(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】注射デバイスのための回転感知配置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241007BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20241007BHJP
G01D 5/12 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
A61M5/315
A61M5/20
G01D5/12
(21)【出願番号】P 2021564952
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061813
(87)【国際公開番号】W WO2020225038
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クレム
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504779(JP,A)
【文献】特開2016-031332(JP,A)
【文献】実開昭54-140743(JP,U)
【文献】特開2015-117998(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046199(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/159245(WO,A1)
【文献】特開2009-050709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61M 5/20
G01D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤の用量を設定および排出するための注射デバイスであって:
- ハウジング(10)と、
- 用量の排出を開始および/または制御するためのトリガ(11)と、
- 用量を設定するためにハウジング(10)に対して回転可能なダイヤル部材(12)と、
- 回転感知配置(200)とを含み、
回転感知配置は:
- 回転軸(203)に関して互いに対して回転可能な第1の部材(201)および第2の部材(202)と、
- 第1の部材(201)に配置された少なくとも1つの信号発生器(210)と、
- 第2の部材(202)に配置された少なくとも1つのセンサ(220;320;420)であって、該センサ(220;320;420)に対する少なくとも1つの信号発生器(210)の動きに応答して電気信号を生成するように構成された櫛形電極構造(230;330;430)を含む、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)と、
- 該少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に接続され、電気信号に基づいて第2の部材(202)に対する第1の部材(201)の回転角度を計算するように動作可能なプロセッサ(240)とを含
み、
第1の部材(201)は、ダイヤル部材(12)およびハウジング(10)のうちの一方に回転不能にロックまたは連結され、第2の部材(202)は、ダイヤル部材(12)およびハウジング(10)のうちの他方に対して回転可能であり、そして、
i) 櫛形電極構造(230;330)は、第1の電極(231)および第2の電極(232)を含み、第1の電極(231)および第2の電極(232)は、交互配置された幾何構成で配置される、あるいは、
ii) 櫛形電極構造(430)は、第1の電極(431)および第2の電極(432)を含み、第1の電極(431)および第2の電極(432)は、蛇行した伝導構造(433)によって相互に電気的に接続される、前記
注射デバイス。
【請求項2】
平面基板(250)をさらに含み、ここで、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)は、平面基板(250)に配置される、請求項1に記載の
注射デバイス。
【請求項3】
櫛形電極構造(230;330;430)は、平面基板(250)に印刷またはコーティングされる、請求項2に記載の
注射デバイス。
【請求項4】
プリント回路基板(260)をさらに含み、ここで、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)の櫛形電極構造(230;330;430)は、プリント回路基板(260)に配置され、プロセッサ(240)は、プリント回路基板(260)に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項5】
櫛形電極構造(230)は、電界(270)を生成するように構成され、少なくとも1つの信号発生器(210)は、電界(270)を修正するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項6】
信号発生器(210)は、3より大き
い比誘電率を有する材料から作られた信号生成部分(212)を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項7】
信号発生器(210)は、7より大きい比誘電率を有する材料から作られた信号生成部分(212)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
信号発生器(210)は、10より大きい比誘電率を有する材料から作られた信号生成部分(212)を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
櫛形電極構造(230;330)は、磁界(280)を生成するように構成され、少なくとも1つの信号発生器(210)は、磁界(280)を修正するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項10】
少なくとも1つのセンサ(220;320;420)は、回転軸(203)から所定の径方向センサ距離(D)をあけて配置され、少なくとも1つの信号発生器(210)は、回転軸(203)から所定の径方向信号発生器距離(d)をあけて配置され、径方向センサ距離(D)と径方向信号発生器距離(d)との間の差は、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)の径方向範囲と少なくとも1つの信号発生器(210)の径方向範囲との間の差以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項11】
少なくとも1つのセンサ(220;320;420)の多数のセンサが、第2の部材(202)の一方の側にわたって分散され、かつ/または少なくとも1つの信号発生器(210)の多数の信号発生器(210)が、第2の部材(202)の方を向いている第1の部材(201)の一方の側にわたって分散される、請求項1~10のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項12】
少なくとも1つのセンサ(220;320)および少なくとも1つの信号発生器(210)は、恒久的に機械的に接触しない、請求項1~11のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項13】
櫛形電極構造(430)は、第2の部材(202)に取り付けられた歪みゲージ(422)の一部であり、櫛形電極構造(430)は、第2の部材(202)の可撓変形に応答して電気伝導度の測定可能な変動を示す、請求項1~
12のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項14】
第1の部材(201)および第2の部材(202)のうちの少なくとも一方に係合された少なくとも1つのラチェット配置(290)をさらに含み、ここで、該ラチェット配置(290)は、個別の回転ステップで、第2の部材(202)に対する第1の部材(201)の回転を支持するように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載の
注射デバイス。
【請求項15】
注射デバイス(1)に取り付けるために構成されたアドオンデバイス(100)であって、注射デバイス(1)は、ダイヤル部材(12)とハウジング(10)とを含み、アドオンデバイスは、
- 注射デバイス(1)のダイヤル部材(12)に取り付けるために構成された本体と、- 注射デバイス(1)のハウジング(10)に取り付けるために構成されたデバイスハウジング(101)と、
- 回転感知装置であって、
- 回転軸(203)に関して互いに対して回転可能な第1の部材(201)および第2の部材(202)と、
- 第1の部材(201)に配置された少なくとも1つの信号発生器(210)と、
- 第2の部材(202)に配置された少なくとも1つのセンサ(220;320;420)であって、該センサ(220;320;420)に対する少なくとも1つの信号発生器(210)の動きに応答して電気信号を生成するように構成された櫛形電極構造(230;330;430)を含む、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)と、
- 該少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に接続され、電気信号に基づいて第2の部材(202)に対する第1の部材(201)の回転角度を計算するように動作可能なプロセッサ(240)とを含む回転感知装置、とを含み、
第1の部材(201)は、アドオンデバイス(100)の本体およびデバイスハウジング(101)のうちの一方に回転不能にロックまたは連結され、第2の部材(202)は、アドオンデバイス(100)の本体およびデバイスハウジング(101)のうちの他方に対して回転可能であり、そして、
i) 櫛形電極構造(230;330)は、第1の電極(231)および第2の電極(232)を含み、第1の電極(231)および第2の電極(232)は、交互配置された幾何構成で配置される、あるいは、
ii) 櫛形電極構造(430)は、第1の電極(431)および第2の電極(432)を含み、第1の電極(431)および第2の電極(432)は、蛇行した伝導構造(433)によって相互に電気的に接続される、前記アドオンデバイス。
【請求項16】
請求項
1~14
のいずれか1項に記載の注射デバイス(1)の第2の部材(202)に対する注射デバイス(1)の第1の部材(201)の回転を検出および/または定量測定する方法であって:
第1の部材(201)および第2の部材(202)のうちの一方に、第1の部材(201)および第2の部材(202)のうちの他方に対するトルクを誘導し、それによって少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に対して少なくとも1つの信号発生器(210)を動かす工程と、
少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に対する少なくとも1つの信号発生器(210)の動きに応答して、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)の櫛形電極構造(230;330;430)の電気信号を測定する工程と、
プロセッサ(240)によって電気信号を処理し、電気信号に基づいて第2の部材(202)に対する第1の部材(201)の回転角度を計算する工程とを含む前記方法。
【請求項17】
請求項15に記載のアドオンデバイス(100)の第2の部材(202)に対するアドオンデバイス(100)の第1の部材(201)の回転を検出および/または定量測定す
る方法であって:
第1の部材(201)および第2の部材(202)のうちの一方に、第1の部材(201)および第2の部材(202)のうちの他方に対するトルクを誘導し、それによって少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に対して少なくとも1つの信号発生器(210)を動かす工程と、
少なくとも1つのセンサ(220;320;420)に対する少なくとも1つの信号発生器(210)の動きに応答して、少なくとも1つのセンサ(220;320;420)の櫛形電極構造(230;330;430)の電気信号を測定する工程と、
プロセッサ(240)によって電気信号を処理し、電気信号に基づいて第2の部材(202)に対する第1の部材(201)の回転角度を計算する工程とを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転センサの分野に関し、詳細には、注射デバイスの構成要素の回転を検出および/または定量測定するように構成された回転センサに関する。一態様では、本開示は、注射デバイスに取り付けるために構成されたアドオンデバイスで実施される回転感知配置に関する。一態様では、本開示は、注射デバイスで実施される回転感知配置に関する。さらなる態様では、本開示は、注射デバイスの構成要素の回転を検出および/または定量測定するように構成された回転感知配置を備えた注射デバイスに関する。さらなる態様では、本開示は、注射デバイスの構成要素の回転を判定および/または定量測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤の単一または複数の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体、当技術分野でよく知られている。概して、そのようなデバイスは、従来のシリンジと実質的に類似の目的を有する。
【0003】
ペン型注射器などの薬物送達デバイスは、使用者特有の複数の要件を満たさなければならない。たとえば、糖尿病などの慢性疾患を患っている患者の場合、患者は、身体的に弱い可能性があり、視覚障害を患っている可能性もある。したがって、特に家庭用医薬品向けの好適な薬物送達デバイスは、構造上丈夫である必要があり、容易に使用できるべきである。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取扱いは、分かりやすく容易に理解できるべきである。そのような注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定および次の投薬を提供するべきである。さらに、用量設定および用量投薬処置は、容易に作動できて明快でなければならない。
【0004】
典型的には、そのようなデバイスは、投薬予定の薬剤で少なくとも部分的に充填されたカートリッジを受けるように適用されたハウジングまたは特定のカートリッジホルダを含む。デバイスは、駆動機構をさらに含み、駆動機構は通常、カートリッジの栓またはピストンに動作可能に係合するための変位可能なピストンロッドを有する。駆動機構およびそのピストンロッドによって、カートリッジの栓またはピストンは、遠位または投薬方向に変位可能であり、したがって薬物送達デバイスのハウジングの遠位端部に解放可能に連結されるたとえば注射針の形態の穿孔アセンブリを介して、所定の量の薬剤を排出することができる。
【0005】
薬物送達デバイスによって投薬予定の薬剤は、複数用量カートリッジ内に提供および収容することができる。そのようなカートリッジは、典型的には、穿孔可能な封止によって遠位方向に封止されたガラス質の胴部を含み、そのような胴部は、栓によって近位方向にさらに封止される。再利用可能な薬物送達デバイスの場合、空のカートリッジを新しいものに交換可能である。それとは対照的に、使い捨てタイプの薬物送達デバイスは、カートリッジ内の薬剤が投薬されまたは使い尽くされたとき、完全に廃棄される。
【0006】
ペン型注射デバイスなどのいくつかの薬物送達デバイスでは、使用者は、用量ダイヤルを注射デバイスの本体またはハウジングに対して時計回りまたは用量増分方向に回転させることによって、等しいサイズまたは可変サイズの用量を設定しなければならない。液体薬剤の用量を注射および排出する場合、使用者は、トリガまたは用量ボタンを遠位方向に、したがって注射デバイスの本体またはハウジングの方へ押し下げなければならない。典型的には、使用者は、自身の親指を使用して、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブの近位端に位置する用量ボタンに遠位方向の圧力をかけながら、同じ手の残りの指で注射デバイスのハウジングを保持する。
【0007】
機械的に実施される注射デバイスの場合、注射デバイスの使用中に注射関連データの正確で確実な準自動の監督および/または収集を有効にすることが望ましい。機械的に動作する注射デバイスは、使用者によって誘導された注射デバイスの動作を監視するように構成された電子的に実施されるアドオンデバイスまたはデータ収集デバイスを備えることができる。注射デバイスに取り付けるためのデータ収集デバイスは、その幾何学的サイズに関してかなり小型であるべきである。機械的に実施される注射デバイスに取り付けるために構成されたデータ収集デバイスの場合、たとえば使用者が用量の設定中に注射デバイスのダイヤル部材を回転させたとき、または注射デバイスの回転可能な構成要素が用量の排出中に回転を受けたとき、デバイスの使用者によって行われるデバイスの手動動作を検出および/または定量測定することは困難である。
【0008】
しかし、電子的に実施される注射デバイス、たとえば電気駆動を備えた注射デバイスの場合でも、注射デバイスの回転可能な構成要素の正確で確実なフェールセーフの定量測定を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、目的は、注射デバイスの回転可能な構成要素の回転を検出および/または定量測定するように構成された改善された回転感知配置を提供することである。回転感知配置およびセンサの原理は、注射デバイスおよびそのような注射デバイスに取り付けるために構成されたアドオンデバイスに広く適用することができるべきである。
【0010】
回転感知配置は、概して、注射デバイスまたはアドオンデバイスの様々な異なる回転可能な構成要素に適用することができるべきである。回転感知配置は、コスト効率良く製造することができるべきであり、かなり小型の設計および幾何形状を有するべきである。回転感知配置は、かなり丈夫であるべきである。いくつかの態様では、少なくとも第1の部材と第2の部材との間の回転の非接触の感知および/または定量測定を提供して有効にするべきである。回転感知配置は、電子デバイスで容易に実施することができるべきであり、プリント回路基板に容易に一体化することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、注射デバイスのための回転感知配置が提供される。回転感知配置は、第1の部材および第2の部材を含む。第1の部材および第2の部材は、回転軸に関して互いに対して回転可能である。第1の部材および第2の部材のうちの少なくとも一方は、第1の部材および第2の部材のうちの他方に対して回転可能である。たとえば、第1の部材は、注射デバイスまたはアドオンデバイスの静止部材または静止構成要素とすることができ、第2の部材は、第1の部材に対して回転可能である。他の実装では、第2の部材が静止しており、第1の部材は、第2の部材および/または注射デバイスもしくはアドオンデバイスのハウジングに対して回転可能である。
【0012】
回転感知配置は、第1の部材に配置されまたは取り付けられた少なくとも1つの信号発生器をさらに含む。典型的には、少なくとも1つの信号発生器は、第1の部材の特定の部分に位置する。典型的には、少なくとも1つの信号発生器は、軸外に配置され、典型的には回転軸から所与の径方向距離をあけて配置される。
【0013】
回転感知配置は、少なくとも1つのセンサをさらに含む。センサは、第2の部材に配置されまたは取り付けられる。少なくとも1つのセンサは、櫛形電極構造を含む。櫛形電極構造は、センサに対する少なくとも1つの信号発生器の動きに応答して、電気信号を生成するように構成される。
【0014】
回転感知配置は、少なくとも1つのセンサに接続されたプロセッサをさらに含む。プロセッサは、電気信号に基づいて、第2の部材に対する第1の部材の回転角度を計算するように動作可能であり、またはそのように構成される。プロセッサによって処理された電気信号は、典型的には、少なくとも1つのセンサから、特に少なくとも1つのセンサの櫛形電極構造から得られる。いくつかの例では、櫛形電極構造は、信号伝達式にプロセッサに直接接続される。このようにして、櫛形電極構造が測定可能な信号を生成するとすぐに、プロセッサはこの信号を即座に処理して、第2の部材に対する第1の部材の回転度を計算または導出することができる。
【0015】
典型的には、いくつかの例では、第1の部材および第2の部材は各々、回転軸に実質的に一致する対称軸を含む。第1の部材および第2の部材は、互いに関して軸方向のずれをあけて配置することができる。ここで、軸方向は、回転軸に平行であり、または回転軸に一致する。第1の部材は、軸方向面、たとえば第2の部材の対応する軸方向面の方を向いている近位または遠位面を含むことができる。同様に、第2の部材は、第1の部材の方を向いている軸方向面を含むことができる。典型的には、少なくとも1つの信号発生器は、第1の部材のうち第2の部材の方を向いている面または側に配置される。同様に、第2の部材の少なくとも1つのセンサは、典型的には、第2の部材のうち第1の部材の方を向いている面または側に位置しまたは配置される。
【0016】
いくつかの例では、第1の部材および第2の部材が、互いから所定の軸方向のずれをあけて配置されたとき、第1の部材の径方向および/または円周方向の範囲は、第2の部材のそれぞれの径方向および/または円周方向の範囲と軸方向に実質的に重複する;逆も同様である。
【0017】
他の例では、第1の部材および第2の部材は、軸方向に実質的に重複する。したがって、軸方向に関して、第1の部材および第2の部材は、回転軸によって画成される軸方向を横断する共通の平面内に位置することができる。ここで、第1の部材および第2の部材は、互いに対して径方向および/または円周方向のずれをあけて位置する。一例として、第1の部材の少なくとも一部分は、第2の部材の一部分の径方向内側に位置することができる。同様に、第2の部材の一部分は、第1の部材の径方向内側に位置することができる。ここで、信号発生器は、少なくとも1つのセンサから径方向距離をあけて配置される。
【0018】
多数の例では、第1の部材が回転軸に関して第2の部材に対する回転を受けるとき、少なくとも1つの信号発生器が少なくとも1つのセンサ付近を通過し、それによって櫛形電極構造内に測定可能な電気信号を誘導する。
【0019】
この電気信号は、プロセッサによって処理することができる。したがって、第1の部材における少なくとも1つの信号発生器の位置および第2の部材における少なくとも1つのセンサの位置が分かっているため、櫛形電極構造による電気信号の測定可能な生成は、少なくとも1つの信号発生器が少なくとも1つのセンサおよび/またはその櫛形電極構造付近を通過したことを示す。
【0020】
少なくとも1つの信号発生器が少なくとも1つのセンサ付近を通過するたびに、それぞれの電気信号が生成される。信号発生器によるセンサ付近の通過の各発生は、第2の部材に対する第1の部材の回転の所定の角度距離に対応する。時間とともに生成された電気信号の数を計数することによって、プロセッサは、第2の部材に対する第1の部材の合計の角度変位または回転を導出することが有効にされる。
【0021】
少なくとも1つのセンサに櫛形電極構造を提供することで、回転感知配置を小型化することが可能になる。櫛形電極構造は、第2の部材に最小の構造空間のみを必要とする。さらに、櫛形電極構造は、容易に製造することができ、たとえば第2の部材またはそれぞれの基板に印刷またはコーティングすることができ、したがって注射デバイスのための回転感知配置の低コストの大量製造を有効にする。
【0022】
この低コストの手法は、少なくとも1つのセンサの感知構成要素として櫛形電極構造を実施することによって、使い捨ての注射デバイスへの電子回転感知配置の一体化も有効にする。しかし、ここで提案される回転感知配置は、使い捨ての注射デバイスに限定されるものではない。ここで提案される回転感知配置は、再利用可能な注射デバイス、ならびに注射デバイスに機械的に連結するように構成および意図されたアドオンデバイスでも、等しく使用することができる。
【0023】
さらなる例によれば、回転感知配置は、平面基板を含む。平面基板は、典型的には、第2の部材に位置する。少なくとも1つのセンサは、平面基板に配置される。少なくとも1つのセンサの全体または構成要素のみを、平面基板に配置することができる。平面基板は、電子構成要素のコスト効率が良くしたがって低コストの大量製造に特に有用である。平面基板を提供することは、櫛形電極構造の実装に特に有用である。櫛形電極構造は、そのような平面基板にかなり容易に取付けおよび/または配置および/または固定することができる。
【0024】
平面基板は、第2の部材とは別個の基板とすることができる。他の例では、平面基板および第2の部材を一体化することができる。したがって、第2の部材は、平面基板を形成、構成、または提供することができる。特に、第2の部材の1つの側面または軸方向面は、少なくとも1つのセンサが直接配置される平面基板として働くことができる。
【0025】
さらなる例によれば、櫛形電極構造は、平面基板に印刷またはコーティングされる。平面基板に導電性の櫛形電極構造を印刷またはコーティングすることは、大量製造プロセスに好適な低コストの回転感知配置を提供するのに特に有用である。平面基板に櫛形電極構造を直接印刷またはコーティングすることは、製造の観点から特に有用である。したがって、櫛形電極を基板に取り付ける別個の組立て工程を回避することができる。手動または機械アセンブリのそれぞれのコストおよび支出を節約することができる。さらに、平面基板に櫛形電極構造を直接印刷またはコーティングすることによって、櫛形電極と平面基板との間に長持ちするかなり丈夫な連結を提供することができる。これは、回転感知配置の寿命、丈夫さ、および信頼性にとって特に有益である。
【0026】
さらなる例によれば、回転感知配置は、プリント回路基板を含む。少なくとも1つのセンサの櫛形電極構造は、プリント回路基板に配置される。回転感知配置のプロセッサもまた、プリント回路基板に配置される。さらに、上述した平面基板は、プリント回路基板内またはプリント回路基板上に一体化することができる。したがって、平面基板は、プリント回路基板によって形成または構成することができる。このようにして、回転感知配置のプロセッサおよび/またはさらなる電子構成要素ならびに櫛形電極構造は、1つの同じプリント回路基板に配置、取付け、および/または固定することができる。さらに、プリント回路基板として実施することができる1つの同じ平面基板に、回転感知配置のすべての導電性構成要素を取付け、配置、印刷、またはコーティングすることができる。このようにして、回転感知配置を製造する場合、単一のプリント回路基板を適当に構成し、このプリント回路基板を第2の部材に配置すると十分であり得る。
【0027】
プリント回路基板は、たとえばバッテリまたは太陽電池の形態の電気エネルギー源をさらに備えることができる。典型的には、少なくとも1つのセンサおよびプロセッサは、プリント回路基板の1つの同じ側に位置する。バッテリまたは電気エネルギー供給源は、プリント回路基板の反対側に位置することができる。バッテリまたは電気エネルギー供給源は、プリント回路基板の裏側に設けることができる。バッテリおよび/または電気エネルギー源は、プリント回路基板の両側に取り付けて固定することもできる。
【0028】
少なくとも1つのセンサおよびプロセッサは、典型的には、プリント回路基板の1つの同じ側に位置する。いくつかの例では、少なくとも1つのセンサおよびプロセッサは、プリント回路基板または平面基板の両側に位置する。
【0029】
このようにして、注射デバイスおよび/またはアドオンデバイス内の利用可能な構造空間に従って、回転感知配置の全体的な幾何形状を修正して適合させることができる。
【0030】
さらなる例によれば、櫛形電極構造は、電界を生成するように構成される。少なくとも1つの信号発生器は、電界を修正するように構成される。櫛形電極構造は、少なくとも第1の電極および第2の電極を有する櫛形キャパシタを形成することができる。第1の電極および第2の電極は、典型的には、互いから電気的に絶縁される。
【0031】
櫛形電極構造は、DC電圧によって準定常状態の構成で駆動することができる。櫛形電極構造はまた、AC電圧によって駆動することができる。いずれの場合も、異なる極性の第1および第2の電極間に、それぞれの電界が生成される。少なくとも1つの信号発生器は、櫛形電極構造によって生成された電界を修正するように構成される。たとえば櫛形電極構造付近を通過するとき、少なくとも1つの信号発生器が櫛形電極構造のすぐ近傍にくることによって、少なくとも1つの信号発生器は、電界の測定可能な修正を誘導する。このように信号発生器によって誘導される電界の修正は、少なくとも1つのセンサおよび/または櫛形電極構造に接続されたプロセッサによって検出可能である。このようにして、少なくとも1つの発生器が櫛形電極構造または少なくとも1つのセンサ付近を通過したことを示す計数パルスを検出および獲得することができる。
【0032】
さらなる例によれば、櫛形電極構造は、第1の電極および第2の電極を含む。第1の電極および第2の電極は、交互配置された幾何構成で配置される。第1および第2の電極は、櫛形のパターンを有する周期的なマイクロストリップ電極構造を含むことができる。第1および第2の電極は各々、コーム状の構造を含むことができ、コーム状構造の自由端が、互いの方を向いて、互いに非接触に交差しながら、基板上の共通の平面内に配置されている。第1および第2の電極はまた、蛇行して配置することができる。第1および第2の電極の考えられる交互配置された幾何構成のいずれにおいても、基板上の電極構造の表面密度を増大することができ、または最大にすることもできる。
【0033】
回転感知配置のさらなる例では、櫛形電極構造は、第1の電極および第2の電極を含み、第1の電極および第2の電極は、蛇行した伝導構造によって相互に電気的に接続される。ここで、第1の電極および第2の電極は、単一の導電性構造の接触端子として実施することができ、導電性構造は、蛇行タイプであり、または蛇行した幾何形状を含む。
【0034】
蛇行した伝導構造は、互いに平行に延びる多数の細長い導体セクションを含むことができる。多数の細長い導体セクションが、一直線に電気的に接続される。少なくとも3つの細長い導体セクションの一例では、第1の導体セクションの第1の長手方向端が、第1の電極を構成することができ、または第1の電極に接続することができる。第1の導体セクションの反対側の第2の長手方向端は、隣接する第2の導体セクションの第2の長手方向端に接続することができる。
【0035】
第2の導体セクションの反対側の端部、したがって第2の導体セクションの第1の端部は、さらに隣接する細長い導体セクション、すなわち第3の細長い導体セクションの第1の長手方向端に接続することができる。第3の細長い導体セクションの反対側の端部、したがって第2の端部は、第4の導体セクションの第2の端部に接続することができ、以下同様である。最後の長手方向導体セクションの自由端部は、第2の電極に接続することができ、または第2の電極を構成することができる。平行に向けられた合計3つの細長い導体セクションを含む蛇行した伝導構造の場合、第3の細長い導体セクションの第2の端部は、第2の電極に接続することができ、または第2の電極を形成することができる。
【0036】
さらなる実施形態によれば、信号発生器は、信号生成部分を含む。少なくとも信号生成部分または信号発生器全体が、3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、10より大きい、12より大きい、または15より大きい比誘電率εrを有する材料から作られる。典型的な実装では、信号発生器の信号生成部分は、ポリアミド、二酸化ケイ素、ネオプレン、天然もしくは合成ゴム、グラファイト、ケイ素、または3より大きい比誘電率εrを含む他の材料を含み、またはそのような材料から作られる。
【0037】
いくつかの例では、信号発生器は、天然または合成ゴムなどのエラストマ材料でコーティング、カバー、または作製された信号生成部分を含む。ゴムは、5より大きいまたはさらには6より大きい比較的大きい比誘電率を含む。信号発生器の信号生成部分が櫛形電極構造のすぐ近傍に入り、かつ信号生成部分が櫛形電極構造によって提供および生成される電界を貫通または横断するとすぐに、測定可能な信号がプロセッサで得られ、したがって少なくとも1つの信号発生器が少なくとも1つのセンサ付近を通過したことを示す。
【0038】
別の例によれば、櫛形電極構造は、磁界を生成するように構成される。ここで、少なくとも1つの信号発生器は、磁界を修正するように構成される。ここで、櫛形電極構造は、少なくとも第1の巻線または1次巻線および少なくとも1つの第2の巻線または2次巻線を含む。駆動電圧によって適当に駆動されたとき、第1の巻線または1次巻線が、空間的に周期的な磁界を生成し、第2の巻線または2次巻線が、たとえば簡単なワイアのターンの形態の誘導巻線であり、またはそのような誘導巻線として実施される。第2の電極または第2巻線は、第1の電極、第1の巻線、または1次巻線によって生成された磁界を感知するように構成されており、そのように動作可能である。第1の電極または巻線によって生成される磁界のあらゆる修正は、少なくとも第2の電極または巻線によって検出可能および/または定量測定可能である。ここで、少なくとも1つの信号発生器は、櫛形電極構造によって生成または提供される磁界を修正することが可能な反磁性、常磁性、または強磁性材料を含む。この例では、少なくとも1つのセンサは、いわゆる蛇行巻線磁力計(MWM)として実施することができる。
【0039】
別の例では、少なくとも1つのセンサは、回転軸から所定の径方向センサ距離Dをあけて配置される。さらに、少なくとも1つの信号発生器は、回転軸から所定の径方向信号発生器距離dをあけて配置される。ここで、径方向センサ距離と径方向信号発生器距離との間の差(D-d)は、少なくとも1つのセンサの径方向範囲と少なくとも1つの信号発生器の径方向範囲との間の差以下である。このようにして、第1の部材が回転軸に関して第2の部材に対する回転を受けるとき、少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つの信号発生器が径方向および軸方向に重複することが有効にされることが提供される。
【0040】
別の例によれば、少なくとも1つのセンサの多数のセンサが、第2の部材の一方の側にわたって分散される。別法として、または加えて、少なくとも1つの信号発生器の多数の信号発生器が、第2の部材の方を向いている第1の部材の一方の側にわたって分散される。いずれにしても、複数の信号発生器および/または複数のセンサが設けられる。多数のセンサおよび信号発生器は、それぞれ第1の部材および第2の部材の円周に沿って等距離または等角度に分散させることができる。たとえば、第1の部材が第1の部材の円周に沿って等距離に配置された4つの信号発生器を備え、かつ第2の部材が1つのセンサのみを含む場合、回転感知配置の角度分解能は、90°の大きさになる。第2の部材の円周に沿って規則的または不規則的に分散された多数のセンサを使用することによって、センサ数および隣接するセンサ間の特有の離隔距離に応じて、空間分解能を修正することができ、たとえば増大させることができる。
【0041】
たとえば、第1の数のセンサが第2の部材に設けられ、第2の数の信号発生器が第1の部材に設けられ、第1および第2の数が等しくないことが考えられる。ここで、第2の部材上の多数の規則的または不規則的な空間パターンのセンサと、第1の部材上の規則的または不規則的なパターンの多数の信号発生器とを組み合わせることで、第1の部材と第2の部材との間に曖昧でないロータリエンコーダを提供することができ、したがって第2の部材に対する第1の部材の回転方向および回転度を判定することを可能にする。
【0042】
別の例によれば、少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つの信号発生器は、恒久的に、機械的に接触しない。したがって、少なくとも1つのセンサおよび少なくとも1つの信号発生器は、それぞれ第2の部材および第1の部材に無衝突に配置される。特に櫛形電極構造が櫛形キャパシタまたはMWMである実装の場合、少なくとも1つの信号発生器が少なくとも1つのセンサ付近を通過したことが、非接触で検出可能である。非接触の電気的および/または磁気的な測定は、第1の部材と第2の部材との間に摩擦が存在しないため、回転感知配置の全体的な寿命を延ばすのに特に有益である。さらに、少なくとも1つのセンサまたは少なくとも1つの信号発生器はいずれも、摩耗または摩耗を受けない。
【0043】
別の例では、平面基板は圧電基板である。櫛形電極構造は圧電基板に配置されており、圧電基板上の櫛形電極構造の配置は、平面基板上の表面弾性波または平面基板を介した表面弾性波に応答して電気信号を生成するように動作可能である。このようにして、平面基板を圧電基板として実施することによって、少なくとも1つのセンサを櫛形トランスデューサとして実施することができる。櫛形トランスデューサは、典型的にコーム形状の第1および第2の電極を含む。第1および第2の電極、したがってコーム構造は、ジッパのように配置することができ、すなわちコーム構造の歯の自由端が互いの方を向いており、一方のコーム構造の歯間の自由空間が、他方のコーム構造の歯を受ける。
【0044】
櫛形トランスデューサは、機械的振動、たとえば平面基板上の表面弾性波を、圧電効果によって電気信号に変換するように動作可能である。このようにして、第2の部材に存在するあらゆる表面弾性波を検出することができる。櫛形トランスデューサは、市場で入手可能であり、第2の部材上または第2の部材内でかなり小型に容易に実施することができる。
【0045】
別の例では、回転感知配置は、歪みゲージを含む。ここで、櫛形電極構造は、第2の部材に取り付けられた歪みゲージの一部である。櫛形電極構造は、可撓変形に応答して電気伝導度の測定可能な変動を示す。歪みゲージと第2の部材との間の機械的連結によって、櫛形電極構造は、第2の部材の可撓変形に応答して電気伝導度の測定可能な変動を示す。
【0046】
典型的には、第2の部材は、第1の部材に対する回転を受けたとき、可撓変形を受ける。このため、第1の部材および第2の部材は、少なくとも一時的に機械的に係合することができる。たとえば、第1の部材および第2の部材は、ラチェット配置によって機械的に係合させることができる。第1の部材が第2の部材に対して回転されるとき、第2の部材は可撓変形、たとえば規則的かつ反復的な可撓変形を受ける。櫛形電極構造は、第2の部材に取り付けられ、たとえば接着によって取り付けられるため、第2の部材の変形は、櫛形電極構造のそれぞれの変形に等しく伝達される。したがって、第2の部材が弾性変形を受けると、櫛形電極構造の電気抵抗は測定可能な変化を受ける。
【0047】
歪みゲージは、伝導性、たとえば金属性の櫛形パターンを支持する可撓性の絶縁下地を含むことができる。可撓性の絶縁下地および/または伝導性の櫛形パターンは、シアノアクリレートなどの好適な接着剤によって、第2の部材に取り付けることができる。伝導性の櫛形パターンは、コンスタンタン合金を含むことができる。
【0048】
少なくとも1つのセンサは、第1の歪みゲージおよび第2の歪みゲージを含むことができ、これらの歪みゲージはどちらも、櫛形電極構造を含む。ここで、第1の歪みゲージは、基準電気抵抗器として働くことができ、第2の歪みゲージは、弾性変形を受けることができ、したがって測定用電気抵抗器として働くことができる。第1および第2の歪みゲージは、ホイートストンブリッジによって相互に電気的に接続することができる。次いで、第2の部材に存在する機械的な歪みまたは負荷を測定するには、第2の歪みゲージに対する第1の歪みゲージの電気抵抗率の変動を判定すると概ね十分である。
【0049】
第1の歪みゲージおよび第2の歪みゲージのうちの一方は、プリント回路基板に一体化することができ、第1の歪みゲージおよび第2の歪みゲージのうちの他方は、プリント回路基板から離れて位置することができる。典型的には、第1の歪みゲージ、したがって基準電気抵抗器は、プリント回路基板に一体化することができ、第2の歪みゲージは、第2の部材の弾性変形可能部分に接着によって取り付けられる。
【0050】
第2の部材が第1の部材に対して回転するとき、第2の部材上の歪みゲージの櫛形電極構造の向きは、典型的には、第2の部材の可撓変形の主方向に対して一直線または平行である。このようにして、測定感度、したがって測定精度を高めることができる。
【0051】
別の例によれば、回転感知配置は、第1の部材および第2の部材のうちの少なくとも一方に係合された少なくとも1つのラチェット配置を含む。ラチェット配置は、個別の回転ステップで、第2の部材に対する第1の部材の回転を支持するように構成される。典型的には、ラチェット配置は、第1の部材に位置する第1のラチェット部材を含み、第2の部材に位置する第2のラチェット部材をさらに含む。第1のラチェット部材は、第2のラチェット部材の方を向いており、逆も同様である。第1のラチェット部材は、典型的には、第2のラチェット部材の方を向いているたとえば歯の形態の第1の突起を含む。
【0052】
第2のラチェット部材は、典型的には、第1のラチェット部材の方を向いている第2の突起を含む。第2のラチェット部材はまた、歯または歯状構造を含むことができる。いくつかの例では、第1のラチェット部材は、歯状構造を外面または内面に有する歯状の縁を含む。第2のラチェット部材は、第1および第2のラチェット部材が回転軸に関して互いに対する回転を受けたとき、第1のラチェット部材に規則的に係合する弾性変形可能なラチェット部材を含むことができる。このようにして、第1の部材は、たとえば用量増分方向および/または用量減分方向に、第2の部材に対して個別のステップで回転させることができる。
【0053】
これらの個別のステップのサイズは、第1のラチェット部材および第2のラチェット部材のうちの少なくとも一方の周期性によって決定される。弾性変形可能でありまたは弾性的に付勢されたラチェット部材は、径方向において、たとえば径方向内方または径方向外方へ弾性変形可能である。別法として、それぞれのラチェット部材は、軸方向に弾性変形可能である。いずれにせよ、第1の部材と第2の部材との間のラチェット係合は、第1の部材および第2の部材のうちの少なくとも一方で表面弾性波を提供および生成する。第1および第2の部材間のラチェット係合によって画成および決定される個別の回転ステップにより第1の部材が第2の部材に対して回転されるとき、可聴クリック音を生成することができ、したがって所定の用量サイズ、たとえば1国際単位に対応することができる個別の角度距離だけ、第1の部材が第2の部材に対して回転されたことを、使用者に示す。
【0054】
概して、第2のラチェット部材は、第2の部材の可撓変形に応答してその電気伝導度の測定可能な変動を示す電気歪みゲージを含む少なくとも1つのセンサを装備しまたは備えることができる。電気歪みゲージは、櫛形電極構造を含む。
【0055】
いくつかの例では、第1の部材、したがって第1のラチェット部材を、注射デバイスのハウジングまたはアドオンデバイスのハウジングに一体化することができ、回転感知配置の第2の部材は、ハウジングに対して回転可能である。しかし、第1の部材が、ハウジングに対して回転可能であり、回転感知配置の第2の部材は、注射デバイスまたはアドオンデバイスのハウジングに一体化され、または恒久的に堅く連結される、他の例も考えられる。
【0056】
ラチェット配置の実装は、少なくとも1つのセンサによって検出することができる表面弾性波を生成するために、すなわちセンサが櫛形トランスデューサとして実施されるとき、特に有益である。
【0057】
別の態様によれば、本開示はさらに、薬剤の用量を設定および排出するための注射デバイスに関する。注射デバイスは、ハウジングと、用量の排出を開始および/または制御するためのトリガとを含む。注射デバイスは、用量を設定するためにハウジングに対して回転可能なダイヤル部材をさらに含む。注射デバイスは、上述した少なくとも1つの回転感知配置をさらに含み、第1の部材および第2の部材は、注射デバイスに一体化される。典型的には、第1の部材は、ダイヤル部材およびハウジングのうちの一方に回転不能にロックまたは連結され、第2の部材は、ダイヤル部材およびハウジングのうちの他方に対して回転可能である。さらに、第1の部材が、ダイヤル部材およびハウジングのうちの一方に一体化され、第2の部材が、ダイヤル部材およびハウジングのうちの他方に一体化されることも考えられる。
【0058】
ダイヤル部材またはハウジングの代わりに、第1の部材はまた、注射デバイスの駆動機構の回転可能な構成要素に連結または一体化することができ、この回転可能な構成要素は、ダイヤル部材に回転不能にロックされる。同様に、第1の部材および第2の部材のうちの他方は、ハウジングに一体化することができ、またはハウジングに不動に連結もしくは固定された構成要素に堅く締結しもしくは取り付けることができる。
【0059】
別の態様によれば、本開示はまた、注射デバイスに取り付けるために構成されたアドオンデバイスに関する。アドオンデバイスは、注射デバイスのダイヤル部材に取り付けるために構成された本体を含む。アドオンデバイスは、注射デバイスのハウジングに取り付けるために構成されたハウジングをさらに含む。アドオンデバイスは、上述した回転感知配置を含み、第1の部材は、アドオンデバイスの本体およびハウジングのうちの一方に回転不能にロックされ、第2の部材は、アドオンデバイスの本体およびハウジングのうちの他方に対して回転可能である。
【0060】
さらなる態様では、本開示はまた、上述した注射デバイスの第2の部材に対する注射デバイスの第1の部材の回転を検出および/または定量測定する方法に関する。この方法は、典型的に用量の設定中に、回転感知配置の第1の部材および第2の部材のうちの一方にトルクを誘導する工程を含む。トルクは、第1の部材および第2の部材のうちの一方に、第1の部材および第2の部材のうちの他方に対して誘導され、それによって回転感知配置の少なくとも1つのセンサに対して少なくとも1つの信号発生器を動かす。
【0061】
さらなる工程で、少なくとも1つのセンサに対する少なくとも1つの信号発生器の動きに応答して、少なくとも1つのセンサの櫛形電極構造の電気信号が測定される。言い換えれば、櫛形電極構造の電気信号は、第1の部材が第2の部材に対して回転されるときに測定される。
【0062】
さらなる工程で、櫛形電極構造によって提供された電気信号は、プロセッサによって処理され、第2の部材に対する第1の部材の回転角度が、電気信号に基づいて計算される。
【0063】
典型的には、この方法は、上述した回転感知配置によって実行可能であり、回転感知配置は、たとえば手持ち式のペン型注射器として実施される注射デバイス内で実施することができる。代替として、この方法は、そのような注射デバイスに取り付けるために構成されたアドオンデバイスによって実施可能である。注射デバイスは、注射デバイス内に位置する薬剤が使い尽くされると、または使用されるべきではなくなると、完全に廃棄されることが意図された使い捨ての注射デバイスとして実施することができる。回転感知配置は、複数の長持ちする使用のために構成された再利用可能なデバイスでも同様に実施可能であり、薬剤カートリッジは、空になったとき、またはカートリッジ内に位置する薬剤が使用されるべきではなくなったとき、交換されることが意図される。
【0064】
本文脈で、「遠位」または「遠位端」という用語は、注射デバイスのうち、人または動物の注射部位の方を向いている端部に関する。「近位」または「近位端」という用語は、注射デバイスのうち、人または動物の注射部位から最も遠く離れた反対側の端部に関する。
【0065】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書で用いられる場合、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態では、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、かつ/あるいはペプチド、タンパク質、多糖、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモン、もしくはオリゴヌクレオチド、または上述した薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病もしくは糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害、たとえば、深部静脈血栓塞栓症もしくは肺血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチの治療および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症の治療および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはそのアナログもしくは誘導体、もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4のアナログもしくは誘導体を含む。
【0066】
インスリンアナログは、たとえば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0067】
インスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0068】
エキセンジン-4は、たとえば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2の配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
【0069】
エキセンジン-4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);もしくは
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
【0070】
もしくは、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5 desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物
から選択される。
【0071】
ホルモンは、たとえば、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンである。
【0072】
多糖は、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化形たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩である。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。
【0073】
抗体は、基本構造を共有するイムノグロブリンとしても公知の球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位はイムノグロブリン(Ig)単量体(Ig単位のみを含む)であり、分泌型抗体は、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0074】
Ig単量体は、4本のポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合によって結合した2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる「Y」字型の分子である。各重鎖は約440アミノ酸長であり、各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化する鎖内ジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインで構成される。これらのドメインは、70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に従って異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的なイムノグロブリン折り畳み構造を有する。
【0075】
α、δ、ε、γ、およびμで表される5タイプの哺乳動物Ig重鎖が存在する。存在する重鎖のタイプにより抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体中に見出される。
【0076】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)とを有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つのイムノグロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0077】
哺乳動物では、λおよびκで表される2タイプのイムノグロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は、2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を含み、哺乳動物の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0078】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)について3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0079】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化により、Igプロトタイプが3つのフラグメントに切断される。1つの完全なL鎖と約半分のH鎖とをそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズは同等であるが鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶化可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合を、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域を融合して、単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することができる。
【0080】
薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類、たとえば、Na+、もしくはK+、もしくはCa2+から選択されるカチオン、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0081】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0082】
本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に様々な修正および変更を加えることができることが、当業者にはさらに明らかである。さらに、添付の特許請求の範囲で使用される任意の参照番号は、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0083】
以下、容器および注射デバイスの多数の例について、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図2】
図1の注射デバイスを示す分解斜視図である。
【
図3】薬物送達デバイスまたは注射デバイスとともに使用するためのセンサ配置のブロック図である。
【
図4】注射デバイスの投与配置におけるセンサ配置の一体化の概略斜視図である。
【
図5】センサ配置の実装を概略的に示す上面図である。
【
図7】センサの櫛形電極構造を概略的に示す図である。
【
図8】櫛形電極構造の断面を概略的に示す図である。
【
図9】センサ配置のさらなる例を概略的に示す図である。
【
図11】蛇行巻線磁力計を形成する櫛形電極構造の実装を概略的に示す図である。
【
図12】センサ配置を使用して回転を測定する方法を示す図である。
【
図13】歪みゲージとして実施される櫛形電極構造の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
回転感知配置の実装に好適な注射デバイス1の一例が、
図1および
図2に示されている。注射デバイス1は、充填済みの使い捨て注射デバイスであり、ハウジング10を含み、ハウジング10には注射針15を取り付けることができる。注射針15は、内側ニードルキャップ16と、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを密閉および保護するように構成された外側ニードルキャップ17または保護キャップ18とによって保護される。ハウジング10は、
図2に示す駆動機構8を収納するように構成された主ハウジング部材を構成および形成することができる。注射デバイス1は、カートリッジホルダ14として示されている遠位ハウジング構成要素をさらに含むことができる。カートリッジホルダ14は、主ハウジング10に恒久的または解放可能に連結することができる。カートリッジホルダ14は、典型的には、液体薬剤で充填されたカートリッジ6を収納するように構成される。カートリッジ6は、円筒形または管状の胴部25を含み、胴部25は、胴部25内に位置する栓7によって近位方向3に封止される。栓7は、ピストンロッド20によって遠位方向2にカートリッジ6の胴部25に対して変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止26によって封止されており、封止26は、注射針15の近位方向の先端によって穿孔可能である。カートリッジホルダ14は、その遠位端にねじ付ソケット28を含み、注射針15の対応するねじ付部分にねじ係合する。カートリッジホルダ14の遠位端に注射針15を取り付けることによって、カートリッジ6の封止26が貫通され、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスを確立する。
【0086】
注射デバイス1が、たとえばヒトインスリンを投与するように構成されるとき、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定される投与量は、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは約45.5μgの純結晶インスリン(1/22mg)に生物学的に相当する。用量ダイヤル12は、用量ダイヤルを構成または形成することができる。
【0087】
図1および
図2にさらに示すように、ハウジング10は投与量窓13を含み、投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓13は、用量ダイヤル12が回されると動くように構成された数字スリーブ80の制限部分を使用者が観察することを可能にして、現在設定されている用量の視覚インジケーションを提供する。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路で回転される。
【0088】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械的クリック音が音響フィードバックを使用者に提供するように構成することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、トリガ11または注射ボタンが押されると、表示窓13内に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押された後、注射デバイス1の針15が特定の時間にわたって皮膚部分内に留まったとき、用量の大部分が実際に患者の体内に注射されている。インスリン用量の排出はまた、機械的クリック音を引き起こすことができ、このクリック音は、用量ダイヤル12を使用するときに生じる音とは異なる。
【0089】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、用量ダイヤル12は、軸方向運動で、すなわち回転なく、その初期位置へ回されるのに対して、数字スリーブ80は、その初期位置へ回転して戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。
【0090】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、数回の注射プロセスに対して使用することができる。
【0091】
さらに、注射デバイス1を最初に使用する前に、たとえば薬剤の2単位を選択し、針15を上向きにした状態で注射デバイス1を保持しながらトリガ11を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行して、カートリッジ6および針15から空気を除去することが必要になることがある。提示を簡単にするために、以下、排出される量が注射される用量に実質的に対応し、したがってたとえば注射デバイス1から排出される薬剤の量が、使用者が受け取る用量に等しいものと仮定する。
【0092】
駆動機構8の一例が、
図2により詳細に示されている。駆動機構8の一例は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22にねじ係合されるねじ付軸方向貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、支承部21では押さえ23が、ピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として、自由に回転することができる。押さえ23は、カートリッジ6の栓7の近位向きの推力受け面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド20は、ハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10に対して、したがってカートリッジ6の胴部25に対して、遠位方向の前進運動を受ける。その結果、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20とハウジング10とのねじ係合によって、明確な距離だけ遠位方向2に変位される。
【0093】
ピストンロッド20は、その近位端に第2のねじ山24をさらに備える。遠位ねじ山22および近位ねじ山24は、反対回りである。
【0094】
駆動スリーブ30がさらに設けられ、駆動スリーブ30は、ピストンロッド20を受けるための中空の内部を有する。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24にねじ係合される内側ねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、その遠位端に外側ねじ付セクション31を含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分33との間に、軸方向に拘束される。2つのフランジ部分32、33間には、駆動スリーブ30のねじ付セクション31に嵌合する内側ねじ山を有する半円形ナットの形態の最終用量リミッタ35が設けられる。
【0095】
最終用量リミッタ35は、その外周に径方向の凹部または突起をさらに含み、ハウジング10の側壁の内側にある相補形の凹部または突起に係合する。このようにして、最終用量リミッタ35は、ハウジング10にスプライン連結される。連続する用量設定処置中に駆動スリーブ30を用量増分方向4または時計回り方向に回転させると、駆動スリーブ30に対する最終用量リミッタ35の蓄積的な軸方向変位が生じる。フランジ部分33の近位向きの面に軸方向に当接する環状ばね40が、さらに設けられる。さらに、管状のクラッチ60が設けられる。クラッチ60は、第1の端部に、一連の円周方向の鋸歯を備える。クラッチ60の第2の反対側の端部の方には、径方向内方向きのフランジが位置する。
【0096】
さらに、用量ダイヤルスリーブが設けられており、用量ダイヤルスリーブは、数字スリーブ80としても示されている。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ60の外側に設けられ、ハウジング10の径方向内方に位置する。数字スリーブ80の外面の周りに、螺旋溝81が設けられる。ハウジング10は投与量窓13を備えており、投与量窓13を通して、数字スリーブ80の外面の一部を見ることができる。ハウジング10は、挿入片62の内側側壁部分に螺旋リブをさらに備え、螺旋リブは、数字スリーブ80の螺旋溝81に着座される。管状の挿入片62は、ハウジング10の近位端に挿入される。挿入片62は、ハウジング10に回転不能に軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転される用量設定処置を制限するために、第1および第2の止め具がハウジング10に設けられる。以下でより詳細に説明するように、止め具のうちの少なくとも一方は、プリセレクタ70に設けられたプリセレクタ止め具機能71によって提供される。
【0097】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12は、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応および一致する。用量ダイヤル12は、用量ダイヤル12と数字スリーブ80との間の相対的な動きを防止するように、数字スリーブ80に固定される。用量ダイヤル12は、中心開口部を備える。
【0098】
トリガ11は、用量ボタンとしても示されており、実質的にT字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられる。トリガ11の心棒64は、用量ダイヤル12内の開口部を通り、駆動スリーブ30の延長部の内径を通って延び、ピストンロッド20の近位端にある受入れ凹部に入る。心棒64は、制限された軸方向運動のために、駆動スリーブ30に対して回転しないように、駆動スリーブ30内で保持される。トリガ11のヘッドは概して円形である。トリガの側壁またはスカートは、ヘッドの周辺部から延び、用量ダイヤル12の近位アクセス可能な環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
【0099】
使用者は、用量をダイヤル設定するために、用量ダイヤル12を回転させる。ばね40がクリッカとしても作用し、クラッチ60が係合された状態で、駆動スリーブ30、ばねまたはクリッカ40、クラッチ60、および数字スリーブ80は、用量ダイヤル12とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね40およびクラッチ60によって提供される。ばね40とクラッチ60との間の鋸歯を介して、トルクが伝送される。数字スリーブ80上の螺旋溝81および駆動スリーブ30内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、数字スリーブ80がハウジング10から延び、駆動スリーブ30が同じ速度でピストンロッド20に登ることが可能になる。行程の限界で、数字スリーブ80上の径方向止め具が、ハウジング10に設けられた第1の止め具または第2の止め具に係合し、第1の回転方向、たとえば用量増分方向4のさらなる動きを防止する。ピストンロッド20の回転は、ピストンロッド20上の全体的な駆動ねじ山の方向が反対になっていることで防止される。
【0100】
ハウジング10に掛止された最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30の回転によって、ねじ付セクション31に沿って前進する。最終用量投薬位置に到達すると、最終用量リミッタ35の表面に形成された径方向止め具が、駆動スリーブ30のフランジ部分33上の径方向止め具に当接し、最終用量リミッタ35および駆動スリーブ30がどちらもさらに回転することを防止する。
【0101】
使用者が不注意で所望の投与量を超えてダイヤル設定した場合、ペン注射器として構成された注射デバイス1は、薬剤をカートリッジ6から投薬することなく、投与量をダイヤルダウンすることを可能にする。このため、用量ダイヤル12は、簡単に逆回転される。これにより、システムは逆に作用する。次いで、ばねまたはクリッカ40の可撓性アームが、ラチェットとして作用し、ばね40が回転することを防止する。クラッチ60を介して伝送されるトルクにより、鋸歯が互いを載り越えて、ダイヤル設定用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の円周方向範囲が単位用量に対応するように配置される。ここで、クラッチは、ラチェット機構として働くことができる。
【0102】
代替として、または加えて、ラチェット機構90は、管状のクラッチ60の側壁に、可撓性アームなどの少なくとも1つのラチェット機能91を含むことができる。少なくとも1つのラチェット機能91は、たとえば可撓性アームの自由端に、径方向外方へ延びる突起を含むことができる。この突起は、数字スリーブ80の内側にある対応する形状のカウンタラチェット構造に係合するように構成される。数字スリーブ80の内側は、鋸歯プロファイルを有する長手方向の形状の溝または突起を含むことができる。用量のダイヤル設定または設定中、ラチェット機構90は、第2の回転方向5に沿ってクラッチ60に対する数字スリーブ80の回転を可能にして、そのような回転を支持し、そのような回転には、クラッチ60の可撓性アームの規則的なクリックが伴う。第1の回転方向に沿って数字スリーブ80に印加される角運動量は、クラッチ60に不変に伝達される。ここで、ラチェット機構90の相互に対応するラチェット機能は、数字スリーブ80からクラッチ60へのトルク伝送を提供する。
【0103】
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ11を押し下げることによって、設定用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ60は数字スリーブ80に対して軸方向に変位して、その犬歯を係合解除する。しかし、クラッチ60は、駆動スリーブ30に回転掛止されたままである。ここで、数字スリーブ80および用量ダイヤル12は、螺旋溝81に従って自由に回転することができる。
【0104】
この軸方向運動により、ばね40の可撓性アームが変形し、投薬中に鋸歯が緩まないことを確実にする。これにより、駆動スリーブ30がハウジング10に対して回転することは防止されるが、駆動スリーブ30がハウジング10に対して軸方向に自由に動くことはできる。後に、遠位方向の投薬圧力がトリガ11から除去されたとき、この変形を使用して、駆動スリーブ30に沿ってばね40およびクラッチ60を後方へ付勢し、クラッチ60と数字スリーブ80との間の連結を回復する。
【0105】
駆動スリーブ30の長手方向の軸方向運動により、ピストンロッド20は、ハウジング10の支持体の貫通口を通って回転し、それによってカートリッジ6内で栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬されると、用量ダイヤル12から延びる少なくとも1つの止め具と、ハウジング10の少なくとも1つの対応する止め具との接触によって、数字スリーブ80のさらなる回転が防止される。数字スリーブ80の軸方向に延びる縁部または止め具のうちの1つが、ハウジング10の少なくとも1つまたはいくつかの対応する止め具に当接することによって、ゼロ用量位置を判定することができる。
【0106】
上述した排出機構または駆動機構8は、使い捨てのペン注射器で概して実施可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する単なる例示である。上述した駆動機構は、全体が参照によって本明細書に組み入れられている、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1に、より詳細に説明されている。
【0107】
図2に示す用量設定機構9は、少なくとも用量ダイヤル12および数字スリーブ80を含む。用量の設定中、用量の設定のために、用量ダイヤル12が回転されるとき、数字スリーブ80は、その外側ねじ山または螺旋溝81と、ハウジングの内面にある対応する形状のねじ付セクションとのねじ係合によって画成された螺旋経路に沿って、ハウジングに対して回転を開始する。
【0108】
用量設定中、駆動機構8または用量設定機構9が用量設定モードにあるとき、駆動スリーブ30は、用量ダイヤル12および数字スリーブ80とともに回転する。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20にねじ係合されており、ピストンロッド20は、用量設定中、ハウジング10に関して静止している。したがって、駆動スリーブ30は、用量設定中に螺着または螺旋運動を受ける。駆動スリーブ30は、用量ダイヤルが第1の回転方向または用量増分方向4、たとえば時計回り方向に回転すると、近位方向に移動を開始する。用量ダイヤル12は、用量のサイズを調整または補正するために、反対の第2の回転方向、したがって用量減分方向5、たとえば反時計回りに回転可能である。
【0109】
注射デバイス1またはそのような注射デバイス1に取付け可能なアドオンデバイス100とともに使用するための回転感知配置200の多数の例が、
図4~
図11に示されている。回転感知配置200は、たとえば
図1または
図2に示す注射デバイス1またはそのような注射デバイス1に機械的に取り付けるために構成されたアドオンデバイス100の第2の部材202に対する第1の部材201の回転運動を検出および/または測定するために構成される。
【0110】
図4~
図6に示す回転感知配置200は、第1の部材201および第2の部材202を含む。第1の部材201は、回転軸203に関して第2の部材202に対して回転可能である。典型的には、第1の部材201および第2の部材202は、回転軸203に関して同軸に配置される。いくつかの例では、第1の部材201および第2の部材202は、回転軸203に関して軸方向に隣接して配置される。第1の部材201および第2の部材202は、直接機械的に係合することができる。他の例では、第1の部材201および第2の部材202は、互いから機械的に係合解除される。ここで、第1の部材201および第2の部材202は、注射デバイス1のハウジング10に、もしくはその中に、または別個のアドオンデバイスのそれぞれのハウジングに、もしくはその中に、別個に配置することができ、または回転可能に支持することができる。
【0111】
第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方は、典型的には、注射デバイス1のハウジング10内にまたはハウジング10で回転可能に支持される。いくつかの例では、第1の部材201および第2の部材202の両方を、ハウジング10で回転可能に支持するかまたはハウジング10に関して回転可能に支持することができる。典型的には、注射デバイス1における回転感知配置200の特有の実装または一体化に応じて、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、ハウジング10に回転不能にロックされ、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、ハウジング10に対して回転可能に可動である。典型的には、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、回転軸203に関してハウジング10に対して回転可能である。
【0112】
図5および
図6により詳細に示すように、第1の部材201は、少なくとも1つの信号発生器210を含む。第2の部材202は、少なくとも1つのセンサ220を含む。いくつかの例では、第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方は、円板または円板形状を含み、第1および第2の軸方向に平面の表面を有する。たとえば、
図6に示すように、第1の部材201は、上面、たとえば近位軸方向面205と、下面、たとえば遠位軸方向面206とを含む。同様に、第2の部材202は、第1の部材201と同軸に位置合わせされるが、第1の部材201から所定の軸方向距離をあけて位置しおよび配置されており、上面または近位面207と、反対に位置する下面または遠位面208とを含む。
【0113】
図6に示すように、第1の部材201の遠位面206は、第2の部材202の方を向いている。したがって、第2の部材202の近位面207は、第1の部材201の方を向いている。第1の部材201の遠位面206は、第2の部材202の近位面207の方を向いている。
【0114】
図5および
図6に示すように、4つの個々のセンサ220が、第2の部材202に設けられる。これらのセンサ220の各々は、
図7および
図8により詳細に示す櫛形電極構造230または櫛形電子構造を含む。センサ220の各々は、
図3または
図4に示すように、プロセッサ240に接続される。プロセッサ240は、センサ220の各々に信号伝達式に接続される。典型的には、第1の部材201が第2の部材202に対する回転を受け、信号発生器210がセンサ220のうちの1つ付近を通過したとき、それぞれのセンサ220は、プロセッサ240によって処理可能または検出可能な電気信号を生成するように構成されており、そのように動作可能である。
図5および
図6の例では、等距離に隔置された4つのセンサ220を第2の部材202に配置し、1つの信号発生器210のみを第1の部材201に有するとき、少なくとも90°の第2の部材202に対する第1の部材201の回転を検出することができ、かつ/または正確に測定することができる。
【0115】
ここに示すように、第2の部材202に複数のセンサ220が配置され、第1の部材201に信号発生器210が配置されることは、複数の例のうちの1つにすぎず、例示のみを目的として提供される。センサ220の平面空間の延長は、各方向に数ミリメートルの大きさとすることができる。したがって、典型的な実装では、多数のセンサ220、たとえば最大8つのセンサ、最大12個のセンサ、最大24個のセンサ、またはさらには37個以上のセンサを、第2の部材202の環状の円周に配置することができる。このようにして、回転感知配置200の角度または空間分解能を増大させることができる。
【0116】
回転感知配置200は、典型的には、平面基板250を含む。平面基板250は、
図4に示すプリント回路基板260に一致することができ、または回路基板260によって提供することができる。プリント回路基板260には、少なくとも1つのセンサ220とともに、プロセッサ240を設けることができる。典型的には、少なくとも1つのセンサ220、特にそれぞれのセンサ220の櫛形電極構造230を、平面基板250および/またはプリント回路基板260に直接印刷またはコーティングすることができる。
図4に示すように、プリント回路基板260は、電源120をさらに備えることができる。電源120は、プリント回路基板260の一方の側に位置することができる。プロセッサ240および/または少なくとも1つのセンサ220は、プリント回路基板260の同じ側に設けることができ、または反対側に設けることができる。
【0117】
プリント回路基板260は、第2の部材202に締結することができる。第2の部材202は、注射デバイス1のダイヤル部材12に一致することができる。したがって、平面基板250および/またはプリント回路基板260は、平面基板250および/またはプリント回路基板260にプロセッサ240および少なくとも1つのセンサ220が配置された状態で、ダイヤル部材12に、したがって第2の部材202に堅く締結することができる。第1の部材201は、押下げ可能なトリガ11として実施することができる。第1の部材201、したがってトリガ11は、用量ダイヤル12、したがって第2の部材202がハウジング10に対する回転を受ける用量の設定中、および/または用量の設定のために、ハウジング10に回転不能にロックすることができる。
【0118】
図4に示す回転感知配置200の実装は、多数の可能性のうちの1つにすぎない。他の例では、第1の部材201は、用量の設定の中、および/または設定のために、回転可能とすることができ、第2の部材202は、用量の設定の中、および/または設定のために、ハウジングに回転不能にロックされる。たとえば、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、数字スリーブ80に連結または一体化することができ、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、注射デバイス1のクラッチ60に連結または一体化される。
【0119】
図4~
図6の例では、第1の部材201および第2の部材202はどちらも、円形、環状、または円板状の形状である。回転感知配置200の一般的な作動原理の場合、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方のみまたは少なくとも一方が、円板状、円形、または環状の構造を含み、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方を、任意の形状または構造とすることができれば十分である。典型的には、第1の部材201および第2の部材202のうち、多数のセンサ220または多数の信号発生器210を備える構成要素は、第2の部材202に対する第1の部材201の回転度を検出および測定するように構成された好適なロータリエンコーディングを提供するように、円形、環状、および/または円板状の構造を含む。
【0120】
第1の部材201および第2の部材202が回転軸203に関して同軸に位置合わせされ、第1の部材201および第2の部材202が互いから軸方向距離をあけて配置されている、ここに示す例では、少なくとも1つのセンサ220が回転軸203から所定の径方向センサ距離Dをあけて配置されると特に有益である。少なくとも1つの信号発生器210は、回転軸から所定の径方向信号発生器距離dをあけて配置される。ここで、径方向センサ距離Dおよび径方向信号発生器距離dは、それぞれ少なくとも1つのセンサ220および少なくとも1つの信号発生器210の径方向中心点から測定される。ここに示す例では、径方向センサ距離Dと径方向信号発生器距離dとの間の差は、少なくとも1つのセンサの径方向範囲と少なくとも1つの信号発生器の径方向範囲との間の差以下である。このようにして、第1の部材201が第2の部材202に対する回転を受けるとき、少なくとも1つの信号発生器210と少なくとも1つのセンサ220との間に径方向および/または軸方向の重複が存在することが提供および/または保証される。
【0121】
典型的には、第1の部材201および第2の部材202は、相互に非接触に配置される。したがって、第1の部材201と第2の部材202との間に直接の機械的係合は存在しない。しかし、第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方は、注射デバイス1またはアドオンデバイス100の他の構成要素、典型的には注射デバイス1のハウジング10に機械的に係合することができる。
【0122】
他の例では、第1の部材201および第2の部材202は、回転軸に関して同じ軸方向位置に配置することができる。ここで、第1の部材201および第2の部材202は、入れ子状または交互配置された構成で配置することができる。一例として、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、管状または環状の中空構造を含み、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、その中空構造内に径方向に配置される。たとえば、第1の部材201は、第2の部材202の径方向内側に位置する。次いで、信号発生器210および少なくとも1つのセンサ220のうちの少なくとも一方が、第1の部材201の外面に位置し、少なくとも1つの信号発生器210および少なくとも1つのセンサ220のうちの他方が、第2の部材202の内面に位置する。
【0123】
少なくとも1つのセンサ220の一例が、
図7および
図8に示されている。センサ220は、平面基板250に櫛形電極構造230を含む。櫛形電極構造230は、平面基板250の表面にコーティングまたは印刷される。櫛形電極構造230は、第1の電極231および第2の電極232を含む。第1の電極231は、第2の電極232から電気的に絶縁される。第1の電極231は、平行の平面内電極部分233、234、235の櫛状または指状の周期的なパターンを含む。これらの電極部分233、234、235は、互いに平行に延びる。電極部分233、234、235の長手方向端は、電極部分233、234、235の伸長に直交する方向に同一平面にある。
【0124】
電極部分233、234、235は、一方の長手方向端で相互接続される。電極部分233、234、235の反対の長手方向端は、自由端である。第2の電極232は、第1の電極231の形状と対称または同一の形状とすることができる。第2の電極232もまた、平行の平面内電極部分236、237、238の櫛状または指状の周期的なパターンを含む。電極部分236、237、238は、平行に配置される。電極部分236、237、238は、等しい長さとすることができる。電極部分236、237、238の長手方向自由端は、電極部分236、237、238の伸長に直交する方向に同一平面にある。電極部分236、237、238の反対の長手方向端は、長手方向に延びる接続部分242によって電気的に相互接続される。
【0125】
同様に、第1の電極231の電極部分233、234、235もまた、接続部分241によって相互接続される。第1の電極231の電極部分233、234、235は、接続部分241の伸長に沿って互いに対して分離される。接続部分241によって接続または一体形成される電極部分233、234、235の長手方向端は、第2の電極から離れる方を向いており、特に第2の電極232の接続部分242から離れる方を向いている。電極部分233、234、235の反対に位置する自由端、すなわち接続部分241から離れる方を向いている端部は、第2の電極232の方、したがって第2の電極232の接続部分242の方を向いている。
【0126】
特に、第1の電極231の電極部分233、234、235は、第2の電極232の電極部分236、237、238に平行に延びる。さらに、電極部分233、234、235は、電極部分236、237、238間の中間自由空間内に位置する;逆も同様である。典型的には、第1の電極の電極部分233、234、235は、第1の接続部分241に沿って等距離に分離される。したがって、第2の電極232の電極部分236、237、238もまた、第2の接続部分242に沿って等距離に分離される。
【0127】
このようにして、電極部分233、236、234、237、235、238の規則的で周期的なパターンが提供される。この櫛形電極構造230は、多数のマイクロストリップもしくはコームを含み、かつ/またはそれぞれ第1の電極231および第2の電極232の接続部分241、242の伸長に沿って格子を形成する。
【0128】
図7にさらに示すように、第1の電極231は、第1のコネクタ243を含み、第1のコネクタ243は、接続部分241に接続または一体形成されているが、多数の電極部分233、234、235から離れる方を向いている。同様に、第2の電極232もまた、第2のコネクタ244を含み、第2のコネクタ244は、接続部分242に接続または一体形成されており、多数の電極部分236、237、238から離れる方を向いている。コネクタ243、244は、信号生成、信号検出、および/または信号処理のために、プロセッサ240に個々に別個に接続される。
【0129】
図8で、櫛形電極構造230の周期的なパターンの断面が示されている。ここで、断面は、櫛形電極構造230によって生成される電界270を示す。この断面は、第1の電極231および第2の電極232の電極部分233、236、234の交互のパターンの断面を示す。第1および第2の電極231、232は、電気絶縁基板250に配置されるため、それぞれ第1および第2の電極231、232の電極部分233、236、234間に、たとえばフリンジ電界の形態の電界270が形成される。
【0130】
典型的には、第1および第2の電極231、232は、反対の極性で駆動される。第1および第2の電極231、232は、DC電圧またはAC電圧で駆動することができる。第1および第2の電極231、232は、電気容量、したがって平面キャパシタを形成する。第1および第2の電極231、232は、いわゆる櫛形キャパシタを形成または構成することができる。このようにして、櫛形の誘電率測定センサが提供され、一方の側からの絶縁および半絶縁材料の誘電特性の直接測定に対応する。平面基板250の表面より上の準静的フリンジ電界270の貫入深さおよび/または範囲は、それぞれ第1および第2の電極231、232の交互の電極部分233、236、234の中心線間の間隔に比例する。
【0131】
ここで、信号発生器210が電界270を通って動いている場合、櫛形電極構造230の静電容量のそれぞれの変化を検出および測定することができる。このため、信号発生器210が第1の電極231または第2の電極232のいずれかに機械的に接触する必要はない。櫛形電極構造230および信号発生器210は、典型的には、非接触に配置される。良好な信号対雑音比を有するために、信号発生器は、3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、10より大きい、12より大きい、または15より大きい比誘電率εrを含むと特に有益である。典型的な実装では、信号発生器210は、5より大きい、6より大きい、または7以上の比誘電率を示す天然または合成ゴムなどのエラストマ材料を含む。
【0132】
概して、少なくとも1つのセンサ220の測定原理は、櫛形キャパシタに限定されるものではない。櫛形電極構造230の他の実装では、少なくとも1つのセンサ320を磁気センサとして実施することができる。センサ320は、
図11に示すように、蛇行巻線磁力計として実施することができる。ここで、櫛形電極構造330は、平面基板250上の蛇行した電気ワイアまたは巻線として実施される第1の電極331を含む。第1の電極331は、電流によって駆動されると空間的に周期的な磁界280を生み出す1次電極または1次巻線を形成する。
【0133】
平面基板250に蛇行した2次巻線を形成する第2の電極332が、さらに設けられる。第2の電極332は、典型的には、1次巻線331によって生成される磁界280の変動を検出するように構成されまたはそのように動作可能な誘導巻線として実施される。典型的には、測定を行うとき、時間で変動する電流が第1の電極331または1次巻線に印加され、時間で変動する磁界が生み出される。信号発生器210などの伝導性材料が櫛形電極構造330のすぐ近傍にあるとき、これは第2の電極332、すなわち2次巻線で誘導される磁界280に影響を与える。
【0134】
このように変化する磁界は、測定可能な信号を生じさせ、この信号は、それぞれ第1および第2の電極331、332に接続されたプロセッサ240によって検出することができる。いくつかの実装では、
図11により詳細に示すように、2つの2次電極332、333を設けることができる。ここでもまた、絶縁基板250および多数の巻線331、332、333によって、それぞれの第1、第2、および第3の電極331、332、333の特別な場合として、櫛形パターンが提供および/または形成される。電流は、1次巻線331を通過するとき、2次巻線332、333内に渦電流を誘導する。2次巻線の電圧は、1次巻線331内の電流からそれぞれの巻線を通過する磁束の時間変化率によって与えられる。低周波の場合、誘導電圧は非常に小さくなる可能性がある。そのような低周波の制限を克服するために、2次巻線を、DCまでの非常に低い周波数で動作することができる磁気抵抗センサに交換することができる。
【0135】
センサ320が磁気センサとして、たとえば蛇行巻線磁力計として実施されるとき、信号発生器210は、第1の電極331、したがって1次巻線によって生成される磁界の測定可能な修正を誘導するように動作可能であれば特に有益である。
【0136】
図9および
図10で、回転感知配置200の2つのさらなる実装が示されている。ここで、第1の部材201および第2の部材202は、たとえばラチェット配置290によって、機械的に係合される。このため、第1の部材201は第1のラチェット部材291を含み、第1のラチェット部材291は、第2の部材202の第2のラチェット部材292に機械的に係合するように構成される。このようにして、第1の部材201が回転軸203に関して第2の部材202に対する回転を受けると、第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方にわたって表面弾性波が生成される。ここで、センサ220は、そのような表面弾性波の存在または伝播を検出するように構成される。
【0137】
表面弾性波を検出するために、したがって第2の部材202の機械的な励起を検出するために、少なくとも1つのセンサ220の領域内の第2の部材202またはその少なくとも一部分は、圧電基板250を含む。ここで、少なくとも1つのセンサ220は、第2の部材202の表面にわたって表面弾性波が伝播したことに応答して電気信号を生成するように動作可能な櫛形トランスデューサとして実施される。
図9の例では、第2の部材202が、第1の部材201に対して回転可能である。第2の部材202は、外周または内周に歯状構造を有するラチェット部材292を含む。
図9の例では、第2の部材202の側壁または外縁が、第1の部材201、特に第1のラチェット部材291の突起に係合するように構成された径方向外方へ突出する歯の規則的な構造を含む。ここでは、第1の部材201が弾性変形可能である。第1の部材201は、第2の部材202の径方向外側の歯状面に係合するように、径方向内方へ付勢することができる。多数の第1の部材201を設けることができ、第1の部材201は、たとえば回転軸203に関して互いに正反対の位置に配置される。
【0138】
図9の図示の例に対する代替として、第2のラチェット部材292を、内向きの表面として実施することもでき、第1のラチェット部材291が、第2のラチェット部材292から径方向内方に位置することができる。次いで、第1のラチェット部材291は、第2の部材202が第1の部材201に対する回転を受けたとき、第2のラチェット部材292の歯状構造に規則的に係合するように、径方向外方へ付勢される。いずれの実装でも、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、典型的には、注射デバイス1のハウジング10に回転不能に係合され、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、ハウジングに対して回転可能に支持される。
【0139】
図9の例では、少なくとも1つのセンサ220が、円板状の第2の部材202に位置し、第1の部材201は、固有の回復力に逆らって可撓変形可能である。たとえば、第1の部材201は、弧状の可撓性構造を含む。ラチェット部材292が第1のラチェット部材291と係合または係合解除すると、第2の部材202にわたって表面弾性波が進む。典型的には、ラチェット配置290は、第1の部材201に対して個別の角度距離だけ第2の部材202が回転するたびに、可聴クリック音を生じさせる。
【0140】
図10に示すさらなる例では、第1の部材201と第2の部材202との間の類似のラチェット係合290が実施されるが、ここでは、
図9の例と比較すると、第1の部材201および第2の部材202の役割が入れ替わっている。第1の部材201が、円板状の円形または環状の構造を含み、第1のラチェット部材291を外側または内側の環状面に有する。第2の部材202は、径方向に突出するラチェット部材292を含み、ラチェット部材292は、第1の部材201が第2の部材202に対する回転を受けたとき、第1のラチェット部材291の歯に規則的に係合するように構成される。ここでは、第2の部材202が弾性変形可能である。第2の部材202は、ハウジング10に回転不能にロックすることができる。したがって、第2の部材202は、ハウジング10に関して固定することができる。第1の部材201が回転軸203に関して第2の部材202に対して回転すると、第2の部材202は弾性変形を受け、それに伴って表面弾性波が生成される。ここで、弾性変形可能な第2の部材202に位置する少なくとも1つのセンサ220が、設けられた櫛形トランスデューサによって、したがって少なくとも1つのセンサ220の櫛形電極構造230によって、表面弾性波を検出するように構成され、またはそのように動作可能である。
【0141】
図9および
図10の例は、既存の注射デバイス1で容易に実施することができる。なぜなら、そのような機械的に実施される注射デバイスは、典型的には、
図9および
図10に概略的に示す少なくとも1つのラチェット係合290を含むからである。
図9および
図10の図示の例では、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方が、径方向に弾性変形可能である。
【0142】
本開示は、そのような径方向に変形可能な機械構造に限定されるものではないことに留意されたい。逆に、回転感知の原理は、軸方向に弾性変形可能な第1の部材201または第2の部材202でも同様に実施することができる。センサ220が櫛形トランスデューサとして実施される場合、第1の部材201および第2の部材202のうちの少なくとも一方が単一のセンサ220のみを備えると概ね十分である。第2の部材202に配置または一体化された少なくとも1つのセンサ220は、回転する第2の部材に配置することができ、または回転不能にロックされ、したがって回転しない第2の部材202に配置することができる。櫛形トランスデューサとして実装することで、第1の部材および第2の部材201、202が相対的な回転を受け、それに伴って第1および第2のラチェット部材291、292が機械的に係合するとき、回転する部材および回転しない部材がどちらも表面弾性波を等しく受けるという利益が提供される。
【0143】
図13で、センサ420のさらなる例が示されている。センサ420もまた、櫛形電極構造430を含む。ここで、櫛形電極構造430は、たとえば
図10に示す第2の部材202に取り付けられた歪みゲージ422の一部である。したがって、センサ420および/または歪みゲージ422は、
図10に示すセンサ220に取って代わることができる。櫛形電極構造430は、第2の部材202の可撓変形に応答して、電気伝導度の測定可能な変動を示す。
【0144】
櫛形電極構造430は、蛇行した伝導構造433によって相互に電気的に接続された第1の電極431および第2の電極432を含む。蛇行した伝導構造433は、互いに平行に延びる多数の細長い導体セクション434、436を含む。多数の細長い導体セクション434、436が、一直線に電気的に接続される。櫛形電極構造430が、特に細長い導体セクション434、436の伸長に沿って、長さの変動を受けるとき、第1の電極431と第2の電極432との間の電気抵抗は測定可能な変動を受ける。この測定可能な変動は、センサ420に接続されたプロセッサ240によって検出可能および/または定量測定可能である。
【0145】
典型的には、櫛形電極構造430は、細長い導体セクション434、436が、第2の部材202の弾性変形の主方向に実質的に位置合わせされ、または実質的に平行に延びるように、第2の部材202に配向および/または配置される。このようにして、センサ420の感度および/または測定位置を最大まで増大させることができる。
【0146】
その結果、第1の部材201が第2の部材202に対する回転を受けたとき、第2の部材202は規則的な可撓変形を受ける。この可撓変形は、歪みゲージ422の櫛形電極構造430によって検出可能である。
【0147】
図12で、第2の部材202に対する第1の部材201の回転を検出および/または定量測定する方法が概略的に示されている。第1の工程300で、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方にトルクが誘導され、したがって、回転軸203に関して第2の部材202に対する第1の部材201のそれぞれの回転が生じる。したがって、信号発生器210が第1の部材に配置されまたは取り付けられており、少なくとも1つのセンサ220が第2の部材202に配置されまたは取り付けられているため、少なくとも1つの信号発生器210は、少なくとも1つのセンサ220に対する動きを受ける。
【0148】
さらなる工程302で、少なくとも1つのセンサ220、320の櫛形電極構造230、330によって、少なくとも1つのセンサ220、320に対する少なくとも1つの信号発生器210の動きに応答して、電気信号が生成および提供される。その結果、さらなる工程304で、少なくとも1つのセンサ220、したがって少なくとも1つのセンサ220の櫛形電極構造230に電気的に接続されたプロセッサ240によって提供および生成された電気信号が処理される。プロセッサ240は、少なくとも1つのセンサ220、320から得られた電気信号に基づいて、第2の部材202に対する第1の部材201の回転角度を計算するように構成されており、そのように動作可能である。したがって、工程304で、第2の部材202に対する第1の部材201の回転運動の発生および/または回転度が検出および/または判定される。
【0149】
図3は、アドオンデバイス100内の回転感知配置200の実装のブロック図である。ここで、回転感知配置200は、アドオンデバイス100に一体化することができる。アドオンデバイス100の少なくともいくつかの構成要素は、回転感知配置200およびアドオンデバイス100によって共用される。同様に、回転感知配置200もまた、注射デバイス1に一体化することができる。
【0150】
アドオンデバイス100は、データ収集デバイスを含むことができる。アドオンデバイス100は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたはそれ以上のプロセッサを含むプロセッサ240を、メモリ114とともに含む。メモリ114は、プログラムメモリおよび主メモリを含むことができ、プロセッサ240によって実行するためのソフトウェア、および計数されたパルス、導出された用量サイズ、タイムスタンプなど、アドオンデバイス100の使用中に生成されたデータなどを記憶することができる。スイッチ122が、回転感知配置200を含むデバイス100の電子構成要素に、電源120を接続する。ディスプレイ118が、存在することができ、または存在しないこともある。回転感知配置200は、上述したように第1の部材201および第2の部材202に接続される。回転感知配置200は、第2の部材202に接続されまたは取り付けられた少なくとも1つのセンサ220を含み、第1の部材201に接続されまたは取り付けられた少なくとも1つの信号発生器210をさらに含む。
【0151】
アドオンデバイス100における回転感知配置200のこの実装では、第1の部材201および第2の部材202のうちの一方は、アドオンデバイス100のハウジング101に連結または締結することができ、第1の部材201および第2の部材202のうちの他方は、たとえば、注射デバイス1のダイヤル12に連結可能または締結可能である。
【0152】
感知配置200の分解能は、注射デバイス1の設計によって判定される。センサ配置200の好適な角度分解能は、等式(1)によって判定することができる:
【数1】
【0153】
たとえば、ダイヤル部材12の1回転が24IUの薬剤投与量に対応する場合、回転感知配置200にとって好適な分解能は、15°以下となるはずである。
【0154】
典型的には、回転感知配置200によって測定される用量ダイヤル12またはダイヤル部材の回転角度は、排出される薬剤の量に比例する。注射デバイス1内に収容されている薬剤のゼロレベルまたは絶対量を判定する必要はない。薬剤の用量の用量設定または排出中に、用量ダイヤル12がハウジング10に対して回転したとき、アドオンデバイス100によって、実際に排出された用量を正確に判定および監視することができる。
【0155】
アドオンデバイス100は、プロセッサ240に接続されたインターフェース124を含むことができる。インターフェース124は、Wi-FiもしくはBluetooth(登録商標)などの無線ネットワークを介してたとえば携帯型の電子デバイスの形態の別の外部デバイス65と通信するための無線通信インターフェース、またはユニバーサルシリアルバス(USB)、miniUSB、もしくはmicroUSBコネクタを受けるソケットなどの有線通信リンクのためのインターフェースとすることができる。このため、インターフェース124は、データを伝送および受信するために構成されたトランシーバ126を含む。
図3は、アドオンデバイス100がデータ伝達のためのデータ接続66を介してパーソナルコンピュータ65などの外部電子デバイス65に接続される注射システムの一例を示す。データ接続66は、有線または無線タイプとすることができる。
【0156】
たとえば、プロセッサ240は、使用者によって投与された注射に対して判定された送達薬剤量およびタイムスタンプを記憶することができ、後にその記憶データを外部電子デバイス65へ伝達することができる。デバイス65は、たとえば医療専門家による再検討のために、治療ログを維持し、かつ/または治療履歴情報を遠隔の場所へ送る。
【0157】
アドオンデバイス100またはデータ収集デバイスは、35件以上の注射事象などの多数の注射事象の送達薬剤量およびタイムスタンプなどのデータを記憶するように構成することができる。1日1回の注射療法によれば、これは約1か月分の治療履歴を記憶するのに十分なはずである。データストレージは、最近の注射事象がデータ収集デバイス100のメモリに常に存在することを確実にする先入れ先出し方式で組織化される。外部電子デバイス65へ伝達されると、アドオンデバイス100内の注射事象履歴は削除される。別法として、データはアドオンデバイス100内に残り、新しいデータが記憶されると、最も古いデータが自動的に削除される。このようにして、データ収集デバイス内のログが使用中に時間とともに構築され、常に最近の注射事象を含む。別法として、他の構成は、療法の要件および/または使用者の好みに応じて、70件(1日2回)、100件(3か月分)、または任意の他の好適な数の注射事象の記憶容量を含むことができる。
【0158】
別の実施形態では、インターフェース124は、無線通信リンクを使用して情報を伝送するように構成することができ、かつ/またはプロセッサ240は、そのような情報を外部電子デバイス65へ周期的に伝送するように構成することができる。
【0159】
プロセッサ240は、判定された薬剤用量情報を示すように、かつ/または最後の薬剤用量が送達されてからの経過時間を示すように、任意選択のディスプレイ118を制御することができる。たとえば、プロセッサ240は、ディスプレイ118に、最近の判定された薬剤投与量情報と経過時間との間で表示を周期的に切り換えさせることができる。
【0160】
電源120は、バッテリとすることができる。電源120は、1つのコイン電池、または直列もしくは並列で配置された複数のコイン電池とすることができる。タイマ115を設けることもできる。アドオンデバイス100をオンおよびオフに切り換えることに加えて、またはその代わりに、スイッチ122は、係合および/または係合解除されたとき、タイマ115をトリガするように配置することができる。たとえば、スイッチの第1および第2の電気接点の係合もしくは係合解除の両方で、またはスイッチ122の動作および動作中止の両方で、タイマ115がトリガされた場合、プロセッサ240は、タイマ115からの出力を使用して、トリガ11が押下された時間の長さを判定し、たとえば注射の持続時間を判定することができる。
【0161】
別法として、または加えて、プロセッサ240は、タイマ115を使用して、注射が完了してから経過した時間の長さを監視することができ、そのような時間は、それぞれのスイッチ構成要素の係合解除またはスイッチ122の動作中止の時間によって示される。場合により、この経過時間をディスプレイ118に示すことができる。また場合により、スイッチ122が次に作動されたとき、プロセッサ240は、経過時間と所定の閾値とを比較して、前の注射から早すぎる段階で使用者が別の注射を投与しようとしている可能性があるかどうかを判定することができ、早すぎる場合、可聴信号および/または警告メッセージなどの警報を、ディスプレイ118または出力116によって生成することができる。出力160は、たとえば使用者に警報を与えるために、可聴音を生成するように、または振動を誘導し、したがって触覚信号を生じさせるように構成することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増分方向
5 用量減分方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
9 用量設定機構
10 ハウジング
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
19 突起
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 胴部
26 封止
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量リミッタ
36 ショルダ
40 ばね
41 凹部
50 用量トラッカ
51 追跡止め具機能
60 クラッチ
62 挿入片
64 心棒
65 外部デバイス
66 データ接続
80 数字スリーブ
81 溝
90 ラチェット機構
91 ラチェット機能
100 アドオンデバイス
101 ハウジング
114 メモリ
115 タイマ
116 出力
118 ディスプレイ
120 電源
122 スイッチ
124 インターフェース
126 トランシーバ
200 回転感知配置
201 第1の部材
202 第2の部材
203 回転軸
205 表面
206 表面
207 表面
208 表面
210 信号発生器
220 センサ
230 櫛形電極構造
231 第1の電極
232 第2の電極
233 電極部分
234 電極部分
235 電極部分
236 電極部分
237 電極部分
238 電極部分
240 プロセッサ
241 接続部分
242 接続部分
243 コネクタ
244 コネクタ
250 平面基板
260 プリント回路基板
270 電界
280 磁界
290 ラチェット配置
291 ラチェット部材
292 ラチェット部材
320 センサ
330 櫛形電極構造
331 第1の電極
332 第2の電極
333 第2の電極
420 センサ
422 歪みゲージ
430 櫛形電極構造
431 第1の電極
432 第2の電極
433 蛇行した伝導構造
434 導体セクション
436 導体セクション