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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】送気システム
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/172 20060101AFI20241007BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20241007BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20241007BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20241007BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241007BHJP
   G10K 11/175 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
G10K11/172
F24F1/02 411D
F24F13/06 E
F24F13/24 245
G10K11/16 100
G10K11/175
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022503091
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041826
(87)【国際公開番号】W WO2021171710
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2020030641
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】白田 真也
(72)【発明者】
【氏名】山添 昇吾
(72)【発明者】
【氏名】菅原 美博
(72)【発明者】
【氏名】大津 暁彦
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304623(JP,A)
【文献】特開平01-302060(JP,A)
【文献】特開平09-146562(JP,A)
【文献】特開2002-371998(JP,A)
【文献】特開2006-189000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0007
F24F 1/0059-1/008
F24F 1/02
F24F 1/032-1/0355
F24F 13/00-13/078
F24F 13/08-13/32
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内部に音源を備えた送気システム本体と、
前記筐体内の音源から発生する騒音を消音する消音装置と、を有する送気システムであって、
前記送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、
前記消音装置は、
前記送気システム内において前記音源がある空間に接続された位置に共鳴消音器と、
前記軸流ファンの回転軸の軸方向において互いに反対側に配置された第一端壁及び第二端壁と、を備え、
前記共鳴消音器は、開口部を備えた気柱共鳴型の共鳴器であり、
前記第一端壁及び前記第二端壁の各々の中央部分に通気孔が設けられており、
前記第二端壁における前記通気孔の周辺部分が、前記第一端壁側に窪んでおり、
前記第二端壁における前記通気孔の周辺部分が窪むことで設けられた凹部内に、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つによって構成された消音体が配置され、
前記消音体は、前記開口部よりも前記回転翼に近く、
前記共鳴消音器において前記騒音に作用する部分には、前記音源に最も近い部分としての前記共鳴消音器の端部があり、
前記共鳴消音器単独の共鳴波長をλとした場合に、前記共鳴消音器の端部と前記音源との距離がλ/2未満であり、
前記共鳴消音器の基本共鳴周波数が、前記筐体のサイズに応じて決まる音響上限周波数以下であることを特徴とする、送気システム。
【請求項2】
前記共鳴消音器の共鳴による消音である第一の消音、及び、前記騒音が前記共鳴消音器にて反射して生じる反射音と前記騒音とが前記音源と前記共鳴消音器の端部との間の領域で干渉することによる第二の消音により、前記騒音を消音し、
前記第二の消音の周波数が、前記第一の消音の周波数よりも高い、請求項1に記載の送気システム。
【請求項3】
前記共鳴消音器の内部が、前記音源がある空間と連通している、請求項1又は2に記載の送気システム。
【請求項4】
前記送気システムにおいて送気される空気を通過させるための通気部が設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項5】
前記共鳴消音器の内部に、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つからなる内挿物が配置されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項6】
前記共鳴消音器とは異なる消音体をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項7】
前記消音体は、前記音源と前記共鳴消音器の端部との間の領域内に配置されている、請求項6に記載の送気システム。
【請求項8】
前記消音体が、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つによって構成される、請求項6又は7に記載の送気システム。
【請求項9】
前記送気システムにおいて送気される空気を通過させるための通気部の外側に、前記消音体が配置されている、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項10】
前記送気システム本体が回転体の回転によって送気する、請求項1に記載の送気システム。
【請求項11】
前記筐体内の前記音源から発生する騒音は、前記回転体の回転に起因して生じる騒音を含む、請求項10に記載の送気システム。
【請求項12】
前記送気システム本体は、前記送気システム本体の第一端側から吸気し、前記送気システム本体の第二端側にて排気し、
前記消音装置が、前記送気システム本体の前記第一端及び前記第二端のうち、少なくとも前記第二端側に配置されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項13】
前記消音装置が、前記送気システム本体の前記第一端側及び前記第二端側のそれぞれに配置されている、請求項12に記載の送気システム。
【請求項14】
前記送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、
前記消音装置には、前記軸流ファンによって送気される空気を通過させるための通気部が設けられており、
前記通気部の、前記軸流ファンの回転軸に垂直な断面の面積は、前記回転翼において前記回転軸から最も離れた翼先端が前記軸流ファンの回転時に通過する軌道によって囲まれる円の面積よりも小さい、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項15】
前記送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、
前記消音装置が、前記共鳴消音器とは異なる消音体を備え、
前記消音体は、前記共鳴消音器の端部よりも前記回転翼に近い、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項16】
前記送気システム本体が送風機である、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の送気システム。
【請求項17】
前記送気システム本体内に熱交換器が設けられている、請求項16に記載の送気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内の音源から発生する騒音を消音する消音装置を備える送気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空調用の送風機のような送気システムにおいて、機械騒音等の騒音を提案するために、空気の流路(通気路)に消音器を配置することがある。その一例として、特許文献1に記載の技術が挙げられる。この技術は、電動送風機から発生する音を共鳴消音器によって消音するものである。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1の電動送風機は、複数のブレードを有するインペラと、インペラの周囲に配置された複数の静翼を有するエアガイドと、インペラが固定された回転軸を駆動する電動機と、インペラに気流を流入させる吸気口を中央に有し側面に排気口を備えインペラとエアガイドを内包する状態で電動機に固定された略円筒形のファンケースと、を備える。また、上記の電動送風機は、さらに、排気口を有し電動機全体を内包する状態でファンケースと気密に固定された防音筒と、所定の幅と深さを有する凹部を円周上に有し電動機表面の所定場所に設けた略円筒形の消音手段と、消音手段の凹部の開口端面に設けた柔軟性を有する薄膜部とを備える。このような構成により、上記の電動送風機では、凹部の深さに応じて決まる特定周波数の音が共鳴することで消音することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-036065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送気システムでは騒音が広帯域に亘って発生し、その騒音のうち、特に1kHz以下の低周波側の音については、多孔質材料等からなる従来型の吸音材では消音することが困難である。また、特許文献1に記載の共鳴消音器を含む通常の共鳴消音器では、共鳴周波数と一致する単一の周波数の音を消音するので、狭帯域な消音となる。つまり、通常の共鳴消音器では送気システムでの騒音を十分に消音することができず、そのために、低周波側の音を広帯域に消音する技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、送気システムが有する筐体内の音源から発生する騒音のうち、低周波側の音を広帯域で消音することができる消音装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の消音装置を備える送気システムを提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記の課題が解決されることを見出した。
【0008】
[1] 筐体を有する送気システムに用いられ、筐体内の音源から発生する騒音を消音する消音装置であって、送気システム内において音源がある空間に接続された位置に共鳴消音器を備え、共鳴消音器単独の共鳴波長をλとした場合に、共鳴消音器が音源から離れている距離がλ/2未満であり、共鳴消音器の基本共鳴周波数が、筐体のサイズに応じて決まる音響上限周波数以下であることを特徴とする消音装置。
[2] 共鳴消音器の共鳴による消音である第一の消音により、騒音を消音し、第一の消音が、共鳴消音器の基本共鳴である、[1]に記載の消音装置。
[3] 共鳴消音器において騒音に作用する部分には、音源に最も近い部分としての共鳴消音器の端部があり、第一の消音、及び、騒音が共鳴消音器にて反射して生じる反射音と騒音とが音源と共鳴消音器の端部との間の領域で干渉することによる第二の消音により、騒音を消音し、第二の消音の周波数が、第一の消音の周波数よりも高い、[2]に記載の消音装置。
[4] 共鳴消音器の内部が、音源がある空間と連通している、[1]乃至[3]のいずれかに記載の消音装置。
[5] 送気システムにおいて送気される空気を通過させるための通気部が設けられている、[1]乃至[4]のいずれかに記載の消音装置。
[6] 共鳴消音器の内部に、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つからなる内挿物が配置されている、[1]乃至[5]のいずれかに記載の消音装置。
[7] 共鳴消音器とは異なる消音体をさらに備える、[1]乃至[6]のいずれかに記載の消音装置。
[8] 共鳴消音器において騒音に作用する部分には、音源に最も近い部分としての共鳴消音器の端部があり、消音体は、音源と共鳴消音器の端部との間の領域内に配置されている、[7]に記載の消音装置。
[9] 消音体が、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つによって構成される、[7]又は[8]に記載の消音装置。
[10] 送気システムにおいて送気される空気を通過させるための通気部の外側に、消音体が配置されている、[7]乃至[9]のいずれかに記載の消音装置。
[11] 筐体の内部に音源を備えた送気システム本体と、[1]乃至[10]のいずれかに記載の消音装置と、を有する送気システム。
[12] 送気システム本体が回転体の回転によって送気する、[11]に記載の送気システム。
[13] 筐体内の音源から発生する騒音は、回転体の回転に起因して生じる騒音を含む、[12]に記載の送気システム。
[14] 送気システム本体は、送気システム本体の第一端側から吸気し、送気システム本体の第二端側にて排気し、消音装置が、送気システム本体の第一端及び第二端のうち、少なくとも第二端側に配置されている、[11]乃至[13]のいずれかに記載の送気システム。
[15] 消音装置が、送気システム本体の第一端側及び第二端側のそれぞれに配置されている、[14]に記載の送気システム。
[16] 送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、消音装置には、軸流ファンによって送気される空気を通過させるための通気部が設けられており、通気部の、軸流ファンの回転軸に垂直な断面の面積は、回転翼において回転軸から最も離れた翼先端が軸流ファンの回転時に通過する軌道によって囲まれる円の面積よりも小さい、[11]乃至[15]のいずれかに記載の送気システム。
[17] 共鳴消音器において騒音に作用する部分には、音源に最も近い部分としての共鳴消音器の端部があり、送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、消音装置が、共鳴消音器とは異なる消音体を備え、消音体は、共鳴消音器の端部よりも回転翼に近い、[11]乃至[16]のいずれかに記載の送気システム。
[18] 送気システム本体が送風機である、[11]乃至[17]のいずれかに記載の送気システム。
[19] 送気システム本体内に熱交換器が設けられている、[18]に記載の送気システム。
[20] 送気システム本体は、軸流ファンの回転翼を備え、共鳴消音器は、開口部を備えた気柱共鳴型の共鳴器であり、消音装置は、軸流ファンの回転軸の軸方向において互いに反対側に配置された第一端壁及び第二端壁を有し、第一端壁及び第二端壁の各々の中央部分に通気孔が設けられており、第二端壁における通気孔の周辺部分が、第一端壁側に窪んでおり、第二端壁における通気孔の周辺部分が窪むことで設けられた凹部内に、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちの少なくとも一つによって構成された消音体が配置され、消音体は、開口部よりも回転翼に近い、[11]乃至[19]のいずれかに記載の送気システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送気システムが有する筐体音源から発生する騒音のうち、低周波側の音を広帯域で消音することができる消音装置、及び、かかる消音装置を備えた送気システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る送気システムを模式的に示す斜視図である。
図2図1に図示の送気システムの正面図である。
図3図2におけるI-I断面を示す図である。
図4図2におけるJ-J断面にて消音装置を切断した際の切断面を示す図である。
図5】第一の変形例に係る送気システムの断面図である。
図6】第二の変形例に係る送気システムの断面図である。
図7】第三の変形例に係る送気システムの断面図である。
図8】構造モデルの説明図である。
図9】構造モデルを用いた場合(実施例1)における消音量のシミュレーション結果及び実測結果を示す図である。
図10】音響管モデル及び実機モデルのそれぞれにおける消音量のシミュレーション結果を示す図である。
図11】230Hzにおける音圧レベルの空間分布についてのシミュレーション結果を示す図である。
図12】403Hzにおける音圧レベルの空間分布についてのシミュレーション結果を示す図である。
図13】403Hzにおける音圧レベルの空間分布と対応する局所速度の分布を示す図である。
図14】本発明の消音装置による第一の消音及び第二の消音のそれぞれについて、内部音源の位置と共鳴消音器の端部との間隔を変えて計算した消音周波数を示す図である。
図15】本発明の消音器による第一の消音及び第二の消音のそれぞれについて、内部音源の位置と共鳴消音器の端部との間隔を変えて計算した消音量を示す図である。
図16】参考例1で用いた送気装置のモデルを示す図である。
図17】比較例1で用いた送気装置のモデルを示す図である。
図18】比較例2で用いた送気装置のモデルを示す図である。
図19】参考例1と比較例1の各々における音圧の測定結果を示す図である。
図20】比較例1と比較例2の各々における音圧の測定結果を示す図である。
図21】実施例1と比較例1の各々における音圧の測定結果を示す図である。
図22】参考例1における音圧についての参考計算の結果と実測結果とを示す図である。
図23】実施例1における音圧についての参考計算の結果と実測結果とを示す図である。
図24】実施例1と実施例2の各々における音圧のシミュレーション結果を示す図である。
図25】実施例1と実施例3の各々における音圧のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明は、そのような実施態様に限定されるものではない。
【0012】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「直交」、「平行」及び「垂直」とは、本発明が属する技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、「直交」には、厳密な直交に対して±10°未満の範囲内でずれた状態も含まれ、厳密な直交に対する誤差は、3°以下であることが好ましい。
また、以下の説明の中で言及する角度についても、厳密な角度に対して±10°未満の範囲内でずれることを許容し得る。
また、本明細書において、「同じ」、「同一」及び「一致」は、本発明が属する技術分野において一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0013】
[本発明の消音装置について]
本発明の消音装置は、筐体を有する送気システムに用いられ、筐体内の音源から発生する騒音を消音する消音装置である。また、本発明の消音装置は、送気システム内において音源がある空間に接続された位置に共鳴消音器を備えている。ここで、音源がある空間に共鳴消音器が接続されているとは、音源から発せられる騒音が伝達される空間(音場空間)内に共鳴消音器が存在していることを意味する。例えば、共鳴消音器が気柱共鳴型又はヘルムホルツ共鳴型の共鳴器である場合には、その開口部が筐体の内部と連通していることをいう。あるいは、共鳴消音器が膜型共鳴器である場合には、膜面が臨む空間と筐体の内部とが連通していることをいう。
なお、音源がある空間に共鳴消音器が接続されている態様には、その途中位置に多孔質吸音材、あるいは布及び不織布等の通気性がある材質からなる構造が介在していてもよい。
【0014】
なお、音源は、送気用のファンが設けられている系では、そのファンの回転翼の先端(以下では、翼先端とも言う)に位置する。ちなみに、音源の位置は、音響カメラによって音場空間を撮影することで特定することができる。また、音源と想定される位置(例えば、ファンの回転翼等)の近傍に通常のマイクロフォンを設置し、マイクロフォンの位置を変えながら音圧を測定し、音圧レベルが大きくなる位置から音源の位置を特定してもよい。
【0015】
また、本発明の消音装置では、上記の共鳴消音器単独の共鳴波長をλとした場合に、共鳴消音器が音源から離れている距離、すなわち共鳴消音器と音源との距離がλ/2未満である。
共鳴消音器単独の共鳴波長λは、単独の共鳴消音器に対して、平面波を入射させた場合の透過損失ピーク周波数をfr(Hz)として、λ=C0/frとして定義できる。ここで、C0は音速(m/s)である。実験的に音響平面波を使って消音器特性を測定する方法として、音響管法があり、透過損失は4マイクロフォン伝達関数法(ASTM2611Eに規定)によって測定することができる。測定した透過損失のピーク周波数から、基本共鳴周波数(すなわち、最低次の共鳴周波数)を求めて、上記の式より共鳴周波数λを求めることができる。
後に参照する図4に示すように、開口部を有し側壁部から共鳴消音器が形成されている場合には、その開口部のサイズの音響管を開口部に接続し、共鳴消音器が側壁部に存在する構成で測定することができる。同様に、通気部を空けて形成される共鳴消音器については、音響管に対して上記と同じ配置とすることで測定することができる。
また、共鳴消音器と音源との距離は、共鳴消音器の端部と音源との距離である。共鳴消音器の端部は、共鳴消音器において騒音に作用する部位の中で最も音源に近い位置にある部分である。共鳴消音器が気柱共鳴型又はヘルムホルツ共鳴型の共鳴器である場合には、その共鳴器が有する開口部の中で最も音源に近い部分が端部に該当し、共鳴消音器が膜型共鳴器である場合には、膜面の中で最も音源に近い部分が端部に該当する。
【0016】
また、本発明の消音装置では、上記の共鳴消音器の基本共鳴周波数(一次モードにおける共鳴周波数)が、筐体のサイズに応じて決まる音響上限周波数以下である。
音響上限周波数は、JIS A 1405-2:2007「音響管による吸音率及びインピーダンスの測定-第2部:伝達関数法」に規定されている。筐体が円管である場合には、その内径をd(m)とし、音速をc0(m/s)としたとき、音響上限周波数をfu(Hz)とすると、fu<0.58×c0/dという式が成立する。また、筐体が方形管である場合には、最大断面寸法をd(m)としたとき、fu<0.50×c0/dという式が成立する。
音響上限周波数は、平面波以外の音響モードが存在しない周波数の上限、すなわち平面波のみが伝搬できる周波数の上限を示す。なお、音響管だけでなく、本発明の筐体の形状を含む一般の伝搬管の固有音響モードは、管のサイズと形状で決まる。円管及び方形管については、上記の式で求められ、他の形状についても、例えば音響の有限要素法で管をモデル化し、固有値解析を行い最低次数の音響固有モードを求めることで、その周波数を音響上限周波数とすることができる。
【0017】
以上により、本発明の消音装置では、筐体内の音源から発せられた騒音のうち、1kHz以下の低周波側の音を広帯域に消音することができる。これは、本発明の消音装置は、共鳴消音器の共鳴を支配的な要因とする消音(以下、「第一の消音」と呼ぶ。)、及び、音源と共鳴消音器の端部との間の領域における近接場干渉を支配的な要因とする消音(以下、「第二の消音」と呼ぶ。)によって騒音を消音することによる。第一の消音は、共鳴消音器の基本共鳴、すなわち、最低次共鳴である。
【0018】
近接場領域は、音源から音が発生した極近傍の領域のことであり、遠方に伝播せずに減衰する高波数成分も減衰しない程度に音源近傍の領域である。ここで、音速をc0、その周波数をf0としたときに、対応する波数k0(=2π×f0/c0)を定義すると、波数k>k0となる高波数の範囲では、波動方程式から導かれるように空間的に且つ指数関数的に減衰する。この高波数成分を近接場音と呼ぶ。近接場領域は、近接場音も干渉に寄与する領域である。近接場音は、波長λ程度で減衰する。また、干渉のために音の往復が必要になるので、近接場領域を決定する場合の距離をλとするのではなく、λ/2とする。そのため、本実施形態では、送気システムにおける空気の流路に沿って音源からの距離がλ/2未満の領域が近接場領域に該当することとした。
近接場干渉とは、前述した近接場領域において生じる干渉であり、本発明においては音源と共鳴消音器との間での近接場音を含めた干渉を指す。すなわち、共鳴消音器の反射音と音源からの放射音の干渉である。近接場も含めた干渉によって、遠方場に対して干渉の効果が大きくなり、その干渉が音源に対して影響することにより、遠方場での干渉と比較して音源からの放射音を抑制することができる。
【0019】
また、第一の消音の周波数、及び、第二の消音の周波数は、互いに異なっているが、いずれも、筐体の形状及びサイズに起因して決まる筐体内での音圧分布(スペクトル)において、1kHz以下の低周波側で音圧が比較的高くなる周波帯域内にある。具体的に説明すると、第一の消音の周波数は、共鳴消音器の基本共鳴周波数であり、第二の消音の周波数は、第一の消音の周波数よりも高い周波数である(図10参照)。
なお、本発明の消音装置の消音メカニズムについては、後の項で改めて説明することとする。
【0020】
[本発明の送気システムの構成]
本発明の送気システムの構成について、図1~4に示す好適な具体例を挙げて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る送気システム(以下、送気システム10)を示す模式的な斜視図である。図2は、図1に図示の送気システム10の正面図である。図3は、図2におけるI-I断面を示す図である。図4は、図2におけるJ-J断面にて消音装置30を切断した際の切断面を示す図である。なお、図4では、後述する消音体40の図示を省略している。
【0021】
送気システム10は、所定の送気先に向けて送気するために用いられ、図1に示すように送気システム本体12と、消音装置30とを有する。
以下、送気システム本体12及び消音装置30の各々について説明する。
【0022】
(送気システム本体)
送気システム本体12は、図1及び3に示すように、音源を取り囲む筐体14を有し、筐体14内に備えられた回転体の回転によって送気する。例えば、送気システム本体12は、送風機、特に空調用の送風機であり、回転体として軸流ファン16を有する。
【0023】
軸流ファン16は、公知の軸流ファンであり、複数の羽根を有する回転翼16aを有する。回転翼16aは、複数の羽根を有し、図1及び3に示す回転翼16aは、例えば4枚の羽根を有する。ただし、羽根の枚数は、特に限定されない。回転翼16aの羽根の形状は、公知の軸流ファンで用いられる形状と同じ形状を採用することができる。
なお、以下では、回転軸16bの軸方向を単に「軸方向」と言い、回転軸16bの径方向を単に「径方向」と言う。
【0024】
筐体14は、箱型又は円筒形状のケーシングであり、軸流ファン16全体を取り囲むのに十分なサイズを有する。また、軸方向における筐体14の一端である第一端(厳密には、送気方向における上流側の端)には吸気口14aが設けられ、他端である第二端(厳密には、送気方向における下流側の端)には、円孔からなる排気口14bが設けられている。排気口14bの中心位置は、軸流ファン16の回転軸16bの中心線を延長させた際に、その延長した中心線上に位置する。
なお、吸気口14aと排気口14bとは、互いに同一サイズであってもよく、あるいは互いに異なるサイズであってもよい。
【0025】
また、筐体14の内部(すなわち、送気システム本体12内)において、軸流ファン16の上流側には、図1及び3に示す熱交換器18が配置されている。熱交換器18は、例えば、フィンコイル、フィンチューブ又は熱交換プレートによって構成され、吸気口14aから筐体14内に進入した空気との間で熱交換し、当該空気を加温又は減温する。熱交換器18は、上記の通り、風及び空気を通気させる部材であるため、音も遮ることなく通過させる。
【0026】
以上のように構成された送気システム本体12では、軸流ファン16が不図示のモータによって回転させて空気に運動エネルギーを与えることで、空気が回転軸16bの軸方向に送気される。このとき、送気システム本体12は、第一端側に設けられた吸気口14aから吸気し、吸気した空気を熱交換器18によって加温又は減温し、第二端側に設けられた排気口14bを通じて排気する。この結果、温調された空気が所定の送気先に向けて供給される。
なお、送気システム本体12の付属品として、送気先に延出した筒型アダプタ(不図示)を排気口14bに取り付け、このアダプタを通じて送気してもよい。
【0027】
そして、送気システム本体12では、筐体14内で軸流ファン16が回転すると、回転翼16aの翼先端から、回転する翼が空気を切ることに起因した騒音(流体機械騒音又は空力騒音と呼ばれる騒音)が発生する。つまり、筐体14内の音源から発生する騒音は、回転体である軸流ファン16の回転に起因して生じる騒音を含んでいることになる。
なお、回転翼16aの翼先端とは、回転翼16aにおいて回転軸16bから最も離れた部位である。
【0028】
上記の騒音は、送気される空気とともに、排気口14bを通過して筐体14の外に放出される。また、筐体14内で軸流ファン16が回転することによって生じる騒音は、低周波側で広帯域に亘って音圧が大きくなる(ブロードな音圧分布となる)。
他方、図1及び3に示すように、筐体14の下流型の壁面(すなわち、送気システム本体12の第二端側)には消音装置30が取り付けられており、排気口14bを通過した上記の騒音は、この消音装置30によって消音され、主として低周波側の音圧が低減される。
【0029】
なお、上記の例では、送気システム本体12が送風機であることとしたが、これに限定されず、送気システム本体が圧縮機、排風機又は真空ポンプ等であってもよい。また、送気システム本体12は、様々の用途に利用可能であり、例えば、冷暖房用のエアコンの室内機及び室外機、カーエアコン、空気清浄機、換気扇、扇風機、サーキュレーター、除湿器、加湿器、ジェットエンジン、コンピュータ又はサーバコンピュータ等の冷却用ファン、その他の冷却用ファン、及び風車等としての利用が挙げられる。
また、上記の例では、送気システム本体12が備える回転体が軸流ファン16であるが、回転体としてのファンは、例えば、遠心ファン、後向きファン(ターボファン)、翼形ファン、ラジアルファン、バドルファン、多翼ファン(シロッコファン)、チューブラ遠心ファン、斜流ファン、軸流ファン、ベーン軸流ファン、チューブ軸流ファン、プロペラファン、反転軸流ファン、横断流ファン(クロスフローファン)、又は渦流ファン等であってもよい。
また、回転体はファンに限定されず、ターボ圧縮機及びターボブロアに用いられるブロア、あるいはコンプレッサー等であってもよい。また、当然ながら、上述した種類以外の回転体を用いた送気システム本体であってもよい。
【0030】
(消音装置)
消音装置30は、送気システム本体12の筐体14内にある音源が発する騒音、具体的には、軸流ファン16の回転翼16aが回転時に空気を切ることに起因した騒音(流体機械騒音又は空力騒音)を消音する。
消音装置30は、正面視では図2に示すように略矩形状であり、平面視では図4に示すように凹型形状である。消音装置30は、少なくとも送気システム本体12の第二端側に配置され、筐体14の排気側の端面に対して取り付けられている。なお、図1に示す形態とは異なる形態ではあるが、消音装置30が送気システム本体12の第一端側及び第二端側のそれぞれに配置されてもよい。
【0031】
消音装置30は、通気用の空洞部分(つまり、後述の通気部32)を有し、この空洞部分が筐体14の内部と連通した状態で筐体14に取り付けられて固定されている。消音装置30を筐体14に固定する手段は、特に限定されず、例えば、筐体14の端面に接着剤又は接着テープ等にて消音装置30を接着させてもよく、あるいは、ネジ又はボルト等の締結具によって消音装置30を筐体14に固定してもよい。また、消音装置30及び筐体14の一方に突起等の凸部を設け、他方に挿し込み孔等の凹部を設けて、凸部を凹部に挿し込んで両者を係合させることで消音装置30を筐体14に固定してもよい。また、筐体14の排気口14bに対して筒型アダプタを取り付けた場合には、その筒型アダプタを消音装置30の空洞部分に嵌め込むことで、消音装置30を筐体14に固定してもよい。
【0032】
消音装置30は、図3に示すように、消音装置30を軸方向に貫通した空洞部分からなる通気部32と、通気部32の周囲に配置された共鳴消音器34とを有する。共鳴消音器34は、例えば気柱共鳴型の共鳴器であり、図3に示す形態では、その内部空間をなす管路がL字状に屈曲しており、径方向外側に延びてから略垂直に曲がり、軸方向に沿って延びている。
【0033】
本実施形態の消音装置30は、第一端壁36と第二端壁37と側壁38とを有し、これらの壁を利用して気柱共鳴型の共鳴器が構築されている。具体的に説明すると、第一端壁36は、消音装置30の排気側(軸方向において筐体14とは反対側)の端位置に配置された矩形板である。第二端壁37は、第一端壁36とは反対側(筐体14側)の端位置に配置され、第一端壁36と外縁が同サイズの矩形板である。側壁38は、軸方向において第一端壁36と第二端壁37とを連結する角筒型の部分である。
【0034】
第一端壁36及び第二端壁37の各々の中央部には、図2及び図3に示すように、円又は矩形状の通気孔36a、37aが設けられている。消音装置30の軸方向両端の間で延在している略円柱型の空洞部分が、通気部32をなしている。なお、通気孔36a、37aの各々の中心位置は、同一直線上にあり、例えば、軸流ファン16の回転軸16bの中心線を延長させた際に、その延長線上に位置するとよい。また、二つの通気孔36a、37aは、互いに同径であると好ましいが、互いに異径であってもよい。
【0035】
第二端壁37の通気孔37aの周辺部分は、図4に示すように第一端壁36側に向かって窪んで凹みをなしている。以上のように構成された第一端壁36と第二端壁37と側壁38とにより、L字形の管路断面をなす気柱共鳴型の共鳴器が構成される。つまり、第一端壁36及び第二端壁37が、軸方向における気柱共鳴型の共鳴器の両端をなす。
なお、第二端壁37のうち、軸方向において最も軸流ファン16側に位置する部分は、送気システム本体12の筐体14の外壁(詳しくは、排気側の外壁)を利用することで構成されてもよい。
【0036】
また、第一端壁36の通気孔36aの縁部分と第二端壁37の通気孔37aの縁部分との隙間は、図3及び4に示すように、気柱共鳴側の共鳴器の開口部35をなす。開口部35は、気柱共鳴型の共鳴器において騒音に作用する部分に該当する。また、開口部35における最も音源に近い側の端は、共鳴消音器34の端部に相当する。また、軸流ファン16の回転翼16aの翼先端、すなわち音源と共鳴消音器34の端部との距離(軸方向での間隔)は、前述したようにλ/2未満であり、より好ましくはλ/4未満であるとよく、特に好ましくはλ/6以下であるとよい。
【0037】
共鳴消音器34の内部空間は、第一端壁36と第二端壁37と側壁38により囲まれた空間であり、開口部35を通じて、筐体14の内部、すなわち音源がある空間と連通している。そして、送気システム本体12側で発生した騒音は、開口部35を通じて共鳴消音器34内に進入する。
【0038】
通気部32は、送気システム10において送気される空気、具体的には軸流ファン16の回転によって発生した気流を通過させるために設けられた空洞部分であり、図3及び4に示すように消音装置30を貫通している。通気部32は、軸方向に沿って真っ直ぐ延び、送気システム本体12の筐体14内と連通しており、図3に示すように筐体14の排気口14b(排気側の開口)に接続されている。
【0039】
通気部32は、排気口14bと同径、あるいは排気口14bよりも小径である。また、通気部32の径は、図3に示すように、軸流ファン16の回転翼16aの外径と略同一であってもよい。ここで、回転翼の外径とは、軸流ファン16の回転翼16aの翼先端が軸流ファン16の回転時に通過する軌道によって囲まれる円(以下、便宜的に軌道円と言う)の径である。換言すると、通気部32の断面の面積(厳密には、軸流ファン16の回転軸16bに垂直な断面の面積)は、軌道円の面積と同じ面積であってもよい。
なお、図5に示すように、通気部32の断面の面積が軌道円の面積よりも小さくてもよい。この場合には、断面積の低下によって騒音量が下がる効果があり、中間部分の形状を工夫することで、軸流ファン16が発生する気流の流れをできるだけ阻害せずに、送気量を確保することができる。例えば、消音体40の形状、又は、壁の形状を軸流ファン16から通気部32まで斜めの構造(例えばテーパ形状)により連続的につなぐことが望ましい。
【0040】
共鳴消音器34は、通気部32を取り囲む位置に配置され、通気部32における空気の流れを遮らない位置に配置されている。また、共鳴消音器34の開口部35は、径方向において通気部32と対向する位置に配置されており、通気孔36a、37aの縁に沿って円環状に連続して設けられている。ただし、これに限定されず、開口部35は、通気部32の周方向(通気孔36a、37aの縁に沿う方向)において一定のピッチで不連続に形成されてもよい。
【0041】
また、共鳴消音器34は、気柱共鳴型の共鳴器に限られず、ヘルムホルツ共鳴型の共鳴器でもよい。共鳴消音器34が気柱共鳴型となるかヘルムホルツ共鳴型となるかは、上述した開口部35のサイズ及び位置、並びに、共鳴器の内部空間の大きさ等に応じて決まる。したがって、これらを適宜調整することで、気柱共鳴とヘルムホルツ共鳴のいずれの共鳴構造とするかを選択することができる。
【0042】
なお、共鳴消音器34が気柱共鳴型である場合は、開口部35が狭いと音波が開口部35で反射して内部空間内に音波が進入し難くなるため、開口部35がある程度広いことが好ましい。具体的には、開口部35の幅(軸方向に沿う長さ)が1mm以上であるのが好ましく、3mm以上であるのがより好ましく、5mm以上であるのがさらに好ましい。開口部35が円形である場合には、直径が上記範囲であるのが好ましい。
【0043】
また、共鳴消音器34は、膜型共鳴型の共鳴器であってもよい。この場合、共鳴消音器34は、枠体と、枠体に振動可能な状態で支持された膜とを有し、枠体及び膜に囲まれた背面空間を備え、膜が振動することで共鳴する。膜型共鳴型の共鳴器は、通気部32における空気の流れを遮らない位置に配置され、膜が軸方向と略平行となり、且つ径方向内側を向いて配置されている。
【0044】
なお、共鳴消音器34は、気柱共鳴型の共鳴器、ヘルムホルツ共鳴型の共鳴器及び膜型共鳴器のうちのいずれか一つであってもよく、これらのうちの2つ又は3つを組み合わせたものであってもよい。
【0045】
ここで、共鳴消音器34が膜型共鳴型又はヘルムホルツ共鳴型の共鳴器である場合の各部分の材料(例えば、第一端壁36と第二端壁37と側壁38)、及び、共鳴消音器34が膜型共鳴器である場合の枠体の材料を、まとめて「枠材料」と呼ぶこととする。枠材料としては、金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、及び、カーボンファイバ等を挙げることができる。
金属材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、銅、ステンレス、及び、これらの合金等の金属材料を挙げることができる。また、いわゆる板金を加工して枠材料の形状を構成することもできる。
樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミドイド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルフォン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリイミド、ABS樹脂(アクリロニトリル(Acrylonitrile)、ブタジエン(Butadiene)、スチレン(Styrene)共重合合成樹脂、ポリプロピレン、及び、トリアセチルセルロース等の樹脂材料を挙げることができる。
強化プラスチック材料としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)、及び、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)を挙げることができる。
天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、及び、シリコーンゴム等、並びにこれらの架橋構造体を含むゴム類を枠材料として利用してもよい。
また、ハニカムコア材料を枠材料として用いることもできる。ハニカムコア材料は、軽量で高剛性材料として用いられているため、既製品の入手が容易である。具体的には、アルミハニカムコア、FRPハニカムコア、ペーパーハニカムコア(新日本フエザーコア株式会社製、昭和飛行機工業株式会社製など)、及び、熱可塑性樹脂のハニカムコア(岐阜プラスチック工業株式会社製TECCELLなど)をはじめ、様々な素材からなるハニカムコア材料を枠材料として利用することが可能である。
また、空気を含む構造体、具体的には発泡材料、中空材料又は多孔質材料等を枠材料として用いてもよい。多数の共鳴器を構成する場合において、共鳴器間で通気させないためには、例えば独立気泡の発泡材料等を用いるとよい。具体的には、独立気泡ポリウレタン、独立気泡ポリスチレン、独立気泡ポリプロピレン、独立気泡ポリエチレン、及び、独立気泡ゴムスポンジなど様々な素材を選ぶことができる。独立気泡体を用いることで、連続気泡体と比較すると音、水及び気体等を通さず、また構造強度が大きいため、枠材料として用いるには適している。なお、多孔質吸音体が十分な支持性を有する場合は、枠材料として多孔質吸音体のみを用いてもよい。以上のように内部に空気を含む構造体を枠材料として用いることで消音装置30がより軽量化されるとともに、消音装置30に断熱性を付与することができる。
【0046】
また、共鳴消音器34が膜型共鳴器である場合に、膜の材料としては、金属材料、樹脂材料、強化プラスチック材料、カーボンファイバ、及びゴム類を用いることができる。
【0047】
また、図6に示すように、共鳴消音器34の内部に、吸音性の内挿物39が配置されてもよい。これにより、前述した第一の消音及び第二の消音以外の周波数の音を広帯域に消音することができる。
内挿物39は、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちのいずれか一つであってもよく、又は二つ以上を組み合わせたものであってもよい。内挿物39をなす材料としては、公知の材料を利用することができる。一例としては、発泡ウレタン、軟質ウレタンフォーム、木材、セラミックス粒子焼結材、フェノールフォーム等の発泡材料及び微小な空気を含む材料、グラスウール、ロックウール、3M社製シンサレート等のマイクロファイバー、フロアマット、絨毯、メルトブローン不織布、金属不織布、ポリエステル不織布、金属ウール、フェルト、インシュレーションボード、ガラス不織布等のファイバー及び不織布類材料、木毛セメント板、シリカナノファイバーなどのナノファイバー系材料、並びに石膏ボード等が挙げられる。
【0048】
また、消音装置30は、図3に示すように、共鳴消音器34とは異なる消音体40をさらに有する。消音体40は、吸音によって消音する部品である。具体的には、消音体40は、前述の内挿物39と同様、発泡材料、不織布及び多孔質材料のうちのいずれか一つであってもよく、又は二つ以上を組み合わせたものであってもよい。消音体40の具体的な材料は、上記で挙げた内挿物39の材料と同じ材料が利用可能である。
【0049】
消音体40は、図3に示すように、通気部32の径方向外側に配置され、通気部32における空気の流れを遮らない位置に配置されている。具体的には、軸方向において軸流ファン16の回転翼16a(すなわち、音源)と共鳴消音器34の端部との間の領域の中に、消音体40が、通気部32を取り囲むように配置されている。上記の領域に配置された消音体40は、共鳴消音器34の端部を含む開口部35よりも回転翼16aに近い位置にある。
【0050】
また、消音体40の設置による消音装置30の大型化を抑える目的から、共鳴消音器34を構成する第二端壁37において通気孔37aの周辺部分を窪ませることで設けられた凹部内に消音体40を配置してもよい。これにより、消音体40をコンパクトに設置することができる。
【0051】
また、円環状に成型された消音体40を用いることで、通気部32の周方向に連続した消音体40を配置してもよい。この場合、消音体40の中心部の貫通孔40aが図3に示すようにストレートな孔でもよく、あるいは図7に示すようにテーパ状の孔でもよい。
なお、消音体40は、通気部32の周方向において一定のピッチで不連続に設けられてもよい。
【0052】
[本発明の消音装置の消音メカニズムについて]
本発明の消音装置30の消音メカニズムを解明する目的で、以下に説明する構造モデルを作成し、共鳴消音器34の消音量をシミュレーションによって求めた。なお、構造モデルは、後述する実施例1の実機に対応するものである。
【0053】
<構造モデルについて>
構造モデルは、図8に示す送気システム10のモデルである。送気システム10が有する送気システム本体12としては、ダイキン工業株式会社製のエアコン「MULTICUBE(マルチキューブ)」を想定した。この装置は、内部に熱交換器を有するパーソナルエアコンであり、送風は、回転翼の直径が310mmである軸流ファン16を用いて行われる。
筐体サイズは、横550mm×高さ360mm×奥行400mmであり、排気側には直径350mmの開口部(すなわち、排気口14b)が設けられている。なお、オプション品を用いれば、開口部の直径を250mmに変換することもできる。
【0054】
また、構造モデルでは、上記のエアコンの筐体の排気側に、L字状の気柱共鳴構造をなす共鳴消音器34を有する消音装置30を取り付けた。具体的には、図8に示すように、筐体14の開口部に長さ70mmの円筒型の内筒を取り付け、その端部に、直径250mmの開口を有する外径350mmの円環状プレートを取り付けた。円管状プレートは、アクリル製の板であり、その厚みは、5mmでる。内筒の内側空間は、通気部32をなし、上記のエアコンから風が流れる。なお、上記のエアコンにおける送風の強度は、Highモードとした。
【0055】
さらに、図8に示すように、筐体14の外縁に角筒型の外筒を取りつけ、その端部(筐体14と反対側の端部)に、直径250mmの開口を有する横550mm×縦360mmの長方形プレートを取り付けた。これにより、L字状の気柱共鳴構造をなす共鳴消音器34が、排気口14bと通気部32とを合わせた状態で筐体14の排気側先端に配置される。
なお、共鳴消音器34の各部の寸法値(具体的には、図4中、記号d1、d2、h、t1、t2及びwにて示す値)は、以下の通りとした。
d1=250mm、d2=350mm、h=360mm
t1=60mm、t2=70mm、w=550mm
【0056】
さらにまた、図8に示すように、上記の内筒の内部に、外径350mmであり中央部に250mmの開口を有する円環状の吸音ウレタンを配置した。この吸音ウレタンは、消音体40をなし、厚みが70mmであり、流れ抵抗が10^4Raylsである。吸音ウレタンは、図8に示すように、気柱共鳴型の共鳴消音器34においてL字形に屈曲した角部に収まるように配置した。
【0057】
<シミュレーション結果について>
上記の構造モデルと用いたシミュレーションの結果を図9に示す。図9に示すように、シミュレーションされた消音量は、実測値(詳しくは、後に説明する実施例1の実測結果)と良好に対応している。また、シミュレーション結果から、低周波領域で複数ピークを持つ広帯域化した消音効果が得られることが明らかとなった。
【0058】
ここで、筐体14内の音源(以下、内部音源とも言う)の効果を切り分けることを目的として、φ250mmの音響管に上記の共鳴消音器34が設置された系における消音量について、シミュレーションモデル(以下、音響管モデルと言う)を構築して計算した。すなわち、入射波を遠方からの平面波として音の透過率と反射率を求め、さらに、吸収と透過損失を算出した。また、内部音源がある実機モデル(上記の構造モデルから消音体40を除いたモデル)に共鳴消音器34を設置した場合の消音効果についても別途計算した。それぞれの消音量の計算結果を図10に示した。
【0059】
音響管モデルでは、単一のピーク周波数での消音効果が示された。これは、通常の共鳴器でも一般的に見られる傾向である。一方、実機モデルでは、互いに異なる複数の周波数、具体的には230Hz付近と400Hz付近で消音ピークが示された。
以上の結果より、本発明の特徴である、低周波領域における消音の広帯域化は、内部音源系に共鳴消音器34を取り付けることで発現されることが分かった。このメカニズムを調べるため、二つの消音ピークにおける音響特性(音圧、及び局所速度)の空間分布を計算した。
【0060】
まず、230Hzにおける音圧レベルの空間分布を図11に示す。図11において、上側が排気側であり、下側が吸気側である。図11から分かるように、L字状の共鳴消音器34の内部では音圧が高まり、消音装置30の排気側の開口付近では音圧が小さくなっていた。このことから、共鳴消音器34にて共鳴現象が生じ、送気システム12の外に放射される音成分を、共鳴消音器34からの放射音が打ち消したものと推察される。よって、より低周波側である230Hzでの消音ピークは、共鳴消音器34の共鳴特性が支配的であることが分かった。
【0061】
次に、403Hzにおける音圧レベルの空間分布を図12に示し、対応する局所速度の分布を図13に示した。図12から分かるように、L字状の共鳴消音器34の内部では、相対的に大きな音圧ではなく、単純な共鳴現象ではなかった。図13によると、上下方向(すなわち、軸方向)に関して、内部音源からの局所速度の位相と、共鳴消音器34から放射される反射音の局所速度の位相とが反転しているため、打ち消し合いの干渉が生じたことが分かった。このとき、内部音源の位置と共鳴消音器34の端部の位置との間にある領域(以下、便宜的に「中間層」とも言う)において音が滞留して閉じ込められることで、外部に音が放射され難くなったと推察される。このことは、図12において中間層の音圧が大きくなっていることとも整合する。
【0062】
以上までに説明した通り、本発明による低周波領域での消音の特性は、共鳴消音器34の共鳴現象が支配的となる230Hz付近での第一の消音と、中間層での近接場干渉(音の閉じ込め)が支配的となる403Hz付近での第二の消音とにより、広帯域化していることが分かった。
【0063】
ここで、第二の消音では、内部音源の位置と共鳴消音器34の端部との間隔、すなわち中間層の厚みが重要になるため、中間層の厚みをパラメータとして、第一の消音及び第二の消音のそれぞれについて、消音の周波数と消音量とを計算した。なお、L字状の共鳴消音器34は、上記の構造モデルと同様に筐体14の排気口14b側にあり、中間層の厚みを変化させた。
上記の計算結果について図14に消音周波数を、図15に消音量を、それぞれ示した。なお、各図中のλは、音響管で測定した共鳴消音器34単独での共鳴波長を表す。
【0064】
中間層の厚みを大きくするほど、第一の消音における消音量は、漸次的に小さくなる。すなわち、低周波側に位置する共鳴に関しては、共鳴消音器34の端部が内部音源近傍に配置されている方が、消音量がより大きくなることが分かった。さらに、中間層の厚みがλ/4程度より大きくなると、第二の消音における消音量も漸次的に小さくなる。そして、中間層の厚みが約λ/2になると、第一の消音における消音量が1dB未満となり、本発明の効果である広帯域な消音効果がほぼ得られなくなる。また、中間層を厚くするほど、消音装置が大型化してしまう。
以上より、中間層の厚みがλ/2未満であることが、本発明の広帯域消音効果を得るために必要な条件であると考えられる。また、第二の消音における消音量の大きさを考慮すると、中間層の厚みは、λ/4未満であることがより望ましい。
【実施例
【0065】
以下、本発明について、後述する実施例1~3によって具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す実施例によっては限定的に解釈されるべきものではない。
【0066】
[実施例1]
実施例1は、図8に示す上述の構造モデルと同じ構造を実機として採用した。なお、実験1では、内部音源の位置と共鳴消音器34の端部の位置との間隔、すなわち中間層の厚みを120mmとした。
【0067】
[参考例1]
参考例1では、図16に示す送気装置52を用いた。この送気装置52は、実施例1における送気システム本体12を構成するエアコン(ダイキン工業株式会社製のMULTICUBE)からなり、その筐体14の排気口14b(直径350mm)に、長さ70mmの筒体54を取り付けただけの構成とした。すなわち、参考例1には、実施例1の消音装置が設けられていないこととした。それ以外は、実施例1と同様の条件とした。
なお、図16に示す送気装置52のうち、実施例1と同じ部品については、図8で付した符号と同じ符号が付されている。
【0068】
[比較例1]
比較例1では、図17に示すように、参考例1における筒体54の端部に、直径250mmの開口を有する外径350mmの円環状プレート56を取り付けた。すなわち、排気側の開口を250mmに狭めて、それ以外の条件については参考例1と同様の条件とした。
なお、図17に示す装置のうち、参考例1と同じ部品については、図16で付した符号と同じ符号が付されている。
【0069】
[比較例2]
比較例2では、図18に示すように、比較例1の装置における筒体54の内部に、外径350mmであり中央部にφ250mmの開口を有する円環状の吸音ウレタン58を配置した。すなわち、比較例1の筒体54の内部において、排気側の開口よりも外側の領域に吸音ウレタン58を充填した。吸音ウレタン58は、厚みが70mmであり、流れ抵抗が10^4Raylsである。
【0070】
(音の測定)
実施例1、参考例1及び比較例1~2のそれぞれにおいて、エアコンを運転して軸流ファン16を回転させて音響測定を行った。音響測定は、排気側の開口の中央部から奥行き方向及び高さ方向に、それぞれ1mずらした位置にマイクを配置し、風を直接受けない位置で音圧を測定した。
【0071】
参考例1と比較例1の各々の測定結果を図19に示す。排気側の開口径を狭めることにより、高周波側の騒音は低減したが、450Hz付近における狭帯域の騒音(音圧が大きい騒音)を含め、低周波側の騒音が残っていた。
【0072】
比較例1と比較例2の各々の測定結果を図20に示す。比較例2では、比較例1と比べて、1kHz以上の高周波側の音が吸音ウレタン58の効果によって騒音が低減したものの、低周波側の騒音については、比較例1と比べて小さくならず、周波数によっては増大する傾向にあった。
【0073】
実施例1と比較例1の各々の測定結果を図21に示す。実施例1では、排気側の開口径が同径である比較例1と比較して、600Hz以上の領域の騒音を低減するとともに、他の例(参考例1、比較例1及び比較例2)で低減できていなかった450Hz付近の帯域の騒音も消音することができた。
また、実施例1、参考例1及び比較例1~2のそれぞれについて、全周波数帯の騒音量をA特性音圧レベルにて評価し、さらに、参考例1との騒音量との差分を求めて表1に示した。A特性音圧レベルは、周波数可聴域全帯域に対して、人の耳の感度を考慮した補正であるA特性補正を行って音量を積分したときの騒音レベル(単位dBA)である。
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示すように、共鳴消音器34を設けることにより、元の状態(参考例1)に対して騒音量を5.7dBA低減し、排気側の開口径が同径である比較例1に対しては4.3dBA低減することができた。一般に、3dBAの差があると一般人の聴覚でも違いを十分に認識できるとされるため、実施例1では、排気側の開口径を保ちながら高い消音効果を示した。また、比較例2のように通常の吸音材(具体的には、吸音ウレタン58)だけを用いても比較例1との差は0.9dBAであるのに対し、実施例1では、共鳴消音器34の効果によって大きな消音効果が得られることが分かった。
なお、音圧測定時に測定マイクの配置位置にて音を録音して聞き比べたところ、実施例1と比較例1及び2との差は、十分に認識することができた。
【0076】
(参考計算と実験結果との比較)
上述した音圧測定実験と対応する参考計算を行った。具体的には、参考例1、比較例1~2及び実施例1のそれぞれについて、有限要素法の計算ソフト「COSMOL Multiphysics」を用いて、軸流ファンを収容する筐体をモデル化した。そして、軸流ファンを内部音源とみなして、軸流ファンの回転翼の翼先端に双極子音源を配置し、音圧分布を計算した。また、計算結果を検証するため、音圧分布の測定実験を半無響室音で行った。
【0077】
元の状態、すなわち排気側の開口径がφ350mmである参考例1に相当する状態について、参考計算と実験のそれぞれの結果を図22に示す。両結果の比較から分かるように、参考計算の結果が実験結果を良好に再現することが分かった。
【0078】
同様に、共鳴消音器を配置した状態、すなわち実施例1に相当する状態について、参考計算と実験のそれぞれの結果を比較すると、図23に示すように、参考計算の結果が実験結果を良好に再現することが分かった。
以上のように、参考計算について半無響室を用いた実験との比較検証を行った結果、参考計算が実験(実測)を十分な精度で再現できることが示された。
【0079】
また、参考例1、比較例1~2及び実施例1のそれぞれの機器構成をモデル化して計算を行ったところ、通常の実験室における実験結果として得られるスペクトルの概形及び消音量がそれぞれよく再現された。なお、消音量の計算結果を表2に示した。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例1では、低周波領域に複数の消音ピークを有することで広帯域な消音を示していることが特徴である。図9には、共鳴消音器を設置した場合、すなわち実施例1の消音量についての実測値とシミュレーション結果を示す。なお、図9では、共鳴消音器を設置した騒音レベルを、共鳴消音器の入り口を壁で塞いで騒音レベルから引き算して評価したときの値で表している。図9に示すように、共鳴消音器を設置した場合には200Hz付近と、350-500Hz付近に消音ピークが現れた。
【0082】
また、実施例1に対応するモデル(すなわち、図8に示す構造モデル)を作成し、共鳴消音器の消音量をシミュレーションによって求めたところ、シミュレーションされた消音量が実験値と良好に対応していることが分かった(図10参照)。そして、シミュレーションからも、実施例1に対応する構造モデルにおいて低周波領域で複数ピークを持つ広帯域化した消音効果が得られることが確認された。
【0083】
[実施例2]
実施例1では、図24に示すように、400Hz付近に騒音の大きな領域が残っていた。実施例2では、その周波数帯域に共鳴周波数を合わせた第二の共鳴消音器を取り付けることでさらなる消音対策を実施した。
具体的には、第二の共鳴消音器を実施例1の排気側に追加して取り付けて、消音効果のシミュレーションを行った。第二の共鳴消音器は、L字状の気柱共鳴消音器とは異なる、真っ直ぐに延びた直線型の気柱共鳴器であり、詳しくは550mm×360mm×60mmの板で囲まれた中空構造体で、両面の板の中央部にφ250mmの貫通穴が穿設されたものである。
【0084】
実施例2での音圧レベルのシミュレーション結果を図24に示す。第二の共鳴消音器の追加により、400Hz付近の消音を達成することができた。このように、共鳴消音器を多段化して設けることで、より広帯域な消音効果を得ることができる。
【0085】
[実施例3]
実施例3では、長さ60mmで、内径が250mmの筒体を実施例1の排気側開口に取り付けた。元の構造(比較例1)では、排気側開口に厚み5mmのプレートのみが設けられていたため、筐体内部で音が散乱し、高角度となった音も外部(筐体の外)に放射されていた。これに対して、排気側開口に筒体を取り付けることで、高角度の音をカットする効果が期待される。
【0086】
図25に、実施例1での音圧レベル、及び、筒体を取り付けた実施例3での音圧レベルのそれぞれについて、実測したスペクトルを示す。図25から分かるように、筒体を取り付けることで、期待された効果が得られ、高いピークを中心として全体的に音圧レベルを低減させることができる。
【0087】
以上までに説明してきたように、実施例1~3は、本発明の範囲にあり、いずれの例においても、内部音源からの騒音を低周波側で広帯域に消音するものであるから、本発明の効果は明らかである。
【符号の説明】
【0088】
10 送気システム
12 送気システム本体
14 筐体
14a 吸気口
14b 排気口
16 軸流ファン
16a 回転翼
16b 回転軸
18 熱交換器
30 消音装置
32 通気部
34 共鳴消音器
35 開口部
36 第一壁
36a 通気孔
37 第二壁
37a 通気孔
38 側壁
39 内挿物
40 消音体
40a 貫通孔
52 送気装置
54 筒体
56 円環状プレート
58 吸音ウレタン
図1
図2
図3
図4
図5
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25