
【0126】
得られる顆粒を370℃のマス温度及び140℃の型温で射出成形しISOバー(80*10*4mm*mm*mm)及びS2引張試験片を得た。
【0127】
キャピラリーレオメーターを使用し60分間にわたって、試料の溶融安定性を400℃のマス温度で測定した。したがって、5分ごとに55s-1の見かけせん断速度で溶融物の見かけ粘度を測定した。溶融物安定性は、60分後の見かけ粘度を5分後の見かけ粘度で割った商である。結果を表1に示す。
【0128】
得られる生成物のガラス転移温度(Tg)及び融点を、示差走査熱量測定法DSCにより上記のような2回目の加熱サイクルにおいて20K/minの加熱傾斜で測定する。
【0129】
CDCl3を溶媒として使用する1H-NMRによりベンゾフェノン基の含量を測定する。
【0130】
作動液、ガソリン、及び/又は燃料に対するポリマーの耐性を、Skydrol(登録商標)LD4(58wt%のトリブチルホスフェート、20~30wt%のジブチルフェニルホスフェート、5~10wt%のブチルフェニルホスフェート、1~5wt%の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、10wt%未満のカルボキシレート)に対する耐性として測定した。S2-リリースロッドをSkydrol(登録商標)LD4中に24時間保存した。各々の場合で、S2-リリースロッドのうちの2本を、保存前にステンシルを使用して132mmの曲げ半径まで曲げた。カメラを使用して写真を毎分撮って破断点までの時間を測定した。
【0131】
ポリマーV1
温度計、ガス入口管、及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス反応器中で、522.63g(1.82mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、50.22g(0.20mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び34.5μmの体積平均粒径を有する304.05g(2.20mol)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気中で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0132】
混合物を190℃まで1時間以内で加熱した。以下において、反応時間は反応混合物を190℃で維持した時間と理解されることになる。反応中に形成された水を蒸留により連続的に除去し、失われたNMPを元に戻した。
【0133】
190℃でさらに5時間反応を続け、次いで1500mlのNMPを反応器へ加え、懸濁液の温度を135℃に調整した(10分かかった)。次いで塩化メチルを60分かけて反応器へ加えた。次いでさらに30分、N2を懸濁液に通してパージした。次いで溶液を80℃まで冷却し、次いで加圧フィルターへ移して反応で形成された塩化カリウムをろ過により分離した。次いで得られるポリマー溶液を水中で析出させ、得られるポリマービーズを分離し、次いで熱水(85℃)で20時間かけて抽出した。次いでビーズを120℃で24時間減圧乾燥させた(<100mbar)。
【0134】
アモルファスポリマー(P)2
温度計、ガス入口管、及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス反応器中で、508.28g(1,77mol)のDCDPS、372.41g(2.,00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、62.78g(0.25mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び34.5μmの体積平均粒径を有する304.05g(2.20mol)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気中で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0135】
混合物を190℃まで1時間以内で加熱した。以下において、反応時間は反応混合物を190℃で維持した時間と理解されることになる。反応中に形成された水を蒸留により連続的に除去し、失われたNMPを元に戻した。
【0136】
190℃でさらに5時間反応を続け、次いで1500mlのNMPを反応器へ加え、懸濁液の温度を135℃に調整した(10分かかった)。次いで塩化メチルを60分かけて反応器へ加えた。次いでさらに30分、N2を懸濁液に通してパージした。次いで溶液を80℃まで冷却し、次いで加圧フィルターへ移して反応で形成された塩化カリウムをろ過により分離した。次いで得られるポリマー溶液を水中で析出させ、得られるポリマービーズを分離し、次いで熱水(85℃)で20時間かけて抽出した。次いでビーズを120℃で24時間減圧乾燥させた(<100mbar)。
【0137】
アモルファスポリマー(P)3
温度計、ガス入口管、及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス反応器中で、493.92g(1.72mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4.4’-ジヒドロキシビフェニル、75.33g(0.3mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び34.5μmの体積平均粒径を有する304.05g(2.20mol)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気中で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0138】
混合物を190℃まで1時間以内で加熱した。以下において、反応時間は反応混合物を190℃で維持した時間と理解されることになる。反応中に形成された水を蒸留により連続的に除去し、失われたNMPを元に戻した。
【0139】
190℃でさらに5.5時間反応を続け、次いで1500mlのNMPを反応器へ加え、懸濁液の温度を135℃に調整した(10分かかった)。次いで塩化メチルを60分かけて反応器へ加えた。次いでさらに30分、N2を懸濁液に通してパージした。次いで溶液を80℃まで冷却し、次いで加圧フィルターへ移して反応で形成された塩化カリウムをろ過により分離した。次いで得られるポリマー溶液を水中で析出させ、得られるポリマービーズを分離し、次いで熱水(85℃)で20時間かけて抽出した。次いでビーズを120℃で24時間減圧乾燥させた(<100mbar)。
【0140】
アモルファスポリマー(P)4
温度計、ガス入口管、及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス反応器中で、465.22g(1.62mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、100.44g(0.40mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び34.5μmの体積平均粒径を有する304.05g(2.20mol)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気中で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0141】
混合物を190℃まで1時間以内で加熱した。以下において、反応時間は反応混合物を190℃で維持した時間と理解されることになる。反応中に形成された水を蒸留により連続的に除去し、失われたNMPを元に戻した。
【0142】
190℃でさらに6時間反応を続け、次いで1500mlのNMPを反応器へ加え、懸濁液の温度を135℃に調整した(10分かかった)。次いで塩化メチルを60分かけて反応器へ加えた。次いでさらに30分、N2を懸濁液に通してパージした。次いで溶液を80℃まで冷却し、次いで加圧フィルターへ移して反応で形成された塩化カリウムをろ過により分離した。次いで得られるポリマー溶液を水中で析出させ、得られるポリマービーズを分離し、次いで熱水(85℃)で20時間かけて抽出した。次いでビーズを120℃で24時間減圧乾燥させた(<100mbar)。
【0143】
ポリマーV5
温度計、ガス入口管、及びディーンスタークトラップを備えた4リットルのガラス反応器中で、450.86g(1.57mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、113.00g(0.45mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び34.5μmの体積平均粒径を有する304.05g(2.20mol)の炭酸カリウムを、窒素雰囲気中で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0144】
混合物を190℃まで1時間以内で加熱した。以下において、反応時間は反応混合物を190℃で維持した時間と理解されることになる。反応中に形成された水を蒸留により連続的に除去し、失われたNMPを元に戻した。
【0145】
190℃でさらに6時間反応を続け、次いで1500mlのNMPを反応器へ加え、懸濁液の温度を135℃に調整した(10分かかった)。次いで塩化メチルを60分かけて反応器へ加えた。次いでさらに30分、N2を懸濁液に通してパージした。次いで溶液を80℃まで冷却し、次いで加圧フィルターへ移して反応で形成された塩化カリウムをろ過により分離した。次いで得られるポリマー溶液を水中で析出させ、得られるポリマービーズを分離し、次いで熱水(85℃)で20時間かけて抽出した。次いでビーズを120℃で24時間減圧乾燥させた(<100mbar)。
【0146】
【0147】
表1に示す結果から分かるように、ベンゾフェノン単位(BPO単位)の含量が10mol%未満である場合、Skydrol耐性の改善は検出することができない。BPOに基づく単位の含量が20mol%を超える場合、懸濁液のろ過が24時間を超えるので生成物を単離できない。少量の材料を析出させ洗浄した場合、V.N.測定のためのNMP中の均質溶液を得ることができない。CDCl3(H-NMR)中にも生成物は完全には可溶性ではないが、それにもかかわらず得られるスペクトルによってBPOに基づく単位の含量の測定が可能となる。試験V5から単離された少量の生成物を320℃で溶融プレスして薄膜とした。フィルム厚さはわずか50μmであったが、試料は不透明であった。