(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】3層構造の供給スペーサおよびそれを含む逆浸透膜フィルタモジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/00 20060101AFI20241008BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
B01D63/00 510
B01D63/10
(21)【出願番号】P 2022580251
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2022002270
(87)【国際公開番号】W WO2022177284
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0020423
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、テヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、セ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】リー、フィル
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-305422(JP,A)
【文献】特表2020-519439(JP,A)
【文献】特開2009-195870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦糸(Strand)が平行に位置する第1のセット;
前記第1のセットと交差して提供され、複数の平行な縦糸で構成される第2のセット;および
原水方向と平行に位置され、複数の平行な縦糸で構成される第3のセット;
を含み、
前記第1のセットおよび第2のセットのうち少なくとも1つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さよりも小さい太さの縦糸で構成され
、
前記第3のセットを構成する縦糸と前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さを有する縦糸の太さの比は、1.1~1.5:1である、
3層構造の供給スペーサ。
【請求項2】
前記第1のセットおよび第2のセットのうち1つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さよりも小さい太さの縦糸で構成され、
残りの1つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さと同じ太さを有する縦糸で構成される、
請求項1に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項3】
前記第1のセットおよび第2のセットは、いずれも前記第3のセットを構成する縦糸の太さよりも小さい太さの縦糸で構成される、
請求項1に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項4】
前記供給スペーサの
単位長さ当たりの縦糸の数(Strand per inch、SPI)は、4~9である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項5】
前記第1のセットおよび第2のセットの交点間の距離は、3,800μm~12,000μmである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項6】
前記第1のセットおよび第2のセットが成す角度は、50°~90°である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項7】
前記供給スペーサの厚さは、600μm~900μmである、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の3層構造の供給スペーサ。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の3層構造の供給スペーサを含む、
逆浸透圧フィルタモジュール。
【請求項9】
前記逆浸透圧フィルタモジュールは、
長手方向に沿って透過液を収容する開口を含むチューブ;および
前記チューブから外側方向に延びて前記チューブの周りに巻き取られる少なくとも1つの逆浸透膜;
を含み、
前記供給スペーサは、
前記1つ以上の逆浸透膜と接触し、前記チューブの周りに巻き取られる、
請求項
8に記載の逆浸透圧フィルタモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年02月16日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0020423号の出願日の利益を主張し、その内容すべては本明細書に含まれる。
【0002】
本発明は、3層構造の供給スペーサおよびそれを含む逆浸透膜フィルタモジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
世界的に地球温暖化による水の不足現象が深化している中、代替水資源の確保技術である水浄化技術が注目を集めている。
【0004】
したがって、海水淡水化、水の再利用など代替水資源を活用した次世代水道事業の核心技術である逆浸透膜(Reverse osmosis membrane)を利用した水処理工程が水産業市場を主導するものと予想されている。
【0005】
このような逆浸透膜による逆浸透膜透過水は、純粋な水または純粋な水に近い水となり、医療用の無菌水や人工透析用精製水、あるいは電子産業の半導体の製造用水など様々な分野で利用されている。
【0006】
ここで、逆浸透とは、濃度差のある2つの溶液を半透膜で分離し、一定時間が過ぎると濃度の低い溶液が濃度の高い方に移動しながら一定の水位差を発生させるが、これを浸透現象という。なお、この過程で発生する水位の差を逆浸透圧という。この原理を利用して水分子のみ半透膜を通過させて水を浄化する装置を逆浸透圧設備といい、ここに入る半透膜が逆浸透圧フィルタモジュールである。
【0007】
この逆浸透圧フィルタモジュールは、中央チューブ、供給スペーサ(Feed spacer)、逆浸透膜(RO membrane)、トリコット濾過水路などを含む。
【0008】
このうち、供給スペーサは、主にダイヤモンド状のスペーサを使用しており、原水が流入する通路の役割を果たす。
【0009】
一方、水透過フラックスによって必然的に逆浸透膜の付近では濃度分極現象が発生し、このような現象が激しくなるほど、逆浸透膜の付近で浸透圧が高くなり、水透過率が低下することになる。
【0010】
このとき、供給スペーサは、分離膜の間で流路を確保するだけでなく、逆浸透膜の付近で発生する濃度分極現象(Concentration Polarization)を緩和するために原水の流れに乱流(turbulent flow)を発生させる。
【0011】
ただし、このような乱流は差圧を発生させ、流れを妨げて供給されている原水に浮遊している汚染物質(Foulant)の積層が発生する可能性がある。その結果、汚染物質の積層を除去するための洗浄のサイクルが増える可能性がある。このような洗浄はコストの増加につながるので、この差圧は低ければ低いほど逆浸透圧フィルタモジュールの効率を増加させる。
【0012】
したがって、差圧の発生を低減させ、濃度分極現象を緩和することによって、逆浸透圧フィルタモジュールの効率を向上させることのできる供給スペーサが必要な現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述の問題を解決するために、縦糸の太さが異なる3層構造の供給スペーサ構造およびそれを含む逆浸透膜フィルタモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態は、複数の縦糸(Strand)が平行に位置する第1のセット;前記第1のセットと交差して提供され、複数の平行な縦糸で構成される第2のセット;および原水の方向と平行に位置され、複数の平行な縦糸で構成される第3のセット;を含み、前記第1のセットおよび第2のセットの少なくとも一つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さの縦糸で構成されることを特徴とする、3層構造の供給スペーサを提供する。
【0016】
他の本発明の一実施形態は、上述した3層構造の供給スペーサを含む逆浸透圧フィルタモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る供給スペーサは、原水の乱流発生を抑制して圧力損失を最小化するという効果がある。
【0018】
本発明に係る供給スペーサは、汚染物質(Foulant)の積層が抑制され、逆浸透圧フィルタモジュールの効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例による逆浸透圧フィルタモジュールの斜視図である。
【
図2】(a)は、本発明の一実施例による3層構造の供給スペーサの平面図であり、(b)は、本発明の一実施例による3層構造の供給スペーサの一側および他側に逆浸透膜が位置した逆浸透圧フィルタモジュールの断面図である。
【
図3】
図2の(a)の本発明の一実施例による3層構造の供給スペーサの平面図の一部を拡大した図である。
【
図4】比較例1~3の供給スペーサの平面図である。
【
図5】比較例4、実施例1および実施例2の供給スペーサの平面図である。
【
図6】比較例4、実施例1および実施例2の供給スペーサの平面図である。
【
図7】比較例1~4、実施例1および2の供給スペーサ内の流れ方向の縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
100 ・・・供給スペーサ
200 ・・・逆浸透膜
300 ・・・トリコット濾過水路
400 ・・・透過液を収容する開口を含むチューブ
10、A ・・・第1のセット(斜線)
20、C ・・・第2のセット(斜線)
30、B ・・・第3のセット(中央線)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実施することができ、本明細書で説明する構成のみに限定されない。
【0022】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言う場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0023】
<供給スペーサ>
本発明の一実施形態において、複数の縦糸(Strand)が平行に位置する第1のセット;前記第1のセットと交差して提供され、複数の平行な縦糸で構成される第2のセット;および原水の方向と平行に位置され、複数の平行な縦糸で構成される第3のセット;を含み、前記第1のセットおよび前記第2のセットの少なくとも一つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さの縦糸で構成されることを特徴とする、3層構造の供給スペーサを提供する。
【0024】
本明細書において、「平行に位置」とは、同じセットを構成する複数の縦糸が離間または離れて互いに交差しないように位置することを意味する。顕微鏡(装置名:Dino-Lite Premier AM7013MZT メーカー:Dino-lite)を用いて測定された平面図(top view)から確認することができる。
【0025】
本明細書において、「縦糸の太さ」とは、それぞれのセットを構成する縦糸の平均太さを意味するものであり、顕微鏡(装置名:Dino-Lite Premier AM7013MZT メーカー:Dino-lite)を用いて測定された平面図(top view)から太さの大きさを求めた値である。具体的に、太さは、
図3に示すように平面図から観察された縦糸の幅t1、t2、t3を意味してもよい。すなわち、太さの大きさを比較するとは、それぞれのセットを構成する縦糸の平均太さを比較することを意味する。したがって、本明細書において、「同一の太さ」とは、それぞれのセットを構成する縦糸の平均太さが等しいことを意味する。前記太さの偏差は、±0.050mm以下であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、「SPI」とは、Strand per inchの略であり、1インチ(inch)を単位長さとした場合の単位長さ当たりの縦糸の数を意味し、「単位長さ当たりの縦糸の数」と称することができる。より具体的には、供給スペーサの流路方向への単位長さ1インチ内にそれぞれのセットを構成する縦糸の総数を意味し、顕微鏡(装置名:Dino-Lite Premier AM7013MZT メーカー:Dino-lite)を用いて測定された平面図(top view)から1インチ当たりの縦糸を数えて測定することもでき、あるいは1インチの距離を顕微鏡で測定した1つの縦糸から交差点までの距離(
図2のL1)で割って計算することもできる。前記SPIのバラツキは±1以下であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る供給スペーサの単位長さあたりの縦糸の数(Strand per inch、SPI)は、4~9、好ましくは4~6であってもよい。言い換えれば、第1のセット10と第2のセット20が交差して形成される交差点間の距離Lは、3,800μm~12,000μmであってもよい。
【0028】
図2の(a)は、本発明の一実施例による3層構造の供給スペーサの平面図であり、
図2の(b)は、本発明の一実施例による3層構造の供給スペーサの一側および他側に逆浸透膜が位置された逆浸透圧フィルタモジュールの断面図である。
【0029】
本発明に係る供給スペーサは、複数の縦糸(Strand)が平行に位置する第1のセット10、第2のセット20、および第3のセット30から構成されてもよい。
【0030】
なお、
図2から分かるように、前記第1のセット10および第2のセット20は、原水の流れ方向を基準に、原水流れ方向に傾斜して位置するものであり、それぞれ斜線と称することがあり、第3のセット30は、原水流れ方向を基準に、原水流れ方向と平行に位置するものであり、中央線と称することがある。
【0031】
第3のセット(または中央線)が存在しない場合、低いSPI値では、供給スペーサが逆浸透圧フィルタモジュールの製造に使用される分離膜の間を支持することができない場合があり得る。このようなことが発生する場合、実際の供給スペーサの厚さだけ流れ方向の流路断面積が減少し、差圧が増加するという問題が発生する可能性がある。一方、第3のセット(または中央線)が存在する本発明に係る供給スペーサは、第3のセット(または中央線)によって比較的低いSPI値でも逆浸透圧フィルタモジュールの製造に使用される分離膜の間を支持することができるため、差圧が増加する問題を防止する効果がある(参考文献:Engineering aspects of reverse osmosis module design, Jon Johnson & Markus Busch, Dow Water & Process Solutions、Liquid Separations Application Development Laboratory Published online:03 Aug 2012.)。
【0032】
第1のセット10および第2のセット20は、1つ以上、複数の縦糸を平行に位置することができるが、ここで縦糸は、原水方向に傾斜して位置してもよい。そして、第2のセット20は、第1のセット10と交差して位置されてもよい。また、第2のセット20は、第1のセット10と傾斜方向が反対になるように位置され、第1のセット10および第2のセット20は格子状に提供されてもよい。
【0033】
第3のセット30は、1つ以上、複数の縦糸を平行に位置することができ、ここで縦糸は原水方向と平行に位置することができる。
【0034】
また、第1のセット10は、原水の流れ方向を基準にして10°~80°傾斜して位置することができ、第2のセット20は、原水の流れ方向を基準として100°~170°勾配で位置してもよい。また、第1のセット10と第2のセット20との間の角度aは、50°~90°、好ましくは70°~85°に形成されてもよい。前記の間の角度は、
図2のaの部分を意味する。
【0035】
例えば、第1のセット10を構成する縦糸が原水の流れ方向を基準に60°傾いて形成されると、第2のセット20の縦糸は、原水の流れ方向を基準に150°~170°傾いて位置してもよい。
【0036】
また、第1のセット10と第2のセット20との間の角度が50°のとき、第1のセット10を構成する縦糸が原水の流れ方向を基準にして30°傾いて形成されると、第2のセット20の縦糸は、原水の流れを基準に160°傾斜して位置してもよい。
【0037】
このとき、第1のセット10と第2のセット20との間の角度が50°であるとき、後述する第3のセット30との間隔が小さくなることにより、縦糸によって形成される流路の断面積が減少し、供給スペーサの中央部分で層流性流速勾配が発生せず、分極現象が増加するという問題が発生することがあり、90°超の場合、第3のセット30との間隔が大きくなることにより、流路断面積が増加して原水の流動が上下方向に活発に発生し、圧力損失が増加するという問題が発生する可能性がある。ここで、流路とは、各セットを構成する縦糸によって形成されるもので、供給スペーサの上部および下部に位置する逆浸透膜と各セットとの間の空き空間を意味することがある。
【0038】
本発明に係る第3のセット30は、原水の流れ方向と平行に位置され、第1のセット10および第2のセット20の間、または3つのセットのうち最も上に位置してもよい。すなわち、第1のセット10の一側および第2のセット20の一側のいずれかの位置に置かれてもよい。より具体的には、セットの積層の順が、第1のセット10の上部に第2のセット20が位置する場合、第3のセット30は、第2のセット20の一側、すなわち上部に位置してもよい。そして、セットの積層の順序が、第2のセット20の上部に第1のセット10を位置する場合、第1のセット10の上部に第3のセット30が位置してもよい。
【0039】
まず、
図2の(b)を参照すると、第3のセット30が第1のセット10の一側および第2のセット20の他方側に位置する場合、供給スペーサは、逆浸透膜と直接接触するセットと接触しないセットとで構成され得る。より詳細には、第3のセット30は逆浸透膜と直接接触せず、第1のセット10と第2のセット20は逆浸透膜と接触する構造である。
【0040】
第1のセット10および第2のセット20は、逆浸透膜と接触して供給スペーサ構造を支持する役割を果たし、逆浸透膜との間の原水の界面流動を周期的に供給スペーサ構造の中央に対流させることができる。すなわち、本発明に係る供給スペーサは、原水の界面流動を第3のセット30に対流させ、第3のセット30は界面流動の層流性流速勾配(Flow Velocity Gradient)を発生させて分極現象を減少させる効果が発生することがある。
【0041】
また、
図2の(a)に示すように、供給水の流れ方向から斜め方向に供給水が流れることができる。
【0042】
なお、第3のセット30は、第1のセット10と第2のセット20の交差点、または交差点と交差点との間の1/5~4/5の地点のいずれかの位置に提供されてもよい。
【0043】
本発明に係る供給スペーサは、融着法によって製造されてもよい。第1のセット10、第2のセット20および第3のセット30が接合された状態で押出されるか、第1のセット10と第3のセット30、あるいは第2のセット20と第3のセット30が接合した状態で押出された後、第2または第1のセットが積層および接合される方法で製造されてもよい。
【0044】
本発明に係る第1~第3のセット10、20、30を形成する縦糸間の間隔は、4mm~12mmであってもよい。ここで、縦糸間の間隔が4mm未満であると、原水の乱流が必要以上に発生し、圧力損失が増加するという問題が発生することがある。そして、縦糸間の間隔が12mmを超えると、原水の上下流動が発生しない区間が発生し、層流性流速勾配が発生しないという問題が発生する可能性がある。また、分離膜の間を支持することができず、流れ方向の流路断面積が減少し、差圧が増加するという問題が発生し得る。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記第1のセットおよび第2のセットのいずれか一つは、前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さの縦糸で構成され、残りの一つは前記第3のセットを構成する縦糸の太さと同じ太さを有する縦糸で構成されることを特徴とする、3層構造の供給スペーサを提供されてもよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記第1のセットおよび第2のセットは、いずれも前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さの縦糸で構成されることを特徴とする、3層構造の供給スペーサが提供されてもよい。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記第3のセットを構成する縦糸と前記第3のセットを構成する縦糸の太さより小さい太さを有する縦糸の太さの比は、1.1~1.5:1、好ましくは1.1~1.4:1であることを特徴とする。これは、前記第3のセットを構成する縦糸は、前記第3のセットを構成する縦糸の太さよりも小さい太さを有する縦糸より、1.1倍~1.5倍、好ましくは1.1倍~1.4倍太いことを意味する。
【0048】
すなわち、前記第3のセットを構成する縦糸を大きい太さを有する縦糸と表現することがある。言い換えると、本発明の一実施形態において、前記大きい太さを有する縦糸と小さい太さを有する縦糸の太さの比は、1.1~1.5:1、好ましくは1.1~1.4:1であることを特徴とする。これは、前記大きい太さを有する縦糸の太さが小さい太さを有する縦糸よりも、1.1倍~1.5倍、好ましくは1.1倍~1.4倍太いことを意味する。
【0049】
本発明の一実施形態において、前記小さい太さを有する縦糸の太さは、150μm~190μmで提供されてもよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、前記第3のセットを構成する縦糸の太さは、205μm~385μmで提供されてもよい。
【0051】
本発明の一実施形態において、前記大きい太さを有する縦糸の太さは、205μm~385μmで提供されてもよい。
【0052】
また、本発明の一実施形態において、前記供給スペーサの厚さは、600μm~900μmであることを特徴とする。
【0053】
各セットを構成する縦糸の太さが150μm未満の場合、縦糸が切れる現象が発生し、供給スペーサの製造に限界が発生し、供給スペーサの厚さが600μm未満の場合、供給スペーサ構造を支持できないという問題点が発生する可能性がある。
【0054】
そして、縦糸の太さが300μm超であり、供給スペーサの厚さが900μm超である場合、逆浸透圧フィルタモジュールの製造に用いられる分離膜またはトリコットの厚さを減らさなければならないため、このような供給スペーサを用いた逆浸透圧フィルタモジュールの安定性を低下させ、逆浸透圧フィルタモジュールの流量を減少させるという問題が発生する可能性がある。
【0055】
本発明に係る供給スペーサを構成する縦糸の太さを満足することにより、乱流の発生を抑制することができ、これにより流体の圧力損失が低減される効果が発生することができる。また、原水が流動されるチャネルの空隙率(Void Fraction)と実効逆浸透膜面積(Effective Membrane Area)を確保することができ、差圧の改善だけでなく、生産水の物性の向上に効果が生じることができる。
【0056】
本発明に係る供給スペーサの単位長さあたりの縦糸の数(Strand per inch、SPI)は、4~9、好ましくは4~6であってもよい。言い換えれば、第1のセット10と第2のセット20が交差して形成される交差点間の距離Lが、3,800μm~12,000μmであってもよい。ここで、単位長さあたりの縦糸の数(SPI)は、1インチ当たりの流路の一辺に該当する縦糸の数を意味することができる。すなわち、第1のセット10と第2のセット20および第3のセット30が交差して形成する交点間の縦糸の数を意味し得る。
【0057】
SPIが4未満、交差点間の距離が12,000μm超の場合、流路の断面積が減少し、供給スペーサの中央部分で層流性流速勾配が発生しないため、分極現象が増加する問題が発生することがあり、SPIが9を超え、交差点間の距離が3800μm未満の場合、流路の断面積が増加し、原水の流動が上下方向に活発に起こり、圧力損失が増加するという問題が発生し得る。
【0058】
また、SPIが4未満の場合、中央線が存在する本発明に係る供給スペーサも逆浸透圧フィルタモジュールの製造に用いられる分離膜の間を支持できない場合が発生することがある。このようなことが発生する場合、実際の供給スペーサの厚さだけ流れ方向の流路断面積が減少し、差圧が増加するという問題が発生する可能性がある(参考文献:Engineering aspects of reverse osmosis module design、Jon Johnson & Markus Busch、Dow Water & Process Solutions、Liquid Separations Application Development Laboratory Published online:03 Aug 2012.)。
【0059】
本明細書において、「縦糸の傾き」および「間の角度」は、顕微鏡(装置名:Dino-Lite Premier AM7013MZT メーカー:Dino-lite)を用いて測定された平面図(top view)から確認することができる(
図2の(a)を参照)。すなわち、平面図に現れる中央線を基準に縦糸の傾きおよび間の角度を測定することができる。
【0060】
本明細書において、「供給スペーサの厚さ」とは、原水の流れの垂直方向を基準に供給スペーサの一面と一面との間の距離を意味する。前記供給スペーサの厚さは、ABSデジタルマチックインジケータ(Mitutoyo corp.社モデル名ID C125XB製品)を使用した。測定のために、零点を合わせるときには、重量荷重10oz(284g)の状態で、foot size(直径)は1inch(25.4mm)の条件を用いた。
【0061】
<逆浸透圧フィルタモジュール>
本発明の一実施形態において、上述の本出願による3層構造の供給スペーサを含む逆浸透圧フィルタモジュールを提供する。さらに、前記逆浸透圧フィルタモジュールは、長手方向に沿って透過液を収容する開口を含むチューブ;および前記チューブから外側方向に延びて前記チューブの周りに巻き取られる一つ以上の逆浸透膜;を含み、前記供給スペーサは、前記少なくとも1つの逆浸透膜と接触し、前記チューブの周りに巻き取られることを特徴とする。
【0062】
図1は、本発明の一実施例による逆浸透圧フィルタモジュールの斜視図である。逆浸透圧フィルタモジュールは、実際に供給される水を逆浸透圧の原理を用いて浄化する役割を果たすメンブレン分離装置の構成要素である。逆浸透圧フィルタモジュールは、逆浸透膜200、供給スペーサ100、トリコット濾過水路300、および長手方向に沿って透過液を収容する開口を含むチューブ400を含んでもよい。また、一対のテレスコーピング防止装置(図示せず)をさらに含んでもよいが、その詳細な説明は省略する。
【0063】
1つ以上の逆浸透膜200は、浸透現象を利用して水に含まれた異物を濾過させると同時に、精製水が効果的に流れるように流路の役割を果たす。このような1つ以上の逆浸透膜は、チューブから外側方向に延び、チューブの周りに巻き取られることになる。
【0064】
供給スペーサ100は、上述した本発明に係る供給スペーサ100が提供されてもよい。より詳細には、供給スペーサ100は、3層構造で提供することができるが、ここで3層とは供給スペーサ100を構成する縦糸が3つ積層された構造で、複数の縦糸が平行に位置して一層のセットを構成し、3つのセットが積層される形態を意味してもよい。
【0065】
供給スペーサ100は、3層構造で提供されることで、逆浸透膜200と接触するセットと逆浸透膜200と接触しないセットとに分けられてもよい。
【0066】
一実施例において、第1および第2のセットは、1つ以上の逆浸透膜200と接触されてもよく、第3のセットは1つ以上の逆浸透膜200と非接触であってもよい。逆浸透膜200と接触するセットは、逆浸透圧フィルタモジュールに供給される原水の流動方向を供給スペーサ100の中央、すなわち逆浸透膜200と接触しないセットに対流させてもよい。
【0067】
したがって、逆浸透膜200と接触しないセットが位置する部分では、層流性流速勾配が発生し、逆浸透膜200と接触するセット部分でのみ局所的に乱流性対流が発生して供給スペーサ100の分極現象を減らし、圧力損失を減らし、逆浸透圧フィルタモジュールの効率をさらに高めることができる。
【0068】
供給スペーサ100は、外部から原水が流入する通路を形成し、一つの逆浸透膜200と他の一つの逆浸透膜200との間の間隔を維持する役割を果たす。このために、供給スペーサ100は、1つ以上の逆浸透膜200と上側および下側で接触し、1つ以上の逆浸透膜200と同様にチューブの周りに巻き取られるように構成される。
【0069】
このとき、チューブの周りに巻き取られるように構成された供給スペーサ100の外部から一部の原水が供給スペーサ100の内部または外部に流れる場合が発生することがある。
図2を参照すると、このような場合が発生した場合、第3のセット30が第2のセット20の一側に位置する場合、最も上に位置する第3のセット30は、原水流れの方向と平行であるため、流動を半分に分離する役割を果たすことができる。したがって、逆浸透膜と直接接触する第1のセット10は、原水界面の流動を第2のセット20に対流させ、第3のセット30は、原水を半分に分離して第2のセット20に対流させ、逆浸透膜界面の付近で対流現象が周期的に発生し、本発明に係る供給スペーサの圧力損失を最小限にすることができる。
【0070】
ここで、供給スペーサ100の材質は特に限定されないが、ポリエチレン(Polyethylene)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride)、ポリエステル(Polyseter)、ポリプロピレン(Polypropylene)およびこれらの混合物のいずれかで構成されることが好ましい。
【0071】
トリコット濾過水路300は、一般的に織物の形態の構造を有し、逆浸透膜200を介して精製された水が流れ出ることができる空間を作る流路の役割を果たす。
【0072】
このとき、トリコット濾過水路300は、一般に織物の形態の構造を有し、逆浸透膜10を介して精製された水が流れ出ることのできる空間を作る流路の役割を果たす。
【0073】
チューブ400は、逆浸透圧フィルタモジュールの中心に位置し、濾過された水が流入して排出される通路の役割をする。
【0074】
このために、チューブ400の外側には、濾過された水が流入するように、所定のサイズの空隙(あるいは開口)が形成されることが好ましい。このとき、空隙は、濾過された水がより効率的に流入できるように少なくとも1つ形成されることが好ましい。
【実施例】
【0075】
<比較例1~4>
比較例1~3は、それぞれ下記表1のように、厚さ、第1および第2のセット(斜線、AおよびC)がなす角度、SPIおよび縦糸間の太さの比を満たす第1のセットと第2のセットのみからなる2層構造のダイヤモンド状の供給スペーサである。
【0076】
【0077】
比較例4の構造は、以下の
図5および
図6のとおりである。ただし、縦糸の太さの割合は下記表1のとおりである。
【0078】
<実施例1~3>
実施例1~3は、それぞれ下記表1のように、厚さ、第1および第2のセット(斜線、AおよびC)がなす角度、SPIおよび縦糸間の太さの比を満たす第1のセットおよび第2のセット(A、C)と第3のセット(中央線、B)を含む本発明に係る3層構造の供給スペーサである。
【0079】
実施例1~3の構造は、以下の
図5および
図6のとおりである。このとき、縦糸の太さの割合は下記表1のとおりである。
【0080】
【0081】
前記表1の差圧(ΔP(psi))は、膜面積400ft2、温度25℃、圧力225psi、NaCl 2,000ppm、44GPM平均流量の条件で測定した値を意味する。より具体的に、前記44GPM平均流量の条件で測定した差圧は、濃縮水流量10GPM~60GPMで個別差圧に基づいて回帰方程式を用いて求めた。平均流量は、供給水流量および濃縮水流量の算術平均値を意味する。
【0082】
なお、前記表1の塩除去率および流量は、温度25℃、圧力225psi、NaCl 2,000ppm、回収率15%の条件で測定した値を意味する。
【0083】
本明細書において「GPM」は、Gallons per Minuteで1分当たりの流量単位を表す。
【0084】
その他、前記表1の厚さ、角度a(°)、SPIおよび縦糸の太さの比は、上述の方法によって測定した。
【0085】
前記表1から分かるように、比較例1~4と実施例1~3とを比較すると、比較例よりも実施例の差圧が減少することが確認できた。
【0086】
特に、同じ3層構造スペーサである比較例4と比較しても、実施例1~3は、同様に3層構造スペーサでありながら、第3のセットおよび第1のセットまたは第2のセットのうち一つの縦糸が、残りのセットの縦糸よりも太さが大きい場合、差圧の減少効果がさらに大きいことが確認できた。
【0087】
すなわち、比較例1~3と比較すると、3層構造は、2層構造と比較して原水と供給スペーサとの間に生じる圧力が減少することがわかり、比較例4と比較すると、一部の縦糸の太さがより大きい場合、差圧効果がより大きいことが確認できた。
【0088】
これは、比較例1~3の2層ダイヤモンド型スペーサの場合、両縦糸の厚さの和が分離膜(Membrane)間の間隔(距離)を維持することになり、個々の縦糸の太さは供給流路材の厚さの半分程度となる。それで、以下の
図7にて確認できるように、供給液方向(Feed flow)の乱流の発生も太さの分発生することになり、このような乱流抵抗が差圧の発生の原因となる。
【0089】
一方、3層型スペーサの場合、3つの縦糸の厚さの和が分離膜(Membrane)間の間隔(距離)を維持することになり、個々の縦糸の太さは1/3程度となる。この場合、下記
図7にて確認できるように、3層型スペーサの中央線B付近は供給液の流れ方向と一致するため乱流の発生が少なく、中央線の上下の斜線A、Cは原水の流れを妨げることになる。
【0090】
これにより、3層型スペーサは、結局、差圧が低減する。
【0091】
また、実施例1~3の場合、中央線の縦糸の太さおよび/または1つの斜線の縦糸の太さを他の一つの斜線の縦糸の太さより太くして空隙液の流れの抵抗をより低くしたことで、結果として差圧をより効果的に低減させることができた。
【0092】
特に、実施例2の場合が差圧をより効果的に低減できることが確認できた。
【0093】
上記では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の精神および領域から逸脱しない範囲内で本発明を様々に修正し、変更できることがわかるはずである。