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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】水溶性金属加工油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/00 20060101AFI20241007BHJP
   C10M 133/08 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 133/10 20060101ALN20241007BHJP
   C10M 129/28 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241007BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
C10M173/00
C10M133/08
C10M133/06
C10M133/10
C10M129/28
C10N40:22
C10N40:24 Z
C10N30:00 A
C10N30:04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022507301
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021010018
(87)【国際公開番号】W WO2021182605
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020044069
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100114409
【弁理士】
【氏名又は名称】古橋 伸茂
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰悟
(72)【発明者】
【氏名】浅田 佳史
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156594(JP,A)
【文献】特開2012-082208(JP,A)
【文献】特開2002-285186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミン(A)、及び、分子中に水酸基を3つ有する第3級脂肪族モノアミン(B)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)を含み、
成分(A)が、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有する第2級モノアミン(A1)を含む、水溶性金属加工油組成物
【請求項2】
成分(A)と成分(B)との含有量比[(A)/(B)]が、モル比で、0.1~5.0である、請求項1に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量基準で、0.1~20質量%である、請求項1又は2に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量基準で、0.1~25質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項5】
モノアミン(A)が有する前記鎖式炭化水素基が、炭素数4以上のアルキル基、下記一般式(a-i)で表される基、又は下記一般式(a-ii)で表される基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化1】

(上記式(a-i)中、A及びAは、それぞれ独立して、アルキレン基であり、A及びAのアルキレン基の合計炭素数は4以上であり、pは0又は1である。
上記式(a-ii)中、Aは、アルキレン基、Rは、水素原子又はアルキル基であり、q及びrは0~3の整数であり、q+r=3である。ただし、上記式(a-ii)で表される基の炭素数は4以上である。*はモノアミン(A)の窒素原子との結合位置を示す。)
【請求項6】
第2級モノアミン(A1)が、下記一般式(a-1)で表されるモノアミンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化2】

(上記式(a-1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水酸基を有してもよいアルキル基であって、RおよびRの少なくとも一方は、水酸基を有してもよい炭素数4以上のアルキル基である。)
【請求項7】
前記一般式(a-1)中、Rは、炭素数4以上のアルキル基であり、Rは、水酸基を有するアルキル基である、請求項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項8】
第3級脂肪族モノアミン(B)が、前記一般式(b-1)で表される第3級脂肪族モノアミン(B1)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化3】

(上記式(b-1)中、R~Rは、それぞれ独立して、二価の鎖式炭化水素基である。)
【請求項9】
前記一般式(b-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、-CHCHCH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、又は-C(CH-で表される基である、請求項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項10】
さらに、分子中に水酸基を2つ有する脂肪族モノアミン(C)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項11】
さらに、脂環式構造及び芳香族構造の少なくとも一方を有する環構造アミン(D)(ただし、成分(A)~(C)のいずれかに該当するものを除く)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項12】
さらに、脂肪酸及び脂肪酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸類(E)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項13】
前記水溶性金属加工油組成物中の水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部以上の水を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の金属加工油組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の金属加工油組成物を用いて、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性金属加工油組成物、及び、水溶性金属加工油組成物を使用して金属からなる被加工材を加工する金属加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工や研削加工等の金属加工分野では、加工性の向上、被加工材と加工エ具との摩擦抑制、工具の磨耗抑制、切り屑の除去等を目的として、被加工材である金属の加工時に金属加工油が使用される。
金属加工油には、鉱油、合成油、動植物油等の油分を主成分した油性金属加工油と、油分に界面活性を有する化合物を配合して水溶性を付与した水溶性金属加工油がある。近年では、火災の危険性が低い等の安全性の理由から、水溶性金属加工油が用いられるようになってきている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メチルジシクロヘキシルアミンを配合してなる水溶性加工油剤に関する文献であり、具体的には、アミン成分として、メチルジシクロヘキシルアミン及びモノイソプロパノールアミンを配合してなる水溶性加工油剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2010/113594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された水溶性金属加工油剤は、耐腐敗性能及び加工性能を向上させたものであるが、これら以外の各種性能の更なる向上の余地がある。つまり、従来に比べて、金属加工により好適に使用し得るように、各種性能を改善させた新たな水溶性金属加工油組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミン、及び、分子中に水酸基を3つ有する第3級モノアミンを含む水溶性金属加工油組成物を提供する。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]~[15]を提供する。
[1]酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミン(A)、及び、分子中に水酸基を3つ有する第3級脂肪族モノアミン(B)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)を含む、水溶性金属加工油組成物。
[2]成分(A)と成分(B)との含有量比[(A)/(B)]が、モル比で、0.1~5.0である、上記[1]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[3]成分(A)の含有量が、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量基準で、0.1~20質量%である、上記[1]又は[2]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[4]成分(B)の含有量が、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量基準で、0.1~25質量%である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
[5]モノアミン(A)が有する前記鎖式炭化水素基が、炭素数4以上のアルキル基、下記一般式(a-i)で表される基、又は下記一般式(a-ii)で表される基である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化1】
(上記式(a-i)中、A及びAは、それぞれ独立して、アルキレン基であり、A及びAのアルキレン基の合計炭素数は4以上であり、pは0又は1である。
上記式(a-ii)中、Aは、アルキレン基、Rは、水素原子又はアルキル基であり、q及びrは0~3の整数であり、q+r=3である。ただし、上記式(a-ii)で表される基の炭素数は4以上である。*はモノアミン(A)の窒素原子との結合位置を示す。)
[6]成分(A)が、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有する第2級モノアミン(A1)を含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
[7]第2級モノアミン(A1)が、下記一般式(a-1)で表されるモノアミンである、上記[6]に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化2】
(上記式(a-1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水酸基を有してもよいアルキル基であって、RおよびRの少なくとも一方は、水酸基を有してもよい炭素数4以上のアルキル基である。)
[8]前記一般式(a-1)中、Rは、炭素数4以上のアルキル基であり、Rは、水酸基を有するアルキル基である、上記[7]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[9]第3級脂肪族モノアミン(B)が、前記一般式(b-1)で表される第3級脂肪族モノアミン(B1)を含む、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【化3】
(上記式(b-1)中、R~Rは、それぞれ独立して、二価の鎖式炭化水素基である。)
[10]前記一般式(b-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、-CHCHCH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、又は-C(CH-で表される基である、上記[9]に記載の水溶性金属加工油組成物。
[11]さらに、分子中に水酸基を2つ有する脂肪族モノアミン(C)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)を含む、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
[12]さらに、脂環式構造及び芳香族構造の少なくとも一方を有する環構造アミン(D)(ただし、成分(A)~(C)のいずれかに該当するものを除く)を含む、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
[13]さらに、脂肪酸及び脂肪酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸類(E)を含む、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の水溶性金属加工油組成物。
[14]前記水溶性金属加工油組成物中の水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部以上の水を含む、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の金属加工油組成物。
[15]上記[14]に記載の金属加工油組成物を用いて、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の好適な一態様の水溶性金属加工油組成物は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能の少なくとも1つにおいて優れており、より好適な一態様の水溶性金属加工油組成物は、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能の2つ以上において優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載された数値範囲については、上限値及び下限値を任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「好ましくは30~100、より好ましくは40~80」と記載されている場合、「30~80」との範囲や「40~100」との範囲も、本明細書に記載された数値範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲として、例えば「60~100」との記載は、「60以上、100以下」という範囲であることを意味する。
さらに、本明細書に記載された上限値及び下限値の規定において、それぞれの選択肢の中から適宜選択して、任意に組み合わせて、下限値~上限値の数値範囲を規定することができる。
【0010】
本明細書において、「水溶性金属加工油組成物」は、「金属加工油剤」と「金属加工液」の双方を含む語として用いている。また、本明細書において、「金属加工油剤」と「金属加工液」の2つの用語は、水の含有量によって、以下に示すとおり区別した上で用いている。
・「金属加工油剤」:水を含有していてもよいが、水の含有量が、水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部未満である水溶性金属加工油組成物。
・「金属加工液」:前記水溶性金属加工油組成物中の水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部以上の水を含む水溶性金属加工油組成物。
なお、「金属加工油剤」は、希釈水で希釈する前の原液であって、金属加工に用いる前の輸送時や保管時には好適な形態である。また、「金属加工液」は、原液である当該金属加工油剤に希釈水を加えて希釈したものであって、金属加工に使用する際に好適な形態である。
【0011】
なお、本明細書において、成分(A)~(C)や、成分(D)の一態様として選択し得る「モノアミン」とは、アンモニアの水素原子の少なくとも1つが置換基で置換されたアミン化合物であって、一分子中のアミン窒素原子が1つのアミンを意味する。例えば、置換基Rの個数によって、下記式(i)で表される第1級アミン、下記式(ii)で表される第2級アミン、及び下記式(iii)で表される第3級アミンに分類される。
【化4】
上記式中、Rは、それぞれ独立して、置換基を示す。複数のRは同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。なお、当該置換基の種類は、後述の成分(A)~(C)等の項目に記載のとおり、各成分によって規定される。
【0012】
〔水溶性金属加工油組成物の構成〕
本発明の水溶性金属加工油組成物は、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミン(A)、及び、分子中に水酸基を3つ有する第3級脂肪族モノアミン(B)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)を含む。
従来の希釈水を加えた後の水溶性金属加工油組成物(金属加工液)は、しばらく静置すると、油剤の乳化状態が悪化して、組成物自体がべたつき易くなり、組成物を入れている容器の壁面に切り屑が付着し易く、洗浄性の問題も生じ易くなる。
本発明者は、このような再乳化性と洗浄性の問題について検討し、アミン成分にその要因があると考え、アミン成分として、上述の成分(A)及び(B)を併用することで、当該問題が解決し得ることを見出し、本発明の水溶性金属加工油組成物を完成させたものである。
【0013】
本発明の一態様において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(A)と成分(B)との含有量比[(A)/(B)]は、モル比で、好ましくは0.1~5.0、より好ましくは0.5~4.0、より好ましくは0.7~3.5、更に好ましくは0.9~3.0、更に好ましくは1.0~2.85、より更に好ましくは1.1~2.7、特に好ましくは1.4~2.5であり、さらに、1.5以上、1.6以上、1.7以上、又は1.8以上としてもよく、また、2.3以下、2.2以下、2.1以下、又は2.0以下としてもよい。
【0014】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、アミン成分として、成分(A)及び(B)と共に、さらに、分子中に水酸基を2つ有する脂肪族モノアミン(C)(ただし、成分(A)に該当するものを除く)及び脂環式構造及び芳香族構造の少なくとも一方を有する環構造アミン(D)(ただし、成分(A)~(C)のいずれかに該当するものを除く)の少なくとも一方を含むことが好ましく、成分(C)及び(D)を共に含むことがより好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、乳化安定性を良好とし、防錆性及び潤滑性を向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、さらに、脂肪酸及び脂肪酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸類(E)を含むことが好ましい。
さらに、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、潤滑性を向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、さらに、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油(F)を含むことが好ましい。
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(F)以外の他の各種添加剤をさらに含有してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物が、原液である金属加工油剤の形態である場合、難燃性を付与し、保存安定性を良好とした金属加工油剤とする観点から、水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部未満の量の水を含有してもよい。
【0017】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、当該水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0~30質量%、更に好ましくは3.0~20質量%、より更に好ましくは4.0~15質量%、特に好ましくは5.0~10質量%であり、さらに、5.2質量%以上、5.5質量%以上、5.7質量%以上、又は6.0質量%以上としてもよく、9.0質量%以下、8.5質量%以下、8.0質量%以下、7.5質量%以下、又は7.0質量%以下としてもよい。
【0018】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、成分(A)~(D)の合計含有量は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させると共に、耐腐敗性を良好とした水溶性金属加工油組成物とする観点から、当該水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは5.0~60質量%、更に好ましくは7.5~50質量%、より更に好ましくは10.0~40質量%、特に好ましくは13.0~30質量%である。
【0019】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、成分(A)~(F)の合計含有量は、上述の観点に加えて、乳化安定性を良好とし、防錆性及び潤滑性を向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、当該水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~99質量%、更に好ましくは70~98質量%、より更に好ましくは75~97質量%、特に好ましくは80~95質量%である。
以下、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0020】
<成分(A):モノアミン>
本発明の水溶性金属加工油組成物は、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミン(A)を含有する。成分(A)を含有することで、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とすることができる。
なお、成分(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(A)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1.0~10質量%、更に好ましくは1.5~8.0質量%、更に好ましくは1.7~6.0質量%、より更に好ましくは1.85~5.5質量%、特に好ましくは2.0~5.0質量%であり、さらに、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、又は3.0質量%以上としてもよく、また、4.8質量%以下、4.5質量%以下、4.3質量%以下、又は4.0質量%以下としてもよい。
【0022】
成分(A)が有する炭素数4以上の鎖式炭化水素基としては、炭素数4以上のアルキル基、水炭素数4以上のアルケニル基等が挙げられる。当該アルキル基及び当該アルケニル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
前記アルキル基としては、例えば、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)、ペンチル基(n-ペンチル基、t-アミル基)、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
前記アルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0023】
また、成分(A)が有する炭素数4以上の鎖式炭化水素基は、酸素原子を有してもよい。
酸素原子を有する炭素数4以上の鎖式炭化水素基としては、例えば、前記アルキル基又は前記アルケニル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換された基、前記アルキル基又は前記アルケニル基の少なくとも1つの炭素-炭素結合の間にエーテル結合(-O-)を有する基、及び前記アルキル基又は前記アルケニル基の少なくとも1つの水素原子が水酸基で置換され、且つ、少なくとも1つの炭素-炭素結合の間にエーテル結合(-O-)を有する基等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、酸素原子を有する炭素数4以上の鎖式炭化水素基としては、炭素数4以上のアルキル基の1つの水素原子が水酸基に置換された基ならびに下記一般式(a-i)又は(a-ii)で表される基から選ばれる基であることが好ましく、下記一般式(a-i)又は(a-ii)で表される基であることがより好ましい。
【0025】
【化5】
【0026】
上記式(a-i)中、A及びAは、それぞれ独立して、アルキレン基であり、A及びAのアルキレン基の合計炭素数は4以上であり、pは0又は1である。
上記式(a-ii)中、Aは、アルキレン基、Rは、水素原子又はアルキル基であり、q及びrは0~3の整数であり、q+r=3である。ただし、上記式(a-ii)で表される基の炭素数は4以上である。
*はモノアミン(A)の窒素原子との結合位置を示す。
【0027】
上記式(a-i)中のA及びA、及び上記式(a-ii)中のAとして選択し得る、前記アルキレン基としては、直鎖アルキレン基であってもよく、分岐鎖アルキレン基であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2-エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、トリデシレン基、ヘキサデシレン基等が挙げられる。
これらの中でも、アルキレン基としては、-(CH-(ただし、mは整数であるが、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~6の整数、更に好ましくは2~4の整数)で表される直鎖アルキレン基が好ましい。
【0028】
上記式(a-ii)中のRとして選択し得る、前記アルキル基としては、上述の「炭素数4以上のアルキル基」として例示した基の他に、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)が挙げられる。
【0029】
成分(A)が有する前記鎖式炭化水素基の炭素数は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、4以上であるが、好ましくは4~20、より好ましくは4~16、更に好ましくは4~12、より更に好ましくは4~8、特に好ましくは4~6である。
【0030】
また、成分(A)は、酸素原子を有してもよい炭素数が4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有するモノアミンであるが、当該鎖式炭化水素基を1つ有するモノアミンであることが好ましい。
【0031】
本発明の一態様で用いる成分(A)は、酸素原子を有してもよい炭素数4以上の鎖式炭化水素基を少なくとも1つ有する第2級モノアミン(A1)を含むことが好ましい。成分(A)として、第2級モノアミン(A1)を用いることで、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を双方共により向上させた水溶性金属加工油組成物とすることができる。
【0032】
上記観点から、本発明の一態様で用いる成分(A)中の第2級モノアミン(A1)の含有割合としては、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(A)の全量(100モル%)に対して、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、より更に好ましくは80~100モル%、特に好ましくは90~100モル%である。
【0033】
本発明の一態様で用いる第2級モノアミン(A1)としては、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を双方共により向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、下記一般式(a-1)で表されるモノアミンであることが好ましい。
【化6】
【0034】
上記式(a-1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水酸基を有してもよいアルキル基であって、RおよびRの少なくとも一方は、水酸基を有してもよい炭素数4以上のアルキル基である。
およびRとして選択し得る、アルキル基としては、上述の「炭素数4以上のアルキル基」として例示した基の他に、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)が挙げられる。
また、RおよびRとして選択し得る、水酸基を有するアルキル基としては、水酸基を複数有するアルキル基であってもよいが、水酸基を1つ有するアルキル基であることが好ましく、-(CHOHで表される基(nは、1以上の整数であるが、好ましくは1~20の整数、より好ましくは1~12の整数、更に好ましくは1~8の整数、より更に好ましくは1~6の整数、特に好ましくは1~3の整数)であることがより好ましい。
【0035】
本発明の一態様において、上記一般式(a-1)で表されるモノアミンの中でも、Rは、炭素数4以上のアルキル基であり、Rは、水酸基を有するアルキル基であることが好ましい。
当該態様において、Rとして選択し得る、当該アルキル基の炭素数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~16、更に好ましくは4~12、より更に好ましくは4~8、特に好ましくは4~6である。
一方、当該態様において、Rとして選択し得る、水酸基を有するアルキル基としては、-(CHOHで表される基(nは、1以上の整数であるが、好ましくは1~20の整数、より好ましくは1~12の整数、更に好ましくは1~8の整数、より更に好ましくは1~6の整数、より更に好ましくは1~3の整数、特に好ましくは2~3の整数)であることが好ましい。
【0036】
<成分(B):第3級脂肪族モノアミン>
本発明の水溶性金属加工油組成物は、分子中に酸素原子を3つ有する第3級脂肪族モノアミン(B)を含有する。ここで、成分(B)からは、成分(A)に該当する化合物は除かれる。
なお、成分(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(B)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~25質量%、より好ましくは0.5~20質量%、更に好ましくは1.0~15質量%、より更に好ましくは1.5~10質量%、特に好ましくは2.0~6.0質量%であり、さらに、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、又は3.0質量%以上としてもよく、また、5.0質量%以下、4.5質量%以下、4.0質量%以下、又は3.5質量%以下としてもよい。
【0038】
本発明の一態様で用いる成分(B)としては、例えば、下記一般式(b-1)~(b-3)のいずれかで表される第3級脂肪族モノアミンが挙げられる。
【化7】
【0039】
上記式(b-1)~(b-3)中、R~Rは、それぞれ独立して、二価の鎖式炭化水素基であり、Rは、三価の鎖式炭化水素基、Rは、四価の鎖式炭化水素基である。
~Rとして選択し得る、前記二価の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましい。
当該アルキレン基としては、例えば、-CH-、-CHCH-、-CH(CH)-、-CHCHCH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、又は-C(CH-で表される基が挙げられる。
として選択し得る、三価の鎖式炭化水素基としては、上述のアルキレン基から、さらに任意の水素原子を1つ取り除いた三価の基が挙げられる。
また、Rとして選択し得る、四価の鎖式炭化水素基としては、上述のアルキレン基から、さらに任意の水素原子を2つ取り除いた四価の基が挙げられる。
【0040】
本発明の一態様で用いる成分(B)は、前記一般式(b-1)で表される第3級脂肪族モノアミン(B1)を含むことが好ましい。成分(B)として、第3級脂肪族モノアミン(B1)を用いることで、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とすることができる。
特に、第3級脂肪族モノアミン(B1)としては、前記一般式(b-1)中のR~Rが、それぞれ独立に、-CHCHCH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、又は-C(CH-で表される基であることが好ましく、-CH(CH)-CH-又は-CH-CH(CH)-で表される基であることがより好ましい。
【0041】
上記観点から、本発明の一態様で用いる成分(B)中の第3級脂肪族モノアミン(B1)の含有割合としては、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(B)の全量(100モル%)に対して、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、より更に好ましくは80~100モル%、特に好ましくは90~100モル%である。
【0042】
<成分(C):脂肪族モノアミン>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、さらに、分子中に酸素原子を2つ有する脂肪族モノアミン(C)を含有することが好ましい。ここで、成分(C)からは、成分(A)に該当する化合物は除かれる。
なお、成分(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(C)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~25質量%、より好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1.0~15質量%、更に好ましくは2.0~10質量%、より更に好ましくは2.3~8.0質量%、特に好ましくは2.5~6.0質量%であり、さらに、2.7質量%以上、3.0質量%以上、3.2質量%以上、3.5質量%以上、3.7質量%以上、又は4.0質量%以上としてもよく、また、5.7質量%以下、5.5質量%以下、5.3質量%以下、又は5.0質量%以下としてもよい。
【0044】
本発明の一態様において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(C)と成分(B)との含有量比[(C)/(B)]は、モル比で、好ましくは0.1~6.0、より好ましくは0.5~5.0、更に好ましくは1.1~4.0、より更に好ましくは1.4~3.5、特に好ましくは1.7~3.0である。
【0045】
本発明の一態様で用いる成分(C)としては、例えば、下記一般式(c-1)又は(c-2)で表される脂肪族モノアミンが挙げられる。
【化8】
【0046】
上記式(c-1)及び(c-2)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、二価の鎖式炭化水素基であり、R13は、単結合又は二価の鎖式炭化水素基であり、R14は、三価の鎖式炭化水素基である。
11、R12及びR13として選択し得る、前記二価の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、当該アルキレン基としては、上述のR~Rとして選択し得るアルキレン基と同じ基が挙げられる。
14として選択し得る、三価の鎖式炭化水素基としては、上述のR~Rとして選択し得るアルキレン基から、さらに任意の水素原子を1つ取り除いた三価の基が挙げられる。
【0047】
本発明の一態様で用いる成分(C)は、前記一般式(c-1)で表される脂肪族モノアミン(C1)を含むことが好ましい。成分(C)として、脂肪族モノアミン(C1)を用いることで、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とすることができる。
特に、脂肪族モノアミン(C1)としては、前記一般式(c-1)中のR11及びR12が、それぞれ独立に、-CH-、-CHCH-、又は-CHCHCH-で表される基であることが好ましく、-CHCH-又は-CHCHCH-で表される基であることがより好ましい。また、前記一般式(c-1)中のR13は、単結合、-CH-、-CHCH-、又は-CHCHCH-で表される基であることが好ましく、単結合又は-CH-で表される基であることがより好ましく、-CH-表される基であることが更に好ましい。
【0048】
上記観点から、本発明の一態様で用いる成分(C)中の脂肪族モノアミン(C1)の含有割合としては、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(C)の全量(100モル%)に対して、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、より更に好ましくは80~100モル%、特に好ましくは90~100モル%である。
【0049】
<成分(D):環構造アミン>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、耐腐敗性をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、さらに、脂環式構造及び芳香族構造の少なくとも一方を有する環構造アミン(D)を含有することが好ましい。ここで、成分(D)からは、成分(A)~(C)に該当する化合物は除かれる。
なお、成分(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、耐腐敗性をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(D)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.0~30質量%、より好ましくは2.0~25質量%、更に好ましくは3.0~20質量%、より更に好ましくは4.0~17質量%、特に好ましくは5.0~15質量%であり、さらに、5.5質量%以上、6.0質量%以上、6.5質量%以上、7.0質量%以上、7.5質量%以上、又は8.0質量%以上としてもよく、また、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、又は10質量%以下としてもよい。
【0051】
本発明の一態様において、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(D)と成分(B)との含有量比[(D)/(B)]は、モル比で、好ましくは0.1~6.0、より好ましくは0.5~5.0、更に好ましくは1.1~4.0、より更に好ましくは1.4~3.5、特に好ましくは1.7~3.0である。
【0052】
本発明の一態様で用いる環構造アミン(D)は、モノアミンであってもよく、ジアミンであってもよいが、モノアミンであることが好ましい。
具体的な環構造アミン(D)としては、例えば、1,3-ビスアミノメチルシクロへキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロへキサンエチレンオキシド付加物、1,3-ビスアミノメチルシクロへキサンプロピレンオキシド付加物、メタキシレンジアミン、メタキシレンジアミンエチレンオキシド付加物、メタキシレンジアミンプロピレンオキシド付加物、シクロへキシルアミン、ジアルキルシクロへキシルアミン、ジシクロへキシルアミン、アルキルジシクロへキシルアミン、シクロへキシルアミンエチレンオキシド付加物、シクロへキシルアミンプロピレンオキシド付加物、シクロへキシルエチレンジアミン、シクロへキシルプロピレンジアミン、シクロへキシルブチレンジアミン、シクロへキシルエチレンジアミンエチレンオキシド付加物、シクロへキシルプロピレンジアミンエチレンオキシド付加物、シクロへキシルブチレンジアミンエチレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0053】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる環構造アミン(D)は、脂環式構造を有する脂環式モノアミン(D1)を含むことが好ましい。
そして、脂環式モノアミン(D1)としては、ジシクロヘキシルアミン及び炭素数1~10(好ましくは1~3)のアルキル基を有するアルキルジシクロヘキシルアミンから選ばれる1種以上が好ましく、メチルジシクロヘキシルアミンがより好ましい。
【0054】
本発明の一態様で用いる成分(D)中の脂環式モノアミン(D1)の含有割合としては、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(D)の全量(100モル%)に対して、好ましくは30~100モル%、より好ましくは50~100モル%、更に好ましくは70~100モル%、より更に好ましくは80~100モル%、特に好ましくは90~100モル%である。
【0055】
<成分(A)~(D)以外のアミン>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(D)以外のアミンをさらに含有してもよい。
ただし、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、成分(A)~(D)以外のアミンの含有量は、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(A)~(D)の合計量100モル%に対して、好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~10モル%、更に好ましくは0~5モル%、より更に好ましくは0~1モル%、特に好ましくは0~0.1モル%である。
【0056】
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、酸素原子を有してもよい炭素数1~3の鎖式炭化水素基を有する第1級モノアミンを含有してもよいが、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性を含む各種性能をより向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、その含有量は極力少ないほど好ましい。
なお、当該第1級モノアミンが有する鎖式炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、i-プロピル基)が挙げられる。
上記観点から、前記第1級モノアミンの含有量は、前記水溶性金属加工油組成物に含まれる成分(A)~(D)の合計量100モル%に対して、好ましくは0~20モル%、より好ましくは0~10モル%、更に好ましくは0~5モル%、より更に好ましくは0~1モル%、特に好ましくは0~0.1モル%である。
【0057】
<成分(E):脂肪酸類>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、乳化安定性を良好とし、防錆性及び潤滑性を向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、さらに、脂肪酸及び脂肪酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸類(E)を含有することが好ましい。
なお、成分(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、上記観点から、成分(E)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは5~60質量%、より好ましくは7~50質量%、更に好ましくは10~40質量%、より更に好ましくは13~35質量%、特に好ましくは16~30質量%である。
【0059】
本発明の一態様で用いる成分(E)としては、例えば、脂肪酸、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪酸のダイマー酸、及びヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸等が挙げられる。
【0060】
前記脂肪酸としては、例えば、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸、及び、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸の混合物である、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、パーム油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、米糠油脂肪酸、綿実油脂肪酸等を用いてもよい。
前記脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0061】
前記ヒドロキシ脂肪酸としては、ヒドロキシラウリル酸、ヒドロキシミリスチン酸、ヒドロキシパルミチン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシアラキン酸、ヒドロキシベヘン酸、ヒドロキシオクタデセン酸等が挙げられる。
前記ヒドロキシ脂肪酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0062】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデシルコハク酸、ラウリルコハク酸、ステアリルコハク酸、イソステアリルコハク酸等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸の炭素数としては、好ましくは8~30、より好ましくは10~25、更に好ましくは10~20である。
【0063】
前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸を構成するヒドロキシ不飽和脂肪酸としては、リシノール酸(12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノン酸)等が挙げられる。また、ひまし油等のリシノール酸を含む脂肪酸混合物を用いてもよい。
そして、前記ヒドロキシ不飽和脂肪酸の重合脂肪酸としては、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸や、ヒドロキシ不飽和脂肪酸の脱水重縮合物である縮合脂肪酸のアルコール性水酸基とモノカルボン酸とを脱水縮合した縮合脂肪酸等が挙げられる。
【0064】
成分(E)の酸価としては、加工性に優れた水溶性金属加工油組成物とする観点から、通常0mgKOH/g以上であり、好ましくは10~100mgKOH/g、より好ましくは20~90mgKOH/g、更に好ましくは30~80mgKOH/gである。
成分(E)の水酸基価としては、好ましくは0~80mgKOH/g、より好ましくは0~60mgKOH/g、更に好ましくは0~40mgKOH/gである。
成分(E)の酸価と水酸基価との比〔酸価/水酸基価〕は、上記観点から、好ましくは1.5~15、より好ましくは2.0~10、更に好ましくは2.5~9.5である。
成分(E)のけん化価は、好ましくは180~220mgKOH/g、より好ましくは190~210mgKOH/g、更に好ましくは195~205mgKOH/gである。
なお、本明細書において、酸価は、JIS K2501:2003(指示薬光度滴定法)に準拠して測定した値を意味し、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠して測定した値を意味し、けん化価は、JIS K2503:1996に基づいて測定した値を意味する。
【0065】
<成分(F):基油>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、潤滑性を向上させた水溶性金属加工油組成物とする観点から、さらに、鉱油及び合成油から選ばれる少なくとも1種の基油(F)を含有することが好ましい。
【0066】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、上記観点から、成分(F)の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物の水以外の成分の全量(100質量%)基準で、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~65質量%、更に好ましくは20~60質量%、より更に好ましくは25~55質量%、特に好ましくは30~50質量%である。
【0067】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる精製油;等が挙げられる。
【0068】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリアルキレングリコール;ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステル等のエステル系油;ポリフェニルエーテル等のエーテル系油;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる合成油(GTL)等が挙げられる。
【0069】
<他の各種添加剤>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記成分(A)~(F)以外の他の各種添加剤をさらに含有してもよい。
そのような他の各種添加剤としては、例えば、界面活性剤、摩擦調整剤、防腐剤(殺菌剤)、金属不活性化剤、消泡剤、酸化防止剤、油性剤等が挙げられる。
なお、これらの各種添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
なお、本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物において、これらの各種添加剤のそれぞれの含有量としては、各成分の種類及び機能によって適宜設定されるが、当該水溶性金属加工油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.05~20質量%、更に好ましくは0.1~15質量%である。
【0071】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、高級アルコールエチレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのポリオキシアルキレン付加物の脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0072】
前記摩擦調整剤としては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等の不飽和脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0073】
前記防腐剤(殺菌剤)としては、例えば、イソチアゾリン系化合物、トリアジン系化合物、アルキルベンゾイミダゾール系化合物、金属ピリチオン塩等が挙げられる。
【0074】
前記金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、及びチアジアゾール等が挙げられる。
【0075】
前記消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フルオロシリコーン系消泡剤、ポリアクリレート等が挙げられる。
【0076】
前記酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、アルキル化フェニルナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤;2、6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6ージーtーブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0077】
前記油性剤としては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【0078】
<水>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物が、原液である金属加工油剤の形態である場合においても、難燃性を付与し、保存安定性を良好とする観点から、水溶性金属加工油組成物(金属加工油剤)は、さらに水を含有してもよい。
水としては、特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。
なお、金属加工油剤の形態の場合における、水の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物(金属加工油剤)中の水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部未満であるが、好ましくは1~80質量部、より好ましくは3~60質量部、更に好ましくは5~50質量部、より更に好ましくは7~40質量部、特に好ましくは9~30質量部である。
【0079】
<水溶性金属加工油組成物の製造方法>
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物の製造方法としては、特に制限はなく、上述の成分(A)及び(B)、並びに、必要に応じて、成分(C)~(F)、他の各種添加剤及び水を配合する工程を有する、方法であることが好ましい。各成分の配合の順序は適宜設定することができる。
【0080】
〔水溶性金属加工油組成物の性状〕
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物の酸価は、好ましくは10~70mgKOH/g、より好ましくは20~60mgKOH/g、更に好ましくは30~50mgKOH/gである。
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物の塩基価は、好ましくは10~100mgKOH/g、より好ましくは30~90mgKOH/g、更に好ましくは50~80mgKOH/gである。
なお、本明細書において、塩基価は、JIS K2501:2003(過塩素酸法)に準拠して測定した値を意味する。
【0081】
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物の塩基価と酸価との比〔塩基価/酸価〕は、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.1~2.5、更に好ましくは1.3~2.2、より更に好ましくは1.5~2.0である。
当該比が1.0以上であれば、耐腐敗性が良好な水溶性金属加工油組成物とすることができる。一方、当該比が3.0以下であれば、人体の皮膚への刺激性を小さくすることができ、取扱性の点で好ましい。
【0082】
〔金属加工液の形態〕
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物を金属加工用途に用いる場合、原液である金属加工油剤に希釈水を加えて希釈して、金属加工液の形態に調製した上で使用する。
希釈水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれであってもよい。
なお、金属加工液の形態の場合における、水の含有量は、前記水溶性金属加工油組成物(金属加工液)中の水以外の成分の全量100質量部に対して、100質量部以上であるが、所望の希釈濃度となるように適宜調整することが好ましい。
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物を金属加工液の形態とした場合、当該金属加工油の希釈濃度としては、好ましくは1~50体積%、より好ましくは3~40体積%、更に好ましくは5~20体積%である。
なお、本明細書において、上記の「希釈濃度」は、下記式から算出された値を意味する。
・「希釈濃度(質量%)」=〔希釈前の金属加工油剤としての質量〕/[〔希釈前の金属加工油剤としての質量〕+〔希釈水の質量〕]×100
【0083】
〔水溶性金属加工油組成物の用途、金属加工方法〕
本発明の好適な一態様の水溶性金属加工油組成物は、従来の水溶性金属加工油組成物に比べて、再乳化性及び洗浄性の含む各種性能に優れており、金属加工に好適に使用し得る。
本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物を用いて加工する被加工材としては、特に制限は無いが、チタン、チタン合金、合金鋼、ニッケル基合金、ニオブ合金、タンタル合金、モリブデン合金、タングステン合金、ステンレス鋼、及び高マンガン鋼からなる群より選ばれる金属からなる被加工材に特に好適である。
【0084】
そのため、本発明は、下記〔1〕及び〔2〕も提供し得る。
〔1〕上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物を金属加工液の形態とし、当該金属加工液を金属からなる被加工材の加工に適用する、使用方法。
〔2〕上述の本発明の一態様の水溶性金属加工油組成物を、希釈水で希釈してなる金属加工液の形態とし、金属からなる被加工材を加工する、金属加工方法。
【0085】
上記〔1〕及び〔2〕に記載の被加工材の詳細は、上述のとおりである。
また、上記〔1〕及び〔2〕において、被加工材の加工としては、例えば、切削加工、研削加工、打抜き加工、研摩、絞り加工、抽伸加工、圧延加工等が挙げられる。
なお、上記〔1〕の使用方法、及び、上記〔2〕の金属加工方法において、水溶性金属加工油組成物は、上記したように希釈水で希釈して金属加工液の形態としたうえで、被加工材に供給して、被加工材に接触させて使用される。金属加工液は、被加工材と加工具との間を潤滑する。さらには、切り屑の除去、被加工材の錆止め、工具及び被加工材の冷却等のためにも使用される。
【実施例
【0086】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0087】
以下の実施例、参考例及び比較例での水溶性金属加工油組成物の調製に使用したアミン化合物の構造は以下のとおりである。
【0088】
【化9】
【0089】
【化10】
【0090】
【化11】
【0091】
また、実施例、参考例及び比較例での水溶性金属加工油組成物の調製に際して、アミン化合物以外で配合した成分は以下のとおりである。
<成分(E):脂肪酸類>
・ネオデカン酸
・ドデカン二酸
・米糠油脂肪酸
・ひまし油重合脂肪酸
<成分(F):基油>
・パラフィン系鉱油:40℃動粘度=7.805mm/s、粘度指数=115(JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出)であるパラフィン系鉱油。
<他の成分>
・界面活性剤:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンC12-C15アルキルエーテルリン酸
・摩擦調整剤:オレイン酸メチル
・防腐剤:ベンズイソチアゾリノン、ピリチオン酸ナトリウム
・金属不活性化剤:ベンゾトリアゾール
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
・水
【0092】
実施例1~4、参考例1、比較例1~5
表1及び表2に示す種類及び配合量にて、各成分を混合して、金属加工油剤をそれぞれ調製した。
そして、調製したそれぞれの金属加工油剤5質量部に対して希釈水95質量部を加えて希釈して、金属加工液とした。調製した金属加工液100mLに黒鉛粉を2.5g混合して試験溶液とし、当該試験溶液20gをガラスシャーレに入れて、50℃で24時間静置させた。静置後に蒸発して減少分の水を補充した上で、ガラスシャーレを30回振とうした後、液面及びガラスシャーレの壁面を目視で観察し、以下のようにして、再乳化性及び洗浄性を評価した。これらの評価結果を表1及び2に示す。
【0093】
[再乳化性の評価]
参考例1で調製した金属加工油液を用いた試験溶液を基準として、振とう後の液面の斑模様の有無、液面の均一性を目視で観察し、以下の基準で評価した。
・A:参考例1の試験溶液に比べて、液面の斑模様が明らかに抑制されており、及び均一性も大きく改善されている。
・B:参考例1の試験溶液に比べて、液面の斑模様がやや抑制されており、また、液面の均一性もやや改善されている。
・-:参考例1の試験溶液に比べて、液面の斑模様の抑制効果や液面の均一性は同程度であり、改善効果は確認されない。
【0094】
[洗浄性の評価]
参考例1で調製した金属加工油液を用いた試験溶液を基準として、振とう後のガラスシャーレの壁面における黒鉛粉の付着の程度を目視で観察し、以下の基準で評価した。
・A:参考例1の試験溶液に比べて、壁面における黒鉛粉の付着が明らかに抑制されている。
・B:参考例1の試験溶液に比べて、壁面における黒鉛粉の付着がやや抑制されている。
・-:参考例1の試験溶液に比べて、壁面における黒鉛粉の付着の度合いは同程度であり、抑制効果は確認されない。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例1~2の水溶性金属加工油組成物は、従来の水溶性金属加工油組成物を示す参考例1と比べて、再乳化性及び洗浄性の双方において改善が見られた。また、実施例3の水溶性金属加工油組成物は、参考例1の水溶性金属加工油組成物と比べて、再乳化性は同程度であるが、洗浄性に改善が見られた。さらに、実施例4の水溶性金属加工油組成物は、参考例1の水溶性金属加工油組成物と比べて、洗浄性は同程度であるが、再乳化性に改善が見られた。一方で、比較例1~5の水溶性金属加工油組成物は、参考例1の水溶性金属加工油組成物と比べて、再乳化性及び洗浄性共に同程度であり、特段の改善効果は見られなかった。