(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-07
(45)【発行日】2024-10-16
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20241008BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
H05K3/38 A
H05K3/18 K
(21)【出願番号】P 2020174190
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019194784
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】深澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智生
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-080946(JP,A)
【文献】特開2016-082036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層
の上面の一部の上に形成された配線層と、
を有し、
前記絶縁層の前記
上面に、平面視でミアンダ形状を有するナノメートルオーダの溝が形成されており、
前記溝の平均幅は1nm以上100nm未満であり、
前記配線層は、
前記絶縁層と接するシード層と、
前記シード層上の金属めっき層と、
を有し、
前記配線層は、前記シード層が前記溝に充填されて形成されたアンカー部を有
し、
前記絶縁層の前記上面は、
前記配線層により覆われた第1領域と、
前記配線層により覆われていない第2領域と、
を有し、
前記第1領域内の前記絶縁層の前記上面は、前記第2領域内の前記絶縁層の前記上面より上方に突出することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記溝の平均ピッチは10nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記溝の平均幅は3nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記
上面に存在する溝について(溝の長さ)/(溝の平均幅)の比率を求めたとき、前記比率の平均値が4.0以上となる表面構造を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記
上面に占める前記溝の割合は10面積%以上60面積%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記溝の平均深さは10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記シード層は銅ニッケル合金からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項8】
絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の第1の面上に、前記絶縁層側の面とは反対側の第2の面にナノメートルオーダの第1の溝を含む第1の膜を形成する工程と、
前記第1の溝を前記絶縁層まで貫通させて、前記第1の膜に溝状の開口部を形成する工程と、
前記開口部が形成された前記第1の膜をマスクとして前記絶縁層をエッチングし、前記第1の面に、前記開口部に倣うナノメートルオーダの第2の溝を形成する工程と、
前記第2の溝に入り込むアンカー部を備えた配線層を形成する工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1の膜をスパッタ法により形成することを特徴とする請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1の溝は、平面視でミアンダ形状を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記第1の膜の形成、前記開口部の形成及び前記第2の溝の形成を単一のスパッタ装置内で行うことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記配線層を形成する工程は、
前記スパッタ装置内でシード層を形成する工程と、
前記シード層上に金属めっき層を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項11に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
前記配線層を形成する工程は、
ウェット処理によりシード層を形成する工程と、
前記シード層上に金属めっき層を形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項14】
前記シード層として、銅ニッケル合金層を形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の配線基板の製造方法。
【請求項15】
前記第2の溝を形成する工程と前記配線層を形成する工程との間に、前記第1の膜を除去する工程を有することを特徴とする請求項8乃至14のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1の膜を除去する工程と前記配線層を形成する工程との間に、前記第1の面に窒素ガスを用いたプラズマ処理を行う工程を有することを特徴とする請求項15に記載の配線基板の製造方法。
【請求項17】
前記第1の膜をウェットエッチングにより除去することを特徴とする請求項15又は16に記載の配線基板の製造方法。
【請求項18】
前記配線層を形成する工程の後に、前記絶縁層の前記配線層から露出する前記第2の溝が形成された表層部をエッチングする工程を有することを特徴とする請求項8乃至17のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項19】
前記表層部をエッチングする工程の後に、前記絶縁層の前記配線層から露出する部分に、ナノメートルオーダの第3の溝を形成する工程を有することを特徴とする請求項18に記載の配線基板の製造方法。
【請求項20】
前記第1の膜として、融点が1100℃以下の金属の膜を形成することを特徴とする請求項8乃至19のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板の製造に際して、絶縁層のデスミア処理が行われることがある。デスミア処理により、絶縁層の表面にマイクロメートルオーダの凹凸が形成され、絶縁層と配線層との間の密着性を向上することができる。しかし、マイクロメートルオーダの凹凸が絶縁層の表面に形成されている場合、信号の伝送速度が速くなるほど、表皮効果により信号伝達経路が長くなり、伝送損失が増大する。
【0003】
伝送損失を抑制しながら、絶縁層と配線層との間の密着性を向上させることを目的とした方法が特許文献1に記載されている。また、絶縁層の表面にプライマ層を形成して配線層との密着性を向上させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法によれば所期の目的は達成されるものの、十分な密着性が得られないことがある。また、プライマ層を形成する技術は、適用可能な材料が限定的であり、汎用性が低い。
【0006】
本開示は、高周波信号に対する良好な伝送特性を得ながら、絶縁層と配線層との間の密着強度の高い配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、絶縁層と、前記絶縁層の上面の一部の上に形成された配線層と、を有し、前記絶縁層の前記上面に、平面視でミアンダ形状を有するナノメートルオーダの溝が形成されており、前記溝の平均幅は1nm以上100nm未満であり、前記配線層は、前記絶縁層と接するシード層と、前記シード層上の金属めっき層と、を有し、前記配線層は、前記シード層が前記溝に充填されて形成されたアンカー部を有し、前記絶縁層の前記上面は、前記配線層により覆われた第1領域と、前記配線層により覆われていない第2領域と、を有し、前記第1領域内の前記絶縁層の前記上面は、前記第2領域内の前記絶縁層の前記上面より上方に突出する配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高周波信号に対する良好な伝送特性を得ながら、絶縁層と配線層との間の密着強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】第1の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【
図4】第1の実施形態における絶縁層の面を例示する平面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その1)である。
【
図6】第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その2)である。
【
図7】第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その3)である。
【
図8】第1の実施形態における配線層及び絶縁層の形成方法を例示する断面図(その1)である。
【
図9】第1の実施形態における配線層及び絶縁層の形成方法を例示する断面図(その2)である。
【
図10】第1の実施形態における配線層及び絶縁層の形成方法を例示する断面図(その3)である。
【
図11】マスク用膜を例示する平面図(その1)である。
【
図12】マスク用膜を例示する平面図(その2)である。
【
図13】第1の実施形態の第1の変形例における配線層及び絶縁層の形成方法を例示する断面図である。
【
図14】第1の実施形態の第2の変形例に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【
図15】第1の実施形態の第2の変形例に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【
図16】第1の実施形態の第3の変形例に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【
図17】第1の実施形態の第3の変形例に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【
図18】第2の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【
図19】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その1)である。
【
図20】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その2)である。
【
図21】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その3)である。
【
図22】第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図(その4)である。
【
図24】絶縁層の面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を例示する図である。
【
図25】
図24に示すSEM写真の2値化処理の結果を示す図である。
【
図28】マスク用膜の表面のSEM写真を例示する図(その1)である。
【
図29】マスク用膜の表面のSEM写真を例示する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。また、図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。なお、本開示において、「平面視」とは、対象物を
図2等の鉛直方向(図中上下方向)から視ることをいい、「平面形状」とは、対象物を
図1等の鉛直方向から視た形状のことをいう。
【0011】
(本開示における溝)
本開示において、層又は膜の面に形成された凹部であって、当該凹部の平面形状の長さが、当該凹部の平均幅の2.0倍以上となるような細長い形状の凹部を溝と定義する。
【0012】
図1に示す凹部12は、層の面11に形成されている。凹部12には中間軸(medial axis:MA)13を定義することができる。凹部12は、分岐していてもよい。本開示では、分岐した部分も含め、凹部12の中間軸13の総長さを凹部12の長さとする。
【0013】
中間軸13と直交する直線の一部であって、凹部12の輪郭との2つの交点を結ぶ線分14の長さを、凹部12の中間軸13の当該線分14との交点における幅とする。中間軸13上での線分14の間隔を無限に小さくすると、これら無限数の線分14の長さの平均値は、平面視での凹部12の面積を、中間軸13の総長さ、すなわち凹部12の長さで除した値と実質的に等しくなる。本開示では、凹部12の面積を、中間軸13の総長さ、すなわち凹部12の長さで除した値を凹部12の平均幅とする。
【0014】
層又は膜に形成された開口部については、当該開口部の平面形状の長さが、当該開口部の平均幅の2.0倍以上となるような細長い形状の開口部を溝状の開口部と定義する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、コア基板を含む配線基板に関する。
【0016】
[配線基板の構造]
配線基板の構造について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【0017】
図2に示すように、第1の実施形態に係る配線基板100は、支持体としてコア配線基板101を含む。コア配線基板101はガラスエポキシ樹脂や、ビスマレイミドトリアジン樹脂等の絶縁材料から形成されるコア基板102を含む。コア基板102の両面に銅等からなる第1の配線層104が形成されている。コア基板102には厚さ方向に貫通するスルーホール103Aが形成されており、スルーホール103A内に貫通導体103が設けられている。コア基板102の両側の第1の配線層104は貫通導体103を介して相互に接続されている。スルーホール103Aの側壁にスルーホールめっき層が形成され、スルーホール103Aの残りの孔には樹脂体が充填されていてもよい。この場合、コア基板102の両側の第1の配線層104はスルーホールめっき層を介して相互に接続される。
【0018】
コア基板102の両側に第1の絶縁層105が形成されている。第1の絶縁層105は、コア基板102とは反対側の面105aと、コア基板102側の面105bとを有する。第1の絶縁層105には、第1の配線層104の接続部に到達するビアホール106が形成されており、第1の絶縁層105上に、ビアホール106内のビア導体を介して第1の配線層104に接続される第2の配線層107が形成されている。更に、コア基板102の両側において、第1の絶縁層105上に第2の絶縁層108が形成されている。第2の絶縁層108は、コア基板102とは反対側の面108aと、コア基板102側の面108bとを有する。第2の絶縁層108には、第2の配線層107の接続部に到達するビアホール109が形成されており、第2の絶縁層108上に、ビアホール109内のビア導体を介して第2の配線層107に接続される第3の配線層110が形成されている。
【0019】
コア基板102の両側において、第2の絶縁層108上にソルダレジスト層150が形成されている。コア基板102の半導体チップと接続される側のソルダレジスト層150に第3の配線層110の接続部に達する開口部151が形成されている。コア基板102の反対側のソルダレジスト層150には第3の配線層110の接続部に達する開口部152が形成されている。
【0020】
ここで、第1の絶縁層105及び第2の配線層107の構造について詳細に説明する。
図3は、第1の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
図3は、
図2中のA部を拡大して例示する。
図4は、第1の実施形態における第1の絶縁層105の面105aを例示する平面図である。
図4中のIII-III線に沿った断面が
図3に現れている。
【0021】
図3及び
図4に示すように、第1の絶縁層105の面105aには、複数の溝105xが形成されている。溝105xは、平面視でミアンダ形状を有する。すなわち、溝105xは、平面視で蛇行する部分を有する。本開示において、ミアンダ形状の溝(凹部)とは、方向依存性なくランダムな方向に伸びている形状の溝(凹部)をいう。ミアンダ形状には、網目形状及び迷路形状等も含まれる。溝105xは、ナノメートルオーダの溝である。すなわち、溝105xの平均幅は、1nm以上100nm未満であり、好ましくは3nm以上50nm以下である。なお、
図3では溝105xの幅が場所によって相違しているが、これは溝105xがミアンダ形状を有しているためである。
図4に示すように、断面観察する位置により溝105xの見え方が相違するが、平面視した場合の溝105xの幅は概ね均一である。
【0022】
面105aは、第2の配線層107に被覆された被覆領域105sと、第2の配線層107から露出している露出領域105tとを有する。溝105xは、被覆領域105s及び露出領域105tの両方に形成されている。第2の配線層107は、溝105xに入り込むアンカー部107yを有し、被覆領域105sに直接接触する。第2の絶縁層108は、溝105xに入り込むアンカー部108yを有し、露出領域105tに直接接触する。
【0023】
図示を省略するが、第2の絶縁層108の面108aにも、溝105xと同様の形態の溝が形成されている。第3の配線層110は、面108aに形成された溝に入り込むアンカー部を有する。ソルダレジスト層150は、面108aに形成された溝に入り込むアンカー部を有する。
【0024】
第1の配線層104、第2の配線層107及び第3の配線層110は、例えば、銅層等を含む導電層である。第1の絶縁層105及び第2の絶縁層108は、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等の絶縁樹脂を含む樹脂層である。第1の絶縁層105及び第2の絶縁層108が、シリカ等のフィラーを含有していてもよい。
【0025】
第1の実施形態では、面105aに溝105xが形成され、第2の配線層107が溝105xに入り込むアンカー部107yを有するため、第1の絶縁層105と第2の配線層107との間の密着性を向上することができる。
【0026】
溝105xはミアンダ形状を有し、面内を高密度で埋め尽くしており、その内部に入り込んだアンカー部107yは平面内の任意の方向(全方向)にある程度の長さをもって広がった根のような構造となる。そのため、第2の配線層107のアンカー部107y上の部分に局所的な応力がかかった場合でも、応力が全方向に分散されることにより、アンカー部107yが破断しにくく、優れた密着性を得ることができる。例えば凹部がピンホール形状である場合は、アンカー部は杭状となり、杭の径がナノサイズになると、アンカー部自体の破断強度が小さくなり、応力が集中すると容易に破断してしまう。また、溝が直線形状である場合は、本開示と同様にアンカー部が長く延びた形状となるため、応力は分散されるものの、面内で密着強度の方向依存性が生じ得る。
【0027】
同様に、第2の絶縁層108の面108aに溝105xと同様の形態の溝が形成され、第3の配線層110が面108aに形成された溝に入り込むアンカー部を有するため、第2の絶縁層108と第3の配線層110との間の密着性も向上することができる。
【0028】
また、面105aに溝105xが形成され、第2の絶縁層108が溝105xに入り込むアンカー部108yを有するため、第1の絶縁層105と第2の絶縁層108との間でも密着性を向上することができる。
【0029】
また、溝105xがナノメートルオーダの溝であるため、表皮効果による信号伝達経路の拡大を抑え、高周波信号に対する良好な伝送特性を得ることができる。
【0030】
なお、コア基板102の半導体チップと接続される側において、第3の配線層110の接続部上に、開口部151を通じてソルダレジスト層150の上方まで突出する接続端子が形成されていてもよい。
【0031】
[配線基板の製造方法]
次に、配線基板の製造方法について説明する。
図5~
図7は、第1の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【0032】
まず、
図5(a)に示すように、支持体としてコア配線基板101を準備する。コア配線基板101はコア基板102及び第1の配線層104を備えている。コア基板102には厚さ方向に貫通するスルーホール103Aが形成されており、スルーホール103A内に貫通導体103が設けられている。例えば、スルーホール103Aはドリルやレーザを用いた加工等により形成することができ、貫通導体103及び第1の配線層104はめっき法及びフォトリソグラフィ等により形成することができる。なお、コア配線基板101としては、配線基板100が複数個取れる大判の基板が使用される。つまり、コア配線基板101は、配線基板100に対応する構造体が形成される複数の領域を有している。
【0033】
次いで、
図5(b)に示すように、コア基板102の両側に未硬化の樹脂フィルムを貼付し、加熱処理して硬化させることにより、第1の絶縁層105を形成する。第1の絶縁層105は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂から形成される。液状樹脂を塗布することにより、第1の絶縁層105を形成してもよい。その後、コア基板102の両側の第1の絶縁層105をレーザで加工することにより、第1の配線層104の接続部に到達するビアホール106を第1の絶縁層105に形成する。
【0034】
次いで、
図6(a)に示すように、コア基板102の両側において、ビアホール106内のビア導体を介して第1の配線層104に接続される第2の配線層107を第1の絶縁層105上に形成する。
【0035】
次いで、
図6(b)に示すように、コア基板102の両側において、第1の絶縁層105上に第2の絶縁層108を形成する。第2の絶縁層108は、第1の絶縁層105と同様の方法で形成することができる。
【0036】
ここで、第2の配線層107及び第2の絶縁層108の形成方法について詳しく説明する。第2の配線層107はセミアディティブ法によって形成することができる。
図8~
図10は、第1の実施形態における第2の配線層107及び第2の絶縁層108の形成方法を例示する断面図である。
図8~
図10には、
図3と同じ箇所を図示している。
【0037】
上述のように、第1の配線層104の接続部に到達するビアホール106を第1の絶縁層105に形成する(
図8(a)参照)。その後、第1の絶縁層105の面105aと、ビアホール106の側面と、第1の配線層104のビアホール106から露出する露出面104aとのクリーニングを行う。このクリーニングでは、例えば、スパッタ装置内で、逆スパッタのプラズマエッチングを行う。このプラズマエッチングでは、例えば、アルゴンガス又は窒素ガスをプロセスガスとして用いることができる。アルゴンガス及び窒素ガスの混合ガスをプロセスガスとして用いてもよい。また、ビアホール106の底部に生じる絶縁樹脂の残渣(スミア)を除去するために、クリーニング前にプラズマエッチングをしてもよい。このプラズマエッチングでは、例えば、四フッ化メタンガス、酸素ガス、窒素ガス、もしくはアルゴンガス、又は、それらの混合ガスをプロセスガスとして用いることができる。
【0038】
次いで、
図8(b)に示すように、面105a及び露出面104aの上に、凹部911及び凸部912を有するマスク用膜910を形成する。マスク用膜910は、コア基板102とは反対側の面910aと、コア基板102側の面910bとを有する。
図11は、マスク用膜910を例示する平面図である。マスク用膜910としては、例えば銅膜を形成することができる。マスク用膜910は、例えば、クリーニングに用いたスパッタ装置内でスパッタ法により形成することができる。すなわち、
図8(a)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、クリーニングに引き続いてマスク用膜910を形成することができる。マスク用膜910として、例えば、アルミニウム、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル又は銅ニッケル合金の膜を形成してもよい。面105aは第1の面の一例である。
【0039】
マスク用膜910の平均厚さは、例えば5nm~15nm程度とする。スパッタ法でマスク用膜910を形成する場合、皮膜が核成長するように、マスク用膜910の材料を選択し、成膜条件を調整する。例えば、マスク用膜910の材料としては、銅、アルミニウム、亜鉛等の、融点が1100℃以下の金属を用いることが好ましい。成長初期では、面105a及び露出面104aの複数箇所でマスク用膜910の核形成が起こる。その後、核が大きくなり、核同士が結合して、面105a及び露出面104aの全体がマスク用膜910により覆われるようになる。マスク用膜910の平均厚さが5nm~15nm程度の段階では、核同士の結合が完了して面105a及び露出面104aがマスク用膜910により覆われるものの、マスク用膜910の厚さにばらつきが存在する。マスク用膜910は、厚さのばらつきに伴う凹部911及び凸部912を有する。核形成及び核同士の結合は不規則に生じるため、凹部911及び凸部912も不規則に形成される。従って、
図11に示すように、凹部911は、平面視でミアンダ形状を有する。すなわち、凹部911は、平面視で蛇行する部分を有する。凹部911は、ナノメートルオーダの凹部である。すなわち、凹部911の平均幅は、1nm以上100nm未満であり、好ましくは3nm以上50nm以下である。面910aは第2の面の一例であり、凹部911は第1の溝の一例である。
【0040】
マスク用膜は、その材料の融点が低いほど、成膜時の凝集により核が大きく成長しやすく、凹部911及び凸部912のピッチが大きくなりやすい。そして、アルミニウム及び亜鉛の融点は銅の融点よりも低い。このため、アルミニウム又は亜鉛をマスク用膜910に用いる場合には、銅をマスク用膜910に用いる場合よりも、凹部911及び凸部912のピッチを大きくしやすい。凹部911及び凸部912のピッチを大きくすることで、後に形成する溝105x内にシード層を入り込ませやすくなる(
図9(b)参照)。
【0041】
マスク用膜910の形成後、
図8(c)に示すように、凹部911を第1の絶縁層105まで貫通させて溝状の開口部913を形成する。この処理を行う前でもマスク用膜910に開口部が存在することがあるが、この処理を行わなければ、マスク用膜910に開口部913を十分に形成することができず、後の処理(
図9(a)参照)において、第1の絶縁層105を十分にエッチングすることが困難となる。開口部913は、例えば、マスク用膜910の形成に用いたスパッタ装置内で形成することができる。開口部913の形成では、例えば、スパッタ装置内で、逆スパッタのプラズマエッチングを行う。このように、
図8(b)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、マスク用膜910の形成に引き続いて開口部913を形成することができる。このプラズマエッチングでは、例えば、アルゴンガスをプロセスガスとして用いることができる。アルゴンガスを用いた場合、例えば金属のマスク用膜910のエッチングレートを高くできるため、エッチングに要する時間を短縮することができ、プラズマエッチング時の熱によるマスク変形を抑制することができる。開口部913の形成の際には、凹部911が深くなるとともに、凹部911が広がり、凸部912が低くなり、かつ狭まる。
図12は、マスク用膜910を例示する平面図である。前述の
図11には、開口部913が形成される前のマスク用膜910を例示し、
図12には、開口部913が形成された後のマスク用膜910を例示する。開口部913は、ナノメートルオーダの開口部である。すなわち、開口部913の平均幅は、1nm以上100nm未満であり、好ましくは3nm以上50nm以下である。
【0042】
次いで、
図9(a)に示すように、面105aに、平面視で開口部913に倣う溝105xを形成する。溝105xは、例えば、開口部913の形成に用いたスパッタ装置内で形成することができる。溝105xの形成では、例えば、スパッタ装置内で、逆スパッタのプラズマエッチングを行う。すなわち、
図8(c)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、開口部913の形成に引き続いて溝105xを形成することができる。このプラズマエッチングでは、例えば、酸素ガスをプロセスガスとして用いることができる。窒素ガス又は四フッ化炭素ガスをプロセスガスとして用いてもよい。酸素ガス、窒素ガス、四フッ化炭素ガスの2種又は3種の混合ガスをプロセスガスとして用いてもよい。溝105xは、ナノメートルオーダの溝である。すなわち、溝105xの平均幅は、1nm以上100nm未満であり、好ましくは3nm以上50nm以下である。溝105xは第2の溝の一例である。
【0043】
次いで、
図9(b)に示すように、第1の絶縁層105上及びビアホール106の内面にシード層920を形成する。シード層920の一部は、溝105x内に入り込み、溝105xはシード層920で埋められる。シード層920は、例えば、溝105xの形成に用いたスパッタ装置内で形成することができる。すなわち、
図9(a)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、溝105xの形成に引き続いてシード層920を形成することができる。シード層920としては、例えば銅ニッケル合金層を形成することができる。銅ニッケル合金層は、耐食性及び耐酸化性に優れている。銅ニッケル合金層のニッケルの割合が20質量%以上50質量%以下であれば、後の工程で、銅ニッケル合金層を銅用のエッチング液を用いて除去することができる。シード層920を形成する際には、コア基板102にバイアスを印加することが好ましい。溝105x内にシード層920が入り込みやすくなるためである。シード層920は、
図9(a)に示す構造体をスパッタ装置から取り出して、無電解めっき法により形成してもよい。シード層920として銅層を形成してもよい。
【0044】
次いで、
図9(c)に示すように、第2の配線層107を形成する部分に開口部931が設けられためっきレジスト層930を形成する。めっきレジスト層930は、溝105xの形成に用いたスパッタ装置の外部で形成することができる。
【0045】
次いで、
図10(a)に示すように、シード層920をめっき給電経路に利用する電解めっき法により、めっきレジスト層930の開口部931内に金属めっき層940を形成する。
【0046】
次いで、
図10(b)に示すように、めっきレジスト層930を除去する。更に、金属めっき層940をマスクにしてシード層920及びマスク用膜910をウェットエッチングにより除去する。このようにして、シード層920及び金属めっき層940を含み、溝105xに入り込むアンカー部107yを有する第2の配線層107を形成することができる。
【0047】
次いで、
図10(c)に示すように、第1の絶縁層105上に、第2の絶縁層108を形成する。第2の絶縁層108は、第2の配線層107から露出している溝105xに入り込むアンカー部108yを有する。
【0048】
このようにして、第2の配線層107及び第2の絶縁層108を形成することができる。
【0049】
第2の絶縁層108の形成後、
図7(a)に示すように、コア基板102の両側の第2の絶縁層108をレーザで加工することにより、第2の配線層107の接続部に到達するビアホール109を第2の絶縁層108に形成する。更に、コア基板102の両側において、ビアホール109内のビア導体を介して第2の配線層107に接続される第3の配線層110を第2の絶縁層108上に形成する。第3の配線層110は、第2の配線層107と同様の方法で形成することができる。つまり、第2の絶縁層108の面108aに溝105xと同様の形態の溝を形成し、この溝に入り込むアンカー部を有する第3の配線層110を形成することができる。
【0050】
次いで、
図7(b)に示すように、コア基板102の両側において、第2の絶縁層108上にソルダレジスト層150を形成する。その後、コア基板102の半導体チップと接続される側のソルダレジスト層150に第3の配線層110の接続部に達する開口部151を形成する。また、コア基板102の反対側のソルダレジスト層150に第3の配線層110の接続部に達する開口部152を形成する。
【0051】
ソルダレジスト層150は、感光性のエポキシ樹脂又はアクリル樹脂等の絶縁樹脂から形成される。樹脂フィルムの貼り付け又は液状樹脂の塗布により、ソルダレジスト層150を形成してもよい。開口部151及び開口部152は、露光及び現像により形成することができる。ソルダレジスト層150に非感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂を用いてもよい。この場合、開口部151及び開口部152は、レーザ加工又はブラスト処理により形成することができる。
【0052】
次いで、
図7(b)に示す構造体をスライサー等により切断する。これにより、配線基板100に対応する構造体が個片化され、大判のコア配線基板101から第1の実施形態に係る配線基板100が複数得られる。このようにして、
図2に示す第1の実施形態に係る配線基板100を製造することができる。
【0053】
この方法によれば、ナノメートルオーダで、ミアンダ形状を有する溝105xを第1の絶縁層105の面105aに容易に形成することができる。また、溝105xに入り込むアンカー部107yを有する第2の配線層107を容易に形成することができる。同様に、ナノメートルオーダで、ミアンダ形状を有する溝を第2の絶縁層108の面108aに容易に形成することができる。また、この溝に入り込むアンカー部を有する第3の配線層110を容易に形成することができる。
【0054】
更に、ビアホール106の形成後のクリーニング(
図8(a)参照)から、シード層920の形成までの処理を単一のスパッタ装置を用いて行うことができる。すなわち、コア基板102を含む構造体をスパッタ装置から取り出すことなく、これらの処理を単一のスパッタ装置内で連続して行うことができる。
【0055】
なお、ソルダレジスト層150の形成後で個片化の前に、コア基板102の半導体チップと接続される側において、第3の配線層110の接続部上に、開口部151を通じてソルダレジスト層150の上方まで突出する接続端子を形成してもよい。
【0056】
(第1の実施形態の第1の変形例)
第1の実施形態の第1の変形例について説明する。第1の変形例は、主に、第2の配線層107及び第2の絶縁層108の形成方法の点で第1の実施形態と相違する。
図13は、第1の実施形態の第1の変形例における第2の配線層107及び第2の絶縁層108の形成方法を例示する断面図である。
図13には、
図3と同じ箇所を図示している。
【0057】
第1の変形例では、第1の実施形態と同様に、溝105xの形成までの処理を行う(
図9(a)参照)。第1の変形例では、
図13(a)に示すように、溝105xの形成の際にマスク用膜910が酸化されて酸化膜915が形成されている。
【0058】
第1の変形例では、溝105xの形成後、
図13(b)に示すように、酸化膜915を除去する。酸化膜915は、溝105xの形成に用いたスパッタ装置内で除去することができる。酸化膜915の除去では、例えば、スパッタ装置内で、逆スパッタのプラズマエッチングを行う。このように、
図13(a)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、溝105xの形成に引き続いて酸化膜915を除去することができる。酸化膜915の除去では、例えば、アルゴンガスをプロセスガスとして用いることができる。酸化膜915の除去の際に面105aの近傍にダメージ層916が生じ得る。
【0059】
次いで、
図13(c)に示すように、酸化膜915の除去の際に面105aの近傍に生じるダメージ層916を除去する。ダメージ層916は、酸化膜915の除去に用いたスパッタ装置内で除去することができる。ダメージ層916の除去では、例えば、スパッタ装置内で、逆スパッタのプラズマエッチングを低出力で行う。このように、
図13(b)に示す構造体をスパッタ装置から取り出さずに、酸化膜915の除去に引き続いてダメージ層916を除去することができる。ダメージ層916の除去では、例えば、窒素ガスをプロセスガスとして用いることができる。窒素ガスをプロセスガスとして用いたプラズマエッチングを行うことで、ダメージ層916を除去するとともに、面105aの近傍に、水酸基、カルボキシル基等の官能基を備えた改質層917を形成することができる。プロセスガスが、更に酸素ガスを含んでいてもよい。
【0060】
その後、第1の実施形態と同様にして、シード層920の形成以降の処理を行う。
【0061】
第1の変形例によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、官能基を備えた改質層917は、シード層920と第1の絶縁層105との間の密着性を向上することができるため、より優れた密着性を得ることができる。
【0062】
第1の変形例の方法で製造された配線基板100には、マスク用膜910が含まれない。
【0063】
マスク用膜910が酸化していない場合でも、第1の変形例のように、溝105xの形成後でシード層920の形成前にマスク用膜910を除去してもよい。この場合も、ダメージ層916を除去し、改質層917を形成することが好ましい。
【0064】
マスク用膜910が酸化されて酸化膜915が形成されている場合に、酸化膜915を除去するのではなく、水素ガスを用いて酸化膜915の還元処理を行ってもよい。
【0065】
なお、酸化膜915又はマスク用膜910をウェットエッチングにより除去してもよい。酸化膜915又はマスク用膜910をウェットエッチングにより除去した場合、ダメージ層916は形成されにくいため、そのままシード層920を形成してもよい。マスク用膜910の材料として銅又は亜鉛が用いられている場合、酸化膜915又はマスク用膜910をウェットエッチングにより除去しやすい。ウェットエッチングにより酸化膜915又はマスク用膜910を除去した後に、シード層920を無電解めっき処理等のウェット処理により形成してもよい。
【0066】
(第1の実施形態の第2の変形例)
第1の実施形態の第2の変形例について説明する。第2の変形例は、主に、第1の絶縁層105及び第2の絶縁層108の構成の点で第1の実施形態等と相違する。
【0067】
[配線基板の構造]
配線基板の構造について説明する。
図14は、第1の実施形態の第2の変形例に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
図14には、
図3に対応する箇所を図示している。
【0068】
上記のように、第1の実施形態では、溝105xは、被覆領域105s及び露出領域105tの両方に形成されている。また、第1の実施形態では、第2の絶縁層108は、溝105xに入り込むアンカー部108yを有する。
【0069】
一方、第2の変形例では、
図14に示すように、溝105xは、被覆領域105sに形成されているものの、露出領域105tには形成されていない。露出領域105tにおいて、面105aは略平坦な面となっている。第2の絶縁層108は、略平坦な面105aの露出領域105tに直接接触する。また、露出領域105tは、被覆領域105sよりもコア基板102側に位置する。
【0070】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0071】
第2の変形例によっても、第1の実施形態と同様に、高周波信号に対する良好な伝送特性を得ながら、第1の絶縁層105と第2の配線層107との間の密着性を向上することができる。また、第1の実施形態では、露出領域105tの溝105xの周囲に、第1の絶縁層105に含まれる樹脂が変質した部分が存在したり、マスク用膜910又はシード層920に含まれる金属の化合物が存在したりするおそれがあるが、第2の変形例では、このようなおそれを低減することができる。従って、第2の変形例によれば、より安定した絶縁性を第1の絶縁層105に得ることができる。
【0072】
第2の絶縁層108についても、面108aのうちで第3の配線層110から露出している露出領域が、露出領域105tと同様に略平坦な面となっていてもよい。より安定した絶縁性を第2の絶縁層108に得ることができる。
【0073】
[配線基板の製造方法]
次に、配線基板の製造方法について説明する。
図15は、第1の実施形態の第2の変形例に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【0074】
第2の変形例では、第1の実施形態と同様に、シード層920及びマスク用膜910の除去までの処理を行う(
図10(b)参照)。次いで、
図15(a)に示すように、第2の配線層107をマスクにして、露出領域105tにおいて、溝105xの周囲の第1の絶縁層105の表層部を除去する。第1の絶縁層105の表層部の除去では、例えば、プラズマエッチング装置内で、プラズマエッチングを行う。第1の絶縁層105の除去では、例えば、酸素ガス又は四フッ化炭素ガスをプロセスガスとして用いることができる。酸素ガス及び四フッ化炭素ガスの混合ガスをプロセスガスとして用いてもよい。第1の絶縁層105の表層部の除去の結果、露出領域105tにおいて、面105aは略平坦な面となる。この結果、露出領域105tの溝105xの周囲に、第1の絶縁層105に含まれる樹脂が変質した部分が存在したり、マスク用膜910又はシード層920に含まれる金属の化合物が存在したりしていても、これらが除去される。
【0075】
次いで、
図15(b)に示すように、第1の絶縁層105上に、第2の絶縁層108を形成する。第2の絶縁層108は、略平坦な面105aの露出領域105tに直接接触する。
【0076】
その後、第1の実施形態と同様にして、ビアホール109の形成以降の処理を行う。
【0077】
第2の変形例によれば、露出領域105tの溝105xの周囲に、第1の絶縁層105に含まれる樹脂が変質した部分が存在したり、マスク用膜910又はシード層920に含まれる金属の化合物が存在したりしていても、これらを除去し、より安定した絶縁性を得ることができる。
【0078】
第2の変形例においても、溝105xの形成後でシード層920の形成前にマスク用膜910又は酸化膜915を除去してもよい。この場合も、ダメージ層916を除去し、改質層917を形成することが好ましい。酸化膜915が形成されている場合に、水素ガスを用いて酸化膜915の還元処理を行ってもよい。
【0079】
第2の絶縁層108についても、面108aのうちで第3の配線層110から露出している露出領域を、露出領域105tと同様に略平坦な面としてもよい。
【0080】
(第1の実施形態の第3の変形例)
第1の実施形態の第3の変形例について説明する。第3の変形例は、主に、第1の絶縁層105及び第2の絶縁層108の構成の点で第1の実施形態等と相違する。
【0081】
[配線基板の構造]
配線基板の構造について説明する。
図16は、第1の実施形態の第2の変形例に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
図16には、
図3に対応する箇所を図示している。
【0082】
図16に示すように、第3の変形例では、第2の変形例と同様に、露出領域105tは、被覆領域105sよりもコア基板102側に位置する。第3の変形例では、第2の変形例とは異なり、露出領域105tに、溝105xと同様の形態の溝105zが形成されている。そして、第2の絶縁層108は、露出領域105tにて溝105zに入り込むアンカー部108yを有する。
【0083】
他の構成は第1の実施形態の第2の変形例と同様である。
【0084】
第3の変形例によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。更に、第2の変形例と同様に、より安定した絶縁性を第1の絶縁層105に得ることができる。
【0085】
第2の絶縁層108についても、面108aのうちで第3の配線層110から露出している露出領域に、溝105zと同様の形態の溝が形成されていてもよい。
【0086】
[配線基板の製造方法]
次に、配線基板の製造方法について説明する。
図17は、第1の実施形態の第3の変形例に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【0087】
第3の変形例では、第1の実施形態と同様に、シード層920及びマスク用膜910の除去までの処理を行う(
図10(b)参照)。次いで、
図17(a)に示すように、第2の変形例と同様に、第2の配線層107をマスクにして、露出領域105tにおいて、溝105xの周囲の第1の絶縁層105の表層部を除去する。この結果、露出領域105tにおいて、面105aは略平坦な面となる。
【0088】
次いで、
図17(b)に示すように、露出領域105tにおいて、面105aに溝105xと同様の形態の溝105zを形成する。溝105zの形成では、例えば、第1の変形例と同様に、マスク用膜910の形成から改質層917の形成までの処理を行う(
図8(b)、
図8(c)、
図9(a)、
図13(a)~(c)参照)。マスク用膜910が酸化していない場合は、酸化膜915に代えてマスク用膜910を除去すればよい。溝105zは第3の溝の一例である。
【0089】
次いで、
図17(c)に示すように、第1の絶縁層105上に、第2の絶縁層108を形成する。第2の絶縁層108は、第2の配線層107から露出している溝105zに入り込むアンカー部108yを有する。
【0090】
その後、第1の実施形態と同様にして、ビアホール109の形成以降の処理を行う。
【0091】
第3の変形例においても、溝105xの形成後でシード層920の形成前にマスク用膜910又は酸化膜915を除去してもよい。この場合も、ダメージ層916を除去し、改質層917を形成することが好ましい。酸化膜915が形成されている場合に、水素ガスを用いて酸化膜915の還元処理を行ってもよい。
【0092】
第2の絶縁層108についても、面108aのうちで第3の配線層110から露出している露出領域に、溝105zと同様の形態の溝を形成してもよい。
【0093】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、コア基板を含まない配線基板、いわゆるコアレス基板に関する。
【0094】
[配線基板の構造]
配線基板の構造について説明する。
図18は、第2の実施形態に係る配線基板の構造を例示する断面図である。
【0095】
図18に示すように、第2の実施形態に係る配線基板200は、第1の配線層204、第1の絶縁層205、第2の配線層207および第2の絶縁層208を含む。第1の絶縁層205は、半導体チップと接続される側の面205aと、面205aとは反対側の面205bとを有する。第1の配線層204は、面205bに形成されている。第1の絶縁層205には、第1の配線層204の接続部に到達するビアホール206が形成されており、第1の絶縁層205上に、ビアホール206内のビア導体を介して第1の配線層204に接続される第2の配線層207が形成されている。第1の絶縁層205上に第2の絶縁層208が形成されている。第2の絶縁層208は、半導体チップと接続される側の面208aと、面208aとは反対側の面208bとを有する。第2の絶縁層208には、第2の配線層207の接続部に到達するビアホール209が形成されており、第2の絶縁層208上に、ビアホール209内のビア導体を介して第2の配線層207に接続される第3の配線層210が形成されている。
【0096】
第2の絶縁層208上にソルダレジスト層250が形成されている。ソルダレジスト層250に第3の配線層210の接続部に達するビアホール251が形成されている。
【0097】
第1の配線層204、第2の配線層207及び第3の配線層210は、例えば、銅層等を含む導電層である。第1の絶縁層205及び第2の絶縁層208は、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等の絶縁樹脂を含む樹脂層である。第1の絶縁層205及び第2の絶縁層208が、シリカ等のフィラーを含有していてもよい。
【0098】
第1の絶縁層205の面205aと第2の絶縁層208の面208aとには、
図3及び
図4に示す溝105xと同様の形態の溝が形成されている。第2の配線層207は、面205aに形成された溝に入り込むアンカー部を有し、第2の絶縁層208も、面205aに形成された溝に入り込むアンカー部を有する。第3の配線層210は、面208aに形成された溝に入り込むアンカー部を有し、ソルダレジスト層250も、面208aに形成された溝に入り込むアンカー部を有する。
【0099】
このような第2の実施形態によっても、第1の絶縁層205と第2の配線層207との間の密着性、及び第2の絶縁層208と第3の配線層210との間の密着性を向上することができる。また、第1の絶縁層205と第2の絶縁層208との間でも密着性を向上することができる。
【0100】
また、溝がナノメートルオーダの溝であるため、表皮効果による信号伝達経路の拡大を抑え、高周波信号に対する良好な伝送特性を得ることができる。
【0101】
なお、第3の配線層210の接続部上に、ビアホール251を通じてソルダレジスト層250の上方まで突出する接続端子が形成されていてもよい。
【0102】
[配線基板の製造方法]
次に、配線基板の製造方法について説明する。
図19~
図22は、第2の実施形態に係る配線基板の製造方法を例示する断面図である。
【0103】
まず、
図19(a)に示すように、支持体201を準備する。支持体201は、例えば、支持基板と、支持基板の両面に設けられた接着層及び金属層とを含む。支持基板としては、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維等の織布や不織布(図示せず)にエポキシ系樹脂等の絶縁樹脂を含侵させたものを用いることができる。接着層としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、亜鉛箔等の金属箔、セラミック板、アクリルやポリイミド等の樹脂を主成分とする樹脂シート等を用いることができる。金属層としては、例えば、銅箔等を用いることができる。
【0104】
支持体201の準備後、同じく
図19(a)に示すように、支持体201の両側において、支持体201上に第1の配線層204を形成する。第1の配線層204は、例えばセミアディティブ法によって形成することができる。
【0105】
次いで、
図19(b)に示すように、支持体201の両側に未硬化の樹脂フィルムを貼付し、加熱処理して硬化させることにより、第1の絶縁層205を形成する。第1の絶縁層205は、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂等の絶縁樹脂から形成される。液状樹脂を塗布することにより、第1の絶縁層205を形成してもよい。その後、支持体201の両側の第1の絶縁層205をレーザで加工することにより、第1の配線層204の接続部に到達するビアホール206を第1の絶縁層205に形成する。
【0106】
次いで、
図20(a)に示すように、支持体201の両側において、ビアホール206内のビア導体を介して第1の配線層204に接続される第2の配線層207を第1の絶縁層205上に形成する。
【0107】
次いで、
図20(b)に示すように、支持体201の両側において、第1の絶縁層205上に第2の絶縁層208を形成する。
【0108】
第2の配線層207及び第2の絶縁層208は、
図8~
図10に示す第1の実施形態における第2の配線層107及び第2の絶縁層108の形成方法と同様の方法で形成することができる。つまり、第1の絶縁層205の面205aに溝105xと同様の形態の溝を形成し、この溝に入り込むアンカー部を有する第2の配線層207及び第2の絶縁層208を形成することができる。
【0109】
次いで、
図21(a)に示すように、支持体201の両側の第2の絶縁層208をレーザで加工することにより、第2の配線層207の接続部に到達するビアホール209を第2の絶縁層208に形成する。更に、支持体201の両側において、ビアホール209内のビア導体を介して第2の配線層207に接続される第3の配線層210を第2の絶縁層208上に形成する。第3の配線層210は、第2の配線層207と同様の方法で形成することができる。つまり、第2の絶縁層208の面208aに溝105xと同様の形態の溝を形成し、この溝に入り込むアンカー部を有する第3の配線層210を形成することができる。
【0110】
次いで、
図21(b)に示すように、支持体201の両側において、第2の絶縁層208上にソルダレジスト層250を形成する。その後、支持体201の両側において、ソルダレジスト層250に第3の配線層210の接続部に達するビアホール251を形成する。ソルダレジスト層250及びビアホール251は、第1の実施形態におけるソルダレジスト層150及び開口部151と同様にして形成することができる。
【0111】
次いで、
図21(b)に示す構造体をスライサー等により切断する。これにより、支持体201を含み、配線基板200に対応する構造体が個片化される。
図21(b)に示す構造体にキャリアを貼り付けた後に、スライサー等により切断してもよい。
【0112】
次いで、
図22に示すように、支持体201の両側から配線基板200に対応する構造体を分離する。このようにして、
図18に示す第2の実施形態に係る配線基板200を製造することができる。
【0113】
この方法によれば、ナノメートルオーダで、ミアンダ形状を有する溝を第1の絶縁層205の面205a及び第2の絶縁層208の面208aに容易に形成することができる。また、これら溝に入り込むアンカー部を有する第2の配線層207及び第3の配線層210を容易に形成することができる。
【0114】
なお、第2の実施形態に、第1の実施形態の第1~第3の変形例を適用してもよい。
【0115】
本開示において、絶縁層105の材料に熱可塑性樹脂が用いられる場合、絶縁層105への溝105x、105zの形成は、マイクロ波プラズマエッチングにより行うことが好ましい。マイクロ波プラズマエッチングは、低温で行うことができ、絶縁層105に生じるダメージを抑制できる。一方、熱可塑性樹脂の絶縁層105のエッチングとして反応性イオンエッチング(RIE)を行った場合には、プラズマ及び熱等の影響により絶縁層105に変質又は変形が生じるおそれがる。絶縁層105に変質又は変形が生じると、溝105x、105zの形状が崩れたり、絶縁層105の表面にフィブリルが発生したりして、十分な密着強度を得られない場合がある。
【0116】
また、マスク用膜910の形成から溝105xの形成までをドライ処理により行い、マスク用膜910又は酸化膜915の除去からシード層20の形成までの処理をウェット処理により行ってもよい。この場合、マスク用膜910の材料に亜鉛等の融点が低い両性金属を用いると、マスク用膜910又は酸化膜915を酸洗などのめっき前処理にて容易に除去したり、凹部911及び凸部912のピッチを大きくしたりすることができる。凹部911及び凸部912のピッチを大きくすることで、シード層20をウェット処理(無電解めっき処理)によっても溝105x内に入り込むように形成しやすい。ウェット処理には既存の装置を用いることができる。
【0117】
(溝の好ましい形態)
次に、絶縁層に形成される、平面視でミアンダ形状を有する溝の好ましい形態について説明する。
【0118】
[溝のピッチ]
溝のピッチは10nm以上100nm以下であることが好ましい。溝のピッチが10nm未満であると、溝および絶縁樹脂の凸部が細くなりすぎてしまい、アンカー部の強度が低下してしまうおそれがある。また溝のピッチが100nmを超えていると、配線が微細になった場合に、アンカーの数が少ないために密着性が低下するおそれがある。加えて、上記の製造方法の例によれば、ピッチが10nm未満又は100nm超の溝を備えたマスク用膜を形成することは困難であり、絶縁層の溝のピッチをピッチが10nm未満又は100nm超とすることは困難である。溝のピッチは20nm以上60nm以下であることがより好ましい。溝のピッチは、次の方法で算出することができる。
図23は、ピッチの算出方法を例示する図である。
【0119】
図23には、溝50xが形成された絶縁層50を例示している。溝50xが形成された面において、第1の方向に延び、第1の方向に直交する第2の方向に等間隔で並ぶ10本以上の線分21を設定し、各線分21と交差する溝50xの個数を特定する。更に、第2の方向に延び、第1の方向に等間隔で並ぶ10本以上の線分22を設定し、各線分22と交差する溝50xの個数を特定する。そして、10本以上の線分21と交差する溝50xの個数、及び10本以上の線分22と交差する溝50xの個数の平均値を算出する。線分21及び22の長さは一定Lとし、線分21及び22の長さLを溝50xの平均個数で除して得られる値を溝50xのピッチとする。
【0120】
線分21及び22の長さLが短すぎる場合、溝50xのピッチの算出結果に、溝50xの分布が十分に反映されないことがある。そこで、線分21及び22の長さLは200nm以上とする。線分21及び22の長さLは200nm以上1μm以下でよい。線分21及び22の長さLは、例えば250nmとする。
【0121】
線分21同士の間隔又は線分22同士の間隔が小さすぎる場合、溝50xのピッチの算出結果に、溝50xの分布が十分に反映されないことがある。そこで、線分21及び22の間隔は20nm以上とする。線分21及び22の間隔は20nm以上100nm以下でよい。
【0122】
[溝の平均幅]
溝の平均幅は3nm以上50nm以下であることが好ましい。溝の平均幅が3nm未満であると、溝の内部へのシード層の充填が困難になり、配線層のアンカー部の形成が困難になる、あるいは、配線層のアンカー部自体が細くなってしまうため、配線層のアンカー部に優れた強度が得られないことがある。また、溝の平均幅が50nm超であると、溝のアスペクト比(溝の深さと幅との比)が小さくなり、アンカー効果が低下してしまうおそれがある。溝の平均幅は10nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0123】
[溝の長さと溝の平均幅との関係]
溝の平均幅に対して数倍以上の長さの細長い溝を多く有する構造が好ましい。具体的には、絶縁層の200nm四方以上の領域に存在する溝について平面視での(溝の長さ)/(溝の平均幅)の比率を求めたとき、当該比率の平均値が4.0以上であることが好ましい。比率の平均値が4.0未満の場合には、長さの短い溝が主となる表面構造となり、配線層のアンカー部に優れた強度が得られないことがある。なお、配線層の表面に長さの短い溝やピンホール状の凹部が含まれていてもよい。
【0124】
[溝の占有率]
溝が形成された面の総面積に対する平面視で溝が占める面積の割合(溝の占有率)は10面積%以上60面積%以下であることが好ましい。溝の占有率が10面積%未満であると、配線層のアンカー部が不足して、優れた密着性が得られないおそれがある。溝の占有率が60面積%超であると、配線層のアンカー部を支えている絶縁層の凸部が不足して、絶縁層の強度が低下してしまうおそれがある。溝の占有率は20面積%以上50面積%以下であることがより好ましい。溝の占有率は、絶縁層の樹脂の破断強度S1を、破断強度S1と配線層の金属の破断強度S2との和(S1+S2)で除した値(%)と同程度であることが好ましい。
【0125】
[溝の深さ]
溝の深さは10nm以上50nm以下であることが好ましい。溝の深さが10nm未満であると、アンカー効果が十分に発揮されないため優れた密着性が得られないおそれがある。溝の深さが50nm超であると、絶縁層表面の凹凸が大きくなり伝送損失が増加してしまうおそれがある。また、溝の内部へのシード層の充填が困難になり、配線層のアンカー部の形成が不十分になることにより密着性が低下するおそれもある。溝の深さは20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
【0126】
(観察例)
ここで、実際に作製した試料の観察例について説明する。
図24は、絶縁層の面の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope:SEM)写真を例示する図である。
図25は、
図24に示すSEM写真の2値化処理の結果を示す図である。
【0127】
図24(a)~(d)に示すSEM写真は、マスク用膜の形成条件、エッチング条件を変化させて作製した試料における絶縁層の表面のSEM写真である。これらSEM写真の2値化処理を行い、それぞれ
図25(a)~(d)に示す像を取得した。そして、
図25(a)~(d)に示す像から、中間軸を特定し、凹部の平均幅、凹部の長さの凹部の平均幅に対する比率((凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率)の平均値、凹部のピッチ及び凹部の占有率を算出した。この結果を表1に示す。ここで、(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率の平均値は、観察画像中に存在するすべての凹部(溝を含む)について(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率を求めたときの当該比率の平均値である。
【0128】
【0129】
図24(a)及び
図25(a)に示す試料No.1では、(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率の平均値が1.6で、4.0未満であるため、試料No.1の絶縁層の表面構造は、本開示における溝を含む構造に該当しない。試料No.1の絶縁層の表面に形成された凹部はピンホール状の凹部であり、細長い溝を有していない。
【0130】
図24(b)及び
図25(b)に示す試料No.2では、(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率の平均値が4.6で、4.0以上であるため、試料No.2の絶縁層の表面構造は、本開示における溝を含む構造に該当する。この凹部は迷路状に形成されており、ミアンダ形状を有している。
【0131】
図24(c)及び
図25(c)に示す試料No.3では、(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率の平均値が18.1で、4.0以上であるため、試料No.3の絶縁層の表面構造は、本開示における溝を含む構造に該当する。この凹部は迷路状に形成されており、ミアンダ形状を有している。
【0132】
図24(d)及び
図25(d)に示す試料No.4では、(凹部の長さ)/(凹部の平均幅)の比率の平均値が61.0で、4.0以上であるため、試料No.4の絶縁層の表面構造は、本開示における溝を含む構造に該当する。この凹部は網目状に形成されており、ミアンダ形状を有している。
【0133】
(密着性試験)
次に、絶縁層の表面の状態と配線層との密着性との関係に関する実験結果について説明する。この実験では、試料No.1、試料No.2、試料No.3及び試料No.4について、絶縁層上に配線層を形成し、90°ピール試験を行った。絶縁層はポリイミド層であり、配線層に含まれるシード層及び金属めっき層はいずれも銅層である。また、参照試料として、意図的には表面に凹部を形成していない絶縁層上に配線層を形成し、90°ピール試験を行った。この結果を
図26に示す。
【0134】
図26に示すように、ミアンダ形状の溝が形成された試料No.2、試料No.3及び試料No.4では、参照試料及びピンホール状の凹部が形成された試料No.1と比較して、著しく高いピール強度を得ることができた。
【0135】
(信頼性試験)
次に、信頼性試験の結果について説明する。信頼性試験では、試料No.4について、絶縁層上に配線層を形成し、熱負荷をかけた後に90°ピール試験を行った。また、第1参照試料として、意図的には表面に溝形状の凹部を形成していない絶縁層上に配線層を形成し、熱負荷をかけた後に90°ピール試験を行った。信頼性試験における試料No.4及び第1参照試料では、絶縁層はポリイミド層であり、配線層に含まれるシード層は銅ニッケル合金層であり、配線層に含まれる金属めっき層は銅層である。更に、シード層に銅層を用いたことを除いて第1参照試料と同じ構成の第2参照試料を準備し、第2参照試料についても同様の熱負荷をかけた後に90°ピール試験を行った。
【0136】
熱負荷の条件は2種類とした。第1の条件では、温度が125℃の雰囲気に24時間保持し、次いで、湿度が60%RH、温度が60℃の雰囲気に40時間保持し、次いで、265℃でのリフローを3回行った。第1の条件はJEDEC Lv.3Aに準じた条件である。第2の条件では、湿度が85%RH、温度が130℃の雰囲気に100時間保持した。第2の条件は高速加速試験(HAST)に準じた条件である。この結果を
図27に示す。
【0137】
図27に示すように、銅層がシード層に用いられた第2参照試料に対して、銅ニッケル層がシード層に用いられた第1参照試料及び試料No.4では良好なピール強度が得られた。また、第1参照試料では、第1条件の熱負荷後及び第2条件の熱負荷後にピール強度が低下したが、試料No.4でのピール強度の低下は小さく、1.0kgf/cm以上のピール強度を保持することができた。
【0138】
(マスク用膜の材料と凸部及び開口部のピッチとの関係)
次に、マスク用膜の材料と凸部及び開口部のピッチとの関係について説明する。
図28及び
図29は、マスク用膜の表面のSEM写真を例示する図である。
図28(a)及び
図29(a)には、銅のマスク用膜の表面のSEM写真を示し、
図28(b)及び
図29(b)には、アルミニウムのマスク用膜の表面のSEM写真を示す。
図28(a)及び
図28(b)には、開口部が迷路状に形成された例を示し、
図29(a)及び
図29(b)には、開口部が網目状に形成された例を示す。
【0139】
図28及び
図29に示すように、開口部が迷路状、網目状のいずれであっても、アルミニウムのマスク用膜に形成された凸部及び開口部のピッチは、銅のマスク用膜に形成された凸部及び開口部のピッチよりも大きかった。従って、アルミニウムのマスク用膜を用いることで、銅のマスク用膜を用いる場合よりも大きなピッチで溝を絶縁層に形成することができる。
【0140】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0141】
11:面
12:凹部
13:中間軸
14、21、22:線分
100、200 配線基板
104、107、110、204、207、210:配線層
105、108、205、208:絶縁層
105x、105z:溝
107y、108y:アンカー部