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特許7566826処理液、基板洗浄方法およびレジストの除去方法
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  • 特許-処理液、基板洗浄方法およびレジストの除去方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】処理液、基板洗浄方法およびレジストの除去方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20241007BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241007BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20241007BHJP
   C11D 1/62 20060101ALI20241007BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20241007BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01L21/30 572B
H01L21/304 646
H01L21/304 647A
G03F7/42
C11D1/62
C11D3/43
C11D3/30
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022127615
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020188735の分割
【原出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2022176944
(43)【公開日】2022-11-30
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2016112011
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智威
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135576(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072529(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/043496(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/023754(WO,A1)
【文献】特開2015-201484(JP,A)
【文献】特開2013-222947(JP,A)
【文献】特表2008-509554(JP,A)
【文献】特開2009-141311(JP,A)
【文献】特開2009-141310(JP,A)
【文献】特開2015-118125(JP,A)
【文献】特開2006-173566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、水と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10-101.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10-1110 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が0.8×10-1010 -9 であり、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、50~98質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記有機アルカリ化合物が式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記防食剤が式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液が高分子型アニオン性界面活性剤を含む場合を除く。
【化1】

式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基またはアリール基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
【化2】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項2】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、水と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液のpHが、9よりも大きく、15よりも小さく、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10 -10 ~1.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10 -11 ~10 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が0.8×10-1010 -9 であり、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、50~98質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記防食剤が、式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液が高分子型アニオン性界面活性剤を含む場合を除く。
【化3】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項3】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、水と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10-101.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10-1110 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が0.8×10-1010 -9 であり、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、35~98質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記有機アルカリ化合物の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.1~10質量%であり、
前記有機アルカリ化合物が式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記防食剤が式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液が高分子型アニオン性界面活性剤を含む場合を除く。
【化4】

式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基またはアリール基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
【化5】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項4】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、水と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液のpHが、9よりも大きく、15よりも小さく、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10 -10 ~1.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10 -11 ~10 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が10 -9 であり、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、35~98質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記有機アルカリ化合物の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.1~10質量%であり、
前記防食剤が、式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液が高分子型アニオン性界面活性剤を含む場合を除く。
【化6】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項5】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10-101.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10-1110 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が0.8×10-1010 -9 であり、
前記有機溶剤が、スルホキシド系溶剤を含み、
前記有機アルカリ化合物が式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記防食剤が式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液がジエチレングリコール、および、ジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、並びに、前記処理液が高分子型アニオン性界面活性剤を含む場合を除く。
【化7】

式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
【化8】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項6】
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、水と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
前記処理液中において、前記有機アルカリ化合物に対する、前記Caの質量割合が10 -10 ~1.1×10 -9 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Feの質量割合が10 -11 ~10 -10 であり、
前記有機アルカリ化合物に対する、前記Naの質量割合が0.8×10 -10 ~10 -9 であり、
前記有機溶剤が、スルホキシド系溶剤を含み、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、20~98質量%であり、
前記有機アルカリ化合物が、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記防食剤が、式(A)で表される化合物、式(B)で表される化合物、式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、処理液。
ただし、前記処理液がジエチレングリコール、および、ジエチレングリコールアミンからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合を除く。
【化9】

式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のヒドロキシアルキル基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
【化10】

式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【請求項7】
前記処理液中において、前記防食剤に対する、前記Caの質量割合が5×10-101.1×10 -9 であり、
前記防食剤に対する、前記Feの質量割合が0.5×10-1010 -10 であり、
前記防食剤に対する、前記Naの質量割合が4×10-1010 -9 である、請求項1~のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項8】
さらに水を含有し、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、20~98質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~40質量%である、請求項5に記載の処理液。
【請求項9】
さらに水を含有し、
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~30質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、20~98質量%である、請求項5に記載の処理液。
【請求項10】
さらにハロゲン酸を含有する、請求項1~5、およびのいずれか1項に記載の処理液。
【請求項11】
前記処理液のpHが、9よりも大きく、15よりも小さい、請求項1、3、5、および、6のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項12】
回転粘度計を用いて前記処理液の室温における粘度を測定した場合に、回転数1000rpmにおける前記処理液の粘度に対する、回転数100rpmにおける前記処理液の粘度の比率が、1~20である、請求項1~11のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項13】
前記有機アルカリ化合物が、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、請求項2または4に記載の処理液。
【化11】

式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基またはアリール基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
【請求項14】
前記半導体デバイスがCoを含む金属層を備えた基板を有し、
前記処理液が、前記金属層に対する処理に使用される、請求項1~13のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項15】
前記半導体デバイスの製造時にレジスト膜が形成され、
前記処理液が、前記レジスト膜および前記レジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストの除去に使用される、請求項1~14のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の処理液を用いて、Coを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Bを有する、基板洗浄方法。
【請求項17】
前記洗浄工程Bで使用された前記処理液の排液を回収する排液回収工程Cと、
回収された前記処理液の排液を用いて、新たに準備されるCoを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Dと、
前記洗浄工程Dで使用された前記処理液の排液を回収する排液回収工程Eと、
上記洗浄工程Dと上記排液回収工程Eとを繰り返す工程と、
を有する、請求項16に記載の基板洗浄方法。
【請求項18】
前記洗浄工程Bの前に、前記処理液を調製する処理液調製工程Aと、
前記処理液調製工程Aの前に、前記有機アルカリ化合物、前記防食剤および前記有機溶剤の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程F、または、前記処理液調製工程Aの後であって前記洗浄工程Bを行う前に、前記処理液中のCaイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程Gと、を有する、請求項16または17に記載の基板洗浄方法。
【請求項19】
前記処理液調製工程Aが、水を用いて前記処理液を調製する工程であり、
前記イオン除去工程Fが、前記有機アルカリ化合物、前記防食剤、前記有機溶剤および前記水の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去する工程である、請求項18に記載の基板洗浄方法。
【請求項20】
前記洗浄工程Bの前に、水を用いて前記処理液を調製する処理液調製工程Aと、
前記処理液調製工程Aの前に、前記水に対して除電を行う除電工程I、または、前記処理液調製工程Aの後であって前記洗浄工程Bを行う前に、前記処理液に対して除電を行う除電工程Jと、を有する、請求項16~19のいずれか1項に記載の基板洗浄方法。
【請求項21】
レジスト膜および前記レジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストを、請求項1~15のいずれか1項に記載の処理液を用いて除去する工程を有する、レジストの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス用の処理液、基板洗浄方法およびレジストの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)、メモリーなどの半導体デバイスは、フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。具体的には、基板上に、配線材料となる金属層、エッチング停止膜、層間絶縁膜を有する積層体上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工程およびドライエッチング工程(例えば、プラズマエッチング処理)を実施することにより、半導体デバイスが製造される。
また、必要に応じて、レジスト膜を剥離するためのドライアッシング工程(例えば、プラズマアッシング処理)が行われる。
【0003】
ドライアッシング工程を経た基板は、その金属層上および/または層間絶縁膜上などにおいて、レジスト膜の残渣物が付着していることがある。そのため、レジスト膜の残渣物の除去が一般的に行われる。
例えば特許文献1には、フッ化水素酸、特定の塩基性化合物、水および特定の有機溶剤を含有し、任意で防食剤を含有するフォトリソグラフィー用剥離液が開示されている(請求項1、段落0040など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-200830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスの製造時に使用される処理液は、上述したレジスト膜の残渣物の除去処理の他に、例えば、レジスト膜自体の除去処理、金属層に付着した残渣物の除去処理などに使用されることがある。
このような各種の除去処理の際に、基板上に設けられた配線材料およびプラグ材料などの金属層に処理液が接触する場合がある。この場合に、金属層に接触した処理液が金属層を腐食させてしまうことがあり、その結果、半導体デバイスとしての所望の性能が得られなくなることがある。
【0006】
このような問題に対して、本発明者らが特許文献1に記載されたフォトリソグラフィー用剥離液の組成を参考にして半導体デバイス用の処理液を製造し、これを用いてレジスト(レジスト膜およびこれの残渣物の少なくとも一方)の除去を試みたところ、レジストの除去が可能であり、金属層の腐食防止性も良好であるものの、粒子状の欠陥(異物)が金属層などの半導体デバイスを構成する部材に付着することを知見している。
このような粒子状の欠陥は、処理液に含まれる成分に由来すると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、欠陥の発生を低減でき、半導体デバイスに含まれる金属層に対する腐食防止性に優れ、かつ、半導体デバイスの製造時に使用されるレジストの除去性にも優れた処理液を提供することを目的とする。
また、本発明は、基板洗浄方法およびレジストの除去方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、有機アルカリ化合物に対する、Caの質量割合、Feの質量割合およびNaの質量割合をいずれも所定範囲内にすることで、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0009】
[1]
有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、
上記処理液中において、上記有機アルカリ化合物に対する、上記Caの質量割合、上記Feの質量割合および上記Naの質量割合がいずれも、10-12~10-4である、処理液。
[2]
上記処理液中において、上記防食剤に対する、上記Caの質量割合、上記Feの質量割合および上記Naの質量割合がいずれも、10-12~10-4である、上記[1]に記載の処理液。
[3]
上記Caの含有量、上記Feの含有量および上記Naの含有量がいずれも、上記処理液の全質量に対して、0.1質量ppt~10質量ppbである、上記[1]または[2]に記載の処理液。
[4]
さらに水を含有し、
上記水の含有量が、上記処理液の全質量に対して、20~98質量%であり、
上記有機溶剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、1~40質量%である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の処理液。
[5]
さらに水を含有し、
上記水の含有量が、上記処理液の全質量に対して、1~40質量%であり、
上記有機溶剤の含有量が、上記処理液の全質量に対して、20~98質量%である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の処理液。
[6]
さらにハロゲン酸を含有する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の処理液。
[7]
上記処理液のpHが、9よりも大きく、15よりも小さい、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の処理液。
[8]
回転粘度計を用いて上記処理液の室温における粘度を測定した場合に、回転数1000rpmにおける上記処理液の粘度に対する、回転数100rpmにおける上記処理液の粘度の比率が、1~20である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の処理液。
[9]
上記有機アルカリ化合物が、後述する式(1)で表される化合物および後述する式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の処理液。
後述する式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基またはアリール基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
後述する式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、後述する式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
[10]
上記半導体デバイスがCoを含む金属層を備えた基板を有し、
上記処理液が、上記金属層に対する処理に使用される、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の処理液。
[11]
上記半導体デバイスの製造時にレジスト膜が形成され、
上記処理液が、上記レジスト膜および上記レジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストの除去に使用される、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の処理液。
[12]
上記防食剤が、後述する式(A)で表される化合物、後述する式(B)で表される化合物、後述する式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含む、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の処理液。
後述する式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
後述する式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
後述する式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
[13]
上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の処理液を用いて、Coを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Bと、を有する、基板洗浄方法。
[14]
上記洗浄工程Bで使用された上記処理液の排液を回収する排液回収工程Cと、
回収された上記処理液の排液を用いて、新たに準備されるCoを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Dと、
上記洗浄工程Dで使用された上記処理液の排液を回収する排液回収工程Eと、
上記洗浄工程Dと上記排液回収工程Eとを繰り返す工程と、
を有する、上記[13]に記載の基板洗浄方法。
[15]
上記洗浄工程Bの前に、上記処理液を調製する処理液調製工程Aと、
上記処理液調製工程Aの前に、上記有機アルカリ化合物、上記防食剤および上記有機溶剤の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程F、または、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bを行う前に、上記処理液中のCaイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程Gと、を有する、上記[13]または[14]に記載の基板洗浄方法。
[16]
上記処理液調製工程Aが、水を用いて前記処理液を調製する工程であり、
上記イオン除去工程Fが、上記有機アルカリ化合物、上記防食剤、上記有機溶剤および上記水の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去する工程である、上記[15]に記載の基板洗浄方法。
[17]
上記洗浄工程Bの前に、水を用いて上記処理液を調製する処理液調製工程Aと、
上記処理液調製工程Aの前に、上記水に対して除電を行う除電工程I、または、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bを行う前に、上記処理液に対して除電を行う除電工程Jと、を有する、上記[13]~[16]のいずれか1つに記載の基板洗浄方法。
[18]
レジスト膜および上記レジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストを、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の処理液を用いて除去する工程を有する、レジストの除去方法。
【発明の効果】
【0010】
以下に示すように、本発明によれば、欠陥の発生を低減でき、半導体デバイスに含まれる金属層に対する腐食防止性に優れ、かつ、半導体デバイスの製造時に使用されるレジストの除去性にも優れた処理液を提供することができる。また、本発明によれば、基板洗浄方法およびレジストの除去方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の基板の洗浄方法に適用できる積層物の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明について説明する。
なお、本発明において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において「準備」というときには、特定の材料を合成ないし調合等して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10-15)」を意味する。
また、本発明において、1Å(オングストローム)は、0.1nmに相当する。
また、本発明における基(原子群)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「炭化水素基」とは、置換基を有さない炭化水素基(無置換炭化水素基)のみならず、置換基を有する炭化水素基(置換炭化水素基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
また、本発明における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、または、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線または放射線を意味する。本発明中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線またはEUV光などによる露光のみならず、電子線またはイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
また、本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表す。
【0013】
[処理液]
本発明の処理液は、有機アルカリ化合物と、防食剤と、有機溶剤と、Caと、Feと、Naと、を含有する半導体デバイス用の処理液であって、上記処理液中において、上記有機アルカリ化合物に対する、上記Caの質量割合、上記Feの質量割合および上記Naの質量割合がいずれも、10-12~10-4である。
以下、本発明の処理液中に含まれるCa原子、Fe原子およびNa原子を、「特定金属元素」と総称する場合がある。
本発明の処理液によれば、欠陥の発生を低減でき、半導体デバイスに含まれる金属層に対する腐食防止性に優れ、かつ、半導体デバイスの製造時に使用されるレジストの除去性にも優れる。この理由の詳細は、未だ明らかになっていない部分もあるが、以下の理由によるものと推測される。
【0014】
上記特定金属元素は、マイグレーションを発生しやすい。そのため、半導体デバイスの製造時に上記特定金属元素を含有する処理液を使用すると、特定金属元素に起因した半導体デバイスの不良(短絡など)が生じることがある。そこで、本発明者らが半導体デバイスの不良を抑制するべく検討したところ、有機アルカリ化合物および防食剤を含有する処理液を用いることで、金属層の腐食を抑制できるだけでなく、有機アルカリ化合物および防食剤の少なくとも一方と特定金属元素とが塩を形成して、マイグレーションの発生を抑制できることを知見している。
しかしながら、処理液中の有機アルカリ化合物に対する特定金属元素の量が多すぎる場合、処理液に含まれる塩およびこれに由来する成分が粒子状の欠陥になって、この粒子状の欠陥が半導体デバイスの構成部材に付着して、半導体デバイスの不良を生じさせることが、本発明者らの検討により明らかになった。
さらに、本発明者らは、処理液中の有機アルカリ化合物に対する特定金属元素の量が少なすぎる場合、その理由は明らかになっていないが、かえって半導体デバイスに粒子状の欠陥が生じることも知見している。
このことから、本発明者らは、有機アルカリ化合物に対するCa、FeおよびNaのそれぞれの質量割合を特定の範囲内にすることで、上述した各効果が得られたと推測している。
また、本発明の処理液は、有機溶剤を含有するので、処理液と半導体デバイスの製造時に使用されるレジスト(特に有機系のレジスト)との相溶性が高まり、レジスト(特に有機系のレジスト)の除去性が向上することも知見している。
【0015】
以下において、本発明の処理液に含まれる成分および含まれ得る成分について説明する。
【0016】
<有機アルカリ化合物>
本発明の処理液は、有機アルカリ化合物を含有する。有機アルカリ化合物の機能としては、レジストの除去性の向上、および、欠陥の低減などが挙げられる。
本発明において、有機アルカリ化合物とは、アルカリ性を示す有機化合物を意味する。
有機アルカリ化合物としては、4級アンモニウム塩、アルカノールアミン、アルキルヒドロキシルアミン、および、アルキルヒドロキシルアミン塩などが挙げられ、上述したレジストの除去性および欠陥の低減がより向上する観点から、4級アンモニウム塩およびアルカノールアミンが好ましく用いられる。また、これらの化合物のうち、4級アンモニウム塩は、pH調整剤としても機能する。
【0017】
4級アンモニウム塩としては、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基、ベンジル基またはアリール基を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。
式(1)中、R4A~R4Dは、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、ブチル基など)、炭素数1~6のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基など)、ベンジル基、または、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ナフタレン基など)を表す。なかでも、アルキル基、ヒドロキシエチル基およびベンジル基が好ましい。
式(1)中、Xは、カウンターアニオンを表す。カウンターアニオンとしては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、ホスホン酸イオン、硝酸イオンなどの各種の酸アニオン、水酸化物イオン、および、ハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオンなど)などが挙げられる。
【0020】
式(1)で表される化合物として、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリベンジルメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド(ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド)、トリヒドロキシエチルモノメチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシエチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシエチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、トリヒドロキシエチルモノエチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリヒドロキシプロピルモノメチルアンモニウムヒドロキシド、モノヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ジヒドロキシプロピルジエチルアンモニウムヒドロキシド、トリヒドロキシプロピルモノエチルアンモニウムヒドロキシド、および、コリン(例えば、コリンヒドロキシド)などが挙げられる。
なかでも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、および、コリンヒドロキシドを用いることが好ましく、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシドを用いることがより好ましい。
4級アンモニウム塩は単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
【0021】
アルカノールアミンは、第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンのいずれであってもよく、モノアミン、ジアミンまたはトリアミンであることが好ましく、モノアミンがより好ましい。アミンのアルカノール基は炭素原子を1~5個有することが好ましい。
アルカノールアミンは、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0022】
式(2): R-N-CHCH-O-R
式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、または、ヒドロキシエチル基を表し、Rは、それぞれ独立に、水素原子、または、ヒドロキシエチル基を表す。ただし、式(2)中、アルカノール基が少なくとも1つは含まれる。
アルカノールアミンとしては、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、第3ブチルジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、イソブタノールアミン、2-アミノ-2-エトキシ-プロパノール、およびジグリコールアミンとしても知られている2-アミノ-2-エトキシ-エタノールがある。
アルカノールアミンは単独でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。
【0023】
アルキルヒドロキシルアミンとしては、特に限定されないが、例えば、O-メチルヒドロキシルアミン、O-エチルヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,O-ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N-トリメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、および、N,N-ジスルホエチルヒドロキシルアミンなどが挙げられる。
アルキルヒドロキシルアミンの塩は、上述したアルキルヒドロキシルアミンの無機酸塩または有機酸塩が好ましく、Cl、S、N、および、Pなどの非金属が水素と結合してできた無機酸の塩がより好ましく、塩酸、硫酸、および、硝酸のいずれかの酸の塩がさらに好ましい。
アルキルヒドロキシルアミンおよびアルキルヒドロキシルアミン塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
処理液中の有機アルカリ化合物の含有量は、処理液の全質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。
有機アルカリ化合物は、単独でも2種類以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の有機アルカリ化合物を組み合わせて用いる場合には、その総量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0025】
有機アルカリ化合物は、Ca、FeおよびNaの含有量が低減した高純度のグレードのものを用いることが好ましく、さらに精製して用いることがより好ましい。
また、第4級アンモニウム化合物は、公知の方法により精製することができる。例えば、国際公開第2012/043496号明細書に記載されている炭化ケイ素を用いた吸着精製に加えて、フィルタ濾過を繰り返すことで精製を行うことができる。
【0026】
<防食剤>
防食剤は、半導体デバイスの配線などになる金属層(特に、Co)のオーバーエッチングを解消する機能を有する。防食剤は、腐食防止剤と称されることがある。
防食剤としては特に限定されないが、例えば、1,2,4-トリアゾール(TAZ)、5-アミノテトラゾール(ATA)、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、3-アミノ-1H-1,2,4トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、トリルトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1-アミノ-1,2,3-トリアゾール、1-アミノ-5-メチル-1,2,3-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-イソプロピル-1,2,4-トリアゾール、ナフトトリアゾール、1H-テトラゾール-5-酢酸、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-MBT)、1-フェニル-2-テトラゾリン-5-チオン、2-メルカプトベンゾイミダゾール(2-MBI)、4-メチル-2-フェニルイミダゾール、2-メルカプトチアゾリン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、チアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアジン、メチルテトラゾール、ビスムチオールI、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、ジアミノメチルトリアジン、イミダゾリンチオン、4-メチル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-チオール、5-アミノ-1,3,4-チアジアゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール、リン酸トリトリル、インダゾール、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ホスフェート阻害剤、アミン類、ピラゾール類、プロパンチオール、シラン類、第2級アミン類、ベンゾヒドロキサム酸類、複素環式窒素阻害剤、クエン酸、アスコルビン酸、チオ尿素、1,1,3,3-テトラメチル尿素、尿素、尿素誘導体類、尿酸、エチルキサントゲン酸カリウム、グリシン、ドデシルホスホン酸、イミノ二酢酸、酸、ホウ酸、マロン酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、スルホラン、2,3,5-トリメチルピラジン、2-エチル-3,5-ジメチルピラジン、キノキサリン、アセチルピロール、ピリダジン、ヒスタジン(histadine)、ピラジン、グルタチオン(還元型)、システイン、シスチン、チオフェン、メルカプトピリジンN-オキシド、チアミンHCl、テトラエチルチウラムジスルフィド、2,5-ジメルカプト-1,3-チアジアゾールアスコルビン酸、アスコルビン酸、カテコール、t-ブチルカテコール、フェノール、および、ピロガロールが挙げられる。
【0027】
さらに、防食剤として、置換または無置換のベンゾトリアゾールを含むことも好ましい。好適な置換型ベンゾトリアゾールには、これらに限定されないが、アルキル基、アリール基、ハロゲン基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、または、水酸基で置換されたベンゾトリアゾールが含まれる。置換型ベンゾトリアゾールには、1以上のアリール(例えば、フェニル)またはヘテロアリール基で融合されたものも含まれる。
【0028】
防食剤として用いるのに好適なベンゾトリアゾールは、これらに限定されないが、ベンゾトリアゾール(BTA)、5-アミノテトラゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、5-フェニルチオール-ベンゾトリアゾール、5-クロロベンゾトリアゾール、4-クロロベンゾトリアゾール、5-ブロモベンゾトリアゾール、4-ブロモベンゾトリアゾール、5-フルオロベンゾトリアゾール、4-フルオロベンゾトリアゾール、ナフトトリアゾール、トリルトリアゾール、5-フェニル-ベンゾトリアゾール、5-ニトロベンゾトリアゾール、4-ニトロベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、2-(5-アミノ-ペンチル)-ベンゾトリアゾール、1-アミノ-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(5-MBTA)、ベンゾトリアゾール-5-カルボン酸、4-メチルベンゾトリアゾール、4-エチルベンゾトリアゾール、5-エチルベンゾトリアゾール、4-プロピルベンゾトリアゾール、5-プロピルベンゾトリアゾール、4-イソプロピルベンゾトリアゾール、5-イソプロピルベンゾトリアゾール、4-n-ブチルベンゾトリアゾール、5-n-ブチルベンゾトリアゾール、4-イソブチルベンゾトリアゾール、5-イソブチルベンゾトリアゾール、4-ペンチルベンゾトリアゾール、5-ペンチルベンゾトリアゾール、4-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、5-メトキシベンゾトリアゾール、5-ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-ベンゾトリアゾール、5-t-ブチルベンゾトリアゾール、5-(1’,1’-ジメチルプロピル)-ベンゾトリアゾール、5-(1’,1’,3’-トリメチルブチル)ベンゾトリアゾール、5-n-オクチルベンゾトリアゾール、および、5-(1’,1’,3’,3’-テトラメチルブチル)ベンゾトリアゾールが含まれる。
また、ベンゾトリアゾールとしては、2,2’-{[(4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’-{[(5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’-{[(4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタン、または2,2’-{[(4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスプロパン、および、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-(4または5)-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メチルアミン等も用いることができる。
防食剤は、単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
防食剤は、腐食防止性をより向上させる観点から、下記式(A)で表される化合物、下記式(B)で表される化合物、下記式(C)で表される化合物、および、置換若しくは無置換のテトラゾール、から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
上記式(A)において、R1A~R5Aは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭化水素基、水酸基、カルボキシ基、または、置換若しくは無置換のアミノ基を表す。ただし、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
上記式(B)において、R1B~R4Bは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
上記式(C)において、R1C、R2CおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、または、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよい。
【0032】
上記式(A)中、R1A~R5Aが表す炭化水素としては、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましい)、アルキニル基(炭素数2~12が好ましく、炭素数2~6がより好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、炭素数6~14がより好ましく、炭素数6~10がさらに好ましい)、および、アラルキル基(炭素数7~23が好ましく、炭素数7~15がより好ましく、炭素数7~11がさらに好ましい)が挙げられる。
また、炭化水素基が置換されている場合の置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、および、置換若しくは無置換のアミノ基(アミノ基が置換されている場合の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい)が挙げられる。
なお、式(A)においては、構造中に水酸基、カルボキシ基および置換若しくは無置換のアミノ基(アミノ基が置換されている場合の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい)から選ばれる基を少なくとも1つ含む。
【0033】
式(A)において、R1A~R5Aで表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基またはアミノ基で置換された炭素数1~6の炭化水素基等が挙げられる。
式(A)で表される化合物としては、例えば、1-チオグリセロール、L-システイン、チオリンゴ酸等が挙げられる。
【0034】
式(B)において、R1B~R4Bで表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、上述した式(A)のR1A~R5Aが表す置換若しくは無置換の炭化水素基とそれぞれ同義である。
1B~R4Bで表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびt-ブチル基等の炭素数1~6の炭化水素基が好ましく挙げられる。
式(B)で表される化合物としては、例えば、カテコール、t-ブチルカテコール等が挙げられる。
【0035】
式(C)において、R1C、R2CおよびRで表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、上述した式(A)のR1A~R5Aが表す置換若しくは無置換の炭化水素基とそれぞれ同義である。
1C、R2CおよびRで表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~6の炭化水素基が好ましく挙げられる。
また、R1CとR2Cとが結合して環を形成してもよく、例えば、ベンゼン環が挙げられる。R1CとR2Cとが結合して環を形成した場合、さらに置換基(例えば、炭素数1~5の炭化水素基)を有していてもよい。
式(C)で表される化合物としては、例えば、1H-1,2,3-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、2,2’-{[(4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタノール(商品名「IRGAMET 42」、BASF社製)、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-(4または5)-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メチルアミン(商品名「IRGAMET 39」、BASF社製)等が挙げられる。
【0036】
置換若しくは無置換のテトラゾールとしては、例えば、無置換テトラゾール、および、水酸基、カルボキシ基または置換若しくは無置換のアミノ基を置換基として有するテトラゾールが挙げられる。ここで、アミノ基が置換されている場合の置換基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0037】
処理液中の防食剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
防食剤は、単独でも2種類以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の防食剤を組み合わせて用いる場合には、その総量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0038】
防食剤は、Ca、FeおよびNaの含有量が低減した高純度のグレードのものを用いることが好ましく、さらに精製して用いることがより好ましい。
防食剤の精製方法は、特に限定されないが、例えば、ろ過、イオン交換、蒸留、吸着精製、再結晶、再沈殿、昇華およびカラムを用いた精製などの公知の方法が用いられ、これらの方法を組み合わせて適用することもできる。
【0039】
<特定金属元素>
本発明の処理液は、特定金属元素を含有する。本発明における特定金属元素とは、上述した通り、Ca、FeおよびNaのことをいい、本発明の処理液においては、Ca、FeおよびNaをいずれも含有する。
ここで、特定金属元素は、イオン、錯化合物、金属塩および合金など、いずれの形態であってもよい。また、特定金属元素は、粒子(パーティクル)状態であってもよい。
特定金属元素は、処理液に含まれる各成分(原料)に不可避的に含まれている金属元素であってもよいし、処理液の製造時に不可避的に含まれる金属元素であってもよいし、意図的に添加したものであってもよい。
【0040】
上記Caの含有量、上記Feの含有量および上記Naの含有量は、いずれも、処理液の全質量に対して、0.1質量ppt~10質量ppbが好ましく、1質量ppt~10質量ppbがより好ましく、1質量ppt~100質量pptがさらに好ましい。特定金属元素の上記含有量のそれぞれが、上記範囲内にあることで、欠陥の発生がより低減される。また、後述する絶縁膜およびメタルハードマスクのエッチング残渣物などの残渣物除去性も向上する。
本発明において、処理液中の特定金属元素のそれぞれの含有量は、ICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)によって測定される。ICP-MS法による特定金属元素のそれぞれの含有量の測定は、例えば、NexION350S(製品名、PerkinElmer社製)に準じた装置を用いて行うことができる。
ここで、ICP-MS法では、処理液中の特定金属元素のそれぞれの総質量、すなわち、イオン性金属(金属イオン)と非イオン性金属(例えば、粒子状の特定金属元素。すなわち金属粒子。)との合計質量(「総メタル量」ともいう。)として定量される。したがって、本発明において、単に「処理液中の特定金属元素のそれぞれの含有量」という場合には、上述した特定金属元素の形態に関わらず、処理液中の上記特定金属元素のそれぞれの総含有量(総メタル量)を指す。
【0041】
本発明の処理液中において、上記有機アルカリ化合物に対する、Caの質量割合、Feの質量割合およびNaの質量割合がいずれも、10-12~10-4であり、10-12~10-7が好ましく、10-12~10-8がより好ましい。有機アルカリ化合物に対するこれらの特定金属元素の上記質量割合のそれぞれが、上記範囲内にあることで、欠陥の発生が低減される。また、後述する絶縁膜およびメタルハードマスクのエッチング残渣物などの残渣物除去性も向上する。
【0042】
処理液中において、防食剤に対する、上記Caの質量割合、上記Feの質量割合および上記Naの質量割合がいずれも、10-12~10-4が好ましく、10-12~10-7がより好ましく、10-12~10-8がさらに好ましい。防食剤に対する特定金属元素の上記質量割合がいずれも、上記範囲内にあることで、金属層の防食性と、欠陥の発生および残渣物除去性と、を高いレベルで両立できる。なお、残渣物除去性とは、後述する絶縁膜およびメタルハードマスクのエッチング残渣物などの除去性のことをいう。
ここで、処理液中の特定金属元素の含有量が高いと、処理液が金属層の表面に吸着しやすくなり、防食剤の吸着効率を向上できると推測される。このように、防食性の効果を高めるためには、特定金属元素の含有量が高い方が好ましいが、残渣物除去性および欠陥性能等が低下する傾向にある。そのため、防食剤に対する特定金属元素の質量割合を上述した範囲内にすることで、これらの性能を高いレベルで両立できる。
【0043】
<有機溶剤>
本発明の処理液は、有機溶剤を含有する。有機溶剤を含有することで、レジストの除去性をより向上できたり、腐食防止効果をより向上できたりする。
有機溶剤としては、公知の有機溶剤をいずれも用いることができるが、親水性有機溶剤が好ましい。親水性有機溶剤とは、水といずれの比率においても均一に混合可能な有機溶剤のことを意味する。
親水性有機溶剤としては、具体的には、水溶性アルコール系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、水溶性エステル系溶剤、水溶性エーテル系溶剤(例えば、グリコールジエーテル)、スルホン系溶剤、スルホキシド系溶剤、ニトリル系溶剤、および、アミド系溶剤などが挙げられ、所望の効果を得るためにこれらのいずれも用いることができる。
【0044】
水溶性アルコール系溶剤としては、例えば、アルカンジオール(例えば、アルキレングリコールを含む)、アルコキシアルコール(例えば、グリコールモノエーテルを含む)、飽和脂肪族一価アルコール、不飽和非芳香族一価アルコール、および、環構造を含む低分子量のアルコールなどが挙げられる。
【0045】
アルカンジオールとしては、例えば、グリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ピナコールおよびアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0046】
アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールなどが挙げられる。
【0047】
アルコキシアルコールとしては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノールおよびグリコールモノエーテルなどが挙げられる。
【0048】
グリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノベンジルエーテルおよびジエチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0049】
飽和脂肪族一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、および、1-ヘキサノールなどが挙げられる。
【0050】
不飽和非芳香族一価アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、および、4-ペンテン-2-オールなどが挙げられる。
【0051】
環構造を含む低分子量のアルコールとしては、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、および、1,3-シクロペンタンジオールなどが挙げられる。
【0052】
水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、プロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、2-ブタノン、5-ヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、3-ヒドロキシアセトフェノン、1,3-シクロヘキサンジオン、および、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0053】
水溶性エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、エチレングリコールモノアセタート、ジエチレングリコールモノアセタート等のグリコールモノエステル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート等のグリコールモノエーテルモノエステルが挙げられる。
これらの中でも、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリ(プロピレングリコール)メチルエーテル、および、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0054】
スルホン系溶剤としては、例えば、スルホラン、3-メチルスルホラン、および、2,4-ジメチルスルホラン等が挙げられる。
【0055】
スルホキシド系溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0056】
ニトリル系溶剤としては、アセトニトリル等が挙げられる。
【0057】
アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、および、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等が挙げられる。
【0058】
親水性有機溶剤のなかでも、腐食防止効果をより向上させる観点から、水溶性アルコール系溶剤、スルホン系溶剤、アミド系溶剤、および、スルホキシド系溶剤が好ましく、水溶性アルコール系溶剤、および、スルホキシド系溶剤がより好ましい。
【0059】
有機溶剤の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、1~99.999質量%であればよい。
有機溶剤は、単独でも2種類以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の有機溶剤を組み合わせて用いる場合には、その総量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0060】
有機溶剤は、Ca、FeおよびNaの含有量が小さい高純度有機溶剤を用いることが好ましく、さらに精製した高純度有機溶剤を用いることがより好ましい。
精製方法としては、特に限定されないが、ろ過、イオン交換、蒸留、吸着精製、再結晶、再沈殿、昇華およびカラムを用いた精製などの公知の方法を用いることができ、これらを組み合わせて適用することもできる。
Ca、FeおよびNaの含有量が小さい有機溶剤は、本発明の各実施態様においても使用することができ、例えば、後述するキットや濃縮液の作製、製造における装置、および、容器の洗浄用途などにも好適に用いることができる。
【0061】
<水>
本発明の処理液は、さらに水を含有することが好ましい。
水は、特に限定されないが、半導体製造に使用される超純水を用いることが好ましく、その超純水をさらに精製し、無機陰イオン及び金属イオンなどを低減させた水を用いることがより好ましい。精製方法は特に限定されないが、ろ過膜又はイオン交換膜を用いた精製、および、蒸留による精製が好ましい。また、例えば、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行なうことが好ましい。
水に含まれるCa、FeおよびNaの含有量はそれぞれ、水の全質量に対して、0.1質量ppt~10質量ppbであることが好ましい。Ca、FeおよびNaの含有量が小さい水は、本発明の各実施態様で使用することができ、例えば、後述するキットおよび濃縮液の作製、製造に使用する装置、および容器の洗浄用途などにも好適に用いることができる。
本発明の処理液は、有機溶剤の含有量、および、水の含有量を変更して組成を調整することができる。処理液中の水の含有量が有機溶剤の含有量よりも多い処理液を「水系処理液」といい、処理液中の有機溶剤の含有量が水の含有量よりも多い処理液を「溶剤系処理液」ともいう。
【0062】
(水系処理液)
水系処理液とする場合、水の含有量が、処理液の全質量に対して20~98質量%であり、有機溶剤の含有量が、処理液の全質量に対して1~40質量%であることが好ましい。
水系処理液とする場合の水の含有量は、35~98質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。
水系処理液とする場合の有機溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して、5~35質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0063】
(溶剤系処理液)
溶剤系処理液とする場合、水の含有量が、処理液の全質量に対して1~30質量%であり、有機溶剤の含有量が、処理液の全質量に対して20~98質量%であることが好ましい。
溶剤系処理液とする場合の水の含有量は、処理液の全質量に対して、2~25質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましい。
溶剤系処理液とする場合の有機溶剤の含有量は、処理液の全質量に対して、40~98質量%が好ましく、45~98質量%がより好ましく、50~95質量%がさらに好ましい。
【0064】
<ハロゲン酸>
本発明の処理液は、さらにハロゲン酸を含有することが好ましい。処理液がハロゲン酸を含有することで、半導体デバイスの製造時に、絶縁膜および金属層などのエッチングによって生じる残渣物(エッチング残渣物)の除去性が向上する。
ハロゲン酸としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、および、ヨウ化水素などのハロゲン化水素が挙げられ、これらの中でもエッチング残渣物の除去性がより向上する点から、フッ化水素が好ましい。
処理液中のハロゲン酸の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
ハロゲン酸は、単独でも2種類以上組み合わせて用いてもよい。2種以上の処理液を組み合わせて用いる場合には、その総量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0065】
<他の添加剤>
本発明の処理液は、上記以外の他の添加剤を含有してもよい。このような他の添加剤としては、例えば、キレート剤などが挙げられる。
【0066】
(キレート剤)
キレート剤は、残渣物中に含まれる酸化した金属とキレート化する。このため、キレート剤を添加することで処理液のリサイクル性が向上する。
キレート剤としては、特に限定されないが、ポリアミノポリカルボン酸であることが好ましい。
ポリアミノポリカルボン酸は、複数のアミノ基および複数のカルボン酸基を有する化合物であり、例えば、モノ-またはポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸、ポリアミノアルカンポリカルボン酸、ポリアミノアルカノールポリカルボン酸、およびヒドロキシアルキルエーテルポリアミンポリカルボン酸が含まれる。
【0067】
好適なポリアミノポリカルボン酸キレート剤としては、例えば、ブチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1,6-ヘキサメチレン-ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、および(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸が挙げられる。なかでも、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸が好ましい。
【0068】
処理液がキレート剤を含有する場合、キレート剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。
キレート剤は、単独でも2種類以上組み合わせて用いてもよい。2種以上のキレート剤を組み合わせて用いる場合には、その総量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0069】
また、他の添加剤としては、例えば、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、防錆剤および防腐剤などが挙げられる。
【0070】
<粗大粒子>
本発明の処理液は、粗大粒子を実質的に含まないことが好ましい。
粗大粒子とは、例えば、粒子の形状を球体とみなした場合において、直径0.2μm以上の粒子を指す。また、粗大粒子を実質的に含まないとは、光散乱式液中粒子測定方式の市販される測定装置を用いて処理液を測定した場合に、処理液1mL中直径0.2μm以上の粒子が10個以下であることをいう。
なお、処理液に含まれる粗大粒子とは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物および無機固形物などの粒子、ならびに、処理液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物および無機固形物などの粒子等であり、最終的に処理液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
処理液中に存在する粗大粒子の量は、レーザを光源として、液相で測定することができる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、後述するフィルタリング等の処理が挙げられる。
【0071】
<処理液の物性など>
本発明の処理液のpHは、9よりも大きく、15よりも小さいことが好ましい。このように処理液のpHがアルカリ領域にあることで、有機アルカリ化合物および/または防食剤と特定金属元素との塩の除去性がより向上する。これにより、レジストの除去性能がより向上したり、金属層の腐食防止性がより向上したり、残渣物除去性が向上する。
処理液のpHの下限値は、9よりも大きいことが好ましいが、レジストの除去性能、金属の腐食防止性および残渣物除去性がより一層向上するという観点から、9.3以上がより好ましく、11以上がさらに好ましい。
処理液のpHの上限値は、15よりも小さいことが好ましいが、欠陥の発生がより低減するという観点から、14.5以下がより好ましく、14.2以下がさらに好ましい。
処理液のpHは、公知のpHメーターを用いて測定することができる。
【0072】
本発明の処理液は、回転粘度計を用いて本発明の処理液の室温における粘度を測定した場合に、回転数1000rpmにおける処理液の粘度(粘度A)に対する、回転数100rpmにおける処理液の粘度(粘度B)の比率(粘度B/粘度A)が、1~20であることが好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましい。粘度の比率が1以上であることで、基板およびレジストに接触する総液量が増加して、レジストの除去と残渣物の除去を効率良く行うことができ、粘度の比率が20以下であることで、処理液が基板表面に残留しにくくなり、欠陥が生じにくい。
なお、処理液の粘度の測定における室温は、概ね20~25℃であり、好ましくは23℃である。
処理液の粘度は、回転粘度計DV-E(製品名、ブルックフィールド社製)に準ずる装置を用いて測定される。
【0073】
<用途>
本発明の処理液は、半導体デバイス用の処理液である。本発明においては、「半導体デバイス用」とは、半導体デバイスの製造の際に用いられるという意味である。本発明の処理液は、半導体デバイスを製造するためのいずれの工程にも用いることができ、例えば、基板上に存在する絶縁膜、レジスト、エッチング残渣物、反射防止膜、および、アッシング残渣物などの処理に用いることができる。
処理液は、感活性光線性または感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程の前に、組成物の塗布性を改良するために基板上に塗布されるプリウェット液、レジスト膜およびレジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストの除去に使用されるレジスト除去液(剥離液)、金属膜または絶縁膜上に付着したエッチング残渣物等の残渣物の除去などに用いられる洗浄液(例えば、リンス液など)、パターン形成用の各種レジスト膜の除去に用いられる溶液(例えば、除去液および剥離液など)、および、永久膜(例えば、カラーフィルタ、透明絶縁膜、樹脂製のレンズ)等を半導体基板から除去するために用いられる溶液(例えば、除去液および剥離液など)、などとして用いられる。また、パターン形成用の各種レジストの現像液としても使用できる。なお、永久膜の除去後の半導体基板は、再び半導体デバイスの使用に用いられることがあるため、永久膜の除去は、半導体デバイスの製造工程に含むものとする。
本発明の処理液は、上記用途のうち、1つの用途のみに用いられてもよいし、2以上の用途に用いられてもよい。
【0074】
ここで、半導体デバイスの微細化および高機能化が進むにつれて、配線材料およびプラグ材料などに使用される金属としては、より導電性の高いものが求められる。例えば、配線材料として使用される金属は、Al(アルミニウム)およびCu(銅)からCo(コバルト)への置き換えが進み、プラグ材料として使用される金属は、W(タングステン)からCoへの置き換えが進むことが予想される。そのため、特にCoに対する腐食が少ないことが求められる。
このような問題に対して、本発明の処理液は、半導体デバイスがCoを含む金属層を備えた基板を有する場合に、この金属層に対する処理に好適に使用される。これは、本発明の処理液に含まれる防食剤が、Coを含む金属層の腐食を効果的に抑制できたためと考えられる。特に、本発明においては、処理液に含まれる特定金属元素がCoを含む金属層の表面により効果的に吸着して、防食剤の吸着効率を向上できると推測される。
【0075】
また、処理液の上述した用途の中でも、本発明の処理液の効果がより発揮されるという観点から、本発明の処理液は、上記レジスト膜および上記レジストの残渣物の少なくとも一方の除去に好適に使用される。
【0076】
[キットおよび濃縮液]
本発明における処理液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。特に、処理液が、ヒドロキシルアミンおよびヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくとも1種を含有する場合、または、4級アンモニウム塩を含有する場合にはキットとすることが好ましい。
特に限定はされないが、処理液をキットとする具体的な方法としては、例えば、第1液としてヒドロキシルアミンおよびヒドロキシルアミン塩から選ばれる少なくとも1種の有機アルカリ化合物を水および/または有機溶剤に含有する液組成物を準備し、第2液として防食剤などその他成分を含有する液組成物を準備する態様が挙げられる。その使用例としては、両液を混合して処理液を調液し、その後、適時に上述した用途に適用することが好ましい。上記以外の各成分は、第1液および第2液のどちらに含有させてもよい。このようにすることで、液性能の劣化を招かずにすみ、所望の作用を効果的に発揮させることができる。第1液および第2液における各成分の含有量は、先に述べた含有量を元に、混合後の含有量として適宜設定できる。
また他の例としては、第1液として4級アンモニウム塩を含有する液組成物を準備し、第2液として防食剤などその他成分を含有する液組成物を準備する態様が挙げられる。両液を混合して処理液を調液し、その後、適時に上述した用途に適用することが好ましい。上記以外の各成分は第1液および第2液のどちらに含有させてもよい。このようにすることで、液性能の劣化を招かずにすみ、所望の作用を効果的に発揮させることができる。第1液および第2液における各成分の含有量は、先に述べた含有量を元に、混合後の含有量として適宜設定できる。
また、処理液は、濃縮液として準備してもよい。この場合、使用時に水および/または有機溶剤で希釈して使用することができる。
【0077】
[容器(収容容器)]
本発明の処理液は、(キットおよび濃縮液であるか否かに関わらず)腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬、そして使用することができる。容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。使用可能な容器としては、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、および、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」などが挙げられるが、これらに限定されない。この容器の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、またこれとは異なる樹脂、または、ステンレス、ハステロイ、インコネルおよびモネルなど、防錆および金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0078】
上記の異なる樹脂としては、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)を好ましく用いることができる。このように、内壁がフッ素系樹脂である容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、または、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂である容器を用いる場合と比べて、エチレンまたはプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような内壁がフッ素系樹脂である容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁等、国際公開第2004/016526号パンフレットの第3頁等、および、国際公開第99/46309号パンフレットの第9頁および16頁等に記載の容器も用いることができる。
【0079】
また、容器の内壁には、上述したフッ素系樹脂の他に、石英および電解研磨された金属材料(すなわち、電解研磨済みの金属材料)も好ましく用いられる。
上記電解研磨された金属材料は、クロムおよびニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、クロムおよびニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料であることが好ましく、例えばステンレス鋼、およびニッケル-クロム合金等が挙げられる。
金属材料におけるクロムおよびニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
なお、金属材料におけるクロムおよびニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般的に90質量%以下が好ましい。
【0080】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼を用いることができる。なかでも、ニッケルを8質量%以上含有する合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、およびSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0081】
ニッケル-クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル-クロム合金を用いることができる。なかでも、ニッケル含有量が40~75質量%、クロム含有量が1~30質量%のニッケル-クロム合金が好ましい。
ニッケル-クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、およびインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ-C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、ハステロイC-22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、ニッケル-クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、さらに、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、およびコバルト等を含有していてもよい。
【0082】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015-227501号公報の段落<0011>-<0014>、および特開2008-264929号公報の段落<0036>-<0042>等に記載された方法を用いることができる。
【0083】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、電解研磨された金属材料で被覆された内壁からは、処理液中に金属元素が流出しにくいため、容器内に不純物が溶出しにくいと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていることが好ましい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。
なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
また、金属材料は、研磨砥粒のサイズなどの番手を変えて行われる複数段階のバフ研磨、酸洗浄、および磁性流体研磨などを、1または2以上組み合わせて処理されたものであってもよい。
【0084】
これらの容器は、充填前に容器内部を洗浄することが好ましい。洗浄に使用される液体に含まれる金属元素は、上記処理液中における有機アルカリ化合物に対する金属元素の質量割合の範囲内であることが好ましい。液体は、用途に応じて適宜選択すればよいが、他の有機溶剤を精製して金属元素の質量割合を上記処理液と同様の範囲内にしたもの、本発明の処理液そのもの、本発明の処理液を希釈したもの、または、本発明の処理液に添加している成分の少なくとも1種を含む液体であると、本発明の効果が顕著に得られる。本発明の処理液は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されても良い。
【0085】
保管における処理液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(チッソ、またはアルゴンなど)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、-20℃から20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0086】
[クリーンルーム]
本発明の処理液の製造、収容容器の開封および/または洗浄、処理液の充填などを含めた取り扱い、処理分析、および、測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、ISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1またはISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことがさらに好ましい。
【0087】
[フィルタリング]
本発明の処理液は、特定金属元素のそれぞれの質量割合を所望の範囲内にしたり、異物および粗大粒子などを除去したりするために、フィルタリングされたものであることが好ましい。
フィルタリングに使用されるフィルタは、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。フィルタを構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ならびに、ポリエチレンおよびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド系樹脂、PTFE、および、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)が好ましく、これらの素材により形成されたフィルタを使用することで、残渣欠陥やパーティクル欠陥の原因となり易い極性の高い異物をより効果的に除去できる他、本発明の特定金属元素の量をより効率的に減らすことができる。
【0088】
フィルタの臨界表面張力として、下限値としては70mN/m以上が好ましく、上限値としては、95mN/m以下が好ましい。特に、フィルタの臨界表面張力は、75mN/m以上85mN/m以下が好ましい。
なお、臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲のフィルタを使用することで、残渣欠陥やパーティクル欠陥の原因となり易い極性の高い異物をより効果的に除去できる他、本発明の特定金属元素の量をより効率的に減らすことができる。
【0089】
フィルタの孔径は、0.001~1.0μm程度が好ましく、0.02~0.5μm程度がより好ましく、0.01~0.1μm程度がさらに好ましい。フィルタの孔径を上記範囲とすることで、ろ過詰まりを抑えつつ、処理液に含まれる微細な異物を確実に除去することが可能となる。
さらに、本発明の特定金属元素のそれぞれの量を低減する観点からは、フィルタの孔径を0.05μm以下とすることが好ましい。特定金属元素の量を調整する場合のフィルタの孔径としては、0.005μm以上0.04μm以下がより好ましく、0.01μm以上0.02μm以下がさらに好ましい。上記の範囲内であると、ろ過に必要な圧力が低く維持ができ、効率良く濾過することができ、所望の効果を顕著に得ることができる。
【0090】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合には、各フィルタは、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに種類の異なるものであってもよいが、互いに種類の異なるものであることが好ましい。典型的には、第1のフィルタと第2フィルタとは、孔径および構成素材のうちの少なくとも一方が異なっていることが好ましい。
1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、または、小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択できる。また、ポリアミド製の「P-ナイロンフィルター(孔径0.02μm、臨界表面張力77mN/m)」;(日本ポール株式会社製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.02μm)」;(日本ポール株式会社製)、および高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.01μm)」;(日本ポール株式会社製)も使用することができる。
【0091】
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料で形成されたフィルタを使用できる。上述した第1のフィルタと同様の孔径のものが使用できる。第2のフィルタの孔径が第1のフィルタより小さいものを用いる場合には、第2のフィルタの孔径と第1のフィルタの孔径との比(第2のフィルタの孔径/第1のフィルタの孔径)が0.01~0.99が好ましく、0.1~0.9より好ましく、0.3~0.9がさらに好ましい。第2フィルタの孔径を上記範囲とすることにより、処理液に混入している微細な異物がより確実に除去される。
【0092】
例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、処理液の一部の成分が含まれる混合液で行い、これに残りの成分を混合して処理液を調製した後で、第2のフィルタでのフィルタリングを行ってもよい。
【0093】
また、使用されるフィルタは、処理液を濾過する前に処理することが好ましい。この処理に使用される液体は、特に限定されないが、有機溶剤を精製して金属元素の含有量を上記処理液と同様の範囲内にしたもの、本発明の処理液そのもの、本発明の処理液を希釈したもの、または、処理液に含まれる成分を含有する液体であると、所望の効果が顕著に得られる。
【0094】
フィルタリングを行う場合には、フィルタリング時の温度の上限値は、室温(25℃)以下が好ましく、23℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましい。また、フィルタリング時の温度の下限値は、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましい。
フィルタリングでは、粒子性の異物や不純物が除去できるが、上記温度で行われると、処理液中に溶解している粒子性の異物や不純物の量が少なくなるため、フィルタリングがより効率的に行われる。
【0095】
特に、超微量の特定金属元素を含む本発明の処理液においては、上記の温度で濾過することが好ましい。メカニズムは定かではないが、特定金属元素その多くは粒子性のコロイド状態で存在していることが考えられる。上記の温度でフィルタリングすると、コロイド状に浮遊している特定金属元素の一部が凝集するため、この凝集しているものが、フィルタリングにより効率的に除去されるので、特定金属元素のそれぞれの含有量を所望の量に調整しやすくなることが考えられる。
【0096】
また、使用されるフィルタは、処理液を濾過する前に処理することが好ましい。この処理に使用される液体は、特に限定されないが、上述した特定金属元素のそれぞれの含有量が0.001質量ppt未満であることが好ましく、上述した有機溶剤を精製して、上述した特定金属元素のそれぞれの含有量を上記の範囲にしたもの、または、本発明の処理液そのもの、若しくは、処理液を希釈したもの、さらに精製して、特定金属元素、不純物および粗大粒子などを低減させた液体であると、本発明の所望の効果が顕著に得られる。
【0097】
[基板の洗浄方法]
本発明の基板の洗浄方法は、上記処理液を用いて、Coを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Bを有する。また、本発明の基板の洗浄方法は、洗浄工程Bの前に、上記処理液を調製する処理液調製工程Aを有していてもよい。
以下の基板の洗浄方法の説明においては、洗浄工程Bの前に処理液調整工程Aを実施する場合を一例として示すが、これに限定されず、本発明の基板の洗浄方法は、予め準備された上記処理液を用いて行われるものであってもよい。
【0098】
<洗浄対象物>
本発明の基板の洗浄方法の洗浄対象物は、Coを含む金属層を備えた基板であれば特に限定されないが、例えば、基板上に、上記金属層、層間絶縁膜、メタルハードマスクを少なくともこの順に備えた積層物が挙げられる。積層物は、さらに、ドライエッチング工程等を経たことにより、金属層の表面を露出するようにメタルハードマスクの表面(開口部)から基板に向かって形成されたホールを有する。
上記のような、ホールを有する積層物の製造方法は特に制限されないが、通常、基板と、金属層と、層間絶縁膜と、メタルハードマスクとをこの順で有する処理前積層物に対して、メタルハードマスクをマスクとして用いてドライエッチング工程を実施して、金属層の表面が露出するように層間絶縁膜をエッチングすることにより、メタルハードマスクおよび層間絶縁膜内を貫通するホールを設ける方法が挙げられる。
なお、メタルハードマスクの製造方法は特に制限されず、例えば、まず、層間絶縁膜上に所定の成分を含む金属膜を形成して、その上に所定のパターンのレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜をマスクとして用いて、金属膜をエッチングすることで、メタルハードマスク(すなわち、金属膜がパターニングされた膜)を製造する方法が挙げられる。
また、積層物は、上述の層以外の層を有していてもよく、例えば、エッチング停止膜、反射防止層等が挙げられる。
【0099】
図1に、本発明の基板の洗浄方法の洗浄対象物である積層物の一例を示す断面模式図を示す。
図1に示す積層物10は、基板1上に、金属層2、エッチング停止層3、層間絶縁膜4、メタルハードマスク5をこの順に備え、ドライエッチング工程等を経たことで所定位置に金属膜2が露出するホール6が形成されている。つまり、図1に示す洗浄対象物は、基板1と、金属膜2と、エッチング停止層3と、層間絶縁膜4と、メタルハードマスク5とをこの順で備え、メタルハードマスク5の開口部の位置において、その表面から金属膜2の表面まで貫通するホール6を備える積層物である。ホール6の内壁11は、エッチング停止層3、層間絶縁膜4およびメタルハードマスク5からなる断面壁11aと、露出された金属膜2からなる底壁11bとで構成され、ドライエッチング残渣物12が付着している。
【0100】
本発明の基板の洗浄方法は、これらのドライエッチング残渣物12の除去を目的とした洗浄に好適に用いることができる。すなわち、ドライエッチング残渣物12の除去性能に優れつつ、洗浄対象物の内壁11(例えば、金属膜2等)に対する腐食防止性にも優れる。
また、本発明の基板の洗浄方法は、ドライエッチング工程の後にドライアッシング工程が行われた積層物に対して実施してもよい。
以下、上述した積層物の各層構成材料について説明する。
【0101】
(メタルハードマスク)
メタルハードマスクは、Cu、Co、W、AlOx、AlN、AlOxNy、WOx、Ti、TiN、ZrOx、HfOxおよびTaOxからなる群より選択される成分を少なくとも1種含有することが好ましい。ここで、x、yは、それぞれ、x=1~3、y=1~2で表される数である。
上記メタルハードマスクの材料としては、例えば、TiN、WO、ZrOが挙げられる。
【0102】
(層間絶縁膜)
層間絶縁膜の材料は、特に限定されず、例えば、好ましくは誘電率kが3.0以下、より好ましくは2.6以下のものが挙げられる。
具体的な層間絶縁膜の材料としては、SiO、SiOC系材料、ポリイミドなどの有機系ポリマーなどが挙げられる。
【0103】
(エッチング停止層)
エッチング停止層の材料は、特に限定されない。具体的なエッチング停止層の材料としてはSiN、SiON、SiOCN系材料、AlOxなどの金属酸化物が挙げられる。
【0104】
(金属膜)
金属膜を形成する配線材料は、少なくともコバルトを含有する。また、コバルトは、他の金属との合金であってもよい。
本発明の配線材料は、コバルト以外の金属、窒化金属または合金をさらに含有していてもよい。具体的には、銅、チタン、チタン-タングステン、窒化チタン、タングステン、タンタル、タンタル化合物、クロム、クロム酸化物、および、アルミニウム等が挙げられる。
【0105】
(基板)
ここでいう「基板」には、例えば、単層からなる半導体基板、および、多層からなる半導体基板が含まれる。
単層からなる半導体基板を構成する材料は特に限定されず、一般的に、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsのような第III-V族化合物、またはそれらの任意の組み合わせから構成されることが好ましい。
多層からなる半導体基板である場合には、その構成は特に限定されず、例えば、上述のシリコン等の半導体基板上に金属線および誘電材料のような相互接続構造(interconnect features)などの露出した集積回路構造を有していてもよい。相互接続構造に用いられる金属および合金としては、アルミニウム、銅と合金化されたアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、およびタングステンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、半導体基板上に、層間誘電体層、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコンおよび炭素ドープ酸化シリコン等の層を有していてもよい。
【0106】
以下、処理液調製工程Aおよび洗浄工程Bについて、それぞれ詳述する。
【0107】
(処理液調製工程A)
処理液調製工程Aは、上記処理液を調製する工程である。本工程で使用される各成分は、上述した通りである。
本工程の手順は特に制限されず、例えば、有機アルカリ化合物、防食剤、および、その他の任意成分を、有機溶剤および任意成分である水に添加して、撹拌混合することにより処理液を調製する方法が挙げられる。なお、有機溶剤および任意成分である水に各成分を添加する場合は、一括して添加してもよいし、複数回に渡って分割して添加してもよい。
また、処理液に含まれる各成分は、半導体グレードに分類されるもの、または、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用することが好ましい。また、原材料の時点で不純物が多い成分に関しては、フィルタリングによる異物除去、イオン交換樹脂などによるイオン成分低減を行ったものを用いることが好ましい。
【0108】
(洗浄工程B)
洗浄工程Bで洗浄される洗浄対象物としては、上述した積層物が挙げられ、上述した通り、ドライエッチング工程が施されてホールが形成された積層物10が例示される(図1参照)。なお、この積層物10には、ホール6内にドライエッチング残渣物12が付着している。
なお、ドライエッチング工程の後に、ドライアッシング工程が行われた積層物を、洗浄対象物としてもよい。
【0109】
洗浄対象物に処理液を接触させる方法は特に限定されないが、例えば、タンクに入れた処理液中に洗浄対象物を浸漬する方法、洗浄対象物上に処理液を噴霧する方法、洗浄対象物上に処理液を流す方法、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。残渣物除去性の観点から、洗浄対象物を処理液中に浸漬する方法が好ましい。
【0110】
処理液の温度は、90℃以下とすることが好ましく、25~80℃であることがより好ましく、30~75℃であることがさらに好ましく、40~65℃であることが特に好ましい。
【0111】
洗浄時間は、用いる洗浄方法および処理液の温度に応じて調整することができる。
浸漬バッチ方式(処理槽内で複数枚の洗浄対象物を浸漬し処理するバッチ方式)で洗浄する場合には、洗浄時間は、例えば、60分以内であり、1~60分であることが好ましく、3~20分であることがより好ましく、4~15分であることがさらに好ましい。
【0112】
枚葉方式で洗浄する場合には、洗浄時間は、例えば、10秒~5分であり、15秒~4分であることが好ましく、15秒~3分であることがより好ましく、20秒~2分であることがさらに好ましい。
【0113】
さらに、処理液の洗浄能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。
機械的撹拌方法としては、例えば、洗浄対象物上で処理液を循環させる方法、洗浄対象物上で処理液を流過または噴霧させる方法、超音波またはメガソニックにて処理液を撹拌する方法等が挙げられる。
【0114】
(リンス工程B2)
本発明の基板の洗浄方法は、洗浄工程Bの後に、洗浄対象物を溶剤ですすいで清浄する工程(リンス工程B2)をさらに有していてもよい。
リンス工程B2は、洗浄工程Bに連続して行われ、リンス溶剤(リンス液)で5秒~5分にわたってすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程B2は、上述の機械的撹拌方法を用いて行ってもよい。
【0115】
リンス溶剤としては、例えば、脱イオン(DI:De Ionize)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは、pH>8の水性リンス液(希釈した水性の水酸化アンモニウム等)を利用してもよい。
リンス溶剤としては、水酸化アンモニウム水溶液、DI水、メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、水酸化アンモニウム水溶液、DI水およびイソプロピルアルコールであることがより好ましく、水酸化アンモニウム水溶液およびDI水であることがさらに好ましい。
リンス溶剤を洗浄対象物に接触させる方法としては、上述した処理液を洗浄対象物に接触させる方法を同様に適用することができる。
リンス工程B2におけるリンス溶剤の温度は、16~27℃であることが好ましい。
上述した処理液は、リンス工程B2のリンス溶剤として使用してもよい。
【0116】
(乾燥工程B3)
本発明の基板の洗浄方法は、リンス工程B2の後に洗浄対象物を乾燥させる乾燥工程B3を有していてもよい。
乾燥方法としては、特に限定されない。乾燥方法としては、例えば、スピン乾燥法、洗浄対象物上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレート若しくは赤外線ランプのような加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
乾燥時間は、用いる特定の方法に依存するが、一般的には、30秒~数分であることが好ましい。
【0117】
(イオン除去工程F、G)
本発明の基板の洗浄方法は、上記処理液調製工程Aの前に、上記有機アルカリ化合物、上記防食剤および上記有機溶剤の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程F、および、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bを行う前に、上記処理液中のCaイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去するイオン除去工程Gのうち、少なくとも一方の工程を有することが好ましい。
上記イオン除去工程Fおよびイオン除去工程Gの少なくとも一方を実施することで、洗浄工程Bで用いられる処理液中における、有機アルカリ化合物に対するCa、FeおよびNaの質量割合が、上述した範囲に調整されることが好ましい。特に、イオン除去工程Fおよびイオン除去工程Gの両方を実施することで、有機アルカリ化合物に対するCa、FeおよびNaの質量割合が上述した範囲内に調整しやすくなるという利点がある。
処理液中における有機アルカリ化合物に対するCa、FeおよびNaのそれぞれの質量割合を上記の範囲に調整しておくことで、経時後においても処理液の洗浄性能を良好に保持することが可能となり、リサイクル性にも優れる。
イオン除去工程F、および、イオン除去工程Gの具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば蒸留やイオン交換膜による精製が挙げられる。
【0118】
処理液調製工程Aにおける処理液の調製の際に水を用いる場合には、イオン除去工程Fは、上記有機アルカリ化合物、上記防食剤、上記有機溶剤および上記水の少なくとも1つから、Caイオン、FeイオンおよびNaイオンを除去する工程であることが好ましい。これにより、洗浄工程Bで用いられる処理液中における、有機アルカリ化合物に対するCa、FeおよびNaの質量割合を、上述した範囲に調整することがより容易になる。
【0119】
(粗大粒子除去工程H)
本発明の基板の洗浄方法は、上記洗浄工程Bを行う前に、処理液中の粗大粒子を除去する粗大粒子除去工程Hを有することが好ましい。
処理液中の粗大粒子を低減または除去することで、洗浄工程Bを経た後の洗浄対象物上に残存する粗大粒子の量を低減することができる。この結果、洗浄対象物上の粗大粒子に起因したパターンダメージを抑制でき、デバイスの歩留まり低下および信頼性低下への影響も抑制することができる。
粗大粒子を除去するための具体的な方法としては、例えば、処理液調製工程Aを経た処理液を所定の除粒子径の除粒子膜を用いて濾過精製する方法等が挙げられる。
なお、粗大粒子の定義については、上述のとおりである。
【0120】
(除電工程I、J)
本発明の基板の洗浄方法は、上記処理液調製工程Aにおける上記処理液の調製の際に水を用い、上記処理液調製工程Aの前に上記水に対して除電を行う除電工程I、または、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bを行う前に、上記処理液に対して除電を行う除電工程Jを有することが好ましい。
洗浄対象物へ処理液を供給するための接液部の材質は、有機アルカリ化合物に対する特定金属元素の質量割合を所定範囲内に維持するために、処理液に対して金属溶出のない樹脂とすることが好ましい。このような樹脂は電気伝導率が低く、絶縁性のため、例えば、上記処理液を樹脂製の配管に通液した場合、または、樹脂製の除粒子膜および樹脂製のイオン交換樹脂膜により濾過精製を行った場合、処理液の帯電電位が増加して静電気災害を引き起こすおそれがある。
このため、本発明の基板の洗浄方法では、上述の除電工程Iおよび除電工程Jの少なくとも一方の工程を実施し、処理液の帯電電位を低減させることが好ましい。また、除電を行うことで、基板への異物(粗大粒子など)の付着や洗浄対象物へのダメージ(腐食)をより抑制することができる。
除電方法としては、具体的には、水および/または処理液を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
水および/または処理液を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001~1秒が好ましく、0.01~0.1秒がより好ましい。
樹脂の具体的な例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度ポリプロピレン(PP)、6,6-ナイロン、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、および、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)などが挙げられる。
導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、および、グラッシーカーボンなどが挙げられる。
【0121】
本発明の処理液を用いた基板の洗浄方法は、洗浄工程Bで用いた処理液の排液を再利用し、さらに他の洗浄対象物の洗浄に用いることが可能である。
本発明の基板の洗浄方法は、処理液の排液を再利用する態様である場合、下記の工程から構成されることが好ましい。
上記洗浄工程Bと、
上記洗浄工程Bで使用された上記処理液の排液を回収する排液回収工程Cと、
回収された上記処理液の排液を用いて、新たに準備されるCoを含む金属層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Dと、
上記洗浄工程Dで使用された上記処理液の排液を回収する排液回収工程Eと、
上記洗浄工程Dと上記排液回収工程Eとを繰り返す工程と、を有して上記処理液の排液をリサイクルする態様が好ましい。
【0122】
上記排液を再利用する態様において、洗浄工程Bは、上述した態様で説明した洗浄工程Bと同義であり、また好ましい態様についても同じである。また、上記排液を再利用する態様においても、上述した態様で説明したイオン除去工程F、イオン除去工程G、粗大粒子除去工程H、除電工程I、及び除電工程Jを有していることが好ましい。また、洗浄工程Bの前に上述した態様で説明した処理液調製工程Aを有していてもよい。
【0123】
回収された処理液の排液を用いて基板の洗浄を実施する洗浄工程Dは、上述した態様における洗浄工程Bと同義であり、好ましい態様も同様である。
排液回収工程CおよびEにおける排液回収手段は特に限定されない。回収した排液は、上記除電工程Jにおいて上述した樹脂製容器に保存されることが好ましく、この時に除電工程Jと同様の除電工程を行ってもよい。また、回収した排液に濾過等を実施し不純物を除去する工程を設けてもよい。
【0124】
使用した処理液(回収した排液)は、再利用することができる。例えば、収容容器の処理液をウェハに付与して洗浄した後に、排液を回収して収容容器に戻すか、あるいは、排液を他の容器に収容し、次いで、ウェハに再付与しても良い。処理液を循環させて再利用する方法であっても良い。処理液を循環させる場合、洗浄処理を繰り返し行うことができる。処理液を循環させて再利用する方法において、処理液の循環時間は特に制限されないが、1週間以内に処理液を交換することが好ましい。より好ましくは、処理液を3日以内に交換し、特に好ましくは、1日ごとに新しい処理液に交換する。また、処理液がアルカリ性であり、二酸化炭素を吸収する性質がある場合には、密閉された系で用いるか、窒素フロー下で用いても良い。窒素フロー下で用いることがより好ましい。
【0125】
[レジストの除去方法]
本発明のレジストの除去方法は、レジスト膜および上記レジスト膜の残渣物の少なくとも一方であるレジストを、上述した処理液を用いて除去する工程(以下、「レジスト除去工程」ともいう。)を有する。本発明における「レジストの除去」とは、レジストの設けられた基板などからレジストを「取り除く」という意味であり、「レジストを剥離して取り除くこと」および「レジストを溶解して取り除くこと」なども含まれる。
【0126】
レジスト膜は、例えば、上述した図1の積層物10の有するメタルハードマスク5に対応する位置に設けられる。すなわち、レジスト膜は、メタルハードマスク5に代えて基板1上に設けられる。
本発明のレジストの除去方法は、このように形成されたレジスト膜の除去に使用されてもよいし、レジスト膜をエッチング(プラズマエッチングなどのドライエッチング)および/またはアッシング(プラズマアッシングなどのドライアッシング)などを行うことで生じた残渣物(副生成物も含む)の除去に使用されてもよい。
【0127】
(レジスト)
本発明の処理液を用いたレジストの除去においては、処理対象となるレジスト膜は特に限定されないが、例えば、ポジ型、ネガ型、および、ポジ-ネガ兼用型のフォトレジストが挙げられる。
ポジ型レジストの具体例は、(メタ)アクリレート系樹脂、ケイ皮酸ビニール系樹脂、環化ポリイソブチレン系樹脂、アゾ-ノボラック系樹脂、ジアゾケトン-ノボラック系樹脂、ならびに、ノボラック系樹脂およびポリヒドロキシスチレン系樹脂の少なくとも一方の樹脂、などが挙げられる。
ネガ型レジストの具体例は、アジド-環化ポリイソプレン系樹脂系、アジド-フェノール系樹脂、および、クロロメチルポリスチレン系樹脂などが挙げられる。さらに、ポジ-ネガ兼用型レジストの具体例は、ポリ(p-ブトキシカルボニルオキシスチレン)系樹脂などが挙げられる。
その他、パターニング用のレジストの例として、特許5222804号、特許5244740号、特許5244933号、特許5286236号、特許5210755号、特許5277128号、特許5303604号、特許5216892号、特許5531139号、特許5531078号、および、特許5155803号の各公報に開示されたものを参照することができ、本明細書に引用して取り込む。
【0128】
(レジスト除去工程)
レジスト除去工程は、レジストに処理液を接触させることで実施される。この方法は特に限定されないが、例えば、タンクに入れた処理液中にレジストを有する積層物を浸漬する方法、レジスト上に処理液を噴霧する方法、レジスト上に処理液を流す方法、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。レジスト除去性がより向上するという観点から、レジストを有する積層物を処理液中に浸漬する方法が好ましい。
【0129】
レジスト除去工程における処理液の温度は、90℃以下が好ましく、20~70℃がより好ましく、23~60℃がさらに好ましい。
レジストの除去時間(レジスト除去工程におけるレジストと処理液との接液時間)は、用いる除去方法および処理液の温度などに応じて調整することができ、概ね、15秒~60分であり、20秒~30分が好ましい。
処理液のレジスト除去能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。機械的撹拌方法としては、上述した基板洗浄方法の項で述べた通りであるので、その説明を省略する。
【0130】
本発明のレジストの除去方法は、レジスト除去工程の後に、レジストが設けられていた基板などの半導体デバイスを構成する部材を乾燥させる乾燥工程を有していてもよい。
乾燥方法としては、特に限定されず、上述した基板洗浄方法における乾燥工程B3と同様の方法が挙げられるので、その説明を省略する。
【実施例
【0131】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「ppt」は質量基準である。
【0132】
[処理液の調製]
実施例および比較例の各処理液の調製にあたって、各成分は後述する精製を行った後、処理液の調製に用いた。
第1表に示す各成分を混合および攪拌して混合液を得た後、混合液のフィルタリング処理およびろ過処理の少なくとも一方を実施して、実施例および比較例の各処理液を得た。なお、各実施例および比較例の処理液に含まれるCa、FeおよびNaの含有量が第1表に記載の通りになるように、各処理の実施回数を適宜変えて行った。
ここで、フィルタリング処理のフィルタには、Pall社製の「PE-KLEEN」(商品名)およびEntegris社製の「リンスガードHP/HPX」(商品名)を、単独または組み合わせて使用した。また、フィルタリング処理では、各特定金属元素の含有量が第1表の値になるように、1パスまたは循環ろ過を行った。なお、循環ろ過は、1時間以上実施した。
実施例および比較例の各処理液の調製に用いた成分は以下の通りである。
【0133】
<有機アルカリ化合物>
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド (セイケム社製)
TEAH:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド (セイケム社製)
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド (セイケム社製)
COH:コリンヒドロキシド (和光純薬工業社製)
AH-212:ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド (四日市合成社製)
ETMAH:エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド (セイケム社製)
MEA:モノエタノールアミン (和光純薬工業社製)
AEE:2-アミノ-2-エトキシ-エタノール (和光純薬工業社製)
【0134】
上記の有機アルカリ化合物は、国際公開第2012/043496号明細書に記載されている、炭化ケイ素を用いた吸着精製に加え、フィルタ濾過を繰り返すことで精製を行った。
【0135】
<有機溶剤>
DMSO:ジメチルスルホキシド(和光純薬工業社製)
DPGME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業社製)
DEGEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業社製)
DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業社製)PG:プロピレングリコール(和光純薬工業社製)
【0136】
上記の有機溶剤は、硝子により形成された蒸留塔で蒸留を繰り返した後、イオン交換、フィルタ濾過を繰り返すことで精製を行った。
【0137】
<水>
水は、特開2007―254168号公報に記載されている方法により精製を行い、水に含まれるCa、FeおよびNaの含有量のそれぞれが、0.1質量ppt~10質量pptであることを確認した後、処理液の調製に用いた。
【0138】
<防食剤>
5-MBTA:5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール (和光純薬工業社製)
BTA:ベンゾトリアゾール (和光純薬工業社製)
123TZ:1H-1,2,3トリアゾール(和光純薬工業社製社製)
カテコール(和光純薬工業社製社製)
没食子酸(和光純薬工業社製社製)
2-MBT:2-メルカプトベンゾチアゾール(和光純薬工業社製)
IRGAMET 42:2,2’-{[(4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタノール(BASF社製)
IRGAMET 39:N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-(4または5)-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メチルアミン(BASF社製)
Thioglycerol:1-チオグリセロール(和光純薬工業社製)
【0139】
<他の成分>
(ハロゲン酸)
HF:フッ化水素(関東化学社製)
HCl:塩化水素(和光純薬工業社製)
HBr:臭化水素(和光純薬工業社製)
(pH調整剤)
クエン酸(和光純薬工業社製)
【0140】
[含有量の測定]
<特定金属元素の含有量の測定>
実施例および比較例の処理液を用いて、処理液中の特定金属元素(Ca、FeおよびNa)の各含有量を測定した。具体的には、実施例および比較例の各処理液を用いて、NexION350S(商品名、PerkinElmer社製)を用いて、ICP-MS法により行った。測定結果を第1表に示す。
ICP-MS法による具体的な測定条件は、次の通りである。なお、濃度既知の標準液に対するピーク強度にて検出量を測定して、特定金属元素の質量に換算し、測定に使用した処理液中の特定金属元素の含有量(総メタル含有量)を算出した。
特定金属元素の含有量は、通常のICP-MS法により測定した。具体的には、特定金属元素の分析に使用するソフトウェアとして、ICP-MS用のソフトウェアを用いた。
なお、測定は全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。
(ICP-MS法による測定条件)
((標準物質))
清浄なガラス容器内へ超純水を計量投入し、メディアン径50nmの測定対象金属粒子を10000個/mlの濃度となるように添加した後、超音波洗浄機で30分間処理した分散液を輸送効率測定用の標準物質として用いた。
((使用したICP-MS装置))
メーカー:PerkinElmer
型式:NexION350S
((ICP-MSの測定条件))
ICP-MSはPFA製同軸型ネブライザ、石英製サイクロン型スプレーチャンバ、石英製内径1mmトーチインジェクタを用い、測定対象液を約0.2mL/minで吸引した。酸素添加量は0.1L/min、プラズマ出力1600W、アンモニアガスによるセルパージを行った。時間分解能は50μsにて解析を行った。
((ソフトウェア))
特定金属元素の含有量は、メーカー付属の下記解析ソフトを用いて計測した。
Syngistix for ICP-MS ソフトウエア
【0141】
[処理液の物性]
<pH>
pHメーター(製品名「pH Meter F-51」、堀場製作所製)を用いて、実施例および比較例の各処理液の23℃におけるpHを測定した。
<粘度比>
実施例および比較例の各処理液を用いて、23℃における粘度A(ローターの回転数1000rpm)と、23℃における粘度B(ローターの回転数100rpm)と、を測定して、得られた値から粘度の比率(粘度B/粘度A)を算出した。粘度の測定には、粘度計「DV-E」(製品名、ブルックフィールド社製)を用いた。
【0142】
[評価試験]
<腐食防止性(耐腐食性)>
Coからなる膜(配線モデル、以下「Co膜」ともいう。)を準備して、そのエッチングレートに基づいて、腐食防止性の評価を行った。Co膜の膜厚は、1000Åの膜厚である。エッチングレートが低い場合は、腐食防止性に優れ、エッチングレートが高い場合は、腐食防止性に劣る、といえる。
実施例および比較例の各処理液を用いて、Co膜のエッチング処理をした。具体的には、実施例および比較例の処理液中にCo膜を10分間浸漬して、処理液の浸漬前後におけるCo膜の膜厚差に基づいて、エッチングレート(Å/分)を算出した。
なお、処理前後のCo膜の膜厚は、エリプソメトリー(分光エリプソメーター、商品名「Vase」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製)を用いて、測定範囲250-1000nm、測定角度70度および75度の条件で測定した。
【0143】
<残渣物除去性>
基板(Si)上に、Co膜、SiN膜、SiO膜、および、所定の開口部を有するメタルハードマスク(TiN)をこの順で備える積層物(処理前積層物に該当)を形成した。得られた積層物を使用し、メタルハードマスクをマスクとしてプラズマエッチングを実施して、Co膜表面が露出するまでSiN膜およびSiO膜のエッチングを行い、ホールを形成し、試料1を製造した(図1参照)。この積層物の断面を走査型電子顕微鏡写真(SEM:Scanning Electron Microscope)で確認すると、ホール壁面にはプラズマエッチング残渣物が認められた。
そして、下記の手順により、残渣物除去性を評価した。まず、60℃に調温した各処理液に、用意した上記試料1の切片(約2.0cm×2.0cm)を浸漬し、10分後に試料1の切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N乾燥を行った。その後、浸漬後の試料1の切片表面をSEMで観察し、プラズマエッチング残渣物の除去性(「残渣物除去性」)について、下記の判断基準にしたがって評価を行った。
「AA」:5分以内にプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「A」:5分超、8分以下でプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「B」:8分超、10分以下でプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「C」:10分超過した時点でプラズマエッチング残渣物が完全に除去されないが、性能に問題ない。
「D」:10分超過した時点でプラズマエッチング残渣物の除去が足らず、性能に影響が出てしまう。
【0144】
<レジスト除去性>
特開2012-194536号の段落0030を参考にして、Si基板上にレジスト膜が形成された試料2を得た。試料2の切片(約2.0cm×2.0cm)を60℃に調温した各処理液に浸漬し、10分後に試料2の切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N乾燥を行った。その後、浸漬後の試料2の切片表面を目視で観察し、下記判断基準に従って評価した。
「AA」:5分以内にレジストが完全に除去された。
「A」:5分超、8分以下でレジストが完全に除去された。
「B」:8分超、10分以下でレジストが完全に除去された。
「C」:10分超過した時点でレジストが完全に除去されないが、性能に問題ない。
「D」:10分超過した時点でレジストの除去が足らず、性能に影響が出てしまう。
【0145】
<欠陥性能>
ウェハ上表面検査装置(SP-5、KLA-Tencor社製)により、直径300mmのシリコン基板表面に存在する直径32nm以上の異物数および各異物のアドレスを計測した。
そして、スピン回転ウェハ処理装置(イーケーシーテクノロジーズ社製)に、シリコン基板表面に存在する異物数を計測したウェハをセットした。
次に、セットされたウェハの表面に、実施例および比較例の各処理液を1.5L/minの流量で1分間吐出した。その後、ウェハのスピン乾燥を行った。
得られた乾燥後のウェハについて、ウェハ上表面検査装置を用いて、ウェハ上の異物数およびアドレスを計測した。
そして、上記処理液をスピン乾燥した後に新たに増加した異物に対して、欠陥解析装置(SEM VISION G6、APPLIED MATERIALS社製)を用いてEDX(Energy dispersive X-ray spectrometry:エネルギー分散型X線分析)による元素解析を行った。Ca、FeおよびNaの特定金属元素を含む異物をパーティクルとしてカウントした。得られたパーティクルの数を以下の評価基準にしたがって評価した。結果を第1表に示す。
「A」:特定金属元素を含有した直径32nm以上のパーティクルの数が0個以上100個未満である。
「B」:特定金属元素を含有した直径32nm以上のパーティクルの数が100個以上500個未満である。
「C」:特定金属元素を含有した直径32nm以上のパーティクルの数が500個以上1000個未満である。
「D」:特定金属元素を含有した直径32nm以上のパーティクルの数が1000個以上である。
【0146】
[評価結果]
以上の評価結果を下記第1表に示す。なお、表中の「10^(-9)」等の「^」の右側にある数値は、指数を意味し、具体的には「10^(-9)」は「10-9」を意味する。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
第1表に示すように、処理液中において、有機アルカリ化合物に対する、Caの質量割合、Feの質量割合およびNaの質量割合がいずれも10-12~10-4であることで、欠陥の発生を低減でき、半導体デバイスに含まれる金属層に対する腐食防止性に優れ、かつ、半導体デバイスの製造時に使用されるレジストの除去性にも優れることが示された(実施例)。また、実施例の処理液によれば、エッチング残渣物の除去性にも優れることが示された。
一方、処理液が防食剤を含有しないと、金属層に対する腐食防止性が劣ることが示された(比較例1、2)。
また、有機アルカリ化合物に対する、Caの質量割合、Feの質量割合およびNaの質量割合の少なくとも1つの質量割合が10-12未満であると、欠陥の発生が顕著になることが示された(比較例2)。
また、有機アルカリ化合物に対する、Caの質量割合、Feの質量割合およびNaの質量割合の少なくとも1つの質量割合が10-4を超えると、欠陥の発生が顕著になることが示された(比較例3、4)。
【0150】
<除電試験および評価結果>
実施例6の処理液について、アース接地した材質SUS316で除電した他、浸漬時間を20分とした他は同様にして、上述した各評価試験を実施した。
評価の結果、いずれの処理液についても、上記の除電工程を経た場合と、経ない場合で残渣物除去性能およびレジスト除去性は変わらず、腐食防止性および欠陥性能の評価においては、除電工程を経た場合に、より腐食防止性および欠陥性能が優れる結果が得られた。
この結果から、除電工程を経ることで、より腐食防止性および欠陥性能が優れることが分かった。
【0151】
<リサイクル試験および評価結果>
実施例6の各処理液について、それぞれ同じ処理液で上記各評価試験における各処理を25回連続して行った。その後、回収した液をタンクに入れなおし、その液で、再度上記評価をそれぞれ行った(つまり、処理液を換えずに25枚の被処理物を連続して処理し、26枚目の被処理物に対して上述の評価を行なうことで各種性能を評価した。)。
評価の結果、リサイクル試験をした場合と、リサイクル試験をしない場合で、各種評価結果は変わらないことが分かった。この結果から、本発明の処理液は繰り返し基板を処理する場合でも略性能の変化なく使用することでき、リサイクル性に優れることが分かった。
【符号の説明】
【0152】
1 基板
2 金属膜
3 エッチング停止層
4 層間絶縁膜
5 メタルハードマスク
6 ホール
10 積層物
11 内壁
11a 断面壁
11b 底壁
12 ドライエッチング残渣物
図1