(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム、これを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20241008BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241008BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
G02B1/14
G09F9/00 313
G09F9/30 308Z
(21)【出願番号】P 2023524196
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2021000625
(87)【国際公開番号】W WO2022154144
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】リー、インキュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ヨンレイ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジン ヨウン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヨンジョーン
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/200042(WO,A1)
【文献】特開2017-33031(JP,A)
【文献】特開2017-33032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子3重量部以下を含む
組成物の硬化物を含む第1ハードコーティング層;
バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子10~45重量部を含む
組成物の硬化物を含む第2ハードコーティング層;および
1枚の光透過性基材;が順次に積層され、
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比は、10:90~40:60であ
り、
前記第2ハードコーティング層の厚さは、2μm~9μmであり、
前記第1ハードコーティング層、第2ハードコーティング層および光透過性基材の厚さの合計は、60μm~130μmである、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項2】
前記カバーウィンドウ用保護フィルムの中間に4mmの間隔を置いて前記カバーウィンドウ用保護フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んでから広げることを常温で10万回反復した時、クラックが発生しない、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項3】
前記第1ハードコーティング層は、750gの荷重でH以上の鉛筆硬度を有する、請求項1または2に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項4】
前記第1ハードコーティング層の表面は、水接触角が105°以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項5】
前記カバーウィンドウ用保護フィルムは、550nmの波長領域の光に対して90.0%以上の透過率を有し、1.0%以下のヘイズ値を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項6】
前記第1ハードコーティング層の厚さは、1μm~10μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項7】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さの合計は、2μm~17μmである、請求項1から
6のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項8】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層にそれぞれ含まれているバインダー樹脂は、多官能(メタ)アクリレート系化合物を含む
組成物の硬化物を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項9】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層は、それぞれ独立して、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物を50重量部以上含む
組成物の硬化物を含む、請求項
8に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項10】
前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ウレタン、カプロラクトン、エポキシおよびエステルからなる群より選択された1種以上で変性された、請求項
8または
9に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項11】
前記第1ハードコーティング層は、フッ素系添加剤、シリコン系添加剤およびフッ素-シリコン系添加剤からなる群より選択された一つ以上の添加剤をさらに含む
組成物の硬化物を含む、請求項1から1
0のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項12】
前記光透過性基材は、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリイミドアミド(polyimideamide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1から1
1のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム。
【請求項13】
請求項1から1
2のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを含む、フレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項14】
前記カバーウィンドウ用保護フィルムの一面に形成され、20μm~180μmの厚さを有するガラス(Glass)カバーまたはプラスチックフィルムカバーをさらに含む、請求項1
3に記載のフレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項15】
請求項1
3または1
4に記載のフレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム、これを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、テレビ、コンピュータ、移動通信端末、スマートフォン、車両用ナビゲーション、現金自動預け払い機などのようにタッチスクリーンで情報を入力、操作、表示するディスプレイ装置の需要が増加することに伴い、これをより多様な用途で適用するために、平板ディスプレイ(flat display)だけでなく、最近は曲げたり折りたたんだりすることができるフレキシブルディスプレイ(flexible display)が発売されている。
【0003】
このようなフレキシブルディスプレイ用カバーウィンドウは、フレキシブルディスプレイの最外側に適用される層であって、高い硬度と耐スクラッチ性を示すと同時にベンダブル、フォルダブル、ローラブルなどの特性を共に満たすために優れた柔軟性が必要である。一般に、このような高い硬度などを満たすためにガラス(Glass)をカバーパネルとして使用している。
【0004】
ただし、ガラスをカバーパネルとして使用する場合、硬度には優れているが、耐衝撃性が低下して衝撃が発生した時に壊れやすく、破片が発生して使用者の取り扱いにおいて危険性があるため、カバーパネル上には、ガラスの飛散防止および耐衝撃を改善することができる保護フィルムが必要である。
【0005】
しかし、従来の保護フィルムは、耐スクラッチ性および硬度特性に優れる場合、屈曲性が低下して動的フォルディング性(Dynamic folding)および静的フォルディング性(static folding)が低下するという問題点があり、また、屈曲性に優れた場合、耐スクラッチ性および硬度特性が低下するという問題点がある。したがって、耐スクラッチ性および硬度特性に優れると共に、屈曲性に優れる保護フィルムが必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、柔軟性、高硬度および耐スクラッチ性の物性バランスを同時に満たすと共に、特に反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が殆どなく、ガラス(Glass)パネルの耐衝撃性を向上させ、ガラスパネルが壊れた場合、飛散を防止するフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記保護フィルムを含み、柔軟性、屈曲性、高硬度、耐スクラッチ性、高透明度を示し、特に反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が殆どないため、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用することができるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記カバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子3重量部以下を含む第1ハードコーティング層;バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子10~45重量部を含む第2ハードコーティング層;および光透過性基材;が順次に積層され、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比は、10:90~40:60であるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを提供する。
【0010】
また、本明細書では、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
【0011】
また、本明細書では、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【0012】
以下、発明の具体的な具現例によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム、これを含むフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイ装置についてより詳細に説明する。
【0013】
本明細書で、「フレキシブル(flexible)」とは、直径が8mm以下の円筒形マンドレル(mandrel)に巻いた時、長さ3mm以上のクラック(crack)が発生しない程度の柔軟性を有する状態を意味し、したがって本発明のフレキシブルプラスチックフィルムは、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)ディスプレイのカバーフィルムなどで適用可能である。
【0014】
本明細書で、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを全て含む意味である。
【0015】
本明細書で、「光透過性基材」は、可視光線領域、例えば380~780nm範囲で光透過度が50%以上である基材を意味する。
【0016】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例を挙げると、Polymer Laboratories PLgel MIX-Bの長さ300mmカラムを利用してWaters PL-GPC220機器を利用し、評価温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として利用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を利用して形成された検定曲線を利用してMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、2,000/10,000/30,000/70,000/200,000/700,000/2,000,000/4,000,000/10,000,000の9種を使用した。
【0017】
発明の一具現例によれば、バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子3重量部以下を含む第1ハードコーティング層;バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子10~45重量部を含む第2ハードコーティング層;および光透過性基材が順次に積層され、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比は、10:90~40:60であるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムが提供され得る。
【0018】
本発明者らは、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムに適用可能な光学積層体に関する研究を行い、光透過性基材の一面に2層構造のハードコーティング層を有する光学積層体において、前記光透過性基材と接する下部ハードコーティング層(以下、第2ハードコーティング層という。)が上部ハードコーティング層(以下、第1ハードコーティング層という。)に比べて厚さが厚く、例えば第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比が10:90~40:60であり、前記第1および第2ハードコーティング層に特定の含有量で無機粒子を含む場合、高い硬度および優れた耐スクラッチ性を有しながらも、直径8mm以下のマンドレル(mandrel)に巻いた時、クラック(crack)が発生しないため、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムとして使用することができるという点を確認して発明を完成した。
【0019】
そして、このようなフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満たすように実現し、同時に優れた耐スクラッチ性および高硬度特性を示し、特に反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が殆どないため、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用することができるという点を実験を通して確認して発明を完成した。
【0020】
前述のように、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの曲げ耐久性、耐スクラッチ性および高硬度などの物性は、第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層に含まれる成分、特に、バインダー樹脂の成分と、バインダー樹脂に無機粒子を含むか否かおよびその含有量によるものであり得る。または、前述した物性は、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比とも関連していてもよい。
【0021】
前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムに含まれる光透過性基材上に2層構造のハードコーティング層が形成され得、前述のように、光透過性基材上に第2ハードコーティング層が形成され、前記第2ハードコーティング層上に第1ハードコーティング層が形成されることで、前記保護フィルムは順次に第1ハードコーティング層、第2ハードコーティング層および基材を含むことができる。前記保護フィルムは、光透過性基材および2層構造のハードコーティング層を含むことによって、優れた曲げ性、硬度、耐スクラッチ特性を同時に実現することができる。また、このような構造により柔軟性、耐スクラッチ性および高硬度の物性バランスを同時に満たすようにし、反復的な曲げや折りたたみ動作によっても内部構造に発生する損傷を防止することができ、同時に優れた機械的物性と耐熱性と共に高い透明度などの光学的特性を有することができる。
【0022】
前述した2層構造のハードコーティング層において、下部層である第2ハードコーティング層は、バインダー樹脂100重量部、およびバインダー樹脂100重量部に対して無機粒子10~45重量部、10~40重量部、15~35重量部、または20~30重量部を含む。一方、上部層である第1ハードコーティング層は、バインダー樹脂100重量部、および前記バインダー樹脂100重量部に対して無機粒子3重量部以下、1重量部以下、0.1重量部以下を含むか、無機粒子を含まなくてもよい。
【0023】
前記無機粒子は、ハードコーティング層の硬度を向上させる役割になり得るが、バインダー樹脂との多少弱い相互作用によりハードコーティング層の表面に無機粒子が存在する場合、表面粗度(roughness)により耐スクラッチ性が低下することがある。
【0024】
したがって、前記一具現例によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの耐スクラッチ性の向上のために、上部層である第1ハードコーティング層は、バインダー樹脂100重量部に対して3重量部以下、1重量部以下、0.1重量部以下含むか、無機粒子を含まなくてもよい。前記第1ハードコーティング層にバインダー樹脂100重量部に対して3重量部超過の無機粒子が含まれる場合、保護フィルムの耐スクラッチ性が低下して外部衝撃に簡単にスクラッチが発生することがある。
【0025】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの硬度向上のために、下部層である第2ハードコーティング層は、バインダー樹脂100重量部を基準として無機粒子を10~45重量部、10~40重量部、15~35重量部、20~30重量部で含むことができる。これにより、前記保護フィルムは、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満たすようにし、反復的な曲げや折りたたみ動作によっても内部構造に発生する損傷を防止することができ、同時に優れた機械的物性と耐熱性と共に高い透明度などの光学的特性を有することができる。
【0026】
前記第2ハードコーティング層において無機粒子が過度に少なく含まれる場合、十分な硬度を実現することができず、無機粒子が過度に多く含まれる場合、塗膜がブリットル(Brittle)になって曲げ特性が低下するという問題点がある。
【0027】
前記無機粒子は、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、酸化セリウムなどで形成された金属酸化物粒子;フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウムなどで形成された金属フッ化物粒子;金属スルフィド粒子;金属窒化物粒子;および金属粒子からなる群より選択された一つ以上であり得る。
【0028】
また、前記無機粒子の直径は、1~300nm、10~200nm、または30~100nmであり得る。
【0029】
前記一具現例によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、柔軟性、高硬度および耐スクラッチ性の物性バランスを同時に満たし、反復的な曲げや折りたたみ動作によっても内部構造に発生する損傷を防止することができ、高い機械的物性と耐熱性と共に高い透明度などの光学的特性を有することができる。また、このような物性バランスおよび優れた光学的特性は、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さとも関連していてもよい。
【0030】
前述した2層構造のハードコーティング層において、上部層である第1ハードコーティング層は、下部層である第2ハードコーティング層に比べて厚さが薄くてもよく、具体的に、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比は、10:90~40:60、15:85~35:65、または20:80~30:70であり得る。第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比が10:90未満であれば耐スクラッチ特性が低下することがあり、40:60を超えれば曲げ特性が低下するという問題点がある。
【0031】
一方、前記第1ハードコーティング層の厚さは、1μm~10μm、1μm~9μm、または2μm~7μmであり得る。前記第1ハードコーティング層の厚さが過度に厚い場合、曲げ特性が低下することがあり、過度に薄い場合、耐スクラッチ性が低下するという問題点がある。
【0032】
前記第2ハードコーティング層の厚さは、1μm~10μm、2μm~9μm、または3μm~8μmであり得る。前記第2ハードコーティング層の厚さが過度に厚い場合、曲げ特性が低下することがあり、過度に薄い場合、膜硬度が低下するという問題点がある。
【0033】
一方、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さの合計は、2μm~17μm、3μm~16μm、または4μm~15μmであり得る。
【0034】
前述した成分および特性を有する第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層を順次に積層した構造を含むことによって、高い水準の硬度を確保しながらも、同じ厚さのハードコーティング層を含む場合に比べてより優れた耐スクラッチ性、柔軟性および弾性を有し、さらにはカール(curl)発生が少なくてカール特性に優れている。
【0035】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さの合計が過度に大きくなる場合、反復的な曲げや折りたたみ動作に対する耐クラック性および耐久性などが低下することがある。一方、前述した厚さの合計が過度に薄くなる場合、硬度が低くなって外部衝撃にスクラッチが発生することがある。
【0036】
一方、前述したフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの特定の組成および構造により、保護フィルムに加えられる反復的な曲げや折りたたみ動作に対する耐久性にも優れている。
【0037】
具体的に、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの中間に4mmの間隔を置き、前記保護フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んでから広げることを常温で10万回反復した時、クラックが発生しないことができる。前記保護フィルムの中間に4mmの間隔を置いて折り畳んでから広げることを反復するのは、例えば、前記保護フィルムに直径4mmの棒を中心に行った曲げテストであり得る。
【0038】
図1は動的曲げ特性を評価する方法を概略的に示すものである。
【0039】
図1を参照すれば、前記保護フィルムを底と水平になるように置いた後、保護フィルムの中間部分に折りたたまれる部位の間隔が4mmになるようにし、保護フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んでから広げることを25℃で1.5秒当たり1回の速度で10万回反復する方式で曲げに対する耐久性を測定することができる。この時、折りたたまれる部位の間隔を一定に維持するために、例えば、前記保護フィルムに直径(R)4mmの棒が接するように置いて保護フィルムの残りの部分を固定し、棒を中心に保護フィルムの両側を折り畳んでから広げることを反復する方法を取ることができる。また前記折りたたまれる部分は保護フィルムの内部ではれば、特に制限されず、測定の便宜上、折りたたまれる部分を除いた保護フィルムの残り両側が対称になるように保護フィルムの中央部分が折りたたまれるようにすることができる。
【0040】
このような動的曲げ特性評価において、前記保護フィルムは10万回の曲げを実施した後にも1cm以上、または3mm以上のクラックが発生せず、実質的にクラックが発生しないことができる。特に、前記保護フィルムの内側および外側のうちいずれか一側に曲げてもクラックが発生せず、例えば、前記保護フィルムの光透過性基材を内側に折りたたんだり、第1ハードコーティング層を内側に折りたたんだりしてもクラックが発生しないようにすることができる。したがって、反復的に折りたたんだり、巻いたり、反るようにするなどの実際使用状態においてもクラックが発生する虞が非常に低いため、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムとして好適に適用することができる。
【0041】
また、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、前記第1ハードコーティング層の表面で測定した鉛筆硬度が750g荷重を基準としてH以上であり得る。
【0042】
また、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、前記第1ハードコーティング層の表面で水接触角が105°以上であり得る。前記保護フィルムがタッチパネルでディスプレイ面板に使用される場合、第1ハードコーティング層はタッチ表面として機能することができる。前記保護フィルムが105°以上の水接触角を有することによって、タッチ表面で指またはペンをスライドしてタッチパネルが自由に作動するようにすることができる。
【0043】
一方、前記具現例のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、550nmの波長領域の光に対して光透過率が90.0%以上、92.0%以上、または94.0%以上であり、ヘイズが1.0%以下、または0.7%以下、または0.5%以下であり得る。
【0044】
前記一具現例のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、高い硬度を有しながらも反復的な曲げや折りたたみ動作に対する耐久性を確保することができるハードコーティング層を含み、ハードコーティング層のこのような特徴は、ハードコーティング層に含まれているバインダー樹脂の組成および前述のような無機粒子の有無とその含有量と関連していてもよい。
【0045】
具体的に、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層に含まれるバインダー樹脂は、それぞれ独立して、多官能(メタ)アクリレート系化合物を含むことができる。前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、例えば、多官能(メタ)アクリレート系モノマー、多官能(メタ)アクリレート系オリゴマー、またはこれらの混合物であり得る。
【0046】
具体的に、第1ハードコーティング層と第2ハードコーティング層は、同一の多官能(メタ)アクリレート系化合物を含むか、または互いに異なる多官能(メタ)アクリレート系化合物を含むことができる。この時、前述のように、第1ハードコーティング層のバインダー樹脂は、バインダー樹脂100重量部に対して3重量部以下、1重量部以下、0.1重量部以下の無機粒子を含むか、または無機粒子を含まなくてもよく、前記第2ハードコーティング層は、バインダー樹脂100重量部に対して、無機粒子を10~45重量部、10~40重量部、15~35重量部、20~30重量部で含むことができる。
【0047】
具体的に、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、(メタ)アクリレート官能基を2~10個有し、重量平均分子量が50~2,000g/mol、10~1,000g/mol、または100~700g/molであり得、アクリレート当量(equivalent weight)は50~1000g/mol、100~900g/mol、または150~800g/molであり得る。
【0048】
また、前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層は、それぞれ独立して、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物を50重量部以上、60重量部~100重量部、または70重量部~95重量部で含むことができ、これにより前記バインダー樹脂を含むハードコーティング層の柔軟性が向上することができる。
【0049】
さらに、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、エチレンオキシド(ethylene oxide)、プロピレンオキシド(propylene oxide)、ウレタン(urethane)、カプロラクトン(caprolactone)、エポキシ(epoxy)およびエステル(ester)からなる群より選択された1種以上で変成されたものであり得る。具体的に、前記多官能(メタ)アクリレート系化合物は、柔軟性に優れ、これを利用するハードコーティング層に柔軟性を付与することができ、さらに、前述の変性された多官能(メタ)アクリレート系オリゴマーは、柔軟性がより向上し、これを利用したハードコーティング層の場合、カール特性および可撓性が増加することができる。
【0050】
前記多官能(メタ)アクリレート系オリゴマーは、アクリレート官能基を2~10個有し、重量平均分子量が200~2,000g/mol、300~1,000g/mol、または350~500g/molであり得、アクリレート当量(equivalent weight)が100~1000g/mol、200~900g/mol、または300~800g/molであり得る。前記(メタ)アクリレート系オリゴマーは、これにより限定するのではないが、例えば、ウレタン、エポキシ、エーテル、アルキレンオキシド(alkylene oxide)およびエステルからなる群より選択された一つ以上の作用基を含むことができる。
【0051】
一方、多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、アクリレート官能基を2~6個有し、重量平均分子量が50~600g/mol、50~500g/mol、または50~300g/molであり得る。また前記多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、アクリレート当量(equivalent weight)が50~300g/mol、70~250g/mol、または100~200g/molであり得る。前記多官能(メタ)アクリレート系モノマーは、これにより限定するのではないが、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。
【0052】
前記第1ハードコーティング層は、フッ素系添加剤、シリコン系添加剤およびフッ素-シリコン系添加剤からなる群より選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、指滑り性、汚れ抵抗性および汚れに対する拭き取り性(wipeability)を増進させることができる。前記第1ハードコーティング層においてバインダー樹脂100重量部に対して前記添加剤を0.5~5重量部、1~4重量部、または2~3重量部含むことができる。前記添加剤の含有量が過度に小さければ指滑り性、汚れ抵抗性および汚れに対する拭き取り性が低下することがあり、添加剤の含有量が過度に多ければ他の成分の含有量が少なくなって強度および耐スクラッチ性が低下することがある。
【0053】
前記フッ素系添加剤は、これにより限定するのではないが、フルオロポリエーテル、フルオロポリアルキル、またはこれらの混合物であり得る。また、前記シリコン系添加剤は、これにより限定するのではないが、ポリエーテル、アルキル、アクリル、エポキシなどの多様な有機基で変性されたシリコン樹脂であり得る。
【0054】
また、前記フッ素-シリコン系添加剤は、これにより限定するのではないが、少なくとも一つのシリコンに1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子、例えば、シロキサン-フルオロポリアルキル系化合物であり得る。
【0055】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、前述の特性を実現するために光学特性に優れ、柔軟性、高硬度および高耐スクラッチ性の物性バランスを同時に満たし、反復的な曲げや折りたたみ動作によっても内部構造に発生する損傷を防止することができる光透過性基材を含むことが好ましい。この時、前記光透過性基材は、可視光線領域、例えば380~780nm範囲で光透過度が50%以上である基材を意味する。
【0056】
具体的に、ASTM D1925の基準に基づいて測定した前記光透過性基材の黄色度指数が4.5以下、または3.8以下であり、ASTM D1003の基準に基づいて測定した前記光透過性基材のヘイズが1.1%以下、または0.4~0.8%であり得、そのために無色透明な光学特性を有することができる。
【0057】
前記光透過性基材は、前述した特性を満たすものであればその種類が大きく制限されないが、より具体的な例としては、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリイミドアミド(polyimideamide)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0058】
また、前記光透過性基材の厚さは、5μm~150μm、10μm~130μm、または20μm~100μmであり得る。前記光透過性基材の厚さが過度に薄ければコーティング層形成工程時に破断されたり、カール(curl)が発生したりする虞があり、高硬度を達成し難いこともある。反面、厚さが過度に厚ければ、柔軟性が落ちてフレキシブルフィルムの形成が難しいこともある。
【0059】
一方、前記第1ハードコーティング層、第2ハードコーティング層および光透過性基材の厚さの合計は、40μm~150μm、50μm~140μm、60μm~130μm、または60μm~120μmであり得る。
【0060】
前述のように、所定の成分および特性を有する第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層を順次に積層した構造を含むことによって、高い水準の硬度を確保しながらも、同じ厚さのハードコーティング層を含む場合に比べてより優れた耐スクラッチ性、柔軟性および弾性を有し、さらにカール(curl)発生が少なくてカール特性が優れるようになり得るが、そのために光透過性基材の厚さを大きく増加させなくてもフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムとして要求される機械的物性または弾性物性を確保することができる。
【0061】
前記第1ハードコーティング層、第2ハードコーティング層および光透過性基材の厚さの合計が過度に厚い場合、反復的な曲げや折りたたみ動作に対する耐クラック性が低下したり柔軟性が低下することがあり、前述した厚さの合計が過度に薄い場合、硬度が低くなって外部衝撃にスクラッチが発生したり、カール(Curl)が発生することがある。
【0062】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、前記光透過性基材の少なくとも一面に第2ハードコーティング層形成用コーティング組成物を塗布し光硬化して第2ハードコーティング層を形成し、前記第2ハードコーティング層に第1ハードコーティング層形成用コーティング組成物を塗布し光硬化して提供され得る。
【0063】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、本技術が属する技術分野で使用され得るものであれば特に制限されず、例えばバーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、ソリューションキャスティング(solution casting)方式などを利用することができる。
【0064】
前記光透過性基材と第2ハードコーティング層との間や、前記第1ハードコーティング層と第2ハードコーティング層との間や、第1ハードコーティング層の上に、プラスチック樹脂フィルム、粘着フィルム、離型フィルム、導電性フィルム、導電層、液晶層、コーティング層、硬化樹脂層、非導電性フィルム、金属メッシュ層またはパターン化された金属層のような層、膜、またはフィルムなどを1個以上でさらに含むことができる。
【0065】
例えば、前記光透過性基材に導電性を有する帯電防止層を先に形成した後、その上に第2ハードコーティング層を形成して帯電防止(anti-static)機能を付与したり、第1ハードコーティング層上に低屈折率層を導入して低反射(low reflection)機能を実現したりすることもできる。
【0066】
また、前記層、膜、またはフィルムなどは、単一層、二重層または積層型の如何なる形態にもなり得る。前記層、膜、またはフィルムなどは、独立した(freestanding)フィルムを接着剤または粘着性フィルムなどを使用してラミネーション(lamination)したり、コーティング、蒸着、スパッタリングなどの方法で前記コーティング層の上に積層させたりすることができるが、本発明がこれに制限されるのではない。
【0067】
一方、前記第1および第2ハードコーティング層は、前記バインダー樹脂、無機微粒子など以外にも、光開始剤、有機溶媒、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤、色値改善のための染料など本発明が属する技術分野における通常使用される成分を追加的に含むことができる。またその含有量は、前記ハードコーティング層の物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるため、特に制限しないが、例えば前記ハードコーティング層100重量部に対して、約0.01~約30重量部で含まれ得る。
【0068】
前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤であり得る。この時、前記界面活性剤は、前記ハードコーティング層内に分散または架橋されている形態で含まれ得る。
【0069】
また、前記添加剤として、UV吸収剤、またはUV安定剤を含むことができ、前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。
【0070】
前記光開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに制限されない。また現在市販されている商品としては、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。これら光開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0072】
一方、発明の他の具現例によれば、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウが提供され得る。
【0073】
また、前記フレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウは、前記カバーウィンドウ用保護フィルムの一面に形成され、20μm~180μmの厚さを有するガラス(Glass)カバーまたはプラスチックフィルムカバーをさらに含むことができる。つまり、前記フレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウは、カバー、および前記カバー一面に形成された前記カバーウィンドウ用保護フィルムを含み、前記カバーは、ガラス(Glass)カバーまたはプラスチックフィルムカバーであり得る。
【0074】
前記ガラスカバーおよびプラスチックフィルムカバーは、透明な特性を有することができ、これによりフレキシブルディスプレイ装置内部のディスプレイパネルから出力される光を透過させることができる。
【0075】
また、前記ガラスカバーは、高硬度および優れた耐スクラッチ性を有することができるが、耐衝撃性が低下して壊れやすいこともある。前記ガラスカバーは、例えば、高屈折率のガラス(例えば、屈折率1.65以上)を含むことができるが、これにより限定するのではない。しかし、前記他の具現例によるフレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウは、前記ガラスパネル上に前記保護フィルムを形成することによって、ガラスパネルの耐衝撃性を向上させ、外部衝撃によりスクラッチまたは凹みなどが発生することを防止することができ、ガラスパネルが壊れた場合、飛散を止して使用者の取り扱いにおいて危険性を防止することができる。
【0076】
また、前記プラスチックフィルムカバーは、高硬度および優れた耐スクラッチ性を有することができ、例えば、ポリイミドフィルム、ポリイミドアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、環状オレフィンポリマーフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、およびトリアセチルセルロースフィルムからなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0077】
前記ガラスカバーおよびプラスチックフィルムカバーの厚さは、それぞれ独立して、20μm~180μmであり得る。前記厚さが過度に薄ければ硬度特性が低下するという問題点があり、過度に厚ければ動的曲げ試験結果、クラックが発生するという問題点がある。
【0078】
例えば、前記ガラスカバーは、厚さが20μm~180μm、25μm~150μm、30μm~120μm、または30μm~100μmであり得る。
【0079】
また、前記プラスチックフィルムカバーは、厚さが20μm~180μm、30μm~170μm、40μm~150μm、または50μm~130μmであり得る。
【0080】
前記フレキシブルディスプレイ装置用カバーウィンドウは、粘着層をさらに含むことができる。前記粘着層は、カバーと保護フィルムとの間に配置され得る。前記粘着層は、常温で圧力(押さえる力)によりカバーと保護フィルムを付着することができる。
【0081】
前記粘着層は、接着剤または粘着性フィルムなどで具現され得、当該技術分野に知られているものであれば特に制限されない。一方、粘着性フィルムは、当該技術分野に知られているものであれば特に制限されないが、OCA(optically clear adhesive)フィルムのような両面粘着フィルムを使用することができる。
【0082】
一方、発明のまた他の具現例によれば、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを含むディスプレイ装置が提供され得る。
【0083】
前記ディスプレイ装置は、フレキシブルディスプレイ装置であり得、例えば、前記フレキシブルディスプレイ装置は、カーブド(curved)、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)形態の移動通信端末、スマートフォン、タブレットPCのタッチパネル、ウェアラブル装置および各種ディスプレイを全て含むことができる。多様な実施例によれば、ウェアラブル装置は、アクセサリー型(例:時計、指輪、腕輪、アンクレット、ネックレス、眼鏡、コンタクトレンズ、またはヘッドマウントディスプレイ(head-mounted-device(HMD))、織物または衣類一体型(例:電子衣服)、身体付着型(例:スキンパッド(skin pad)または入れ墨)、または生体移植型(例:implantable circuit)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0084】
前記フレキシブルディスプレイ装置は、ディスプレイパネルおよびカバーウィンドウを含むことができる。また、前記カバーウィンドウは、カバーおよび保護フィルムを含むことができ、カバーと保護フィルムとの間に粘着層をさらに含むことができる。
【0085】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)装置、発光ダイオード(LED)ディスプレイ装置、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ装置、微小電子機械システム(MEMS)ディスプレイ装置または巻取可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)であり得る。
【0086】
例えば、前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ装置は、前記フレキシブル有機発光ダイオードディスプレイ装置のカバーウィンドウが光や画面が出る方向の外側部に位置することができ、電子を提供する負極(cathode)、電子輸送層(Eletron Transport Layer)、発光層(Emission Layer)、正孔輸送層(Hole Transport Layer)、正孔を提供する正極(anode)が順次に形成され得る。また、前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、正孔注入層(HIL、Hole Injection Layer)と電子注入層(EIL、Electron Injection Layer)をさらに含むこともできる。
【0087】
前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイがフレキシブルディスプレイの役割および作動をするために、前記負極および正極の電極と、各構成成分を所定の弾性を有する材料で使用することができる。
【0088】
前記フレキシブルディスプレイ装置の他の一例として、巻取可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)が挙げられる。
【0089】
一方、前記巻取可能ディスプレイ装置は、適用分野および具体的な形態などにより多様な構造を有することができ、例えばカバーウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であり得る。
【発明の効果】
【0090】
本発明によれば、柔軟性、高硬度および耐スクラッチ性の物性バランスを同時に満足しながら、特に反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が殆どなく、ガラスカバーまたはプラスチックフィルムカバーの耐衝撃性を向上させ、ガラスカバーが壊れた場合、飛散を防止するフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムが提供され得る。
【0091】
また、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムを含むカバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイ装置は、柔軟性、屈曲性、高硬度、耐スクラッチ性、高透明度を示し、特に、反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が少ないため、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器板の前面板、表示部などに有用に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】実験例3の曲げ耐久性テストを実施する方法を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これにより発明の権利範囲が定められるのではない。
【0094】
[製造例:ハードコーティング層形成用コーティング液の製造]
【0095】
製造例1-1
多官能アクリレート系化合物であるMF001(製造会社:Daiichi Kogyo Seiyaku、5~6官能、エチレンオキシド変性)100g、フッ素系添加剤であるRS-537(製造会社:DIC)2g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第1ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0096】
製造例1-2
多官能アクリレート系化合物であるCN9013(製造会社:Sartomer、9官能、ウレタン変性)100g、フッ素系添加剤であるRS-537(製造会社:DIC)2g、光開始剤であるI907(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第1ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0097】
製造例1-3
多官能アクリレート系化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート(製造会社:Cytec、重量平均分子量:296g/mol、アクリレート基当量:99g/mol)100g、フッ素系添加剤であるRS-537(製造会社:DIC)2g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第1ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0098】
製造例1-4
多官能アクリレート系化合物であるMF001(製造会社:Daiichi Kogyo Seiyaku、5~6官能、エチレンオキシド変性)100g、フッ素系添加剤であるRS-537(製造会社:DIC)2g、無機粒子であるMEK-AC-4130Y(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:50nm、固形分30%)67g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第1ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0099】
製造例2-1
多官能アクリレート系化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート(製造会社:Cytec、重量平均分子量:296g/mol、アクリレート基当量:99g/mol)50g、多官能アクリレート系化合物であるPS4040(製造会社:Miwon、重量平均分子量:1300g/mol、アクリレート基当量:325、4官能、エステル変性)50g、無機粒子であるMEK-AC-4130Y(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:50nm、固形分30%)67g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0100】
製造例2-2
多官能アクリレート系化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート(製造会社:Cytec、重量平均分子量:296g/mol、アクリレート基当量:99g/mol)50g、多官能アクリレート系化合物であるM244(製造会社:Miwon、重量平均分子量:468g/mol、アクリレート基当量:234g/mol、2官能、エポキシ変性)50g、無機粒子であるMEK-AC-4130Y(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:50nm、固形分30%)67g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0101】
製造例2-3
多官能アクリレート系化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート(製造会社:Cytec、重量平均分子量:296g/mol、アクリレート基当量:99g/mol)50g、多官能アクリレート系化合物であるPS4040(製造会社:Miwon、重量平均分子量:1300g/mol、アクリレート基当量:325、4官能、エステル変性)50g、無機粒子であるMEK-AC-2140Z(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:12nm、固形分40%)112.5g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、および溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0102】
製造例2-4
多官能アクリレート系化合物であるトリメチロールプロパントリアクリレート(製造会社:Cytec、重量平均分子量:296g/mol、アクリレート基当量:99g/mol)50g、多官能アクリレート系化合物であるPS4040(製造会社:Miwon、重量平均分子量:1300g/mol、アクリレート基当量:325、4官能、エステル変性)50g、無機粒子であるMEK-AC-2140Z(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:12nm、固形分40%)125g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0103】
製造例2-5
多官能アクリレート系化合物であるペンタエリスリトールトリアクリレート(製造会社:Kyoeisha、重量平均分子量:298g/mol、アクリレート基当量:100g/mol)100g、無機粒子であるMEK-AC-2140Z(シリカゾル、製造会社:Nissan Chemical、直径:12nm、固形分40%)125g、光開始剤であるI184(製造会社:Ciba)2g、溶媒であるメチルイソブチルケトン100gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液を製造した。
【0104】
[実施例および比較例:フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルム]
光透過性基材であるポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にそれぞれ下記表1に記載された第2ハードコーティング層形成用コーティング液をバーコーティング方式で塗布し、60℃で2分間空気(Air)雰囲気下で乾燥した。窒素雰囲気下で水銀ランプ(光量:100mJ/cm2)で光硬化して第2ハードコーティング層を製造した。
【0105】
その後、前記第2ハードコーティング層上にそれぞれ下記表1に記載された第1ハードコーティング層形成用コーティング液をバーコーティング方式で塗布し、60℃で2分間空気(Air)雰囲気下で乾燥した。窒素雰囲気下で水銀ランプ(光量:200mJ/cm2)で光硬化して第1ハードコーティング層を製造してカバーウィンドウ用保護フィルムを製造した。
【0106】
硬化が完了した後、第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さと、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは、デジタルマイクロメーターを利用して測定し、その結果を下記表1に示した。
【0107】
【0108】
<実験例:フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムの物性測定>
【0109】
実験例1:鉛筆硬度
実施例および比較例のそれぞれの保護フィルムの第1ハードコーティング層に対して、鉛筆硬度測定器を利用して測定標準JIS K5400-5-4により750gの荷重、45度の角度で3回往復した後、切り傷がない最大硬度を確認した。
【0110】
実験例2:屈曲性テスト
測定標準JIS K5600-5-1の方法により実施例および比較例のそれぞれの保護フィルムに対して多様な直径の円筒形マンドレルに挟んで巻いた後、長さ3mm以上のクラックが発生しない最小直径を測定した。
【0111】
実験例3:曲げ耐久性テスト
図1は本発明の一実施例による保護フィルムに対して、曲げ耐久性および曲げ安定性テストを実施する方法を概略的に示す図面である。
【0112】
実施例および比較例の保護フィルムに対して裁断するが、エッジ(edge)部位の微細クラックを最小化するように80x140mmの大きさでレーザ裁断した。測定装備の上にレーザ裁断されたフィルムを載せ、光透過性基材を内側にし、折りたたまれる部位の間隔(内側曲率直径)が4mmになるようにして、常温で保護フィルムの両側を底面に対して90度に折り畳んでから広げることを連続動作(フィルムが折りたたまれる速度は1.5秒当たり1回)で1万回反復した。
【0113】
1万回反復後、フィルムを引き離した後、長さ3mm以上のクラックが発生したか否かを観察した。クラックが発生しなかった場合、再び1万回曲げおよびクラック発生の有無を観察することを反復してクラックが発生しない最大反復回数を測定した。10万回反復時までクラックが発生しない場合は良好と判定し、クラックが発生した場合は不良と判定した。
【0114】
実験例4:耐スクラッチ性の評価
実施例および比較例のそれぞれの保護フィルムにおいて全面に形成されたハードコーティング層に対して、スチールウール(#0000)に荷重500gfをかけ、30rpm速度で100回往復して、ハードコーティングフィルムの表面を測定する。肉眼で観察される1cm以下のスクラッチが一つ以下観察されると良好と判定し、スクラッチが1個超えて観察されると不良と判定した。
【0115】
実験例5:透過率およびヘイズ
実施例および比較例のそれぞれの保護フィルムに対して分光光度計(機器名:COH-400)を利用して透過率およびヘイズを測定した。
【0116】
実施例および比較例に対する前記物性測定結果を下記表2に示した。
【0117】
【0118】
前記表2に示されているように、実施例のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用保護フィルムは、高硬度を示しながら十分な柔軟性を同時に満たすように具現し、優れた耐スクラッチ性、および透過率とヘイズに関する光学特性を示し、特に反復的な曲げや折りたたみ動作によってもフィルムの損傷が殆どないため、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用することができるという点が確認された。
【0119】
これに反し、比較例の保護フィルムは、実施例とは異なり相対的に低い耐スクラッチ性を有するか、またはフレキシブルディスプレイ装置の保護フィルムとして使用できる程度の曲げ耐久性を示すことができなかった。
【0120】
具体的に、第1ハードコーティング層だけ含む比較例1と、第1ハードコーティング層が第2ハードコーティング層に比べて厚さが厚い比較例3と、第2ハードコーティング層にナノシリカをバインダー樹脂100重量部に対して45重量部超えて含む比較例5および6の場合、フレキシブルディスプレイ装置の保護フィルムとして使用できる程度の曲げ耐久性を示すことができないことを確認した。
【0121】
一方、第1ハードコーティング層にナノシリカをバインダー樹脂100重量部に対して3重量部超えて含む比較例2と、第2ハードコーティング層だけ含む比較例4の場合、低い耐スクラッチ性が示されることを確認した。